【沖縄県教育庁文化財課史料編集班】 【Historiographical Institute, Okinawa Prefectual board of Education 】 Title Author(s) Citation Issue Date URL Rights 「2003沖縄空手道古武道世界大会」に伴うアンケート調査 について−道場主の経歴、道場経営、意識調査− 嘉手苅, 徹 史料編集室紀要(29): 29-52 2004-03-29 http://okinawa-repo.lib.u-ryukyu.ac.jp/handle/okinawa/7781 沖縄県教育委員会 史料編 集室紀 要 第2 9号 ( 2 0 0 4) 「 2003沖縄 空 手道古 武道世界大 会」 に伴 うア ンケー ト調査 につ い て -道場主の経歴、道場経営、意識調査 素手苅 徹 1.は じめ に 】 ) 近代 空 手発祥 の地 と して、沖縄県 には、世界 中の空手道 ・古武道の愛好 家か ら熱 い眼差 しが向け られてい る。県立武道館の落成 を記念 して開催 された 「 沖縄 空手 ・古武道世界大 ( 2 ) 会」 ( 1 99 7年) には 、5 0カ国か ら空手古武道家約 1 , 7 00 名が参加 した。その成果 を踏 まえて 昨年 開催 され た 「 20 0 3沖縄 空手道古武道世界大会」 は、前 回 に比べ る と規模 は縮小 された 、 ; I ものの 、3 1カ国か ら約 5 40人、県内 を含 む国内各地 か ら総勢4, 0 00人の愛好家 が参加 した。 大 会終 了後 の新 聞 の社 説 には、先 人の残 した足跡 に対 す る敬意 と、今後空手 道 ・古 武道が さ らなる普及、 発展 を遂 げ るため には、沖縄 を訪れ る愛好家 の受 け入れ態勢 の確立 や拠点 と ・ い なる施設作 りが必 要 であ る と論 じられてい る。 この ような イベ ン トに対す る県 内及 び海外 ( r ) ) の関係 者 の期待 は大 き く、継続 的 な開催 を望 む意見 は多 い。 これ ほ どの隆盛 をみせ てい る空手 道 ・古 武道ではあ るが、空手発祥 の根源 的 な問題 をは じめ、 中国拳法 の伝 来、空手発達 の理 由な どについては、文献 史料 に乏 しく、不 明 な点が KADEKARUTor u:Re s u l t soft he2 0 0 30ki n a waKa r a t e do& Kobu doWor l dTou r na me ntSu r v e y:Pe r s ona l Re c o r ds ,Do j oMa n a ge me n t ,a n dt h eVi e wsofDo j oMa s t e r s ( 1 )唐手が、明治3 0年代に学校体育の正課 として採用 されて以降、昭和1 0 年代の空手 ( 道)に至る 過程の空手を近代空手 と称 している。( 北谷修武館創立三周年記念事業実行委員会 『 沖縄の空手 p p . 1 3 7 1 4 0 , 上地流空手道協会北谷修武館, 1 9 8 4 年) 0 道-その理論 と技法-』, ( 2 )沖縄空手 ・古武道世界大会実行委員会 『 沖縄空手 ・古武道世界大会報告書』p p. 1 41 1 4 8. 沖縄空 手 ・古武道世界大会事務局, 1 9 9 7 年 ( 3) 「 沖縄 タイムス」( 2 0 0 3 年8 月2 0日) 朝刊2 6 面 ( 4) 「 琉球新報」( 2 0 0 3 年8 月1 9日) 朝刊社説 ( 5 ) 「沖縄 タイムス」 ( 1 9 9 7 年8 月2 5日) 朝刊1 9 面、( 1 9 9 7 年9 月3 日) 朝刊 5面、「 琉球新報」 ( 1 9 9 9 年1 月 1 4日)朝刊社説、注 ( 3 ) 等がみられる。 -2 9 - 史料編集室紀要 第29号 ( 2004) ( ( ) 多 い。 また、伝書 の類 がほ とん ど無 い ことか ら、受 け継 がれて きた型 ( 形 )や技等 の詳細 の多 くは、 師か ら弟子- 口承 によって伝 え られた内容 か ら推測せ ざるを得 ない。 平成 3)か ら県 内の空手道 ・古武道 に関す る流派 の系譜、 沖縄 県教 育委員会 は、 1991年 ( 鍛錬 法 、各地 の民俗行事 に残 る 「 相棒 」 につ いての悉皆調査 を行 い、『沖縄 空手 道 ・古武 ( 7 ) ( 8 ) 道基本調査 』 (Ⅰ) (Ⅲ) と して報告 した。 これ には、県 内全域 の流会派 の名称 、道場 、 継承 された型 ( 形 )や系統 図、地域 の相棒 の概 要、武具等 について、それ までわか ってい る史実 と伝承 的 に知 られている内容 が整理 されてお り、概 略 を理解す る資料 と しての価値 は高 い。 また、空手 道 ・古武道の無形文化財 指定 につ いて も取 り上 げてい る。その成果 も あ って、報告書刊行 の 3年後 ( 1997年 ) には、県指定無形文化財 「 沖縄 の空手 ・古武術 」 と して指定 され、 その技 能保持者 と して 3名 が認定 され、現在 まで に 9名 が認定 を受 けて ( ) ) い る。 しか し、道場 ( 道場 主) の実態や各流派の継承型 ( 形) については、詳 しい こ とは明 ら ( 1 ( ) ) か になってお らず、今後、継続 した調査 を行 う必要が あ るな ど課題 も多い。 「2003沖縄 空手 道古 武道世界大会」 は、海外 ・本土 の沖縄空手道 ・古武道 の愛好家 や、 これ まで海 を越 えて交流 を持 ち続 けて きた県 内の関係 者 か ら意見 を聞 き取 る好機 であ った。 そ こで、史料編集室 で は、 「2003沖縄 空手道古武道世界 大会」 ( 主催 :2003沖縄空手道古武 道世界 大会実行委 員 会、期 日 :2003年 8月16-19日) に参加 した①本県代 表選手 の道場主 ( 56名 )、② 本県代 表選手 ( 125名)、( 参海外 か ら参加 した空手古武道家 ( 約 400名)、④ 県 外 か らの代 表選手 ( 約 50名) に対 して、それぞれ ア ンケー ト調査 を実施 した。 本稿 で は、 県 内の道場 主 に対 して実施 した調査結 果 につ いて報告す る。 最後 に、 この調査 を実施す るにあた って、2003沖縄 空手道古武道世界大会実行 委員会事 務局 の方 々 には調査 - の便宜 をいろい ろ と図 って頂 いた。記 して感謝の意 を表 したい。 ( 6)歴史家の論考には、東恩納寛惇, 序丸 富名腰義珍 『 琉球拳法唐手』 ( 初版1922年) pp.1 5 2 0, 格樹 994年復刻版、伊波普猷 「 古琉球の武備を考察 して 『 からて』の発達に及ぶ」 ( 歴史公論1 書林,1 932年)『 伊波普猷全集』, 五巻, p p.1 9621 5, 平凡社,1 974年、仲原善忠 「 琉球王国の性格 と武器」 『 沖縄 と小笠原』 ( 1 958年) 『 仲原善忠全集』, 第一巻, pp. 5 85594言中縄タイムス杜,1 977年、等 があるが、空手の発祥、中国拳法の伝来、空手の発達については、史実を裏付ける史料に乏 し いことから明快 には論 じられていない。 , 8 0p, 1 9 9 4年 ( 7)沖縄県教育庁文化課 『 空手道・ 古武道基本調査報告書』(Ⅰ) , 沖縄県教育委員会,1 ( 8)沖縄県教育庁文化課 『 空手道・ 古武道基本調査報告書』 (Ⅱ), 沖縄県教育委員会,1 2 6 p, 1 9 95年 ( 9)沖縄県教育庁文化課 『 平成1 5年度版 文化行政要覧』, p,1 2 3, 沖縄県教育委員会,2003年 ( 1 0 )沖縄の空手 ・古武道の道場主に型 ( 形)の伝承状況 と指導状況についての実態調査を試み、と くに伝授 された型 ( 形) とその継承率等についてのアンケー ト調査の報告がある( 真栄城勉、 平良勉、嘉手苅徹 「 沖縄県における空手 ・古武道の継承に関する研究一空手 ・古武道道場主を 」 武道学研究』, p p, 53,日本武道学会, 1 998年) 0 対象として- 『 -30 - 第 29号 ( 2004) 史料編 集室 紀 要 2.調査方法 (1)調査 日的 本調査 では、沖縄 の空手道 ・古武道 を継承す る愛好家の実状や意識調査 を行 い、その結 果 を空手道 ・古武道 の歴史の解明 と今後 の普及、発展 に役立 てる基礎資料 と して活用す る こ とを目的 とす る。 (2)調査対 象 「2003沖縄空手道古 武道世界大会」 に参加 した選手 の所属す る道場主及び大 会役員の道場 主 ( 5 6名) (3)調査方法 自己記 入式 のア ンケー ト用紙 を大 会前 日 (8月1 5日)の説明会会場で配布 し、郵送で回 収 した。 ( 4)調査 内容 以下の項 目に関 して質問 した。 1.道場主の経歴 につ いて ①性別 、②年齢 、( 丑流派 、( 動段位 、6) 空手道 。古武道 を始 めた動機 、( む入門期 2.道場経営 につい て ①場所 、② 門下生の内訳 、( 丑稽古 日、④ 入会金 ・月謝 3.空手道 ・古 武道 に対 する意識 ①修 行効果 ( 体 力面)、( 訓 各行効果 ( 精神面)、③本土 、外国 との比較 、( 彰継承 型 ( 形)、⑤ 意見 3.結果 と考察 調査対 象者 5 6名 中30名 か ら回答 を 得た ( 回収率 5 4%) 。 各流派別の ア ン ケ ー ト依頼 者数 と回答 数 は表 1に示 した とお りである。 表 1 アンケー ト調査の依頼及び回収状況 依頼数 比率 回収数 剛柔流系 1 2 21 % 9 3 0 % 上地流系 l l 20 % 2 7 % しようりん系 2 5 45 % 8 l l その他 8 1 4 % 2 7 % 流 派 調査 票 の回答欄 に記 入が ない場 合 -31 - 比率 3 7 % 史料編集室紀要 第2 9 号 ( 2 0 0 4) や設定外 の回答があ った場合 は、集計対 象か ら除いた。有効 回答 を基 に、 質問項 目に よっ て、以下の集計結果 を用 いて クロス集計 を行 った。 ( ∋6 0歳未満 と6 0歳以上の年代 別集計 L 一 卜 ( ∋回答の多か った上位 3つの流派 ( 剛柔流系、上地流系 、 しょう りん系 )別集計 以下 に、 ア ンケー トの質問項 目順 に、その結果 と考察 を述べ る。 (1)調査村象者 につ いて ここでは、性別、年齢 、流派名、段位 、空手道 ・古武道 を始めた動機 、入門 した時期 に つ いてみてみ る。 ( ∋性 別 8名が全 て男性 であ った。 道場 主の性別 は、無 回答 2名 を除 き2 ② 年齢 0歳代 道場 主の年齢 は図 1に示 した とお り、4 が 3名 ( 1 0%)、5 0歳代 が 11名 ( 3 7%)、60歳代 , 0 13名 ( 43% )、70歳 代 が 3名 ( 10%) で あ っ 0歳以上が 9割 を占めてお り、40歳未満 の た 。5 5 道場 主 はいなか った。 '二 了 t . ∴ ・ ・ : 占 ・ ・ ! ・ ・ ・ ・・ 図 1 道場主の年齢構成 ( 参流派 表 1) に示 した とお り、剛柔流 系 9名、 上地 「ア ンケー ト調査 の依頼及 び回収状 況 」 ( 流系 8名、 しょう りん系 目名 、その他 2名であった。 」 昭霊流」の伝承はあるものの武術における指導理念 ・技 ( l l )明治以前の古伝空手には 「 昭林流 「 法体系などに裏打 ちされた流派はなく、1 9 2 9 年 ( 昭和 4)剛柔流の命名を初出として以降、現 在では数多 くの流派がある( 沖縄の空手の流派については、沖縄大百科事典刊行事務局 『 沖縄 大百科事典』( 上) , pp. 7 7 1 7 7 2, 沖縄 タイムス社, 1 9 8 3 年を参照) 。本調査では、剛柔流系、上地 流系、技法の近似する流派小林流、少林流、松林流、少林寺流、沖縄拳法、船越流をしょうり ん系とし、そして、アンケー ト依頼 ・回収の結果から劉衛流、本部流系、古武道系をその他 と した。 _3 2- 史料編 集室紀 要 第 29号 ( 2004) ④ 段位 空 手 道 と古 武 道 は個 別 に段 位 を取 得 す る必 要 が あ る 。 道 場 主 の 段 位 の 保 有 者 は、図 2に示 した とお り、空 手 道 2 8 名、 3名 で あ っ た。 古 武 道 3段 の道場 古武道1 ■ 一 主 が 1名 い るが 、 この道場 主 は空 手 道 の 5段 以上 の保 有 者 が 道場 経 営 を行 ってい 「 「 2 1 0 0 5 8段 を保 有 して い る。 この集計 結 果 か ら 「「 3段 4段 0 0 ロ空手道 「11 「澗 5段 6段 7段 8段 9段 1 2 3 9 6 1 0段 無回答 7 2 る こ とが わ か る。 いず れ か一方 の段 位 を 図 2 道場主の保有段位 8名 、古武 道 だけが 2名で あ った。 申告 した道場 主 は、空手 道 の段位 だけ を申告 した者 が 1 ,両 方 の段 位 を申告 した道場 主 の うち 9名が 両方 の段位 を申告 した道場 三 日 ま10名 であ った, 保有 す る空 手 道 と古 武 道 の段位 を比較 した場 合、空 手 道 の方が高段位 で あ っ た。 古武道 の保 有段 位 表 2 流派別 ・年代別の道場主の保有段位 流派別の保 有段位 を、 回答 が多 く得 ら 剛柔流系 れ た 3つ の流 派 につ 段位 いてみてみ る と、表 3段 4段 2に示 した とお り、 5段 6段 しょう りん系 で は 11 7段 名 中 7名 、上 地流 系 8段 9段 は 8名 中 3名 、剛 栗 1 0段 流系 は 9名 中 1名 で 無 回答 上地流系 年代別 の保有段位 しようりん系 60歳未満 6 0歳以上 000 00000 0000000000 100000 000 00111 101 1110 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 空手道 古武道 空手道 古武道 空手道 古武道 空手道 古武道 空手道 古武道 1 1 1 1 2 1 2 1 1 4 4 3 4 3 2 2 1 2 1 2 2 1 8 3 4 5 1 4 1 2 5 1 5 3 4 9 1 8 あ った。 また、年代 別 に60歳未 満 と60歳 以上 に分 けて見 た場 合 、60歳以 上 が 1 6名 中 8名 、60歳未 満が 1 4名 中 5 ( 1 2 ) 名 で、高年齢 の道場 主 が古 武道の段位 を持 ってい る割 合が高 った。 ( 9空手道 ・古武 道 を始 め た動機 ( 1 2 )沖縄県空手道連盟の昇段審査の受審資格は、「初段 -2年以上修業 した者 ( 1 6 歳以上) 、二段初 段取得後 1年以上、三段-二段取得後(2年以上) 、四段-三段取得後 3年以上、五段・ ・ ・ 四段取 得後 3年以上、錬士六段-五段取得後 4年以上 ( 35歳以上) 、教士七段-六段取得後 6年以上 ( 4 0歳以 上)、教士八段・ ・ ・ 七段取得後 7年以上 ( 5 0歳以上)、範士九段-ソヽ段取得後 1 0年以上 ( 60歳 以上)、範士十段-称号段位審査委員会の推薦 した者」 となっている( 沖縄県空手道連盟 「 沖縄 県空手道連盟段位審査規定」沖縄県空手道連盟, 2 004年) 0 -3 3- 史料編集室紀 要 第2 9 号 ( 2 0 0 4) 道場 主 が 空 手 道 ・古 武 道 を始 め た理 由 と して は、 図 3に示 した とお り、 「強 くな りた い」 が 1 4名 ( 470 / .) で最 も多 く、 護 身術 と して の実 利 的 な側 面 を持 つ 空手 健 康になる か ら 1名 ( 3 %) その他 1名 ( 3 %) 柏神面の筋 i l Ji' , ( 7%) 道 ・古 武 道 に 「強 さ」 が 求 め られ て い る こ とが 分 か る。 そ れ以 外 に は 、 「親 や 身近 な人 に勧 め られ て 」「身 2名 ( 40 近 な 人 が や っ て い たJ か ら始 め た道 場 主 が 1 / .) い る こ とか ら、 沖縄 にお い て空 手 道 ・古 武 道 が 一 0 般 的 に認 め られ て い る こ とが分 か る。 図 3 空手道 。古武道 を始 めた動機 ⑥ 入 門期 い つ 頃 か ら空 手 道 ・古 武 道 を始 め た か に つ い て は 、 表 3に示 した とお 1 0%) 、 りで あ る 。 6歳 未 満 は 3名 ( 6-1 2歳 は 4名 ( 1 3%) 、1 3-1 5 歳は 6名 ( 20% )、16-18歳 は 9名 ( 30 表 3 空手道 ・古武道の入門期 いつ頃空手道 を始 めたか 歳未満 人数 6 6 歳∼ 1 2 歳 1 3 -1 5 歳 1 6 -1 8 歳 1 9 歳 以上 3 4 6 9 8 いつ頃古 武道 を始 め た か 歳 未満 6 6 歳∼ 1 2 歳 1 3 -1 5 歳 1 6 -1 8 歳 1 9 歳 以上 0 無 回答 0 1 人数 3 1 l l 1 4 無 回答 %)、1 9歳 以 上 8名 ( 2 7%) とな って お り、 ば らつ きが み られ た。 修 行 の 開始 が 早 か った道場 主 は 5歳 、 高 年 齢 で は 25歳 と30歳 が そ れ ぞ れ 1名 ず つ い た 0 表 4-1空手道の修行年数 修行 年 数 人 数 2 5 年以上∼3 0 年未満 1 3 0 年以上∼3 5 年未満 2 万 、 古 武 道 は 、1 6名 が修 行 経 験 を有 し、1 8歳 まで に 5名 ( 1 6 3 年以上∼4 0 年未満 4 5 年以上 ∼ 4 5 年未満 2 4 0 %)、1 9歳 以 上 に 1 1名 ( 3 7%) とな って い る。 高 年齢 で は 、40 年以上∼5 0 年未満 1 2 4 5 年以上∼5 5 年未満 3 0 歳 が 2名 、5 0歳 が 1名 い たo Lか し、 い ず れ の 道 場 主 も空 手 5 年以上∼6 0 年未満 1 5 5 0歳 まで に修 行 を開始 して い る。 古 武 道 の無 回答 は 、 道 で は2 6 0 年以上 3 - - 修 行 経 験 が な か っ た 、 また は 、 して い な い とみ る こ とが で き る。 段 位 の 申告 は な い が 、 修 行 経 験 は あ る と答 え た道 場 主 が ※但し、段の申告がなかった 道場 主 2名 を除 く。 表 42古武道の修行年数 修行年数 人数 2 5 年以上∼3 0 年未満 2 年以上∼3 5 年未満 2 3 0 年以上∼4 0 年未満 1 3 5 歴 を概 算 す る と 、 そ れ ぞ れ 表 4-1、 表 4-2の とお り と な 年以上∼4 5 年未満 6 4 0 5年 、古 武 道 は40 4 る。、 道 場 主 全 体 の平 均 修 行 歴 は、空 手 道 が 4 年以上∼5 0 年未満 2 5 空手 道 で 2名 、古 武 道 で 3名 い た。 、 l 、 現 在 の 年 齢 か ら開 始 年 齢 を引 い て 、 空 手 道 。古 武 道 の修 行 年 で あ っ た 。 最 も年 数 の少 な い 道 場 主 は 、 空 手 道 で は2 9年 、 ※但し、段の申告がなかった 道場主1 7名 を除 く。 ( 1 3 )ただ し、道場主は、質問に対 して1 0 歳区切 りで回答 しているので、たとえば、4 0 歳代は4 5 歳と して中間の年齢 をとった。 _3 4- 史料 編 集室紀 要 第2 9号 ( 2 004) 古武道では2 5年で あった。 (2)道場経営 について ここでは、道場 の場所、所属す る門下生の内訳 、空手道 ・古武道の稽古 日、入会金 ・月 謝 に関す る集計結 果 をみてみる 。 ( ∋場所 道場 の設置場所 については、道場主の2 1 名 O「自宅 とは別 の場所」が 7名 いる ( 7 0%)が 「自宅の一部」 に道場 を設置 して ( 230 / o)、「 公共施設 な ど」が 2名 (70 / .) であった. ② 門下生の内訳 表 5 門下生の内訳 ( 人) 門下生の規模 小 .中学生 高. 寺. 大. 一般 なし 2 1 ここで回答 を得 た門下生の人数 は、現在道場 に通 8 1 0名程度 20名程度 30名程度 40名程度 5 0名以上 ってい る門下生 を指 してい る。道場主 には、 門下生 の数 を中学生以下 と高校生以上の 2つに区分 し、「な し」 を含 めて 6段 階で申告 して もらった。その結果 l l 7 2 3 6 7 4 3 6 を表 5に示す。道場 の門下生の状 況 は、中学生以下 の門 下生 では1 0名程度 を有す る道場主が 8名、同 じく高校生以上 の門下生で も1 0名程度 を 1 名で最 も多いが、ば らつ きがあった。 有す る道場主が 1 一 i l 門下生の数 を平均 す る と 1道場 当た り約 5 0 名 となった。 これは 3つの流派別、年代 別で 7-6 0 名の範 囲にあ り、今回の集計結果か らは、調査対象 1道場 当た 比較 して も平均値 は4 0 名程度 と見 ることがで きる。道場 には門下生が実際 に稽古 で きる広 さ りの平均 門下生 は5 が必要 であ り、 こ うした結果は道場 の敷地面積の一般 的なあ り方 を推測す る資料 となる。 ③稽 古 日 道場 の稽古 日を 「 週 1 ・2回」 か ら 「 毎 日」 まで 5つ に区分 して質問 してみ ると、 図 4に示 した とお り、道場 主 の半 数 ( 15 名)が 、過 3日の稽古 日を設 けていた。次 に過 1 .2日程度 が 6名、週 4日程度が 4 名 と続 く。流派別 、年代 別 に見 て も週 3日 毎 日 週 5・ 6日 週 4日 図 4 道場の稽古日 ( 1 4 )門下生の内訳と道場主数との積で、調査対象の仝門下生の概数を求めた。 -l i l t ,- 週 3日 週 1・2日 史料編 集 室紀 要 第2 9 号 ( 2 0 0 4) の稽古 日は、最頻値 であった。修行 の効果 ( 技の習得) とい う観点みた場合 、空手道 ・古 武道の稽古 を行 う際、 どの ような種類 ( 運動種 目)の練習 を、 どれ くらいの きつ さ ( 運動 強度 )で、 どれ くらい持続 して ( 運動量 )、何 回 ぐらい実行す るか ( 運動頻度) とい う条 件 を満たす こ とに よって、効果 を生 み出す ことになる。 これ らの条件 の中で、週 3日ほぼ 隔 日に練習 を継続す ることは、運動生理学的な見地か ら見て も運動効果の蓄積 と疲労の軽 ( ] . E ) I 減 には、適 当な運動頻度 といえる。 表 6- 1 道場の入会金 ④ 入会金 ・月謝 小 .中学生 高校生 大学生 一般 なし 7 7 7 6 1.000円 0 5 2 入 入 会 金 の額 を 「小 ・中学 生 」 か ら ト一 会金 般」 まで 4つ に区分 して質問すみ と、表 6- 2,000円 1 1 に示 した とお り、 「 ′ ト ・中学 生 」「高 校 3.000円 6 生 」「 大学生」の門下生か ら入会金 をとらな 4,000円 3 5,000円 9 い道場主が各 7名、「 一般」では 6名いた。 6,000円 0 7.000円 0 8.000円 0 9, 000円 0 O. 000円 3 無回答 1 , 0 0 0円であった。1 0, 0 0 0 入会金の最頻値 は5 円の入会金が 「 小 ・中学生」「 高校生」 に各 3名、「大学生」 で は 5名 、「一般」 では 6 l 0 0 0 1 1 1 ー 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 4 4 9 10 15 3 5 6 ー 1 名 いた。 月謝 につ いて も入会金 と同 じよ うに 4つ 表 6-2 道場の月謝 小 .中学生 高校生 大学生 一般 なし 2 2 2 2 1, 000円 3 3 0 0 2, 000円 4 ー 2 2 3, 000円 9 9 4 , 00 0-5, 0 00円の範 囲 にあ り、 校生」 で は1 4. 00 _ OF q 5 6 4 0 5. 000円 6 8 1 4 1 8 最 頻値 は3, 000円 で あ った。 同 じ く 「大 学 ) 0円 6. OC 0 7, 000円 0 8. 000円 0 9, 000円 0 1 0, 000円 0 無 回答 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 月 謝 に区分 して質問 した。表 6-2に示 した とお り、全 ての 門下生 か ら月謝 を取 らない道場 小 ・中学生 」「高 主 が 2名 い た。 月謝 は、 「 生 」「一般」 では、2 , 0 0 0-7, 0 0 0円の範囲 に 0 0 0円であ った。 これは、 あ り、最頻値 は5, 流 派 別、 年代 別 に見 て もほほ同様 の傾 向が 1 3 4 1 3 1 見 られた。 沖縄 の空手道 ・古武道 は、世界 1 5 0カ国 に普及 し、愛好家 は4, 0 0 0万 人 と も4, 5 0 0万 人 と ( 1 5 )池上晴夫 『運動処方』 ,pp.2 1 3 2 1 5 , 朝倉書店 , 1 9 9 0 年 -3 6- 史料 編 集 室 紀 要 第 29号 ( 2004) 、 l . ・ もい わ れ て い る。 愛 好 家 数 は、 空 手 ・古 武 道 の実状 を探 る た め の最 も基 本 的 な デ ー タで あ る。 しか し、 本 県 に お け る空 手 道 ・古 武 道 の母体 を なす 町道 場 に所 属 す る愛 好 家 数 を把 握 す るの は意外 に容 易 な こ とで は な い 。 表 7- 1 流派別道場数① こ こ に 、 3つ の調 査 資 料 が あ る。 1つ 目 は、沖縄 県 教 育 委 員 会 が 実施 した沖 縄 空 手 道 古 武 道 基 本 調 査 ( 1 994年 ) か ( 1 7 ) ら得 られ た県 内 空 手 道 ・古 武 道 の 道 場 数 は 222とい うデ ー タ ( 表 71)、 2つ 目 に 、 沖 縄 空 手 道 協 会 北 谷 道 場 の調 査 結 果 に基 づ く 「沖 縄 空 手 道 ・古 武 道 流 派 ・会派 組織 系 統 図 ( 付 録 )」 ( 1996年 ) に示 され た県 内空 手 道 ・古 武 道 道 場 数 卜L 3( ) 8とい うデ ー タ ( 表 7-2)、 3つ 目 に、 県 内 で流 会 派 を 超 え た 最 大 規 模 の競 技 会 と して 定 着 し、 毎 年 2,500名以上 の 児 童 生 徒 が 参 加 す る 「第 16回 全 沖 縄 少 年 少 女 空 手 道 大 ( 1) 1 ( 2 ( ) ) 会」 ( 2003年 ) に参 加 した 道場 数 136とい うデ ー タで あ るo 愛 好 家 数 を調 査 す る に は、 各 道 場 の 活 動 実 態 を明 らか に した うえで 門弟 の実 数 を把 握 す る こ とが 必 要 で あ るが 、 こ 流 派 名 剛柔流系 上地流系 しようりん系 古武道系 その他 道 場数 5 2 4 3 1 0 3 1 4 1 0 比率 2 3 % 1 9 % 4 6 % 6 % 5 % 『 空手道・ 古武道基本調査報告』( Ⅰ ) ( 沖縄 県教育庁文化課 1 9 9 4 年より作成) 訂 表 71 2 流派別道場数( 流 派 道場数 比率 剛柔流系 5 3 1 7 % 上地流系 3 5 1 1 % しようりん系 1 3 8 4 5 % 古武道系 5 8 1 9 % 8 % 1 0 0 % 『 沖縄空手道概 説』( 沖縄空手道協会 1 9 9 6 その他 合 計 2 4 3 0 8 年より作成) の よ うな裏 付 け を持 っ た調 査 は これ まで な され た こ とが な ※いずれも小林流、 少林流・ 松林流、 少林寺流・ 沖縄拳法、 一心流などを「 しょうりん系」とした。 い 。 近 年 、 女性 の指 導 者 、 道 場 主 が増 え る傾 向 にあ るが 、 そ の 実 状 を調 べ る こ とは、今 後 の 1) ( 2 空 手 道 ・古 武 道 の あ り方 を探 る重 要 な手 だ て に な るで あ ろ う。 ( 1 6)前掲書 ( 2)の知事挨拶文では、「 今や、空手 ・古武道 は、世界 1 42カ国に普及 し、4, 000万人の人 々に愛好 されている」 と紹介 され、同 じく20 03沖縄空手道古武道世界大会事務局 『 2 0 0 3 沖縄空 手道古武道世界大会』 ,p.1.沖縄空手道古武道世界大会実行委員会 , 2003年、の知事挨拶文で も、 「 世界 1 40カ国に普及 し、4, 5 00万人 もの人 々に広 く愛好 され」 と表現 されている。県内のマス コ ミもこの数値 を踏襲 しているが、 どの調査資料に基づ くのか示 されたことはない。 ( 1 7)前掲書 ( 7), pp. 8796 ( 1 8)高宮城繁 「 沖縄空手道 ・古武道流派 ・会派組織系統図 ( 付録 ) 」『 沖縄空手道概説一武道空手の 諸相 -』沖縄空手道協会北谷道場 , 1 9 96年 ( 1 9)沖縄 タイムス社 『第1 5回 タイムス仝沖縄少年少女空手道大会』 ,pp. 61 0, 沖縄 タイムス社, 2 003 年。 この資料 は、道場名 を流派別 に区分 けすることが難 しく、表の作成 はで きなかった。 ( 2 0)本県では、各流会派 の大会パ ンフ レッ トな どか ら推測す ると、ほ とん どの道場主が本業の傍 ら 道場経営 を行 ってい ると思 われるO ボランテ ィアによる運営や小規模の活動体 としての道場が あ り、活動実績がはっ きりしない ところや調査か らもれた道場 なども考 え られる。 このような 状況か ら、道場の実態 をさらに明 らかに して調査数 をみる必要がある。 ( 2ユ)女性 の道場主は、前掲書 ( 7),pp. 8796の調査結果ではい なかったが、前掲書 ( 1 8)では 3名、前 掲書 ( 1 9)では 7名 となっている。 -37- 史料編 集室紀 要 第2 9 号 ( 2 0 0 4 ) 道場経営 の拠点 となる道場 を自宅や他 の場所 に設置す るには、居住者の生活空 間を削 っ た り、新 たな投資 を行 う必要がある。門下生か ら得 られる収入が道場 の維持費及 び活動費 とどの ような関係 にあるか によって、経済的な側面 か ら道場経営 の現況 を見 ることがで き る。入会金 や月謝 、昇段審査料 な どの道場主の収 入 に対 して、道場の設備費や広告料、加 盟団体会費、大会 開催費 などがそれを超 える場合 も多い, J道場経営 の経済的な側面 は、空 手道 ・古武道の今後の課題 を把握す るために も重要 な因子 の一つである0 本調査 によって明 らか にされた ように、一般的な沖縄 の空手道 ・古武道の道場 は自宅の 0 名程度、入会金 ・月謝 は各3 , 一部 に設置 され、道場主 は過3日道場 を開 き、門下生 は約5 0 0 0-5, 0 0 0円、 月収 は、平均値でみ る と約2 0 万円 ( 月謝4 , 0 0 0円 ×5 0 名)程度 とい うこと が推測で きる。 また、道場経営の開始時期 は、図 1の結果か ら推察す る と、早い人では4 0 歳代 か ら道場 を開設 し、6 0歳代 に ピー クを迎 え、7 0歳代 には引退す る とい う経営者 として の流れが見 えて くる。 沖縄 の空手道 ・古武道 は、継承 されて きた技 と精神 に情熱 を傾 けて きた道場 主 ( 指導 者)たちのボラ ンテ ィア的な活動 に支 え られて普及、発展 して きた歴史が ある。 しか し、 今後普及活動 を充実 させ 、 よ り質の高い空手道 ・古武道 を追求す る場 として、安定 した道 場経営 のあ り方 を模索す るには経済的な側面 は重要ではなかろ うか。 (3)空手道 ・古武道 に対す る意識 ここで は、空手道 ・古武道の修行が体力面、精神面 に どの ような良い影響 をもた らす の か、本土や外 国 な ど他 の地域の空手道 ・古武道 との比較、 どの ような壁 ( 形) を継承 した か、沖縄 の空手道 ・古武道 に対す る各道場主の考 え方 についてみてみ る。 ( 訓 参行効果 ( 体力面) 空手道 ・古武道 の反復練習が体 力 にどの ような良い影響 を及ぼ し ている ととらえ られてい るのか、 体力 を防衛体力 ( 病気 に対す る抵 抗力)、パ ワー、 ス ピー ド、ス タ ミナ、テ クニ ックの 5つ に分類 し て、回答 は 3つ を選択 して もらっ た。その結果、図 5に示 した とお り 「ス ピー ド」 が 23人 、 「パ ワ 〉 防術体力 パワー スピード 図 5 修 行 効 果 (体 力 面 ) -38- 史料 編 集 室 紀 要 -」20人、 「防衛体力 第2 9 号 ( 2 0 0 4) ( 病気 に対す る抵抗力 ) 」1 7人、「ス タ ミナ」1 4人、「テ クニ ック」1 0 人の順 に高 い数値 が示 され、体力面での練 習効果がみ られ る とい うとらえ方 であった。 こ れ は、流派別 、年代 別 にみて もほぼ同様 で、際だ った違い はなか った。 運動 が 身体へ どの ような影響 を及 ぼす か とい う問題 を科学 的に解決 してい くには、 自然 科学 の分野 か ら運動生理学 やバ イオメカニ クス等 の手法 に よって研 究 を進 め ることが不可 欠であ る。空手道 ・古武道 に関す るこの分野 か らの研 究 は、他 の武道 と比較 して まだ まだ ( 22) 少 な く、沖縄 の空手道 ・古武道 を調査対 象 と した運動生理学やバ イオメカニ クスの研 究 は 限 られ てい る。伝統文化 の特性 をよ り明確 に知 るために もこの ような研 究 は、今後 の重要 な課題 とい える。 ② 修行効 果 ( 精神面) 空手 道 ・古 武道 の修 行 が 人格形成 に どの よ うに関 わ る とと らえ られ てい る 2の 因 子か ら 3つ以 内 を選択 して か 、1 も らった。 その結 果 は、図 6の とお り とな った 。「礼 儀 」 の養 成 に対 す る貢 6人で際 だ って 献 度 をあ げ る道場 主が 2 4人 、 3番 多 か った。次 に 「道徳性 」1 目 に 「思 い や り」1 0名 、 「不 摸 不 屈 」 御 轡 轟 き癖 終 \ 鮫 J ・ , 二 ㌧ 。 図 6 修行効果 ( 精神面) 8名 の順 で あ った。空手 道 ・古武 道 の 練 習 をす るこ とに よって、技 の習得 とともに礼儀作法や道徳性 の育成 に役立 つ ととらえ ら れてい る こ とが わか る。 これは、流派別、年代 別 において も上位 2因子 は同様 の結 果 であ った。 また、ユ ーモ ア と大胆 さをあげた道場 主 はいなか った。 この結 果 は、道場 主が それぞれの因子 を選択 した理 由や愛好家 ( 門下生 ) 自身が どうと ( 2 2 )日本式道学会における武道に関する自然科学の分野からの研究 ( 1 9 6 8-1 9 9 7 年の件数)は、柔道 4 9 7 件( 4 7%) 、剣道3 61( 3 5%) 、弓道6 1 件( 6%)、空手道4 3 件( 4%)、相撲2 8 件( 3%) 、なぎな た 6件 ( 1%)、合気道 2件、少林寺拳法 1件、その他4 2 件 ( 4%)となっている (日本武道学会 p p. 8 l l ,日本武道学会, 1 9 9 7 年) 。 『 武道学研究目録』, ( 2 3 )沖縄の空手道 ・古武道を対象 とした運動生理学、バイオメカニクスによる研究には、嘉手苅徹 「 エネルギー発現過程からみた空手道の特性-空手造型演武時のエネルギー代謝 -」琉球大学 1 9 9 6 年、玉城昭子、嘉手苅徹 「 " 蹴 り"動作の三次元解析 『 空手道研究』2, 大学院修士論文, 」 p p. 3 9 4 6 , 空手道研究会, 1 9 9 7 年、池田守利 『 琉球王家秘伝武術 ・本部御殿手の科学的研究一合 壮神社, 1 9 9 8 年8 0 p . 、などがある。 戟演武から上原清書宗家の身体的機能と秘技を探る-』, -3 9I 史料 編 集室紀 要 第2 9 号 ( 2 0 0 4) ( 2 】) らえて い るか な ど今後詳 しい調査 、分析 を重 ね る必 要 が あ る。 ③ 本 土 、外 国 との比較 1若 胃荒 ) 沖 縄 の 空 手 道 ・古 武 道 は 、 訓 練 方 法 、技 能 、型 ( 形 )、考 え方 な どにお い 分 か らな い 1名 ( 3 %) て 本 土 や 外 国 で 教 え られ て い る空 手 道 ・古 武 道 と比 較 して ど う恩 うか と質 問 で は、 図 7に示 した結 果 で あ った。 「 異 3 名 な る」 と答 えた道 場 主 が 2 ( 7 7%) 、 1 7%) 、 「分 か ら 「異 な らない」 が 5名 ( な い 」 が 1名 、 「無 回 答 」 1名 で あ っ た 。 8割 近 くの 道 場 主 が 「異 な る」 と 図 7 本土 、外国 との比 較 答 え て い る 。 沖 縄 の 空 手 道 ・古 武 道 は、他 の地域 に見 られ ない個性 的 な側面 を持 つか ら海外 の愛好 家が わ ざわ ざ沖縄 に出向 い てい る、 と考 え る こ とが で きる。 一方 「 異 な らない」 と答 えた道場 主 も 5名 いたが 、4名 が6 0 歳代 以上 で あ った。 「 異 な る」 と答 えた理 由 と して、以下 の意見 が あ げ られ た。 ( 回答者 の記 述 に従 って意 見 を整 理 したが 、趣 旨 を損 なわ ない ように表現 の修 正 を行 った。型 ( 形 ) の表記 は回答 者 の記述 に従 った。) ○他 の地域では、沖縄 で継承 されている型が変 わ りつつ あると思 う ( 上地流系)0 ○沖縄 の空手道 は、鍛錬法 を正 しく継承 し、試合形式 でない形 を重視 した練習法 にこだわっ 0 ている (しょうりん系) ○沖縄 の空手道 は、基本動作 を重要 し、基礎体力 を作 ることを大切 に している ( 剛柔流系) 0 ○空手道 は身 を保つ為 にある。他 人 を制す る ものではない (しょうりん系) 0 ( 2 4 )空手道 ・古武道の鍛錬が心身両面にどのような影響 をもたらすのか、健康調査票 ( CMI )を実 施 して、健康状態について身体 と精神の両面の疾患について自覚症状 を尋ねた結果から、一般 成人男性 と沖縄の空手道修行者 とを比較考察 した研究がある。この研究によれば、空手道修行 者が身体的、精神的両面の健康状態について有意にす ぐれていること、さらに、身体的効果 よ りはむ しろ精神的効果の方がより高年齢に至るまで持続すること等が指摘 されている( 中村完 」 「 空手道修行者の健康に関する心理学的考察 『 沖縄の人と心』 ,pp.1 9 8 2 0 4,沖縄心理学会, 1 9 9 4年)。 このような心理学的な考察は、今後 も多様な観点から実施 して、体力面への効果を裏付 ける研究 とともに、愛好家をは じめ広 くアピールする必要がある 0 -4 0- 史料編 集室紀 要 第2 9号 ( 2004) ○ 沖縄 で は、伝統 を重 ん じてい る。外 国の場 合 は、見せ るための技 が多い ように思 う ( 上地 流系 ) a O筋 力 を鍛 えるに も沖縄 で は、大 きい筋で はな く、チ -シやサ ー シ、振 り瓶、金剛拳 な どの 伝統 的 な武具 に よってテ ル ( 細 い スジ筋 ) を鍛 える ( 剛柔流系)0 ○ 沖縄 には、末 だ世 界 には普及 されてい ない未知の技 能がある。他 の地域 で は、競技 に重 き を置 き、審判 の 目に良 く映 る よう改良 されている面が見受 け られる ( その他 ) 0 ○沖縄 で は、伝統 を重 ん じ、その型 を正 し く継承す るの に重 きを置 き、 また、 (型 の)分解 0 も良 く理解す る ように稽古 を している (しょう りん系) ○全空達 は、空手道 をスポーツ と して発展 させ るこ とを考 えている ようだが、武道 と しての 空手道 を考 えるべ きだ と思 う (しょう りん系)0 0 1年 に 1度 くらい来沖 してい る外 国の愛好者 には、沖縄 の伝統文化 の歴 史、型 の意義 、分 解 の指導が必要 だ と思 われる ( 剛柔流系 )0 ○古 くか ら伝承 され た文化 遺産 を正 しく継承 し、い ざとい うときの防御 や攻撃 に必要 な技 を 護身術 として体得 で きる ようにす る。 肉体 的な訓練 を適 して精神 の統 一力、安走力、平静 力、適応力、耐久力 のすべ て を高 め、 よ り高次 の人間性 をつ くり、人格形成 をす る。 それ が沖縄 の空手道 .古武道 であ るo外 国の空手道 ・古武道 は見せ物 的で シ ョー に走 りす ぎ、 内容 に乏 しい (しょう りん系)。 ○空手道 ・古武道 に対 して偏 見 を持 った考 え方 か ら競技力向上 と して、型 中心 のみの指導の 道場 になった り、時代 の要求 に応 じきれ ない空手家が多い ように思 われ る。時 と して、い か なる状況 に も応 え られ る ようにす るのが本筋 ではないか。本土や外 国の空手 は先見性が 非常 に高 い。沖縄 空手道 も時代 のニーズに応 えるべ きだ。本土や外 国ほ どで はないが沖縄 ら しく、ゆっ くりと ( 上地流系 ) 。 ○本土 や外 国の空手 は、試 合 中心 にな り、形 と組手 に勝つ ための練習 に比重 を置 いているの が現状 の ようだ。 チ ャンピオ ンを目指 し一生懸命努力 してい くこ とはす ぼ ら しいが、彼 ら の大部分が高校 、大学 で競技 生活 に ピ リオ ドを打 っているのが現実 だ。沖縄 空手 は、昔か らの鍛錬 方法で基礎 か ら生涯 をか けて空手 を探 求 し続 けてい るこ とがす ぼ ら しい面だ と思 う ( 剛柔流系 ) 0 ○本土 の空手道 は、基底 に 日本武士 道 ( あ るいは剣術 )の精神 ( 又 は稽古方法 )があ る。武 士道 の世界 は、命 を賭 けた真剣勝 負 の世界 で、そ こには殺 人剣 としての修行 ( 稽古)が感 じられ るが、沖縄 の空手道 は、武 人 と して戦い を想定 しての修行 ( 稽古)が あ り、その修 0 行 自体 が 自分 を磨 く目的 になってい る と思 う ( 剛柔流系) ○ 沖縄 の空手 は、1)型か ら始 まって、 自由組手 を経 て、 また、型 中心 の稽古 に入 る。2)大学 -41- 史料編集室紀要 第2 9号 ( 2004) 空手 より町道場 の権威が高いこと。3) 生涯空手の指向性。4)いわゆる名人 ・達人は5 0歳以 ) 伝統 と現代 を調和 させ なが ら、最終的に伝統性固持 に落ち着 く ( 上 上の人に多いこと。5 地流系) 。 ○見た目の派手 さ、かっこよさは沖縄以外の空手 ・古武道が よいが、沖縄の空手 。古武道は 理 にかなった、又、自然体 の技、型である。又、沖縄以外 の方 は、空手 を商売 として考 え る人が多いが、沖縄 は普段 の生活があってこそ、空手 ・古武道だ とす る考えがある。だか 0 ら生涯にわたって続ける考 え方が強い (しょうりん系) ○空手の心 ・技 。体 ・理の修得 には数年、数十年はかかるに もかかわ らず、十分 に修得 され ないまま外 国や他県 に伝 えられ、その型の持つ攻撃 ・防御の意味 ( 分解)が 自己解釈 され て変型 し、異 なる型や練習方法になっていると考え られる。そのことが同 じ名称 にもかか わ らず内容の違 うもの となっているのではないか。そのような違いは、国際交流や世界大 会の際のセ ミナー等 によって克服 され、メッカである沖縄本来の型や考 え方 に修復 さj tつ つある。違い を論ずるのであれば、む しろ流派 ・会派の鍛錬方法や考 え方 を研究 した方が よいのではないか。厳 しい肉体鍛錬 をする型 を持つ流派 と競技用の型や組手 を主 としてい る流派 と組手技術のみを教 える会派がある。 1番 目の流派は、肉体鍛錬のための型があ り、 その型の中で肉体の強化 と精神面の強化の相乗効果 をね らっている。その ような基礎 に立 って、組手やその他 を組み立 ててい くのである。後二者については、空手道 とい う場合の 人格の形成や精神面の強化 という点 において、疑問 を感 じる ものである ( 上地流系) 。 道場 主 は、沖縄 の伝統文化 と して継承 されて きた空手 道 ・古武道 に対 して 自信 と誇 りを 持 ってお り、他 の地域 でその内実が変化 してい ることに対 して危悦 の念 を抱 いてい る こと が読 み取 れ る。沖縄 の空手道 ・古武道 の型 ( 形)の解釈 、鍛錬法 には正統性 があ り、伝統 的 な鍛錬法 を長年継続 した結 果、人格形成 に も良い影響 を及 ぼす との捉 え方 な どがあ る と 思 われ る。 ④ 継承 型 ( 形) 空手道 本調査 で は、道場 主 に普段使用 してい る継承型 ( 形 )名 を記述 して もらった。 同一の型 ( 形 ) を示 してい る と思 われ る もので も、本 人たちの記述 に従 ってその まま表記 し、流派 他流派 の型 ( 形 ) を継承 してい る場 合 で 別 に集約 して、表 8-1か ら表 8-4に示 した。 ( も、 その まま含めて集計 に取 り入れた。 なお、基本動作 、準備運動、補助運動、鍛 え、分 解 な どについては継承型 ( 形 ) には含 めてい ない。) _42- 史料編 集室紀 要 第 29号 ( 2004) 表 8-1 空手道型 ( 形) [ 剛柔流系] 三戦 -サ ンチ ン、撃 砕 第一 .第二 一撃砕一 .二 一ゲ キサ イ第 1.第 2-ゲ キサ イ Ⅰ一Ⅲ、普 及型 1.2、太極 、砕 破 -サ イフ ァー、制引戦 -征 遠鎮 -セ イエ ンチ ン-セ イユ ンチ ン、四向戦 、四 向鎮 - シ ソ-チ ン、 三十六手 -サ ンセ ール- -サ ンセ イルー、十八手 -セ -パ イ-セ イパ イ、久 留 頓破 - クル ル ン7 7-、十三手 -セ イサ ン-セ -サ ン、壱 百零八手 -スーパ ー リ ンペ - - ス- 表 8-2 空手道 型 ( 形) [ 上地流系] 三戟 -サ ンチ ン、完 子和 ( か ん しわ) -カ ンシワ、完 周 ( か ん しゆう) - カ ンシユ ウ、十戦 ( せ い ちん) -セ -チ ン、十 三 ( せ い さん) -セ イサ ン-セ -サ ン-第二 セ-サ ン、十六 ( せ い りゆ う) -セ イ リユ ウ、完戦 ( か ん ちん) -カ ンチ ン、三十六 (さんせ - りゆう) -サ ンセ イ リユ ウ 表 8-3 空手道型 ( 形) [しょうりん系] 普 及型 1・2一普 及 型 Ⅰ・Ⅲ、基本型 1-4、約 束組手 1-7番 、平安 -平安初 -五段 - ピンア ン初段 ∼ 5段 - ピ ンア ン 1- 5段 - ピンア ン 1- 5、 内勝 地初 ・二 ・三段 -ナ イ フ アンチ ーナ イ フ アンチ初 ・二 ・三段 -ナ イハ ンチ 1・2 ・3、安南空 -ア-ナ ンクー、王冠 、鷺牌 、江棉 一 ワ ンス一 一 ワ ンシュー、抜塞 -パ ッサ イ-パ ッサ イ大 ・小 一古流 パ ッサ イ-糸洲 パ ッサ イー松 村 バ ツサ イ一泊 のパ ッサ イ一糸 洲 のパ ッサ イー松 村 のパ ッサ イ、五 十 四歩 一五 十 四歩 大 ・小 、鎮 闘 ( チ ン トウ) 一チ ン トウーチ ン トーーチ ン トウ一、慈 恩 - ジオ ン、公相君 一 クーサ ンクー -公 相 君大 ・小 - クーサ ンクー大 。小鉄掌 、 ウ-セ- シー、 ニ ーセ - シ、 セ イサ ン-セ-サ ン、チ ンテ ィ、 ナ ンテ ィー、ヂ ッテ、 ソーチ ン、 ヌ ンテ ィ、 ウ ンシュ 表 8-4 空手道型 ( 形) [ その他] 元手 、合戦 手 ( 順 序 の ない形 の定 まらない技法 1, 2, 3, 4, 5) 、本部 バ ツサ イ、鳴鶴 拳 、 取手 、取 手反 し、裏 反 し、武 の舞 、三角跳 び、夫婦 ( 立 ち、歩 み、突 き、蹴 り)踊 い歩み 、体捌 今世界大会 において、競技 の指定型 ( 形) とされたのは、表 9に示 した とお り、44の伝 。「普及型」以外 は、全てカ タカナで表記 されている。 統型 ( 形)である -4 3- 第2 9 号 ( 2 0 0 4) 史料編 集室 紀 要 調査 結 果 を見 て も分 か るが 、い 表 9 沖縄空手道型 ( 形)の名称 1 七一サ ン ず れ の流派 におい て も型 ( 形 )の 表 記 は厳 密 に は確 定 され て い な ー 2 サ ンセ-ル- 2 3 ワンス- ( ワンシュー ) 3 4 ム 卜デ ィー 2 サ ンセ- リユ - 1 3 クルル ンファー 2 4 バ ツサ イ 3 5 オーハ ン 3 力ンシワ 1 4 セ-エ ンチン 2 5 3 6 バーチ ユ ー い。 これ は、 表記 に関す る詳 しい 内容 が継承 されて い ない こ とが理 ( 2( ) ) 由で あ る と思 われ る。 しか し、型 5 力ンチン 1 6 普及型 ( 形)( -) 2 7 クーサ ンク- 3 8 パ イク一二 . 6 力ンシユ- 1 7 普及型 ( 形)( 二) 2 8 ホープア-■ ≡ 3 9 ヘ イ ク:= ■ 7 七一テ ン ー 8 ピンア ン 2 9 チ ンテ ィー 4 0 ( 形 ) は流派 の系譜 に関わ り、技 9 サ イファー 2 0 ア-ナ ンク- 3ー ソ-テ ン 4 2 ジオン 1 0 シソ-チ ン 2ー ワン力ン 3 2 二七- シ 4 3 ウンス-1 … l l セ-パ イ 2 2 ローハ イ 3 3 ジ ツチ ン: I 4 4 カ ツシンデ イ 法 の体 系 の根 幹 を成 す もので あ る こ とか ら、今 後表記 は統一す るこ とが望 ま しい と思 われる。 この 問題 をひとまず保留 にして 調査結 果 と比 較す る と、回 答 に含 まれ なか った流派の 壁 ( 形 ) 6つ とほか に 4つ 形)が指定型 ( 形) の型 ( には含 まれてい る。調査結 果 には 、 剛柔流系 の青龍、 白虎、 朱雀 、玄武 、天地 な ど、近 年 新 た に創作 された 「 2 003 沖縄空手道古武道世 界 大会 型 (形)競技規程 」2003沖縄 空手道古 武道世 界 大 会 実 行 委員会、 2 0 0 3 年より-部 改 変 して作成 ※ は、調 査結果に含まれて い ない型 (形 ) ※ 表1 0 空 手の型 ( 形 ) 三戟 ( サ ンチン) 5 王椙 (ワンシュー) 十三 ( セ-サ ン) 抜砦 ( 大、小) ( パ ッサ イ) 三十六 ( サ ンセ- リュ-) 五十四歩 (コジューシホ) 完子和 (カンシワ) 鐘闘 ( チン トウ) 十六 (セー リュウー) 公相君 ( 大 、小) クーサ ンクー) し 完戦 (カンチン) 完周 (カンシュー) 十戦 ( 七一テ ン) よ 三戦 ( サ ンテン) ラ 転掌 ( テ ンショウ) 撃砕 ( 一 、二) ( ゲキサ イ) り 砕破 ( サ イファー) 典』 (沖縄 タイ ムス社 1 98 ( 2 ( 7 ) 3 年 ) に よれば、表 10に示 疏 十八手 ( セーパ イ) し た と お り、 空 手 造 型 形 ) は86とされてい る 。 ( クルル ンファー) 久留頓破 ( 征遠童 貞 (セーエ ンチン) 壱百八手 慈恩 (シオン) 才 芸喜 真 (ソ-チ ン) アーラン 二十四歩 ( 二-セ-シー) ん 四向頴 (シソーチ ン) 三十六手 ( サ ンセール ー) ま た 、 『沖 縄 大 百 科 事 十手 (シッテ ィー) 雲手 (ウンス ウ) 十三手 ( 七一サ ン) 壁 ( 形 ) も含 まれていた。 白鶴 ( ホープァー)y i 珍手 ( チンテ ィ-) ( スーl t Dリン へ○ イ) 普及型 ( -) 普及型 ( ニ) 元手三戦 ( ムー トテ ィーサ ンテ ン) 松三戦 (ショウサ ンチン) 実戦 (ジッチ ン)1 毒液 ( ル-ファー)〟 慕 二段武 (大、小) ( ニタンフ)X < ※ 1.しょうりん流系 と 三浪武 (大、小) ( サ ンパ ブ)` 基本型 ( --≡) (キホ ンカタ) は、少林流 、小林流 、 少林寺流 、松林流 、糸 フキュウカタ) 普及型 ( ≡-五) ( 東流 、空真流、本部流、 元手 ( -∼五) ( ム トーテ ィー)# セーエンテン 石嶺流 、一心流 、沖縄 平安 ( 初 ∼五段)(ピンア ン) . 劉 拳法等 々である。2 街流 には、他 に型が 5 内畔戦 く 初 ∼三段 ) ( ナイ ルチ) 阿南君 ( ア-ナンクー) つあるが、他 流 と共通 王冠 (ワンカン) いているo するの で、 ここでは省 鳶牌 (口-ハイ) 調査結 果 と比 較す る と、調 査結 果 に はなか った劉衛流 ※「沖縄大百科事典」沖縄タイムス ネ 土 、1 983年 よ 群 は、調査結果に含ま て ない型 (形) れ り一 部改 変 して作 成 い ( 2 5 )金城は、中国、台湾等への1 2 5回に及ぶ現地調査 によって、型 ( 形)の源流、名称や表記につ 」『空手伝真録一伝来史と源 いて解 き明かそうと試みている( 金城昭夫 「 第Ⅴ章型名称の原語考 流型一』 , pp. 2 2 5 2 7 9,沖縄図書センター, 1 9 9 7 年).また、藤原は、形の名称 には、漢音、福建 音 、斬江音、琉球音、和音などが何の約束 もなく、勝手放題に入 り混 ざっていると指摘 してい る( 藤原稜三 『 格闘技の歴史』, p p. 6 5 4 6 5 5 , ベースボールマガジン札 1 9 9 0 年) 。 ( 2 6 )前掲書 ( l l )( 上), p. 7 7 2 -4 4- 史料 編 集 室 紀 要 第2 9号 ( 2004) 8の型 ( 形 ) と しょう りん流系 の型 ( 形) 9種 が含 まれ てい る。事典 が刊行 さ と湖城流 の 1 れ た頃の調査 か らす で に20年以上 が経 過 してお り、 これ らの型 ( 形 ) は継承 され てい る ど うか を含 め て再調査 す る必 要が あ ろ う。 古武道 道場 主 には普段使 用 してい る記述 を求 め、本 人 たちの記述 に従 ってその まま表記 して、 武 具 別 に ま とめ て結 果 を表 1 0 -1か ら表 1 0 -8に示 した 。 (武具 名 を型名欄 に記 述 してあ る場 合 は、型 ( 形 )名 と して扱 った。 また、空手 造型 ( 形 ) と同名 の もの もあ ったが 、古 武 道 の型 ( 形 ) と して演 武 して い る場 合 が あ る と思 われ たのでその ままに した。読 み仮名 が振 られてい る場 合 は、 カ ッコ内 に残 した。) 0 -1 古 武道 型 ( 形) [ 棒] 表1 佐久J H之梶-佐久川の梶-佐久川の梶 1.2-佐久川の梶大 .′ J \ 周氏之梶-同氏の梶一周氏の 梶大 .小、津堅之撮-津堅の梶-津堅棒、添石之梶-添石の梶、徳嶺の梶、米川の梶、白樺の梶 瀬底の梶、末吉の梶、読谷の梶、浦添の梶、知念志喜屋仲の梶、島尻棒、連票の梶、北谷屋良の 梶、朝雲の梶、南方棒、普及型、一 一の段、二の段、撃砕 1.2、砕破、公望の梶、公方の梶、カ 表1 0 -2 古 武道型 ( 形) [ サ イ] 津堅志多伯の銀-津堅志多伯のサ イ、北谷屋良の叙、浜比嘉の叙、湖城の紋-湖城のサイ、二丁 銀一二丁サイ、三丁叙 ( サイ) 、ウフチクのサイ、北谷屋良のサイ、仲村のサイ、石川小のサイ サ イ術の型 1.2.3、浜比嘉のサイ、多和 田のサイ、屋轟阿のサイ、撃砕 1.2、砕破、四向 表1 0 -3 古 武道型 ( 形 ) [ヌ ンチ ヤク] ヌンチヤク、メンテヤク術、ヌンチヤク大 .小、ヌンチヤクの型 1・2、赤嶺のヌンチヤク、前 表1 0-4 古 武道型 ( 形 ) [トンファー] トン77、 トンクア-、 トウンファー、 トイ77術、 卜ウンク7-、 トイフア Ⅰ、当真の トイブ 一1 1 5- 史料 編 集室紀 要 第2 9号 ( 2004) 表1 0 -5 古武道型 ( 形) [ カマ] 鎌、初段 ・二段、カマの手大 ・小、クェ-ヌ手、カマの型 1・2、鐘川の二丁鎌、石川小のカマ 合戦棟 0 -6 古武道型 ( 形) [ エー ク] 表1 津堅エーク手、イエークの型、津堅砂掛けのエーク、エークの型 ( カイ術) 、津堅のカイ術、津 堅赤人之ウェ-クディー 0 -7 古武道型 ( 形) [ テ ィンベ -] 表1 ティンベ- ( 藤牌)、ティンベ-、鐘川のティンベ- 表1 0 -8 古武道型 ( 形) その他 の武具 [ 前里の鉄甲]、[ 双節税] 、[ ヌーンティーーヌンティ]、[ スルジン] 、[ 鍬術]、合戦 ( 長刀、 ヌーチク、両刃の剣、山刀、等 日常生活用品) 、禅戟槍 今 世界 大 会 にお い て は、「棒」 と 「サ イ」 の競 表1 ト1沖縄空手道棒の型 ( 形)の名称 1 徳嶺 の梶 1 5 大城 の梶 " 2 佐 久川の梶 1 6 津 聖 の梶 3 周氏の梶 1 7 津 堅大梶 ※ 4 超氏 の梶 1 1 8 ル ー プアの梶 K 5 浦漆 の梶 1 9 自松 の混 米 6 津堅棒ヰ 昆 2 0 白太郎 の梶 H 7 米川 の梶 21 公望 の梶 8 北脊屋良 の寸 昆 22 カーテ ィンの梶 9 知念志書屋仲 の梶 23 朝 雲 の梶 # ー 0 瀬底 の梶 24 八双 の梶 ※ ( 9今後 の空手道 ・古武道 についての考 え ll 漆石 の寸 昆 25 大 屯 の梶 H 今 後 の空手 道 ・古武道のあ り方や方 向性 に対す 1 2 白樺 の硯 2 6 上 原の梶 # 1 3 祝嶺 の梶 ■ 27 カ ツシン棒 -1 技 が あ り、指 定型 ( 形 ) とされ たの は、表 11 と表 1 1 -2に示 した とお り、 「棒 」27、 「サ イ」1 6 の伝 統 型 ( 形 )であ る( ,調査結果 と比較す る と、 2、「サ イ」 で は 5つ、調 査結 果 に含 「棒 」 で は 1 まれ てい ない ものが あ った。 また、古武道 におい て も名称 の不統一 の問題が あ り、混乱 を避 け るた め に も今 後 統 一 され る こ とが望 ま しい と思 われ る。 る意見 を自由 に記述 して もらった ところ、以下の 意見 が あげ られ た。 ( 回答 者 の記述 に従 って意見 を整理 したが 、趣 旨を損 なわない ように、表現の 修 正 を行 った。) -46- ※ 「 2003 沖縄空 手道古武道世 界大会 型 ( 形)競技場程 」 2 003 沖縄 空手道古武道世界 大会 実行委 員会 , 2 003年より 作成 ※ は、調査結果 に含 まれていない型 ( 形) 史料 編 集 室 紀 要 第2 9号 ( 2 004) ○学校教育-小学校か ら導入 した方が よい ( 剛 柔流系) 。 1 -2沖縄古武道サイの型 ( 形)の名称 表1 1 北谷屋良のサイ 9 サイ( 2 ) 2 浜比嘉のサイ 1 0 サイ( 3 ) をきちん と保存継承 してい く必要がある ( そ 3 津堅志多伯 のサイ※ 1 ー ウフテクのサイ 。 の他 ) 4 繁多川幸良小のサイ" 1 2 漉久山のサイ` ○伝統 としての型 の継承や、 目に映 りに くい技 ○あ ま りに も競技 空手 に走 りつつあるので、型 が正 しく伝 え られてい ない。沖縄 の伝統的な 5 多和田のサイ l 1 3 石川小のサイ 6 湘城のサイ 1 4 千席之サイ■ 7 屋嘉阿のサイ 1 5 二丁サイ 型 を正 し く継 承 す る必 要 が あ る (上 地 流 系) 。 「 2 0 03 沖縄空手道古武道世界大会型 ( 形)競技規程」 沖縄空手道古武道世界大会実行委員会 , 2 0 0 3年 2 0 0 3. ※ ○最近 になってや っと県が協力 して くれるよう になったが、空手 は沖縄 が生んだ最高の文化 より作成 ※ は、調査結果に含 まれていない型 ( 形) であ り、 もっ と積極的 にバ ックア ップ してほ しい ( 剛柔流系) 。 ○沖縄 の伝統的 な型 と本土 の型 ( 型試合) は きちん と分 けるべ きだ と思 う。本土の型 は、切 れ とス ピー ドがあるようだが、重みや実用性 は沖縄 の型 にある と思 う ( 剛柔流系) 。 ○沖縄が空手の本場 といわれるためには、伝統の空手 を忘 れず後世 に継承すべ きである。新 しく創作す る型 は伝統 としての価値がな く、 この ま しくない と思 う ( 上地流系)0 ○本土での空手道 は、スポーツ競技 の側面 に重点 を置いているが、沖縄 の空手古武道 は、人 間形成 を重視 してい くべ きである (しょうりん系)0 ○大 き く団結 し、 まとまっている流派や会派が活躍 で きるような沖縄 の空 手道であってほ し い と思 う (しょう りん系) 。 ○先人が残 されたす ぼ ら しい沖縄 の文化の一つだか ら、正確 にその伝統 を引 き継 ぐべ きだ と 思 う。 さらに、今や世界 に広 まった空手古武道だか ら、 もっと積極 的に沖縄本来の空手古 武道 を普及すべ きだ。 96 0年代か ら始 ま り、硯在 では東欧、北欧に ○沖縄 の戦後空手古武道 の国際化 は、実質的に1 も普及発展 しつつあるが、 この辺で量的拡散 に歯止め をかけ、質の追求 に移行すべ きであ ろ う。東欧の空手家には沖縄以上の使 い手が多い。質的に向上 させ ない と、庇 を貸 して母 屋 をとられる事 態 に陥 って しまう。質的な進化 にこそ、本家本元 の権威 を不動 な ものにす る最大 の手段 であろう ( 上地流系)0 ○近年、外 国や本土か らよ く道場主が研修 を受けに沖縄 にや って来 る。同名の型だが、あ ま りに内容が異 なっていることにびっ くりす る。型 を しっか り分解 して見せ る と、理解す る 空手古武道の型 は、幾度 も幾度 も繰 り返 し反復練習 を し、その中で技 の内容 も分解で き、 繰 り返 しの中か ら協調性 を感 じ、個人演武の中か ら我慢す る心が育成 される と思 う (しょ -4 7I 史料 編 集室 紀 要 第2 9号 ( 2 004) う りん系) 。 01)沖縄 が世界 に誇 れる空手道 をこれか らの子 ども達 に継承す るのであれば、特 に、高校生 の空手の試合 で、予選の型 と決勝の型の二つ だけを覚 えるのではな く、試合では、道場 で 普段稽古 している 3つの型 と分解 を含めて演武 をさせ て試合 をさせ るべ きだ と思 う。2) 本 土で普及 した競技用 の型 は、沖縄では取 り入れないでほ しい。3) 世界大会 は、オ リンピッ クと同様 、4年 に 1回開催 してほ しい。予算 の都合があるのであれば、海外 で開催 して も いいのではないか ( 剛柔流系)0 ○世界 に誇 る本場沖縄 の空手、先人達が築 き上 げた文化遺産 を道場主が今一度真剣 に考 えて ほ しい。各流派、会派間で派閥争い している現状では、本来の型 ( 辛)が崩れてい くよう な気が してな らない.県連盟、県協会などが一体化 して、世界大会や全県大会 を開催す る ことが望 ま しい ( 上地流系)0 ○本来の空手 ・古武道 とい うのは、その人個 人の武道 であ り、型 ・技 の細かい ところまで統 一すべ きものではない と考 える。 よって、現在 の選手権大会では審査 に無理がある。沖縄 の武道界が一つ に結束す ることはよいことではあるが、型 に当てはめて選手権大会 を行 う ことは、本来 の武道の発展 の妨 げになるのではないか。選手権大会ではな く、演武大会の 0 開催が望 ま しい と思 う (しょうりん系) ○先達 の残 した空手道 ・古武道 を しっか りと継承、発展 させ ることが大事 だ と思 う。世界 中 5 0カ国 、5000万人の愛好家がいる といわれているので、交流のチ ャンスが た くさんあ で1 る。それ を県 と当事者で沖縄 の伝統文化のす ぼ らしい遺産 を真剣 に取 り組 むべ き時期 だ と 思 う。統一 に向けて動 き、一丸 となって、発信、受信 をす る方向に進 むべ きだ と思 う。 そ う しない と世界 に後れ をとる恐れがある と思 う ( 剛柔流系)。 92カ国、世界空手連合 ( WFK)- の加盟 国 1 6 4カ国、約 5000万 人の空手 ○ 国連 の加盟 国 は 1 41カ国)の参加国が なければ世界大 愛好者がいる。せめて WFK 加盟国の 4分の 1程度 ( 会 とはいえない と思 う (しょうりん系) 。 ○空手古武道の進 むべ き方向には、次 のことがあげ られる。1 )国の無形文化財や人間国宝の 総本 山 を設置 して、宗家の保持 と継承 を図 る、3) 学校教育への導入 を図 指定 を受 ける、2) り、空手古武道の専 門学校や大学 を設置 して人材育成 を行 う、4) 世界への普及活動 と県民 に夢 を与 える ような ビッグイベ ン トとして世界大会 を開催す る。 また、段位審査 を実施す る、5)ビジネス としての空手古武道 を企画す る。た とえば、長期滞在 ツアー、空手道古武 空手古武道 をベ ー 道の史跡巡 り、有名道場 の見学、空手古武道体験 ツアーな どを行 う、6) 0 スに して、沖縄 と諸外 国 との交流 に貢献す るな ど (しょうりん系 ) ○沖縄 は空手 の発祥地、あるいは、聖地 として、今後 とも本土や世界か ら心の よ り所 として -4 8- 史料編集室紀 要 第2 9号 ( 2 004) あ り続 けるため には、 どうすべ きか とい う問題意識 を持つ ことが大切である。沖縄 がたま た ま空手の発祥地 だった とい うことで世界か ら羨望 されているだけなのか。 あるいは、そ の奥義が今 も継承 されている と見 るのか。前者 は普遍であるが、後者は まさにこの地で稽 古 を している我 々に託 された課題 である。 また、 目の前の果実 ( 競技) を追 い求めるあ ま り、空手の原点 が見失 われている ように思 う。現在、本物 を実感で きないでいる ( 剛柔流 系)。 ○沖縄 が世界 に誇 る伝統文化 とはい え、町道場 の実態 は各流派 とも維持 ・運営 には厳 しい も のが あると思 う。行政側 か らの補助 や税の免税等 による支援が必要であ る と思 う。た とえ 00人余 もいるのに対 し、空手古武道 に対 ば、古典芸能関係 の県指定無形文化財保持者は1 す る同様の指定 は 9人 しかいない。年齢 も長老 に片寄 っている。 もっと年齢幅 を広 げ、足 0 腰 の しっか りした年齢の うちに活動 で きるように考慮すべ きである ( 上地流系 ) ○沖縄 の伝統空手古武道 を始め、琉球古典音楽、琉球舞踊 な どは、伝統 を守 る ところに価値 があ る と思 う。伝統空手 を遵守 して、空手の発祥地沖縄か ら世界の空手愛好 家に伝統空手 の普及 ・発展 を図るべ きだ と思 う ( 上地流系)0 ○空手古武道 の修行 は、「 -器の水 を-器 にそそ ぐが如 し」 であ り、一滴 の増減 もな く受け 継 いで、無窮 な らしめることである.禅 の道で言 う嫡嫡相承であ り、師か ら伝授 さhた型 にはい ささか も潤色 を加 えず、指導すべ きである。 また、「 かた」 は、「 型」 または 「 形」 の どち らで表記 すべ きか とい うことがいわれるが、「 形」 とは、一つの技 、例 えば 「 正面 。「型」 とは 突 き」 の形 、「上段受 け」 の形、「 横蹴 り」 の形の意味 である 「 形 ( 技) 」 を集 大成 した空手道 の型、例 えば 「セ-サ ン」 の型、「ナ イフアンチ」の型 (しょうりん系) 0 ○本筋 を しっか り守 るべ きだ。空手 は首里手 、那覇手、泊手 、唐手 ( 上地流 )、劉衡流か ら 始 まった。歴 史 に残 る人物 もそ こか ら始 まった。長い年月 と共 にいろいろな継承者の創意 工夫 で形 ( 壁) が変化 し、何百 もの流会派が誕生 したが、沖縄が空手の聖地 とな り、本場 とな るため に も、空手道大学の設置 を実現す るために も、歴史上の人物 に戻 り、歴史上の 形 ( 型)に戻 るべ きだろう ( 上地流系)0 ○ スポ ーツ空手 はあ くまで も青少年 の一つの 目標 として競技 を行 い、伝統文化 としての沖縄 の空手古武道 は生涯武道 として、錬磨 ( 修練) を通 して人格の完成 を目的 とす る ものであ る。 沖縄 の空手古武道の型は、伝統文化であるので絶対 に歪めず、次の世代 のために も指 導者が型 を大事 に保存 してい くべ きだ と思 う。 た とえば、英国では空手古武道 を高校の科 目に取 り入 れてい るようだが、学校教育- の導入 を進 めた り、空手古武道大学 ( 武遵大 学) を設置 してそこで指導者 ( 教員) を育成す る必要がある。 各流派の道場 は、高度 な技 術 と人格完成 を目指す修練の場 であってほ しい ( 剛柔流系) 。 -49- 史料編集室紀 要 第 29号 ( 2004) ○強敵 な肉体 を作 り、相乗効果的 に精神面 をも鍛 え上げるための型 ( 基礎鍛錬型) を持つ も のが沖縄 の空手であ り、伝統空手 と呼 ばれる所以である。 その型の中での鍛 え方 ( 体繰) は、必然的 に演武者 に対 して、触れた り、押 した り、突いた り、蹴 った りとい う当て身 を や る。その際、経験年数や鍛錬 の度合 いに応 じて当て身 を行 うのであるか ら初心者 に対 し ては当て身はや らない ことが多い。鍛錬型 によって肉体 と精神 を鍛 えつつ、基礎 を作 り上 げ、その上で、その他 の型や組手、古武道 と深めてい くのが真の空手道である。その よう な基礎 ・基本 を無視 して競技空手 に偏 し、型 を派手 な方向に変型 し、競技 に勝つための組 手 のみ を指導す る団体 や会派が増 えている傾向に疑問 を感 じる。組手競技 のみに偏 してい くと沖縄 はやがてメ ッカとしての リー ダーシップを失 ってい くことになるだろ う。競技空 手 ( スポーツ空手) において勝 つための空手ではな く、基礎鍛錬の中で精神 を鍛 え、健全 な人間性 を滴養す る とい う意義 を兄いだ しているか らこそ、 フランスやアメリカなど多 く の外 国勢が メ ッが 中縄 に研修 Lにや って くるのだO心 ・技 ・体の 「 三位一体」 を目指すの が武道 である。その 「 術技」 に属す る "ムチ ミ' ‥` テ ンクデ '" 貫 く""え ぐる""は く …' な ど沖縄空手 に内包す る奥深い 「 鍛錬 の賜」 と 「 心技」 に属す る 「 人 に打 たれず、人打 た ず 」「イチ ヤ リパテ ョ-デー」 の平和思想 をこそ求めて彼等 はメ ッが 中絶 にや って くるの だ。今後 とも伝統空手の保護、育成 に力 を入れてい くことが文化 としての空手 を育 て同時 に観光沖縄 を発展 させ てい くこ とに も繋がるのではないか ( 上地流系) 0 道場 主 の考 え には興味深 い もの が あ り、多角 的 な意見 が述べ られてい る。 共通 の問題 意 識 と して あげ られ てい るの は、伝 統 的 に受 け継が れ て きた こ とを大事 にす るべ きだ とい う 点 や本 土 や海外 の現状 が沖縄 の道場 主 の理想 とす る空手 道 ・古武道 か ら乗 離 してい る点 な どが あ る 。 また、学校教 育 へ の導 入、競技 方法 の工 夫 、受 け入れ態勢 の充実 、空手 道大学 の設置 に つ い ての意見が述 べ られ てい るが 、 これ まで も機 会 あ るた び に取 り上げ られ て きた課題 で ( 2) ある 7 。 沖縄 の伝 統文化 と しての空手 道 ・古武 道 を一層 普 及、発展 させ るため には、道場 主 の こ れ らの意 見 を、 そ の内容 を具体 的 に取 り上 げ、詳 し く調査 、検討 す る必 要 が あ る。空 手 道 ( 2 7) 「 沖縄 タイムス」 ( 1 997年8月1 7日) 朝刊 1 61 7面、「 琉球新報」 ( 2003年1 月1 1日) 朝刊論壇など。 「 沖縄 タイムス」 ( 2003年1 1月6日) 朝刊 12面によると、小林流、上地流、剛柔流の三流派で運 営する沖縄伝統空手道古武道国際セ ンター( 仮称)を2004年 4月言 売谷村 にオープンさせる計画が ある。修学旅行生の受け入れや海外の愛好家たちを受け入れる予定である。 また、那覇市は20 03年度予算に、国際空手道大学創設調査費を計上 した。 -5 0 - 史料編 集室紀 要 第2 9号 ( 2004) ・古武道は、文字通 り血 の濠 む ような鍛錬 とたゆまぬ努力や工夫 によって連綿 と受 け継が れて きた。型 ( 形) や組手 の長年 にわたる反復練習が心 身両面 によい効果 を及ぼす ことは、 経験 的に知 られてい るこ とは多い。 しか し、 隠 し技や秘伝 の名の背後 に隠 されている事実 も多 く、科学的な手 法 を通 して明 らか にされてこそ、空手道 ・古武道のす ぐれた特性 の評 価 が高 ま り、 よ り広 く認 め られ る もの と思 われる。 さらに、空手道 ・古武道の指導理念 に ついて も、本土や海外 に普及 した空手道 をは じめ、剣道、柔道、合気道、弓道 などとの比 較 、検討が必要であ る。 戦前、戟後 を通 して沖縄 の空手道 ・古武道の先人達 は数 々の書物 を著 し、斯道の発展 に I . ■ ト . 寄与 して きたo沖縄 の独 自性 を主張す る様 々な意見 を、今後 とも発信 し続 けることが必要 である 。 4.むす び 本調査 は、 「 2003沖縄空手 道古 武道世界 大 会」の開催 を契機 に実施 した。県 内の道場数 か らみれば、本調査 で得 られた30の回答者で全体 を把握す ることは極めて厳 しい ことであ る。 しか し、沖縄 県 において、道場 主の経歴や意識、道場経営 などの実態調査 は これ まで ほ とん どなされてお らず、 この ような調査 は初めての試みであろ う。多 くの愛好家が活発 に活動す る現状が あ るに もかかわ らず、愛好 家の実状、道場主の経歴、道場経営 などの実 態調査 、意識調査等 が なか なか実施 され ない理 由には、調査 がお ざな りにされている とい うことよ り、技 を継承 す る空手道 ・古武道の歴史的な背景 に原 因がある と思 われ る。空手 道 ・古武道の愛好家 ( 弟子 ) は、指導者 ( 師範) と師弟 関係 を結 び、基本的 には師か ら弟 子 へ 1対 1で向かい合 って技 と精神 が受 け継 がれて きた。系譜 や技の系統、型 ( 形)の詳 細等 については、一子相伝 や一家相伝 の言葉 に示 され るように秘密裏 に伝承 され、その一 門や関係者の間でのみ重要 な情報 が継承 され ることが一般 的であるo 沖縄 の空 手道が学 校教育 に正課 と して取 り入れ られ、明 らか な系譜 と体系化 された技 を 持 ち始めて きた近代 以 降の歴史 はわずか百数十年 にす ぎない。 しか し、近代 空手の草創期 の歴史 を直 に知 る継 承者 も確実 に失 われつつ ある。普及の拡大 は、多 くの愛好 家 を生み出 す とともに、沖縄 、本土 、外 国の伝統文化 に対す る認識 の違 いや、競技 、武道 とい う目標 ( 2 8)空手の書 として初めて上梓 されたのは、吉名腰義珍 『 琉球拳法唐手』武侠社,1922年, 2 8 6p. で ある。国立国会図書館蔵のネット上検索システム( NDLOPAC)で 「 唐手 「 空手」でヒットす る戦前 ( 1 9 2 2 1 9 45年)に出版 された著作1 3 冊のうち1 0冊が富名腰義珍、本部朝基、摩文仁賢和、 糸満盛信、仲宗根源和 ら沖縄県出身者によって著されたものである。 」 -51- 史料 編 集 室 紀 要 第2 9 号 ( 2 0 0 4 ) の違 いによって様 々な在 り方 を生み出す過程で もある。空手道 ・古武道の技 と精神 は急激 な変化 に直面 してい るといって も過言ではない。 沖縄の空手道 ・古武道が伝統的な文化 として内外 か ら高い評価 を受 けてい るのであれば、 その内実 を明 らか に した うえで正統 に受 け継 ぐ必要がある。毎年、県内では、多 くの流会 派が独 自に競技会、演武会、国際交流事業等 を催 している。今 回の世界大会の ような ビッ グイベ ン トに限 らず、その ような機 会 に調査 を実施 して、 よ り多 くのデー タを集めて分析 を進 めてい くべ きであろう。そ して、様 々な愛好者のニーズ を見す えて2 1 世紀の沖縄 の空 手道 ・古武道のあ り方 を考 えることが必要である。早急 に様 々な調査 を行 い、記録 を残す 必要 に迫 られてい る。 ( 参考文献) 富名腰義珍 『 琉球拳法唐手』 ( 1 9 2 2 年初版), 格樹社 , 復刻版 1 9 9 4 年, 3 0 0 p. 仲宗根源和編 『 空手研究』 ( 1 9 3 4 年初版), 格樹書林, 復刻版 2 0 0 3 年, 1 3 5 p. 仲宗根源和編著 『 空手道大観 』 ( 1 9 3 8 年初版), 緑林堂書店, 復刻版 1 9 91 年, 41 4 p. 摩文仁賢和 ・仲宗根 源和 『 攻 防拳法空手道入門』 ( 1 9 3 8 年初版), 格樹社 , 1 9 9 6 年, 2 1 9 p. 船越義珍 『 空手道一路 』 ( 1 9 5 6 年初版), 講談社, 再刊 1 9 7 6 年, 2 2 1 p. 平信賢 『 琉球古武道大鑑』 ( 1 9 6 4 年初版), 格樹書林, 新編増補版 1 9 9 7 年, 2 1 0 p. 長嶺将兵 『 史実 と伝統 を守 る沖縄の空手道』新人物往来社 , 1 9 7 5 年, 3 7 2 p. 上地完英監修 『 精説沖縄空手道 -その歴史 と技法 -』上地流空手道協 会 , 1 9 7 7 年, 1 3 2 5 p. 南郷継正 『 武道 とは何 か-武道綱要 -』三一書房 , 1 9 7 7 年, 2 4 4 p. 宮里栄一 『 沖縄伝 剛柔流空手道』実業の世界社 , 1 9 7 8 年, 2 5 4 p. 沖縄大百科事典刊行事務局 『 沖縄大百科事典』, 上 ・中 ・下巻, 沖縄 タイムス社 , 1 9 8 3 年 宮城篤正 『 空手の歴史』 ひる ぎ社 , 1 9 8 7 年, 2 8 6 p. 南郷継正 『 空手道綱要』三一書房 , 1 9 9 2 年, 2 8 1 p. 新里勝彦 「 琉球王 国 と武芸 」『琉球王 国の時代』沖縄 国際大学公 開講座 Ⅰ,pp.241-295,沖 1 9 9 6 年 縄 国際大学 国開講座実行委員会 , -5 2-
© Copyright 2024 Paperzz