冬だからこそ歩く、 スノーシューハイキングの勧め 山は健康の源

山は健康の源(11)
冬だからこそ歩く、
スノーシューハイキングの勧め
岩崎 元郎
岩崎
地球の温暖化で、あちこちに不具合が生じてい
ぼくらがカトマンズ
ぼくらがカトマンズに戻った日は快晴で、ルク
→
る。10 月にネパールに行った。羽田→バンコク→
ラ便が二十数便飛んだと
ラ便が二十数便飛んだと聞かされたが、翌日は天
小さな
カトマンズと飛んで一泊、翌日 20 人乗りの小さな
気悪く、午後一便のみ。そ
気悪く、午後一便のみ。その翌日からは悪天で一
クラまで入
飛行機でエベレスト街道の出発点、ルクラまで入
週間ルクラ便は欠航、大勢の観
週間ルクラ便は欠航、大勢の観光客・トレッカー
る。このルクラ便というフライトは有視界飛行な
がルクラにスタックした。乾期な
がルクラにスタックした。乾期なのに一週間も悪
ので、天気が悪いとすぐキャンセルになる。日数
球がおかしくな
天が続くなんて、地球がおかしくなっている。
に限りがあるぼくらは、フライトキャンセルでカ
それくらいの地球温暖化だが、冬はやっぱり寒
ラ回りすることのないように、乾期を選んで計画
い。山歩きが好きで、春・夏・秋と軽やかに自然
したのだ。ぼくらは予定通りルクラに飛び、ホリ
の中を飛び回っていた方も、木枯らしが吹くとた
デーロッジで昼食を済ませてからメラピーク登山
ちまちお尻が重くなる。そんな自分を容認しては
に向かった。
いけない。人間は動物、動き回っていてこそ、歩
2 週間後にルクラに戻り、翌日朝の便でスムー
き回っていてこそ健康を維持・増進できるのだ。
ズにカトマンズ帰着。目指したメラピークはア
二本足歩行を考えてみたい。両の手をフリーに
タック当日が降雪・ラッセル・ホワイトアウト
してくれる二本足歩行は、人間が人間足る大きな
で登頂は断念したが、平均年齢 67.4 歳の 5 人パー
要因であろう。二本足歩行するには、重力にさか
ティーはチームワークも良く、楽しい山旅の思い
らって二本足歩行しうる筋力が無くてはならな
出を胸にカトマンズの休日を過ごしていたら、バ
い。これを「抗重力筋」と呼ぶ。①腹筋 ②背筋 ンコクが洪水で大変な状況にあるというニュース
③大臀筋・中臀筋 ④大腿四頭筋 ⑤下腿三頭筋、
が飛び込んできた。飛行機が飛ばず、帰国できな
以上五つの筋肉だ。
いかなという不安が胸をよぎったが、国際空港は
なす術もない生まれたての赤ん坊も、いつしか
水没を免れてフライトキャンセルはないという。
這いずり回るようになり、やがて掴まり立ちが出
この洪水、地球温暖化、異常気象が原因という話
来るようになり、ヨチヨチ歩きが始まる。20 年後、
しがまことしやかに飛び交った。
抗重力筋はしっかり発達し、傍目にはなんの不安
もなく、野山を歩き回るように
なる。しかし、我々日本人の成人
男女の抗重力筋の強さは、ヒマ
ラヤ山中で生活するネパール人
の成人男女と比べてどうであろ
うか。科学的根拠はないのだが、
日本人の抗重力筋よりネパール
人の抗重力筋のほうが強いと想
像できる。100 年前は差がなかっ
20
12・1 理窓
たであろうに、日本人が歩かなくなった結果の差
である。生後 20 年、それなりに強化された筋力で
はあるが、日本人の場合、歩かなくなった結果、本
来あるべき強度には達していないと思われる。だ
から日常的に運動して、抗重力筋の筋力維持をは
かる必要がある、というのがぼくの持論だ。筋力
維持に効果的な運動が、登山ということ。
春・夏・秋と、しっかり歩いてきたのに、冬が
うがいい。アウターは雨具の上下。靴はしっかり
来て寒いからってコタツに潜り込んでしまって
したトレッキングシューズ。柔らかい靴だと、ス
は、それまでの積み重ねが台無しってもんだ。冬
ノーシューズを履きにくい。
だからこそ歩かなくてはいけない。抗重力筋の筋
お勧めのスノーシューハイキング・エリアは、
力維持は 365 日歩いていてこそ、ではないか。冬
群馬県沼田北郊に位置する玉原スキー場周辺。身
ならではの楽しい山遊びを一つ紹介する、スノー
支度を調える。雨具のズボンをはき、ロングス
シューハイキングだ。
パッツを着用する。天気が良かったら、日焼け止
まずスノーシューズを用意する。深雪に潜らな
めクリームを忘れてはならない。玉原の魅力は、
いようにする用具だ。日本にも昔からワカンジキ
雪に埋もれたブナの森。スノーシューを履いて、
というものがあった。ぼくらが冬山登山に出かけ
雪に埋もれることなくブナの森の中を縦横に歩き
るときは必ず携行した。いまでも冬山登山にはワ
回れることだ。自分の前に道はない、振り返ると
カンだが、雪山遊びにはスノーシューズを用意す
自分の歩いて来た軌跡がある。生きてきた証、そ
る。ワカンよりスノーシューズのほうがカッコイ
れがスノーシューハイキングの醍醐味である。
イというか、絵になるというか、欧米コンプレッ
岩崎元郎
クスが我々にはあるような気がしてならない。
1945 年 3 月、東京大井町に生まれる。東京理科大学中退。63
年から 69 年まで昭和山岳会に在籍、登山の基本を学ぶ。
無名山塾主宰、日本登山インストラクターズ協会理事長。
ホームページ www.iwasaki-motoo.com
まっ、実際にはどっちでもいいんだけど、絵にな
るからスノーシューハイキングにしよう。現地に
レンタルがあるから、自身で用意しなくても大
問合せ先
丈夫。防寒対策はぬかりなく。保温力の大きい下
着、ウールのシャツとズボン。毛糸の帽子、イヤー
撰事務所 〒 170−0005 東京都豊島区南大塚 1−53−8
TEL 03(3942)0087 FAX 03(3942)0392
プロテクター、ネックウオーマー、サングラス、
※無名山塾及び遠足倶楽部 問合せ先
手袋、ロングスパッツ、オーバー手袋もあったほ
無名山塾 〒 170−0005 東京都豊島区南大塚1−39−2 フラット三栄1F
TEL 03(3941)3481 FAX 03(3941)3482
大久保綜合法律事務所
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