第 46 回『日本童謡賞』

第 46 回 『 日 本 童 謡 賞 』
一般社団法人日本童謡協会は、こどもの歌の振興を図るため制定した『日本童謡賞』の第 46 回贈呈者
を下記の通り定めました。なお、賞の贈呈式は 2016 年 7 月 1 日(金)、東京ガーデンパレスにて午後 6
時より開催、終了後祝賀パーティーを行います。
日本童謡賞(賞状、盾、賞金 5 万円)
・祐成智美童謡詩集「タロとあるく」
(リーブル刊) 祐成智美
・「夢を描いて」宮中雲子の詩による童謡曲集(新しい日本の歌振興会刊)
宮中雲子
日本童謡賞・特別賞(賞状、盾)
・「童謡の近代」周東美材著(岩波書店刊) 周東美材
・上
雅子
贈
呈
理
由
☆日本童謡賞
・祐成智美童謡詩集「タロとあるく」(リーブル刊)
祐成智美
祐成智美氏は、第28回日本童謡賞に詩集「おはなしいっぱい」で新人賞を受賞している。新人賞を
受賞した詩人が後に詩集で本賞を受賞するのは、祐成氏が今回はじめてである。受賞詩集「タロとあ
るく」は、新人賞の詩集よりさらに作品に成長がみられ、極めて優れた詩集であると評価された。
祐成氏の童謡は、こども達が詩の中で命を持って躍動している。どこの家庭でもそうであろうこども
達の日常生活を温かく優しく的確に表現しており、その表現力は大上段に立った反戦歌や宇宙賛歌の
メッセージソングよりも、こども達に説得力と感動を与える。「あっ!生きている」のように、命の
大切さを伝え、「おかあさんがお米をとぐ」「さんま」「ちいさいけど」のように家庭の小さな幸せか
ら、日常の平安、平和につなげている。
この詩集の中でこども達は主人公となり、童謡の豊かさに育まれることであろう。
祐成氏の今後一層の健筆を期待して、
「第46回日本童謡賞」を贈呈する。
(佐藤雅子
・「夢を描いて」宮中雲子の詩による童謡曲集(新しい日本の歌振興会)
記)
宮中雲子
「夢を描いて」宮中雲子の詩による童謡曲集は全 55 曲で成っています。
55 曲はいずれも、宮中雲子氏の優しく温かい眼差しで綴る童謡詩への“想い”を深く汲み取って作曲
されています。またこれら 55 曲は、宮中雲子氏の 1960 年代より 2014 年までの童謡詩によるもので
あり、長年にわたる氏の童謡詩創作の“歩み”を知ることが出来ます。
55 曲の多くはすでに一般に知られておりますが、とりわけ「ちいさいちいさいやどかりさん」
「かあ
さんのお話の中のわたし」
「ひとりじゃないからの子守唄」
「春の潮だまり」は多くの人々に愛唱され
ています。
童謡曲集の題名である「夢を描いて」は、こどもたちへ“生きる力”を強く望む宮中雲子氏のメッセ
ージであり、全国童謡歌唱コンクールのテーマ曲「夢をえがいて」(湯山 昭作曲)として発表され
ました。
真にこどもたちに伝えたい優れた童謡曲集であると高く評価し、第 46 回日本童謡賞を贈呈する。
(甲賀一宏
記)
☆日本童謡賞・特別賞
・「童謡の近代」周東美材著(岩波書店刊)
周東美材
周東美材著「童謡の近代」は、わが国固有の文化所産である「童謡」について、その誕生以来メディ
アがどのように関わってきたかを考察する極めてユニークな童謡論です。本書は序章に始まり第 1 章
より第 6 章及び終章で成っています。
著者は本書において、文芸運動として始まった「童謡」の、<音楽>の出会いとその葛藤。本居長世
の娘たちの活躍による「童謡」の変質。レコード産業の形成による「童謡」をめぐる大衆とのコミュ
ニケーションや表現のあり方の変化など、変容するメディアのなかで子どもがどのような働きをした
かを考察しています。
著者は“本書が最後に描き出そうとするのは単なる童謡の詳しい歴史などではなく、現代日本社会に
おいて児童性や「未熟さ」を愛好する「ガラパゴス化」したメディア文化を産出する近代の仕組みそ
のものなのである(原文ママ)
”と書いています。
「童謡の近代」は優れた童謡論であり、広く一般に
読まれたい書物であると高く評価して、第 46 回日本童謡賞・特別賞を贈呈する。
(甲賀一宏 記)
・上
雅子
上 雅子氏はソロピアニストおよびピアノ伴奏者として精力的な活動を展開しています。氏は長年に
わたって、日本童謡協会が主催する「童謡祭」や各種の「童謡コンサート」並びに「全国童謡歌唱コ
ンクール」におけるピアノ伴奏者として尽力されました。上 雅子氏の多彩なピアノの音色と高度な
技巧によるピアニズム、巧みなアンサンブルは、共演する歌手の絶大な信頼を集めています。また、
いかなる作品に対しても真摯に取り組む姿勢と的確な理解による表現は、常に作曲者たちの信頼を得
ており極めて高く評価されます。
上 雅子氏の今後の一層の活躍を期待し、日本童謡協会への多大な尽力に謝意を表して第 46 回日本
童謡賞・特別賞を贈呈する。
(甲賀一宏 記)
日本童謡賞審査委員会
委員長
湯山 昭
委
伊藤幹翁
上
明子
甲賀一宏
佐藤雅子
早川史郎
宮田滋子
員
小森昭宏
こわせ・たまみ
≪受 賞 者 略 歴≫
祐成
智美(すけなりさとみ)
山梨県笛吹市(旧一宮町)に生まれる。聖路加国際病院、公益財団法人結核予防会第一健康相談
所等に看護師として勤務の傍ら童謡詩を書き始める。
平成 5 年 11 月より「松戸童謡作詩サークル」に参加、詩人こわせ・たまみ氏の下で「子どもの
詩」の勉強を始める。第 6 回三木露風賞新しい童謡コンクール優秀賞、第 10 回最優秀賞。第 4
回サトウハチローお母さんの詩コンクール優秀賞等を受賞。平成 9 年第 1 詩集「おはなしいっ
ぱい」を出版、第 28 回「日本童謡賞新人賞」を受賞。平成 19 年「彩の国下総皖一童謡音楽賞」
受賞。『菜の花曜日』同人
宮中 雲子(みやなか くもこ)
1935 年愛媛県に生まれる。東京学芸大学卒業。1952 年サトウハチロー主宰の『木曜会』入会、
童謡を書き始める。初めての詩集『七枚のトランプ』で、1971 年第 1 回日本童謡賞詩集賞受賞。
詩集『母だけを想う』、詩曲集『愛の約束』、詩とエッセイ『NHK夢のハーモニー・愛と詩の
メルヘン』、童謡集『お月さまがほしい』、詩集『黒い蝶』、詩集『愛の不思議』、詩集『私の心
に生きる母』、童謡集『どんな音がするでしょか』、童謡集『手と手のうた』のほか、サトウハ
チロー評伝『うたうヒポポタマス』などを上梓。2015 年宮中雲子の詩による童謡曲集『夢を描
いて』を出版。
NHK「みんなのうた」や「おかあさんといっしょ」の作詩。「音楽教室」や、「夢のハーモニ
ー」の詩と構成に携わる。
サトウハチロー亡き後も続けていた『木曜手帖』を 600 号で終わりにして、現在は「インター
ネット木曜手帖」として仲間とともにネットに詩を発表。
1998 年からは故郷の愛媛県西予市で「宮中雲子音楽祭(合唱コンクール)」が続けられている。
周東 美材 (しゅうとう よしき)
1980 年群馬県桐生市生まれ。専攻は文化社会学、メディア論、音楽学。早稲田大学第一文学部
卒業、東京大学大学院学際情報学府修了、博士(社会情報学)。日本学術振興会特別研究員 PD(東
京藝術大学)を経て、東京大学大学院情報学環特任助教。首都大学東京、学習院大学、成城大学、
東京音楽大学ほか講師。現在、
「幼き歌声」制作委員会において童謡 100 年記念プロジェクトの
監修にあたっている。
単著に『童謡の近代―メディアの変容と子ども文化』(岩波書店、2015 年)
。共著に『路上のエ
スノグラフィ―ちんどん屋からグラフィティまで』
(せりか書房、2007 年)、
『拡散する音楽文化
をどうとらえるか』
(勁草書房、2008 年)、『ポピュラー音楽から問う―日本文化再考』(せりか
書房、2014 年)
、『文化社会学の条件―20 世紀日本における知識人と大衆』(日本図書センター、
2014 年)
、『カワイイ文化とテクノロジーの隠れた関係』(東京電機大学出版局、2016 年)
。
上
雅子(かみ まさこ)
桐朊女子高等学校音楽科、桐朊学園大学を経て同大学研究科を修了。
第 47 回全日本学生音楽コンクール高校の部入選。93 年・94 年北海道池田町音楽キャンプのピ
アノソロで奨励賞。96 年ピアノトリオで奨励賞。2001 年サントリーホール主催レインボー21 デ
ビューコンサートに出演。
2003 年横浜交響楽団とモーツァルトのピアノ協奏曲を共演。2007 年サンサーンスのピアノ協奏
曲、2008 年ダンディ作曲「フランス山人の歌による交響曲」を共演。
2003 年より、厚木グランドハーモニカオーケストラ、2005 年より全国童謡歌唱コンクール公式
伴奏者を勤める。
学生時代より、弦楽器、歌、合唱、ハーモニカ、マンドリン等、アンサンブルピアニストとし
ても各地でコンサートに出演。後進の指導にもあたっている。2005 年ピアノのための組曲「想
い~花から私へ、私から花へ」2006 年朗読とピアノのための「おばけのプワリン」CD をリリー
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