KALS 大学院入試対策講座 受講生の皆様 DSM

KALS 大学院入試対策講座 受講生の皆様
100%合格に向けて!チューターからメッセージ
DSM-5 について(2)
横浜校チューター:嶋田 陽介
受講生の皆さんこんにちは。いよいよ 8 月になりました。開放的な気分になり、遊びたい誘惑を抑えるのは大変ですけ
ど・・・、受験勉強・研究計画書の方は進んでおりますか?
秋受験の方は、そろそろ願書の準備なども進めていくようにしていきましょう。
今回も前回に引き続き DSM-5 についてみていきたいと思います。前回は、児童青年期について、神経発達障害の項
目に関してのお話でした。今回はそれ以外での疾患についてみていきたいと思います。その中でも精神疾患の中心と
なるところ、[統合失調症、気分障害(うつ病、躁うつ病)、不安障害、その他]といった感じで進めていきたいと思います。
以下に全体的な項目を示しておきます。
DSM-Ⅳ-TR での分類
通常、幼児期、小児期、または青年期に
初めて診断される障害
DSM-5 の分類
神経発達障害
せん妄、痴呆、健忘性障害、および他の認知障害
統合失調症スペクトラムと他の精神病性障害
一般身体疾患による精神障害
双極性と関連障害
物質関連障害
うつ病性障害
統合失調症および他の精神病性障害
不安障害
気分障害
強迫と関連障害
不安障害
トラウマとストレッサー関連障害
身体表現性障害
解離性障害
虚偽性障害
身体症状と関連障害
解離性障害
哺育と接触の障害
性障害および性同一性障害
排泄障害
摂食障害
睡眠覚醒障害
睡眠障害
性機能不全
他のどこにも分類されない衝動制御の障害
性別違和
適応障害
破壊性衝動制御行為障害
パーソナリティ障害
物質関連と嗜癖の障害
臨床的関与の対象となることのある他の状態
神経認知障害
パーソナリティ障害
パラフィリア障害
その他の精神障害
投薬誘発性運動障害とその他の副作用
臨床的関与の対象となることのある他の状態
Ⅰ)統合失調症スペクトラム
DSM-5 では「統合失調症スペクトラム」という概念を用いて、これまで羅列されていた、統合失調症カテゴリー内の各
診断を一連の連続体としてまとめられました。
失調型障害
統合失調
妄想性
統合失調症
妄想性障害
症様障害
障害
短期精神病性障害
短期精神病
統合失調症様障害
性障害
統合失調症
DSM-Ⅳ-TR
DSM-5
統合失調症の中核症状を、妄想、幻覚、解体した思考・会話、まとまりのない言動または緊張病性の行動、陰性症状
の 5 つの主領域とし、これらの主症状の有無、強さ、持続期間の違いによって重症度が異なるという考え方になりました。
もっとも軽いものとして、統合失調症の特徴は見られるが、いずれの主領域の症状もはっきりと認められないものが失
調型(人格)障害、妄想 1 つだけを有する妄想性障害、統合失調症の診断基準は満たすが、6 か月以内に基準を下回
ったものを統合失調症様障害、持続期間が 6 か月を超えれば操作的に統合失調症の診断が確定するようです。
Ⅱ)双極性障害とうつ病障害
双極性障害と単極性うつ病に関して、双極および関連障害は、抑うつ障害と明確に区別されました。従って DSM-Ⅳ
までの気分障害(Mood Disorder)という用語は DSM-5 ではなくなり、さらに、気分障害の中心が双極性障害になったと
いうところも、大きな変更点のようです。気分障害領域における改定の背景に、次のような意図が存在しております。
・双極性障害と単極性うつ病は別の病気である
・混合性病像の取扱いを整理する
・双極性障害の過剰診断を減らす
特に一番目の双極性障害と単極性うつ病は別の病気である、というのは臨床の現場にいると、とても強く感じます。そ
して、これは過剰診断であるかどうかはわかりませんが、双極性障害の方も最近は多いように思われます。双極性障
害の方の治療・援助の難しさ、というのは常に痛感させられております。
大うつ病については、DSM-5 では 4 つに分類しています。
A.Disruptive Mood Dysregulation Disorder(破壊的気分調節不全障害)
B.Premenstrual Dysphoric Disorder(月経前不快気分障害)
C.Major Depressive Disorder(大うつ病性障害)
D.Persistent Depressive Disorder(持続性うつ病性障害)
変更点は①AとBが新設されたこと、②Cの診断基準から「死別反応(親しい他者を喪失した個人の反応)の除外」と
いう項目が削除されたこと、③Cの随伴症状である「産後うつ病」が「出産前後のうつ病」に拡大されたこと、④DSM-IV
で定義されていた気分変調性障害と慢性大うつ性障害が統合されてDができたこと、があげられます。
Ⅲ)不安障害
不安障害についての変更点としては、強迫性障害、外傷後ストレス障害、急性ストレス障害が区別されました。強迫
性障害は強迫と関連障害へ。心的外傷後ストレス障害と急性ストレス障害はトラウマとストレッサー関連障害へ変更さ
れました。
Ⅳ)その他
ⅰ)身体症状関連障害
DSM-5 では、身体表現性障害が大幅に改編され、身体症状関連障害という新しいカテゴリーが構成されたようです。
具体的には、身体化障害や心気症が削除され、身体症状性障害と疾病不安障害の 2 つが新設されました。
ⅱ)哺育と摂食の障害
細かい変更点はいくつかあるようですが、『むちゃ食い障害』が研究案から疾患単位として加わりました。
自閉症や統合失調症のように、今後は病気を分類していく、というよりも連続線上で考え(ディメンション診断)、その人
の症状の有無や強弱によって、捉えていくという考え方が主流になると思われます。また、もう間もなく日本版も出され
るようですので興味のある方はぜひ確認してみてください。
参考図書
臨床家のための DSM-5 虎の巻 森則夫 杉山登志郎 岩田泰秀
精神疾患診断のエッセンスーDSM-5 の上手な使い方― 大野裕 中川敦夫 柳沢圭子
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次回は、臨床心理士の仕事についてお話ししたいと思います。