研究倫理講習会 研究倫理、新統合指針 概説 2015.4.6、5.11 研究倫理委員会、FD委員会共催 医薬品開発規制科学 漆原 尚⺒ 研究倫理概論 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 2 2つの研究倫理 「研究者」の倫理 研究者が具えるべき徳 研究実施における不正、経済的な利益相反 Virtue 公表に関わる倫理 「研究」の倫理 研究⾃体が具えるべき倫理 倫理的に適切であるための要件・規範 各種倫理指針 国⽴循環器病研究センター H Urushihara, Keio univ. 松井健志先⽣ 2015/4/6、5/11 2012研究倫理研修セミナー より 3 ヘルシンキ宣⾔ 2008年ソウル改訂版序⽂より 『医学の進歩は、最終的に⼈間を対象とする 研究を要する。』 現状よりさらによい医療に結び付けること が⽬的 主に病院などの医療機関において医師など の医療者により実施 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 4 医療と研究の相克 ① 医療者の役割 ② ⽬の前の患者の必要性と最善の利益のため 研究者の役割 研究を成功させることにより得られた新たな知⾒を臨床現 場に還元し、最新の治療法を⼀般化することが⽬的 「将来の患者」の必要性と最善の利益のため ⼀部の被験者には、⽐較のために無効な治療法を割り当て ることもやむなし 臨床研究においては、医療者は同時に研究者である しかし①と②は相克する︕ H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 5 医学における研究の⽬的 研究には患者に直接の利益はない しばしば不利益を及ぼす しばしば研究者個⼈の知的好奇⼼のために ⾏われる 個⼈のための医療と、 (誰のための︖)科学的利益の相克 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 6 研究による「搾取」 「少数の個⼈が他⼈や社会の利益のために、負担また はリスクを背負わされることになる。 他⼈の利益のために、被験者に何らかのリスクや害や 負担を背負わせるということは、そこに『搾取』の可 能性がある。」(NIH臨床研究の基本と実際) 「社会の利益のために犠牲を払うことになる」 被験者の意思と福利を最⼤限に尊重し、常に保護 しなければならない 研究倫理の出発点 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 7 研究倫理のルーツ ニュルンベルク綱領 (1946) ナチス強制収容所における⽣物医学 的実験を⾏った医師と科学者を裁く ⼀連の基準 被験者の⾃発的な同意を絶対条件と する H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 8 タスキギー梅毒実験 The Tuskegee Syphilis Experiment ⽶国公衆衛⽣局は、アラバマ州タスキギーに住む⿊⼈を対象に、 治療をせずに放置した場合の梅毒の影響を調べる実験を、1932 年から40年間にわたり実施 ⿊⼈男性の末期梅毒患者399⼈と、 対照としての梅毒に罹っていない201⼈を無治療のまま観察 ⼤部分は貧困地域の⽂盲の⼩作⼈、梅毒実験のことは伝えられてい ない 無料で定期診察、医療が受けられるという宣伝⽂句に惹かれた 梅毒の末期に起こる種々の重篤な合併症、梅毒がどのような経過で ⼈を死に⾄らしめるかを調査 その影響は、病⼈本⼈のみならず、その妻、また⼦供には先天 性梅毒という形で及んだ 1972年に内部告発により中⽌、1997年にクリントン⼤統領が謝 罪 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 9 グアテマラ性病⼈体実験 Guatemala syphilis experiment 1946年にグアテマラの受刑者、兵⼠、売春婦、孤児、精神 科病院の⼊院患者に、少なくとも約1160⼈に梅毒スピロ ヘータ・淋菌を接種 〜 故意に感染させた 性感染症に感染させた売春婦と性交させられて感染した受刑者 も アメリカ合衆国政府が、グアテマラ政府の協⼒のもとペニ シリンの薬効確認を⽬的に実施 ⽶公衆衛⽣局や⽶国⽴衛⽣研究所が主導 ⽶国ウェルズリー⼤学の歴史学者スーザン・リバビー教授 がピッツバーグ⼤学公⽂書館で実験の記録を発⾒、 2010年5⽉の学会発表によって公となった オバマ⼤統領は同年10⽉1⽇に謝罪、公式調査開始 少なくとも83⼈が死亡 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 10 ベルモントレポート ⽣物医学および⾏動学研究の対象者保護のた めの国家委員会(1979年4⽉18⽇) 3つの基本的な倫理原則 ⼈格の尊重 善⾏ beneficence 正義 justice respect for persons 現⾏研究倫理の基礎となる H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 11 ⼈格の尊重 persons respect for ⾃律性の尊重 Autonomy 脆弱者の保護 Informed consent CIOMS ⼈を対象とする⽣物医学研究のための国際的倫理指針(2002) H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 12 善⾏ beneficence CIOMS ⼈を対象とする⽣物医学研究のための国際的倫理指針(2002) ベネフィットを最⼤に、害を最⼩にする倫理 的義務 研究が与えるリスクが、ベネフィットに照ら して理にかなっている ベネフィットは被験者⾃⾝に対するベネフィッ トだけではない 害は被験者に対するリスク 研究者は研究対象者の福利を保護する能⼒を 備えること 故意に害を与えない nonmaleficence H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 13 正義 justice CIOMS ⼈を対象とする⽣物医学研究のための国際的倫理指針(2002) 研究参加の負担と得られるベネフィットの公平な分配 被験者選択 都合が良いといった理由により決定してはならない 科学的に妥当な根拠に基づくべき 脆弱性 vulnerability インフォームドコンセント能⼒が⽋如した⼈々 医療、その他⾼価なものを⼊⼿できない⽴場にある⼈々 ⾃分⾃⾝の利益を保護する能⼒を⽋如していること 脆弱者における不公平な状況をいっそう悪化させない、 新たな不公平を⽣み出さない たとえば、発展途上国で治験を⾏い、開発費⽤の削減、 複雑な規制要件の回避を狙う H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 14 ⽶ファイザーの試験薬訴訟、ナイジェ リア犠牲者と賠償⾦和解へ (2009年2⽉26⽇) 1996年4⽉に、ナイジェリア北部のカノ州で、 はしか、コレラ、髄膜炎が⼤流⾏して3000⼈の犠 牲者が出た ファイザーが髄膜炎に対する未承認抗菌薬Trovan を、ナイジェリア保健当局の承認や親の同意なし に⼦どもたち約200⼈に投与した 11⼈が死亡、189⼈に重い後遺症が残った。 ファイザー側は過失を⼀切認めていなかった。 州政府が要求していた賠償額 27億5000万ドル (約2700億円)⽀払いに合意 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 15 ヘルシンキ宣⾔ 1964年 世界医師会により採択 (World Medical Association) 臨床研究倫理の基本章典 5つの重要な基本原則 「患者・被験者福利の優先」 「本⼈の⾃発的・⾃由意思による参加」 「インフォームド・コンセント取得の必要」 「倫理審査委員会による事前審査、監視の継続」 「研究は科学常識に従い基礎実験を経て」 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 16 DoH改訂経緯 1964年 6⽉ フィンランド、ヘルシンキの第18回WMA総会で採択 1975年10⽉ ⽇本、東京の第29回WMA総会で修正 1983年10⽉ イタリア、ベニスの第35回WMA総会で修正 1989年 9⽉ ⾹港の第41回WMA総会で修正 1996年10⽉ 南アフリカ共和国、サマーセットウエストの第48回 WMA総会で修正 2000年10⽉ スコットランド、エジンバラの第52回WMA総会で修正 2002年10⽉ 第53回WMAワシントン総会で修正(第29項⽬明確化の ための注釈が追加) 2004年10⽉ 第55回WMA東京総会で修正(第30項⽬明確化のための 注釈が追加) 2008年10⽉ 第59回WMAソウル総会で修正 2013年10⽉ WMAフォルタレザ総会(ブラジル)で修正 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 17 ヘルシンキ宣⾔ エディンバラ改訂(2000) 対象の拡⼤ 医師だけでなくすべての研究者 ヒトから、ヒト由来の物質、遺伝⼦、診療情報などにま で拡⼤ プラセボの使⽤制限に⾔及 ⽶国FDAから反発 多⼤な影響 ※ ICH-GCP 厚労省「臨床研究に関する倫理指針」 CIOMS International Ethical Guidelines for Biomedical Research InvoIving Human Subjects (2002) 健康被害の補償はヘルシンキ宣⾔には無かった H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 18 フォルタレザ改訂(2013) ヘルシンキ宣⾔採択50周年にあたり、現⾏の宣⾔を アップデート ⽋けていた健康被害への補償措置が追加 社会的弱者のさらなる保護 バイオバンクに関するインフォームドコンセント 有益であることが証明された治療の利⽤可能性 倫理審査委員会の権限強化 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 19 CIOMS Council for International Organizations of Medical Sciences 国際医学団体協議会 1949年にWHOとUNESCOによって設⽴され、 ⽣物医学研究に関して活動 様々な医薬品安全性に関する議論が報告書と して取りまとめられている 「⼈を対象とする⽣物医学研究の国際的倫理 指針」International Ethical Guidelines for Biomedical Research Involving Human Subjects 2002年に発⾏ ベルモントレポートの内容をより実務的に詳 細に解説している。 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 20 研究に伴うリスクと インフォームドコンセント H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 21 研究に伴うリスク 観察研究 侵襲の度合いは⽇常診療を超えない 研究対象者には最⼩のリスクが伴うだけ 介⼊研究 少なくとも何名かには害が⽣じうるのは避け得ない(リス クの最⼩化) 介⼊研究に伴う「リスクの最⼩化」と、観察研究での「最 ⼩のリスク」は異なる概念 インフォームドコンセント必須 CIOMS ⼈を対象とする⽣物医学研究のための国際的倫理指針(2002) H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 22 介⼊研究と観察研究のリスク の相違 介⼊研究 Psycho-physical risk ⾝体・精神への介⼊ に伴う確かなリスク ⾝体・精神への介⼊に 伴う不確かなリスク Informational risk 私的情報への侵⼊ に伴うリスク 観察研究 Matsui, K. (2010). Ethical disparity between observational and experimental methodologies in research. Asian Bioethics Review, 2(3) 国⽴循環器病研究センター H Urushihara, Keio univ. 松井健志先⽣ 2015/4/6、5/11 2012研究倫理研修セミナー より 23 ICはいつ必要か︖ 原則として、被験者の「プライバシー」に 研究者が⽴ち⼊る場合 1. ⼼・⾝体へ介⼊する場合 2. 現在、過去、未来において 被験者の⾝体の⼀部、被験者から得られる データ・診療情報・個⼈情報などを⽤いる 場合 国⽴循環器病研究センター H Urushihara, Keio univ. 松井健志先⽣ 2015/4/6、5/11 2012研究倫理研修セミナー より 24 有効な同意とは DoHフォルタレザ修正版(2013) 10条 医師は、適⽤される国際的規範および基準はもとより⼈間を 対象とする研究に関する⾃国の倫理、法律、規制上の規範 ならびに基準を考慮しなければならない。国内的または国 際的倫理、法律、規制上の要請がこの宣⾔に⽰されている 被験者の保護を減じあるいは排除してはならない。 25条 インフォームド・コンセントを与える能⼒がある個⼈を本⼈ の⾃主的な承諾なしに研究に参加させてはならない。 26条 ⽬的、⽅法、資⾦源、起こり得る利益相反、研究から期待さ れる利益と予測されるリスク、研究終了後条項等、を⼗分 に説明 27条 被験者候補が医師に依存した関係にあるかまたは同意を強要 されているおそれがあるかについて特別な注意を払わなけ ればならない 病院・⼤学でのボランティア募集時には要注意 GCPでは治験依頼者従業員、参加医師の関係者の参加は禁じられて いる H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 25 ICを⽀えるもの 倫理原則による要請(社会的要請) Soft law Respect for personsの原則 ICの必須要素 1. 被験者の同意能⼒ I. II. III. IV. 法による要請 Hard law 法的同意能⼒者である 同意対象・内容は明⽰的である 強制されたものではない 2. 研究者による情報の提供・説明 3. 被験者による情報の理解 4. ⾃発的な決定・同意(=権限委譲) 国⽴循環器病研究センター H Urushihara, Keio univ. 情報を⼊⼿する 情報を理解する 情報を評価する 情報を論理的に解釈する 松井健志先⽣ 2015/4/6、5/11 2012研究倫理研修セミナー より 26 ⾦沢⼤学医学部附属病院 無断臨床研究事件 卵巣がん摘出⼿術後に⾼⽤量シスプラチンを含む術後化学 療法を⾏う臨床研究 研究へのインフォームドコンセントを取得せずに、抗がん剤の 臨床研究へ組み⼊れ 副作⽤が当初受けていた説明よりも強いと感じた患者が、別の 医師に相談 抗がん剤のランダム化⽐較臨床試験に組み⼊れられていること を初めて知らされた。 1999年に、患者の死亡後に遺志を継いだ遺族が起訴 2003年の地裁判決で、臨床研究では、治療以外の⽬的がある以 上、治療のみのインフォームドコンセントだけでは不⼗分とし、 説明義務違反の判決が下った。 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 27 慶應⼤学病院における 臨床研究倫理指針違反事例 肺癌における循環癌細胞検出に関する臨床研究 倫理申請ならびに肺癌患者さんへの臨床研究に関する説明・同 意がないまま、⼿術切除肋⾻から⾻髄液を採取していました。 倫理申請の承認とその通知前から、臨床研究に関する説明・同 意がないまま、26 名の肺癌患者さんに対し、⼿術中に肋⾻から ⾻髄液を採取していました。なお、14 名については倫理申請書 提出前、12 名については倫理申請は承認されたものの、その通 知がなされる前でした。 コントロールデータも必要ということから、研究対象ではない5 名の良性肺疾患の患者さんから、2011 年11 ⽉28 ⽇〜同年12 ⽉ 20 ⽇の期間に、臨床研究に関する説明・同意がないまま、⼿術 中に肋⾻から⾻髄液を採取していました。 部⾨⻑と当該研究責任者の2名について、強く反省を求め、懲 戒処分を検討 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 28 治療と研究のインフォームド コンセントの違い ⾦沢⼤学の事件 「治療⽅法は保険診療範囲内であり臨床研究ではない。その ため治療のインフォームドコンセントがあればよい」との 被告側の主張は、患者の利益を最優先する治療と臨床研究 とではその⽬的が全く異なること理解せずに、両者のイン フォームドコンセントを混同したものである ⽇本において、治験以外の臨床研究についてのインフォー ムドコンセントの必要性を初めて法的に認めた事例 慶應⼤学の事件 倫理指針施⾏後10年たってからの事件 研究同意に対する理解不⾜ H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 29 研究倫理に関する指針 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 30 ⽇本の医学研究に関する主な 倫理指針 2014年まで 【観察研究】 ヒトゲノム・遺伝⼦解析研究に関する倫理指針(⽂科省・厚労 省・経産省) 平成13(2001)年3⽉29⽇、平成16年12⽉28⽇全部改正、平成17年6⽉29⽇⼀部改正、平成25年2⽉8 ⽇全⾯改正告⽰、同年4⽉1⽇施⾏ 疫学研究に関する倫理指針(⽂科省・厚労省) 平成14年6⽉17⽇、平成16年12⽉28⽇全部改正、平成17年6⽉29⽇⼀部改正、平成19年8⽉16⽇全部改 正、平成20年12⽉1⽇⼀部改正 【介⼊研究】 臨床研究に関する倫理指針(厚⽣労働省) 平成15年7⽉30⽇、平成16年12⽉28⽇全部改正、平成20年7⽉31⽇全部改正 遺伝⼦治療臨床研究に関する指針(⽂部科学省・厚⽣労働省) 平成14年3⽉27⽇、平成16年12⽉28⽇全部改正、平成20年12⽉1⽇⼀部改正 ヒト幹細胞を⽤いる臨床研究に関する指針(厚⽣労働省) 平成18年7⽉3⽇、平成22年11⽉1⽇全部改正、平成25年10⽉1⽇全部改正 医薬品の臨床試験の実施に関する基準 Good Clinical Practice 平成18年7⽉3⽇、平成22年11⽉1⽇全部改正、平成24年12⽉28⽇⼀部改正 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 31 ⽇本の医学研究に関する主な 倫理指針 2015年から 【観察研究】 ヒトゲノム・遺伝⼦解析研究に関する倫理指針(⽂科省・厚労 省・経産省) 平成13(2001)年3⽉29⽇、平成16年12⽉28⽇全部改正、平成17年6⽉29⽇⼀部改正、平成25年2⽉8 ⽇全⾯改正告⽰、同年4⽉1⽇施⾏ 疫学研究に関する倫理指針(⽂科省・厚労省) 平成14年6⽉17⽇、平成16年12⽉28⽇全部改正、平成17年6⽉29⽇⼀部改正、平成19年8⽉16⽇全部改 ⼈を対象とする医学系研究に関する倫理指針(⽂科省・厚労 正、平成20年12⽉1⽇⼀部改正 省) (統合指針) 【介⼊研究】 平成26年12⽉22⽇公布、平成27年4⽉1⽇施⾏ • ガイダンス 平成27年2⽉9⽇発⾏ 臨床研究に関する倫理指針(厚⽣労働省) 平成15年7⽉30⽇、平成16年12⽉28⽇全部改正、平成20年7⽉31⽇全部改正 遺伝⼦治療臨床研究に関する指針(⽂部科学省・厚⽣労働省) 平成14年3⽉27⽇、平成16年12⽉28⽇全部改正、平成20年12⽉1⽇⼀部改正 (再⽣医療等の安全性の確保等に関する法律 平成25年法律 ヒト幹細胞を⽤いる臨床研究に関する指針(厚⽣労働省) 平成18年7⽉3⽇、平成22年11⽉1⽇全部改正、平成25年10⽉1⽇全部改正 平成25年11⽉27⽇公布、平成26年11⽉25⽇施⾏ 第85号) 医薬品の臨床試験の実施に関する基準 Good Clinical Practice 平成18年7⽉3⽇、平成22年11⽉1⽇全部改正、平成24年12⽉28⽇⼀部改正 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 32 医学研究の種類 以前までの倫理指針上の研究のわけ⽅ 臨床研究 vs. 疫学研究 臨床研究に関する倫理指針 疫学研究に関する倫理指針 研究デザインによるわけ⽅ 介⼊研究 vs.観察研究 介⼊研究 Intervention study 研究⽬的で治療を割り当てる 観察研究 Observational study 研究とは独⽴して治療選択が⾏われる 統合指針では、臨床研究、疫学研究という分類は 無くなった H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 33 倫理指針、法規制上の扱い ⼈を対象とする医学系研究 観察研究 介⼊研究 再⽣医療 治験 再⽣医療等法 薬機法・GCP H Urushihara, Keio univ. 法規制なし 2015/4/6、5/11 34 ⼈を対象とする医学系研究に関す る倫理指針(⽂科省・厚労省) 平成26年12⽉22⽇公布、平成27年4⽉1⽇施⾏ Ethical Guidelines for Medical and Health Research Involving Human Subjects H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 35 統合指針の概要 (1)研究機関の⻑及び研究責任者等の責務に関する規定(第2章関係) 研究機関の⻑の監督義務、研究責任者の責務(研究の倫理的妥当性及び科学的合理 性の確保)、研究者への教育・研修の義務化、侵襲研究での補償 (2)いわゆるバンク・アーカイブに関する規定(第1章、第3章関係) 試料・情報を収集し、他の研究機関に反復継続して研究⽤に提供する機関「試料・ 情報の収集・分譲を⾏う機関」 (3)研究に関する登録・公表に関する規定(第3章関係) (4)倫理審査委員会の機能強化と審査の透明性確保に関する規定 (第4章関係) 委員構成、成⽴要件、教育・研修の規定、倫理審査委員会の情報公開 (5)インフォームド・コンセント等に関する規定(第5章関係) 研究対象者に⽣じる負担・リスクに応じて、⽂書⼜は⼝頭によるインフォームド・ コンセント、未成年者等に対するインフォームド・アセント (6)個⼈情報等に関する規定(第6章関係) 個⼈情報保護法の遵守 (7)利益相反の管理に関する規定(第8章関係) (8)研究に関する試料・情報等の保管に関する規定(第8章関係) 侵襲介⼊研究は研究終了後5年⼜は結果の最終公表後3年のいずれか遅い⽇までの 保管 (9)モニタリング・監査に関する規定(第8章関係) 侵襲介⼊研究はモニタリングや監査の実施(同年 10 ⽉1⽇から施⾏) H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 36 研究機関・研究機関の⻑(第2) 【研究機関】 番組制作会社や新聞・雑誌社も含む ⼤学や企業等の研究機関が実施する研究に協⼒等する場合には、 番組制作会社や新聞・雑誌社は共同研究機関になりうる 【研究機関の⻑】 研究を実施する法⼈の代表者、⾏政機関の⻑⼜は個⼈事業主を いう。 権限⼜は事務を、研究活動を統括するにおいて⼗分な権限を有 する適当な者に委任することができる。 学部⻑、病院⻑、施設⻑(保健所⻑、研究所⻑等)など H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 37 社会的に弱い⽴場にある者へ の特別な配慮(第1) ICH-GCPを参考とする(ガイダンス)。 ICH-GCP 1.61 社会的に弱い⽴場にある者 Vulnerable Subjects 臨床試験に⾃発的に参加する個⼈の意思は、参加に伴う利益或いは 参加拒否による上位者の報復を予想することにより、不当に影響を 受ける可能性がある。 例としては、階層構造を有するグループの構成員───医学⽣、薬 学⽣、⻭学⽣、看護学⽣、病院及び検査機関の下位職員、製薬企業 従業員、軍隊の隊員並びに被拘留者等がある。 その他の社会的に弱い⽴場にある者としては、不治の病に罹患して いる患者、介護施設収容者、失業者⼜は貧困者、急患、少数⺠族集 団、ホームレス、放浪者、難⺠、未成年並びに正当な同意を与える 能⼒のない者があげられる。 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 38 慶應義塾⼤学薬学部 ⼈を対象とする研究倫理委員会細則に おける被験者に関する規程 第3条 規則第3条の被験者は、⼀般に公募する。 ただし、学⽣のみを対象とした募集はしない。 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 39 統合指針の対象となる研究の 定義(第2) ⼈(試料・情報を含む。)を対象として 傷病の成因(健康に関する様々な事象の 頻度及び分 布並びにそれらに影響を与える要因を含む。) 病態の理解 傷病の予防⽅法 医療における診断⽅法及び治療⽅法の改善⼜は有 効性の検証 を通じて、 国⺠の健康の保持増進⼜は患者の傷病からの回復若し くは⽣活の質の向上に資する知識を得ることを⽬的と して実施される活動をいう。 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 40 試料・情報とは(第2) ⼈体から取得された試料 ⾎液、体液、組織、細胞、排泄物及びこれらから抽出し たDNA等、⼈の体の⼀部であって研究に⽤いられるもの (死者に係るものを含む。)をいう。 研究に⽤いられる情報 研究対象者の診断及び治療を通じて得られた傷病名、投 薬内容、検査⼜は測定の結果等、⼈の健康に関する情報 その他の情報であって研究に⽤いられるもの(死者に係る ものを含む。)をいう。 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 41 既存試料・情報とは(第2) 試料・情報のうち、次に掲げるいずれかに該当するものを いう。 研究計画書が作成されるまでに既に存在する試料・情報 研究計画書の作成以降に取得された試料・情報であって、 取得の時点においては当該研究計画書の研究に⽤いられ ることを⽬的としていなかったもの H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 42 適⽤対象(第3) 〔適⽤対象外〕 法令の規定により実施される研究 法令の定める基準の適⽤範囲に含まれる研究 試料・情報のうち、次に掲げるもののみを⽤いる研究 1. 既に学術的な価値が定まり、研究⽤として広く利⽤され、 かつ、⼀般に⼊⼿可能な試料・情報 2. 既に連結不可能匿名化されている情報 〔他の倫理指針との関係〕 他の倫理指針に規定されていない事項はこの指針に従う。 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 43 「既に」連結不可能匿名化さ れている情報とは(ガイダンス) 研究に⽤いようとする前から連結不可能匿名化されている 既存の情報のこと 研究に⽤いようとするとき⼜は他の研究機関に提供しよう とするときに連結不可能匿名化する場合は含まない 連結可能匿名化された情報で他から提供を受けたものにつ いて、その情報を⽤いて研究を実施する研究機関において 対応表を保有しない場合は、「既に連結不可能匿名化され ている情報」を⽤いる研究に該当しない 別の規定によりこの指針の対象から除かれない限り、この 指針の規定に従って実施する必要がある 研究を実施する研究機関において対応表を保有する場合に ⽐べて、インフォームド・コンセントを受ける⼿続が軽減さ れ、それに伴って研究計画書の記載内容も減り、また、倫 理審査委員会において迅速審査の取扱いが可能 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 44 侵襲の定義(第2) 侵襲 (いわゆる治療介⼊) 研究⽬的で⾏われる、穿刺、切開、薬物投 与、放射線照射、⼼的外傷に触れる質問等 によって、研究対象者の⾝体⼜は精神に傷 害⼜は負担が⽣じることをいう。 侵襲のうち、研究対象者の⾝体及び精神に ⽣じる傷害及び負担が⼩さいものを「軽微 な侵襲」という。 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 45 介⼊の定義(第2) 介⼊ (いわゆる割付の有無) 研究⽬的で、⼈の健康に関する様々な事象 に影響を与える要因の有無⼜は程度を制御 する⾏為をいう。 この要因には、健康の保持増進につながる ⾏動及び医療における傷病の予防、診断⼜ は治療のための投薬、検査等を含む。 介⼊には、通常の診療を超える医療⾏為で あって、研究⽬的で実施するものを含む。 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 46 教育・研修(第4) 研究者等は、 研究の実施に先⽴ち、 また、研究期間中も適宜継続して、 研究に関する倫理並びに当該研究の実施に必要な知識 及び技術に関する教育・研修を受けなければならない。 不正⾏為、利益相反等についての教育・研修を含む 研究機関内外で開催される研修会 e-learning 少なくとも年に 1 回程度 補助業務者も含む H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 47 新たに試料・情報を取得する研究における インフォームドコンセント、迅速審査、 有害事象報告 侵襲 介⼊ 対象者の リスク インフォームドコンセント 迅速審査* 有害事象 報告 あり あり ⾼ ⽂書 不可 該当 あり なし 中 ⽂書 可 該当 (軽微な侵襲) なし あり 低 ⼝頭 不可 ⾮該当 なし なし 最⼩限 可 ⾮該当 ⼈体試料あり ⼝頭 ⼈体試料なし オプトアウト オプトアウト︓研究実施の情報公開と、拒否の機会の提供 *) 他施設審査済はいずれも迅速審査可 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 48 バイオバンク・アーカイブ 既存試料・情報のみを⽤いる場合 1. 他の研究機関に対して既存 試料・情報の提供を行う者 2. 試料・情報の収集・ 3. 既存試料・情報の提供を受 分譲を行う機関 けて研究を実施しようとする者 試料・情報を取得 し、⼜は他の機関 から提供を受けて 保管し、反復継続 して他の研究機関 に提供を⾏う 1のみ・・・研究者でない(新たに取得する場合は研究者) 既存資料・情報の提供を機関の⻑が把握すること 2及び3・・・研究者扱い 要プロトコール・倫理審査 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 49 既存試料・情報のみを⽤いる場合の インフォームドコンセント (第12-1(2, 3, 4)) ⾮侵襲、⾮介⼊の研究(後ろ向き研究) 匿名化されている場合 匿名化されていない場合の⼿続き IC⼿続き不要 ⼈体から採取 研究⽬的での既存資料 提供された資料・情報を利 ⾃病院での研究利⽤ された試料 ・情報の提供* ⽤した研究 使⽤ ⼝頭 例外規定あり 使⽤しない 不要 オプトアウト H Urushihara, Keio univ. ⼝頭もしくは オプトアウト *での適正な⼿続きの確認 オプトアウト 2015/4/6、5/11 50 迅速審査・中央審査 迅速審査対象 1. 他の研究機関との共同研究 既に共同研究機関において倫理審査承認済み 2. 軽微な変更に関する審査 3. ⾮侵襲⾮介⼊研究 4. 軽微な侵襲を伴う⾮介⼊研究 付議不要はなくなった 倫理審査委員会が指名する委員による迅速審査 迅速審査の結果は倫理審査委員会の意⾒として取り扱う 審査結果を全ての委員に報告 研究機関の⻑の依頼により、中央審査が可能に H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 51 重篤な有害事象報告(第17) 研究者等は、 侵襲を伴う研究の実施において重篤な有害事象の発⽣を 知った場合には、3⑴の規定による⼿順書等に従い、研 究対象者等への説明等、必要な措置を講じるとともに、 速やかに研究責任者に報告しなければならない。 研究責任者は、 侵襲を伴う研究の実施において重篤な有害事象の発⽣を 知った場合には、速やかに、その旨を研究機関の⻑に報 告するとともに、3⑴の規定による⼿順書等に従い、適 切な対応を図らなければならない。また、速やかに当該 研究の実施に携わる研究者等に対して、当該有害事象の 発⽣に係る情報を共有しなければならない。 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 52 研究の信頼性確保 〔利益相反の管理〕(第18) 医薬品⼜は医療機器の有効性⼜は安全性に関する研究等、 商業活動に関連し得る研究 当該研究に係る利益相反に関する状況を研究計画書に記載、 インフォームドコンセント時に説明しなければならない 〔モニタリング、監査〕(第20) 侵襲介⼊研究 モニタリング(必須)、監査(必要に応 じ)の実施を研究計画書に記載 2015年10⽉から施⾏ 〔研究結果の公表〕(第9) 介⼊研究 侵襲介⼊研究 ならない H Urushihara, Keio univ. 公開データベースへの登録 結果公表を研究機関の⻑へ報告しなければ 2015/4/6、5/11 53 医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令 (GCP省令) 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針 医薬品等製造販売承認 国民の健康の保持増進又は患者の傷病からの 回復若しくは生活の質の向上に資する知識 医薬品等製造販売承認申請のための臨床試験 人を対象とする医学系研究(介入・観察研 究) 製薬企業、もしくは医師(医師主導治験) 研究責任者 届出単位 1試験ごと 1研究ごと 届け出先 厚生労働大臣 研究機関の長 医薬品医療機器総合機構、治験審査委員会 倫理審査委員会 ○ 研究の種別ごとの規定 必須 補償その他の措置(研究機関の長の責務) ○ ○ 項目 目的 対象範囲 スポンサー(申請者) 審査 インフォームドコンセント 補償措置 研究者の要件・教育 公開データベースへの事前 登録 - 信頼性保証 モニタリング・監査 (カルテの直接閲覧必要) 医療機関の長及び 治験審査委員会 厚生労働大臣 モニタリング・監査、利益相反 (方法は実施計画書に規定) 研究機関の長及び 倫理審査委員会 厚生労働大臣 ○ ○ 必須 -(一部のみ) 医療機関の長 研究機関の長 未知・重篤な有害事象報告 規制当局による査察 試験実施に関わる標準作業 手順書 年次報告 研究成果の実用化 H Urushihara, Keio univ. (別途自主業界基準あり) ○ 薬事法上の製造販売承認 様々 2015/4/6、5/11 54 研究倫理委員会の規則が変わ ります 名称 申請様式 「⼈を対象とする研究倫理委員会」規則 倫理審査申請書 新規・変更・再審査(様式1) 倫理指針の遵守 資⾦源、団体・企業の関与 研究の登録 研究に関する報告書 継続⽤、終了中⽌⽤(様式4、5) 申請の際の研修受講の義務化 有害事象報告 5/1から施⾏予定 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 55 講習 提供元 タイトル 受講形態 研修 記録 ⽇程 内容 慶應義塾⼤学 クリニカル リサーチセンター 臨床研究講習会 予約制 座学 ○ 年2回 1⽇ 『初回講座』 『更新講座』 臨床研究 E-ラーニン グ 登録制 Web ○ 随時 2.5-3.0時間 GCP中⼼ ⽇本医師会 治験促進センター 臨床試験のためのe Training center 登録制 Web ○ 随時 30分 GCPのみ 前篇、後篇 UMIN 臨床研究・治験に携 わる⼈材育成のため のe-learning UMIN登録 Web ○ 随時 数時間 治験中⼼ 専⾨・職種別 CITI Japan (eラーニング) 医学研究者標準コー ス(15単元) 機関登録 Web ○ 随時 時間不明 コース別 ミスコンダクトもあり (28年度まで無料) 臨床研究eラーニン グサイト ICR臨床研究⼊⾨ 臨床研究の基礎知識 講座 登録制 Web ○ 随時 5時間 疫学統計含む 専⾨・職種別コースも あり H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 56 研究計画書作成にあたっての 参考資料 ⼈を対象とする医学系研究の倫理審査にあたり研究計画書 に記載すべき事項 京都⼤学医学研究科・医学部 (2015.4.1版) 医の倫理委員会 http://www.ec.med.kyotou.ac.jp/uploads/hitotaisyo_checklist20150304.doc H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、5/11 57 H Urushihara, Keio univ. 2015/4/6、 5/11 58
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