研 究報 l : f : : : . 1 = 1 平成 2 1年度社団法人中央味噌研究所研究助成による研究報告 中味研報告 第32号(2011) 亜鉛欠之予防における味噌の効能に関する 基盤研究 神戸大朋 Studyofthee f f e c t sofMiso(Japanesesoybeanp a s t e )onprotection againstz i n cd e f i c i e n c y TaihoKAMBE D i v i s i o no fI n t e g r a t e dL i f eS c i e n c e ,G r a d u a t eS c h o o lo fs i o s t u d i e s ,K yotoU n i v e r s i t y K i t a s h i r a k a w a ‑ O i w a k e ‑ c h o ,S akyo‑ku,Kyoto6 0 6 ‑ 8 5 0 2 ,J apan 亜鉛は,味覚 ・免疫機能 ・創傷治癒力等に重要 Z I P 4モノクロ ー ナル抗体を組み合わせること で , Z I P 4の発現を増加させる食品因子を簡便に な役割を果たすため,その欠乏はこれら生体機能 nv i t r o スクリーニング系となって 探索できる i 図 1) 。特に,我が国で に重篤な影響を与える ) I( いる 。本研究は,このスクリーニング系を用いて は高齢者の亜鉛不足が問題となりつつあるため h Z I P 4の発現を促進する味噌(味噌成分)を同定 健全な食生活により亜鉛欠乏を予防することは極 し,亜鉛欠乏の予防に役立てることを目的に実施 めて重要となる 。亜鉛は日常の食事から摂取され した。味噌は日本人の食生活に欠かすことのでき るが,その腸管での吸収効率は約 30%と低く,亜 ない食物であるため,味噌の有する効能を十二分 鉛欠乏を予防するには,腸管での亜鉛吸収効率を に活用することは亜鉛欠乏の予防に非常に有効で 高めることが肝要となる。そのため,亜鉛の吸収 あると考えられる 。 緒言 を促進する食品因子が同定できれば,亜鉛欠乏の 予防に大きく貢献することとなる。亜鉛の吸収 亙鉛欠乏症 は,小腸上皮細胞に発現する亜鉛トランスポータ 成長遅延 I P 4を介して行われるが, ー ・Z 免疫不全 P 臭覚異常 Z I P 4は先天性亜 皮膚疾患 鉛欠乏症の原因ともなる亜鉛吸収における必須分 図 2) 。 そのため, 子である 3・4) ( Z I P 4の発現を促 進する食品因子は,亜鉛欠乏の予防に特に効果的 シグナル因子 酵素活性補因子 であると考えられる 。我々は,食品中に含まれる I P 4の発現を促 亜鉛吸収促進活性を持つ因子は Z 進する活性を有するとの仮説に従い, Z I P 4発現 促進因子を探索に適したスクリーニング系を構築 図 1.生体内での E鉛の生理機能 した。本スクリーニング系は,腸管上皮細胞に匹 亜鉛は,様々なタンバク質の構造因子や活性補因子, シグナル因子として重要な役割を果たす。 I P 4を発現す 敵する鋭敏な感度で亜鉛依存的に Z I P 4の量を感知する抗 る培養細胞株と,鋭敏に Z 京都大学大学院生命科学研究科生体情報応答学分野 干6 0 6 ‑ 8 5 0 2京都市左京区北白川追分町 TEL:( 0 7 5 )7 5 3 ‑ 6 2 7 3 FAX:( 0 7 5 )7 5 3 ‑ 6 2 7 4 E ‑ m a i l :k a m b e l @ k a i s . k y o t o ‑ u . a c . j p 34‑ 中味研報告 第32号(2011) 方法 ンパク質サンプノレ 2μgを使用し, 100μlの 基 質 Z I P 4発 現 促 進 活 性 を 持 つ 味 噌 サ ン プ ル の ス ク リ 溶液 (2mg/mlp ‑ n i t r o p h e n y lphosphatei n1M ーニング diethanolamineb u f f e r,pH9 . 8c o n t a i n i n gO.5m 中央味噌研究所よりご提供いただいた約1 3 0種 0 M MgCh) を 加 え た 後 , 室 温 に 放 置 し , 遊 離 し の味噌をリン酸緩衝液に懸濁した後,加熱 ( 1 0 0C, てくる p ‑ n i t r o p h e n o lの量 を 吸 光 計 に て 測 定 し 5分) ・非加熱処理を施し,各 2種類のサンプル た ( 波 長 =405nm)。 エビ ALP ( Roche) を 用 い として調製した。 そ れ ら を 終 濃 度 0 .1%でスクリ て検量線を作成し, ALP活性を求めた。 ーニング用細胞の培養液に添加して 24~36 時間培 養した後,細胞から全細胞タンバク質を回収して タンパク質を定量し ,各 20μg を immunoblot解 │頂端膜(管腔側)1 析に用いた。 1次 抗 体 に は 抗 Z IP4モノクローナ ル抗体を 5 0 0倍希釈したものを使用し, 2次 抗 体 には HRP標 識 抗 マ ウ ス IgG抗 体 を 3 0 0 0倍 に 希 釈して使用した。なお,本スクリーニングで使用 する抗 Z IP4モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 は , マ ウ ス ZIP4のアミノ末端領域(シグナル配列を除く N │ 側壁基底膜(血流側 ) 1 末 か ら 第 一 膜 貫 通 領 域 の 直 前 ま で , 28~328 a E鉛 十 分 時 a) を抗原として作成し,マウス腹水より調製し たものである 。 改良型スクリーニング系の構築 現在用いているスクリーニング系は, Z IP4発 現 E鉛欠乏時 図2 . 腸管上皮における Z I P 4の発現制御機構 I P 4の発現は ,亜 小腸上皮細胞の頂端膜における Z 鉛濃度によって厳密に制御される。面白いことに小腸 上皮細胞の側壁基底膜には,亜鉛によって Z I P 4とは 全く反対の制御を受ける亜鉛トラ ンスポ ーター ・Z I P 5 が発現する 。 促進活性のみを反映したものである 。その ため, それに加えて細胞内亜鉛量の変化を同時に追跡で 結果 きるよう改良することを試みた。 具体的には,現 Z I P 4発 現 促 進 活 性 を 持 つ 味 噌 サ ン プ ル の ス ク リ 在スクリーニングに使用している培養細胞株に, ーニング 亜鉛濃度に応じて発現が上昇するメタロチオネイ 加熱 ( 1 0 0C, 5分)・非加熱処理を施した各種 ンプロモータ ーの制御によ り分泌型アルカリフォ 味噌サンプル(米味噌 9 9種,麦味噌 8種,豆味噌 スファターゼを発現する形質を導入している。本 4種,調合味噌 1 1種他〉を用いて一次スクリーニ 株の樹立により,さらに精度の高いスクリーニン ングを実施した。一次スクリーニングにおいて グを実施することが可能となる。 ZIP4発 現 促 進 活 性 を 認 め ら れ た 味 噌 サ ン プ ル に 0 ついては ,幾つかのロ ットを作成してその再現性 ラット腸管上皮細胞の E鉛応答性についての検討 を確認した。現段階では,弱い活性ながらも 6種 亜 鉛 欠 乏 食 で 飼 育 し た ラ ッ ト の 十二 指 腸 ・空 程のサンプルにおいて Z IP4発現促進活性を認め 腸(それぞれ,胃の幽門部より O .5~ 1. 5 c m, ることができた。この 6 種 の 味 噌 に 関 し て は ,サ 5 .5~6. 5 c mの部分)を回収し, ZIP4の 発 現 量 ンプル調製過程におけるロット差で活性を見落と について抗 Z IP4モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 を 用 い た している可能性も考えられるため,サンプル調整 immunoblot法を用いて検討した 。 同時に亜鉛依 法の改良などを加え,さらに詳細に解析を実施し 存性酵素として知られるアルカリフォスファター ている 。 また, ゼ(活性中心に亜鉛を必要とする)の活性を測定 非加熱処理において大きな差異は認められず,味 し,亜鉛欠乏にあることを確認した(結果省略)。 噌に含有される低分子化合物が, Z IP4発 現 促 進 アルカリフォスファターゼの活性測定には,膜タ 活性を有する可能性が考えられた。今後も抽出方 これらサンプノレにおいて,加熱 ・ 中味研報告 第32号(2011) 法なども検討し , さらに多くの味噌サンプルにつ いてスクリ ーニ ングを実施する予定である 。 ただ Z I P 4→ N.S.‑ 唱・属品圃 ・ い 現 在 ス ク リ ー ニ ン グ を 実施している未精製の i H圃置戸 寸 味噌サンプルによる Z I P 4発現促進効果は , ポジ 岩F 竺 ヨ ティブコ ン トロールとして用いている大豆イソフ ラボン粗精製画分の効果より弱~)傾向が認められ る。 そのため,現在, Z I P 4の発現上昇の検討と h‑畠 恒 国 ・ 同時に細胞内亜鉛量の変化を モニ ターできる改良 型スクリ ーニ ング系の構築を試みている(後述)。 ‑I 同省・圃園 田 図 4.味噌サンプルのスクリーニング結果 ( 一部) 4時間培養した細胞の Z I P 4も 味噌サンプルを加え 2 m m n o b l otの結果。特に誘導 発現レベルを 比較した i が認められるサンプルに関しては*印で標記した。 I P 4発現変動に関する解析 ラット腸管上皮の Z 腸管からの亜鉛吸収は,十二指腸 ・空腸で行わ れる。 Z I P 4の発現もほぼこの両組織に限局する ことが知られるが,両組織における Z I P 4発現誘 が判明した。 この結果か ら,味噌サンプル効果を 導に差異があるかどうかに関しては ,これまで全 ラ ッ 卜を用いて詳細を解析するには ,亜鉛欠乏に く知られていなかった 。味噌サンフ。 ルの効果の作 対して鋭敏に応答する空腸の方が適切であると判 用メカニズムをラットを用いて評価するための条 断された。なお,マウスにおいても,同様の解析 I P 4 件設定を行うために , この両組織における Z を行ったが,マウス腸管膜画分においては非特異 の発現誘導の差異に関して詳細に解析した。 1 4日 的に検出されるバンドが多く認められたために, 8日間にわたり亜鉛欠乏食 ・十分食 間, あるいは 2 現在までのところ適切な条件を設定するまでには で 飼 育 し た ラ ッ ト の 十 二指 腸 ・空腸を回収し , 至らなかった 。今後の亜鉛吸収促進活性の判定に Z I P 4の発現レベルを解析した結果,亜鉛吸収に は,ラットを用いた解析を実施する予定にしてい 重要と目されていた十二指腸より空腸の方が,亜 る。 鉛欠乏に対して鋭敏に Z I P 4を発現誘導すること 十二指腸 食餌E鉛 +ー +ー 考察 空腸 最近の ヒト ゲノム配列を用いた i ns i l i c o解析 +ー+ー から ,ゲノムに コー ドされているタンパク質の約 10%が亜鉛と会合するモチーフを有することが示 された 目。この事実 は,亜鉛が様々な生体機能の Z lP 4 維持に必須であることを示しており ,亜鉛の適切 な摂取が,健康の増進に極めて重要であることを 示唆している 。実際, 37 GRP78 75 ヨーロ ッバ各国が共同で実 incAgep r o j e c tC 健 康 ・老 化 施 し た 疫 学 調 査 ・Z と亜鉛との関連に関する研究)において,血清亜 鉛値が高い高齢者は健康であり,体内亜鉛量を適 図3 . 十二指腸・空腸における Z I P 4の発現の E鉛欠乏に対する応答性に関する解析 Z I P 4は,食餌由来の亜鉛が不足した場合(ー)に顕 著に誘導される 。小腸組織では, Z I P 4は全長のものと プロセシングされた半分長のものが検出されるため, 2本のバンドが検出されている 。Z I P 4とG R P 7 8はと もに i m m n ob lo tにより検出し, G R P 7 8は,それぞれ比 較対象にあるサンプルの量が等しいことを示す コント ロールとして用いている 。 切に保つことは健全社会の実現に重要であること が報告されている 九 にもかかわらず,近年,高 齢者や女性を中心に亜鉛欠乏症状を呈する患者が 増えてきており ,亜鉛を十分に摂取することが強 く望まれている。 1 9 7 0年代 に先天性の亜鉛欠乏症であることが実 Ac r o d e r m a t i t i se n t e ‑ 証され た腸性肢端皮膚炎 C ‑36‑ 中味研報告 第32号(2011) r o p a t h i c a ) の原因タンパク質は長らく不明であ 5), った九 そのため,腸管からの亜鉛吸収を担う輸送 に効果ある味噌(味噌成分)として日本人の食事 nv i t r o 担体(トランスポ ー ター)を標的にした i にフィ ー ドバックさせていきたいと考えている。 等の課題 を速やかに実施し,~鉛欠乏の 予防 亜鉛をサプリメントにより摂取することは簡単 スクリーニング系による亜鉛吸収促進因子の探索 は事実上不可能であった。このような状況の中, であるが,米国では前立腺ガンの発症頻度との相 今世紀に入りようやく腸性肢端皮膚炎の原因遺伝 関性から,長期間にわたる亜鉛サプリメントの過 子として ,亜鉛トランスポーター ・Z IP4が同 定 剰摂取の危険性を指摘する疫学調査の結果も報告 1その後,我々やその他のグループの詳細 され3 されており へ 亜鉛を効率良く吸収させる食品因 な解析の結果, Z IP 4は亜鉛欠乏時に小腸上皮細 子は ,亜鉛欠乏症の 予防のために最も安全 で有効 胞頂端膜に蓄積され亜鉛吸収に機能し,小腸での な手段である 。食生活の簡便化が進む先進諸国に 亜鉛吸収に必須の役割を果たすことが明らかとな おいては,潜在型の亜鉛欠乏患者数は今後ますま った 4.8)0 Z IP4は,体内亜鉛吸収量を コントロ ー す増加することが予想されており,人々の健康増 ルする鍵分子として機能しており,その発現を増 進のため,亜鉛吸収促進因子を同定する意義は極 加させる因子は,亜鉛吸収効率を高める因子とし めて大きい。 て機能することが予想される 。現在,味噌(成 謝辞 本研究を実施するにあたり,ご援助賜りました 分)の一次スクリーニングを実施した段階である が,すでに 6種類ほどの味噌に Z IP4の発現を促 (社)中央味噌研究所に厚く御礼申し上げます。 進する活性を認めている 。 これらの味噌の中で, 特に強い Z IP4発現促進活性を持つものは,亜鉛 引用文献 吸収促進因子として極めて有効に機能し,亜鉛欠 1 . Hambidge M. Human z i n cd e f i c i e n c y .J 0 0 0 Nutr 1 3 0:1 3 4 4 S ‑ 1 3 4 9 S,2 乏症の予防に大きく貢献することが期待される 。 今後,①抽出方法の再検討などを行い,さらに強 2 . Kogirima M, Kurasawa R, Kubori S, いZ IP4発現促進活性を有する味噌を同定する, SarukuraN,NakamoriM,OkadaS,Kamioka ②その作用メ カニズムを解明する, ③味噌に含 ま H andYamamotoS .R a t i oo flowserumz i n c れる活性因子を同定し,構造決定する,④実際に l e v e l si ne l d e r l yJapanesep e o p l el i v i n gi nt h e 生体内の亜鉛吸収に与える影響について解析を実 c e n t r a lp a r to fJ a p a n .EurJC l i nNutr 61 : 施する,⑤亜鉛取り込み活性を迅速に評価するた 0 0 7 . 3 7 5 ‑ 3 8 1,2 めの改良型スクリーニング細胞を樹立する ( 図 3.Wang, K ZhouB,KuoY M,ZemanskyJ andG i t s c h i e rJ.A n o v e lmembero faz i n c t r a n s p o r t e rf a m i l yi sd e f e c t i v ei na c r o d e r m a t i t i s e n t e r o p a t h i c a .AmJHumGenet 7 1 :6 6 ‑ 7 3 ., 紘 一 、es ← 一 一回 ゆア ル カ リ … ー 世 田l 2 0 0 2 . n dAndrewsGK .N o v e lp r o t e ol y t i c 4.KambeTa p r o c e s s i n go ft h ee c t o d o m a i no ft h ez i n c t r a n s p o r t e r ZIP4 (SLC39A4) d u r i n gz i n c 細胞内の亘掴温度が淘加する (縫養細胞練内に導入) とアルカリフ,スヲァターゼ ( ALP ) の鍵寝泊 d e f i c i e n c yi si n h i b i t e d by a c r o d e r m a t i t i s e n t e r o p a t h i c am u t a t i o n s .MolC e l lB i o l 2 9 : 0 0 9. 1 2 9 ‑ 1 3 9,2 5.A n d r e i n iC,B a n c iL,B e r t i n i1andRosato 図5 . アルカリフォスファターゼによる化学発光を指 標にして Z I P 4の発現誘導に伴う細胞内 E鉛量の 変化を素早く検出する改良型細胞のモデル図 A .Countingt h ez i n c ‑ p r o t e i n se n c o d e di nt h e humangenome.JProteomeRes 5 :1 9 6 ‑ 2 0 1, 2 0 0 6 . ‑37‑ 中味研報告 第32号(2011) 6.Haase H, M o c c h e g i a n i E and Rink L . t r a n s c r i p t i o n a l mechanisms r e c i p r o c a l l y C o r r e l a t i o nb e t w e e nz i n cs t a t u sandimmune r e g u l a t ee x p r e s s i o no ft h emouseS l c 3 9 a 4and f u n c t i o ni nt h ee l d e r l y .B i o g e r o n t o l o g y 7 ・ S l c 3 9 a 5z i n ct r a n s p o r t e r s( Z i p 4 and Z i p 5 ) . 4 2 1 ‑ 4 2 8,2 0 0 6 . 0 0 7 . B i o lChem 3 8 8:1 3 0 1 ‑ 1 3 1 2,2 .J .L e t t e r :A c r o d e r m a t i t i s 7.Moynahan E t a m p f e rMJ,WuK,C o l d i t z 9.L e i t z m a n nMF,S e n t e r o p a t h i c a :al e t h a li n h e r i t e dhumanz i n c ‑ G, A W i l l e t tWC andG i o v a n n u c c iE L .Z i n c d e f i c i e n c yd i s o r d e r .L a n c e t2 :3 9 9 ? 4 0 0,1 9 7 4 . . S u p p l e m e n tUsea n dR i s ko fP r o s t a t eC a n c er u f n e r ‑ B e a t t i e J,Kambe T 8 . Weaver BP,D JN a t lC a n c e rI n s t9 5,1 0 0 4 ‑ 1 0 0 7,2 0 0 3. .Novelz i n c ‑ r e s p o n s i v ep o s t ‑ andAndrewsGK ︑ ηυ n δ 中味研報告 第32号(2011) A s p e r g i l l u so r yz aθ の遺伝子発現を制御するための 低分子核酸信号伝達物質 の解析 鈴木 聡,楠本憲一,服部領太 Generegulationbysmalln u c l e i ca c i ds i g n a l si nAspθrgillusoryz . ae S a t o s h iS u z u k i .RyotaH a t t o r iandK e n ‑ I c h iKusumoto N a t i o n a lFoodR e s e a r c hI n s t i t u t e ,K a n ‑ n o n d a i2 ‑ 1 ‑ 1 2 , Tsukuba, I b a r a k i ,3 0 5 ‑ 8 6 4 2 , J a p a n 要 旨 :A s p e r g i ] ] u so r y z a eは 昧 噌 の 醸 造 に 重 分子核酸受容体に相向性のある遺伝子配列を見出 要な微生物である 。 微生物自身が作り出す微量 な している 。 しかしながら細胞外低分子核酸の A 低分子化合物による酵素遺伝子生産制御など醸造 o r y z a e に対する 影響は未だ知られていない 。 そ 工程を最適化するための技術の基盤となる基礎知 こで,本研究では培地中に与えた細胞外低分子核 見を得ることを目的に,そのような化合物の一種 .o r y z a e遺伝子発現への影響をマイク 酸による A である,低分子核酸 cAMPの A .o r y z a e遺伝子 ロアレイを用いた網羅的解析により明らかにする 発現への影響 をマイクロアレイにて解析した。 そ ことにより, A.oryzae による物質生産を人為的 の結果, cAMP添加により A.oryzae の生殖, に制御する技術の確立のための基礎的な知見を得 二次代謝が有意に阻害され, 一方で培養上清中の ることを目的とする 。本研究においては,低分子 αアミラーゼ,中性プロテアーゼ活性の増加が明 核酸の内,まず他種糸状菌で報告のある環状アデ らかになった。 ノシンーリン酸 (cAMP) に注目し研究を行った。 材料 と方法 :菌株はゲノム解読菌株 R IB4 0株 序 文 :味 噌 の 醸 造 に 重 要 な 微 生 物 で あ る A s p e r g i ] ] u so r y z a e は,栄養物 質,温度,湿度 を用いた。 マイクロアレイに供するための RNA 等の培養環境に応じて遺伝子発現が制御されてお は次に示す 2条件にて培養した菌体から抽出し り,古来の醸造技術は熟練技術者の経験と勘に基 0mlの YPD培地(%酵母エキス.%ポリ た。 2 づきそれらの環境要因を制御することにより,間 ペ プトン,%グルコース)に 1 0m McAMP ( ナ 接的に菌体の酵素生産や二次代謝産物生産を制御 カライテスク)を加え, 1mlの胞子けん濁液を接 し,醗酵工程を最適化してきた。一般的に微生物 種し,一晩, 3 0Cにて回転振とう培養を行った。 が自身,あるいは共存,競合する他生物の作り出 あるいは. 2 0mlポ テ ト デ キ ス ト ロ ー ス ブ ロ ス す極微量 の低分子信号伝達物質により ,劇的に遺 (BD) に 1mlの胞子けん濁液を接種し, 3 0Cに 伝子発現を変化させる事例が知られている 。 いく て回転振とう培養にて四晩培養した後に cAMP つかの A s p e r g i l l u s属においてはゲノム情報か の透過性アナログ 8CPT‑cAMP ( バ イオログ) ら低分子核酸受容体の存在が予想されている 。我 を 10mM濃度にて加え,さらに一晩培養した 。 々も A.o r y z a eのゲノム情報からいくつかの低 それぞれについて cAMPを加えていない培養を 0 0 独立行政法人農研機構食品総合研究所微生物利用研究領域糸状菌ユニ ット 〒3 0 5 ‑ 8 6 4 2つ くば市観音台 2 ‑ 1 ‑ 1 2 T E L : 0 2 9 ‑ 8 3 8 ‑ 8 0 7 7F A X : 0 2 9 ‑ 8 3 8 ‑ 7 9 9 6 Em a i l : s a t o s u z @ a f f r c . g oj .p 時 nべU 中味研報告 第32号(2011) 培 養 後 期 の 麹 菌 細 胞 に 対 す る 透 過 性 cAMP 対照実験とした。 ISOGEN (ニッポン ジーン)にて t o t alRNAの ( 8 CPT‑cAMP)の影響を検討し た。デンプン主 ♂ ,l J u s 抽出を行った。マイクロアレイ実験は Asper 0m M8CPT‑ 体の PDBで 4晩 培 養 し た 菌 体 に 1 o r y z a eo l i g o n u c l e o t i d e1 2 kDNAm i c r o a r r a yを .o r y z a e cAMPを加え, さらに 一 晩培養した A 用いて,株式会社ファームラボにて解析を行っ における 1 0m M8CPT‑cAMP (透過性 cAMP) た。色素交換(ダイスワップ実験)により,各々 の遺伝子発現パタ ーンへの影響をマイクロアレイ 色素を入れ替えた mRNAを用いて反復実験を行 に よ り 解 析 し た (図 2) 0 8 CPT‑cAMP添加によ 回の実験の実測値を補正したデータを取得 い. 2 り 2倍以上の発現の増大が見られた遺伝子数は した。 4 3 9であった。一方. 8CPT‑cAMP添加により 2 倍以上に発現が抑制された遺伝子数は 4 4 6 7であっ 培養上清中たんぱ く質は2 0m M酢酸ノf ッファ ー (pH5 . 0 ) にて. 0 . 1mg/mlに調製された。 た。遺伝子発現パターン全体の変化で見た場合, αアミラーゼ活性測定は, αアミラーゼ活性測 図2 のように. y=xの線上から離れたところに 定キッ ト (キッコーマ ン) により添イ寸のマニュア 遺伝子が拡散しており ,大き く発現強度を変化さ ルに従 って行った。 せる遺伝子が比較的多 くみられた。 中性プロテアーゼ測定は, アゾカゼイン法にて 1 0 0 0 0 行った。 ∞ o ‑ vd ; i f . v ・・ 1 結果:対数増殖中の麹菌細胞に対する培地中 L240トtυ ∞+ cAMPの影響を検討した。グル コースに 富む完 全 培 地 YPDにて一晩培養し ,活発に増殖中の A .o r y z a eの遺伝子発現パターンにおける 1 0m McAMPの影響をマイク ロアレイにより解析し a .̲ 1 { : l1 盟:三'¥・ : ・"J4I泊康i [ヤ. 1 0 0 ・.-..':'>..J齢_n~: 品樹園園田砂心 1 0 11 1 1i l l l l l l l l l l 園野町・¥ た( 図 1)0 cAMP添加により 2倍以上の発現の 7であった。一方 , 増大が見られた遺伝子数は 5 1 1 0 1 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 0 ‑8CPTcAMP cAMP添加により 2倍以上に発現が抑制された 6 4であった。遺伝子発現パタ ー ン全 遺伝子数は 9 図 2,透過性 cAMP添加により変動する遺伝子 群のマイクロアレイ解析 体の変化で見た場合, 図 1のように. y =xの線 上に近いところに多くの遺伝子が集約しており, 二 つの培養条件における遺伝子発現変化の比較 大きく発現強度を変化させる遺伝子の割合は比較 を行った。 cAMP添加により発現が上昇する 5 7 的少なかった。 ∞ o 遺伝子のうち. 8CPTcAMPによっても上昇する 1 0 0 . 低下するものが 1 3であった。 また, ものが 4 , r' 1 0 0 0 0 cAMP添加により発現が低下する 9 6 4遺伝子のう ι240+ ち. 8CPT‑cAMPに よ っ て も 低 下 す る も の が 1 0 0 0 6 5 . 逆に上昇するものが 1 0であった。 また,両培 養条件共通に発現が上昇する 4遺伝子あるいは低 1 0 0 5遺伝子を調べたところ,ほとんどが機能 下する 6 1 0 未知の未同定推定配列であった。また,両培養条 件それぞれの,発現変動の大きい順に並べた場合 1 0 1 0 0 1 0 0 0 ∞ 1 0 0 1 0 0 0 0 0 ‑cAMP 図 1 . cAMP添加により変動する遺伝子群の の上位遺伝子のほとんどが機能未知の未同定推定 配列であった。 マイクロアレイ解析 ‑40‑ 中味研報告 第32号(2011) 既知の 二次代謝関連あるいは胞子形成関連遺伝 々は培地を YPDから PDに変え,培養時間を 5 子への cAMP添加の影響を検討した。遺伝子発 日に伸ばして十分に分化の潜在能力を獲得した細 現パタ ー ンの変化が大きい 8CPT‑cAMP添加実 胞における cAMPの 影 響 を 検 討 す る こ と に し 験において, いくつかの既知遺伝子の発現の上昇 た。 また ,細胞内 cAMP濃度の上昇を確実なも あるいは低下を確認した。二次代謝関連遺伝子, のとするため ,透過性アナログ 8CPT‑cAMPを 分生子関連遺伝子などの発現レベルがいずれも低 用いた。 その結果. 2倍以上に変動する遺伝子数 下していた。 0 0 0個に増え,その変動の大きさも増大した は約 5 。 また,その中で, 二次代謝や生殖に関わ ( 図 2) 8CPT‑cAMP添加による培養上清中の酵素活 る遺伝子の発現低下が観察された。 したがって, 性の変化 を検討した。培養上清中 αアミラ ーゼ活 期待通り ,透過性 cAMP添加は培養後期に ,本 性は 8CPT‑cAMP添加試料において,未添加試 来,生殖と 二次代謝に向かう運命にある麹菌細胞 料よりも高い活性を示した。 また,中性プロテア に対して阻害効果があるのではなし、かと予想され ーゼ活性も, 8CPT‑cAMP添加試料において, た。一方発現レベ ルが上昇した遺伝子には,あま 未添加試料よりも高い活性を示した。 り共通した傾向が見られなかった。最も強く発現 c l e o s i d e‑ d i p h o s p h a t e ‑ s u g a r 誘 導 さ れ た の は Nu 考 察 :我々は培地中に添加した cAMPの A e p l m e r a s e sで, コントロ ールに対し透過性 cAMP o r y z a e遺伝子発現への影響をマイク ロアレイに の添加によって約 1 0 0 倍に発現上昇がみられた(デ て解析した。 グルコースに富む完全培地中にて対 ータは示さない)。 2倍以上 醸造に重要な酵素の多くは麹菌の栄養獲得のた 0 0 0個程で の発現変動が見られる遺伝子はおよそ 1 めの分泌酵素であるため,好ましい栄養源(例え あり,全遺伝子 1 2 0 0 0の約 1害IJ弱が変動している ばグルコ ース)が枯渇してくることにより,培地 と考えられる 。 しかしながら ,全体の遺伝子発現 中に代替の栄養源(例えばキシラン)が豊富にあ バ ター ンによれば . cAMPの影響はあまり大き れば,それを感知して誘導されてくると考えられ 0A .n I d u l a n sにおい くないと考えられる( 図 1) ている 。一方で一般的に微生物では ,飢餓刺激は luf f y変異株という分生子形成のでき て一連の f 生殖を誘導することが知られている。つまり ,栄 ない変異株の研究により. cAMP の役割が明ら 養源が枯渇してきた状況で,なおかっ生殖への切 かになりつつある 。 cAMPにより PKAが活性化 り替えが阻害されている状況は酵素生産が最も誘 されると,細胞は栄養増殖へ向かい, 二次代謝や 導されるのではなし、かと考えた。 そこで, cAMP 生殖は抑制される 。 そこで,外部から cAMPを を加えた場合の,培養上清中の酵素活性の上昇を 与えることにより,細胞状態を栄養増殖へ向かわ 期待して, αアミラ ーゼ活性,中性プロテア ーゼ せる事が出来るのではなし、かと考えられた。通常 活性を測定したところ,期待通り , ともに cAMP A s p e r g I l l u s属菌を液体培養した場合,栄養菌糸 添加の方が高活性であり,両酵素の生産性が増大 の状態が保たれ,分生子形成は行われない。 しか していると考えられた。 しかしながら. cAMPが しながら,液体培養中でも,分生子形成への準備 生理的にどのようにして酵素生産の誘導に用いら n I du l ans においては,培養 は行われており . A. れているかを明らかにするためにはさらなるデ ー 0時間以前の菌体を液体培地から引き揚げ 開始後 2 タの解析と研究の進展が必要であると思われる 。 数増殖段階の A .o r y z a eにおいては, て空気中に置いても分生子形成は行われないが, 2 0時間以降の菌体を液体培地から引き揚げ空気中 謝辞 本研究は中央味噌研究所 2 1年度研究助成 に置くと直ちに分生子を形成する 。 すなわち ,見 により行われた。 また , マイクロアレイ解析にお た目は閉じ液体培地中の栄養菌糸であっても ,培 いては株式会社ファ ームラボの佐野元昭博士に大 養時間により,その内部における遺伝子発現パタ きな尽力をいただいた。 ーンは違ってきていると考えられる 。 そこで,我 ‑41‑ 中味研報告 第32号(2011) s o s応答生理機能によるヒトの遺伝子を守る味噌食品の探求 鈴木信夫 S e a r c hf o rMisoF o o d sWhichP r o t e c tHumanGeneb ySOSP h y s i o l o g i c a lF u n c t i o n s N o b u oSUZUKI Departmento fE n v i r o n m e n t a lB i o c h e m i s t r y ,G r a d u a t eS c h o o lo fM e d i c i n e ,C h i b aU n i v e r s i t y , l n o h a n a1 ‑ 8 ‑ 1,C huo‑ku ,C h i b a,2 6 0 ‑ 8 6 7 0 , Japan 1製品のみであり,その製品に変異発生の抑制効 1.要旨 遺伝子の変異発生を抑制するヒト SOS応答生 果は見出されたが,抑制活性が顕著にみられた残 理機能における味噌食品の活性化作用を検証し りのものは,全て,米麹味噌製品であった 。 1製 7種 の 味 噌 食 品 の そ れ ぞ れ 1 0g を 蒸 留 水 た。 2 品の原材料である米麹においても変異発生の抑制 ( M i l l i Q水) 20mlに9 0Cで溶解させ,味噌サン 効果が見出された。従って , シャペロンなどの細 0 フ。 ル液を作製した。 その液の添加による培養ヒ卜 胞内分子を介して, 細 胞 RSaの生存能を MTT法にて観察した。細 を米麹成分により抑制するという,昧噌製品の新 以下の 量が,全ての製品に 胞培養液量に対し 1% しい機能が示唆された 。 ヒト細胞における変異の発生 8時間 おいて細胞死を誘導させない濃度であり, 4 以内の処理時間が,変異発生調査に至適な条件で n . 序論 あることを確認した。次に, SOS応答の鍵分子と 遺伝子における変異の発生は,癌化 ・老化 ・ウ して変異の抑制に関わる細胞内分子シャペロン類 イルス感染症などの種々の疾病の原因や誘因と考 の細胞内量をウエスタンプロッティング法で測定 えられている 。 そのような変異の発生を抑制しよ , HSP27 , HSP90α および GRP94 した。 GRP78 うとするヒト生理機能が存在することを見出し, の細胞内量を顕著に増大化させたサンプル 1 1種が SOS応答と呼称している 。 SOS応答の原型は大 見出された。次に,サンプル液処理 RSa細胞で 腸菌などの試験管内実験システムで提案され, 紫外線 (UVC) により誘導される変異の頻度が 卜においても存在することが多くの研究者らによ 低下することを, り提案されている 。 しかし, ウアパインの致死作用に対する ヒ ヒトにおける実体は 耐性化 (OuaR) を指標とする形質レベルでの検 不明のままであった。過去に大腸菌における SOS ‑ras癌遺伝子におけるコドン 1 2の塩基 出法と K 応答の実証に成功した我々は {ll,その後, ヒト個 置換をドットブロットハイブリダイゼーション法 体や培養ヒト細胞における実験 システムと新しい により検出する遺伝子レベルでの検査法とで検証 種々の方法を用いることにより, した 。 1 1種のサンプルで,変異発生を抑制するこ 存在することを報告してきている ヘ ヒトにおいても 0種ではシャペロン量の とが示唆され,その内の 1 SOS応答とは,変異を起こしてまでも細胞の生 増加が見出された 。今回調査した製品で豆味噌は 存を計るべきか,それとも細胞死を誘導させるべ 千葉大学大学院医学研究院環境影響生化学 〒2 6 0 ‑ 8 6 7 0千葉市中央区亥鼻 1 ‑ 8 ‑ 1 TEL: 0 4 3 ‑ 2 2 6 ‑ 2 0 3 8 F A X : 0 4 3 ‑ 2 2 6 ‑ 2 0 3 8 E ‑ m a i l: n o b u o @ f a c u l t y .c h i b a ‑ u . j p ‑42 中味研報告 第32号(2011) きかという選択機能である 。 その機能は次の骨格 作 用 (7汽 肺 癌 や 牌 癌 の 患 者 血 清 に 含 ま れ る 因 過程に基づく :① ヒトのストレス状態→②サイ ト 子{ 山 1による変異誘発を冗進する活性を明らかに カインなどの血清因子の血液中でのクロストーク してきた 。基本最小培地 (MEM) は日水製薬株 状態→③プラスミノーゲンアクチベーター (PA) CS) は , I nv itrogen社 式会社より,仔牛血清 ( や他のプロテアーゼの 一過的活性化を伴うシャペ より購入した。 ロン分子などの発現誘導→④細胞核外のシャペロ TaqDNAポリメラーゼと検出キットはタカラ ン結合分子の核内への移動→⑤DNA修復などの バイオより購入した 。 セイヨウワサビペノレオキシ 核酸代謝にかかわる分子の核内作用の変動という ダーゼ (HRP) 標識二次抗体およびエンハンスト 過程である 。②の過程では , シャペロンやシャペ ケミノレミネ ッセンス C ECL) ウエスタンプロッ ロン結合分子で細胞外へ放出されるものも,オー ト検出液は, GE‑Healthcare社 よ り 購 入 し た。 トクライン ・パラクライン的に,③以降の過程に その他の化学試薬類は,和光純薬より購入した。 関与するらしいへ 本研究では,③と ④ のヒ卜細 m .2 細胞培養液に添加する味噌試料の調整 0 味噌サンプルの調整は, 図 1で示すように, 1 胞内での過程に関わる変異発生抑制スーパーパイ ザ 一役のシャペロン類に着目して,味噌食品にお gを 20ml蒸留水 ( M i l l i Q水)に溶解させた。 溶 ける新規の機能の探索を行う 。味噌食品に変異の 解液は 発生を抑制するとの示唆は,従来, ヒトにおいて し使用した。各々の試験では ,解凍溶液(味噌サ はなく,サルモネラ菌を用いるエームステスト法 ンプ jレ液)が培養液中に添加された量(培養液 4 1 。ただし ,変異原因 などにおいての報告がある 1 量 , ml)あたりの添加容量の百分率(% v /v, 子自身の活性を抑えるというものであり, volumep e rvolume) で示した。 ヒ卜体 内の変異発生を抑制するという機能に基づく抑制 作用ではなし、。 その上で, o I m .3 ‑20Cに保存し,各々の試験の際,解凍 細胞培養と紫外線 ( U V C) 照射 細 胞 の 培 養 は , 既 報1 1 2 1 に従い行った 。即ち, ヒトへも変異原活性を 5%(v/v)の CSを 含 む MEM培 有するとする因子の活性の阻害を演鐸しているも RSa細 胞 は のである 。本研究は ,そ のような種を越えての間 5%炭酸ガス, 3 7Cの 条 件 下 地中で, 95%空気/ 接的な議論ではなく, で,炭酸ガスインキュベータ一中で培養,継代を ヒト細胞を用いて の実証で ある 。 I 0 行った 。 また,細胞の味噌サンプル液処理は, MTTアッセイを除いて,次のように行った 。直 m.実験方法 径 60mmのシャーレに m .1 2 4時間培養した 。翌日,味噌サンプル液をシャー 実験材料 5X 1 05個の細胞を撒き, 味噌製品は, 1 7社より 2 7製品を中央味噌研究所 より提供されるか,製造元で直接購入することに 味噌 1 0gに9 0CのM i l l i O 水を 2 0 m l加える 0 ι捜枠 より入手した。各製品は, NO. lより No.27まで, 9 0Cのお湯で 5分間 7 0Cのお湯で 1 0 分間 0 Misoの M という字を添えて数番号にて記載する 0 こととした。抗 HSP27抗体は,広島大学の細谷 S 先生より分与して頂いた。 その他の抗シャペロン 4C3 0 0 0回/分,遠心 1 0 分 抗体はサンタクルズ、 社より購入した。 培養ヒト細胞は,千葉大学医学部微生物学教室 桑田次男先生らにより ヒト胎児由来線維芽細胞か 0 a 上清液を取る ( N o . 1溜紙で溜過) S ら樹立された RSa細胞株を使用した叫 このヒ卜 0 . 45μmフィルターで溜過(第一回目) S RSa細胞は高頻度の変異誘発が可能な株であるへ 0. 22μmフィルターでクリーンベンチの中で漉過 これまでに,我々は, RSa細胞の変異誘発につい ‑ r a s遺伝子 て,ウアパイン耐性試験,および K 変異の検出により, インターフェロンの変異抑制 ι 味噌抽出液 図 1 味噌抽出液の調製 ‑43‑ 中味研報告 第32号(2011) レに添加し,さらに 2 4時間培養した。また,細胞 後 , 100μlの 0 .1%クリスタルバイオレット染色 の紫外線 (UVC) 照射は次のように行った。 シャ 液を加え ,室温で 3 0分間インキュベ ー卜し,細胞 ーレよ り培地を取り除き, PBSで 1回洗浄した 。 を染色した。染色液を除去後,培養プレ ートをよ 次 い で,約 1J/m 秒 の 強 度 の UVCを 6秒 間 照 く 水 洗 し , 乾 燥 し た 後, 100μlの0.2% ( v/v ) 射し,直ちに 5% ( v/v ) の CSを含む MEM培 Triton‑X100水溶液を加えて 一晩放置し,固定化 8時間培養した。 UVC処理の対照細 地を加え, 4 細胞に沈着した染料を溶出させた。翌日 ,マルチ hosphateb u f f e r e ds a l i n e 胞は,培地の除去, p プレ ートリー ダー E‑maxを用いて, 5 9 5nmの吸 ( P B S )による洗浄を同様に行ったもの (Mock処 光度測定を測定し,味噌サンプル液未処理の細胞 理)を使用した。 における測定値と比較を行った 。 m .4 m .5 2 細胞毒性テスト シャペロンタンパク量の解析 細胞の生存能を阻害する毒性を検出するため 細胞が含有するシャペロンの量を既報M に従い 図2 ・1 ,図 2 ‑ 2 )に に,既報凶に従い, MTT法 ( ウエスタンプロッティング法により解析した(図 1穴 3)。即ち,味噌サンプル液で処理した RSa細胞 中に 5X 1 0個の RSa細胞を,味噌サンプル液と を , PBSで 洗 浄 の 後 , 適 量 の SDS‑サ ン プ ル バ 5% CSを含む MEM培 地 100μl中で 4 8時間培養 6 2. 5mMTris‑HCl, 2% SDS, 5% ッ ファー ( した。培養後,ピ ペットで培地を注意深く取り除 ( v/v )2 ‑メルカプトエタノール, 10% ( v/v ) き,穴を 150μlの PBSで l回洗浄した後, 1 0 0 グリセロ ール, 0.001%ブ ロ モ フ ェ ノ ー ル ブ ル μlの 1%グノレタルアノレデヒド /PBSを加えて室 . 8 ) で 細 胞 を 溶 解 し た。 溶 解 液 を 9 5C ー , pH6 温で 1 5分間インキュベー卜し,細胞をプレート底 で 2分間加熱し,これを SDS‑ポリアクリルアミ 面に固定した。グルタノレアルデヒド溶液を除去 ド電気泳動 (SDS‑PAGE) 試 料 液 と し た。 この 準拠した 。即ち, 9 6穴培養プレートを用い, 3 0 試料液を , 10%アクリルアミド濃度ゲル中で展開 させ,タンパク質を PVDF膜に転写した 。転 写 │町 T実験法 │ .1% ( v/ v ) Tween2 0を 含 む 緩 衝 液 後,膜 を 0 国 MTT ‑ ‑ ‑ (TBS‑T , 10mMT ris‑HCl ,150mMNaCl ,0 . 1 % ( v/v )Tween2 0, pH7. 5 ) で洗浄し, OD 固 ミルクー TBS‑T中にて,室温で 1時間インキュベ 570 . . 圃 生きている細胞 MTT 5%スキム ーションを行った 。次いで,膜を 5 %スキム ミル ク ー TBS‑Tで適当量 に希釈した 1次抗体液中にて, 固 室温で 1時間インキュベーションを行っ た。膜を TBS‑Tで 洗 浄 後, 5 %スキムミルクーTBS‑Tで 生きてい臥、細胞 適 当 量 に 希 釈 し た HRP‑標 識二 次 抗 体 中 に て , 室温で 1時間インキュベーションを行った 。膜を 図 2‑1 MTT 実験法 1 .細胞培養条件 ヒ ト RSa細胞 5X1 0' 個培養 ( 6cmシャーレ ) 2 .味噌抽出液処理 味噌 ( 1%抽出液)処理(処理時間:2 4時間) ( 3 TC 5%C02培 養) 測定 3 . タンパク質サンプル回収 (SDS化) 00570nm 1 .婚種ヒト細胞 1 . MTI反応渡 ( 50μ11x1 0c e l l s /w e l l) ( 10μI/w e l l) 2 . 4時間後に反応停止液 2 味噌抽出液添加 ( 0. 038μ1‑20μ 1 /1 0 0 μI / w e l l) ( 1 5 0 μI / w e l l ) 0%v/v) ( 0. 038%一2 ・ 図 2‑2 MTT 法の測定過程 4 .電気泳動法で分子量別によりタンパク質が分離される 5 . 膜への分離タンパク質サンプルの転写 6 . 抗体を用い,標的タンパク質の量の算出 図 3 ウエスタン・プロッティング法 ( タンパク質量解析法) ‑44‑ 中味研報告 第32号(2011) TBS‑Tで洗浄後, ECL検 出 液 に 1分間浸し ,酵 素反応で生じ た発光を X線フィルム上に感光させ の平均値を求めた後,次式により変異 コロニー出 現頻度を求めた。 検出した。 タンパク質の存在量は,フィルム上 の目的ノインドの黒 化 度 を イ メ ー ジ 解 析 ソ フ 卜 変異コ ロニー出現頻度=(ウワパイン耐性コロニー数)/ ( M u l t iG a u g ev e r2 . 2, 富 士 写 真 フ ィ ル ム ) を [ 1 0 0x(形成率判定用コロニー数) J 用いて測定した。 i l l . 6 ウア パ イン耐性 を指 標 とした 形 質 変 異 頻 i l l. 7 遺伝 子 変 異 の 解 析 既 報切 に 従 い , 遺 伝 子 変 異 解 析 の た め に ,K‑ 度 の測 定 細 胞 の 形 質 変 異 頻 度 を 既 報171のウアノイイン耐性 化試験法にて測定した 。 細胞毒性を与えない条件 で,味噌サンプル液を添加した条件下で RSa細 4時間行った後,紫外線照射を行い, 胞の培養を 2 を測定した 。 ウワパインは細胞毒であるが,その + ,K A TPaseに 立 体 構 結 合 標 的 分 子 で あ る Na 令 ウアパインが結合できなく なり,細胞は生存でき,コロニーを形成するとい 4) 。 UVC照 射 , ま た は Mock処 理 後 4 8時 間 の 細 胞 を直径9 0mmの新しい培養シャーレに 8x1 04細 胞 . 8μMのウ /シャ ーレで撒きなおし, 翌日より 0 う 原 理 を 利 用 し て い る (図 ワパイン存在下で 3週間培養を行った 。 シャーレ . 2%メチレンブルー 中の細胞コロニーを0 メタノール液で染色の後, メンブレンへ d o t ‑ b l o tし ,D IGラベル下 K ‑ r a sコ 2 変異プロープにより塩基置換変異を検出し ドン 1 ( d i f f e r e n t i a ld o t ‑ b l o th y b r i d i z a t i o n )C 図 5) 。 即ち, UVC処理,または M ock処 理 後4日間培養 した。次いで, S a m b r o o kら の 成 書 C M o l e c u l a r C l o n i n g2 n de d i t i o n ) に記された方法に従って, 細胞より DNAを抽出し,エタノール沈殿した後, TEバ ッ フ ァ ー ( 1 0mMT r i s ‑ H C l,1mMEDTA , pH8 . 0 ) に溶解した。 これを鋳型DNAとし,プラ イ マ ‑5 '‑ GACTGAATATAAACTTGTGG‑3'お よび 3 '‑ G CTTATACTAGGTTGTTATC‑ 5 'を用 いて , K ‑ r a s遺伝子のコドン 1 2近傍を PCR増 幅 した。 PCR産 物 を ア ガ ロ ー ス 電 気 泳 動 で 分 離 ・ た ウアノイイン耐性のクローン化した細胞の出現頻度 造変異が生じた場合, r a s遺伝子をゲノム PCRにより増殖後,ナイロン /30% 1 0 0細 胞 以 上 の 大 き さ 精製し, ドットプロッター(バイオラッド)を用 いてナイロン膜上にスポットした。ナイロン膜上 DNAは. K ‑ r a s コドン 1 2変 異 型 遺 伝 子 のウワパイン耐性コロニーの数をカウン卜した。 の変異 0mmの 新 し い 培 養 シ ャ ー レ に 8 0 0 同 時 に , 直 径9 に特異的に結合するオリゴヌクレオチドの3 '‑ 末 2週 間 培 養 の 後 , コ ロ ニ 端をジゴキシゲニンーl l ‑ d U T Pで 標 識 し た プ ロ ー数を計数し ,コロニー 形成率を求めた 。 各々の ープと ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン を 行 った後 ,ア 4枚のシャーレを用い, 4枚 ルカリフォスファターゼー標識抗ジゴキシゲニ 細胞/シャーレで撒き, サンプルについて, qg 愛護ら ヒ 卜 陥細胞 一 伽 一 m PCR法による • G T 何 回T ‑ = ‑ 一 一 一 円 国 岨 回" G 標的塩基の土 師 /一、 ‑r ‑ = = I I t . . .&&ClCTCCACCACXXlCA一一一 ナイロン膜上に,虫歯幅産物を貼りつける そ・¥ 4窒 璽P ~1.__弘 プローブを用いて.変 異の検出を行う ~ A袋詰諺砕球部".~ト • 図 5 ドットプロットハイルビダイゼーション法による l ー くr a sコドン 1 2における塩基置換の変異検出法 図 4 ウアパイン耐性変異テストの原理 ‑45‑ 中味研報告 第32号(2011) 包 . z "! ・ a a 世田哨 aKOEL 2 4 時冊 目 処理 噂サンプル ( 1 ' ) ( , ) 5 6 18 19 4 塩 ' ) ( , ) ( 0. 5 2 1 22 ‑ ・ ・ ・ + ‑ ORP7B ∞ 88. . 113 116 6 4. 71 幻 • M l 20 咽圃ー 1 1 8 7 1 6 2 92. 11 2 1 GRPT8 7';1チン ‑ ‑ ‑ E E ‑ ‑ ‑ ‑ ‑EE ・ E ・ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ・ ・M2 綱初 G I I P 7 8 / Ktln O . C 2S 1 . 250 ・ . . . 5 . " ・・ ・ ・ 1 2 . -・~・ 味噌抽出液の温度 (%v /v) 図 6 味噌抽出液 ( M l .M2)の細胞生存への影響 •••••• ‘ , ‑ ・ ・ ・ ・ 圃 ・ ・ ・ ・ ‑E ・ EE 0 0 ‑E 1 5 0 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ‑ ・ EE ・ "・, . . w 0 . 0 , . ‑‑EE‑‑ "'"市"01 ・ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ・ ‑ ‑ EE ‑ ・・ 酬榊剛 相対細胞数(未処理細胞に対する%) """wu RSa縄 . ・. ‑情 調 $ 叩 ,.. 1, . ., ." 図 7 味噌サンプルによるシャペロンの細胞含有量への影響 ‑ブロモー 4 ‑クロロー 3 ‑インドリ ン抗体と基質 5 た。 No . 1. 2以外では, ルリン酸を用いて検出した。 オリゴヌクレオチ き , お し な べ て,2 .5% ( 味 噌 重 量 の 濃 度 が ドの標識,抗体および基質は, DIG核 酸 検 出 キ 12.5mg /ml)までは増殖回害が顕著に見られな ット(ロシュダイアグノ ー シス)を使用した。 かった。 そこで,原則 変異 DNAを 検 出 す る オ リ ゴ ヌ ク レ オ チ ド は , No. l l,1 2お よ び 2 0を 除 2%以 下 の 処 理 に お い て 以 下の検討をすることとした 。 5 '‑GTTGGAGCTAGTGGCGTAGG‑3', l V . 2 味噌サンプル液の添加によるシャペロン 5 '‑GTTGGAGCTCGTGGCGTAGG‑3二 量 の解析 5 '‑GTTGGAGCTTGTGGCGTAGG‑3', 味噌サンプノレ 2 4時間処理によるシャペロンタン 5 '‑GTTGGAGCTGATGGCGTAGG‑3', パ ク類における細胞含有量の変化をウエスタンブ 5 '‑GTTGGAGCTGCTGGCGTAGG‑3' jレ処理 2 4時 ロ ッ ト解析により調べた。 味噌サンフ。 および5'‑GTTGGAGCTGTTGGCGT AGG‑3' の 間後の細胞内量を非処理細胞内量と比較した 。 図 6種類を等量混合したものを使用した。 なお,変 7で 示 す 1回の解析例のように, N o . 1 8,1 9およ 異型 DNA検 出 の 陽 性 コ ン ト ロ ー ル と し て , 0の 昧 噌 サ ン プ ル に お い て , GRP78の量がコ び2 SW480細 胞 よ り 抽 出 し た ゲ ノ ム DNAを 鋳 型 と 倍 以 上 に 増 大 し て い た。 さら ントロ ール比で1.5 DNAを用いた。 に,解析回数を増やして結果をまとめると して増幅された GRP94, HSP90α , HSP27のシャペロンでも, i l l ̲ 8 結果の処理 結果は , 増 大 化 す る 味 噌 サ ン フ。ル が 見 出 さ れ た ( 表 1)。 2回以上の独立した実験データの平均 N o . 3などの 1 5サ ン プ ル で シ ャ ペ ロ ン 類 の 細 胞 内 値で示した 。 表 1 味噌処理細胞におけるシャペロン類の量 ‑血肉且惜a 蝿3ン 岡 、 ー 耐 に " す る 匙. . a 以来a 蝿 コ ン 岡 』 耐 に " す る 路事 A ., S 号 , ヲ . . フ 鋼 . . . . 管 . 号 シ 町.結果 シ 冒牌$帽] l V . 1 細 胞生 存 を阻害 しない味噌サンプルの添 加濃度 MTT法 に て 測 定 し た 細 胞 の 生 存 レ ベ ル ( 非 添 00%と し て 比 較 ) か 加の場合の生存レベルを1 ら,培養液中へ味噌サンプルを 4 8時間添加したま ま に し て お くと , 図 0 " ' "I0 " " . . .I " ・? . , . 6で示す例のように, N O . 1 . . '.. ,. . . ' " ・ ,' . . . 、 ' " , . . . • ' 官 " ' ' ,.・ ,. . . . . 2 3 s e " ' " ' r o n . 9 回 軍 " 錫 回 国 租 1 1 園 制5 " m 回 首 ' " " 惚 ' ・ . . " ' 1 伺 。 1 ( M 1 )とN O . 2( M 2 )の場合, 2.5%以 上 で , 半 数 以 " . . ,., 上の細胞の生存能力が阻害されることが示唆され ,. 憾 1E Gft~ 2 ' 22 n 2 2 s " ' " ' D . . . 7 1 1悟 . . . . ". 明 . , . 官 " 征" 1 2 ' " ' • 回 1 口預 征 > > s g 明 2 . . 官 IG"'T 8 I HSP 掴 書2 刷 " •' ,. ・ 国 7 竃 . 鏑 電車 " " ' " , . , ' . , 掴 1 1 ' 1 1 2 睡 ョ . 肉 ‑ t t S n r 1 7 1 ' 1 2 旬 ' S 飽 2 笹田 I I I 也 , . " " ' . . ' " " " . 躍 込 '国 . , ' 5 0 W 官 " , . , , . , 1 1 ' . , 竃 " , 日 ‑46 中味研報告 第32号(2011) 含有量が増大すると示唆された(図 7で黒いバン f こ。 このア ッセイでは, ドが細胞内量を示し ,バンドの幅が太いほど,量 くなり黒く示される丸が変異の発生を示 が多いことを示し,アクチンタンパクの量 と対比 し,灰白の丸へと変じれば,変異が検出で させた上で,バンドの濃さを比較数値化し , コン きなくなり,変異の発生が抑制されたこと トロールでの値を 1 0 0と示しである) 。 を示す ( 図 9)。例えば, N o . 1 9, 2 0, お 町. 3 味噌サンプル液の添加による紫外線誘発変 ドットの発色が濃 1味噌サンプル処理細胞で,紫外線誘 よび 2 異の抑制 発変異が抑制された ( 図1 0 )。一方, N O . 1 8 1 ) ウアパイン耐性化形質変異による解析 では,紫外線誘発変異は無添加サンプルと RSa細胞における紫外線によるウアパ イン耐性化形質変異の誘発頻度が,紫外線 同様であった ( 図1 0 )。 I V . 4 米麹味噌製品における変異発生抑制の検証 3味噌サンプル液を培養液へ 照射前に NO. 紫外線による変異誘導の抑制効果が見られた 1 1 添加しておくと,非添加の場合と同程度な サンプル( 表2 ) において, No. 17 の豆味噌以外の いしそれ以下となった ( 。 さらに , 図 8) 1 0サ ン プ ル が 米 麹 味 噌 で あ っ た。 N O . 3とN O . 2 3 N o . 4, 5 ,1 2, 1 7, 1 9, 2 0,および 2 3の味 は同一社の製品である 。 そこで, N O . 2 3製品の原 噌サンプル液の処理により ,形質変異頻度 料素材である米麹について,変異発生への効果を 。 の低下が見られた(表 2) 調査した 。形質と遺伝子レベルのどちらでも,変 2 ) ドットプロ ッ トによる解析 異発生の抑制効果が見出された ( 1 )。 図1 紫外線照射で誘発される K ‑ r a s コドン 1 2の変異をドットブロット解析により調べ +UVC ( 割問高田高祉制bF¥語教略鰍割高) 脳間緊脱出相 • ウアパイン耐性変異頻度 " ' ドットプロット法によ るK . r B S変異 Sも コンP 旬、 ー ル 珂 a 闘争議 図 9 味噌サンプルによる taJ:句. . v r 叫 ± ++ ++ + 抑制 K‑ r a s変異の抑制 " 。 E +~ " a 。 コントロール M18 ‑• I -~ m悦 k M19 M20 M21 〈 淘贋19 6V I 功 +LNC mock 1 1 0 4 2 1米 . 1 1 0 4 2 3朱飽 + W φ U V 図 8 味噌麹サンプルによる変異の抑制 ‑LNC 図1 0 味噌サンプルによる 表 2 味噌処理細胞における変異発生の調節効果 司咽・"ヲ島.暗 . . .‑・怖 念 噌炉 + 噌ー 企 令令 噌・ 4炉 . . . . 企 e 車 1 2 + 1 3 a 企 邑 念 . , 1 5 司 、 . . 令 1 8 1 9 ‑ m棋 k 止巾 の 抑 異 変 W 図1 1 (心+:変異頻度が低下、 一:変異頻度が不変、未.'実験禾s i 詩子. ト 民 噌・噌炉 る + . . v /v) f 且1 1句 -~ EV 噌F ..噌炉 同 島 根.. +~ " , 。 ‑‑t' げ . . 国 働サ 白 " 附米 22 a 邑 。 . . . コント0‑ル 同 KFM 盲 21 令V 令 ドットプロット法による K ‑ r a s変異 B な由 20 0 ・ 一 四 麹 1$ ウアパイン耐性変異頻度 ・ ‑ ‑ T • s ヨ 回 ・ 圃 量. . ' ・ ・ 日 l { 掛昼寝枇釧bF¥綴雄略縦割高)制帽略国時制 1 2 3 K ‑ r a s変異の抑制 ( b )図 9の判定法による抑制度のレベル. ‑47‑ 中味研報告 第32号(2011) イゼーションを利用した 。 V. 考察 今回の試験では, 2 7種の味噌製品について, No. 14 の麦味噌で・ は , 4種のシャペロン,特に, RSa細胞における紫外線照射による変異誘導に及 GRP94と HSP27の細胞内量の増大をもたらした ぼす影響を調査した。 即ち,まず,シャペロン 4 が,塩基置換類の変異発生における抑制効果が認 種の細胞含有量の変動より調査し,変異を OuaR められなかった。 他 の種の変異に関して調査する とK ‑ r a s コドン 1 2 塩基置換変異で検出した。表 2 , GRP78および H SP27の 必要があろう 。 GRP94 で示したように,変異検査に関して調査した 1 8種 細胞内量を増大化させた No. 18 も同様な調査を必 の味噌製品の中で, 4種のシャペロンのいずれか 要とする 。 N O . 1 7の豆味噌では, GRP94とHSP27 しか も,変 量 の増大と Ou aR 検査による変異発生の抑制をも 1製品で 異 を抑制することが示唆されたものは, 1 ‑ r a s コドン 1 2に お け る 塩 基 置 換 た ら し た が, K ,3 ,4 ,5 ,1 2, 1 7, 1 9, 2 0, 2 , 1 2 2, あった :2 変異の発生を抑制する作用が認められなかった 。 および 2 3 。 おそらく,変異の種類により,抑制する活性が相 の量を増大させるなどの変動を促し, 変異の発生を検討するには,多大な労力と時間 違したのであろう 。 一方,シャペ ロン 量 の増大化 等がかかる 。 そこで,その検討作業の前に,変異 と変異発生抑制が共に検知された製品 ( 3,4 ,5 , の発生に関わるシャペロンを解析するというより 1 2,1 9, 2 0,および 2 3 ) は,全て米味噌であった。 簡便な方法により,目的とする味噌の効能の有無 また, N o . 3と2 3は,同一 社 に お け る ロ ッ ト 番 号 を検索することとした。 また,味 u 首処理時間につ (製造日)が違う製品であった。 そこで,米麹に, いては, 2 4時間と設定した 。変異の発生を 抑制す シャペ ロンを介する 変異発生抑制作用がある可能 る事を見出したヒトインターフェロンサンプルで 性を考え,製品 N O . 3や 2 3の素材である米麹や煮 は,その抑制作用を発揮するのに 6時間以上を要 大豆に関して,さらに,シャペロン 量 と変異発生 4時間前後が至適であること すること,および, 2 の調節作用を検証した 。 図 1 1で示しである米麹に 8時間 を見出していることによる 円 紫外線照射 4 おける変異発生抑制の結果以外に,両素材共に, 後における増殖可能な細胞の割合について コロニ OuaRにおける誘発値を低下させたこと(結果省 ー形成率を指標として調べたが,紫外線照射前の 略)により,また,上述の豆味噌製品 1 7の結果か 味噌サンプル液の 2% ( v/v ) 以下での処理は, ら,今のところ ,米麹と煮大豆の両者共に,変異 コロニー形成率に影響を及ぼさなかった 。 その上 発生を抑 制する可能性があると予測される 。 今後 で , H S P 9 0 α の細胞内 量 を増加させた N o . 3のサ は,他社の米味噌,豆味噌および麦味噌について ンプル ( 表 1)は, も,変異抑制の有無の違いも含め,原材料別の調 2種類の違う実験法で変異発 生の 抑制が確認された ( 表 2) 。 また, GRP78と 査をすべく ,準備中である 。 HSP27の量を増大させた No. 19と2 0( 表 1) も , シャペ ロンタンパクおよびその関連タンパクの 両 検 査 法 で の 変 異 発 生 を 抑 制 し た (表 2) 。 細胞内量が変異誘発頻度に影響を及ぼすと考えら 通常,変異の発生は極めて低頻度であることか れるが, 4製品(14 ,1 5, 1 6,および 1 8 ) の結果 ら,本研究では,その発生頻度を上昇させ,検知 では,明瞭な関連性は見出せなかった 。今後は , しやすくしている ( 1 7 ) 。 また ,変異誘導因子として 塩基置換変異を基にする変異検出法以外の変異を は,直接,細胞核内の DNAに傷害を与え得ると 高感度で識別可能な検出法を開発する必要があ 考えられている放射線類を使うこととしている 。 る。 例えば,変異誘導因子を紫外線でなく誘発す その上で,味噌サンフ。jレで' 2 4時間細胞を処理し, る変異のタイプが違う X線にすることも一法であ その後,紫外線照射により変異を誘導させ,非処 る。 但し ,複数のシャペ ロン種の量が変動する傾 2つの方法を 向にあることより,それらシャペロンタン パ ク量 樹立してあり , その lつは形質レベルの変異検出 の増減の複合作用が塩基置換の変異抑制効果を相 法 で あ る 。一 方 ,K ‑ r a s コドン 1 2に お け る 塩 基 殺することに結び、 ついた可能性もあり,その精査 置換変異を指標とするドットプ ロ ットハイブ リダ も今後の課題である 。 理細胞と比較した。変異の検出では ‑48‑ 中味研報告 第32号(2011) 一方で,調査した 6製品(1, 2 ,1 0, 2 4, 2 6, d i f f e r e n c eb e t w e e nu v rA andu v rBmutants 7 ) でシャペロン量が減少したことは注目 および 2 o fE .c o l i . Nature2 61 .2 4 4 ‑ 2 4 5,1 9 7 6 に値する 。 シャペロンは,ガン細胞での細胞内量 2 . 鈴木信夫,喜多和子,菅谷茂,鈴木敏和, が高い場合, X線などの抗癌因子に対する致死抵 ー 村義信環境影響生科学基本研究の展開 抗性獲得機構のひとつと考えられているからであ 突然変異説のアンチテーゼから進化医学の創 るへ そこで,味噌製品の中には,ガン細胞の抗 造へ(ストレス状態によるヒト遺伝子構造の 癌剤感受性化にシャペロン量を低下させて関わる 変動調節機能の発見)。千葉医学8 1, 2 2 3 ‑ 2 2 7, 効能があるという命題が生じ,今後探求すべき重 2 0 0 5 3 .C h iX ‑ J .,T a k a h a s h iS .,NomuraJ .,Sugaya 要な課題となる 。 S .,IchimuraY.,Z h a iL. ,TongX .,K i t aK . , 今後は,以下の様々な疑問点の解決もする必要 があろう 。変異発生の抑制にいたる主たるメカニ Suzuki N . Modulation o fm u t a b i l i t yi n ズムのーっとして DNA修復過程が考えられる U V ‑ i r r a d i a t e dhumanRSbc e l l sbyserum が,味噌製品の変異発生抑制はその過程を左右し o b t a i n e dfromp a r a b o l i cf l i g h tv o l u n t e e r s . ての作用であるか。生体中には, J .I n t.S o c .L i f e1 n f o .S c i .2 5,1 1 ‑ 2 2,2 0 0 7 ヒ卜インターフ 4 . 海老根英雄 味噌の生態調節機能,味噌の科 エロンという生理活性因子があり,その因子に変 異発生を抑制する作用のあることをすでに私共は 学と技術 4 3, 3 3 9 ‑ 3 6 1, 19 9 5 見出しているが, その作用を味噌が抑えることは 5 . 鈴木信夫 RSa 動物培養細胞マニュアル,瀬 ないか。 あるいは,その作用と競合して味噌の変 野惇二,小山秀機,黒 木 登 志 夫 編 , 共 立 出 異抑制作用は相殺されてしまわないか,等々であ 0 4 ‑ 2 0 5,1 9 9 3 版,東京, 2 6.SuzukiH .,SuzukiN .,S a s a k iM.,Hiraga る。 いずれにせよ,味噌食品に変異発生を抑制する K. O rthophenylphenol m u t a g e n i c i t yi na 作用があるとの示唆が得られたことから,引き続 2 3 ‑ human c e l ls t r a i n . Mutat. R e s .1 5 6,1 き,他のシャペロン分子を指標とするなどして, 1 2 7,1 9 8 5 全国の様々な会社で販売されている多種製品にお 7.SuzukiN.,Suzuki H .S u p p r e s s i o no fUV ける変異抑制の有無に関するスクリーニングを行 m u t a g e n i c i t ybyhumani n t e r f e r o n .M u t a t . い,同時に,抑制作用の分子メカニズムの解明実 R e s .2 0 2,1 7 9 ‑ 1 8 3,1 9 8 8 . Involvement o f 8.I s o g a i E ., Suzuki N 験などをする必要がある 。 その上で,シャペロン を介する変異発生抑制という味噌製品がもたらす ant Jp a m ‑ s e n s l t l v e p r o t e a s e a ct Jv l t y m SOS応 答 機 能 の 詳 細 を 確 認 し て 行 く 必 要 が あ s u p p r e s s i o no fU V ‑ m u t a g e n i c i t y byhuman る。 さらに,変異発生以外の多面的生理機能に関 i nt erferon‑α. Mutat.R e s .3 2 5,8 1 ‑ 8 5,1 9 9 4 わる SOS応答に味噌製品の効能がどのように関 9.Suzuki N ., Suzuki, H . S u p p r e s s i o no f わるかは,重大な問題であり, 一 つ一 つ解決させ s a c c h a r i n ‑ i n d u c e dmutag ' e n i c i t yb yi n t e r f e r o n ‑ て行く必要もある 。 αinhumanRSac e l l s .CancerRes. 5 5,4 2 5 3 ‑ 4 2 5 6,1 9 9 5 1 0.SuzukiN .,1 s h i b a s h iM.,KitaK . , WuY ., 羽.謝辞 本研究を遂行するにあたり,中央味噌研究所の NomuraJ. ,Takakubo Y .,HiroshimaK ., ご支援をいただいたこと,味噌製造の各社に味噌 Genga K . , Ohwada H ., Hayashi Y. 製品や原材料の素材を快くご提供いただいたこと D e t e c t i o no f Serum F a c t o r s Enhancing 等に対し,深く感謝を申し上げます。 C e l l M u t a b i l i t y From Lung Cancer P a t i e n t sbyA p p l i c a t i o no fHypermutable 四.参考文献 .Cancer7 8,5 5 0 ‑ 5 5 5, HumanRsC e l l s .I n t .J 1.Suzuki N. Nakazawa A . Phenotypic 1 9 9 8 ‑49‑ 中味研報告 第32号(2011) 1 1 . HiranoJ .,K i t aK . , S ugayaS .,I c h i m u r a w i t he s t r o g e nr e c e p t o rcDNA.T o x i c o l o g y Y .,YamamoriH .,NakajimaN. ,S u z u k i,N. 3,7 2 8 ‑ 7 3 5,2 0 0 9 i nV i t r o,2 D o w n ‑ r e g u l a t i o no fM o l e c u l a rChaperone 1 5 .S u z u k iH .,S u z u k iN .D e t e c t i o no fK ‑ r a s GRP78/Bip E x p r e s s i o n I n v o l v e d i n c o d o n1 2 mutation by p o l y m e r a s ec h a i n Enhancemento fHumanRSC e l lM u t a b i l i t y . r e a c t i o na n dd i f f e r e n t i a ld o t ‑ b l o th y b r i d i z a t i o n 7 ‑ 1 4,2 0 0 8 P a n c r e a s3 6,e i n sodium s a c c h a r i n ‑ t r e a t e d human RSa ,F use,A .A U V ‑ s e n s i t i v ehuman 1 2.S u z u k iN. .B i o c h e m .B i o p h y s . R e s .Commun.1 9 6, c e ll c l o n a lc e l ll i n e,RSa,whichh a sl o wr e p a i r 9 5 6 ‑ 9 6 , 11 9 9 3 3 3 ‑ 1 4 5,1 9 8 1 a c t i v i t y .M u t a t .R e s .8 4,1 1 6 .S u z u k iN .E f f e c t so fhumani n t e r f e r o n ‑ α 1 3.DongM.,ChenS. P .,K i t aK . , I c h i m u r aY ., onUV‑inducedDNA‑repairs y n t h e s i sand GuoW‑Z.,LuS .,SugayaS .,HiwasaT. , c e l lk i l l i n g .M u t a t .Res.1 7 5,1 8 9 ‑ 1 9 3,1 9 8 6 1 7 . 鈴木信夫,鈴木英子培養ヒ卜細胞 RSaにおけ T a k i g u c h i M., Mori N. , Kashima A . , MorimuraK . , H i r o t aM.,S u z u k iN .A n t i ‑ るK ‑ r a sc o d o n 1 2突然変異のサッカリンナト p r o l i f e r a t i v eanda p o p t o s i s ‑ i n d u c i b l ea c t i v i t y リウムによる誘発 o fS a r c o d o n i nG fromS a r c o d o ns c a b r o s u s ぺリルアルデヒドの変異 ,1 5 5 ‑ 1 6 0,1 9 9 4 原性との比較一.変異原性試 3 i n HeLac e l l s .I n t .J . Onco. l3 4,2 0 1 ‑ 2 0 7, 1 8 . KubotaH .,S u z u k iT .,LuJ .,TakahashiS ., 2 0 0 9 S u g i t aK . , S e k i y aS .,S u z u k iN .I n c r e a s e d . , J i n Y‑H. ,Sun Z .,Chen S ‑ P ., 1 4 .K i t aK e x p r e s s i o no fGRP94p r o t e i ni sa s s o c i a t e d SumiyaY .,HongoT .,S u z u k iN .I n c r e a s e w i t hd e c r e a s e ds e n s i t i v i t yt oX ‑ r a y si n i nt h el e v e l so fc h a p e r o n ep r o t e i n s by . c e r v i c a lc a n c e rc e l ll i n e s.I n t .J .R a d .B i ol i s p h e n o lA and4 ‑ e x p o s u r et o‑ e s t r a d i o l,b 8 , 17 0 1 ‑ 7 0 9,2 0 0 5 methoxyphenoli nhumanc e l l st r a n s f e c t e d n u 中味研報告 第32号(2011) B a c i l l u s属細菌の γーグルタミノレトランスペフ。チダーゼを グルタミナーゼとして発酵食品の穆 に添加することにより、 うま味を向上させる方法に関連する研究 鈴 木 秀 之 , 山 田 千 晶,HoVanThao Developmento fA Methodt oImprov eUmamiT a s t eo fFerment e dFoodbyt h eAddit i o n o f γ ‑ G l u t a m y l t r a n s p e p t i d a s efromB a c i l l u st oMoromia sG l u t a m i n a s e HideyukiSUZUKI, C h i a k iYAMADAandThaoVanHO D i v i s i o nofA p p l i e dB i o J o g y ,G raduateS c h o o Jo fS c i e n c eandT e c h n o J o g y ,K yotoI n s t i t u t eof T e c h n o J o g y ,G o s h o k a i d o ‑ c h o ,λ d a t s u g a s a k i ,S akyo‑ku,Kyoto6 0 6 ‑ 8 5 8 5 ,J apan 要旨 ば,新しい y‑グノレタミル化合物を生成する転移 枯草菌由来の ggt遺伝子を T5プロモーター下 反応,水が求核攻撃すればグルタミン酸を遊離す 流に接続したプラスミド pCY167を作成した。 る加水分解反応となる。加水分解反応において, このプラスミドを持つ大腸菌株はペリプラズム空 基質がクソレタミンであれば,グルタミナ ーゼ反応 間に多量の GGTを発現し,そのペリプラズム画 である 。 2つの反応の至適 pHは異なっているた 分からギガバイトカラムにより GGTを精製でき め,反応液の pHをうまく調整することで,いず た。納豆菌と枯草菌の GGTはそのアミノ酸配列 れか一方の反応を選択的に進行させることができ も遺伝子の塩基配列も極めて類似しているにも関 る ( 図 1) 。 醤油のう ま味は主にグルタミン酸の量 によって わらず,同様に作成した納豆菌の ggt遺伝子を保 持するプラスミドで形質転換した大腸菌は GGT 決まる 。醤油醸造時,大豆タンパク質は麹菌の作 を発現しなかった。 るプロテアーゼによってペプチドに,そしてぺプ チダーゼによってアミノ酸にまで分解され,呈味 性に寄与する。遊離してきたグルタミンはグルタ 【はじめに】 y‑グルタミルトランスペプチダーゼ CGGT;EC " 反 応 GGT 2 . 3 . 2. 2 ) はバクテリアからヒトに至る多くの生物 ム 種に見出される酵素である。 GGTは大小 2つの サブユニットからなる酵素で,小サブユニット N ヤ 末端の Thr残基の側鎖の酸素原子がり ,基質であ l る y‑グルタミル化合物のカルボニルカーボンに GGT 求核付加し , y‑グノレタミル酵素中間体を形成す る2・ 3 ) 。 アミノ酸などのアミノ基が求核置換すれ 京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科応用生物学部門 GGT ..*分解底応 グJ~'~ン. 図 1 GGTの触媒する反応 干6 0 6 ‑ 8 5 8 5京都市左京区松ケ崎御所海道町 T E L : 0 7 5 ‑ 7 2 4 ‑ 7 7 6 3 F a x : 0 7 5 ‑ 7 2 4 ‑ 7 7 6 6 E ‑ m a i l :h i d e y u k i @ k i t. a c . j p ‑51‑ 中味研報告 第32号(2011) したものであり ,すでに報告している。 の 醤油醸 )で使用した への GGTの添加効果を調べた研究5 大豆9ンパク貧 ↓コ 口 T7‑tc GGTは, このプラスミドを持つ枯草菌から精製 ペプチド した標品である 。 グルヲミン 【結果および考察】 , 恥 "O ' J GGT アミノl 騒 グルタミン酸 B a c i J J u s属細菌 の GGTは耐塩性である 枯草菌 ( B a c i l l u ss u b t i l i s)は B a c i l l u s属細菌 ぷ入間 ピログルタミン酸 " である 。 これまでの私たちの研究で枯草菌の GGT 図 2 醤油,味噌醸造時の大豆タンパク質の推移 は耐塩性であることが分かっていたので,他の B a c i l l u s属細菌の GGTについても耐塩性を比較 ミナ ーゼによって加水分解されてグルタミン酸に することにした。枯草菌の GGTは18% 食塩存在 なり, 下でも,食塩非存在下の 74%のグルタミナーゼ活 うま味に寄与する 。 グルタミナーゼの活性 が十分でないと ,グルタミンは自働的に環化して, 性を保持していた。GGTについて報告のある枯草 無味あるいは酸味を呈するピログルタミン酸にな B .s u b t j 万ss u b s p .n a t t o) 菌の亜種である納豆菌 ( り,せっかくうま味成分になるはずのものをロス や してしまうことになる ( 図 2)。醤油醸造は,雑菌 それぞれ 72%, 64%のグルタミナーゼ活性を保持 の増殖を防ぐために, 18%の食塩存在下,pH5 . 5 しており,耐塩性であることが分かった。 で行われる 。 1 8%の食塩は, B .l i c h e n i f o r m i sの GGTも18%食塩存在下で 3MIこ相当し,この ような高濃度の食塩存在下においては,麹菌の夕、 枯草菌 GGTの高発現株 ( CY1 6 8 株) の育種 ルタミナーゼは強く阻害されている 。 そこで,耐 プラスミド pMH2289を BamHIと S c a1で切断 塩性のグノレタミナーゼをパクテリアから見つけだ し,枯草菌由来の g gt遺伝子を含む DNA断片を し,醤油躍に添加しようという試みが行われてき BamHIと S c a1で 処 理 し た pACYC184に 繋 ぎ たが,食品に使えるバクテリアのグルタミナーゼ pCY150を作製した。pCY150を鋳型とし,オリゴヌ で耐塩性のものはない。前述したように, GGT クレオチド ( 5 'ーc c c g g a t c c a t g a a a a g a a c g t g g a a c g t c ‑ S ' はグノレタミナ ーゼ活性を持つことから ,耐塩性の 5 ' ‑ c c c c t g c a g t t at t t a c g tt tt a a at t a at g c c g a t c ‑ 3')を GGTをバクテリアに見つけだし,グルタミナ ーゼ プライマ ー として PCRにより g gt遺伝子を増 として添加しでも閉じ効果が期待できる 。私たち k b ) は枯草菌の g gt遺 幅した。増幅断片(1.7 は,枯草菌 GGTが耐塩性であることを見出し 4 1 伝子の ORFの N末端に BamHIサイ トを , C末 醤油躍に添加することにより,醤油のうま味を増 s t Iサイトを付加した形のものであり , 端に P 強する方法を開発し,すでに報告した九 醤油と BamHIと P s t Iで 処 理 し た の ち ,B. 出 η HIと 違って味噌の場合は,固形分が多いが,発酵中の P s t Iで切断した pQE‑ 80Lに接続し, pCY162と タンパク質の分解経路は同じである 。 CY162は ggt遺伝子の開始 コ ドンの前 した。 p a c i l l u s属細菌の GGTが耐塩性であ ここでは ,B に MRGSH GSという 1 2アミノ酸残基を付加し 6 ることと組換え枯草菌 GGTの高発現株の育種に た形になっている 。そ こで,オリゴヌクレオチド ( 5 ' ‑gaggagaaat t a a c t at g a a a a g a a c g t g g a a c g t c ‑ 3 ) ' ついて報告する 。 とこれに相補的なオリゴヌクレオチドを用いてク イックチェンジ法により , この 1 2アミノ酸に相当 【方法など】 プラスミド する塩基を欠失させた。得られたプラスミドの プラスミド pMH2289は,大腸菌一枯草菌聞の SD配 列 の 少 し 上 流 に あ る EcoRIサイ 卜から シャトルベクタ ーである pHY300PLKに枯草菌 P s t Iまでの塩基配列が正しいことを確認した後, のg gt遺伝子を発現調節領域ごとクローニング このプラスミドを EcoRIと P s t Iで切断した。 ‑52‑ 中味研報告 第32号(2011) 発現を比較した。 I P T G添加後, 5 1 8 n . 1 • • 1時間ごとに 3 時間まで菌を回収し, SDS ーポリアクリルアミド 電気泳動に供し た結果を 図 4に示した。 誘導後 3 7 合 ℃で培養を行ったものは,誘導後の全菌体サンプ ル中に分子量約 6万のタン バ ク質が有意に増加し ているのが見られた 。 これは GGTの前駆体の分 子量に相 当する 。 このバンドは無細胞抽出液サン プルではほとんど見られなかったことから ,誘導 3 r cで培養した場合, 後 図 3 プラスミド p C Y 1 6 7の構造 GGTの前駆体が不溶体 として蓄積したと考えられた 。 一方,誘導後 2 0C 0 で培養したものは ,全菌体サンプ Jレにも無細胞抽 得られた1.7 k bの DNAフラグメントと pCY162 出液にも前駆体の蓄積はそれほど多くなく,菌体 を EcoRIと P stIで 切 断 し て 得 ら れ た 4 . 7 k bの サンプルでは DNAフラグメントを DNAリガーゼでつなぎ合わ 分子量約 せ , p CY167を 得 た (図 3) 。 これにより,このプ いるのが確認できた。 ラスミド上の g gt遺伝子は,開始コドンから終始 5万の位置のバンドが誘導後に増加して 無細胞抽出液を用いて コドンまでの聞の配列が野生型の枯草菌の g gt造 伝子と全く同じ配列となり, GGTの大サブユニットに相当する r‑GpNAの加水分解反 応 と 転 移 反 応 の 活 性 測 定 を 行 っ た。 その結果, T5プロモーターの制 SDS‑ポリアクリルアミド電気泳動の結果から予 3 r cで培養した場合の転 御を受ける形となった。 p CY167で大腸菌 SH641 想されたとおり ,誘導後 株6) ( F‑d .g g t ‑ 2recA56rpsLs r 1 3 0 0 : : Tnl0)を形 移活性は 2 9 . 7mU/mgであるのに対して, 2 0C 質転換して, C Y168株を得た。 で培養した場合は 4 8 1mU/mgであり, 2 0Cで 0 0 6倍比活性が高いことが分かった。 培養した方が 1 CY168株の GGT発 現 以上の結果から, I P T Gによる発現誘導後の培 養は 2 0Cで行うのが適当であると考えられた。 CY168株 を 1 0 0 m lの LB培 地 中 3 7Cで 2時 間 0 0 IPTGを 終 濃 度 O.5mMになるよう GTの 誘 導 を 開 始 し に添加することによって G 培養した後, CY1 6 8株のペリプラズム 画分からの GGTの精製 た。その後 ,3 r Cで培養を続けた場合と, 2 0Cに CY168株を 200mlの 100μg /m!アンピシリン GGTの を含む LB培地で培養後,すでに報告した方法に 0 シフトダウンして培養した場合に分けて 従 っ て ペ リ プ ラ ズ ム 画 分 を 調 製 し た η。ぺリプラ 1 2 3 4 5 M 6 78 91 0 ズム画分をギカ。 バイトカラム(1.1 x2 . 1 c m )に アプライし, ro‑OOT リン酸カリウム緩衝液 ( pH7 )の 10mM‑‑1Mでグラジエント溶出した(図 5A) 。 GGT活性の高かった 2 6‑ ‑3 4番のフラクションを A) 6 " ﹄ ‑ Z l D 1 5 刻 . , . 活 3 ・)s 崎 5 内 ・ 』・ .. . . . . 一 3 。 ( 2 4 . 0rg);6 ‑ 9,I P T G添加後 2 0 ℃で 0 ,L 2 ,3時間培養後の全菌体;1 0,同 3時間後 の無細胞抽出液 ( 4 8 . 3r g) 。 の無細胞抽出液 " a a・ eas a ‑ 00 ' S 3e リアクリルアミド電気泳動 . I P T G添加後 3 T Cで A ),2 00Cで培養した場合 ( 8) . 培養した場合 ( M, 分 子 量 マ ー カ ー 1‑4, I P T G添 加 後 3 7'Cで 0 ,L 2 ,3時間培養後の全菌体;5 ,同 3時間培養後 . . . . ・ EUEE ・ ‑e ‑‑ v‑s ‑3 2 ' te ae o‑‑o S D S・ポ a 3 図 4 菌体と無細胞抽出液サンプルの B) ‑・ ー ・ 胴 . . . . 陶 帽 図5 巳U 中味研報告 第32号(2011) 合一し, SDS ーポリアクリルアミド電気泳動に供 e r m i n a lT h r ‑ 3 9 1i ns m a l l g l u t a m i ca c i d :N t して評価したところ(図 5B),高精製度かっ高収 s u b u n i ti st h en u c l e o p h i l e. Biochemistry 77.5%)で GGTを精製することができた。 率 ( 3 9 : 7 7 6 4 ‑ 7 7 7 1( 2 0 0 0 ) . 最終標品の比活性は 3 7 . 1U/mg ,収量は 4 7.9U 司 .Wada.H .Kumagai. 2.T .O k a d a .H .S u z u k i .K andK .Fukuyama. C r y s t a ls t ru c t u r e so f であった。 わずかな量の CY168株の培養で,高収率で精 r‑glutamyltranspeptidasefromE .c o J ia 製度の高い酵素標品を得ることができるようにな k e y enzyme i n gl u t a t h i o n e metabolism, り , GGTを利用しやすくなった 。 andi t sr e a c t i o ni n t e r m e d i a t e .P r o c .Natl . Acad.S c i .USA1 0 3 : 6 4 7 1 ‑ 6 4 7 6( 2 0 0 6 ) 3.鈴木秀之,和田啓,福山恵一. ト グ ル タ ミ 納豆菌 GGTの遺伝子ク ローニングと発現 枯草菌と納豆菌の GGTの違いは,コーディン ルトランスペプチダ ーゼ の立体構造に基づい 6 1塩基のうち塩基置換が起きている グ領域の1.7 た成熟化と酵素反応機構.蛋白質核酸酵素 6カ所, 5 8 7アミノ酸残基のうちアミノ酸 箇所が 1 5 4 : 2 4 5 ‑ 2 5 1( 2 0 0 9 ) . 置換が起きている箇所が 4カ所あるに過ぎず,極 .S u z u k i .andH.Kumagai. 4.H .Minami,H め て 類 似 し て い る 。 そこで, pCY167の 枯 草 菌 S a l t ‑ t o l e r a n t r‑ g l u t a m y l t r a n s p e p t i d a s ef r o m ggt遺伝子の開始コドンから終止コドンの領域 B a c i J J u ss u b t i J i s 1 6 8w i t hg l u t a m i n a s e gt遺伝子の開始コドンか をそっくり納豆菌の g .3 2 : 4 3 1 ‑ a c t i v i t y .EnzymeM i c r o b .Technol ら終止コドンの DNA配列に置き換えた構造を持 4 3 8( 2 0 0 3 ) . つプラスミドを作製した。 しかし,このプラスミ 5 .K .KijimaandH .S u z u k i . Improvingt h e ドで形質転換した大腸菌は,納豆菌の GGTを発 umamit a s t eo fs o ys a u c ebyt h ea d d i t i o n 現しなかった 。納豆菌の GGTのコドンユーセー g l u t a m y l t r a n s p e p t i d a s ea s o fb a c t e r i a l r‑ T と比較すると, ジを枯草菌の GG ag l u t a m i n a s et ot h ef e r m e n t a t i o nm i x t u r e . 3つのコドン が大腸菌にとってコドンユーセージが極めて低い コドンに置き換わっていたが,そのことが GGT .4 1 : 8 0 ‑ 8 4( 2 0 0 7 ) EnzymeMicrob.Technol 6.H .S u z u k i .H .Kumagai,T .E c h i g o,andT . T o c h i k u r a .M o l e c u l a rc l o n i n go fE s c h e r i c h i a が発現しない理由とは考えにくし、。 ‑ c o l iK ‑ 1 2ggt andr a p i di s o l a t i o no fr 【引用文献】 g l u t a m y l t r a n s p e p t i d a s e .B i o c h e m .B i o p h y s . 1.M. I n o u e, J . Hiratake, H. Suzuki, H. 19 8 8 ) R e s .Commun.1 5 0 : 3 3‑ 3 8( .S a k a t a . I d e n t i f i c a t i o n Kumagai,and K .T o c h i k u r a . 7 .H .S u z u k i,H.Kumagai,andT o fc a t a l y t i cn u c l e o p h i l eo fE s c h e r i c h i a r‑ G lu t a m y l t r a n s p e p t i d a s efromE s c h e r i c h i a c o l i r‑ g l u t a m y l t r a n s p e p t i d a s eby J iK ‑ 1 2 :f o r m a t i o nandl o c a l i z a t i o n . J . c o r‑monofluorophosphono d e r i v a t i v e o f B a c t e r i ol .1 6 8: 13 3 2 ‑ 1 3 3 5( 1 9 8 6 ) . ‑54‑ 中味研報告 第32号(2011) 新規ヒト子宮筋腫モデルマウスを用いた味噌経口摂取による 子宮筋腫増殖抑制効果についての検討 武田 卓 , 築 地 謙 治 . LiBin. 八重樫伸生 Antiproliferativee f f e c tofMisoonuterineleiomyomac e l l sinv i t r oandi nvivo TakashiTAKEDA,KenjiTSU1JI .BinL1,N0buoYAEGASH1 C e n t e rf o rT r a d i t i o n a lA s i a nM e d i c i n e ,T ohokuU n i v e r s i t yG r a d u a t eS c h o o lofM e d i c i n e ,1 ‑ 1 S e i r y o ‑ m a c h ,i Aoba,S e n d a i9 8 0 ‑ 8 5 7 4 ,J apan 1 実験方法 子宮筋腫は良性疾患だが,女性の約 25~50% に 認められ過多月経 ・月経痛 ・圧迫等により QOL 東北大学利益相反委員会,東北大学倫理審査委 を著しく障害する 九 外科治療が標準治療とされ, 員会,動物実験委員会で承認された実験プロトコ 子宮摘出の 三分のーは筋腫に対して行われてい ールに基づ いて研究をおこなった。 る。筋腫は女性ホルモン(エストロゲン)依存性 1)試料 に増殖するため,閉経でエス卜ロゲン分泌がなく 中央味噌研究所より供与された米味噌(仙台系, なれば治療の必要性はなくなる 。子宮筋腫に対す 信州系)を使用した。味噌を等量の蒸留水に溶解 る薬物治療では,エス卜ロゲンによる筋腫細胞増 懸濁し,約 5 分間ボイル後に遠心し上清部分を実 殖機構を抑制する GnRHアゴニストが使用され 験に使用した(以下,味噌上清と表記)。 るが,重篤な副作用のため長期投与できない。閉 細胞は子宮筋腫モデル細胞株 (ELT‑3細胞) 経前の筋腫増殖速度を抑制し閉経まで乗り切れば を用いて,過去に報告されている培養方法により 子宮温存薬物療法は達成されるが,このような薬 3 7 度の C0 2インキュベーター (5%)下で培養した九 物は存在しない。疫学的には,大豆製品摂取によ PPARr の阻害剤である b i s p h e n o lAd i g l y c i d y l る筋腫発症抑制の可能性が報告されている 九 大 e t h e r (BADGE) は Sigma‑Aldrich ( S t.L o u i s, 豆中には植物性エストロゲンであるイソフラボン M O,USA)よ り 購 入 し 使 用 し た 。 BADGEは が含まれており , そのなかの ジエニスタインにつ d i m e t h y ls u l f o x i d e(DMSO)に溶解し培養液中で いては我々の先行研究において子宮筋腫細胞増殖 0. 1%v ol /v o lになるようにし,コントロール細胞 に対する PPARr を介する抑制効果を認めてい . 1 %vol /v olになるよ にも DMSOを培養液中で 0 る九 我々が最近開発したヒト子宮筋腫モデルマ うに添加した。 ウスは長期間にわたり筋腫の組織学的構造維持が 2) 細胞増殖評価 可能である 九 今回,このモデルも含めて味噌によ 細胞増殖を細胞数および MTSアッセイ ( C e l l る子宮筋腫増殖抑制効果について検討し,子宮筋 T i t e r9 6AqueousOneS o l u t i o nC e l lP r o l i f e r a t i o n 腫治療法の新たな展開を目的として実験を行った。 Assay( P r o m e g a ) ) で検討した。 東北大学大学院医学系研究科先進漢方治療医学講座 干9 8 0 ‑ 8 5 7 4仙台市青葉区星陵町 1 ‑ 1 T E L : 0 2 2 ‑ 7 1 7‑ 7 2 5 4 F A X : 0 2 2 ‑ 7 1 7‑ 7 2 5 8 E ‑ m a i l : t a k e @ m e d . t o h o k u . a c . j p ‑55‑ 中味研報告 第32号(2011) 3)SDS‑PAGEと westernb l o t t i n g 。 A 信州味噌 ( C e l lc o u n t ) 1 2 吉 の味噌上清を添加し 2 4時間後に細胞を回収した。 u HY ELT‑3は 10cmディッシュで培養し, それぞれ g l∞ 百 乏回 , 琶 1 5 0m MNaC , I 1m MEDTA,0 . 5 %NonidetP ‑ 4 0, 一 ││ │J J ど回 il 1mMNaF,1mMVandate,0 . 7 5m MPMSF,1 5% 咽 主 20 / g g l y c e r ol ]で溶解した。各サンプルは ( 2 5mg/l a n e ) 0 : SDS‑PAGE10%gelを用いて電気泳動した。PVDF ノ 〆 / メンブレンに転写しリン酸化 p 4 4/4 2抗 体 C C e l l Etv/ 細胞は 1mlの l y s i sb u f f e r[ 5 0m MT r i s(pH7. 5 ), S i g n a l i n gTechnology)ならびにインタ一ナ jレコ ‑ a c t i n抗 体 C Sigma‑Al d r i c h) ントロ ールとして β " ・ ‑ ‑ ・ ・ 圃 B を用いて w e s t e r nb l o t t i n gを行った 。 信州味噌 ( MTSe..8Y) 12 4) ヒト 子宮筋腫 モデルマウス 1 . 0 摘あるいは子宮筋腫核出により摘出した子宮筋腫 ・ 0 マウスである NOGマウスの皮下に麻酔下で移植 02 J︑ / ‑ 一 ノ マウスには子宮筋腫組織移植の 4 8時間前にエス卜 br 。 。 しヒ卜子宮筋腫モデルマウスを作製した 。 NOG /J 0 e d N ︑ 〆 J / 組織を使用した 。子宮筋腫組織を細切し免疫不全 . / ‑ ‑ ‑p 0 " '06 i c ‑ ‑ ‑ ‑〆 08 患者同意のもと過多月経等の症状のため子宮全 ロゲンサポー卜のためのエス卜ロゲンペレットを 皮下に留置した。 安楽死後に移植組織片を摘出し,組織学的検索 c 仙台味噌 ( C e l lc o u n t) 1 2 0 苦 i !1∞ (HE染 色,エラスチカマ ッソントリクロ ーム 染 u 主回 L 色)をそれぞれ行い,子宮筋腫の組織構築およ 苦 ど田 び 特 性 を 検 討 し た 。 また,細胞増殖の指標とし てK i ‑ 6 7免 疫 染 色 , ア ポ 卜 ー シ ス の 指 標 と し て i TUNEL染色をおこなった。 ~ z 拍 20 0 : 一 ← L I ノ 〆 / /. , ,// . 1. / . 1 味噌上清投与実験では ,強制経口ゾンデ方によ り仙台味噌上清 O .lmlを連日投与した。 / , / . / 1) 床 I 噌上清 による 子宮筋腫細胞増殖抑制効果 仙台味噌 ( MTS8..8Y) 1 . 0 味噌上清添加後 7 2時間後に細胞数および MTS アッセイにより細胞増殖を評価したところ,仙台 。 。 。信 系,信州系ともに抑制効果を認めた ( 図 1) 0. 4 州系でコントロールの約 40%,仙台系で約 25%に 0. 2 / 〆 ける PPARr の関与を明らかにしてきた。 そこ / 。 。 ラボンのジェニスタインによる筋腫細胞抑制にお ノ 抑制された。 これまでの検討では,大豆中イソフ E /J "・ / ' / E 一人/ ・ ‑ ‑ "一 / ・ ・ ・ 。 2 実験結果および考察 で , PPARr の 特 異 的 阻 害 剤 BADGEの影響を 検討した。 ジェニスタインによる細胞増殖抑制効 図 1 味噌上清による子宮筋腫細胞増殖抑制効果 果とは異なり,昧噌上清による細胞抑制効果に対 ‑56‑ 中味研報告 第32号(2011) C 仙 1信 1仙 1 0信 1 0 P弔 "1 4 2 p ‑ a c 制n 図 2 味噌上清による ERKリン酸化 図 3 ヒ卜子宮筋腫モデルマウスのエス卜ロゲン 依存性 +)では子宮筋腫組 卜ロゲン ペ レットあり E2 C して BADGEは抑制効果を解除できなかった。 以上より ,味噌上清による抑制効果においては, 織の組織学的構築が維持されているのに対して, PPARrと異なるメカニズムを介することが明 ら エストロゲンペレ ッ 卜なし E2(一)では部分的 かとなった 。 な 壊 死 を 認 め た。 さらに. GnRHアゴニス卜 次に様々な細胞増殖シグナル伝達系において重 (ブセレリン)投与によりマウス 卵巣機能抑制す MAPキナ ーゼ系に対する味噌 上清の影響を検討した。 味噌上清は ERKをリン 。 このリン酸化の細胞増殖にお 酸化した ( 図 2) ることにより ,ほとんどの移植子宮筋腫組織が壊 死に陥っていることがわかった。 これより,この ける意義は不明であり,今後検討していく必要性 るエストロゲンではある程度の移植組織の維持は がある 。 可能であるが不十分であり,長期の維持にはエス 2) ヒト 子宮筋腫 モデルマウスを用いた 検討 ト卜ゲン補充が必要とされることが判明した。移 要な役割をはたす モデルにおいてはマウス 自身の 卵巣か ら分泌され ヒト 子宮筋腫 モデルマウスに味噌上清の経口投 週でも同様の検討を行ったが E2C 一)とブ 植後 8 与実験をおこなった。味噌は i nv i t r oでより強い セレリ ン投与との差を認めず,どちらも広範囲な 細胞増殖抑制効果を認めた仙台系を使用した。 モ 壊死を認めた C d a t anotshown)。 テソレ開発直後であり,モデルそのものの特性が十 以上の検討より ,エ ストロゲンペレッ卜による 分に解明されてなかったため,とりあえず安定的 ホルモン補充のない状況下で、 の味噌上清投与によ に移植が確認できていた移植後 8週まで投与を行 る検討. GnRHアゴニス卜(ブセレリン)投与 った。摘出した組織からの検討では .HE染色, に味噌上清投与を追加することによる増強効果検 エラスチカマ ッソン卜リクローム染色での組織学 討が可能であると考えられた。 的構築に 差 を認めず,また細胞増殖 ・アポトーシ i ‑ 6 7免疫染色 ・TUNEL染色に スにかんしても K 3 要約 よる評価では差を認めなかった C d a t anot 味噌上清に子宮筋腫増殖抑制効果を認め ,味噌 shown)。 このモデルにおいては,マウス自身の の系統の違いにより抑制効果の違いを認めた 。 ヒ 卵巣か ら分泌される エストロゲンに加えて,エス 卜子宮筋腫 モデルマウスを用いた検討では ,投与 トロゲ ンペレッ トか らの大量のエスト ロゲンが補 8週では抑制効果を認めなかった。移植 4週での 充された状況下にあり,味噌上清による子宮筋腫 検討では,エストロゲン補充がない状態でも筋腫 細胞増殖抑制効果が十分に認められない可能性が 組織が一部維持されており,過剰のエストロゲン 考えられた 。 そこで, ヒト 子宮筋腫 モデルマウス が存在しない状況下での味噌上清による 抑制効果 での子宮筋腫のエストロゲン応答性.GnRHア 検討が可能と思われた 。今後はさらに投与量 ・投 ゴニストに対する反応が不明であったため,条件 与 期 間 の 検 討, 味 噌 か ら の 有 効 成 分 抽 出 方 法 。移植後 4 週での検討で 検討をおこなった ( 図 3) C DMSOによる抽出 等)の検討を 加えてい くこ は,エス卜ロゲンペレッ卜のありなしでは,エス とも必要とされる 。 ‑57‑ 中味研報告 第32号(2011) GynecolE n d o c r i n o l2 0 0 9 ; 2 5: 40 3 ‑ 4 0 9. 4 文献 4) T s u i j i, K TakedaT,L iB,KondoA,I toM, 1) WalkerCL,S t e w a r tEA.U t e r i n ef i b r o i d s : Y a e g a s h iN .E s t a b l i s h m e n to faN o v e l t h ee l e p h a n ti nt h er o o m .S c i e n c e2 0 0 5 ; 3 0 8 : X e n o g r a f t Model f o r Human U t e r i n e 1 5 8 9 ‑ 1 5 9 2 . Leiomyoma i n Immunode f i c i e n t M i c e . TohokuJExpMed.2 0 1 0 ; 2 2 2 ( 1 ) : 5 5 ‑ 61 . 2) Nagata C, Takatsuka N, Kawakami N, S h i m i z u H . Soy p r o d u c t i n t a k e and 5) I s o b e,S . Takeda,T . Sakata,M.Miyake, premenopausalh y s t e r e c t o m yi naf o l l o w ‑ A .Yamamoto,T. Minekawa,R .Nishimoto, ups t u d yo fJ a p a n e s ewomen.EurJCl i n F .Okamoto,Y. Walker,1 .Kimura,T . Nutr2 0 0 1 ; 5 5 : 7 7 3 ‑ 7 7 7. Dual r e p r e s s i v ee f f e c to fa n g i o t e n s i nI I ‑ 3) Miyake, AT akedaT,I s o b eA,Wakabayashi t y p e 1r e c e p t o rb l o c k e rt e l m i s a r t a n on A,NishimotoF,M o r i s h i g e, K SakataM, a n g i o t e n s i nI I ‑ i n d u c e da n de s t r a d i o l ‑ i n d u c e d Kimura T . R e p r e s s i v e e f f e c t o f t h e u t e r i n el eiomyoma c e l lp r o l i f e r a t i o n . Hum p h y t o e s t r o g e n g e n i s t e i n on e s t r a d i o l 3・4 4 0 ‑ 4 4 6,2 0 0 8 . R e p r o d2 i n d u c e du t e r i n el eiomyomac elp r o l i f e r a t i o n. n6 中味研報告 第32号(2011) 味噌の低アレルゲン性と健康機能性の実証 森山達哉 E v a l u a t i o no fH y p o a l l e r g e n i c i t yandH e a l t h ‑ P r o m o t i n gE f f e c to fMiso TatsuyaMORIYAMA DepartmentofA p p J i e dL i f eS c i e n c e s , S c h o o Jo fAgricu J tu r e , KinkiU n i v e r s i t y , Naka‑machi3 3 2 7 ‑ 2 0 4 ,N ara,地 r a,6 3 1 ‑ 8 5 0 5 , Japan はじめに について,そのタンパク質バターンや各種アレル 味噌は、古くから食されてきた伝統的な食品で, ゲンレベル,さらにはエタノール抽出物における 調味料としても幅広く使用されている。一般的な 脂質代謝適正化能を検討した。この研究によっ 味噌の主成分は大豆であるが,大豆にはさまざま て,味噌の低アレルゲン性と優れた健康機能性を な生理機能成分が含まれていることが明らかにな 実証することを試み た。 ってきている。たとえば,大豆タンパク質やペプ チド,イソフラボンやサボニン,レシチン, リノ 実験方法 ール酸などである 。従って ,主に大豆から製造さ ( 1 ) 味噌サンプル れる味噌にもまたこれらの健康機能成分が含まれ 味噌は中央味噌研究所より供与いただいた。実 ており,また他にも米麹由来の成分や,発酵によ 験に使用した味噌とその原材料の一覧を表 1に示 って新たに生成される有益成分や,ペプチドのよ す。また,その様子を 図 1に示す。今回検討した うに発酵により高機能化される成分などが豊富に 味噌は,甘口米みそ 1種類,辛口米みそ 7種類, 含まれる。 麦みそ,豆みそ各 1種類である。 しかしながら,大豆は 5大アレルギー食品とし 表 1.実験に使用した味噌とその原料 て,一定のアレルギー誘発リスクを有しているこ は健康危慎要因として認識されてきている 。 この ような,新しい大豆アレルギーも含めて味噌では そのアレルゲン性が低減化されていることが示唆 した例はほとんど見られない。 U 戸 されるが,実際に個々のアレルゲンに対して解析 R U F u n υ E﹂ El 小児だけでなく成人においても大豆のアレルギー 精 酒 精 飴精精精精精酒 水酒酒酒酒酒 '塩 塩塩塩塩塩塩塩塩食 食食食食食食食食 '豆塩 豆豆米米米米米米大食 大大 '豆豆豆豆豆豆麦豆 米米大大大大大大大大 る新しい大豆アレルギーが明らかとなっており, 八円 そそそそそそそそ みみみみみみみみ 米米米米米米米米そそ 口口口口口口口口みみ 甘辛辛辛辛辛辛辛麦豆 とが知られている。また,近年,花粉症と関連す そこで本研究では,我が国における主要な味噌 近畿大学農学部応用生命化学科応用細胞生物学研究室 干6 3 1・8 5 0 5奈良市中町3 3 2 7 ‑ 2 0 4 T E L : 0 7 4 2 ‑ 4 3 ‑ 8 0 7 0F A X : 0 7 4 2 ‑ 4 3 ‑ 8 0 7 0 E ‑ m a i l :t m o r i y a m a @ n a r a . k i n d a i . a c . j p nwu 中味研報告 第32号(2011) 脂質の合成や分泌過程を抑制することとなり,肝 実験に使用した各種みその写真 臓における脂質合成 ・分泌の簡便な評価系として 甘口米みそ 辛口 米みそA 辛口 米みそB 辛口 米みそ C epG2細胞は 使用できる 。 H DMEM培地に n o n e s s e n t i ala m i n oa c i dや抗生物質(ペ ニ シリン / ストレプトマイシン),及び 1 0%ウシ血清 ( F B S ) を加えて 3日に 1回の割合で継代培養した。味噌 辛口 米みそD 辛口 米みそE 辛口 米みそF サンプルはエタノ ールf 由出したものを士音I 也 辛口 米みそG 豆みそ 麦み そ を抜いた無血清培地) の 1 0 0分の l容加え, コン トロールはエタノ ールのみを加えた。添加 2 4時間 後に培地を回収し,培地中に含まれる │ 各種みその製法や風味, 色合いなどに多様性 ( 個性) がある │ 図1.実験に使用した味噌の写真 VLDLを アポ Bタンバク質に対する 2 種類の抗体を組み合 わせたサンドイツチ ( 2 ) 味噌からのタン パ ク質 の抽出 ELISA系にて測定した 。 結果と考察 一定量の味噌サンプルに水を一定量加え , ミキ サ ーにて撹梓した 。得られた抽出物を ( F B S ( 1 ) 各種味噌のタン パ ク質パ ターン B r a d f o r d まずはじめに, 1レーンあたり 10μgのタン パ 法にてタンパク定量し ,一定 レベルのタンパク質 ク量となるように味噌サンプルを電気泳動し, を電気泳動やウエスタンブ ロッティングに供した。 CBB染色によってタン パク質 のバ ター ンを確認 ( ① アレルゲンレベルの 評価 した。 いずれの味噌も,大豆抽出物と比べると明 各大豆アレルゲンの検出は各大豆アレルゲンに 瞭なタン バク質バン ドが消失して,低分子化して 対する特異抗体を用いたウエスタ ンプ ロッティン いることが明らかであった ( 図 2) 。タン パク質 グ法を用いた。すなわち, 味噌サンプルを SDS のアプライ 量 を 1レーンあたり 1 00μgに増やし SDS‑PAGEにて電気泳動を行ったのち, PVDF膜にセミドライブロ ッティング法にてタ ンパク質を転写した。転写後の PVDF膜はブ ロ が,米みそと比べて麦味噌や豆味噌ではややタン ッキング後アレルゲンに対する抗体(1次抗体) パ ク質の バ ターンが異なり ,特徴的なバンドを示 PBSTにて洗浄後,抗マウス I g G または抗ラビット I g Gなどの 2次抗体を用いて 反 応 さ せ , 最 終 的 に は HRPの 化 学 発 光 基 質 ( E C Lw e s t e r nb l o t t i n gd e t e c t i o nr e a g e n t )を しf こ。 これは材料が異なるためや , 発酵熟成期間 用いて発光させ, X線フィルムに 露光させた。 X ~ 化し , と反応させ, 線フィルムはレンドール,酢酸, レンフィ ック ス て泳動すると , いくつかのバンドが見られた ( 図 3)。味 噌 間 で は ,概ね似たノ f タ ー ンであった みそのタンパク 質パターン (1) 1 9ンパウ量一定 { 約1 0μg /I o" . )I 1凹ï5 l 分子量 l 民主j zm 1 5 を用いて現像 し,得られた像をスキャナにて取り 1 0 込みデ ー タとした 。 なお ,使用した大豆アレルゲ 1 5 トリプシンイン ヒビタ ーを除 1 0 ンに対する抗体は, いてすべて我々が作製したものを用いた 。 ( 4 ) 脂質代謝調節能の 評価 ヒ ト培養肝細胞由来の H epG2細胞からのアポ B含有リポタンパク質 (VLDL)分泌を指標にし て検討した 。 この細胞は脂質を合成しアポ Bタン パク質とともに VLDL様分子として培地中に分 甘 A B C 0 E FG 麦 豆大 みみ 豆 米 辛口米みそ そそ み そ │ いずれのみそも大豆に比べるとタンパク質が低分子化している │ 図 2.各種味噌のタンパク質パターン 1 0 μ gタ ン パ ク 質/l a n eで泳動 泌する 。従って,この過程を抑制することにより , ‑60‑ 中味研報告 第32号(2011) みそのタンパク 質パ ターン (2) みそにおける大豆アレルゲンの検出 (1) ( kD・} ( 化学発光法による高感度検出) 間四市習岡国 現幼児で発生するクラス 1の大豆アレルギーの 費量も主要なアレルゲン . 覇軍麻疹やアトピーなどに関連。 ダニの 7 レルゲンとも情造が似ている。 2 5 2 0 1 5 │みそのタンパ ク量 一 定 1 0 8 n.1 0 . 5 μ 9/1 3 7 • 豆みそ 麦みそ Er‑ G‑ ‑そ ‑み EL‑ D一米 ‑口 口口‑ c 一辛 A一 お叫 A円 { み モ 甘ロ米みそ 22 倫 "uw 辛口米みそ T 5g 果 2 5 A B C 0 E F G 麦豆 o na 甘 │ いろんなみそのタン パク質 パターンに個性が見られる │ 図3 . 各種味噌のタンパク質パターン 100μgタ ン パ ク 質 /l a n eで泳動 図4 . GlymBd301 くの残存レベル みそにおける大豆アレルゲンの検出 (2) の長さが影響しているものと考えられた 。特に, 聞図面市町民副理 豆味噌ではバンドはほとんど確認できず,スメア ( 化学発光法による高感度検出) 主に事L 幼児で発生するヲラス 1の大豆アレルギーの 2番 目に多いアレ ルゲン ,奪麻疹やアトピーなどに関連。 貯蔵タンパウ貨の一種。 な泳動像が見られた。豆味噌は長期間熟成にてタ ンバク質の分解が他の味噌と比べてより進んでい │ みそのタンパク量一定 ることが示唆された。 0 . 5μ9 /1 8 n .1 3 7~ 豆みそ A B C 0 E F G 麦みそ お叫 を行い ,大豆そのものと比べた。また味噌間で 甘口米みそ 特異抗体を用いた各種大豆アレルゲンの検出 59 ︐ ︐ 0μ 2 5 on a ( 2 ) 各種味噌のア レルゲンレベル 辛口米みそ 図 5.GlvmBd281 くの残存レベル 低 減化 レベノレを相対比較した。まず大豆のクラ ス 1食物アレルゲンと考えられるGlymBd30K, GlymBd28K,78グロプリン, アレルギ ーの 2番目に多いアレルゲンであり,奪 トリプシンイン ヒ ビター,について調べた。GlymBd30Kは Ogawa 麻疹やアトピーなどに関連する。 らによって同定され た大豆の主要 アレルゲンの一 ビシリン ファミリーに属する貯蔵タンパク質の つで,乳幼児で発生するクラス 1の大豆アレルギ 一種である。この場合 GlymBd30Kの場合と類 ーの最も主要なアレルゲンである 。構造的にはパ 似の結果を示し,甘口米みそや一部の辛口米みそ パインス ーバ ーファミリーに属するシステインプ では ,一部残存が確認されたが,それ以外の昧噌 ロテアーゼ様構造をしているが,活性中心のシス ではほとんど検出できなかった ( 図 5) 。 テイン残基が変異しているため酵素活性は認めら つづいて 7Sグロプリンについて検討した。こ れない。本アレルゲンは尊麻疹やア卜ピーなどに れは,乳幼児や成人で発生するクラス 1の大豆ア 関連する。ダニのアレルゲンとも構造が似てい レルギーのアレルゲンであり, 尊麻疹や下痢, る。解析の結果,大豆そのものと比べていずれの FDEIAなどに関連することが知られている 。症 味噌においても低減化が進んでいた。甘口米みそ 状は比較的重篤とされる。本分子は大豆主要貯蔵 や一部の辛口米みそでは,一部残存が確認された タンバク質の一種であり ,大豆タンパク質の約 が, それ以外の味噌ではほとんど検出できなかっ 1 / 4を占める 。 またこのタン バク質は糖鎖 を有し た( 図 4)。 ており糖タンバク質である。 図 6に示すようにい ずれの味噌でも 7Sグ ロプリンの 3つのサブユニ ッ トとは異なる 60kDa付近に抗体が反応する バ つぎに Gl ymBd28Kについて検討した。 Gl ym Bd28Kは主に乳幼児で発生するクラス 1の大豆 ンドを認めた。 しかしながらこのバンドは抗体が ρhv 中味研報告 第32号(2011) 続いて, 大豆のクラス 2アレノレゲンについても みそにおける大豆アレルゲンの検出 (3) EE 由里属国園田暗躍贋掴 2アレルゲンは花粉抗原と交差 検討した。 クラス (化学発光法による高感度検出) 性が強く,特に大豆の場合はシラカパ, ハン ノキ e t v l及び B e t v 2と 属花粉のアレルゲンである B 幼児や成人で発生する?ラス 1 の大豆アレルギーの 事L アレルゲン , 軍事麻疹や下痢.FDEIAなどに関連。比較的責篤。 大豆主要貯蔵タンパヲ貨の一種。 交差するGlym4及びGlym3が知られている 。 │みそのタンパク量一定 1 0岬 / I a n el Glym4に関しては,いずれの味噌でもほとんど α a 検出できない程度に低減化していたが, Glym3 は逆に比較的残存しているものも多かった 。 しか D E F G しこの場合も Fの米みそや麦みそ, 豆 みそではほ 豆みそ c A B 麦みそ 甘口米みそ 1 0 5 {μg /I e n ・ } とんど検出不能で あった。 辛口米みそ みそにおける大亘アレルゲンの検出(5) E圃 図6 . 7Sグロプリンの残存レベル (化学発光法による高感度検出) 主に成人で発生するヲラス 2の大豆アレルギーの主要アレルゲン 。 花粉症と併発する。定例は主!こ OAS やアナフィラキシーなど。 PRタンパヲ賀の一種で病書虫なと・のストレスで治える。 みそにおける大豆アレルゲンの検出 (4) 晶画司直田面周囲E・P;c;reCI(化学発光法による高感度検出) │みそのタンパク量一定 1 0μνlanel 大豆 ( kO.) ・ )ロ 〈皿 / 1 8 n ・ ・ A B C D E F 米 み そ 一旦みそ 5 曾 内 1 0 U 1 ・ ‑ 1 5 麦みそ クラス 1の大豆アレルギーの主要アレルゲンの一つ。海外では 報告例が多いが,わが国では少ない傾向。消化勝棄(トリプシン) の阻害活性を有するが.抗ガン作用などの織能性も示唆されている。 抗鎗尿病作用 辛口米みそ 図 8.Glvm4の残存レベル 1 5 1 0 5 甘 w・ 叫 果 A B C 0 E F G み 辛口米みそ そ みそにおける大豆アレルゲンの検出(6) 図 7. トリプシンインヒビターの残存レベル m遍画a;・岨里担置祖国周彊 反応する非特異的バンドであることが示唆され, 実際にタンパク質染色で見た際には該当する位置 主に成人で発生する?ラス 2の大豆アレルギーの 2番目に多い アレルゲン 。花粉症と併発する。症例 I ; tGlym4同織にOASや アナフィラキシーなど。アヲチン結合タンパヲ貨で,多くの纏物界 で普通的に存在するため.汎アレルゲンとして有名。 ま │みそのタンパク量 一 定 1 0刈 / I a問│ AF に明瞭なタン パ ク質バンドを認めなかった。 (化学発光法による高感度検出) 園理問 ( kO.) 1 5 た , ウエスタンブロッティングでは, 7Sの 3つ 5 甘 た。 よって, 7Sグロプリンはいずれの味噌でも 長 み A B C 0 E F G 辛口米みそ 豆みそ 1 0 {岬 /I . n .) 愛みそ のサブユニットの位置にはノインドを認めなかっ ‑ ー ー そ 高度に分解されていると判断した。 図 9.GIvm3の残存レベル つづいて ,海外での大豆アレルゲンとして報告 されているトリプシンインヒビターについて調べ f こ。 これもクラス lアレルゲンとして認識されて ( 3 ) 各種味噌の抽出物の脂質代謝調節能 いるが,我が国では報告は少ない。 このアレルゲ つぎに,各種味噌のエタノ ール抽出物を調製し, ンに関しては Fの辛口米みそと豆みそ以外の味噌 その脂質代謝調節能について, では原料の大豆と大差ないレベルが残存してい 来の HepG2細胞からのアポ B含有リボタンパク た。 よって, このアレルゲンは味噌醸造過程でも 質 (VLDL) 分泌を指標にして検討した。 その結 分 解 さ れ に く い こ と が 示 唆 さ れ た。 しかしなが 0に 示 す よ う に , い ず れ の 味 噌 の 抽 出 物 果 , 図1 ら,豆味噌はこの場合も明瞭に分解されているこ も , とが判明した(図7)。 ることが判明した。なかでも,豆味噌は強い抑制 ヒト培養肝細胞由 ヒト培養肝細胞からの VLDL分泌を抑制す 効果を示した。豆味噌は熟成期間も長く,味噌の 中味研報告 第32号(2011) ヒ卜由来培養肝細胞からのアポ B含有リボタンパク質 ( VLDL:悪玉コレステロール) 分泌への影響 ヒ卜由来培養肝細胞の増殖への影響 辛 口 米 み そE 辛 口 米 み そG 辛 口 米 み そD 甘口米みそ 辛口米みそA 辛 口 米 み そB みそ 豆みそ 辛 口 米 み そF 辛口米みそ C ヱタノlルのみ Z ‑ 相対細胞数 辛口米みそE 辛口米みそG 辛口米みそ D 甘口米みそ 辛口米みそ A 麦みモ 辛口米みそ 日 亘みそ 辛口米みそF ヱタノlルのみ 辛口米みそC いずれの味噌鏑出物でも細胞毒性は見られなかった いずれの味噌も分泌抑制効果を示したが,より有効な 味噌もいくつか見られた 図1 0.肝細胞の脂質代謝調節能 図1 1.細胞増殖への影響 色合いも濃く, メラノイジン色素も多いことが推 り , また脂質代謝調節能においても活性を示すこ 察される。また, 図 3で示されるように, タンノ f とが明らかとなった 。 アレルゲン性の低減化及び ク質の低分子化も進んでいたことなと、 から, この 脂質代謝調節能いずれも,熟成期間の長い豆味噌 脂質代謝調節能の関与分子は, メラノイジン色素 が優れており,このことから発酵熟成過程がアレ やタンバク質分解ペプチド, あるいは発酵熟成期 ルゲン分解や機能成分の増加といった健康機能性 間で配糖体から変換されるイソフラボンアグリコ に有益な変化をもたらすと考えられた。 ンなどの可能性が考えられる。実際に , ゲニステ インやダイゼインなどのイソフラボンアグリコン 謝辞 , ‑ ム 、 本研究は. (社)中央味噌研究所からの研究助成 回の結果と合致する 。 なお,いずれの味噌抽出物 を受けて行われました。関係各位に厚く御礼申し にも細胞に対する毒性はなかった(図 1 1 )。 上げます。 また,研究の実施にあたりご指導, には. VLDL分泌抑制効果が知られており, 守、、 にー 助言,ご協力いただきました河村幸雄教授,矢野 以上の結果より,味噌は,従来から知られてい たクラス 1食物アレルゲンのみならず,新しいク えりか研究員,鵜津有希研究員,実験担当の学生 達に感謝いたします。 ラス 2食物アレルゲンにおいても低減化してお ‑63‑ 中味研報告 第32号(2011) 研 窃 識報 4告 . 長期熟成昧噌の給与によるウシの脂肪肝予防効果に関する研究 折 橋 毅 典, 増 子 孝 則 , 吉 田 愛 美, 小 原 嘉 昭 , 世 良 健 司 Effectsofl ongmaturedMisoi nthepreventionoffattyl i v e ri nc a t t l e T a k e n o r iORIHASHI,T a k a n o r iMASHIKO,ManamiYOSHIDA,Yosh ia k iOBARAandK e n j iSERA MeuiFeedC o . .Lt d .Departmento fR&D K a n d a ‑ S u d a c h o 1 ‑ 1 .C h i y o d a ‑ k u .T o k y o .1 0 1 ‑ 0 0 4 1 .Japan 要約 ウシの周産期疾病における主要な病態である脂肪肝は,畜産物の生産効率を低下させる大きな 要因であり , その予防は畜産において重要な課題となっている 。本研究では味噌の機能性に着目 して長期熟成味噌をウシに 6週間給与し,その後実験的な脂肪肝様を発症させるために 4日間絶 食させ,脂肪肝発症モデルにおける味噌の給与効果を観察した。肝機能マーカーである血紫 GOT,GPT,GGT濃度は絶食により有意に上昇したが,昧噌給与により低く推移し,特に GPTは絶食 2日後と 3日後で有意に低下した。 また,脂質酸化マ ーカーである血紫 TBARS値 は,味噌給与により有意に低下した。 これらの結果から,ウシへの長期熟成味噌の給与は,肝機 能改善効果を通して脂肪肝の発症を予防できる可能性が示唆された。 キーワ ー ド :味噌,ウ、ン,脂肪肝,肝機能,抗酸化能 一方, 日本伝統の大豆発酵食品である味噌には, 緒言 乳牛の脂肪肝は周産期疾病における主要な病態 様々な機能性成分が確認されており,そのなかで で,乾乳期での飼料の過剰給与,分娩後のエネル も, コリン , ビタミン Eなどは,脂肪肝の予防や ギー不足,ストレスなどが起因となり ,体脂肪か 抗酸化活性による肝機能改善が期待できると考え らの急激な脂肪動員によって血中の遊離脂肪酸 られる 。 また,ウシは塩分要求量が高く ,味噌を (NEFA) が増加し ,肝臓に過剰に脂肪が蓄積す 長期間給与可能であること,飼料として大豆や大 G e r l o f f,2 0 0 0,Katoh, ることによって発症する C 豆粕は多 く配合されていることから,味噌の有効 2 0 0 2 )。脂肪肝の牛では肝機能や免疫機能が低下 利用が可能と考えられる 。 し,産樗熱や乳房炎などの感染症も併発しやすく 本研究では,長期熟成味噌を問料として活用 なるため,乳生産性や繁殖成績などが低下し(小 し,これをウシに給与したときの脂肪肝予防効果 0 0 5 ),生産効率を低下させる大きな要因と 原 , 2 について検討した。 4 5万頭に対 なっている 。全国の乳牛飼養頭数約 1 し,脂肪肝疾病率は 5~1 5% と 言 われ , 経済的損 失も大きく , その対策は畜産において重要な課題 方法 1.供試味噌 味噌製造メ ーカー から提供された熟成期間の異 となっている 。 明治飼糧株式会社研究開発部 干1 0 1 ‑ 0 0 4 1東京都千代田区神田須田町 1 ‑ 1 連絡先;t . o r i h a s h i @ m e i i i f e e d . c oj ,p 64‑ 中味研報告 第32号(2011) なる 4 品の長期熟成味噌(麦味噌,豆味噌,赤色 表 1.給与飼料の組成 辛口米味噌,過熟赤色辛口米味噌)を供試した。 1日の摂取量 ( 9) 供試した味噌のビタミン Eおよびリン脂質含量の 対照区 原材料 測定は(財)日本食品分析センタ ーに依頼した。 タピオカ澱粉粕 大亘粕 大豆油 2 . ウシ 第 一 胃 (ルーメン )発酵試験 ウシのルーメンには様々な微生物が棲息してい 給与量 g 成分 る。ル ー メン発酵への味噌給与の影響を調査する ため,ル ー メン液を用いた i nv i t r o発酵試験を行 っT こ 。 5ヶ月齢のホルスタイン種雄ウシ 2頭から経口 的にルーメン液を採取し, 加熱赤色辛口米味噌 4重ガ ーゼで諸過し た。 このル ー メン液に人工唾液を 1:2の比率で 混合した後,炭酸ガス通気により嫌気状態にし た。 50m l容 パ イ ア ル 瓶 に 1mm粉 砕 し た 基 質 味噌区 1439 1 3 9 1079 4 1 g 5 ‑9 1859 2509 水分 粗タンパク 粗脂肪 2 4. 1 7 7 .49 2 1. 4 2 1. 39 6 . 8 6.79 組繊維 1 7. 5 1 5. 79 粗灰分 7. 3 5. 29 総トコフェロール コリン リン脂質 1 .4 1 3. 5 m g 0. 1 0.19 0. 5 0. 09 塩分 0. 0 2 0. 19 00mgと,上記のルーメン液+人工唾 (飼料) 3 5 m lを入れ,各味噌の 10%溶液を 1 0 0 μ l添加 液1 ③脂肪肝発症モデル 0秒間 した(コントロールは水を添加)。さら に3 対照区,味噌区それぞれ 6週間給与した後,実 炭酸ガスを通気した後,パイアル瓶をブチノレゴム 験的に脂肪肝を発症させるために 4日間絶食させ 9 0 r p m, 栓とアルミシールで密封し,振とう培養 ( (飲水は自由),脂肪肝発症 モデルにおける味噌 3 9C) した。 6時間および 1 2時間後にパイアル瓶 給与効果を観察した。なお,すべての試験は明治 0 0 μ lを添加して発酵を停止 を開封し ,濃硫酸 3 飼糧(株)動物実験要領に則って実施した。 3,000rpm, 4C, 1 5分 させ,これを遠心分離 ( ④測定項目と測定方法 0 0 P r e ), 給与試験開始前 ( 間)して上清を得た。 ガ ス ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ‑ 6週間給与後(絶食 GC‑ 2 0 1 0 (島津製作所)にて,ルーメン発酵性の d),絶食 1日後 ( 1d) , 2日後 ( 2d) , 試験前, O 指標である揮発性脂肪酸 (VFA) 濃度を測定し 3日後 ( 3d), 4日後 ( 4d) にウシの頚静脈か f こ。 ら採血し,遠心分離 ( 3,OOOrpm, 1 5 分)して血 紫を得た。 3 . 脂肪肝モデル牛 を用いた味噌給与試験 ①供試飼料の調製 長期熟成味噌(過熱赤色辛口米味噌)とタピオ この血柴を用い ,GOT ,GPT ,GGT ,TCHO を富士ドライケム 3 5 0 0V (富士フィルムメディカ レ株式会社)にて測定した。 また,遊離脂肪酸 j カ澱粉粕を 5 7:4 3の比率でミキサ ーに投入した後, (NEFA) をテストワコー ‑ NEFA (和光純薬株 2分間混合して味噌吸着飼料を調製した。また, 3 ‑ H B,ケ ト 式会社)にて, βーヒドロキシ酪酸 ( 同様にタピオカ澱粉粕と大豆粕と大豆油を 7 5:2 2 ン体)をオ ー トワ コー (和光純薬株式会社)に :3の比率で混合して対照飼料を調製した。 ②ウシへの給与方法 4ヶ月齢のホルスタイン種雄牛 1 0 頭(体重1 4 7. 7 て , TBARS値 ( チ オ パ ル ビ ツ ー ル 酸 反 応 性 物 s s a yk i t (フナコシ株式会社) 質)を TBARSa にて測定した。 k g : : ! : : 2 . 3 k g ) を対照区と味噌区の 2区に分け,対照 区にはベ ース飼料(配合飼料 3kg+乾草 1k g )に 結果 8 5gを,味噌区にはベース飼料(同)に 対照飼料 1 ①味噌の機能性成分 5 0g (味噌として 1 4 3g相当)を混 味噌吸着飼料 2 表 1) 。 合したものを 6週間給与した ( 各 種 味 噌 の ビ タ ミ ン E含量は ,麦 味 噌 で は 6. 4mg /1 0 0 gであり ,豆味噌,赤色辛口米味噌, 65‑ 中味研報告 第32号(2011) 3 0 0 た ( 表 2)。 また, リン脂質は豆味噌のみに検出 2 5 0 ﹂ ¥ 一oEミ∞工ゐ 9 . 5‑1 1 . 9 m g jl 0 0 gであ っ 過熱赤色辛口米味噌は ( 2 2 m gjl 0 0g )。 された 表 2 . 各味噌のビタミン E含量 2 0 0 1 5 0 1 0 0 卜コフ zロール含畳 ( m g j 1 0 0 g) α. β. 7 6 計 5 0 。 豆味噌 1 . 1 0. 2 7. 5 3 . 1 1 1. 9 麦味噌 0 . 6 0. 1 3. 9 1 . 8 6. 4 赤色辛口米味噌 0 . 7 0 . 1 6 . 4 2 . 5 9 . 7 過熱赤色辛口米味噌 0 . 7 0 . 2 6. 0 2 . 7 9. 5 P r e Od 1 d 2 d Od 1 d 包d Od 1 d 2 d 3d 4 d 1 . 6 0 0 B ~ 1 . 2 0 0 <T w ミ ②味噌がウシのル ー メン ( 第一 胃)発酵に及ぼす 8 0 0 〈 u . w 影響 Z 400 ウシのルーメン液を用いた i nv i t r o発酵試験に 。 おいて,麦味噌,豆味噌,赤色辛口米味噌,過熟 P re 3d 4d 赤色辛口米味噌ともにルーメン発酵を阻害するこ 1 2 0 f こ。 1 ︽ AUnwnununvnvnunvnwnU ・ ︐ 目 ︑ w' HU 内UM 内MUW ﹃ ︐ ︐ 戸 nuwphAwan‑‑ 4 内u 内' ‑ 4 E 1 ﹂夕︑M E O工O とはなく ,通常飼料と類似の発酵バ ターンを示し c ∞ 8 0 ↑ o ε ε ﹂ ¥ 一 6 0 40 。 P re ︐ ︑ 倒嶋︿比﹀謡 2 0 ロ12h 4d ‑0一対昭一・一味噌 過熱赤色辛口米味噌 赤色辛口米味噌 口6 h 麦味噌 豆味噌 通常飼料 .Oh 3d 図2 . 血祭 3・HB(A),NEFA(B),TCHO(C)濃度 また,肝機能マ ー カ ー である GOT , GPT , GGTは絶食により有意に上昇したが ( 図 3A,B, C), 味 噌 区 で は 対 照 区 よ り 低 く 推 移 し , 特 に GPTは絶食 2日後と 3日後で有意に低かった。 図 1.味噌のルーメン発酵性の比較 また ,血 紫 TBARS値 は , 味 噌 区 の 給 与 6週 )。 間後で有意に低かった ( 図4 ③脂肪肝モデ、 ル牛を用いた味噌給与試験 対照飼料,味噌飼料をそれぞれ 6週間給与した 後の 4日間絶食試験の結果,脂肪の分解により肝 考察 ‑HB濃度 臓で産生される血紫中ケトン体である 3 供試した味噌は,味噌の種類(豆,麦,米)に ( 図 2A),および脂肪組織か ら放出される血紫 よりビタミン E含量は異なったが,同じ米味噌系 2B ) は,対照区 ・味噌区と であれば熟成期間に関わらず類似であった 。 ま もに絶食により著しく上昇し,脂肪肝様の血液性 種類の味噌はいずれも i nv i t r oで た,供試した 4 総 コレステロール) 状を示した 。一方 , TCHO ( のルーメン発酵性が類似し, かっ発酵を阻害しな は,対照区で絶食により顕著に上昇したが,味噌 かっ f こ 。 中 NEFA濃度 ( 図 区は低値を維持した ( 図 2C)。 過熱赤色辛口米味噌を用いて調製した味噌吸着 ‑66‑ 中味研報告 第32号(2011) 脂 肪 肝 牛 は 健 康 牛 に 比 べ て 血 中 の 3‑HB , 1' 20 A ∞ NEFA,GOT,GPT濃度が高値を示し,負のエ 1 4 コ ト 8 ネルギーバランスに起因した体脂肪動員や肝機能 80 低下が起こっていることが知られている C S a t o, 60 2 0 0 5 )。また , ウシへの飼料の制限給餌により血 4 0 中の遊離脂肪酸が増加し,肝臓の脂肪化が誘導さ ' 20 れ,それに伴いインスリンの抵抗性が招来される 。 と報告されている(及川伸, 2 0 0 3 )。また,脂肪 P re ω 1 d ' 2d 3 d 4 d 肝牛の血清脂肪酸組成はオレイン酸の割合が高 4 0 3 5 く,必須脂肪酸であるリノール酸の割合が著しく B 低かったという報告がある(大橋惇, 1 9 9 5 )。 J3to 30 本試験においても,対照区で絶食後に顕著な 世5 3‑HB,NEFA,GOT, GPT濃度の上昇が確認さ 包0 れたことから ,脂肪肝様の症状が誘引されたと考 1 5 10 併 えられた。 p< 010 この脂肪肝発症モデルにおいて,対照区 ・味噌 5 。 区ともに脂質代謝マーカ ーの顕著な上昇が見られ 円モ 1 d 白 ' 2d 3 d 4 d たが,両区間に大きな差は見られなかった。一方 , 3 0 2 8 肝機能マ ーカーは同様に上昇が見られたが,味噌 C 区では対照区より低く推移し,特に GPTは絶食 ﹂¥コト0 0 2 6 2日後と 3日後で有意に低かった。 2 4 また, 2 2 6週間給与時の全身性の酸化ストレスマ ーカー CTBARS値)は,対照区より味噌区の方 2 0 が有意に低値であった 。 1 8 これらのことから, 1 6 P r e O d 1 d 2 d 3d ウシへの長期熟成味噌の給 与によって , ウシの肝機能改善と抗酸化能冗進が 4 d 促進され,ウシの脂肪肝の発症を予防する, また ‑o一対照‑‑‑味噌 図3 . 血築 GOT(A),GPT(B),GGT(C)濃度 は症状を軽減できる可能性が示唆された。 今回は, 4ヶ月齢の若い雄ウシを用いた脂肪肝 モデル試験であり,本来の課題である乳牛 (雌) 7 . 0 の周産期とは性別 ・ステ ージが異なること, また J E 今回の絶食による脂肪動員レベルが負のエネルギ 0 ーバランス に起因する脂肪肝牛よりも 重度であっ 250 た(絶食による NEFA値 ;, 1 450μEq /L,脂肪 ミ 6.0 2 E 肝 牛 ;6 00‑700μEq/L) ことから,実際の周産期 4. 0 乳牛への味噌給与試験とその効果の検証が必要で O d P r e ロ対照・味噌 "p<O. 0 5 あると考えられた。 図4 . 血築 TBARS値 今後は ,酸化ストレス抑制および肝機能改善に 関与している味噌成分の解明,味噌給与による脂 飼料(味噌として 1頭 1日あたり 1 4 3g給与)ま 肪酸組成への影響,実際の周産期疾病予防への効 たは対照飼料を 6週間給与した後,絶食4日間の 果の検証などが課題である 。 処理により脂肪肝発症モデルの作出を試みた。 ‑67‑ 中味研報告 第32号(2011) 文献 i nd a i r ycowsw i t hs u b c l i n i c a lk e t o s i s .家畜臨床 G e r l o f f, B. J. ( 2 0 0 0 ) Drycowmanagementf o r 誌 t h ep r e v e n t i o no fk e t o s i s and f a t t yl i v e ri n 及川伸 ( 2 0 0 3 ):牛における潜在性ケトーシスと .C l i n . N o r t h. Am. ,1 6 :2 8 3 ‑ 2 9 2 d a i r yc o w s .Vet 脂肪肝臨床獣医 N . K a t o h ( 2 0 0 2 ) :R e l e v a n c eo fa p o l i p o p r o t e i n s 大橋惇,他 ( 1 9 9 5 ):脂肪肝牛の血清リポタ ンパ i nt h e development o ff a t t yl i v e r and f a t t y ク質脂質組成と脂肪酸構成について l i v e r ‑ r e l a t e d peripartum d i s e a s e s i n d a i r y 本獣医学会講演要旨 2 8 ( 1 ) : 7 ‑ 1 3 2 1:2 6‑ 2 9 第1 2 0回日 p1 7 9 c o w s .J . V e t . M e d . S c i .,6 4 : 2 9 3 ‑ 3 0 7 小原嘉昭 ( 2 0 0 6 ):ル ミノロジーの基礎と応用 謝辞 2 4 9 ‑ 2 5 0 農文協 新 版 乳 牛 の 病 気1 1 9 番 本研究遂行にあたり, (社)中央味噌研究所より p 3 8 ‑ 3 9 DairyJapan 研究費助成をいただきましたことを御礼申し上げ S . S a t o,M.Kohno,H. O n o ( 2 0 0 5 ): R e l a t i o nb e t w e e n ます。 また,試料をご提供頂きました各社様に厚 b l o o dβ‑hydroxybutyrica c i dandg l u c o s e,n o n ‑ く御礼申し上げます。 e s t e r i f i e df a t t ya c i da n da s p a r t a t ea m i n o t r a n s f e r a s e ‑68‑ 中味研報告 第32号(2011)
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