1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-4,6,6,7,8,8

SIDS in HPV programme & CCAP
SIAM 28, 15/04/2009
初期評価プロファイル(SIAP)
1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-4,6,6,7,8,8,-ヘキサメチルシクロペンタン-γ-2-ベンゾピラン
物 質 名 :1,3,4,6,7,8-Hexahydro-4,6,6,7,8,8-hexamethylcyclopenta-γ-2-benzopyran(HHCB)
CAS No.:1222-05-5
SIARの結論の要旨
物理的-化学的特性
HHCBは融点が-10と0℃の間で、沸点が325℃の粘性のある液体である。蒸気圧は0.0727 Pa(25℃)で
ある。HHCBは測定水溶解度が1.75 mg/L(25℃)である。ゆっくりと撹拌する方法によって測定された時
のlog Kowは5.3と判定された。
ヒトの健康
HHCBの経口または吸入によるばく露後の入手可能なトキシコキネティックデータはない。静脈内投与の
後に多くのHHCB代謝物がラットとブタの尿サンプル中に検出された。96 %アルコール中の1 % HHCBを用
いるヒトの表皮粘膜によるin vitro 収試験で、塗布用量の5.2 %が24時間以上で吸収された。
HHCBは、意図的にばく露されていない欧州の数カ国の女性の母乳サンプル中に、最高濃度1316μg/kg 肪
で、また脂肪組織中に濃度範囲12-189μg/kg 肪で検出された。
ラットの経口LD50はウサギの経皮LD50と同様に > 3000 mg/kg bwであった。ラット経皮LD50(雌)は >
6500 mg/kg bwであった。急性吸入毒性データは入試できなかった。
HHCBは、動物とヒトにおける刺激性と感作性の試験から判断されるように、皮膚に対して、腐食性でも
刺激性でも感作性でもなかった。気道刺激性に関するデータは入手できなかった。関連する試験で、HHCB
はウサギで僅かな眼刺激性物質であると考えられた。動物試験から(ウサギとモルモット)HHCBは光刺激
性かもしれないという若干の徴候があった。ヒトおよびin vitro試験は光刺激性影響を示さなかった。
OECD ガイドライン408に従った、動物15匹/性/用量(経餌濃度は 5、15、50、または150 mg/kg bw/dで
あった)の90日経口試験において、死亡または有害性臨床徴候は無かった。処置群の体重および摂餌量は対
照群で観察されたものと同様であった。眼科的評価では変化は観察されず、どの用量でも有意な組織病理学
的所見は観察されなかった。対照との血液学的および血液化学的な違いは、全て僅かで、多くの場合、投与
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量に比例していなかった。これらの所見は有害な組織病理学的または他の関連する所見を伴わず、それらは
有害性影響では無いとの結論に達した。ラットにおいて、HHCBについて試験した最高用量150 mg/kg bw/d
のNOAELが結論された。
広範なin vitro の一連の試験および一つのin vivo マウス小核試験により証明されたように、HHCBは、非
遺伝毒性物質であった。in vitro でHHCBは、複数の細菌による代謝活性化系有無の遺伝子突然変異試験で、
一つの代謝活性化系有無のCHO-K1細胞による染色体異常試験で、代謝活性化系有無のヒト細胞によるSCE
と小核試験で、ならびに一つの初代培養肝細胞によるUDS試験で陰性であった。HHCBはin vivo 小核試験
で有意な染色体異常も誘発しなかった。
発がん性試験データは入手できなかった。
標準多世代試験は入手できなかった。13週間経口反復投与毒性試験において、経餌による0、5、15、50お
よび150 mg/kg bw/dの投与は、雌雄ラットの生殖器官への影響がなかった。さらに、生殖能力への影響は周
産期/出産後の検査で見出されなかった。
経口による周産期/出生後毒性試験において、妊娠雌ラット28匹の群は、毎日一回0、2、6、および20 mg/kg
bw/dの用量に胃管強制により、妊娠14日から離乳を経て出産後21日(周産期段階の期間の子宮内、または授
乳中母獣のミルクへの移行を通じたF1世代のみのHHCBのばく露)までばく露された。母獣またはそのF1お
よびF2の新生仔の毒性は最高用量まで見られなかった。NOAEL 20 mg HHCB/kg bw/d(試験した最高用量)
が確定された。
経口による発生毒性試験において、HHCBは、コーン油中、胃管強制により、雌ラット25匹の群に用量50、
150および500 mg/kg bw/dで妊娠7日から17日投与された。母獣毒性の徴候が150 mg/kg bw/d以上で観察さ
れた。最高用量の500 mg/kg bw/dで胎仔の骨格奇形の発生の増加と骨形成の減少があった。母獣毒性の
NOAELは50 mg/kg bw/d、発生毒性のNOAELは150 mg/kg bw/dであった。上記の周産期/出産後毒性試験か
ら、NOAEL 20 mg/kg bw/d(試験された最高用量)が確定された。HHCBはin vitro で非常に弱いエストロ
ゲン性を有したが、他の点ではOECD TG 440と同じである、最高が40 mg/kg bw/d(マウスの飼料中300ppm 、
2週間)までのin vivo の非卵巣摘出マウスによる子宮肥大試験において、このような影響は見られなかった。
HHCBは、入手可能な情報によれば、生殖/発生毒性に対する懸念を示さない。
HHCBは、その低い有害性プロファイルにより、ヒトの健康に有害性を示さない。OECD HPVプログラムの
目的のために、ヒト健康の有害性を特徴付けるのに適切なスクリーニングレベルのデータが入手可能である。
環境
分子中に水と反応する官能基を含んでいないので、HHCBは加水分解的に安定であると考えられる。大気
条件下で、太陽光による直接光分解およびOHラジカルとの気相の反応がHHCBの主要な分解経路であると考
えられる。測定反応速度定数2.6×10-11cm3 molecule-sec-1に基づき、そして昼間12時間、OHラジカル濃度
1.5×106 OH-ラジカル/cm3と仮定すると、大気中半減期は3.7時間である。湖水中のUV照射による分解半減
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期は、北緯50度の真夏晴天時の太陽光に相当する実験室での設定条件下で、約109時間であった。HHCBは
OECD TG 301B試験で易生分解性でなかった。一次生分解行程で、HHCBは、ありそうな中間体として
HHCB-ラクトンとヒドロキシカルボン酸と共に、より極性のある一連の代謝物に急速に変化した。10 mgの
活性汚泥を用いる放出地点の表層水の状況をシミュレートする河川水のdieaway試験で、14C-標識された親物
質の消失と代謝物の生成が確認された。全体の半減期は100時間であり、28日で生分解(初期)は60 %を超
えた。汚泥のdieaway試験で、10~15時間の半減期が観察され、28日後に代謝物として70 %が存在していた。
被験物質を添加した土壌と底質におけるメソコスムス試験は、HHCBがほぼ完全に1年以内に消失したことを
示す。通常の活性汚泥を散布した圃場において、HHCBおよびAHTN (CAS.1506-02-1)*の合計として表され
る土壌中の残留は、最後の汚泥散布後数年以内に、推定散布量の1%よりも十分に低かった。
*:JETOC註:7-Acetyl-1,1,3,4,4,6-hexamethy-1,2,3,4-tetrahydronephtalene
大気、水および土壌コンパートメントに同等に継続的に分布するレベルⅢのフガシティーモデルはHHCB
が大気に<<1 %、水に2 %、土壌に34 %および底質に64 %分布することを示唆した。Henry則定数の測定値
は36.9 Pa.m3/mol(25℃)である。logKowに基づく推定logKocは4.39であり、測定logKoc値(様々なマトリッ
クスで3.6~4.9)の範囲内であった。OECD TG 305E の試験に従ったHHCBの生物濃縮係数測定値は、ブル
ーギル サンフィシュで1584およびゼブラフィッシュで624であった。その排出半減期は2日未満であった。
急性水生毒性データが得られている。
Taxon
Invert
Daphnia magna
Algae
Pseudokirchneriella
subcapitata
Result mg/L
Endpoint
96h-LC50
1.36
(mortality)
72h-EC50*
0.88
(immobility)
72h-EC50
0.854
(growth rate biomass) 0.723
Invert
Acartia tonsa [marine]
48h-LC50 (mortality)
0.47
Invert
Nitocra spinipes [marine]
48h-LC50 (mortality)
1.9
Fish
Test species
Lepomis macrochirus
Bluegill sunfish
Guideline
M/N**
OECD TG 204
M
OECD TG 202
- part 2
M
OECD TG 201
M
draft ISO/DIS
14669
draft ISO/DIS
14669
N
N
*OECD TG 202-part2試験(以下参照)から導出、**N:設定濃度;M:測定濃度
以下の慢性毒性試験結果が水生生物種について決定されている:
Taxon
Algae
Invert
Invert
Fish
Fish
Test species
Pseudokirchneriella
subcapitata
Daphnia magna
Acartia tonsa [marine]
Lepomis macrochirus
Bluegill sunfish
Pimephales promelas
Fathead minnow
Result mg/L
Endpoint
72h-NOEC
0.201
(growth rate)
21d-NOEC
0.111
(reproduction)
6d-EC10 (larval
0.044
development ratio)
21d-NOEC(respiratio
0.093
n, equilibrium)
32d-NOEC (survival,
0.068
growth, development)
Guideline
OECD TG 201
OECD TG
202-part 2
OECD draft TG
(lifecycle test) (2004)
OECD TG 204
OECD TG 210
M/N*
M
M
M
M
M
*N:設定濃度;M:測定濃度
毒性試験はOECD TG218に基づき、または沿って3種の底生生物種で実施された。有機炭素含量2 %**で、
28日NOECは、小昆虫の幼虫Chironomus riparius で200 mg/kg dwt***(発生)
、端脚類Hyalella aztecaで
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7.1 mg/kg dwt(生長)および水生貧毛虫Lumbriculus variegatesで16.2 mg/kg dwt(生長)であった。毒性
試験は土壌生物についても実施された。OECD TG207に従ったミミズEisenia foetida の8-週間NOEC(繁殖)
および、ISO/CD 11267に従ったトビムシFolsomia Candida の4-週間NOEC(繁殖)は双方とも45 mg/kg
であった。
**JETOC註:基質または底質中の含量、***:dry weight(乾重量)
HHCBは環境有害性(急性水生毒性値 < 1 mg/Lおよび易生分解性ではない)を示すかもしれない。OECD
HPVプログラムの目的のために、環境有害性を特徴付けるのに適当なスクリーニングレベルのデータが入手
可能である。
ばく露
HHCBの製造の全ては、2000年で製造量1000~5000トン/年の欧州の1つの工場にある。RIFM(Research
Institute of Fragrance Materials )とIFRA(International Fragrance Association)によれば、使用量は1993
年と2006年の間に実施された地域調査に基づいている。EU-15に所属する国々に、準加盟国のノルウェーと
スイスを加えた国々について、1992年の2400トン/年、2000年の1427トン/年から2004年には1307トン/年へ
と使用量が減少した。
HHCBは芳香油(fragrance oil)の原料に使われる。fragrance oil は文献中で、fragrance compounds,
fragrances, fragrance composition, perfume oil または perfume compositions とも言われる。HHCBは一
般的に多環ムスクとして知られる最大量の芳香剤原料の製品である。芳香油は複雑な混合物であり、多くの
芳香剤原料の様々な濃度での調合により作成される。これらの原料のほとんどはHCCBを溶解した液体であ
る。芳香油の主な用途は、香水、化粧品、石けん、シャンプー、洗剤、繊維製品のコンディショナー、家庭
クリーナー製品および空気清浄剤のような消費者製品である。最終消費者製品とするための芳香油と他の原
料との混合は、しばしば調剤(formulation)と呼ばれる。
HHCBの環境放出は、製造、混合、配合および消費者による使用中/後に生じるかもしれない。全使用量は
下水中に排出されると推定される。
職業ばく露は製造、混合、配合および洗濯業者による洗濯中に生じうる。経皮および吸入によるHHCB純
物質への職業ばく露、およびHHCBを含む混合物への経皮ばく露が関連する。芳香油の混合および消費者製
品の配合は、相互汚染を避けるために、高いレベルのオートメーション化、厳密な換気および高度な作業精
度を必要とする。職業清掃作業者は洗浄剤の使用時にHHCBにばく露し、また、希釈洗浄液に手を入れる都
度、経皮ばく露が生じるかもしれない。洗濯業者は洗剤を使用中にばく露されるかもしれず、そして、薄め
た洗剤水溶液に手を浸す毎に経皮ばく露が生じるかもしれない。
消費者ばく露は経皮ならびに吸入ばく露の後に生じるかもしれず、経皮ばく露が最も高い。
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