データセンターの活用

データセンターの活用
(社)日本技術士会茨城県技術士会
はじめに
前回は、情報システムのアウトソースについて記載し、その中でも特に効果の高いASP(アプ
リケーション・サービス・プロバイダ)についてのメリットを紹介した。
しかし現実的には、ASPは標準的なアプリケーションを利用することになるので、自社の事
情を合わせきれない場合が多く、利用できないケースもある。
そのような場合でも、システムの基盤環境(ハード、OS、ネットワーク)をそっくり預けて管
理、運用、保守業務をすべて請け負ってもらうやり方はコスト削減の有効な手段になる。その際
にシステム環境を預ける場所をデータセンターと呼ぶ。
今回は、主にこのデータセンターについての実態と活用の仕方を紹介する。
1.データセンターの利用目的
ユーザー企業はデータセンターに設置されたサーバーなどで動作する業務システムやデータベ
ースに、ネットワークを経由してアクセスし、業務活動を行なう。
従って運用や保守に必要な人件費がかからない、システムそのものの管理コストがかからない
といったメリットがある。さらに、コスト面だけでなく、セキュリティレベルやシステム、デー
タの安全性を確保するということも、大きな利用目的になる。(図1参照)
図1.データセンター
2.データセンターのサービス実態
データセンターの最大の特徴は、その堅牢な設備やセキュリティによるシステムの安全性と、
最新機器(コンピュータ、ネットワーク、ディスク、OS)によるパフォーマンスの高さにある。
データセンターは高度な耐震構造の建物だけでなく、災害時のバックアップ体制も万全になっ
ている。災害時に停電が起きたときでも、3週間〜1ヶ月は自家発電による運用が可能となって
いる。またセンター内に入館する際にも、セキュリティが厳しく、荷物はもちろんのこと、カメ
ラ付携帯も持ち込むことができない。たとえ持ち込む許可をとっても、X線装置で荷物の中身を
チェックされることになる。
また機器(ハードウエア)の運用監視も万全で、機器がストップしないように、ほとんどが2重
化されている。
もしトラブルが発生しても、最短時間で復旧が図られるような体制になっている。
データセンターが外部に提供するサービスを表1に示す。
表1.データセンターのサービス
サービス
内
容
バ ウ ジ ン グ ユーザー側がコンピュータ類を持ち込んで、設備やネットワークを借り
サービス
る。
顧客コンピュータ類の占有する広さによって価格がきまる。他にセキュリ
ティ監視、運用監視、バックアップ等のサービスは別途料金になる。
ホ ス テ イ ン センター側の情報機器すべてを借りる。借りるハードウエアの基本性能
グサービス
によって価格が決まる。他のサービスは、ハウジングと同様に別料金に
なる。
ス ト レ ー ジ ディスクの部分的なエリアを借りる。借りる容量によって価格が決まる。
サービス
ストレージ監視、バックアップ等のサービスは別料金になる。
3.データセンター利用状況
データセンターを利用すれば、すべてが安心で何も問題ないように思われるかもしれないが、
中小企業ではほとんど利用されていない。
その理由は、高価格にある。もともとデータセンターの歴史は、銀行や証券会社の情報システ
ム部門が独立し、アウトソースビジネスをはじめたことからスタートした。そのため大規模なコ
ンピュータ機器を想定して設備が準備されており、かなり高機能な設備が整っている。従って中
小企業にとっては過剰設備になる部分も多い。
しかし、ここにきて過剰設備を抑えて、中小企業が利用しやすいデータセンターが増えてきた。
現在、日本で70社ぐらいのデータセンターがあるが、そのうち50社ぐらいは中小企業向けに
利用できる価格帯をメニュー化している。具体的な価格例を表2に示す。
表2.データセンター価格例
サービス
初期費用(円)
月額(円)
ラック貸し
100,000
50,000〜100,000
レンタルサーバー
100,000
30,000〜 40,000
サーバー構築
20,000
なし
メーリングリストサーバー構築
20,000
なし
なし
10,000
電気料金
4.アウトソースサービスの契約
中小企業がアウトソースを利用する際に、まず何を決めて業者を選択すればよいのだろうか。
重要なのはSLA(サービス・レベル・アグリーメント:)という契約を選択することである。さら
にSLAの項目(サービスの質)と価格を比較して業者の選定を行う必要がある。SLAの詳細に
ついてはITSSP(経済産業省推進事業)のホームページ(http://www.itssp.gr.jp/)に「ASPマニ
ュアル」がアップされている。これを参考にして、是非有効なアウトソースによるコスト削減を
実施してほしい。
(社)日本技術士会茨城県技術士会
情報技術支援プロジェクト 野村 典文
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問合せメールアドレス [email protected]