愛される製品に欠かせない 3つの価値を求めて

対談
最先端のソフトウエアで開発費を大幅に削減できた
キャンベル kode9 では PTC の製品を使っていただいたとの
こと、たいへん光栄です。
「PTC Creo」
と
「Pro/ENGINEER」のどち
奥山 kode9 は Ken Okuyama Design が作った、9番目のクル
らをお使いですか。
マです。
これまでに何台ものクルマをデザインしてきましたが、
すべて製造できたわけではありません。その中で kode9 は、
自
奥山 Pro/ENGINEER です。
分が本当に欲しいクルマは何か、内なる声に耳を傾けて作った
結果、
とてもシンプルなものになりました。
キャンベル 今も変わらずに、Pro/ENGINEER をお使いですか。
愛される製品に欠かせない
3つの価値を求めて
レトロというわけではありませんが、デザインは古典的で、装備
も最低限になっています。1960年代や70年代のレースカーを
奥山 そうですね、ステップアップしなければいけないとは
思わせるクルマです。その当時だと一般の公道を走れないよう
思うのですが。
世界で活躍するデザイナー・奥山清行氏が語るモノづくりの神髄
なクルマですが、現在では最新の技術で実現可能になりまし
た。設計したデータをデジタルで処理して、模型を作ったのは
キャンベル ぜひ PTC Creo をおすすめします。数多くの機能
最初の1回だけです。
が強化されていて、
フリースタイルで自然な形状を作ることが
できます。
キャンベル その模型は粘土で作るクレイモデルですか?ご自
分で作られた。
奥山 そうですか。デザインにおいては視覚化して、目で見る
ことが大切ですからね。あらゆるエラーを上流工程で出し切る
奥山 はい、フルスケールで、実際の姿を想像しながらです
ことが、
スムーズな下流工程につながります。
ね。数週間でクレイモデルを作って検討した後、デジタルの
データとして取り込みました。それだけでフルスケールの設計・
キャンベル PTC Creo も気に入っていただけると思います。
開発プロセスを完了できましたから、開発費が大幅に減って
ぜひお使いください。
助かりました。kode9 は100台や1000台と売るものではなく、
それよりもドライブやレース、イベントを楽しめるようなこの車
奥山 わかりました。
を中心としたコミュニティが生まれればと願っています。
kode9 を核にして、さまざまなプロダクトの展開も予定してい
キャンベル 今日はありがとうございました。たくさんの貴重な
ます。たとえば、バッグやメガネ、
レザー・ジャケットやシューズ
お話を拝聴することができました。
などです。
これらが一体となってコミュニティができて、収益を
生み出していけるのが理想です。
奥山 こちらこそ、
どうもありがとうございました。
新幹線の車両からメガネのフレームまで、さまざまな製品のデザインを
手がける奥山清行氏は、モノづくりの細部にこだわり、製造プロセスにも
深くかかわることをモットーにしている。最新作のスポーツカー「kode9
(コードナイン)」は PTC の設計ツールを使って、手描きのスケッチから
クレイモデルを作るまでの開発工程をデジタルデータで完結させた。
イタリアの名車フェラーリをはじめ、海外でも数多くの斬新な製品を生み
出してきた経験をもとに、
「自分のアイデンティティを追求してデザイン
すること」の重要性を強調する。そうしたプロセスによって生み出される
製品は「シンプル」
「モダン」
「タイムレス」という3つの価値をもたらす
という。
奥山氏が理想とするモノづくりの考え方を、PTC で CAD 製品部門のエグ
ゼクティブバイスプレジデントを務めるマイケル・キャンベルと熱く語り
合ってもらった。
イタリアの製品が歴史の流れに耐えられる理由
キャンベル 私自身も長く製品開発に携わってきましたので、奥山さんからお話
を伺えるのをとても楽しみにしています。いろいろな国でお仕事をされて、素晴ら
しい製品をたくさん作ってこられた。奥山さんは新しい製品をデザインする時に、
どのようなことを重視しているのでしょうか。
奥山 私は日本のほかに、
アメリカ、
ドイツ、イタリアなど、欧米各国で仕事をして
きました。同じ自動車業界ですが、
まったく違う環境、違うシステム、違う人たちの
中で働いてきた経験があります。1日に3000台のクルマを作ったこともあれば、別
の国では年間に500台くらいしか作らないクルマをデザインしたこともあります。
最近携わった日本の新幹線の場合は、合計しても70車両くらいしか作りません。
製造する数によって、
システムはまったく違います。
詳細については、
http://www.ptc.com/product/creo/ をご覧ください。
顧客とどう向き合うか、未来をどう見据えているかも、それぞれの国で違いがあり
<お問い合わせ先>
TEL:03-3346-3659 Email:[email protected]
ます。その中で私にとっては、イタリアにいた12年間の経験で得たものが大きい
ですね。彼らは常に歴史を振り返ると同時に、その先の未来を見つめています。
© 2014, PTC Inc. (PTC). All rights reserved. PTC 製品およびサービスに対する唯一のワランティは、該当する製品およびサービスに付随する明示の保証書において定められています。本書のいかなる内容も、追加の保証と解釈されては
なりません。PTC 製品およびサービス、
または PTC が関係している市場に関するアナリストなどによる将来の見通しは、そのアナリスト自身の見通しであり、PTC はその根拠または正確性について何ら言明いたしません。PTC、およびすべての
PTC の製品名およびロゴは、米国およびその他の国におけるPTC またはその子会社、あるいはその両方の商標または登録商標です。その他の製品名または企業名はすべて、各所有者の商標または登録商標です。新製品や新機能のリリース
時期は予告なく変更されることがあります。
PTC-Creo-KenOkuyama-JP-0314
50年、80年、100年という時間の流れの中で、モノづくりを考えているわけです。
日本はどうか。約130年前の江戸時代から明治時代にかけて、世の中ががらりと変
わりました。その後の2つの大戦を経て、
日本という国は完全にリフォームされまし
KEN OKUYAMA DESIGN 代表
工業デザイナー
奥山 清行
1959年 山形市生まれ。
ゼネラルモーターズ社(米)チーフデザイナー、
ポルシェ社(独)シニアデザイナー、ピニンファ
リーナ社(伊)デザインディレクター、アートセン
ターカレッジオブデザイン(米)工業デザイン学部
長を歴任。
フェラーリ エンツォ、マセラティ クアトロポルテ
などの自動 車 やドゥカティなどのオートバイ、
鉄道、船舶、建築、ロボット、テーマパーク等数多く
のデザインを手がける。
2007年より KEN OKUYAMA DESIGN 代表として、
山形・東京・ロサンゼルスを拠点に、企業コンサル
ティング業務のほか、自身のブランドで自動車・
インテリアプロダクト・眼鏡の開発から販売までを
行う。
2013年4月ヤンマーホールディングス株式会社
社外取締役就任。
滋慶学園 COM グループ名誉学校長、アートセン
ターカレッジオブデザイン客員教授、多摩美術
大学客員教授、金沢美術工芸大学客員教授、山形
大学工学部客員教授。
『フェラーリと鉄瓶』
( PHP
研究所)、
『伝統の逆襲』
(祥伝社)、
『人生を決めた
15分 創造の1/10000』
(武田ランダムハウスジャ
パン)、
『100年の価値をデザインする』
( PHP ビジ
ネス新書)など著書や、講演活動も行う。
た。その結果、私たちは100年よりも前のことを考えなくなってしまった。同様に、
未来のことも忘れがちです。過去と未来が分断されています。
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PTC.com
対談 ¦ ページ 1 / 4
愛される製品に欠かせない3つの価値を求めて
対談
イタリアはまったく逆でした。彼らが作る製品やサービスには、
いざ BMW のクルマを購入するときには、すべての情報が反映さ
歴史の流れに耐えられるものが数多くあります。そこには何よりも
れるわけです。
クルマは単なる乗り物ですが、
ウェブサイトを使って
「シンプル」
であることが求められます。複雑なものは長く使われる
金と人を大量に投入して開発する時代は終わった
ソフトウエアも
「シンプル」
であることが大切
顧客にエクスペリエンス(実体験)を提供することで、
「タイムレス」
奥山 彼らは国のアイデンティティというものを、企業の中に組み
キャンベル よくわかります。私には気づかなかった視点ですが、
ことなく、すぐに飽きられてしまいます。
な関係を生み出そうとしています。
込んでいます。日本では最近の20年から30年くらい、国と企業の
共感できます。先ほどおっしゃっていた「シンプル」
という視点も
しかし過去にばかりとらわれずに、
「モダン」であることも大切
ところで、日本では130年前に歴史が変わったというお話でした
アイデンティティが重なることはありませんでした。それ以前には
素晴らしいと思います。わかりやすいものが生き残るということ
です。モダンなものには、ほかとは違う何かがあります。モダンとは
ね。そこから始まった長い時間の経過が、製品開発においても広い
あったのですが。
アメリカではどうでしょうか。
ですね。
差別化であり、過去の模倣はしないということです。
視点をもたらしたと思います。だとすれば、200年、いや1000年の
キャンベル 私の個人的な見解ですが、
ヨーロッパほどではないと
奥山 製品を説明する時に、
「直感的」
とか「自然な」
といった表現
そうすると、製品やサービスの価値が「タイムレス」になります。
教訓を生かせるヨーロッパでは、長い歴史をどのように製品に
顧客のライフスタイルを豊かにすることができます。買った次の日
反映しているのでしょうか。
に忘れられるようなことはなく、世代を超えて愛され、メーカー・
思います。GE(ゼネラルエレクトリック)や GM(ゼネラルモーター
をよく使いますが、製品がシンプルであることは絶対に必要です。
ズ)
といった伝統ある会社でさえそうでしょう。建国から230年しか
例えばソフトウエアであれば、そのインタフェースが壁になってし
経っていないこともありますが。
まって、ユーザーが乗り越えなくてはならないようなものであって
販売店・顧客の間に信頼関係が生まれる。製品は売って終わりでは
奥山 まず重要なポイントは「アイデンティティ」です。国として、
ありません。追加のサービスやパーツなどを提供しながら、持続的
または企業として、仕事の現場や生活の中にもアイデンティティは
な関係を築くことが大切だと考えています。
あります。なぜ製品開発でアイデンティティが必要なのか、
「アート」
奥山 10年から15年くらい前に、日本でブランディングの議論が
と
「デザイン」の違いで説明しましょう。
盛んに行われたことがありました。日本の企業はそれまで潤沢な
キャンベル それは本当に重要なことで、
しかし難しいことでもあ
キャンベル 顧客との信頼関係を築くことは、まさに時間を超越
アートは自分のために、自分のお金で理想を実現します。結果的
研究開発費と豊富な人材を抱えていました。大人数を投入して、研
ります。ソフトウエアの場合には、性能を上げることも機能を増や
したタイムレスな価値ですね。
に売れれば、それに越したことはありません。一方、デザインは
究開発に取り組むことができました。
しかし今や、人員は削減され、
すことも簡単にできます。その結果、製品が肥大化して、何でもでき
業務委託です。使える資金はクライアントのお金ですが、真の顧
予算も縮小しています。研究開発の期間もぐっと短くなりました。
るけれども複雑過ぎて使いにくいものになってしまう。大切なのは
奥山 製品そのものよりも重要な場合が多いのではないでしょう
客はその先にいる製品やサービスを購入する人たちです。
それまでは、
とにかく作り続ければ良かったわけです。選択肢を並
バランスを見極めることです。
か。私はすべてのプロジェクトにおいて、
「モダン、シンプル、
タイム
ユーザーの満足するものを想定し形にするという、
とても難しく
べて、製造に進むかどうかを判断できた。100種類のプロトタイプ
PTC の製品開発でも、一歩下がって全体を見るようにしています。
レス」を心がけています。
苦痛を伴う作業の中で、結局は自分が何者で、何をしてきて、何が
とアイデアを検討して、
「これにしよう」
と決めるわけです。
少し前のことですが、次世代の製品開発に向けて、何をすべきかを
得意なのかが問われることになります。それこそがアイデンティ
今では、そのような時間もお金もありません。最初から候補を5つく
総点検したことがあります。私たちにしか解決できない問題は何
ティです。企業も個人も、優れた製品を作るためには、
アイデンティ
らいに絞らなければなりません。5つの候補に対して、資金・人材・
か、私たちが最も得意とすることは何かを問い直したのです。
「シン
ティを追求しなければなりません。その点がイタリア人はとても
製品開発で問われるのは自分自身のアイデンティティ
時間を集中して、最終的にヒット商品を生み出させなければなら
プル」
という考え方は、
ソフトウエアにおいても重要です。
これから
上手なのです。
ない。韓国やアメリカの企業は、この方法がうまいですね。残念
も守っていくべき方針のひとつにしていきます。
キャンベル とても興味深いお話です。タイムレスであることの
キャンベル イタリアには豊かな文化と伝統がありますからね。
はいけない。存在を感じさせないものにする必要がありますね。
ながら日本の企業は、それができない。100種類のやり方に慣れて
奥山さんが最近作られたスポーツカーの「kode9」にも、
「シンプル、
いるからです。
モダン、
タイムレス」
という考え方は反映されているわけですね。
重要性は、私も実感しています。単なる売り買いでしかない従来の
やり方は、もはや通用しなくなりました。今は信頼関係や持続的な
キャンベル 今おっしゃった5つの候補は、企業のブランド、つまり
サービスを、あらゆる顧客が求めるようになっています。
どんなに
アイデンティティに基づいて絞り込むということですか。
優れた製品を作っても、それだけで差別化して収益を上げること
は簡単ではなくなりました。
奥山 はい、そういうことです。
「顧客の声を聞け」
とよく言います
サプライチェーンのグローバル化と製品のコモディティ化が大き
ね。もちろん顧客の声には、耳を傾ける価値があります。ただし、
な要因です。製品だけでは勝てない。多くの企業が優れた製品を
未来の声を聞くことはすごく難しい。何が欲しいかを聞いてしまっ
作っていますが、それは単なるスタートに過ぎません。その製品を
ては、顧客を驚かせることもできなくなります。
使って、顧客との信頼関係を構築しなければ成功できなくなって
必要なのはイノベーションであり、顧客の期待を上回ることです。
います。
そのためには相手をよく知る必要があります。不思議なことに、
相手を知る努力を続けていると、自分自身が見えてきます。得意
奥山 製品は入口に過ぎない。
分野や期待されていることが何かがわかってきます。それこそが
ブランド・アイデンティティです。
ブランディングとは自分を知ること
キャンベル その通りです。自動車業界に面白い事例があります。
BMW のウェブサイトでは、誰もが自分のプロファイルを作成でき
るようになっています。BMW のオーナーとしてのプロファイルを作
り、音楽の趣味などあらゆる情報を登録します。もちろんクルマの
シートやミラーなどの好みも設定できます。
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なのです。
kode9(コードナイン)
PTC Inc.
CAD 製品部門
エグゼクティブバイスプレジデント
マイケル・キャンベル
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