技報:010907-2 溶融亜鉛めっき鋼構造物の着色処理 タナカ-CZ処理 (技術資料) 平成 22 年 9 月 田中亜鉛鍍金株式会社 目次 1. 2. 3. 4. 5. 6. タナカ-CZ 処理工程・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p3 タナカ-CZ 処理の可能サイズ、吊り能力・・・・・・・・・・・・・p3 タナカ-CZ 処理の種類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p3 タナカ-CZ 処理の外観・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p4 タナカ-CZ 処理の経年変化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p5 タナカ-CZ 処理の性能・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p6 6.1 耐摩耗性試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p6 6.2 電気抵抗試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p6 6.3 塩水噴霧試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p7 6.4 促進耐候性試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p8 6.5 亜硫酸ガス腐食試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p9 6.6 乾湿繰り返し試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p10 6.7 酸性水乾湿繰り返し試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・p11 6.8 水への溶出量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p12 6.9 コンクリートとの反応性調査・・・・・・・・・・・・・・・・p12 6.10 大気暴露試験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p12 6.11 性能試験のまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p17 7. タナカ-CZ 処理の製品写真集・・・・・・・・・・・・・・・・・・p18 はじめに 溶融亜鉛めっきした鋼構造物は、建設初期における亜鉛の金属光沢が、周囲 の景観と融和せず、違和感をもたれることがあります。そのため近年、景観に 融和するような色彩の製品が多く求められています。 現在、溶融亜鉛めっき鋼構造物は塗料による着色仕上げやりん酸亜鉛処理に よる灰黒色等に仕上げる方法が用いられています。しかし、塗装をした場合、 経年劣化により塗り替え塗装に多大な費用を必要とします。また、りん酸亜鉛 処理よりさらに耐摩耗性や耐食性の優れた着色処理ができないかとのご要望が ありました。 そこで、鋼構造物が環境に融和する色彩(灰色系)で、耐食性に優れ、かつ 擦過損傷に強い着色皮膜を形成する方法について検討を行ない、開発しました のが「タナカ-CZ処理」であります。 写真 国定公園内に建設されたタナカ-CZ 処理送電鉄塔(N 4) 1.タナカ-CZ処理工程 1.タナカ-CZ処理工程 水洗 水洗 化成処理ⅠⅠⅠⅠ 水洗 表面調整 溶融亜鉛めっき 化成処理ⅢⅢⅢⅢ 水洗 化成処理ⅡⅡⅡⅡ ① 表面調整 希硫酸により表面の酸化皮膜の除去とエッチングを行ないます。 ② 化成処理Ⅰ 過マンガン酸カリウムで溶融亜鉛めっき皮膜の表面を酸化させ、着色皮膜を形成します。 ③ 化成処理Ⅱ クロメート処理を行ない、着色皮膜に耐食性を付与します。 ④ 化成処理Ⅲ 水溶性樹脂で表面をコーティングすることにより、重防食の効果と擦過損傷に強い皮膜 を形成します。 写真 CZ 処理状況(N 4) 2.タナカ-CZ処理の可能サイズおよび吊り能力 .タナカ-CZ処理の可能サイズおよび吊り能力 製品の大きさ : 1600W×2000D×9000L 最 大 荷 重 : 4.0 トン 3.タナカ-CZ処理の種類 タナカ-CZ処理は明度(マンセル値)がN1.5~N4.5 までが可能です。(下写真) 明度タイプ 明度タイプ N 1.5(範囲+0.5) N 4(範囲±0.5) 4.タナカ-CZ処理の外観 タナカ-CZ処理は、溶融亜鉛めっき表面との化学反応により着色したものであるために溶 融亜鉛めっきの表面状態によって多様な外観になります。 スパングル スパングル無 やけ なお、このような溶融亜鉛めっきの表面状態は、鋼材成分の特性や環境によって変化し易 く、めっき・タナカ-CZ 処理での外観制御が難しくなっております。これらの外観をご指定い ただくことはできませんので、ご理解のほど宜しくお願い申し上げます。 5.タナカ-CZ処理の経年変化 タナカ-CZ処理は、表面を酸化させた皮膜でありますが図 1 の通り、長期の低明度化を実 現します。その外観は経年変化とともに次第に初期の色調は薄れていき、タナカ-CZ処理皮 膜が消失しますと亜鉛めっきの安定皮膜が形成された光沢のない灰白色の外観となります。 下記に、福井県高浜町で大気暴露試験しました試験体の明度(マンセル値)変化を図1に、 同箇所でタナカ-CZ処理された試験体と鉄塔の外観写真を表 1 に示します。 6 明度(N) 5 4 3 2 タナカ-CZ(N 4) 1 タナカ-CZ(N1.5) 0 0 2 4 6 8 10 12 14 撮影 2008年 撮影 撮影(設置時) 2008年 撮影 暴露年数(yr) 図1 大気暴露試験での明度の経年変化 表1 外観写真(経年変化) 1997年 試験片 (1997 年設置) 2000年 鉄塔 (2000 年設置) ただし、経年による外観の変化は設置された環境により変わります。 6.タナカ-CZ処理の性能 6.1 耐摩耗性試験 耐摩耗性試験はタナカ-CZ 皮膜の耐擦過損傷性を調べ、輸送・運搬等における影響を確 認しました。 6.1-1 試験方法 150×70×2.3tmm の溶融亜鉛めっきした鋼板にタナカ-CZ を施し 10 枚作成して試験を行いました。 試験は、真鍮ブラシで皮膜表面を擦過し、めっき素地が 露出するまでの往復摩耗回数を調べました。なお、当社で のクレーン懸垂や運搬時はナイロンスリングなどを用いて いますが、これより擦過損傷を生じやすいとの理由で真鍮 ブラシを用いております。 摩 耗 箇 所 6.1-2 試験結果 試験結果は、右の写真 1 に示します。 真鍮ブラシ 100 回の往復でも、退色などの外観 変化は見られず皮膜には損傷が見らません。 写真 1 耐摩耗性試験後の外観 (真鍮ブラシ 100 回往復後) 6.2 電気抵抗試験 鉄塔材として必要な電気抵抗値について調査しました。 6.2-1 試験方法 200×75×9tmm の鋼板を溶融亜鉛めっきと溶融亜鉛めっきにタナカ-CZ 処理およびリン酸 亜鉛処理(*)を施したものを作成して試験を行いました。 測定器は、三和電気工業(株)製のサンワ JP-80(測定レンジ 10MΩ、分解能 10mΩ)を使 用し、試験体両端での抵抗を測定致しました。 6.2-2 試験結果 測定結果を表 2 に示します。測定結果からタナカ-CZはリン酸亜鉛処理による抵抗値 とほぼ同等、溶融亜鉛めっきとは差が小さく大きな抵抗を有しないことが確認されました。 表 2 タナカ-CZ 皮膜の電気抵抗値測定結果 表面状態 抵抗値(Ω) タナカ-CZ皮膜 0.04 以下 リン酸亜鉛皮膜* 0.05 以下 溶融亜鉛めっき 0.01 未満 *リン酸亜鉛処理は鉄塔材の低明度処理として古くから使用されておりましたので、比較 対象として確認を行いました。 6.3 塩水噴霧試験 塩水噴霧試験は最も基本的な促進腐食試験として広く用いられております。この塩水噴 霧試験機を使用してタナカ-CZ 処理皮膜の耐食性を確認しました。 6.3-1 試験方法 150×70×2.3tmm の溶融亜鉛めっきおよびタナカ-CZ を施したものを各 5 枚作成して試験 を行いました。塩水噴霧方法および試験後の腐食減量の測定方法は JIS Z 2371 に準拠し て行い、その評価は噴霧時間 100、300、500、750、1000 時間後の腐食減量としておりま す。写真 2 に塩水噴霧状況を示します。 6.3-2 試験結果 腐食減量の測定結果は、表 3、図 2 に示します。 塩水噴霧時間 1000 時間後の腐食減量は、溶融亜鉛 めっきにタナカ-CZ を施すことによって、1/3 程度に なっており耐食性が向上していることが確認されま した。 写真 2 塩水噴霧試験状況 表 3 塩水噴霧試験による腐食減量測定結果(g/m2) 噴霧時間 (hr) 試験片の種類 100 300 500 750 1000 タナカ-CZ 2 19 72 113 143 溶融亜鉛めっき 63 216 308 346 422 腐食減量(g/m2 ) 600 溶融亜鉛めっき 500 タナカ-CZ 400 300 200 100 0 0 200 400 600 800 噴霧時間(hr) 1000 図 2 塩水噴霧試験による腐食減量の経時変化 1200 6.4 促進耐候性試験 促進耐候性試験は自然現象の劣化要因のうち、光(紫外線)を中心とした温度、湿度 および雨量のコントロールされた条件下で行う試験方法です。サンシャインカーボンアー ク灯式耐候性試験機を使用してタナカ-CZ 処理皮膜の耐候性を確認しました。 6.4-1 試験方法 150×70×2.3tmm の溶融亜鉛めっきした鋼板にタナカ-CZ を施したものを 3 枚作成して試 験を行いました。サンシャインカーボンアーク灯式耐候性試験機を用い、その評価として 500 時間、1000 時間、1500 時間および 2000 時間後での白錆発生、明度、光沢度の変化を 確認します。なお、各評価については下記に示します。 (1)外観観察:外観の変化及び白さび発生の有無を評価。 (2)明度測定:試験片の平均明度を、約1m 離れた位置でマンセル値の標準スケールと 比較して目視にて調べ評価。 (3)光沢度測定:試験片の任意な5点について測定し、その平均値として評価する。な お、光沢度は日本電色工業社製、光沢度計 PG-3D を使用して測定しました。 6.4-2 試験結果 耐候性の評価結果は、表 4 に示します。2000 時間後の外観は、下表の通り白錆発生・明 度・光沢度(*)の外観変化がなく良好であることが確認されました。 表 4 促進耐候性試験後の評価結果 試験時間 評価項目 タナカ-CZ ① ② ③ Av. 明度(N) 3.5 3.5 3.5 3.5 試験前 光沢度 33.5 31.5 32.5 32.5 白さびの有無 ― 明度(N) 3.5 3.5 3.5 3.5 500h 後 光沢度 29.8 32.4 29.3 30.5 白さびの有無 無 明度(N) 3.5 3.5 3.5 3.5 1000h 後 光沢度 30.5 34.3 33.1 32.6 白さびの有無 無 明度(N) 3.5 3.5 3.5 3.5 1500h 後 光沢度 29.7 33.0 32.1 31.6 白さびの有無 無 明度(N) 3.5 3.5 3.5 3.5 2000h 後 光沢度 30.4 32.3 30.8 31.2 白さびの有無 無 (*) 塗料の場合、 光沢度はその値が 20%以上減少したときに変化があるとみなしている。 6.5 亜硫酸ガス腐食試験 亜硫酸ガス腐食試験は、大気中の汚染物質である亜硫酸ガスの影響を受けるか否かを調 べるために、亜硫酸ガスを封入した試験槽内で暴露しその耐食性の評価を行う促進試験方 法です。タナカ-CZ 処理皮膜の亜硫酸ガスに対する耐食性を確認しました。 6.5-1 試験方法 150×70×2.3tmm の溶融亜鉛めっきした鋼板にタナカ-CZ を施し 3 枚作成して試験を行い ました。なお、試験条件はドイツ工業規格である DIN 50018 に従い、下記に示す条件で亜 硫酸ガスのサイクル試験を行ないました。写真 3 に亜硫酸ガス試験機を示します。 1 サイクルは温度 40℃、湿度 100%、容量 300 リットルに対し、亜硫酸ガス量 0.2 リッ トル(亜硫酸ガス濃度:1.91ppm)に設定した試験槽に 8 時間吊り下げた後、室内に 16 時間 保管することとし、これを 20 サイクル行った後の明度や白錆発生の変化で評価を行いま した。 評価は、下記の項目について行った。 (1) 外観観察:試験片の色彩の退色、白さびの試験片全体に対する変化を評価。 (2) 明度測定:試験片の平均明度を、約1m 離れた位置でマンセル値の標準スケールと 比較して目視にて調べ評価。 6.5-2 試験結果 明度変化と白さび発生量および外観状況を表 5 に示します。 タナカ-CZ 皮膜は亜硫酸ガス腐食試験に対し白錆の発生はないものの、退色や明度(マ ンセル値)の増加が確認されました。 表 5 亜硫酸ガス腐食試験(20 サイクル)後の明度変化と白さび発生量 項目 ① 試験前 ② ③ 色彩の退色 明度(N) ― Av. ① 試験後評価 ② ③ Av. 全面 全面 全面 全面 3.5 3.5 3.5 3.5 5.0 4.5 5.5 5.0 白さび発生 ― 写真 3 なし なし なし なし 亜硫酸ガス腐食試験 試験後外観 6.6 乾湿繰り返し試験 乾湿繰り返し試験は、 乾燥状態と多湿状態の繰り返しの影響を調べる促進試験方法です。 タナカ-CZ 処理皮膜の乾湿に対する耐食性を確認しました。 6.6-1 試験方法 150×70×2.3tmm の溶融亜鉛めっきした鋼板にタナカ-CZ を施し 3 枚作成して試験を行い ました。試験は、湿潤状態(温度 50℃、湿度 95%、2時間) 、乾燥状態(温度 60℃、湿度 15~20%、2時間)を1サイクル(計4時間)として、100 サイクル後に評価を行いまし た。なお、評価は下記の項目について行いました。 (1)外観観察:外観の変化及び白さび発生の有無を評価。 (2)明度測定:試験片の平均明度を、約1m 離れた位置でマンセル値の標準スケールと 比較し、目視にて調べ評価。 (3)光沢度測定:試験片の任意な5点について測定し、その平均値を評価。。なお、光 沢度は日本電色工業社製、光沢度計 PG-3D を使用して測定しました。 6.6-2 試験結果 表 6 に試験後の評価を示します。写真 4 に示すように 100 サイクル後の外観は、タナカ -CZ は試験前の明度(マンセル値)、光沢度、白錆発生の変化がなく良好であることが確認 されました。 表 6 乾湿繰り返し試験後の評価結果 試験前 100 サイクル後 項目 ① ② ③ Av. ① ② ③ Av. 明度(N) 3.5 3.5 3.5 3.5 3.5 3.5 3.5 3.5 光沢度 29.6 33.2 31.5 31.4 30.5 32.4 33.2 32.0 白さびの有無 ― 無 (*) 塗料の場合、 光沢度はその値が 20%以上減少したときに変化があるとみなしている。 写真 4 乾湿繰り返し試験前 試験後 6.7 酸性水乾湿繰り返し試験 酸性水による乾湿繰り返し試験は、乾燥状態と酸性水での多湿状態の繰り返しの影響を 調べる促進試験方法です。タナカ-CZ 処理皮膜の酸性水での乾湿に対する耐食性を確認し ました。 6.7-1 試験方法 150×70×2.3tmm の溶融亜鉛めっきした鋼板にタナカ-CZ を施し 100 枚作成して試験を行 いました。図 3 に温度・湿度変化の状態を示します。なお、試験①は酸性水(pH4.5:イ オン交換水を硫酸、硝酸で pH 調整)を 20℃、乾燥を 40℃とし、試験②は酸性水を 35℃、 乾燥を 60℃として、12 時間噴霧後 12 時間乾燥状態(温度 60℃、湿度 20%)で保持した ものを1サイクルとして5サイクル後に評価を行いました。その評価として、白さびの発 生の有無の確認を行いました。 (噴霧) (乾燥) (噴霧) 100% 試験① 100% (噴霧) (乾燥) (噴霧) 試験② 100% 100% 60℃ 40℃ 温度 20℃ 温度 20% 湿度 12h 35℃ 20℃ 6h 6h 20% 湿度 12h 1サイクル(24 時間) 35℃ 12h 6h 6h 12h 1サイクル(24 時間) 図 3 酸性水乾湿繰り返し試験の温度・湿度変化 6.7-2 試験結果 試験機の状況を写真 5 に示し、評価結果は、表 7 に示した。この結果より酸性雨噴霧温 度 20℃、35℃の試験後両方とも、全く白さびの発生が認められず良好であることが確認さ れました。 表 7 酸性水乾湿繰り返し試験後の評価結果 (12 時間噴霧後 12 時間乾燥×5 サイクル) 白さび発生率 試験片の種類 試験① 試験② タナカ-CZ 100 枚 全てなし 全てなし 写真 5 酸性水乾湿繰り返し試験機(複合サイクル試験機) 6.8 水への溶出量 溶出試験は、タナカ-CZ を施した試験体を水中に浸漬させ、その皮膜より化学成分の溶 出を調べる試験方法です。 6.8-1 試験方法 150×70×2.3tmm の溶融亜鉛めっきした鋼板にタナカ-CZ を施し各3枚(計9枚)作成し て試験を行いました。なお、試験は下記の手順で行いました。 (1)試験片を、イオン交換水1リットル(NaOH にて pH7.0 に調整)に浸漬。 (2)試験液の pH 変化、Zn、Cr の溶出量を測定して、その測定頻度は 2、4、8、24、72 時間後としました。 6.8-2 試験結果 試験液の pH 変化および Zn、Cr の溶出量の測定結果を表 8 に示します。なお、測定結果 は 3 枚の平均値としました。この結果から pH、亜鉛の溶出量は増加するものの、クロムの 溶出に関しては測定できるほどの溶出量は確認されませんでした。 表 8 試験液の pH 変化および Zn、Cr の溶出量測定結果 浸漬 測定結果 時間 pH Zn (ppm) Cr (ppm) (hr) 2 7.10 0.0009 0.01 以下 4 7.16 0.004 0.01 以下 8 7.20 0.031 0.01 以下 24 7.43 0.116 0.01 以下 72 7.53 0.227 0.01 以下 6.9 コンクリートとの反応性調査 タナカ-CZ 処理皮膜のコンクリートとの反応性および密着強度について検討を行いまし た。 6.9-1 試験方法 6.9-1-1 コンクリートとの反応性試験 150×70×2.3tmm の溶融亜鉛めっきした鋼板にタナカ-CZ を施し3枚作成して試験を行い ました。試験体を、飽和水酸化カルシウム水溶液(1.5g/リットル:pH13.1)に、24 時間 浸漬した後、下記の項目について評価を行いました。 (1)外観観察:外観の変化及び反応生成物の有無を評価。 (2)明度測定:試験片の平均明度を、約1m 離れた位置でマンセル値の標準スケールと 比較し、目視にて調べ評価。 (3)光沢度測定:試験片の任意な5点について測定し、その平均値を求めた。。なお、 光沢度は日本電色工業社製、光沢度計 PG-3D を使用して測定しました。 6.9-1-2 鉄筋付着力試験 φ16×700mm の丸棒を溶融亜鉛めっきおよび溶融亜鉛めっきした後タナカ-CZ を施し各 3 本作成して試験を行いました。なお、試験は、土木学会規準[JSCE-G503-1988 引き抜き 試験による鉄筋とコンクリートとの付着強度試験方法]に準じて、付着強度を測定しまし た。 試験体の作成は、下記の手順で行いました。 (1)試験片を、丸棒を 100×100×100mm のコンクリート枠に埋め込み。 (2)試験体を図 4 に示す温度サイクルで養生、材令。 (3)土木学会規準に準じて引き抜き試験を行い、引き抜き時の最大荷重と付着面積から、 付着度を求めました。 保持 40℃ 昇温 10℃/h 前養生 20℃ 2h 2h 材令 3h 28 日間 図 4 試験体の蒸気養生、材令の温度変化 6.9-2 試験結果 6.9-2-1 コンクリートとの反応性試験 試験結果を表 9 に示します。 浸漬試験後の試験片の外観は、試験前の測定データと比較して差異がなく、反応生成物も 認められませんでした。 表 9 飽和水酸化カルシウム溶液中の浸漬試験後の評価結果 試験前 試験後 評価項目 ① ② ③ Av. ① ② ③ Av. 明度(N) 3.5 3.5 3.5 3.5 3.5 3.5 3.5 3.5 光沢度* 41.5 42.3 36.5 40.1 35.9 39.8 38.6 37.8 反応生成物 - 無 無 無 - *塗料の場合、光沢度はその値が 20%以上減少したときに変化があるとみなします。 6.9-2-2 鉄筋付着力試験 付着強度測定結果を表 10 に示します。 着色処理の付着強度は、溶融亜鉛めっきと比較して、いずれにおいても低下の傾向が見 られ、溶融亜鉛めっきの約 65%程度になっております。 表 10 鉄筋の付着強度試験結果 付着強度(kgf/cm2) 表面状態 ① ② ③ Av. タナカ-CZ 30.4 25.0 17.5 24.3 溶融亜鉛めっき 37.2 38.0 38.0 37.5 6.10 大気暴露試験 大気暴露試験は暴露する個所での気象条件に影響を受けるため、試験結果を参考するに あたり類似した気候条件での暴露試験の評価を選定する必要があります。気候条件とは日 照、風雨、温湿度の変化、結露、霧等の他、海塩粒子、火山性ガス、亜硫酸ガスなどの腐 食性因子があります。その評価は海塩粒子の影響がある海岸地区、亜硫酸ガスの影響があ る重工業地区、結露・霧の発生が多い山間部、塵埃の多い都市地区など地区別で考えるこ とが一般的です。 6.10-1 試験方法 溶融亜鉛めっきした鋼材にタナカ-CZ を施し たものを使用し、各暴露地に設置致しました。 設置状況例を写真 6 に、各暴露地の環境情報を 表 11 に示し、その評価基準は表 12 に従って行 いました。 写真 6 暴露試験状況(福井県高浜市) 表 11 暴露地 大阪府大阪市 兵庫県 豊岡市 〃 兵庫県 和田山町 〃 沖縄県 (伊計島) 大阪府堺市 和歌山県 由良町 福井県高浜町 福井県小浜市 京都府綾部市 各暴露地とその周囲の環境状況 環 境 都市地域 山間部で霧の発生が多い (白さび発生の多い地域) 山間部で霧の発生が多い 山間部で霧の発生が多い (近くに池あり・樹林地) 周囲を山に囲まれた田園地域 海岸線より 100m にある。 海塩粒子の影響大 工業地域内、海塩粒子の影響大 海岸線より 200m と 300m にある。 海塩粒子の影響大 海岸線より約1km の山裾 山間部で霧の発生が多い 山間部 表 12 評価基準 評 価 白さび発生無し 微少な点状の白さび発生 白さび発生面積 0% 1~5% 全面的に点在する白さび発生 5~20% 全面的に白さび発生 20%以上 (試験片全体に対する白さびの発生面積) 6.10-2 試験結果 試験結果を表 13 および表 14 に示します。 大気暴露試験の開始時期が試験地毎に異なるが、 外観観察結果は、 下記の通りであった。 タナカ-CZ には全く白さびの発生が見られなかった。写真 7 に福井県高浜市での 11 年経過 後の暴露試験片を示します。写真の通り白錆の発生は認められません。 写真 7 暴露試験の外観状況(11 年経過後) 表 13 タナカ-CZ 試験片の各暴露地での外観(白さび発生)調査結果(No.1) 暴露地 暴露日 大阪府大阪市 暴 露 期 間 1 遇間 1 カ月 2 カ月 3 カ月 4 カ月 5 カ月 1997.09.19 ― 異常なし ― 異常なし ― 異常なし 1998.08.03 ― ― 異常なし ― ― 異常なし 〃 ― ― 異常なし ― ― 異常なし 1997.09.03 異常なし ― ― 異常なし ― 異常なし 1998.08.04 ― ― 異常なし ― ― ― 〃 ― ― 異常なし ― ― ― 〃 異常なし ― ― 異常なし ― 異常なし 1998.08.04 ― ― 異常なし ― ― ― 〃 ― ― 異常なし ― ― ― 〃 ― ― ― 異常なし ― 異常なし 1998.08.05 ― ― 異常なし ― ― ― 〃 ― ― 異常なし ― ― ― 〃 ― ― ― 異常なし ― 異常なし 1998.08.05 ― ― 異常なし ― ― ― 〃 ― ― 異常なし ― ― ― 沖縄県(伊計島) 1997.09.19 ― ― ― 異常なし ― ― 大阪府堺市 1997.10.14 ― ― 異常なし ― ― ― 和歌山県由良町 〃 ― 異常なし 異常なし ― ― 異常なし 福井県高浜町 1997.12.25 ― 異常なし ― ― 異常なし 異常なし 京都府舞鶴市 〃 ― 異常なし ― ― 異常なし 異常なし 京都府綾部市 〃 ― 異常なし ― ― 異常なし 異常なし 兵庫県豊岡市 1 〃 2 兵庫県和田山町 1 〃 * 2 ― 調査なし 表 14 タナカ-CZ 試験片の各暴露地での外観(白さび発生)調査結果(No.2) 暴 暴露地 大阪府大阪市 兵庫県豊岡市 1 〃 2 兵庫県和田山町 1 〃 2 露 期 間 6 カ月 7 カ月 8 カ月 11 カ月 12 カ月 13 カ月 ― 異常なし 異常なし ― ― 異常なし 14 カ月 ― ― 異常なし 異常なし ― ― ― 異常なし ― 異常なし 異常なし ― ― ― 異常なし ― 異常なし 異常なし ― ― 異常なし ― ― ― 異常なし ― ― ― 異常なし ― ― 異常なし ― ― ― ― 異常なし 異常なし ― ― 異常なし 微少な点状の白さび 発生(1/3) ― ― ― 異常なし ― ― ― 異常なし ― ― 異常なし ― ― ― 異常なし ― 異常なし 異常なし ― ― 異常なし ― ― ― 異常なし ― ― ― 異常なし ― ― 異常なし ― ― ― 異常なし ― 異常なし 異常なし ― ― 異常なし ― ― ― 異常なし ― ― ― ― 異常なし ― ― 沖縄県(伊計島) ― 異常なし ― ― ― 異常なし 微少な点状の白さび 発生(1/3) 微少な点状の白さび ― 発生(1/3) 微少な点状の白さび 発生(4/4) ― ― ― 大阪府堺市 異常なし 異常なし ― ― 和歌山県由良町 異常なし ― ― 異常なし ― ― 異常なし 福井県高浜町 ― 異常なし ― ― ― ― ― 京都府舞鶴市 ― 異常なし ― ― ― ― ― 京都府綾部市 ― 異常なし 16 カ月 20 カ月 21 カ月 25 カ月 6年 11 年 13 年 大阪府大阪市 ― ― ― 異常なし 兵庫県豊岡市 1 ― 異常なし ― 異常なし ― 異常なし ― 異常なし 異常なし 異常なし 異常なし 異常なし 暴 露 期 間 暴露地 〃 2 兵庫県和田山町 1 〃 2 沖縄県(伊計島) 大阪府堺市 ― ― ― 和歌山県由良町 ― ― 異常なし 福井県高浜町 異常なし 京都府舞鶴市 異常なし 京都府綾部市 * ― 調査なし 6.11 性能試験のまとめ 表 15 にタナカ-CZ 処理皮膜の性能試験条件および評価方法とその結果を示す。 表 15 タナカ-CZ処理の性能試験条件および評価方法と試験結果 試験項目 試験条件および評価方法 耐 摩 耗 性 試 験 真鍮ブラシによる素地露出までの往復回数 (◎:10 回以上、○:6~9 回、△:2~5 回、×:1 回) ◎ (100 回以上) 電 気 抵 抗 試 験 試験片(200×75×9tmm)の両端の電気抵抗を、直流抵抗測定器により測定 0.04Ω以下 塩 水 噴 霧 試 験 JIS Z 2371 に従って試験し、1000 時間経過後の腐食減量を測定 143 g/m2 促進耐侯性試験 JIS D 0205 に従って試験し、2000 時間後の外観を評価 (退色・耐白さび性=◎:変化なし、○:軽微に変化あり △:全面変化あり) ◎ 酸 性 雨 試 験 pH3.5 に調整した酸性溶液を噴霧し、60 時間後の白さび発生の有無を評価 (◎:発生なし、×:発生あり) DIN 50018(ドイツ工業規格)に準拠 亜碇酸ガスを封入した試験槽内(温度 40℃・湿度 100%、 8時間)→試験槽から取り出し、乾燥状態にて 16 時間放 置 計 24 時間を1サイクルとし、20 サイクル後の外観 を評価 亜硫酸ガス試験 退色=◎:一部に発生、○:全体に軽微に発生、 △:全面に発生 皮膜の耐食性=○:めっき皮膜の侵食が僅かにあり △:浸食ややあり、×:侵食多くあり 耐白さび性=◎:発生なし、×:発生あり 退色 △ 皮膜の耐食性 △ 耐白さび性 ◎ 湿潤(50℃・RH95%、2時間)→乾操(60℃・RH15~20%、2時間) 計4 乾 湿 繰 り 返 し 試 験 時間を1サイクルとして、100 サイクル後の外観を評価 (退色・耐白さび性=◎:変化なし、○:軽微に変化 △:全面変化あり) 噴霧(20℃・RH100%、12 時間、pH4.5 に調整した酸性溶液を噴霧)→乾 酸 性 水 燥(40℃・RH15~20%、12 時間)計 24 時間を1サイクルとして5サイクル 乾湿繰り返し試験 後の白さび発生の有無を評価 (◎:発生なし、× :発生 あり) 試験片(表面積 0.0219m2)をイオン交換水(NaOH でpH7.0 に調整)1 リッ 水 へ の 溶 出 量 トルに浸漬し、時間の経過後(2、4、8、24、72hr)のpH変化、Zn および Cr の溶出量を測定 コンクリートとの反応性 および付着強度 飽和水酸化カルシウム水溶液中 24 時間浸漬後の皮膜の外観観察 コンクリートに埋め込まれたφ16mm丸棒の、引き抜き付着強度測定 外観観察の評価 大 気 暴 露 試 験 耐白さび性=◎:白さびの発生がなく、異常が認めら れない ○:微少な点状の白さび発生 △:全面的に点在する白さび発生 ×:全面に白さび発生 ◎ 大阪府大阪市 兵庫県豊岡市 〃 兵庫県和田山町 〃 大阪府堺市 沖縄県(伊計島) 和歌山県由良町 福井県高浜町 京都府舞鶴市 京都府綾部市 ◎ ◎ 72 時間後 pH 7.53 Zn 0.227ppm Cr0.01ppm 以下 外観変化なし 24.3kgf/cm2 ◎(25 ヶ月) ◎(20 ヶ月) ◎(20 ヶ月) ◎(20 ヶ月) ◎(20 ヶ月) ◎(24 ヶ月) △(13 カ月) ○(21 カ月) ◎( 13 年 ) ◎(16 カ月) ◎(7カ月) タナカ-CZ処理皮膜は亜鉛めっき表面を酸化させた薄い皮膜であるため、海水飛沫や凍結 防止剤、火山性ガス(温泉地)などの腐食性の強い物質が直接あたる環境や、自動車タイヤ での摩耗が頻繁に起こる場所などでは皮膜が侵され消失してしまいます。このような状況下 では短期間で白錆の発生や退色を生じる可能性がありますので、選定の際には設置される環 境に十分ご注意頂きますようお願い申し上げます。 7.タナカタナカ-CZ 処理の製品写真集 高速道路の防球ネット支柱 (N 4) 建築物の外装板(N 4) 高速道路標識柱・照明柱(N 4) 立体駐車場の外装板(N1.5) 景観用グレーチング(N 1.5) 田中亜鉛鍍金株式会社 ■ タナカ-CZ処理のお問い合わせは 弊社品質管理課、営業部へお願いします。 ■ 本社及び本社工場 JIS 表示認証工場 JQ0506004 〒555-0012 大阪市西淀川区御幣島 5 丁目 1 番 1 号 TEL (06)6472-1234 FAX (06)6473-2354
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