講習会資料(ダウンロード) - 慶應義塾大学 薬学部・薬学研究科

研究倫理講習会
研究倫理、新統合指針
概説
2015.4.6、5.11
研究倫理委員会、FD委員会共催
医薬品開発規制科学 漆原 尚⺒
研究倫理概論
H Urushihara, Keio univ.
2015/4/6、5/11
2
2つの研究倫理

「研究者」の倫理

研究者が具えるべき徳

研究実施における不正、経済的な利益相反


Virtue
公表に関わる倫理
「研究」の倫理

研究⾃体が具えるべき倫理
倫理的に適切であるための要件・規範

各種倫理指針
国⽴循環器病研究センター
H Urushihara, Keio univ.
松井健志先⽣
2015/4/6、5/11
2012研究倫理研修セミナー より
3
ヘルシンキ宣⾔
2008年ソウル改訂版序⽂より
『医学の進歩は、最終的に⼈間を対象とする
研究を要する。』

現状よりさらによい医療に結び付けること
が⽬的

主に病院などの医療機関において医師など
の医療者により実施
H Urushihara, Keio univ.
2015/4/6、5/11
4
医療と研究の相克
①
医療者の役割

②
⽬の前の患者の必要性と最善の利益のため
研究者の役割

研究を成功させることにより得られた新たな知⾒を臨床現
場に還元し、最新の治療法を⼀般化することが⽬的

「将来の患者」の必要性と最善の利益のため

⼀部の被験者には、⽐較のために無効な治療法を割り当て
ることもやむなし
臨床研究においては、医療者は同時に研究者である
しかし①と②は相克する︕
H Urushihara, Keio univ.
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5
医学における研究の⽬的

研究には患者に直接の利益はない

しばしば不利益を及ぼす

しばしば研究者個⼈の知的好奇⼼のために
⾏われる
個⼈のための医療と、
(誰のための︖)科学的利益の相克
H Urushihara, Keio univ.
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6
研究による「搾取」
「少数の個⼈が他⼈や社会の利益のために、負担また
はリスクを背負わされることになる。
他⼈の利益のために、被験者に何らかのリスクや害や
負担を背負わせるということは、そこに『搾取』の可
能性がある。」(NIH臨床研究の基本と実際)

「社会の利益のために犠牲を払うことになる」
被験者の意思と福利を最⼤限に尊重し、常に保護
しなければならない

研究倫理の出発点
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7
研究倫理のルーツ
ニュルンベルク綱領 (1946)

ナチス強制収容所における⽣物医学
的実験を⾏った医師と科学者を裁く
⼀連の基準

被験者の⾃発的な同意を絶対条件と
する
H Urushihara, Keio univ.
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8
タスキギー梅毒実験
The Tuskegee Syphilis Experiment

⽶国公衆衛⽣局は、アラバマ州タスキギーに住む⿊⼈を対象に、
治療をせずに放置した場合の梅毒の影響を調べる実験を、1932
年から40年間にわたり実施

⿊⼈男性の末期梅毒患者399⼈と、
対照としての梅毒に罹っていない201⼈を無治療のまま観察

⼤部分は貧困地域の⽂盲の⼩作⼈、梅毒実験のことは伝えられてい
ない

無料で定期診察、医療が受けられるという宣伝⽂句に惹かれた

梅毒の末期に起こる種々の重篤な合併症、梅毒がどのような経過で
⼈を死に⾄らしめるかを調査

その影響は、病⼈本⼈のみならず、その妻、また⼦供には先天
性梅毒という形で及んだ

1972年に内部告発により中⽌、1997年にクリントン⼤統領が謝
罪
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9
グアテマラ性病⼈体実験
Guatemala syphilis experiment

1946年にグアテマラの受刑者、兵⼠、売春婦、孤児、精神
科病院の⼊院患者に、少なくとも約1160⼈に梅毒スピロ
ヘータ・淋菌を接種 〜 故意に感染させた


性感染症に感染させた売春婦と性交させられて感染した受刑者
も
アメリカ合衆国政府が、グアテマラ政府の協⼒のもとペニ
シリンの薬効確認を⽬的に実施

⽶公衆衛⽣局や⽶国⽴衛⽣研究所が主導

⽶国ウェルズリー⼤学の歴史学者スーザン・リバビー教授
がピッツバーグ⼤学公⽂書館で実験の記録を発⾒、
2010年5⽉の学会発表によって公となった

オバマ⼤統領は同年10⽉1⽇に謝罪、公式調査開始

少なくとも83⼈が死亡
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10
ベルモントレポート
⽣物医学および⾏動学研究の対象者保護のた
めの国家委員会(1979年4⽉18⽇)
3つの基本的な倫理原則

⼈格の尊重

善⾏
beneficence

正義
justice
respect for persons
現⾏研究倫理の基礎となる
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11
⼈格の尊重
persons
respect for

⾃律性の尊重 Autonomy

脆弱者の保護
 Informed consent
CIOMS ⼈を対象とする⽣物医学研究のための国際的倫理指針(2002)
H Urushihara, Keio univ.
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12
善⾏
beneficence
CIOMS ⼈を対象とする⽣物医学研究のための国際的倫理指針(2002)
ベネフィットを最⼤に、害を最⼩にする倫理
的義務

研究が与えるリスクが、ベネフィットに照ら
して理にかなっている

ベネフィットは被験者⾃⾝に対するベネフィッ
トだけではない

害は被験者に対するリスク

研究者は研究対象者の福利を保護する能⼒を
備えること

故意に害を与えない nonmaleficence
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13
正義
justice
CIOMS ⼈を対象とする⽣物医学研究のための国際的倫理指針(2002)
研究参加の負担と得られるベネフィットの公平な分配
 被験者選択



都合が良いといった理由により決定してはならない

科学的に妥当な根拠に基づくべき
脆弱性 vulnerability

インフォームドコンセント能⼒が⽋如した⼈々

医療、その他⾼価なものを⼊⼿できない⽴場にある⼈々

⾃分⾃⾝の利益を保護する能⼒を⽋如していること
脆弱者における不公平な状況をいっそう悪化させない、
新たな不公平を⽣み出さない

たとえば、発展途上国で治験を⾏い、開発費⽤の削減、
複雑な規制要件の回避を狙う
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14
⽶ファイザーの試験薬訴訟、ナイジェ
リア犠牲者と賠償⾦和解へ (2009年2⽉26⽇)

1996年4⽉に、ナイジェリア北部のカノ州で、
はしか、コレラ、髄膜炎が⼤流⾏して3000⼈の犠
牲者が出た

ファイザーが髄膜炎に対する未承認抗菌薬Trovan
を、ナイジェリア保健当局の承認や親の同意なし
に⼦どもたち約200⼈に投与した

11⼈が死亡、189⼈に重い後遺症が残った。
ファイザー側は過失を⼀切認めていなかった。

州政府が要求していた賠償額 27億5000万ドル
(約2700億円)⽀払いに合意
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15
ヘルシンキ宣⾔
1964年 世界医師会により採択
(World Medical Association)

臨床研究倫理の基本章典

5つの重要な基本原則
「患者・被験者福利の優先」
「本⼈の⾃発的・⾃由意思による参加」
「インフォームド・コンセント取得の必要」
「倫理審査委員会による事前審査、監視の継続」
「研究は科学常識に従い基礎実験を経て」
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16
DoH改訂経緯

1964年 6⽉ フィンランド、ヘルシンキの第18回WMA総会で採択

1975年10⽉ ⽇本、東京の第29回WMA総会で修正

1983年10⽉ イタリア、ベニスの第35回WMA総会で修正

1989年 9⽉ ⾹港の第41回WMA総会で修正

1996年10⽉ 南アフリカ共和国、サマーセットウエストの第48回
WMA総会で修正

2000年10⽉ スコットランド、エジンバラの第52回WMA総会で修正

2002年10⽉ 第53回WMAワシントン総会で修正(第29項⽬明確化の
ための注釈が追加)

2004年10⽉ 第55回WMA東京総会で修正(第30項⽬明確化のための
注釈が追加)

2008年10⽉ 第59回WMAソウル総会で修正

2013年10⽉ WMAフォルタレザ総会(ブラジル)で修正
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17
ヘルシンキ宣⾔
エディンバラ改訂(2000)

対象の拡⼤

医師だけでなくすべての研究者

ヒトから、ヒト由来の物質、遺伝⼦、診療情報などにま
で拡⼤

プラセボの使⽤制限に⾔及  ⽶国FDAから反発

多⼤な影響
※

ICH-GCP

厚労省「臨床研究に関する倫理指針」

CIOMS International Ethical Guidelines for Biomedical
Research InvoIving Human Subjects (2002)
健康被害の補償はヘルシンキ宣⾔には無かった
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フォルタレザ改訂(2013)
ヘルシンキ宣⾔採択50周年にあたり、現⾏の宣⾔を
アップデート

⽋けていた健康被害への補償措置が追加

社会的弱者のさらなる保護

バイオバンクに関するインフォームドコンセント

有益であることが証明された治療の利⽤可能性

倫理審査委員会の権限強化
H Urushihara, Keio univ.
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19
CIOMS
Council for International Organizations of Medical Sciences
国際医学団体協議会
 1949年にWHOとUNESCOによって設⽴され、
⽣物医学研究に関して活動
 様々な医薬品安全性に関する議論が報告書と
して取りまとめられている
 「⼈を対象とする⽣物医学研究の国際的倫理
指針」International Ethical Guidelines for
Biomedical Research Involving Human
Subjects 2002年に発⾏
 ベルモントレポートの内容をより実務的に詳
細に解説している。
H Urushihara, Keio univ.
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20
研究に伴うリスクと
インフォームドコンセント
H Urushihara, Keio univ.
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21
研究に伴うリスク


観察研究

侵襲の度合いは⽇常診療を超えない

研究対象者には最⼩のリスクが伴うだけ
介⼊研究

少なくとも何名かには害が⽣じうるのは避け得ない(リス
クの最⼩化)

介⼊研究に伴う「リスクの最⼩化」と、観察研究での「最
⼩のリスク」は異なる概念

インフォームドコンセント必須
CIOMS ⼈を対象とする⽣物医学研究のための国際的倫理指針(2002)
H Urushihara, Keio univ.
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22
介⼊研究と観察研究のリスク
の相違
介⼊研究
Psycho-physical risk
⾝体・精神への介⼊
に伴う確かなリスク
⾝体・精神への介⼊に
伴う不確かなリスク
Informational risk
私的情報への侵⼊
に伴うリスク
観察研究
Matsui, K. (2010). Ethical disparity between observational and
experimental methodologies in research. Asian Bioethics Review, 2(3)
国⽴循環器病研究センター
H Urushihara, Keio univ.
松井健志先⽣
2015/4/6、5/11
2012研究倫理研修セミナー より
23
ICはいつ必要か︖
原則として、被験者の「プライバシー」に
研究者が⽴ち⼊る場合
1.
⼼・⾝体へ介⼊する場合
2.
現在、過去、未来において
被験者の⾝体の⼀部、被験者から得られる
データ・診療情報・個⼈情報などを⽤いる
場合
国⽴循環器病研究センター
H Urushihara, Keio univ.
松井健志先⽣
2015/4/6、5/11
2012研究倫理研修セミナー より
24
有効な同意とは
DoHフォルタレザ修正版(2013)
10条 医師は、適⽤される国際的規範および基準はもとより⼈間を
対象とする研究に関する⾃国の倫理、法律、規制上の規範
ならびに基準を考慮しなければならない。国内的または国
際的倫理、法律、規制上の要請がこの宣⾔に⽰されている
被験者の保護を減じあるいは排除してはならない。
25条 インフォームド・コンセントを与える能⼒がある個⼈を本⼈
の⾃主的な承諾なしに研究に参加させてはならない。
26条 ⽬的、⽅法、資⾦源、起こり得る利益相反、研究から期待さ
れる利益と予測されるリスク、研究終了後条項等、を⼗分
に説明
27条 被験者候補が医師に依存した関係にあるかまたは同意を強要
されているおそれがあるかについて特別な注意を払わなけ
ればならない

病院・⼤学でのボランティア募集時には要注意

GCPでは治験依頼者従業員、参加医師の関係者の参加は禁じられて
いる
H Urushihara, Keio univ.
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25
ICを⽀えるもの

倫理原則による要請(社会的要請) Soft law

Respect for personsの原則
ICの必須要素
1. 被験者の同意能⼒
I.
II.
III.
IV.

法による要請 Hard law

法的同意能⼒者である

同意対象・内容は明⽰的である

強制されたものではない
2. 研究者による情報の提供・説明
3. 被験者による情報の理解
4. ⾃発的な決定・同意(=権限委譲)
国⽴循環器病研究センター
H Urushihara, Keio univ.
情報を⼊⼿する
情報を理解する
情報を評価する
情報を論理的に解釈する
松井健志先⽣
2015/4/6、5/11
2012研究倫理研修セミナー より
26
⾦沢⼤学医学部附属病院
無断臨床研究事件
卵巣がん摘出⼿術後に⾼⽤量シスプラチンを含む術後化学
療法を⾏う臨床研究

研究へのインフォームドコンセントを取得せずに、抗がん剤の
臨床研究へ組み⼊れ

副作⽤が当初受けていた説明よりも強いと感じた患者が、別の
医師に相談

抗がん剤のランダム化⽐較臨床試験に組み⼊れられていること
を初めて知らされた。

1999年に、患者の死亡後に遺志を継いだ遺族が起訴

2003年の地裁判決で、臨床研究では、治療以外の⽬的がある以
上、治療のみのインフォームドコンセントだけでは不⼗分とし、
説明義務違反の判決が下った。
H Urushihara, Keio univ.
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27
慶應⼤学病院における
臨床研究倫理指針違反事例
肺癌における循環癌細胞検出に関する臨床研究

倫理申請ならびに肺癌患者さんへの臨床研究に関する説明・同
意がないまま、⼿術切除肋⾻から⾻髄液を採取していました。

倫理申請の承認とその通知前から、臨床研究に関する説明・同
意がないまま、26 名の肺癌患者さんに対し、⼿術中に肋⾻から
⾻髄液を採取していました。なお、14 名については倫理申請書
提出前、12 名については倫理申請は承認されたものの、その通
知がなされる前でした。

コントロールデータも必要ということから、研究対象ではない5
名の良性肺疾患の患者さんから、2011 年11 ⽉28 ⽇〜同年12 ⽉
20 ⽇の期間に、臨床研究に関する説明・同意がないまま、⼿術
中に肋⾻から⾻髄液を採取していました。

部⾨⻑と当該研究責任者の2名について、強く反省を求め、懲
戒処分を検討
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2015/4/6、5/11
28
治療と研究のインフォームド
コンセントの違い


⾦沢⼤学の事件

「治療⽅法は保険診療範囲内であり臨床研究ではない。その
ため治療のインフォームドコンセントがあればよい」との
被告側の主張は、患者の利益を最優先する治療と臨床研究
とではその⽬的が全く異なること理解せずに、両者のイン
フォームドコンセントを混同したものである

⽇本において、治験以外の臨床研究についてのインフォー
ムドコンセントの必要性を初めて法的に認めた事例
慶應⼤学の事件

倫理指針施⾏後10年たってからの事件
研究同意に対する理解不⾜
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研究倫理に関する指針
H Urushihara, Keio univ.
2015/4/6、5/11
30
⽇本の医学研究に関する主な
倫理指針 2014年まで
【観察研究】
 ヒトゲノム・遺伝⼦解析研究に関する倫理指針(⽂科省・厚労
省・経産省)
平成13(2001)年3⽉29⽇、平成16年12⽉28⽇全部改正、平成17年6⽉29⽇⼀部改正、平成25年2⽉8
⽇全⾯改正告⽰、同年4⽉1⽇施⾏

疫学研究に関する倫理指針(⽂科省・厚労省)
平成14年6⽉17⽇、平成16年12⽉28⽇全部改正、平成17年6⽉29⽇⼀部改正、平成19年8⽉16⽇全部改
正、平成20年12⽉1⽇⼀部改正
【介⼊研究】

臨床研究に関する倫理指針(厚⽣労働省)
平成15年7⽉30⽇、平成16年12⽉28⽇全部改正、平成20年7⽉31⽇全部改正

遺伝⼦治療臨床研究に関する指針(⽂部科学省・厚⽣労働省)
平成14年3⽉27⽇、平成16年12⽉28⽇全部改正、平成20年12⽉1⽇⼀部改正

ヒト幹細胞を⽤いる臨床研究に関する指針(厚⽣労働省)
平成18年7⽉3⽇、平成22年11⽉1⽇全部改正、平成25年10⽉1⽇全部改正

医薬品の臨床試験の実施に関する基準
Good Clinical Practice
平成18年7⽉3⽇、平成22年11⽉1⽇全部改正、平成24年12⽉28⽇⼀部改正
H Urushihara, Keio univ.
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31
⽇本の医学研究に関する主な
倫理指針 2015年から
【観察研究】
 ヒトゲノム・遺伝⼦解析研究に関する倫理指針(⽂科省・厚労
省・経産省)
平成13(2001)年3⽉29⽇、平成16年12⽉28⽇全部改正、平成17年6⽉29⽇⼀部改正、平成25年2⽉8
⽇全⾯改正告⽰、同年4⽉1⽇施⾏
疫学研究に関する倫理指針(⽂科省・厚労省)
平成14年6⽉17⽇、平成16年12⽉28⽇全部改正、平成17年6⽉29⽇⼀部改正、平成19年8⽉16⽇全部改
⼈を対象とする医学系研究に関する倫理指針(⽂科省・厚労
正、平成20年12⽉1⽇⼀部改正
省) (統合指針)
【介⼊研究】
平成26年12⽉22⽇公布、平成27年4⽉1⽇施⾏



•
ガイダンス 平成27年2⽉9⽇発⾏
臨床研究に関する倫理指針(厚⽣労働省)
平成15年7⽉30⽇、平成16年12⽉28⽇全部改正、平成20年7⽉31⽇全部改正

遺伝⼦治療臨床研究に関する指針(⽂部科学省・厚⽣労働省)
平成14年3⽉27⽇、平成16年12⽉28⽇全部改正、平成20年12⽉1⽇⼀部改正
(再⽣医療等の安全性の確保等に関する法律
平成25年法律
ヒト幹細胞を⽤いる臨床研究に関する指針(厚⽣労働省)
平成18年7⽉3⽇、平成22年11⽉1⽇全部改正、平成25年10⽉1⽇全部改正
平成25年11⽉27⽇公布、平成26年11⽉25⽇施⾏
第85号)
 医薬品の臨床試験の実施に関する基準 Good Clinical Practice


平成18年7⽉3⽇、平成22年11⽉1⽇全部改正、平成24年12⽉28⽇⼀部改正
H Urushihara, Keio univ.
2015/4/6、5/11
32
医学研究の種類



以前までの倫理指針上の研究のわけ⽅
臨床研究 vs. 疫学研究

臨床研究に関する倫理指針

疫学研究に関する倫理指針
研究デザインによるわけ⽅
介⼊研究 vs.観察研究

介⼊研究 Intervention study
研究⽬的で治療を割り当てる

観察研究 Observational study
研究とは独⽴して治療選択が⾏われる
統合指針では、臨床研究、疫学研究という分類は
無くなった
H Urushihara, Keio univ.
2015/4/6、5/11
33
倫理指針、法規制上の扱い
⼈を対象とする医学系研究
観察研究
介⼊研究
再⽣医療
治験
再⽣医療等法
薬機法・GCP
H Urushihara, Keio univ.
法規制なし
2015/4/6、5/11
34
⼈を対象とする医学系研究に関す
る倫理指針(⽂科省・厚労省)
平成26年12⽉22⽇公布、平成27年4⽉1⽇施⾏
Ethical Guidelines for Medical and Health Research
Involving Human Subjects
H Urushihara, Keio univ.
2015/4/6、5/11
35
統合指針の概要
(1)研究機関の⻑及び研究責任者等の責務に関する規定(第2章関係)
研究機関の⻑の監督義務、研究責任者の責務(研究の倫理的妥当性及び科学的合理
性の確保)、研究者への教育・研修の義務化、侵襲研究での補償
(2)いわゆるバンク・アーカイブに関する規定(第1章、第3章関係)
試料・情報を収集し、他の研究機関に反復継続して研究⽤に提供する機関「試料・
情報の収集・分譲を⾏う機関」
(3)研究に関する登録・公表に関する規定(第3章関係)
(4)倫理審査委員会の機能強化と審査の透明性確保に関する規定 (第4章関係)
委員構成、成⽴要件、教育・研修の規定、倫理審査委員会の情報公開
(5)インフォームド・コンセント等に関する規定(第5章関係)
研究対象者に⽣じる負担・リスクに応じて、⽂書⼜は⼝頭によるインフォームド・
コンセント、未成年者等に対するインフォームド・アセント
(6)個⼈情報等に関する規定(第6章関係)
個⼈情報保護法の遵守
(7)利益相反の管理に関する規定(第8章関係)
(8)研究に関する試料・情報等の保管に関する規定(第8章関係)
侵襲介⼊研究は研究終了後5年⼜は結果の最終公表後3年のいずれか遅い⽇までの
保管
(9)モニタリング・監査に関する規定(第8章関係)
侵襲介⼊研究はモニタリングや監査の実施(同年 10 ⽉1⽇から施⾏)
H Urushihara, Keio univ.
2015/4/6、5/11
36
研究機関・研究機関の⻑(第2)
【研究機関】

番組制作会社や新聞・雑誌社も含む

⼤学や企業等の研究機関が実施する研究に協⼒等する場合には、
番組制作会社や新聞・雑誌社は共同研究機関になりうる
【研究機関の⻑】

研究を実施する法⼈の代表者、⾏政機関の⻑⼜は個⼈事業主を
いう。

権限⼜は事務を、研究活動を統括するにおいて⼗分な権限を有
する適当な者に委任することができる。
学部⻑、病院⻑、施設⻑(保健所⻑、研究所⻑等)など
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37
社会的に弱い⽴場にある者へ
の特別な配慮(第1)

ICH-GCPを参考とする(ガイダンス)。

ICH-GCP 1.61 社会的に弱い⽴場にある者 Vulnerable
Subjects
臨床試験に⾃発的に参加する個⼈の意思は、参加に伴う利益或いは
参加拒否による上位者の報復を予想することにより、不当に影響を
受ける可能性がある。
例としては、階層構造を有するグループの構成員───医学⽣、薬
学⽣、⻭学⽣、看護学⽣、病院及び検査機関の下位職員、製薬企業
従業員、軍隊の隊員並びに被拘留者等がある。
その他の社会的に弱い⽴場にある者としては、不治の病に罹患して
いる患者、介護施設収容者、失業者⼜は貧困者、急患、少数⺠族集
団、ホームレス、放浪者、難⺠、未成年並びに正当な同意を与える
能⼒のない者があげられる。
H Urushihara, Keio univ.
2015/4/6、5/11
38
慶應義塾⼤学薬学部
⼈を対象とする研究倫理委員会細則に
おける被験者に関する規程
第3条
規則第3条の被験者は、⼀般に公募する。
ただし、学⽣のみを対象とした募集はしない。
H Urushihara, Keio univ.
2015/4/6、5/11
39
統合指針の対象となる研究の
定義(第2)
⼈(試料・情報を含む。)を対象として

傷病の成因(健康に関する様々な事象の 頻度及び分
布並びにそれらに影響を与える要因を含む。)

病態の理解

傷病の予防⽅法

医療における診断⽅法及び治療⽅法の改善⼜は有
効性の検証
を通じて、
国⺠の健康の保持増進⼜は患者の傷病からの回復若し
くは⽣活の質の向上に資する知識を得ることを⽬的と
して実施される活動をいう。
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40
試料・情報とは(第2)

⼈体から取得された試料
⾎液、体液、組織、細胞、排泄物及びこれらから抽出し
たDNA等、⼈の体の⼀部であって研究に⽤いられるもの
(死者に係るものを含む。)をいう。

研究に⽤いられる情報
研究対象者の診断及び治療を通じて得られた傷病名、投
薬内容、検査⼜は測定の結果等、⼈の健康に関する情報
その他の情報であって研究に⽤いられるもの(死者に係る
ものを含む。)をいう。
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41
既存試料・情報とは(第2)
試料・情報のうち、次に掲げるいずれかに該当するものを
いう。

研究計画書が作成されるまでに既に存在する試料・情報

研究計画書の作成以降に取得された試料・情報であって、
取得の時点においては当該研究計画書の研究に⽤いられ
ることを⽬的としていなかったもの
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42
適⽤対象(第3)
〔適⽤対象外〕

法令の規定により実施される研究

法令の定める基準の適⽤範囲に含まれる研究

試料・情報のうち、次に掲げるもののみを⽤いる研究
1.
既に学術的な価値が定まり、研究⽤として広く利⽤され、
かつ、⼀般に⼊⼿可能な試料・情報
2.
既に連結不可能匿名化されている情報
〔他の倫理指針との関係〕
他の倫理指針に規定されていない事項はこの指針に従う。
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43
「既に」連結不可能匿名化さ
れている情報とは(ガイダンス)

研究に⽤いようとする前から連結不可能匿名化されている
既存の情報のこと

研究に⽤いようとするとき⼜は他の研究機関に提供しよう
とするときに連結不可能匿名化する場合は含まない

連結可能匿名化された情報で他から提供を受けたものにつ
いて、その情報を⽤いて研究を実施する研究機関において
対応表を保有しない場合は、「既に連結不可能匿名化され
ている情報」を⽤いる研究に該当しない

別の規定によりこの指針の対象から除かれない限り、この
指針の規定に従って実施する必要がある

研究を実施する研究機関において対応表を保有する場合に
⽐べて、インフォームド・コンセントを受ける⼿続が軽減さ
れ、それに伴って研究計画書の記載内容も減り、また、倫
理審査委員会において迅速審査の取扱いが可能
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44
侵襲の定義(第2)

侵襲 (いわゆる治療介⼊)
研究⽬的で⾏われる、穿刺、切開、薬物投
与、放射線照射、⼼的外傷に触れる質問等
によって、研究対象者の⾝体⼜は精神に傷
害⼜は負担が⽣じることをいう。
侵襲のうち、研究対象者の⾝体及び精神に
⽣じる傷害及び負担が⼩さいものを「軽微
な侵襲」という。
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45
介⼊の定義(第2)

介⼊ (いわゆる割付の有無)
研究⽬的で、⼈の健康に関する様々な事象
に影響を与える要因の有無⼜は程度を制御
する⾏為をいう。
この要因には、健康の保持増進につながる
⾏動及び医療における傷病の予防、診断⼜
は治療のための投薬、検査等を含む。
介⼊には、通常の診療を超える医療⾏為で
あって、研究⽬的で実施するものを含む。
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46
教育・研修(第4)

研究者等は、
研究の実施に先⽴ち、
また、研究期間中も適宜継続して、
研究に関する倫理並びに当該研究の実施に必要な知識
及び技術に関する教育・研修を受けなければならない。

不正⾏為、利益相反等についての教育・研修を含む


研究機関内外で開催される研修会

e-learning

少なくとも年に 1 回程度
補助業務者も含む
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47
新たに試料・情報を取得する研究における
インフォームドコンセント、迅速審査、
有害事象報告
侵襲
介⼊
対象者の
リスク
インフォームドコンセント
迅速審査*
有害事象
報告
あり
あり
⾼
⽂書
不可
該当
あり
なし
中
⽂書
可
該当
(軽微な侵襲)
なし
あり
低
⼝頭
不可
⾮該当
なし
なし
最⼩限
可
⾮該当
⼈体試料あり
⼝頭
⼈体試料なし
オプトアウト
オプトアウト︓研究実施の情報公開と、拒否の機会の提供
*) 他施設審査済はいずれも迅速審査可
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48
バイオバンク・アーカイブ
既存試料・情報のみを⽤いる場合
1. 他の研究機関に対して既存
試料・情報の提供を行う者
2. 試料・情報の収集・ 3. 既存試料・情報の提供を受
分譲を行う機関
けて研究を実施しようとする者
試料・情報を取得
し、⼜は他の機関
から提供を受けて
保管し、反復継続
して他の研究機関
に提供を⾏う
1のみ・・・研究者でない(新たに取得する場合は研究者)
既存資料・情報の提供を機関の⻑が把握すること
2及び3・・・研究者扱い 要プロトコール・倫理審査
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49
既存試料・情報のみを⽤いる場合の
インフォームドコンセント
(第12-1(2, 3, 4))

⾮侵襲、⾮介⼊の研究(後ろ向き研究)

匿名化されている場合

匿名化されていない場合の⼿続き
IC⼿続き不要
⼈体から採取
研究⽬的での既存資料 提供された資料・情報を利
⾃病院での研究利⽤
された試料
・情報の提供*
⽤した研究
使⽤
⼝頭 例外規定あり
使⽤しない
不要 オプトアウト
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⼝頭もしくは
オプトアウト
*での適正な⼿続きの確認
オプトアウト
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50
迅速審査・中央審査

迅速審査対象
1.
他の研究機関との共同研究
既に共同研究機関において倫理審査承認済み
2.
軽微な変更に関する審査
3.
⾮侵襲⾮介⼊研究
4.
軽微な侵襲を伴う⾮介⼊研究

付議不要はなくなった

倫理審査委員会が指名する委員による迅速審査

迅速審査の結果は倫理審査委員会の意⾒として取り扱う

審査結果を全ての委員に報告

研究機関の⻑の依頼により、中央審査が可能に
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51
重篤な有害事象報告(第17)

研究者等は、
侵襲を伴う研究の実施において重篤な有害事象の発⽣を
知った場合には、3⑴の規定による⼿順書等に従い、研
究対象者等への説明等、必要な措置を講じるとともに、
速やかに研究責任者に報告しなければならない。

研究責任者は、
侵襲を伴う研究の実施において重篤な有害事象の発⽣を
知った場合には、速やかに、その旨を研究機関の⻑に報
告するとともに、3⑴の規定による⼿順書等に従い、適
切な対応を図らなければならない。また、速やかに当該
研究の実施に携わる研究者等に対して、当該有害事象の
発⽣に係る情報を共有しなければならない。
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52
研究の信頼性確保
〔利益相反の管理〕(第18)

医薬品⼜は医療機器の有効性⼜は安全性に関する研究等、
商業活動に関連し得る研究

当該研究に係る利益相反に関する状況を研究計画書に記載、
インフォームドコンセント時に説明しなければならない
〔モニタリング、監査〕(第20)

侵襲介⼊研究 モニタリング(必須)、監査(必要に応
じ)の実施を研究計画書に記載

2015年10⽉から施⾏
〔研究結果の公表〕(第9)

介⼊研究

侵襲介⼊研究
ならない
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公開データベースへの登録
結果公表を研究機関の⻑へ報告しなければ
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53
医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令
(GCP省令)
人を対象とする医学系研究に関する倫理指針
医薬品等製造販売承認
国民の健康の保持増進又は患者の傷病からの
回復若しくは生活の質の向上に資する知識
医薬品等製造販売承認申請のための臨床試験
人を対象とする医学系研究(介入・観察研
究)
製薬企業、もしくは医師(医師主導治験)
研究責任者
届出単位
1試験ごと
1研究ごと
届け出先
厚生労働大臣
研究機関の長
医薬品医療機器総合機構、治験審査委員会
倫理審査委員会
○
研究の種別ごとの規定
必須
補償その他の措置(研究機関の長の責務)
○
○
項目
目的
対象範囲
スポンサー(申請者)
審査
インフォームドコンセント
補償措置
研究者の要件・教育
公開データベースへの事前
登録
-
信頼性保証
モニタリング・監査
(カルテの直接閲覧必要)
医療機関の長及び
治験審査委員会 厚生労働大臣
モニタリング・監査、利益相反
(方法は実施計画書に規定)
研究機関の長及び
倫理審査委員会 厚生労働大臣
○
○
必須
-(一部のみ)
医療機関の長
研究機関の長
未知・重篤な有害事象報告
規制当局による査察
試験実施に関わる標準作業
手順書
年次報告
研究成果の実用化
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(別途自主業界基準あり)
○
薬事法上の製造販売承認
様々
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54
研究倫理委員会の規則が変わ
ります

名称

申請様式


「⼈を対象とする研究倫理委員会」規則
倫理審査申請書 新規・変更・再審査(様式1)

倫理指針の遵守

資⾦源、団体・企業の関与

研究の登録
研究に関する報告書 継続⽤、終了中⽌⽤(様式4、5)

申請の際の研修受講の義務化

有害事象報告

5/1から施⾏予定
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55
講習
提供元
タイトル
受講形態
研修
記録
⽇程
内容
慶應義塾⼤学
クリニカル
リサーチセンター
臨床研究講習会
予約制
座学
○
年2回
1⽇
『初回講座』
『更新講座』
臨床研究 E-ラーニン
グ
登録制
Web
○
随時
2.5-3.0時間
GCP中⼼
⽇本医師会
治験促進センター
臨床試験のためのe
Training center
登録制
Web
○
随時
30分
GCPのみ
前篇、後篇
UMIN
臨床研究・治験に携
わる⼈材育成のため
のe-learning
UMIN登録
Web
○
随時
数時間
治験中⼼
専⾨・職種別
CITI Japan
(eラーニング)
医学研究者標準コー
ス(15単元)
機関登録
Web
○
随時
時間不明
コース別
ミスコンダクトもあり
(28年度まで無料)
臨床研究eラーニン
グサイト
ICR臨床研究⼊⾨
臨床研究の基礎知識
講座
登録制
Web
○
随時
5時間
疫学統計含む
専⾨・職種別コースも
あり
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56
研究計画書作成にあたっての
参考資料
⼈を対象とする医学系研究の倫理審査にあたり研究計画書
に記載すべき事項
京都⼤学医学研究科・医学部
(2015.4.1版)
医の倫理委員会
http://www.ec.med.kyotou.ac.jp/uploads/hitotaisyo_checklist20150304.doc
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2015/4/6、5/11
57
H Urushihara, Keio univ.
2015/4/6、
5/11
58