ダウンロード(約5MB) - トルコ大使館 文化広報参事官室

東部アナトリア地方
イサクパシャ宮殿、アール
東部アナトリア
地方
トルコ国境南側と平行して走るトロス山脈は、北端で黒海山脈と繋
がり、広大な範囲に渡ってトルコ東部の国境をかたどっています。
ヴァン地方の民族衣装
シュプハン山
旅行者はトルコ東部、南東部の驚く程さまざまな景色に目を見張ります。エルズルムのレッド・オーカー(代
赭石)の台地、森、滝、カルスやアールの緑の牧草地、旧約聖書にも出てくる根雪を被ったアール(アララット)
山、そして紺碧の水をたたえた巨大なヴァン湖。この広大な地域では、住居や生活様式も多種多様です。例えば、
カルスの典型的な住居は、地面に直接建てられた土屋根のある小さな家です。カルスの人々はほとんどが質素な
生活をしていますが、一般に親切で心の温かい人達です。
この地域は長く波乱に満ちた歴史の舞台であったため、ビザンチンの僧院や教会、セルジュクの霊廟、隊商宿、
オスマン・トルコの品性高いモスク、そして丘の上に立つ城跡など、多様な文化遺産が残されています。
アクダマルの教会、ヴァン
ケマリイェ、エルズィンジャン
エルズィンジャン・ダム、エルズィンジャン
ギルヴェリッキの滝
トルコのなかでもこのアナトリア東部地方は、旅行好きや冒険好きには魅惑と驚嘆、そして知を得られる場所
なのです。
エルズィンジャンからドーゥバヤズットまで
アナトリア横断自動車幹線道は、アンカラからシヴァス、エルズィンジャン、エルズルム、アール、ドーゥバ
ヤズットを通ってイラン国境までを最短で繋ぐルートです。
銅版彫り、エルズィンジャン
ママ・ハトゥン・キャラバンサライと霊廟、エルズィンジャン
アンカラから 688km 東の肥沃な平野にあるエルズィンジャンは、この地域で重要な都市です。多くの装飾が
手作業で施されるエルズィンジャンの銅製品は、この地方の有名な金属加工品として昔から定評があります。ア
クブルト・スキーセンターは、エルズィンジャンから 40km 西にあり、ウィンタースポーツ愛好者が利用でき
る施設があります。レファヒイェ郡にあるドゥマンル高原は、
松林に囲まれた静かなところです。スキーセンター
及び高原は、ともに標高 2000m のところにあります。また、エルズィンジャンには二つのスポーツクラブがあっ
て、チームに分かれて馬上から木製の槍を投げて得点を争う、
“ジリット”と呼ばれる激しい馬上槍投げが行わ
れています。この競技は主にトルコ東部で盛んです。
エルズィンジャンの東、アルトゥンテぺのウラルト時代の発掘現場からは、巨大なブロンズ製の出土品が多数
発見されており、これらはアンカラにあるアナトリア文明博物館に収蔵されています。出土品の多くは、大体紀
元前 900 〜紀元前 600 年頃のものです。テルジャンには、12 世紀に建造された円形のママ・ハトゥン霊廟が
あります。美しい彫刻が施された石造りの正門があり、ちょっと回り道をしても見る価値があります。ギルヴェ
ケマリイェ
アルトゥンテペ、エルズィンジャン
エルズィンジャンの草花
リッキの滝はエルズィンジャンから 29km 南東にあり、岩に落ちる水音を聞きながらのんびりとお弁当を食べ
たりできる、理想的なピクニックスポットです。エルズィンジャンから南西には、フラット(ユーフラテス)川
沿いの美しい緑に囲まれた街、ケマリイェがあります。素朴で親切な人々と町並みを楽しみに行ってみてはいか
がでしょうか。カランルック・ボアズの近くには、ラフティングとカヌーに最適な場所があります。この辺りの
美しい自然の景観をシャッターに納めるために、写真撮影に出かけてみるのもいいでしょう。
エルズィンジャンから 193km 東にあるエルズルムは、アナトリア東部最大の都市で、海抜 1950m に広がる
広大な台地の上にある街です。
ジリット
エルズルム
市内に入っていくと、まず目に飛び込んでくるのが露土戦争の記念碑、アズィズイェ・モニュメントです。
考古学博物館にはこのエルズルムから出土した歴史的な遺物や、古跡からの出土品が数々収蔵されていますが、
実際は市内にある建物自体が、歴史を如実に物語ってくれています。城壁や城塞はビザンチン統治時代を思わせ
るつくりで、テオドシウス皇帝が建造した 5 世紀の城跡は、海抜 2000m の丘の上に建っています。なかでも特
にセルジュク時代の建築は、すばらしい美しさで圧巻です。ウル・ジャーミイ(大モスク)は、1179 年に、赤
いライオンと呼ばれていたメリク・ナスレッディン・メフメットによって建てられました。非常に珍しい 7 つ
の広い身廊を持っています。チフテ・ミナーレリ・メドレセは、セルジュク王朝のスルタン アラエッディン・
ケイクバットが 1253 年に建造した神学大学で、精緻な石彫りが施された荘厳な二つのミナレットと正門は、見
る者に感動を与えます。このチフテ・ミナーレリ・メドレセの背後にはウチュ・キュンベットレルという 3 つ
の墓廟があり、いちばん目立つのが、エミル・サルトゥクのものです。13 世紀のハートゥニイェ霊廟は、スル
タンアラエッディン・ケイクバットが娘のために建てた霊廟です。13 世紀に建てられたヤクティエ・メドレセ
レリーフ、ヤクティエ・メドレセ
現地産の黒石で作られた数珠
エルズルムの草花
の正門と、タイルを張り巡らせたミナレットは、セルジュク様式のまた違った美しさの一面を見せてくれます。
エルズルムでは他に、オスマン様式の建築物も見られます。偉大なる建築家シナンは、このエルズルムにもララ・
ムスタファ・パシャ・モスクという作品を残しています。このモスクのすぐ近くに、アタテュルクが宿泊し、議
会を行っていた家と博物館があります。
チフテ・ミナーレリ・メドレセ
パランドケン・ウインター・スポーツ・リゾート
エルズルムの街を探索していると、良く地元原産の黒い石(エルズルム・オルトゥ・タシュ)を加工したアク
セサリーが目につきます。タシュハン(リュステム・パシャ・キャラバンサライ跡)の 2 階にある貴金属店では、
これらのアクセサリーを豊富に取り揃えています。
エルズルムから見事な山並みを眺めながら 6km ほど進めば、ウィンタースポーツのリゾート、パランドケン
に辿り着きます。このスキー場には、多くのホテルがあり、トルコでも最良の雪質と長いコースがあることで、
上級のスキーヤー達に特に人気があります。草が生い茂るトルトゥム湖は、エルズルムからアルトヴィンと黒海
方向を約 120km 行った所にあり、トルコ国内では最も静寂な風景が広がるところです。湖の北端で 47m の高
さから落ちるトルトゥム滝は一見の価値があります。
(4 月〜 6 月の雪解の期間を過ぎると、
滝がくっきりと見え、
流れもかなり緩やかになります。
)
カルス
馬橇、アニ、カルス
使徒達の教会、カルス
トルトゥム地方のバーバシュ村にあるハホ教会は、始めは僧院として、961 年〜 1001 年の間にグルジアの
偉大な王デーヴィットによって建てられました。僧院の教会部分は当時のままの姿で保存され、現在は地元の
モスクとして使用されています。この教会は、エルズルム―アルトヴィン間の高速道路をエルズルムから 85km
ほど行った所にあり、キレッチリ橋からは 8km の地点です。ウズンデレ郡のチャムルヤマチ村の住居は、エル
ズルムーアルトヴィン高速道路から 7km に位置し、10 世紀末にデーヴィット王により建てられました。グルジ
ア建築の黄金期が垣間見られます。
エルズルムから 212km 北東に位置する標高 1750m のカルスは、トルコの歴史上、特に重要な役割を果たし
た町です。
金のイコン、カルス博物館
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カルス
カルス地方の民族舞踊
露土戦争ではここカルスが戦乱の中心でした。市内の建物には、いまでもロシア時代の名残が見られます。
12 世紀セルジュクの砦の下からは、南部の市街地が広がっています。近くのハヴァーリレル博物館(10 世紀の
聖使徒の教会)を見ると、様々な建築様式が混在していることがわかります。キリストの 12 人の弟子達がドー
ム外壁にある鐘を鳴らしている、やや稚拙で素朴な浅浮彫りの彫刻を見ることができます。考古学博物館には美
しい木彫作品や周辺地域から収集したコインの素晴らしいコレクションの他、トルコ東部の民族史に関わる品々
が展示されています。カルスは、独特のキリムとカーペット、そして古来より踊り継がれて来た民族舞踊で良く
知られています。カルスの伝統的な民族舞踊は、観光客を楽しませます。周囲の遊牧地である山の村々は、高級
なカシャル・チーズや美味しい蜂蜜の産地です。
カルス地方のキリム
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アニ遺跡、カルス
カルスから 42km 東には、昔のシルクロード上であった中世都市、アニ(オジャクル)の遺跡が残っています。
今だに堅固な城壁が、幾つもの教会やモスク、隊商宿を取り囲んでいるのが印象的です。千年もの時の流れに耐
えて残っている大きな教会には驚嘆させられます。サルカムシュ(カルスの 53km 南西)には、松林に囲まれ
たスキー場とリゾートホテルがあります。
キュル川はアルダハン(カルスから 83km)で分流し、古い市街と新しい都市部とを隔てています。冷酷王と
して知られる 16 世紀のスルタン セリムによって建造された王宮は、トルコ国内でも最も風格を感じさせる城
跡となっており、旧市街に 745m にわたって 14 の塔を残しています。ポソフを経てアルダハンを北へ向うと、
今ではグルジアと自由に行き来できるようになった国境のトゥルクギョズ検問所があります。
シェイタン(悪魔の)城
チュルドゥル湖、アルダハン
アルダハンの草花
チュルドゥルの名は、海抜 1965m に位置する近くの湖の名にちなんでいます。この湖は様々な種類の野鳥が
生息する、風光明媚な場所にあります。湖の中には人工の島、アクチャカレ島があり、そこにはウラルトゥ語で、
この島の造成に何千人のもの労働者が従事した、
との碑文が残されている神殿があります。シェイタン(悪魔の)
城はチュルドゥルの近くです。
サルカムシュ・スキーセンター、カルス
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イサク・パシャ宮殿、ドーゥバヤズット、アール
ウードゥルは、豊富な果物と、この地の地理的条件とは相反して綿花もが育つ、肥沃な平野にあります。旧約
聖書には、大洪水が引いてから、ノアの一族がアール(アララット)山から肥沃な平野へと降りて行ったことが
記されています。ノアの子孫たちは、ここから出発してフラット(ユーフラテス川)とディジレ(チグリス川)
沿いに定住し、
人類の 2 世代目となったのでしょう。この平野からのアール(アララット)山の眺めは、最高です。
ウードゥル市から近い名所としては、
ウラルトゥの岩の記念碑や 13 世紀セルジュクの隊商宿、
カラカレ(黒い城)
などがあります。ウードゥル市とアラルック間の道筋にあるカラコユン村では、カラコユン(黒羊王朝)の記念
墓碑がある、15 世紀の印象的な墓地に是非立ち寄ってみてください。
町を見下ろす山にちなんで名付けられたアールは、平野からは標高 1650m に位置しており、この地域でも重
要な都市のひとつです。アールはエルズルムから東 183km のところにあります。北東には素敵なバルック・ギョ
リュ(魚の湖)があるので、魚を使った美味しい地元料理のレストランが豊富にあることが頷けます。この地
域には至る所に温泉も噴出します。寒さに強いアウトドア派なら、アールの 20km 南西にあるエレシィキルト・
イサク・パシャ宮殿、
ドーゥバヤズット、アール
イサク・パシャ宮殿、ドーゥバヤズット、アール
スキーセンターで数日間の雪遊びを楽しんでみてはいかがでしょう。
アールから東へ 95km、ドーゥバヤズットから東 5km のところにある壮麗なイサク・パシャ宮殿は必見です。
この地方の総督であったイサク・パシャと、チョラック・アブディ・パシャによって 1685 年から 1784 年の間
に建設された、オスマン、ペルシャ、セルジュクの建築様式を取り混ぜた宮殿です。宮殿内には 366 の部屋と、
モスク、法廷、厨房と焼き釜、倉庫、浴室などがあります。近くには紀元前 9 世紀のウラルトゥ王の浮き彫り
や岩墓もあります。
アールの草花
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アシュレ(ノアの箱舟プリン)
アール山
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ノアの箱舟、アール
ドーゥバヤズットの近郊にはトルコでも随一眺めの美しい天然のモニュメント、標高 5137m のアール(アラ
ラット)山がそびえています。この山を探索したある研究者らは、山の頂き近くに雪と氷に埋まっているノアの
方舟があると信じています。小アララット山は、標高 3925m あります。ドーゥバヤズィットの東 25km にある
ユゼンギリ村では、ノアの妻が方舟で最後に残った僅かな食材から作ったのが起源と言われるアシュレ(ノアの
プディング)と呼ばれるデザートを楽しめます。
マラティヤからハッカリへ
この地方へ最短で行くのは、中央アナトリア高速道に乗ってカイセリ、マラティヤ、エラズー、ビンギョル、
ムシュ、ヴァンを通り、ハッカリを経由してイランへ向うルートです。
ウル・モスク、マラテヤ
アスランテペ発掘現場
スルタンスユ・ストゥド農場、マラテヤ
マラティヤ(アンカラより東 670km)はアンティ―トロス山脈のふもとに広がる肥沃な平野にある賑やかな
都市です。考古学博物館に収蔵されているのは、フラット(ユーフラテス)川下流地域から発掘される新石器時
代から金石併用時代にかけての出土品です。マラティヤ市立博物館の隣には、通路全体に銅製品の店が立ち並ぶ
市場があります。また、マラティヤは国内の杏子生産の一大拠点で、杏子のお菓子、ドライフルーツや新鮮な杏
子の実などの試食ができます。現在のマラティヤより起源が古い二つの小さな町へも足を伸ばしてみてもよいで
しょう。7km 離れたアスランテペは紀元前 1000 年頃のヒッタイトの首都で、9km 先にはかつての古代都市メ
リテネであったバッタルガーズィがあります。バッタルガーズィにはビザンチン領であった遺跡や、町中にはセ
ルジュク様式建築の最良例とされる 13 世紀のウルモスクが残っています。
杏でできた製菓類、マラテヤ
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ケバン・ダム、エラズー
ハルプット、ウル・モスクの内部
エラズーは 19 世紀に古代のハルプト城を頂いた山の陰となる平野に建設された町です。ハルプトは重要な教
育文化の中心でした。数回の地震による破壊と近年のエラズーの建設で、人々は新しい町へと移動し、ハルプト
の人口は激減しました。それでも、見応えのあるセルジュクのモスクがいくつか残っています。巨大な人造湖を
擁するフラット(ユーフラテス)川のケバン・ダムとカラカヤ・ダムは、周囲の環境を著しく変化させました。
エラズーの南 25km には、ゆったりとした気分にさせてくれる、美しく静かなハザル湖があります。
ハザル湖、エラズー
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ハザル湖、エラズー
トゥンジェリ
夏期にはビーチや観光施設が解放されています。ハザル湖岸の 9 つの浜は、
ブルー・フラッグ(EU が認定する、
美しい浜に与えられる賞)が授与されました。ハザルババ山はハイキング向きの素敵な場所で、近々スキー場と
してもオープンする予定です。
高い山々に囲まれたトゥンジェリは、エラズーからエラズー―エルズルム街道を 133km 北へ向った所にあり
ます。途中、中世に建てられて現在まで良好な保存状態を保っているペルテク要塞に、是非立ち寄ってみてくだ
さい。トゥンジェリから 60km 北西のムンズル渓谷国立公園はオヴァジュクに近く、マスの大群が押し寄せる
急流で、周囲の景色を楽しみながらの魚釣りを楽しめます。
ムンズル、トゥンジェリ
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ムシュ
ビンギョルという街の名は、
「千の湖」を意味し、周囲の山々に沢山ある氷河湖にちなんでいます。街中には
中世の要塞が遺構となって残っています。西 20km のところには、ビンギョル―ヨルチャトゥ(クルジャダー)
スキーセンターがあります。ビンギョルはそれぞれの時代に、セルジュク王朝、モンゴル、アクコユン(白羊朝)、
ペルシャ、オスマン帝国に支配された歴史があります。
ムシュ(ビンギョルから 115km 東)は 6 世紀に建設された都市です。ウル・ジャーミイ(大モスク)は、14
世紀後半のオスマン様式建築です。歴史的に重要なムラト橋はムシュから 10km のムシュ―ヴァルト街道にあり、
12 のアーチを持つセルジュク様式のものです。17 世紀〜 18 世紀にかけてつくられたモスク、ハジュ・シェレ
フとアラーッディン・ベイは一見の価値があります。コルクテリの名産であるキリムとスィールト毛布は、是非
ご覧いただきたいです。ヴァルト地方には、ウラルトゥの遺構が残るカヤル・デレ村があります。ヴァルトから
20km のハムルペット湖は、マス釣りやアヒルの猟、ガンや鴨狩りが楽しめます。
アハラットの記念墓碑、ビトリス
ムシュの草花
ビンギョル地方の民族舞踊
マラズギルト地方は、1071 年にビザンチンを破ったセルジュクの拠点でした。今は、4 つの風変わりな城、橋、
古墳等が見どころです。ブラヌク地方には、
1290 年のモッラケント・モスク、
1321 年の神学校があり、ともにシェ
イフ・イブラヒムがアハラット産の石材を使用して建造しました。カザン湖は、魚釣りやピクニックにいい場所
です。
活気溢れる都市ビトリス(ムシュから 85km 東)は、緑のオアシスの中に位置しており、タバコ産業の一大拠
点です。街の建物、シェレフハン・メドレセや 12 世紀のウルモスク、セルジュク時代のギョクメイダン・モスク、
オスマン時代のシェレフィエ・モスクなどの建造物にも地元産の黒みがかった石が使われています。
ハジュ・シェレフ・モスク、ムシュ
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アハラットの記念墓碑、ビトリス
ビトリス・サプギョル・スキーセンターは街の中心の近くにあります。ヴァン湖(ビトリスの 25km 北東)は
西岸のタトヴァンから列車を乗せるフェリーを利用して、対岸まで渡ることが出来ます。ネムルト・ダー(アドゥ
ヤマン地域にあるネムルト山国立公園ではなく、ネムルト山のこと。
)では登山に挑戦することもできます。山
の中腹には、火山性の温泉が湧き出ている深い火口湖があります。
タトヴァン、ビトリス
アハラットの遺跡はタトヴァンから 44km 北のヴァン湖西岸にあります。かつてはトルコ芸術文化の重要な都
市であったこれらの遺跡も、今は近代の建造物の間に点在しています。12 世紀にはヴァン盆地を統治していた
トルコ系諸国の首都でした。数々の霊廟、特にエミール・バユンドゥル廟、ウル廟、ハサン・パシャ廟、チフテ
廟などを見れば、セルジュクの墓廟建築と装飾様式の概要が理解できるでしょう。セルジュク時代の墓には、優
雅に刻字された 12 世紀の記念墓碑があります。トルコ美術博物館には、陶磁器のコレクション、古代のコイン、
装飾品などが展示されています。アハラット新市街には、湖畔の旅行者のための宿泊施設、浜辺の施設やレスト
ランなどがあります。
アハラットの記念墓碑、ビトリス
エミール・バユンドゥル霊廟、アハラット、ビトリス
湖沿いをドライブすると、岸辺に地元の暗色火山岩でできたウルモスクが建っているアーディルジェヴァズま
で行くことができます。アーディルジェヴァズの 10km 西にはケフ城とその近くに紀元前 9 世紀ウラルトゥの
ハルディ神殿があります。ここから出土した遺物は、アンカラのアナトリア文明博物館でご覧になれます。アー
ディルジェヴァズ高校の敷地内には、神殿の柱の基部が置かれています。
アーディルジェヴァズ、ビトリス
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ホシャップ城塞、ヴァン
ヴァン(ビトリスから 170km 東)は、古代ウラルトゥの首都トゥシュパがあったところで、いまではヴァン
湖東岸への旅行者がやってきます。辺鄙ながら重要な街であるヴァンは、岩山のふもとの緑あふれるオアシスの
中にあります。紀元前 9 世紀の風格漂う城跡は、新旧両市街を見下ろしており、岩山に穿たれた階段を上ると、
ウラルトゥの城塞へ出られます。この階段を半分程登った辺りに刻まれているのは、クセルクセス(セルセ)王
を称えるくさび文字です。城塞の中には、ウラルトゥ王家の岩墓があります。旧市街にはセルジュク時代、オス
マン時代の建築様式を反映している、ウルモスク、フスレヴ・パシャ・モスク、カヤ・チェレビ・モスク、イキ
ズ廟(双子の霊廟)があります。ヴァンで注目の考古学博物館は、今は無人の旧地区から奥に入った新市街にあ
ります。ヴァンの女性たちは今だに伝統的な生活を守っていて、青や赤、白の美しい模様のあるキリムを織り上
げています。魅惑的なヴァン猫は、白毛に覆われ、目の色が青、緑と片方ずつ違っている保護指定種の猫です。
トルコの主要郵便局の収集切手部門では、この美しいヴァン猫の切手を販売しています。
ハリメ・ハートゥン霊廟、ゲヴァシュ、ヴァン
絨毯を織る女性達
ゲヴァシュ、ヴァン
ヴァン イスケレシ(ヴァン桟橋)には居心地の良いティー・ガーデンやレストランが人々を魅了します。リゾー
ト・センターのエドレミットは 14km 南西にあり、泳いだりキャンプができるビーチを持っています。同じ方
向にあるゲヴァシュにて、装飾が施された墓碑が数多く見られるセルジュクの墓地や、綺麗なハーリメ・ハトゥ
ム霊廟を訪問することができます。
ヴァン湖は標高 1720m にあるトルコ最大の湖で、北西側にはシュプハン山(4058m)
、南側には南側にはイ
フティヤル・シャハップ山脈といった、美しい山々に囲まれています。湖周囲を巡って、古代ウラルトゥの古跡
やこの辺りに住んでいた他の文明の人々が残した旧跡などを訪ねてみることも出来ます。
ヴァン猫
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アクダマル島、ヴァン
ヴァン湖には、僧院や教会が建てられている島々があります。居住地から離された場所であることから、そこ
に宗教の共同体があったことが伺えます。特に重要な島は、ヴァンの 41km 南西にあるアクダマル島(岸から
は船で 30 分)です。この島には、旧約聖書の場面や人物が入念に彫刻された石壁を持つ 10 世紀ころの教会が
あります。観光見物の後は、泳いでみたり、島のアーモンド林でのピクニックを楽しんだりもできます。時間に
余裕があるなら、チャルパナック島の景色や、現在博物館に転用中の 12 世紀の教会などを訪れると良いでしょ
う。
サット山、ハッカリ
ヴァンからハッカリ街道を 35km 行ったチャウシュテペには、貴重なウラルトゥの城跡が残っています。
1970 年に発掘が開始され、今は神殿や王宮、犠牲用の祭壇、碑文などを見ることが出来ます。ホシャップへ向い、
のどかな地帯を曲がりくねって走るハッカリ街道を行く途中にあるゼルネック・ダム湖は、休憩スポットになり
ます。ホシャプは、ヴァンから 60km にあり、小さな丘の上におとぎ話に出てくるような 17 世紀のお城が建っ
ています。内部はかなり傷んでいますが、外観の銃眼や小塔はよく保存されています。
双子の霊廟、ヴァン
ハッカリの草花
ヴァン湖周辺の魅力的な自然景観は、ヴァンから 88km 北にあり、心が和むティー・ガーデンやレストランが
あるムラディエの滝でしょう。また、ヴァンから 60km 南のガフニスピ―ベヤズチェシュメの滝もおすすめの
見どころです。
ヴァンから南東 203km 離れた遠いハッカリまでの間は、ジロ―サット山地やザップ渓谷といった、トルコで
最も雄大な景色を楽しめます。ザップの標高 1748m の街には、中世の要塞跡がそびえ立っています。
ムラディエの滝、ヴァン
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文化遺産は壊れやすいものです。
世界の文化遺産は、大きなパズルのようなものです。物体である遺跡は、私たちの起源、発展そして私た
ちの現在の生活を洞察する力を与えてくれる全体像のかけがえのない一部なのです。遺跡は、私たちが他の
文化を正しく理解し、認識するのに役立ちます。新しい発見や新しい解釈がパズルに加わり、全体像がもっ
とはっきりするようになります。私たちは、将来の世代もこのパズルを楽しむ機会を持てるように、遺跡の
ひとつひとつを保護しなければなりません。
私たちの文化遺産が地震、洪水などの自然災害および汚染や人間の行為などのようにゆっくりと作用する
プロセスからのストレスにさらされていることを、多くの人が気付いていません。記念品として古代の陶器
やモザイク画の破片を集めるなどといった悪気のない行為でさえ、何千回と繰り返されると破壊的な影響を
持つようになります。石、金属または織物という物体に手を触れると、ごく少量ですが油脂、酸または汗が
その表面に付着します。遺跡に登ると、下部構造物が磨り減り、遺跡が破壊されてしまう場合があります。
名前を書いたり、彫ったりする行為は、永久的な傷を与えてしまいます。大きなバッグやバックパックを持っ
て狭く混雑した場所を歩き回ると、物体を倒してしまったり、壁画に引っ掻き傷を付けてしまい、台無しに
してしまったりする場合があります。私たちが知らないうちに、文化遺産の破壊に手を貸してしまうという
場合が数え切れないくらい多いのです。
2020 年には、毎年 16 億人の観光客が全世界を旅行すると予想されています。私たち全員が保存に協力し
合って、私たちの文化遺産の多様性と豊富さを楽しむことができるように、私たち自身の意識を高めていき
ましょう。
国際文化財保存修復センター(ICCROM)
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トルコ国内のツーリスト・インフォメーション・オフィス
トルコ共和国大使館・文化広報参事官室(トルコ政府観光局)
〒 150-0001 東京都渋谷区神宮前 2-33-6
TEL 03-3470-6380(9:00 〜 12:30 14:00 〜 17:30) FAX 03-3470-6037 URL http://www.tourismturkey.jp/
印刷 (株)廣済堂 2008年
(黒海)