平成23年6月22日(水) 医療安全管理研修 栄養マネージメントとNST 統合医療安全管理室 栄養サポートチーム(NST)担当 中堀 昌人 栄養不良が続くと? ① 手術や外傷、褥瘡(床ずれ)など、創傷治癒の 遅れや悪化 ② 免疫力の低下による感染症の増加や病態の 悪化 ③ 筋力低下による日常生活の質の低下(歩行 困 難、嚥下障害、誤嚥性肺炎など)が原因で、 入院生活が長くなり、ひいては死にいたること もある 栄養管理 • 日本静脈経腸栄養学会の初代理事長である 小越章平先生のお言葉 栄養管理はすべての医療の基本 万病に効く薬はないが、栄養は万病に効く • 栄養療法の意義:病態の改善・寛解、免疫力増強 患者の意欲・栄養意識の向上 栄養管理のポイント 栄養評価 (アセスメント) 栄養状態と共に病態・治療方針を把握 適切な栄養療法 栄養療法の選択 投与開始時期・投与スケジュール 入院患者のアルブミン値 (当院調査) 29% アルブミン値: 3.0mg/dl以下 71% アルブミン値: 3.1mg/dl以上 2011年5月20日 389人 エネルギー充足率 (アルブミン3.0以下症例) 6% 10% 3% 7% 0~20% 21~40% 41~60% 53% 61~80% 21% 81~100% 101~% エネルギー充足率 2011年5月20日 111人の調査 =摂取カロリー/必要カロリー (摂取カロリーはオーダーベース) 栄養管理に関する診療報酬 ① 栄養管理実施加算 (2006年4月) 1日12点(120円)の診療報酬 ② 特別食加算 1食につき、76円加算(1日228円) ③ NST加算 (2010年4月) 1週間(毎) 200点(2000円) 栄養管理実施加算 平成18年度の診療報酬改定に合わせて、栄養管理の 重要さが認められ、患者側にわかりやすく、しかも入院 中の生活の質を高める医療とサービスの実現を目指す 内容として、入院時食事療養費の基本方針が打ち立て られた。 1.常勤の管理栄養士が1名以上配置されていること。 2.入院患者ごとに栄養状態の評価を行い、医師や栄養士、その 他医療従事者が共同して、栄養管理計画を作成していること。 3.当該栄養管理計画に基づいて、入院患者ごとの栄養管理を 行うとともに、その栄養状態を定期的に記録していること。 4.『当該栄養管理計画に基づいて、患者の栄養状態を定期的に 評価し、必要に応じてはその見直しをしていること』 という条件を満たした場合のみ、1日12点の診療報酬が加算 される(1食640円:1日3食として1920円に120円上乗せ)。 特別食加算(診療報酬抜粋) 治療食とは、腎臓食、肝臓食、糖尿食、胃潰瘍食、貧血食、膵臓食、脂質異常症食、痛風食・・・ をいう(胃潰瘍食については流動食を除く)。 心臓疾患に対して減塩食療法を行う場合は、腎臓食に準じて取り扱うことができるものである。 なお、高血圧に対して減塩食療法を行う場合は、このような取り扱いは認められない。腎臓食に準 じて取り扱うことができる心臓疾患等の減塩食については、食塩相当量が総量(1日量)6g未満 の減塩食をいう(心不全病名で算定可)。 肝臓食とは、肝庇護食、肝炎食、肝硬変食、閉鎖性黄疸食(胆石症及び胆嚢炎による閉鎖性黄疸 の場合も含む)等をいう。 十二指腸潰瘍の場合も胃潰瘍食として取り扱って差し支えない。 クローン病、潰瘍性大腸炎等により腸管の機能が低下している患者に対する低残渣食について は、 特別食として取り扱って差し支えない。 高度肥満症(肥満度が+70%以上又はBMIが35以上)に対して食事療法を行う場合は、脂質異常 症食に準じて取り扱うことができる。 大腸X線検査・大腸内視鏡検査のために特に残渣の尐ない調理済食品を使用した場合は、 「特別な場合の検査」として取り扱って差し支えない。 特別食として提供される脂質異常症食の対象患者は、空腹におけるLDL-コレステロール値が 140㎎/dL以上又はHDL-コレステロール値が40mg/dL未満若しくは中性脂肪値が150㎎/dL以上で ある者である。 特別食として提供される貧血食の対象となる患者は、血中ヘモグロビン濃度が10g/dL以下であ り、 その原因が鉄分の欠乏に由来する患者である。 経管栄養であっても、特別食加算の対象となる食事として提供される場合は、当該特別食に準じて 算定することができる。 特別食加算の適応食と適応疾患(参照) 腎臓食: 心臓疾患に対し減塩食療法を行う場合、腎臓食に準じて取り扱うことが可能 (当院では心臓・高血圧食: 高血圧病名では算定不可、心不全病名で算定可) 肝臓食: 肝炎、肝硬変、閉鎖性黄疸 膵臓食: 膵炎 糖尿食: 糖尿病 胃潰療食:十二指腸潰瘍も可、流動食は除く 貧血食: 血中ヘモグロビン濃度が10g/dL以下である鉄欠乏性貧血。 高脂血症食: LDL-コレステロール値140㎎/dL以上又はHDL-コレステロール値 40mg/dL未満若しくは中性脂肪値が150㎎/dL以上 BMI35以上の高度肥満症に対する治療食を含む)、 痛風食、フェニールケトン尿症食、楓糖尿症食、ホモシステン尿症食、 ガラクトース血症食、治療乳、経菅栄養のための濃厚流動食、 クローン病、潰瘍性大腸炎等により腸管の機能が低下している患者に対する低残渣食 については、特別食として取り扱って差し支えない(当院では腸炎・低残渣食)。 大腸X線検査・大腸内視鏡検査のために特に残渣の尐ない調理済食品を使用した場合 は、「特別な場合の検査」として取り扱って差し支えない。 経管栄養であっても、特別食加算の対象となる食事として提供される場合は、 当該特別食に準じて算定することができる。 特別食加算のオーダー漏れ 糖尿病、高脂血症、心不全(心臓疾患)などの 症例で、常食が出されており、加算されていない 症例が多い。 患者さんの栄養意識の向上のためにも 基本的には治療食を提供するのが望ましい。 1食につき、76円加算(1日228円) (1食につき、640円→716円) (1日につき1920円→2148円) NST加算 常勤薬剤師を含む専任のチームの設置などを施設基準とした 「栄養サポートチーム加算」(新NST加算)を、2010年4月診療報酬改定で導入 病院勤務医の負担軽減や、処遇改善をうながす体制づくりの要件 【対象】 7対1または10対1入院基本料の届出病棟に入院し、 栄養管理実施加算が算定されている栄養障害を有する患者など。 【算定 】 週1回に限る。 200点(2000円) 【要件 】 [1] 週1回以上の栄養カンファレンス と 回診 [2]栄養治療計画に基づく チームによる診療 [3]1日当たり算定患者数は1チームにつき、概ね 30人以内 【必須条件 】 専任チームは、栄養管理に関する所定の研修を修了した 常勤の医師、看護師、薬剤師、管理栄養士による編成をとし、 このうち1人を専従とすること。 他、歯科医師や臨床検査技師らの参加は、望ましい規定とする。 ※後期高齢者退院時栄養・食事指導料については、新NST加算の新設に合わせて廃止 NSTとは? Nutrition Support Team (栄養 サポート チーム) 多職種の医療スタッフ(医師・看護師・ 管理栄養師・薬剤師・検査技師など) が集団で患者さんに適切な栄養管理 (栄養評価や栄養療法など)を実施す るチーム ☆栄養療法はチームアプローチで! 医師 栄養士 薬剤師 臨床検査技師 看護師 事務職員 褥瘡 対策チーム NST ミーティング・回診 NST依頼書に基づきカンファレンス・ ラウンドを実施する (コンサルテーション型として活動) 毎週 月・木曜日 16:30から実施 参加メンバー ・NST(専従・専任必須) ・リンクナース ・病棟患者担当看護師 コンサルテーション用紙 依頼内容 ①食欲不振,体重減尐 ②アルブミン低値(<3.0) ③経腸栄養管理法の計画 ④静脈栄養法の計画 ⑤摂食嚥下障害 ⑥栄養アセスメント施行 具体的に希望される内容を 記入してださい。 栄養管理課で記入後 病棟に戻します。 NSTラウンド予定日: 月 日( ) 時~ NSTラウンドシステム 主治医の判断により NST依頼 NST委員会 カンファレンス 回診で評価 病棟 モニタリング ・投与カロリーの見直し ・経腸・経静脈栄養法の選択 ・提供食の選択 ・PEGの管理 ・嚥下指導 NST委員会 プラン立案 ・病状の把握 ・摂食状況・栄養剤投与の確認 ・PEG適応判定 ・栄養評価(身体計測、 間接熱量測定) NST依頼件数(症例数)の推移 70 59 60 58 50 50 46 46 件数 41 40 36 35 2009年度 30 30 25 24 25 20 10 8 10 6 6 5 5 2 4 6 8 6 2 0 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 月別 11月 12月 1月 2月 3月 2010年度 2010年度 依頼内容 (1月まで: 392例) 0% 3% 7% 4% 食欲不振 10% 摂食嚥下障害 3% 経腸栄養管理法の計画 静脈栄養の計画 栄養状態の評価 73% 嚥下リハビリ ダイエット NST依頼(例) ☆ 静脈栄養(末梢・中心静脈)の治療計画 ☆ 経管栄養患者の栄養計画 ☆ 褥創患者 ☆ 嚥下困難・誤嚥性肺炎(嚥下リハビリ) ☆ 癌患者など低栄養状態の栄養評価と栄養療法 ☆ 癌化学療法時における栄養療法 ☆ 慢性肝炎、肝硬変の栄養療法(LES、静脈栄養) ☆ 急性・慢性膵炎の栄養療法 ☆ Crohn病など炎症性腸疾患の経管栄養 ☆ その他高齢者や術前・術後の低栄養の患者さんや 食欲不振、極度の肥満などの患者さんなど NST活動で気になること ・末梢静脈栄養のカロリー不足 ・TPN時の脂肪乳剤オーダー ・経腸栄養剤の選択 末梢輸液とおにぎりのエネルギー量 200kcal以上 =100kcal 86kcal以下 183kcal 末梢静脈栄養の限界 フィジオ35 ビーフリード ビーフリード ビーフリード 水分 2100mL エネルギー 1030kcal イントラリポス TPN時の脂肪乳剤 ネオパレンやフルカリックのような高カロリー輸液は【糖質・タンパ ク質・ビタミン・電解質・水分】の補給であり、三大栄養素の一つ 『脂質』は含まれません。脂肪酸は細胞膜の保持やホルモン合成 等に必要であり、健康な人でも総エネルギーの20%程度を脂質 で摂取することが望ましいとされています。長期間摂取がない場 合には、必須脂肪酸欠乏症(皮膚の弾力性低下、発赤のある湿 疹、脱毛、魚鱗癬様変化、ミトコンドリアの膨潤、易感染性、毛細 血管・爪の脆弱化、不感蒸泄増加、発育遅延,高コレステロール血 症、動脈硬化)を起こす可能性があります。 高カロリー輸液(ネオパレン・フルカリック)だけでは必須脂肪酸 の不足が考えられますので、脂肪乳剤の投与を検討ください。 必須脂肪酸補充:20%イントラリポス100ml 週3回投与 半固形化経腸栄養剤の特徴 栄養剤半固形化 胃-食道逆流が減少 嚥下性呼吸器感染症の減少 一度に注入ができる 介護者の負担が軽減 栄養剤胃内停滞時間延長 下痢の予防 瘻孔からの栄養剤の もれの改善 座位保持が不要 体位変換の継続 褥瘡悪化の予防 半固形化栄養剤 ①誤嚥性肺炎の原因になりうる逆流が起こりにくい。 ②胃瘻からの漏れが尐ない ③下痢が尐ない ④注入時間が短くてすむ。 大塚製薬 ハイネゼリーアクア 容量250g 水分202g 熱量200kcal 粘度6000mPa・S 半固形化栄養剤 (粘度調整食品による半固形化) ジャネフ REF-P1 カルシウムイオンと反応してゲル化。 カルシウム含量の多い流動食(栄養剤)を胃の 中でトロリとさせる。 ~経鼻胃管でも注入できる~ 朝 熱量:300kcal 水分:251ml 食塩相当量:1.4g 熱 量 メディエフバック kcal + 白湯 + 白湯 合計 1200 kcal kcal 251ml 251ml 502ml + 白湯 1504 ml 200ml 200ml 100ml 朝 熱 量 熱量:300kcal 水分:400ml 食塩相当量:1.5g 水 分 昼 夕 1パック 1パック 2パック 300 300 600 kcal メイバランスR GREEN 夕 1パック 1パック 2パック 300 300 600 kcal 水 分 昼 kcal 合計 1200 kcal kcal 400ml 400ml 800ml + 白湯 + 白湯 + 白湯 0ml 0ml 0ml 1600 ml 今後のNST活動 RST(人口呼吸器サポートチーム)との コラボレーション。 褥創対策チームとのコラボーション。 各診療科とのコラボーション。 (全科にリンクドクターのお願い) 院内スタッフのレベル向上。 チーム医療の浸透。
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