ニッポン開国! - 日本経済研究センター

2013 年度
番外編①
社団法人
日本経済研究センター
Japan Center for Economic Research
2013 年 7 月 1 日公表
ニッポン開国!
― 労働力不足時代への処方箋-
2013年度研究生外国人労働者受入班 1
<要旨>
日本は、少子高齢化の進行により、2020 年代前半には、対 2010 年で就業者数が約 500 万
人減少することが想定される。この労働力不足は、女性・高齢者の労働参加を推進するだけ
ではカバーすることが難しいと予想され、外国人労働者の受入れが重要になってくると考え
られる。今後、先進国・新興国についても、高齢化の進行で労働力不足に陥ることが懸念さ
れ、各国間で労働力の奪い合いが始まると考えられる。そこで、こうした国際的な労働力獲
得競争の時代を日本が勝ち抜くための方策を探った。
日本が外国人労働者の受入れを推進するに当たっては 3 つの壁が存在する。
1 つ目は「制度未整備の壁」である。これは、現行の在留管理制度では、外国人の就労に
対する制限が厳しく、自由な就労が妨げられているという課題である。
2 つ目は「言葉と文化の壁」である。これは、外国人が日本で就労・居住する際に、日本
語でのコミュニケーション能力や日本文化に対する理解が欠如しているという課題である。
3 つ目は日本人の「心の壁」である。これは、日本人が抱いている、外国人に対するネガ
ティブな先入観が外国人との共生の妨げになっているという課題である。
そこで、こうした 3 つの壁を崩して、外国人労働者の受入れを推進するための、2 つの提
言を行いたい。1 つ目は新たな在留資格「中流労働者」の創設と新資格試験の実施、2 つ目は
「クラウドエデュケーションの展開」である。新たな在留資格を設け、新たな資格試験を実
施することによって、日本人と同様の能力を保持した外国人労働者を受け入れる態勢を整え、
今後の労働力不足時代に備える。また、新たな資格試験に合格するための教育システムの整
備し、日本での就労を希望する外国人に無償で日本語・日本に関する知識を学ぶ機会を提供
すると同時に、日本人の外国人に対するネガティブな先入観を払拭する。
1.労働力不足の時代がやってくる?!
【約 500 万人の労働力不足が発生?!】⇒プレゼン資料 2~3 頁
日本は、少子高齢化の進行により、2020 年代前半には、対 2010 年で就業者数が約 500
万人減少し 2、労働力不足に陥ることが想定される。
この労働力不足に対して、現在、日本が推進している女性・高齢者の労働参加によって
どれくらいカバーできるのか推計した。女性については、
「日本再興戦略」
(2013 年 6 月1
4日閣議決定)が達成されたと仮定すると、対 2010 年で約 87 万人の就業者増加が見込ま
1
大澤 慶宏(大同生命保険)、笠原 裕作(日本生命保険)、実吉 秀倫(北海道銀行)。坪内浩(主任研究員)が監修。
2
総務省「人口統計」「労働力調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(全国)」を基に、2010 年
の男女別・年齢別就業率が変化しないと仮定して算出。
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れる。高齢者については、
「高齢・障害・求職者雇用支援機構中期目標(第 3 期)
」
(2013
年 3 月 1 日策定)での「高齢者雇用支援に係る戦略目標」が達成されたと仮定すると、対
2010 年で約 1 万人の就業者増加が見込まれる。そのため、これら戦略・目標を達成したと
しても、約 410 万人の労働力不足が発生すると予想され、持続的な経済成長に向けては、
第 3 の労働力として外国人労働者を有効に活用する必要があると考えられる。
【国際的な労働力獲得競争が始まる?!】⇒プレゼン資料 4~5 頁
労働力不足の問題は日本固有のものなのだろうか。
主要先進国、新興国の従属人口指数の推移を見てみると、日本を含めた主要先進国では、
指数が上昇していくことが想定されている。従属人口指数とは、15 歳未満人口と 65 歳以
上人口の合計を 15-64 歳人口で割った数値であり、この数値が高いほど労働者が支えるべ
き高齢者・子供が多くなる事を意味する。一方、新興国では、直近でこそ従属人口指数は
減少傾向にあるものの、今後、高齢化の影響で上昇局面に入ることが想定される。
つまり、労働力不足は、日本等の先進国だけの問題ではなく、将来的には新興国にも押
し寄せてくると想定され、今後、国際的な労働力獲得競争が始まることが予想される。従
って、外国人労働者の更なる受入れに向けた早急な対応が必要である。
2.外国人受入れの現状と課題
【課題① 制度未整備の壁】 ⇒プレゼン資料 7 頁
まず日本の外国人受入れの現状と、そこから見えてくる課題を整理する。1 点目の課題
は現行の受入れ制度に関する「制度未整備の壁」である。
【日本へ移住したいと考える人は少なくない】 ⇒プレゼン資料 8 頁
そもそも日本で働きたい、住みたいと考える外国人はいるのだろうか?仮に日本への移
住を希望する外国人が少ないのであれば、門戸を開く以前に海外へのアピール政策を打ち
出すべきであると考えられる。一方、日本への移住を希望する外国人が大勢いるのであれ
ば、受入れ態勢を整えることで外国人労働力の獲得は実現が期待できると考えられる。
世界の移住希望者について、Gallup社 3が実施したアンケート 4を参照すると、世界の成
人のうち約 13%は海外への移住を希望しており、移住希望先の上位は英語圏(アメリカ、
イギリス、カナダ)や欧州先進国(フランス、ドイツ)、石油産出国(サウジアラビア、ア
ラブ首長国連邦)等で占められている。その中で、日本へ移住したいと考えている人は、
世界中で約 1,200 万人存在するとの結果が出ており、第 1 章で述べた獲得すべき就業者数
約 410 万人に対しては十分な人数である。
【政府方針は高度な人材の獲得】 ⇒プレゼン資料 9 頁
では、こうした希望に対して日本は外国人をどのような方針や制度の下で受け入れてい
るのであろうか?
現在の日本の外国人受入れ方針が最初に示されたのは、1988 年に閣議決定された第 6 次
3
4
国際的な世論調査やコンサルティング業務を行っているアメリカの会社。
2009 年から 2011 年にかけて、世界 151 カ国約 45 万人を対象に実施されたアンケート。
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雇用対策基本計画である。同計画で日本政府は、
「専門、技術的な能力や外国人ならではの
能力に着目した人材」は「可能な限り受け入れる方向で対処する」とした一方、
「いわゆる
単純労働者の受入れ」については「十分慎重に対応する」との方針を打ち出した。このう
ち専門性や技術を有するような高度な人材の受入れ方針については、新成長戦略(2010 年
6 月 18 日閣議決定) 5や日本再興戦略 6等においても触れられている。一方、「いわゆる単
純労働者の受入れ」については依然として消極的な姿勢であり、当初の方針から基本的に
変わりはない。
【在留資格によって就労の可否は異なる】 ⇒プレゼン資料 10 頁
こうした方針の下、現在日本では在留資格による外国人の管理が行われている。在留管
理制度は、来日する外国人の活動目的や性質に合わせて特定の在留資格を付与し、その資
格に応じた活動を認めるものであるが、この資格は、就労の可否に応じて 3 つに分類する
ことができる。まず 1 つめは就労活動に制限がない資格(4 種類)で、この資格を有する
外国人は日本人と同様に自由な就労が可能である。2 つ目は定められた範囲での就労が認
められる資格(18 種類)で、医療や研究、経営等の活動が認められている。最後は、留学
生や研修生、家族滞在等、原則として就労が認められない資格(5 種類)である。
前述のとおり、日本で働きたいと考える外国人が存在する中、果たして現行の在留管理
制度の下で、自由に日本で就労することは可能なのだろうか?
【就労に制限のない在留資格の取得は難しい】 ⇒プレゼン資料 11 頁
就労活動に制限がない資格は、大別すると①「永住者」か、②日本人や永住者の配偶者
や子が該当する「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」、あるいは③インドシナ難民や
日系 3 世等といった「定住者」に分類される。
このうち「配偶者等」については婚姻や、実子として出生を受けるか養子縁組をする必
要があり、また、
「定住者」は難民や日系人であることが求められるため、自らの意志で簡
単に得られる資格ではない。また、永住者についても、法律上の要件として原則 10 年以上
の在留が必要とされており、この期間のうち 5 年以上は就労が認められる在留資格等を持
って在留していることが求められる。
そのため、外国人がはじめから日本人と同様に自由に就労するのは困難である。
【「定められた範囲」は原則専門的な職種のみ】 ⇒プレゼン資料 12 頁
定められた範囲で就労が認められる在留資格は、全部で 18 種類に分けられるが、該当す
る職業は医者や看護師、公認会計士や企業経営者、あるいはダンサーやプロスポーツ選手
等、基本的に専門的な知識や技術等が求められる。このうち専門性等を求められずに就労
可能な資格は、
「技能実習」のみとなっている。
しかし、
「技能実習」の資格は、技能実習制度の下で働きながら技能を学ぶ人に与えられ
る資格であり、この制度の趣旨が日本で修得した技能や知識を海外に移転することとなっ
5「優秀な海外人材を我が国に引き寄せるため、欧米やアジアの一部で導入されている「ポイント制」を導入」
「ま
た、現行の基準では学歴や職歴等で要件が満たせず、就業可能な在留資格が付与されない専門・技術人材につい
ても、
(中略)海外人材受入れ制度を検討し、結論を得る。
」
「これらの施策を通じ、
(中略)在留高度外国人材の
倍増を目指す」
6「高度外国人材の認定に係る年収基準の見直し(年収として認める報酬の範囲に係る見直し等)
、永住が許可され
るための在留歴の短縮(現行の 5 年を 3 年とする等)といった高度人材に対する優遇制度の見直しを行い、本年
中に新たな制度を開始する。
」
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ているため、日本での就労を目的とした資格ではない。
そのため、これら定められた範囲での就労が認められる資格を取得したとしても外国人
が日本で自由に就労するのは難しい。
【現行制度では自由な就労は難しい】 ⇒プレゼン資料 13 頁
最後に、就労が認められない在留資格は、留学や研修を目的としている外国人、あるい
は就労を目的として日本に来ている外国人の家族が一時的に滞在する場合に与えられる。
このうち留学や家族滞在の場合は、資格外活動の許可を得ることでアルバイト等の短期間
労働に従事することは可能だが、長期就労が認められている訳ではない。
また、一定の要件を満たせば、就労活動に制限がない在留資格や定められた範囲で就労
が認められる在留資格への変更が可能であるが、前者の要件は一定期間の在留や就労等、
また、後者は原則専門的、技術的な職種に限定されている。
以上のように、現行制度の下では、日本で働きたい、住みたいと考える外国人がいたと
しても自由に働くことは困難であることから、多くの外国人が日本で働けるようにするた
め、まず第一に現在認められていない範囲での就労を認めることが必要である。
【課題② 言語と文化の壁】 ⇒プレゼン資料 14 頁
次に、外国人が日本で思い通りに働けるようになり、実際に来日した場合に生じる問題
は、日本での就労・居住に当たり、外国人が日本人と円滑にコミュニケーションをとるこ
とは可能なのだろうか?という点であろう。そこで 2 点目の課題として、外国人の日本で
の就労・居住における「言語と文化の壁」を取り上げる。
【就労には日本語能力や文化理解が必要】 ⇒プレゼン資料 15 頁
まずは就労における課題を確認するため、日本企業が外国人に何を求めているかを明ら
かにする。ここでは日本経団連が実施したアンケート 7から「日本企業による外国人採用の
ニーズが満たされない理由は何か?」という質問に対する回答結果を参照する。このアン
ケート結果によれば、日本企業が外国人の採用に至らない一番の理由として外国人自身の
問題(要求するレベルに達する外国人が少ない、日本語の能力が不十分、キャリアパスの
考えが違う等)を挙げている。このうち、要求するレベルに達する人材が少ない点やキャ
リアパスの考えが違うといった点は日本人でも当てはまる可能性がある一方、日本語の能
力が不十分という点については外国人に固有の問題であり、就労の際に大きなハンデにな
っていると考えられる。
また、外国人のサービスを受けることになる日本人が外国人労働者に何を求めているか
という点については、内閣府が実施した世論調査 8を見ると、政府の方針にも掲げられてい
る専門的な技術等を有することよりも、日本語能力や日本文化に対する理解を強く求めて
いることが分かる。
【日本語能力の不足は仕事上の問題に繋がる】 ⇒プレゼン資料 16 頁
このように国内企業や日本人のニーズとして外国人の日本語能力や文化への理解が求め
られている一例として、経済連携協定に基づき来日しているインドネシア人の看護師候補
2008 年に、外国人を雇用している産業問題委員会関係会社・団体 243 社を対象として行われた。有効回答率は
44%(107 社)
。
8 2004 年に、全国 20 歳以上の 3,000 人を対象として行われた。有効回答率は 69.2%(2,075 人)
。
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者が職場で直面した問題事例を取り上げる。
この看護師候補者は、日本で看護師として就労することや、知識や技能を母国に持ち帰
ることを目的として渡来するため、勉強や就労に対する相応の意識や熱意はあると考えら
れる。また、候補者は一定の日本語能力を有すると認められるか、6 ヶ月間の日本語講習
を受けた上で就労することになっているが、実際の職場においては、同僚や上司の指示内
容が理解できなかったり、聞き間違いや読み間違いによるミスが起きており、言語の壁の
高さが伺える。
【生活でも日本語や習慣を知ることが必要】 ⇒プレゼン資料 17 頁
続いては居住における課題に関して、山形県が県内在住の外国人に対して行ったアンケ
ート 9から 2 つの質問に対する回答結果を取り上る。
まず、
「外国人が普段の生活で困っていることや心配なこと」は何かという問いに対して、
日本に住む外国人の多くは日本語に関することで困っていたり、心配をしているというこ
とが分かる。また、
「日常生活や人づきあいなどで必要と感じていること」として、多くの
外国人が「日本の習慣やルールを知ること」が必要であると感じていることが分かる。
このように、就労・居住の双方において日本語や日本文化・慣習に対する理解の欠如と
いう課題が存在していると考えられる。
【課題③ 心の壁】 ⇒プレゼン資料 18 頁
3 点目の課題は、目には見えないながらも、外国人受け入れにおいて重大な課題である
と考えられる、「心の壁」の存在である。
【依然として外国人への先入観・抵抗感あり】 ⇒プレゼン資料 19 頁
第一生命経済研究所が実施したアンケート 10によれば、外国人を受け入れることによっ
て「スラム化したり犯罪が増える」
、あるいは「文化・習慣・宗教の面で摩擦が生じる」と
いった、ネガティブな先入観を持つ日本人が少なくないということが分かる。
「あまりなか
った病気が持ち込まれる」等という偏った意見にも一定数の賛成が得られている点はより
顕著な例であろう。
【外国人は日本人の心の壁を感じている】 ⇒プレゼン資料 20 頁
また、名古屋市が実施したアンケート 11では、名古屋市に在住する外国人は、
「地域の活
動に参加しない理由」として、
「日本人が自分を避けるから」という理由を最も多く挙げて
いる。ここから、前述の日本人の抱くネガティブな先入観や抵抗感が日本人と外国人の交
流を阻害する要因になっているということが見て取れる。
2010 年 6~7 月に、山形県内に在住する 18 歳以上の外国人を対象として行われた。宛名不明等を除いた有効回
収率は 21.4%(回答数 392 件/有効配布数 1,836 件)
10 2001 年 1~2 月に、全国 20 歳以上 70 歳未満の 598 人を対象として行われた。有効回答率は 94.3%(564 名)
。
11 2010 年 9 月に、名古屋市に外国人登録をしている 20 歳以上の外国人 6,000 人を対象として行われた。対象者
数から帰国者、転居者、世帯の重複等を除いた実質回収率は 38.9%(1,708 人)
。
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3.「ニッポン開国!」への道
【 外国人労働者の受入れを推進するためには 】⇒プレゼン資料 22 頁
以上見てきたように、外国人労働者の受入れを推進するにあたり、課題が 3 つある。
1 つ目は、現状では外国人労働者受入れに対して消極的な制度になっているという「制
度未整備の壁」が存在することである。2 つ目は、外国人の語学力や日本文化・慣習に関
する基本的知識の不足という「言葉と文化の壁」が存在することである。3 つ目は、日本
人が外国人に対してネガティブな先入観や抵抗感を抱いているという「心の壁」が存在す
ることである。
外国人労働者の受入れを推進するためには、これら 3 つの壁を崩すという課題解決が重
要である。
【外国人労働者の受入れ推進のための2つの提言 】⇒プレゼン資料 23 頁
これら 3 つの壁を崩すという課題解決のため、2 つの提言を行いたい。
1 つ目は、現行の在留管理制度で認められていない「新たな在留資格「中流労働者」の
創設と「中流労働者」を認定するための新資格試験の実施」。これにより、「制度未整備の
壁」と「言葉と文化の壁」を崩す。2 つ目は、「クラウドエデュケーションの展開」。日本
語・日本文化教育の普及を促進し、日本人と外国人の相互理解を深めることにより、
「言葉
と文化の壁」と「心の壁」を崩す。
【新たな在留資格「中流労働者」の創設 】⇒プレゼン資料 24~26 頁
「中流労働者」とは、日本語の読み・書き・会話能力や日本文化・日本社会の特徴、日
本での生活様式への理解という条件をクリアした人材であり、
「日本人」になるための新資
格試験を合格した外国人である。
「中流労働者」は、日本の労働市場のニーズに応じて、日
本人と同様の自由な就労が可能となる。
また、就労期間については、当初は期限付きであるが、一定条件をクリアすれば永住権
獲得を可能にする。現在の日本人は、こうした外国人に永住権を付与することを不安に思
うかもしれない。しかし、
「中流労働者」は、日本語・日本に関する知識を一定以上有する
と認められた新資格試験の合格者であるため、従来不安視されてきた事象は生じないと考
えられる。一方、永住権を付与することは、今後の日本にとって、メリットのあることで
ある。例えば、今まで単純労働に就いていた日本人が外国人に置き換わり、その日本人が
高付加価値労働にシフトできるというメリットがある。更には、消費の拡大も期待でき、
年金等の社会福祉を充実することもできる。
【 新資格試験の実施 】⇒プレゼン資料 27 頁
「中流労働者」を「日本人」として受け入れるための資格試験を新たに整備する。現在、
日本には「日本語能力試験」があるが、読み・書き・ヒアリング以外の能力を試されるこ
とはない。
「新資格試験」は、日本語の読み・書き・ヒアリングの他に、会話や日本文化・
日本社会の特徴、日本での生活様式などを問う試験とし、合格した外国人が日本語でのコ
ミュニケーション能力に加え、日本に関する基本的な知識を有することを企業や社会に証
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明する。
【 クラウドエデュケーションの展開 】⇒プレゼン資料 28~29 頁
「クラウドエデュケーション」とは、オンラインのビデオ通話や動画などを利用した教
育である。具体的には、日本人が、外国人に対して日本語の読み・書き・ヒアリング・会
話、日本での生活様式・日本社会の特徴などを教育する。インターネット環境が整備され
ていれば、あらゆる場所において教育を行うことができるため、コストパフォーマンスの
よい教育を行うことができる。
運営については利潤目的ではないので、公的機関または NPO が行うことが適当であると
考えられる。その際、運営料は受益者負担の観点から成功報酬型で民間企業が支払い、受
講者の受講料は無料とし、受講へのインセンティブ向上を目指すものとしてはどうか。
4.最後に
以上見てきたように、日本は少子高齢化の進行により、労働力不足に陥ることが想定さ
れるが、他の先進国や新興国においても高齢化が進行するため、国際的な労働力獲得競争
が始まることが予想される。そのため、日本の外国人労働者の受入れを阻む 3 つの壁を崩
し、労働力獲得競争を勝ち抜く方策を早急に検討することが求められる。
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