『季報』平成 21 年 夏号 Vol. 41

NPO 日本戦略研究フォーラム会誌
『季報』平成 21 年 夏号 Vol. 41
― 目 次 ―
会長挨拶「日本戦略研究フォーラム設立 10 周年―こころざしと課題―」
中條 高德・・・・・・・1~2 頁
コラム「米国コーエン元国防長官から聞く
―オバマ大統領の 3C」
・・・・3 頁
巻頭随想 「海洋国家としての道」
全国信用協同組合連合会理事長 小山 嘉昭・・・・・・・4~5 頁
国際時評小論「Cyber Intelligence Literacy
―日本の安全保障に見られる恐るべき無知―」
初代内閣広報官・JFSS 副理事長 宮脇 磊介 ・・・・・・6~11 頁
国内時評「新型インフルエンザと防衛省衛生部門の強化」
JFSS 政策提言委員 高橋 央・・・・・・・・12 頁
誌上収録「日本戦略研究フォーラム設立 10 周年記念シンポジウム」
記念講演
「戦後レジームからの脱却―安全保障戦略のかたち―」
・13~25 頁
第 90 代内閣総理大臣・衆議院議員 安倍 晋三 先生
「対談」
政治評論家 屋山 太郎 先生
報告
「防衛大綱見直しに直言―安全保障戦略のかたち―」 ・・25~38 頁
衆議院議員・自由民主党 寺田
稔 先生
衆議院議員・民主党
長島 昭久 先生
(モデレーター)拓殖大学教授
佐藤 丙午 先生
誌上講座「文化と人々の個性形成
―アメリカ合衆国の団体スポーツ―」
・・・39~44 頁
コラム「ジム・アワー博士とのラウンドテーブルから」
・・・・・・44 頁
研究開発再発見(連載)
「開発での情報の共有化」
研究員 江島 紀武・・・・45~48 頁
役員会報告「20 年度事業報告/21 年度事業計画」
・・・・・・49~54 頁
日本戦略研究フォーラム役員等一覧・・・・・・・・・・・・55~56 頁
「日本戦略研究フォーラム(JFSS)設立趣意」
調査・研究・議論・提言の質を高め「国の安全保障政策に寄与する」に相応しい活動を推進するための銘として掲げる。
私どもは、予てよりわが国の在るべき姿を模索し、また、将来のわが国の在り方を思案して参りました。
その思いをより確実にし、国家運営の一翼になればとの強い意志で、この度、日本戦略研究フォーラムを設
立いたしました。政治、経済、軍事、科学技術など広範かつ総合的な国家戦略研究を目的としたシンクタン
クの設立が急務であるとの考えから、各界の叡智を結集し、21 世紀前半におけるわが国の安全と繁栄のため
の国家戦略確立に資するべく、国際政治戦略、国際経済戦略、軍事戦略及び科学技術戦略研究を重点的に行
うと共に、その研究によって導き出された戦略遂行のため、現行憲法、その他法体系の是正をはじめ、国内
体制整備の案件についても提言したいと考えております。
本フォーラム設立にあたり各界の先輩諸兄からも、多くのご賛同ご激励を得たことは誠に心強い限りであ
ります。各位に於かれましては、国内はもとより、国際社会から信頼される国家を目指す本趣意にご賛同頂
き、本フォーラムの活動の充実と発展のために、ご指導ご支援賜らんことを衷心よりお願い申し上げる次第
であります。
(平成 11 年 3 月 1 日・設立に当たり 初代会長 瀬島龍三)
会長挨拶
「日本戦略研究フォーラム設立 10 周年記念シンポジウム挨拶から―こころざしと課題―」
中條 高德
本日ここに日本戦略研究フォーラム第 21 回シン
ポジウムを開催させて頂くに当たり、一言、ご挨
拶と御礼を申し上げます。
本年 3 月 1 日、日本戦略研究フォーラムは、記念
すべき設立 10 年の節目を迎えました。ここに改
めて、ご教示、ご支援を頂きました関係各位にご
報告し、当フォーラムが多数の方々に支えられ今
日在ることを衷心より御礼申し上げます。
さらに加えまして、この記念すべき 10 周年のシ
ンポジウムに、第 90 代内閣総理大臣安倍晋三先
生のご快諾を頂戴し記念講演を賜ることが叶い
ました。政務ご多忙の中、望外の機会を得られま
したこと誠に有り難く感謝申し上げる次第であ
ります。
ると考えました。国家対国家の戦争が終焉した、
或いは、対立軸が消滅したそこには、新たな安
全保障、豊かな繁栄、安心できる人類の生存、
エゴを捨てた国家同士の相互扶助の時代を築
こうとする「期待に満ちた 21 世紀」のスター
トラインが描かれておりました。そこで本フォ
ーラムは、21 世紀の始まりにおいて、この期
待の実現に寄与しようと志したわけでありま
す。
しかしながら、人類は、戦争と決別した新たな
時代を見ることができませんでした。それどこ
ろか、戦争の世紀において存在した「ハーグ条
約」や「陸戦法規」が有効ではない武力行使の
事態が発生したのであります。条約や法規を一
条たりとも守らないテロが同時多発しました。
国際社会においては、既に、安全保障の基盤で
ある国際秩序や国家秩序を脅かす、非国家主体、
ならず者国家、破綻国家の挑戦が姿を露わにし
つつありました。
この新たな安全保障環境に対応していくため、
国家のエゴをさて置いた国際的な相互扶助を
督励する国際システムの構築が進められるよ
うになりました。まさに、海洋国家として国際
さて本フォーラムの創設は、1999 年、20 世紀が
終焉し、人類が 21 世紀を迎える、まさに節目の
時でありました。大東亜戦争終戦から半世紀余が
経過していました。私もその戦争に参加し、生き
残った軍人の一人でした。20 世紀末に、人類は、
東西冷戦構造の崩壊という大団円を目の当たり
にし、それを「戦争の世紀であった 20 世紀」を
締めくくる、国民国家間の戦争史の終息を意味す
1
社会の恩恵を享受して来た貿易立国日本は、ここ
で国際社会の一員として相応しい国家であるか
どうかの踏み絵を求められ、国際社会から認知を
受ける立場に立たされることになったと言える
でしょう。
大東亜戦争敗戦から 60 有余年、日本では、東京
裁判史観が幅を利かせ、戦争した相手から戦争犯
罪の非難を突き付けられれば、真偽、良識の有無
を問わず謝罪に走り、言いなりの対応で事を済ま
せる態度を改めず、引きずって参りました。日本
人の誇りと正義を捨てた人たちは、占領政策下に
米国主導で制定された憲法や教育制度を至上と
するご都合主義を振り回し、安全保障は米国頼み
で自国の経済発展だけに専念していればよしと
して来ました。そして、国際社会にことあれば金
で役割を果たしたと済ませ、恥をかいてようやく
動き出したものの、未だ政治ゲーム優先の政策は、
野党がすんなりとは国際貢献に参加させてくれ
ません。
現実に、国内の社会現象が、遠く離れた地域に発
生した国際情勢の変化と切り離しては考えられ
ない時代となっています。しかも、諸国が、分け
ても先進国は、国際システムにおいて、相互扶助
の重要性を認め、国力に相応しい貢献を如何に果
すかが問われております。国際社会の変革は、い
つまでも、「自分の国の復興と繁栄を願望してき
た戦後を引きずり続けている日本」に対して寛容
ではありません。既に、日本は、主権の維持、国
益の保護・伸張、国民の安全という大事にとって、
孤立主義や単独主義から抜け出なければならな
い変革の渦中に置かれています。そこに「世界に
誇れる素晴らしい国家を築いていく志」をもって、
21 世紀の日本建設のため、安倍晋三第 90 代内閣
総理大臣が登場されたのであります。
安倍首相(当時)は、議論だけに終始していた
「憲法改正」に向けて一歩踏み出す、「改憲の
ための国民投票法案(日本国憲法の改正手続に
関する法律)」を成立させました。しかし、好
事魔多し、安倍首相の身に、しかも、防衛庁の
省昇格、更には、教育法教育基本法改正の実現
など、「脱戦後レジーム」に向かう期待感が満
ちる矢先、安倍首相の身に降板やむを得ない健
康上の問題が生じました。今日、巷間に言われ、
メディアが批判したことが真実ではなく、それ
が深刻な病いであったことが知られるように
なりました。しかし、当時を省みれば、政治家
や官僚だけではなく、私ども国民が、安倍首相
に対して協力が不十分であったことに悔いを
残しました。
残念ながら、日本戦略研究フォーラムが、この
国のより良き在り方に一隅を照らし、安倍政権
に寄与して来たかを省みると忸怩たる感が有
ります。しかし、私どもは、10 年間の活動を
踏まえ、改めて「寄与すべき課題」を再確認す
ることにためらいはありません。本日は、その
意味において、安倍晋三元首相から直接にお話
を頂き、更には、寺田稔、長島昭久両先生には、
新たな安全保障戦略に係わる討論をお引き受
け頂き、ご示唆を得る絶好の機会を頂戴致しま
した。改めて深甚の敬意と感謝を申し上げたい
と思います。どうか、大所高所からのご教示を
お願い申し上げます。
又、ご多忙の中、時間を割いてご来場頂きまし
た当フォーラム会員諸氏、所縁の諸兄諸氏にお
かれましては、
日本戦略研究フォーラム設立 10
年を踏み石に、さらに志を一つにし、力を尽く
せるよう、ご講演、そして討論を謹聴頂ければ
幸いです。
(会長略歴)1927 年長野県に誕生。陸軍士官学校 60 期生。旧制松本高校を経て、学習院大学卒業後、アサヒビール㈱
入社。1982 年常務取締役営業本部長として「アサヒスーパードライ―アサヒビール生まれ変わり作戦―」による会社
再生に大成功。1988 年代表取締役副社長。アサヒビール飲料㈱会長を経て、アサヒビール㈱名誉顧問。アサヒビール
㈱学術振興財団理事長。日本戦略研究フォーラム設立時からリーダーの一人(1999-2007 年、同フォーラム監事。2008
年会長)。
著書:
2
「おじいちゃんシリーズ」―『おじいちゃん戦争のことを教えて 孫娘からの質問状』
(致知出版社、1998 年)
、
『お
じいちゃん日本のことを教えて 孫娘からの質問状』
(致知出版社、2001 年)
『おじいちゃんの「わが闘争」
』
(致知出版
社、2004 年)
近著:
『だから日本人よ、靖国へ行こう』
(小野田寛郎・中條高德共著、ワック、2006 年)
、
『勝者の決断』
(半藤一利・竜門
冬二・成君憶・後正武・松岡正剛・中條高德・矢澤元共著、ダイヤモンド社、2006 年)
、
『企業の正義』
(ワニブックス、2006
年)
、
『人間の品格『論語』に学ぶ人の道』
(中條高德他共著、日本論語研究会、内外出版、2007 年)
「米国コーエン元国防長官から聞く―オバマ大統領の 3C―」
米国コーエン元国防長官から、オバマ政権を言い表すキーワードは 3 つの「C」であると聞い
た1。3 つの「C」とは、オバマ大統領が提唱した「Change(変革)
」
、そして国の政策の「Continuity
(継続性)
」
、さらに「Confidence(信頼性)
」である。
オバマ大統領は「Change」をスローガンに掲げ、変化と希望を訴えて大統領選を戦った。し
かし、政権発足後の人事を見ると国防長官にブッシュ政権のゲーツ氏を留任2させ、さらにクリン
トン政権時代に要職を務めた経験豊富な人材が積極的に登用されている。
William Lynn Ⅲ国防副長官はクリントン政権下では国防予算の監督官。その後レイセオン社
に行ったが、この度国防省に戻った。James B. Steinberg国務副長官は、クリントン政権下の国
家安全保障担当補佐官であった。James L. Jones 国家安全保障担当大統領補佐官は、海兵隊出
身の元欧州軍司令官であり、グローバルな視点を持つ人材である。
つまり、人事において継続性「Continuity」を重視し、政策において高い信頼性「Confidence」
を得ようとする姿勢が伺われる。
オバマ氏は民主党出身とはいえ大統領となった以上、中道にならざるを得ない。なぜならば、
オバマ大統領は民主党の大統領になったのではなく、アメリカ国民の大統領になったのである。
大統領として米国の国益を追求せざるを得ず、
そのためには同盟強化の道を選択せざるを得ない。
オバマ大統領は個人としては社会政策ではややリベラルであるが、国防では中道保守にならざる
を得ない。
民主党は左寄り、つまり”More social program, less free trade, less pro defense(社会保障を
もっと充実し、自由貿易、国防には消極的)”と言われているが、米国民は本質的に保守的であり、
やや右寄りということはあっても極端な左寄りの選択を支持することはない。
多くのアメリカ人はオバマ政権の過去 100 日間の政策・人事を振り返って、概ね正しい
方向に向かっていると評価している。
1
本年 5 月、第 2 回安全保障シンポジウム「米国オバマ政権と日本の安全保障政策」でコーエン元国防長官が来日
2「ゲーツ国防長官は少なくとも 2 年、長ければ 4 年務めることになろう」との見方がある。
3
巻頭随想 「海洋国家としての道」
全国信用協同組合連合会理事長 小山 嘉昭
世界には百九十余の国があるがその中で国境
をすべて海に囲まれている国、つまり島国は意外
と少ない。主要国としては、日本、英国、オース
トラリア、ニュージーランド、フィリピン、イン
ドネシア、等にすぎない。このなかで、四囲の海
洋を交易通路としてふんだんに使っているのは
我が国のほかには英国などわずかな国に限られ
る。
一国の経済を牽引しており、かつ、④国民の間
に海洋思想がある国、ということである。仮に
海に広く接していてもそれを大いに利用して
やろうという国民の自然な意識がないかぎり
海洋国家とは言えないのである。そう定義して
くると我が国は海洋国家としてトップグルー
プの国といえる。
ここ数百年の歴史に照らして、人口が増え、
経済活動が活発なのは海に近い地域が多い。人
工衛星からの地球全土の写真を見ると都市化
し、繁栄している地域は概ね海岸線の近くにあ
る。事実、海に近ければ気候は比較的よい。海
洋性気候というのは良質な気候・風土の代名詞
になっている。
私は若い頃三年間在英国大使館に勤務し英国
内を旅行して歩いた。その経験からすると七つの
海に雄飛した英国よりも我が国の方が海との繋
がりが強いというのが実感である。
英国の国際級の港としてはテームズ川岸のいわ
ば海からの引き込み線であるロンドン港などに
すぎず、他地域から欧州への海のゲートウェーは
オランダのロッテルダム港などに後塵を拝して
いる。
我が国には、国際級の港が東京、横浜、神戸、
大阪など目白押しの状態で、現状では英国よりも
国土の構造は遥かに海へ向いている。
国の形も英国島は寸胴型であり海との接点の長
さを示す海岸線の総延長は我が国よりはるかに
短い。
つまり、地理的な条件、かつ、通商交易的に海
が利用できる体制という意味では日本列島は地
球上で希有の好条件に恵まれているといっても
過言ではない。太平洋を介してアメリカ南北大陸
と対置し、日本海を介してユーラシア大陸と対峙
するその位置づけは海洋国家として大変迫力が
ある姿である。
そうであれば、日本は海との深い関係を地の利
を生かす形で徹底的に活用してみるべきではな
いのか。それは海洋国家として純化していく道で
ある。
「海洋国家」の定義に必ずしも定説があるわけ
ではない。一般に言われているのは①海に広く接
していて(必ずしも四囲を囲まれている必要はな
い)
、②海を使った通商が盛んであり、③それが
4
防衛面でも海の持つ利点は計り知れない。海
は立派に要塞としての役割を果たしてきた。軍
事力は積極的な展開というよりも万一の他国
の侵攻に備えた抑止力として意味を持つとい
うべきである。抑止力として考えると陸上兵力
よりも海上兵力および航空兵力の意味の方が
はるかに大きい。そこに予算や設備、人員、研
究開発を割くべきという結論になる。海上・航
空兵力をあくまでも主としつつ、ということな
のだろうがそこに至るまでには発想の大胆な
転換が必要である。
また、運輸・輸送面では海上輸送に十分に注
力すべきである。海運は大量安価に物を輸送す
るのに適している。弱点は遅いこと。二十ノッ
ト(時速三七キロ)が総平均(国土交通白書)
ということであり、陸運の総平均時速が七十キ
ロであるから、その半分の速度しかない。ただ
し、最近、中速大量輸送に適した船舶(例えば
RORO 船など)が見られるようになり十分に改
良の余地があるようである。そして、それらを
支えるインフラストラクチャーとして海運業、
造船業、
(船を造る主要素材である)鉄鋼業な
どは常に世界第一流の技術力と生産実績を維
持していくよう努めていく必要がある。幹部船
員などの育成、教育に手を抜いてはならない。商
社、金融など海洋国家にふさわしいバックオフィ
ス的存在も国益を担うものとしてその維持発展
に留意する必要がある。
観光資源の見地から見ても海の持つ多様な顔
や長い海岸線をこれだけ豊富に保有している国
は他に例をみない。白砂青松の海岸線の美化に努
めるなどその長所を徹底的に追求していくべき
ではないか。
海洋は資源の宝庫でもある。日本はこれ等の開
発分野で先鞭をつけるよう大規模に、国家的事業
として推進していくべきである。マンガン、稀少
金属の採集などでは、研究はもとより実用化にお
いても世界最先端を行く体制を敷いておかねば
ならない。
エネルギー面でも海洋に関係のあるメタンハ
イドレートの商業開発、潮汐エネルギーの開発等
は大いに進めるべきである。
最後に、海洋国家として、海を介した近隣国と
の良好な外交関係の構築が不可欠である。
外交はあまり難しく考える必要はない。外交の
基本は善隣外交の徹底であり、さらにいえばグロ
ーバル化した世界においてできるだけ多くの国
と良好な外交関係を築くことが通商国家である
日本にとっての最大の国益である。
「平穏無事な
世界像」の最大の受益者は日本なのである。
善隣外交についていえば、既に超大国としての
し上がった中国、そして韓国との過去のわだかま
りを完全に解消することが是非とも必要である。
北朝鮮を自由な国に仲間入りさせる努力も怠れ
ない。相手国が豊かになれば正常な外交関係は作
れるとの信念の下で接するべきである。ロシアと
の平和条約の締結も喫緊の課題である。ロシアは
沿海州、シベリア開発で日本の助力を望んでいる。
サハリンⅠ・Ⅱの天然ガス・原油開発などに我が
国は積極的に参加し、共同事業の実績を精力的に、
個別に積み上げていくべきである。
日・ロ間で本格的な関係正常化が実現し、こ
れに中国、朝鮮半島との交易・文化交流の促進
が加われば我が国の日本海側の諸県、諸都市の
利益は飛躍的に増え、日本列島は太平洋沿岸、
日本海沿岸の二本の基幹線が走る理想的な国
土利用体系になるはずである。その恩恵は計り
知れない。
世界はグローバル化しているとはいえ、EU
(欧州連合)に見られるように、今後、経済の
ブロック化の深化の過程は避けがたい。現実対
応をするためには、日本も何がしかのブロック
に属して生き抜いていかねばならない。そのた
めにも、太平洋を内海とする太平洋自由貿易地
域の設定が望まれる。これは米国・カナダ・メ
キシコから成る北米自由貿易地域(NAFTA)
と日本、中国、韓国、台湾、アセアン諸国など
が参加して自由貿易地域を作るという壮大な
構想である。
太平洋自由貿易地域は、いずれ EU(欧州統
合)と相互に結ばれ、その経路を通じて世界経
済は本当の意味でグローバル経済を実現する
ことになるように思う。
海洋国家として生きていくには太平洋自由
貿易地域は格好の舞台を提供してくれるに違
いない。日本はそのなかに自己の発展の基本図
を見いだしていくべきなのである。
それは平和そのものであり平和こそは人類
の繁栄に無条件に寄与する道である。
今後の日本は「海洋国家」を国家理念として
掲げ、総ての政策はそれを基軸に取捨選択し、
個性ある国家として繁栄基盤を構築していく
べきである。あれもこれもといった総花式の国
家運営では凡庸で二流の国に終わってしまう
危険性がある。
(参考文献)高坂正堯『海洋国家日本の構想』
(中央公
論新社 2008 年)
、池田清『海軍と日本』
(中央公論新社
1991 年)
(執筆者略歴)東大法学部卒。在英大使館一等書記官、大蔵省理財局次長、日銀政策委員、駐ルーマニア大使、日銀監
事を経て、現在、全国信用協同組合連合会理事長。著書『日本の経済力』
(金融財政事情研究会 2003 年)
、
『銀行法』
(金
融財政事情研究会 2004 年)
5
国際時評小論
「Cyber Intelligence Literacy ―日本の安全保障に見られる恐るべき無知―」
初代内閣広報官・JFSS 副理事長 宮脇 磊介
「Cyber Crime, Cyber Terrorism and Cyber
Warfare」という貴重なリポートがまとめられ、
クリントン政権の国家安全保障政策に大統領
命令として採用された。また、国防総省(DOD)
と関係の深い RAND 研究所では、1995 年に
「The Day After」と称するサイバーテロのシ
ミュレーションを行ったと報じられていた。
―はじめに―
1999 年春、ワシントン DC にある CSIS(米
国戦略国際問題研究所)で「サイバーテロ(The
Fight Against Cyber-Terrorism)
」についてス
ピーチをした。
「日本は米国に次ぐ世界第二のシステム大
国である。電気・ガス・水道・交通・金融等国
家の存立や国民生活にかかわる『重要インフラ
(Critical Infrastructure)
』は電子システムで
支えられている。それらシステムのネットワー
クに外部から電子的な手法で侵入されて、機能
が停止、破壊される危険性が高い点において、
日本は米国に次いで世界第二位の脆弱大国と
なった。にもかかわらず、日本では社会一般は
もとより指導者層においてさえ、全くこの『新
しい脅威』に気付いていない。従って、政府の
対策も立てられていない。その原因はどこにあ
るのか」
。スピーチでは、率直に現状とその問
題点を問いかけ、このテーマにおいて先進国で
ある米国に指導と協力を求めることにした。
聴衆は、200 名ほど、チェアがアーノウド・
ボルシュグレイブ(Arnoud de Borchgrave)
という高名なジャーナリスト、コメンテーター
はサイバーテロについて当時米国で屈指のフ
ランク・シルフォ(Frank J.Cillfo)であった。
ここで驚いたことは、米国でも専門家の間で
「新しい脅威」に対する危機感が、政・官・業
界の指導層に共有されていないことへの苛立
ちが大きいことであった。
とはいえ、米国では、日本のように完全に無
知無関心なのではなく、すでに 1995 年、国防
大学のリビッキー(Martin C. Libicki)教授が
『What Is Information Warfare?』という古典
的名著を出し、警鐘を鳴らしていた。CSIS で
は、CIA 長官と FBI の長官をしたウェブスタ
ー(William H.Webster)がチェアをして、議
会の外交委員長はじめそうそうたるメンバー
による精力的な研究が行われた。その結果、
同年 8 月 21 日号の米誌タイムでは、
「Cyber
War―電脳戦争―」を特集した。米国の国防総
省・情報機関・軍関係者との仔細なインタヴュ
ーに基づいたこの記事は、情報革命時代の戦争
を見事にシミュレイトしている。電磁波爆弾を
仕かけ銀行のコンピュータシステムを打ち砕
く。コンピュータウイルスを電話局に放ち、電
話交換機能を潰す。時限式のコンピュータ爆弾
(Logic Bomb)を仕組んで鉄道等輸送システ
ムを破壊し、交通の大混乱を招く。軍隊に対し
ては、無線ジャックして虚偽の指令を流し、指
揮系統を混乱させる。テレビ/ラジオジャック
で心理戦を展開し、相手国を無力化する。この
間、一発の銃弾も発射されていない。このシミ
ュレイトは、これまでの近代戦の在り様を根底
から覆すものであった。
新しい脅威に対する日本の現状
―リーダーシップの空洞化現象―
日本では、1997 年に通産省(当時)が技術
的な側面からではあるが、この問題に取り組み、
「大規模プラント・ネットワーク・セキュリテ
ィ対策委員会」を設けた。委員会は、プラント
企業を中心に周辺 IT 関連事業を巻き込んで、
新しい事態に関する研究を行った。翌年 2 月に
は、中間報告が出されている。
他方、電子機器やシステムを扱う NTT デー
タなどの企業でも、
「情報化(電子システム化・
ネットワーク化)の進展に伴う新しい脅威と対
策」について公開セミナーなどが活発に行われ
るようになった。ところが、通産省の研究も、
6
企業のセミナーも、担当者はもっぱら技術系ば
かりであった。従って、リポートやスピーチの
スタートは例外なく「ネットワークには情報系
と運用系との二つがある」と始まり、
「脅威の
種類には、バッファ・オーバーフロー、トロイ
の木馬、
・・・がある」など、技術的なアプロ
ーチに終始した。さらに、説明は、カタカナ多
用の技術系専門用語で埋め尽くされている。
「情報化」についても、技術的解説であって、
その実態が社会的な実例に即して述べられる
ことが少ない。
配電システム、JR などの鉄道信号システム
や運行システムの、何処にどのような電子化さ
れたシステムが在るのか。それらの電子機能に
対して、どのような人物、及び、集団が如何な
る意図や手段をもって不正を働こうとするの
か、それらについて、技術畑以外の人にも具体
的なイメージを湧かせる解説になっていない。
つまり、技術者は、技術的な思考と言葉でしか
説明していないのである。
ステムの脆弱性を克服する戦略や戦術を策定
すべき官庁や企業において、上層部の無理解が
改められないことになり、新しい脅威のイメー
ジを抱けないリーダーたちは、調査や対応を、
技術系の、しかもネットワークの専門家に丸投
げしてしまうのである。
もう一つの深刻な問題は、日本の指導者層に
「国家安全保障の視点」が欠けていることであ
る。これには、二つの側面がある。一つは、政
治家は、安全保障が票にならないと思っている。
そればかりか、安全保障についてうっかりした
ことを言うと政治生命を失いかねないという
特殊な言論環境があることである。もう一つは、
技術系出身者には、自分達がやっていることが
戦争のためではなく平和のためだという「技術
系パシフィズム」とも言うべき風潮があること
である。
文系指導者層からネットワーク技術者に情
報セキュリティ対策が丸投げされ、技術分野で
は安全保障上のセキュリティ意識が希薄であ
るという状態は、日本独特の現象である。そこ
では、技術に片寄っていて情報セキュリティ全
体がカバーされていない。これが日本の情報セ
キュリティの最大の欠陥である。
日本は、世界第二のサイバー大国である。し
かし、サイバー攻撃の脅威に対して、意識、対
策の両面で米国に遙かに遅れている。筆者は
「日本におけるリーダーシップの空洞化現象」
を指摘して来た。日本では、経済大国に導いた
政・官・業界のトライアングルも、硬直化して
既得権益擁護構造に堕し、指導者層は急速な時
代の変化に対応するヴェクトルとエネルギー
を缼いている。
日本は、近代国家形成が始まった明治維新以
降、旧制第一高等学校・東京大学法学部出身の
指導者を柱とする文系支配構造が伝統的であ
る。今なお、日本の官庁や企業のリーダーたち
は文系出身者で占められている。技術系の企業
にあってもトップは文系が殆どである。この文
系リーダーたちには、理系の説明が言葉の問題
で通じないことが多いから、目に見えないサイ
バー空間の問題は、理解を越える難問となって
しまう。問題の深刻さもピンと来ない。せっか
く問題に関心を寄せる少数の奇特な企業経営
者や有識者に対しても、
「理解しよう」という
意欲を削ぐことになってしまう。かくして、シ
技 術 者 は 、「 ISMS ( Internet Security
Management Standard)の認証を取得してセ
キュリティポリシーを折々に見直しすること」
で、一応は、企業の情報セキュリティレベルを
保持したことになると考えている。しかし、そ
れは欠陥だらけなのであり、そのことに気付か
ないでいる状態は、まことに危険なのである。
技術者は、技術面の脅威を取上げるが、
「誰が
いかなる意図をもって誰を、或いは、何を狙っ
てくるか」という最も重大な核心を捉えていな
い。さらに深刻なことに、ネットワークの技術
者は、ネットワークへの正面入口からの不正侵
入だけしか見ていない。こうした欠陥だらけで
無警戒な考えが、日本の情報セキュリティ関係
者の間では指導者を含めて常識となっている。
だから、最近の国家機関レベルのハッカーから
の攻撃には全く無力なままの状態なのである。
彼らは、電子機器から発せられる電磁波がアン
7
テナでキャッチされ、ID やパスワード、コン
ピュータの作動状況が手に取るように窃視さ
れる「テンペスト(TEMPEST)
」の技術を知
らない。外部からの電磁波による攻撃によって、
ネットワークやデータベースが誤作動を起さ
せられたり破壊されたりすることへの知識も
欠いている。また、
「わが社は外部と切離され
た専用線だから侵入されない」とうそぶく技術
者は、情報機関の工作で外部に接続されること
などいとも容易なことに思いが及んでいない。
中曽根元総理は、これらの現象にも鋭く反応
した。自身の世界平和研究所において、調査研
究を陣頭に立って推進されたのであった。ここ
で付言したいのは、危機管理が「感性の鋭敏性」
に左右されるということである。危機管理のキ
ーワードは、
「Imagination―想像力を働かせる
こと―」及び「Intelligence―チエを働かせる
こと―」である。それに「Serendipity―ピン
とくること―」が具わると万全となる。同じ情
報を得ても、ピンと来る人と来ない人がいる。
発生する現象に反応する時間軸と空間軸の広
がりの違いが危機管理の成否を導くのである。
この事例に、中曽根元総理に研ぎ澄まされた
「Serendipity」を見ることができる。
―中曽根康弘元総理の動きで始まった
官邸主導のサイバーテロ対策―
日本の政府機関におけるサイバーテロの脅
威について、国家安全保障の視点から認識を共
有し、対策のきっかけを作ったのは、中曽根康
弘元総理である。筆者は、中曽根内閣で初代内
閣広報官を務めて以来、現在でも折りに触れ報
告に赴いている。
中曽根元総理に対して、1999 年 6 月の CSIS
におけるスピーチとサイバーテロに係わる危
惧について帰国後間もなく報告した。中曽根元
総理の所見は、
「これは大変重大かつ深刻な問
題である。政府が具体的なアクションプログラ
ムを作らなければならない」であった。中曽根
元総理の示唆で、鈴木宗男当時官房副長官と打
ち合わせをすることになった。鈴木副長官の動
きは早く、9 月 17 日には「関係省庁局長会議」
の編成、召集の運びとなった。
会議は、その年内に、
「サイバーテロ対策に
関わる日本政府のアクションプログラム」を決
定することとした。この対策(アクションプロ
グラム)は、1 月 23 日に公表された。ところ
が、その直後、3 日目から 1 週間にわたって、
日本政府機関に対する初めてのサイバーテロ
というべき、
『南京大虐殺』を取り上げた、中
国からの連続ハッカー攻撃が敢行されたので
ある。さらに、この年 3 月末からは、韓国ハッ
カーによる、日本の『新しい教科書』に反対す
る「サイバーデモ」が仕掛けられた。これによ
って、関係出版社の扶桑社、正論の産経新聞社
などとともに、自民党本部のホームページもシ
ャットダウンする事態が生じた。
―ハッカーの種類―
2000 年に日本が「官庁ハッカー事件」を受
けた頃、ハッカーは、ホームページを中国国旗
やポルノ写真に書き換える「Graffiti―落書き
小僧―」とか、DDoS攻撃1でシステムダウンさ
せる「Wizz-Kids」と呼ばれる面白半分の動機
に基づくものが主流だった。落書きの手柄を登
録するサイトの中でも、世界的にその洗練され
た腕前で尊敬されてきたBryan Martin の
「Attrition Marred Sites」
が最も権威があった
が、年々爆発的に大量の登録が行われるように
なったため 2003 年に閉鎖を余儀なくされた。
1999 年の暮、米国スタンフォード大学フー
バー研究所でサイバー戦争のセミナーが開か
れた。筆者は、キーノートスピーチを依頼され
赴いた。プログラムの一つでは、米国の研究機
関から5種類のハッカーについて解説があった。
そ れ ら は 、 低 い レ ベ ル か ら 、 Graffiti や
Wizz-Kids が属する「Naive Novice―無邪気な
DDoS攻撃(協調分散型DoS攻撃、分散型サービス拒
否攻撃、Distributed Denial of Service attack):複数
のコンピュータが、サーバ等を攻撃。単一ホスト(通
信相手)からの攻撃は、そのホストとの通信を拒否す
ればよいが、数千、数万のホストからでは個別対応は
困難。そのため、DoS攻撃(Denial of Service attack:
サーバなどのネットワークを構成機器を攻撃し、サー
ビス提供を不能化)より防御が困難、攻撃成果はDoS
攻撃よりも凶悪。
1
8
新参者―」
。中国の愛国ハッカーグループやコ
ソボ戦争時の Hactivist(Hacker+Activist)な
ど政治的な意図を持って腕を磨く「Advanced
Novice―高度な技術をもった新参者―」
。主と
して金儲け目当ての職業的な犯罪者が行う
「 Professional ― 専 門 家 ― 」。「 Organized
Crime/Terrorist Group―組織犯罪/テロ組
織―」
。そして、最もレベルが高い、しかも、
最も頻繁に日常的に活動している「Foreign
Intelligence―外国情報機関―」である。
―国家機関によるサイバー攻撃の日常化―
最近のサイバー攻撃の顕著な傾向は、国家機
関が超高度技術を駆使して行う日常的かつ露
骨な攻撃である。2004 年 7 月 13 日、韓国国家
情報院は、政府機関などのコンピュータがハッ
キングされたことを発表した。被害は重大で、
国家レベルの機密情報が大量流出した可能性
が高かった。追って、ハッキングの発信源は、
中国人民解放軍所属の外国語学院の 10 台以上
のコンピュータであるとされた。
サイバー戦争
―「サイバーならず者国家」への対応―
スタンフォード大学での会議では
「International Cooperation to combat Cyber
Warfare and Terrorism」というタイトルでキ
ーノートスピーチを行った。強調した内容は、
「いまや世界の人々の生活と繁栄の基盤とな
ったネットワークをサイバー攻撃のツールと
することが『Weaponization―武器化―』とい
うべき反道義的な行為であるとする認識の共
有」
、この頃既に中国の愛国ハッカーの影に国
家機関の存在が窺えていたことから、
「
『Cyber
Rogue State―サイバーならず者国家―』に対
する制裁を課す国際的なスキームの設定」
、
「そ
うした『Cyber Rogue State』に対する『Cyber
Defense Alliance(CDA)
』と言うべき米国中
心の『Strike-Back―積極防御―』など、攻撃
者への反射的反撃など高度の手法を共有する
同盟の創設」の三点であった。
なお、提言を行ったものの、この同盟加盟条
件には、必然的に「米国とのインターオペラビ
リティを確保するため超高度の秘密保全体制
が必要」とされてくる。残念ながら、現状にお
いて、日本にはこの同盟に入る資格が欠けてい
ることにも言及しておいた。筆者が同内容のキ
ャンペーンを、2000 年には、日本のフォーリ
ン・プレス・センター、及び、英国の国際戦略
研究所(IISS)において、2002 年には、北京
中国国際文化交流センター主催国際会議、及び、
ワシントン DC における Jane’s 主催国際会議
などにおいて行ったことを申し添えておく。
また、米国では、2007 年 6 月、米国ゲーツ
国防長官のコンピュータが不正侵入を受けて
情報が流出した。ニューヨークタイムズ紙は、
これが中国からの攻撃によると判明したと報
じた。米国国防総省が行う議会への年次報告、
「Military Power of the People’s Republic of
China―中国の軍事力―」においては、近年の
中国人民解放軍のサイバー攻撃に関わる解説
に多くの頁が割かれるようになった。
他の事例を挙げることもできる。2008 年 8
月のグルジア紛争の前後には、リトアニアの政
府機関及び軍隊に対するロシアの国家機関に
よるサイバー攻撃が猛烈に行われたと報じら
れた。だが、中国と北朝鮮は国家としての道義
性が特に低く、国家機関がなり振り構わずハッ
キングしている。中国では、かねてから人民解
放軍にサイバー部隊が存在し、米国や日本の重
要インフラ・システムに対するシミュレーショ
ン攻撃を訓練し、既に攻撃部隊が実戦配備され
たとされる。2000 年には、現役将校二人が「何
でもあり」の新しい戦争について『超限戦』と
いう本を著した。2001 年の 9.11 テロが起きた
時、江沢民国家主席はそれら将校の先見の明を
激賞したと言われている。
北朝鮮では、金正日国防委員長のキモ入りで、
朝鮮コンピュータセンター(KCC)や美林大学
などにハッカー養成機関を設立して優秀な将
校を訓練し精鋭部隊を編成している。精巧な
100 ドル札(スーパーノート)や外国煙草の偽
造、純度の高い覚醒剤の製造密売など、北朝鮮
の犯罪行為を厭わない荒稼ぎを考えれば、高度
なハッキング技術を駆使して金儲けにいそし
9
む「Cyber Rogue State ―サイバーならず者国
家―」の姿が浮かんでこよう。
タの内容はことごとく遠隔窃視されるのみな
らず、コンピュータそのものが「ゾンビ化」さ
れてサイバーテロの用具とされる。
―喰い物にされている日本―
中国と北朝鮮のハッカーのターゲットが日
本に向けられている。目的は、
「金銭」の収奪、
「情報」の窃取、及び、
「国家機能の無力化」
への準備行動である。サイバーインテリジェン
スに対する防御が最も固いとされる米国ゲー
ツ国防長官のパソコンでさえハッキングされ、
機密情報が盗られる時代である。日本の銀行や
証券など金融システムをはじめ、企業の情報セ
キュリティ対策も、政府機関の対策も、外国情
報機関や高いレベルのハッカーには全く無力
で、丸裸状態となっていることに気付かなけれ
ばならない。
やりたい放題の中国や北朝鮮ハッカーの実
態について、日本の既存メディアは報じていな
い。日本の指導者層も無知である。このため、
大企業はもとより一般国民に危機感が共有さ
れていない。しかし、インターネットを覗けば、
ハッカー被害を蒙ったIT関連企業経営者の謝
罪や被害事例が溢れている。それらは、中国ハ
ッカーにクレジットカードナンバーなど、顧客
情報を大量窃取され、莫大な金銭を引き落とさ
れ損失を与えた現実である。中国語のサイトで
は、堂々と最近流行の「SQLインジェクション
2」など「侵入方法の週間ベストテン」が紹介
されている。
このような手法で、個人、企業や政府機関の
多くのコンピュータが、知らないうちに悪質な
「ボット(BOT)ウイルス3」に汚染を受け、
遠隔操作され、意のままに動かされる「ゾンビ
コンピュータ」になっている可能性が高い。こ
うなると、中国や北朝鮮がサイバーテロを企図
した時に、BOT化された何千、何万、多くは
100 万を超える日本のコンピュータが一斉に作
動して、日本や米国の重要インフラのシステム
にDDoSをしかける攻撃用具にされてしまうの
である。
最近は、連日のように金融システムや交通シ
ステムのトラブルが新聞紙上を賑わしている。
10 年位前までは、この種の「システムトラブ
ル」は、一時に大量の情報が集中してコンピュ
ータの能力限界を超えたことに原因があった。
改善された今では、処理能力が飛躍的に拡大し
ており、コンピュータの能力限界は言い訳にな
らない。今やトラブルの多くは「原因不明」
、
或いは、
「原因究明中」で処理されている。重
要インフラのシステムトラブル発生時、真っ先
に措置すべきことは、国家安全保障の視点に立
った問題点の洗い出しである。まさに、
「日本
では、社会と国民の安全が海外国家機関からの
破壊活動(Sabotage)によって脅かされている
のではないか」という問題をクリアしなければ
ならないにもかかわらず、政府の意識自体が現
状と乖離している。10 年前、CSIS におけるス
ピーチで指摘した日本の問題は、いまだなお解
決されず、サイバー攻撃の前に脆弱性を曝した
ままである。
最近は、日本の政府機関、政府関係者、政策
決定に関係している有識者のコンピュータに
対する悪質なウィルス付の e-mail 送付が活発
である。日本語で、しかも発信元は外務省など
政府機関や、役職・氏名・電話番号など、それ
らの機関所属の現実に存在する人物名義とな
っているが、実は全くの偽メールなのである。
そこに添付されているファイルや URL を開く
と最新のウィルスで汚染され、そのコンピュー
3
ボットネットを作るウィルス。ネットは外部の人物
がコントロール。多くはコンピュータウイルス感染コ
ンピュータによって構成するネットワーク。外部の人
物の支配下に入ったコンピュータ(ゾンビ)は使用者
本人の知らないところで加害者になる危険性を秘める。
ボットネットは指令者の特定困難で、近年組織的に行
い、収入を得る犯罪手段化。
2
アプリケーションのセキュリティ上の不備を意図的
に利用、アプリケーションが想定しないSQL文を実行
させ、データベースシステムを不正に操作する攻撃方
法。また、その攻撃を可能とする脆弱性のこと。
10
―「サイバーインテリジェンス」時代の
国家安全保障―
海外では、米国、中国、北朝鮮、台湾、ロシ
アなど国家機関が「サイバーインテリジェン
ス」に力を入れている。これら諸国を除いて、
日本だけではなく、サイバーインテリジェンス
について、政府機関の関心が深刻ではない先進
国が多い。特に欧州では、いまだにサイバー空
間で行われる既存の犯罪類型による「サイバー
犯罪(Cyber Crime)
」に重点が置かれていて、
「犯罪人引渡し(Extradition)
」などが国際会
議の中心テーマとなっている。日本でも警察レ
ベルでは欧州同様に「サイバー犯罪(Cyber
Crime)
」の枠を出ていない。
10 年前、CSIS の国際会議でサイバーインテ
リジェンスの新しい脅威を確認した頃は、
「Cyber Crime」
、
「Cyber Warfare」
、
「Cyber
Terrorism」が仕分けされていた。しかし、今
日では、既存の犯罪類型による「Cyber Crime」
の 他 方 で 、「 Cyber Warfare 」 や 「 Cyber
Terrorism」を含んだ、多様な手法での「情報
窃取」
、
「諜報活動(Espionage)
」
、
「破壊活動
(Sabotage)
」
「金銭収奪」など、国家対国家の
諸活動を一括して、
「Cyber Intelligence」と呼
称する情勢になっていると言えよう。
CSIS のスピーチでは、IT 革命に伴う新しい
脅威に対する「日本のリーダーシップの空洞化
現象」を問題提起した。10 年を経た現在、国
家機関が主役のサイバーインテリジェンスの
時代となった。個人のパソコン、企業や政府機
関のネットワーク、さらに重要インフラシステ
ムへのサイバー攻撃は、国家目的を実現するた
めの重要なツールとして、その技術レベルを高
めることに狂奔し、実戦訓練は日常化し、攻撃
は猖獗を極める様相を呈している。
器」の時代となり、レーザーなど電磁波兵器と
ともに、
「サイバー兵器」がその主役となって
いる。日本でも、米・中・露をはじめとする安
全保障先進諸国に伍し、かく言う外交・安全保
障・軍事の考え方に基づく国家と国際関係の在
り様が求められるのは必然であろう。
この点に関し、憂うべき日本の現状がある。
日本の外交・安全保障・防衛に関する政策決定
に影響力を持っている学者など有識者の
Cyber Intelligence Literacy は如何ほどか。新
しく大きな脅威と問題が存在していることへ
の危機感はいかがか。その手法や具体的動向に
ついて、果たしてどの程度理解しているか。世
界全体のサイバーインテリジェンスの現状と、
それが国際関係にどのような影響を与え、日本
としてどう対応しなければならないか。これら
は喫緊の課題である。しかし、この課題への安
全保障関係者の対応は緩慢である。
学者をはじめ有識者の知見が深まっていな
いため、国家中枢において国家安全保障の視点
からの基本方針や諸施策を固めるに至ってい
ない。それだけでなく、官邸で担当している防
衛省・警察庁出身幹部が、技術面での知識に疎
いために、情報セキュリティ対策の面で、経産
省出身者など「技術系パシフィズム派」に押さ
れているからでもある。また、官僚は、変化す
る時代のスピードに対して、法律制度の対応は
常に遅れる宿命にある、という厳粛な理(こと
わり)に疎い。既存の法制上の所掌事務に捉わ
れていては時代の変化に対応できない。この種
の作業は、どこの国でも高度の秘密保護の下に
行われるのであるが、攻撃力が皆無で、もっぱ
ら海外からやられる一方の状況にある日本で
はそのような環境も整っていない。今こそ、安
全保障関係の学者やキャリア官僚など「国家安
全保障インフラ」の、サイバーインテリジェン
スへの国家的な使命感と対応が求められてい
るのである。
外交及び安全保障は、この現状を踏まえて組
み立て直す段階に来ていると言えよう。武器と
いう文脈では、
「在来型火器」の時代から、
「核
兵器」出現の時代を経て、今日、
「見えない兵
(執筆者略歴)危機管理問題・組織犯罪対策のプロフェッショナル。1932 年東京生まれ。東京大学(法)卒後警察
庁入庁。中曽根・竹下両総理時の初代内閣広報官。1988 年退官。日ロ交流協会常任理事。近著:『サイバー・クラ
イシス―「見えない敵」に侵される日本』(2001、PHP研究所)/『騙されやすい日本人』(2003 年、新潮社)。
11
国内時評 「新型インフルエンザと防衛省衛生部門の強化」
新型インフルエンザ大流行の報道をみている
と、米国 CDC(疾病対策センター)の声明発表
と記者会見の様子が頻繁に放映されている。よく
よく見ると、水曜日の会見では職員が軍服姿で出
席しているのに気づく筈だ。世界の感染症・疾病
対策をリードする CDC は、実は米海軍の付属機
関である。そこで働く職員の多くは海軍軍属であ
り、健康危機有事には軍人として疫病の最前線に
立っていることはあまり知られていない。
政策提言委員 高橋 央
冷戦が終結した 1990 年代から、事態は一変
した。地域紛争、破綻国復興の PKO 活動に加
えて、大規模自然災害、新興感染症対策への貢
献が、人間の安全保障の観点から重視されてい
る。
米 CDC の歴史は 50 年余りで、さほど長くな
い。太平洋島嶼における日本軍との戦闘において、
兵士がマラリアなどの熱帯病に斃れぬよう後方
支援した衛生部隊の退役軍人が基本骨格となっ
ている。彼等が組織のなかで命がけで習得したノ
ウハウを、米国政府は手放すにはあまりにも惜し
いと判断して、国内の防疫部隊として温存したの
である。その実績が半世紀を経て、WHO(国際
保健機関)を凌駕する世界最大の専門家集団へ発
展せしめたのである。人材を確保・育成すること
の重要性を思い知らされる逸話である。
なかでも感染症の防疫対策では、地球規模の
対応が必要である。即ち、高速大量のヒトとモ
ノの移動によって、容易に国境を越えて侵入す
る病原体に対抗すべく、世界的なネットワーク
のなかで水際、地域、医療施設レベルで連続か
つ迅速な対応が必要となっている。そのような
条件に即応するためには、平時から専門の組織
と人材があり、いろいろなレベルで介入できる
全国規模の体制を有していることが条件とな
る。先進諸国では、非常事態下での軍隊の介入
が比較的親身に受け入れられているが、日本に
は自衛隊しか適確な組織がないにも拘わらず、
国や地方自治体の対策指針に組み込まれてい
ない。
日本の衛生部門は、第二次大戦まで陸海軍の衛
生部門のほか、旧長崎医科大学付属東亜風土病研
究所(現熱帯医学研究所)など優れた組織が存在
したが、戦線での消滅や原爆投下により消耗し、
戦後これら衛生部門のエキスパートは霧散した
のは残念である。戦傷部門・救急医学は比較的早
期に復興したが、感染症や毒物を対象とする防疫
部署は 731 部隊による歴史的な負の影響もあり、
近年まで人材育成とノウハウの蓄積が遅延した。
旧防衛庁の戦略は、正面装備の充実による組織強
化が主体で、衛生部門への注目と脚光は長らく浴
びることがなかった。
また防衛省自身も、自衛隊が対処する脅威の
対象は、冷戦時代までは専ら近隣の敵対諸国に
よる軍事行動であった。そのため国外の難民や
避難民の救援、
更には NBC テロ対応といった、
従前では後方支援の一部門の業務に国際的な
注目と期待が移っていることにやっと気づき
始めたところである。自衛隊衛生部門の強化は、
高額な正面装備強化と比較して、費用対効果が
大きく、かつ国民の理解と賛同を得やすい活動
である。防衛省の内部関係者と外部の有識者が
協働して、より大きな貢献が期待できる自衛隊
の任務を開拓していくべきである。
(執筆者略歴)1962 年、東京都生まれ。1988 年、長崎大学医学部医学科(M.D)、1991 年、ロンドン大学公衆衛生熱
帯医学大学院修士課程修了、英国王立内科学会熱帯医学認定医、1994 年長崎大学大学院(熱医研)医学研究科博士課
程修了(DMSc.)。都立豊島病院臨床研修医、長崎大熱帯医学研究所 COE 研究員、日本学術振興会特別研究員(在ロサ
ンゼルス)
、米国疾病対策センター(CDC)疫学研究員、国立感染症研究所感染症情報センター研究員、JICA 国際協力専
門員、長野県立須坂病院感染制御部長を経て東京都感染症医療対策アドバイザー。神奈川県立保健科学大、高知大医学
部、京大医学部非常勤講師、須坂病院海外渡航者外来担当医、長野県新型インフルエンザ対策委員会委員/エイズ拠点
病院等連絡会委員/結核・感染症対策協議会委員、日本医師会認定産業医、日本家庭医療学会指導医。
12
誌上収録「日本戦略研究フォーラム設立 10 周年記念シンポジウム」
第一部「戦後レジームからの脱却―安全保障戦略のかたち―」
衆議院議員・第 90 代内閣総理大臣 安倍 晋三 先生
皆さんこんにちは。安倍晋三でございます。
安倍内閣が誕生した際、私は日本人として生ま
れたことに誇りを持てる国、美しい国作りを進め
て行く、こう宣言をしました。この美しい国作り
においては、さまざまな課題に取り組んで行かな
ければなりません。このためには、戦後の占領期
に出来上がった、多岐多様にわたる仕組みを、根
底からもう一度見直しをする。その上で、思い切
って一から作り直して行くことが必要である。こ
れを指して「戦後レジームからの脱却」と申し上
げたわけです。
先の大戦、大東亜戦争で日本は敗れ、米国主導
型の連合軍による占領政策によって統治されま
した。この占領されている時代に、日本をかたち
作る憲法であるとか、教育基本法が出来上がり、
勿論、その外にも労働基本法など多数の法制が整
備されました。
この時代、占領政策が間接統治のかたちをとっ
ていたとはいえ、日本人自身が「日本の再建はか
くあるべし」と、自ら考えることには制約があり
ました。こうした背景や法制整備の根本から見直
しをして行かなければ、21 世紀において、日本
が「自らの意志を持たない国」と見られてしまい
ます。それでは、世界の人々から尊敬される国と
して、今後、胸を張って歩みを続けることは出来
ないと考えたわけです。
今日お話しするテーマは外交・安全保障であり
ます。この極めて重大な国の政策においても、私
は、この理念を軸にして、即ち、戦後レジームか
らの転換という考え方を基本的な理念の中に置
いて、自ら主張する外交を展開したわけです。
「主
張する外交」という言い方は、よく誤解されまし
た。それは、決して、闇雲にわが国の国益を声高
に主張する外交ではありません。勿論、日本を背
負った外交であるから、当然、日本の国益を主張
することを憚るものではありません。
私自身、80 回近く、各国首脳との会談を行い
13
ました。その際、必ず二つのことを申し述べま
した。一つは、
「日本の国連安全保障常任理事
国入りを支持して頂きたい」
、
「支持してもらえ
ますか」ということであり、もう一点は、
「北
朝鮮による拉致問題解決に、日本の立場を理解
し、支持してもらえますか」ということでした。
多くの途上国は首脳会談において様々な ODA
の要求を出して来ます。相手国の要求を承った
後、こちらの答えを出す前に、必ず、今申し上
げた二つについて「如何ですか」と伺わせても
らった。外務省の中には、
「少し品が無いじゃ
ないか」と言う人たちもいました。しかし、こ
の ODA は、皆さんの、国民の税金を使って他
国を援助するわけですから、わが国の国益の確
保を条件にするのは当然のことであります。
私は、全ての国に対してこの二つのことを問
い、そしてその答えを共同声明の中に入れる、
或いは、共同プレス発表の中に入れるという形
で実績を積み重ねて参りました。
しかし私が申し上げている「主張する外交」
ということは、このようなことだけを声高に言
って廻ったということではありません。それは、
今まで続いて来た戦後レジームにおける日本
の外交姿勢を変える意味において貫いて来た
「主張する外交」であります。
それでは、戦後レジーム下における日本の外
交はどのような外交だったのでしょうか。その
態度は、諸外国にとって極めて優等生的な外交
であったと言ってよいでしょう。日本は、アジ
アはこうあるべきだ、あるいは世界の理想はこ
うあるべきだということは決して言わない。そ
の理想に向かって、あるべき姿に向かってどう
いう道のりを取って進んで行くんだという事
も言わない。それは世界の皆さんに決めて頂く。
そして決めたことにおいて、これをやって下さ
いと言われれば、日本は、責任を持って、黙々
と、憲法の範囲内でその責任を果たして来たわ
けです。
もっと分かり易い言い方をすれば、請求書を送
られれば、必ず請求書どおりの支払いをして来ま
した。典型的な例を挙げますと、日本は国連の安
全保障常任理事国のメンバーではありません。し
かし、他方では、国連維持経費の分担金として
17~18 パーセント近くを負担している。これは
国連安保理の常任理事国である米国を除いた残
り四カ国、ロシア、中国、フランス、イギリス、
この四カ国を足した合計よりも多い額に当たり
ます。日本は、この分担金を黙々と払って来まし
た。しかし、日本は安保理の常任理事国ではない。
非常任理事国でもない期間にあっても、この期間
が相当長くあったわけですが、黙々と支払って来
ました。
PKO 活動に対する貢献においては、世界各国
の中でも、群を抜いて多額の分担金を拠出してい
ます。しかし、日本は、これまでに PKO 活動に
差し出がましい態度で臨んだことはありません。
ああするべきだ、こうやるべきだという主導権を
誇示したことは、今まで一度たりとも有ったでし
ょうか。
こうした内向きの姿勢について、これは、日本
が長い間鎖国をして来たから、その影響で外向け
に消極性が目立つのではないかという分析をす
る人がいます。しかし、私はそうではないと思っ
ています。むしろ、それは戦後レジームである。
つまり、戦後レジームが凝縮している「憲法の前
文に由来するのではないか」
、と思うわけであり
ます。
憲法の前文にはこう書いてあります。
「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互
の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するの
であって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信
頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意
した。われらは、平和を維持し、先制と隷従、圧
迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと勤めて
いる国際社会において、名誉ある地位を占めたい
と思ふ。
」
ここには、平和を愛する諸国民に私たちの安全
をお任せすると書いてあるだけであります。繰り
14
返しますが、普通の国の憲法であれば、
「わが
国はわが国民の安全を断固として守る、国土を
守る」という決意が書いてあるものです。とこ
ろが、日本の憲法の前文には、
「平和を愛する
諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全
と生存を保持しようと決意した」と、自分たち
の安全と平和を、他の人たちが守ってくれるこ
とに期待しようと書いてあるわけです。
さらに、次にこう書いてあります。
「われら
は、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を
地上から永遠に除去しようと努めている国際
社会において名誉ある地位を占めたいと思ふ」
と、ここには、日本人が、自ら、或いは、先頭
に立って、専制と隷従、圧迫と偏狭を断じて世
界から無くして行くという決心は微塵もあり
ません。それが私たちの理想であり、務めだと
も書いてありません。ここにも、重要なポイン
トを指摘することができます。即ち、専制と隷
従、圧迫と偏狭を無くそうと努めている国際社
会において、褒めて貰える国になりたいと、こ
う書いてあるわけであります。これは、誠にい
じましい宣言、ある意味では敗戦の侘び証文で
あるが所以ではないかと思います。
なぜ国際社会において内向きで消極的であ
るか。つまり、この憲法において、私たちは、
私たちの理想、意志を示していないわけです。
それどころか、明確に意志を示すべきではない
と内向きを勧奨しています。その上、行動を起
こすことについては、それは平和を愛する諸国
民に期待し、任せるべきだとこう書いてあるわ
けです。だから、外務省の人たちは、この憲法
の前文の精神にのっとって、黙々とその職責を
果たして来たと言ってもいいのではないかと、
こう思うわけです。
私は、今こそ、この戦後レジームが作り上げ
たマインドコントロールを脱して、私たち自身
で世界の理想を語るべきであると考えます。そ
して、今こそ、
「アジアはこうあるべきだ」
、
「こ
ういうアジアを作って行くべきだ」という私た
ちの考えを、堂々と述べるべきでしょう。そし
て、私たちは、アジアの一員として、責任を持
って、アジアに寄与すべきであり、アジアはこ
うあるべきだという目標に向かって進んで貢
献して行きたいという、強い意志を持たなければ
ならない時代にいます。勿論、責任を持って貢献
をして行くということは、責任を引き受ける覚悟
を強く持つということでもあります。従って、積
極的にアジアに役立つという姿勢は、今後、その
ために日本外交のあり方を変えて行くというこ
とにも通じます。こう考えますと、憲法が影響を
与えて来た意味は極めて重大であったし、
「憲法
を変える意義」は、なお重要であると言わざるを
得ません。
私は、この憲法について、中学時代の体験を鮮
明に記憶しています。国語の授業時間中、先生に
「憲法前文は実に美しい文章です」と教えられ、
前文を暗記させられました。覚えた憲法前文につ
いて試験があって、私は結構いい成績を取りまし
た。それで、今でも憲法前文は空で言えるわけで
す。ところが、正直言いまして、
「これが本当に
いい文章なのかナァ」と疑問に思っていました。
例えばこんな文章もあります。
「日本国民は恒久
の平和を念願し」と書かれています。ここでは、
「平和を念願しましょう」と言っているわけです。
私の信条では、本当の平和というものは、念願し
ていれば訪れるものではなくて、努力をして汗を
流すことによって平和を作り出し、そして維持す
ることが出来るものです。ところが、
「平和を念
願する」
、そのように思うことは間違いではあり
ませんが、
「座して待つ」という姿勢の「平和の
希求」は如何なものでしょうか。
そして、次には、こう書いてあります。
「人間
相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚す
る」とあるのですが、この日本語は理解困難な部
類に入るでしょう。今では「これは、まさに英語
の訳を失敗したという典型ではないか」と考えた
りするのですが、当時は、中学生ながら「これが
本当に良い文章なのだろうか」と思った次第です。
この逸話は余談ではありますが、私は、事象事
物を見る時、単に批判的に陥るだけではなく、自
分の思考や言動の糧としなければいけないと考
えて来ました。
そこで、私たちは、外交や安全保障に代表され
る、戦後レジームにおいて際立った日本の内向的
15
性癖から転換して、堂々と主張する外交を展開
しなければならないと、このように考えたわけ
です。総理に就任した翌年、NATO 本部を訪問
し、理事会において演説を行う機会を得ました。
その演説の中で、
「私たちはこれから世界の平
和のために自衛隊を出すことも躊躇しない」と
明言したことはご承知のとおりです。
外交については、価値観外交を進めて行くこ
とを強調しました。つまり、自由と民主主義、
基本的人権、法の支配、これらの普遍的な価値
を共有する国々と連携を深め、且つ、価値を共
有する国々を増やして行くことに力を注ぐと
いうことです。これらの価値を世界に、わけて
もアジアに広めるために、日本が貢献出来る外
交を展開する。これを外交の重要な方針の一つ
として理解を求めて来ました。
外交について付言します。従来、中国との外
交においては友好第一の外交であったと言っ
ても宜しいでしょう。友好関係の醸成は大切な
ことです。他方で、友好のために状況の作為を
優先するということになると、国益を引っ込め
なければいけないケースの発生が避けられま
せん。ところが、この「友好第一、国益は二の
次」という考え方はおかしい。国家にとって、
国家主権、国益、国民の安全を確保、維持する
ことが優先されるのは当然であって、友好とは、
そのための一手段であるわけです。常に友好を
優先するとどうなるか。結果的に、国が大事に
守らなければならないものをどんどん譲歩す
ることになってしまう。ご承知のように、忍耐
と寛容が要求されます。挙句は、失ってしまう
ものがあります。中国残留孤児や拉致被害者の
例に見られるように、重大、かつ深刻な犠牲を
払っています。このような内向的努力によって、
和やかな空気を維持するということになって
行きますが、これは、事なかれ主義と結びつき
易い考え方でもあります。
安倍内閣は、最初に訪問する国として中国を
選んだわけですが、その際、戦略的互恵関係を
構築するということを申しました。これは、今
までの友好第一という、言わば、極めてウエッ
トな考え方から転換することを意味しました。
日本と中国がお互いに新たなコンセプトをもっ
て付き合う、協力し合って行くことによって、双
方の国が利益を得ることが出来るようになる。私
は、これこそ、積極外交を通して、それぞれが国
益を確保、増進させることができるという国家関
係を築くことにつながって行くと確信していま
す。従って、中国との関係においては、一方に対
して、貴方の国は友好に反していると批難、中傷
するのではなくて、常に、お互いの付き合いの中
において、相互に自分の国も利益を得ているとい
う自覚を持ち得る関係が継続できる。と、このよ
うな二国間関係を維持することで両国の意見が
一致したわけです。
先般も北朝鮮がミサイルを発射(4 月 5 日)し
た。2006 年の 7 月に発射した時、私は官房長官
でした。当時は、国連決議を行うかどうか、北朝
鮮を批難した決議を行うかどうか、これが大きな
議論になりました。中国は拒否権を発動するだろ
う。こう言われている中において、ヨーロッパの
国々には、中国が拒否権を発動するならば、中国
と「やや事を構えるかたちでの決議」は如何なも
のか。こんな雰囲気が醸成されていました。
そうなると、戦後のレジームを引きずって来た
わが外務省は、そんな困難な目標であるなら「批
難決議」を止めておこうという態度になって行く
わけです。中国の拒否権は絶対的に大きな力だか
ら、後々に中国から日本に与えられる影響を考え
て、これはあきらめようとなってしまいます。こ
の処置については、当時、外務大臣であった麻生
さんと協議をしました。幸い、当時、総理大臣の
小泉さんは、私たちに任せてくれました。
北朝鮮のミサイル、テポドンもノドンも発射さ
れた。地勢的に最も脅威を受ける国は日本ですか
ら、私たちは、日本が強く主張しない限り、他の
国々、理事国は、批難決議について来ないと判断
しました。そこで、例え中国が拒否権を発動し、
この案が葬り去られるとしても、日本は日本の国
家意志を国際社会に示すべきであろう。それは北
朝鮮に対して、米国に対して、中国に対して、世
界に対して、日本の強い意志、断固として許容で
きないという姿勢を示すことになる筈である、と
いう判断に至りました。
16
そして、オリンピックを控えている中国が、
北朝鮮と同じカテゴリーに入れられることを
嫌うであろうという計算があった。ここで拒否
権を発動すれば、負けるのは私たちではなく拒
否権を発動する側であろうと判断しました。
しかし外務省は、日本が「批難決議に積極的
になる」ことに、私たちと異なって一層慎重な
姿勢になって来た。もし、これが否決されるこ
とになれば、私たちは、政治的にダメージを被
るわけですが、ここは、麻生さんと私の判断に
委ねられました。私たちは、先ず、政治的な責
任は引き受けようという決断をしました。外務
省の言い分というのは、
「日本が批難決議を主
張すると日本だけが孤立するのではないか」と
いう、これまでよくあった主張でした。
この危惧は、先の大東亜戦争敗戦に到る過程
において孤立に陥った経験から来るものであ
ると考えます。勿論、孤立を避けるための外交
努力は当然であるし、孤立は避けなければいけ
ません。しかしこの問題について日本が主張し
なければ、どの国もついて来ないというのも現
実でした。ヨーロッパにはそもそもミサイルは
届かない、米国にも当時はまだ届かないわけで
あり、ミサイルの脅威を受けるのは日本であっ
て、日本がそこまで言うのならしょうがないと
いうくらいまで主張しなければついて来ない
ということではないか。日本は、戦後の外交に
おいて、相当重大な国益がかかったことであっ
ても思い切った主張はして来なかった。つまり
孤立を極端に恐れる外交を展開してきたわけ
でありまして、これが習い性となっていました。
船が難破して皆が救命ボートに乗り、救命ボ
ートの人員がオーバーしてしまった。誰かにボ
ートから降りてもらわなければいけないとい
う状況が生まれた時にどうやって海に飛び込
んでもらうかというジョークがある。アメリカ
人に飛び込んでもらおうと思えば「今貴方が飛
び込めばヒーローですよ」と言えば、アメリカ
人は飛び込んで行く。そしてドイツ人には「こ
れは規則ですから」と言えば淡々と飛び込んで
行く。イタリア人には「飛び込んだら一生もて
ますよ」と言ったら飛び込む。フランス人には
「飛び込むな」と言ったら飛び込む。そして日本
人には何と言えばよいか「みんな飛び込んでいま
すよ」と言えば飛び込んで行く。これが日本の戦
後外交であり、戦後レジームの典型的スタイルだ
ったのではないでしょうか。
ことに応じて、時にはリスクを取らなければな
りません。しかし、リスクを取る選択を外交官に
求めてはならないと考えます。リスクの選択が必
須の場合、それは、それぞれの事案の責任者であ
る政治家が、リスクを取る外交の展開を決意して、
そこで、初めて、外交官に彼らの能力を活かす外
交を託すことになるでしょう。また、孤立を選択
する傾向に陥ってはなりません。さらに、事象に
よっては、国益を優先して、時にはリスクを取り、
孤立も恐れず外交を展開しなければならない局
面もあります。こうした事象に対応するに際して、
これらの選択を誤らず決心できれば、国の在り方
を健全に保って行くことが出来ます。
先に申し上げた 4 月の北朝鮮のミサイル発射
に対する批難決議採択の時は、結果として、中国
も賛成し、満場一致で批難の決議が出来た。そし
て、その後の核実験に対しても制裁を含む国連決
議の 1718 が成立した。このように、時にはリス
クを取る外交を展開して行くことが求められて
いることを考慮しなければなりません。
次に北朝鮮のミサイルを発射について申し上
げます。
「あれはノドンとは違ってテポドンⅡで
あるから、米国を射程に入れたものである」とい
う理論を展開する人がいます。
「だから日本は大
丈夫、関係ない」と、私も最初の説明でそうかな
と思ってしまいました。ところが、ミサイルの専
門家から話を聞くと、ノドン場合は、確かに、ぎ
りぎり 1,000 キロの射程圏に日本を入れている
けれども、射程を満足するには、火薬を詰め込む
ペイロードが 750 キロ分しかないという。そうな
ると北朝鮮は核の開発を行ってはいるが、まだ日
本を核攻撃するまで核の小型化が出来ていない
し、当分、現時点、小型化される見込みは無いと
推測するむきもある。
そこで、テポドンであればノドンの4倍の射程
と、更に大きなペイロードを持っている。ペイロ
ードいっぱいいっぱいに使って、弾頭に TNT 火
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薬でもいいから搭載します。一方で、ペイロー
ドを優先して、射程を犠牲にすれば、TNT よ
りも核を載せる可能性が出てきます。短い距離
であれば、日本の多数の都市を標的に撃ちこめ
るというわけです。
テポドンがずーっと天高く打ち上げられて、
逆さ落としに落とされたら、BMD での迎撃が
大変に難しくなります。或いは、非常に低空を
飛ばす方法、技術が考えられます。この場合、
射程は短くなりますが、ノドンの4倍の推進力
を持っているテポドンであれば、水平に飛ばし
て、射程圏を 1,000 キロ以内に抑えるというこ
とになると、日本への核攻撃の可能性が高くな
ることが考えられます。このように、北朝鮮の
ミサイル発射で可能性を想定していくと、対処
に問題が生じれば、日本にとって極めて脅威で
あるという認識を持たなければなりません。
そこで、日本がミサイル攻撃を受けるという
蓋然性のある想定において、我が国が、我が国
を標的にしているミサイル基地を叩く。即ち、
打撃力保有の議論が発生する。端的に言えば、
敵基地を攻撃する能力を持つべきかどうか、と
いう議論である。私は、当然保有しておくべき
防衛力であると思っています。例えばノドンミ
サイルの第一撃を受けた場合は、第二撃、第三
撃を阻止する手を打つのは当然でしょう。この
ために、日米安保条約があって、打撃力の発揮
を米国に期待します。米国に「敵基地を攻撃し
て下さい」と言うわけですが、同時に、日本も
自ら努力をしないと立つ瀬がありません。国際
社会において当たり前の行為を逡巡すること
は異常です。当然、我々も策源地である敵基地
を攻撃する能力を持つべきであると考えます。
そもそも、その能力を持っている F-16 を買
って、支援戦闘機開発のベースとして開発しな
がら、空対地ミサイルを取り外す、かつ飛ぶ能
力を短くしてしまいました。このように、お金
を掛けて、本来発揮出来る能力を落とすような
ことをやっているのは、世界で、唯一日本だけ
です。策源地攻撃には、その能力をそのまま生
かして運用すれば良いわけです。敵基地を攻撃
するということについては、かつて、鳩山答弁、
船田答弁において「座して死を待つべきではな
い」とされたのは未だ記憶に新しい歴史です。つ
まり、我々は、敵基地を攻撃する能力を放棄する
べきではない、という答弁があったことを思い出
さなくてはなりません。
従って、ミサイル発射の策源地を攻撃するため
に、ミサイルが最適であるならば、基本的には、
空対地ミサイル攻撃能力を保有しても構わない
のではないか。当然のことではあるが、いずれの
作戦運用手段についても、法的整備が必要である
し、技術的問題も解決しなければなりません。
例えば、今の段階では日本にその能力が無いの
で在日米空軍に依存するケースが有る。その際、
三沢米空軍基地の F-16 が飛び立って、このミサ
イル発射の策源地である基地を攻撃に行く場合、
当然、日本側には、この F-16 の護衛や周辺空域
警戒任務が生じるでありましょう。米側としても、
日本にエスコート戦闘機を飛ばしてもらいたい、
という共同作戦発動の要請が予測されます。ご承
知のように、日本は F-15 戦闘機を二百機余り保
有しています。
ここでは、その作戦時に、北朝鮮の領空におけ
る武器の使用、武力行使は必要最小限を超える危
険性があると、法制局的見解がある。この問題の
クリアは、法律的見解にこだわるとなかなか難し
いと思っています。しかし、北朝鮮が、日本を狙
って一発目を既に打ち込んでおり、二発目、三発
目がいつ何時発射されるか分からない事態に直
面しているわけです。そこで、日米同盟の頼みの
綱である「攻勢作戦を米軍に期待する」現実の場
面で、北朝鮮のミサイル基地を攻撃する米空軍の
F-16 の実働に際して、憲法上、日本の F-15 が護
衛任務を負い、一緒に飛んでいって北朝鮮領空に
入ることに対して、
「憲法上疑義があるので待っ
てくれ」ということになった瞬間に、日米同盟は
終わりだと私は思っています。
飛んで行く米国の若い兵士には恋人もいるわ
けです。母親も父親もいます。小さい子供がいる
かもしれない。愛する人が、同盟国の防衛ために
命を賭ける、血を流そうとしている。その同盟国
が、自国、自国民を守るために血はおろか、汗も
流さないといのであれば、おそらくは、父、母、
18
恋人、そして、子供たちもが、他人を犠牲にし
て、自らが犠牲を払う気構えが無い、その同盟
国の行為を許容しないに違いありません。
自らの自由と幸せが相互扶助や信義によっ
て成立している民主国家においては、その道義
に対する裏切りによって、同盟関係の信頼が失
われていきます。さらに、そのような事態が実
際に生じたならば、同盟が紙くずと化して行く
可能性が大きいと、私は考えています。安全保
障や外交においては、軍事史や外交史に学び、
ケーススタディーの蓄積が大切です。制約せず
はばかることなく、調査し、研究する風潮を育
てたいものです。今日のように、外交や軍事に
関わる姿勢が内向的であること自体が、戦後レ
ジームが作り出した、国際社会においては通用
しない時代錯誤ではないかと思います。
集団的自衛権においても同様です。集団的自
衛権の行使、これは自然権であり現在の憲法下
で行使できると、私は考えています。安倍内閣
時代に安全保障の法的基盤の強化のための懇
談会を作りました。この懇談会において議論さ
れた結果、
「BMD の運用では、日本を飛び越して米国
に飛んで行くミサイルを打ち落とすことは当
然に出来る」
、むしろ「打ち落とすべきである」
。
「公海上においても、米国艦船が攻撃された際
には、これを助けることが出来る」
。さらに、
「後
方支援活動は、集団的自衛権行使の中に入らな
い、
許される行為である」
。
そして更には、
「PKO
において一緒に行動している他の部隊が攻撃
をされた際には助けることが出来る」
。
これらは、どれも常識で考えれば当然のこと
です。これらの事態は、一緒に行動している友
人を助けるか助けないかという話と同じです。
先に例を挙げた「策源地攻撃の米空軍機を護衛
し、周辺空域を警戒する事例」を借りれば、
「日
本を助けてくれる友人を見捨てるかどうか」と
いう話になります。私は、この作戦行動に逡巡
し、その瞬間に、同盟関係が終止符を打たれて
しまうことを懸念しています。
日米安全保障条約では、第 5 条において共同
対処が記されています。第 6 条には、極東の安全
のため、日本に所在する基地を米国が使用できる
と書いてあります。確かに第 5 条の「共同」が意
味するところ、日本が、米軍の作戦行動を防衛、
護衛することが許容されるし、それが義務である
とも理解できます。しかし、先に例示したとおり、
アメリカの若者が日本のために命を賭けるとい
う信義を期待するのが、日本側から見た同盟の本
質です。その逆の場合は、先に話した通りです。
そこで信頼感が失われれば、いくら条約に書いて
あったとしても、これはただの紙くずになってい
くということを我々は頭に入れておかねばなり
ません。相互の信義に軽重の差が無い、真の対等
な関係になることによって、より同盟関係を強固
なものにしていくことが出来ます。
私は、この関係が、
「戦後レジームからの脱却」
の中で新たな成熟を示すよう努めなければなら
ないと思っています。直面している課題において
も、例えば、米軍再編に際して沖縄の負担を減ら
して行く上においても、今後、集団的自衛権の行
使がコンセンサスを得れば、日米が、より対等な
パートナーとして、相互の主張が一層説得力に富
むものとなって行くと考えます。
この立場と関係を早く築くことが望まれる。私
は、麻生内閣において、この集団的自衛権に関わ
る政府解釈を変更するべきであろう、変更するこ
とが求められていると思っています。集団的自衛
権の行使に関わる課題は、現在、参議院において
ソマリア沖における海賊対策のための法律の中
でも議論されています。
(長島昭久さんもこのシ
ンポジウムに来られているが、
)是非民主党には
賛成してもらいたいと思います。実効力の有る、
外国の艦船も自衛艦が武器を使用して守ること
が出来るという法律の成立を、今こそ急がなくて
はなりません。
これまで、
「自衛隊は、日本国民の生命と安全
を守るためだけに限り、任務として武器を使用す
ることが出来る」と、かつての局長が答弁したも
のに縛られて来ました。しかし、世界の情勢は、
その答弁が行われた当時と大きく変わっていま
す。承知のとおり、この今日の情勢下、日本は、
以前にも増して資源のほとんどを海外に頼って
19
います。石油も 8 割方は、この海賊が横行する
ソマリア海域を通って日本に入って来るわけ
であって、現在、日本船の安全は海外の軍艦に
助けられている状況にあります。
そこで先般、海上警備行動の任を負って自衛
艦がソマリア海域へ派遣されました。しかし、
基本的には外国の船を助けるために、日本の自
衛艦が武器を使用することは出来ないという
制約に縛られたままの行動任務です。
法制局が私のところに来て、
「自衛艦が支援
できるのは日本船だけではないですよ。安倍さ
ん、日本と契約関係にある外国籍の船を助ける
ことが出来るんです」と言うんですが、これが
まさに机上の空論だと、私は思いました。外国
籍の船と思わしき船が襲われているのを発見
した自衛艦が、その船長に無線で「あなたの船
は日本と契約関係にありますか」と聞くわけで
す。
「私どもの船は日本と契約関係にありませ
ん」と言われたら、
「じゃあ、私たち自衛隊に
は何もできませんので頑張ってください」と、
こんな対応が出来るわけがありません。
実際、自衛隊の隊員は、英知を働かせ、海賊
に襲われた船を発見した際、武器は使わないが、
強い光と大音響で、そして軍艦の威容によって
海賊を追い払ったわけです。10 年くらい前の
国会であれば、それは「とんでもない、武力に
よる威嚇ではないか」と言って、任務の逸脱で
あるという議論が起こったでしょう。しかし、
今は常識が勝っている時代だと思います。そう
いう意味においては、国会において、この画期
的な海賊新法を成立させたことはよしとしな
ければなりません。しかし、これは警察行動で
あって、自衛権の発動ではありません。所謂、
集団的自衛権でもありません。従って、これで
よしとして停滞していてはならないのであっ
て、外形的には日本人と異なっていても、尊さ
という意味で、同じ肉体と生命を持つ外国の人
たちを守れるようにしなければなりません。こ
のために、任務上、武器を使用することができ
るという初めてのケース、行動が法制化されて
行くでしょう。この事案は、外見的に限りなく
集団的自衛権の行使に近づくものであると考
えられます。法律学、その学問的理屈には小異
があっても、正義を貫き、信義を高めるという意
味では大いに同じであり、そのようにしなくては
ならないと思っています。
今後、外交、安全保障において、21 世紀に相
応しい、新しい政策を進めて行くことが大切では
ないか、と思っています。今、100 年に一度の大
変な経済危機に見舞われていると言われていま
す。しかし、それよりも大きな困難に直面したの
は 60 数年前の敗戦ではないでしょうか。多くの
人たちが愛する人を失いました。そして、日本は、
全てが瓦礫と化しました。
この敗戦の翌年、昭和 21 年 1 月 22 日、お正
月の「歌会始め」において、昭和天皇はこのよう
な御製を遺しておられます。この日は、たまたま
東京に雪が降っていました。
「松上雪(ショウジャウノユキ)」
ふりつもるみ雪にたへていろかへぬ
松ぞををしき人もかくあれ
「日本は戦いに敗れ、そして占領下にある、ま
さに重い雪に耐え、寒さに耐えている松のようで
ある。しかしその中でも青々とした美しさを失わ
ないこの松のように、日本も日本の美しさを失わ
ないで行こう」というお気持ちだったのではない
かと思うわけです。
私は、この昭和天皇の御製を心に置き、果たし
て日本は耐えることに勝ったのか、美しさを守る
ことが出来たのかと常に自問自答しています。
ちょうどこの昭和 21 年に一人の米軍兵士が日
本にやって来ました。ジョージ・アリヨシという
日系人です。彼は後にハワイの州知事になります。
彼は丸の内の郵船ビルに勤めていました。
その郵船ビルの前にいつも一人の靴磨きの少
年が立っていた。みすぼらしい姿ではあったけれ
ども、まじめに背筋を伸ばして礼儀正しく仕事
をしていた。しかし、この少年がお腹を空かし
ている様子にアリヨシさんは同情して、少年の
ために、食堂に行ってパンにバターとジャムを
塗った、サンドイッチを作ってもらった。そし
て、アリヨシさんは、そのサンドイッチをナプ
キンに包んで、
「はい、食べなさい」と言って
この少年に渡したそうです。この少年は、サン
ドイッチに手をつけず、大事そうに道具箱にし
まったといいます。それを見てアリヨシさんが
「お腹が減っているんだろう、なぜ今食べない
んだ」と聞いたところ、その少年は「家に 3 歳
の妹が待っています。家には私と妹しかいない
んです。頂いたサンドイッチは、家へ持って帰
って、二人で分けて食べたいと思います。あり
がとうございます。
」と言って深々と頭を下げ
たということです。
その少年を見て、アリヨシさんは本当に感激
をしました。彼は日系人として、複雑な思いで
終戦を迎えたわけですが、貧しい中、みすぼら
しい姿ではありますが、強さと凛々しさと、そ
して優しさを忘れないこの少年の姿を見て、自
分の身体に日本人の血が流れていることを誇
りに思ったと、こう書き残しておられます。
このような少年らがもっといたに違いない。
こうした少年たちが、戦後日本の復興の中で大
きな役割を担って来たのであろうと私は思う
わけです。さらには、こうした少年たちを育て
て来た原点こそ、教育であろうと、こう確信致
します。だから、今こそ、私たちは教育を重視
し、より良き世代を継承して行く後継者を育て、
戦後のレジームから脱却した日本人と日本国
の再生を進めて行きたいと、このように強く思
っています。
ここで私の講演を終わらせて頂きます。ご静
聴ありがとうございました。
安倍晋三先生略歴:
誕生:1954 年9 月 21 日(東京都):父・安倍晋太郎、父方祖父・衆議院議員安倍寛、母方祖父・岸信介元首相、大叔
父・佐藤栄作元首相の政治家一族。「幼い頃から私の身近に政治がありました」と回顧。
学歴:成蹊大学法学部政治学科卒業・南カリフォルニア大学(中退)
職歴:神戸製鋼所(ニューヨーク事務所、加古川製鉄所、東京本社)勤務・外務大臣秘書官
20
議員歴:1993 年第 40 回衆議院議員総選挙初当選(山口県第 1 区、後に 4 区)当選 5 回(自民党―町村派)。1997 年
自民党青年局長、2000 年第 2 次森改造内閣官房副長官、2001 年第 1 次小泉内閣官房副長官、2003 年小泉総
裁の下自民党幹事長、
2004 年党幹事長代理、
2005 年第 3 次小泉改造内閣官房長官、
第 90 代内閣総理大臣
(2006
年9 月 26 日–2007 年9 月 26 日:「初の戦後生まれの総理」)、第 21 代自民党総裁。
著書:『美しい国へ』(2006 年)
安倍晋三先生・屋山太郎先生対談
屋山:
屋山でございます。私は政治記者と政治評論家
を合わせて 54 年やってるわけですが、安倍さん
のお父さんの晋太郎さんの頃には、外国にいまし
た。ですから、安倍晋三先生とは浅い、短いお付
き合いなんですが、安倍さんが政界に出て来られ
た時に鮮烈なインパクトを受けています。
実は、日本にもこういう政治家が出てきたかと
いう驚きで、最初からフルサポートしようと決心
したことを覚えています。そのわけはこうです。
政治記者をやっている 50 年くらいの間、政治と
は物と金を動かす、そういうのが政治だと、これ
が政治の本道かと、なんか違うなあとは思ったけ
れども、現実にそれ以外に無いわけですからね。
そういうところへ、安倍さんは、非常にスピリチ
ュアルなものを持ち込んだ。所謂、精神的なもの
を持ち込んで来た。
そういう意味で、私は、日本で初めてのタイプ
の政治家が出てきたな、と思いました。で、実際
にですね、教育基本法の改正、これは 60 年もあ
あでもない、こうでもないと言ってきて出来なか
った。わたしは出来るとは思っていなかったです
よ。どんな政権が出来ても。しかし、安倍さんは
それをやった。それからそれに基づいて、あとで
教育三法の改正も、これも一つやろうと思っても
大変なものを、あっという間にやってしまったと。
それから憲法改正に結びつく国民投票法の制定
というのもやった。
これはいずれも一文にもならない。実際、金に
はまったくならない話に全精力を注ぎ込むとい
う人を日本で初めて見た。私、外国に7年おりま
したけれど、そういう人は一杯いましたよ。例え
ばアデナウワーなんて人が、EUを、そのうちに
ヨーロッパ連合を作るなんて、まあ、理想的なこ
とを言って、政治家ってのは、嘘っぱちを、空想
21
的なことを言うなあと思っていたら、30 年く
らいたって出来てくるわけですから。政治家と
いうのは、そういうのが必要だなと思っていた
けれども、日本でそういう人が出てくるとはま
ったく思わなかった。それを目の当たりにして、
日本改革、戦後レジームからの脱却はできるん
じゃないかと、そういう風に思いました。
それから防衛庁の省昇格も、これやったから
といって、安倍さんのところに一銭も入って来
ないのにと、そう思いましたよ。だけど、庁と
省とでは外国における重さが全然違う。国内で
も、じわじわと国民の意識がそれで変わってく
るだろうという思いがあった。そしたら、そこ
で社保庁の問題なんかが起こった。相当、安倍
さんの身体に打撃があったであろうと思いま
した。特に、肉体的にですね。で、多分、安倍
さんのご推薦だろうと思うのですが、年金記録
問題検証委員会というのにたまたま入れられ
て、この委員会でいろいろやったらですね、官
僚の無責任さが吹き出て来た。これには驚きま
した。
私、安倍さんに言ったことで覚えているのは、
「総理、これしょうがないですよ。あなたに責
任取れ取れと言うけれども、あなたの 3 歳の時
から始まっているんです。この悪事は」
。これ
は官僚制度の無責任体制極まれりですよね。例
えば、民主党が政権取ったら日教組と自治労が
蔓延るだろうな、という心配があります。今だ
って労使グルになって悪いわけです。例えば日
教組が悪いというけれども、他方で、それに迎
合しているんですよね、管理者の方も。それか
ら例えば農水省の闇専従1の問題でも、これも
1
闇専従:労働組合の役員が、勤務時間中に正規の手
続きをとらずに、職場で勤務しているように装いなが
ら給与を受給しつつ、実際は職場を離れて組合に専従
143 件あったといわれた。それは、否定されず、
143 件を管理者が認めているわけですよ。それで
本省の秘書課が調査するのに、予告して 3 回調査
してゼロだって。その嘘がばれて今騒ぎになって
いますけれど、皆、管理者とグルなんです。国鉄
がだめになったのも同じ構図なんです。
ですから私は自民党が本当にしっかりしてい
るのなら、今の構造、問題に着目して官僚制度を
直すしかない、そう考えてます。私は 15 年くら
い前に「官僚亡国論」を書いた覚えがあります。
私は、別に安倍さんにそのことを言ったわけでは
ないが、国家公務員法の改正というのを安倍さん
が出してきた時に、二度驚いた。要するに国家の
根本問題を、この人は本当に判っている。で、今
の総理大臣はまったく判ってないと、本当にがっ
くりするくらい判ってないわけですよね。
私は安倍さんの復活というのを待望している
わけです。安倍さんの難病は治ることになったん
で。だからもう心配することはない。だけど潰瘍
性大腸炎を発症して、肉体的に続けられなくなっ
たんだということが、世の中にあまり知られてい
ないんですよね。
その後、無責任な連中が、
「安倍は意気地がな
くて辞めたんだよ」と、実にけしからん話しにな
ってしまっている。私が、今、敢えて、安倍さん
の病気のことを言うのには理由がある。
「政治家
は病気のことを絶対に言ってはいけない」と。安
倍さん自身、今になっても、
「余計なこと」
、
「言
うつもりがないこと」と思っておられると思うん
ですが、私はそうでない。そうではなくて、
「こ
れは言わなくてはならない」と。
総理大臣が一年、一年と、一年づつ二人がやっ
たといって、両方、同じように一緒にされちゃっ
て。それぞれの事情が全然違うのに、味噌も糞も
一緒にされてしまった評価になっている。まあ、
そういうことがありますから、これを言っておか
ないと、誤解によって悪くされた評判がなかなか
回復せず時間がかかってしまう。次に、再度立つ
といった時に、この前は放り出したではないかと
言われる。で、真相は、放り出したわけではない
んだ、と。健康を回復して、それから、その病気
を根治する療法が出たということもあって、も
う心配ないという事情も説明しなければなら
ない。だから私は敢えて安倍さんの病気の話を
するわけです。
私は麻生さんで選挙をやって、40 から 50 減
ってもこれはしょうがないと思ってる。前の人、
小泉さんが取り過ぎたわけですから。だけど、
自民党は、もっと負けると思うんですね。下手
をすると政権を失うかもしれない。ではまた、
自民党が政権を奪還する時、奪回する時にリー
ダーは誰だというと、いないんですよね。私が
一人嘱望していた人がいるけれども、これが酔
っ払いでどうにもならなくなった。ああいう写
真が一枚、世界中に出回ったらおしまいです。
リーダーにはなれない。だからもう安倍さんし
かいないの、本当に。だから私は安倍政権の復
帰待望論です。実はこの話をすると、意外にそ
うだって言う人が多い。安倍さんもその意欲を
失っておられないようだから、ますます元気を
出してやって貰いたいし、私も応援したいと思
ってます。
それで、安倍さんに伺いたいのですが、さっ
き安保懇の問題が出ましたが、結論が出たのに
後任の人が無視した。それを麻生内閣の間にや
る見込みはあるんでしょうか。
安倍:
先般、安全保障に関わる法的基盤整備のため
の懇談会(安保法整懇)座長、柳井俊二前駐米
大使を、麻生さんが官邸に呼びまして、いろい
ろな話を聞きたいと言われたと聞いています。
私も麻生さんとこの問題について話をしてい
るんですが、場合によっては次の衆議院選挙に
おいて、安保法整懇の「集団的自衛権の行使」
と「海外での武器の使用」を、選挙で訴えても
いいのではないかと思いますね。長島昭久さん
の選挙区においては、これは対立軸にならなく
なってしまうんですが、多くの民主党の議員と
の間では対立軸に、一つの選挙の争点になるん
ではないかと思っています。
先般の北朝鮮のミサイル発射においても、日
している状態。
22
本のイージス艦と、米国のイージス艦とが多数日
本海側と太平洋側にいて、お互いに協力している。
この状下において、
「集団的自衛権の行使は出来
ない」というのは、わが国を守る上においても大
きな足かせになるんだろうなと思いますね。
屋山:
それで、安倍さんが作られた国家公務員法の改
正で、要するに官僚制度、公務員制度を基本的に
変えなさいよという法律をまず作って、それを渡
辺喜美さんが引き継いで基本法を作ったんです
ね。ところが基本法を作る段階で、基本法の骨は、
各省の人事を内閣人事局で一元的に管理すると
いうことだった。
要するに官房副長官クラスを作ってやりなさ
いという答申、報告書を出したにもかかわらず、
結局、官房副長官クラスの新設はしなかった。今
いる三人のうちの一人がやるというところに落
ち着いた。ところが、二人は議員ですからね。議
員がそういう職を長く続けるというのは難しい
んで、実際上、事務副長官が兼務するということ
になる。つまり、漆間さんがやるということを麻
生さんが言われる。
何でそうなったんだというと、漆間さんが「新
設というのは行革に反する、だから兼務でよい」
、
と。それで兼務というと自分に来るわけですよね。
要するに漆間さんが次官会議も主催して、人事も
持つことになってしまう。これは、総理大臣を上
回る権力になるんですよね。それはおかしいとい
うので、国家戦略スタッフというのを別に作るか
ら、それとの兼務にしようと言った。そこで、宮
崎さんという法制局の長官が出て来て、スタッフ
がラインを兼務することは出来ない、と。国民に
はわけが分からない支離滅裂振りだった。これで
改革が進むわけが無い。
法制局ってのは何のための存在か。議員が立法
作業の表舞台の主役ならば、専門家としてブレー
キの役割を負っているのか。憲法の最終解釈権を
持つなんて私はおかしいと前から思っていたの
だけれども、普通の法律を作るにあたっても、要
するに官僚内閣制に打撃があるということは、こ
の、屁理屈こねて出来なくするところに存在を見
出しているのか、と言いたいんですよね。
23
総理が召集した公務員制度改革の工程表を
作るという際に、谷という人事院総裁がボイコ
ットしたんですよ。あの人事院は、行政機関の
ひとつですよね。総理召集の会議をボイコット
して法案の提出時期を一ヶ月遅らせちゃった
んです。それだからまだ国会の日程に上がって
こない。これは自民党の中で、分かっている人
はけしからんと言っている人もいるんだけれ
ども、圧倒的多数と総理大臣が、今までの路線
でしか考えないから全然動かない。結局こんな
有り様で法律ができないんです。
今、顧問会議が何を考えているかというと、
これは自民党ではできない。民主党に天下取っ
てもらってやってもらうしかないと思ってい
る。今出ているやつは出来っこない。不備だと。
そしたら中川さんとか塩崎さんが議員立法で、
上の方は特別職にして自由に落ちたり上がっ
たり出来ると、そういうシステムに直して出し
ているんですけどね。私はこれが非常に良い案
だと思うんだけど、自民党の中ではまったくの
少数意見である。
今ここで内閣法制局のことで思い出したん
だけれども、一つ安倍先生の方から官僚制の改
革、つまり、公務員制度の改革を声を大にして
言って頂きたい。
安倍:
屋山先生は公務員制度改革の鬼ですからね。
鬼にかかると麻生総理も、ひどく痛めつけられ
ているわけであります。公務員制度改革を進め
ていくという意思は麻生総理も強く持ってい
ます。人事において、内閣の官房で公務員全体
の人事をやっていくということは、決まったん
ですが、そこで、官房副長官をその長にすると
いうことについてはいろいろな議論がありま
す。原則的に、政務が二人で事務が一人という
ことになっているんですが、これは法律で決ま
っていることではなくて、三人とも政治家であ
っても構わないんです。
かつて小泉総理の時までは政治家の官房副
長官は衆議院、参議院からそれぞれ取って来た
んですが、誰にするかは総理大臣が決めます。
しかし、事務の方は、事務方の総意でトップが
来ると決まっていたんです。総理大臣の意思とい
うよりも、総理の官房副長官人事がずーっと引き
継がれて来たという歴史があります。細川政権が
出来たときのように、政権が変わっても官房副長
官が変わらなかった。これは極めておかしな話で
した。
私が総理になった時は、勿論、慣例に倣って、
役人出身ではあったが、旧内務省から官房副長官
が来るという掟を破って、旧大蔵省の的場さんと
いう人を官房副長官にしました。ですから総理の
意思、総理と運命を共にする人が官房副長官にな
れば、たとえ出身が役人であったとしても、役人
の右代表で上がってくるのではなくて、総理と共
に官邸に乗り込んで行くという姿勢を貫ける。総
理が、この政策はこのように進めたいから、この
政策担当人事は、私と同じ考え方の人たちを局長
にするようにという指示をしておけば、官房副長
官が忙しくても政策の推進は出来るのではない
かと思う。
いずれにせよ、役所は、今まで決めてやって来
たことをなかなか変えない。今日のテーマの安全
保障に関わることで驚いたことがありました。安
全保障会議というのがあるんですが、私が官房副
長官になって、会議を開催するということになり
ました。それで、冒頭に頭(あたま)取りするん
です。真ん中に座っているのが総理大臣です、外
務大臣、大蔵大臣が座って、当時は科学技術庁長
官が座っていたんですが、経産大臣が座って、端
っこに防衛庁長官が座っているんです。私は、こ
れはおかしくないかと言ってですね、並ぶ順番を
変わってもらったんです。
その頭取りの後、本番の安全保障会議が始まる
んですが、細かなことを聞くと、安全保障室長が、
そこに座っている内局の代表者たちにふって、彼
らが答える仕組みになっています。会議に出席す
るために官邸に入っている役人たちに交じって、
統幕議長、陸上、海上、航空幕僚長らが、安全保
障室長のふりで答えるわけですが、彼らが他の役
所から出てきている一般の審議官や局長と一緒
に、部屋の周りで、一緒にパイプ椅子に座ってい
る一員の一人でしかない。これはおかしい。安全
保障会議なんだから、せめて統幕議長は真ん中の
24
テーブルに座るべきだと、私は副長官であった
が安全保障室長に主張しました。
彼が何と答えたかというと、
「机が狭くて無
理です」と言うんです。それはおかしいだろう
と言ったんだけれど、なかなかこの壁は突破で
きなくて、いよいよ新しい官邸になったので、
広くなったので入れろと言ったところ、とうと
う抵抗できなくて統幕議長が座りました。彼は
実力部隊の長ですから、いざとなったらわが国
のために命をかける、彼らには名誉を与えなけ
ればなりません。パイプ椅子に座らせていては
士気が上がりませんよ。その時、初めて座って
もらったのだが、これを突破するだけでも二年
半かかりました。私が言い出してから。今はそ
こに座って説明するということになりました。
そして、総理になった時に、秘書官が財務省、
通産省、大蔵等から来る。しかし安全保障を担
う役所である防衛省からは来ないで、警察庁か
ら来た人が安全保障を兼ねてやります。安全保
障マインドのある人が警察庁から来ればいい
ですよ。私の時には非常に優秀な北村という秘
書官の安全保障マインドが高かったからよか
ったが、時には警察と防衛で利害がぶつかる場
合があるんですね。警察庁から来ていると、そ
うなると必ず警察側に立つということになる
んですね。
そもそも国内の保安の維持と国際的な安全
保障とは別社会です。私は、当然、将来は安全
保障の専門家の秘書官を置くべきだと思う。そ
れは内局でも制服でもどちらでも良いと考え
ています。そして、官邸には制服出身者も置く
べきです。現場勘のある人物、現場の意思を反
映できるという人は、今はいません。そういう
改革を行うべきだが、なかなか大変で、むしろ、
そうなると今度は、シビリアンコントロールと
いう言葉が間違って使われて、内局の制服に対
する支配みたいになってしまいます。これは大
きな誤りです。文民である内閣総理大臣は、自
衛隊の最高指揮官である。そして、部隊が実力
行使する際には国会の承認を得る。これがシビ
リアンコントロールの全てである、と私は思っ
ています。
(了)
屋山太郎先生略歴:
誕生:1932 年6 月 4 日(福岡市)
、終戦時は鹿児島市在住。
学歴:1959 年東北大学文学部仏文科卒業。
「日教組に代表される反日・悪平等教育に染まらなかったのは父親の教育の
賜物」と回顧。
職歴等:1959 年、
時事通信社入社。
ローマ特派員、
首相官邸キャップ、
ジュネーヴ特派員、
編集委員兼解説委員を歴任、
1987
年退社。1981 年第 2 次臨時行政調査会(土光臨調)に参画、以後、第 1 次~第 3 次行政改革推進審議会専門委員、
選挙制度審議会委員、臨時教育審議会専門委員。
役職・主張等:(財)日本国際フォーラム理事・社会貢献支援財団理事・国家基本問題研究所理事・(財)国際言語文化振
興財団理事・日本財団評議員。2006 年「新しい歴史教科書をつくる会」を出て「日本教育再生機構(八木秀次)
」
に参加。同機構系「改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会」代表世話人。2007 年、年金記録
問題検証委員。2001 年:第 17 回正論大賞を受賞。親米保守論壇を代表する一人。経済政策は新自由主義。外交
は日米間の相互協力及び日米同盟強化を主張。
著書:(連載中)『月刊WiLL―常識のためのサプリ―』(単著―2000 年以降を紹介)『私の喧嘩作法』(新潮社 2000
年/扶桑社[扶桑社文庫]2005 年)・『屋山太郎のやさしい政治塾―日本の政官システムの革新―』(海竜社2002 年)・
『抵抗勢力は誰か―改革を阻む“亡国の徒”リスト―』(PHP研究所 2002 年)・『自民党「橋本派」の大罪』(扶桑
社 2003 年/扶桑社文庫、
2004 年)
・
『道路公団民営化の内幕―なぜ改革は失敗したのか―』
(PHP研究所[PHP新書]2004
年)・『なぜ中韓になめられるのか』(扶桑社 2005 年)・『小泉純一郎宰相論―日本再生への道筋をつけた男―』(海
竜社 2005 年)(共著多数―同上)渡部昇一と『父は子に何ができるか―われらが体験的教育論』(PHP研究所 2001
年)・渡部昇一/八木秀次と『日本を蝕む人々―平成の国賊を名指しで糺す』(PHP研究所 2005 年)・岡崎久彦と『靖
国問題と中国』(海竜社 2006 年)
第二部「防衛大綱見直しに直言-安全保障戦略のかたち-」
発表・討論 衆議院議員自由民主党:寺田 稔 先生
発表・討論 衆議院議員民主党:長島 昭久 先生
モデレーター 拓殖大学海外事情研究所教授 佐藤 丙午 先生
佐藤:
本日、司会を務めさせて頂きます拓殖大学海外
事情研究所の佐藤です。この度は、日本戦略研究
フォーラム設立 10 周年、心よりお慶び申し上げ
ます。私は、日本戦略研究フォーラムの設立当初
より、そのご活躍に刺激を受けて来たものです。
今回、このような立場で、記念の 10 周年記念シ
ンポジウムに参加させて頂けたこと、私にとって
非常な名誉であり、喜びでもあります。
本日は、
「戦後レジームからの脱却―安全保障
のかたち―」というテーマで、特に「防衛計画の
大綱」の見直しについて、議論を進めて参ります。
ご存知のとおり、現在の大綱が策定されて 10 年、
今年度、
「防衛計画の大綱見直し」が進められて
おります。一月からは、
「安全保障と防衛力に関
する懇談会」が設置され、大綱見直しに向けた論
点が多数出されています。
本シンポジュウムの主題の「戦後レジーム」と
は、戦後、日本の外交及び安全保障政策に課され
て来た、様々な制約を意味します。一国の外
交・安全保障政策は、他国との関係の中で、脅
威の対象、或いは、同盟や国際システムという
文脈の中で進められるものですから、制約があ
るのは当然です。そこで重要なのは、安全保障
政策の実効性、戦略・戦術的現実、同盟国の関
係の変化などを考慮し、現在、自身に課してい
るそれぞれの制約が適切なものかどうかにつ
いて、常に見直しを行って行く必要があるとい
うことになると考えます。
日本の防衛政策の中で見直し作業を結晶化
させたのが、防衛計画の大綱であろうと考えま
す。振り返れば、防衛計画の大綱は、昭和 51
年(1976 年)に最初のものが出され、そこか
ら 20 年経過した平成 7 年(1995 年)に見直さ
れました。国家戦略の中で、特に重大事項の安
全保障戦略は、防衛出動、及び、危機管理の深
刻な事態が対象となる国策です。従って、日本
の防衛戦略を規定する「防衛計画の大綱」は、
常に問い続けられなければならないのです。さら
に、非伝統的安全保障環境と呼ばれる新たな危機
管理体制を必要とする環境が発生している現在、
この命題と取り組むことは極めて意義のあるこ
とと考えます。
そこで、本シンポジウムでは、前防衛大臣政務
官、自由民主党の寺田稔先生と、安全保障委員会
委員、民主党の長島昭久先生に、与党及び野党の
立場から、戦略的議論を進めて頂きます。そこに、
私たちは、安全保障の多岐にわたる関心事項、案
件から、
「新たな防衛計画の大綱」のすがたを浮
き彫りに出来る示唆を提示して頂けることを期
待しております。
最初に、寺田先生からご発表をお願い致します。
寺田:
皆さんこんにちは。広島 5 区、自由民主党、衆
議院議員の寺田稔です。
今日は、この場に声をかけて頂き、関心事であ
る安全保障について議論の機会を与えて下さり
ありがとうございます。本日おこしの皆様方が、
常日頃より我が国の安全保障体制の構築、そして
また国防意識の涵養、そして国の正しいかたちを
作る上で、多大なるご貢献をされておられること
に深甚なる敬意を表する次第であります。
(先ほど司会から紹介がありましたとおり、
)
私は、安倍内閣、そして福田内閣の下で、2 期に
わたり、防衛大臣政務官を拝命致し、昨年の 8 月
までその任に在りました。その間、高村大臣、石
破大臣のもとで、我が国の防衛に関わる諸問題を
担当させて頂きました。実は以前、私は、財務省
に 20 年余勤めていたわけですが、ちょうど前回、
平成 17 年の大綱見直しの時期、平成 15 年から
16 年まで防衛予算に関わって、私、防衛担当主
計官をおおせつかっていました。当時も、石破さ
んが防衛庁長官でありました。
所謂、
「あり方検討」また、
「防衛政策懇談会」
を開催する中で、大綱見直しの論議が行われ、い
よいよ本年は、それ以来の本格的「大綱見直し」
と「次期防策定作業」がなされんとしています。
その意味で、本シンポジウムのテーマは、防衛政
策上も今年の大変大きなテーマに関わり、我が国
の今後の正しい国のかたちを作ってゆく上でも、
26
避けて通ることの出来ないものであります。
今日は、限られた時間の中ですから、必ずし
も私がこれから申しあげる五点が全てを網羅
出来てないことを、前もってお断りしておきま
す。しかし私から見て、大綱の見直しを議論し
て行く上で、必要不可欠な論点であると確信し
ております。それら五点を皆様方に提示して、
後ほどの議論の俎上に載せて頂ければ幸甚に
存ずる次第です。
まず、一点目であります。
前回にも大きな議論になりました。所謂、基
盤的防衛力整備構想の是非です。
「力の空白」
が不安定化を招き、最終的に侵略を招くという、
いわゆる力の空白論が、これを「是」とする理
論の根底を成しています。これは、かつてあり
ました、冷戦時代のアメリカが打ち立てました
ドミノ理論というものに先行性を見ることが
できる。これとのアナロジイで我が国内におい
ても、専守防衛体制のもと、基盤的防衛力整備
構想ということで、基本的に現大綱も、その理
論を大旨踏襲しているわけです。
しかし、よく見ると、空、そしてまた、海に
おいては、もはや力の空白と言えるような現状
ではないわけであります。唯一、陸については、
着上陸侵攻対処にこの議論が妥当しうる余地
があると思っております。しかし、旧ソ連の脅
威が消滅した現在において、所謂、基盤的防衛
力整備構想で、正面装備、兵器を有することの
意義が、一体、何であるかということは、もう
一度大綱の見直しの中で、十分に検証して行か
なければなりません。
勿論、私が申し上げていることは、決して戦
車を持つな、或いは、多連装ロケットシステム
を持つな、或いは、自走榴弾砲を持つなという
短絡的な議論ではありません。ラインアイテム
毎に、個別の我が国に対する脅威を一つ一つ検
証することによって、正面装備総合力の空白が
侵略を招くのだという軍事的合理性を明らか
にする。現在の、個別の装備保有理論にこだわ
った基盤的防衛力整備構想に拠らずして、多様
な事態に対処し得る方が、より機動的、弾力的、
多機能な防衛力整備が出来るというのが私の
思うところです。
例えば、シーレーン防衛、あるいは島嶼部防衛、
あるいはミサイル防衛、さらには経空脅威対処、
ゲリコマ対応といった、様々な、現在生じている
脅威、或いは、NBC(核・生物・化学兵器)テ
ロ対応、こうした事象に対して、いったい、真に
必要な正面装備は何であるか、そしてそれを支え
る後方兵站は何であるか、こうした議論を是非と
も行うべきであると思っております。
実は、自由民主党党内で、次期防の議論が進ん
でいます。国防部会において進められていますが、
既に、そうした事象を一つ一つ検証することによ
って、必要な正面装備の必要性説明に演繹して行
くというふうな手法でやったらどうか、という議
論が今なされていることを皆さんに紹介させて
頂きます。
従って、正面装備の採用方針として、近時のパ
ッケージ化、あるいはシリーズ化を念頭に置いた
場合、大綱別表のかたちで、個別の正面装備品目
を書き連ねる方式が良いのかどうか、すなわち経
年による陳腐化、あるいはシステムの換装、ある
いはバージョンアップ(改良)といった現象に対
応するためにも、現在の別表の書き方は工夫を要
するものと考えています。
論点の二番目は、日米同盟の在り方であります。
私は、当然、イコールパートナーシップ(対等
な同盟関係)を模索すべきであると考えておりま
す。大臣政務官の時も、思いやり予算の交渉で、
大幅な削減方針を打ち出し、アメリカ側の相当に
強い抵抗があったわけですが、アメリカに乗り込
んで交渉をさせて頂きました。アメリカ側からか
なりの要求が出ていることは皆様もご承知のと
おりです。トランスフォーメーション(戦略的配
備転換)に伴うグアムへの移転、あるいは岩国へ
の 59 機の空母艦載機の移転等と、さまざまに大
きな歳出を伴う要求がなされています。
では、逆に、わが国がイコールパートナーとし
てアメリカに求めるものは、一体何であるか、こ
れを、しっかりと議論して行かなければならない。
例えばわが国は専守防衛政策を採用しています。
敵が攻めて来た場合の攻撃的レッグ(専守防衛政
策の欠陥を補完)の部分は、米軍に頼らざるを得
ない。或いは、後方・兵站についても、私の地
元の広島県には広弾薬庫が、そして川上弾薬庫、
秋月弾薬庫が在るわけですが、そこが有事の際
にはアクサ協定1によって、我が自衛隊に対し
ても必要な供給を行って行くという補完機能
も果たしていることについても、我々は十分留
意しておかなければならない。そうした補給問
題、後方・兵站の問題、アメリカに対して求め
るものをリストアップして、イコールパートナ
ーを模索すべきであると思います。このイコー
ルパートナーシップの前提に立つ時、避けて通
れない議論が集団的自衛権の是非であります。
この議論は、当然、 BMDシステムの構築時も
避けて通れない議論として私は考えているわ
けです。これは正面から議論すべきであるし、
安倍総理の時もこうした議論が行われました
が、残念ながらそれが、現在、停滞している状
況にあります。
次に大きな三番目の論点として、ミサイル防
衛のあり方です。
既に8千億近いお金が、
構想のスタート以来、
BMD に対して投入されています。現大綱、現
中期防においては、この SM3 と PAC3、即ち、
イージス艦発射のスタンダードミサイル
(SM:Standard Missile 改)と地対空防衛シ
ステムとしてのパトリオットミサイル(Patriot
Missile 改)の発射、これをあたかも並列、同
列に取り扱っていますが、果たして、それで良
いのか、という問題があります。
ご承知のとおり、PAC3 は、今回 4 月 5 日の
北朝鮮のミサイル発射事案に対しても、市ヶ谷
の本部に配備されたとおり、
PAC3 というのは、
所謂、中枢防衛、局所的な機能しか有しており
ません。従って PAC3 のみで日本の国土防衛を
行うことは、事実上不可能に近いわけです。
16 ユニット(高射部隊)の配置をもってし
ても広域の防空を成し得ない。従って SM3 に
よるミッドコース(発射段階と突入段階の中間
段階)防衛を、私は、日本全体の防衛として主
眼に置くべきである。即ち、SM3 によるミッ
ドコース防衛を優先的に、かつ傾斜配分的に行
1
27
ACSA:日米物品役務相互提供
( C4I : Command ・ Control ・
Communication・Computer・Information)
のもと、一体どういう体制でもって、着上陸を
した敵に対して対処するかということは、ICT
化された中で瞬時に結論が出るわけで、ICT 化
の成果はフルに取り入れるべきであると思い
ます。私も、大臣政務官の時に、様々な ICT
化を推進すべき担当となって、陸、海、空、そ
れぞれの装備について、検証を行いました。一
定の水際撃退でもって、入り込んだ一部ゲリコ
マ部隊に対して、いわゆる 4 両体制のワンユニ
ットで対処するのか、あるいは変則 2 両体制の
単位で対処すべきか、さまざまな兵器間の相互
連接、そういった相互補完の適合性も含めて、
今、瞬時に整合調整を行うことのできるシステ
ムを開発中であります。
海はご承知のとおり、最先端のイージスシス
テム(
「神の盾」システム)でもって同様の組
織対応が出来ます。空についても、バッジシス
テムの後継のジャッジシステムによりバージ
ョンアップされ、ICT 化の成果をフルに取り入
れています。私は、バージョンアップされた装
備体系を大幅に強化することによって、一層の、
全体としてのシステムの効率化と C4I の貫徹
が出来るものと確信をしているわけです。
うことを是非とも盛り込むべきであると思いま
す。
このミサイル防衛の議論については、様々な議
論があるわけですが、今回の北朝鮮ミサイル発射
事案について見ましても、発射の瞬間と着水の瞬
間は、わが国独自の目によって、すなわち警戒監
視機能によっては捕捉し得なかったという大き
な教訓を残したわけです。我が日本の領海、領空
の上の通過については捕捉出来ても、発射の瞬間
はご承知のとおりSTSS(Space Tracking and
Surveillance System)即ち、熱源探知機能を持
った早期警戒衛星でないと判らない。また着水の
瞬間も高機能の偵察衛星、いわゆる高マニューバ
ビリテイ(軌道修正能力)偵察衛星、あるいは
STSSのバージョンアップをされたシーバスレベ
ルによってしか捕捉出来ない。従って、私は、早
期に自前の目である早期警戒衛星と、偵察衛星の
保有を、BMDシステムの一環として取り組むべ
きであろうと思っています。
およそ、現場の司令官が、自分の目で確認出来
ない脅威の対象目標に対して、地対空ミサイルの
発射ボタンを押すというのは、極めてリスクのあ
ることです。確かに日米同盟のもと、アメリカか
らの画像に頼っているという現状については、一
定程度までは是認されるにせよ、少なくとも、自
前の見る目があって、そのバックアップとしてア
メリカから情報を貰うならいざ知らず、全てをア
メリカに依存することの危険性を私は指摘をし
たい。そこには、シャッターコントロール(情報
秘匿操作)の問題も生ずるわけです。また、低高
度の偵察衛星についても、IGS(Information
Gathering Satellite:情報収集衛星)機能に頼る
のではなくて、マニューバビリテイの高い即応偵
察衛星、これを保有すべきだと思います。
最後の五番目の論点として、総合取得改革に
ついて申し上げます。
私も、石破大臣の下で総合取得改革委員会の
委員長を仰せつかり、その議論を行なって来ま
した。この今回の総合取得改革は、所謂、守屋
事件に端を発する諸改善、即ち、海外調達の透
明化と効率化と合理化、これが喫緊の課題であ
りました。その方向は、この海外調達のみなら
ず、総合的に調達システムの合理化を行って、
必要な装備品をなるだけ効率的に調達し、調達
余力を増して行くということを考えています。
既に成果が様々出ていますが、ライフサイク
ルの把握によって、トータル・ライフサイクル
コスト、LC(Life-Cycle Cost)管理を徹底す
ることによって、一万項目を越える正面装備の
全てについて、効率的な調達を目指して行くべ
きであると思います。そうした調達を行うこと
次に、四番目の論点として、最新のイノヴェー
ション、すなわち技術革新の成果、近時の ICT
( Information
and
Communication(s)
Technology)化を是非とも反映するべきであると
考えています。
近時の戦いにおいては、典型的には、空におけ
る経空脅威対象がそうであるように、瞬時に決ま
ってしまう、また陸においてもシーフォーアイ
28
が、当然、納税者の立場から見ても、希少な財政
資源の有効活用、そしてまたわが国の装備体制の
次期大綱の見直しのもとにおける効率的な取得
にも直結を致します。
先ほど申しました STSS の取得にしても、一体、
どういう取得方法が最適であるか、複数の選択肢
でもって、この費用対効果の分析を行うことが求
められます。そこでは、システム的な発想で、調
達の一定の予算制約のもとで、最適な調達の世界
を目指す、そういった発想が必要であります。具
体的には中期防衛力整備計画、次期防の中で、是
非とも反映されるべきであると考えています。
以上駆け足ではありますが、私の考える五つの
重要な論点について、述べさせて頂きました。
実は次期大綱の見直しの議論、また中期防の議
論において、大変重要な FX の問題も対処して行
かなければなりません。考慮すべき事項には、経
空脅威の対処能力、またアメリカとのリンクの問
題、あるいは即応装備体制の信頼性の問題、さら
には電子戦対応問題、またアメリカの生産ライン
のストップの問題等が挙げられます。これら、
様々な問題をクリアしながら、次期戦闘機選定の
第一作業を行うことになるでしょう。
そうした中に、早期警戒衛星を初めとする宇宙
分野に注目が向けられ、ようやく防衛省も単独の
宇宙を担うセクションが、防衛政策課に設置をさ
れました。そうした分野に積極的に関与すること
で、より一層わが国の安全保障体制を進化させて
いく期待が持たれます。当然、その進化に、新た
なかたちの安全保障体制の構築が求められるこ
とは言うまでもありません。
今日は、昨年に引き続きお招きを頂き、本当
にありがとうございます。今、民主党では、代
表選挙の真っ最中でありまして、軍事戦略とい
うよりは選挙戦略に頭がいっぱいというのが
正直のところです。
民主党の、と申し上げましたけれども、私の
持論では、安全保障に与党も野党もないという
立場であります。さらには、先ほど安倍元総理
の「戦後レジームからの脱却」を伺っていて、
本当に対立軸が無いなあと自分ながら思った
わけであります。しかし、この、せっかくの機
会に、私が日頃考えている安全保障の戦後レジ
ームからの脱却について、いくつか指摘をさせ
て頂きたいと思います。
大綱の見直しというのは、まさに安全保障戦
略の見直しに他なりませんから、こういう時期
を捉えて、戦後積み残された問題を一気に解決
して行くぐらいの気概を政治家が持たなけれ
ばいけないと考えています。
冒頭、三つのポイントを申し上げたいと思い
ます。それは、我が国の安全保障をめぐる「三
つの空洞化」についてです。
第一番目は、自衛隊組織の空洞化です。これ
は法的基盤の問題です。先ほど武器の使用、武
力の行使という話がありましたが、自衛隊創設
以来半世紀以上も、これは放置されて来た問題
です。この根本的な、今日、自衛隊組織にもた
らしている深刻な問題について指摘させても
らいたい。
佐藤:
寺田先生、ありがとうございました。先生には、
基盤的防衛力の問題、日米同盟、ミサイル防衛、
最新のイノヴェーション、総合取得改革の五点に
ついて、最新の動向をご紹介頂き、それぞれの点
について、ご意見を頂きました。次は、長島先生
にプレゼンテーションをお願い致します。
長島:
皆さんこんにちは。民主党の長島昭久です。
29
二番目には、それと併せて、戦力としての自
衛隊の空洞化が目立ちます。武田信玄が「人は
石垣、人は城」と言いました。しかし、今日の
自衛隊はこの肝心な人材をめぐる環境が壊れ
てきた。だから、育つべき人材が育っていない
という人的基盤の脆弱さがあるのではないだ
ろうか。いくら最新装備を買い込んでみたとこ
ろで、結局人が動かすわけですから、人が疲弊
してくれば、戦力としての自衛隊は深刻な空洞
化現象に陥ると、こういう問題について指摘を
させて頂きたいと思います。
三番目は、日米同盟の空洞化、即ち、日米間の
軍事的な協力関係の空洞化です。
これらの問題は、日本の安全保障に直結する根
幹部分であります。本日は、この三点の問題から
切り込んでみたいと思います。
まず、最初に、自衛隊が組織として空洞化して
いるのではないか。これは、まさに日本戦略研究
フォーラムの皆さんにとって釈迦に説法、もう聞
き飽きたという論点かもしれません。
しかし、1954 年の自衛隊創設以来、自衛隊は
「はたして軍隊なのか」と、こういう根本問題が
なおざりにされて来た。つまり、自衛隊という組
織が軍事組織として、その位置付けが不明確のま
ま今日に至っているという問題であります。
自衛隊は、軍事的行動がいったい何処まで出来
るのか。自衛隊の創設以来、軍事の本質、軍隊の
役割の根本を問うこと自体がタブー視された「異
常な状態」が続いて来ました。これが、武器の使
用、武力の行使の是非という、きわめて日本的な
論争に終始せざるを得ない原因です。今回も海賊
対処の議論の中で、派遣される海自護衛艦が許さ
れるのは「武器の使用か、武力の行使か」という
不毛な議論になっているわけです。
有り体に言いますと、自衛隊関係者には大変失
礼な言い方かもしれませんが、法的には未だに
「警察予備隊」という状況が続いているというこ
とであります。つまり、軍隊ではない。したがっ
て、そういう組織で訓練をし、実戦配備をされて
いる自衛官の皆さんは、自ずとアイデンテイテ
イ・クライシスに陥ってしまうと、こういうこと
なんだと思います。それが、結局、冷戦時代が終
わるまで、政治家はもとより、ほとんどの国民が、
自衛隊という組織はシビリアン・コントロールの
下で、できるだけ活動しないで、じっとしている
ことがいいんだ、という考え方になっていた。で
あるから、自衛隊が新たな活動を行う度に、新た
な法的枠組みが必要になるというわけです。
つまりは、これを専門的に「ポジリスト」と言
います。ポジティブ・リストというのは、やって
いいことだけ法律に書いてある。即ち、やれるこ
とだけ法律に書いてあるわけですから、法律に書
30
いてあることしか出来ないわけですね。それ以
外は「やってはいけない」ということになりま
す。普通の国際標準で行けば、警察がこのポジ
リストに基づいて動くようになっています。
それに対して、ネガリストという概念があり
ます。これでいくと、法律に書いてないことは
全部やって良い、裁量で。法律には、どうして
もやってはいけないことだけ書き込むと、これ
がネガリストであります。軍隊は、通常、この
ネガリストによって規律されるものです。
では、警察がなぜポジリストかと言うと、そ
れはある一つの法秩序の中で権限を行使する
から、秩序維持のため法的に許される範囲内で
公権力を行使せねばなりません。しかし、もう
一方の軍事組織というのは、そもそも法秩序が
崩壊してしまった後、その法秩序を回復するた
めに残された最後の手段であります。ですから、
流石に国際法を無視することは出来ませんけ
れども、確立された国際法で禁じられている行
為以外のことは、基本的に何でもやって良いの
です。それが軍事組織に本来の位置付けなんで
すが、日本の自衛隊にはネガリストは採用され
ず、警察並のポジリストに従うことになってい
るのです。それは、自衛隊が「警察予備隊」の
進化形で創設された起源に原因があるのです。
これは皆さんご承知のとおりだと思います
が、保安隊から自衛隊に改組して新しい軍事組
織をつくる時に、当時の保守陣営の主流にあっ
た吉田自由党―麻生首相のお爺さんがつくっ
た政党ですが―は、
「これは間接侵略とか治安
維持とか、そういう任務に就くものだから、な
るべく軍事的な色彩を帯びないようにするん
だ」と、こういう立場だった。
それに対して、例えば芦田均さんとか重光葵
さんとか、先ほど話をされた安倍さんのお爺さ
まである岸信介さんとか、そして鳩山一郎さん
とか、こういう改進党、後には日本民主党にな
るわけですけれど、そういう系統の方々は、こ
れは、新しい独立を担う、日本の国の独立を担
う軍事組織を一からつくるんだと、こういう考
えで、直接侵略に備える軍隊を創設しようとい
う立場であったわけです。
保守陣営の中で侃々諤々の議論をしていた
んですが、最終的に保守合同ということになり、
結果的に誕生した自衛隊は、通常の観念で考えら
れる軍隊とは異なる組織ということになってし
まいました。自衛隊の組織原理は、警察を基礎に
したものになり、運営も旧内務省、つまりは警察
関係者が、当時の組織の中核を握り「警察の流儀」
で仕切って行った。新しく出来た防衛二法、二つ
の法律も、学者の間では、警察法的防衛法制とい
う認識であり、防衛出動時、即ち、防衛出動下令
の場合、つまり日本有事の時以外、武器の使用に
ついては、全て警察官職務執行法を準用するとい
うことで整理されてしまったのです。
先ほど、安倍総理も指摘をされておりましたけ
れども、結局、この時に、内局が制服をコントロ
ールするという、シビリアン・コントロールの原
則とは似て非なる「文官統制」の概念が生まれ、
国際社会の通念から見て非常にいびつな防衛法
制のかたちが出来たわけです。この原点を、もう
一度私たちは振り返って、私も、どうせ政権交代
するんだったら、そういうことを根本的に見直す
ような、そういう政権をつくらなければいけない
と思っています。
このことは、単に昔話で終わっていません。そ
れどころか、先ほども触れましたとおり、
「武器
の使用」か「武力の行使」かなどと、英語で言え
ばどっちも「ユーズ・オブ・フォース」なのです
が、この二つの概念の何処がどう違うのか、とい
ったようなおよそ国際社会では通用しないよう
な議論が、内閣法制局を中心に、戦後延々と続い
て来たのです。
古くはルワンダの PKO で、
「小銃を一挺持っ
て行っていいけれども、二挺はいけない」とか、
こういう議論がくそまじめに国会でなされたと
いうわけです。最近でも、自衛隊のイラク派遣や、
ソマリア海賊対処の派遣時も、任務遂行を妨害す
る行為を排除する武器の使用がいいのか悪いの
か、これは武力の行使に当たるのか当たらないの
か、こういう議論が延々と繰り返されているわけ
です。
もう一つ、付け加えて言うならば、先程、安倍
さんは、北朝鮮の領空まで行って策源地を攻撃す
る話をされました。他国の領空まで進入して、武
31
器の使用をすることがいいか悪いかが憲法問
題になるんだという指摘をされましたが、それ
よりはるか手前のところで、実は、日本の自衛
隊は法的問題を抱えている。例えば「日本有事
ではない」つまり「防衛出動が下令されていな
い」そういう段階で、
「北朝鮮のミサイルが飛
んでくる可能性がある。日本海公海上にイージ
ス艦が展開をする。そのイージス艦に対する北
朝鮮空軍の攻撃があった」場合、そのイージス
艦を守るために近傍に展開した僚艦が反撃で
きるか否か。これ、日本の自衛隊、海上自衛隊
が出来ると思いますか。出来ないと思いますか。
実は、
「これは法的に出来る」と言い切れな
い状況なんですね。もちろん、攻撃にさらされ
るイージス艦そのものは自らの武器等防護と
の理由で自衛のための武器使用は出来るんで
す。しかし、想定はあくまで防衛出動下令前で
ありますから、つまり日本有事と認定されてい
ない段階でありますから、そのイージス艦を守
るために他の護衛艦が付近にいたとしても、敵
機の攻撃を跳ね返すために、それを打ち落とす
ための武器使用が今の自衛隊法上できるかど
うか、これは非常に微妙な問題なのです。
常に現場指揮官は、憲法上可能かどうかとい
う問題に悩まされながら前線で活動せざるを
得ない。これが第一番目、自衛隊の軍事組織と
しての空洞化をめぐる根本問題であります。
第二番目は、自衛隊が戦力として極めて深刻
な空洞化を迎えている。その現状は、崩壊一歩
手前といっても過言ではない。増大する任務と
削減一方の防衛費の間のギャップに関わる問
題です。
それは何かと言うと、冷戦の終結後、国際的
問題の解決に貢献するため、毎年のように任務
が拡大されて来ました。それらに相応の手当て
がなされて来たかという問題です。例えばイラ
ク派遣、これは 6 年という期間になりました。
それから、インド洋への派遣も、今年で 8 年目
を迎えました。ソマリアの海賊対処派遣も何年
間になるかは判らない。こういう状況です。
次々に新しい法律が出来、次々に新しい任務が
付加されてきた。では、それに見合うだけの予
算のバックアップはあったのか。人員の増加はあ
ったのか。装備の増加はあったのか。逆ですね。
この間に防衛予算はカットされる一方であった。
これは、財務省ご出身の寺田先生にもお願いした
いところなんですが、
「骨太の方針」以来、予算
はカットですよ、毎年。
それから人員の削減、これは「総人件費改革」
という名のもとに一律 5%カット、5 年間で 9 千
人カットして来て、それも、定員ではなくて実員
のカットです。
例えばイージス艦の「あたご」の衝突事件があ
りましたね。この報告書を読んで、私は深刻にな
りましたが、いくつか原因を挙げている中で、3
つ挙げるとすると、
一つは人員削減による現有の隊員、特に幹部へ
の過重負担、これが一つ。
もう一つは軍事革命と言いますか、RMA です
ね、
「レヴォリューション・イン・ミリタリー・
アフェアーズ(Revolution in Military Affairs)
」
です。この RMA を中心とした最新の情報技術、
軍事技術というものが非常に高度化した。こうい
う高度化に対する対応や訓練に追われて、極めて
基礎的な訓練がおろそかになり、或いは、習熟度
が低下して来た。
今回の「あたご」の場合はまさにその典型であ
りまして、
「あたご」はハワイ沖の BMD の実験
に行って、しかも成功して帰って来た。その帰っ
て来た時に「見張り」がきちっとなされていなか
った。ということで衝突事故を起こした。勿論、
漁船の動きもひどかったわけですが、そういうこ
とで事故を起こしてしまった。これは非常に深刻
な問題であります。
三つ目は、任務は拡大するけれども人が減る。
予算が減る。そこで生じた、自衛隊員の「士気低
下」の問題です。
こういうことが相まってイージス艦あたごの
衝突につながってしまった。それから、陸上自衛
隊のイラク派遣で 6 年と申しましたが、航空自衛
隊も行った。主力装備は何か、輸送機 C-130 であ
ります。その部隊はたった 1 個飛行隊しかない。
部隊の保有全機数が 13 機です。この 13 機は、も
32
ともと国内輸送に運用される航空機でありま
す。しかし、これを国際協力という名のもと、
海外に展開をした。C-130 臨時編成部隊で、多
いクルーは、5 回もイラクに行って帰って来て
います。だから部隊における兵員の養成、或い
は、訓練、或いは、実戦配備、この 3 つが猫の
目のように変わって、まさに、C-130 部隊の運
用は火の車のような状態が続いて来た。
このような事態は、C-130 の部隊だけにとど
まらず、直接、間接に関係する他の部隊にも伝
染する傾向が生じた。その結果どうなったか。
情報流出とかいろんな服務上の不祥事、或いは、
火災や事故が多発して来たわけです。中でも最
近深刻なのは自殺者の急増であります。自衛隊
全体に占める自殺者の割合は 0.03%で、海外に
派遣された隊員のそのデータというのは
0.08%という数字です。この数字については気
をつけて物を言わなければいけません。この数
字を見て、海外に派遣されたから自殺率が高く
なった、と短絡的には申しませんが、少なくと
も、そういうプレッシャーが隊員にかかってい
ると分析できるでしょう。もっと大きい問題は、
家族にかかっているプレッシャー、それによっ
て生じた諸々の家族問題です。
自衛隊は、これまで、国内における訓練を中
心に部隊運用されて来ました。良くも悪くも。
自衛隊というのは、国内で訓練をしている。災
害派遣があると出動し、国民から感謝されてい
ます。こういう状況だったのが、いつの間にか、
海外に派遣されることが頻繁になった。しかも、
常時、派遣先における危険と直面し、生死の境
をさまようような、そういう実戦配備が続いて
来た。
安倍さんが名誉という話しをされましたが、
国を代表するその活動に見合うだけの社会的
評価、或いは、尊厳ある処遇というものが当然
必要になってくる。今の自衛隊に対して政治が、
どこまでそれを提供しきれているのか、反省点
として残ってくるということです。
今回の大綱の見直しは、そのような空洞化現
象を埋める効果がなくてはなりません。つまり
予算と戦略、自衛隊が抱えている任務、達成し
なければならない戦略的目標、問題解決とそれ
に見合うだけの予算があるのか、など多岐にわた
る調和が求められます。分けても、
「予算・戦略
ギャップ」というものが生じた場合、それを、直
視して行かなければならない。私は、これが喫緊
の課題だと考えています。
アメリカの例を挙げて、詳細な説明は致しませ
んが、クリントン政権末期にも予算・戦略ギャッ
プといって、米軍関係者が深刻に悩んでいた時期
がありました。日本とは、政治的、社会的、軍事
的背景が異なっていますが、米国の事例は、多く
の示唆を提示しております。機会があれば是非と
も触れたいところであります。
今申し上げました問題を、一日も早く解決をし
て行かなければならない。私は、崩壊寸前とまで
申し上げましたが、相当限界まで来ている。自衛
隊員の忍耐も限界に近いのではないかと思って
います。
先ほど基盤的防衛力の話が出ましたので付言
させて頂きます。基盤的防衛力というのは、まさ
にベースフォース、基盤的な防衛力を策定して、
整備をして、しかし脅威に応じてそれをエクスパ
ンド(拡大)する、という概念です。それを 07
大綱、16 大綱と、ずーっと踏襲してきた割には、
その伝統的な脅威への対処に加えて、海外派遣任
務が多くなった。つまり、国際テロリズムや海賊
への対処、崩壊国家の救援など、非伝統的な安全
保障環境への対応に防衛力を割いて、自衛隊の海
外への派遣を優先した分、我が国周辺の伝統的安
全保障任務に欠落が生じた。本来は、その部分の
補充として、戦力をエクスパンドしなければいけ
なかったのです。ところが、財政上の制約から、
エクスパンドしないまま現有の基盤的防衛力の
使えそうな部分ををつまみ食いして、
「はい、イ
ラクへ行って下さい」
、
「インド洋に行って下さ
い」
、
「ソマリアへ行って下さい」と、こういう状
況が続いて来た。この一連の任務拡大を、今度の
「大綱の見直し」でいったん見直して、伝統的、
及び、非伝統的な安全保障任務の双方が成り立つ
ように、一定の決着をつけて行かなければいけな
いのではないか。このように思っています。
三番目、これは、日米同盟協力の空洞化であり
33
ます。
まず、最近の事例が一番端的なので申し上げ
ます。4 月 5 日、北朝鮮のミサイルが発射され
た。あのミサイル発射に対する日米の協力関係
については、皆様いろんなご意見があろうかと
思いますが、私見を敢えて申し上げます。軍事
レベルでは、私、安全保障委員会でも質問致し
ましたが、米軍と日本の自衛隊との間では、相
当程度BMD の協力関係というものが進化して
いると思います。しかし問題は政治レベル、国
家レベルでどうだったかということです。
時系列で言えば、3 月 27 日に我が国では安
全保障会議が開催されました。そこで、北朝鮮
のミサイルが、成功するにせよ失敗するにせよ、
「我が国に飛び込んできた場合には破壊する
んだ」
、という破壊措置命令を発令致しました。
即ち、個別的自衛権及び警察力行使として、こ
れを打ち落とすという決心を内外に鮮明にし
したわけです。
同時に、この決心が示すところ、言外にして
はいませんが、
「集団的自衛権は行使せず」で
すから、アメリカ向けに言ったのは、
「おれた
ちは知らないよ」と、こういう立場です。
ではアメリカはどうだったか。アメリカは、
浜田大臣が破壊措置命令を下した二日後に、な
んとゲーツ国防長官が記者会見でこう言った
んですね。
「米国に向かって来るミサイルでな
ければ、我々は対処しません」こういうふうに
言った。つまり、裏を返せば、対日ミサイルに
ついては迎撃せずということを、はっきりと言
ったんです。今回の米国の姿勢として。つまり
このケースにおいて、
「集団的自衛権を行使し
ない」とゲーツ長官は宣言したわけです。
ここで二つの問題があります。ひとつは、こ
れで本当にいいんですかという話です。日米の
間で北朝鮮の脅威に対する対応が、これで本当
に良いのかという問題です。もうひとつは、こ
の日米の個別対応が原因かどうか判りません
が、抑止力が働かなかったということです。北
朝鮮がミサイルを射っちゃいましたから。北朝
鮮に対しては、我々は相当プレッシャーをかけ
てきました。制裁もかけていた。中国もアメリ
カもロシアも皆やめておけと言った。しかし、い
とも簡単に彼らはミサイルを発射したわけです。
では根本的な問題はどこにあるのか。先に寺田
先生も言われたとおり、
「集団的自衛権の行使に
ついて、我が国が踏み切れていないこと」が問題
なんです。ゲーツ長官が、
「日本のことについて
は、日本お一人で頑張りなさい」と言ったのは、
私は当然のことだと思います。
日本側が、もしアメリカ側に飛んで行くミサイ
ルであっても、我々はきちんと打ち落としますと、
はっきり宣言できる立場に立っていれば、アメリ
カだって、日本に飛んで来たミサイルでも、我々
は命を張って北朝鮮との、場合のよっては全面戦
争になるかもしれないが、きちっと手当てをする
ということは言えたはずであるし、言ったでしょ
う。安倍さんは、この点について、
「同盟国の信
義」という言葉で明確に指摘されました。同盟関
係がそういうふうになっていないということは、
深刻に、大げさに言うつもりはないが、日米同盟
関係の空洞化の問題に直結していると思います。
私は、問題解決策として二つ提示させて頂きま
す。
一つは、集団的自衛権行使の問題を、与野党問
わず解決しなければいけないということです。
それからもう一つは、日本独自の抑止力を持た
なければいけない。これは懲罰的抑止も含めてで
す。つまり拒否的抑止としての BMD は勿論です
が、場合によっては「座して死を待つものではな
い」との 1965 年の鳩山首相答弁があるわけです
から、北朝鮮の策源地を攻撃する能力は保有しう
る。日本がそろそろ真剣に議論を始め、その二つ
の抑止力を強化することによって、日米同盟関係、
協力関係を補完する。同時に、自助努力で補完し
て行くという体制構築を促進する必要があると
思います。
こういうことを私たちは大綱の見直しの議論
の中で、真剣に与野党の間、あるいは専門家との
間で戦わせて行きたいし、私たち自身が進めて行
きたい。このように思っています。
34
佐藤:
長島先生、ありがとうございました。
寺田・長島両先生のお話を拝聴し、お二人の
間には、安全保障に関わる、共通の問題意識を
持たれていると理解致しました。問題解決のア
プローチにしても、ほぼ共通のアプローチを念
頭に置かれているのではないかと推察致しま
す。
まず、長島先生よりご指摘があったクリント
ン政権の末期の話を参考にして、両先生に対し
て、私のコメントと、質問をさせて頂きたく思
います。長島先生は、クリントン政権末期の防
衛政策上の問題が、予算と戦略のギャップであ
った言われました。米国ではこれを、
「ミッシ
ョン(任務)
」と「ファンデイング(予算)
」の
ギャップという言い方を用います。即ち、政府
として掲げている政策に対して、予算的措置が
十分でなければ、当然ながら軍隊は疲弊して行
くという問題を表現したものです。
その解決方法として、米国では、予算を増や
す、もしくは、ミッションを減らという二つの
方法が考えられました。勿論、同盟協力を通じ
て役割分担を行い、予算を減らしてもミッショ
ンを増加させる道もあるのかもしれませんが、
いずれにせよ、一つの解決方法として予算の増
加がありますが、現在の経済環境、及び、国際
戦略環境の下で、防衛予算を大幅に増やすとい
うことはできるのか、政治家のお二人にコメン
トを頂きたいと思います。
もう一つの解決方法として、ミッションを減
らすという考え方があります。しかしながら、
この消極的選択は、国際安全保障関係を改善し、
我が国に脅威が及ばないようにするために、国
際平和構築に寄与して行くとする、
「戦略的貢
献活動」推進の方針から離れることになります。
しかし、現在の大綱の概念整理の下で、
「新し
い安全保障問題への対応」と表現され、自衛隊
のミッションの一つの柱として捉えられてい
る内容が、大幅に減ることはないと考えられま
す。国際関係の変動の中で、ミッションが増え
ることはあっても、減ることは無いでしょう。
ところが予算を増やすことが出来ない。他方で、
新しい安全保障の課題は増えて行く。さらには、
技術の高度化が進むので、伝統的安全保障への備
えというのも増強しなければいけません。
このジレンマと複雑なパズルをどう解くのか
を第一点として、両先生に政治家としての政策上
の存念をお伺いしたいと思います。
第二点として、両先生共に日米安保に関わる問
題を取り上げられました。この問題は「相手に求
めるものは何か」という寺田先生の問題提起と、
長島先生の言われた「集団的自衛権の問題を解決
する決意」という課題があります。
また、オバマ政権に代わってからの日米関係と
いう視点では、さらに加えて、三つの視点につい
て、安全保障議論の中で議論して行く必要がある
と思います。
第一に、オバマ政権のニュークリア・ゼロの提
言に対して、我が国はどのような対応をとるのか。
第二に、米中関係の変化に日本はどういう対応
をとるのか。
第三に、オバマ政権の下で強調される、多国間
による安全保障と、日米同盟との共同関係にどの
ような姿勢で臨むのか、以上について両先生のご
意見を頂戴したいと思います。
寺田:
まずミッションと予算の関係、これは長島先生
もご指摘になられました。私が防衛担当主計官を
やっている時は、予算があまり減らない時期でも
ありました。BMD の本格的導入と多様な事態対
処によって、財政当局の立場からすると、予算を
厳しく査定する側にいる私の立場は宜しくなか
ったのかもしれませんが、必要なものに必要な予
算付けすることは当然であると、当時も今も考え
は変わっておりません。
我が国は軍事大国にならない、或いは、専守防
衛、非核三原則といった、大きな国是の下で、か
つては防衛費が GNP1%でありました。ところが、
35
今や、1%どころか 0.9%にも及ばない予算にな
っているのが現状であります。謙抑的なスタン
スというのも必要ですが、必要不可欠な物の予
算付けは、政治の責務としてやらなくてはなら
ないのであります。
ミッション論で言いますと、我が自衛隊の能
力は高く、国際的にも高く評価されています。
湾岸戦争勃発時に、私は、ワシントンの駐在官
で、例の 90 億ドル支出の議論の渦中に居りま
した。いくら 90 億ドルはたいても、当時、米
国国務省のホームページに、日本の名前が出て
来ない。貢献国を並べた旗の中に日本の日の丸
が無い。私は、米国国務省に、日本も貢献して
いるではないかと抗議に参りました。しかし、
「日本は参戦していない。誰も戦場に来ていな
いではないか。お金だけでは駄目だ」と、国務
省高官に言われ、大変悔しい思いをしました。
湾岸戦争後の処理ということで、当時は、池
田防衛庁長官の下、超法規的措置で、9 隻の掃
海艇が、私の地元、呉の海上自衛隊から派遣さ
れました。掃海部隊が、ものの見事に浮遊機雷
掃海任務を遂行したことは承知のとおりです。
その結果、掃海部隊指揮官、落合隊長以下、海
上自衛隊隊員の能力については、国際的に、非
常に高い評価を得たわけであります。このよう
に、日本国自衛隊の海外派遣部隊による国際貢
献業務については全て、極めて評判の良い評価
を得て来ました。
私は、このようなミッションを果たし得る、
十分な多機能、弾力性を備えることによって、
ミッションの負荷をこなしていけると考えま
す。しかし、必要な予算と人のアロケーション
(手当)を行うということは、極めて重要であ
ると思っております。その意味では、即応予備
自衛官をはじめとする、所謂、予備役の活用と
いうことも考えなければなりません。
予算面で申し上げれば、五番目の論点で、先
ほど申し上げました総合取得改革が検討され
ています。これは極めて大事な点であります。
効率的な調達を行うというのは、全体の防衛調
達を減らすという意味ではありません。必要な、
調達すべきものは、大綱、或いは、中期防にコ
ミットメントとして記載をされていますから
削減の対象外であることは当然であります。
むしろ、調達力を強化するかたちで、効率的な
調達を行えば、余力が増す。また、先ほど申し上
げた早期警戒衛星 STSS も、防衛予算の枠内で
執行して、各幕予算に食い込むのではなくして、
別枠にする。事実、来年には、承知のとおり宇宙
基本法のもとで、内閣府の宇宙担当部門という新
たなセクションが立ち上がるわけでして、内閣府
所管予算として、オールジャパンの問題として
STSS に取り組んでいく。従って、これらが推進
されることで、予算付けが、可能になって行くと
思っております。
日米同盟につきまして申し上げます。繰り返し
ますが、日本がアメリカに求めるべきものはしっ
かりと明確に提示して行きたい。集団的自衛権の
議論も、真正面からアメリカと交換して、イコー
ルパートナーシップを目指すためにも、相互のギ
ャップをクリアしなければならない。その意味で、
長島さんと全く同じ立場であります。
私は、広島出身の被爆二世の一人であります。
「2020 核廃絶2」に向かって、超党派で活動を行
っていて、来年は、いよいよNPTの運用検討会議
も開催されます。実は本朝もこのNPT推進会議が
行われ、オバマ提案を受けて、中曽根外務大臣が
提示された「11 項目3」についても議論されまし
た。NPTが早期に実効に移行するよう、エバンズ
元オーストラリア外務大臣と日本の元外務大臣、
川口順子さんが中心となって、日豪で行われてい
る核兵器削減会議を応援しようと緊急アピール
を出させて頂きました。
2
核兵器を巡る状況は、核の拡散、使用の可能性が高ま
り、NPT 体制が崩壊の危機に瀕するなど、極めて深刻な
状況にある。平和市長会議は被爆 75 周年にあたる 2020
年までの核兵器廃絶を目指す「2020 ビジョン(核兵器廃
絶のための緊急行動)
」を 2003 年秋から展開した。
3 4 月 27 日、中曽根外務大臣は都内で、
「核軍縮」に触れ
る演説の中で、世界が核軍縮を進めるための11項目を
提案、最大核保有国米露のリーダーシップを強調、中国
など核保有国の核軍縮と情報開示、包括的核実験禁止条
約への批准を要求。この演説は、オバマ政権が核軍縮を
掲げる中、その機運を高め、唯一の被爆国である日本の
取り組みをアピールすることが狙い。政府はこうした方
針をもとに、来年初めに核軍縮に関する国際会議を日本
で開催する予定。
36
米国オバマ大統領のニュークリア・ゼロ政策
は、人道的に、
「核兵器を使わない」
、
「核兵器
を持ってはならない」という思想の下、明確な
核軍縮を始めることを声明しています。この政
策に全く異存はありません。そのためにも、ア
メリカのCTBT(Comprehensive Nuclear Test
Ban Treaty)の批准と、米露の戦略核削減交渉
を早急に開始すべきであろうと思います。
アジアでは、ARF(Asia Regional Forum)
において、アジアにおける集団安全保障体制の
構築を目指すべきであるし、それと同時に、北
東アジアの非核化条約の早期批准が望まれま
す。この NPT 体制強化のためにも、北朝鮮の
封じ込めの効果を上げなければなりません。こ
れには、国際社会が一致団結した圧力をもって、
北朝鮮に核放棄させることが必要であると思
っております。
長島:
佐藤先生がおっしゃった「ミッション・ファ
ンディング・ギャップ」というのは本当に深刻
であると思います。防衛予算のファンディング
については、私自身、GNP1%という枠にこだ
わらず、と言いたいところでありますが、わが
民主党のマニフェストを見ると憚ってしまい
ます。子供手当て 2 万 6 千円とか、高速道路の
無料化とか、かなり膨大な財源を伴う施策が並
んでおります。このような状態で、一気に 1%
を超えてというわけにも参りません。
そうなりますと、結局は「選択と集中」で行
く以外に打つ手がありません。佐藤先生は、先
ほど多国間安保について二番目の問題として
提起されておられます。この多国間安保とも係
るのですが、日本は、ヨーロッパと異なった安
全保障環境に置かれているということを、外に
向かってキチンと発言すべきであると思って
います。安定した欧州と異なる最大の要素は中
国の存在です。勿論、北朝鮮も大きな要素です。
つまり、20 年以上連続して国防費を、毎年二
桁以上の数字で伸ばし続けている国が、日本の
隣りに存在しているという現実が厳然として
あります。
中国が日本に及ぼす軍事的プレッシャーは、南
シナ海から東シナ海へ、第一列島線から第二列島
線へと、西太平洋全域をうかがうような、物凄い
突出ぶりを示しています。ロシアの復活も顕著で
あります。つまり、日本を取り巻く安全保障環境
においては、伝統的脅威が更新されている
(Re-loaded)現状です。いま一度、日本に対す
る脅威が具体的に、しかも、厳然と残っているこ
とを、我々は認識しなければいけません。
そして、この現実を、世界に対して、アメリカ
に対しても、ヨーロッパに対しても分かるように
説明しなければなりません。我が国を取り巻く戦
略環境は、ほとんど軍事的脅威や不安定要因が消
滅したヨーロッパのようなおめでたい状況では
ないということをはっきり伝え、国際社会の期待
値を下げる必要があります。これが第一点です。
次に申し上げるのは日米協力です。やはり、日
米協力関係を機能させるために、日本側が抱えて
いる「負債」を払って行かなければなりません。
それが、集団的自衛権の問題です。この二つを組
み合わせて、日本は、伝統的な脅威にも、きちん
と備えられるような自衛隊、防衛力を構築して行
く必要があると思います。
核軍縮については、寺田先生が仰ったとおりで
あります。そこで、忘れてはならないのが、中国
の核戦力とミサイルなんですね。ここに、きちっ
と軍縮の、軍備管理の枠をはめて行かなければい
けません。今は、米露の間で話し合いが進んでい
ます。どのくらいのまで量を削減して行くか具体
的、定量的にやっています。アメリカの、キッシ
ンジャーをはじめ、提言を出しておられる方々も、
米露間の話は熱心にされるわけです。
しかし、中国も交えて、この核軍縮、軍備管理
の交渉のテーブルにつかせなければならないと
考えます。これは、やはり、日本として、日本が
言い続けなければいけないことです。先ほどは、
北朝鮮も含めて、非核化構想についてお話があり
ました。この提案については、思い切って日本
側から中国や北朝鮮に提案して行く日が来て
いるのではないかと言う気が致しております。
佐藤:
寺田、長島両先生有難うございました。僭越
ですが、ここで、私から総括というかたちで、
両先生のご発表、ご意見をまとめさせて頂きま
す。
与党、寺田先生、野党、長島先生、共に、安
全保障に関わる鋭い見識をお持ちでいらっし
ゃいます。お二人とも、日本の安全保障を大局
的な視点で捉えられ、その中において、どのよ
うに日本の安全を守っていくか、そのための防
衛力整備が如何にあるべきか、それぞれの視点
からお話頂きました。また、戦後のレジームに
おける問題の指摘と、今日期待される変革とい
う点に関しても明確に持論をご紹介頂きまし
た。
お話を聞き、受け止める側から致しますと、
共通に、似通って問題を認識されている部分も
多く、今後の安全保障政策がどのように展開さ
れるか興味を惹かれました。この政策が、これ
までのように与野党という壁が恣意的に構築
されるのではなく、むしろ協力的に推進する体
制が出来ないものかと考えさせられる点も有
りました。
それによっては、日本にとって、新しい形の
「安全保障戦略構築」という期待も膨らむので
はないでしょうか。防衛計画の大綱の中に、安
全保障の戦略的提言が盛り込まれ、さらに、大
綱をベースにした様々な制度改変が行われて
いくことが望ましいのではないか。学者的な思
考でありますが、そこに、新たな道筋が敷かれ
て行くことを期待したいと思います。そこに、
本シンポジウム開催の趣旨に照らし合わせて、
強い期待を持ちたいと思います。有難うござい
ました。
寺田稔先生略歴:
誕生:1958 年1 月 24 日(広島市)
、寺田家祖父寺田豊は(株)ミカサ創始者で広島市議会議長、広島県議会議員を歴
任、又寺田家は元外務大臣池田行彦の生家・粟根家と親戚関係、妻慶子は首相池田勇人・満枝夫妻の孫、政治家池
田行彦の姪。
37
学歴:1980 年東京大学(法学部)
・ハーバード大学院(公共政策学修士)
職歴等:1980 年大蔵省入省、主計局・国際金融局・理財局・銀行局・官房広報室長・財務省司法/警察担当主計官・
防衛担当主計官、滋賀県長浜税務署長、徳島県総務部長、在ワシントン日本国大使館書記官、内閣府参事官、2004
年退官。寺田不動産(株)取締役、(株)共和ビル取締役、(株)ミカサ顧問を経て政界入り。
議員歴:2004 年池田行彦議員死去に伴う補欠選挙で初当選(広島 5 区)
、当選 2 回。2007 年 防衛大臣政務官(安倍
改造内閣/福田内閣)
、自民党国防部会部会長代理、自民党行政改革推進本部幹事。朝鮮通信使が訪れた縁故地
における日朝・日韓の相互交流、相互友好親善促進を目的とする朝鮮通信使交流議員の会の幹事、日本の安全保
障に関する宇宙利用を考える会副委員長、宇宙開発促進特命委員会事務局長、原爆議員懇代表世話人、広島国際
がんセンター代表発起人、日本文化・伝統発展研究会代表幹事など。
政策:地域経済の活性化・地方分権の推進・防災・治安対策など住民の安全確保・子育て支援と高齢者の安心確保・ゴ
ミゼロ社会の実現など美しい環境の創造。
長島昭久先生略歴:
誕生:1962 年 2 月 17 日 (横浜市)。
学歴:1990 年慶應義塾大学大学院博士課程中退(法学修士)、米国ジョンズホプキンス大学大学院(国際関係論修士)。
職歴等:米・ヴァンダービルト大学客員研究員、石原伸晃衆議院議員公設秘書、米国外交問題評議会上席研究員、東京
財団主任研究員、国家基本問題研究所理事。慶應義塾大学大学院非常勤講師(国家安全保障政策担当)、中央大
学大学院公共政策研究科客員教授。大前研一の平成維新の会創設に参加、慰安婦問題と南京事件の真実を検証す
る会に参加。1996 年第 3 回読売論壇新人賞で「安全保障のビッグバン」が優秀賞。
議員歴:2003 年、第 43 回衆議院議員総選挙初当選(東京 21 区:民主党公認)、当選 2 回。民主党「次の内閣」民主
党前原代表時「次の内閣」の防衛庁長官。衆議院安全保障委員会野党側筆頭理事、拉致問題特別委員会理事。イ
ラク復興特別委員会、武力攻撃事態対処特別委員会、文部科学委員会所属。党内の安全保障政策の取りまとめを
担当。小沢一郎代表の下「次の内閣」防衛庁長官として留任。2006 年9 月より、外務委員会理事、外交・安全
保障担当の政策調査副会長および国会対策副委員長に就任。現在、副幹事長。
政策:防衛庁の省昇格法案の審議では、法案賛成に向け党内論議をリードし防衛省内の信頼を獲得。保守の立場から、
野党共闘に反対。「生活者の利益に軸足を置きつつ、さらに徹底した。改革を標榜する保守層へ食い込むような
政策立案や運動を展開すべき」と主張。2006 年の沖縄県 知事選で民主党も含む野党統一候補となった糸数慶
子が米軍基地反対派であるため「共産党と変わらない」と批判、党執行部に対し糸数候補の信頼性を損ねる発言。
糸数が落選すると「野党共闘路線は破綻した」として、教育基本法全部改正案などの審議拒否を止め、「面舵い
っぱい」に右転換を示唆。
「憲法」
:改正に積極態度。
「安全保障」
: 在日米軍が制空権を握っている「横田空域」の返還。再軍備。日米対
等の同盟関係構築。
「北朝鮮」
:拉致問題や大量破壊兵器問題などを解決するため、北朝鮮に対する強力な経済制
裁と日朝平壌宣言の白紙化を主張。多国間協議で取り組み、アジアに「不戦の共同体」を構築。
「中国」
:インド
やASEAN諸国、ロシアなどと協力し、中国に対日政策転換を作為。
著書:『日米同盟の新しい設計図-変貌するアジアの米軍を見据えてー』(政策研究シリーズ・日本評論社 2002 年)・
『日米同盟の新しい設計図―変貌するアジアの米軍を見据えて―第2版』 (日本評論社 2004 年)11 月・『国防の論
点』(共著:森本敏/石破茂・PHP研究所2007)
佐藤丙午先生略歴:
誕生:1966 年 3 月 5 日
学歴:1989 年筑波大学第一学群人文学類卒、筑波大学大学院地域研究科(修士)
、米国ジョージ・ワシントン大学大学
院政治学部(修士)
、一橋大学大学院法学研究科(博士)
。
職歴:1993 年防衛省防衛研究所主任研究官、2006 年拓殖大学海外事情研究所教授。
学会活動:日本国際政治学会、国際安全保障学会、アメリカ学会、米国 ISA(International Studies Association)
、
日本国連学会、日本安全保障貿易学会、日本公共政策学会、日本軍縮学会。
著書:“Nonproliferation After 9/11, and Beyond, ”Waheguru Pal Singh Sidhu and Ramesh Thakur, eds., Arms
Control After Iraq:Normative and Operational Challenges (Tokyo: UNU Press, 2007)、大芝亮編著『国際関
係入門』
(
「戦争と平和」ミネルバ書房 2008 年)
。
主要論文:
「防衛産業のグローバル化と安全保障」
(
『国際政治―グローバル経済と国際政治―特集号』第 153 号 2008
年)
、
「ブッシュ政権の不拡散政策」
(
『海外事情―ブッシュ政権の八年間の総括―特集号』第 56 巻第 12 号 2008
年)
、
「オバマ政権の外交・安全保障政策とアジア」
(
『海外事情―オバマ政権の外交・安全保障政策の展望―特集
号』第 57 巻第 2 号 2009 年)
、
「2008 年大統領選挙とアメリカ政治:民主党バラク・オバマ政権の誕生と国内政
治」
(
『報告』2009 年)
38
誌上講座「文化と人々の個性形成―米国の団体スポーツ文化―」
イスラム教は、7 世紀にマホメットによってキ
リスト教から別れて生まれました。マホメットは、
荒れ野で放牧生活をしていたアラブの民に「生存
の知恵」を教義として与えたのです。放牧民族は
定住の地を持っていません。羊が食べる草が有り、
水が湧き出し、放牧できる土地へと移動しながら
生活します。大集団は、小集団が広大な地域に分
散した状態で存在するわけです。小集団の集合体
である大集団を束ねていくことは、小集団の存在
位置や人数、羊の頭数まで把握することにつなが
ります。これは、広大な荒地、沙漠の環境を考え
ると極めて困難な統制です。今もって、かの地で、
まとまりの着かない衝突が繰り返されることは、
歴史、環境、民族の個性が分かれば納得できます。
マホメットは、生存のための原則を教えました。
小集団の結束と数を確保するために「一夫多妻」
を、城砦のない集団の自衛のため、不意急襲から
身を守るために「酒を飲んではいけない」
、定住
できる環境にいないから、定住地で飼育しなけれ
ば育たない「豚を飼いその肉を食べてはいけな
い」と教えたのです。
このように、文化は、その個性が形成される源
があって、そうなる理由があります。そこに住む
人びとの性格も又同様で、アイデンティティーが
求心力となった集合体が民族であって、その個性
の発揚を民族主義(ナショナリズム)と呼ぶわけ
です。
インディアンと呼ばれたのは原住民でした。
アフリカから連れて来られた黒人奴隷は南部
に集中していました。主導権を握っていたのは、
ヨーロッパ諸国から新天地を求めて北米大陸
にやって来た白人でした。白人たちの多くは、
ヨーロッパの母国を捨てて来た、反体制派や一
攫千金を夢見る人々など、白人たちだけでも、
母国、言語、宗教、生活習慣が異なる多岐多様
な出身の人々でした。このように米国に属し、
米国人となっていく民族、人種は種々雑多でし
た。
異なる特徴を挙げてみます。肌の色は、赤(イ
ンディアン)
、白、黒、黄色でした。言葉は、
バベルの塔を建て、神に近づこうとした民が全
て異なる言葉で話さなければならなくなった
時以来1、数え切れない種類の言語が地球を覆
いました。地球上あらゆる地域から人々がやっ
て来るアメリカでも、同じように言語の博覧会
状態でした。宗教は、例えば、キリスト教だけ
でも、旧教(カトリック)をはじめ、勢力的に
優越していた新教(プロテスタント)があり、
ギリシア正教、ロシア正教などがあって、それ
らは、更に修道会や教義によってさらに細かく
分かれていました。
米国の独立は、
「自由」を錦の御旗に押し立
1
バベルの塔:旧約聖書の「創世記」11 章。ノアの物
語の後、アブラハムの物語の前。もともと同じ 1 つの言
葉を話していた人々は、シンアルの野に集まって、煉
瓦とアスファルトを用い、有名になり、人々が全地に
散るのを免れようと考えて天まで届く塔を建築。神は、
この塔を見て、言葉が同じことが原因であると考え、
人々に違う言葉を話させるようにしたところ、人々は
混乱し、世界各地へ散って居住。「創世記」は、バベ
ルの塔の名前を「混乱」を意味する「バラル」と関係
付け。創世記中で、バベルの塔の物語は世界にさまざ
まな言語が存在する理由を説明。同時に人々が「石の
代わりに煉瓦を、漆喰の代わりにアスファルトを」用
いたという記述から、古代における技術革新について
触れながら、人間の技術の限界を指摘。
アメリカ合衆国(以下「米国」と言います)を
考えて見ます。1776 年に建国した米国は新しい
国民国家です。この「新しい」という意味は、フ
ランス革命に発生する国民国家が民族的に同じ
仲間が作り上げた国家であることに対比して言
うことにしました。ひとつの民族が一つの国家を
形成するということが普通に考えられて来まし
たから、米国が「合衆国」と呼び名を付けたとお
り、その国家は、多数の民族、人種が集まって出
来上がった「新しい国民国家」となりました。
39
てたのですが、実体は、白人(White)
、アング
ロサクソン(Anglo-Saxon)、プロテスタント
(Protestant)の人々、即ち、
「WASP」と呼ん
だグループが優越して実権を握りました。最初に
独立した十三の州2にはカトリックが盛んな州も
含まれていましたが、それは、白人であったから
受け入れられたわけです。当然、奴隷制度や、原
住民排除至隔離政策、有色人種差別が厳しく行わ
れ、有色人種は、白人と差別されて、居住区、施
設内分離、公共輸送機関の差別化、教育機関の区
分の規制を受けるよう定められていました。その
残滓は現在でも有ります。
米国では、第二次世界大戦において、黒人は、
白人よりも極めて戦闘熾烈、過酷な戦場へ送り込
まれました。従って、恐らく肌の色別人口比によ
る戦死者の比率を示す数値は、黒人の戦死率が圧
倒的に多くなると言われます。それにも関わらず、
米国に受け入れられ、真の市民権を獲得しようと
「米国人として勇気ある有色人種の軍人」として
名を馳せたのが「日本人二世部隊」でした。今日、
第二次世界大戦の戦友会が有り、集会が盛んです
が、黒人と白人が一緒になった第二次世界大戦以
前の戦友会について耳にし、目にしたたことがあ
りません。
2001 年 12 月 8 日(米国では 9 日)
、ニューオ
ーリンズ市内のアイゼンハワー・メモリアルと近
傍のコンベンション・センターで「ノルマンディ
ー『Dデー3』シンポジウム」が開催されました。
2
マサチューセッツ、ニューハンプシャー、ニューヨーク、
コネティカット、 ロードアイランド、ペンシルヴェーニア、
ニュージャージ、メリーランド(カトリック)
、デラウェア、
ヴァージニア、ノースカロライナ、サウスカロライナ、ジョ
ージアの各州
3
戦略上重要な攻撃もしくは作戦開始日時を表す際にしばしば
コンベンション・センターの大ホールで「バタ
ーン『死の行進』ベテランズ(退役軍人)
・オ
ーラル・ヒストリー」が行われましたが、黒人
の聴衆が一人も居ませんでした。
ニューオーリンズ大学の学生がエスコート
してくれたので「何故」と問いかけてみました。
「死の行進」で知られるバターンでの米国人捕
虜虐待を語り、
「日本人を徹底して批難する」
このセッションに黒人が居ないのは、
「米国の
白人が、第二次世界大戦で、黒人を差別し、戦
死が必至の戦場に送り込むなど、酷い差別と虐
待をした」
、
「だから、米国の白人には、米国の
黒人の前で、日本人を批難する資格は無い」の
であって、黒人を入場させるとセッションが成
り立たないし、そこでは必ず喧嘩が起こってし
まうのだそうです。キング牧師の運動以来、多
くの黒人たちは白人から受ける差別に対して、
非暴力で忍耐し、抗議して来ましたから、南部
(ディープ・サウス)では、いまだに、黒人の
方が、無用の争いの場を避ける性癖が身に付い
てしまったのかもしれません。
イスラエルとイスラム国家の対立は、武力行
使を伴う紛争に発展することにおいて真に顕
著です。米国の空軍大学の事例ですが、イスラ
エルからの留学生がゼミなどで発表する時に、
イスラム圏の留学生の姿が見えなくなります。
後からその理由を聞いたところ、
「対立の原因
は主張が違うからだ。聞けば腹立たしくなる。
議論にならないから武力衝突にエスカレート
する。だから、このように同席する機会が多い
場合、イスラエルの連中が何か発言すると分か
っていれば、その場に居合わせないことが賢い
やり方だ。米国での留学に当たって、本国から
もそう指導されている」ということでした。
用いられた米国の軍事用語。語頭のDの由来については諸説ある
が、一例として漠然とした日付を表すDayの頭文字という解釈。
歴史上最も有名なD-デーは1944 年6 月 6 日であり、これは第二
次世界大戦中にナチス・ドイツ占領下のヨーロッパに連合軍が
侵攻を開始した「オペレーション・オーバーロード(ノルマン
島国は、地続きに国家同士、民族同士が対
立する経験を持つことがありません。地続きの
国境を境に、或いは、同じ国内で、四六時中、
顔を合わせれば敵(カタキ)同士の感情に捉わ
ディー上陸作戦)」の決行日。最終的に、300 万人近い兵員がド
ーバー海峡を渡ってフランス・コタンタン半島のノルマンディ
ーに上陸。史上最大の上陸作戦、作戦後 60 年、この規模の上陸
への空爆と艦砲射撃、敵前上陸と連続。ルマンディー地方の
作戦は未曾有。作戦は夜間落下傘部隊降下で開始、上陸予定地
制圧は、ドイツ軍の抵抗により所要二ヶ月以上。
40
れる環境に居ることは、大変深刻なことです。
米国の場合に戻ります。米国の建国前後の対
立は、移民と原住民の対立、抗争だけではなく、
移民同士が争うことも自然であったかと思いま
す。縄張り争いは、武器を持って命がけで、自分
の、又、自分たちの権利を守り、領域を拡張しよ
うと集団的な武力衝突に至りました。米国の建国
は、特殊な「新しい国民国家」の建設という意味
合いでは、安定した秩序が生まれるまで、軍事史
上、内戦として最大規模の市民戦争(南北戦争)
を経なければなりませんでした。
国内における異民族間の対立、或いは、争いの
沈静化が進むにつれて、米国には国家としての独
立意識が強まっていきました。国民国家が単一民
族によって成り立っていても、多民族、多人種が
寄り集まって成り立っていても、国家への求心力
は、国民が抱く国家への愛着、即ち、
「愛国心」
と、国民同士が仲間であるという意識、即ち「同
胞意識」が大切な礎です。究極には、国家のため、
同胞のために、故郷、家族、仲間を侵害する脅威
から守ろうと、命がけで戦う忠恕の心が求められ
ていったのです。
そもそも、米国は、極端な言い方が許されれば、
他人の土地を分捕って、気に食わない者同士が集
まって、その上、優越感と劣等感が共存する集団
をまとめて一つの国を作ることに挑戦したわけ
です。しかも、その背景には、建国の精神4に「自
由」が掲げられているという二律背反がありまし
た。このような環境において、米国は、仲間意識
を高揚して、国を新たな国民国家として成熟させ
るという宿命を背負って行くことになったわけ
です。それは、時代を経た現在も、未来も、その
宿命故に、アメリカンドリームを求めて来る世界
4 アメリカ独立宣言:全ての人は平等に造られ、おのおの造物主
によって一定の譲ることのできない権利を与えられている。こ
れらの権利の中には、生命・財産及び自由が含まれている。こ
れらの権利を確保するために人類の間に政府が組織せられ、従
って政府はその正当な権利の根拠を国民の同意に有する。いか
なる政府でも、前に上げたような目的を破壊するものとなった
場合は、人民はこれを改廃し、その安全と幸福とに適すると認
められる主義を基礎として新しい政府を創設する権利をもつ
(トーマス・ジェファーソン)
41
中の人々の移民を拒み得ない現実であります。
いわば一種の実験国家が、その形態を米国のア
イデンティティーと化したのが「合衆国」であ
ったと言えます。
米国の、さほど長くは無い歴史の始まりの頃
から、人種、民族が多岐多用にわたるバラバラ
な集団を一つの国、一つの旗の下にまとめてい
くために、好都合で効果的な団体スポーツが生
まれました。そのスポーツの個性には、次のよ
うな条件が備わっていたのです。
勝利を目指して、多くの誰でもが参加出来る
こと、それは一人ひとりの長所、オールラウン
ドでなくても、何か一つできれば、それを生か
すことが出来るということでもありました。走
る、投げる、捕る、ぶつかる、跳び上がる、打
つなど、それぞれの分野で、人より優れていれ
ば、そのスポーツのメンバー(選手)として大
事な役割を与えられます。
そして、より多くの選手が参加の機会を与え
られるように、選手の交代を頻繁に行えるとい
う特徴を持っていました。このことは、選手の
長所がゲームの展開に応じて活かされるとい
うことにつながります。
敵と味方が分かれて戦うゲームでは、攻守の
機会が相互に、公平に与えられることが約束さ
れることが必要でした。従って、一定のルール
によって条件が満たされれば、攻守を交代して
ゲームが進められます。
こうして、ゲームを進める前提が出来上がり
ますと、作戦、戦術というテクニカルな面の集
約が行われます。一人ひとりの個性をどのよう
に組み合わせるのかということになります。こ
れは、それぞれの選手を指揮する監督が組み立
てます。ところが、ゲームの流れが変われば、
この作戦という、戦いのテクニカルな部分を組
み立てなおす必要が生じます。人種が多様であ
りますから、動き回ってプレーしている選手に
戦術の変更を伝えて、ゲームの流れを有利に導
くために、ゲームの流れの中で相互の意思を疎
通することは大変困難です。そのため、一旦ゲ
ームの流れを止めて、選手に作戦を徹底し直さ
なければならないという不都合が生じました。
アメリカ合衆国の人々はこのゲームの中断を、
中断ではなく、ゲームの流れの一つとして取り入
れました。こうして、
「タイムアウト(一時中断)
」
がルールとして許されるようになったわけです。
このタイムアウトの時間は、監督が、選手一人ひ
とりに対する指導と、ゲーム全体の組み立ての徹
底や、作戦の変更を言い渡すために充てられます。
ところが、選手に指示を伝える言葉が一つの共通
語であるとは限りません。このために、全員が揃
って同じ理解が出来ないという問題が発生し、通
訳を張りつける必要が生じました。
この問題を解決するために採用された手段の
一つが「身振り、手振り」で意図を伝えることで
した。それは、今日、
「サイン」と呼んで、言語
を色々な形で伝える信号となりました。スポーツ
の世界では、サインが約束事によって組み立てら
れ、しかも、暗号化されるようになっています。
そのサインの進化は、選手の一挙手一投足に、ゲ
ームの中でプレーしている敵味方の全選手、見て
いる人々全てに固唾を呑む緊張感を与え、選手と
観衆の一体感を作るようになりました。
メンタルな面で、重視されるのが勝利への貢献
です。米国製スポーツに見られる究極の貢献の形
には、
「自ら犠牲を払うこと」
、そして、
「その犠
牲」が味方を勝利に近付ける有効な、且つ、美し
い「死に様」であることが期待されるようになり
ました。
その姿を見せる典型的スポーツが、野球です。
又、一時に大量の犠牲者を発生させるのがアメリ
カン・フットボールです。
野球は日本で最も人気のあるスポーツの一つ
ですから、物心ついた日本人であれば誰でもゲー
ムの局面をイメージすることが出来ます。ワンア
ウト、或いは、ノーアウトで三塁にランナーがい
れば、打者のヒットで 1 点入ります。ところが、
犠牲フライや犠牲バントでも成功すれば一点に
なります。この場合の一点は、1 点を争う緊迫し
たゲームでは特に、価値が高く評価されます。こ
の「犠牲」を厭わなかった行為、そして、犠牲を
払った選手が「自ら死を選ぶ」
、或いは、指揮官
42
の命令に従って潔く「死ぬ」という行為が「英
雄(ヒーロー)
」を作ります。攻める側に「一
死」が加わっても、勝利に貢献する度合いは極
限まで高められるわけです。日本では、この「ア
ウト」を「死」と言っているのですが、どのよ
うなきっかけで、誰が最初に、選手が「死ぬ」
という表現を使ったか分かりません。このメン
タルな部分を評価するには真に当を得た翻訳
です。
アメリカン・フットボールは、米国で最も人
気があるスポーツの一つです。野球は、米国以
外でも人気があるのですが、アメリカン・フッ
トボールは、米国以外の国々で余り人気はあり
ません。1 チームの構成が 11 人でゲームを進
めます。
攻撃側は、
4 回の攻撃権利を与えられ、
この4 回の攻撃機会に10 ヤード前進できれば、
継続して 4 回の攻撃権を与えられます。敵陣に
ボールを運び込めばタッチ・ダウンといってラ
グビーと同じように得点となります。この時、
攻撃側は、攻撃専門の選手でチームを編成しま
す。
相手側は、同じく 11 人の防御専門の選手で
編成され、攻撃の進路を妨害します。敵方の 4
回の攻撃で 10 ヤード前進させなかった場合、
或いは、ボールを奪って攻撃を阻止できれば、
攻撃権利を得ることになります。攻撃に転ずる
時には、攻撃専門の選手と全員が入れ替わりま
す。
攻撃側の戦術は、ボールを如何に 10 ヤード
進めるか、相手のエンドへ持ち込むか、敵に妨
害されず、敵にボールを奪われず攻撃が成功す
るように、
11 人個々に与えられた動き
(プレー)
を成功させることです。敵防御陣の隙を突くよ
うに、チームで最も脚力と、キャッチングに優
れた選手(ランニングバック)にボールをパス
して走らせます。クォーターバックは、ボール
を投げて、ランニングバックに確実にキャッチ
させ、10 ヤードの前進を獲得するか、一気に
ゴールまで走らせるか、敵方の組織だった防御
の隙を一瞬にして見抜かなければなりません。
このフォーメーションを成功に導く専門の選
手がクォータ-バックです。
防御側は、ランニングバックとクォータ-バッ
クの動きをつぶすのが第一で、二番目の役割が攻
撃側の進路を妨害することです。ボールがパスさ
れる直前には、攻撃側の 9 人が相手防御陣に体当
たりして妨害を阻止します。これは、進路をあけ
てランニングバックとクォータ-バックのプレ
ーを成功させるための特攻隊です。
防御側は、11 人全選手が攻撃側に体当たりし
てプレーを潰します。攻撃側の 9 人の体当たりも
有りますから、一瞬の肉弾戦が、一回一回の攻守
ごとにおきるわけです。フォーメーションを徹底
するタイムアウトは、攻守の間隙の都度にセット
されています。簡単に言ってしまえば、
「特攻隊」
同士の勝負です。総じて、得点して勝利するため
に犠牲者を出すという戦術であり、その精神が尊
重され、昂ぶるわけです。
攻撃機会 4 回の合間というよりも、試合を通し
て必ず、一回一回の攻守の都度に、試合の進行が
止められ、攻撃・防御双方の選手が監督、コーチ
から指示を受け、選手一人ひとりの役割を確認し
ます。
「アメリカ合衆国」を考えた場合、試合を
中断して、選手に作戦を徹底させることには特別
の意味が有ります。アメリカ製のスポーツという
意味では、野球も、バレーボールも同様です。米
国を構成する米国民の出身母国、民族、人種、宗
教、言語の多様性は個人を尊重し、また優先しま
す。それは、群れを作ったとき、当然、まとまり
を悪くします。状況の急変に対して、群れごと対
応することを困難にするでしょう。ですから、ア
メリカン・フットボールのように複雑な試合展開
(フォーメーション)を成功させるため、ゲーム
の進行を中断して、
「何回もの任務確認と思想統
一」が出来るように設定したと説明できます。こ
れが、新しい国民国家を形成するに際して、求め
る国民国家意識を恣意的に育むスポーツを創り
出したとすれば、誠に恐るべき無意識(サブコン
シアスネス)化であると言えるでしょう。
サッカーは、ゴールキーパーを除きますと、オ
ールラウンドの優れた能力が求められます。それ
は、ゲームの展開に際して、試合の中断が少なく
ダイナミックであること、状況の変化に戦略的、
戦術的に即応することが求められること、全選手
43
が連係プレーの連続に反応しなければならな
いこと、そして、個人技のミスがゲームの流れ
を瞬時に一変させてしまうことなどが理由と
なります。
他方、アメリカ製スポーツには、走るのが早
い、体当たりが強い、速い球を投げる、遠くま
で投げられるといった、どれか一つだけ優れて
いる能力を受け入れる余地があります。局面の
変化に対応して、ゲームを中断しても「一芸に
秀でた選手」を投入します。サッカーの場合、
ティームのリーダーには、意図的にゲームを中
断する権限が与えられていません。勿論、サッ
カーでは、選手に対して、いったんフィールド
に立てば、最後まで終始、間断無くプレーする
ことが求められます。
野球のように投・打・守・走いずれでも、
「優
れた個性があれば活躍の場が与えられる」とい
うことは、誰でも、その特技を生かしてヒーロ
ーになれます。分けても、犠牲が目立って尊重
されます。日本で言えば、
「討ち死にが犬死に
ならない」
、まさに「一死」を必然とする命が
けのプレーでチームの勝利に貢献することを
最善としていることになります。その行為を奨
励することが、意識せず「サブコンシアスネス」
を育て、
「国家にも通ずる貢献の意識に転化」
していくのが、米国の「合衆国」たる所以です。
ここまでを整理します。アメリカ合衆国製の
スポーツの代表的特徴には、
「誰でも交代で参
加できるし、ヒーローになれる」
、
「戦術、戦略
は、ゲームの流れを中断して選手に徹底する」
、
「勝利のために、選手に『死』という犠牲を求
める」
、
「攻守の機会が公平に与えられる」があ
ります。
これらは、国が国民に求める国家意識と共通
の感性でもあります。国民は全て国家に属して
います。国は国民に平等な権利を与えます。国
は、国民を保護する他方で、国の主権及び国益
の維持に関して国民の貢献を期待し、時には犠
牲さえ求めます。それはフランスに起きた市民
革命以来、伝統的な近代国民国家の国民にとっ
ては、国に対する思いが形成されるのが自然で
あり、国に尽くすことが当然と捉えられて来ま
した。それは、単一の民族、人種、言語、宗教な
ど、共通のアイデンティティーによって形成され
ている国家の国民国家意識が、国家の成立時にお
いて、コラボレーション(同志意識)が生じ同一
化されるからであると言えるからでしょう。
繰り返しますが、海を越えてアメリカ大陸に移
って行った人々のアイデンティティーは、民族、
人種、言語、宗教など、個性の組み合わせまで考
慮すれば、それらは、あまりにも多様でありまし
た。フランス革命を近代国民国家形成の典型とす
れば、アメリカ合衆国は、十三州の独立宣言から
始まった、異質な「合衆の国民国家(United
States)
」でありました。アメリカの場合、実
体として WASP の排他的合衆国であった時代
がありました。第二次世界大戦では、その思想
があからさまであって、黒人を筆頭に有色人種
アメリカ兵がより過酷な戦場に送りこまれま
した。今日、アフリカにルーツを持つ黒人大統
領が誕生するまで、建国以来、130 年余も時間
がかかっています。
このように考えますと、アメリカ製の団体スポ
ーつが持つ特徴の意味合いは、真に深遠である
といえるでしょう。
(文責:事務局)
―海上自衛隊のソマリア派遣と行動の法的制約議論こぼれ話―
私自身がヴェトナム戦争中、米海軍艦艇の艦長としてヴェトナムに派遣された際、ボートピ
ープルに遭遇したことをお話しよう。
海軍の戦時規定では救助できない。しかし、人道的には無視できない。選択肢は人道を優先
することであった。一つは、艦長の責任において決心することであり、一つは、指揮系統で許
可を仰ぐことであった。難民の状況にリスクがあった。敵性難民か、純粋の難民かの識別が出
来ないことである。まさに、人道を優先し、生命の保護、海難の危険からの回避のため救助を
決心した。
同時に、上位指揮官からの承認を得るには、少々時間を要したが、ボートピープルが危険な
立場に陥るほどではなかった。
米軍では、行動規定、戦時法規、海軍内の戦時準則など、法律が系列的に整備され、しかも、
責任の所在を明示している。それらは、状況に直面する指揮官の臨機応変の決心を助け、責任
を果すことを助けているのである。
日本において、法律の整備が推進されていることは結構なことであるが、その最中にも、そ
の結果を待てない実働部隊の隊員がいることを忘れてはならない。これは、武器の使用、集団
的自衛権の行使という点で、行政が最も心すべきことである。
(ジム・アワー博士とのラウンド・テーブル、平成 21 年 6 月 3 日、日本戦略研究フォーラム会議室)
ジェームス・E・アワー(James E. Auer)氏:マルケット大卒、タフツ大学フレッチャー法律外交大学院
PhD。
『Rearmament of Japanese Maritime Forces 1945-1971(蘇る日本海軍:日本語)
』時事出版。1963
~1983 年、米国海軍、長期日本勤務、海自幹部学校留学。1979~1988 年、国防総省安全保障局日本部長。
ヴァンダービルト大学公共政策研究所 日米研究協力センター所長。
44
研究開発再発見(連載4)
「開発での情報の共有化―『秘』の範囲を限定する―」
1.はじめに:
脅威に対応する防衛機器に付いては、その有
効性を確保するために、関連する情報が相手側
に漏れないように「秘」を設定する。しかし「秘」
の設定は、機器開発の流れに情報を限定する
「壁」を作ることをも意味する。この結果、開
発に障害(場合によっては開発を無意味にす
る)を発生させる危険性がある。一般技術に於
いても、企業利益を守るために「ノウハウ」な
どを競合企業に散逸させないように「社外秘」
などを設定する。ただし「社外秘」では、特別
な場合を除き、開発作業に支障を来たさないよ
うに限定範囲での設定とし、作業の有効性を優
先する処置がとられる。
研究員 江島紀武
時の有効性が検証されていなければ、現場で其
の機器に依存するという決断をパイロットな
どが行えない特質がある。
2.エピソード:
「レーダ機器」の開発を経て、
「EW機器」の
開発を経験した。EW機器は、レーダ機器と違
い、危機に際してのみ機能発揮が期待される。
従って、平時での機能発揮場面は殆どない。有
効な機器開発には、
「予測される危機」に関す
る環境を設定し、開発後の機能&性能の確認を
も必須である。開発企業側に、機器の機能&性
能を確認するために環境を模擬する電波シミ
ュレータが必須であり、社内設備として当該電
波シミュレータなどの導入を行った。我が国に
は当該機能のシミュレータを開発する能力を
保有する企業はなく、米国のシリコンバレーを
主拠点とする大企業に特別仕様の製品を発注
し、機能と性能を確認した上で工場に整備した。
しかし周波数スペクトラム拡散(チャープ)信
号の模擬に技術課題があったので、当該信号の
電波模擬特性を比較した結果、より良い技術を
保有する米国東海岸を拠点とする“小企業”へ
2 号機の電波シミュレータを発注した。仕様調
整と出荷検査などを行うため、東西海岸の両企
業を訪問した中で、米軍によるEW機器の調達
に関わる基本形態(①~③)を知ることができ
た。
①:機器開発の仕様に対応を必要とする電波
の具体的諸元が含まれる。
②:議会直属のGAO17 (U.S. Government
Accountability Office)が、優れた有効機器調
達のため、
防衛機器での「秘」の意味と影響に付いて、
電子戦 14 (以下ではEWという:Electronic
Warfare)機器の開発を主体として記述する。
防衛機器は有効性を保有していることが、それ
が活用される条件である。有効性が不確定であ
る機器に対しては、機器使用者はそれに依存す
ることを逡巡する。例えば、ベトナム戦争では、
EW機器活用に生じた米軍パイロットの葛藤が
あったという。高い密度でSAM(Surface to Air
Missile)によって防御された敵地に侵入せざる
を得ない戦闘機パイロットは、旋回性能の限界
を制約するPOD型のECM15機器を搭載するか、
または其れを搭載せずに最大旋回性能で戦闘
に臨むか、という命を掛けた選択を行うことと
なった。開発されたPOD型ECM機器は準備さ
れたが、それを搭載した状態の戦闘機は旋回性
能を低下させるために、その機器はなかなか使
用されなかった16という。EW機器には、使用
14 電波での探知、追尾、そして、其れ等を避けるなど
の電子の戦いの総称であるが、ここではレーダ機能を
除いた、脅威を探知する警報機能と対応する電波送信
などを行う防御機能を言う。
15 Electronic Counter Measure で電波などを放射し
て搭載母体を脅威から守る機器
16 「Airpower in TREE WARS」General William W.
Momyer 著 Air University Press 刊
17
但し、議会直轄機関であるために国策的行動も行う
ようである。空軍が次期給油機を欧州エアバス社の
A330 改修機に決定したが、ボーイング社の「エアバス
社の大型給油機は、より小型の提案機より燃料を多く
必要とする」という理由での訴えに応じ、選定のやり
直しを空軍に命じている。
45
使用環境
使用環境
機器
運用者
運用者
機器
A:運用者との関連が主体
B:脅威環境との関連が主体
図 1 使用環境での機器の位置付け概念
能力発揮の主体となる。
対応環境特性が不明な状態で開発されると、
実稼働で能力を発揮する可能性は極端に低く、
環境把握程度が機器の機能&性能の有効性を
決定する。
また環境対応が重要な“B”は、環境が時間
及び作戦などで其れ程は変化しない「ケースa」
と、極端に変化する「ケースb」とに分類でき
る。
「ケースa」
(其れ程は変化しない環境)
例えば、海水環境とか陸上環境である。人
的要因での変化は少ない。
「ケースb」
(極端に変化する環境)
例えば、兵器の特性(対応対象の電波機器
も含めた相手側の開発による)と兵器配置の違
いなどで変化し、長期的変化と短期的変化が存
在する。
『孫子の兵法』19に戦闘する環境と敵の実態
を把握する重要性が示されているが、機器機能
の有効発揮のためには環境の逐次把握と逐次
推定が必須である。例えば、
“a”では海洋状況
があり、この環境測定は四季折々に深海調査機
能を有する海洋調査船20などが行う。
平等な競合環境を維持するべく活動している。
③:機能&性能確認のため、具体的な信号諸
元が開発企業に提供される。
従って、米国では脅威となる関連信号を確実
に探知する EW 機器を開発する企業は電波シ
ミュレータを保有している。
また納入された機器の機能&性能を確認する
ために、機器開発を発注する側も電波シミュレ
ータと模擬受信機器を整備している。新しい特
殊信号を脅威信号とした場合には、その特殊信
号の電波シミュレータ18をも迅速に開発しなけ
ればならない。
3.機器が使われる環境(使用環境)を機器開
発仕様に含める:
防衛機器は使用環境に対して異なる特性が
ある。この特性に合わせた運用要件と「使用環
境での要件」の設定が有効な機器開発の前提と
なる。使用環境での「機器の位置付け」に図 1
の 2 種類(A&B)がある。
A:実稼動では「運用者の操作」能力で、機
器の有効性が決まる。
相手との操作能力の差異が主体で、有効性が
決まる。予想した環境の差異が致命的ではなく、
使用環境での機器機能&性能は事前に予想でき
る。
B:
「使用環境」に対する機器自体の有効性が
19
中国春秋時代(BC450 年頃)の兵法書「彼を知り己
を知れば」が有名、電子戦関係者は必読
20 2009 年 3 月 8 日海南島南部海域で海洋調査実施中
の USNS IMPECCABLE (T-AGOS 23 ソナーアレ
ーも搭載 軍人 25 人と契約シビリアン 25 人が搭乗)
が中国海軍からの航行障害行動を受けた。
18:過去に米国企業と提携した形で電波シミュレータの
国産化を目指したが、米国側障害で頓挫した。
46
ロッパへの密かな侵入を行った24。また、米国で
は 1980 年代にイスラエルと平和協定を行ったエ
ジプトから、ソ連製ミサイルの関連レーダをEW
機器などの機能確認のために購入している。
「EW機器」は使用環境に依存し、また環境
は技術革新などで急変する
「Bのb」
に該当する。
このため、環境調査は「長期的には電子情報収
集機能21」で「短期的には電子偵察機能22」に
よって行う。長期的には機器開発に反映し、短
期的には機器パラメータに反映しなければな
らない。
長期的な環境調査情報が、厳格な「秘」に設
定され、全く活用できない場合には、危機環境
で有効性を発揮する機器を開発することは不
可能である。開発時に機器の重要な仕様内容と
なる環境情報は、各国でも厳格な「秘」には設
定されてはいる。しかし図 2 の「開発仕様で規
定が必須」の内容が開発者に提示され、有効性
発揮を期待されるEW機器の開発が可能とな
っている。開発者側に必要な環境情報を活用で
きる形態としている。4.環境調査と「秘」設
計の内容が有効な機器開発には必須:
EW 機器開発で環境に関わる情報を「秘」に
設定する場合は、意味のある機器インタフェー
スを
提示できるように開発者を「秘」取扱従事者と
するなどの機器開発状況などの条件を整える。
欧州に於いても、EW機器の確認を開発企業内
で行えるように各種工夫がなされている。使用
者を含めた者の生死に関わる機器の開発の流
れに障害を作らない「秘」設計が必須である。
「秘」度は最大 3 段階23の区分があるが、有効
な仕事が行える形態を維持するように「秘」設
計を行うことが有効機器の開発を可能とする。
図3は有効な機器の開発基盤となる仕様確定の流
れなどの概念である。環境情報獲得の努力が重要
で、欧米の情報収集努力には参考とする面が多い。
EWの例では、第二次世界大戦では英国がドイツ
軍のレーダの使用周波数を確認するために、ヨー
5.環境情報調査には徹底的な「仮説―検証」の
努力が大切:
EW機器は、
「いざ」という時にのみ必要であり、
その発揮能力は使用環境調査の程度と対応して
いる。その調査は、基本的には見えない(最新の
受信機で探知できない)信号を想像し、その信号
を把握する積りで努力を行い、その信号の存在確
認を確実に行うことが大切である。
EWでの調査不足例を戦歴で言えば、第二次世
界大戦で電波受信型の哨戒機警報装置(EW機器
の一種)を保有しているドイツの潜水艦(Uボー
ト)が、対潜哨戒機の出現を確実に探知できると
安心し、ビスケー湾を水上航行していた。しかし、
英軍の対潜哨戒機搭載のASWレーダが「m波長の
周波数からcm波長の周波数に上げていた」
ために、
潜水艦側が気付かない間に対潜哨戒機に探知さ
れていた。この結果、多くのUボートが対潜哨戒
機などにより撃沈された。これは「ビスケー湾の
十字架25の悲劇」と言われている。このような調
査不測の事態を避けなければ、貴重な投資を行っ
て警報機器を開発しても、役に立たない事態とな
る。
使用環境調査は、通常の厳格な軍事規制を超え
た、目的優先で実施しなければならないので、仮
想的試行の情報探知努力が必須である。この目的
達成を優先し、調査先進国の環境調査では、規格
外の機器(仮想した信号を試行的に探知する目的
24:ジェイムズ・リーソー著「グリーン・ビーチ・ディエ
ップ奇襲作戦」早川書房ノンフィクション
25 十字架はアンテナ概観形状:参
照http://www.uboataces.com/radar-warning.shtml
Uボートは英国の対潜機の捜索レーダのm波長電波を
探知できる十字型のアンテナを搭載していて、其の捜
索レーダの電波を探知しない間は安心して水上航行を
行っていた。このために対戦機の餌食となっていたが、
ドイツ軍の先端的な当該警報装置を搭載できていない
潜水艦は母港のブリストルを出港すると、直ぐに潜行
せざるを得なかったのでビスケー湾での生存率は高か
った。
通常の Elint 機能である。地上設備、航空機搭載設
備と艦船搭載設備が主である。
22:Tactical Elint 機能で、脅威と接近する危険があるの
で、戦闘機に搭載されている場合が多い。
23 :NATO
document: http://www.cfisac.org/Forms/nato.doc 参
照
21
47
で、規格外の手組みジャンク回路など)を搭載し
使用すること、そして、
「技術者が技術的に仮想
した測定を行い、仮想内容を検証するという努
力」を行っている。
我が国のマーケティング技術では、
“仮説―検
証”の実践者として、セブン&アイ・ホールディ
ングスの鈴木敏文会長が有名である。上述のよう
に、環境調査に関しても、
「仮説-検証」サイク
ルの積極的な実践が必須である。ただ、それでも
環境調査には不確定性リスクは残る。また技術進
化に応じ、圧縮技術適用などで信号レベルは低下
傾向にあり、調査測定が難しくなっている。調査
測定における未測定のリスクを最小限化する保
険として「ステルス特性向上」の追及がある。E
W技術者は機器を搭載する母体のレーダなどに
対する反射信号(σシグマと言っているが)の減
少を図ることを、防御のための発信信号を小さく
できるので、常に夢みていた。
「ステルス機、
「ス
テルス艦」の実現は此のEW技術者の夢の実現で
もある。
「秘」設計は、各種の防衛活動に大きな影響を与
えるものであり、開発などの有効性を左右するこ
とも念頭に、行われることが望まれる。
環境作成の情報
C:環境入力
環境作成の情報
機器
D:環境への出力
使用環境
開発仕様で規定が必須る
運用者
図 2 機器入出力インタフェースの概念
環境情報の調査
収集データ
調査情報の整理
機器の使用環境の優
先順位決定
仮説&検証
図 3 環境把握と機器開発の概念
仕様
機器の開発
48
機器機能&
性能の確認
「役 員 会 報 告」
◎ 平成 21 年度日本戦略研究フォーラム理事会・評議員会議事録
1
2
3
4
5
6
(1)
(2)
(3)
(4)
7
(1)
(2)
日時:平成 21 年 5 月 14 日(木)1300~1400 時
場所:東京都新宿区市ヶ谷本村町 4-1 ホテルグランドヒ
ル市ヶ谷 2 階「鼓の間」
出席者数:理事会 22 名(うち委任状 12 名)
・・・総数
25 名理事会成立 17 名、評議員会 18 名(うち委任状 12
名)
・・・総数 23 名評議員会成立 12 名
出席者(略)
委任状提出者(略)
審議事項
第一号議案 議長の選任
第二号議案 人事(理事長・監事の承認その他)
第三号議案 平成 20 年度事業成果及び収支決算
第四号議案 平成 21 年度事業計画及び予算
議事の経過の概要及び議決の結果
第一号議案 議長の選出
司会より理事会は、長野俊郎氏を、評議員会は、福地建夫
氏を議長に指名し、全員異議なくこれを承認した。
第二号議案
議長より、
「日本戦略研究フォーラム理事長代行・事
務局長・常務理事、二宮隆弘氏、及び、監事、清水濶(ひ
ろし)氏の辞任、中條高德会長が理事長兼任へ、事務局
長二宮隆弘氏が理事へ、常務理事長野俊郎氏が事務局長
へ、
政策提言委員田中伸昌氏が監事へ、
それぞれご就任、
新規には、政策提言委員へ、佐藤丙午氏、福山隆氏、 山
下輝夫氏、諸氏の就任」ついて説明が行われ、全員異議
なくこれを承認した。
(3) 第三号議案
議長より事務局総務に対して、平成 20 年度事業成果及び
収支決算の報告が求められ、事務局が説明、全員異議なく
これを承認したが、現下の厳しい経済情勢、制度の変革な
ど社会環境の変化に伴う組織運営上の困難や障害を具体
的に明らかにし、これを克服する知恵をしぼるよう要望が
あり、全員異議なくこれに同意した。
(4) 第四号議案
議長より、事務局総務に対して、平成 21 年度事業計画及
び予算の報告が求められ、事務局が説明、全員異議なく
これを承認した。第三号議案に引き続き、合理的、経済
的、且つ効果的活動に係わる創意工夫が求められた。
8 議事録署名人の選任に関する事項(
議長より、本理事会の議事録をまとめるに当たり、議事録
署名人 2 名を選任することを諮り、林茂氏及び林吉永氏
を選任することを、全員異議なくこれを承認した。
◎役員会細部資料
○
第一号議案:平成 21 年度日本戦略研究フォーラム役員
等人事
・平成 20 年度(平成 20 年 4 月 1 日~同 21 年 3 月 31 日)日
本戦略研究フォーラム事業報告
1 役員の定期人事(継続及び辞任)
(1)辞任:
理事長代行・事務局長・常務理事:二宮 隆弘 氏
監 事:清水 濶 氏
評議員:村瀬 光正 氏
(2)就任:
理事長:中條 高德会長 兼務
理 事:二宮 隆弘 氏(理事長代行・事務局長・常務理事
から)
事務局長:長野 俊郎 氏(常務理事)
監 事:田中 伸昌 氏(政策提言委員から)
政策提言委員:
佐藤 丙午 氏(1966 年生・筑波大学第一学群人文学類
卒、筑波大学大学院、米国ジョージ・ワシントン大学
大学院、一橋大学大学院博士課程。防衛省防衛研究所
主任研究官、拓殖大学海外事情研究所教授)
福山 隆 氏(1947 年生・防大 14 期応用化学卒・ハー
バード大研究員・陸自富士教導団長・元陸将・(株)ダイ
コー専務)
山下 輝男 氏(1946 年生・防大 13 期機械工学卒・陸自
第 5 師団長・元陸将・(相)第一生命保険顧問)
2 ご逝去:理 事:神谷 不二 氏
3 その他:事務局の補充なし
○
平成 20 年度における事業報告。なお、
シンポジウムの開催、
機関誌の発行、研究会の実施は、NPO 日本戦略研究フォーラ
ムの事業と提携して実施した。
1
シンポジウムの開催
(1) 第19 回シンポジウム「日本の安全保障―二大政党の主張
―」:細部を機関誌第 37 号『季報』
(夏号)に掲載
(2) 第 20 回シンポジウム「東アジアにおける米軍のプレゼ
ンス―トランスフォーメーションの影響―」
:細部を機関
誌第 39 号『季報』
(新年号)掲載
2 『季報』の発行
第 36(春)号、第 37(夏)号、第 38(秋)号、第 39(新
年)号を各 1500 部発行
3
政策要望①「新型インフルエンザ対応」②「海賊問題対
応」③「景気対策とグアム島移転対応」
:細部を機関誌
第 39 号『季報』
(新年号)掲載
4
受託業務:細部を機関誌第 39 号『季報』
(新年号)に掲
載
(1)「2030 年頃の中国情勢が我が国の安全保障に及ぼす影響」
(2) 「世界的規模で広がる M&A アウトソーシングの
進展が我が国防衛機器産業に及ぼす影響の調査」
(3) 「平成 20 年度在日米軍施設周辺地域における交流
事業に関する調査」
(3) 「国際平和協力活動に係る教育・広報に関する調査研究」
5
研究会
第二号議案:平成 20 年度(平成 20 年 4 月 1 日~同 21
年 3 月 31 日)日本戦略研究フォーラム事業報告及び決
算
49
(1) 規則改正
ア「調査・研究の協賛」制度を新設
イ 「定例役員会の開催を 1 回/年」に改正
(2) 人事(就任)
ア 副会長:小田村四郎氏(評議員から)
イ 顧問:田中健介氏・鳥羽博道氏(新)
ウ 監事:清水濶氏(評議員から)
・川村純彦氏(政策提言委
員から)
エ 理事:佐藤正久氏(政策提言委員から)
・西川徹矢氏・長
谷川幹雄氏・山元孝二氏(新)
オ 政策提言委員:浅川公紀氏・勝股秀通氏・小松三邦氏・
土肥研一氏(新)
カ 研究員:安生正明氏・江口紀英氏・木島武氏・高永喆氏
(新規)
(3) 人事(退任)
理事:佐藤達夫氏(有難うございました)
(4) 人事(役員等の特例)
役員等が省庁大臣等公職に就任時、その在任期間中は、
自動的に役員等退任を慣例とすることにした。現在は、石
破茂農林水産大臣(副理事長)
、舛添要一厚生労働大臣(副
理事長)
、浜田靖一防衛大臣(政策提言委員)がそれぞれご
活躍中
9
会員の増勢
前 19 年度に続き激減化傾向にあり、運営基盤の弱体化が
加速、フォーラム維持を危惧。平成 21 年度より、運営基盤
の確保に関して特別の施策を考慮が必要
(1)
「米国大統領選挙前・後の日米関係」:ジム・アワー米国ヴ
ァンダービルド大学日本研究所長 2 回
(2) 「新型インフルエンザ対処」
:櫻井よしこ氏・国の対策に
係わる医師 5 名 2 回
(3) 「地域活性化のための提案」:1 回/月開催計 6 回
(4) 「防衛省の研究開発調査」:1 回/月開催計 6 回
(5) 「日・中安全保障討論」
:2 回/年
(6) 「海洋安全保障―The Arc of Freedom & Prosperity」
:
日独 2 回/年開催
(7) 「平成 20 年度防衛白書解説」
:防衛省白書室長
6
海外交流
(1)
中国訪問(国際友好連絡会)
(2)
中国招聘(国際友好連絡会)
(3)
台湾訪問(台湾政府)
(4)
ドイツ・ヘルムトシュミット大学教授訪日 2 回
(5)
受託事業海外調査(米国・英国・フランス・スウェーデ
ン・カナダ)
7
ホームページ
継続してホームページを掲載したが、平成 21 年 3 月 31
日、担当者の辞任により消去、新たにホームページを立ち上
げるまでやむなく休止
8
役員会
シンポジウム開催に合わせ理事会・評議員会を 2 回実施、
19 年度事業及び会計報告・20 年度事業計画及び予算、規則
の改正・人事に係わる事項、その他を審議、承認、又、各半
期末に副理事長会を開催、半期毎の活動状況を報告
・収支決算書(平成 20 年 4 月 1 日~同 21 年 3 月 31 日)
大中科目
(△:対予算減,単位:円)
予算額
決算額
差 異
備 考
Ⅰ.収入の部
1.会費収入
法人賛助会費収入
個人会費収入
2.協賛金収入
(19,300,000)
(13,780,000)
(△ 5,520,000)
18,300,000
12,900,000
△ 5,400,000
1,000,000
880,000
△ 120,000
(0)
(5,130,000)
(5,130,000)
0
5,130,000
5,130,000
(17,700,000)
(15,473,468)
(△ 2,226,532)
200,000
0
△ 200,000
14,000,000
15,473,468
1,473,468
3,500,000
0
△ 3,500,000
(8,000,000)
(820,000)
(△ 7,180,000)
協賛金収入
3.事業収入
諸会合会費収入
研究・調査受託収入
収益事業収入
4.借入金収入
長期借入金収入
0
0
0
短期借入金収入
8,000,000
2,510,000
△ 5,490,000
0
△ 1,690,000
△ 1,690,000
(0)
(1,638,283)
(1,638,283)
0
1,638,283
1,638,283
過年度修正
5.雑収入
雑収入
50
当期収入合計(A)
45,000,000
36,841,751
△ 8,158,249
前期繰越収支差額
0
9,934,721
9,934,721
45,000,000
46,776,472
1,776,472
(7,848,000)
(119,342)
(△ 7,728,658)
研究調査費
7,748,000
10,032
△ 7,737,968
普及啓発費
50,000
34,216
△ 15,784
図書資料費
50,000
75,094
25,094
(0)
(2,540,515)
(2,540,515)
0
2,540,515
2,540,515
(11,956,000)
(11,421,958)
(△ 534,042)
11,956,000
11,421,958
△ 534,042
(2,500,000)
(0)
(△ 2,500,000)
2,500,000
0
△ 2,500,000
収入合計(B)
Ⅱ.支出の部
1.自主事業費
2.協賛事業費
協賛事業費
3.受託事業費
受託事業費
4.収益事業費
収益事業費
5.管理費
(10,696,000)
(15,967,811)
(5,271,811)
人件費
4,380,000
8,666,955
4,286,955
事務所費
4,400,000
4,374,133
△ 25,867
諸経費
1,916,000
2,926,723
1,010,723
(0)
(0)
(0)
0
0
0
(11,200,000)
(15,114,000)
(3,914,000)
6.固定資産取得支出
什器備品購入支出
7.借入金返済支出
長期借入金返済支出
0
0
0
短期借入金返済支出
11,200,000
6,390,000
△ 4,810,000
0
8,724,000
8,724,000
(100,000)
(0)
(△ 100,000)
100,000
0
△ 100,000
(700,000)
(497,800)
(△ 202,200)
700,000
497,800
△ 202,200
45,000,000
45,661,426
661,426
当期収支差額(A)-(C)
0
△ 8,819,675
△ 8,819,675
次期繰越収支差額(B)-(C)
0
1,115,046
1,115,046
過年度修正
8.予備費
予備費
9.雑損失
消費税差額
当期支出合計(C)
○第三号議案:平成 21 年度日本戦略研究フォーラム事業計画(案)及び予算(案)
・平成 21 年度日本戦略研究フォーラム事業計画
(案)
1 方針
平成 21 年度、日本戦略研究フォーラムの運営は、現下の危
機的経済情勢下にあって、極めて厳しい環境に置かれる。し
かしながら、日本戦略研究フォーラムは、
「会員、及び、運営
財源獲得などの会勢維持」
、及び、当フォーラム設立の志と社
会的ステータスを損なうことなく、事態の悪化を局限し、運
営基盤の必要最小限度を堅持しつつ、安全保障に関わる政策
的寄与を重視した諸活動の推進に努めなければならない。
また、
「NPO 日本戦略研究フォーラム」が実施する「シン
ポジウム」
(2 回/年)
、機関誌『季報』発刊(4 回/年)との
51
平成 21 年度は、平成 20 年度からの繰越借入金を、余剰
の範囲で返済するものと
し、この結果を踏まえ、平成 22 年度予算において、返済計
画を立案する。
(6)人事
人件費の節減に努め、有能な非常勤を活用
3
業務の予定
(1) 調査・研究・提言活動
ア 自主、及び、共同―調査・研究・提言
(ア)自衛隊・在日米軍の駐屯地/基地における遊休地活用26
(平成 20 年~継続)
(イ)防衛省のR&D追跡27(平成 20 年~継続)
(ウ)海洋安全保障国際システム構築28(平成 19 年~継続)
(エ)文民統制概念の整理(平成 21 年度)
イ 受託、及び、助成―調査・研究
官公庁、諸事業所が委託する調査・研究に応募、入札競
争等に参加、受託する(年間随時―21.4.1 現在未定)
ウ 提言
(ア)海洋安全保障国際システム構築―フォーラムの共同宣
言29
(イ)陸自少年工科学校/海自・空自生徒制度の復活(案)
―教育の視点30
(ウ)国内外の情勢に対応して時宜を失せずテーマを設定し
実施
エ 調査・研究・提言活動の発信
(ア)
『季報』誌上・ホームページで紹介
(イ)提言は、内閣総理大臣、関係省庁各大臣に手交
(ウ)シンポジウム等、公開の場で報告、議論に提供
(2) 国際交流
経済的運営基盤の確立を優先し、国際交流活動を最小限度
に抑制する。但し、相互主義によって継続している中国と
の定期交流については実現の方向で検討を進める
ア 中国国際友好連絡会との被招聘・招聘(日本側は、退役
自衛官を優先)
イ ドイツ・ヘルムトシュミット軍大学(訪日交流)
(3) ワークショップ(21.4.1 現在の予定)
ア 国内外有識者を招聘して実施(10~20 名)
(ア)米国ヴァンダービルド大学ジム・アワー博士(2 回/
年)
(イ)防衛白書室長(9 月)
(ウ)中国防衛白書(4 月)
イ 市民有識者研究会「海自ソマリア派遣・文民統制・他」
・
研修(5~10 名)
(4) 役員会
年度前期「シンポジウム」開催に合わせて、定期「理事会」・
「評議員会」を開催する。
連携を密にし、これらの場を活用して、IT 時代に相応しい発
信・啓蒙啓発・提言・広報活動の拡張に供する。
このため、次の事項については、的確な実行、格別の創意
工夫を図る。
(1) フォーラムのステータス堅持に寄与する「質の高い調
査・研究・提言活動」
(2) 運営資源の合理的且つ効率的運用及び節減のための意識
高揚
(3) 常勤者のマルチロール化、及び、非常勤者の優れた能力
の活用など限られた要員による最大限の人的貢献を促進
(4) IT 時代に相応しいホームページの活性化、及び、役員等
への情報発信量の増加・質の向上
(5) 国際交流の促進と共同研究を督励
(6) 関係省庁との関係を強化して有効な情報収集、政策提言
に反映
2
重視事項
「運営基盤の必要最小限度を堅持」することは、
「優れた活
動を最低限度維持」できることでもある。このため、平成 21
年度は、日本戦略研究フォーラム運営の足腰を強化する意味
合いにおいても、
「必要最小限度の運営基盤」を、
「人的・財
源的」に見極める年とする。
加えて、平成 21 年度は、過去 10 年間の成果に重ねて、歩
みを止めることなく業務を推進しつつ、特に、財政的運営基
盤確保の体制を構築する喫緊の課題に挑戦する困難を克服し
なければならない。このため、更に次の事項を重視し、具現
する。
(1) 会勢の減勢を局限する。
脱会の申し出に対しては、最少限の関係維持(会費一口
個人会員)に留め、これまでの関係断絶を局限するよう努
める。この際、事務局長、及び、常務理事(総務部長)は、
可能な限り会員と直の接触を行い、支援に対するお礼と慰
留に努める。
(2) 現有財政源の堅持
「日本戦略研究フォーラムの管理運営上必要な最少限度
経費」確保の財政源は次に依る。これらによる管理運営の
ための年度収入額の不足発生は、次年度業務計画策定・予
算計上段階において先行的に予見し、充足の対策を講ずる。
ア 会費(法人会員・特別会員・個人会員)
イ 調査研究受託
(3) 運営財源の拡大
フォーラムの運営は、フォーラムの高邁な志と誇りを傷
つけることなく、運営基盤強化につながる財源獲得のため、
柔軟、且つ創造性に富んだ諸活動(所外における講演・フ
ォーラムにおけるワークショップ・研修など)
を促進する。
(備考)フォーラムの財政に対する寄与の多寡を問わず次
の基準により蓄積する。
ア 有料のワークショップ・研修など:諸経費
イ 所外活動:資料作成経費等として謝金のうち 30%
ウ その他自主調査研究活動協賛など:都度、基準を設定
(4) 管理運営経費削減
平成 19 年、及び、20 年度実施の「日本戦略研究フォー
ラム管理運営」の合理化、節減などの実績を整理し、更に
効率化、合理化、節減を図り得る余地の有無を見極め、管
理運営経費削減の限界値を把握する。
ア 電力量節減目標値(同上)5%
イ 印刷・コピー節減目標値(過去 2 年間平均値の)5%
ウ 通信維持費節減目標値(同上)5%
エ 運搬費節減(役員会交通費 40%抑制など)
(5) 借入金の返済
26
関連事業所識者を加え調査研究チームを編成、
毎月1回
(第
一水曜日)にワークショップ開催
27 関連事業所識者を加え調査研究チームを編成、
毎月1回
(第
二木曜日)にワークショップ開催
28 ドイツ・ヘルムトシュミット大学/TKMS(TyssenKrupp
Maritime Systems)/海洋政策研究財団(OPRF)と共同研
究、フォーラムを共催検討
29 内閣総理大臣に手交
30 日本における青少年の非行問題等を解決していく教育体制
の一環として自衛隊が貢献。本制度の優れた教育指導を北・
中・西の 3 箇所で実施、全国規模に拡大。
52
・平成 21 年度収支予算書(平成 21 年 4
大中科目
Ⅰ.収入の部
1.会費収入
法人賛助会費収入
個人会費収入
月 1 日~同年 3 月
前年度(20 年度)
予算額
31 日)
(単位:千円)
予算額
増 減
備 考
(19,300)
18,300
1,000
(10,950)
10,200
750
(△ 8,350)
△ 8,100
△ 250
(0)
0
(11,000)
11,000
(11,000)
11,000
(17,700)
200
14,000
3,500
(9,000)
0
9,000
0
(△ 8,700)
△ 200
△ 5,000
△ 3,500
(0)
0
(0)
0
(0)
0
(8,000)
0
8,000
(0)
0
0
(△ 8,000)
(0)
0
(500)
500
(500)
500
45,000
0
45,000
31,450
0
31,450
△ 13,550
Ⅱ.支出の部
1.自主事業費
研究調査費
普及啓発費
図書資料費
(7,848)
7,748
50
50
(480)
350
50
80
(△ 7,368)
△ 7,398
2.協賛事業費
協賛事業費
(0)
0
(6,780)
6,780
(6,780)
6,780
(11,956)
11,956
(8,500)
8,500
(△ 3,456)
△ 3,456
(2,500)
2,500
(0)
0
(△ 2,500)
△ 2,500
(10,696)
4,380
4,400
1,916
(13,920)
6,355
4,400
3,165
(3,224)
1,975
0
1,249
(0)
0
(0)
0
(0)
0
2.協賛金収入
協賛金収入
3.事業収入
諸会合会費収入
研究調査・受託・助成収入
収益事業収入
4.寄付金収入
寄付金収入
5.借入金収入
長期借入金収入
短期借入金収入
6.雑収入
雑収入
当期収入合計(A)
前期繰越収支差額
収入合計(B)
3.受託・助成事業費
受託・助成事業費
4.収益事業費
収益事業費
5.管理費
人件費
事務所費
諸経費
6.固定資産取得支出
什器備品購入支出
0
△ 8,000
0
△ 13,550
0
30
(11,200)
0
11,200
(1,200)
0
1,200
(△ 10,000)
8.予備費
予備費
(100)
100
(70)
70
(△ 30)
△ 30
9.雑損失
消費税差額
(700)
700
(500)
500
(△ 200)
△ 200
45,000
0
0
31,450
0
0
△ 13,550
7.借入金返済支出
長期借入金返済支出
短期借入金返済支出
当期支出合計(C)
当期収支差額(A)-(C)
次期繰越収支差額(B)-(C)
0
△ 10,000
0
0
(注)①この収支予算書は「公益法人会計基準」によって作成した
②短期借入金の最高限度額は3千万円とする
③△の額は減額を表す
編集後記:
フォーラム設立十周年を迎えた。本号は、10 年間になるフォーラムの活動を根本的
に顧みて、設立の趣意が貫かれているか、真摯に見つめなおすことになった。
シンポジウムにおいて、安倍元首相の「戦後レジームからの脱却」と題した講演か
ら貴重な示唆を得ることができた。例えば、「何故憲法改正なのか」、「戦後の時代
精神」という文脈では、二十一世紀、日本が国際社会で一流の国家として通用するの
かという問いかけにもなっている。
北朝鮮のミサイル、核に耳目を奪われ、メディアが脅威を煽る世情である。しかし、
それだけではないと、宮脇副理事長は、サイバーテロの現実を例に解説し警告した。
「世の中、新型インフルエンザ対処でバカ騒ぎしている」と、元自衛隊高官がのた
まわっているが、戦争の蓋然性、危機管理のために、国民が自衛隊を維持しているの
だから、これは、天に向かって唾を吐く話しだろう。その意味で、高橋先生は、医者
の危機管理に係る意識を愚直なまでに体現している。
「海洋国家日本」は、明治維新以来の「我が国の戦略思考の核心」であった筈だ。
日本の戦略的思考の根幹となる、新たな海洋国のデザインが求められると小山氏は課
題を投げかけた。地政学、地政学的思考に欠ける日本人にとっては、基本に還るレヴ
ューである。
役員会の報告をベースに、フォーラム運営の現状を細部にわたり掲載した。経済の
低迷と混乱は、政治を観て先行きが明るいと期待できない以上、自力で耐え、地道に
積み重ねる雌伏の時期を過ごすしかない。
安全保障は、寺田、長島、佐藤、諸先生により問題が明らかになった。次は、防衛
力整備の欠陥を補う知恵を出す作業である。
フォーラムも、まさにその時であって、三年計画を心して、辛抱の時期に「志」を
忘れず努力する決意を新たにしたい。叱咤、激励、ご教導をお願い申し上げます。
なお、本号では、事務局の怠慢により「戦略ターミノロジー」及び「文民統制(シ
ビリアンコントロール)」休載となったことお詫び致します。(吉)
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日本戦略研究フォーラム役員等(平成 21 年 7 月1日現在)
会長(兼)理事長
中條高德(アサヒビール(株)名誉顧問)
副会長
小田村四郎(前拓大総長)
相談役
永野茂門(元法務大臣/参議院議員/前理事長)
顧問
小林公平(阪急電鉄(株)名誉顧問)
笹川陽平(日本財団会長)
竹田五郎(元統合幕僚会議議長)
田中健介((株)ケン・コーポレーション代表取締役社長)
鳥羽博道((株)ドトールコーヒー名誉会長)
中山太郎(衆議院議員/元外務大臣)
平沼赳夫(衆議院議員)
山田英雄((財)ジェイ・ピー・ファミリー生きがい財団理事長
/元警察庁長官)
山本卓眞(富士通(株)名誉会長)
事務局長(常務理事)
長野俊郎((株)パシフィック総研会長)
副理事長
愛知和男(衆議院議員/元防衛庁長官)
相原宏徳(TTI・エルビュー(株)取締役会長)
岡崎久彦(NPO 岡崎研究所所長/元駐タイ大使)
坂本正弘(中大政策文化総研客員研究員)
志方俊之(帝京大教授/元陸自北部方面総監)
田久保忠衛(杏林大客員教授)
宮脇磊介(宮脇磊介事務所代表/元内閣広報官)
理事
秋山昌廣(海洋政策研究財団会長/元防衛事務次官)
新井弘一((財) 国策研究会理事長/元駐東独・比大使)
太田 博(元駐タイ大使)
佐藤正久(参議院議員/初代イラク第一次復興業務支援隊長)
嶋口武彦(駐留軍等労働者労務管理機構理事長/元施設庁長官)
内藤正久((財)日本エネルギー経済研究所理事長)
西 修(駒沢大教授)
二宮隆弘(元空自将捕/前 JFSS 事務局長)
松井 隆(有人宇宙システム(株)社長/元宇宙開発事業団理事
長)
森野安弘(森野軍事研究所所長/元陸自東北方面総監)
山元孝二((財)日本科学技術振興財団常務理事)
山本兵蔵(大成建設(株)取締役相談役)
屋山太郎(政治評論家)
吉原恒雄(拓大教授)
渡邉昭夫((財)平和・安全保障研究所副会長)
常務理事
林 茂(事務局運営部長/元陸幹校戦略教官室長)
林吉永(事務局総務部長/元防研戦史部長)
監事
川村純彦(川村純彦研究所代表/元統幕学校副校長)
田中伸昌(元空自第4補給処長)
評議員
石田栄一(高砂熱学工業(株)代表取締役社長)
磯邊律男((株)博報堂相談役)
伊藤憲一((財)日本国際フォーラム理事長)
衛藤征士郎(衆議院議員)
加瀬英明((社)日本文化協会長)
川島廣守((財)本田財団理事長)
国安正昭((株)ウッドワン住建産業顧問/元駐スリランカ大使)
佐瀬昌盛(拓大教授)
清水信次((株)ライフコーポレーション代表取締役会長兼 CED)
清水 濶((財) 平和・安全保障研究所研究委員/元陸自調査学校
長)
白川浩司((株)白川建築設計事務所代表取締役)
田代更生((株)田代総合研究所相談役)
冨澤 暉(東洋学園大理事兼客員教授/元陸幕長)
西川徹矢(明治安田生命保険相互会社顧問・元防衛省大臣官
房官房長)
西原正((財)平和・安全保障研究所理事長/前防大校長)
野地二見(同台経済懇話会常任幹事)
長谷川幹雄((株)グランイーグル顧問)
花岡信昭(政治評論家/拓大大学院教授)
原野和夫((株)時事通信社顧問)
福地建夫((株)エヌ・エス・アール取締役会長/元海幕長)
村井仁(長野県知事/元衆議院議員)
村木鴻二((株)日立製作所顧問/元空幕長)
村瀬光正((株)山下設計名誉顧問)
山口信夫(旭化成(株)代表取締役会長)
政策提言委員
秋元一峰(秋元海洋研究所代表)
淺川公紀(武蔵野大教授)
渥美堅持(東京国際大教授)
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天本俊正((株)天本俊正・地域計画 21 事務所代表取締役/元
建設省大臣官房審議官)
洗 堯(NEC 顧問/元陸自東北方面総監)
石津健光(常総開発工業(株)代表取締役社長)
今井久夫((社)日本評論家協会理事長)
今道昌信(NPO 国際健康栄養医学機構監事/元海幹校第1研
究室長)
岩屋 毅(衆議院議員)
上田愛彦((財)DRC 専務理事/元防衛庁技術研究本部開発官)
潮 匡人(ジャーナリスト)
江崎洋一郎(衆議院議員)
大串康夫((株)石川島播磨重工業顧問/元空幕副長)
大橋武郎(AFCO㈱新規事業開発担当部長/元空自5航空団
司令)
岡本智博(ユーラシア研究所客員研究員/元統合幕僚会議事
務局長)
奥村文男(大阪国際大教授/憲法学会常務理事)
越智通隆(三井物産エアロスペース(株)顧問/元空自中警団司
令)
勝股秀通(読売新聞編集委員)
加藤 朗(桜美林大教授)
金田秀昭((株)三菱総研主席専門研究員/元護衛艦隊司令官)
茅原郁生(拓大教授/元防研第2研究部長)
工藤秀憲(GIS コンサルテイング(株)代表取締役社長)
倉田英世(国連特別委員会委員/元陸幹校戦略教官室長)
小林宏晨(日大教授)
小松三邦((株)トリニティーコーポレーション代表取締役)
五味睦佳(元自衛艦隊司令官)
佐伯浩明(フジサンケイビジネスアイ関東総局長)
坂上芳洋(ダイキン工業(株)顧問/元海自阪神基地隊司令)
坂本祐信(元空自 44 警戒群司令)
笹川徳光(前防長新聞社代表取締役社長)
佐藤勝巳(評論家)
佐藤丙午(拓大教授)
佐藤政博(佐藤正久参議院議員秘書)
篠田憲明(前拓大客員教授)
嶋野隆夫(元陸自調査学校長)
菅沼光弘(アジア社会経済開発協力会会長/元公安調査庁調
査第二部長)
杉原 修((株)AWS 技術顧問)
高市早苗(衆議院議員)
高橋史朗(明星大教授)
高橋 央
(感染対策コンサルタント/元米国 CDC 疫学調査員)
田村重信(慶大大学院講師)
土肥研一((有)善衛商事代表取締役)
徳田八郎衛(元防大教授)
所谷尚武((株)防衛ホーム新聞社代表取締役)
殿岡昭郎(政治学者)
中静敬一郎(産経新聞東京本社論説副委員長)
中島毅一郎((株)朝雲新聞社代表取締役社長)
長島昭久(衆議院議員)
中谷 元(衆議院議員/元防衛庁長官)
仲摩徹彌(元海自呉地方総監)
奈須田敬((株)並木書房会長)
西村眞悟(衆議院議員)
丹羽春喜(元大阪学院大教授)
丹羽文生(拓大助教)
長谷川重孝(元陸自東北方面総監)
浜田和幸(国際政治学者)
樋口譲次((株)日本製鋼所顧問 /元陸自幹部学校長)
日髙久萬男(三井造船(株) 技術顧問/元空幹校教育部長)
兵藤長雄(東京経済大教授/元駐ベルギー大使)
平野浤治((財)平和・安全保障研究所研究委員/元陸自調査学
校長)
福地 惇(大正大教授/統幕学校講師)
福山 隆(ダイコー(株)専務/元陸自富士教導団長)
藤岡信勝(拓大教授)
舟橋 信((株)NTT データ公共ビジネス事業本部顧問/元警察
庁技術審議官)
前川 清(武蔵野学院大教授/元防衛研究所副所長)
前原誠司(衆議院議員)
松島悠佐(ダイキン工業 (株)顧問/元陸自中部方面総監)
水島 総((株)日本文化チャンネル桜代表取締役社長)
宮崎正弘(評論家)
宮本信生((株)オフィス愛アート代表取締役/元駐チェコ大
使)
室本弘道(武蔵野学院大教授/元陸上担当技術研究本部技術
開発官)
惠 隆之介(評論家)
森兼勝志((株)フロムページ代表取締役社長)
森本 敏(拓大大学院教授)
八木秀次(高崎経済大教授)
山口洋一(NPO アジア母子福祉協会理事長/元駐ミャンマー
大使)
山崎 眞((株)日立製作所ディフェンスシステム事業部顧問/
元自衛艦隊司令官)
山下輝男(第一生命保険(相)顧問/元陸自 5 師団長)
山本幸三(衆議院議員)
山本 誠(元自衛艦隊司令官)
若林保男(湘南工科大学非常勤講師/元防研教育部長)
渡辺 周(衆議院議員)
研究員(4 名)
安生正明(埼玉県防衛協会事務局長/元技術研究本部主任設
計官)
江口紀英((株)太洋無線元取締役社長)
木島武((株)SCC 元代表取締役専務執行役員)
高永喆(拓大客員研究員)
事務局
佐藤真子(総務)
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入会案内・会員募集の区分
本フォーラムは、設立趣旨にご賛同頂ける皆様方のご支援で活動を推進
しております。
個人或いは団体の会員になられますと、直接参加して頂ける本フォーラ
ム主催の研究会・シンポジウム・調査研究などの活動、或いは、
『季報』
、
研究会等の案内配布の特典を通して情報の提供・共有ができます。
多数の皆さまのフォーラムご参加をお待ちしております。
会員区分は次のとおりです。
(ア)法人 A 会員(会費 1 口 50 万円/年)
:上記特典のほか政策提言
活動(政策提言研究会・政策提言作成作業)
、特定の調査研究活
動に直接ご参加頂けます。
(イ)法人 B 会員(会費 1 口 10 万円/年)
(ウ)特別会員(会費 5 万円/年)
:上記特典のほか政策提言活動(政
策提言研究会・政策提言作成作業)
、特定の調査研究活動に直接
ご参加頂けます。
(エ)個人会員(会費 1 万円/年)
入会ご希望の方は、まず本「申込用紙」に所要事項ご記入の上、
FAX にて送信下さいますようお願い申し上げます。
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お申し込み FAX:03-5363-9093 お問い合わせ TEL:03-5363-9091
日本戦略研究フォーラム 入会申込書
日本戦略研究フォーラム 御中
貴フォーラムの設立趣旨に賛同し、入会を申し込みます。
平成
年
月
日
法人A会員
(1口年額50万円)
口
法人B会員
(1口年額10万円)
口
特別会員
(1口年額 5万円)
口
個人会員
(1口年額 1万円)
口
会 費
ご氏名または法人名
ご署名又は印
ご職業・勤務先(個人の場合)
ご住所または所在地
〒
申込者
法人の場合、担当者のご氏名・役職名
電話番号
:
FAX番号
:
E-mail :
会費納入方法
振込先
1.振込
2.現金
請求書
領収書
1.要
1.要
2.不要
2.不要
みずほ銀行 神谷町支店 普通 1325916
ニホンセンリャクケンキュウフォーラム
御紹介者
様
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―――お知らせ―――
『第 22 回日本戦略研究フォーラム・シンポジウム』
「細部未定」
日時:平成 21 年 11 月 25 日(水曜日)1500~1900
場所:グランドヒル市ヶ谷(東京都新宿区市ヶ谷本村町 4-1)
勝手ながら聴講は有料です:1 万円(懇親会を含みます)
国内外の情勢・安全保障環境の変化に対応して機を失さず「日本の防衛政策」
に示唆を提供し提言できる調査・研究・議論の推進に努めています。本シンポ
ジウムは、国の主権・国益・国民の生命財産を脅かし、国際秩序に挑戦する脅
威に対抗するパワーの整備はもとより、安全保障に係わる『政治の責任』
・
『国
民の責任』
・
『政府の責任』
・
『国際関係のあり方』を問うものです。
NPO 日本戦略研究フォーラム会誌
NPO-JFSS Quarterly Report
発行日 平成 21 年 7 月 10 日 第 40 号
発行所 NPO 日本戦略研究フォーラム
〠160-0002 東京都新宿区坂町 26 番地 19 KK ビル 4F
☎ 03-5363-9091 FAX 03-5363-9093 URL http://www.jfss.gr.jp/
印刷所 株式会社 恒和印刷所
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