タイトル 19世紀後半におけるチャータード銀行の本支店勘定 著者 北林, 雅志 引用 札幌学院大学経営論集 = Sapporo Gakuin University Review of B(2): 87-99 発行日 URL 2010-08 http://hdl.handle.net/10742/1380 札幌学院大学総合研究所 〒069-8555 北海道江別市文京台11番地 電話：011-386-8111 ［研究ノート］ 19世紀後半におけるチャータード銀行の本支店勘定 Balances between the head office and branches of the Chartered Bank of India, Australia and China in the late 19 Century 北 林 雅 志 Summary In 1884 the Chartered Bank changed some of the titles of accounts on its published balance sheet, adding accounts of agents / correspondents and balances between the head office and branches as new titles of accounts to the balance sheet. The purpose of this paper is to examine the change in the balances between the head office and branches ,and to clarify the measures the Chartered Bank took in response to the decline in the value of silver. Toward this purpose, an examination of the Bank s internal historical records was necessary. Fortunately,in recent years the internal historical manuscripts from the main office of the Chartered Bank have been made available in Guildhall Library. I was able to clarify why the balances between the head office and branches decreased dramatically by using these historical records. In response to the declining price of silver, the Chartered Bank, in addition to withdrawing capital from Asia, in 1886 created adjusting account on the balance sheet of its main office. 本支店勘定残高がどのようなものか，またどのよう はじめに に算出されたのかについて知ることはできない。幸 チャータード銀行（Chartered Bank of India, いなことに近年，この本支店勘定残高の内容を知る Australia and China）は銀価下落が進行する 1884 ことのできる行内 年， 表バランスシートに若干の変 を行い，それ ル・ライブラリーにおいて 開された。本稿では， まで Bills receivable（取立為替）に含まれていた 新たに 開されたチャータード銀行の本店関係 料 Balances between the head office and branches を検討することによって， 本支店勘定残高の内容と， （本支店勘定残高）を独立した科目として表示するこ とに改めた 。この 料が，ロンドンのギルドホー その動向について明らかにしたい。 表バランスシートにおいて独 １．1884年末の 立して記載されることになった本支店勘定残高に， 表バランスシートの変 点 いち早く注目されたのが石井寛治氏である。石井氏 まず，1884年末の 表バランスシートの変 が， はチャータード銀行による銀価下落対策を検討され いかなるものであったか確認することからはじめよ た論 において，この本支店勘定残高を利用され次 う。表-1A，1B は，1883年末と 1884年末のチャー のように論じている。 「84年末には 89万 3,073ポン タード銀行の 表バランスシートである。負債の部 ド，85年末には 154万 4,405ポンドに達していた本 では，1883年末まで Bills payable and other sums 店から諸支店への貸勘定が，86年末には３万 1,296 due by the bank（支払手形）に統合されていた代 ポンドの借勘定，87年末に２万 3,359ポンドの貸勘 理店とコルレス先の勘定が，1884年末から Due to 定へと見事に収縮しているのは，銀貨圏支店勘定の agents and correspondents として 離された。また 自立化が徹底したことを示している」 。この石井氏 バランスシートの欄外に Liabilitiy on bills receiv- の指摘は，チャータード銀行が銀価下落という困難 able, rediscounted, ￡3,372,963 という注記が付け な時代を乗り切るうえで極めて重要なポイントで 加 え ら れ て い る。資 産 の 部 で は，そ れ ま で Bills あった。しかし receivable and other sums due to the bank（取立 表されたバランスシートからは， 87 19世紀後半におけるチャータード銀行の本支店勘定 表-1A チャータード銀行 表バランスシート（1883年末) Dr. (単位 ポンド) Cr. 800,000 220,000 560,658 1,358,784 3,329,434 4,323,313 Capital Reserve fund Notes in circuration Current accounts Fixed deposits Bills payable,other sums due by the bank Cash in hand and at bankers Bullion Government securities Advance and loans Bills receivable,other sums due to the bank Bank premises and furniture 1,224,709 131,453 142,207 2,766,959 6,317,195 74,834 65,168 Profit and loss 10,657,357 Total Total 10,657,357 出所：Supplement to the Economist, Reports of the Joint Stock Banks of the United Kingdom, M ay 17, 1884, p.33. 表-1B チャータード銀行 表バランスシート（1884年末) Dr. (単位 ポンド) Cr. Capital Reserve fund Notes in circuration Current accounts Fixed deposits Bills payable, other sums due by the bank Due to agents and correspondents 800,000 200,000 361,380 1,437,401 3,482,103 3,351,860 40,085 Cash in hand and at bankers Bullion Government securities Advance and loans 1,537,337 175,732 333,885 2,206,476 Bills receivable,other sums due to the bank Due by the agents and correspondents Balances between the head office and branches Bank premises and furniture 4,080,342 407,795 893,073 74,128 35,940 Profit and loss 9,708,772 Total Total 9,708,772 Liabilitiy on bills receivable, re-discounted ￡3,372,963 of which up to this date ￡2,219,596 have run off. 出所：Bankers Magazine, M ay 1885 p.501. 為替）に統合されていた Due by agents and corre- ２．1884年末一般貸借対照表 （General Balance Sheet） spondents（代理店・コルレス先勘定）と Balances between the head office and branches（本支店勘 定残高） が， それぞれ 離して表記されることになっ 1884年末の一般貸借対照表を表示したのが表-2 た。しかし 表バランスシートからは，これ以上の である。 表バランスシートとの大きな違いは，そ ことを知ることができない。 の 計の金額である。一般貸借対照表の 計の欄を そこでこれら変 された点が，どのような内容の 見ると 13,081,735ポンドとなっており， 表バラン ものかを確認するためには，行内 料の検討がぜひ スシートの 計 9,708,772ポンドを大きく上回って とも必要となる。近年 開されたチャータード銀行 いる。この差異については， 表バランスシートの の本店関係 料は，これらの事柄知る上で大いに参 負債の部の欄外の注記で説明されている。 「再割引さ になる情報を提供してくれる。ギルドホール・ラ れた取立為替の負債として 3,372,963ポンド，その イブラリーで 開された本店関係 料は，大きく 内，年末の時点で 2,219,596ポンドが支払済み」。こ けて３つの帳簿から構成されている 。General Bal- の注記に書かれている再割引手形 3,372,963ポンド ，Balance at Head ance Sheet（一般貸借対照表） は，一般貸借対照表では負債の部の Liabilities on （本店バランスシート） ，Particulars of Profit Office Bills Discounted, Head Office（本店勘定による手 and Loss Account（損益勘定細目）である。これら 形割引に関する債務）として 3,372,963ポンドが計 本店関係 料の 上されており，また同じ金額が資産の部では Bills 合的な 析は別稿にゆずり，本稿 では先に指摘した 1884年末の変 点にかかわる部 Discounted（手形割引）として計上されている。こ のみを取り出して検討することとしたい。 の金額を負債の部，資産の部からそれぞれ差し引く と 表バランスシートの 計 9,708,772ポンドと一 致する。それでは， 表バランスシート欄外注記に 書かれている再割引手形とは何か。これはアジアの 88 札幌学院大学経営論集 No.2 表-2 チャータード銀行一般貸借対照表（1884年末) Liabilities Capital Reserve Fund Bank Notes in Circulation Penang Singapore HongKong Current Deposit a/c Head Office Bombay Calcutta Rangoon Penang Deli Singapore Batavia Sourabaya HongKong Foochow Yokohama M anila Iloilo Shanghai Deposit Receipts Head Office Bombay Calcutta Rangoon Penang Deli Singapore Batavia Sourabaya Hong Kong Foochow Yokohama M anila Shanghai Deposit Notes Bills Payable Head Office Bombay Calcutta Rangoon Penang Singapore Batavia HongKong Yokohama M anila Shanghai Bills for Collection Head Office Bombay Calcutta Rangoon Penang Deli Singapore Batavia Sourabaya Hong Kong Yokohama M anila Iloilo Shanghai Government Securities Bills, Margins Suspence a/c Adjusting a/c Capital Adjusting a/c (単位 ポンド) Assets 100,755 110,056 150,568 60,731 109,684 348,559 113,521 61,880 13,924 285,959 54,479 16,541 138,710 9,197 29,746 54,784 758 138,921 2,423,093 188,178 202,670 56,566 38,661 7,030 90,801 55,467 6,710 149,809 54,535 9,131 28,579 129,572 41,294 2,157,546 1,002 6,229 248 557 1,010 1,247 12,061 140 376 3,224 5,914 83,441 34,266 43,800 396 81 6,823 6,152 4,311 30,562 19,174 21,466 1,272 29,734 800,000 Cash 200,000 Cash at Bankers Bullion Government Securities 361,380 Bills Loans, Advances, Past Due 1,437,401 3,482,103 2,183,645 287,401 8,975 21,178 199,693 47,325 7,823 833,089 704,248 175,732 333,885 Head Office Bombay Calcutta Rangoon Penang Singapore Batavia Sourabaya HongKong Yokohama Manila Iloilo Shanghai (less suspence a/c contra) Current Deposit (overdrafts) Head Office Bombay Calcutta Rangoon Penang Deli Singapore Batavia Sourabaya Hong Kong Foochow Yokohama Manila Iloilo Shanghai Cash Credit a/c Batavia Fixed Loans Bombay Calcutta Penang Singapore Batavia Sourabaya HongKong Yokohama Manila Iloilo Shanghai Local Bills Discounted Calcutta Rangoon Penang Deli Singapore Batavia Sourabaya Hong Kong Yokohama Manila Iloilo Bills Receivable Head Office Bombay Calcutta Rangoon Penang Deli Singapore Batavia Sourabaya Hong Kong Foochow Yokohama Manila Iloilo Shanghai Stamp a/c Bills Unaccepted Policy Stamps Head Office Adjusting a/c Penang Hong Kong Manila Capital Adjusting a/c 89 184,483 3,687 9,824 1,272 11,360 20,129 125,594 33,016 5,815 2,875 21,237 1,002 80,920 −199,693 64,279 94,585 292,316 191,914 56,632 1,945 143,349 68,479 4,527 108,115 6,423 46,984 74,447 14,479 24,909 4,320 42,824 218,427 43,269 76,265 68,065 32,321 27,396 46,816 94,555 19,757 37,544 29,363 11,943 1,167 750 127,940 64,102 2,930 8,218 1,125 52,234 18,758 2,084,228 123,120 115,987 77,551 2,092 456 21,196 20,700 11,683 71,826 66 53,438 30,515 1,272 80,091 672 1,106 6,481 301,522 1,193,389 4,320 707,244 318,534 2,694,227 1,367 7,016 21 8,260 3,125 19世紀後半におけるチャータード銀行の本支店勘定 表-2 (つづき) Others Others 633,308 Others 202,267 Others Balances between HO & Branches Head office Branches less Liabilities Bank Premises Office House Furniture 3,372,963 Bills Discounted 35,940 Liabilities on Bills Discounted Head Office Profit & Loss a/c (単位 Head office Branches Head Office Deli Foochow Bombay Calcutta Rangoon Penang Sinagapore Batavia Sourabaya Hong Kong Yokohama Manila Iloilo Shanghai 2,663,334 15,651 49,801 104,403 347,001 167,046 3,272 144,452 334,129 73,014 57,505 188,623 234,026 65,437 116,798 Head Office 13,081,735 Total Total ポンド) 1,019,794 435,754 893,073 65,967 8,161 3,372,963 13,081,735 出所：Half-yearly returns from London and head office, M s 38431, Guild Hall Library. 各支店が買い取った為替手形を，取り立てのためロ California Inward,Hong Kong（先方勘定カリフォ ンドンに送付してきたもののうち再割引に出された ルニア銀行口）21,863ポンドがその過半を占め，最 ものである 。 大の科目となっている。資産の部の 額は 407,795 各科目の小計は，いくつかの科目がまとめられて ポ ン ド で，最 大 の 科 目 は 香 港 支 店 の Australian いるものもあるが， 表バランスシートのそれと一 Exchange a/c,Hong Kong（オーストラリア為替勘 致 し て い る。負 債 の 部 で は Deposit Receipts と 定）の 62,092ポンドで，ロンドン本店の Canadian Deposit Notes の 合 計 が Bank of Commerce, Head Office（カナダ商業銀 表 バ ラ ン ス シート の （定期預金）にまとめられている。資 Fixed deposits 行手形勘定）の 47,674ポンドがそれに続いている。 産の部では Bills Loans, Advances, Past Due（期 このように 1884年末の 日経過後手形貸付） ，Current Deposit Accounts, された代理店コルレス先勘定は，本支店が代理店コ （当座貸越） ，Cash Credits （キャッシュ・ Overdrafts ルレス先と行う為替取引に伴う債権債務を処理する クレディット），Fixed Loans（貸付金）の合計が， 勘定をまとめたものであることがわかる。ちなみに 表バランスシートでは Advance and loans（貸付 本支店間の為替取引にかかわる勘定については，次 金）としてまとめられている。本支店勘定残高およ 節で詳述するように本支店勘定残高に一括して計上 び 物・家具・備品については，そのまま 表バラ される。 ンスシートに記載されている。 表バランスシートで 離 ひとまず，1884年末に行われた 表バランスシー 一般貸借対照表と 表バランスシートの関係で説 トの変 点について確認することができたので，節 明を要するのは次の点である。1884年末の 表バラ を改めて本支店勘定残高に焦点を当て検討すること ンスシートから，それまで負債の部では支払手形， にしよう。 また資産の部では取立為替に統合されていた代理 ３．チャータード銀行の本支店勘定 店・コルレス先の勘定が 離されたことについては， すでに指摘しておいた。そこで問題となるのは，代 一般貸借対照表から本支店勘定を取り出したのが 理店・コルレス先勘定として 離されたのはどのよ 表-4である。負債の部を見ると，カルカッタ支店の うな勘定なのかということである。 しかし 1884年末 347,001ポンド，バタビア支店の 334,129ポンドと の一般貸借対照表では，代理店・コルレス先勘定は いうようにアジア主要支店の多くが負債に記帳され 「支店勘定」と「本店勘定」に混在して記帳されてい ている。それに対し，資産の部ではロンドン本店 るため区別しがたい 。そこで代理店・コルレス先勘 2,663,334ポンドが計上されており最大の科目に 定が明確に なっている。アジア支店ではデリー，福州の２支店 離されて記帳されるようになる 1887 年末以降の一般貸借対照表を参 にして区 し，取 り 出 し た の が 表-3で あ る。負 債 の 部 で は， だけが資産の部に計上されているにすぎない。 額 それでは，これら各本支店の本支店勘定残高がど 40,085ポンドのうち香港支店における Bank of のように算出されたのか， 引き続き検討してみよう。 90 札幌学院大学経営論集 No.2 表-3 代理店・コルレス先勘定（1884年末) Liabilities 本支店名 Canadian Bank of Commerce Union Bank of Australia Mauritius Exchange a/c Cheribon Exchange a/c London SanFrancisco Bank London Chartered Bank of Australia Bank of New Zealand Negapalam Exchange a/c Moulmein Exchange a/c Special Acceptance a/c 小計 HongKong Bombay Rangoon Shanghai Manila HongKong HongKong Calcutta Penang Tait & Co. Anglo Californian Bank Bank of California Inward Bank of New South Wales Australian Exchange a/c Commercial Bank of Australia Amoy Exchange a/c (単位 ポンド) 小計 ポンド Assets 1,992 182 65 5,066 513 Batavia HongKong Singapore Batavia Shanghai HongKong Calcutta Batavia Bombay Calcutta Penang Penang Head Office 107 46 748 466 29 42 ポンド 本支店名 2,823 Grinbaum & Co. Bank of Bombay Bank of M adras 2,240 924 Bank of Africa 521 21,863 Australian Exchange a/c 3 National bank of New Zealand 268 Bank of New Zealand 254 Union Bank of Australia 5,579 68 171 Speidel & Co. Saigon Bank of M ontreal 153 Anglo Californian Bank 1,214 Canadian Bank of Commerce 71 3,000 Bank of British Colombia 664 London Paris American Bank 261 London Chartered Bank of Australia Boubon Exchange a/c Mauritius Exchange a/c Alston & Co. Amoy Exchange a/c Bank of California Chittango Exchange a/c American Exchange a/c Colonial Bank Saigon Exchange a/c Bangkok Exchange a/c Bank of Rotterdam Samarang Exchange a/c Macassar Exchnage a/c Macassar Bullion a/c Padang Exchange a/c Padang Bullion a/c Kobe sub-agency Kobe sub-agency Nagasaki sub-agency Nagasaki sub-agency Australian Exchange a/c Madras Exchange a/c Lahoean Exchnage a/c Canadian Bank of Commerce Rotterdam Bank Kesslem & Co. 40,085 Total Total HongKong Bombay Calcutta Rangoon Bombay Calcutta HongKong HongKong HongKong Batavia Calcutta Batavia Yokohama Manila Yokohama HongKong Yokohama Calcutta Batavia Yokohama Batavia HongKong Manila Calcutta Singapore Calcutta Calcutta Penang Singapore HongKong Calcutta Singapore Shanghai HongKong HongKong Singapore Batavia Batavia Batavia Batavia Batavia Batavia Yokohama Yokohama Yokohama Yokohama Singapore Penang Deli Head Office Head Office Head Office 9 1,204 5,897 571 4 6,758 8,048 1,225 8,620 978 689 2,136 25,172 816 18 36,157 24,050 3,451 81 4,504 10 37,655 6,469 6,762 62,092 2,590 9,273 10,288 24 236 27,308 36,991 390 93 916 27,501 2,593 2,371 4,586 18 5,006 37,665 427 9,130 4,276 4,322 18,374 1,478 3,176 4,397 2 223 1,190 667 6,468 2,995 1,716 1,908 47,674 29,061 25,904 407,795 出所：Half-yearly returns from London and head office, M s 38431, Guild Hall Library. 表-4 チャータード銀行本支店勘定（1884年末) (単位 Liabilities Bombay Calcutta Rangoon Penang Singapore Batavia Sourabaya HongKong Yokohama M anila Iloilo Shanghai Balance 負債の部において最大の残高を計上しているカル ポンド) カッタ支店から見ていこう。カルカッタ支店の 1884 Assets 104,403 347,001 167,046 3,272 144,452 334,129 73,014 57,505 188,623 234,026 65,437 116,798 Head Office Deli Foochow 年末のバランスシートを表示したのが表-5である。 2,663,334 15,651 49,801 Balance としてまとめられているのが，本支店勘定 残高にかかわる科目である。勘定科目について若干 の 説 明 を し て お こ う。ま ず 負 債 の 部 の London Exchange a/c はカルカッタ支店がロンドン本店に 持つ当方勘定（ポンド ）である。Head Office Exchange a/c はロンドン本店がカルカッタ支店に Less Liabilities −1,835,706 持つ為替勘定で，カルカッタ支店からみると先方勘 893,073 定ロンドン本店口（ルピー ）となる。各支店の 出所：Half-yearly returns from London and head office, M s 38431, Guild Hall Library. Outward はカルカッタ支店から見た当方勘定（相手 91 19世紀後半におけるチャータード銀行の本支店勘定 表-5 カルカッタ支店バランスシート（1884年末) Liabilities Balance (単位 Assets Capital 100,000 100,000 Cash Bullion 16,296 20,274 London Exchange a/c Head Office Exchange a/c Colombo Exchange a/c Rangoon Outward Penang Outward Shanghai Outward Bombay Inward Akyab Inward HongKong Inward M anila Inward Shanghai Inward Yokohama Inward 323,362 20,946 50 1,383 4,193 1,136 100 6,076 26,448 714 3,553 10,934 323,362 20,946 50 1,383 4,193 1,136 100 6,076 26,448 714 3,553 10,934 French Exchange a/c Bombay Outward Singapore Outward Batavia Outward HongKong Outward M anila Outward Yokohama Outward Rangoon Inward Penang Inward Singapore Inward Batavia Inward 63,254 44,746 4,759 1,022 3,355 1,365 419 19,154 316 13,298 206 Chitagong Exchange a/c Boubon Exchange a/c M auritius Exchange a/c Bank of M adras Bank of Africa Alston & Co. Telicherry Canadian Bank of Commerce Union Bank of Australia 5,006 24,050 2,593 5,897 6,758 2,371 816 8,620 Bank of New Zealand Bank of New South Wales Commercial Bank of Australia London Chartered Bank of Australia Bills Payable Bills Receivable for Collection Deposit Receipts Current Deposits Capital Adjusting a/c 42 3 254 748 6,229 34,266 202,670 348,559 2,564 1,116,638 Balance 63,254 44,746 4,759 1,022 3,355 1,365 419 19,154 316 13,298 206 148,269 14,959 41,508 29,363 115,987 292,316 218,427 Bank of Bengal Government Securities do Local Bills Discounted Bills Receivable Current Deposit Overdrafts Fixed Loans 347,001 Balance Total with others ポンド) 498,901 Total with others 1,116,638 498,901 出所：Half-yearly branch balance sheets, Ms 31519, Guild Hall Library. 国通貨 ）であり，Inward が先方勘定（ルピー ） にかかわる科目は，ロンドン本店及び各支店の為替 となる 。 勘定とロンドン本店から配 された資本金であるこ 負債の部から見ていこう。 まず資本金 10万ポンド とがわかる。負債の部の合計が 498,901ポンド。そ が計上されている。これは，ロンドン本店からカル れに対し資産の部の合計は 151,900ポンドである。 カッタ支店に割り振られている資本金である。負債 したがって，カルカッタ支店の本支店勘定残高は の 部 で 最 大 の 金 額 を 計 上 し て い る の が London 347,001ポ ン ド の 借 越 と い う こ と に な る。こ の Exchange a/c（当 方 勘 定 ロ ン ド ン 本 店 口）の 347,001ポンドが，先に見た一般貸借対照表におい 323,362ポンドである。また 20,946ポンドが Head てカルカッタ支店の本支店勘定残高として記帳され Office Exchange a/c（先方勘定ロンドン本店口）に ていたものである（表-4） 。 計上されている。したがって，カルカッタ支店はロ それでは次にロンドン本店の本支店勘定の記帳処 ンドン本店から資本金を含め，45万ポンド弱の資金 理について見ていくことにしよう。ロンドン本店の 供給を受けていたことになる。資産の部を見ると， バランスシートから本支店勘定 最大の科目は French Exchange a/c（フランス為替 が，表-6である。 を抜き出したの 勘定）である。これはフラン の為替手形を処理す 資産の部から見ていこう。各支店それぞれ３つの る科目である（フラン 手形については後に詳しく 勘定科目から構成されている。カルカッタ支店を例 検討する）。これが 63,254ポンド。次いで大きな金 に取り上げると，まず Calcutta Capital a/c（カル 額を示しているのが BombayOutward （当方勘定ボ カッタ資本金勘定）として 100,000ポンドが計上さ ンベイ支店口）である。このように本支店勘定残高 れており，これは先に見たカルカッタ支店のバラン 92 札幌学院大学経営論集 No.2 表-6 ロンドン本店本支店勘定（1884年末) Liabilities Bombay Foreign Bill a/c Calcutta Foreign Bill a/c Akyab Rupee a/c Penang Holland Exchange a/c Singapore Foreign Bill a/c Batavia Guilder a/c HongKong Foreign Bill a/c Yokohama Foreign Bill a/c Yokohama Dollar a/c Manila Foreign Bill a/c Manila Spanish Exchange a/c Shanghai Foreign Bill a/c Shanghai Tael a/c Balance (単位 ポンド) Assets 47,052 54,448 412 17,396 16,744 21,593 48,966 18,708 125 347 1,430 79,108 13 Bombay Capital a/c do Exchange a/c do Rupee a/c Calcutta Capital a/c do Exchange a/c do Rupee a/c Akyab Exchange a/c Rangoon Capital a/c do Exchange a/c do Rupee a/c Penang Capital a/c do Exchange a/c do Dollar a/c Singapore Capital a/c do Exchange a/c do Dollar a/c Batavia Capital a/c do Exchange a/c do Holland Exchange a/c HongKong Capital a/c do Exchange a/c do Dollar a/c Yokohama Capital a/c do Exchange a/c M anila Capital a/c do Exchange a/c do Dollar a/c Shanghai Capital a/c 2,663,334 do Exchange a/c 25,000 306,905 4,008 100,000 304,940 12,751 17,021 25,000 188,060 5,871 25,000 79,863 5,923 50,000 189,883 9,429 75,000 207,350 134,438 75,000 180,721 4,219 25,000 176,322 50,000 376,057 12,399 100,000 203,513 2,969,683 2,969,683 出所：Half-yearly returns from London and head office, M s 38431, Guild Hall Library. スシート負債の部の資本金勘定と対応している。次 びカルカッタ支店のバランスシートを見てみよう の Calcutta Exchange a/c はロンドン本店から見 （表-5）。そこには資産の部に French Exchnage a/c た先方勘定カルカッタ支店口であり，カルカッタ支 なる勘定科目があった。これはのちに見るようにフ 店とのポンド 取引を処理する科目である。次の ラン の手形を処理する科目である。この科目に対 Calcutta Rupee a/c は当方勘定カルカッタ支店口 応するロンドン本店の勘定が Calcutta Foreign Bill である。したがって，この科目においてロンドン本 a/c に他ならない。ロンドン本店の本支店勘定（表- 店とカルカッタ支店間のルピー 取引を処理するこ 6）にもどろう。負債の部の残りの勘定である Akyab とになる。このように当方勘定は相手国通貨 の取 Rupee a/c, Batavia Guilder a/c, Shanghai Tael 引を記帳するのであるから，シンガポールや香港支 a/c は，資産の部で検討した当方勘定各支店口であ 店では Singapore Dollar a/c, Hong Kong Dollar る。 したがって相手国通貨 の取引を記帳するため， a/c となっている。 アキャブ支店口はルピー，バタビア支店口はギル 続いて負債の部を見よう。負債の部でまず目につ ダー，上海支店口はテール勘定となっている。 くのは，Bombay Foreign Bill a/c, Calcutta For- ロンドン本店の本支店勘定を 体としてみると， eign Bill a/c という勘定科目である。この Foreign 資産の部の合計が 2,969,683ポンド，負債の部の合 Bill については，少し時代は下るが次のように解説 計が 306,349ポンドとなっており，資産が負債を されている。 「外国貨幣手形トハ普通ノ外国為替手形 2,663,334ポ ン ド と 大 き く 上 回って い る。こ の ニシテ倫敦ニテハ Foreign bill 又ハ Currency bill 2,663,334ポンドが一般貸借対照表における本支店 ト称ス是支払地ノ貨幣ヲ以テ振出サルルヲ以テナ 勘定ロンドン本店 に計上されていた金額である リ」 。すなわち支払地となる外国の通貨 手形であ （表-4）。すなわちロンドン本店は，266万ポンドを超 る。それでは，これら外国通貨 手形とは何か。再 える巨額の資金をアジア支店に対し供給していたの 93 19世紀後半におけるチャータード銀行の本支店勘定 である。 内換算レートを切り下げ， 評価替えを行った。 ルピー 一般貸借対照表における本支店勘定を検討するこ については，それまでの２シリングから１シリング とによって，各本支店がどのくらい資金を提供して ９ペンスへ（12.5％切り下げ），銀ドルに対しては４ いるのか，あるいは逆に資金を受け入れているのか シリング６ペンスから４シリングへ （11.11％切り下 確認することができる。さらに，各本支店のバラン げ）と切り下げ，評価損を各支店の帳簿に Capital スシートから，どの本支店がどこから資金を受けて Adjusting Account（資本金調整勘定）として計上す いるのか，あるいは資金をどの本支店に供給してい ることになる 。1883年には なる切り下げを行い， るのか，確認することができるのである。表-4をも ルピーは１シリング 7.5ペンスへ（7.1％） ，銀ドル う一度見てみよう，最大の資金の出し手はロンドン は３シリング８ペンスへ（8.3％）と切り下げた 。 本店であり，アジアの主要支店はすべてロンドン本 しかし継続的に下落する銀価格に対し，このような 店から資金を受け入れていたことがわかる。 評価替えではもはや対応できないと えたチャー このように 1884年末の時点では， チャータード銀 タード銀行の経営陣は，アジアからの資本金の引き 行のアジア支店の活動は，ロンドン本店からの資金 揚げを断行する。それが 1885年の銀価下落対策で によって大きく支えられていたのである。 あった 。 それでは，このようなチャータード銀行の銀価下 ４．チャータード銀行の銀価下落対策と 本支店勘定 落対策が，本支店勘定においてどのように表現され ているのか，本支店勘定の 析を通じてチャーター しかし，このようなロンドン本店の資金に依拠し ド銀行の銀価下落対策を見ていくことにしよう。 た，アジア支店活動を困難にする事態が進行してい 表-7は一般貸借対照表における，本支店勘定の各 た。金に対する銀価格の継続的な下落である。 チャー 本支店残高の推移を表示したものである。この本支 タード銀行は，すでに 1877年から 1885年にかけて 店勘定の動きにおいて，最も大きな変化を示してい ３度にわたる銀価下落に関する対策を講じていた。 るのはロンドン本店の残高の推移である。チャー 1877年アジア支店に配 タード銀行は 業以来，ロンドン本店の本支店勘定 していた資本金に対し行 表-7 チャータード銀行本支店勘定の推移（1881-1890) 1881 Liabilities Assets Bombay Calcutta Colombo Rangoon Penang Singapore Batavia Sourabaya HongKong Yokohama Manila Iloilo Shanghai Foocow& Yokohama Taiping KualaLumpur Medan Foochow Hankow 1882 1883 1884 52,219 151,470 104,403 347,001 140,658 3,810 76,607 439,386 16,562 150,346 55,144 57,015 432,758 77,308 5,335 85,217 506,405 124,034 299,786 167,046 3,272 144,452 334,129 73,014 57,505 188,623 234,026 65,437 116,798 134,944 22,327 34,470 28,954 78,156 313,042 75,259 88,121 230,851 187,594 72,981 51,849 500,545 211,519 1885 1886 1887 (単位 1888 77,585 8,793 23,921 202,281 10,076 111,380 149,870 277,400 7,546 22,967 Balance 1,187,150 1,027,435 1,305,633 Head Office Bombay Calcutta Deli Shanghai Foochow HongKong Penang KualaLumpur Taiping 2,350,425 2,283,734 3,155,169 2,663,334 2,182,310 198,297 59,977 90,227 103,425 117,260 15,651 1890 125,298 54,146 57,230 74,758 48,457 59,091 258,312 168,820 150,904 87,455 321,714 114,310 16,385 28,015 144,254 225,241 199,610 221,783 395,213 79,411 181,514 21,687 72,417 299,637 292,501 215,163 183,925 30,017 55,886 49,129 95,102 161,859 273,893 210,251 253,743 114,993 46,052 51,264 60,307 193,704 2,651 11,899 11,847 1,434 52,883 44,405 893,073 1,544,405 49,801 ポンド) 233,588 14,505 35,308 1889 46,431 23,359 138,228 156,785 81,955 135,767 199 412,328 325,134 342,854 64,302 15,291 125 174,514 911,619 1,242,416 1,320,781 1,135,482 1,803,986 283404 197,352 271,357 49,756 272,313 244,120 25,281 43,209 28,603 15,393 46,471 16,231 5,034 25,389 31,296 Balance 出所：Half-yearly returns from London and head office, M s 38431, Guild Hall Library. 94 札幌学院大学経営論集 は常に大幅な貸越残高を示していたが，1883年過去 No.2 い手形ということになる。 最大の 315万ポンド余りの貸越残高を記録した後， ５．外国通貨 為替勘定 1884年の 266万ポンド， 1885年の 218万ポンドと継 続的に大きく減少し，1886年には 100万ポンドを割 そこでもう少し詳しく，この外国通貨 手形に関 り込み 91万ポンドと 83年と比較して３ の１以下 する勘定科目について検討することにしよう。本店 にまで減少している。銀価格の下落に直面して，ロ バランスシートに記帳される Foreign Bill a/c，あ ンドン本店の資金に依拠した経営スタイルから脱却 るいは Foreign Bill a/c remitted en route なる勘 していこうとする姿勢が如実に反映されているので 定に対応する，支店バランスシートに見られる外国 ある。ロンドン本店の貸越残高の減少に対し，ボン 通貨 ベイ，カルカッタの２支店が 80年代後半以降，大幅 ，German Exchange a/c（フ ラ ン ス 為 替 勘 定） な貸越残高を計上しているのが目を引く。そこで， ，また Holland Exchange a/c（ドイツ為替勘定） このような大きな変化を示しているロンドン本店の Exchange a/c（オランダ為替勘定）があった。これ 本支店勘定について，さらに詳しい検討を加えてみ ら支店バランスシートに見られる，外国通貨 手形 ることにしよう。 を処理する勘定科目をまとめて，その推移を見たの 表-8はロンドン本店のバランスシートから本支 手 形 を 処 理 す る 勘 定 科 目 に は，French が表-9である。 店勘定 を抜き出して， その推移を見たものである。 まず全体的にみると French Exchange a/c が圧 ロンドン本店の本支店勘定において大きな変化が現 倒的な割合を占めており，アジア支店が取り扱う外 れるのは 1885年である。 資産の部に計上されている 国通貨 手形の大半がフラン 手形であったことが アジア支店に配 されていた資本金の多くが，この わかる。また支店別にみるとオランダ領東インドの 年に回収されているのである。 これは 1885年に行わ バタビア支店では Holland Exchange a/c が重要な れたチャータード銀行の本格的な銀価下落対策で 位 置 を 占 め て お り，ス ペ イ ン 領 の マ ニ ラ で は あった。1884年にはアジア主要支店に 55万ポンド Spanish Exchange a/c が相対的に大きな割 合 に 配 されていた資本金を，バタビア，マニラ，横浜 なっていることがわかる。それでは外国通貨 為替 の３支店に限り 22万５千ポンドを配 するにとど 勘定とは，どのような勘定科目であったのか，どの め，32万５千ポンドの資本金をアジア各支店から一 ような記帳が行われていたのか，もう少し詳しく見 挙に回収したのである。これによりロンドン本店の ていくことにしよう。 アジア支店に対する貸越残高（Balance）は，266万 フラン 手形の取り扱いにおいてボンベイ，カル ポンドから 218万ポンドへと大きく減少することに カッタのインド支店と並んで重要な位置を占めてい なった。さらに大きな変化が 1886年に見られる。そ るのが香港，上海といった中国の支店であった。こ れ は 負 債 の 部 に，新 た に 各 支 店 の Adjusting こでは香港支店を取り上げて，どのような記帳処理 （調整勘定）なる勘定科目が開設されたこと Account が行われていたのか検討することにしよう。香港支 により，負債の部の合計が 1885年の 30万７千ポン 店の計算書類の中に，Foreign Bills remitted and ドから，135万８千ポンドへと 100万ポンド以上の not realised（外国通貨 手形）なる帳簿が残されて 増 加 を 示 し て い る の で あ る。こ の Adjusting いる 。1890年下期に，この勘定で取り扱われた手 Account の新たな開設こそ 1886年ロンドン本店の 形（買為替）の 額は 995,562フランであった。こ 貸越残高を 91万ポンドにまで急激に減少させた最 れを行内レートで銀ドルに換算すると 221,236ドル 大の要因であった。 それでは 1886年の本店バランス となる。この金額から Franc Drafts outstanding at シートに突如として出現した Adjusting Account 31 December 1890（フラン 振出手形＝売為替） とは，いかなる勘定科目なのだろうか。実は，この として計上されている 217,216フラン（48,270ド 勘定が初めて開設された 1886年のバランスシート ル） を差し引くと 172,965ドルとなり，表-9の 1890 では，Adjusting Account とは異なる科目名で開設 年末香港支店のフランス為替勘定の金額（32,431ポ されていたのである。1886年本店バランスシートに ンド＝172,965ドル）と一致する。それでは香港支店 現れた科目名は Foreign Bill a/c remitted en route の帳簿に見られる外国通貨 手形とは，具体的には なるものであった。すなわち外国通貨 どのような手形なのだろうか。外国通貨 手形 額 手形で送金 途中のものである。これはアジア支店が買い取った 995,562フランを手形支払地によって 外国通貨 手形を被仕向地に送付する途中のもので と，リヨン払手形が 615,088フランで最も多く，次 あり，したがって，いまだ被仕向地に到着していな いでパリ払手形が 351,109フランとなっている。し 95 類してみる 19世紀後半におけるチャータード銀行の本支店勘定 表-8 ロンドン本店本支店勘定の推移（1883-1887) 1883 Liabilities Total Assets Bombay Foreign Bill a/c Calcutta Foreign Bill a/c Penang Foreign Bill a/c Singapore Foreign Bill a/c Batavia Foreign Bill a/c HongKong Foreign Bill a/c Shanghai Foreign Bill a/c Manila Foreign Bill a/c Yokohama Foreign Bill a/c Akyab Rupee a/c Akyab Exchnage a/c Rangoon Rupee a/c Penang Dollar a/c Penang Holland Exchnage a/c Batavia Guilder a/c Batavia Exchnage a/c HongKong Dollar a/c Manila Spanish Exchnage a/c Manila Dollar a/c Shanghai Tael a/c Yokohama Dollar a/c Bombay Bullion a/c Calcutta Govt. Securities HongKong Bullion a/c Batavia Bullion a/c Bombay Adjusting a/c Calcutta Adjusting a/c Rangoon Adjusting a/c Penang Adjusting a/c Singapore Adjusting a/c Batavia Adjusting a/c HongKong Adjusting a/c Manila Adjusting a/c Shanghai Adjusting a/c Yokohama Adusting a/c Total Balance Bombay Capital Calcutta Capital Rangoon Capital Penang Capital Singapore Capital Batavia Capital HongKong Capital Shanghai Capital Manila Capital Yokohama Capital Bombay Exchange a/c Calcutta Exchnage a/c Akyab Exchange a/c Rangoon Exchange a/c Penang Exchnage a/c Singapore Exchnage a/c Batavia Exchange a/c Batavia Holland Exchnage a/c HongKong Exchnage a/c Shanghai Exchnage a/c Manila Exchnage a/c Yokohama Exchange a/c Bombay Rupee a/c Calcutta Rupee a/c Akyab Rupee a/c Rangoon Rupee a/c Penang Dollar a/c Singapore Dollar a/c Batavia Guilder a/c HongKong Dollar a/c Shangahi Tael a/c Manila Dollar a/c Manila Spanish Exchange a/c Yokohama Dollar a/c Bombay Gvt Securities Calcutta Gvt. Securiries Batavia Adjusting a/c 1884 1885 (単位 1886 10,339 7,048 47,052 54,448 50,995 34,693 27,050 57,370 2,110 16,744 6,621 77,269 16,802 48,966 79,108 347 18,708 412 2,238 627 20,061 19,803 22,776 4,264 89 ポンド) 1887 48,760 73,203 85,739 20,866 166 6,862 59,560 33,000 68,287 2,657 3,579 362 1,451 11,287 47,571 371 4,279 17,396 21,593 30,598 98 138,665 230,226 13,075 618 7,023 1,805 2,378 1,430 7,570 13 125 20,099 7,859 98,925 11,031 327 183,416 3,155,169 3,338,594 25,000 50,000 25,000 25,000 50,000 75,000 75,000 100,000 50,000 25,000 261,803 303,830 265,869 98,911 231,655 168,596 379,498 305,662 627,098 100,806 11,215 23,336 278 18,617 6,921 17,795 5,859 10,495 7,500 10,000 98,864 21,132 215,608 14,454 88,914 44,223 132,058 419,036 61,030 131,691 118,509 160,338 50,394 54,703 50,973 1,745,946 1,242,416 2,988,374 306,342 2,663,334 2,969,683 25,000 100,000 25,000 25,000 50,000 75,000 75,000 100,000 50,000 25,000 306,905 304,940 17,021 188,060 79,863 189,883 307,061 2,182,310 2,489,378 294,978 122,473 64,697 35,057 1,358,661 911,619 2,270,292 75,000 75,000 75,000 100,000 50,000 351,561 369,833 258 102,614 80,475 151,367 100,000 50,000 369,608 440,767 1,386 159,762 184,234 116,592 207,350 180,721 203,513 376,057 176,322 4,008 12,751 320,877 326,353 156,984 221,689 121,690 3,422 6,543 100,000 50,000 267,663 301,980 679 54,713 30,069 79,737 205,517 188,008 374,175 111,924 249,436 127,705 3,261 9,674 5,871 5,923 9,429 134,438 4,219 4,333 6,233 9,456 18,493 1,413 12,399 10,773 8,822 9,293 4,183 11463 153 6,828 342 出所：Half-yearly returns from London and head office, M s 38431, Guild Hall Library. 96 410,070 285,349 149,940 296,527 198,805 9,221 4,510 2,019 7,478 10,097 14,437 8,830 1,965 159 1,042 16,500 26,400 47,665 札幌学院大学経営論集 No.2 表-9 外国通貨 為替勘定の推移（1883-1890) 1883 Liabilities Batavia Penang Singapore Manila Yokohama Assets Bombay Calcutta Batavia Penang Singapore HongKong Shanghai Manila Yokohama 1884 ポンド) 1885 1886 1887 1888 1889 1890 329,315 33,319 24 432 197,347 29,566 99 570 445,530 180,533 116,282 471 167 1,352 2,628 2,062 120 1,747 298 492,549 37,252 96 534 2,256 3,222 4,471 176 30,703 4,962 53 1,933 4,902 122 13,381 7,308 69 72,397 1,800 71,619 48,913 22 90,539 138,057 48,816 39,707 91,557 2,932 49,463 86,006 1,014 56,191 16,645 2,285 23,492 8,988 23,764 64,391 181 6,950 3,515 1,832 18,031 69,463 129,595 110,652 236 562 24,743 2,402 43,046 89,720 3,137 98,498 146,572 155,896 29,784 131,466 35,751 8,451 3,322 55,396 125,608 7,229 7,860 2,057 28,167 4,240 157,990 242,859 26,118 659 103,545 1,530 Holland Exchange a/c French Exchange a/c German Exchange a/c French Exchange a/c French Exchange a/c Spanish Exchange a/c French Exchange a/c German Exchange a/c French Exchange a/c German Exchange a/c 176,029 11,559 138 French Exchange a/c German Exchange a/c French Exchnage a/c Holland Exchange a/c French Exchange a/c Holland Exchange a/c French Exchange a/c French Exchange a/c Holland Exchange a/c German Exchange a/c French Exchange a/c French Exchange a/c Spanish Exchange a/c French Exhange a/c German Exchange a/c French Exchange a/c German Exchange a/c Holland Exchange a/c 24,422 2,948 53,715 83,938 4,431 157 4,353 141,461 89,967 4,963 57 958 2,108 962 59,760 128 (単位 63,254 6,452 89 4,187 937 354 1,745 825 350 410 68,799 6,853 37,302 19,674 2,655 8,317 32,431 152,620 81,195 出所：Half-yearly branch balnce sheets, M s 31519, Guild Hall Library. たがって，香港支店が取り扱う外国通貨 手形の大 は Adjusting Account なる勘定科目が新たに付加 半が，リヨン払のフラン手形なのである。この点か されたことにより，ロンドン本店の本支店勘定負債 ら容易に推測できるように，リヨン払フラン手形が の部は一挙に増加する（表-8）。1884年には 306,342 利用されるのは，中国からフランスへ輸出される生 ポンド，1885年には 307,061ポンドであったのが， 糸貿易にかかわる代金決済に用いられる手形であ これら勘定が付加された 1886年には 1,358,661ポ る 。このように Foreign Bill （外国通貨 手形）と ンド， さらに 1887年には 1,745,946ポンドへと４倍 は，ポンド以外のヨーロッパ通貨 手形のことであ ないしは５倍以上と急激に増加しているのである。 り，その通貨国とアジアとの貿易決済に利用される その結果ロンドン本店の Balance （本支店勘定残高） 手形で，その大半はフラン は 1884年の 2,663,334ポンド， 1885年の 2,182,310 手形であった。 したがって 1886年本店バランスシートに， はじめ ポンドから，1886年には 911,619ポンド，1887年 て現れた Foreign Bill a/c remitted en route とい 1,242,416ポンドへと突然ともいえる減少を示して う科目は，このようなフラン 手形をはじめとする いる （表-8） 。ロンドン本店の本支店勘定残高が減少 外国通貨 手形に関わる科目であって，仕向地から すると，必然的に一般貸借対照表におけるロンドン 送付されてはいるが，被仕向地にはいまだ到着して 本店と各支店の本支店勘定を合わせた最終的な残高 いない，すなわち未達の手形を処理する科目なので も大きく減少することになる （表-7）。すなわち 1884 ある。しかし，この科目名が翌年 1887年から Adjus- 年 893,073ポンド，1885年 1,544,405ポンドと負債 ting Account なる名称に変 された理由について の部に計上されていた Balance（本支店勘定残高） は不明である。単なる名称の変 だけであるのか， が，1886年には資産の部に 31,296ポンド，1887年 その内容に何らかの変化があったのか，現在のとこ には負債の部に 23,359ポンドとこれまた急激に減 ろ明らかにすることはできない。 少しているのである。この最後に示した一般貸借対 照表の本支店勘定残高の数字が， 表バランスシー むすびにかえて トに計上されるのである。本稿冒頭で指摘した 表 ―1884年 表バランスシート変 の意味― バランスシートの本支店勘定残高は，まさにこの一 この Foreign Bill a/c remitted en route あるい 般貸借対照表に示されている本支店勘定の最終残高 97 19世紀後半におけるチャータード銀行の本支店勘定 に他ならない。 給を行った結果である。そのため，銀行 体として それでは一般貸借対照表における本支店勘定残高 の本支店勘定残高は 893,073ポンドから 1,544,405 （ 表バランスシートにおける本支店勘定残高）が， ポンドへと増加しているのである（表-7）。この銀行 なぜこのように急激な減少を示したのか，なぜここ 体としての本支店勘定残高を劇的に減少させたの まで突然ともいえる減少を示さなければならなかっ は 1886年 本 店 バ ラ ン ス シート に 現 れ た Foreign たのか。 その意味するところについて えてみよう。 Bill a/c remitted en route あるいは Adjusting 本来的には本支店勘定は本支店間の取引，すなわ Account なる勘定科目の開設であった。ロンドン本 ち企業内部の取引を結果として表示するものであっ 店バランスシートにおいて，外国通貨 手形の未達 て，最終的にその貸借は一致しなければならない。 勘定を加えることにより，ロンドン本店の本支店勘 すなわち相互に相殺されなければならない。しかし 定残高を大きく減少させ，結果として銀行 体の本 「実際には，銀行は多数の店を擁し，取引の地域的拡 支店勘定残高をも大きく減少させたのである。 大に伴い遠隔地支店の設置およびこれら本支店間の 1884年のチャータード銀行の 表バランスシー 取引の複雑化に伴い，期末決算日に本支店貸借が一 ト変 は，アジア・ヨーロッパにまたがって活動を 致することはまずありえない」 。これは現代の銀行 展開する銀行の銀価下落に対する一つの対応であっ 会計における本支店勘定についての解説である。19 たし，本支店勘定残高の減少は，アジア・ヨーロッ 世紀後半ロンドンに本店を持ち，アジアに広範な支 パにまたがる本支店間の為替取引を，より正確に把 店網を展開していたイギリス系国際銀行の場合，な 握し 表することにより，株主・顧客の銀行経営の おさら本支店間の貸借の一致は不可能であったし， 安全性に対する疑念を払拭するための試みであった その不一致の金額も現代と比べはるかに大きなもの といえよう。 であったと思われる。 銀価の下落が進行する 1880年代， ヨーロッパとア ジアにまたがって銀行業務，特に外国為替業務を主 注 に展開していたイギリス系国際銀行にとって，代理 １) Bankers Magazine, May 1885, p.501. 店および本支店間取引にかかわる貸借関係を正確に ２) 石井寛治 『近代日本金融 序説』（東京大学出版 把握することは，銀行経営上極めて重要な課題で 会 1999年）p.57。 あった。 さらに 1884年５月オリエンタル銀行の倒産 ３) Half-yearly returns from London and head は，他のイギリス系国際銀行の株主，顧客にとって office, Ms 38431, Guild Hall Library. アジアで活動する銀行の安全性に関して大きな疑念 ４) このように再割引された手形が負債の部と資産 を生じさせた 。そのため，代理店および本支店間取 の部に同額計上されるのは，手形の権利は割引に 引に関わる債権債務の実態を， 表することが広く よって移転するが，愚発債務が残るからである。 求められたと思われる。そのひとつの対応が，1884 沼田嘉穂監修『新版勘定科目全書』 （中央経済社 年のチャータード銀行による 表バランスシートの 1988年）pp.539-40。 変 ，代理店コルレス先勘定と本支店勘定の取立為 ５) 原 料では本支店名を付した細かな勘定が記載 替勘定科目ないしは支払手形勘定科目からの 離・ されているが，表-2では簡略化して本店名が付さ 独立化であった。 れた勘定は Others, Head Office（その他本店勘 本支店勘定残高を 表 す る こ と に なった 翌 年 定）ま た 支 店 名 が 付 さ れ た 勘 定 に つ い て は 1885年には，本格的な銀価下落対策が講じられ，ア Others, Branches（その他支店勘定）としてまと ジア主要支店から資本金を回収した。その結果，ロ めて表記した。 ンドン本店の本支店勘定残高は 2,663,334ポンドか ６) チャータード銀行行内計算書類の勘定科目につ ら 2,182,310ポンドへと，およそ 48万ポンド減少し いては， ている （表-7） 。一方，それまで負債の部に計上され 年-1890年」西村閑也・鈴木俊夫・赤川元章編著『国 ていたボンベイ支店，カルカッタ支店の本支店勘定 際銀行とアジア』 （慶應義塾大学出版会 2010年予 残高（両店合わせて 451,404ポンド）が，1885年に 定）を参照されたい。 は資産の部に計上されているのである（両店合わせ 刊予定の拙稿「チャータード銀行 1858 ７) 間島弟彦 『英国為替銀行ニ関スル復命書』 （1907 て 207,487ポンド） 。 これはロンドン本店による資本 年）p.77。 金の引き揚げを埋め合わせる形で，ボンベイ支店， ８) Bankers Magazine, May 1879, p.406. カルカッタ支店がその他アジアの支店に対し資金供 ９) Bankers Magazine, May 1883, p.523. 98 札幌学院大学経営論集 10) Compton Mackenzie, Realms of Silver One hundred years of banking in the East (Routledge & Kegan Paul 1954 年)p.162. 11) Half-yearly branch balance sheets,Ms 31519, Guild Hall Library. 12) アジア地域でフラン の手形が振り出されるの はクレディ・リヨネが 1863年以降リヨンで絹貿易 金融に積極的に取り組むようになったことによる ものであり，またイギリス系国際銀行がフラン 手 形 を 取 り 扱 う よ う に な る の は，1866年 ク レ ディ・リヨネとオリエンタル銀行の間で絹貿易金 融に関する協定が締結され，リヨン直行の輸出品 の荷為替手形を受け入れるようになってからのこ とである。 また 1870年代中頃になって帝国郵 の 極東地域への航路 長，コーチシナの植民地化な どにより，極東絹貿易の流れの方向がロンドンか らリヨンへと決定的に変 された。権上康男「一 九世紀後半におけるパリ 割 引 銀 行 の 海 外 活 動 （上）」 『金融経済』175号（1979年）p.127。 13) 東海銀行 合企画部編『新銀行実務講座 第 12 巻 銀行会計』 （有 閣 1967年）p.296。 14) オリエンタル銀行の倒産とその影響について は，Bankers Magazine, June 1884, pp.613-6. (きたばやし まさし 金融システム論) 99 No.2
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