アジレント2100バイオアナライザを用いたRNAi効果のチェック

i nnovation
アジレント 2100 バイオアナライザを
用いた RNAi 効果のチェック
アジレント 2100 バイオアナライザには、電気泳動システム
【操作の概要】
とセルアッセイシステムが用意されています。電気泳動用の
siRNA のCy5 標識は Label IT ® siRNA TrackerTM CyTM5 Kit を
カートリッジをフローサイトメトリー用のカートリッジに交
用いて行い、キットに添付の Trans IT ®-TKO を用いてトラン
換することにより、細胞の簡易型フローサイトメトリーアッ
スフェクションを行った。Cy5 siNC の細胞内への取り込み
セイを行うことができます。
量は、以下のようにして測定した。トランスフェクションの
ここでは、アジレント 2100 バイオアナライザの 2 つのシス
24 時間後に Calcein-AM で細胞を染色した後、細胞を回収
テムについて簡単にご説明するとともに、セルアッセイシス
し、アジレント2100 バイオアナライザ・セルアッセイシステム
テムを用いて siRNA のトランスフェクション条件の設定と
を用いて生細胞に由来する緑色蛍光とCy5 siNC に由来する
RNAi 効果の確認を行った実験例をご紹介します。
赤色蛍光を測定し、生細胞にゲートをかけて Cy5 の取り込
*アジレント 2100 バイオアナライザシステムは Agilent Technologies
社の製品です。
み量(Cy5 mean)をモニターし、データ解析を行った。
(1)siRNAトランスフェクション試薬の添加量の検討
■アジレント2100 バイオアナライザの電気泳動システム
siRNA 濃度を10 nMに固定し、24 well プレートでトランスフェ
DNA や RNA、タンパク質の電気泳動および解析を全自動で
クション試薬(Trans IT ®-TKO)量を 1 ∼ 5 µl/well の範囲で
行うことができます。これまで別々の装置で行われていたゲ
変えた条件でトランスフェクション実験を行った。トランス
ルの作製から電気泳動、バンドの検出、データ解析までのす
フェクション効率をCy5 の取り込み量でモニターした結果を
べてを1 台の装置で行うことができます。
図1 に示す。
■アジレント2100 バイオアナライザのセルアッセイシステム
50
セルアッセイシステムには、1 サンプルあたり20,000 個程度の
40
されており、緑色の蛍光(525 nm)と赤色の蛍光(680 nm)を
検出することができます。ただし、FSC(前方散乱光)
、SSC
(側方散乱光)を測定することができないため、細胞は緑色
または赤色の蛍光物質で染色する必要があります。
Cy5 mean
細胞しか含まれていなくても細胞分析が行える機能が搭載
30
20
10
このシステムは、例えば蛍光標識アネキシンV 染色によるア
ポトーシスの検出や、緑色蛍光タンパク質(GFP:Green
Fluorescent Protein)
の発現を指標としたトランスフェクショ
0
293 細胞 10 nM
(control) 1μl
ン効率のモニタリングなどに利用できます。
10 nM
3μl
10 nM
4μl
10 nM
5μl
siRNA 添加量(上)
Trans IT®-TKO 添加量(下)
専用のセルアッセイキットには専用チップと分析に必要な試
薬が含まれており、1 チップで最大 6 サンプルを分析でき、
10 nM
2μl
図1 siRNAトランスフェクション試薬の添加量の検討
1 チップの分析に必要な時間は約 24 分です。
siRNA の使用濃度が 10 nM の場合、Trans IT ®-TKO の使用
■ siRNA のトランスフェクション条件の検討
量が 2 µl 以上であれば siRNA の導入量は変わらないことが
siRNA のトランスフェクション実験では、最初に目的の細胞
わかりました。
ごとにトランスフェクション試薬の量とsiRNA の濃度を最適
化する必要があります。ここでは、293 細胞のmRNA に対し
て作用しない配列の siRNA を Cy5 で標識し、この Cy5 標識
(2)siRNA の濃度とsiRNAトランスフェクション試薬の
添加量の検討
siRNA(以下 Cy5 siNC と略記)を 293 細胞に Trans IT ®-TKO
次に示す2 つのパターンでsiRNA 濃度とTrans IT ®-TKO 添加
を用いて種々の条件でトランスフェクションし、最適な条件
量を変えて最適な条件を検討した。
を検討した実験を例として示します。なお、この系では、Cy5
① siRNA 10 nM に対して Trans IT ®-TKO を 3 µl とすること
siNC の導入によってmRNA がノックダウンされることはなく、
を基本にして、その比率を一定にして両者の量を同時に
トランスフェクション効率のみをモニターすることになります。
変動させた。
8
●
BIO VIEW No.46
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siRNA:Trans IT ®-TKO = 5 nM:1.5 µl、10 nM:3 µl、
図 3-A、B より、Cy5 標識したsiRNA も非標識のsiRNA と同
15 nM:4.5 µl、20 nM:6 µl、25 nM:7.5 µl
等のRNAi 効果(ノックダウン効果)を示すことが確認されま
に示します。いずれの場合も siRNA の濃度の上昇に伴い、
siRNA の細胞への取り込みが増大することが分かりました。
顕微鏡観察をしたところ、①の場合では高濃度の siRNA と
高容量の Trans IT ®-TKO を用いた条件では細胞毒性が認め
られましたが、Trans IT ®-TKO を3 µl に固定した②の場合で
は死細胞はほとんど認められませんでした。
以上のことから、テストした範囲のsiRNA 濃度(5 ∼25 nM)
とがわかりました。
100
siRNA:Trans IT®-TKO 添加量比一定
Trans IT®-TKO 添加量 3μl 固定
Cy5 mean
80
システムで1,000 events 程度カウントして分析した結果(図 3C)がほぼ一致しており、アジレント2100 バイオアナライザで
はより少量のサンプルでも分析が可能なことがわかりました。
また、図 3-C より、Cy5 標識 siGFP の取り込み(▲)の増大に
伴ってGFP 蛍光強度(◆)が減少している(RNAi 効果が増大
している)ことがわかりました。
(A)80
GFP positive cells(%)
では、添加する Trans IT ®-TKO の量は 2 ∼ 3 µl 程度でよいこ
(図 3 -B)とアジレント2100 バイオアナライザ・セルアッセイ
60
120
100
60
80
60
40
40
20
20
0
0
10 nM
siNC
pUC18
40
20
10 nM
siNC
pQBI25
50 nM
siNC
pQBI25
GFP positive cells
293 細胞
5 nM
(control)
10 nM
15 nM
20 nM
25 nM
siRNA 添加量
図2 siRNAの濃度とsiRNAトランスフェクション試薬の添加量の検討
■ RNAi 効果の分析
前述の実験で決定した293 細胞に対するトランスフェクショ
ン試薬の量(Trans IT ®-TKO 3 µl)を用いて、実際にノックダ
を行った。
なお、コトランスフェクションは、プラスミド導入用試薬
Trans IT ®-293 と siRNA 導入用試薬 Trans IT ®-TKO(3 µl)の
120
80
60
40
40
20
20
0
10 nM
10 nM
50 nM
10 nM
25 nM
50 nM
Cy5 siNC Cy5 siNC Cy5 siNC Cy5 siGFP Cy5 siGFP Cy5 siGFP
pUC18 pQBI25 pQBI25 pQBI25 pQBI25 pQBI25
GFP positive cells
Relative GFP mean
(C)80
GFP positive cells(%)
従来型のフローサイトメーター(FACS Vantage)による分析
Relative GFP mean
100
GFP のターゲット配列に対する siRNA(以下 siGFP と略記)
ルアッセイシステムで分析し、RNAi 効果を調べた。併せて、
50 nM
siGFP
pQBI25
60
【操作の概要】
ションし、48 時間後にアジレント2100 バイオアナライザ・セ
25 nM
siGFP
pQBI25
0
ウン実験を行った例を以下に示します。
と GFP 発現ベクター pQBI25 を 293 細胞にコトランスフェク
10 nM
siGFP
pQBI25
(B)80
GFP positive cells(%)
0
120
100
60
80
60
40
40
20
20
混合液を用いて、Trans IT ®-TKO のコトランスフェクション
プロトコールに従って行った。
実験には、種々の濃度(10∼50 nM)の Cy5 標識または非標
識の siGFP を用い、またネガティブコントロールとして前述
Relative GFP mean(%)
上記の条件でトランスフェクション実験を行った結果を図 2
FACS Vantage で 10,000 events カウントして分析した結果
Relative GFP mean(%)
5 nM、10 nM、15 nM、20 nM、25 nM と変動させた。
した。
0
0
Relative GFP or Cy5 mean(%)
② Trans IT ®-TKO の添加量を3 µl に固定し、siRNA の濃度を
10 nM
10 nM
50 nM
10 nM
25 nM
50 nM
Cy5 siNC Cy5 siNC Cy5 siNC Cy5 siGFP Cy5 siGFP Cy5 siGFP
pUC18 pQBI25 pQBI25 pQBI25 pQBI25 pQBI25
GFP positive cells
Relative GFP mean
Relative Cy5 mean
の、mRNA に作用しない siRNA(siNC)を用いた(表 1)
。Cy5
標識 siRNA を用いた場合の分析にはFACS Vantage(図 3-B)
およびアジレント2100 バイオアナライザ・セルアッセイシステ
ム(図 3-C)を、非標識 siRNA を用いた場合の分析にはFACS
Vantage(図 3-A)を用いた。
図3 RNAi 効果の分析
(A)非標識 siRNA を使用、FACS Vantage で分析。
(B)Cy5 標識 siRNAを使用、FACS Vantage で分析。
(C)Cy5 標識 siRNA を使用、アジレント2100 バイオアナライザ・セルアッセイ
システムで分析。
BIO VIEW No.46 ●
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i nnovation
表1 実験で使用したプラスミドとsiRNA
プラスミド
Sample 1
Sample 2
Sample 3
Sample 4
Sample 5
Sample 6
Sample 7
Sample 8
Sample 9
Sample 10
Sample 11
Sample 12
pUC18 *1
pQBI25 *1
pQBI25
pQBI25
pQBI25
pQBI25
pUC18
pQBI25
pQBI25
pQBI25
pQBI25
pQBI25
■おわりに
ご紹介した実験例からわかるように、アジレント2100 バイオ
siRNA
siRNA
NC *2
NC
NC
GFP
GFP
GFP
NC
NC
NC
GFP
GFP
GFP
蛍光標識 添加濃度
なし
なし
なし
なし
なし
なし
Cy5
Cy5
Cy5
Cy5
Cy5
Cy5
10 nM
10 nM
50 nM
10 nM
25 nM
50 nM
10 nM
10 nM
50 nM
10 nM
25 nM
50 nM
アナライザ・セルアッセイシステムを用いることによって、
siRNA のトランスフェクションに用いる試薬の最適条件を検
討することができ、また従来のフローサイトメーターと比較
して、より少量のサンプルで同等の精度で RNAi 効果の分析
を行うことができます。
*1:pQBI25 はGFP を発現するプラスミド。pUC はGFP を発現しないプラス
ミド(コントロール)
。プラスミドの量はすべて 0.5 µg。
*2:NC はネガティブコントロール
■関連製品
製品名
Code
容量
価格
V7200
V7201
V7202
V7203
V7204
V7205
Labels 50 µg
Labels 50 µg
Labels 50 µg
Labels 50 µg
Labels 50 µg
Labels 50 µg
¥69,000
¥69,000
¥63,000
¥63,000
¥63,000
¥63,000
V2150
V2110
V2300
V2400
V2700
V2750
V2900
V2170
V2180
VR2190
V2140
V2120
V2130
1 ml *1
1 ml *1
1 ml *1
1 ml *1
1 ml *1
1 ml *1
1 ml *1
1 ml *1
1 ml *1
1 ml *1
1 ml *1
1 ml *1
1 ml *1
¥67,000
¥70,000
¥30,000
¥46,000
¥52,000
¥52,000
¥57,000
¥56,000
¥56,000
¥56,000
¥56,000
¥56,000
¥56,000
AG3140
AG3141
AG3142
AG3143
AG3148
AG4488
AG4486
一式
一式
一式
一式
一式
1 キット
1 キット
¥2,975,000
¥3,151,000
¥3,140,000
¥3,316,000
¥856,000
¥57,000
¥25,000
【siRNA の標識・細胞内導入・トラッキング用キット】
Label IT ® siRNA TrackerTM CyTM3 Kit
Label IT ® siRNA TrackerTM CyTM5 Kit
Label IT ® siRNA TrackerTM CX-Rhodamine Kit
Label IT ® siRNA TrackerTM TM-Rhodamine Kit
Label IT ® siRNA TrackerTM Biotin Kit
Label IT ® siRNA TrackerTM Fluorescein Kit
【siRNA およびプラスミド導入用試薬】
Trans IT ®-TKO
Trans IT ®-siQUEST NEW
Trans IT ®-LT1
Trans IT ®-LT2
Trans IT ®-293
Trans IT ®-Keratinocyte
Trans IT ®-HeLaMONSTER
Trans IT ®-CHO
Trans IT ®-3T3
Trans IT ®-COS
Trans IT ®-Neural
Trans IT ®-Jurkat
Trans IT ®-Prostate
*2
【アジレント2100 バイオアナライザおよび関連製品】
アジレント2100 バイオアナライザ電気泳動 デスクトップシステム
アジレント2100 バイオアナライザ電気泳動 ノートシステム
アジレント2100 バイオアナライザセルアッセイ デスクトップシステム
アジレント2100 バイオアナライザセルアッセイ ノートシステム
アジレント2100 アプリケーション(セルアッセイ)追加セット
セルアッセイキット
セルアッセイチェックキット
*1: 1 ml 包装のほかに、0.4 ml、1 ml × 5、1 ml × 10 包装のものもあります。
*2:本システムのパンフレットをご用意しております。各販売課へお問い合わせください。
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