ホール効果

磁気センサを用いた
電力計測システムの構築
ホール素子による
微小消費電力計
Table of Contents
1.
2.
3.
4.
ホール素子の動作原理
電力計回路とその動作原理
計測のための準備と設定
LEDインジケータを用いての消費電力測定
1.ホール素子の動作原理
図(1-1)
図(1-1)のように導体にx方向に制御
電流Ic[mA]を流し,これと垂直なz方
向に磁束密度B[T]の磁界を加えると、
電流の担い手である電子は,電流の
向きと磁界の向きの両方に垂直なy
の向きにローレンツ力を受けて移動
し,導体のP側に溜まります.一方,
反対のQ側には電子の足りない部分
ができ,そのためyの負の方向に起
電力が生じます.これをホール効果
といいます。
1.ホール素子の動作原理
ホール効果によって発生する起電圧は以下の式
によって与えられます。
Vh = K ⋅ Ic ⋅ B[mV ]
被測定電圧V[V]に
対応させる
・・・式(1-1)
被測定電流I[mA]に
対応させる
Vh = K ⋅ (a ⋅ V ) ⋅ (b ⋅ I )
Vh / Kab = V ⋅ I (= P)
・・・式(1-2)
Vh : ホール電圧[ mV ]
K , a, b : 比例定数
Ic : 制御電流[mA]
B : 磁束密度[T ]
V : 負荷電圧[V ]
I : 負荷電流[mA]
P : 消費電力[mW ]
式(1-1)はホール素子の出力の関数です。これを式(1-2)のように変
形します。負荷電圧V[V]に対応した制御電流Ic[mA]をホール素子に
流した状態で、負荷電流I[mA]に対応した磁束密度B[T]をあたえると、
消費電力に比例したホール電圧Vh[mV]を得ることができます。本研
究で試作した回路は、このホール素子の乗算特性に着目しました。
2.電力計回路とその動作原理
図(2-1)は電力計回路のブロック図です。
n
V-Ic変換
I
+
A
Ic
THS123
コア
発電
-
Vh
負荷
V
コアにギャップが
設けてあり、その
図(2-1) 空隙にホール素
子を挟む
増幅
Vout
制御電流Ic[mA]をホール素
子に流すために、n点で分
圧しV-Ic変換回路を設けて
負荷電圧V[V]に比例した電
流を発生させます。
コアにエナメル線を200回巻
いたコイルに負荷電流を流
して磁束B[T]を発生させま
す。ホール素子は制御電流
Ic[mA]と磁束B[T]を受けて
ホール電圧Vhを発生します。
V-Ic変換器の内部抵抗は
極めて高く、さらにコイルは
内部抵抗が約2[Ω]と小さく、
回路による電力損失は小さ
いものとなります。
2.電力計回路とその動作原理
電力計回路
V-Ic変換部
R 3 100k
R 1 560k
2
1
R 4 VR500
増幅部(差動増幅)
3
R 2 560k
A
A1
R7 100k
センサ部
R 5 100k
6
V IN
4
R11 100k
7
1
2
5
3
R 9 100k
A2
R 6 VR3k
14
12
R8 100k
THS123
R10 100k
9
8
10
A3
図(2-2)
13
A4
R12 100k
Vout
2.電力計回路とその動作原理
使用部品と価格
個数
目安価格
R1∼R3、
炭素皮膜抵抗
560k[Ω]:2
R5、R7∼R12 (精度0.1%以下) 100k[Ω]:8
R4,R6
可変抵抗
500[Ω]:1
3k[Ω]:1
A1∼A4
オペアンプ
TL084:1
100円前後
THS123
ホール素子
THS123(東芝):1
100円前後
コア
トロイダルコアに
ギャップを設けた
もの
FRA127-43:1
4つ入りで
840円前後
1個当たり
210円
エナメル線
Φ0.26[mm]
φ0.26[mm]:約4[m]
100[m]で600
円前後
表(2-1)
3.計測のための準備と設定
∼準備∼
実験に必要なものは、
発電機、負荷(ここではインジケータを利用)、低電圧電源(15V)2個、電圧計もし
くはDMM。配線は図(3-1)。
その他校正用に10[mA]程度を測定できる電流計が必要です。
∼設定∼
消費電力の測定を行なう前に、校正が必要になります。
ホール素子の制御電流Ic[mA]の最大定格は10[mA]なので、最大入力電圧を印
加した際に10[mA]を越えないよう、R4を調整します。
次にフルスケール調整が必要です。オペアンプの最大出力は約14[V]ですので、
それを超えないよう利得をR6で調整してください。
3.計測のための準備と設定
電圧計やDMM
負荷
-
+
グラウンド
Vout
-
+
-
負荷へ
発電機
+
15V
15V
DC電源
DC電源
+
Vin
V+
V-
図(3-1) 配線図
-
+
-
4.LEDインジケータを用いての
消費電力測定
図(4-1)の様な回路を負荷として利用し、その特性をグラフにまとめました。
-
+
LED1 赤
LED2 黄
LED3 緑
LED4 青
R1 100[Ω]
R2 100[Ω]
D1
R3 100[Ω]
D2
R4 100[Ω]
D3
図(4-1) LEDインジケータ
この回路は入力電圧V[V]の違
いによってLEDが赤∼青まで順番
に発光するもので,LEDの発光に
必要な順電圧の違いを利用したも
のです.約1.8[V]で赤,2.2[V]で黄,
2.7[V]で緑,3.3[V]で青のLEDが
発光する仕組みになっています。
約4[V]程度で全てのLEDが発光
するので,最大入力電圧V=5[V]
で制御電流Ic=10[mA]となるよう
にR4を調整しています。
4. LEDインジケータを用いての
消費電力測定
Vout-P特性
180
160
140
P[mW]
120
100
インジケータ
80
緑点灯
60
40
青点灯
P=26・Vout-16[mW]
赤点灯
20
黄点灯
0
0
1
2
3
4
5
Vout[V]
図(4-2)
6
7
8
4.LEDインジケータを用いての
消費電力測定
図(4-2)から分かるとおり、出力電圧Vout[V]と消費電力P[mW]は
正比例の関係を持ち、その直線も良好なものになっています。
従って、Vout[V]の値からP[mW]を得ることができます。電力計法
のように電流計・電圧計を二つ接続する必要が無く、Vout[V]のみ
で消費電力の変動を読み取ることができます。
LEDインジケータの実験では、最大入力電圧は5[V]としましたが、
この回路ではR4の調整で入力電圧V=20[V]程度まで対応可能で
す。従って、手回し発電機にも利用できます。
今後の課題としては、5[mA] 以下の微小電流のセンシング、ゼロ
点修正、電池駆動、直読式のディジタル表示などが残りますが、
現時点で微小な消費電力の変動を読み取るには実用可能です。