4健康 5窓の心理的効果 3-8-4

4健康
居住者の血圧も140~170近くと高めが多いの
窓は屋根、外壁などと比べて住宅の中で熱の出
伊香賀教授(慶應義塾大)
らの調査・研究による
に比べ、断熱性能の高いモデル住宅の室温は
入りが最も多い部位であり、高断熱住宅には高
と、人の健康と住まいの環境には密接な関係が
20℃前後で血圧値も低めに抑えられていること
性能な窓ガラスが不可欠です。
あるという報告があります。この中で住宅内の
がわかります。
Low-E複層ガラスの窓は、暖冷房負荷を減少さ
部屋の温度が特に血圧に影響し、脳疾患や心疾
また、岩前教授(近畿大)
らの研究によると、高
せ、光熱費を安価にするだけではなく、冬期の
結露防止、夏期、冬期の窓近傍の熱的快適性の
患など循環器系疾患の罹患率にも差が生じるこ
断熱住宅に転居した後にアレルギー性疾患やア
とが報告されています。 図 7 は複数の被験者に
トピー性皮膚炎などの有病率が減少した、とい
向上、さらには居住者の健康維持に欠かせない
よる、自宅と断熱モデル住宅に宿泊した時の、
うデータもあります
( 図 8 )。これは、高断熱住
アイテムとなっています。
室温と起床時血圧を比較した例です。自宅は無
宅では結露が減少し、それにともなってカビ・ダ
断熱の家が多く、室温は5℃~10℃前後と低く、
ニの発生も抑制されたことを裏づけるものです。
起床時の収縮期血圧[mmHg]
モデル住宅宿泊時
改善率=
新しい住まいで出なくなった人
前の住まいで出ていた人
気管支喘息
のどの痛み
せき
アトピー性皮膚炎
60%
160
150
140
手足の冷え
肌のかゆみ
目のかゆみ
アレルギー性結膜炎
アレルギー性鼻炎
40%
130
120
用:板硝子協会パンフレット「エコガ
引
ラスで実現 !快適・健康・省エネの家づ
くり」*こうち健康・省エネ住宅推進協議
会と伊香賀研究室
(慶應義塾大)による共
同調査
図8
用:岩前 篤:Heat20 2013年3月24日
引
評 価WG報告 住宅エネルギー性能評価
手法の最新情報より抜粋
※G4は 次 世 代 省 エ ネ 基 準
( 平 成11年 基
準)
相当
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光・熱・省エネルギー
自宅(室温最低日)
170
20%
110
100
0
5
10
15
20
0%
25
血圧測定時の居間室温[℃]
図7
図7
80%
180
窓は採光のためだけではなく、窓から見える景
色による視覚的な刺激や窓の大きさによる開放
図8
住宅の断熱グレードと病気の改善率の関係
表 7 窓の心理的な効果アンケート調査結果
心理的な項目
気分的な心地よさ
疲労回復
感など心理的な利点があります。窓の心理的な
効果に関するアンケート調査結果では圧迫感の
室内の変化
低減、外とのつながりといった項目にも回答者
が多いです
( 表 7 )。
雰囲気のよさ
学校では、カリフォルニア、ワシントンおよびコ
ロラドにおける調査で、窓が大きい教室の学生
は、窓が小さい教室の学生より数学、読解力で
進捗が速いという結果を得られたといいます。
また、窓が大きい教室の学生の方が、テストの
点数で良いという結果も得られています。また、
G5
転居後の住宅の断熱グレード
複数の被験者による、自宅と断熱モデル住宅に
宿泊した時の室温と起床時血圧を比較
5窓の心理的効果
※
G4
G3
落ちつき・集中
外界との連続感
疲れを癒せる
リラックスできる
気分転換できる
目を休められる
視覚的な刺激がある
空間に変化がある
見て楽しめる
健康的な感じがする
清潔感がある
雰囲気が明るい
圧迫感が低減できる
落ちつきがある
安心感がもてる
集中しやすい
開放感がある
外とのつながりがある
調査結果
指摘人数13名以上
(全体の70%)
指摘人数9名以上
(全体の50%)
指摘人数9名未満
(全体の50%未満)
参考文献:日本建築学会計画系論文集 第474号「窓の心理的効果とその代替性」
別の研究で、無窓の教室では若年者ほど欠席率
が高く、心理学的に精神病質のグループに分類
影響を与えるという結果もあります。
される学生が多い結果となったという事例もあ
建物の省エネルギーだけを優先するなら、単純
は、開口部を大きくとることが大切であり、ガラ
ります。
に窓の開口率を小さくして壁を増やせばよいで
スは省エネ性能と熱的快適性に優れたLow-E
を過ごす室内環境を心理的に快適にするために
事務所では、ある調査において、従業員の殆ど
しょう。しかし、窓ガラスには省エネ以外に重要
複層ガラスを使用されることをお奨めします。
が電気照明より自然光を好むアンケート結果と
な役割があります。建物内部にいながら外部へ
なりました。また、コールセンターでの調査で
の視覚的なつながりを感じられるのが「窓」に
参考文献
・T he distinctive benefits of glazing: The social
and economic contributions of glazed areas to
sustainability in the built environment (Glass for
Europe)
・シンポジウム資料 スマート・デイライティング-快適な
省エネルギー照明設計に向けて- (2013年11月29日、日
本建築学会 環境工学委員会 光環境運営委員会 省エ
ネルギーと光環境小委員会)
は、自然光による照明レベルと仕事の効率に正
特有の機能であり、在室者の精神的安定性にも
の相関があるという結果となりました。
寄与しているわけです。
病院では、自然光が入りやすい病室は入院期間
私たちは、一生涯のうち80%以上の時間を建物
が短いという調査結果があります。また、自然光
の中で過ごすと言われています。
は手術後の回復期間や鎮痛薬の使用量に良い
かけがえのない人生のうち、これだけの長時間
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