日本大学英文学会通信102号

4
号
月
第年102
英文学会通信
英 文 学 会 通 信
第102号
─日本大学英文学会─
発行:日本大学英文学会
〒 東京都世田谷区桜上水 日本大学文理学部英文学研究室内
7HO:
()(直通)
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()
(PDLO:HVDQX#FKVQLKRQXDFMS
目 次
《ご挨拶》
副会長挨拶̶かすれゆく記憶、そして記憶のアメリカ̶ ・・・・ 日本大学英文学会副会長 高橋 利明
《エッセイ》
巣立ちして半世紀 ・・・・・・・・・・・・・ 元(株)函館ハーバービューホテル社長( 年卒) 二葉 進
『英米文学の精神分析学的考察・第 巻』の発行を見すえて ・・・・ 日本大学文理学部講師 関谷 武史
《特集》
いのち の『嵐が丘』 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 日本大学法学部前教授 安藤 重和
《海外留学体験記》
トロント大学交換留学記 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 日本大学文理学部英文学科 年 伊藤 佳奈
《年次大会発表要旨》
生徒の英作文はすべて添削すべきか 焦点化したフィードバックの効果の検証
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 日本大学文理学部准教授 隅田 朗彦
'DQFLQJWKH ZDOW] RIWHDFKHUHGXFDWLRQLQVHFRQGODQJXDJHWHDFKLQJ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 日本大学文理学部准教授 リチャード・キャラカー
エミリ・ブロンテ∼両極的な人間感情に意識されるもの∼ ・・・ 日本大学文理学部講師 山本 由布子
[最終講義]
7KH0RGHUQ0DODG\ と 世紀イギリス文学 ・・・・・・・・・・・・・・・ 日本大学文理学部講師 原 公章
《年次大会プログラム》 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
《博士号取得》
博士論文「詩篇翻訳から『楽園の喪失』へ―「出エジプト」の主題を中心として―」執筆と博士号の授与
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 日本大学文理学部教授 野呂 有子
《学会賞受賞》
福原賞受賞のご報告 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 日本大学文理学部准教授 閑田 朋子
日本英語文化学会新人賞受賞のご報告
・・・・・・・・・・・・・・・・ 日本大学文理学部・経済学部、東洋大学文学部英米文学科講師 亦部 美希
《月例会関連》
(月例会報告・予定、その他)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 《新刊書案内》
『評伝 ジョージ・エリオット』 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 日本大学講師 会田 瑞枝
『文法化する英語』について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 日本大学文理学部教授 保坂 道雄
『新英文法概説』について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 桜美林大学教授 山岡 洋
《訃報》 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 《事務局・研究室だより》
(寄贈図書について、その他)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
─ ─
2014 年 11 月
日本大学英文学会
《ご挨拶》
副会長挨拶
― かすれゆく記憶、
そして記憶のアメリカ ―
日本大学英文学会副会長 高橋 利明
ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあら
ず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、
久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人と住
み家と、又かくのごとし。
(鴨 長明『方丈記』)
この『方丈記』冒頭部分を私は小学生の頃にある恩
師から教えていただいた記憶がある。幼少期に脳内に
刻まれた記憶には、持続性があることは誰もが認める
ところであろう。一方、馬齢を重ねるごとに、短期記
憶の覚束なさに愕然とすることが近頃増えてきてい
る。ここで英語教育論をぶつ訳ではないが、
「まず母
国 語 あ り き 」 を 忘 れ た く な い と 思 う。 日 本 人 の
QDWLRQDOLW\ は、 日 本 語 で 育 ま れ て き た の で あ る。
QDWLRQDO なものが基盤となってその上に LQWHUQDWLRQDO
なものが築かれ、涵養されることを忘れてはならな
い。最近読んだ『さようなら、オレンジ』
(岩城けい著
> 筑摩書房 @ 年)では、オーストラリアに長く住む
語り手の一人であるハリネズミの母国語(日本語)の
発見が大きなテーマとなっていてとても興味深い。
さて、長じてからの記憶というものは、本当に頼り
ないものであるが、こと<戦争>に関してはなおさら
の感がある。小学生の頃に流行したフォークソング
「戦争を知らない子供たち」の子供たちよりさらに子
どもだった私には、今は亡き母の東京大空襲(昭和 年 月 日)による被災体験の話しか身近には残って
いない。その母は、戦争に負けるとは思っていなかっ
た、と言っていたことも思い出す。一般大衆に対する
その当時の情報統制の厳重さが恐ろしい。今夏、日本
は戦後 年を迎えたのだが、諸外国で勃発している
戦争にもかかわらず、この夏は<戦争>というものを
身近に感じることができなかったのは何故だろうか。
何か日本人の精神の中からかつての<戦争>の記憶が
薄れていく気がする。日本人に限らず人間の生理か
ら<戦争>の記憶が薄れていくことほど恐ろしいこと
はないであろう。兄弟ゲンカが人類の殺人の原型であ
り、その近親憎悪が今なお世界レベルで人間を<戦
争>に駆り立てるという不条理を我々は大きな知恵で
乗り越えなければならないであろう。
その知恵のひとつとして、「うばい合えば足らぬ。
わけ合えばあまる」という相田みつをさんの言葉が輝
いて見える。私はこの言葉を渡辺和子著『置かれた場
所で咲きなさい』
(幻冬舎、 年)の中で見つけた。
この本の最後に出てくる聖フランシスコの「平和の祈
り」に見られる「人のために死ぬ」というキリスト
(教)的な精神には感動を覚えるが、それ以上に感銘
を受けたことは、著者が幼少期に体験した歴史的な事
実である。実際私がこの本を手に取ったきっかけは、
その事実をTVで知ったからである。
年 月 日早朝、渡辺錠太郎・教育総監邸は
青年将校らによって襲撃を受ける。その際、 歳の和
子は父の隣にやすんでいたが、父は和子を壁に立てか
けてあった座卓の陰に隠して助けたのである。一人応
戦しつつも死んでいった父の悲劇的な最期に晒された
歳の子どものこの過酷すぎる原体験に涙を禁じ得な
いのは私だけではないであろう。
「戦争だけはしては
いけない」と日々語っていたその父は、「(好戦派らに
は)おれが邪魔なんだよ」と、母に洩らしていたとい
う。この武士道の権化のような真に良識ある軍人の最
期に感服しない人はいないと思う。そして、武士道と
言 え ば、 新 渡 戸 稲 造 の Bushido: The Soul of Japan
() 冒 頭 の 言 葉 ― &KLYDOU\ LV D IORZHU QR OHVV
LQGLJHQRXVWRWKHVRLORI-DSDQWKDQLWVHPEOHPWKHFKHUU\
EORVVRP ―を思い起こすが、日本の騎士道たる武士道
は、桜花と並んで日本の国土に固有な「花」であると
定義されている。武力をただの力の現れとせずに、人
間が根底に持つべき美意識を養う重要性を新渡戸は伝
えている。
「花」を見極める眼力を涵養することは、
延いては「自然」の深奥の神秘に近づくことになるの
である。力、あるいは武力に頼りすぎた時、人間は美
意識を失い、同時に真・善の認識をも失うことになる
のだと思う。
「花」とは、儚いものだが、
「自然」の
エッセンスとしての「美」と「力」を備えているのだ。
鴨長明の「ゆく河」は、流転する万物の形象を捉えた
名文であるが、新渡戸の「花」も「河」と同じく流転・
転生を繰り返すものである。長明の無常観は、我々一
人一人に人間としての生き方を問うている。無から生
まれ、無に帰る、または零から生まれ、零に帰る万物
の霊長たる人間。その無にしろ、零にしろ、何もない
訳ではない。目には見えないが確かに現存するものに
こそ意味があるのである。それだからこそ、これから
もどんなに儚いかすれゆく記憶であっても、忘れては
ならないことは頭と心に銘記しておきたいと思う。
さて、ここからは私の最近のアメリカ短期滞在中の
記憶の記録ということになる。
去る 月 日から 日まで、マサチューセッツ州
のノース・アダムズの 0DVVDFKXVHWWV&ROOHJHRI/LEHUDO
$UWV で +DZWKRUQH LQ WKH %HUNVKLUHV 7KH 1DWKDQLHO
+DZWKRUQH6RFLHW\%LHQQLDO6XPPHU0HHWLQJ が開催さ
れた。 名強の発表者の内 名が日本人で、私もそ
の一人であった。各セッション 名ずつで、 まで
あ り、 セ ッ シ ョ ン は、 7HDFKLQJ +DZWKRUQH LQ
&ROOHJH というテーマで 名のスピーカーが参加し、
─ ─
英文学会通信
最 後 の セ ッ シ ョ ン は、 :RPHQ :ULWHUV RI WKH
%HUNVKLUHV のテーマで 名の発表があった。そして、
3OHQDU\ $GGUHVV(基調講演)として、 /DUU\ 5H\QROGV
先生( 'LYLQH 2PQLSRWHQFH DQG 6XIIHULQJ +XPDQLW\
+DZWKRUQH’V$QVZHUWR$KDE )が登壇した。
私の発表はセッション ( &KLOGUHQLQWKH:RUNVRI
1DWKDQLHO +DZWKRUQH Ⅱ )で行われたが、そのテーマ
は、 7KH0DJQHWLF)LHOGRI5RPDQFHWKH*DUGHQRI/LIH
LQ 7KH 6QRZ,PDJH であった。 名の発表が終わっ
た段階で質疑応答が行われたが無事にきり抜けること
ができて安堵した。終了後、 名のネイティヴの先生
に LQWHUHVWLQJ と言っていただきやった甲斐があった
と思った。
今回、この学会に参加した大きな理由は、発表より
もなによりも、その開催地のエリアがホーソーンとメ
ルヴィルの出会いの場所であり、メルヴィルが暮ら
し、
あの Moby-Dick()を書いた家である $UURZKHDG
やホーソーンが一時住んだ 7KH /LWWOH 5HG +RXVH など
が現存していることによるのである。%HUNVKLUH +LOOV
と呼ばれるこの地域は、 0$ 州西部の森林丘陵地帯
で、保養・リゾート地になっていて、 7DQJOHZRRG は
その音楽祭で有名で、 %RVWRQ 6\PSKRQ\ 2UFKHVWUD の
夏の活動地になっている。恩師の (OL]DEHWK 6FKXOW] 先
生が 0$ 州で最も美しい場所だと話していた通りの所
であった。期間中、小雨がちであったが、緑の鮮やか
さは際立っていて、土曜・日曜 の小遠足の時は天候
に恵まれとても楽しく有意義な時を過ごすことができ
たのは幸せであった。今回はメルヴィル・ルームのあ
る %HUNVKLUHV $WKHQHXP や、かつてのメルヴィルの自
宅 $UURZKHDG やら、また +DQFRFN 6KDNHU 9LOODJH を訪
ねることができただけで、まだまだ見たい場所もいろ
いろとあるのでいつかまたゆっくりと訪れてみたい。
また、今回の大会を主催した米国ホーソーン協会の
会長 5RVHPDU\)LVN 先生と次期会長 -DVRQ&RXUWPDQFKH
先生には、大会前からいろいろとお世話を頂き頭の下
がる思いをした。まさに KRVSLWDOLW\ の真髄を見た気
がする。この大会で正式に 年に日本での米国
ホーソーン協会の国際大会開催が決まったので、我々
日本人なりの KRVSLWDOLW\ でお返しができればいいな
と思っている。
旅の最後は 1HZ <RUN であった。二泊しかできな
かったので大した観光はできなかったが、それなりに
充実した時を持つことができた。学会開催地が少し不
便な所にある関係で(1<3HQQ6WDWLRQ から $OEDQ\[1<
の州都]まで $PWUDN で二時間半、そして $OEDQ\ から
3LWWVILHOG までバスで約 分、さらに 3LWWVILHOG から
1RUWK $GDPV までバスで約 分)、夜遅くに 1< のホ
テ ル に 着 い た の で、 翌 日 一 日 が 勝 負 で あ っ た。
020$(ニューヨーク近代美術館)だけは訪れ、『楽
園のカンヴァス』
(原田マハ著[新潮社] 年)の
テーマであるアンリ・ルソーの「夢」の絵だけは見た
第 102 号
いと思っていたが、その夢も実現できて大変嬉しかっ
た。そして、 020$ はあまりにも大きな美術館なの
でもっと時間が欲しいとつくづく思った。020$ は、
WK $YHQXH 沿いにあるが、ここに寄る前に私は、米国
ホーソーン協会の 5LFKDUG .RSOH\ 先生のアドバイスに
より 1HZ <RUN 3XEOLF /LEUDU\ にも寄ってみた。玄関の
ライオンの像とその内容の充実度で有名な図書館で、
拝観するだけの価値は十分にあったと思う。投宿した
WK$YHQXH のホテル・ペンシルバニアは、 3HQQ6WDWLRQ
や 0DGLVRQ6TXDUH*DUGHQ や (PSLUH6WDWH%XLOGLQJ にも
近い所にあり、そこから WK $YHQXH に出て、北へ向
かって上記の二館を訪ねた訳だが、最後は &HQWUDO
3DUN の南側を少し歩くだけでその一日は終わってし
まった。もう少し先には 0HWURSROLWDQ 0XVHXP RI $UW
があったのだが、それはまた他日の楽しみとしたい。
アメリカ文学を専攻としながら、 1< 初体験とは恥ず
かしいばかりであるが、今回の学会出張を機にその洗
礼を受けることができ、本当に良かったと感じてい
る。
かすれゆく記憶をたよりに長々と書いてしまったこ
とについて、どうかご海容下されば幸いです。末筆な
がら日本大学英文学会会員諸氏の益々のご活躍とご健
勝を心からお祈りいたします。
─ ─
2014 年 11 月
日本大学英文学会
《エッセイ》
巣立ちして半世紀
元(株)函館ハーバービューホテル社長( 1964 年卒)
二葉 進
今は昔、 年(昭和 年)早春に 名の仲間が 年間の世田谷キャンパスでの学園生活を終え社会人へ
と巣立ちした。それから半世紀の歳月が流れ、当時の
若人たちは老人となって再会した。私たちの卒業式は
両国日大講堂(旧国技館)で盛大に行われ、式典のあと
の舞台は新築開業まもない「銀座東急ホテル」 階宴会
場へと移り文理学部卒業記念パーティが開催された。
お世話になった多くの先生方が出席され社会に飛び立
つ私たちに心温まる激励の言葉があり、学び舎を去る
にふさわしい門出となった。ただ、地方在住の学友は
卒業試験終了後、直ちに帰郷し卒業式典まで ヶ月余
の期間があったので、改めて式典および記念パーティ
に出席された人はほとんどなく、私にとっては彼らと
惜別の挨拶を交わせなかったのが唯一心残りとなった。
今年は『英文学科卒業 周年記念』にあたり 月 日東京・小石川後楽園「涵徳亭」で同期会を開催、 名
(男性 名、女性 名)の学友が元気な顔を見せた。壬
生郁夫先生(元日本大学経済学部教授)をお迎えして西
村克彦君(日本大学法学部教授)の祝杯発声で宴が開か
れた。シドニー在住の元テレビ朝日・アナウンサーで
ハノイ支局長を歴任した北村元君、ホノルル在住の白
川和江さん、沖縄の那覇からは石川(旧姓:宮里)悦子
さんたちが同期会出席のために遠路はるばる来京。そ
の石川さんから宴席で、大学在学中には故郷よりパス
ポートを携えて那覇港を旅客船で出航、 時間かけて
鹿児島港に着き、国鉄・西鹿児島駅で特急寝台列車に
乗換え、更に 時間費やして東京駅へ、 日間の長旅
を終えてやっと大学に到着。当時のエピソードに懐か
しさを込めて披露し、昔話に彩りを添えた。そして今
朝、同期会出席のため那覇空港 時 分発の航空便で
羽田空港に着き、昼からのこの会合へ十分に間に合っ
た話を聞き、改めて時の移り変わりに、ただただ感慨
無量。
このたびは卒業 周年記念節目の年でもあり、健康
上等の理由で参加出来なかった学友のために、学生・
教員生活時代、会社勤務時代などの思い出、家族や旅
行・趣味、或いは近況報告等を各人自由に綴る「誌上同
期会 文集」と「記念写真集作成 &'」も企画した。
私たちが卒業した年には東京オリンピック開催、海
外旅行自由化(この年、 月 日海外観光旅行第 陣 名が羽田空港からアリタリア航空 $= で欧州 日間の
旅へ出発した。因みに 年の海外渡航者は年間 千人、一方訪日外国人旅行者は 千人であった)、東
ふるさと
海道新幹線開通、大型シティホテル開業、そして国際
会議(,0) 年次総会)開催等、日本の高度経済成長期の
ど真ん中にあり、まさに HSRFKPDNLQJ な年であった。
そんな状況のなかで私は国際的な仕事に係わりたいと
思っていた矢先、運よく日本交通公社(-7%)に入社す
ることができた。 の大学から 名の同期生が入社し
た。当時、日本大学は「マンモス大学」と称され学生数
においては最大の大学であったが、入社して見ると母
校の出身者はマイノリティ(少数民族)だった。 年
(昭和 年) 月から -7% は学卒「定期採用」を実施し
たが、日大出身者は私で 人目であった。ところが入
社して配属個所が決まると、そこには 人先輩(昭和
年経済学部卒と 年文理学部英文科卒)が在籍して
おり私のために歓迎の席をもうけてくださり感激した。
そして最後の職場となった北海道函館の -7% 関連ホテ
ルで定年を迎え、約 年間にわたる会社勤務を終え
た。
大学で学んだ英語は忌憚無く言わせてもらえばほと
んど役立たなかった。そこで、私は毎朝出勤前に 1+.
ラジオ英会話を聞くことにした。松本亨先生が担当さ
れておりある日先生からトイレの個室で用をたしてい
るとき、ノックされたら英語で何と応えたらよいかと
いう難問(?)をだされた。来週回答を教えるからとの
こと。早速出社してから友人や先輩に尋ねたが正解ら
しきものがなく中には「,DPKHUH」といったらどうか、
な ど と い う 珍 答 も あ っ た。 翌 週 に な っ て 先 生 か ら
「6RPHRQHLQ」というのだと教えてもらった。なるほど、
うまい言い方があるものだと感心した。当時は私もま
だ若く好奇心旺盛だったので、日光日帰りツアーに外
国人観光客の添乗員として金谷ホテルに立ち寄った時
に、トイレの個室をノックして何と返答するか確かめ
てみた。すると松本先生から学んだ答えの「6RPHRQH
LQ」ではなかった。応えは意外にも、個室から「%XV\
!」という返事が帰ってきた。こちらの方がより臨場感
が漂っていて、なるほど実用英語とはこうゆうことか
と妙に納得した。入社後の配属個所は外人旅行部・主
催旅行課(3DFNDJH 7RXUV 6HFWLRQ)で外人を対象とした
パッケージツアー予約・販売を取扱う個所であった。
そこで最初苦労したのは外国人の名前を電話で正確に
聞き取ることであった。ある日、外国のある &DUULHU
(航空会社)に勤務する女性からツアー予約を受けたと
き、名前は聞き取れたが念のため、スペリングを尋ね
たところいきなり、 $EUDKDP 5LFKDUG 0LFKDHO ,VDDF
7KRPDV…と早口で言われなんのことか理解できなかっ
た。再度聞き直してみると、 $DVLQ$EUDKDP(エイブラ
ハムのA)というべきところを省略していたのだ。彼女
の名前は0LVV$UPLWDJHといった。
入社 年が経過すると外国人観光客の添乗よりも日
本人の海外旅行添乗業務の方が頻繁になり、特に私は
ヨーロッパ方面への添乗が多くなった。当時はまだ外
貨の持ち出し制限(86 まで、 86 =¥)が
─ ─
英文学会通信
あったが、このころすでに日本円は欧州各国で直接両
替が可能であったので買い物などにはあまり不便は感
じられなかった。 年 月 日より「通貨ユーロ」が
流通し欧州への旅行者には一段と便利になったが、そ
れよりずっと以前から「英語」が欧州においても、すで
に『国際的な知的通貨』として各国で通用しており、こ
のことの方が海外添乗業務では計り知れないほど利便
性大であったと感じていた。 今回の卒業 周年記念同期会で互いに確認したこと
は、 年の「東京オリンピック」開催年卒業したこと
に鑑み、イタリアの観光名所ナポリの喩えにもあるよ
うに『6HH7RN\R2O\PSLF*DPHVDQGGLH』である。
そのとき老人たちの多くは「傘寿= 歳」の祝いと重
なり、同期会でまた学友たちが元気に再会して、共に
楽しく過ごした往時の学園生活を追懐し、思い出話な
ど語り合うことを約束し散会した。
第 102 号
KHUR WKH LQWHQGHG DXGLHQFH 」,福島昇「シャイ
ロックとディエガリアスにおける復讐」
,松山博
樹「0DFEHWK と観客を襲う超越的な力」と(以上,
サブタイトル割愛)
,シェイクスピア関係の論文
が多く掲載されている。
加藤教授によると、本年度は単著と同様、論集もレ
ベルが高かったとあり、日本シェイクスピア協会編の
協会創立論文集『シェイクスピアの演劇文化』等と共
に紹介されていることは、学会員 名のシェイクスピ
ア論が評価されたことの証であり、喜ばしく感じてお
ります。第 巻がこれまで以上に成果を挙げることを
念じ、以上報告といたします。
● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
『英米文学の精神分析学的考察・
第 3 巻』の発行を見すえて
日本大学文理学部講師 関谷 武史
近年日本大学英文学会の会員による単著、論集、翻
訳が相次いで出版され、いずれも優れた内容であるこ
とが確認され慶賀すべきことと考えております。
さて、サイコアナリティカル英文学会では、来年度
(平成 )年 月、『英米文学の精神分析学的考
察』第 巻の刊行を目指して、作業を進めておりま
す。本学会の会員 名が、それぞれ専門とする作家、
作品を対象に論文を寄稿しております。創刊号は学会
の創立 周年記念論文集として、 (平成 )年 月に発行され、本学会の会員 名の論文が掲載され、
それぞれ高い評価を得ることが出来ました。(平
成 )年発行の第 巻では本学会会員 名の論文が
掲載され、それぞれ各方面から評価を得ております。
中でも学会員 名のシェイクスピア論が 年版『英
語年鑑』
(研究社発行)の項目「シェイクスピア研究」
の中で、筑波大学大学院の加藤行夫教授によって次の
ように紹介されています。
サイコアナリティカル英文学会編『英米文学の精
神分析学的考察・第 巻』(サイコアナリティカ
ル 英 文 学 会, ) に は, 飯 田 啓 治 朗「A
Midsummer Night’s Dream の精神分析学的考察」,
板倉亨「Macbeth における「不気味さ」の根源」,
関谷武史「The Tempest 再考」,堤裕美子「Hamlet
試論」
,野呂有子「King Lear における WKH WUXH
─ ─
2014 年 11 月
日本大学英文学会
《特集》
いのち の『嵐が丘』
日本大学法学部前教授 安藤 重和
その人の人生に計り知れない影響を与える運命的な
作品との出会いがある。惨めな挫折を味わい途方に暮
れていた学生の時、何気なく読んだエミリー・ブロン
テ『嵐が丘』だった。奇妙な衝撃に襲われ思考停止に
陥った。これは何だ?というどん詰まりの苦境のなか
で受けた激しい衝動はそれから 年未だに同じ問い
を続けている。この問いかけに答えるために 、 最初の
翻訳者大和資雄博士の日本大学にきました。大学紛争
の渦中に修士論文の指導を受け学究者への道を歩み始
めましたが、あの感動とこの論文に用いた 6WURQJHU
WKDQDPDQ6LPSOHUWKDQDFKLOG+HUQDWXUHVWRRGDORQH
という詩句は、未だにその響きを止めません。ブロン
テ研究ではなくこの作品に限定したテーマ「啓示され
る思想」を論じて行き詰まりました。その後は、 D
VWUD\ VKHHS と し て 多 彩 な ポ ー の 創 作 や 理 論
「(58(.$」 に 挑 戦 し た り、 現 代 愛 と 性 の 倫 理 を
'+ ロレンスの原始回帰と反近代文明論に求めたり
しましたがものにならず、自らの文学のアイデンティ
ティーを日本近代文学との比較研究に問うて比較文
学・比較文化論に取り組みました。しかし、求めるも
のは得られず頓挫、批評理論に取り縋ることで生き延
びたわけです。文学への野望は果たせず惨めな結末を
迎えようとする還暦近く、突然『嵐が丘』への回帰が
始まりました。この原点回帰、始まりの内在的動機へ
の覚醒は謎めいたものでした。: フォークナーは、
詩人のひと言がこの地球を支えていると言いました
が、作中から呼びかけ発せられるエミリーの懊悩の叫
び、その慟哭が私を支え続けていたように思います。
「嵐が丘」は、天と地の真ん中にあって真理の啓示
される存在の場であり、人間存在の生存の構造が開示
され 、 愛の真実が告知される黙示録である。甦ったこ
の世界への問いかけは、愛と憎しみの 藤、生と死の
相克という激しい内部情念の論究から、ひとを愛する
とはどういうことか?どう生きたらいいのか―生きら
れないのか?死ぬために生きる生存の構造へ、その姿
を変えていました。ふたつの世界戦争とホロコース
ト、ジェノサイドを体験し、失われた世代の作家たち
に代表されるひとを愛せなくなった現代人は(去勢さ
れ不毛の愛に苦しみ、癒しきれない傷を負った 癒し
の現代 )
、愛されることだけを待ち望み自らは愛さな
いことで愛を喪失したのです。それは、戦争と革命の
時代、 世紀現代がもたらしたものですが、愛され
たい現代人の自我は内なる愛し手を殺してしまい、ひ
とを愛せなくなったのです。
(恋人は、自分の手で殺
せ!)それは愛することは、奪われること―惜しみな
く愛は奪う、何もかも奪い取る、犯され傷つき喰い荒
らされてかけがいのないものを奪い去られること―で
あり、愛さない愛せないのは、愛とは暴力だからで
す。(暴力的な言葉は愛に満ちている。
)
この物語が前近代的・半封建的な素材・要素を具備
しながらも近代小説(QRYHO)を超越して現代小説
(PRGHUQ ILFWLRQ)として普遍的に読まれるのは、作品
の内在的主題が愛憎の 藤、生への飢餓と知の枯渇、
恨と苦行による恢復・蘇生など、何れもおどろおどろ
しい現代文学のテーマに通じる内容を扱っているから
である。それは、潜在意識の内部構造を分析するウル
フやジョイスの心理小説、カミュやサルトルの実存文
学やカフカの不条理の世界に匹敵するものですが、
世紀の今日、 と を経験した私達にとってま
た新たな別の意味を持ち始めたようです。エミリー・
ブロンテの想像力世界には終末論的世界観があり、そ
れは神への形而上学的反逆と破滅の論理=宇宙支配の
思索原理と天地創造の断罪=という思想哲理に基づい
ています。彼女は、ブリュッセル留学時のフランス語
の小品「蝶」で 人はなぜ創造されたのか?彼は苦し
める、彼は殺す、彼は貪り喰う;彼は苦しむ 、 彼は死
ぬそして貪り喰われる のであり、 全ての生き物は等
しく気が狂っている。自然は説明不可能な謎だ。それ
は破滅の原理に基づいて存在している。 と共に、 全
ての人間に存在している破壊、殺戮、生贄、犠牲の無
慈悲な原理の宇宙全体、宇宙は悪を生み出すためにだ
け構成された巨大な機械 であり、 世界は破壊される
べきだったのだ。 と独自の思索哲理を吐露している。
この衝撃的な内面告白(神の創造界への形而上学的反
逆)は、彼女の告解・懺悔であり、その想像力世界
(文学・芸術)の根底をながれる神の摂理ならぬ自然
の摂理となっている。それは、精神(生きた時代の本
質を在るが儘に顕現する人間の内部という自然)とい
う場所ではどんな特異な分裂も倒錯もこの奇怪な生き
物から生じるのであり、生きた時代の精神という自然
の生存の構造を炙り出す作者の哲学・思想である。と
同時にこのエミリーの根本原理は、人間が人間に対し
て狼で、万人が万人に対して闘争する自然状態―獣は
自然衝動に生きるのみで規範の主体と成りえない―と
いうトーマス・ホッブスの海獣リヴァイアサンの世界
でもある。
この各人が各人を敵にして殺し合う戦争状態を人間
の自然とするホッブスの絶対主義主権国家は、カタス
トロフィー(大破局=人間社会の滅亡・破滅)
、人類
前史の終焉―階級なき社会への世界最終戦争―現代世
界核戦争による地球破滅の予兆である。エミリーの自
分で孕んで自分で生まれ出る精神という奇怪な生き物
(自然に強迫されている生存の構造)は、彼の海獣リ
ヴァイアサンの世界を共有することで今日の社会、テ
ロ戦争の時代に蘇ってきています。彼女は 、 意識と自
─ ─
英文学会通信
然という生きた時代の生存を、孕んで生まれる異常な
純粋観念に取り憑かれつつも特殊な心理現象ではなく
内的な現実 、 自然として捉え、荒野へ 、 荒野へ、我が
胸は自由!と想像力による解放を行いました。
『嵐が
丘』は現代に甦ったのです。私の『嵐が丘』への回帰
はこのことによるものだと思います。
この小説は、人びとを極限の愛、限界を超えた愛憎
の世界へ誘います。そのラジカリズムは、激しい愛の
藤や生と死の相剋に人々を投げ込み、その心を乱し
不安に陥れ内部情念の抗争に巻き込みます。この嵐の
激しさ命の厳しさを最新の翻訳本を出版された小野寺
先生は、
「訳してみて圧倒され 、 疲れ切った、
『命がけ
で書かれた魂の記録』との血みどろの戦いになった」
と言っています。(我が意を得たり)それもこれも、
詩人エミリーがハワースの荒野にて、自然と向き合い
その息吹を吸い、風やせせらぎに耳を澄まし、陽の光
と雲の動きを感じとり 、 その生存の姿をあるがままに
みえるがままに発信し語り伝えているからです。人び
とにとって、私にとって、それは命の糧、生ける命で
す。天に聳えるものを破壊した と地上の総てを
海が奪い去った を経験した私達、テロ戦争のお
どろおどろしい時代を強いられ生かされる者たちに
とって、ヒースクリフのあの耐え難い苦しみ、言語に
絶する恨と苦行の毎日を想えば 、 私の苦しみなんて!
どんな苦しみにも耐えられる、生きられる!死ぬため
に生きる生存が天と地を支え、私たちを支える。おま
えは、あなたは、自分はどうなの?と肉声が、生きづ
らい、殺すな、生きさせろ!とダイレクトに語りかけ
てくる。その言葉は、胸に突き刺さる棘、肉体に食い
込む抜けない刃であり、
「知」は戦いであり、生ける
「力」であることを教えている。
1RFRZDUGVRXOLVPLQH
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第 102 号
2014 年 11 月
日本大学英文学会
私はトロント大学に約 年間、交換留学をしていま
した。通常なら約 か月しか留学できないのですが、
サマーセッションで履修したい科目があったので、通
常よりも か月間長くいました。そのおかげで、季節
の移り変わりを目にすることができました。基本的に
トロントには秋と春がなく、あったとしてもせいぜい
週間ほどです。冬は体感気温− 度の時もあり、
ほとんど室内にいました。一方で、夏は気候がとても
素晴らしく、あの厳しい冬はもう二度とトロントに
やって来ないと思わせるほどでした。また、トロント
ニアンたちも気候の素晴らしさにうかれ、イベントが
多く、誘惑が多いサマーセッションとなりました。
もともと留学は行きたかったのですが、漠然としか
考えておらず、交換留学に絞ったのは 年の時です。
交換留学をすると決めてからは、情報収集とどこに行
きたいのか、何を学びたいのか、など自問自答の日々
でした。イギリスに留学しようと思っていたのです
が、ある日 )/(& で相談していた時、
「トロントは?」
と言われ、そこから方向転換をしました。調べると、
トロント大学は世界の中でもトップクラスの大学のう
ちの つで、図書館も北アメリカ大陸の中で 位に入
るほど大きく、ここで勉強したいと思いました。ま
た、イギリス文学史とアメリカ文学史を履修し始めた
頃、なぜカナダ文学はないのか、アメリカの近くだか
ら?イギリスの殖民地だったから?と疑問がふつふつ
とわいてきました。この疑問を解決するためには、行
くしかないと思い、トロント大学に交換留学するとか
たく決心しました。トロント大学の基準点は高すぎま
したが、幸運ながら日本大学のトロント大学への交換
留学プログラムは、付属語学学校(基準点を越えな
かった場合)+大学の授業だったため、選ばれ留学す
ることができました。
留学前に 72()/ でトロント大学の基準点を越えな
かったので、最初は語学学校始まりでした。後期から
のみ大学の授業の履修が可能だったため、 年間で計
つしか受けていません。 つは講義形式だったので、
発言すれば加点されますがあまり重視されず、エッ
セーとテストを頑張れば成績はもらえます。ただ、問
題なのはディスカッション形式です。もちろんエッ
セーとテストはありますが、発言しないと点数がもら
えません。講義形式とはうってかわり、受け身型では
成績はもらえないのです。発言しようとも反応が遅く
て、手をあげる隙がない、どんどん話題が進んでしま
うなど、私にとってとてもレベルが高く、授業がある
たびにお腹が痛くなり、ルームメイトからは「この授
業に行くときと帰ってくるときの顔が違う」と言われ
るほどでした。
このようなことを言っていますが、文学はもっと好
きになって帰国したと思います。リーディングの量が
多く、最初はもちろん大変で苦痛で、こんなに本読め
ない、と嘆いていましたが、理解できるようになると
楽しくなってきます。もちろん、内容を %理解し
ているかどうかは、別の話になってきますが。また、
日本文学にも触れないといけないと思いました。村上
春樹、夏目漱石などの面白い作品を外国人から教えて
もらうことが多く、私は日本人なのに日本文学を勧め
られないと実感し、帰国後は、日本・海外関係なく
様々な本を読もうと思いました。帰国後すぐに村上春
樹の『ノルウェーの森』を読み、意外と面白く感じ、
読まず嫌いだったことに気づかされ、新たな自分を垣
間見たような気がします。
留学したらコミュニケーション能力がつくと考える
人は多いようですが、それはその人がどれだけ現地で
行動をおこしたかによると思います。最初の数か月間
は友達はいたものの、あまり多くはありませんでし
友達の卒業式にて(一番右が執筆者)
トロント大学の中で一番大きな図書館(Robarts library)
《海外留学体験記》
トロント大学交換留学記
日本大学文理学部英文学科 4 年 伊藤 佳奈
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第 102 号
英文学会通信
た。学校が主催している交流イベントがあっても、ト
ロントにまだ慣れていないという理由を含め、勉強や
英語力が不安で全く参加していませんでした。でも、
ふと、勉強しにきたもののこんなに交流が少なくてい
いのか、帰国後友達と言える人は本当にいるのか、な
ど考え、もっと積極的に行かねばと思い、誘われたら
できるだけ参加するようにしました。また、心がけて
いたのは、イベントに参加したら話しかけられるのを
待たず自分から話しかける、そして間違いを恐れな
い、です。そのおかげで、帰国しても連絡しあえる、
なんでも話せる友人ができました。留学後、日本を
もっと好きになりましたが、何が恋しいかと聞かれる
と友人と答えます。それほど、友人には優しくしても
らい、恵まれていました。
自分の留学を振り返ると、もっとうまくできた、
もっと前からこれをしていればと、後悔は多いもの
の、失敗ばかりの留学ではなかったと思います。なぜ
なら素晴らしいものをたくさん吸収し、 つのことを
様々な面から見ることができるようになったからで
す。また、家族や友達の大切さも実感しました。それ
も全て、留学という貴重な機会をいただけたからで
す。留学前、期間中そして留学後ずっと支えてくだ
さった日本大学、英文学科の先生方と事務室の皆様や
)/(&、そして嘆いても優しく慰めてくれた家族・友
人に感謝の念を忘れず、これからも日々精進しようと
思います。
《年次大会発表要旨》
生徒の英作文はすべて添削すべきか:
焦点化したフィードバックの効果の検証
日本大学文理学部准教授 隅田 朗彦
教師が生徒の英作文のエラーをすべて添削すること
は、教師の負担が大きい割に学習者の言語発達への効
果が小さい。そこで、エラー全てではなく、特定の文
法項目に焦点を絞ったフィードバック(FRUUHFWLYH
IHHGEDFN &))を与えることで、効率的な作文能力の
向上が可能であると考え、 &) を伴った指導前後での
エラーの出現率を比較し、 &) の違いによるエラー減
少率の違いを量的に比較する研究が行われている。し
かし、指導中の学習プロセスを観察せずには、 &) の
違いによる学習効果の違いが何を原因としているのか
を解明するのは難しい。今回の研究の目的は、複数回
にわたる作文指導を通じ、日本人大学生がどのように
&) を活用し学習を進めたのか、英作文の第一稿、教
師の &) および &) に基づいた修正稿のつながりを見
ることで、異なる &) の影響の違いを説明しようとす
ることである。発表では 年に本人の行った量的
研究を簡単に紹介した後、今回の調査を報告する。
● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
Dancing the waltz of
teacher education in
second language teaching
日本大学文理学部准教授 リチャード・キャラカー
$SUREOHPDWLFDUHDLQWKHDUHDRIWHDFKHUHGXFDWLRQLV
WKH FRQQHFWLRQ EHWZHHQ WKHRULHV RI VHFRQG ODQJXDJH
DFTXLVLWLRQ DQG FODVVURRP SUDFWLFH 6HFRQG ODQJXDJH
WHDFKHU HGXFDWLRQ SURJUDPV JHQHUDOO\ GUDZ RQ D
NQRZOHGJH EDVH RI WKHRULHV RI OHDUQLQJ DQG WKHRULHV RI
ODQJXDJH7KHNQRZOHGJHDQGLQIRUPDWLRQDFTXLUHGIURP
VXFK WKHRULHV SURYLGH WKH EDVLV IRU WKH SUDFWLFDO
FRPSRQHQWV RI WHDFKHU HGXFDWLRQ SURJUDPV 7KHUH LV D
ODUJH ERG\ RI OLWHUDWXUH RQ WKH WKHRUHWLFDO HQG RI WKH
VSHFWUXP RI WHDFKHU HGXFDWLRQ SURJUDPV LQFOXGLQJ
V H F R Q G O D Q J X D J H D F T X L V L W L R Q O D Q J X D J H W H V W L Q J SHGDJRJLFDO JUDPPDU LQWHUODQJXDJH GLVFRXUVH DQDO\VLV
DQGFXUULFXOXPGHVLJQ+RZHYHUWKHUHLVOLWWOHUHVHDUFK
─ ─
2014 年 11 月
日本大学英文学会
RQ KRZ WR GHULYH WKH SUDFWLFDO FRPSRQHQW RI VHFRQG
ODQJXDJH WHDFKHU HGXFDWLRQ 7KH SUHVHQWHU ZLOO JLYH D
VXPPDU\ RI UHOHYDQW PRGHOV RI WHDFKHU HGXFDWLRQ DQG
GLVFXVV KRZ D FXUULFXOXP RUJDQL]HG DURXQG D ZDOW] RI
UHIOHFWLRQREVHUYDWLRQDQGDFWLRQFDQKHOSFORVHWKHJDS
EHWZHHQWKHRU\DQGSUDFWLFH
● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
エミリ・ブロンテ
∼両極的な人間感情に 意識されるもの∼
日本大学文理学部講師 山本 由布子
尾島庄太郎は、その著『イギリス文学と詩的想像:
ケルト民族の稟質の展開』で、エミリの後期の詩を取
り上げ、その詩で描かれる「法悦と苦悩」が、彼女に
とっての「精神的生命の最高の姿」だと言っている。
極端論者( H[WUHPLVW )と呼ばれるエミリは、その詩
や小説の中で、
「両極性」( SRODULW\ )を意識した描写
を数多く書いている。両方の極みが共在し、混交する
それらの表現には、境界線( ERXQGDU\ )を取り払い、
双方を取り込む、作者の強い意志が感じられる。
「法
悦と苦悩」の間を揺れ動き、その葛藤( FRQIOLFW )に
耐え、自らの道を定めようとする、人間的な感覚を重
視した描写は、現代の私達の心にも強く訴える力があ
るように思われる。本発表では、このような「両極
性」を意識した人間感情を描く他の詩人の作品と比較
しながら、エミリの独自性を探っていきたい。
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んだ沼地から立ち上るように社会に蔓延している、と
述 べ た。 こ の 病 い は 世 紀 の ス ペ イ ン の 哲 学 者
2UWHJD\*DVVHW が The Revolt of the Mass()で述べ
た「大衆」の属性に酷似している。また 0DULR3UD] と
いう 世紀のイタリアの碩学は、 The Hero in Eclipse
()というよく知られたイギリス小説論の中で、
世紀小説ではかつての「英雄」は影が薄くなり、代
わってドイツ語で %LHGHUPHLHU と呼ばれる「中産階級
の 俗 物 」 が 表 舞 台 に 踊 り 出 る よ う に な る と 言 い、
'LFNHQV7KDFNHUD\7UROORS*HRUJH(OLRW などの小説を
例に、 世紀小説にはなぜ「英雄」が存在しえないの
かを、考察している。「俗物」と言えば、 7KDFNHUD\ の
The Book of the Snob()が知られているが、$UQROG
も Culture and Anarchy()で、 3KLOLVWLQH(俗物)、
3KLOLVWLQLVP(俗物根性)という言葉を使っていて、そ
の後、これが広く認められるようになる。3KLOLVWLQH
という語はすでに、 *HRUJH (OLRW が代表的エッセイ、
7KH1DWXUDO+LVWRU\RIWKH*HUPDQ/LIH ()の中
で使っていた。そしてこの「俗物」の中に、「現代の病
い」がもっともよく認められることになる。
世紀はイギリスの富と国力が飛躍的に増大した
時代だった。人々の生活も、以前とは考えられないほ
ど便利になり、豊かとなった。だがその反面、貧富の
差 が 大 き く な り、 上 層 と 下 層 の 人 々 と の 間 に は、
%HQMDPLQ'LVUDHOL が 7ZR1DWLRQV(二つの国家)と呼ん
だほどの格差が生じてしまった。その中間に位置する
人々に、上で見た「現代の病い」が顕著に見られるの
は、どういうわけだろうか。そもそも「現代の病い」
とはどのような病いなのだろうか。主として、 -DPHV
0HUHGLWK と (OLRW の小説を取り上げ、そこに見られる
この病いの特徴を眺めたい。
世紀の現在、 WKH 0RGHUQ 0DODG\ の深刻度はさ
らに大きくなり、もはや回復不可能とさえ思われるほ
ど で あ る。 こ の 病 い を 治 療 す る た め に、 $UQROG
0HUHGLWK(OLRW が提示した処方を紹介し、改めて 世
紀イギリス小説を読む意味を考えたい。
[最終講義]
The Modern Malady と
19 世紀イギリス文学
日本大学文理学部講師 原 公章
イギリス 世紀の詩人・批評家 0DWWKHZ $UQROG は
7KH *LSV\ 6FKRODU ()という詩の中で、 7KLV
VWUDQJHGLVHDVHRIWKHPRGHUQOLIH (現代生活のこの奇
妙な病気)と言って、時代のいくつかの病症を指摘し
た。他方、 *HRUJH0HUHGLWK は、 The Egoist()の
「序章」で、 WKHPRGHUQPDODG\ (現代の病い)が、淀
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英文学会通信
第 102 号
《年次大会プログラム》
日本大学英文学会 2014 年度学術研究発表会・総会・懇親会
日 時: 月 日(土) より
場 所:日本大学文理学部
号館 階 教室(学術研究発表会・総会)
カフェテリア・チェリー(懇親会)
休憩: ∼ ( 分間)
◆最終講義: ∼ [司 会]佐藤 明子(法学部教授)
[講 師]原 公章(文理学部講師)
会長挨拶:深沢 俊雄(聖徳大学文学部講師)
休憩: ∼ ( 分間)
学術研究発表会
◆語学の部: ∼ [司 会] 杉本 宏昭(国際関係学部准教授)
[発表者]
隅田 朗彦(文理学部准教授)
リチャード・5・キャラカー(文理学部准教授)
休憩: ∼ ( 分間)
総 会: ∼ [司 会]宗形 賢二(国際関係学部教授)
[会長挨拶]深沢 俊雄(聖徳大学文学部講師)
[会務報告]野村 宗央(文理学部助手 $)
[会計報告]堀切 大史(文理学部准教授)
役員改選について
その他
懇 親 会: ∼ 懇親会費:研究会員 円
学生会員・大学院生 円
同窓会員 無料
◆文学の部: ∼ [司 会]会田 瑞枝(日本大学講師)
[発表者]山本 由布子(文理学部講師)
《博士号取得》
野呂有子先生(文理学部教授)が、論文「詩篇翻訳
から『楽園の喪失』へ―「出エジプト」の主題を中心と
して―」によって 年 月 日付けで、聖学院大
学大学院より博士(学術)の称号を授与されました。
博士論文
「詩篇翻訳から『楽園の喪失』へ
―「出エジプト」の主題を中心として―」
執筆と博士号の授与
日本大学文理学部教授 野呂 有子
まず、この場をお借りして、このたびの博士論文の
完成と博士号の授与に関して、ご指導いただいた先生
方、職場の同僚の先生方、助教および助手の方々、さ
らに、いつも心の支えとなってくれた学生諸君に心よ
りお礼を申し上げます。 本論考は、 年 月、聖学院大学大学院アメリ
カ・ヨーロッパ文化学研究科に提出され、幸いにも所
定の審査および試験に合格し、同 月 日に博士(学
術)の学位を授与されました。
論者の学部・大学院時代の指導教授であり、日本の
ミルトン研究の第一人者と目される、新井明博士は
常々、ミルトンの翻訳詩篇の研究を進めることの重要
性を口にされていました。博士論文はそれに促される
形で執筆したものです。
詩篇とは旧約聖書の「詩篇」
(Psalms)に含まれる詩
篇各篇(全 篇)を指します。また、
『楽園の喪失』
(Paradise Lost)の作者 -RKQ0LOWRQ()は、
英文学史上、 :LOOLDP6KDNHVSHDUH()と並び
称されています。
ミルトンの時代の英国では、多くの人々が詩篇をヘ
ブライ語、あるいはラテン語、さらにギリシア語から
英語に翻訳しました。
「詩篇文化」という豪華絢爛な
花が英国の地に咲き乱れていたのです。ミルトンも幼
少期より生涯継続して、しばしば詩篇をヘブライ語か
ら英語に翻訳しました。本論考ではミルトンが行った
詩篇翻訳の作業が、後の『楽園の喪失』制作に極めて
大きな影響を与えたことを論証しました。
ミルトンは、英語訳詩篇 篇と希臘語訳詩篇第
篇 篇からなる計 篇を残しています。この数
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2014 年 11 月
日本大学英文学会
は、
「詩篇」が全体で 篇から成ることを考えれば、
決して多い数とは言えません。しかし、これら 篇
の詩篇群は、ミルトンにとって(そして彼の母国英国
にとって)節目となる時に翻訳されています。
本論考は、大きく つに分かれています。第 部で
は、これら 篇の詩篇が書かれた時期を つに分け
て個々の詩篇に焦点を当てて論じました。第 部で
は、ミルトンの散文作品と詩篇の関係を考察しまし
た。主な考察対象は、『教会統治の理由』
()、『偶
像破壊者』()、
『イングランド国民のための第一
弁護論』()
、『イングランド国民のための第二弁
護論』
()の つです。その際に、出エジプトの主
題も一つの視点として採用しました。第 部「『楽園
の喪失』における出エジプトの主題」においては、『楽
園の喪失』と詩篇、そして「出エジプト」の主題との
関係を論じました。
本論考の考察を通して、ミルトンが詩篇翻訳の作業
を重ねることによって、聖書の神と救世主の有り様、
神の人間への関わり方、将来、創作することになる叙
事詩の詠い方、そして、その内容を日々、修練し模索
し続けていたということが明らかになりました。
本論考は、平成 年度日本大学文理学部学術出版
助成を受けて、本年度中に冨山房インターナショナル
より出版される予定です。改めて本学文理学部の先生
方に心より感謝の意を表したいと思います。また、こ
のように、拙論について書く機会と場を与えて下さっ
た、日本大学英文学会のすべての会員の皆様にお礼を
申し上げます。
福原賞受賞のご報告
日本大学文理学部准教授 閑田 朋子
私事で恐縮ではございますが、第二十回福原賞「研
究助成部門」に選ばれましたことをご報告申し上げま
す。研究テーマは「初期女性ジャーナリスト (OL]D
0HWH\DUG と英国 世紀中頃の急新性」で、助成額は
万円です。福原賞はかの英文学者、福原麟太郎の
夫人である福原雛惠さんの遺言に基づいて、英米文学
の研究推進を目的とした設立されました。正式には
「福原記念英米文学研究助成基金」です。浅学非才の
身を自覚している私には光栄であると同時に私事とい
う思いが先立ちますが、後輩たちの励みにも参考にも
なろう、というお言葉を頂戴してここにご報告するに
至りました。
急新的な理想に走るあまり寄稿を断られること度々
だった 0HWH\DUG の食うや食わずやの文筆生活を追う
と同時に、まじめで頑な、過労でがたがたの身体でペ
ンをとり続けたこの聴覚障害者作家の作品を掘り起こ
し、その思想を学問の世界に紹介することを現在の研
究目的としています。これまでのご厚情に心より御礼
申し上げますと同時に、今後ともご指導ご鞭撻を賜り
ますようお願い申し上げます。
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日本英語文化学会新人賞受賞の
ご報告
《学会賞受賞》
福原賞受賞
閑田朋子先生(文理学部准教授)が研究テーマ「初
期女性ジャーナリスト (OL]D 0HWH\DUG と英国 世紀
中頃の急進性」にて、 年 月 日付けで、第 回(平成 年度)福原賞(公益信託福原記念英米文学
研究助成基金研究助成部門)を受賞されました。
日本英語文化学会新人賞受賞
亦部美希先生(文理学部・経済学部、東洋大学文学
部英米文学科講師)が論文「7KH 0DFKLDYHOOLDQ +HUR
+HQU\9」
(
『異文化の諸相』第 号)にて、 年 月 日付けで、第 回日本英語文化学会新人賞を受
賞されました。
日本大学文理学部講師
日本大学経済学部講師
東洋大学文学部英米文学科講師
亦部 美希
年度「日本英語文化学会新人賞」を受賞した。
授賞式は 月 日、日本大学生産工学部で行われた。
受賞対象は、同学会の機関紙『異文化の諸相』に掲載
された「7KH 0DFKLDYHOOLDQ +HUR +HQU\ 9」
。シェイク
スピア作『ヘンリー五世』
()、
『リチャード三世』
()のそれぞれの主人公、ヘンリー五世とリ
チャード三世の言動を、マキアヴェッリの『君主論』
()を軸として比較考察した。『ヘンリー五世』
は、 世紀前半、百年戦争さなかの英国を舞台に、
若き国王ヘンリーの華々しい活躍を描いている。
『リ
チャード三世』は、 世紀後半の、英国王家ヨーク家
の内乱を描いている。ヨーク家の非長子リチャード
は、残忍さと狡猾な罠で次々と政敵を倒して国王とな
る。しかし、最終的にはリッチモンド(後の英国王ヘ
─ ─
英文学会通信
ンリー七世)によって正義の名の下、討伐される。そ
して、『君主論』は、政治を宗教・倫理から切り離し
て君主の統治技術、政治思想を論じて、近代政治学の
基礎を築いた。ヘンリー五世は、臣下のケンブリッジ
伯爵に 1HYHUZDVPRQDUFKEHWWHUIHDU’GDQGORY’G7KDQ
LV\RXUPDMHVW\ ()と評されている。マキア
ヴェッリの、『君主論』 章の 0\ YLHZ LV WKDW LW LV
GHVLUDEOHWREHERWKORYHGDQGIHDUHG ()という見解
を想起させる。リチャードはシェイクスピア作『ヘン
リー六世第三部』()にも登場して、残忍なマ
キアヴェッリを教えることができると豪語している。
(引証資料:0DFKLDYHOOL1LFFROzThe Prince(G4XHQ
WLQ 6NLQQHU 7UDQV 5XVVHOO 3ULFH &83 6KDNH
VSHDUH:LOOLDPKing Henry V.(G-+:DOWHU0HWKXHQ
&R/WG)
この場をお借りして、受賞にあたって、お世話に
なった方々への感謝の意を表したい。指導教授の、日
本大学の野呂有子先生、日本大学の関谷武史先生、福
島昇先生、これまでお世話になった日本英語文化学会
の皆様、日本大学の皆様に深く御礼申し上げる。
第 102 号
デイヴィッド・ロッジの状況小説―『ナイス・
ワーク』 を中心に―
原 公章(文理学部教授)
10 月 英語教育シンポジウム( 2014 年 10 月 18 日)
「
『英語で英語の授業』と現実」
[司 会] 加藤 寛典
(日本大学鶴ヶ丘高等学校教諭)
[発題者]
英語で英語の授業―中学校・高等学校における
発信力強化のための実践例
江村 直人(横浜翠陵中学・高等学校教諭)
特進コースでの授業
加藤 寛典(日本大学鶴ヶ丘高等学校教諭)
自己教育力向上に必要なメタ認知力を高める英
語教育
島本 慎一朗
(静岡理工科大学星陵中学校・高等学校教諭)
11 月 研究発表( 2014 年 11 月 15 日)
[司 会] 飯田 啓治朗(文理学部准教授)
[発表者]
Paradise Lost における 6DWDQ の天国回帰願望
加藤 遼子(博士後期課程 年)
英語受動文の階層性に関する一考察
−中間構文との関連性を中心に−
久井田 直之(経済学部助教)
《月例会関連》
●月例会報告
年 月以降の月例会・特別講演は以下の通り
行われました。
6 月 特別講演( 2014 年 6 月 7 日)
[司 会] 保坂 道雄(文理学部教授)
[講演者]
宮川 繁(マサチューセッツ工科大学教
授・東京大学特任教授)
[演 題] 進化論から見た人間の言語
9 月 イギリス文学シンポジウム( 2014 年 9 月 27 日)
「状況小説の現在」
[司 会] 前島 洋平(文理学部准教授)
[発題者]
「状況小説」として読む『ハワーズ・エンド』
()―「文化的対立」と「三代目」を手掛か
りに―
杉本 久美子(東北女子大学准教授)
モーム作品に見られる状況小説の効果―『劇場』
()を中心に―
前島 洋平(文理学部准教授)
状況小説の現在―『碾臼』 にみる 世紀
の女性を巡る状況―
新井 英夫(松山大学法学部准教授)
●月例会予定
年 月以降の予定は以下の通りです。詳細が
決まり次第、 HPDLO と本学会ホームページでご案内い
たします。
12 月 2014 度学術研究発表会・総会
( 2014 年 12 月 6 日)
詳細は ページの《年次大会プログラム》をご覧下
さい。
1 月 研究発表( 2014 年 1 月 17 日)
[司 会] 當麻 一太郎(文理学部講師)
[発表者]
和泉 周子(博士後期課程 年)
秋葉 倫史(日本大学講師)
●研究発表者募集
本学会では、次年度の月例会・年次大会の発表者を
募集しています。申し込み希望者は、以下について事
務局までお知らせ下さい。なお、検討の結果、ご希望
に添えない場合がございます。
氏名
─ ─
2014 年 11 月
日本大学英文学会
住所
電話番号・メールアドレス
所属
発表希望年月
発表題目
要旨(日本語 字以内、英語 語以内)
比較的評価の低い『ロモラ』に一定の評価を与え、さ
らに小説の影に隠れて、ともするとあまり論じられる
機会の少ない詩にも、かなりのページを割いて小説と
の関連から論じるなどナンシー・ヘンリー独自の視点
が感じられるのは特筆すべきことである。
● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
《新刊書案内》
『文法化する英語』について
本学会員による新刊書を下記の通りご報告します。
なお、学会員で研究書等を出版された方は事務局(英
文学科研究室)までお知らせください。新刊書案内と
して随時掲載いたします。
()
ナ ン シ ー・ ヘ ン リ ー.『 評 伝 ジ ョ ー ジ・ エ リ
オット』
.会田瑞枝,内田能嗣,小野ゆき子訳.
東京:英宝社, 年.(会田瑞枝先生(日本大
学講師)が共訳)
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原公章訳『ジョージ・エリオット全集 ・ロモ
ラ』.東京:彩流社, 年.
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藤井繁.
『予感―オスカー・ワイルドの栄光と悲
惨』
.東京:コプレス, 年.
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池内正幸,郷路拓也編.
『生成言語研究の現在』
.
東京:ひつじ書房, 年.
(保坂道雄先生(文理
学部教授)の論文「二重目的語構文再考」が所収)
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保坂道雄.
『開拓社言語・文化選書 :文法化す
る英語』.東京:開拓社, 年.
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山岡洋.
『新英文法概説』
.東京:開拓社, 年.
日本大学文理学部教授 保坂 道雄
なぜ、英語には冠詞や形式主語 LW や WKHUH が存在
するのに、日本語にはないのでしょうか。実は、昔の
英語にも冠詞や形式主語はなく、ある意味、現代日本
語に似た文法現象が観察されていました。また、現代
英語では当たり前の助動詞や進行形といった文法事項
も、近代から際立って発達してきます。
本書では、こうした通時的に新たに出現してきた文
法現象(冠詞、虚辞の WKHUH、所有格の ’V、接続詞、
関係代名詞、再帰代名詞、助動詞 '2、法助動詞、不
定詞、進行形、完了形、受動態、虚辞の LW)を、「文
法化(*UDPPDWLFDOL]DWLRQ)
」という観点から考察して
いきます。また、この文法化が対象とする言語変化
は、認知言語学、機能言語学、生成文法、進化言語学
のいずれにも関わる現象であり、本書はこうした多角
的な視点に立ち、考察を行っております。英語の歴史
は文法化現象の宝庫であり、本書により英語史研究の
新たな可能性を感じて頂ければと思います。
『評伝 ジョージ・エリオット』
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日本大学講師 会田 瑞枝
本書は 1DQF\ +HQU\ The Cambridge Introduction to
George Eliot. &DPEULGJH &DPEULGJH 8QLYHUVLW\ 3UHVV
SS を 人の訳者(内田能嗣、小野ゆき子、
会田瑞枝)により翻訳したものである。筆者のナン
シー・ヘンリーはテネシー州立大学教授(英文学専
攻)で、『ジョージ・エリオットと英帝国』
『ジョー
ジ・エリオットの生涯、批評的な伝記』等の数多くの
著書のある現在最も注目をされるエリオット文学の研
究者の一人である。エリオットが母国イギリスのみな
らず、ヨーロッパ全体を俯瞰する大きな歴史の流れの
中で人間を捉えたように、ナンシー・ヘンリー自身も
英国中部地方に生を受けた少女が 世紀のイギリス
を代表する作家へと成長した軌跡を、作品論を含めて
その生涯から後世への文学上の影響に至るまでの歴史
の流れの中で明らかにしている。
従来エリオットの小説の中では、売れ行きも悪く、
『新英文法概説』について
桜美林大学教授 山岡 洋
本書は「文中での機能」という点に着目して英文法
全体を説明しています。3DUW では、 文型の代わり
に「述部」に着目した文型分類を提案し、語が結び付
いて句を形成するときの構造を、生成文法の研究成果
を応用して、「主要部」と「補部」という概念を用いて
説明しています。そして、それぞれの句が主部・述
部・修飾部のいずれかとして機能することを説明して
います。
3DUW では、品詞を主部になれる品詞と主部になれ
ない品詞に大別して、それぞれの品詞を文中での機能
という観点から説明しています。特に、最近の言語学
や英語学でしばしば言及される決定詞について詳しく
説明しています。そして、従来の接続詞の在り方に疑
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英文学会通信
問を投げ掛け、等位接続詞を複数の要素を連結する連
結詞と呼び、名詞節を導く従属接続詞は名詞、副詞節
を導く従属接続詞は副詞として扱っています。また、
準動詞と関係詞は複数の品詞にまたがる準品詞として
その共通点と相違点をまとめています。
第 102 号
室内 日本大学英文学会」宛てにご連絡くださるよう
にお願いいたします。送られてきました情報は、こち
らのコンピューターファイルに入れて、厳重に管理い
たします。
●会費納入のお願い
《訃報》
年 月 日(日)元日本大学文理学部英文学科
教授・元佐野短期大学教授小竹一男先生がご逝去され
ました(享年 歳)。謹んでお悔やみ申し上げます。
年 度 学 会 費( 研 究 会 員 円、 同 窓 会 員
円)を未納の方は、郵便振込で納入下さいます
ようお願いいたします。
口座番号:
加入者名:日本大学英文学会
《事務局・研究室だより》
●寄贈図書について
本学会員の会田瑞枝先生(日本大学講師)より以下
のご著書を本学会宛に寄贈いただきましたので、ご報
告いたします。なお、英文学科書庫にて配架させてい
ただきます。
ナ ン シ ー・ ヘ ン リ ー.『評伝 ジョージ・エリ
オット』
.会田瑞枝,内田能嗣,小野ゆき子訳.
東京:英宝社, 年.
●卒業された同窓会員の皆様へ
本学会の構成が同窓会員、研究会員、および学生会
員よりなっていることは、すでにご存じのことと思い
ます。これまで、英文学科入学時に学生会員としてご
入会頂き、 年間の会費を、また、卒業時には同窓会
員として 年間の会費(年額 円)を前納して頂
いております。日本大学英文学会会則により、会員は
年間会費未納の場合には、その資格を喪失します。
研究会員への移行を望む方、または引き続き同窓会員
を希望される方は、振り込み用紙などを使って年会費
をお支払いください。もし 年間を過ぎても会費が払
われない場合は、その時点で自動的に退会となります。
本学会では会員名簿を 年に一度改訂し、出来上が
り次第お送りしています。この会員名簿は英文学科卒
業生名簿としての役割もしていることにお気付きの方
も多いことでしょう。先に触れましたように、
「英文
学会通信」や「会員名簿」につきましても、会員の資
格を失った場合には郵送されません。
しかしながら、英文学会では、全卒業生のその後の
消息を把握しておきたいと思います。そこで、住所変
更など、ぜひとも本学会ホームページ(KWWSZZZ
FKVQLKRQXDFMSHQJBGSWHVDQXLQGH[KWPO)や HPDLO
(HVDQX#FKVQLKRQXDFMS)、もしくは「〒 世
田谷区桜上水 日本大学文理学部英文学研究
─ ─
2014 年 11 月
日本大学英文学会
『英文学論叢』 第 64 巻 原稿募集について
日本大学英文学会機関誌『英文学論叢』第 巻( 年 月発行予定)の原稿を募集いたします。
投稿希望の方は『英文学論叢』第 巻( 年 月発行予定)巻末の投稿規定に従って下記にお送
りください。
締切日 年 月 日(水)
(必着)
宛 先 〒 東京都世田谷区桜上水 日本大学文理学部英文学研究室内 日本大学英文学会
7HO )D[
(PDLOHVDQX#FKVQLKRQXDFMS
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