3.文化財保護の理念 (1)文化財の保護 文化財保護法第1条には、 「文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もって国民の文 化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献することを目的とする。」とあります。 これは、文化財保護とは、文化財の「保存」と「活用」から成り、「保存」と「活用」 は相互に補完し合うものとされ、文化財を「保存」してはじめて多彩な「活用」が可能 となり、文化財を「活用」することが「保存」をより確実に進めるという考えを示して います。 つまり、適切な文化財保護とは、あくまでも「保存」を前提として「活用」を考えつ つ、常に両者が統一された均衡ある状態と言えます。 (2)史跡の公開・活用と史跡整備の理念 史跡を適切に「公開」することは、地域住民が史跡の価値を正確に知り、理解を深め る上で重要な役割があります。史跡への正確な知識と豊かな理解は、史跡の「保存」に 大きな効力を持ちます。 史跡の「活用」とは、この史跡の「公開」のほか、史跡の来訪者が快適に過ごすこと、 歴史・文化を学ぶこと、史跡を核にした物理的・精神的両面にわたる地域づくりなどが あげられます。 「史跡整備」は、このような史跡の「活用」と「保存」の両立を目的として行われる ものであり、史跡の本質的な価値や史跡内外の環境等を保存し、具体化するなどの整理 を行う作業と言えます。 4.市民の意見 (1)検討組織と内容 ① 浦尻貝塚史跡公園づくり市民検討会 市民の意見を反映した基本構想・基本計画を作成するため、公募に対し申し込みがあ った市民ならびに浦尻行政区から自主的参加者を加えたワークショップを開催した。 ・ 参加者数24名(男性18名、女性6名) 内訳 ・ 内 小高区12名、原町区6名、鹿島区1名、浦尻行政区5名 容 第1回 第2回 5月17日(土) 5月31日(土) 第3回 6月14日(土) 第4回 第5回 第6回 6月28日(土) 7月12日(土) 7月26日(土) 浦尻貝塚、史跡公園の説明 浦尻貝塚現地見学、史跡公園の意見交換 先進地研修(茨城県土浦市上高津貝塚) 史跡公園・博物館見学、火おこし体験 基本構想案づくり 基本構想案づくり 基本構想ゾーニング図作成 -25- ② 浦尻貝塚史跡公園づくり浦尻行政区検討会 地元行政区である浦尻行政区との意見調整を図り、事業への理解ならびに将来にわた る協力を得るため、各種団体の代表者が参加した検討会を開催した。 ・検討会組織 区長ほか、隣接地代表、地元市会議員、原発対策協議会、消防団、婦人会、PTA育 成会など、各種団体 約40名の参加 ・活動内容 5月26日 浦尻貝塚・史跡公園の説明 7月4日 浦尻貝塚についての意見交換 ※ 意見は別紙参照 ③ 福浦小学校児童による史跡公園づくり 児童の意見を取り入れた計画づくりを目指すとともに、児童が地域の文化財に親しむ 機会をつくり、児童が自ら考え、創る力を育むことを目的として、地元小学校である福 浦小学校児童6年生を対象に、総合的学習の時間を活用して、児童による浦尻貝塚史跡 公園づくりを実施した。 ・主な内容 6月13日 浦尻貝塚・出土品・史跡公園の説明 6月18日 浦尻貝塚現地見学、作文 7月9日 浦尻貝塚マップづくり 7月17日 浦尻貝塚マップづくり、発表 (2)市民検討会等の意見のまとめ ① ② 浦尻貝塚の良いところ、活かしたいことの主なキーワード ・遺跡に関すること 縄文、貝塚 ・立地環境に関すること 海、良好な景観、緑が多い ・活用に関すること 学習、植栽、ガイダンス(博物館・資料館) 比較的多く見られるキーワード ・遺跡に関すること 竪穴住居、古墳 ・立地環境に関すること 周辺に人家が少ない(開発されていない、のんびりとした 空間)、広い ・活用に関すること 案内板、復元・再現、体験、子どもが遊ぶ、バリアフリー、 スポーツ、キャンプ、避難場所 -26- 図16 市民検討会A・Bグループ案 -27- 図17 市民検討会Cグループ案 -28- 図18 市民検討会Dグループ案 -29- ③ 具体的に必要とされるもの {1}展示・復元物 ・貝層展示施設 現地性を高めたリアルな表現で断面等の展示。地下に埋まっているイメージ、臨場感。 ・竪穴住居復元 シンボルとして、展示物として設置。周辺は縄文時代のムラを体感できる空間とする。 ・古墳の復元 縄文時代と混同しないように配慮した上で、復元。過去に出土した石棺の展示も行う。 {2}学習施設 ・ガイダンス施設(体験学習室) 浦尻貝塚の解説、出土品の展示。遺跡の概略がわかるように。小学校2クラス程度の 雨天時の利用に対応したもの。また、倉庫、ボランティア活動の拠点としての機能も 併設。総合博物館ではない。 ・体験学習の場 自然と遺跡を通して、現代の暮らしを振り返る。樹木・景観・復元建物・貝塚・展示 物・ガイダンスがリンクし、体感する学習の場。 ・縄文の森(学習できる森) 継続的な植栽と管理により、縄文時代の森を復元。学習機能を持たせる。 ・案内版 遺跡の内容のほか、景観や自然環境についての解説も加えたもの。 ・縄文時代のムラ空間 生活の場から分離した場、異空間づくり。 {3}環境整備等 ・海、山の展望。 海と山を展望できるビューポイントの設置。景観を重視した伐採、植栽。 かつて浦であった田園風景、地域に育まれた町なみなどの眺望や緑豊かな遺跡・地域 の環境を保全・創出。 ・屋外トイレ ガイダンス施設閉鎖時の利用に対応。 ・駐車場 大型バスに対応。北東側(サブ)と南西側(メイン)2箇所の設置。 ・園路 ユニバーサルデザインとなる園路、動線を確保。ウォーキング等に利用できる周遊的 な散策道も確保。 ・多目的なスペース 南側の道路に面して適度な維持管理をした平坦面を設け、イベントなどの利用に供す -30- る。地元住民が利用できるスペース。 ・アプローチゾーン 南側の道路沿いは来訪者にとって不快感を与えないような植栽や歩道等の設置。 ・広場 体験学習や親子連れなどが遊びやスポーツをすることができるもの(一部芝生)。災害 時には、避難場所としても利用できるもの。 ・森で遊ぶ遊具 伐採木などを利用した縄文のイメージを壊さない遊具(アスレチック、ツリーハウス など)の設置。最低限のものでよい。 ・休憩場所 日陰となって休めるように。四阿、木製のベンチなど。 ・太陽光発電 {4}活動内容 ・体験学習の実施 弓矢体験など、遺跡と自然を利用した体験学習を実施する。 ・他の史跡や社会教育施設との連携 博物館、大悲山の石仏桜井古墳公園等と一体となった見学 ・他事業との連携 観光、産業等の他の事業との連携した事業を検討する。 ・市民が参加できる事業 ・地域の支援組織づくり ・ボランティアの推進 ④ 整備の方向性 ・できるだけシンプルなものとする。必要以上に凝ったものにしない。 ・史跡整備の目的に沿ったもの以外はあまりつくらない。 ・学習内容は、現代の暮らしを自然と遺跡を通して振り返ることができるものが基本 ・建造物、設置物は縄文時代のイメージを壊さないものとする。 ・塩害を想定するなど維持経費が必要以上にかからないこととする。 ・維持管理体制は地域住民との協議のうえ、協力を得て行っていく。 ⑤ 掲げられた課題 ・史跡見学の目的だけで、人が来るか。または、リピーターはできるのか。 ・交通手段が十分とはいえない。 ・継続的な維持、管理が可能か。 -31- (3)福浦小学校の意見のまとめ ① 浦尻貝塚史跡公園に期待していること(児童) ・浦尻貝塚(史跡公園)ではないとできない体験学習(弓矢体験・宿泊体験) ・遊びを通 じて縄文時代の生活体験をしたい。 ・限定された場所だけで体験学習や遊ぶのではなく、遺跡全体を活用して(いろいろな 場所で)様々なことを行いたい。 ・広大な芝生の広場を整備し、そこで友達や家族と一緒に過ごしたい。 ・遺跡からのながめを生かしつつ縄文時代の雰囲気があふれる公園にして欲しい。 ・大人から子供まで楽しむことができる公園にしてほしい。 ② 具体的に必要とされるもの(児童)※ 太字が要望の強い事項 太字 {1}展示・復元物 ・竪穴住居の復元 縄文時代の道具を中に置いておき触れるようにする、映像が見られる。 ・貝塚の断面(実物)展示 トンネル、地下式、剥ぎ取り、貝塚からでた動物・魚の展示。 ・土器が出ている状況などの現地展示 ・古墳の復元 ・縄文時代の植栽の復元(クルミ・クリ等) ・貯蔵穴の復元 {2}学習施設 ・体験学習施設の建設(雨宿りができるもの) ・展示施設(ガイダンス施設内出土品等) {3}環境整備等 ・海をみながらお弁当が食べられるところ ・遊ぶスペースを作る(草刈、芝生、平坦にする)。 ・展望台 ・遊具(すべり台〈巻貝形〉、ブランコ〈ホタテ貝形〉、ジャングルジム、鉄棒) ・邪魔な木を切って眺めを良くする ・環境にやさしい公園(伐採木の再利用等) ・ベンチ(木製・粘土製) ・テーブル(木製) ・東屋(茅葺屋根)などの休憩場所 ・散歩コース ・きれいなトイレ ・浦尻貝塚までの誘導案内板の設置 -32- {4}活動内容 ・弓矢体験(周りに網を張り、他人に当たらないようにする) ・発掘体験 ・縄文時代の生活体験(竪穴住居での宿泊、縄文料理づくり) ・土器作り ・勾玉作り ・土器探し ・植物や野鳥の鑑賞、観察 ・キャンプ(竪穴住居を使う等) ・バーべキュー ③ 福浦小学校教師の意見 {1}ガイダンス(体験学習)施設 ・「まほろん」のような体験学習やクイズに挑戦して賞状が貰えると良い。 ・鏃とか石庖丁づくりができる場所 ・映像と体験により縄文時代の暮らしを学習できる施設 ・資料館(作業場、炉もあると良い) ・調理場(縄文クッキー作りや古代食づくりなどができるもの) ・見学したり、自ら調べたりできるような施設。 {2}休憩所 ・休憩所(桜井古墳のように下が木で作ってあり、日よけとなり、体育座りで説明が聞 ける場所 ・屋根のある休憩所 {3}説明版 ・今眺められる風景が昔はこうだったと分かる説明版 ・貝塚から出てくる動物や魚の説明看板 {4}遊び場 ・遊べるスペース ・見晴らしが良いと遊ばせていて安全。安全な遊び場。 {5}竪穴住居 ・竪穴住居の復元(実際に中に入ることができる。) {6}その他の活動 ・小鳥の観察、植物の観察 ・資料(出土品)の貸し出し -33-
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