CBIS: 化合物や試薬の在庫管理

技術情報
研究情報共有システム
CBIS: 化合物や試薬の在庫管理
ChemInnovation Software社製 Chemical and Biological Information System(CBIS)は、化合物カタログ・
試薬在庫・細胞株・機器分析データ・文書等の研究に関わるあらゆるデータを統合して管理できるWebシステ
ムです。国内外で多数ご導入いただいており、エンドユーザーとシステム管理者の両者に配慮した設計、多様な
ご要望にお応えできる柔軟なカスタマイズ性、優れたコストパフォーマンスで高い評価をいただいております。
今回は、これまでExcelファイルで管理していた化合物や試薬の在庫情報をCBISで管理することのメリットにつ
いて、具体例を交えながら紹介します。
■ 在庫管理の重要性
おけば、使用制限や使用量の監視を行うことができ、コ
社内で保有する化合物や試薬は大きな資産です。社
ンプライアンス遵守に貢献します。法規制化合物リスト
内で保有する試薬の種類とそれぞれの残量、有効期限
の照合用オプションの利用で、より簡便に法規制チェッ
を正確に把握することは、研究の進度や研究資金の割り
クを行うことができます。
振りに影響します。
Excelファイルで化合物や試薬の在庫を管理している
■ 化合物ライブラリーと在庫情報
例がしばしば見受けられます。確かにExcelファイルでは
同じ化合物でも入手元や製品ロットが違う複数の在
必要な情報を簡単に表にまとめることができますが、在
庫品が存在します。ロットごとに物性が異なることがし
庫情報のように頻繁に更新される情報の管理には適し
ばしばあり、それが実験結果に影響する場合があります。
ていません。
このようなとき、実験に使用した在庫品の調査が行える
例えば、次のような問題は起きていないでしょうか。
よう、化合物の情報に加えて、在庫ごとの情報を保持し
・あると思っていた試薬がなくなっていた。新たに発注
ています。
して届くまでの間、実験が遅れてしまった。
・ないと思って発注した試薬の在庫が実はあった。有
効期限内に使用できず、破棄するリスクが生じた。
・新しい試薬から開封してしまったため、古い試薬が
残ってしまった。
化合物ごとに在庫をまとめて管理することで、在庫量
が設 定した下限値を下回ったときに、追 加購入を促す
メールを担当者へ自動配信することができます。
化合物ライブラリーと在庫情報の関係を図1に示し
ます。
・有効期限が切れた試薬を使って実験してしまったた
め、実験結果の真偽が不確かになり、再実験をする
羽目になった。
・在庫状況を把握していなかったため、試薬のキャン
ペーン期間を逃してしまった。その結果、試薬を安価
で購入する機会を失ってしまった。
・試薬が溢れ、保管場所がなくなってしまった。
このような問題は、試薬の在庫をきちんと管理すれば
避けることができます。以下で、効率的な在庫管理の方
法を紹介します。
■ 化合物ライブラリーの管理
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図1 化合物ライブラリーと在庫情報との関係。
ひとつの化合物について、複数の在庫情報がぶら下がる。
化合物や試薬の在庫情報を効率よく管理するために
■ 在庫管理の省力化
は、自社で合成した化合物や、共同研究者から入手した化
操作が煩雑になるとシステムは使われなくなり、更新
合物、また市販の試薬を化合物ライブラリーとして管理し
されない在庫情報は意味をもちません。CBISでは管理
て、常に一所で情報を確認できるようにすることが必要
を省力化できる方法を提供しています。
です。化合物ライブラリーでは、構造情報、分子量、化合
在庫品の管理にはバーコードや2Dコード、ICチップを
物名、といった化合物に由来する情報を管理します。構
使用すると便利です。在庫品を入庫したときに、試薬ビ
造情報の入力にはMOLファイルやSDファイルを利用でき
ンにコードのシールを貼ります。もしくは、試薬ベンダー
ます。大量のテキストデータや数値データをExcelファイ
のバーコード貼り付けサービスを利用してもよいでしょ
ルやCSVファイルから一括登録することもできます。
う。保管場所の棚にもコードのシールを貼っておきます。
また、毒物や劇物等の法規制情報を併せて登録して
最初は手間ではありますが、在庫品の使用時や棚卸時
研 究 情 報 共 有システム
に、これらコードをスキャナーで読み取るだけで、在庫品
や保管場所の入力を完了できるようになります。
入庫時や使用時の秤量値を電子天秤から直接取得す
ることもできます。
いずれもキーボード操作を必要としないため、入力ミ
スの防止や作業の省力化に貢献します。
■ 在庫の管理
在庫に関わるシーンごとに、管理方法をみていきます。
◆ 在庫品の入庫
図3 試薬の種類によるワークフローの使い分け
試薬ビンが手元に届いたら、入手元、ロット、価格、純
度、入庫日といった在庫品固有の情報をCBISに登録しま
もし在庫がなくても、過去に取り扱いのある試薬であ
す。登録者や登録日は自動で登録されるほか、試薬ごと
れば価格やコンタクト先を確認することができ、入手の
に設定した既定の保管場所や担当者を自動入力する入
手続きをスムーズに行うことができます。
力支援機能があります。また、SDSや検査成績書といっ
◆棚卸
たベンダーから提供される添付文書も、PDF等のファイ
棚卸で在庫の状態を確認する作業は大変労力がかか
ルとして併せて登録することが可能です。
りますが、CBISでは手作業を最小限に抑えることでこの
◆ 在庫品の使用
作業を省力化します。研究者は保管場所ごとに実在庫の
在庫品を使用するときはまず、構造式や化合物ID、名
試薬リストを作成してCBISへ登録します。すると、実在庫
称、分子量といった情報による検索で、使用する化合物
リストとCBISの在庫情報とが照合され、CBISに登録され
を絞り込みます(図2)。複数の化合物を使用するときは、
ているのに在庫がない試薬や、逆に登録されていないの
SDファイル(構造式のリスト)やExcelファイル(化合物ID
に存在する在庫のリストが出力されます。試薬の紛失や
等のリスト)を読み込むことで一括検索が可能です。
登録漏れを容易に検出することができます。
◆履歴管理
毒物・劇物の使用申請・承認や、使用量、保管場所移
動等の履歴がすべて残りますので、期間ごとまたは部署
ごとの各試薬の使用量を把握するのに役立ちます。また、
この使用履歴をもとにPRTR報告書を出力することがで
きますから、試薬管理者の負担を軽減できます。
■ まとめ
図2 検索条件の設定例
CBISはWebシステムであるため、社内LANにアクセス
できる端末があれば、居室でも実験室でも試薬倉庫で
在庫があれば出庫処理を行います。出庫のワークフ
も利用が可能です。また、試薬を使用したり、管理するす
ローには社内ルールを組み込むことができます。次の例
べての方が誰でも気軽に利用できるよう、一般的な指名
のように、厳密に管理する試薬と簡便に管理する試薬と
ユーザーライセンスではなく、同時使用ライセンスという
を分けたワークフローにすると効率的です(図3)。
形態を採用しています。今回紹介した化合物や試薬の在
・毒物・劇物:
庫管理以外でも、情報資産の有効活用をお考えの場合
上司または試薬管理者の使用許可を得てから使用し
や管理にお困りのデータがありましたら、お気軽にご相
ます。使用者が申請をすると、承認者にメールが届き
談ください。
ます。これを受けて承認者が承認または否認をする
と、使用者宛にメール通知されます。毒物・劇物では
CBIS紹介セミナー開催のご案内
使用量を正確に把握できるよう、秤量した重量を記
5月21日(水)に大阪地区にて、研究情報の効率的な管理に
ご興味のある方を対象にした、CBIS紹介セミナーを開催
します。詳細、参加申し込みにつきましては、以下のWeb
ページをご参照ください。
http://www.rsi.co.jp/kagaku/cs/seminar/index.html
録します。
・一般試薬:
試薬ビンの移動および開封状態のみを記録します。
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