内分泌疾患 ????? 内分泌疾患

内分泌疾患
?????
内分泌疾患
生体内の内分泌器官は、視床下部・下垂体、甲状腺、副甲状腺、副腎、性腺に大別されます。これらの内分泌器官か
らホルモンが分泌され、標的臓器・組織に作用しますが、これらの種々の内分泌器官と標的臓器・組織との間には、多
くの場合、フィードバックグループが形成されており、これにより生体内のホルモンの恒常性が維持されています。
■生体内のホルモンの調節機構概略図
(1)ACTH・コルチゾール系
視床下部
CRH
(ー)
(4)
ゴナドトロピン・性腺ホルモン系
LHRH
(ー)
(7)
カルシウム・ビタミン D 系
視床下部
血中カルシウム
低下 (+)
(ー)
(+)
(+)
上昇
LH・FSH
(ー)
腸管
(ー)
(+)
カルシウ
ム吸 収
下垂体前葉
(ー)
下垂体前葉
ACTH
RTH
副甲状腺
(ー)
(+)
(+)
(+)
カルシウム再吸収
1α水酸化酵素活性化
(+)
活性型ビタミン D
(1,25水酸化ビタミンD)
(+)
(+)
骨吸収
2,5水酸化
ビタミン D
腎
コルチ
ゾール
副腎皮質
エストロゲン
プロゲステロン
テスト
ステロン 精巣
男性
(2)GH・ソマトメジン C 系
(+)
(ー)
(ー)
DA
(ー)
視床下部
(ー)
女性
(5)
PRL 系
GHRH SRIH
卵巣
(8)
レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系
視床下部
腎臓流圧低下
レニン
腎傍系球体細胞
下垂体前葉
下垂体前葉
PRL
GH
(ー)
(+)
アンジオテンシノーゲン
アンジオテンシン Ⅰ
(+)
アンジオテンシン Ⅱ
(+)
ソマトメジン C
肝臓・末梢組織
泌乳
(3)TSH・甲状腺ホルモン系
ACTH
乳腺
(6)ADH 系
血漿浸透圧
(+)
アルド
ステロン
副腎皮質
(9)
副腎髄質系
(+)
浸透圧受容体
(+)
TRH
(+)
(+)
下垂体前葉
(ー)
交感神経
視床下部
視床下部
(ー)
(+)
(ー)
(+)
TSH
頸動脈圧
受容体
ADH
下垂体後葉
副腎髄質
カテコール
アミン
大動脈弓
圧受容体
(+)
(+)
T3
T4
甲状腺
心房圧受容体
腎臓
(+)は刺激を(ー)は抑制を表わす
抗利尿作用
1
内分泌疾患
■ ACTH ならびにコルチゾール値が異常値を示す疾患
コルチゾール
ACTH
高 値
高 値
低 値
低 値
Addison 病
先天性副腎皮質過形成
Nelson 症候群
ACTH 不応症
先天性副腎低形成
家族性グルココルチコイド欠損症
Cushing 病
異所性 ACTH 産生腫瘍
異所性 CRH 産生腫瘍
糖質コルチコイド不応症
うつ病、神経性食欲不振症
アルコール依存症、ストレス
Cushing 症候群(副腎腺腫、副腎癌)
結節性過形成
コルチゾール投与
下垂体前葉機能障害
(下垂体腫瘍、Sheehan 症候群、リンパ球性下垂
体炎、下垂体茎切断)
ACTH 単独欠損症
視床下部障害(脳腫瘍、サルコイドーシス)
合成糖質コルチコイド投与
■ ACTH が異常値を示した場合の検査の進め方
ACTH
高値
低値
コルチゾール
コルチゾール
高値
低値
デキサメゾン抑制試験
下垂体静脈洞サンプリング
CRH 負荷試験
リジン・バソプレッシン試験
DDAVP 試験
メチラポン試験
日内変動
画像検査
CRH 試験
ACTH 試験
病歴
日内変動
抗副腎抗体
副腎ステロイド分析
画像検査
高値
デキサメゾン抑制試験
CRH 試験
ACTH 試験
日内変動
画像検査
低値
CRH 試験
リジン・バソプレッシン試験
インスリン低血糖試験
画像検査
■基礎血漿 GH ならびに基礎血漿 IGF- Ⅰ値が異常値を示す疾患
GH
IGF- Ⅰ
高 値
2
低値または正常
妊娠
高 値
末端肥大症
巨人症
GHRH 産生腫瘍
腎不全
低 値
低栄養状態
インスリン依存型糖尿病
肝硬変
Laron 小人症
下垂体機能低下症
下垂体性小人症
生物活性の低い GH による小人症
甲状腺機能低下症
内分泌疾患
■甲状腺機能の異常症状(日本臨床検査医学会:診療群別臨床検査のガイドライン 2003 より引用)
亢進症
自覚症状
他覚症状
低下症
原因疾患
自覚症状
他覚症状
原因疾患
暑がり
甲状腺腫
バセドウ病
寒がり
甲状腺腫
慢性甲状腺炎(橋本病)
汗かき
頻脈
無痛性甲状腺炎
眠がり
貧血
甲状腺手術後
疲れやすい
眼球突出
亜急性甲状腺炎
脱力感(無気力) 徐脈
動悸がする
機能性腺腫 ( プランマー病 )
肌が荒れる
アキレス腱反射の遅延 抗甲状腺薬の過剰投与
手足が震える
多結節性甲状腺腫
むくみがある
下垂体性甲状腺機能低下症
食欲がある
TSH 産生下垂体腺腫
便秘がち
視床下部性甲状腺機能低下症
体重の減少
甲状腺ホルモンの摂取
脱毛
甲状腺ホルモン不応症
いらいらする
しわがれ声
先天性甲状腺機能低下症
体重増加
放射性ヨード治療後
■甲状腺疾患判断(日本甲状腺学会ホームページより引用)
a)臨床所見
b)検査所見
診断
付記
バセドウ
病
1.頻 脈、 体 重
減 少、 手 指
振 戦、 発 汗
増加等の甲
状腺中毒症
所見
1.遊離 T4、遊離 T3
のいずれか一方
または両方高値
①バセドウ病
a)の1つ以上に加えて、
b)の 4 つを有するもの
1.コレステロール低値、アルカリフォスターゼ
高値を示すことが多い。
2.TSH 低値(0.1 μ
U/mℓ以下)
②確からしいバセドウ病
a)
の1つ以上に加えて、
b)
の 1、2、3 を有するもの
2.び ま ん 性 甲
状腺腫大
3.抗 TSH 受容体抗
体(TRAb, TBII)
陽 性、ま た は 刺
激 抗 体(TSAb)
陽性
3.眼 球 突 出 ま
たは特有の
眼症状
③バセドウ病の疑い
a)の1つ以上に加えて、
b)の 1 と 2 を有し、遊
離 T4、 遊 離 T3 高 値 が 3
ヶ月以上続くもの
4.放射線ヨード(ま
たはテクネシウ
ム)甲状腺摂取
率 高 値、 シ ン チ
グラフィでびま
ん性
原発性甲
状腺機能
低下症
無気力、易疲 労
感、眼 瞼 浮 腫、
寒がり、体重 増
加、動 作 緩 慢、
嗜眠、記憶力 低
下、便秘、嗄声等
いずれかの症状
遊離 T4 低値および
TSH 高値
2.遊離 T4 正常で遊離 T3 のみが高値の場合が稀
にある。
3.眼 症 状 が あ り TRAb ま た は TSAb 陽 性 で
あるが、遊 離 T4 および TSH が 正 常 の 例は
euthyroid Graves' disease または euthyroid
ophthalmopathy といわれる。
4.高齢者の場合、臨床症状が乏しく、甲状腺腫
が明らかでないことが多いので注意をする。
5.小児では学力低下、身長促進、落ち着きの無
さ等を認める。
6.遊離 T3(pg/mℓ)
/ 遊離 T4(ng/㎗)比は無
痛性甲状腺炎の除外に参考となる。
原発性甲状腺機能低下症
a)およびb)を有する
もの
1.慢性甲状腺炎(橋本病)が原因の場合、抗マ
イクロゾーム(または TPO)抗体または抗
サイログロブリン抗体陽性となる。
2.阻害型抗 TSH 受容体抗体により本症が発生
することがある。
3.コレステロール高値、クレアチンフォスフォ
キナーゼ高値を示すことが多い。
4.出産後やヨード摂取過多などの場合は一過性
甲状腺機能低下症の可能性が高い。
中枢性甲
状腺機能
低下症
3
無気力、易疲 労
感、
眼瞼浮腫、寒
がり、
体重増加、
動作緩慢、嗜眠、
記憶力低下、便
秘、嗄声等い ず
れかの症状
遊離 T4 低値で TSH
が低値∼正常
中枢性甲状腺機能低下症
a)およびb)を有するも
の
1.視 床 下 部 性 甲 状 腺 機 能 低 下 症 の 一 部 で は
TSH 値が 10 μ U/mℓ位まで逆に高値を示す
ことがある。
〈除外規定〉
甲 状 腺 中 毒 症 の回 復 期、
重症疾患合併例、TSH を
低下させる薬剤の服用例
を除く。
2.中枢性甲状腺機能低下症の診断では下垂体ホ
ルモン分泌刺激試験が必要なので、専門医へ
の紹介が望ましい。
a)臨床所見
b)検査所見
診断
付記
無痛性甲
状腺炎
1.甲 状 腺 痛 を
伴わない甲
状腺中毒症
2.甲 状 腺 中 毒
症の自然改
善( 通 常 3
ヶ月以内)
1.遊離 T4 高値
2.TSH 低 値(0.1
μ U/mℓ以下)
3.抗 TSH 受 容 体
抗体陰性
4.放射性ヨード(ま
たはテクネシウ
ム)甲状腺摂取
率低値
無痛性甲状腺炎
1.無痛性甲状腺炎
a)およびb)の全てを
有するもの
2.無痛性甲状腺炎の疑い
a)の全てとb)の1∼
3 を有するもの
〈除外規定〉
甲状腺ホルモンの過剰摂
取例を除く。
1.慢性甲状腺炎(橋本病)や寛解バセドウ病の
経過中発症するものである。
2.出産後数ヶ月でしばしば発症する。
3.甲状腺中毒症状は軽度の場合が多い。
4.病初期の甲状腺中毒症が見逃され、その後一
過性の甲状腺機能低下症で気付かれることが
ある。
5.抗 TSH 受容体抗体陽性例が稀にある。
慢性甲状
腺炎(橋
本病)
びまん性甲状腺
腫大
但しバセドウ病
など他の原因が
認められないも
の
1.抗甲状腺マイク
ロ ゾ ー ム( ま た
は TPO)抗体陽
性
2.抗サイログロブ
リン抗体陽性
3.細胞診でリンパ
球浸潤を認める
慢性甲状腺炎(橋本病)
a)およびb)の1つ以
上を有するもの
1.他の原因が認められない原発性甲状腺機能低
下症は慢性甲状腺炎(橋本病)の疑いとする。
2.甲状腺機能異常も甲状腺腫大も認めないが抗
マイクロゾーム抗体およびまたは抗サイログ
ロブリン抗体陽性の場合は慢性甲状腺炎(橋
本病)の疑いとする。
3.自己抗体陽性の甲状腺腫瘍は慢性甲状腺炎
(橋
本病)の疑いと腫瘍の合併と考える。
4.甲状腺超音波検査で内部エコー低下や不均一
を認めるものは慢性甲状腺炎(橋本病)の可
能性が強い。
亜急性甲
状 腺 炎
(急性期)
有痛性甲状腺腫
1.CRP または赤沈
高値
2.遊 離 T4 高 値、
TSH 低 値(0.1
μ U/㎖以下)
3.甲状腺超音波検
査で疼痛部に一
致した低エコー
域
1.亜急性甲状腺炎
a)およびb)の全てを
有するもの
2.亜急性甲状腺炎の疑
い
a)とb)の 1 および 2
〈除外規定〉
橋本病の急性増悪、嚢胞
への出血、急性化膿性甲
状腺炎、未分化癌
1.上気道感染症状の前駆症状をしばしば伴い、
高熱をみることも稀でない。
2.甲状腺の疼痛はしばしば反対側にも移動する。
3.抗甲状腺自己抗体は原則的に陰性であるが経
過中弱陽性を示すことが有る。
4.細胞診で多核巨細胞を認めるが、腫瘍細胞や
橋本病に特異的な所見を認めない。
5.急性期は放射線ヨード(またはテクネシウム)
甲状腺摂取率の低下を認める。
■ TSH 値を中心にした検査値の一般的な解釈について
TSH
高 値
低 値
甲状腺機能
低 下
亢 進
FT4
FT3
正常
低下
軽度の甲状腺機能低下症(潜在性甲状腺機能低下症)
正常
中等度の甲状腺機能低下症
低下
重症の甲状腺機能低下症
正常
正常
甲状腺機能が正常なバセドウ病,潜在性甲状腺機能亢進症?
甲状腺機能亢進状態回復過程:甲状腺が回復しても下垂体の TSH 分泌の回復が遅れ
ている。
甲状腺機能亢進の初期:TSH が抑制され次に FT3、FT4 が上昇
甲状腺機能低下症で甲状腺ホルモンの過剰投与
高値
高値
甲状腺中毒症 低下
甲状腺機能を最も敏感に反映するのが TSH であるとされています。また血液中の TSH 濃度は変わり身が早いが回復が遅いとい
う特徴があります。
4
35
内分泌疾患
■視床下部・下垂体・性腺系機能障害
1.性腺機能低下症
下垂体性:各区腫下垂体腺腫、下垂体炎など
a)原発性性腺機能障害
高プロラクチン血症
両側無睾丸(卵巣)症
Turner 症候群
プロラクチン産生腫、胚芽腫、咽頭頭蓋腫、原発
性甲状腺機能低下症、薬剤性など
Klinefelter 症候群
2.思春期早発症
Sertoli-cell-only syndrome など
真性:特発腫、脳腫瘍、非腫瘍腫など
b)続発性性腺機能障害
仮性:卵巣嚢腫、先天性副腎皮質過形成、睾丸腫瘍、
副腎腫瘍など
単独ゴナドトロピン欠損症
3.多嚢胞性卵巣症候群
多種ホルモン欠損症
視床下部性:胚芽腫、頭蓋咽頭腫など
■各種の視床下部・下垂体・性腺系の障害におけるゴナドトロピンと GnRH に対する反応
基礎値 LH
基礎値 FSH
GnRH LH
GnRH FSH
下垂体障害 N or ↓
N or ↓
N→O
N→O
視床下部障害
N or ↓
N or ↓
N or ↓*
N or ↓
性早熟性(真性)
N
N
N
N
男性
原発性性腺機能障害
↑
↑
↑
↑
Sertoli-cell-only syndrome
N
↑
N
↑
Klinefelter 症候群
↑
↑
↑
↑
睾丸女性化
↑
↑
↑
↑
女性
閉経期
↑
↑
↑
↑
原発性性腺機能障害
↑
↑
↑
↑
神経性食欲不振症
N
N
N or ↓
N or ↑
高プロラクチン血症
N
N
N
N or ↑
多嚢胞性卵巣症候群
N or ↑
N
N or ↑
N
エストロゲンの服用
N
N
↑
↑
N=正常 *=繰り返し投与により正常化
■プロラクチン分泌異常の主要な病因
高プロラクチン血症
8.機能性高プロラクチン血症
1.機能性下垂体腺腫(プロラクチノーマ、先端肥大症)
妊娠、分娩後(Chiari-Frommel 症候群)
、分娩と無
関係(Argon-del Castillo 症候群)
2.視床下部下垂体茎障害
3.異所性プロラクチン産生腫瘍(まれに気管支癌、腎癌
など)
9.慢性腎不全、血液透析
4.胸壁ならびに神経路の刺激性障害
1.非機能性下垂体腺腫
5.原発性甲状腺機能低下症 2.Sheehan 症候群 6.多発性卵巣嚢腫症候群
3.Pit 1欠損症(PRL・TSH・GH 複合欠損症)
低プロラクチン血症
7.薬剤(ドーパミン拮抗薬、抗圧剤、H2 遮断剤、経口
避妊薬(エストロゲン製剤))
5
36
内分泌疾患
■血漿浸透圧の恒常性維持機構
■主要な多尿の原因
水過剰摂取
ADH ↓
心因性多尿症
脱水
輸液過剰
ADH 分泌欠乏症
増大
増大
上昇
増大
飲水量
前視床下
部渇中枢
への刺激
血漿浸透圧
下垂体後
葉からの
ADH 分泌
減少
減少
低下
減少
ADH ↓
尿崩症
増大
ADH 不応症
腎におけ
る水再吸
収
ADH ↑
先天性腎性尿崩症
慢性腎盂腎炎
高カルシウム血症
減少
低カリウム血症
シェーグレン症候群
急性尿細管壊死利尿期リチウム剤投与
demeclocycline 投与
水負荷
溶質利尿
ADH ↑
糖尿病
mannitol、尿素、利尿剤投与
■ Ca 代謝異常症の鑑別診断
低 Ca 血症
高 Ca 血症
血清リン
問診
ビタミンD中毒
尿中 Ca 排泄
ビタミンA中毒など
著明低値
ビタミンD欠乏症
PTH
高値
高値
家族性低 Ca
低値
PTH
尿性高 Ca 血症
腎機能
高値
低値
原発性副甲状腺
正常
PTHrp
偽性副甲状腺
機能亢進症
Humoral Hypercalcemia
低下
腎不全
機能低下症
6
37
正常
低値
1,25(OH)2VD
低マグネシウム血症
of Malignancy
高値
Hungry bone 症候群など
血清 Mg
著明低下
高値
ビタミンD依存症
低値
1,25(OH)2VD 産生肉芽腫
Local Osteolytic Hypercalsemia
1,25(OH)
2VD 産生腫瘍
甲状腺機能亢進症など
特発性副甲状腺機能低下
術後性副甲状腺機能低下
内分泌疾患
■アルドステロンの異常値を見た場合の鑑別診断
血漿アルドステロン
高 値
低 値
血漿レニン活性
血漿レニン活性
高 値
低 値
*レニン産生腫瘍
高 値
*原発性アルドステロン症
低 値
Aldosterone synthase deficiency
* Cushing 症候群
*褐色性細胞腫
アルドステロン産生性腺腫
Addison 病
* DOC 産生腫瘍
*腎血管性高血圧
特発性アルドステロン症
* Liddle 症候群
*悪性高血圧
グリココルチコイド反応性
*偽性アルドステロン症
浮腫・体液貯留性変化 アルドステロン症
* 11 β -OHase deficiency
慢性腎不全
ネフローゼ
* 17 α -OHase deficiency
* 11 β -HSD deficiency
肝硬変
(*)異所性 ACTH 産生腫瘍
Batter 症候群
低レニン低アルドステロン症
偽性 Batter 症候群
アルドステロン不応症 *高血圧を示す疾患、
(*)異所性 ACTH 産生腫瘍は良性の比較的発育の緩徐な腫瘍の場合に Cushing 病類似の高血圧
■尿中・血漿カテコールアミン異常値を示す疾患
高 値
■カテコールアミン値に干渉する薬剤
増加
低 値
褐色細胞腫
血管拡張剤(亜硝酸剤、ヒドララジン)
特発性起立性低血圧症
神経芽細胞腫
α - ブロッカー(プラゾシン)
(有意に低値のこともありまた低
本態性高血圧
減少
クロニジン
値傾向のみのこともある)
α - メチルパラタイロシン
(異常高値のこともあるが正常
プロモクリプチン
デキサメタゾン
範囲内のことも多い)
■褐色細胞腫を疑わせる症状と疑診をおくべき症例
頻度の高い症状
高血圧
動悸
発汗
頭痛
不安状態
悪心、嘔吐
腹痛
ふるえ
四肢しびれ感
倦怠感
体重減少
視力障害
7
疑いをおくべき症例
1.高血圧患者で頭痛、動悸、発汗過多などを訴える症例
2.現在血圧正常でも高血圧発作の見られた症例や動揺性高血圧の症例
3.眼底が腎機能の異常に比して高度の変化を示している高血圧症
4.自律神経失調症状などいわゆる不定愁訴がみられ、その診断に疑問がある症例
5.糖尿病患者で左記のような症状が見られる症例
6.甲状腺癌を手術したものおよびその家族
(甲状腺癌と褐色細胞腫が合併することがあり、Sipple 症候群と呼ばれています。家族性に見られる
ことも多い。
)
7.神経繊維腫症(neurofibromatosis)の見られる症例
(しばしば、褐色細胞腫を合併することあり。
)
内分泌疾患
■甲状腺検査項目
検査項目
測定意義
・下垂体前葉から分泌され、甲状腺ホルモンの分泌を刺激する糖蛋白であり、甲状腺機能の異常には最も信頼
度の高い検査である。
TSH
・第 1 世代で測定感度以下となる病態のうち、低 T3 症候群は全例測定可能。
(甲状腺刺激ホ
・破壊性甲状腺炎の多くが測定可能。
ルモン)
・未治療バセドウ病は多くが感度以下を示す。
・破壊性甲状腺炎の経過観察、バセドウ病の治療経過の判断にも有効。
T4
(サイロキシン) ・甲状腺で合成されるホルモンの一種で T4 はそのほとんどが甲状腺結合蛋白(TBG)と結合しており、T4 の
FT4
うち僅か 0.02 ∼ 3%が遊離型(FT4)で存在する。
( 遊 離 サ イ ロ キ ・FT4 は、全身の標的細胞に作用する真のホルモンレベルを示し、TBG の影響を受けないとされている。
シン)
・T3 もそのほとんどが TBG と結合しており、T3 のうち 0.3%∼ 4%程度が遊離型(FT3)で存在する。甲状腺
T3
ホルモンの一種で、T4 が 100%甲状腺で作られるのに対して、T3 は 80%が末梢組織で脱ヨード化による T4
(トリヨードサ
から T3 への変換で合成される。
イロニン)
・FT4 と同様、遊離型の FT3 のみが生物活性をもち、TBG の活性を受けないとされている。
FT3
・甲状腺からの分泌比を伺い知るというメリットが残り、バセドウ病の甲状腺機能充進の指標や治療経過の評
(遊離トリヨー
価に有用性が認められる。
ドサイロニン)
・非甲状腺疾患に際して見られる低 T3 症候群の指標ともなる。
・T4 は血中においてそのほとんどが TBG と結合して存在する。TBG は、最も T4 との結合親和性が高く、
TBG の増減が T4 測定値に大きく影響する。
TBG
・TBG は妊娠時、エストロゲン投与時、急性肝障害時に増加するが、稀には遣伝性に TBG 増多を示す家系も
(サイロキシン
ある。
結合グロブリ
・一方、ネフローゼ症候群、蛋白同化ホルモン(男性ホルモン)
、大量のステロイド投与時、肝硬変などでは
ン)
TBG は減少する。
・先天的に TBG 欠損を示す例も見られる。
TRAb
・TSH レセプターに対する抗体で、TSH とレセプターの結合を阻害する。また、甲状腺刺激作用があるため
(TSH レ セ プ タ バセドウ病の充進状態をもたらす。
ー抗体)
・バセドウ病の治療経過、ことに寛解の判定に有用である。
TSAb
(TSH 刺 激 性 レ
セプター抗体)
・ ブタ甲状腺細胞を用いて、患者 IgG による cAMP 産生増加を見ることによって TSAb が感度よく測定でき
る。
・感度が良好でバセドウ病未治療例でほぼ 100%検出される。
・バセドウ病眼症の良い指標である。
・出産後のものも含めて、亢進症発症の予測に有効である(機能正常時から検出される)
。
TSBAb
・TSAb 測定に用いるブタの甲状腺細胞に TSH と同時に患者 IgG を入れると TSH によるレセプター刺激が
(TSH レ セ プ タ
ブロックされ、cAMP の増加が抑制されることによって TSBAb が測定される。
ー 抗 体〔 阻 害
・TSBAb 強陽性の母親から生まれる新生児には、一過性甲状腺機能低下症が起こる可能性がある。
型〕
)
TgAb
・甲状腺構成蛋白であるサイログロブリンに対する抗体で、橋本病の診断と治療経過観察に有用である。橋本
(抗サイログロ
病では 80 ∼ 95%、バセドウ病では 60 ∼ 70%で検出される。
ブリン抗体)
サイロイドテスト ・甲状腺可溶性成分(Tg が主)に対する受身凝集反応による抗体測定である。
( 抗 サ イ ロ グ ロ ・本法は感度が低く、しかも本法で陽性の血清はほとんど全てがマイクロゾームで陽性になる(用いられる抗
ブリン抗体)
原物質に Tg が混在しており、Anti-Tg も検出されうる)ことから、この測定の意義は乏しいと思われる。
マイクロゾーム
テスト
・甲状腺の細胞質成分(主としてマイクロゾーム)を認識する抗体。
( 抗 マ イ ク ロ ゾ ・TPOAb 以外に補体結合性を示す抗体が含まれており、これは組織障害に直接つながるものである。
ーム抗体)
・甲状腺構成成分の細胞質成分に対する抗体。
TPO 抗体
(抗甲状腺ペルオ ・橋本病やバセドウ病などの自己免疫性甲状腺疾患には極めて高率かつ高抗体価に検出され、補助診断的な意
キシダーゼ抗体) 義がある(バセドウ病で約 90%、橋本病ではそれ以上)。
・甲状腺構成蛋白の主たるもので、濾胞中のコロイドの主成分である。
・甲状腺腫瘍の場合は、正常部の破壊に加えて分化したものでは腫瘍から Tg が産生され血中濃度が上がる。
Tg
・パセドウ病やホルモン合成障害(Tg 形成不全は除く)、さらに可逆性機能低下症などでは過剰刺激で血中
(サイログロブ
Tg 濃度が上昇する。
リン)
・亜急性甲状腺炎や無痛性甲状腺炎(多くの場合自己抗体があるので、Tg は正しく測定できない)などで甲
状腺の破壊が起これば、Tg が漏出し高値を示す。
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