全文PDF - 感染症学雑誌 ONLINE JOURNAL

340
総
説
アシネトバクター感染症
東北大学大学院医学系研究科臨床微生物解析治療学講座
平
潟
洋
一
(平成 23 年 1 月 18 日受付)
(平成 23 年 6 月 7 日受理)
Key words : Acinetobacter spp., Acinetobacter baumannii, outbreak, multi-drug resistance
要
旨
グラム陰性ブドウ糖非発酵性のアシネトバクターは,自然環境や,健常人および免役能低下患者の皮膚や
腸管などから分離され,血流感染症や院内肺炎などの原因となる場合がある.アシネトバクターにおける 多
剤耐性 の定義には国際的なものがないが,わが国では imipenem,amikacin,そして ciprofloxacin の MIC
が各々 16μg!
mL 以上,32μg!
mL 以上,4μg!
mL 以上が届出基準となっている.欧米やアジアなどの海外諸
国ではアシネトバクターによるアウトブレイクは頻繁に見られるが,国内では現在のところ,2 例のみであ
る.今後,アシネトバクターによるアウトブレイクや薬剤耐性菌の増加に厳重に注意する必要がある.
〔感染症誌
背
景
な診断と治療を促進することを目的に,現時点におけ
2010 年 9 月 2 日より,都内の大学病院における 多
剤耐性アシネトバクター
85:340〜346,2011〕
る問題点,将来に向けた改善点を提言としてまとめ,
に関する報道が次々となさ
都内で合同記者会見を行い,各学会のホームページで
れた.社団法人日本感染症学会(http:!
!
www.kansen
「多剤耐性アシネトバクター感染症に関する四学会か
sho.or.jp!
)は,速やかに,ホームページにおける情
報の公開,セミナーの開催などを活発に行っている.
らの提言」を公開した.
この総説では現時点におけるアシネトバクターに関
一連の活動の一環として,インフェクションコント
する最新かつ正しい情報を総括する.なお,現在問題
ロール委員会(委員長:松本哲哉)を結成し,「院内
となっている種々の薬剤耐性グラム陰性桿菌に関する
感 染 対 策・感 染 制 御 ワ ー キ ン グ グ ル ー プ」(リ ー
詳細な科学的な情報については,矢野らによる総説1)
ダー:賀来満夫)
.「薬剤耐性ワーキンググループ」
とこの総説における引用文献,およびウェブサイトな
(リーダー:舘田一博)の 2 つのワーキンググループ
どを活用されたい.また,最新の関連情報については
で作業を行い,2010 年 9 月 24 日に都内で記者会見を
上記の四学会,国立感染症研究所
感染症情報セン
行った.また,同年 10 月 21 日,第 59 回日本感染症
ター(IDSC[Infectious Disease Surveillance Cen-
学会東日本地方会学術集会(会長:岡部信彦,国立感
ter]
;http:!
!
idsc.nih.go.jp!
index-j.html),厚生労働省
染症研究所感染症情報センター,センター長)
・第 57
院内感染対策サーベイランス事業(JANIS[Japan No-
回日本化学療法学会東日本支部総会(会長:二木芳人,
socomial Infections Surveillance];http:!
!
www.nih-ja
昭和大学医学部臨床感染症学
nis.jp!
index.asp)などのホームページから入手された
教授)合同学会学術講
演会の会期中に,国内の感染症関連の四学会(社団法
人日本感染症学会,社団法人日本化学療法学会[http:
!
!
www.chemotherapy.or.jp!
]
,日本環境感染学会[h
い.
アシネトバクター の性質とアシネトバクター感染症
1.アシネトバクターとは
ttp:!
!
www.kankyokansen.org!
]
,日本臨床 微 生 物 学
アシネトバクターの性質,多剤耐性アシネトバク
会[http:!
!
www.jscm.org!
]
)は,わが国における多
ターという用語,さらには,アシネトバクター感染症
剤耐性アシネトバクター感染症の感染拡大防止,適正
の病態が極めて複雑であるため,専門家の間でも大変
別刷請求先:(〒980―8574)宮城県仙台市青葉区星陵町 2―1
東北大学大学院医学系研究科臨床微生物解析治
療学講座
平潟 洋一
混乱を生じている.
細菌は,核酸(遺伝子の一種)として DNA と RNA
の両方を持っており,ヒトや動物などの細胞に感染し
感染症学雑誌 第85巻 第 4 号
アシネトバクター感染症
341
なくとも,自己増殖できる.アシネトバクター属菌
たギリシア語で,「動くことができない(α[否定]
+
(Acinetobacter spp.)は,空気があっても無くても発
κιν#ω[動く]
)細菌(βακτ"ρ[原義は棒]
)
」という
育できる
好気性
の細菌で,大腸菌などがブドウ糖
意味を持つ.ラテン語読みでは, アキネトバクテー
となる.詳細はウィキペディア(http:!
!
ja.wikip
を分解(発酵)するのに対し,ブドウ糖非発酵性であ
ル
る.
edia.org!
wiki!
%E3%82%A2%E3%82%B7%E3%83%8
「グラム染色」は,1884 年にデンマークの内科医で
D%E3%83%88%E3%83%90%E3%82%AF%E3%82%B
ある,Hans Christian Joachim Gram によって開発さ
F%E3%83%BC)を参照されたい.現時点での通常の
れた細菌染色法で,現在でも最も広く使われている簡
臨床検査では,A. baumannii の同定は不可能であり,
便で優れた方法であり,基本的な手技は現在でもほと
Acinetobacter calcoaceticus-baumanii complex(A. bau-
んど変わっていない.グラム染色により,細菌を光学
mannii,gen.sp.3,gen.sp.13TU,
顕微鏡での観察した際に,青紫色の「グラム陽性菌」
称)として同定される.このうち PCR で OXA-51-like
と,赤色の「グラム陰性菌」とに染め分けることが可
遺伝子の存在が確認されれば,初めて A. baumannii
能である.ほとんどの細菌は,グラム陽性か,陰性に
と同定できる.
大別でき,細菌の分類や同定(菌の種類や菌の名前の
A. calcoaceticus の 総
A. baumannii が種々の抗菌薬,特にカルバペネム薬
決定)において,もっとも基本的で重要な手技であり,
に耐性を示した場合,治療に難渋する場合もある.ア
使用する抗菌薬の選択や,それによる治療効果の判定
ジアにおいては,韓国,中国を中心にカルバペネム耐
にも欠かせない(http:!
!
micro.fhw.oka-pu.ac.jp!
lectur
性 A. baumannii の分離頻度が上昇していることが報
e!
exp!
protocol!
gram!
gram.html, http:!
!
gram-stain-
告されている.また国内においても,後述のような海
id.cocolog-nifty.com!
,e.t.c.)
.
外からの輸入例やアウトブレイクなどが報告され,注
アシネトバクター属菌は,グラム染色を行うと,脱
目を集めている.しかし,国内における Acinetobacter
色された後に赤色に染まる(グラム陰性)棒状の形態
spp.,特に A. baumannii に関する薬剤耐性についての
(桿菌)で,「グラム陰性桿菌」の一種である.しかし,
報告は非常に少ない.そのため,国内における Acineto-
血液や喀痰などの検査材料を,グラム染色し光学顕微
bacter spp.,特にカルバペネム耐性 A. baumannii や多
鏡で観察すると,球菌(球形の菌)や球桿菌(球菌と
剤耐性アシネトバクターの疫学的な情報は乏しく,そ
桿菌の間)など,その形態は多様である. acineto=
の実態は不明であった.
無動性
の, bacter=桿菌
という意味を持ち,大
2.アシネトバクター感染症
きさは 1.0〜1.5×1.5〜2.0μm で,寒天培地上に発育し
上述のように,ヒトから最も高頻度に分離されるア
た集落(コロニー)は,平滑かつ不透明で,大腸菌な
シネトバクター属菌は A. baumannii であり約 70% を
どの腸内細菌科に属する細菌よりやや小さい2).
占める.その形態上,髄液では髄膜炎菌,喀痰などの
アシネトバクター属菌は,自然環境中や病院環境中
呼吸器系検査材料ではインフルエンザ菌との鑑別が必
に広く生息し,ヒトの検査材料から分離されるブドウ
要である.寒天培地を用いた培養では,インフルエン
糖非発酵性グラム陰性桿菌としては,緑膿菌に次いで
ザ菌が,チョコレート寒天培地や発育因子を加えた血
その頻度が高い.アシネトバクター属は,湿性および
液寒天培地にしか発育しないのに対し,アシネトバク
乾性のいずれの環境中でも,長期間にわたって生息可
ター属菌は血液を含まないドリガルスキー改良寒天培
能であり,食材や健常人の皮膚などからも,しばしば
地(いわゆる BTB 寒天培地)などで十分に発育する.
分離される.Acinetobacter spp.の中で,臨床的に最も
また,血液培養陽性時のグラム染色では,グラム陽
分離頻度が高いのが Acinetobacter baumannii である.
性球菌に見える場合があるため注意が必要である.
菌名は分子生物学などの進歩により,しばしば,変更
ヒトから分離される A. baumannii 以外のアシネト
などが行われている.現在用いられている Acinetobac-
バクター属では,Acinetobacter lwoffii の頻度が比較的
ter baumannii という菌名は,1968 年に,米国 Univer-
高く,本菌は髄膜炎(特に術後髄膜炎)の原因菌とし
sity of California,Berkeley,California の細菌免疫学
て重要である4)5).
講座に所属していた,Paul Baumann 博士(発表時の
A. baumannii を中心とするアシネトバクター属菌の
Present address は,Retina Foundation, Boston, Mass.
多くは,入院患者における感染症の原因菌として非常
02104)が,Journal of Bacteriology(http:!
!
jb.asm.or
に重要である6).医療施設関連感染症の原因菌として
g!
)に発表した, Isolation of Acinetobacter from Soil
極めて重要な細菌である3).特に海外では,医療施設
and Water 3)をはじめとする,一連の研究に貢献した
関連肺炎(health care-associated pneumonia;HCAP)
微生物学者,Paul Baumann および Linda Baumann
や,人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneu-
夫妻に由来する.Acinetobacter とは,ラテン語化され
monia;VAP)などの,いわゆる院内肺炎の原因菌と
平成23年 7 月20日
342
平潟 洋一
して頻度が高い6).一方,最近の国内における多施設
!
!
www.fda.gov!
ohrms!
dockets!
ac!
03!
slides!
3919S2
共同の院内肺炎のサーベイランスでは,その頻度は低
̲03̲Carnevale!
sld030.htm)は 1997 年に開始され,海
7)
外では現在も進行中である.SENTRY
入院患者における感染症としては,カテーテル関連
帝京大学,北里大学,および長崎大学の,国内 3 施設
を含む血流感染症,尿路感染症,脳神経術後の髄膜炎
が参加し開始された.1997〜2002 年の SENTRY An-
の原因菌としても重要である.プラスチックやガラス
timicrobial Surveillance Program 開始から 6 年間の
表面でバイオフィルムを形成することが知られてお
データにおいて,アシネトバクター属菌の多剤耐性率
り,これがカテーテル関連感染症などの体内挿入物の
(カルバペネム,アミノグリコシド,およびフルオロ
存在下における,本菌による感染症の重要な病態のひ
キノロンに中等度以上の耐性)は,スペイン,シンガ
く ,原因は未だ不明である.
8)
とつと考えられている .
一 方 で,ア シ ネ ト バ ク タ ー 属 菌 は,市 中 肺 炎
Program は,
ポール(25% 以上)
,トルコ,イスラエル,アルゼン
チン(20% 以上)
,南アフリカ,ベネズエラ(15% 以
(community-acquired pneumonia;CAP)を中心に,
上)
,台湾(10% 以上)
,ブラジル,ギリシャ(5% 以
市中感染症の原因菌としても注目されている.実際に
上)
,ベルギー,ポーランド,米国,香港(1997 年 7
後述のように,タイ王国などでは,明らかな基礎疾患
月 1 日に主権が英国から中華人民共和国に返還)
,中
を有さない成人における薬剤耐性 A. baumanii による
華人民共和国,カナダ(5% 以下)の順に高かった.
劇症型 CAP および敗血症が問題となっている.A.
しかし,国内からの参加施設であった,帝京大学,北
baumanii による CAP の 多 く は,慢 性 閉 塞 性 肺 疾 患
里大学,長崎大学の 3 施設では,いずれの施設におい
(Chronic Obstructive Pulmonary Disease;COPD)
,
てもその頻度は 0% であり,当時の日本におけるアシ
腎不全,糖尿病,ヘビースモーカーや大量飲酒家に多
ネトバクター属菌の多剤耐性率は,ほぼ 0% であった
いと言われており,しばしば予後不良である.また,
と考えられる.この頃から,帝京大学,北里大学,お
不適切な抗菌薬による初期治療も,アシネトバクター
よび長崎大学は,薬剤耐性アシネトバクターに着目し,
属菌による CAP の予後不良の一因として挙げられて
各施設で厳重なサーベイランスを行うとともに,種々
いる9).
の学会などで情報を提供し,注意喚起を行っている.
国内においても,現在のところ頻度は低いものの,
2006 年,長崎大学 21 世紀 COE プログラムの一部
重症あるいは敗血症を伴うアシネトバクターによる
である,
「熱帯感染症研修コース」(現「長崎大学グロー
CAP の症例が報告されている10)11).最近のアフリカに
バル COE プログラム
熱帯病・新興感染症の地球規
おける CAP の総説と meta-analysis では,小児の市
模統合制御戦略」
;http:!
!
www.tm.nagasaki-u.ac.jp!
g
中発症型の敗血症の原因菌として,頻度は高くないも
coe!
)でタイ王国北部の王立チェンマイ大学附属病院,
ののアシネトバクター属菌が挙げられており12),市中
およびその関連施設で研修を受けたとき,現地では薬
感染症の原因菌として,今後問題となる可能性が高い.
剤耐性緑膿菌よりも薬剤耐性アシネトバクターが大き
脳神経術後の髄膜炎の原因菌としては,米国や台湾
な問題となっており,王立チェンマイ大学附属病院は
ではアシネトバクターは上位から 5 位を占め,トルコ
タイ王国で初めて「コリスチン(ポリミキシン E)
」
ではグラム陰性桿菌の中で最も頻度が高い13).2004 年
を輸入し使用を開始したところであった.実際に多剤
に米国感染症学会(Infectious Diseases Society of
耐性アシネトバクターによる重症の CAP 患者が ICU
America;IDSA,http:!
!
www.idsociety.org!
)が 出
でコリスチンの全身投与と吸入(コリスチンは肺への
版した術後髄膜炎のガイドライン14)で推奨されている
移行性が悪いため)の同時投与を受けていた.
セフタジジムやセフェピムではカバーできない薬剤耐
多剤耐性
について
性アシネトバクター感染例が増加しており,そのマ
国内で汎用されている,MDRP
(multi-drug resistant
ネージメントに関するレビューが出版されている13).
Pseudomonas aeruginosa;多剤耐性緑膿菌)
,や,MDRA
薬剤耐性アシネトバクター
(multi-drug resistant Acinetobacter)という用語は,海
A. baumannii の約 30% が多剤耐性であるとの海外
からの報告があるが15),その頻度は国や地域によって
差が大きいことが知られている.国内における多剤耐
外ではしばしば通用しない.国内で用いられている
MDRP は,平成 11 年 4 月から施行された「感染症法」
(これによる
薬剤耐性緑膿菌感染症
は 4 類の定点
性緑膿菌の場合と同様に,その多剤耐性化の機序は
把握疾患から,2003 年 11 月施行の感染症法一部改正
様々であるが,メタロ―β―ラクタマーゼの関与もあ
により,5 類感染症定点把握疾患に変更)に則り,「薬
16)
剤耐性緑膿菌感染症」を報告するために設けられた検
世界最大の国際的な耐性菌サーベイランスである
査室における判断基準によるものであり(http:!
!
idsc.
る .
SENTRY Antimicrobial Surveillance Program(http:
nih.go.jp!
idwr!
kansen!
k02̲g1!
k02̲17!
k02̲17.html),
感染症学雑誌 第85巻 第 4 号
アシネトバクター感染症
この基準は必ずしも臨床的な重要性を反映するもので
はない.
343
(XDR)の定義の案をホームページ上で公開し,2010
年 8 月 21 日までパブリックコメントを募集し,定義
MDRA は,平成 12 年 7 月より開始された,厚生労
の統一作業を行っている.ただし,統一化には相当の
働省院内感染対策サーベイランス事業(JANIS[Japan
時間を要すると思われ,また国内未承認の抗菌薬が多
Nosocomial Infections Surveillance]
;http:!
!
www.ni
いことに注意が必要である.2011 年 1 月よりわが国
h-janis.jp!
index.asp)の一部の検査部門を対象とした
で定められた MDRA 感染症の届出基準は imipenem,
サーベイランスにおける報告の基準であり,この基準
amikacin,そして ciprofloxacin の MIC が 各 々 16μg!
も MDRP と同様に必ずしも臨床的な重要性を反映し
mL 以上,32μg!
mL 以上,4μg!
mL 以上である(http:
たものではない.つまり,MDRP や MDRA は報告対
!
!
www.mhlw.go.jp!
bunya!
kenkou!
kekkaku-kansens
象を明確かつ簡便にするために設定されたものであ
hou11!
01-05-43.html)
.
り,サーベイランスを行う一定の基準である.しかし,
アシネトバクターのアウトブレイク
これらの基準が,耐性菌の検出や,アウトブレイクの
アシネトバクター属菌は,自然環境や院内の環境に
感知のための基準ではないことを,専門家自身が改め
広く存在し,医療従事者,患者,および健常人もしば
て認識する必要がある.国立感染症研究所
感染症情
しば保菌しているため,アウトブレイクの原因菌とし
報センター(IDSC[Infectious Disease Surveillance
ても重要である.上述のようにアシネトバクター属菌
Center]
;http:!
!
idsc.nih.go.jp!
index-j.html)は ホ ー
は環境中で長期間生存可能であるが,多くの報告では
ムページ上で,「多剤耐性緑膿菌(MDRP)感染症」(h
約 1 カ月間は乾燥した表面で生存可能であり,最大で
ttp:!
!
idsc.nih.go.jp!
disease!
MDRP!
index.html)に つ
は 5 カ月間生存したとの報告もある19)
いて,詳細な「一般向け情報」および「専門家向け情
院内環境では,ICU を中心に人工呼吸器およびそ
報」(2006 年 8 月 8 日更新)を薬剤耐性緑膿菌が問題
の周辺が汚染される場合が多く,血圧計のカフ,パル
になり始めた当初から公開し,注意喚起を行っている.
スオキシメーター,喉頭鏡のブレイドなどからも検出
この中で,感染症法上の検査室における判断基準を満
されることがある.これはアシネトバクター属菌が自
たさない場合も各医療機関で十分な監視と拡散防止対
然環境に広く常在し,健常人の常在菌でもあることか
策 を 行 う よ う に と 明 確 に 述 べ ら れ て い る.現 在,
らは,自然な現象と考えられる.
MDRA 感染症は 5 類感染症のうちの定点機関による
近年では,薬剤耐性アシネトバクターのアウトブレ
イクが大きな問題となっている.特定のタイプの菌株
届出対象疾患となっている.
薬剤耐性アシネトバクターの定義に関する報告は
によるアウトブレイクが世界中で発生しており,ヨー
様々であり17),抗緑膿菌作用を有するセファロスポリ
ロッパでは I〜III タイプのクローンが,地理的に異な
ン薬,抗緑膿菌作用を有するカルバペネム薬,アンピ
るエリアでアウトブレイクを起こしている.全世界的
シリンナトリウム・スルバクタムナトリウム,キノロ
な流行株として知られている European clone II の染
ン薬,アミノグリコシド薬のうち 2 剤以上に耐性を示
色体性 OXA タイプ―β―ラクタマーゼである OXA-51-
す 場 合 を 多 剤 耐 性(multidrug-resistant:MDR)A.
like 遺伝子は OXA-66 クラスターに属する20).
baumannii とする報告,カルバペネム薬に耐性を示す
院内ではどこでもアウトブレイクを起こす可能性が
場合,あるいは,3 系統以上の抗菌薬に耐性を示すも
あるが,これまでの海外からの報告の大部分は ICU
17)
18)
のを MDR-A. baumannii とする報告
などがある.
国内で発見され過去には使用されていた,ペプチド
で発生しており,ICU における多剤耐性 A. baumannii
のアウトブレイクのリザーバーとして,患者の腸管が
系抗菌薬であるコリスチン以外の,全ての抗菌薬に耐
指摘されている.アウトブレイク対策のひとつとして,
性を示すものを Pan-resistant
A. baumannii とする定
サーベイランスカルチャー(監視培養)が挙げられて
義や,コリスチンを含むすべての抗菌薬に耐性を示す
いる.腋窩,咽頭,または直腸スワブ,および気管洗
も の を Pandrug-resistant(PDR)A. baumannii と す
浄液の培養が A. baumannii 定着例の検出に有効とさ
る定義が混在している.
れており,毎週の咽頭および直腸スワブの培養で高感
A. baumannii や多剤耐性緑膿菌を含む,各種グラム
度に定着例を検出できたとの報告がある21).
陰性桿菌の薬剤耐性に関する定義が統一されていない
上述の福岡県内の大学病院でのアウトブレイクの事
状況から,国際的にこれらの薬剤耐性に関する定義を
例では,韓国からの輸入例を発端として,救命救急セ
統一化する動きが始まりつつある.2010 年 7 月,Euro-
ンター内で複数のバイトブロックからアシネトバク
pean Centre for Disease Prevention and Control(ht
ターが検出され,関係者各位の努力で速やかにアウト
tp:!
!
ecdc.europa.eu!
en!
Pages!
home.aspx)が,欧 州
ブレイクが終息しポジションペーパーが公開されてい
に お け る MDR,PDR,extensively
る22).
平成23年 7 月20日
drug-resistant
344
平潟 洋一
国内における,薬剤耐性アシネトバクター感染症,お
定された,「特定病原体等の施設基準・保管基準・運
よびアウトブレイク
搬の基準(International Air Transport Association
国内における比較的注目を集めた, MDRA 感染
[IATA]に基づいている)
」に従って運搬され再同定
症およびアウトブレイクとしては,以下の 4 事例が挙
されている.また,患者識別と関連性のない臨床情報
げられる.
(年齢,性別,入院!
外来,検査材料別)のみ検体伝票
1)韓国から福岡県内の大学病院への持ち込み例を
をもとに解析されている.
発端とした,救命救急センターにおける 26 名のアウ
臨床材料から分離されたアシネトバクター属菌 305
トブレイク(http:!
!
idsc.nih.go.jp!
iasr!
31!
365!
dj3654.
株について,改めて詳細な抗菌薬感受性試験が行われ
html)
,
ている.カルバペネム薬に耐性(イミペネムの最小発
2)米国で交通外傷のため入院し,帰国後に千葉県
育阻止濃度[minimum
inhibitory
concentration;
内の病院で検出された単発例(http:!
!
idsc.nih.go.jp!
ia
MIC]
が 16μg!
mL 以上)
を示した 36 株について,OXA
sr!
31!
365!
dj3655.html)
,
タイプ―β―ラクタマーゼ遺伝子,メタロ―β―ラクタマー
3)United Arab Emirates(UAE;アラブ首長国連
ゼ遺伝子の有無が PCR 法にて検討されている.さら
邦)の病院に外傷で入院し,帰国後に愛知県内の病院
に,DNA シークエンス解析による OXA タイプ―β―ラ
で検出された単発例(http:!
!
idsc.nih.go.jp!
iasr!
31!
36
クタマーゼ遺伝子型別,Multilocus Sequence Typing
(MLST)が行われている.この研究成績25)では,イ
5!
dj3656.html)
,
4)2010 年 9 月 2 日から報道された輸入経路不明の
ミペネム耐性であったアシネトバクター属菌は,研究
都内の大学病院の例である(http:!
!
www.teikyo-u.ac.j
対象となった 305 株中 36 株(11.8%)であり,その
p!
hospital!
newsandtopics!
20100908.html)
.
中で OXA-51-like 遺伝子を保有していた株は,36 株
1)の事例では,国内最初の輸入例であったが,関
22)
中 34 株(94.4%)であった.この 34 株中 1 株は OXA-
係者の迅速で適切な対応およびポジションペーパー
23-like 遺伝子を保有していた
(34 株中の 2.9%)
.OXA-
の公開を含めた迅速で適切な情報公開により,最小限
23-like 遺伝子保有株は国内で初めて論文として報告
でアウトブレイクが速やかに終息し周囲の医療機関へ
された.カルバペネム薬に耐性を示すアシネトバク
も伝播しなかった.このような貴重な経験の情報共有
ター属菌は,そのほとんどが OXA-51-like 遺伝子を保
化が行われたことも幸いして,2)および 3)の輸入
有しており,A. baumannii であることが明らかとなっ
例では,完璧に院内伝播の阻止に成功した.2)の輸
ている.また,カルバペネム薬耐性 A. baumannii
23)
34
入例は速やかに学会で報告された .4)の事例は,未
株中 32 株がプロモーターとして機能している ISAba1
だに MDRA の侵入経路が不明であるが,この病院で
を有していたことから,カルバペネム薬耐性の主な機
分離された MDRA は,海外からの複数の輸入例から
序は,OXA タイプ―β―ラクタマーゼ遺伝子によるも
検出された菌株と異なり,多くの薬剤に感性であり,
のと考えられている.さらに,DNA シークエンス解
輸入例からの分離菌と逆に,スルバクタムナトリスム
析の結果,OXA-51-like 遺伝子保有株のうち,OXA-66
には耐性である.パルスフィー ル ド ゲ ル 電 気 泳 動
が 34 株 中 28 株(82.4%)
,OXA-80 が 34 株 中 5 株
(pulsed-field gel electrophoresis)による遺伝子解析
(14.7%)
,OXA-83 が 34 株 中 1 株(2.9%)で あ る こ
の結果では,多数のクローンが混在している.輸入元
とが判明している.地域性の比較の結果,OXA-66 は
が不明であることも含めて,国内で発生した新しいク
東京都,OXA-80 は北海道を中心に拡散しており,国
ローンを検出した可能性がある.現在,Multilocus Se-
内において分離されたアシネトバクター属菌の耐性遺
quence
伝子に関する,明らかな地域差が判明している.一方,
Typing による解析が進行中であり,おそら
く全世界で流行中の European clone II とは異なる可
MLST 法により,国内で拡散しているカルバペネム
能性が高い.
耐性 A. baumannii の Sequence Type は,大部分が ST
24)
Endo ら は,国内で初めて薬剤耐性アシネトバク
92(34 株中 32 株,94.1%)であることが判明してい
ターの分子疫学的解析を行った.2009 年 11 月から
る.この ST
2010 年 3 月の期間に,(株)ビー・エム・エル総合研
clone II と同系統のクローンであることから,世界的
究所に全国から検査依頼のために送られた臨床検査材
流行株が日本国内でも拡散していることが示唆されて
料から分離された菌株のう ち,マ イ ク ロ ス キ ャ ン
いる24).この研究は,国内におけるカルバペネム耐性
WalkAway(シーメンス,米国)および VITEK-2(シ
A. baumannii の拡散状況と,その頻度や保有する耐性
スメックス・ビュオメリュー,神戸)にて同定された,
関連遺伝子に関する,明確な地域差,主な OXA タイ
アシネトバクター属菌 305 株(同一患者からの重複を
プ―β―ラクタマーゼ遺伝子型別,MLST を明らかにし
除く)を対象としている.分離菌株は,感染症法で規
ており,本邦から海外へ発信するエビデンスとして投
92 は,世界的流行株である European
感染症学雑誌 第85巻 第 4 号
アシネトバクター感染症
稿中である.
345
が,国内で医薬品として発売された.また,米・ワー
アシネトバクター感染症の治療
ナー・ランバート(現ファイザー株式会社)に輸出さ
アシネトバクター属菌は皮膚や腸管内の常在菌であ
ることから,血液などの無菌材料から検出された場合
れるなど,米国を始め多くの海外諸国でも医薬品とし
て発売され使用されている.
は感染症が確定するが,院内肺炎が疑われる患者の喀
コリスチンは国内では,1960 年代から 1970 年代に
痰などの呼吸器分泌物から細菌が検出されたのみで
かけて用いられたが,当時使用されていた抗生物質の
は,コロニゼーションの場合もある.また,他の菌種
中で副作用の頻度が比較的高いこと,β―ラクタム薬
と同時に分離される場合も多く,この場合もアシネト
をはじめとする,より安全性が高い抗菌薬が開発され
バクター属菌が感染症の原因の主体であるか否かの判
たことなどにより,その後日本国内では使用されなく
断は困難な場合が多い.治療が必要と判断した場合は,
なった.現在,日本ではコリスチンは医薬品として「未
25)
最大投与量を用いた抗菌薬療法を原則とする .
承認扱い」となっている.国内で発見され,臨床使用
本来の薬剤感受性の保たれたアシネトバクター属菌
の実績がある優れた医薬品であり,速やかに再発売さ
は,カルバペネム薬,アミノグリコシド薬,テトラサ
れることが望まれる.コリスチンあるいはカルバペネ
イクリン,キノロン薬などに感性である.一方で,染
ム薬と,リファンピシンやアミノ配糖体との併用療法
色体性の AmpC により第三世代セファロスポリンに
も報告されている5).
はしばしば自然耐性を示す.MDRA による感染症の
場合には,国内で市販されている抗菌薬すべてに耐性
26)
を示す場合がほとんどである .
セフォペラゾンやアンピシリンとの合剤として用い
られている,β―ラクタマーゼ阻害剤である「スルバ
クタムナトリウム」が抗菌活性を呈し,特にアシネト
バクター属菌に強い抗菌活性を有することは,古くか
ら知られている.国外においては,「スルバクタムナ
トリウム」が単剤で市販されている国もあるが,国内
ではアンピシリンナトリウム・スルバクタムナトリウ
ム配合(2:1)
,セフォペラゾンナトリウム・スルバ
クタムナトリウム配合(1:1)が使用可能である.
アンピシリンナトリウム・スルバクタムナトリウム
配合(2:1)
,特にその高用量治療の有用性が報告さ
れているが,一方でカルバペネム耐性菌の増加ととも
にその有効性が低下しているとの報告もある8).国内
でもアンピシリンナトリウム・スルバクタムナトリウ
ム配合(2:1)の高用量の使用が可能となりつつある
が,スルバクタムナトリウムの量としては,全体の 3
分の 1 であるため,高用量(国際的には標準量)でも
臨床的には不十分な可能性がある.
多剤耐性アシネトバクター感染症が問題となってい
る 多 く の 諸 外 国 で は,コ リ ス チ ン(ポ リ ミ キ シ ン
5)
26)
27)
が積極的に使用されている.ウィキペディア
E)
によると,コリスチン(http:!
!
ja.wikipedia.org!
wiki!
%
E3%82%B3%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%81%
E3%83%B3)は,1950 年,ライオン製薬小林細菌研
究所の,小山康夫氏および黒沢秋雄氏らによって発見
された,福島県掛田町の土壌中の芽胞桿菌 Bacillus
polymyxa var. colistinus が産生する,環状ペプチド系
の「純国産の抗生物質」である.1951 年に硫酸塩(硫
酸コリスチン)が,1960 年にはコリスチン誘導体ナ
トリウム塩のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウム
平成23年 7 月20日
文
献
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Acinetobacter spp. Infections
Yoichi HIRAKATA
Department of Clinical Microbiology with Epidemiological Research & Management and Analysis of Infectious
Diseases (C-MERMAID), Tohoku University Graduate School of Medicine
Acinetobacter, which is Gram-negative non-fermentated bacilli, is isolated from natural environment and
human body, including skin and gastrointestional tracts of both healthy persons and immunocompromised
patients. Acinetobacter can cause bacterial infections, such as blood stream infections and health careassociated pneumonia. The definition of multi-drug resistant (MDR) of Acinetobacter has not been internationally harmonized, however, it is defined when MICs of imipenem, amikacin and ciprofloxacin are 16μg!
ml, 32
μg!
ml and 4μg!
ml or higher, respectively, in Japan. Recently, only a few outbreaks by Acinetobacter have
been reported in Japan, while outbreaks by Acinetobacter are more common in Western and Asian countries
abroad. We should pay attention and caution on outbreaks by Acinetobacter and spread of drug-resistant
Acinetobacter as much as we can.
感染症学雑誌 第85巻 第 4 号