特 許 東京都知的財産総合センター活用事例 株式会社 根本杏林堂 C 著作権 知的財産部を立ち上げるなど 経験を糧にした進化する知財経営 商 標 意 匠 MRI用造影剤注入装置「SONIC S H OT 7」。非 磁 性 体 の 超音 波 モーターを採用し、撮像タイミング を正確に捉え、より高画質な画像 を得ることができる。 平成25年度の東京都功労者表彰では、 技術振興功労において根本茂社長が表彰された。 1939年(昭和14年)創業の医療機器メーカー。 MRI装置、CT装置向けの造影剤自動注入装置などにおいて C T 用 造 影 剤 注 入 装 置「D U A L SHOT GX7」。「もっと簡単に、 もっと厳密な造影画像が得られる 造影剤注入装置がほしい」という 医療現場の声から生まれた。 卓越した技術を持ち、圧倒的なシェアを誇る。 「お客様の声は私たちの宝」を会社のモットーとし、 さらなる医療の進化に貢献するため、海外にも積極的に進出。 より良い製品づくりとソリューションの開発に努めている。 主な権利 2009年:特 許 2012年:特 許 2012年:特 許 2013年:特 許 2013年:特 許 第4397140号 第4907738号 第4955744号 第5172866号 第5342109号 会社概要 所在地:東京都文京区本郷 2-27-20 本郷センタービル 3F 電 話:03-3818-3541 U R L :http://www.nemoto-do.co.jp 業 種 : 医療機器の研究・企画開発・設計・製造・販売など 創 立:1939年(昭和14年) 資本金:1,000万円 世界初のアンギオ(血管撮影)用 デュアルタイプ(2筒式)の造影 剤 注 入装置として開 発され 、医 療ニーズに応えている「PRESS DUO」。 根本杏林堂の製品は「高いデザイン 性を持ち、安心して使用でき、安定し て正確に動く」を基本コンセプトに している。 根本杏林堂エントランス・受付 医療現場のニーズに応え 疾病を早期に発見する技術 でタイミングよく注入できる造影剤注入 装置の開発。それが、正確な画像の撮影 アメリカでの経験により 特許取得の大切さを痛感 す。そうした見方、ジャッジのしかたを すし、経営層と連携しながら会社全体の 論理的に教わってすっきりしましたし、 知財の質を高めることができると思いま 知財センターの論理的な 観点が大きな安心材料に 一人で抱え込まずに気持ちがラクになっ す」と田野氏。今後もどんどん特許を出 たことも大きかったですね」と田野氏。 願するという方向に加えて、医療と会社 術指導や部品供給など、国際展開にも取 知財に関する集中した合宿を行ったり、 と事業の発展に役立つ知財の選択と集中 り組む中で、アメリカにおける提携先の しかしその後もアクシデントは続く。 発明のランクを評価する指標や職務発明 を行い、よりスマートな知財管理をスピー 企業に特許上の問題が発生した。田野氏 2000 年代後半、今度は信頼していたビジ 取扱規程、 報奨金の制度なども整備した。 ディーに推進したいと言う。 ピンチをチャンスへと変えたのである。 「新たな技術開発では、企画の早い段 と、多くの疾病の早期発見につながる。 1939 年の創業当初は、医療器具の販売 を営んでいた株式会社根本杏林堂。その 後、もっと医療に貢献したいという想い 90 年代後半から、海外メーカーへの技 画期的な造影剤の注入装置を 開発して特許を取得 から、手術台や手術器具の製作をスター ものの一つだという考え方が必要ですね」 トさせる。そして、日本で初めて脳血管 しかし、大きな問題があった。MRI 装 はこう語る。 「アメリカでは特許への意識 ネスパートナーから、CT 用の造影剤注入 撮影を行った医師とともに開発したのが、 置は強い磁気を発するため、注入器には が非常に高く、 商売や製品の技術よりも、 装置が、他社の特許を侵害しているので 脳血管撮影用注入器。これが会社の大き 磁力で回転する通常のモーターを使うこ まず特許というところがあります。直接 はないかと詰め寄られたのだ。会社を揺 な発展につながった。 とができない。そこで同社は、非磁性体 の問題ではなかったものの、知財の大切 るがす一大事である。 同社のビジネスは、病院のニーズに深 である超音波モーターを利用することに さに強く気づかされました」 そこで、特許への取り組みはどうある 階から特許のチェックを行うようにして 社内体制を進化させながら スマートな知財管理を推進 います」と語るのは宇田川氏。知的財産 部の体制の見直しもはかり、さらに次の 一歩へと進んでいる。会社全体の情報共 く入り込むところから始まる。医師と緊 した。そして制御の難しさを乗り越え、 この出来事を教訓に、2000 年代前半に べきかを、改めて考え直した。特許の運 そして、複数名による知的財産部も立 密なコミュニケーションをはかりながら、 さまざまな工夫を施し、高品質な製品の は、社内に特許専任の担当者を置く。そ 用管理や他社分析の必要性を痛切に感じ、 ち上げた。営業出身の田野氏は本社勤務 アも発掘しようと、全社一丸となって取 どんなことに悩み、何を求めているかを 量産化へとこぎ着けた。1990 年代後半の して、今までは当たり前だと考えていた 特許事務所に相談するだけではなく、第 であるが、川口の技術センターに勤務し り組みを続けている。 常に探るようにしている。 ことである。その後、90 年代前半に出願 技術でも、どんどん特許を出願する方針 三者の意見を求めようとした。そこで足 ている技術畑の宇田川氏も主任として参 新たな病院側のニーズは、人間ドック した特許を取得。医療貢献につながり、 へとシフトする。 「向こうの企業は、こち を運んだのが、知財センターである。 画した。 「ビジネスと技術の両輪があって でおなじみの MRI 検査の現場にあった。 将来性のある重要なアイデアに違いない らが昔から普通にやっていたことでも特 今までの事の顛末を話したところ、経 こその知財ですね。お互いに補完できま 磁場と電波を使って体の断面を画像化す という根本社長の先見からであった。 「社 許を取得しているんです。その対抗手段 験豊富なアドバイザーから、いろいろな る検査では、正確な画像撮影による診断 長は元々、知財の活用に力を入れるべき も必要だと考えました。それに、特許と 知財戦略支援があると聞かされる。それ のため、検査前に血管に注入する造影剤 だという考え方を持っていました。90 年 いうものは『障壁』なんだと気づきました から社内体制の強化や、特許の戦略的管 が大きな役割を果たす。ところが、従来 代はほとんど国内でのビジネスでしたし、 からね。それによって、いきなりビジネ 理に努めるようになった。 「今まで見てい この造影剤は手押しで注入されてきた。 国内特許が多かったですね」と、知的財 スができなくなったりする。ですから、 なかった特許を見るようになると、今度 受診者に合わせて、適量を適した速度 産部 課長の田野氏は語る。 薬事法や商習慣など、必ずクリアすべき は細かい点までどんどん気になってきま 01 レジャーホテル No.104 知財 センター から 有によって埋もれた特許性のあるアイデ 「知財マインド」の高さがうかがえる管理体制 知的財産部を設けるなど、知財管理体制を整えていることは賢明であり、 たいへん「知財マインド」の高い会社であると言えます。知財検定にも取 り組み、海外のこともよく勉強されています。アメリカの知財における 判例の研究、クレームチャートの解析、社内体制の整備などアドバイス したことがよく生かされています。 担当:秋葉原 吉田アドバイザー 取材:2016 年 102 月 契 約
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