中華人民共和国反スパイ法 (2014 年 11 月 1 日、第 12 期全国人民代表大会常務委員会第 11 回採択) 第一章 総則 第一条 スパイ行為を予防、制止そして取り締まり、国家の安全を維持するために、憲法に基 づき、本法を制定する。 第二条 反スパイ工作は、中央の統一指導、公開業務と秘密業務の統合、専門業務と大衆路線 の統合、及び積極的防御と法による取締りの原則を堅持する。 第三条 国家安全機関は、反スパイ工作の主管機関である。 公安及び機密行政管理等のその他の関係する部門並びに軍隊の関係する部門は、職責 分業に照らして、密接に協力し、強調を強化し、関係する業務を法に基づき徹底する。 第四条 中華人民共和国の国民[公民]は、国家の安全及び栄誉並びに利益を維持する義務を 負い、国家の安全及び栄誉並びに利益を害する行為をしてはならない。 一切の国家機関及び武装力[武装力量]、各政党、社会団体並びに各企業・事業組織は、 いずれもスパイ行為を予防、制止し、国家の安全を維持する義務を負う。 国家安全機関は、反スパイ工作において人民の支持に必ず頼り、人民を動員、組織し て、国家の安全を害するスパイ行為を予防、制止しなければならない。 第五条 反スパイ工作は、法に基づいて行ない、人権を尊重、保障し、公民及び組織の合法な 権利利益[権益]を保障するものとする。 第六条 国外の機構、組織又は個人が実施するか、或いは、国外の機構、組織又は個人が他人 に指示するか、又は資金援助して実施する中華人民共和国の国家の安全を害するスパイ 行為、又は、国内の機構、組織又は個人と国外の機構、組織又は個人が結託して行なう 中華人民共和国の国家の安全を害するスパイ行為は、いずれも法律上の追及を受けなけ ればならない。 第七条 国家は、反スパイ工作を支持、支援する組織及び個人を保護し、重大な貢献がある時 は奨励を与える。 第二章 反スパイ工作における国家安全機関の職権 第八条 反スパイ工作における国家安全機関は、法に基づいて捜査、拘留、予審、及び執行逮 捕、並びに法律[法律]が規定するその他の職権を行使する。 第九条 国家安全機関の職員[工作人員]が任務を法に基づいて執行する時、相応の証明書[証 件]を規定に照らして提示し、中国公民又は国外の人員の身分証明を検査し、関係する 組織及び人員に対して関係する状況を調査及び諮問することができる。 第十条 国家安全機関の職員が任務を法に基づいて執行する時、相応の証明書を規定に照らし て提示し、関係する場所及び組織に進入してよい。国家の関係する規定に基づいて、承 認を経て、相応の証明書を提示し、進入を制限している関係する地域及び場所並びに単 位に進入し、関係するファイル[档案]、資料及び物品を調査閲覧又は取り調べてよい。 第十一条 国家安全機関の職員が緊急任務を執行する状況においては、相応の証明書を提示し、 公共の交通手段に優先搭乗してよく、交通上の障害に遭遇する時は、優先通行してよい。 国家安全機関は、反スパイ工作の必要に基づき、国家の関係する規定に照らして機関、 団体、企業・事業組織及び個人の交通手段、通信手段、場所及び建築物を優先使用する か、又は法に基づいて収用してよく、必要な時は、関係する作業場所[工作場所]及び設 備並びに施設を設置してよいが、任務が完成した後は、速やかに返還するか、又は現状 を回復し、規定に照らして相応の費用を支払う。損失が生じた時は補償する。 第十二条 国家安全機関は、偵察スパイ行為の必要により、国家の関係する規定に基づいて、厳格 な承認手続きを経て、技術的な捜査措置[技術偵察措置]をとることができる。 第十三条 国家安全機関は、反スパイ工作の必要に基づき、規定に照らして、関係する組織及び 個人の電子通信手段、機材などの設備及び施設を調査検査してよい。捜査検査中に国家 の安全を害する状況が存在することを発見する時は、国家安全機関がその改善を命じる。 改善を拒絶するか、又は改善後も要請に合致しない時は、封印及び差し押さえてよい。 前項の規定に照らして封印又は差し押さえた設備及び施設は、国家の安全を害する状 況を取り除いた後、国家安全機関は封印及び差し押さえを速やかに解除するものとする。 第十四条 国家安全機関は、反スパイ工作の必要により、国家の関係する規定に基づいて、税関 及び辺境防衛等の検査機関に関係する人員の資料及び機材の検査免除を要請できる。関 係する捜査機関は協力するものとする。 第十五条 国家安全機関は、スパイ行為に用いられる手段及びその他の財物、並びにスパイ行為 を資金的に支援する[資助]資金、場所及び物資を、区を設置した市クラス以上の国家 安全機関の責任者の承認を経て、法に基づいて調査封印、差し押さえ、又は凍結できる。 第十六条 国家安全機関は、反スパイ工作の必要に基づいて、関係する部門と反スパイ技術防止 基準[反間諜技術防範標準]を制定し、関係する部門を指導して反スパイ技術防止措置 を徹底させ、隠れた災禍が存在する部門に対しては厳格な承認手続きを経て、反スパイ 技術予防検査及び検査測定[検測]を行なうことができる。 第十七条 国家安全機関及びその職員[工作人員]は、その業務中、法に基づき処理することを 厳格にし、職権を超えてはならないし、職権を乱用してもならないし、組織及び個人の 合法な権利利益を侵犯[侵犯]してはならない。 国家安全機関及びその職員が反スパイ工作の職責を法に基づいて履行して獲得した組 織及び個人の情報並びに材料は、反スパイ交錯にのみ用いることができる。国家機密、 商業秘密及び個人のプライバシーに属するものは、秘密にしておかなければならない。 第十八条 国家安全機関の従業員による法に基づいた職務執行は、法令[法律]の保護を受ける。 第三章 第十九条 国民と組織の義務及び権利 機関、団体及びその他の組織は、当該組織の人員に対して国家の安全の維持にかかわ る教育を行ない、当該組織の人員を動員、組織してスパイ行為を予防、制止する。 第二十条 国民及び組織は、反スパイ工作に対して便宜又はその他の支援を提供する。 反スパイ工作に協力することにより、本人又はその近親者の人身の安全が危険にさら される時は、国家安全機関に保護を求めることができる。国家安全機関は、関係する部 門と保護措置を法に基づいてとらなければならない。 第二十一条 国民及び組織がスパイ行為を発見する場合、国家安全機関に速やかに報告する。公安 機関等のその他の国家機関又は組織に報告する場合は、関係する国家機関又は組織が直 ちに国家安全機関に移管し、国家安全機関が処理する。 第二十二条 国家安全機関が関係するスパイ行為を調査把握した状況及び関係する証拠を収集する 時、関係する組織及び個人はありのままを提供するものとし、拒絶してはならない。 第二十三条 いかなる国民及び組織も知り得た反スパイ工作に関する国家機密を秘密にしておかな ければならない。 第二十四条 いかなる国民及び組織も国家機密に属する文書、資料及びその他の物品を不法[非法] に所持してはならない。 第二十五条 いかなる個人及び組織もスパイ活動で特殊に必要となる専用のスパイ機材を不法に所 持、使用してはならない。専用のスパイ機材は、国務院の国家安全を主管する部門が国 家の関係する規定に照らして確認する。 第二十六条 いかなる個人及び組織も国家安全機関及びその職員による越権[超越職権]、職権の乱 用又はその他の違法行為[違法行為]について、上級の国家安全機関又は関係する部門 に密告[検挙]、告発[控告]できる。密告又は告発を受けた国家安全機関又は関係する 部門は、事実を速やかに精査し、処理する責任を負い、併せて処理結果を密告者[検挙 人]及び告発者[控告人]に告知するものとする。 国家安全機関の業務に協力するか、又は法に基づいて密告並びに告発する個人及び組 織に対して、いかなる人及び組織も圧力を加えたり報復したりしてはならない。 第四章 法令上の責任 第二十七条 国外の機構、組織又は個人がスパイ行為を実施するか、又は、他人に指示、資金的に 援助してスパイ行為を実施するか、或いは、国内の機構、組織又は個人が国外の機構、 組織又は個人と結託してスパイ行為を実施し、犯罪となる場合は、刑事責任を法に基づ いて追及する。 スパイ行為を実施し、自首又は貢献したことがある場合は、軽きに従うか、処罰を軽 減するか、又は免除してよい。重大な貢献をしたことがある場合は、奨励を与える。 第二十八条 国外において敵対組織及びスパイ組織へ参加するよう脅迫されるか、又は勧誘を受け、 中華人民共和国の国家の安全に害を及ぼす活動に従事した時、中華人民共和国の虫害機 構に速やかに状況をありのままに説明するか、又は入国した後に直接又は所在する組織 を通じて国家安全機関又は公安機関に状況をありのままに説明し、後悔を示す時は、追 及しなくてよい。 第二十九条 他人がスパイ犯罪行為を行なったことを明らかに知っており、国家安全機関が関係す る状況を調査し、関係する証拠を収集する時に、提供を拒絶した場合は、所在する組織 又は上級の主観部門が処分を行なうか、又は、国家安全機関が 15 日以下の行政拘留に処 する。犯罪となる場合は、刑事責任を法に基づいて追及する。 第三十条 暴力又は威嚇の方法により国家安全機関の法に基づいた任務の執行を妨害する場合は、 刑事責任を法に基づいて追及する。 国家安全機関の法に基づいた任務の執行を故意に妨害したが、暴力又は威嚇の方法を 使用しないで重大な結果を招いた場合は、刑事責任を法に基づいて追及する。状況が軽 い時、国家安全機関が 15 日以下の行政拘留に処する。 第三十一条 反スパイ工作にかかわる国家機密を漏洩した場合は、国家行政機関が 15 日以下の行政 拘留に処する。犯罪となる場合は刑事責任を法に基づいて追及する。 第三十二条 国家機密に属する文書、資料及びその他の物品を不法に所持する場合、及び専用のス パイ機器を不法に所持するか、使用する場合は、国家安全機関がその人身、物品、住居 及びその他の関係する地域に対して捜査を行なってよい。不法に所持している国家機密 に属する文書、資料及びその他の物品、及び不法に所持、使用している専用のスパイ機 器は没収する。国家機密に属する文書、資料及びその他の物品の不法所持が犯罪となる 場合は、刑事責任を法に基づいて追及する。犯罪とならない場合は、国家安全機関が警 告又は 15 日以下の行政拘留に処する。 第三十三条 国家安全機関が法に基づいて封印、差し押さえ、又は凍結した財物を、隠匿、移転、 換金又は毀損するか、又は、スパイ活動にかかわる財物であることを明らかに知りなが ら、隠匿、移転、購入、代理販売するか、或いは、その他の方法で粉飾、偽装する場合 は、国家安全機関が追及して回収する[追回] 。犯罪となる場合は刑事責任を法に基づい て追及する。 第三十四条 国外の人員[境外人員]が本法に違反する場合は、期限を決めて退去させるか、又は 強制退去[駆逐出境]させることができる。 第三十五条 当事者が行政処罰の決定又は行政強制措置の決定に不服である場合は、決定書を受け 取った日より 60 日以内に、1 つ上のクラスの機関に不服審査を申請できる。不服審査の 決定に不服である場合は、不服審査決定書を受け取った日より 15 日以内に、人民法院に 訴訟を提起できる。 第三十六条 国家安全機関が本法に照らして封印、差し押さえ、又は凍結する財物は、適切に[妥 善]保管し、以下に列挙する場合に照らしてそれぞれ処理するものとする。 (1) 犯罪の恐れがあるものは、刑事訴訟法の規定に照らして処理する。 (2) 犯罪とならないが、違法な事実が存在するもので、法に基づいて没収するものは没 収し、法に基づいて廃棄するものは廃棄する。 (3) 違法な事実が存在しないか、又は案件と関係のないものは、速やかに封印、差し押 さえ及び凍結を解除し、関係する財物を返還する。損失が生じた時は、法に基づい て賠償する。 国家安全機関が没収する財物は、一律国庫に帰属させる。 第三十七条 国家安全機関の職員による職権の乱用、職務の怠慢、私情で法を曲げた不正で、犯罪 となる場合、又は不法な拘禁、自白の強要、乱暴な証拠取得、規定に違反して国家機密、 商業機密及び個人のプライバシーを漏洩する行為で犯罪となる場合は、刑事責任を法に 基づいて追及する。 第五章 付則 第三十八条 本法にいうスパイ行為とは以下に列挙する行為をいう。 (1) スパイ組織及びその代理人が中華人民共和国の国家の安全を害する活動を実施す るか、又は、他人に指示するか、資金的に支援して、中華人民共和国の国家の安全 を害する活動を実施するか、或いは、国内外の機構、組織及び個人が結託して実施 する中華人民共和国の国家の安全を害する活動。 (2) スパイ組織に参加するか、又はスパイ組織及びその代理人の任務を受けること。 (3) スパイ組織及びその代理人以外のその他の国外の機構、組織及び個人が国家機密又 は国家の情報を窃取、探索、購入又は不法に提供するか、或いは国家業務に従業す る人員[国家工作員]による転覆[叛変]を扇動[策動]、勧誘、買収する活動、 又は、国内の機構、組織及び個人と結託して国家機密又は国家の情報を窃取、探索、 購入又は不法に提供するか、或いは国家業務に従事する人員による転覆を扇動、勧 誘、買収する活動。 (4) 攻撃目標を指示するもの。 (5) その他スパイ活動を行なうもの。 第三十九条 国家安全機関及び公安機関は、法律及び行政法規並びに国家の関係する規定に照らし てスパイ行為以外のその他の国家の安全を害する行為の予防、制止並びに取り締まる職 責を履行し、本法の関係する規定を適用する。 第四十条 本法は公布した日より施行する。同時に、1993 年 2 月 22 日第 7 期全国人民代表大会常 務委員会第 30 回会議を通過した「中華人民共和国国家安全法」は廃止する。 【御手洗大輔、訳】
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