杉野服飾大学 自己評価報告書・本編 [日本高等教育評価機構] 平成 21(2009)年6月 杉野服飾大学 目 次 Ⅰ. 建学の精神・大学の基本理念、使命・目的、大学の個性・特色等・・・・・p. 1 Ⅱ. 杉野服飾大学の沿革と現況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p. 2 Ⅲ. 「基準」ごとの自己評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p. 4 基準1 建学の精神・大学の基本理念及び使命・目的・・・・・・・・・・・p. 4 基準2 教育研究組織・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p. 8 基準3 教育課程・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.18 基準4 学生・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.42 基準5 教員・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.54 基準6 職員・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.64 基準7 管理運営・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.69 基準8 財務・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.75 基準9 教育研究環境・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.78 基準10 社会連携 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p.86 基準11 社会的責務 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p.93 杉野服飾大学 Ⅰ.建学の精神・大学の基本理念、使命・目的、大学の個性・特色等 1.建学の精神・大学の基本理念および使命・目的 本学園の創設者杉野芳子は、日本の近現代の過渡期にあって、単身渡ったアメリカで自 分自身の生活体験の中から西洋衣裳の制作技術と服飾文化を身に付けて、帰国後日本にお ける服飾教育を開始した。その目指すところは日本における洋装の普及定着と服飾技術の 習得による女性の自立であった。彼女は洋装を日本人に適合させるための洋裁技術として ドレメ式原型を考案し、日比谷公会堂で日本初のファッションショーを開催するなど、日 本における服飾教育の確立とモードの創出に取り組んだ。 彼女はファッションを 20 世紀の 新しい芸術の一分野として捉え、パリのエレガンスを日本に紹介した。彼女の取り組みの 全てがパイオニア精神で満たされている。 本学園の建学と展開の理念は、挑戦(チャレンジ)の精神、創造する力、自立(自己実 現)する能力である。21 世紀初頭の現在、日本の服飾に関する産業と社会はかつてないほ ど国際化が進行し、素材生産から消費市場に至るすべての局面で様々な課題に直面してい る。この状況の中で、現在および未来の日本のファッション産業の道を切り拓くチャレン ジ精神をもって、芸術性・技術力と文化的教養に基づいた創造力を養い、専門職業人とし て社会で自立する能力のある人材を送り出すことが杉野服飾大学の使命である。 このような建学の精神と 21 世紀における服飾大学の使命に基づいて、学則第2条は、本 学の教育の目的を次のように定めている。 「本学は、教育基本法、学校教育法および建学の精神に基づき、個人を尊重し、豊かな 人格を養うとともに、専門としての服飾に関して理論的・技術的および芸術的に深く教 授研究し、創造力・実践力をそなえた有能にして健全な社会人を育成することを目的と する。 」 2.大学の個性・特色等 本学は、服飾に関する専門教育を行う単科大学である。専門領域は家政学に属するが、 衣食住を包含した家政全般を教育研究する大学ではない。資格課程では、教職科目や学芸 員養成科目も開講しているが、教育研究のコアをなすものは服飾造形とこれに関連する専 門領域である。服飾分野に特化した家政系・芸術系の単科大学であって、他に少数の類似 大学があるのみである。本学の使命と目的を効果的に実現するために、教育課程を前期2 年間(1・2年生)の基礎課程と後期2年間(3・4年生)の専門課程に分割し、基礎課 程では専門科目と教養科目で必修科目と選択科目を開設しているが、全学生に対して服飾 関係の科目 41 単位の履修を必修として課している。 したがって本学の学生は全員が服飾造 形の基本を身に付けた上で、専門課程に進学することになっている。 専門課程では、7つのコースに分属して専門科目を履修して卒業する。7つのコースは すべて服飾に関連する専門分野であるが、モードクリエーションコース(1コース)と感 性産業デザインコース(3コース)は服飾造形を専攻するコースであり、先端ファッショ ン表現コース(2コース)は服飾造形のイメージの伝達を学ぶコースであり、アートファ ブリックデザインコース(4コース)は服飾素材を専攻するコース、ファッション文化論 1 杉野服飾大学 コース(5コース)は服飾文化に関する思考を文章表現を通して学び、ファッションビジ ネス・マネジメントコース(6コース)はアパレル企業の経営能力を養い、ファッション プロダクトデザインコース(7コース)は服飾関連のアイテムの造形を専攻するコースで ある。いずれにしても専門課程はすべて服飾に関連する専門分野を専攻するもので、基礎 課程で全学生が服飾造形の基礎知識・技術を習得することと併せて、大学の教育が服飾を コアとして展開していることに大きな特色がある。 なお、平成 14(2002)年度に杉野女子大学家政学部から杉野服飾大学服飾学部に改組した 際に男女共学としたが、それ以後毎年度おおむね3割ほどの男子学生が入学しており、服 飾造形関係のコースにおいても男子学生がかなり在籍して、レディースの服飾造形を専攻 していることも大きな特色である。 Ⅱ.大学の沿革と現状 1. 本学の沿革 杉野服飾大学の歴史は、設置法人である杉野学園の創設に由来している。平成 17(2005) 年に 80 周年を迎えた杉野学園は、大正 15(1926)年、日本における服飾教育の先駆けとし て、杉野芳子が米国滞在中の研究、経験を基礎として「ドレスメーカー学院」 (昭和 63(1988) 年ドレスメーカー女学院から校名を変更) を創立した。 ドレスメーカー学院の発展に伴い、 その公共性且つ永続性を図るためこれを母体とし昭和 23(1948)年7月 31 日、財団法人杉 野学園を設立した。 その後、昭和 25(1950)年短期大学制度の発足を機に、杉野学園は、服飾教育を大学教育 に展開するために「杉野学園女子短期大学」 (昭和 40(1965)年から杉野女子大学短期大学 部に校名を変更)を開学し、被服科を置いた。昭和 26(1951)年、学校法人杉野学園として 認可された。この短期大学の経験を基盤として昭和 39(1964)年「杉野学園女子大学」 (昭 和 40(1965)年から杉野女子大学に校名を変更)を創立し、家政学部被服学科を置いた。カ リキュラム構成は、被服学科としては、独自性と総合性を兼ね備えたもので年々充実を図 ってきたが、平成 14(2002)年「杉野服飾大学」に校名変更と共に服飾系大学としては日本 初の男女共学を実現し、21 世紀の服飾教育にふさわしい環境づくりのためにさまざまな改 革を行い、従来の「被服学科が主力の家政系大学」から「ファッションビジネスの専門大 学」へと生まれ変わり、学部学科名も家政学部被服学科から服飾学部服飾学科とした。併 せて入学定員の増加を目指し、平成 14(2002)年に 100 人から 165 人とし、3年次編入学定 員 10 人を設定した。平成 16(2004)年には 165 人から 240 人、3年次編入学定員を 10 人か ら 20 人に変更した。更に3年次編入学定員を平成 18(2006)年度に 20 人から 30 人に変更 し、収容定員を 1,020 人とした。 何より教育の質を問われるときにあって、日本の洋装の黎明期に“モードの創造”を掲 げた創立者杉野芳子の先進性を受け継ぎ、産業の発展に寄与する新たなファッション教育 の創造に取り組んでいる。 平成 21(2009)年、デザイナーとしての専門職業人養成のためにファッションデザイン専 攻科を置いた。 なお、大学創立を機に、短大は短期大学部として併設されることになった。現在、杉野 服飾大学短期大学部服飾学科をおいて杉野服飾大学との連携を密にしている。 2 杉野服飾大学 (沿革) 大正 15(1926)年4月 ドレスメーカースクール(現ドレスメーカー学院)創立 昭和 06(1931)年4月 東京府の認可校となる 25(1950)年4月 杉野学園女子短期大学被服科を創設する 26(1951)年4月 学校法人杉野学園として認可される 32(1957)年4月 杉野学園衣裳博物館開館 39(1964)年4月 杉野学園女子大学家政学部被服学科を創設する 杉野学園女子短期大学を杉野学園女子大学短期大学部と校名変更 40(1965)年4月 杉野学園女子大学を杉野女子大学に校名変更 大学に教職課程をおく 杉野学園女子大学短期大学部を杉野女子大学短期大学部に校名変更 平成 46(1971)年4月 杉野百草幼稚園を創立(現杉野幼稚園)する 48(1973)年4月 大学に学芸員課程をおく 02(1990)年4月 大学の専攻コースを次の6コースとする ①被服構成・デザイン、②被服テキスタイルデザイン、 ③被服科学、④被服芸術論文、⑤織物、⑥染色 12(2000)年4月 杉野学園と中国の浙江工程学院(現浙江理工大学)との間に友好交流協定を取り 交わす 13(2001)年4月 日野市(日野キャンパス)に日野校舎 G 棟(General Block)を新築し、先端フ ァッション表現コース等が使用する 13(2001)年4月 カリキュラムを改め、1・2年次を基礎課程、3・4年次を専門課程として次の 5つのコースを置く ①モードクリエーション、②先端ファッション表現、③感 性産業デザイン、④アートファブリックデザイン、⑤ファッション文化論 14(2002)年4月 杉野女子大学を杉野服飾大学に校名変更し、服飾学部服飾学科とし、男女共学とする 入学定員を 100 人から 165 人に増員し、3年次編入学定員を 10 人に設定し、収 容定員 680 人とする 杉野女子大学短期大学部を杉野服飾大学短期大学部に校名変更し、服飾学科とし、 2年次に3つのコース(ドレスクリエーション、コスチュームクリエーション、ア パレルクリエーション)を置き、男女共学とする 14(2002)年4月 杉野服飾大学附属図書館竣工 14(2002)年4月 日野校舎にR棟(Representation Block)を新築 14(2002)年4月 ロシア モスクワ国立繊維大学と日露服飾協力協定を締結する 15(2003)年4月 杉野服飾大学第2新校舎竣工 新規に第6の専攻コース(⑥ファッションビジネス・マネジメント)を開設する 先端ファッション表現コースが日野校舎で授業を行うことになる 16(2004)年4月 入学定員を 165 人から 240 人に増員し、3年次編入学定員を 10 人から 20 人に増 員し、収容定員 1,000 人とする 17(2005)年4月 新規に第7の専攻コース(⑦ファッションプロダクトデザイン)を開設する 18(2006)年4月 編入学定員を 20 人から 30 人に増員し、収容定員を 1,020 人とする 20(2008)年 12 月 杉野学園と中国の浙江紡織服装職業技術学院とアパレル企業の発展に寄与する目 的により、友好交流および協力関係を進めるために協定を交す 21(2009)年4月 ファッションデザイン専攻科を開設する 3 杉野服飾大学 2. 本学の現況 1)大学名 杉野服飾大学 2)所在地 目黒キャンパス 東京都品川区上大崎4-6-19 日野キャンパス 東京都日野市百草 1006-44 3)学部構成 服飾学部服飾学科 ファッションデザイン専攻科 4)学士課程の学生数、教員数(専任教員、助手および兼任教員の現員) 、職員数 入学定員・収容定員・在籍学生数 学 部 学 科 入 学 定 員 編入学 定 員 (3年次) 収容 定員 在籍学生 総数 在 籍 学 生 数 編入学 生数 (内数) 1年次 2年次 3年次 4年次 学生数 学生数 学生数 学生数 240 30 1020 1212 34 280 316 292 324 合 計 240 30 1020 1212 34 280 316 292 324 専攻科 入 学 定 員 収容 定員 在籍 学生数 ファッションデザイン専攻科 10 10 5 合 計 10 10 5 服飾学部 服飾学科 (教員数) 大 学部名 学 学科名 教授 准教授 講師 助教 助手 計 服飾 15 13 4 5 6 43 15 13 4 5 6 43 学部名 事務局 技術助手 図書館 博物館 法人本部 計 服飾 29 14 4 1 6 54 大学合計 29 14 4 1 6 54 服飾 大学合計 (職員数) 大 学 Ⅲ. 「基準ごと」の自己評価 基準1.建学の精神・大学の基本理念および使命・目的 1-1.建学の精神・大学の基本理念が学内外に示されていること 《1-1の視点》 1-1-① 建学の精神・大学の基本理念が学内外に示されているか。 (1)1-1の事実の説明(現状) 学園の創設者杉野芳子の建学の精神と大学の基本理念は、学園創設の経緯とその後の学 園の指導理念を語る中で学内外に示されている。 1)創立者自伝と学長式辞等による伝達 学内では、入学時の学長式辞、オリエンテーションの中で示され、さらに初年次の必修 4 杉野服飾大学 科目「服飾学原論」で杉野芳子の自叙伝である『炎のごとく』を解説する方法によって新 入学生に伝達されている。また『炎のごとく』は、入学決定者の入学前教育のレポート作 成課題図書にもなっている。 2) 「学生便覧」 建学の精神と大学の理念は、全学生に配布される「学生便覧」の冒頭で標語の形で示さ れるとともに、 「建学の精神と大学・短大の使命」として「挑戦(チャレンジ)の精神」 「創 造する力」 、 「自立(自己実現)する能力」と明記される。これらは新入学生にオリエンテ ーションで提示され、在学生に対しては各学年の次年度オリエンテーションでも提示され ている。 3)将来計画の基礎として 平成 20(2008)年7月に策定した「学校法人杉野学園中長期計画」でも、第3「長期計画」 の冒頭の「建学の精神・ミッションと学園の将来目標」で、建学の精神と大学の基本理念 を明示している。 4)ホームページによる公示 杉野学園のホームページ「理事長メッセージ」と杉野服飾大学のホームページ「学長メ ッセージ」の中で建学の精神等が掲載され、広く学内外に示されている(なお、杉野学園 のホームページでは前記の中長期計画も掲載されている) 。 5)学則への記載 学則第2条は大学の基本理念を次のように定めている。 (目的) 第2条 本学は、教育基本法、学校教育法および建学の精神に基づき、個人を尊重し、 豊かな人格を養うとともに、専門としての服飾に関して理論的・技術的および芸術的 に深く教授研究し、創造力・実践力をそなえた有能にして健全な社会人を育成するこ とを目的とする。 6) 「大学案内」への記載 建学の精神と大学の基本理念は、大学案内にも明示しており、学生募集をはじめ広報活 動を通じて学外に示されている。 7)自己点検評価報告書 平成 19(2007)年3月に刊行された「杉野服飾大学自己点検評価報告書 2006」には「建 学の精神と大学の基本理念および使命・目的」の記載がある。この報告書は全専任教員に 配布されたほか、非常勤講師控室、事務局各部署にも配備し 、学生に対しては附属図書館 に備え付けて周知を図っている。 (2)1-1の自己評価 以上記述したように、建学の精神・大学の基本理念、そして使命は明確になっており、 大学の内外へ周知されている。また、服飾造形の分野に特化して、教育機関としての社会 的責務を果たそうとしているので、大学の個性や特色も自ずから確立されている。したが って、この点で特に不足しているところは見いだされない。 (3)1-1の改善・向上方策(将来計画) 時代の進展に即応して基礎課程と専門課程の教育の目的や目標を見直す際に、大学の基 本理念を再確認しつつ行うこととする。 5 杉野服飾大学 1-2.大学の使命・目的が明確に定められ、かつ学内外に周知されていること。 《1-2の視点》 1-2-① 建学の精神・大学の基本理念を踏まえた、大学の使命・目的が明確に定め られているか。 1-2-② 大学の使命・目的が学生及び教職員に周知されているか。 1-2-③ 大学の使命・目的が学外に公表されているか。 (1)1-2の事実の説明(現状) 1)建学の精神・大学の基本理念を踏まえた使命・目的 -80 周年を期に使命目的の再確認- 大学の使命・目的は、学則第2条で前記1-1のとおり明示されている。平成 16(2004)年 12 月から行われた杉野服飾大学自己点検評価委員会による点検評価では、翌平成 17(2005)年 の秋に学園創立 80 周年を迎えるにあたり、約1年間、専ら建学の精神と理念、大学の使命・ 目的の検討を行った。その結果は、平成 19(2007)年3月に刊行された報告書の第1章「建学 の精神・大学の基本理念および使命・目的」として学内外に公表されている。今回さらに自己 点検評価委員会で検討を加えた結果、現時点における大学の使命・目的として確定した文言を 前記「Ⅰ.建学の精神・大学の基本理念、使命・目的、大学の個性・特色等」に記した。 -専門コースの教育目標への反映- 本学の使命・目的は、具体的には専門課程の各コースの教育によって達成される。このコ ース制は学則等の規則に基づくものでなく、学部の運用上(服飾に関するカリキュラム編成) の組織として設けられており、規則上は服飾学部服飾学科の一学科として定められている。 そのため学内規則のレベルで各コースの使命・目的に関する事項が取り上げられることがな い。平成 16(2004)年度に始まった自己点検評価では、建学の精神等の検討に続いて専門教育 の内容の検討を行った。その際、大学の使命・目的に照らして各コースの教育目標をどのよ うに設定するかの再検討が行われ、各コースの教育目標とこれを達成するための教育内容が 決定された。今回、基準3-1の教育課程で掲げられている各コースの教育の目的と目標は、 前回の検討結果に再度各コースにおいての意見交換を加えた結果である。基礎課程について も同じである。 2)学生および教職員への大学の使命・目的の周知 -学内での使命・目的の周知- 建学の精神・大学の基本理念と同様、大学の使命・目的についても、1-1で述べた方 法によって学内で周知されている。 すなわち大学の使命・目的については、入学式での学長の式辞、入学時オリエンテーシ ョンでの説明と各コース主任によるガイダンス、専門課程への進学に際してのコース説明 で学生と教職員に周知されている。 平成 19(2007)年3月に刊行された「杉野服飾大学自己点検評価報告書 2006」は全専任 教員に配布したほか、非常勤講師控室、事務局各部署にも配備されており、学生に対して は附属図書館に備え付けて周知を図っている。 学園のホームページと大学のホームページでも大学の使命・目的に関する記事を掲載し、 6 杉野服飾大学 学内外への周知を図っている。 3)学外への大学の使命・目的の周知 -大学の使命・目的の学外への公表- 建学の精神・大学の基本理念と同様、大学の使命・目的についても、1-1で述べた方 法によって学外に公表されている。 すなわち大学の使命・目的は、学園のホームページや雑誌「文部科学教育通信」等で公 表されている。平成 20(2008)年7月に策定された杉野学園中長期計画も学園のホームペー ジに掲載されており、これによっても公表されている。また、大学案内にも使命・目的が 示され、これによっても広く公表されている。 (2)1-2の自己評価 評価の視点とされている三つの観点から評価すると、この項目に関しては基準を満たし ていると評価できる。すなわち「Ⅰ」で述べたように、 「現在および未来の日本のファッシ ョン産業の道を切り拓くチャレンジ精神をもって、芸術性・技術力と文化的教養に基づい た創造力を養い、専門職業人として社会で自立する能力のある人材を送り出すこと」が杉 野服飾大学の教育的使命であることが確認されており、この使命については大学の内外に 活字媒体、インターネットを通じて十分に周知・公表されている。 (3)1-2の改善・向上方策(将来計画) 上記のように、本学の使命について原則的な確認はできており、教職員も学生も使命と 目的を理解している。しかし、次に述べるように組織的自覚化の方法や、基準3で詳しく 検討されるカリキュラムへの具現化の点では改善の余地はある。 【基準1の自己評価】 建学の精神と大学の基本理念については、 (1)1-1の事実の説明に記したようにさま ざまな方法によって学内外に示されており、十分と考える。 大学の使命・目的は、学則第2条に定められているほか、平成 16(2004)年度に始まった 自己点検評価委員会の検討を経て、平成 19(2007)年3月の報告書で具体的に示された。こ れを踏まえて平成 20(2008)年7月策定の中長期計画の中でも確認され、さらに今回の自己 点検評価においてより明確に決定されている。 2回にわたる自己点検評価と中長期計画の策定は、その都度、報告書と計画として学内 教職員に周知されている。また、学生に対しては入学時の式辞、オリエンテーション(フ ァーストステップ IN SUGINO) 、学生便覧によって周知されている。 学外に対しては、 「大学案内」で使命・目的が明示されているほか、学園ホームページと 大学ホームページによって、中長期計画の中での記載も含めて使命・目的が明確に示され ており、広く一般社会に対しても公表されている。 以上の通り、大学の使命・目的は明確に定められ、学内外に周知されている。 平成 16(2004)年度の自己点検以前には、 平成 12(2000)年度の自己点検の際に一応の検討 が行われたものの、教職員が大学の使命・目的を共通に確認するための努力は必ずしも十 分でなかったと言わざるをえない。 【基準1の改善・向上方策(将来計画) 】 現在確認されている使命・目的を学内外により一層周知徹底する方策を絶えず検討し、 実施する必要がある。 7 杉野服飾大学 学部学科の目的は専門課程の各コースの教育目標によって具体化される。しかし、このコー ス制は学内規則によって定められておらず、運用上の組織として位置づけられている。これは 状況の変化に弾力的に対応して教育組織を改変するのに適している利点はあるが、コースの教 育目標がコース主任の教員あるいはコースの各教員によって適宜定められ、あるいは変更され る可能性があるという欠点がある。今後は各コースの基本的な目的・目標を何らかの規則で明 確化することについて自己点検評価委員会で検討を行い、年内を目途に成案を得ることとする。 また、アパレル、ファッションの業界は、他の産業分野と比較しても長期的な展望を描 き難い現状である。したがって学校の使命・目的は、業界の変化を含めた時代の進展に即 して見直しを続けていく。 基準2 教育研究組織 2-1.教育研究の基本的な組織(学部、学科、研究科、附属機関等)が、大学の使命・目的を達成 するための組織として適切に構成され、かつ、各組織相互の適切な関連性が保たれて いること。 《2-1の視点》 2-1-① 教育研究上の目的を達成するために必要な学部、学科、研究科、附属機関等 の教育研究組織が、適切な規模、構成を有しているか。 2-1-② 教育研究の基本的な組織(学部、学科、研究科、附属機関等)が教育研究上 の目的に照らして、それぞれ相互に適切な関連性を保っているか。 (1) 2-1の事実の説明(現状) 学校法人杉野学園は、図2-1-1「学校法人杉野学園組織図」に示す通り、理事会、 評議員会、監事のもとに運営を担当する事務局、教育を担当する杉野服飾大学、杉野服飾 大学短期大学部、ドレスメーカー学院(ドレスメーカー学院通信教育部を含む) 、杉野幼稚 園、附属機関から構成されている。事務局については、特に教務部、学生部、就職部に教 員部長を配置し学生支援を行っている。これらの組織運営は、基本的運営事項を定めた「学 校法人杉野学園寄付行為」及び「学校法人杉野学園管理運営規程」に基づき行われている。 8 杉野服飾大学 図2-1-1 学校法人杉野学園組織図 事 務 杉 野 服 局 飾 大 学 評 議 員 会 杉 野 服 飾 大 学 短 期 大 学 部 理 事 ド 会 レ ス メ ー カ ー 学 院 ドレスメーカー学院通信教育部 監 事 杉 野 幼 附 属 機 関 稚 園 図 書 館 衣 裳 博 物 館 杉 野 記 念 館 1)組織・学生数 杉野服飾大学は、服飾学部、服飾学科の一学部一学科の単科大学である。基準1で述べ たように昭和 39(1964)年に杉野女子大学家政学部被服学科からスタートして平成 14(2002)年度より、杉野服飾大学服飾学部に改組し男女共学とした。平成 21(2009)年度の 男女比は女子が約 70%、男子が約 30%である。 服飾学部の収容定員は 1,020 人であり、内訳は入学定員が 240 人、3年次編入学定員が 30 人である。以下の表2-1-1に「学部学科の入学定員および在籍数」表2-1-2「専 攻科の学生定員および在籍学生数」を掲げ、服飾学部の教育研究組織の規模および構成を 示した。 表2-1-1 学部学科の入学定員及び在籍学生数 (平成21(2009)年5月1日現在)(データ編 表F-4) 在籍 在 籍 学 生 数 収容 学生 編入学 定 員 4年次 1年次 2年次 3年次 男女比率 入学 編入学 総数 学 部 学 科 生数 b/a 定員 定 員 (内数) 留年者数 男:女 (a) (b) 学生数 学生数 学生数 学生数 (内数) 服飾学部 服飾学科 240 30 1020 1212 37 1.19 280 316 292 324 41 3:7 表2-1-2 専攻科の学生定員及び在籍学生数 専攻科 入学定員 収容定員 (a) 在籍学生数 (b) 10 10 5 ファッションデザイン専攻科 合計 10 10 5 * 修業年限は1年、ただし途中、国外研修をする者は2年 9 b/a 男女比率 男:女 0.5 0.5 6:4 6:4 備 考 平成21年4月設置 杉野服飾大学 杉野服飾大学は、その使命・目的の達成に適した組織構成を目指しつつ服飾教育に特化 した教育・研究を実践してきている。7つのコースは、現在の服飾産業で働くために必要 な専門技術を過不足なく含んでいる。 「①モードクリエーションコース」はデザイナー、パタンナーなどを養成する服飾造形 教育を、 「②先端ファッション表現コース」は服飾造形のイメージを伝達する人材を育成す る教育を、 「③感性産業デザインコース」は3次元計測、CAD を使用したパタンナーなどを 養成する服飾造形教育を、 「④アートファブリックデザインコース」は服飾材料に関する学 習によってデザインの考案、企画設計のできる人材を養成する教育を、 「⑤ファッション文 化論コース」は服飾文化に関する思考を文章表現する人材を養成するコースを、 「⑥ファッ ションビジネス・マネジメントコース」は服飾に関する企業の経営能力のある人材を養成 する教育を、 「⑦ファッションプロダクトデザインコース」は服飾関連グッズのデザイン、 企画等にたずさわる人材を養成する教育をそれぞれ分担している。 平成 21(2009)年5月1日現在の各コースの在籍学生数は、表2-1-3のとおりである。 表2-1-3 コース別在籍学生数 コース ①モードクリエーション ②先端ファッション表現 ③感性産業デザイン ④アートファブリックデザイン ⑤ファッション文化論 ⑥ファッションビジネス・マネジメント ⑦ファッションプロダクトデザイン 未所属 3年次 107 11 14 31 16 54 43 16 4年次 121 19 25 41 20 62 35 1 計 228 30 39 72 36 116 78 17 また、知の拠点として附属図書館を置き、服飾分野の情報・資料を収集し、教員の服飾 研究、教材供給を行い、学生の学習援助にもあたっている。 平成 21(2009)年度に「ファッションデザイン専攻科」を新設し、学士課程修了後に、服 飾分野で世界的に活躍できるデザイナーおよびパタンナーの養成に取り組んでいる。 このファッションデザイン専攻科では、世界に通用するファッションデザイナーまたは パタンナーの養成教育を目的とし、現役のデザイナーやジャーナリスト、スタイリスト、 バイヤーなどを講師に迎え実践授業を行う。 学部では、有力企業への就職、ブランドビジネスの起業、ファッションイベントへの出 展に至るまでの実際を教育する。 さらに、学部には資格課程として教職課程と学芸員課程を置き、教職課程では中等教育 を担当する「家庭」の教員を養成し、学芸員課程では博物館等の専門職員の資格に当たる 「学芸員」を養成し、学校教育、社会教育の分野での社会的責任を果たしている。 このように組織は小規模ながら、服飾の分野において先導的役割を果たせる人材の養成 という使命に即して無駄のない教育組織を組み上げている。図2-1-2に杉野服飾大学 教育研究組織を示す。 10 杉野服飾大学 図2-1-2 杉野服飾大学教育研究組織図 ファッションデザイン専攻科 学 長 ①モードクリエーションコース ②先端ファッション表現コース ③感性産業デザインコース ④アートファブリックデザインコース ⑤ファッション文化論コース ⑥ファッションビジネス・マネジメントコース ⑦ファッションプロダクトデザインコース 教授会 服 飾 学 部 服 飾 学 科 資格課程 教職課程 学芸員課程 2)教員数 下記表2-1-4に示すように、服飾学部には専任教員が 37 名、専任助手6名、その 他非常勤講師・助手で教員組織が構成されている。専任教員1人当たりの在籍学生数は、 32.7 人で、教員一人当たりの学生数は少く、個別指導を含む実技科目が多いカリキュラム の需要を満たす人数になっている。適切な規模、構成で運営されている。 表2-1-4 (平成21(2009)年5月1日現在 データ編表F-6より抜粋) 専任教員数 学部 学科 教授 准教授 講 師 助教 服飾学部 服飾学科 15 13 4 5 計 (a) 37 兼 任 非常勤 設置基準上 設置基準上 専任教員1 (非常勤) 依存率(%) 助手 必要専任 必要専任 人当たりの 教員数 b *100 教員数 教授数 在籍学生数 (b) a+b 6 29 15 32.7 72 66.1 3)教育組織の相互連関 本学の教育組織は前頁組織図(図2-1-2)で示した通りである。組織図上には示さない が、服飾学部内は、1・2年生については基礎課程、3・4年生については専門課程という教 育組織を組んでいる。 <1>基礎課程と専門課程 基礎課程は、社会人としての人間形成に関る人文社会科学・自然科学分野の科目や語 学・体育など教養教育と服飾関係の職業につくのに必要な専門の基礎知識・基礎技術を修 得するための教育課程組織であり、そのために必要な教育内容を備えた組織編成がなされ ている。基礎課程の教育内容については、基準3で詳記する。 専門課程は、基礎課程での教育を基礎として服飾関係の専門職業人となるための専門的 な知識と技術を修得するために、服飾関係の幅広い分野に対応した教育を、7つのコース に分けて教育する組織編成がなされている。これらのコースは、服飾関係の理工系分野の 教育を除いて、服飾の素材、製作、流通、服飾を取り巻く諸分野にわたって、広く各分野 にそれぞれ対応した専門職業人を育成する教育組織になっている。専門教育の内容につい ても基準3で詳記する。 入学時には、服飾関係に高い関心があるにも拘わらず、職業分野について明確な志望を 11 杉野服飾大学 持っている学生は少ない。したがって基礎課程在学期間中に学生の進路に対する志向が次 第に形成され、出身学校の履修歴等の違いによるとともに志望は多様なものとなる。一部 は服飾以外の分野へ進路を変更する者も出てくる。このように多様化する学生の進路志望 に対応するためにも、基礎課程を経て専門課程に進むという現行の編成は適切な教育組織 となっている。 <2>専門コースの相互関連 各コースの関連性については、それぞれコースに適した教育内容で教育課程を編成して おり、相互の連関性にはあまり考慮が払われていないが、内外のデザイナーや企業人を招 いての特別講義などは各コースに共通で提供されることもある。 近年、中学校・高等学校の家庭科の男女共修に伴い、被服分野の学習時間が減少すると ともに、家庭科に関するコース(家政系)を設置している高等学校は減少している。本学 の入学者でも高等学校で服飾に関する学習を経験した学生の比率は低下している。このよ うな状況に対処するため、初年次に実習のサポート教育を行うなどして、基礎課程の期間 に学習差を解消する方策を講じている。 <3>教育組織とキャンパス なお、前掲の教育組織のキャンパスは目黒キャンパスと日野キャンパスの2つのキャン パスで構成されている。①③④⑤⑥のコースは目黒キャンパスで学習するが、日野キャン パスでは、7コースの内の「②先端ファッション表現コース」がコース必修科目の授業の 全てを展開しており、その他のコースでは、 「⑦ファッションプロダクトデザインコース」 が一部の授業を展開している。 また日野キャンパスはテニスコート・運動場を有しており、 体育の集中授業等でも利用されている。 (2)2-1の自己評価 杉野服飾大学服飾学部は、平成 14(2002)年に家政学部から服飾教育に特化した服飾学部 の名称に変更した。平成 20(2008)年7月に策定された杉野学園中長期計画においては、服 飾以外の新しい分野の教育組織の拡大は行わず、教育の質の向上を目指すことを長期的な 方針として定めている。服飾分野の教育組織としては、前述の「現状」で述べたように、 必要な分野を揃えたコース制となっており、 服飾大学としての機能を十分満たしている (繊 維研究などの服飾理工系分野の教育研究については、国立大学が中心としてその機能を担 。 当している) ファッション産業の課題となっている世界に通用するデザイナーの育成に関しては、学 部での教育を深化させる目的で平成 21(2009)年度に「ファッションデザイン専攻科」を新 設し、これによって学部段階での教育をさらに発展させて必要な人材を養成する組織が整 備されている。 1学部1学科における教育研究の基本的組織は、基礎課程と7つのコース制による専門 課程で、大学の使命・目的の達成に適した組織として編成され、全体として適切に統合さ れ、かつ緊密に連携されていると評価している。 各コースの学生数もコースの目的、性格に照らして適切な規模となっている(志望人数 の多い①モードクリエーションコースは4人の専任教員による4クラス編成である) 。 (3)2-1の改善・向上方策(将来計画) 大学の教育研究組織機能を高めるために大学院を設置することが望ましい。 「杉野学園中 長期計画」でも平成 24(2012)年度に照準を合わせている。しかしながら、教員スタッフを 12 杉野服飾大学 どのように選抜し、配置するかの問題等、実現までにはクリアしなければならない問題が ある。したがって、この課題は、中長期的展望の中で理事会を中心に大学自己点検評価委 員会等で検討を重ねていく。 2-1-② 大学院を有する場合は、その教育研究上の目的を達成するために必要な研究 科等の教育研究組織の規模、構成を有しており、適切に運営されているか。 該当なし 2-2.人間形成のための教養教育が十分できるような組織上の措置がとられていること。 《2-2の視点》 2-2-① 教養教育が十分できるような組織上の措置がとられているか。 2-2-② 教養教育の運営上の責任体制が確立されているか。 (1)2-2の事実の説明(現状) 本学では社会人としての教養・人間性の涵養のために教養教育を重視してきた。平成3 (1991)年の大学設置基準大綱化の後も、一般教養の教員を配置し、人文・社会科学系科目、 自然科学系科目、体育科目、外国語科目の各分野の領域を基本的に意識して後述の各分野 から科目を選択させる措置をとってきている。 教養教育科目は基礎課程の一部を形成している。杉野服飾大学に転換する前の杉野女子 大学時代までは、教養教育科目担当教員だけで組織される「教養教育委員会」が存在した。 現在は、教養教育だけの観点に偏りすぎないよう、領域を取り払い、専門課程との連携を 深め、全学的に教養教育を考える観点から「基礎課程連絡委員会」が教養教育を含めて運 営上の責任を負っている。 具体的には、 「基礎課程連絡委員会」は、FD 研究委員会が実施する「授業評価アンケー ト」とは別に、 「基礎課程アンケート」を実施している。学生によるアンケートから現状の 実態を知り、委員会内で分析し、報告書をまとめ年度末に学長に報告しており、内容によ っては直接学長に要望を提出する。将来構想についても委員会で検討している。ここで特 徴的なのは、教養系の科目検討だけではなく、基礎課程の服飾専門教育の実情を踏まえた 上での基礎課程教育の議論が重ねられているところである。したがって本学の「教養教育」 は、全学的な体制の下で、全学が一丸となってその推進を図ることを基本的な方針として いる。具体的な内容については、基準3で詳記する。 (2)2-2の自己評価 大学設置基準の大綱化による見直し以後、教養教育を単なる教養ではなく、社会人とし ての人間形成のための教養教育内容として位置づけている。本学では、もともと教養教育 と並行して専門教育の早期学習を位置づけてきており、現在は基礎課程の中に教養教育と 専門教育が開講されていてその形を継承してきたものである。教養教育の観点から「哲学」 「文学」 「心理学」 「文章表現」等の授業が運営されている。もちろん担当者によっては、 そのアプローチを学生の関心をよせる課題から授業に入る場合もあるが、あくまでも教養 教育として、社会人としての資質育成を目的とした内容で構成している。外国語に関して は、基礎課程内の教育の延長として、学長より本学の専門教育の関連である服飾(ファッ 13 杉野服飾大学 「ファッショ ション)界に繋がる言語教育の提案がなされた。平成 20(2008)年度からは、 ン英語」 、 「ファッションフランス語」 、 「アパレル実務英語特講」 、 「アパレル実務フランス 語特講」 、 「ワールドカルチャー」といった科目を開講し、専門性を意識した教育を実施し ている。 また「自己点検評価委員会」の議論から、学長の判断で平成 18(2006)年度より2年生全 員に「キャリアプランニング」を必修科目として設置した。これは単に就職活動のための 予備学習ではなく、学生の職業観・人生観の育成を目的とする科目である。今後の人生を どう生き抜くのか、そのためには自分自身をどう理解するのか、何を身に付けるのか、キ ャリアを就職だけではなく人生という観点から見つめ直し自ら学ぶ機会としている。 このように「基礎課程連絡委員会」の連絡協議、「自己点検評価委員会」による点検評 価、学長からの提案が統合される形で良好な体制が作られている。 (3)2-2の改善・向上方策(将来計画) 教養教育担当の教員が配置され、運営上の責任体制も確立しているが、教養教育は人間 教育としての広いすそ野をもっている。この観点では、授業ばかりでなく、行事、担任制 やオフィスアワー、クラスアワーなどの日常の接点での人間形成も広い意味での教養教育 として位置づけられる。 今日の複雑で変化のスピードが早い文明社会にあって、青年を支える人間教育を展開す るためには、青年の心理や抱えている問題、カリキュラムや教授法について深く研究する 必要がある。具体的には、社会化の訓練(初年次教育) 、職業生活への動機付けなどの課題 に取り組む。教養教育についても、必ず守り通す科目からフレキシブルに発展的転換して いく科目がある。今後も教育課程における科目設定や授業方法を検討・改善していく。 2-3.教育方針を形成する組織と意思決定過程が、大学の使命・目的および学習者の要 求に対応できるよう整備され、十分に機能していること。 《2-3の視点》 2-3-① 教育研究に関わる学内意思決定機関の組織が適切に整備されているか。 2-3-② 教育研究に関わる学内意思決定機関の組織が大学の使命・目的および学習者 の要求に対応できるよう十分に機能しているか。 (1)2-3の事実の説明(現状) 1)意思決定機関としての教授会と委員会 教育研究に関する学内意思決定機関は「教授会」である。 「教授会」は、学長・教授・准 教授・専任講師により構成され、学長または教授会が必要と認めた職員が出席している。 学則では、教授会の審議事項は、 <1>学則その他の規則の制定および改廃に関する事項 <2>教育課程に関する事項 <3>学生の入学・退学・転入学・編入学・再入学・除籍・休学・復学および卒業の認定 に関する事項 <4>学生の福利厚生・生活指導およびその身分等に関する事項 <5>その他学事に関する事項など重要事項 14 杉野服飾大学 と定めている。 月に一度開催される教授会は、 「講師」以上の教員から構成されるので、意見聴取、意見交換、 審議も全学的に実施され、全学的周知度もすばやく、大学の運営を円滑に推進できている。 教授会の定例的、一般的な案件については、各委員会で段階的、複眼的な検討を経なが ら審議し、学長、学部長、教務部長、教務事務部長、議長、副議長、学務課主幹で構成さ れる「教授会打ち合わせ会」に提案され、審議の上で教授会に議題提出される。 現在、重要な委員会と位置づけられているのは、 「大学自己点検評価委員会」である。構 成メンバーは、学長(理事長兼務) 、学部長、学生部長、FD 研究委員長、教務部長他、基 礎課程連絡委員会委員、コース責任者協議会委員、事務局長、教務事務部長によって構成 されている。全学の将来構想、本学の根幹となる教育内容に関わる案件を自己点検を踏ま えながら検討している。また、大学自己点検評価、認証評価の報告書を作成することをこ の委員会は責務としている。 学長と学部のもとに各種委員会が置かれている。各委員会の委員は学長から任命され、 必要な審議を行って学長・教授会に報告する。本学は小規模であるため、情報交換や意思 疎通が容易であり、委員会も課題に迅速に対応してきた。しかし、それがゆえにまた運営 が「慣習的」になるきらいもあった。これを改めるため、平成 21(2009)年2月に委員会規 程の整備を行った。委員会には、 「個別の委員会設置に関する規程により定める委員会」と 「杉野服飾大学各種委員会規程により定める委員会」 「独立した委員会等組織」がある。ま た年度末に各委員長が学長に報告する。 各委員会のカテゴリーと委員会は、以下の通りである。 <1>学園委員会として設置される委員会 「セクシュアルハラスメント防止対策委員会」 「個人情報保護委員会」 <2>個別の委員会設置に関する規程により定める委員会 「大学自己点検評価委員会」 「大学資格認定委員会」 「FD 研究委員会」 「教務委員会」 「教職委員会」 「学生サポート連絡委員会」 「コース責任者協議会」 以下は、個別の委員会設置に関する規程により定めるもので、大学・短大合同で行 う委員会である。 「大学・短大運営協議会」 <3>各種委員会規程に定める委員会 「入試委員会」 「基礎課程連絡委員会」 以下は、各種委員会規程で定めるもので、大学・短大合同で行う委員会である。 「研究奨励補助金審査委員会」 「学生募集対策実行委員会」 「キャンパス展示企画委員 会」 「紀要委員会」 「学報委員会」 「ホームページ委員会」 <4>独立した委員会等組織 「図書館運営委員会」 「博物館運営委員会」 15 杉野服飾大学 学長 教授会 (各種委員会規程に定める委員会) 入試委員会 研究奨励補助金審査委員会 学生募集対策実行委員会 紀要委員会 基礎課程連絡委員会 キャンパス展示企画委員会 学報委員会 ホームページ委員会 (個別の委員会設置に関する規程に より定められる委員会) 大学資格認定委員会 大学自己点検評価委員会 FD研究委員会 教務委員会 教職委員会 学生サポート連絡委員会 コース責任者協議会 附属機関 大学・短大運営協議会 図書館 図書館運営委員会 衣裳博物館 博物館運営委員会 2)意思疎通と学生の要望への対応 「機動力」は小規模大学のキーワードの一つである。小規模大学は、全組織を挙げて迅 速に行動しなければ、多くの課題に対処できない。教授会構成メンバーは、学長を含め 26 名の講師以上の教員で構成され運営されている。委員会の機動力に関しても、学内意思決 定の伝達は速やかに行われる。また教職員と学生との距離も近く(学年平均学生数約 303 名) 、学生指導に関しても、担任(1年生は主に教養教育担当教員、2年生は専門教育担当 教員、3・4年生は各コース担当教員)および事務職員が直接的に学生を指導できる。学 習者の要求には速やかに対応できる体制となっている。 基準4で説明するが、学生の要求は主に学生部が汲み上げている。自治会運営の大学側 のサポートは学生部が担っており、学生生活、大学行事、クラブ、学生会館、奨学金等の 窓口を通して、学生からの要望を聞き取っている。また、学生からの声は、担任、コース 主任、オフィスアワー、学生相談室を通して意思の疎通を図れる制度が確立されている。 さらに学習者の要求は、後に述べる「新入生実態調査アンケート」 、 「授業評価アンケート」 、 「コースアンケート」 「卒業時学生生活アンケート」などを通して各教員、各部署に伝えられ、 改善が図られている。 教職員の要望や意見については、内容によっては直接学長へ申し出ることも可能である が、多くの場合、学部長または各委員会の委員長がまずその責務を負っている。例えば教 務委員会には、次回教授会持ち越し案件や継続審議案件について毎回数件の意見が寄せら れ、教授会前に委員会で意見交換をする場合がある。このことによって教授会では円滑な 審議を進められるとともに、より多くの教職員の意見を聞き取ることができている。 (2)2-3の自己評価 教育研究に関わる学内意思決定機関の組織については、全体として整っており、適切に整 16 杉野服飾大学 備されていると評価している。特に、本学では学長が理事長を兼任しており、教授会にも常 時出席している。このことによって、理事会と教授会という最終決定機関としての連携がと れているといえる。また、委員会で審議する議題には、学長・学部長から提案される議題が あり、学長・学部長は多くの場合、議論に参加している。教育研究に関する事項について、 各委員が情報交換、検討、審議活動を行っており、必要な情報も共有できている。ただし委 員会の数は現代の高等教育機関とすれば必要不可欠な委員会ばかりであるが、教員によって は多数の委員会を兼任するケースもあり、その場合には負担を感じる委員会数になっている。 したがって役割分担に関しては、准教授以下の構成メンバーの役割を増やすことが課題とな ってくる。委員会の増加、委員の重複、会議開催日程の調整をどのように図るかが課題であ る。 学習者の要求に対応できるよう十分に機能しているかという点についても、担任制度が 機能しており、学生への対応も教務課を中心に直接的に学生に指導できる規模であり、学 習者・教員の要求に速やかに対応できる体制となっている。 また、学生からの声は、担任、コース主任、オフィスアワー、学生相談室を通しても吸 収する制度が確立されている。新入生実態調査アンケート、授業評価アンケート、コース アンケート、 卒業時のアンケートなどを通して各部署、 各教員に伝達され活用されている。 (3)2-3の改善・向上方策(将来計画) 今後は運営状況を踏まえて、学長が各委員会の責任者と協議し、引き続き教育研究における 学内意思決定を円滑に運営させて、学習者の要求に対応できるよう十分に機能させていく。 【基準2の自己評価】 1)組織編成 各教育研究組織は、本学園の建学の精神に基づき、その使命・目的を達成する適正な規 模を持ち、全体としても適切に統合され、かつ緊密に連携されている。 2)教養教育 教養教育については、専門教育とは別の目的をもった課程として「基礎課程」の中に組 織的に位置づけている。 3)意思決定 組織的意思決定については、学長・学部長、教授会、各種委員会が適切に関連を持ち、 迅速に意思決定を行っている。教育研究に関する事項の情報交換、検討、審議活動を行っ ており、学内の意思疎通がなされ、大学の使命・目的が意識され、学習者の要求に対応す る視点が絶えず保持されている。 ただし、委員会の数は、委員によっては負担を感じる委員会数になっている。したがっ て、准教授以下の構成メンバーの役割を増やすこと、委員会の整理・統合、委員の兼任度、 会議開催日程の調整などが課題となっている。 4)学習者の要求への対応 学生の要求に対応するために、クラスの受講者数を少なく抑えている。 「実験・実習」科 目、 「演習」科目については、その教育内容に照らして小規模になるが、講義科目について 17 杉野服飾大学 も、多数の履修者を抱える授業は複数クラス開講とし、教師と学生のコミュニケーション が出来るよう調整する努力をしている。 【基準2の改善・向上計画(将来計画) 】 1)大学院の設置 大学の教育研究組織機能を高めるために大学院を設置することが望ましい。「杉野服飾 大学中長期計画」でも平成 24(2012)年度に照準を合わせている。しかしながら、教員スタ ッフの問題等課題もある。理事会、大学自己点検評価委員会等で検討を重ねていく。 2)教養教育の展開 大学設置基準の大綱化以来、教養教育の内容・位置付けに関する議論、即ち教養教育の 理念・目標を大学教育全体の中でどのように実現するかについての検討の結果、特に専門 教育に向けての早期学習としての位置づけに関する議論があった。しかしながら、本学で は幅広く、総合的な判断力を身につけさせ豊かな人間性を涵養する、人間形成のための教 養教育内容として貫いてきている。教養教育については、必ず守り通す科目からフレキシ ブルに発展的転換していく科目がある。今後も教育課程における科目設定や授業方法を常 に教養・専門の教員が協同して、基礎課程連絡委員会や教務委員会で検討・改善していく。 3)委員会活動の整備 教育研究に関わる学内意思決定機関の組織については、全体として整っており、適切に 整備されていると評価している。ただし委員会数は、現代の高等教育機関とすれば必要不 可欠な委員会ばかりであるが、上記の「自己評価」で述べたような課題があるので、規程、 メンバー構成、運営形態等の点をまずは各委員会で検討する。 基準3.教育課程 3-1.教育目的が教育課程や教育方法等に十分反映されていること。 《3-1の視点》 3-1-① 建学の精神・大学の基本理念及び学生のニーズや社会的需要に基づき、学部、 学科又は課程、研究科又は専攻ごとの教育目的が設定され、学則等に定めら れ、かつ公表されているか。 3-1-② 教育目的の達成のために、課程別の教育課程の編成方針が適切に設定されて いるか。 3-1-③ 教育目的が教育方法等に十分反映されているか。 (1) 3-1の事実の説明(現状) 1)教育目的とカリキュラム編成 本学は、服飾に関する専門教育を行う単科大学である。したがって大学の教育上の使命 が直接学部の教育目的・目標につながっている。専門領域は家政系に属するが、衣食住を 包含した家政全般を教育研究する大学ではない。教職科目や学芸員養成科目も開講してい るが、教育研究のコアをなすものは服飾造形とこれに関連する専門領域である。本学の使 命と目的を効果的に実現するために、教育課程を前期2年間の基礎課程と後期2年間の専 門課程に分割し、基礎課程では専門科目(服飾関係科目・ライフスタイル関係科目)と教 養科目において必修科目と選択科目を開設し、 全学生に対して服飾関係の科目 41 単位の履 修を必修として課している。したがって本学の学生は、32 単位の選択必修科目の教養科目 18 杉野服飾大学 で幅広い教養を身に付けるとともに、全員が服飾造形の基本を身に付けた上で、専門課程 で学習することになっている。 本学の教育目的は、すでに述べたように「現在および未来の日本のファッション産業の 道を切り拓くチャレンジ精神をもって、芸術性・技術力と文化的教養に基づいた創造力を 養い、専門職業人として社会で自立する能力のある人材を送り出すこと」である。本学の 教育課程は、この目的を効果的に達成するよう設計され編成されている。 教育課程全体は1・2年次の基礎課程と3・4年次の専門課程からなるが、基礎課程で は、教養科目によって「一般的教養」を養い、服飾関係科目によって「芸術性・技術力」 を育成する。その基礎の上に立って、さらに専門課程で、創造力をもった専門職業人を養 成することを目指している。 基礎課程(1・2年次) 専門課程(3・4年次) ①モードクリエーションコース ②先端ファッション表現コース 服飾関係科目 ⇒ ③感性産業デザインコース 専門科目 ④アートファブリックデザインコース ⑤ファッション文化論コース 教養科目 ⑥ファッションビジネス・マネジメントコース ⑦ファッションプロダクトデザインコース 教職課程・学芸員課程 基礎課程の服飾関係科目は、本学のカリキュラムの中心をなす「ドレス構成論・実習」 「ドレーピング&パターンメーキング」 「ファッション画」などの実習科目を中心とした服 飾造形表現の基礎を徹底的に学ぶ教育課程となっていることが特徴である。基礎課程の2 年間で全学生が「服作り」に関することを実践して学ぶ。 専門課程では7つの専攻コースを設置して多角的に服飾造形とその周辺領域を学ぶ編成に なっている。各々のコースにはコースの目的、目標に従ったコース必修科目が設置され、基礎 課程同様、実践力を養うため実習科目を多く編成して教育を進めている。この服飾造形の領域 では、デザインを造形に表現することを要求される場合が多い。これに応えて専門課程でも、 造形の基礎になる素材の知識、構成(パターン・製図) 、縫製などの技法の習得に加えて、プ レゼンテーションなど社会で要求される実践的能力育成を目標にして教育編成をしている。 「学生のニーズ(要望) 」については、毎年度、入学直後に「新入生実態調査」を行い、 学生の進学動機を確認している。平成 20(2008)年度の調査によれば、本学への進学動機の 1、2は「服飾関係の企業で働きたいから」 (54%) 「服を作るのが好きだから」 (28%)で ある。本学のカリキュラムが服飾への特化を鮮明にし、産業界との連携を重視しているの は、このような学生の要望に対応している。 2)基礎課程と専門課程の教育目的・目標・編成方針 <1> 1・2年基礎課程 本学の基礎課程は、「人間として必要な教養」と、「将来服飾関係の職業につくために必要な専 門の基礎知識・技術」を習得するための教育組織である。言い換えれば、教養科目と専門基礎教 育科目(服飾関係科目・ライフスタイル関係科目)の二つの目的をもった課程である。 -教養科目- 設置されている科目には、目的別に5つの種類がある。 <ⅰ>一般: 「心理学」 「経済学」 「化学」など、人文・社会・自然科学分野について、広く 19 杉野服飾大学 学問的に分析する見方を学ぶことを目的にした科目。 <ⅱ>「体育」 :身体運動を通じて、身体の制御を訓練し、集団スポーツを通じて非言語的コミュ ニケーション能力を育てるとともに、生涯スポーツの基礎を学ぶことを目的にした科目。 <ⅲ>総合: 「文章表現」 「情報基礎」など、特定の分野に限定されない基本的学力を培う ために設定された科目。 <ⅳ>国際: 「言語と服飾文化」 「日本文化・日本事情」など、国際化に対応する知識を獲 得するための科目。 <ⅴ>外国語:外国語を習得するための科目で、英語、フランス語、中国語といった言語別に 置かれた科目と、ファッションやビジネスの現場への応用を目的に設定された科目。 -服飾関係科目・ライフスタイル関係科目- 基礎課程における専門科目のほとんど全てが服飾関係の科目である。設置されている科 目は目的別に5つの種類がある。 <ⅰ>服飾学全体の展望を得る: 「服飾学原論」 「ファッション論」 「衣服材料学」 。 <ⅱ>服飾造形の基本技法を学ぶ:「ドレス構成論・実習」「ドレーピング&パターンメーキ ング」など。 <ⅲ>服飾造形の基盤になる造形技法を学ぶ: 「色彩演習」 「ドローイング」 「色材演習」 「フ ァッション画」 「画像設計演習」など。 <ⅳ>服飾産業で働くための展望を得る: 「キャリアプランニング」 。 <ⅴ>資格課程に対応する科目(ライフスタイル関係科目) : 「食物学」 「保育学」など。 これらは、 「ドレス構成論・実習」 「ドレーピング&パターンメーキング」という中心と なる科目を取り巻くようにカリキュラム構成されている。服飾造形を学ぶ上で必要な知 識・技術・感性に関する授業を、講義・演習・実習などの授業形態によってバランスよく 学べるように科目の内容・授業方法が配置してある。 <2>3・4年専門課程 服飾造形とその関連分野で働くために必要な知識・技術・感性を身につけ、服飾産業界 が求める能力を備えた人材の育成を目指す。専門課程には7つのコースがある。 各々のコースにはコースの目的、目標に従ったコース必修科目が設置(後述)され、実践 力を養うため実習科目を多く編成して教育を進めている。この服飾造形の領域では、デザイ ンを造形に表現できることが要求される場合が多い。的確な造形を表現する素材、構成(パ ターン・製図) 、縫製など、社会で要求される実践的能力育成のための教育編成をしている。 それぞれのコースの教育目的と目標は次の通りである。 表 3-1-1 専門課程 コース別教育目的と目標 コース名 ①モードクリエーションコース ②先端ファッション表現コース 目 的 目 標 服飾造形表現に必要とされる知識・ 技術・感性を修得し、イメージを的確 に造形として表現・判断できる能力 の育成を目的とする。 ファッション造形を他者に伝えていく ための表現技法を修得することを目 的とする。 ファッション産業の現場で活躍できる デザイナー、パタンナー、縫製技術士 などの人材育成を目標とする。 20 映像・画像や雑誌などの制作技術を 修得し、ファッションイメージを表現で きるファッション雑誌エディター、CM ディレクターアシスタント、ファッション ショー企画などの人材の育成を目標 とする。 杉野服飾大学 ③感性産業デザインコース ④アートファブリックデザインコース ⑤ファッション文化論コース ⑥ファッションビジネス・マネジメ ントコース ⑦ファッションプロダクトデザイン コース ファッションの色や素材、人体に おけるサイズ等を最も良い状態へ 改良しながら個々の人体に対応し て、パターンを開発できる能力の 育成を目的とする。 服飾素材を理解し、技術を駆使し て創造的なテキスタイルデザイ ン・設計のできる能力の育成を目 的とする。 服飾文化に関する思考を文章表現 できる能力の育成を目的とする。 ファッションビジネスにかかわる 企画創作能力・企画作成技術力・ プレゼンテーション能力の育成を 目的とする。 ファッションプロダクトの分野で アイディアを創出する豊かな発想 力、さらにそのアイディアを具体 的な形にする造形能力を養うこと を目的とする。 3D 計測機を使用した人体計測お よび CAD による個々の人体に対応 したパターン開発が提案できるパ タンナーの人材の育成を目標とす る。 創造的なテキスタイルデザイン・設計 をし、制作を通してイメージを素材で 表 現 で き る PMD ( Product Merchandiser)の育成を目標とする。 服飾文化についての知識と文章表 現能力をもとに、ファッションジャ ーナリスト、出版業などで活躍でき る人材の育成を目標とする。 ファッションビジネスを企画・提案 でき、マネジメント(企業等の経営 管理)能力を身に付けた人材の育成 を目標とする。 バッグ、帽子、シューズ等ファッシ ョン関連グッズのデザインなど、プ ロダクトデザイナーとして広く社 会に受け入れられる人材の育成を 目標とする。 3・4 年次の専門課程のコース選択は、学生の希望による。学生が内容を理解するため に、基礎課程2年次の7月、10 月にコース選択ガイダンスを開催し、10 月下旬にコース別 授業の実施教室において授業内容に関する質問時間を設定し、11 月4週間の授業見学など を経て、最終的に学生自らがコース選択するシステムを構築している。 少子化全入時代の現状や経済不振などの社会情勢、グローバル化を踏まえ服飾を取り巻く環 境は厳しさを増している。基本となる技術力の強化(デザイン、構成・造形表現、CAD、CG 活 用など)によって教育力を付け、特に専門課程のモードクリエーションコース、感性産業デザ インコースなどの服飾造形を教育の目標としているコースに、平成 20(2008)年から「デザイ ナー養成強化特別ゼミ」を開講した。さらに平成 21(2009)年からはデザイナー・パタンナー 育成のための専攻科も開設した。これらの取り組みを着実に発展させている。 さらに本学の服飾学部では、中学校・高等学校の「家庭」の教員を養成する教職課程と 博物館学芸員の資格を取得し得る学芸員課程を開設して養成に努めている。教職課程は昭 和 40(1965)年に課程認可を受け、学芸員課程は昭和 48(1973)年に開設した。資格課程につ いては、時間割上は全学生(全コース)が履修できるよう考慮している。 2)教育方法 <1>基礎課程 1・2年生の基礎課程(服飾関係科目・教養科目)では、入学者間で入学前の学習機会 の差から生じる学生の知識・技術の能力差・学習経験差が見られる。そこで外国語では入 学時の実態調査の結果を活かして習熟度別学習体制をとっている。現行では適切なクラス 環境の中で教育が実践できている。また「実験・実習」科目、 「演習」科目についても小規 模なクラス単位(約 40 人)で実施しており、実技に関わる授業への受講者人数に配慮がで 21 杉野服飾大学 きている。 ただし、講義系の科目については、教室サイズの問題から、多数の履修者を抱える授業 が生じた。そこで学長の判断から、一定規模を超過する科目では複数開講を実現した。現 在も専任教員の中で超過クラスが見えるが、一方で授業内容や教員の力量から非常勤講師 に任せられない授業が多いのも実情である。 <2>実技個別指導 教育目標を達成する教育方法として本学が重視しているのは、個別指導である。授業形 態別の科目分類では、講義科目、演習科目、実験・実習・実技科目であり、後者の二種類 の科目の割合が高い。これらの科目は、技術の習得を目的にしているため個別指導が必要 である。そのため各科目で助手を配置して個別指導の効果を上げるようにしている。 <3>電子教材の活用 「ドレス構成論・実習」のデジタル教材実習室にはスクリーン、プロジェクター、ノー トパソコン、書画装置を設置し、学生が視覚的に理解し円滑に授業を行えるような環境を 整えている。授業では従来のテキストの他に電子教材を使用している。この教材は基礎課 程で学ぶ服飾造形の内容を、動画、CG 映像、静止画などで表したもので、CG 映像、静 止画でパターンの考え方や制作イメージを確認し、動画で縫製のプロセスと技法を確認し ながら、何度でも繰り返し見ることができる。 授業で使用している電子教材は、テキストだけでは得られなかった理解を得ており、自 学自習の際にも大変役立っている。電子教材についてのアンケート(1・2年対象、平成 20(2008)年度 12 月調査)の結果は、電子教材を使った授業はわかりやすいが 55%、電子 教材をもっと使用したいが 54%と、利用要求度の高い満足を示す結果となっている。ただ、 制作においての企画、デザイン、プレゼンテーションなどの感性や表現力の育成は、教員 の指導に拠るところである。 <4>産学協同 産学協同(コラボレーション)は、教育の一環として早くから取り組んでいる授業であ る。専門課程のモードクリエーションコース、感性産業デザインコース、ファッションビ ジネス・マネジメントコース、ファッションプロダクトデザインコースで実施している。 詳細については、後述する。 3)編成方針の公表 このカリキュラム(教育課程)編成方針や教育目標は、 「オープンキャンパス」 「大学案 内」 「大学ホームページ」によって概要が学外に公表され、在学生には「履修便覧」 「入学 時オリエンテーション(ファーストステップ IN SUGINO) 」の記述によって伝えられて いる。さらに、入学式における学長の式辞、教務課による入学時の「オリエンテーション」 、 「2年次における専門課程コース選択説明会」によって口頭でも詳しく説明されている。 (2)3-1の自己評価 本学は服飾の単科大学として主に服飾造形に関する実習科目を多く設置し、造形表現 (表現技術教育)について専門性が高いことを特徴としている。教育の目的が明確で、教 育課程の目的実現のために十分配慮した科目構成となっている。建学の精神を踏まえ、建 22 杉野服飾大学 学以来今日に至るまで、社会・産業界のニーズに呼応しながらカリキュラム構成や内容を 調整し、人材の育成を果たしていると言える。 基礎課程(教養科目)では、教養科目の中でも履修が多い外国語の英語で、入学時の実 態調査の結果を活かして習熟度別学習体制をとっている。現行では適切なクラス環境の中 で教育を実践できている。また「実験・実習」科目「演習」科目についても小規模なクラ ス単位で実施しており、実技に関わる授業への受講者人数に配慮ができている。 基礎課程(服飾関係科目)では1・2年次の全学生が同じカリキュラムを学び、服飾造形 の基礎的な知識と技術を身に付ける内容であるが、高等学校の家庭科の被服の授業が減少 していること、入学時に明確な目的意識を持たない学生が増加していること、学生の学習 意欲が変化していることなどから、学業を遅滞する学生や進路を再検討する学生が生じて いる。また、実習科目は1単位を 45 時間として換算しているために時間割が過密になって いること、学生の授業による拘束時間が長いことなどの課題はある。 しかしながら、本学の特徴は、基礎課程における中心科目である「ドレス構成論・実習」 「ドレーピング&パターンメーキング」 「ファッション画」などの服飾を造形表現するため に必要な知識・技術を徹底的に学べることである。したがって専門課程での7つの専門コ ースは、基礎課程で全員が「服作り」を経験していることを前提として、それぞれの専門 教育を展開している。これが本学の特徴的な教育課程であると評価している。 本学の教育課程は、大学の理念や教育目的を反映した編成になっており、実技科目では それに相応しい方法も採用されている。また、この方針は、各種印刷メディア、インター ネットによって学外や受験者に伝えられている。この公表の点では基本的に欠落している ことは見当たらない。 (3)3-1の改善・向上方策(将来計画) 平成 14(2002)年度の組織改革から、前回の自己点検評価を経て、教育課程の内容の改善 を行ってきたが、教育内容が学生のニーズに応えているか、社会のニーズに合った人材の 育成をしているかなど、不断の点検評価を行うことが必要である。自己点検評価委員会を 中心として今後も点検評価を継続し、改善を図っていく。 3-2.教育課程の編成方針に即して、体系的かつ適切に教育課程が設定されていること。 《3-2の視点》 3-2-① 教育課程が体系的に編成され、その内容が適切であるか。 3-2-② 教育課程の編成方針に即した授業科目、授業の内容となっているか。 3-2-③ 年間学事予定、授業期間が明示されており、適切に運営されているか。 3-2-④ 単位の認定、進級および卒業・修了の要件が適切に定められ、厳正に適用さ れているか。 3-2-⑤ 履修登録単位数の上限の適切な設定など、単位制度の実質を保つための工夫 が行われているか。 3-2-⑥ 教育の内容・方法に、特色ある工夫がなされているか。 (1)3-2の事実の説明(現状) 1)基礎課程と専門課程の授業編成(視点3-2-① 視点3-2-②) 23 杉野服飾大学 表の3-2-1は、本学の選択・必修の区分、卒業要件単位数を示している。 表3-2-1 卒業要件に関する単位の内訳 (2009年度生) 授業科目の区分と履修方法 服飾関係 修 得 単 位 数 41 必 修 ① 専 門 科 目 コース名 服飾関係 服飾関係 ライフスタイル関係 ② ③ ④ コース別必修 選 択 27 28 28 27 ⑥ ⑦ 一 般 体 育 総 合 国際関係 選 択 外 国 語 必 修 27 28 28 24 23 23 23~24 24 23 23 24 小計 教 養 科 目 ⑤ モードクリエー 先端ファッション 感性産業 アートファブリック ファッション ファッションビジネス ファッションプロダクト ションコース 表現コース デザインコース デザインコース 文化論コース マネジメントコース デザインコース 92 24 8 *英語・フランス語・中国語のいずれかⅠ~Ⅳの単位を修得すること 合計 124 -基礎課程(1・2年生)- 前述したように、本学では「基礎課程(服飾関係科目・ライフスタイル関係科目・教養科目) 」 と「専門課程」の2カテゴリーを基本とした教育方針を立ててカリキュラムを構成している。 基礎課程(教養科目)では、表3-2-2の科目を設けている。 表3-2-2 基礎課程(教養科目) 授業科目名 学年・授業形態 単位数 哲学A・B 1・2年 講義 各2 心理学A・B 1・2年 講義 各2 文学 1・2年 講義 2 日本美術史 1・2年 講義 2 西洋美術史 1・2年 講義 2 憲法 1・2年 講義 2 ジェンダー論A・B 1・2年 講義 各2 経営学入門 2年 講義 2 経済学 1・2年 講義 2 社会福祉学A・B 1・2年 講義 各2 化学A・B 1・2年 講義 各2 環境科学A・B 1・2年 講義 各2 考古学概論Ⅰ・Ⅱ 3年 講義 各2 授業科目名 体育A・B 文章表現 ビジネス基礎 講読演習 情報基礎 言語と服飾文化 学年・授業形態 単位数 1・2年 演習 各1 1年 講義 2 3年 講義 2 2年 講義 2 1年 講義 2 3・4年 講義 2 東南アジア考古学特講Ⅰ・Ⅱ 4年 演習 各1 日本文化・日本事情 1・3年 講義 2 授業科目名 英語(総合)Ⅰ・Ⅱ 基礎英会話Ⅰ・Ⅱ ワールドカルチャーⅠ・Ⅱ フランス語(総合)Ⅰ・Ⅱ フランス語(会話)Ⅰ・Ⅱ 中国語(総合)Ⅰ・Ⅱ 中国語(会話)Ⅰ・Ⅱ 英語(総合)Ⅲ・Ⅳ 実用英語Ⅰ・Ⅱ ファッション英語Ⅰ・Ⅱ フランス語(総合)Ⅲ・Ⅳ ファッションフランス語Ⅰ・Ⅱ 中国語(総合)Ⅲ・Ⅳ 中国語(会話)Ⅲ・Ⅳ 日本語Ⅰ・Ⅱ 学年・授業形態 単位数 1年 演習 各1 1年 演習 各1 1年 演習 各1 1年 演習 各1 1年 演習 各1 1年 演習 各1 1年 演習 各1 2年 演習 各1 2年 演習 各1 2年 演習 各1 2年 演習 各1 2年 演習 各1 2年 演習 各1 2年 演習 各1 1・3年 演習 各2 アパレル実務英語特講Ⅰ・Ⅱ 3・4年 演習 ワールドカルチャーⅢ・Ⅳ 3・4年 演習 アパレル実務フランス語特講Ⅰ・Ⅱ 3・4年 演習 各1 各1 各1 教養科目は、<1>学術に対する一般的理解力、<2>社会人としての常識、<3>自己健 24 杉野服飾大学 康管理、<4>国際化への対応能力、を教育目標にしている。カリキュラム上では、<1>に ついて、学力の基礎として「文章表現」 「講読演習」を設置し、また、学術の知識に偏りが生じ ないように、人文科学系、社会科学系、自然科学系の科目を配置している。さらに今日の環境 問題の重要性を意識し、 「環境科学」と「化学」を置いている。<2>については、職業人にな る準備として「ビジネス基礎」 「経営学入門」を設置、ならびに情報化に対応して「情報基礎」 などの科目を設置している。<3>については「体育」を設置、<4>については、 「英語」 、 「フ ランス語」 、 「中国語」といった外国語に加え「言語と服飾文化」などの国際教養科目を置いて いる。 具体的には、教養科目は人間形成の一環として、また幅広く深い教養および総合的な判断力を 培い、豊かな人間性を涵養することを目的として、現在は一般・体育・総合・国際関係および外 国語の科目を開講している。履修に当たっては、卒業要件として 32 単位以上をすべて選択必修 として履修させている。内訳は、一般・体育・総合・国際関係科目を合計 24 単位以上とし、外 国語を8単位以上履修させている。主として1・2年次での履修となるが、総合・国際関係科 目の一部については、3・4年次で履修できるようにも配置してある。外国語の重要性は当然 であり、英語、フランス語または中国語のうちいずれか一科目8単位以上を1・2年次で選択 するように指導している。この3言語については、本学の専門教育の延長にある服飾(ファッ ション)界に繋がる言語とも考えている。平成 20(2008)年度からは、「ファッション英語」、「ファ ッションフランス語」 、 「アパレル実務英語特講」 、 「アパレル実務フランス語特講」、「ワールド カルチャー」といった科目を開講し、専門性を意識した教育を実施している。 留学生には、平成 17(2005)年度より全員の外国人留学生(編入生も含む)に「学内日本語実 力テスト」を実施し、その結果に応じて履修指導を行っている。具体的には、実力テストの結 果に応じて、<ⅰ>「日本語Ⅰ・Ⅱ(4単位) 」 「日本文化・日本事情(2単位) 」を含めて外国 語8単位を履修する者、<ⅱ>「日本文化・日本事情(2単位) 」を含めて外国語8単位を履修 する者、に区別している。ただし、実力テストの結果、 「日本語」を修得する必要がない者も本 人の希望に応じて「日本語Ⅰ・Ⅱ(4単位) 」を履修することができるとしている。 教養科目には上級学年への連結を考慮して、教職課程・学芸員課程予定履修者にはその 後の課程履修上の弊害が生じないような履修指導を行っている。 基礎課程(服飾関係科目)では、表3-2-3の服飾関係の「専門必修科目」と表3― 2-4の「専門選択科目(服飾関係) 」を設けている。 表3-2-3 専門必修科目 授業科目名 服飾学原論 ドレス構成論・実習ⅠⅡⅢⅣ ドレーピング&パターンメーキングⅠⅡⅢⅣ ファッション画ⅠⅡⅢⅣ 衣服材料学 ファッション論ⅠⅡ 色彩演習 ドローイングⅠ 画像設計演習ⅠⅡ CADパターンメーキング アパレルデザイン論 アパレル素材論 ドレス構成論・実習Ⅴ(自由制作) 色材演習 キャリアプランニング 学年・授業形態 1年 講義 1・2年 実習 1・2年 実習 1・2年 実習 1年 講義 1年 講義 1年 演習 1年 実習 1・2年 演習 2年 演習 2年 講義 2年 講義 2年 実習 2年 演習 2年 講義 25 単位数 2 各3 各1 各1 2 各2 1 1 各1 1 2 2 1 1 2 杉野服飾大学 表3-2-4 専門選択科目 授業科目名 現代デザイン論 ファッション販売論 流行論 ドローイングⅡ 和服構成論・実習ⅠⅡ 西洋服飾文化史 日本服飾文化史 衣服管理 ファッションビジネス論 計数管理(簿記・会計) ユニバーサルデザイン論 繊維ファッション産業構造論 写真表現演習 立体造形演習 学年・授業形態 1年 講義 1年 講義 1年 講義 2年 実習 2年 実習 2年 講義 2年 講義 2年 講義 2年 講義 2年 講義 2年 講義 2年 講義 2年 演習 2年 演習 単位数 2 2 2 1 各1 2 2 2 2 2 2 2 1 1 基礎課程(服飾関係科目)において中心となる「ドレス構成論・実習」の授業では、基 本的な製図と縫製を学んだ後、応用として作品制作を行っている。1年次前期の「ドレス 構成論・実習Ⅰ」では基礎製図と基礎縫製を学んだ後、構成を理解しやすいスカートを学 習する。製図と基本形のスカートの制作により構成と縫製方法を学習した後、オリジナル デザインによるスカート制作を行う。同様に1年次後期の「ドレス構成論・実習Ⅱ」では ブラウス、2年次前期「ドレス構成論・実習Ⅲ」ではワンピースと子供服、2年次後期の 「ドレス構成論・実習Ⅳ」ではジャケットとパンツと、各アイテムについて段階的に学習 する。作品制作ではデザイン考案、パターンメーキング、トワル検討、パターン修正、素 材選定、実物検討、縫製、プレゼンテーションの流れの中で服飾造形のプロセスの理解と 表現技法を身に付け、デザイン力、製図力、構成力を高めることを目標としている。 導入教育として、入学時のオリエンテーション期間中に専門業者によるミシン講義を行 っている。 これは服飾造形に欠かせない縫製機器を正しく理解するための3時間の講義で、 概論、直線ミシン実習、ロックミシン実習で構成されている。 「ドレス構成論・実習」のデジタル教材実習室にはスクリーン、プロジェクター、ノートパ ソコン、書画装置を設置し、学生が視覚的に理解し円滑に授業が行えるような環境を整えてい る。授業では従来のテキストの他に電子教材を使用している。この教材は 21 頁でも記述した ように、動画、CG 映像、静止画などで表したもので、CG 映像、静止画でパターンの考え方 や制作イメージを確認し、動画で縫製のプロセスと技法を確認しながら、何度でも繰り返し見 ることができる。 -専門課程(3・4年生)- 各コースによって必修科目(27~28 単位)が設定されている。 各コースの必修科目と編成方針は以下の通りである。 26 杉野服飾大学 ①モードクリエーションコース 科目名 学年 前期・後期 授業形態 単位 3 前期・後期 実習 各4 ドレーピング&パターンメーキングⅤⅥ 3 前期・後期 実習 各1 アパレルCADⅠ・Ⅱ 3 前期・後期 演習 各1 ファッション画Ⅴ・Ⅵ 3 前期・後期 実習 各1 アパレル企画Ⅰ・Ⅱ 3 前期・後期 演習 各1 学内コンクール作品制作 3 後期 実習 1(集中) ファッションクリエーションⅠ・Ⅱ ドレーピング&パターンメーキングⅦ 4 前期 実習 1 モードクリエーションコース卒業制作Ⅰ 4 前期 実習 4 モードクリエーションコース卒業制作Ⅱ 4 後期 実習 4 ファッション画Ⅶ・Ⅷ 4 前期・後期 実習 各1 モードクリエーションコースは創始者の意志を繋ぎ、大学設立当初から設けられている コースである。学年の約3分の1に当たる学生が選択し、アパレル企業のデザイナーやパ タンナー、ブランド設立など、ファッション(アパレル)業界の第一線で活躍することを 目指す学生に必要な知識・技術の修得に配慮した科目設定になっている。また唯一、複数 教員によるクラス編成(1学年4クラス)がなされ、各教員の特徴を保持しつつ、本学の 服飾造形教育システムの伝統を維持した教育が実施できるよう編成されている。 3年次では服飾造形表現技法と制作プロセスによって造形することを学び、さらにデザ イン力を加味して自分のイメージを具現化できるように配慮した学習内容で授業を展開す る。また応用力の育成として産学コラボレーションや「学内コンクール作品制作」の集中 授業とそこで制作された作品を評価する審査会に、ファッション業界の第一線で活躍して いる人材を学外評価員として招いてビジネスの視点からも意見を聞くなどしている。4年 次は3年次に学習したことを基礎に自らデザインを考案し、作品制作を行い、ファッショ ンショー形式によるプレゼンテーションを毎年行っている。 ②先端ファッション表現コース 科目名 学年 前期・後期 授業形態 単位 先端ファッション表現演習Ⅰ・Ⅱ 3 前期・後期 演習 各2 ファッションイメージ実制作Ⅰ・Ⅱ 3 前期・後期 実習 各3 空間演出演習 3 後期 演習 1 ドローイングⅢ・Ⅳ 3 前期・後期 演習 各1 ファッションエディトリアルデザインⅠ・Ⅱ 3 前期・後期 演習 各2 実習 1(集中) 演習 1 学内コンクール作品制作 3 先端ファッション表現演習Ⅲ 4 後期 前期 ファッションイメージ実制作Ⅲ 4 前期 実習 3 ファッションエディトリアルデザインⅢ 4 前期 実習 2 先端ファッション表現コース卒業制作 4 実習 4 後期 先端ファッション表現コースは、ファッションイメージを映像・画像や雑誌などの制作技術 を習得し、その技術を使って表現できる能力を身に付けた人材の育成を目指している。3年次 では、ファッションを具体的な造形で表現する科目と、イメージを捉えてカメラやビデオ・ PC などで画像・映像制作する科目とに分けられる。その双方の科目の授業展開は絵コンテ(描 画)によるプロセスシミュレーションを描き、ツール(カメラ、CG、ビデオなど)を使用し てイメージを視覚的に捉えた作品を制作する。4年次では3年次で学習したことを基礎とし、 27 杉野服飾大学 自らテーマを決め、リサーチした情報によってオリジナルデザインを描き、そのデザインにし たがって1冊の雑誌を完成させることが卒業制作の課題である。 そのプロセスで、 情報の収集、 画像処理、エディトリアルデザイン、冊子にする技法など、一連の学修によってストーリー性 のある表現ができる能力を育成するためのカリキュラム編成になっている。 ③感性産業デザインコース 科目名 学年 前期・後期 授業形態 単位 感性産業デザインⅠ・Ⅱ 3 前期・後期 実習 各3 感性デザイン・CGⅠ・Ⅱ 3 前期・後期 実習 各1 CAD&3D演習Ⅰ・Ⅱ(2007年度生より開講) 3 前期・後期 演習 各2 前期 人体工学・計測・設計技術(2007年度生より開講) 3 演習 2 カスタマイジング・デザイン構成論・実習(2007年度生より開講) 3 後期 講義 2 現代ファッションデザイナーズ論Ⅰ・Ⅱ 3 前期・後期 講義 各2 学内コンクール作品制作 3 後期 実習 1(集中) バーチャルデザイン構成論・実習 4 前期 実習 3 CAD&3D演習Ⅱ(2006年度生用) 4 前期 演習 2 感性産業デザインコース卒業制作 4 実習 4 後期 感性産業デザインコースは、人体を3D計測機で測定し、精緻な測定値を活用し、CAD を使って個々人の体型に適したパターンを描き、そのパターンによって服飾造形提案がで きる人材の育成を目標としている。3年次では3D計測器や CAD を駆使して、自由に人 体に合ったパターンを作成するトレーニングを二分の一ボディを使って繰り返し行う。そ の過程において人体や素材特性の相違などによるパターンの差異を学ぶ。4年次では3年 次に学習したことを基礎に自らデザインを考案し、5点以上のシリーズ作品を制作するこ とを卒業の課題としている。そのことにより、アパレル企業でパタンナーとして活躍でき る人材の育成を目指したカリキュラム構成になっている。 ④アートファブリックデザインコース 科目名 学年 素材設計論 3 前期・後期 前期 授業形態 単位 講義 2 素材分析演習 3 後期 演習 2 画像表現演習Ⅰ・Ⅱ 3 前期・後期 演習 各2 アートマテリアルⅠ・Ⅱ 3 前期・後期 実習 各3 ニッティング(ニットCAD) 3 前期 演習 2 ダイイングテクニック(染)Ⅰ・Ⅱ 3 前期・後期 実習 各2 テキスタイルデザイン(織)Ⅰ・Ⅱ 3 前期・後期 実習 各2 学内コンクール作品制作 3 後期 実習 1(集中) 素材設計演習 4 前期 演習 1 アートファブリックデザイン(含CG) 4 前期 実習 4 アートファブリックデザインコース卒業制作 4 実習 4 後期 ※選択 1週間「産地見学研修旅行実施」 アートファブリックデザインコースは服飾素材「織物」 「ニット」 「染色」の制作を通して設 計理論を学び、社会のニーズに合ったテキスタイルの創造、商品企画・設計のできる人材の育 成を目指している。カリキュラムも、デザイン・設計・制作の一連の流れによって服飾素材に 関する知識、技術、表現方法などが育成される編成になっている。 4年次では3年次で学習したことを基礎とし、卒業制作を行う。作品はシリーズで3作 28 杉野服飾大学 品とし、自らのテーマにしたがってデザイン、設計、制作とポートフォリオの制作を課し ている。そのことによって素材に関する知識、技術、応用力を身に付け、アパレル産業お よび周辺領域の産業で活躍できる人材の育成を目的にしたカリキュラム編成になってい る。 ⑤ファッション文化論コース 学年・授業形態 単位 西洋服飾文化史演習 3年・演習 1 日本服飾文化史演習 3年・演習 1 ファッション比較文化論Ⅰ・Ⅱ 3年・講義 各2 染織史 3年・講義 2 20世紀モード 3年・講義 2 服飾資料研究Ⅰ・Ⅱ 3年・演習 各1 ファッションプレゼンテーション演習 3年・演習 2 ファッションジャーナリズム論 3年・講義 2 卒業論文前講 3年・講義 2 学内コンクール作品制作 3年・実習 1(集中) アーバンファッション論 4年・講義 2 ファッション文化論コース卒業論文研究 4年・演習 2 ファッション文化論コース卒業論文 4年・演習 4 科目名 ファッション文化論コースでは、講義科目を多く設置したカリキュラム構成になってい る。主に「西洋服飾文化史演習」 「日本服飾文化史演習」 「染織史」 「20 世紀モード」など の歴史を学ぶ科目と「ファッション比較文化論Ⅰ・Ⅱ」 「ファッションジャーナリズム論」 などの論拠を学ぶ科目などである。3年次後期の「卒業論文前講」で各自の卒業論文テー マを決定し、4年次の「卒業論文研究」を通じ一年かけて卒業論文を作成する。この過程 において学生は自らの服飾関連テーマに関する知識と理解を深めるとともに、論理的思考 を養うことを目的としたカリキュラム編成になっている。 ⑥ファッションビジネス・マネジメントコース 科目名 学年・授業形態 グローバル・ビジネス論 3年・講義 2 ブランドマネジメント論 3年・講義 2 商品知識学 3年・講義 1 生産管理論 3年・講義 2 小売業論 3年・講義 2 コミュニケーション論 3年・講義 2 産業心理学 3年・講義 2 単位 マネジメント戦略論 3年・講義 2 ファッションマーチャンダイジング実習(産学連携) 3年・実習 4 1(集中) 学内コンクール作品制作(産学連携) 3年・実習 グローバル・マーケティング論Ⅰ・Ⅱ 3年・4年・講義 各1 ファッション・マーケティング論Ⅰ・Ⅱ 3年・4年・講義 各1 卒業論文・制作(①企業研究、②卒業論文) 4年・実習 29 4 杉野服飾大学 ファッションビジネス・マネジメントコースは、ファッションビジネスの企画・提案を 行い、マネジメント(企業等の経営管理)能力を身に付けた人材を育成することを目的と したカリキュラム編成となっている。3年次ではファッション・マーケティングの現況、 商品知識、小売業、それらを展開したグローバル・ビジネスなどを講義形式で学ぶ。さら に特徴的な授業形態として産学コラボレーションをあげることができる。3年次ではバー チャルカンパニーを設立し、グループで企画・提案することを学習する。4年次において は3年次に学んだことを基礎とし、単独でビジネス企画・提案することを卒業課題として いる。それらの過程において、理論(講義)と実践(産学コラボレーション実習)の両面 で実践力の育成ができるカリキュラム編成となっている。産学コラボレーションを行った 企業名と内容は以下の通りである。 * 産学コラボレーションを行った企業名と内容 企業名 内容 四国タオル工業組合(今治タオル) タオル素材を使った商品企画 清原㈱ 服飾副資材に対する新提案 ㈱エム・シー・ファッション(EDWIN) ジーンズを使ったリメイク企画 公大㈱ 寝具の商品開発 ㈲クレールモンド ヤングアパレルの商品企画 ㈱神戸レザークロス 皮革素材の商品開発 ⑦ファッションプロダクトデザインコース 科目名 学年・授業形態 プロダクトデザイン論 3年・講義 2 プロダクトデザイン史 3年・演習 1 色彩演習(広告) 3年・演習 2 カラーコーディネート演習 3年・演習 2 リテールマーケットリサーチ演習 3年・演習 2 ファッションプロダクトデザインⅠ・Ⅱ 3年・演習 各4 ファッションプロダクトデザインⅢ 4年・演習 ファッションプロダクトデザインゼミⅠ・Ⅱ 3年・4年・演習 学内コンクール作品制作 3年・実習 1(集中) ファッションプロダクトデザインコース卒業制作 4年・実習 4 単位 4 各1 ファッションプロダクトデザインコースでは、社会的なニーズに対応し、ファッション プロダクト製品のデザイン、商品企画、トレンド情報発信、制作に関わる人材の育成を目 的としたカリキュラム編成となっている。3年次ではファッションプロダクトデザインへ の基礎として、デザインの手法、描画による表現訓練、製図法、デザインモデルの制作技 法、素材の特性と制作法、リサーチの目的と成果の検証など、本コース2年間の教育課程 を通し核となるものである。 4年次では3年次に学習した事を基盤としてデザインを行う。 デザイン対象をより幅広く設定しアイディアを産み出す発想力を鍛え、機能性、装飾性、 トレンド性等の要素を基に具体的な形にする造形能力を訓練する科目設定を行っている。 -ファッションデザイン専攻科- ファッションデザイン専攻科は、世界に通用するファッションデザイナーまたはパタン 30 杉野服飾大学 ナーの養成を教育の目的とし、現役のデザイナーやジャーナリスト、スタイリスト、バイ ヤーなどを講師に迎え実践授業を行う。各種ファッションコンテストへ積極的に応募、有 力企業への就職、ファッションイベント、ブランドビジネスの起業への出展に至るまでの 実際を教育する。 専攻科カリキュラム 科目名 ファッションクリエーション実践Ⅰ ファッションクリエーション実践Ⅱ ファッションクリエーション実践Ⅲ ファッションクリエーション実践Ⅳ ファッションマーケティングⅠ ファッションマーケティングⅡ ファッションマーチャンダイジングⅠ ファッションマーチャンダイジングⅡ ファッション企業経営論 デザイナーズ特講Ⅰ デザイナーズ特講Ⅱ 表現演習Ⅰ 表現演習Ⅱ 日本芸術文化特講 ファッションビジネス英語特講Ⅰ ファッションビジネス英語特講Ⅱ ファッションビジネスフランス語特講Ⅰ ファッションビジネスフランス語特講Ⅱ 小計 単位数総計 講義 2 2 2 2 2 10 単位数 週時間数 必修 選択 備考 演習 実習 前期 後期 1 2 8 ○ 2 6 ○ 1 2 8 ○ 2 6 ○ 1 4 ○ 1 4 ○ 1 4 ○ 1 4 ○ 2 ○ 1 2 ○ 1 2 ○ 1 2 ○ 1 2 ○ 1 集中 集中 ○ ※1 2 ○ ※1 2 ○ ※英語又はフランス語を選択 ※1 2 ○ ※1 2 ○ 15(13) 8 33(31) 2)年間学事予定、授業期間が明示されていて、適切に運営されているか(視点3-2- ③) 授業日程と年間行事予定は教務部で原案を作成し、 「教務委員会」を経て「教授会」で 承認され実行される。年間の学事予定と授業期間は「学生手帳」 「学生便覧」に詳細に示し ている。教職員に向けては、毎月教務課が作成した「月別行事日程表」が教授会メンバー、 各研究室、事務方の全部署に配布される。新入生は入学時オリエンテーション・ガイダン スにおいて、在学生には次年度オリエンテーション(毎年2月と4月に実施)で明示され る。平成 21(2009)年度の授業期間は、前期は4月 13 日から7月 31 日まで、後期は9月 24 日から2月1日までとしており、授業は 15 週間を確保している。各学期において休講があ った場合には、 その学期末に補講を必ず実施して授業計画が実施されるようになっている。 複数開講クラスの試験は、試験日を設定して授業外で実施しているが、非常勤講師の授業 を含め授業内でも試験を実施している。 明示については、新年度当初のオリエンテーションを含めた行事、8・9月の補講・集 中授業、追再試験日程、コンテスト、大学祭、振替授業日、1・2月の集中授業、卒業制 作発表期間、学内コンクール週間などを「学生手帳」 「学生便覧」に掲載している。 年間では、前期は授業週数 15 週他4週、後期は授業週数 15 週他5週で計年間 39 週で ある。諸活動が円滑に実行できるよう年間行事予定が組まれ、教職員協力のもとに大学生 活が充実したものになるよう運営がなされている。 3)単位の認定、進級および卒業要件(視点3-2-④) 31 杉野服飾大学 文部科学省に届けられた学則上の履修科目によって厳格に運営がなされ、卒業要件単位 124 単位以上の修得をもって卒業としている。年次別履修単位の規定はないが、実習科目 が多く実際上該当学年配当開講科目を履修し修得している。 在学年数は最長8年間である。 毎学期のガイダンス時に、履修すべき単位数の目安を明示すると共に、修得単位が不足 している学生や休学者、復学者に対しては、クラス担当の教務課員が直接該当学生に説明 を行って指導をしている。 進級条件では、1・2年基礎課程の服飾関係科目の中心を成す授業である「ドレス構成 論・実習Ⅰ~Ⅳ」と「ドレーピング&パターンメーキングⅠ~Ⅳ」の両科目の単位が未修 得である場合、3年次以降の専門課程のコース選択ができないこととしている。 授業内容は毎年発行される「授業計画(Syllabus) 」に明示する。その内容は、科目名、 担当教員、単位、開講年次、授業形態、授業概要、達成目標・成果、授業外学習、教科書・ 参考書などを記載して学生に知らせている。 評価は定期試験(ペーパー試験、レポート、作品、出席等)によってなされ、合格した ものに対して単位が認定される。成績は各授業者が数値素点を管理し、表記は S、A、B、 C、D で、D が不合格である。成績評価基準は、S が 100 点~90 点、A が 89 点~80 点、 B が 79 点~70 点、C が 69 点~60 点、D の 59 点以下が不合格である。再試験の評価の 最高は C、追試験の評価の最高は A としている。成績評価表は、前期については、基礎課 程ではクラス担任から、専門課程ではコース主任(モードクリエーションコースはクラス 担当者)から直接学生に手渡し、内容によっては履修指導を行う。成績不良者については、 手渡しと共に保護者へも郵送する。学年末の成績については、全員の保護者宛てに郵送し ている。他大学からの編入学生・転入学生の修得単位については、教務部によって修得単 位・成績の対照表が作成され、教授会の議を経て認定している。また他大学(他大学科目 等履修生や放送大学)などでの既修得単位は、本学が教育上有益と認める場合は、教務部 で資料を作成し、教務委員会、教授会を経て認定している。評価の取り扱いは厳格に運用 されている。 4)履修登録単位数の上限の適切な設定など単位制度の実質を保つための工夫が行われて いるか(視点3-2-⑤) 本学では、実習科目(毎週3時間 15 週を1単位)や演習科目(毎週2時間 15 週を1単 位)とする履修科目が多く、時間割編成上、選択科目が制限されるため各学年で過剰な単 位取得ができない。いわゆる中心科目が学年指定の時間割になっており、上限単位を設定 しなくてもむやみに履修申告ができない。したがって早期に過剰な単位を取得する者はお らず、学則に定められた単位数を各学年で満たすことによって単位を修得し、その合計に よって卒業が認められるのが現実である。こういった仕組みの中で学習の質を保証している。 5)教育内容・方法の特色ある工夫(視点3-2-⑥) -入学前教育- 入学予定者に対して「入学前教育」を実施している。内容は、本学の創始者のパーソナ ルヒストリーを綴った『炎のごとく』と、18 世紀から現代までのファッションの変遷に焦 点を絞ってビジュアル的に見ることができる『FASHION-18 世紀から現代まで-』 (京 都服飾文化研究財団)の2冊の読後感をレポートすることを課している。レポートは入学 前に本学に送付(一部3月中に実施する入学試験の合格者は4月末に提出)し、担任とな 32 杉野服飾大学 る教員が読み、入学後にコメントをしながら返却する。 -導入教育- 導入教育Ⅰ:新入生を対象に「ファーストステップ IN SUGINO」という名称で導入 教育に当たるオリエンテーションを平成 21(2009)年度4月に実施した。その内容は1年次 に展開される主な授業6教科(ドレス構成論・実習、ドレーピング&パターンメーキング、 ファッション画、CAD 演習、画像設計演習、ドローイング)担当者によるミニ授業、クラ ス担任が行う学生との交流会、外部講師による特別講演の3部構成である。前年度まで行 っていた総合的なオリエンテーションの内容を改め、より身近である1年次の内容に絞っ ている。 導入教育Ⅱ:1 年生前期に必修科目「服飾学原論」を設置している。この科目はオムニ バス形式の講義で、はじめに「入学前教育」で課した本学の創始に関わる「建学の精神・ 杉野芳子が目指したもの」の解説から始まり、 「素材とファッション」 「ドレーピング&パ ターンメーキング」 「ドローイング」 「ファッション画」 「デザイン論」 「プレタポルテなど の商品企画」 「ファッションビジネス」などを担当する教員がそれぞれの領域においての概 論を解説する。また本学には創始者杉野芳子の作品が多く保存されており、その作品を杉 野記念館や衣裳博物館で展示し、服飾造形へ興味・関心を促す企画も教育の一環として開 催している。 導入授業Ⅲ:入学時のオリエンテーション期間中に、導入授業として専門業者によるミ シン講義を行っている。これは服飾造形に欠かせない縫製機器を正しく理解するための3 時間の講義(無単位)で、概論、直線ミシン実習、ロックミシン実習で構成されている。 -学生サポート- 基礎課程「ドレス構成論・実習」では入学前の知識と技術の学習差から実習授業開始時 に課題を遅滞する学生への対応として、前期の一定期間には授業後の補習として週2時間 「学生サポート」を実施している。その後はクラスごとに授業時間外に教室を開放し、遅 滞する学生への対応を行っている。 -IT 関連教育- 本学独自に開発した下記の IT 活用教育を実施している。 <1>電子教材 基礎課程「ドレス構成論・実習」授業時に補助教材として活用できるデジタル教材であ る。動画で見るファッション情報、アイテム別縫製方法・部分縫いなど動画と静止画像で 構成され、音声ナレーションで解説されている。授業補助教材として活用すると共に、学 生の理解を促すために何度も繰り返し見ることができるため、授業外にも活用できるデジ タル教材である。 <2>パーツデータベース(PDB) 1・2年生必修授業「画像設計演習」の授業時に補助教材として使っている CD-ROM に納めたパーツデータベース(PDB)がある。市販のアプリケーションソフト PhotoShop と連動しながら自由にファッションデザインを考案・作画できるシステム DB である。被 服を衿、袖、身頃などの 19 部位(パーツ)に分けて、そのデザインバリエーションをデー タベース化して 1,134 パーツ収録してある。基本線7本で組み合わせると、誰でも自由に デザイン画が構成できる仕組みになっている。誰もがデザイン考案に参加でき、ファッシ 33 杉野服飾大学 ョンイメージをデジタルで表現できる。 <3>デザイン・パターンデータベース 被服をアイテム別に分類し、それを基軸にデザインバリエーション 800 デザインとパタ ーンをデータベース化した。 さらにその 800 デザインを基にシーチングでサンプルを作り、 デザイン・パターン・シーチングサンプルを同時に見ることができる施設がある。基礎課 程の学生にはデザインを描いてもパターンを想像することはできず、またパターンを見て もデザインや実際の被服を想像することができない。そこで、この DB によってそれらの 関係をスムーズに想像できることで、デザイン考案やパターン展開(作図)が分かり易く なる。こうした教育補助システム DB と施設(ロータリーハンガー・シーチングサンプル 室)がある。 <4>学内ストリーミングサーバーの活用 海外協定校による特別講義、招聘した講師による特別講義、「ドレス構成論・実習」授 業の補助教材にするための制作工程(ブラウス・ワンピース) 、ドレーピングの基礎(ジャ ケット)などをデジタル画像化してストリーミングサーバーに保存してある。検索したい プログラムを選出してクリックすると、誰でも何度でも繰り返し見ることができる教育補 助教材である。以下の授業は e-ラーニングが可能なデジタル教材を使用している。 ・ 「ドレス構成論・実習Ⅱ」~オリジナルデザインのブラウス制作 ・ 「ドレス構成論・実習Ⅲ」~オリジナルデザインのワンピース制作 ・ 「ドレーピング&パターンメーキング」~ジャケット -キャリアプランニング教育- 授業名「キャリアプランニング」は、学生の職業観・人生観の育成を目的とする科目で ある。ここでは、将来の就職を意識して、社会マナー、産業のしくみ(特にアパレル産業) 、 文章表現、読み取り・聞き取り、情報の活用の仕方などについて、社会で活躍してきた特 任の教員と外部講師を招聘して必修で授業展開をしている。職業を意識することで学習意 欲につながる効果的な内容になっている。 -学内コンクール作品制作- 特徴ある授業に「学内コンクール作品制作」というコンクール形式の授業がある。これ は専門課程3年後期(2月中旬に集中)に実施し、平成 20(2008)年度で7年目となる。各 コースの特徴を活かしたテーマを決め1週間の集中授業で実施している。平常授業は教員 からの課題を学習する教育システムであるが、この授業は自発的な作品を制作することを 目的としコンクール形式で行うところに特徴がある。3週間目に各コースの評価会があり 学生のプレゼンテーションに対してコース主任によるコメントと投票を行い、その場で評 価する。競争の原理を導入した明確な評価をする。コースによっては外部評価員の導入を して日常では聞けない厳しいコメントを受けるが、それも学生にとっては新鮮で楽しく、 興味深く聞くことができている。これは3年目頃より年間行事予定として定着し、1・2 年生でコンクール会場に来場する学生が増加する傾向にある。優秀な成績を修めた学生の 作品は学内ギャラリーで展示される。 -「学内コンクール作品制作」授業の成果- 平成 20・21(2008・2009)年度は公的なギャラリーで展示する機会を得ることができた。 34 杉野服飾大学 <1>平成 20(2008)年5月 表参道 森英恵ビル1F オープンギャラリーでアートファ ブリックデザインコース優秀作品が展示された。 <2>平成 21(2009)年2月 表参道 森英恵ビル1F オープンギャラリーでファッショ ンプロダクトデザインコース優秀作品が展示された。 <3>平成 21(2009)年7月 水戸芸術館 第6展示室にアートファブリックデザインコ ース優秀作品が展示される予定である。 -産学コラボレーション- 産学コラボレーションは産業界と連携した教育の一環として、早くから取り組んでいる 授業である。主に専門課程のモードクリエーションコース、ファッションビジネス・マネ ジメントコース、ファッションプロダクトデザインコースについて記載する。 <1>モードクリエーションコースは織物産地である福島県伊達郡川俣産地、山梨県富士 吉田産地から生地を提供してもらい、各産地生地の特性を活かしたデザイン考案・作品制 作を行い、青山ベルコモンズや青山テプラで開かれる産地主催の展示会、フランス リール で開かれる Tissu Premier など、各種生地展示会で服飾造形作品の展示を平成 16(2004) 年より継続的に行っている。 <2>ファッションビジネス・マネジメントコースでは、地方の織物産地やアパレル企業・ 服飾副資材企業などとコラボレーションしている。学生の企画を提案して、企業が評価し た優秀企画を実際に商品にする。従来の授業評価ではなく、企業がビジネス展開できるか という厳しい基準で評価して商品化され、店頭販売する。学内では企画・プレゼンテーシ ョンを評価し、企業は商品の売り上げ評価をすることの双方で評価をしている。 <3>ファッションプロダクトデザインコースではバッグメーカーとのコラボレーション として、デザイン提案と商品化→店頭販売→売り上げ実績評価という形で実施している。 メディアとのコラボレーションとして、レジ袋に代わるショッピングバッグをショー形式 で発表している。その他、高度なテクノロジーと充実した設備を備えたスポーツ用品メー カーにおいて、 プロのスタッフによる技術サポートを受ける事ができる研修を行っている。 品川区の伝統工芸職人の技と学生の発想を結びつけ商品開発を行い、地域の産業振興にも 貢献している。 -国際交流- ロシア モスクワ国立繊維大学と中国 浙江理工大学と交流している。具体的には、毎年、 本学園主催の全国ファッションデザインコンテストに上記双方の代表学生の作品が出品さ れる。平成 20(2008)年度(第 46 回全国ファッションデザインコンテスト)では、中国浙 江理工大学の学生作品が優秀な成績を修めた。コンテスト出場のための来日の際には、本 学学生部主催で学内において専門各コース代表者と座談会を開催し親睦を深めている。ま たモードクリエーションコースの学生が平成 19(2007)年 10 月にロシア ソチで開催された 第 10 回ロシア・大学ファッションフェスティバルに参加し、特別賞を受賞した。平成 21(2009)年4月には国際交流基金の助成金を受けてモスクワで行われたロシア学生コンテ スト「未来への一歩」に参加した。学生の交流や教員相互の交換授業の展開など有効な交 流が実現できている。 -海外研修旅行- <1>パリ プレタポルテコレクション見学旅行(希望者) 35 杉野服飾大学 毎年9月と3月に一週間、フランス パリで開催されている世界の精鋭が集まるファッ ションショーと国際展示会を見学する。 <2>UCCA 芸術大学短期研修 イギリスでは UCCA 芸術大学(University College For the Creative Arts)と連携を深 めている。本学学生が夏休みの約 21 日間(約 20 名) 、現地の教員(英国人)指導による特 別授業を受講し、作品を提出している。第1回を平成 13(2001)年(8月4日から9月2日) から開始し、平成 14(2002)年、平成 16(2004)年、平成 18(2006)年に実施したが、イギリ ス国内のテロ事件発生等のためここ3年間は実施していない。 また平成 21(2009)年8月には、イギリス London College of Fashion にて3週間の ファッション研修と 25 時間の語学研修の短期留学を実施する予定である。 <3>アントワープ王立美術アカデミー卒業制作発表会見学旅行 毎年6月にベルギー アントワープの王立美術アカデミー卒業制作発表会の見学旅行を 実施している。ファッションの高いレベルで展開されている造形表現や異なる環境、異文 化に触れることで視野が広がり、 「自己啓発」を促し、創作意欲に繋がることを目的として いる。平成 21(2009)年度は新型インフルエンザの世界的な流行のため取り止めた。 -外国語教育- 学長の直接指導によって、従来の外国語教育に加え服飾(ファッション)界に繋がる、 言語教育に力を注ぐ授業科目の設置に着手した。平成 20(2008)年度から、 「ファッション 英語」 、 「ファッションフランス語」 、 「アパレル実務英語特講」 、 「アパレル実務フランス語 特講」 、 「ワールドカルチャー」といった科目を開講し、専門性を意識した教育を実施して いる。 -コンクール挑戦- 建学の精神の1つである「挑戦(チャレンジ)の精神」を実践する。 コンテスト名および主催者名は次の通りである。 <1>全国ファッションデザインコンテスト (財)ドレスメーカー服飾教育振興会と(学)杉野学園の共催 <2>新人デザイナーファッション大賞 (有限中間法人)日本ファッション・ウィーク(JFW)推進機構 新人デザイナーフ ァッション大賞実行委員会 <3>ファッションクリエーター新人賞国際コンクール (財)日本ファッション教育振 興協会 <4>JFA ファーデザインコンテスト(社)日本毛皮協会 <5>神戸ファッションコンテスト(財)神戸ファッション協会 <6>Yumi Katsura Award(NPO 法人)全日本ブライダル協会 <7>YKK ファスニングアワード YKK グループ <8>ファッションシューズコンテスト 日本ケミカルシューズ工業組合 <9>荒川区マイバッグコンテスト 荒川区 <10>ジャパンクリエーションテキスタイルデザインコンテスト (有限中間法人)日本ファッション・ウィーク推進機構 <11>日本手工芸展 日本手工芸文化協会 36 杉野服飾大学 <12>ふろしきコンテスト 宮井(株) <13>全国染織デザインコンテスト 全国染色連合会 <14>学生ビジネスチャレンジコンテスト(財)学生サポートセンター 以上、多数のコンテストに出品し、優秀な成績を修めている。 3-2-⑦ 学士課程、大学院課程、専門職大学院課程等において通信教育を行っている 場合には、それぞれの添削等による指導を含む印刷教材等による授業、添削 等による指導を含む放送授業、面接授業もしくはメディアを利用して行う授 業の実施方法が適切に整備されているか。 該当なし (2)3-2の自己評価 基礎課程(教養科目)については、実習教育に多くの時間を当てなければならない現状 を考えると、現在設置している科目は領域的にも十分の拡がりをもっている。科目数を増 やす必要はないであろう。しかし、各科目の間の有機的関連は十分とはいえない。それぞ れの科目の中で教えられていることを、科目を超えた視点から総合的に眺め有機的関連を 明確にする必要がある。 基礎課程(服飾関係科目)の中心科目である「ドレス構成論・実習」における授業後の 学生サポートは有効であり、新入生の「授業について行けない」という不安の解消につな がっている。 年間行事予定、授業方法・内容、授業計画は学生手帳や履修便覧に明示されており、正 しく運用されている。授業期間は履修便覧に提示されている通り、前・後期とも 15 週で運 営されており、休講による補講を確実に実施している。 特色ある教育方法の工夫については、学内コンクール、産学コラボレーション、国際交 流、コンクールへの挑戦などが学生の制作動機を高めており、理論と実践のバランスをと っている。 各専門コースについては、下記の通りである。 ①モードクリエーションコース 唯一複数教員が担当するコースで、相互理解のうえで授業運営している。平成 20(2008) 年度にはコース内のクラス枠を超えて「デザイナー養成強化特別ゼミ」を設置し、意欲的 な学生をコース全体でバックアップする体制ができた。平成 20(2008)年7月に本コース所 属の3・4年生計 225 人にコース必修科目についてのアンケートを行い、 見直しを図った。 その結果、 「アパレルファッションビジネス」は、平成 21(2009)年度以降、科目名を「ア パレル企画Ⅰ・Ⅱ」に変更した。その他の必修科目についても、学生からの意見を基に問 題点を明確にした。 ②先端ファッション表現コース 当該コースの授業は日野キャンパスで展開されている。日野キャンパスには本コースが 必要とする制作用の工房、機動力のあるスタジオ、コンピュータの設備が整っている。絵 コンテの描画や PC による画像表現、ショートムービーを制作するデジタルビデオなど、 ファッションイメージを伝えることが産業界でも求められ、 その役割を大きく担っている。 37 杉野服飾大学 多様な表現方法とそれに関わる技術進歩の現状を踏まえながら、効率よく学習できる環境 を整備しなければならない。日野キャンパスの学習環境の有効利用と外部講師などの導入 で技術面での具体的な学習は充実してきている。 ③感性産業デザインコース 平成 15(2003)年~平成 20(2008)年までのカリキュラム実施の自己点検で表出した点を 改善し、平成 21(2009)年に新カリキュラムを導入してコースの授業内容の充実を図ってい る。平成 20(2008)年度に最新の3次元計測機システムを導入し、精緻な測定データによっ てより充実した授業展開が可能となった。 ④アートファブリックデザインコース 効率よく素材の理解を促す方法として「制作する」ことは効果的な教育方法であると考 える。制作を通して繊維・糸・布(織物、ニット、フェルトや紙などのシート類など)を 知る。知ることは興味を生み出し、相乗的に意欲へと繋がる。ファブリックにおける設計・ 制作・確認(Plan、Do、Check)の流れでカリキュラムを構成している。これらの授業に よって「制作」することと分解する授業「素材分析演習」で衣服解体演習をする。繊維か ら商品までを理解させた上で商品企画(PMD=Product Merchandiser)に役立つ知識を 修得する。 こうした教育の実践によって、将来に向けて、アパレル産業やテキスタイル産業とその 周辺領域の産業において活躍できる人材の養成が積極的になされている。 ⑤ファッション文化論コース 当該コースは、服飾の内容がヨーロッパの文化であること、また、その文化が歴史や芸 術と深く関わっている点を重視し、 比較文化論的な立場で授業科目を設定している。 また、 卒業論文の英文文献読解のため、独自の英文服飾資料研究に取り組んでいる。 「学内コンク ール作品制作」においては、マドレーヌ・ヴィオネの服飾造形について継続的に研究・制 作している。原書を読み、ヴィオネの造形美の追求をグループ研究として実施している。 制作することによって講義だけでは解明できなかった事項について補うことができている。 ⑥ファッションビジネス・マネジメントコース 産学コラボレーションをいち早く導入して企業の求める即戦力の理論と実践力を育成 する教育を実践している。授業科目も市場調査、商品企画、そして商品の制作を行う。産 学コラボレーションを活用し、商品を販売することで学業評価とは別にビジネス評価をし ている。産学コラボレーションのプロセスは、商品企画、企業提案(評価会) 、選考、商品 化、店頭販売、売り上げ実績、企画と実績の照合までを「ファッションマーチャンダイジ ング実習」において実践している。また3・4年次の「ファッション・マーケティング論Ⅰ・ Ⅱ」では、産業界で活躍している人材による講義の実施をしている。この2つの授業を実 施していることは当該コースの特徴ある内容になっている。 ⑦ファッションプロダクトデザインコース 目黒キャンパスと日野キャンパスにおいて授業を実施している。コース設立から3年目 を迎え目黒キャンパスに於いては設備の拡充に伴い「物をつくる」環境が整いつつある。 しかし、学生数の増加も見込まれ更なる充実を求められている。 2年間という限られた時間の中でより大きな教育的成果に繋げるためには、デザイン現 場、制作現場の生の声を聞き実社会の現状を知る必要がある。学外の各専門分野に携わる 38 杉野服飾大学 プロによる作品の評価を受けることが重要であると考えられるため、社会で活躍している デザイナーや職人による特別講義を行い、ファッショングッズのメーカーで使われている 最新技術を体験する研修も行っている。 (3)3-2の改善・向上方策(将来計画) 基礎課程(服飾関係科目) 「ドレス構成論・実習」における学生サポートに平成 21(2009) 年6月1日より Teaching Assistant(TA)制度を導入し、学習遅滞学生の対応の充実を 図る。平成 21(2009)年度は3人でスタートするが、実施状況については、専攻科と基礎 課程が共同して検討を行い、平成 22(2010)年度に改善発展させることとする。 基礎課程(教養関係)については、1年次より始まるので、初年次教育という観点から、 単位制の正確な理解、受講マナーの周知、授業内での出欠の取り方、遅刻の扱いなど、全 学的にわかりやすい慣行ないしルールを確立するように努める。 専門課程については、以下各コースごとに報告する。 ①モードクリエーションコース 「デザイナー養成強化特別ゼミ」をさらに充実させ、コース全体のレベルアップを図る とともに、学生各自の目標を明確にできるよう指導する。また、 「アパレル企画Ⅰ・Ⅱ」 「フ ァッション画Ⅴ~Ⅷ」の授業内容の改善を図り、アパレル産業と授業との連携を深める。 一方、産業とは別に、服飾造形を創造していくデザイン力と創造したデザインを具体的に 表現する技術力を向上させるためには、学内の授業のほかに、国際交流、産学コラボレー ション、 学外講師による特別授業、 「学内コンクール作品制作」 への学外評価員の導入など、 それぞれ充実を図る。 ②先端ファッション表現コース 先端ファッション表現演習を「取材・フィールドワーク」を軸としたものと「編集」を 軸としたものと大きく2つの要素に分ける。当面はカリキュラム内での分割になるが、学 生の資質や社会の動向を計りながら、教育目標が達成するよう調整する。応用力の育成と して、インターンシップの充実や学外授業(撮影現場のアシスタントなど)を実施する。 ③感性産業デザインコース 立体裁断と CAD を連携した授業(CAD&3D 演習Ⅰ・Ⅱ3年コース必修)を導入し、 改善案とする。この導入は平成 19(2007)年度にカリキュラムを改訂し、平成 21(2009)年度 3年生より施行している。現役企業パタンナーを講師として招いた授業を展開する。 ④アートファブリックデザインコース 素材分析演習の授業を現在 90 分で行っているが、平成 22(2010)年度には 135 分とする 方向である。 3年次9月に実施している「産地見学研修旅行」を選択科目として行っていたが、平成 21(2009)年度から必修科目として実施する。見学旅行を通して、産地の技術、設備、産地 の仕組み、企業との連携を見学し、学内授業の理解の向上を図る。 ⑤ファッション文化論コース 現在、世界中のファッション大学やファッション美術館からファッション教育の内容や ファッションショーの動画がリアルタイムで発信されている。当該コースの中心科目であ る「服飾資料研究」 「ファッション比較文化論」 「西洋服飾文化史」等で、積極的に IT 化 を図り、海外からの情報(FASHION ERA サイト、FIN サイト etc.)を取り入れ、授業 39 杉野服飾大学 「ファッション論」理 に活かしていく。また学生からの要望の多い「自主ゼミ」を開催し、 解の深化を図る。 ⑥ファッションビジネス・マネジメントコース 改善案として、 ファッションマーチャンダイジング実習の授業内容の充実を図るために、 モノづくりの制作過程であるパターンメーキングやサンプル縫製の制作をさらに深め、質 の高い産学連携教育を実現する。 ⑦ファッションプロダクトデザインコース デザインの対象にベルト、小物、アクセサリーなど身の回りにあるグッズを加えて領域 の拡充を計る。このことにより、皮革、布以外に金属、プラスチック等の加工技術に関す る知識を身に付けることが可能になり、更に幅広く社会のニーズに対応できるような人材 の育成を目指す。 3-3.教育目的の達成状況を点検・評価するための努力が行われていること。 ①学生の学習状況・資格取得・就職状況の調査、学生の意識調査、就職先の企業アンケー トなどにより、教育目的の達成状況を点検・評価するための努力が行われているか。 (1)3-3の事実の説明(現状) <学習状況調査> 学生の学習状況の把握については、本学では FD 研究委員会による「学生による授業評 価アンケート」が、全専任教員の授業を対象に行われており、その結果は自由記述を含め 担当教員に渡され、授業改善に活用されている。また、専任教員相互の授業参観を実施し、 特に服飾関係の授業について参観に基づいた教員間の授業についての研究会を実施してい る。 基礎課程(服飾関係科目)の「ドレス構成論・実習」については、平成 20(2008)年度か ら授業担当者が学習評価表を作成し、前・後期末に履修者学生に配布している。これは定 めた項目に対し、学生がどのレベルまで到達しているかを5段階で評価するものである。 評価項目は、出席状況、デザイン力、製図力、構成力、制作力、授業への取り組み、課題 の進行状況となっており、教員は学生一人ひとりの状況を項目ごとに分析して評価を行っ ている。 また、授業改善のために、「ドレス構成論・実習」の担当教員が定期的に相互に授業見 学を実施している。見学の際には制作課題に対して教員から、狙い、プロセス、表現技法 の説明が的確になされているかどうか、学生はそれらを理解しているかなどに注目し、5 段階評価と自由記述の報告書を授業者に提出している。見学後には報告書をまとめ、意見 交換会を行っている。 専門課程においても「学生による授業アンケート」調査を実施し、調査結果は担当教員 に戻し授業改善の参考にしている。またモードクリエーションコースでは、コース内で独 自の授業アンケート調査を行い授業改善に役立てている。その他のコースでは履修学生が 20 人~50 人程度であるため出欠状況や学習の効果を把握するために個別面接を行い、 学生 の授業達成状況の点検・評価に努めている。 この他、入学時には「新入生実態調査アンケート」 、卒業時には「学生生活アンケート」 40 杉野服飾大学 を実施し、学生の評価、意見、要望の聞き取りなどの意識調査を実施している。 <資格取得調査> 資格取得状況については、教職委員会が取得状況を把握し報告している。現在の教職課 程では、中学校教諭1種免許状(家庭)と高等学校教諭 1 種免許状(家庭)を取得できる。 平成 20(2008)年度の教育職員免許状取得者は、卒業生 289 人中 26 人(科目等履修生1人 を含む)である。内、教育関係就職者(非常勤を含む)は7人、他大学大学院進学者が3 人である。東京都に関しては、平成 17(2005)年度から4年間連続専任教員として採用され、 平成 20(2008)年度については、1人が期限付きで任用されている。 <就職状況調査> 就職状況の調査は就職部が行っている。詳しくは基準4で記すが、近年では安定した就 職率(平成 20(2008)年度内定取り消しは1件)が得られている。また海外留学、他大学大 学院大学に進学する学生も増えている。6年前の男女共学への改組からの卒業生には、ブ ランドを設立して自分の創作活動でビジネス展開するケースや海外で活躍する卒業生もお り教育の成果が見て取れる。平成 20(2008)年度では、海外留学2人(フランス、イギリス) 、 他大学2人、他大学の大学院・大学院大学への進学が5人、ビジネススクールへの進学1 人、卒業生では、ロンドン在住デザイナー1人、ディレクターアシスタント1人、ミラノ 在住デザイナーアシスタント1人を出しており、1人がブランドを設立している。 (2)3-3の自己評価 専任教員対象の「学生による授業評価アンケート」は、各教員にとり授業改善に向け、 非常に参考となる資料である。実際、学生からの授業改善要求により、改善された授業が ある。今後も非常勤講師対象と併せて実施して行く。 基礎課程(服飾関係科目)の「ドレス構成論・実習」における学生5段階評価表は、担 当教員が作成する学習評価表により、学生は各自の実力や現状を細かく把握することがで き、以後の授業の取り組みの指標となっている。同時に教員にとっては、学生指導の指針 を与えられるものである。 担当教員相互による授業見学後の意見交換では、他の教員の授業を参観することにより 授業の進め方、説明の仕方、教材について、または助手のあり方、備品の不備など多くの 問題点を確認することができた。 同僚の参観者からの評価を受け、 教員自身の指導の仕方、 取り組み方を考え直す良い機会となっているなどの意見が出され、成果を得ている。しか し、同時開講の授業が多いなど、時間割の関係で思うように授業参観が出来ないなどの問 題はある。 卒業時の「学生生活アンケート」調査では、教育内容の満足度は高い。このことは、4 年間で学生自身が成長した実感の結果だと捉えている。本学の特色である実践型教育の成 果であると評価できる。 都心の立地を活用して、学内授業と周辺環境を活用した(マーケットリサーチ、産業見 本市・美術館、ファッションショーなどの)学外授業のバランスをとり、産学連携の教育 を推進していることで教育効果をあげている。 (3)3-3の改善・向上方策(将来計画) FD 研究委員会ではこれまでも「学生による授業評価アンケート」 「新入生実態調査アン ケート」 「学生生活アンケート」の質問紙内容、実施時期、作成、データ整理、分析を実施 41 杉野服飾大学 しているが、基礎課程(服飾関係科目)の「学習評価表」の改善と併せて、担当教員によ る話し合い等を通し、更に検討して今後も継続し授業改善に役立てていく。 就職先の企業アンケートなどによる企業側からの評価に関する調査がこれまで行われて いないので、これを実施することとし準備を開始する。 【基準3の自己評価】 建学の精神や大学の基本理念に基づき、基礎課程および専門課程の各コースでは、その 目的・目標がカリキュラムに十分反映されている。専門においては必修・コース必修科目 が多く設定され、本学独自の能力が育成されるようになっている。特に、伝統ある服飾教 育の実績を持つ大学らしくきめ細かい教育の実現は評価できる。また、授業計画、授業内 容、進級・卒業要件、評価・点検なども明確に定められ適切に運営されていると自己評価 している。 授業の実施と学生生活の主な行事、本学ならではのカリキュラム以外の多岐な行事・企 画などは、事前に明示し徹底を図っている。講義科目より演習、実習が多くを占めている のは、本学の特徴と専門領域が実践を重んじる内容であることによる。 産学連携教育は本学の教育の大きな特色であり、 良い成果をあげていると評価している。 国際交流も着実に進展している。 【基準3の改善・向上計画(将来計画) 】 本学を希望して入学した学生も、それぞれがさまざまな動機、さまざまな学習経験の違 いを持つ。一人ひとりの学生の能力に応じたきめ細かい教育を行うことは理想であるが、 今後もその理想を目指していくことが改善・向上の計画である。学生の満足度を高める教 育のために、本年度も「大学自己点検評価委員会」を中心に「FD 研究委員会」 「基礎課程 連絡委員会」 「基礎課程(服飾関係科目)の授業検討会」でさらに学生、教員、職員、学外 の企業関係者等の意見を聞き取り、質の高い教育の具体的検討を重ねていく。また企業か らの評価に関する調査を実施する。 本学の服飾教育の基礎となっている「ドレメ式原型」については、平成 18(2006)年5月 に短大・ドレメと共同で「ドレメ式原型改訂検討委員会」を組織し検討を行ってきたが、 本年7月に改訂案を発表することとなった。今後これに基づくテキストを作成し、授業内 容の改善を推進する。 基準4 学生 4-1.アドミッションポリシー(受け入れ方針・入学者選抜方針)が明確にされ、適切 に運用されていること。 《4-1の視点》 4-1-① アドミッションポリシーが明確にされているか。 4-1-② アドミッションポリシーに沿って、入学者選抜等が適切に運用されている か。 4-1-③ 教育にふさわしい環境の確保のため、収容定員と入学定員及び在籍学生数 42 杉野服飾大学 並びに授業を行う学生数が適切に管理されているか。 (1)4―1の事実の説明(現状) 1)アドミッションポリシーの公表 本学のアドミッションポリシーは、Ⅰの「建学の精神」で記述したように、学則第1章 第2条に、目的として明らかにされている。すなわち「本学は、教育基本法、学校教育法 および建学の精神に基づき、個人を尊重し、豊かな人格を養うとともに、専門としての服 飾に関して理論的・技術的および芸術的に深く教授研究し、創造力・実践力をそなえた有 能にして健全な社会人を育成することを目的とする」とするものである。 本学のアドミッションポリシーは、冊子体の「大学案内」 「履修便覧」に記載されてい る。これは本学の教育理念・教育目的を端的に表現しているもので、 「学長メッセージ」で 建学の理念を「チャレンジの精神、創造する力、自立する能力」と伝え、 「創造力と個性を 伸ばす機会と環境」を「若さと柔軟な心で活用し、自分自身の可能性を追求」する学生を 求めているとする。また、オープンキャンパスでの説明、ホームページへの掲載、受験雑 誌さらに進学説明会・相談会、教職員による高校訪問等を通して、本学のアドミッション ポリシーを明確に周知するように努めている。 2)アドミッションポリシーに沿った入学要件、入学試験の運用 入学要件はアドミションポリシーに沿って、 「募集要項」 に以下のように記載されている。 <1>AO 入試 AO 入試においては、 「服飾造形に強い関心と学習意欲をもっている人」 「優れた創造性 や豊かな個性をもっている人」 「自己の認識や表現ができ、自己実現への意欲が高い人」 「得 意な技術や資格があるか、社会的に高い評価を受けたことのある人」のいずれかに該当す る人を求める。 <2>推薦入試 推薦基準は、 「服飾造形に関心と意欲をもっていること」 「学業成績が良好であること」 「本学を第一志望とすること」である。 <3>一般入試 一般入試の選抜基準は、 「本学の授業を履修できる基礎学力があること」 「服飾造形に関 心と意欲を持っていること」 「本学の授業や学生生活に適応できる柔軟な人間性を有してい ること」である。 選抜方法は、 「募集要項」に試験形態別に入学試験日程、募集人員、出願資格、出願要 件、選抜方法、受験上の注意等、それぞれ明確に区別して、志願者にわかりやすく記述し ている。 <1>AO 入試 AO 入試において求める学生像は、前項で記述した通りである。選抜方法に関しては、 エントリー面接と AO 入試面接、そして出願書類のうち、自己紹介書と志願者評価書を点 数化し、総合点の高い者から合格者を決定する客観的な方法を採用している。本学では面 接に高い比重を置き、エントリー面接では1人、AO 入試面接では2人、合計3人で面接 する形である。書類については2人で採点を担当する。いずれも教員が担当する。なお、 この入試での受験者は、服飾・工作・デザイン画等の制作物(作品)を持参するなど、 「モ 43 杉野服飾大学 ノづくり」への意欲を示す者が多いのが特徴である。 <2>推薦入試 本学の推薦入試は 11 月上旬に行われる。指定校制と公募制とに分かれる。求める学生 像は、前項で記述したとおりである。選抜方法に関しては、高等学校等在学中のトータル な実績を、調査書・推薦書・自己紹介書等の資料と面接に基づいて判定する。 指定校制の場合、高校と本学との信頼関係の上に成立している制度であるので、「高等 学校在学中の実績を重視し、興味や関心を育てていくことを大切に考え、推薦基準に照ら した選考を行います」とし、面接結果が最低段階の判定でない限り、原則にしたがって合 格者を決定する。面接は2人で、教員が担当する。 公募制の場合、選抜方法に関しては、公募制推薦入試面接と出願書類の内、自己紹介書 を点数化し、総合点の高い者から合格者を決定する方法を採る。面接、書類、それぞれ2 人の担当で、教員が担当する。 <3>一般入試 求める学生像は、前項で記述した通りである。選抜方法としては、入学試験と一般入試 面接を実施している。面接は1人で担当する。面接結果が最低段階の評価でない限り、試 験点数の高い順から合格者を決定する。 3)学生数が適切に管理されているか。 本学服飾学部服飾学科の募集定員は 240 名で、入試の種類別では、平成 20(2008)年度よ り AO 入試 120 人、推薦入試 80 人、一般入試 40 人である。在籍者数は現在 1,212 人であ る。 (データ編表4-5参照) 募集定員に対する入学者の比率は、平成 18(2006)年度の入学数 337 人で 1.4 倍、平成 19(2007)年度が入学者数 325 人で 1.35 倍、平成 20(2008)年度が入学者数 337 人で 1.34 倍 と数値が高く、これは補助金打ち切り額の限度の入学比率に近いものであった。しかし、 授業編成においては、基礎課程は一クラス 40 人ほどに均等配分し、クラス単位で行われる 必修の服飾の実習科目に関しても、教員1人に助手を配属し、必ず2人以上で授業を行う 形態をとるなどの配慮がなされてきた。平成 21(2009)年度は 1.16 倍と低下しているが、 授業を受ける学生に対する配慮が引き続きなされている(データ編表4-1・4-2・ 4-3参照) 。また入試種類別に見れば、AO 入試の志願者がずば抜けて多く、したがって 合格者も多く出しており、それが本学の特徴となっている。また退学者は、特に1・2年 次に多く(データ編表4-6参照) 、留年した学生も含めると基準在学年数で卒業する学生 の卒業率の数値が年々下がっていく傾向が認められる(データ編表4-7参照) 。 (2)4―1の自己評価 本学のアドミッションポリシーは、学則・大学案内・募集要項等の活字媒体やホームペ ージ等に明確に記載され、オープンキャンパス・進学説明会・相談会・高校訪問時におい ても周知してもらえるように努めている。これに沿って、入学試験(AO 入試・推薦入試・ 一般入試)も適切に実施されている。 学生数については、入学者比率が高かった年度も、1クラス 40 人ほどで編成し、クラス 単位で行われる実習授業も、2人の指導者を配置する配慮がなされてきた。年々入学者比 率が減る傾向にあるので、この体制は維持できる。このように授業を行う学生の人数・管 理は適切になされているが、退学者の多いことが問題である。 44 杉野服飾大学 (3)4―1の改善・向上方策(将来計画) 本年度より、センター試験利用入試を再び取り入れる。センター試験利用入試の選抜基 準は、 「多様な学力があり、服飾造形に強い関心と意欲を持っている」こととする。面接試 験は行わず、大学入試センター試験の結果により合格者を決定する。 退学者への対策については、学長の指導のもと、各種アンケート、退学理由書内容、入 試種類別調査、入学後実態調査、試験結果調査、担任聞き取り調査等を資料としながら「事 務職員勉強会」および教員陣とで退学者の理由分析を早急に行い、結果を共有して協働し て対策を進める。 4-2.学生への学習支援の体制が整備され、適切に運営されていること。 《4-2の視点》 4-2-① 学生への学習支援体制が整備され、適切に運営されているか。 4-2-② 学士課程、大学院課程、専門職大学院課程等において通信教育を実施して いる場合には、学習支援・教育相談を行うための適切な組織を設けている か。 4-2-③ 学士への学習支援に対する学生の意見等を汲み上げる仕組みが適切に整 備されているか。 (1) 4―2の事実の説明(現状) 1)学習支援体制 新入生に対しては新入生オリエンテーション(5日間)で、カリキュラム説明、履修方 法、出欠について、試験および追再試験、採点評価について等の学業に関することから、 学生生活面、就職について、図書館利用について等々全般について説明を行っている。 また、これまで1年次に行われてきた日野キャンパスにおける「日野オリエンテーショ ン」では専門課程の説明を中心としてきたが、平成 21(2009)年度4月からは、目黒キャン パスにおいて「ファーストステップ IN SUGINO」とし、基礎課程(服飾関連科目)の 中心となる科目の紹介とクラスアワーを開催して親睦をはかり、1年次の学習・大学生活 に馴染むことを第一の目標にした。続く2年次には、 「コース責任者協議会」の提案で、日 野校舎において3・4年次から始まるコースへのガイダンスを集中して行い、専門コース に移行する直前の2年次に学習の意味を再認識させて活力を与えることにした。 日常的には、1・2年生の基礎課程では、クラス担任・副担任によるクラスアワー、ま た専門課程にあっては、コース担任による支援を行っているほか、専任教員によるオフィ スアワー制度等で担任以外の教員にも自由にコンタクトがとれるような学習支援を行って いる。 また各学年の年度末には、教務課が次年度オリエンテーションを実施し、学生に次年度の 学習計画(履修計画)に基づいて仮履修申告をさせ、次年度の履修準備の目安とさせている。 3年次からのコース選択に対しての支援としては、入学時から各コースの制作作品展示 の見学や説明を行っている。2年次の7月と 10 月には、コース主任による説明会(ガイダ ンス)を実施し、更に 10 月から 11 月にかけてコース毎の説明会を2回行い、4週間の授 業見学期間を経て選択コースを決定させている。また、2月に実施している卒業制作発表 45 杉野服飾大学 会への参加、3年生の学内コンクール作品制作審査会への参加を促し、コース理解の一助とし ている。 また入学時にはミシンに触れたこともない新入生もいるので、導入教育としてオリエン テーションでミシン講義を開講して授業導入を果たし、3-2(P.36)にも記したとお り、必修「ドレス構成論・実習」では授業後に教員が残って、遅れた学生を指導するなど、 学習支援が丁寧に行われている。 就職支援の一環としては、資格検定試験の対策を授業内で実施したり、教職課程では教 員採用試験対策ゼミを開講し着実に成果を上げている。 2)本学は通信教育を実施していない。 3)学生の意見等を汲み上げるシステム 学習支援については、アンケート調査等により学生の意見を汲み上げるシステムが整備 されている。入学時に「FD 研究委員会」が実施する「新入生実態調査アンケート」 、1・ 2年生の 「基礎課程連絡委員会」 が 1 年生前期終了近くに実施する 「基礎課程アンケート」 、 1年次から4年次までの全学生を対象に実施する「FD 研究委員会」による「授業評価ア ンケート」 、専門課程1コースが実施した「コースアンケート」 、そして4年次の卒業前に 実施する卒業時の「学生生活アンケート」等などである。この他日常的に、1・2年次の 基礎課程ではクラス担任・副担任が、3・4年次の専門課程ではコース担任が学生の意見 を汲み上げている。 (2) 4―2の自己評価 規模の小さい本学では、教職員が一体となって個々の学生の履修指導・相談にきめ細か く対応して学習支援を行っており、さまざまな視点から実施しているアンケートの調査結 果を分析し授業内容の見直し等、改善出来ることから実行している。しかし、一つのテー マを中心として各立場を超えて話し合う機会がなかったことは問題である。 (3) 4―2の改善・向上方策(将来計画) 多様化している学生への学習支援を全学的に行っていく必要性からも、現在のクラス担 任・副担任、コース担任の役割について教職員一体で話し合いの機会を設け、皆が同じ認 識をもって全学的に学生支援を行うようにする。 また、コース選択の不適応により休学したり、4年間での卒業が不可能になってしまう 学生が年々増加してきている現状に対しては、コース選択に関しては入学時より十分な時 間をかけてコースの説明をし学生には各コースを見学をさせて決定させているが、さらに オリエンテーションの方法を強化する。コースの途中変更希望者への対応も検討する。こ れらの課題に対応するため、教員と事務職員が協働して解決策を検討する組織を作る。 4-3.学生へのサービスの体制が整備され、適切に運営されていること。 《4-3の視点》 4-3-① 学生サービス、厚生補導のための組織が設置され、適切に機能しているか。 4-3-② 学生に対する経済的支援が適切になされているか。 4-3-③ 学生の課外活動への支援が適切になされているか。 4-3-④ 学生に対する健康相談、心的支援、生活相談等が適切に行われているか。 4-3-⑤ 学生サービスに対する学生の意見等を汲み上げる仕組みが適切に整備さ 46 杉野服飾大学 れているか。 (1) 4-3の事実の説明(現状) 1)学生サービスのための組織 学生支援の様々な問題、工夫およびその実践に関しては、学生部学生課ならびに学長に よって任命された委員による学生サポート連絡委員会が基本的事項に対応している。 学生部学生課には学生部長(大学教授兼務)1人と担当職員として課長1人、職員2人 を配置し、主として以下の業務を行い、学生に対する直接的なサービスを行っている。 <1>学生の生活指導(モラル、マナーを含む) <2>課外活動に関すること(学生自治会、クラブ・同好会、大学祭、学外交流、卒業ア ルバム委員会、卒業パーティー委員会、クラス・コース委員会等に関すること) <3>奨学金に関すること <4>留学生に関すること <5>福利厚生に関すること(学生会館、アパート等紹介、学割証の発行、イートインコ ーナー・談話室・自習室の管理、学生基金、傷害保険等) <6>保健管理に関すること(学生の健康管理、健康診断の実施、医務室、学生相談・カ ウンセリング) <7>遺失物管理に関すること <8>国際交流 「学生サポート連絡委員会」は学生部長を委員長として、学部長、就職部長、服飾専門 基礎課程主任、専門課程教員、学生相談室カウンセラー、教務事務部長、学生課長で構成 されている。委員会は毎月1回、あるいは臨時に開催され、学生生活に関する諸事項を企 画、審議している。その支援内容によっては学長より諮問を受ける。また学内の他の委員 会(教務委員会等)において議論される場合もある。最終的には教授会で審議され、ある いは報告されて、教職員全員が迅速かつ緊密に協力してサポートを実施している。 本学は小規模大学のため、教職員がそれぞれの立場で、個々の学生の様子や状況を把握し、 場合によっては学生相談室、医務室やクラス・コース担任等と情報交換しながら学生のニーズ に応えていくようにしている。また、学生部長、学生部職員、医務室看護師、学生会館管理人 による月1回の学生部部内会議で教授会報告をはじめ部内の連絡をはかっている。 事務職員においては部課長会議、事務職員勉強会といった各部署からのメンバーで構成 される会において、部署ごとの様々な問題を話し合っており、学生についての情報も全体 で共有し、問題解決にあたる体制をとっている。 学生サポートシステムは図4-3-1に示すとおりである。 47 杉野服飾大学 図4-3-1 学生サポートシステム図 学長 クラス担任 学生サポート連絡委員会 教授会 学生相談室 学生部 教務委員会等 医務室 教務部 就職部 2)学生のための経済的支援 <1>奨学金制度 本学では日本学生支援機構奨学金、地方自治体、民間育英会を取り扱っている。また本 学独自の給付奨学金制度として「杉野学園奨学金」および平成 17(2005)年度から、災害救 助法適用地域において地震等で被災した学生に対し見舞金・授業料の減免等を実施してい る。また、平成 21(2009)年4月からは日本学生支援機構奨学金や提携ローンなどが利用で きない学生に、緊急時対応の「杉野学園緊急時貸与奨学金」制度を設けた。 奨学金を必要とする学生が申し込みの機会を逃すことがないように、毎年4月、全学生 対象に奨学金貸与希望者説明会を実施している。その他学生便覧への掲載、掲示板、ホー ムページ等でも周知している。奨学金利用者は平成 19(2007)年度に全学生の 26%、平成 20(2008)年度は 27%であった。 (データ編表4-10 参照) 一方、奨学生でありながら不登校や成績不振、また奨学生の自覚がない学生が増えてい る。 そのような学生達の状況を把握するために毎月学生部に入金状況を報告、 捺印させて、 常に学生自身に奨学生であるという意識を持たせ、学業への意欲、登校を促すようにして いる。 本学独自の「杉野学園奨学金」は各学年に1人で、成績優秀な学生に与えられている。 採用された学生には、伝達式で理事長から直接「決定通知書」が渡され、これが一層のや る気に繋がりまた学報に掲載されることで他の学生の刺激にもなっている。 <2>留学生への支援 留学生の担当窓口として学生部に留学生係を設けている。平成 21(2009)年度の留学生在 籍者数は 19 人である。 留学生への経済的支援としては授業料の 30%を減免している。また、生活指導、入国管 理局における様々な手続等を含めて4月に留学生のためのオリエンテーションを実施、そ の他、大学祭には学生自治会の援助金によって留学生が模擬店を出店、売上金は留学生同 士の親睦を図れるように全額を支給し支援している。 <3>学生基金 本学では、財布を忘れたり、金銭を紛失したり、送金が遅れたときなど、急に金銭が必 要な場合に期限付きで金銭を貸与している。貸与額の上限は1万円、期限は1週間として いる。基金は 40 万円用意されているが、利用学生は年々増加の傾向にあり、平成 20(2008) 年度の利用総額は 460 万円となっている。 <4>アルバイト 48 杉野服飾大学 学生へのアルバイト紹介については、学業に支障をきたさないようにとの教育的配慮か ら職種に一定の制限を設けて就職部で紹介している。 <5>学生会館等住まいの斡旋 本学には、校舎より2~3分ほどの場所に遠隔地からの学生のために居住用として貸与 している学生会館が2棟ある。学生会館「北桜」は 32 室、 「夕陽ヶ丘」は 26 室あり、全室 個室で、入館者は大学、短大、専門学校の学生が混在している。会館費用は毎月 42,000 円(自炊・光熱水費含む) 。現在満室である。 その他民間の不動産会社数社と提携して、安価で学生寮、アパートを紹介している。更 に、留学生宿舎として、平成 21(2009)年度から日野キャンパスに学生会館「百草苑」を設 置した。 3)課外活動のための支援 <1>学生自治会 学生自治会は学生の自治組織として存在し、入学と同時に全学生が自治会会員となって いる。自治会を運営する執行部役員は、各クラスから選出された学生で、毎年春の学生総 会において承認される。学生自治会長、大学祭実行委員長など幹部は大学3年生から選出 され、学生から納入された1人 6,000 円の自治会費をもとに、新入生歓迎、大学祭、スポ ーツ大会、ファッションショー、講演会などといった独自の企画の支援の他にも、ミャン マーサイクロン災害や中国四川省大地震被災地への募金活動など災害地への支援活動も行 っている。 (データ編表4-11 参照)またクラブに対しても活動費の援助を行っている。 平成 18(2006)年度より毎年4月には、新入生に杉野服飾大学の学生としてのマナーやル ール、犯罪やトラブルについての正しい知識を持ってもらうために冊子「新入生へのメッ セージ」を配布している。 活動内容はその都度学生部に報告され、大学は学生自治会活動が円滑に進むように助言 あるいは支援を行っている。 学生自治会の組織は図4-3-2に示す通りである。 図 4-3-2 自治会組織図 学 学 総 会 生 自 治 会 生 自治会執行部 大学祭実行委員会 クラブ委員会 クラス委員会 卒業記念アルバム委員会 卒業パーティー委員会 <2>クラブ・同好会 本学には平成 20(2008)年度3月現在、12 クラブ、4同好会があり、本学教員が顧問と して学生部と連携して支援を行っている。顧問には大学から顧問手当を支給、活動を補助 している。 49 杉野服飾大学 クラブ委員会は、クラブ・同好会の部員または会員から選出された各1人により構成さ れている。学生部職員同席のもと毎月委員会を開催し、活動状況の把握と活動を円滑に推 進するための協議を行っている。また学生自治会からの援助金は各部の要求に基づいて査 定し、各部に配分する。配分された経費については各部より決算報告の提出を求め、監査 の上、全クラブの決算報告書を作成し、自治会執行部に報告している。 大学は部室を提供、また施設利用を優先的に認めている。 学生の約 28%が何らかのクラブに加入している。以下表4-3-1に示す通りである。 表 4-3-1 クラブ・同好会一覧表(平成 20(2008)年度実績) 体育系 文化系 顧問 コーチ 部員数 競技ダンス ○ ○ 10 美術部 剣道部 ○ 6 ファッションイラストレーションクラブ 水泳部 ○ 8 舞台芸術部 バスケットボール部 ○ ○ 14 ライトミュージックソサエティ バドミントン部 ○ ○ 14 レザークラフト部 フットサルクラブ ○ 69 ダンスサークル ○ 36 UFO研究会 杉野ミステリー研究会 音楽部コーラル・ダ・ローム 調理研究部 顧問 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ コーチ ○ ○ 部員数 53 15 21 44 16 11 10 11 11 同好会 <3>大学祭 大学祭は毎年 10 月下旬から 11 月上旬にかけて2日間開催される。かつては、一般の学 生は準備・片付けの期間を含めて4日間休んでしまう場合が多く、盛り上がりに欠けてい たが、男女共学化を機にクラス・コースにはなんらかの形で参加することを義務付け、以 後クラス・コースはもとよりクラブ、有志など数多くの団体が参加して開催されている。 中でも2日目最後に行う「天竺ファッションショー」は 40 回の歴史を持つクラス、有志に よるオリジナルデザインコンテストで学生たちの人気イベントであり、学長以下教員が審 査員を務める。開催に当たってはクラス担任と学生部が連携で支援している。 <4>その他諸活動 本学は住宅地と隣接しているため、タバコのポイ捨てなど、学生のマナーの悪さに対し 近隣住民からの苦情が多かった。平成 17(2005)年より今日まで、学生の公共マナーの自覚 を高めると同時に地域住民との和をはかり環境美化のために、 学生自治会、 クラブ委員会、 クラス・コース委員会メンバーがローテーションを組んで、月~金曜日の昼休みに毎日腕 章をつけて、学内外の吸殻・ゴミを拾うクリーンキャンペーンを行っている。 4)学生の健康管理等に対する支援 学生たちが学生生活を送る上では心身の健康が最も重要である。本学では毎年4月の入 学時オリエンテーションおよび大学祭において、品川区の保健センターと連携してタバ コ・アルコール・性感染症などについての講演を依頼し、学生の健康管理に対する意識を 啓蒙している。また平成 21(2009)年度からは入学時オリエンテーション時に学校医による 心身の健康についての指導を行った。 <1>医務室 50 杉野服飾大学 看護師1人が常駐し、併設の短大、専門学校の学生および教職員の日常的な健康管理や 応急手当に従事している。状況により病院への搬送、専門医や学生相談室への紹介を行っ ている。年に数回「医務室便り」を発行、学生達に配布し、健康管理を促している。また 4 月オリエンテーション期間に全学生対象に胸部レントゲンも含む定期健康診断を実施、 診断結果に基づき個別に指導している。平成 21(2009)年度の受診率は 96%であった。 <2>学生相談室 臨床心理学が専門で、臨床心理士の資格を持つ心理学担当の専任教員がカウンセラーと して、学生の様々な悩みの相談に応じている。相談室は学生部に申し込み日時を予約して 面談する。または医務室やクラス担任から直接紹介されて相談室を訪れる学生も多い。平 成 19(2007)年度の利用者は 55 人 241 回、 平成 20(2008)年度は 52 人で 217 回の面接指導を 行っている。 (データ編表4-8参照) 相談内容については、精神的不安定や修学上の問題、異性関係という相談が多く、中に は精神状態をやや悪化させる場合もあり、その悪化の症状が心身症化する傾向がある。 教職員の心構えとして、カウンセリングマインドを持つことや専門的な知識を得ること が必要となってきている。今年度より、職員を「インテーカーセミナー」に参加させる等、 職員の研修の強化や心療内科医の導入の必要性が出てきている。 5)学生の意見を汲み上げるシステム 学生サービスについては、アンケート調査により学生の意見を汲み上げるシステムが整 備されている。 ①入学時に「FD 研究委員会」が実施する「新入生実態調査アンケート」 、②1・2年生 を対象とする「基礎課程連絡委員会」で実施する「基礎課程アンケート」 、③1年次から4 年次までの全学生対象に「FD 研究委員会」が実施する「授業評価アンケート」 、そして④ 4年次の卒業前に「FD 研究委員会」が実施する「学生生活アンケート」等である。その ほか平成 20(2008)年度には全学生対象に学生部では「学生生活についての調査」としてイ ートインコーナー、自習室、談話室等施設設備の使用方法、通学形態、喫煙のあり方など についての調査を実施した。これらの調査もそうであるが、クラス・コース委員会・クラ ブ委員会・学生自治会定例会等は、学生の意見を聞くよい機会となっている。 (2) 4-3の自己評価 経済的支援、課外活動、医務室、学生相談室のあり方など、学生サービスの支援体制は 学生部長の下、学生部と他部署などの連携により、学生の要望を反映させてきめ細かく 取り組んできている。経済支援としては、平成 20(2008)年度より学費クレジット制度を 導入、更に平成 21(2009)年度からは緊急時対応としての本学独自の貸与奨学金制度を設 けることにした。 近年増えているメンタルヘルスのケアを要する学生の対応については、相談窓口に立つ 者としての基本的な心構えや知識が必要となってきている。平成 20(2008)年度から職員を インテーカーセミナーの研修に参加させた。また、平成 21(2009)年度から新たに学校医を 定期に招いて心身の診断を受ける制度を設けることとした。 また、本学は小規模大学のため、教職員と学生との距離が近い。入学から卒業に至る4 年間の学生生活の中で、すべての学生たちとは何らかの形で関わることが多い。更に各ク ラスに一人ずつ配置されている助手はほとんどが本学の卒業生で、学生の身近な相談相手 51 杉野服飾大学 となっている。教職員一人ひとりがきめ細かく学生支援に取り組んでいると言える。 (3) 4-3の改善・向上方策(将来計画) 教職員一人ひとりがきめ細かく学生支援に取り組んでいるが、近年の社会情勢、学生の 多様化、複雑化が進んでいるため、対応する側の教職員の個々の努力や対応ではなく一層 の協働を図る。 またメンタルケアを要する学生の対応については、今後も引き続きインテーカーセミナ ーの研修に参加する。今後の学生支援の重要性を認識する上では、教職員の自己研鑽によ り自己の資質を高めることはもちろん、他大学の情報や研修内容を共有することも重要で ある。現在行っている学内研修報告会を更に研究会的なものに改善する。 4-4.就職・進学支援等の体制が整備され、適切に運営されていること。 《4―4の視点》 4-4-① 就職・進学に対する相談・助言体制が整備され、適切に運営されているか。 4-4-② キャリア教育のための支援体制が整備されているか。 (1) 4-4の事実の説明(現状) 1)就職・進学に対する相談・助言体制 本学は服飾学部・服飾学科の単科大学であり就職を希望する学生もファッション産業の アパレル企業を希望する学生がほとんどであり、卒業生もアパレル企業で活躍している。 したがって企業と学生の橋渡し役である就職部のスタッフも企業経験者を中心に構成され ている。具体的には、就職部長(1人、大学教授兼務) 、就職部参与(1人、社会教育主事 資格者) 、社会教育主事資格者(1人) 、ビジネスコーチ資格者(1人) 、就職課事務職(1 人)である。 <1>ガイダンス他 就職支援としては年 11 回の就職ガイダンスと4回の就職対策テストを実施している。 また学内における合同企業説明会を2回開催している。 * ガイダンスは内容によって外部企業の方に依頼することもある。 * 合同企業説明会は2月と4月にアパレル十数社を招き、求人説明を学生が直接受ける。 <2>就職資料室 ファッション企業 720 社、百貨店、マスコミ関連等 100 社の各企業の会社案内や求人情 報をファイルし、 学生が自由に閲覧できるようにしている。 またパソコンを 12 台設置して、 学生全員にメールアドレスを与えて、メールによる学生個人の会社向けエントリーも可能 にしている。 2)キャリア教育支援体制 日常のキャリアサポートシステムとしては社会教育主事、ビジネスコーチなどの資格を 有する者が、常時、来室する学生に対して進路相談にあたっている。 またキャリア教育の全学的な取り組みとして位置付けられたものには、授業「キャリア プランニング」の開講とインターンシップ導入とが挙げられる。 前者は、キャリア教育の動機付け・早期化の必要性から平成 19(2007)年度より企業経験 者を中心に大学2年生を対象の必修科目として「キャリアプランニング」の授業を開講し 52 杉野服飾大学 ている。この授業では、外部企業の現場からの特別講義や卒業生の体験談なども交えて実 践的内容も含んでいる。 後者のインターンシップの導入は本学では早く平成 12(2000)年度から行っている。こ の制度は学生にとって企業現場での貴重な就労体験となる。まずインターンシップ履修申 告書が学生から提出され、それに基づき就職部で企業と折衝して受け入れの可否を確認し、 学生と業種の適合面接を行い、実施学生による報告会を聴講してイメージ作りを行い、企 業人事担当者を招いて事前授業を受講した後にインターンシップの実施となる。実施期間 中には研修日誌を毎日記入し、企業担当者から講評をもらい大学に提出する。5ヵ月後に は次年度の後輩履修者に対して「報告会」を実施する。期間は従来2週間で行ってきたが、 企業、学生双方からもう少し長期もあっても良いのではとの提案があり、平成 19(2007) 年度より短期は2週間、長期は実質 20 日間以上と分けて実施をしている。 (2)4-4の自己評価 1)就職・進学に対する相談助言体制の整備と運営 平成 19(2007)年度の就職状況は 97.5%と良好な状態であった。平成 20(2008)年度の 就職状況は 80.1%であった。 (データ編表4-13 参照) 近年は多様な職業観を反映してか就職しても転職を希望する卒業生も出始めており、そ のような卒業生を対象に、平成 19(2007)年度より「卒業生サポートシステム」を就職部内 に発足させて、転職希望者登録カードを発行して再就職を斡旋し、徐々に成果をあげ始め ている。 また、本学では国際舞台での活躍を目指している卒業生をバックアップしようと「卒業 生デザイナー自立支援事業」を平成 20(2008)年度から実施した。在校生の指導と併せて充 実を図っている。 就職状況は、平成 20(2008)年度は昨年のアメリカに端を発した経済危機の影響下にあっ て、就職部では企業訪問をして求人を増やし学生のチャレンジのチャンスを増やす努力を している。 また日常の就職・進学に対する相談体制については、適切に運営されていると評価して いる。 (データ編表4-9参照) 2)キャリア教育支援 授業「キャリアプランニング」は3年目を迎える。平成 21(2009)年度は一層の充実を図 るべく、職業観の育成や学生個々人のスキルアップを高める内容になっている。 「インター ンシップ」については、平成 20(2008)年では8月の夏休みを利用して受け入れた企業は 17 社(履修者 31 人)で、その内長期は4社4人であった。また春休みを利用しても行ってお り、年2回実施している。本学のインターンシップは、休業中の実施を原則としており、 平常授業期間のインターンシップは、授業に支障の無い時間帯に分割的に実施することと している。この方針は今年度も継続していく。キャリア教育のための支援体制も整備され ていると評価している。 (3)4-4の改善・向上方策(将来計画) 就職・進学に対する相談助言体制については、国際金融不安が日本国内でも平成 20(2008)年度半ばから始まり本校生も内定取り消しなどの影響を受けた。このような不況 は、平成 21(2009)年度も引き続くことは確実で、企業の求人数はさらに減少する傾向が加 53 杉野服飾大学 速される。この対応策としては、学生の質の向上と求人企業窓口の拡大である。そのため には、企業が求める人材育成すなわち、総合職の能力ある人材育成と専門知識に長けた人 材育成がさらに必要となる。 総合職ではグローバル化した国際化時代に対応すべく語学力、 ファッション感覚面をすばやく理解する力と、ファッション商品の原価意識を理解する力 を兼ね備えた人材が要求される。 また企業からの求人および内定者数でも販売職が依然として一番多いのが現状である。 ファッション商品の販売の主流である接客販売やネット販売を理解する教育の充実も急務 である。このような社会背景と学内の現状を踏まえて、就職部としては企業からの求人情 報をただ待つのではなく、これまで以上に積極的に会社訪問を増やして、求人活動や求め られる求人像の理解を進めていく。学生に対してもその職種が大切であることの認識を推 し進めていく。また専門性を高めるファッションデザイン専攻科は、デザイナー、パタン ナーの専門職に向けての積極的対応策として開設した。21 年度は初年度という状況で学生 募集のスタートも出遅れたが、22 年度学生募集を早目にスタートする。 キャリア教育のための支援体制としてキャリアプランニング教育による学生の就労意識 の充実と、指導する教員の企業現場の現状認識のために企業研修または外部企業講師の招 聘などの産学交流を積極的に推し進めていく。 【基準4の自己評価】 本学のアドミッションポリシーは「建学の精神」に示されるように明確である。 「大学案 内」をはじめ、オープンキャンパス・ホームページ・インターネット・進学相談会・教職 員による高校訪問、相談会等々で受験希望者に伝えられている。入試の形式ごとに選抜方 法が明確に定められ適切に運用されている。AO 入試の比率が全体の約6割と多いが、入 学後の実力テスト(英語・国語)においても試験種別による学力差はほぼ見られず、本学 のアドミッションポリシーに強く同意しての入試方法に問題はないと捉えられる。入学後 も各学年ごとにオリエンテーションを行っている。入学直後の「ファーストステップ IN SUGINO」では、建学の精神、教育方針、基礎課程の科目紹介を行い、アドミッションポ リシーを確認している。 入学後の中途退学者については、各組織を超えての分析、討議が行われていない。 学生サービスについては、小規模組織であるため、生活指導・経済支援・課外活動・保 健管理・学生相談室等は、きめこまかい取り組みが行われてきている。特に学生自治会企 画運営による大学祭は、参加者出席者も多く、 「天竺ファッションショー」は高校生の見学 者も含め、体育館に入りきれないほどの盛況を呈している。また、近年、入学後のメンタ ルヘルスのケアを要する学生が増えつつあるのが問題となっている。 出口となる就職についてはインターンシップも活発にとり入れ、就職部がアパレル企業 を訪問して丁寧になされているが、昨今の不況のあおりでアパレル企業の就職は大変に厳 しいものがある。 【基準4の改善・向上方策(将来計画) 】 中途退学者が多い現状を踏まえ、オリエンテーションの改変のみならず、学長の指導の もと、各種資料を統合して、 「事務職員勉強会」および教員とで協働して、全学的に問題を 54 杉野服飾大学 分析する拡大会議を開催し改善を図ることとした。 また、心身の健康のケアを補強するため、平成 21(2009)年度より学校医に年間定期的に 来校して学生の相談に応じてもらうことにした。 さらに、昨今の厳しいアパレル企業の就職にあたって在学生の就職へのステップとして国 際的に活躍できる人材育成コースである「ファッションデザイン専攻科」を今年度より立ち 上げたり、平成 20(2008)年からは卒業生バックアップのための「卒業生サポートシステム」 を発足させたりしたが、これらの新たな組織的取り組みを充実強化する。業務改善では、就 職部職員が企業へ求人を依頼するための会社訪問を今年度さらに強化していく。 基準5.教員 5-1.教育課程を遂行するために必要な教員が適切に配置されていること。 《5-1の視点》 5-1-① 教育課程を適切に運営するために必要な教員が確保され、かつ適切に配置 されているか。 5-1-② 教員構成(専任・兼任、年齢、専門分野等)のバランスがとれているか。 (1)5-1の事実の説明(現状) 教育課程を適切に運営するためには、大学設置基準に基づいた教員配置が必要である。 本学は服飾に特化した単科大学で、教育課程の編成は、基礎課程での専門科目は服飾関係 科目とライフスタイル関係科目であり、教養科目は一般、体育、総合、国際関係、外国語 からなり、更に3・4年生での専門課程からなっている。加えて教職に関する科目、博物 館に関する科目が開講されている。 表5-1-1は本学の教員配置を示し、大学設置基準上の教員数と現員数を比較すると、 必要教員数を8人上回る教員が確保されている。 専任教授数も 15 人で基準を満たしている。 「職位別」のバランスを見ると、教授 15 人(40.5%) 、准教授 13 人(35.1%) 、講師4人 (10.8%) 、助教5人(13.5%)となっている。 平成21(2009)年5月1日現在 定員 学部名 大学 学科名 入学 定員 服飾学部 服飾学科 240 1,020 1,212 専任教員 基準専任教員数 在籍 収容 学生数 全体 教授数 現員 定員 29 15 37 教授 准教授 講師 15 13 4 非常勤 助教 講師 5 72 次に教員構成が、入学・収容定員、在籍学生数に対応して、適切なバランスを保ってい るかを下記の表によって示す。 表5-1-2は専任教員、非常勤講師、助手、技術助手の人数を示した。 55 杉野服飾大学 平成21(2009)年5月1日現在 表5‐1‐2 専任 在籍 非常勤 在籍 教員数 学生数 非常勤 依存率 助手 講師 / 収容 学生数 (助教) (%) 以上 教員数 定員 定員 学部名 学科名 大学 入学 定員 服飾学部 服飾学科 240 1,020 1,212 37 32.8 72 66.1 6 技術助手 専任 非常勤 14 13 本学の教育課程は、服飾を専門としているため、専門領域の授業方法は演習、実験・実 習科目が多く、 「助手」や「技術助手」を多数配置して、組織的連携をもって授業展開をし ている。また、 「必修科目」 「選択必修科目」は専任教員が担当するよう配慮している。ア パレル・ファッション業界関係の授業については、外部の専門家に授業を担当してもらう 必要性があり非常勤講師に委嘱している。このため非常勤講師の数が多く、基礎課程、専 門課程、資格課程の全体で 66.1%の依存率となっている。専任教員一人当たりの学生数は 32.8 人の割合となっており、適切である。 次に、 表5-1-3 専任教員の男女別構成を見る。 全体37 人のうち、 男性12 人 (32.4%) 、 女性 25 人(67.6%)で女性の比率がかなり上回っている。これは本学の専門である服飾・ 家政関係の教員が多い理由からである。 表5‐1‐3 専任教員の職位別・男女別構成 学部名 職位 服飾学部 教授 准教授 講師 助教 計 男性 (人) 10 2 0 0 12 女性 (%) 66.7 15.4 0.0 0.0 32.4 (人) 5 11 4 5 25 平成21(2009)年5月1日現在 計 (%) (人) (%) 33.3 15 100.0 84.6 13 100.0 100.0 4 100.0 100.0 5 100.0 67.6 37 100.0 表5-1-4 専任教員の年齢構成については、46 歳~50 歳が9人(24.3%)で最も 多く、 61 歳~65 歳、 51 歳~55 歳、 31 歳~35 歳が各5人 (13.5%) 、 41 歳~45 歳が4人 (10.8%) で、高齢化の方向に向かっている現状である。 56 杉野服飾大学 表5‐1‐4 専任教員の年齢別構成 平成21(2009)年5月1日現在 学部名 服飾学部 職位 71歳 以上 66歳 61歳 56歳 51歳 46歳 41歳 36歳 31歳 26歳 ~70歳 ~65歳 ~60歳 ~55歳 ~50歳 ~45歳 ~40歳 ~35歳 ~30歳 教授 (人) 1 2 5 3 3 1 (%) 6.7% 13.3% 33.3% 20.0% 計 15 20.0% 6.7% 准教授(人) 2 8 3 100.0% 13 (%) 15.4% 61.5% 23.1% 100.0% 講師 (人) 1 1 2 4 (%) 25.0% 25.0% 50.0% 100.0% 助教 (人) 2 3 5 (%) 40.0% 60.0% 100.0% 計 (人) 1 2 5 3 5 9 4 3 5 37 計 (%) 2.7% 5.4% 13.5% 8.1% 13.5% 24.3% 10.8% 8.1% 13.5% 100.0% (2)5-1の自己評価 教育課程を遂行するために必要な教員の配置に関しては、専任教員数、教授数ともに設 置基準に適っている。 専門分野の教員構成については、 「必修科目」および「選択必修科目」については専任教 員が担当するよう配慮している事は前述したが、演習・実習科目が多く、担当時間数の負 担が多くなっている教員もおり、今後検討の必要がある。 また、実務経験を活かした特色ある科目については、この数年、実務経験を持つ教員を 新規採用することによって良い効果が見られている。 (3)5-1の改善・向上方策(将来計画) 年齢構成等の適正化は、今後相次ぐ定年退職による専任教員の新規採用計画を、全体の バランスやコースに応じて専門領域別の偏りがないように理事者において計画的に行う。 5-2.教員の採用・昇任の方針が明確に示され、かつ適切に運用されていること。 《5-2の視点》 5-2-① 教員の採用・昇任の方針が明確にされているか。 5-2-② 教員の採用・昇任の方針に基づく規程が定められ、かつ適切に運用されてい るか。 (1)5-2の事実の説明(現状) 教員の採用・昇任の方針として、本学の中心をなす科目はその特色を継承するため、将 来の教員を自らの大学で育てる使命があり、若手の育成を重視した学内での採用・昇任に ついて厳格な規程を設け運用している。 本学の教育課程は、服飾に関する演習・実習主体の実践的な教育を特色としており、特 色を生かす配慮として、教員の採用・昇任における研究業績については、論文形式のみで はなく作品や制作活動を重視した評価を行っている。 また、産学連携を展開する教育活動をする必要性から、大学と産業界との連携教育に即 対応できる活動業績のある教員を積極的に採用している。 教員の採用・昇任に関しては、 「杉野服飾大学・杉野服飾大学短期大学部専任教員資格認 57 杉野服飾大学 定規則」に基づき教授会によって設置された「資格認定委員会」で審査を行う。教員の職 位は、 「教授」 「准教授」 「講師」 「助教」 「助手」を定め、その資格について規定している。 また、審査の申請方法、認定基準、審査方法、審査結果の報告などが明示されており、そ れらが厳正に守られており、規程に則り運用している。 (2)5-2の自己評価 教員の採用・昇任の方針については、本学の教育課程の特質に適合した方針を実行して いる。現状に照らして適切な方針と思う。採用・昇任の規則は適切であり、厳正に実行し ている点も評価できる。 (3)5-2改善・向上方策(将来計画) 本学専門の服飾系の教員養成は、本学で自ら行わなければならない使命があり、若手教 員の養成や採用を積極的に行っていく必要がある。 「技術助手」から「助手」への昇任、 「助 手」から「助教」への昇任を継続的に行って、若手育成に努めると共に「技術助手」 「助手」 が定着するよう方策をとる。 ただし、教員や助手の採用については、本学で教育を受けた学生の活用のみでは若手養 成に限界がある点や、専門的実務経験を生かした教育を推進する必要性からも、企業経験 のある者の採用も必要であり、学長・理事者において積極的に検討する。 5-3.教員の教育担当時間が適切であること。同時に、教員の教育研究活動を支援する 体制が整備されていること。 《5-3の視点》 5-3-① 教育研究目的を達成するために、教員の教育担当時間が適切に配分されてい るか。 5-3-② 教員の教育研究活動を支援するために、TA(Teaching Assistant)・RA (Research Assistant)等が適切に活用されているか。 5-3-③ 教育研究目的を達成するための資源(研究費等)が、適切に配分されているか。 (1) 5-3の事実の説明(現状) -担当授業時間数- 本学の授業時間割は、1時限を 45 分として、月曜から土曜までの6日間、1日 10 時限の 60 時 限(30 コマ)で編成されている。講義科目は2時限単位で、実験・実習科目は3時限単位で行わ れるが、二つ連続して行う場合もある。また、講義科目はオムニバス授業以外では1科目につき 1人の教員が担当している。連名となっている演習・実験・実習科目は、教育の内容や進行状況 により個人指導を伴うような場合があり、複数の教員で担当している。 表5-3-1 専任教員の1週当たりの担当授業時間数(最高、最低、平均授業時間数) 服飾学部(35人) 教 員 教 授 区 分 最 高 38.8 授業時間 最 低 平 均 1.0 授業時間 18.6 授業時間 平成21(2009)年5月1日現在 准教授 講 師 29.5 授業時間 8.0 授業時間 19.1 授業時間 備 考 27.0 授業時間 21.0 授業時間 9.5 授業時間 0.0授業時間 1授業時間 45 分 19.6 授業時間 8.0 授業時間 ※ 教授で担当授業時間が1.0時間は、学長兼務者 ※ 助教5人のうち2人は、授業担当者として授業を持っていない。 58 助 教 杉野服飾大学 表5-3-1は、専任教員の担当時間数を示したものである。最高 38.8 時間で1週 60 時間の 64.6%も占めている。最低 1.0 時間については、学長が専門の学芸員課程の一科目 を担当している。教授、准教授、講師、助教の職位によって担当時間数の違いがあるが、 これは、講義科目の担当教員と、演習、実験・実習科目担当教員との差である。平均時間 数で見ると多少多いが、実習主体の本学としては適切と考えている。授業の準備や時間外 指導、履修者数の多少、担当科目の種類の多少等により、担当時間数だけでは負担度を計 ることはできない。また、教員の業務内容では、教授会、各種委員会への出席、大学行事 等の準備・実行や出前授業の実施等の時間が拡大している。 -TA 制度 RA 制度- 平成 21(2009)年度に開設した「ファッションデザイン専攻科」の学生を活用した「TA 制度」を本年6月1日から開始した。TA が補佐する対象学年は、主に1年生であり主任 指導の補佐をする。効果的に活用することで、学生本人にとっても教育的に有効であると 考えている。RA 制度は現在実施していない。 -研究奨励補助金制度- 教員が行う学術研究および作品制作奨励のための「研究奨励補助金制度」があり、補助 金の種類には、次の3種類がある。 1)個人研究奨励補助金 上限 30 万円 2)共同研究奨励補助金 上限 50 万円 3)研究成果刊行補助金 1研究上限 50 万円 補助金の支給対象は、教授から助手までとし、 「研究計画」ならびに「補助金額の詳細」 を記載し、研究指導教員(原則として教授) 、所属長、学部長の承認を得た上で、申請を審 査委員会に4月末日までに提出する。審査委員会は、学長および学長の任命した4名の委 員で審査し、結果を理事長に報告して承認を得る。また、支給を受けた者は、当該年度の 3月末日までに研究成果の報告書を審査委員会に提出しなければならない。 平成 21(2009)年度は個人研究奨励補助金が3件、共同研究奨励補助金が2件採択された。 平成 17 年度 平成 18 年度 平成 19 年度 平成 20 年度 平成 21 年度 個人研究奨励補助金 4件 2件 5件 3件 3件 共同研究奨励補助金 ― ― 2件 ― 2件 -研究補助- 服飾系専門科目担当教員の研修バックアップとして、平成 19(2007)年度より、9月と3 月に開催される「パリプレタポルテコレクション見学旅行」に学生の引率を兼ねて研修の 一環として同行している。学園からその旅費の2分の1が補助されている。 各教員への研究補助としては、各研究室へ教育研究経費として年間の予算配分が行われ ており、これを活用して研究活動が行われている。 (2) 5-3の自己評価 教員の教育担当時間数の適切さという点で、担当時間数の平均は 17.3 時間で多い現状 といえる。これは本学の特徴である演習、実験・実習主体のカリキュラム上やむをえない と思うが、個人差が大き過ぎるのは見直さなければならない。また、担当時間数の少ない 教員には自主ゼミの開講を依頼したりして、均衡がとれるように配慮している。 59 杉野服飾大学 (3) 5-3の改善・向上方策(将来計画) 教員の担当時間数の軽減については、今後の入学者数の増減や、カリキュラムの見直し により、また助教、助手の昇任によりゆとりが出来るような人事計画をしていく。ゆとり が出来ることで研究活動にも積極的に取り組むことが出来る。 在職教員の企業研修制度、海外研修制度等を導入し充実を図る。 5-4.教員の教育研究活動を活性化するための取組みがなされていること。 《5-4の視点》 5-4-① 教育研究活動の向上のために、FD 等組織的な取組みが適切になされている か。 5-4-② 教員の教育研究活動を活性化するための評価体制が整備され、適切に運用さ れているか。 (1)5-4の事実の説明(現状) 1)ファカルティディベロップメント 教員の教育活動を活発化することについては、 「FD 研究委員会」を設置し、いくつかの 事業を推進している。 <1>学生による授業評価 本学では、教員の教育活動の向上のために、 「FD 研究委員会」によって「学生による授 業評価」アンケート調査を実施している。平成 13(2001)年、平成 16(2004)年、平成 19(2007) 年に実施した。様式は、その都度改善を加え、変化してきている。平成 13 年の場合には、 本学での初めての授業評価であったため、全体の傾向を知ることに目標をおき、統計を重 視した。5段階評価(数字が低い方が評価が高い)の平均値で、 「実技系科目」の 2.38 に 比べて「講義系科目」が 2.58 になっており、 「実技系科目」に対する評価が高いことが示 された。その他、 「専門必修科目」 「専門選択科目」 「教養科目」 「教職科目」といった科目 群ごとの差異を分析したが、質問項目によって順位は入れ替わっている。調査結果は各授 業担当者に配布して、授業改善すべきところは速やかに改善するよう促し、効果的な方法 を講じるよう求めている。各教員の評価結果は、設問別集計表に数値の分析、自由記述の 概要を加え、さらに教員から提出された改善案を付して冊子として公表している。なお、 平成 18(2006)年度には、非常勤講師の担当科目について調査を行った。 <2>公開授業と授業研究会 教員相互の評価は「公開授業」を実施している。平成 15(2003)年度より、一部の授業に ついて、一定の期間(1~2週間)に限り、同僚教員等への公開を行っている。参観者は、 授業の感想を報告書にして委員会に提出し、その報告書のコピーが授業担当者へフィード バックされる。 平成 15(2003)年度から平成 17(2005)年度にかけての3年間の実績について は、平成 17(2005)年度に委員会から報告書を発行した。過密なスケジュールの間をぬって の実施であるが、授業改善のためには有効な方法であることが実証されている。その効果 は、大きく4つ挙げられる。 (a)参観者に教授法の示唆があたえられる(b) 担当教員へ のフィードバック(c) 第三者の視点で担当教師の死角に入っているようなことを知らせ る機能がある。 (d)教室の物理的環境の認識(教授法ばかりでなく、机の広さや道具など の物理的環境もよく見える。この参観によって個々の授業の環境が多くの教師によって客 観的に検証される。 ) 60 杉野服飾大学 平成 20(2008)年度には、基礎課程(服飾関係科目)の中心科目の「ドレス構成論・実習」 の授業見学を授業担当者間で実施した。時期は1課題のはじめ、中間点、終了時の3回、 見学した。見学の着眼点は課題の説明、学生の理解度、実習の進め方、学習成果の評価な どで、それらの項目を設けた授業見学調査表に記入しその結果をまとめ、授業担当者全員 で議論し改善の方策を講じるという方法で進めた。成果については、次のような報告があ った。<ⅰ>授業担当者が互いに他者の授業を見学することによって、気づかない点を発 見できた。<ⅱ>学生の授業の取り組み態度、ノートのとり方、理解度など客観的に見る ことができた。<ⅲ>私語をしている学生に注意を促したり、分からない学生を見逃して いるなど学生への対応の不足に気づいた。<ⅳ>助手の指導方法を見ることができた。 この見学の実施に関しての問題点としては、授業時間が重なっているため計画通りの授 業見学ができなかった点が挙げられている。今後の改善点は、<ⅰ>授業担当者同士の話 し合い、連携を密にとっていくこと。<ⅱ>助手の指導の必要性 <ⅲ>今後は基礎課程 「ドレス構成論・実習」授業担当者の時間割と授業見学するための日程について、余裕を もって計画し担当者全員が見学できるよう設定する、という報告があった。 同じく平成 20(2008)年度では「ドレーピング&パターンメーキング」と「CAD パター ンメーキング」を担当する教員による相互の授業見学を実施した。<ⅰ>授業進度にやや バラツキがある。<ⅱ>中には教員説明と学生の実技に差があるもの。<ⅲ>教室環境と して手許カメラ・スクリーンが設置されているが、使用しない教員もいる。などの実態が 分かり、今後は「ドレーピング&パターンメーキング」と CAD 操作は実際のアパレル企 業で双方の技術が問われているのでこれからも連携をとって進めることにすることが確認 された。授業見学は前述の「ドレス構成論・実習」と同様の方法で実施した。 <3>新入生実態調査アンケート 4月に新入生を対象とする「新入生実態調査アンケート」を実施している。質問項目は 大きく分けて、志望動機、被服制作経験、大学教育に期待することである。この数年の顕 著な傾向は、家庭科での被服の制作経験のない学生が増えたということである。80%以上の 学生が、基礎的な知識と技術を持たないで入学しているというデータを踏まえ、服飾造形 への導入教育に以前にもまして慎重かつ手厚い取り組みをしている。 <4>「学生生活アンケート」 (卒業予定者対象) 授業改善やその他の改革の資料とするため、3月に卒業予定者を対象とする「学生生活 アンケート」を実施し結果を報告書にしている。平成 16(2004)年度から毎年、卒業前の在 学生を対象に、学生生活全般についてのアンケート調査を実施した。この調査の報告書で は、それぞれの項目につき5段階評価で数値を出すとともに、学生の生の声を収録し、教 員の反省資料として活用を図っている。この調査から明らかになることは、学生の満足度 が高い(68%)ということであり、本学の教育、特に実習系の専門科目で手厚い個人指導 がなされているということが評価されている。 61 杉野服飾大学 2)研究支援事業 -研究奨励補助金制度- 5-3で述べたように学内では学術研究および作品制作奨励のために「研究奨励補助金 制度」がある。毎年4月に申請して、研究奨励補助金審査委員会で審査し助成される。こ の制度によって補助された研究は学内報告会で口頭発表を行い、報告書が学長に提出され る。 -『杉野服飾大学・杉野服飾大学短期大学部紀要』の発行- 教員の研究成果を公表するため、毎年継続的に『紀要』を刊行している。未発表の研究 論文(研究ノート、調査報告を含む)と作品(服飾および芸術・デザイン領域において独 創的な作品および作品の解説)を紀要委員会の審査を通して掲載している。本学の研究水 準を高め、 また教職員がそれぞれの研究分野の発展に資することを目的としている。 『紀要』 は他大学教育研究機関(他大学図書館等 681 件、海外7件)を対象に配布しているが、教 員の研究成果に直接触れることができるよう学生にも配布している。 -服飾造形系『教員作品集』の発行- 『杉野服飾大学・杉野服飾大学短期大学部 紀要』とは別に、平成 18(2006)年度より服 飾造形系の教員の作品の写真集『杉野服飾大学・杉野服飾大学短期大学部 教員研究作品 集』を発行している。毎年自らのテーマを設定して、素材研究、デザイン研究、縫製技法 の研究を行い、 その成果を服飾造形およびその関連造形で表現することを目的としている。 成果を冊子にまとめることと実物を学内ギャラリーに展示することによって造形研究の参 考とし、また教員の研究内容を知ることで教員と学生の心理的距離を縮め、同じ服飾造形 を追究する者として通じ合う一種のコミュニケーションをとる良い機会となっている。各 自研鑽を積み今後も継続的に発行していく。 -服飾造形研究冊子の発行- 毎年8月「服飾造形夏期セミナー」を開催している。これは全国の高校の家庭科教員を 対象に実習を中心にした服飾造形に関するセミナーである。このセミナーも本学の服飾造 形に関する研究の一端を公表し、 高校の教員に対して研修の機会を提供するものであるが、 同時に教える側である教員の「研鑽の場」としている。特に応用的な取り組みとして、講 座の他にショー形式による服飾造形研究作品の発表会を行っている。作品制作は1年間か けて服飾造形系の教員と助手があたる。関係者の合議によって毎年「テーマ」を決め、20 着~30 着程度でカジュアルからフォーマルまでのデザインを考案し、服飾造形を研究し制 作をする。その過程で得られた表現技法を冊子にまとめ『服飾造形研究』として発行して いる。 -学会の活動- 教員が専門分野の学会に参加することは、研究の交流や啓発、レベルを知る機会となり 教員・研究者にとって重要な研究活動になっている。ここでは「学会活動」とは本学が支 62 杉野服飾大学 部となって、学園全体で取り組んでいるファッションビジネス学会東日本支部の活動につ いて述べる。 「ファッションビジネス学会東日本支部」は「ファッションビジネス学会(本 部文化学園) 」の1支部として、平成 14(2002)年3月に活動を開始した。支部の特徴はフ ァッションビジネスにおいて本学が得意とする服飾造形研究・教育の延長上で「つくる」 に焦点を絞った問題を研究対象としている。 -私立大学学術研究高度化推進事業(平成 20(2008)年度以降は、私立大学戦略的研究基盤 形成支援事業)- 本学園の衣裳博物館所蔵のウォルトドレスの復元に対して補助金を受け、 「現代衣裳の原 点を探る-ウォルト作品の復元-」というテーマで3年間の復元研究を行っている。平成 21(2009)年が完成年度となる。研究成果は、復元ドレスの展示と研究資料の展示・発表、 データべースの作成・配信、報告書の刊行などの方法で公表する。 (2)5-4の自己評価 1)本学は、平成 14(2002)年4月、杉野女子大学から杉野服飾大学へ校名を変更し、男女 共学の服飾専門大学となった。服飾特にデザインや造形を学ぶことを目指して集まった学 生の要望や社会からの人材要請に応えるため、教員の教育研究活動は以前にも増して活性 化された。復元研究を通したクチュール研究、日々新しく生まれるファッション造形を表 現する技法の研究、デザイン開発などに積極的に、組織的に取り組んでいる。 2)教育活動の評価についても、特に「学生による授業評価」の成果として、改善された 授業、見直しされた授業がある。 3)学生の授業評価、教員相互の授業参観、さらには服飾造形担当教員の相互授業見学に よる授業研究など、組織的に様々な視点から授業改善を行う体制が整っている。 (3)5-4の改善・向上の方策(将来計画) 教育・研究活動を組織的に改善するために、次の事業を進める。 1)本学のカリキュラムで服飾教育の中枢を担う基礎課程における「ドレス構成論・実習」 「ドレーピング&パターンメーキング」 「ファッション画」 「CAD パターンメーキング」 は、 7~8クラス同時開講される。そこで授業内容・方法について、担当教員全員による共同 研究を行い、改善方策を立案する。この研究は平成 19(2007)年度に着手したが、現在次の 諸点について改善案を作成しつつある。 <1>指導要領の作成 <2>助手の指導力向上のための研修制度 <3>平面裁断と立体裁断との連携 <4>平面裁断,立体裁断と CAD パターンメーキングの連携(これに向けて、アンケー ト調査を実施する) <5>基礎課程と専門課程の連携 63 杉野服飾大学 2)FD 学習会の開催 平成 20(2008)年よりメディア教育開発センターから講師を招き、学習会を開催している。 平成 21(2009)年度には、インターネット上の教材を利用する際の著作権の問題を学ぶ学習 会を平成 21(2009)年4月 22 日に開催したが、今後も FD 研究委員会で立案し、教育・研 究活動を促進する学習会を開催していく。 【基準5の自己評価】 教員数や対学生数比率といった教員配置の点では、本学は設置基準を満たしており、特 段の問題はない。しかし、長期的展望では、教員の年齢構成にアンバランスがあり、本学 の専門領域の教員は本学で養成する他はないという事情から、将来の人事は楽観を許さない。 教員組織の面では、教授会、各委員会の組織も民主的で、同時に学長のリーダーシップ がとれる体制になっている。 教育能力向上のプログラムでも FD 研究委員会主導の各種調査、学習会(外部講師によ る) 、教員相互の授業参観、公開などを推進しており、改革への基盤(プラットフォーム) はできあがっている。 さらに平成 19(2007)年度から専門領域では、教員が相互に授業を見学して、カリキュラ ムの改善について研究を始めている。さらに、教員の研鑽の機会として、学内で学習会が 組織されている。それらの研究成果の公表の場として、 『杉野服飾大学・杉野服飾大学短期 大学部 紀要』 、 『杉野服飾大学・杉野服飾大学短期大学部 教員研究作品集』の発行やそ れらの作品の展示も実施している。 しかし他方、教育環境(文部行政・経済情勢・学生の学習傾向や要望)の変化によって 生じた様々な新しい課題に対処するため、 教員の労働が過重になる傾向がある。 そのため、 カリキュラムの総合的再検討や、外部助成金を受けた教育・研究プロジェクトを立ち上げ ることについては、現時点では教員に余力がないのが実情である。 【基準5の改善・向上(将来計画) 】 教員の人的配置については、年齢構成からみて増減の時期がかなり予測できるので、 中・長期的な方針を作っておきたい。学生数の増減という要素もあり、また、カリキュラ ム改編との関係もあるので確定的なプラン策定は難しいが、考え方は固めておきたい。 特に重視されるのは、第1に、本学の専門領域の教員をどのように養成するかというこ とと、第2に業界の実務に関する教育を担当する教員をどのように招聘するかということ である。これについては、在職教員の企業研修、海外研修(派遣)制度、本学卒業生から の公募等のアイディアがあるが、今後、これらを実現させる制度上の整備を行い、その制 度に基づき実際に教員を研修のために派遣する。 64 杉野服飾大学 基準6.職員 6-1.職員の組織編制の基本視点及び採用・昇任・異動の方針が明確に示され、かつ適 切に運営されていること。 《6-1の視点》 6-1-① 大学の目的を達成するために必要な職員が確保され、適切に配置されてい るか。 6-1-② 職員の採用・昇任・異動の方針が明確にされているか。 6-1-③ 職員の採用・昇任・異動の方針に基づく規程が定められ、かつ適切に運用さ れているか。 (1) 6-1の事実の説明(現状) 事務組織については、 「管理運営規程」の事務組織の章に事務組織の設置および構成が 定められており、 「事務分掌規程」に分掌の範囲と権限を定め、更に効果的に運用できるよ う「事務部課長会議規程」 、 「主幹および参与に関する取扱い基準」という規程がある。 図6-1-1 事務部門の組織図 学校法人 杉野学園 数字は平成21年5月1日現在の職員数 ( )は兼務 《 》は非常勤 [ ]は派遣 秘 書 総 務 室 1 部 1 総 務 課 1 総 務 係 人 事 ・ 厚 生 係 庶 務 係 1《1》 (1)1 1 情報システム課 2 情報企画・保守係 1 経 課 1《1》 経 経 管 理 課 1 管 契 収益事業課 1(1) 経 業 書 購 事 務 局 1 経 理 部 1 出 版 部 1(1) 入試広報部 2(3) 杉 野 服 飾 大 学 教 務 部 2(1)1 出 理 版 理 理 1 2 係 係 1[1] 2[1] 理 約 係 係 2 理 務 籍 買 係 係 係 係 1 課 出 版 ・ 編 集 係 5(1) 入試広報課 1 入 試 広 報 係 生 涯 学 習 係 4(2) 学 務 課 4(2) 学 研 教 務 課 大 学 係 短 大 係 講 師 控 室 係 ド レ メ 係 5 1 1 1 学 生 部 2(1) 学 生 課 1 学 生 係 国 際 交 流 係 3《1》 就 職 部 就 職 課 就 2(1) 杉野服飾大学短期大学部 ド レ ス メ ー カ ー 学 院 情 報 処 理 係 ア パ レ ル CAD 係 2(1)1 図 書 館 1(1) 衣裳博物館 1(1) 杉野記念館 1(1) 65 務 究 職 係 係 係 キャリアサポート係 1 日野校舎事務室 2 図 書 館 事 務 室 4《1》 衣裳博物館事務室 1(1)《1》 杉野記念館事務室 杉野服飾大学 2)職員の確保と配置 新卒者・中途採用者・専門力を必要とする場合は有資格者を採用し配置している。常勤 者(専任職員・期限付き契約職員・派遣職員)を通常とするが、場合により、兼任者・非 常勤者も配置している。 3)職員の採用・昇任・異動の方針 職員の採用・昇任・異動については、理事会で決定した基本的方針に基づいて理事長の 指示を受け、事務局が各部門と調整した上で進めている。 配置職員に欠員が出た場合、補充の採用計画を立て適切な人材を一般公募するかまたは 候補者の推薦を求め、採用する所属部署の上長の意見を考慮に入れ、選考の上採用する。 また平成 18(2006)年度からは再雇用に関する規程が設けられ、定年退職する職員の再雇 用を行っている。 昇任・異動については、関係部署の部課長等の意見を参考に理事長・事務局長が合議し て決める。管理職の事務職員の人事については、理事会への報告事項となっている。 4)職員の採用・昇任・異動の方針に基づく規程と適切な運用 職員の採用・昇任・異動に関する規程としては「就業規則」および「給与規程」があ り、これらの規程に則り運用している。 採用・昇任・異動については下図の順序を経て行っている。 採用の場合 募集(一般公募または紹介) ↓ 書類選考 ↓ 面接 ↓ 採用 昇任・異動の場合 関係部署の上長の意見聴取 ↓ 理事長・事務局長合議 ↓ 理事長の決定 (2)6-1の自己評価 部課長会(部課長・主幹・参与・事務室長)等でそれぞれの部署が責任の所在を明確に図 りながら、 連携に努めているが、 より一層事務組織力をもつためには部署間の異動を行い、 部署間の相互理解・協力を高める必要性を感じている。 前述のとおり事務組織の特徴としては、大学・短期大学部・ドレスメーカー学院3校の 高等教育の専門分野が、すべて同一の服飾であることもあり、各事務部門は3校の事務を 所掌していることは合理的と考えている。 (3)6-1の改善・向上方策(将来計画) 管理職の年齢が高いため、管理職の退職後に向けて中間年齢層を数年後に管理職にする よう早急に育成する。また若手職員の中で有望な職員を選抜して、中堅職員として育成す る計画を数年内に実現する。 6-2.職員の資質・能力向上のための取り組み(SD 等)がなされていること。 《6-2の視点》 6-2-① 職員の資質・能力の向上のための研修・SD 等の取り組みが適切になされているか。 66 杉野服飾大学 (1)6-2の事実の説明(現状) 平成 16(2004)年度以降、職員の資質・能力向上のための組織的な取り組みが行われてい る。文部科学省、私立学校振興・共済事業団等の説明会やこれらの機関のほか、日本私立 大学協会、私立大学情報教育協会等が実施する研修会に関係部署の職員を毎年多数派遣、 参加させ業務遂行に必要な知識、認識を深めさせている。 毎年度2回、これらの説明会に参加した職員による報告会を開催している。報告会には 事務職員全員が出席することとしており、派遣された職員の得た知識、情報を全職員が共 有するようにしている。発表者は発表内容を A4 サイズ1ページで作成し、出席者に配布 する。このような発表を行うことは、派遣された出席者の認識が確実なものとなるととも に、職員としての業務上の知識の整理能力、発表能力の向上にも大きく寄与するものとな っている。 平成 19(2007)年度から若手事務職員を対象として理事長が「学校法規研究会」を組織し、 学校教育関係法規、学校関係会計法規、杉野学園の諸規程等に関する勉強会を開催している。 勉強会では関係法規や諸規程に対する知識や認識を深めさせることを図っているが、継続的に 実施することによって、職員のリーガルマインドを高め、組織倫理に関する認識を深めること をも目的としている。この研究会には各部署から若手を指名しており、これらの若手職員を通 して全職員に法令遵守の意識を浸透させる効果を期待している。 平成 20(2008)年度から事務職員の有志の発意により自発的な勉強会「事務職員勉強会」 が開始された。この勉強会には事務局の各部署の職員が参加しており、事務局内の横断的 な情報交換、意見交換の場ともなっている。平成 20(2008)年度にこの勉強会がテーマとし て取り上げたのは、中途退学者の問題と経済的困窮家庭の学生に対する緊急支援方策であ る。中途退学者の問題については検討が継続中であるが、緊急支援方策については具体的 に成案が得られ、平成 21(2009)年3月の理事会で「杉野学園緊急時貸与奨学金規程」とし て決定された。 (2) 6-2の自己評価 職員の資質向上のための取組みは、各種研修会への多数の職員の派遣、全職員を対象と した研修会の実施、若手職員を対象とした「学校法規研究会」の実施、自主的な職員の勉 強会として、重層的、多面的な研修が行われている。平成 16(2004)年度以降、職員の資質 向上の取組みが急速に前進している。 (3) 6-2の改善・向上方策(将来計画) 平成 20(2008)年度までの職員研修会は、各種外部研修会の報告発表であり、全事務職員 への知識の普及、職員の報告能力の向上に一定の成果が出た。平成 21(2009)年度からは研 修会の形態を変更する。今年度からは、各種研修会等で取り上げられている課題の中から 重点的なテーマを取り上げて、職員研修会の場で意見交換を行い、問題点を掘り下げて、 本学の課題と対比し、問題解決に向けた提案型の研修会に変更する。 6-3.大学の教育研究支援のための事務体制が構築されていること。 《6-3の視点》 6-3-① 教育研究支援のための事務体制が構築され、適切に機能しているか。 67 杉野服飾大学 (1)6-3の事実の説明 教育を支援するための事務体制として、目黒キャンパスに入試広報部、教務部、学生部、 就職部を置き、日野キャンパスには日野事務室を置いている。 教授会には関係部署の部課長が常時出席し、各種委員会にも教員だけでなく関係部課長 が委員として参加している。こうして各委員会組織に教職員が連携して、入試方策、教育 効果の高い教育運営および学生指導、厚生指導、留学生指導、進路指導等について審議・ 検討を重ねつつ進めている。各事務部署では、学生と直接接する窓口業務を行っており、 業務を通じて学生の現状を各委員会等に報告している。 平成 20(2008)年度には、事務処理ソフト「GAKUEN」のバージョンアップを行う際に、 各部署で所掌するコンピュータ処理の伝達講習を関係者が受講したことは、部署毎の事務 内容および部署間の事務内容の関連を相互に認識する上でも良い機会となった。 表 6-3-1 大学事務組織表(短期大学部・ドレスメーカー学院の事務を含む) 目黒キャンパス 部署 教務部 業 学務課 務 内 容 学務に関する事項 1.学事に関すること 規程、規則、諸会議、年間予定の立案、諸行事、統計、 調査、企画、その他 2.学務関係の文書に関すること 教育関係の文書作成並びに重要文書の保管その他 3.学長印の保管 教員に関すること(人事に関する事務) 教員の研究に関すること 新規計画の立案、推進、その他 教務課 教務に関する事項 1.学籍に関すること 学籍異動(入学・卒業・休学・退学・除籍・復学・再入学) 長期履修生・科目等履修生・単位互換履修生・編入生・研究生 2.カリキュラムに関すること 授業時間配当予定表の編成 授業運営(休講・補講・時間割変更・学外教育活動) 3.履修に関すること 履修指導 4.試験・成績・単位認定に関すること 5.課程履修に関すること 教職課程(含教育実習) 、学芸員課程 6.証明書に関すること 在学証明書・成績証明書・卒業見込証明書・卒業証明書(含英文)の作成 7.講師控室に関すること 教職員に関すること 教材用雑誌・新聞等に関すること 教材・教具に関すること 視聴覚用機器の保管・管理、その他 8.学生生活に関すること 学生用個人ロッカーの鍵の貸出し、その他 9.その他 オリエンテーション旅行等に関すること 諸届・願に関すること 68 杉野服飾大学 学生部 学生課 学生生活に関する事項 1.課外活動に関すること 学生自治会 クラブ・同好会 大学祭 学外交流 アルバム委員会 パーティー委員会 クラス委員会 その他 2.奨学金に関すること 3.留学生に関すること 4.福利厚生に関すること JR 乗車割引証の発行 学生会館 イートインコーナー 学生基金 学生教育研究災害傷害保険 その他 5.保険管理に関すること 学生の健康管理 学生相談・カウンセリング その他 入試広報部 入試広報課 1.大学・短大・ドレメの広報戦略に関すること 2.インターネットホームページ等に係る情報の収集および提供に関すること 3.大学案内の作成に関すること 4.入試問題作成および試験に関すること 5.入試合格者決定会議および合格者の発表に関すること 6.入学手続きに関すること 就職部 就職課 1.就職に関すること 求人先の開拓 求人先の資料収集・公開掲示・保管 就職オリエンテーション・ガイダンスの開催 就職関係書類の事務取扱い 就職活動にともなう公欠届 健康診断書の発行など 対策講座(面接・エントリーシート等)就職模擬試験 企業研究セミナー 就職指導・相談 その他 2.キャリアサポートに関すること インターンシップ(就業体験)の実施 資格取得検定のサポート 学業に関連した臨時的仕事の斡旋 日野キャンパス 部署 業務内容 日野校舎事務室 1.目黒キャンパスの教務部・学生部・就職部等からの連絡事項の伝達 求人先の公開掲示・保管 2.授業運営(休講・補講・時間割変更・学外教育活動) 3.証明書に関すること 4.学生生活に関すること ラウンジの管理 諸届・願に関すること 5.施設・設備の管理 (2)6-3の自己評価 本学は、新しさを取り入れて工夫されたカリキュラムを展開しており、事務体制も協調 69 杉野服飾大学 しているが、一方では学生が多様化することへの対応や補助金事務、入試事務等の増大な ど教育研究事務は増加している。事務に益々の企画力や研究支援力の強化が求められ、学 生相談にもよりきめ細やかさが必要となっている。職員はこのような状況を理解し教育研 究支援のために努力しており、教育研究支援は適切に機能していると考えている。 (3)6-3の改善・向上方策(将来計画) 今後も理事長が中心となって、SD の強化と IT すなわち情報機器の活用やその向上を目 指す。学内情報のネット化の推進をテーマとする。 【基準6の自己評価】 組織編成は、平成 21(2009)年1月に出版部および入試広報部の新設も行い、一応整備さ れている。 また事務体制については、 本学園の特徴を踏まえて縦横の連携を図ると同時に、 必要に応じてプロジェクトを組んだりして業務を進めている。職員は一人一人が十分に力 量を発揮できるよう配置をしていると言える。職員の数は、増加させることが出来ない現 状にあるところから、より一層の事務力の強化・連携の中で業務が遂行できるよう、昇任・ 異動についても、慎重かつ的確に行っている。 【基準6の改善・向上・方策(将来計画) 】 改善・向上のためには、正に職員一人一人の能力・人間性が問われている。このために 一層の資質・能力の向上に努めたい。 年2回の研修発表会を行い、これまでは研修者全員が発表してきたが、平成 21(2009)年 度からは、項目を取り上げて少数の者に発表を行わせ、これについての意見交換を行う方 式に改める。このことにより、当面する問題を掘り下げて研修するようにする。 基準7.管理運営 7-1.大学の目的を達成するために、大学及びその設置者の管理運営体制が整備されて おり、適切に機能していること。 《7-1の視点》 7-1-① 大学の目的を達成するために、大学及びその設置者の管理運営体制が整備 され、適切に機能しているか。 7-1-② 管理運営に関わる役員等の選考や採用に関する規程が明確に示されてい るか。 (1)7-1の事実の説明(現状) 1)管理運営体制の整備 服飾学部の単科大学として、学長の統括の下に、学部長、教務部長(教授) 、学生部長(教 授) 、図書館長(教授)、博物館長(教授)が教学および管理運営を分担している。 事務組織としては、事務局長の統括の下に、総務部、経理部、入試広報部、教務部、学 生部、就職部の各部課が事務を分掌している。 既に基準2で見たように、学部の教学に関する事項を協議するための組織として、教授 70 杉野服飾大学 会の他に各種委員会等の組織を設けて常時学部の管理運営に関する諸問題を協議し、それ に基いて教授会で審議が行われている。委員会には FD 研究委員会、学生サポート連絡委 員会、学生募集対策実行委員会、学報委員会、基礎課程連絡委員会、キャンパス展示企画 委員会、紀要委員会、教職委員会、教務委員会、研究奨励補助金審査委員会、資格認定委 員会、自己点検評価委員会、図書館運営委員会、入試委員会、博物館運営委員会、ホーム ページ委員会がある。これらの委員会等には、必要に応じて事務局の部課長も構成員とし て参加しており、事務局の意見が反映されるようになっている。 理事会は9人の理事によって構成され、年度の予算および事業計画策定時、補正予算編 成時、決算および事業報告策定時、重要な規程の制定、改正時、学則の改正時、管理運営 上の重要案件の決定時等に適時適切に開催され、活発な意見交換が行われている。2人の 監事は理事会に毎回出席し、必要に応じて監事の所見を開陳している。平成 20(2008)年度 における理事会の開催状況は、次の表の通りである。 理事会開催状況(平成 20(2008)年度) 表 7-1-1 年 月 日 主な議案 定 数 9 9 8 委任1 9 9 9 20 5 29 1 号議案 2 号議案 3 号議案 4 号議案 20 6 19 1 号議案 中長期計画について 2 号議案 その他 31 1 号議案 2 号議案 3 号議案 4 号議案 24 1 号議案 杉野服飾大学学則の一部を改正する学則(案)について 2 号議案 杉野服飾大学専攻科規程の制定について 3 号議案 ドレスメーカー学院学則の一部を改正する学則(案)について 4 号議案 ドレスメーカー学院編入学生規則の一部を改正する規則(案)について 5 号議案 ドレスメーカー学院私費外国人留学生授業料減免に関する規程の制定について 6 号議案 学校法人杉野学園管理運営規程等の一部を改正する規程(案)について 7 号議案 浙江紡織服装職業技術学院との交流事業の実施について 8 号議案 中国における杉野学園の事務所の開設について 9 号議案 杉野学園創立 90 周年記念事業に係る寄附金の募金について 10 号議案 平成 21 年度予算編成方針(案)について 11 号議案 その他 9 9 26 1 号議案 2 号議案 3 号議案 4 号議案 5 号議案 6 号議案 7 号議案 8 号議案 9 9 20 20 21 7 12 3 平成 19 年度事業報告について 平成 19 年度決算について 中長期計画について その他 出席 者数 文部科学省への改善状況報告書の提出について 杉野学園中長期計画(案)について 創立 90 周年記念事業募金について その他 平成 21 年度事業計画について 平成 21 年度予算について 任期満了に伴う役員、評議員の改選について 学校法人杉野学園役員の報酬に関する規程の制定について 杉野学園緊急時貸与奨学金規程の制定について 学校法人杉野学園事務分掌規程の一部改正について ドレスメーカー学院学則の一部を改正する学則の修正について その他 71 杉野服飾大学 評議員会は原則として理事会開催時には開催され、上記の諸事項を審議している。 評議員会への必要的諮問事項は法人の寄附行為第 21 条に定められている。 理事会の付議 事項は、 「学校法人杉野学園理事会に提出する議案に関する規程」に定められている。 事務処理体制については、 「学校法人杉野学園管理運営規程(H16(2004).7.1施行) 」 、 「事務分掌規程(H16(2004).8.1施行) 」 、 「文書取扱規程(H16(2004).8.1 施行) 」等 にしたがって適切な体制の下に実施されている。 2)管理運営に関わる役員等の選考や採用に関する規程 寄附行為第6条で、法人の役員として、理事9人、監事2人が定められている。理事の 選任については、第7条で、 (1)大学学長、ドレスメーカー学院院長、 (2)評議員のう ちから、評議員会において互選された者4人、 (3)法人に功績ある者または学識経験者の うちから評議員会の意見を聞いて理事会において選任された者3人と定められている。監 事の選任については、第8条で、法人の理事、職員または評議員以外の者であって理事会 において選出した候補者のうちから、評議員会の同意を得て、理事長が選任すると定めら れている。 平成 21(2009)年5月末日現在、理事は学識経験者3人を含め9人が選任されており、監 事は、元他大学幹部職員(経理出身者)と弁護士の2人が選任されている。 評議員については、寄附行為第 19 条で、21 人以上 28 人以内で組織するものとされ、そ の選任について第 23 条で定められている。平成 21(2009)年5月末日現在、25 人の評議員 が就任している。 理事会および評議員会の開催回数は表7-1-1(71 頁)のとおりで、法人の管理運営 に必要な十分の回数開催されている。出席率もともに極めて良好である。 理事長は寄附行為第6条で、理事総数の過半数の議決により選任され、第 12 条で、 「法 人を代表し、その業務を総括する」と定められている。第 13 条で、理事長以外の理事につ いては代表権を付与しない旨定めている。 3)平成 16(2004)年度以降の改善 平成 16(2004)年度以降、急速に管理運営に関する諸規程の整備が進められ、平成 19(2007)年7月には「杉野学園規程集」が発行されるに至った。事務処理体制についても、 「学校法人杉野学園管理運営規程」 、 「事務分掌規程」 、 「文書取扱規程」等の諸規程が整備 され、事務組織とその運営の明確化が行われた。事務処理に当たって、特に重要な予算の 執行については稟議書によって理事長まで決裁を受けることとし、 これが励行されている。 理事会については、平成 14(2002)年当時の理事会は学内理事のみによって構成され、監 事2人も学園関係者であった。平成 15(2003)年4月に中村賢二郎学長と白井久也理事が外 部から就任し、初めて2人の部外者からの理事が誕生した。 平成 16(2004)年、私立学校法の改正によって理事会機能の強化が義務づけられたのを機 に、理事会の構成に「 (学園に)関係のある学識経験者」という制限を廃止し、平成 17(2005) 年1月以降、元アパレル企業幹部経験者、元教育行政幹部経験者、民間企業役員の3人の 学識経験者を理事に加え、学外者の意見を理事会運営に反映できるよう改めた。これと同 時に、寄附行為の改正で評議員の学識経験者からの選任の数を3人増員し、評議員会につ いても外部の意見をより反映させられるよう改めた。 72 杉野服飾大学 「学校法人杉野学園理事会に提出する議案に関する規程」を制定した際に、理事 さらに、 会への付議事項を大幅に拡大するとともに、管理運営に関する諸規程を整備して、これら に従った学園の運営が適切に行われている。 (2)7-1の自己評価 本学園は、理事会のガバナンス機能が確立しており、適切な管理運営が行われている。 平成 19(2007)年度決算、平成 20(2008)年度決算においても、監事監査報告、監査法人に よる監査報告ともに適切な処理と認められており、問題はない。 (3)7-1の改善・向上方策(将来計画) 平成 16(2008)年度以降、学園全体の管理運営の改善への取組みが成果をあげてきている。 今後はこれまでの改善状況を維持しつつ、理事長主導のもとに、理事会が一体となって、 さらに一層の向上を図っていく。 7-2.管理部門と教学部門の連携が適切になされていること。 《7-2の視点》 7-2-① 管理部門と教学部門の連携が適切になされているか。 (1)7-2の事実の説明(現状) 管理部門の各組織と教学部門の基礎課程、 専門課程の各コースは絶えず連絡を取り合い、 問題を話し合って共同で対処し、解決している。大学の管理運営、教育研究に関する各種 の委員会等の組織には、必要に応じて事務局の部課長も構成メンバーとなっており、こう した委員会等の審議の場でも共同して参画する体制がとられている。 例えば、入試委員会には教務事務部長、総務課長、入試広報課長、自己点検評価委員会 には事務局長、教務事務部長、教務委員会には教務事務部長、学生サポート連絡委員会に は教務事務部長、学生課長がメンバーとなっている。 また、教務部長、学生部長、就職部長には大学の教授が就任しているが、それぞれ事務 局の部署にデスクを持っていて、日常相当の時間各部署の中で仕事をしており、事務職員 と一体的に業務を遂行している。 大学の学長は現在法人の理事長を兼務しており、教授会を中心とする教学部門と理事会 を中心とする管理部門双方の意思形成と決定の統合が実現されている。 理事会には、大学の学部長と事務局長が理事として参画しており、評議員会には学部長 を含めて5人の教授、元教授が就任して審議に参画している。 教務部長、学生部長、就職部長は、重要な案件については、学部長、学長と協議し(案 件によっては事務局長とも協議し)て方針を決定している。学部長と学長が理事となって いる上、学長が理事長を兼務していることもあって、小規模大学の利点を生かして、教学 部門と管理部門が一体となって迅速かつ円滑に、企画、執行の両面にわたる意思決定が行 われている。 (2)7-2の自己評価 (1)で記述のとおり、管理部門と教学部門の連携は、日常的な業務の処理から理事会 と教授会の運営に至るまで重層的に各フェーズで緊密に行われており、 極めて良好である。 今後もこの体制を維持していく。 73 杉野服飾大学 (3)7-2の改善・向上方策(将来計画) 小規模大学の利点を生かして、前述したとおり管理部門と教学部門の緊密な連携のもと に迅速かつ円滑な意思決定と運営が行われている。これまでも必要に応じて、不定期に学 内理事会を開催して臨時の案件を協議してきたが、将来に向けて学内理事会(理事長、学 長、学部長、ドレスメーカー学院長、事務局長)を常設のものとし、定例的に開催し、必 要に応じてこれに教務部長、学生部長、就職部長等の出席を求める体制を作る。 7-3.自己点検・評価のための恒常的な体制が確立され、かつその結果を教育研究をは じめ大学運営の改善・向上につなげるシステムが構築されていること。 《7-3の視点》 7-3-① 教育研究活動をはじめ大学運営の改善・向上を図るために、自己点検・評 価の恒常的な実施体制が整えられているか。 7-3-② 自己点検・評価の結果を教育研究をはじめ大学運営の改善・向上につなげ るシステムが構築され、かつ適切に機能しているか。 7-3-③ 自己点検・評価の結果が学内外に適切に公表されているか。 (1)7-3の事実の説明(現状) 1)自己点検・評価活動等の取り組みと学内外への公表 -自己点検に関する報告書の作成- 平成 12(2000)年度に、 「杉野女子大学・同短期大学部自己点検評価委員会」を設置して 自己点検評価を行い、平成 13(2001)年3月に報告書を発行した。しかし、報告書の公開、 活用については、明確な指針を欠いたものであった。 平成 16(2004)年 12 月に教授会と理事会の議を経て「杉野服飾大学自己点検評価委員会 規程」を制定し、これに基づく委員会が発足した。委員会では約1年間、建学の理念と教 育目標の検討を行った後、教育内容、特に服飾教育を中心に検討を行った。この検討に基 づく報告書の作成は、報告書の末尾に記載されているとおり、各委員により分担作成され ている。委員会は2年余りの検討の結果、平成 19(2007)年3月に「杉野服飾大学自己点検 評価報告書 2006」として報告書を刊行した。報告書は学内教職員に配布され、学生の閲覧 に供すべく図書館にも配備された。また文部科学省、日本私立学校振興・共済事業団、日 本私立大学協会、関係私立大学に送付された。 ≪学生による授業評価・アンケート調査の分析≫ 学生による授業評価は、平成 13(2001)年度に初めて実施した(第1回目) 。大学と短大 の全専任教員の担当する 179 クラスを対象とするものであった。平成 15(2003)年7月に、 この平成 13(2001)年度の調査の自由記述の分析結果と各教員の授業改善に向けての取り 組みに対するアンケート結果を報告書「授業改善のためのアンケート調査報告書=平成 13 年度実施授業アンケートのまとめ=」として取りまとめ、全教員に配布した。 また FD 研究委員会の担当で、毎年度、 「新入生実態調査」と卒業前在学生を対象とした 「学生生活アンケート」を実施し、その集計結果を報告書として教職員に報告し参考に供 している。この報告書では、以前から事務局によって行われていた入学時と卒業時におけ る学生の意識調査を分析し、平成 14(2002)年度、平成 15(2003)年度の入学時意識調査報 告と平成 13(2001)年度、平成 14(2002)年度卒業時意識調査報告として取りまとめたもの 74 杉野服飾大学 も収録している。 平成 16(2004)年度には、全専任教員が選ぶ2科目以上について調査を行い(第2回目) 、 各教員の5段階評価の集計結果と各教員による「数値の分析」 、 「自由記述の概要」および 「改善案」を収録した『2004 年度(平成 16 年度) 「授業評価アンケート」報告書』を発行 し、専任教員全員に配布し、授業改善の参考に供した。 平成 18(2006)年度には非常勤講師の全科目について調査を行い、調査結果を各人にフィ ードバックしている。尚、平成 18(2006)年2月にも、卒業を目前とした4年生を対象とし た教育内容等に関するアンケート調査を実施した。調査結果は数値の集計が報告書として まとめられ、対象となった全教員へフィードバックされた。 平成 19(2007)年度には、専任教員に対する3度目の授業評価を実施した(第3回目) 。 その方法と報告書の内容は第2回目と同じであるが、調査用紙の回収、閉封を受講学生に 行わせ、集計と自由記述の要約も担当教員以外の者が行った点が異なっている。 平成 15(2003)年度以降は毎年度、専任教員相互の授業公開と授業参観を実施している。 平成 19(2007)年度には基礎課程と専門課程の服飾造形担当教員による相互の授業参観と これに基づく授業に関する研究会を組織的に実施し、平成 20(2008)年度以降もこれを継続 して実施している。 2)自己点検・評価の結果を大学運営の改善・向上につなげる恒常的システム 1)の自己点検・評価活動等の取り組みで記述したとおり、 「大学自己点検評価委員会」 での自己点検評価過程から課題への取り組みを開始し、逐次改善策を実行に移している。 現行の委員会規程による「大学自己点検評価委員会」は、平成 16(2004)年 12 月に発足 したが、平成 17(2005)年は学園の創立 80 周年に当たり、平成 17(2005)年 11 月に創立 80 周年記念式典・祝賀会が目黒雅叙園を会場として開催されたことを契機として、委員会は 発足後の翌年 11 月まで1年間、学園の教育理念と教育目標を検討課題として検討を続行 した。このことによって、大学、短大の教員の中に教育理念と教育目標についての問題意 識と認識が浸透していった。これに引き続いて平成 17(2005)年 12 月から平成 18(2006)年 3月にかけて行われた服飾教育内容についての検討の中で、教育目標がさらに具体的に検 討された。 こうした検討を行う中で基礎課程と専門課程における教育の到達目標がそれぞれより 明確にされていった。検討の中でドレーピング&パターンメーキング教育のあり方が真剣 に討論され、課題が提起された。また、学園の服飾教育の原点であるドレメ式原型の問題 点も提起された。これらの課題については、平成 18(2006)年4月以降逐次取り上げられた 学生支援、教員組織、社会連携等の諸事項とともに平成 19(2007)年3月に発行された報告 書で明らかにされている。 平成 19(2007)年度以降、報告書で指摘した諸課題への取り組みが行われている。ドレー ピング&パターンメーキングの授業の充実強化、モードクリエーションコースの外部の専 門家による特別講義の充実、教員の資質向上のための企業研修の実施、教員作品の発表会 の開催と作品集の刊行、パリコレクションの見学、学生生活環境の施設設備の改善等々で ある。課題の一部は報告書の取りまとめを待たず、平成 18(2006)年度から実行されている。 ドレメ式原型の改訂については、平成 18(2006)年5月に、大学3人、短期大学部1人、 ドレスメーカー学院4人の教員(現在は3人)からなる合同の検討委員会が設置され、平 75 杉野服飾大学 (平成 21(2009)年7月に完成予定) 。 成 20(2008)年7月に改訂原案の報告会が行われている 管理運営と財務については、平成 16(2004)年度以降、諸規程の整備、事務処理体制の充 実強化、理事会改革、情報開示と説明責任の遂行、財務の健全化等を推進し、大学運営の 改善に努めてきた。 (2)7-3の自己評価 今回の認証評価を受ける前提としての自己点検評価を含めると3回の点検評価を行っ ているほか、学生による授業評価を継続実施し、授業の公開と授業参観、服飾関係教員の 授業研究会を実施している。自己点検評価を行うための恒常的な組織として、平成 16 年 12 月に「杉野服飾大学自己点検評価委員会」を設置している。また、 「自己点検評価報告 書」は、 (1)の1)で記した通り、学内外に公表されており、全教員に公表されるとと もに、各教員にフィードバックされていて大学運営の改善に活用されている。 (3)7-3の改善・向上方策(将来計画) 「杉野服飾大学自己点検評価委員会」はこれまでの取り組みを今後も継続的に実施し、改 善充実を図っていくこととする。 【基準7の自己評価】 平成 16(2004)年度以降、学園の管理運営の改善に向けて、理事長の強力なリーダーシッ プの下で、理事会のガバナンスを確立し、教職員全員が開示された情報に基づいて、共通 の認識を持って、一致協力して取り組んだことで大きな成果が得られ、短期間に飛躍的に 改善された。 【基準7の改善・向上方策(将来計画) 】 現在全般的に良好な状態を維持し、今後も絶えず点検を加えて一層の改善・向上を図っていく。 基準8.財務 8-1.大学の教育研究目的を達成するために必要な財政基盤を有し、収入と支出のバラ ンスを考慮した運営がなされ、かつ適切に会計処理がなされていること。 《8-1の視点》 8-1-① 大学の教育研究目的を達成するために、必要な経費が確保され、かつ収入 と支出のバランスを考慮した運営がなされているか。 8-1-② 適切に会計処理がなされているか。 8-1-③ 会計監査等が適正に行われているか。 (1)8-1の事実の説明(現状) 1)経費の確保と収入・支出のバランス 平成 16(2004)年度以降の諸取り組みによって短期間に財務の健全化が達成され、経営は 安定している。 平成 19(2007)年度決算では収支の均衡が保たれ、翌年度への繰越金は7億4百万円とな っている。帰属収支差額比率(資産売却・処分差額を除く)は、平成 18(2006)年度でプラ 76 杉野服飾大学 19(2007)年度で8.8%となっている。 人件費依存率も平成18(2006)、 平成19(2007) ス2.1%、 年度とも 60~62%となっている。 平成 20 年度決算でも収支の均衡が保たれ、 21 年度への繰越金は6億 64 百万円となった。 教育研究活動のキャッシュフローは、平成 18(2006)年度でプラス 389 百万円、19(2007)年 度でプラス 451 百万円である。また、平成 19(2007)年度末の借入金期末残高は9億 94 百 万円である。この結果、私立学校振興・共済事業団の平成 19(2007)年8月報告の「定量的 な経営判断指標に基づく経営状態の区分」で A2の正常状態に分類されている。しかしな がら平成 15(2003)年度までに多くの資産を失った結果、現在運用資産の余裕に乏しい状況 に置かれている。 平成 16(2004)年度以降、各研究室、事務局各部署から予算要求の提出を求め、収入見積 りにしたがって理事長の査定を行い、積上げ方式による予算編成を行っている。年度の事 業遂行に当っては予算差引を厳しく励行している。 以上のとおり、学園および大学の運営に必要な経費は確保され、収支の均衡がとれた運 営がなされている。 2)適切な会計処理 予算外の支出については稟議書での決裁による許可を必要とし、予算内の支出であって も 10 万円を越す支出については稟議書による決裁を経たうえで処理することとしている。 会計処理は「学校法人杉野学園経理規程」にしたがって適切に処理されている。 平成 15(2003)年度まで多額にのぼっていた仮払金は、特別に必要な例外を除いて原則と して認めないこととしている。このことによって経理の透明性が飛躍的に高められている。 3)会計監査等の適正な実施 毎年度2人の監事による監査が適正に行われている。2人の監事は理事会と評議員会に は常に出席し、必要に応じて意見を開陳している。 監事のうち1人は毎週1回出勤して、主として経理面の執行状況を指導している。監査 法人による監査も毎年度行われている。平成 19(2007)年度、平成 20(2008)年度ともに 10 月から翌年5月にわたって実地監査が行われている。 平成 19(2007)年度決算においては、監事による監査および監査法人による監査ともに学 園の計算書類等が適正なものであるとしている。平成 20 年度決算も同様である。 (2)8-1の自己評価 平成 16(2004)年度以降、短期間に財務の健全化が達成されたのは、理事長をはじめとす る経営者側の努力とこれに応えて危機意識を持って取り組んだ教職員の努力によるもの で、高く評価してよい。 収支の均衡状況も良好であり、会計処理も格段に改善されており、問題はない。 (3)8-1の改善・向上方策(将来計画) 大学、短期大学部、ドレスメーカー学院ともにここ数年志願者の減少傾向が続いている。 このため、短期大学部部門は収支の均衡を保つ限界であり、ドレスメーカー学院は均衡 が大きく崩れている。中長期計画で決定した方針にしたがって、短期大学部、ドレスメー カー学院の経営指標の改善策を実行する。 長期的には収益事業の強化によって学園の経営の下支えを図る必要がある。このため中 期計画に盛り込まれた事業の拡大を実施する。 77 杉野服飾大学 また、杉野学園キャンパスホール(仮称)建設のための資金の一部として、平成 21(2009) 年6月より寄附金募集を実施する。 8-2.財務情報の公開が適切な方法でなされていること。 《8-2の視点》 8-2-① 財務情報の公開が適切な方法でなされているか。 (1)8-2の事実の説明(現状) 杉野学園のホームページで、前年度の決算の内容として、財産目録、貸借対照表、資金 収支計算書、事業報告書、監事の監査報告書を掲載している。 ホームページへの掲載にあたっては、財務情報をわかりやすく説明するため、財務状況 を全般的に説明する資料、経年推移の状況が分かる資料、財務比率等を活用して財務分析 をしている資料も併せて掲載している。 杉野服飾大学学報に消費収支計算書の概要を掲載している。 さらに学園では、「学校法人杉野学園財務情報の公開に関する規程」を制定し、平成 17(2005)年7月から施行している。この規程に基づき、財産目録、貸借対照表、資金収支 計算書、消費収支計算書、事業報告書および監事の監査報告書を施設内で閲覧に供する方 法で公開している。 (2)8-2の自己評価 (1)の通り情報の公開が行われており、問題はないと考える。 (3)8-2の改善・向上方策(将来計画) 財務状況の説明資料として、さらにわかり易い説明を加えることについて検討したい。 8-3.教育研究を充実させるために、外部資金の導入等の努力がなされていること。 《8-3の視点》 8-3-① 教育研究を充実させるために、寄附金、委託事業、科学研究費補助金、各 種 GP(Good Practice)などの外部資金の導入や収益事業・資産運用等の 努力がなされているか。 (1)8-3の事実の説明(現状) 本学は今治のタオル産地、富士吉田の繊維産地、福島の繊維産地等と産学連携教育を行 っており、これらの事業で学生の作品制作に使用する生地について毎年度大量に提供を受 けている。また、学生の実地視察、打ち合わせ等に要する旅行関係施設の便宜提供を受け ることもある。しかし、産学連携教育に関しては、これら以外の外部資金を受けることは 困難である。 平成 21(2009)年4月にモスクワで実施した「日露学生による服飾造形に関する意見交換 会」の事業に対して国際交流基金から 45 万円の助成金を受けた。 教員の研究に関しては、私立学校振興・共済事業団から「平成 20 年度学術研究振興資 金(若手研究者奨励金) 」1件の交付と、平成 19(2007)年度以降3ヵ年継続事業で「私立 大学学術研究高度化推進事業(平成 20(2008)年度以降は、私立大学戦略的研究基盤形成支 78 杉野服飾大学 」のオープンリサーチセンターとして「現代衣裳の原点を探る-ウォルト作品の 援事業) 復元-」で総額 3,369 万円の計画をもって申請し、交付を受けている。 これらの他は科学研究費補助金等の外部資金による研究助成はないのが実情である。 本学園は平成 18(2006)年に特定公益法人の証明を受けている。平成 22(2010)、23(2011) 年度に建設を予定している「杉野学園キャンパスホール(仮称) 」の建設資金等の一部に 充てるための寄附金を、教職員、卒業生、保護者等を対象として平成 21(2009)年度から2 億円を目標に募集を開始した。 外部資金の獲得では、収益事業の役割が大きい。平成 19(2007)年度の収益事業部門から 学校会計への繰り入れ金は 32 百万円となっている。平成 20(2008)年度も同様に 34 百万円 の繰り入れを行った。 (2)8-3の自己評価 収益事業については一定の成果をあげているが、その他の外部資金の導入は不十分である。 (3)8-3の改善・向上方策(将来計画) 平成 21(2009)年度から開始した寄附金募集で目標額を達成するよう努力する。23(2011) 年度に建設を計画している新しい賃貸マンションの建設を計画通り進め、収益事業を強化 することとする。科学研究費補助金など外部資金の導入に努力する。 【基準8の自己評価】 積上方式の予算編成に基づいて収支のバランスを保った経営が行われ、会計処理も適切 に行われている。財務情報も適切に公開されている。 外部資金の導入は不十分である。 【基準8の改善・向上方策(将来計画) 】 平成 21(2009)年度から開始した寄附金募集を推進し、賃貸マンションの建設を計画通り 進め、収益事業を強化する。平成 23(2011)年度に計画している「杉野学園キャンパスホー ル(仮称) 」と賃貸マンションの建設によって積立金も一時的には失われるが、経常的な収 支の均衡を維持し、毎年度の剰余金を蓄積することによって、長期的に運用資産の増加、 蓄積を実行する計画である。 基準9.教育研究環境(施設設備、図書館、情報サービス・IT 環境等) 9-1.教育研究目的を達成するために必要なキャンパス(校地、運動場、校舎等の施 設設備)が整備され、適切に維持、運営されていること。 《9-1の視点》 9-1-① 校地、運動場、校舎、図書館、体育施設、情報サービス施設、附属施設等、 教育研究活動の目的を達成するための施設設備が適切に整備され、かつ有効 に活用されているか。 9-1-② 教育研究活動の目的を達成するための施設設備等が、適切に維持、運営され ているか。 (1)9-1の事実の説明(現状) 79 杉野服飾大学 1)校地・校舎並びに各施設の概要 <1>校地・校舎 校地は、目黒キャンパスと日野キャンパスおよび運動場で、目黒キャンパスは、JR 山 手線・南北線目黒駅から徒歩5分、駅に程近く、閑静な住宅・文教地区に相応しい地に所 在し、杉野服飾大学短期大学部および専門学校のドレスメーカー学院を併設している。 日野キャンパスは、京王線高幡不動駅からバスで「百草センター」で下車し、徒歩7分 の多摩の丘陵の自然に恵まれた住宅地に所在し、運動場と杉野幼稚園が隣接している。 本学の校地面積は 23,834 ㎡であり、校舎面積は、19,447 ㎡である。これらはいずれも 設置基準上必要な面積を満たしている。 (表9-1-1) 表 9-1-1 校地の面積 校地面積(㎡) 目黒キャンパス 設置基準上必要な面積(㎡) 13,197.71 (大学・短大部・ドレメ共用) 日野キャンパス 10,636.00 (大学専用) 合 計 在籍学生一人当たりの面積 23,833.71 12,830 14.46 10 表 9-1-2 運動場の概要 名 称 日野グランド 日野テニスコート テニスコート用ロッカールーム 面 積(㎡) 仕 様 6,491 (811) 一面 ( 65) 運動場は、日野キャンパスに隣接した場所にあり、陸上競技ができる。近隣からの要望 があり、サッカースクール(幼稚園児・小学生・中学生年齢別)にも活用されている。又、 日野キャンパス内にテニスコートがあり、体育の選択授業等に使用されている。 〈校舎〉 表 9-1-3 校舎の面積 校舎面積(㎡) 目黒キャンパス 17,705 日野キャンパス 1,742 合 計 19,447 設置基準上必要な面積(㎡) 8,033 校舎は、目黒キャンパスに、ドレメ通りに沿って、第2校舎(昭和 31(1956)年建築、昭 和 43(1968)年増築) 、第2新校舎(平成 15(2003)年建築) 、および第3校舎(昭和 35(1960) 年建築、昭和 41(1966)年増築)がある。 80 杉野服飾大学 (目黒キャンパス配置図)図 9-1-1 目黒キャンパス内のオープンスペースには、ベンチや野外用椅子・テーブル等を配し、 歓談・休息等に利用できるようにしている。 日野キャンパスには、G ブロック(General Block) (平成 13(2001)年建築) ・R ブロッ ク(Representation Block) (平成 14(2002)年建築)の2棟の校舎と学生会館「百草苑〈留 学生宿舎〉 」 (昭和 48(1973)年建築)とがある。 日野キャンパス内には、G ブロックの南側には四季の草花を楽しめる庭園があり、学生 会館の北側には、日野の環境を生かし、専門の服飾につながる繊維・染色に使用される樹 木を植樹している植物林がある。 81 杉野服飾大学 <2>体育館・グラウンド・テニスコート等 (日野キャンパス配置図)図 9-1-2 目黒キャンパスにある体育館は、体育の授業、部活動等に常時使用されている。 日野テニスコートは、体育の授業の一部に使用されている。日野グラウンドは、集中授 業に使用される他、近隣の要望により幼・小・中の子供向けのサッカースクールに使用さ れている。 <3>講義・演習室および、実験・実習室、学生自習室等 講義・演習室は、 【データ編 表9-2】に示すとおり目黒キャンパスに 27 室(一部は 短大部と共用) 、日野キャンパスに2室あり、視聴覚設備を充実させる等授業効果が上げら れるよう配慮している。 実験・実習室は、 【データ編 表9-3】に示すとおり全 48 室ある。このうち「服飾造 形実習室」16 室および3年次以上の専攻コースで使用する各実習室は、授業時間外も該当 学生が重点的に使用できるように配慮している。本学においては実習室は、講義室よりも 多く必要とされ、実践を重んじる本学の教育の最も大切な施設となっている。 服飾の学習に IT の利活用は、不可欠である。 「デジタル教材実習室」では、基礎課程の 柱である「ドレス構成論・実習」の授業を、デジタル化した教科書を大画面と手元のパソ コンを見ながら、ミシンの使い方や縫製の基礎を学ぶことができる。コンピュータを導入 した最先端の服飾教育の入り口となる学びの場となっている。 コンピュータ実習室5室は、 「画像設計演習」や「CAD パターンメーキング」で使用す る。CAD(コンピュータによる設計)や CG(コンピュータグラフィックス)について専 門的に学習して、服飾造形のデザイン力やパターンに関する能力を養っている。 「ニッティング&ニット CAD 室」は、ホールガーメントニッターやインクジェットプ リンターなど最新機器を導入した実習室で、この他「ロータリーハンガー・シーチング・ サンプル室」 「素材開発研究センター」等がある。 82 杉野服飾大学 <4>情報サービス・IT 環境等 学園内は LAN が構築されており、各講義室、コンピュータ実習室、研究室、事務室で パソコンが利用できるようになっており、情報システム課が管理に当たっている。学生個 人には、ID とパスワードを貸与し、パソコンへのログインに際しては、サーバにて個人認 証するシステムとしている。学生はファイルサーバにてデータを保存し、これを更新しな がら学習できる環境となっているので、セキュリティ面で極めて安全である。また web-mail を教職員、学生が使用できる環境を整備している。 事務部門では、入試、教務、学費納入、就職等の事務を処理するためのコンピュータ事 務システム等を取り入れて運用している。 【データ編 表9-8】には、コンピュータ実習室の状況を示した。 学生自習室には、 「ドレス構成」の教具(ミシン・裁断机等)や学内 LAN と接続された パソコンを設置している。 <5>附属図書館 図書、資料の所蔵数 附属図書館は、平成 14(2002)年7月に独立棟として新築された。この杉野服飾大学附属 図書館は、地上3階、地下1階からなり、総面積は 1,380 ㎡である。 資料については、 【データ編 表9-6】に示すとおりであるが、服飾関係を中心とし た書籍および資料を収蔵している。 学生閲覧室については、 【データ編 表9-7に示すとおりであるが、閲覧席は、閲覧 机・椅子席のほかに、雑誌閲覧用のソファーも用意されている。DVD などのオーディオ・ ビジュアルな設備を視聴できる部屋も完備し、インターネットやコピー機も利用可能であ る。 大きなガラス窓から、都心方面の風景を見渡すことが出来、ゆったりと閲覧に集中でき るスペースとなっている。 単科大学で小規模の図書館ではあるが、専門分野である服飾関係の資料を中心として、 蔵書構成を行ってきた。 昭和 59(1984)年より図書館業務の機械化の稼動を開始し、既に 24 年が経過している。 平成 14(2002)年からはインターネット上での蔵書公開を行い、徐々に卒業生や学外からの 利用者が増えている。 データベースは、卒業制作画像データベース等、本学図書館オリジナルデータベースを 構築している。 現在館員の研修も兼ねて、学園創立者杉野芳子の書誌作成中である。図書館活動の周知 のため、 「図書館年報」の作成も実施している。 専門分野に関しては、図書館としてのサービス内容を徐々に充実しているといえる。 <6>衣裳博物館 衣裳博物館は、昭和 32(1957)年、本学園創設者・杉野芳子によって設立された日本初の 衣裳博物館である。コレクションの基盤である西洋衣裳を中心に日本の着物や十二単、ア ジア、ヨーロッパの民族衣裳、ファッション・スタイル画など約 1,400 点に及ぶ服飾関係 資料を収蔵・展示している。 【データ編 表9-9】に博物館等の概要を示す。 平成 20(2008)年度には恒温・恒湿の新収蔵庫を設けた。 83 杉野服飾大学 <7>杉野記念館 杉野記念館は、本学園創設者杉野芳子の旧居であつたが、没後、記念館として創設者の 偉業を伝える場としている。学園は昭和 20(1945)年代からの杉野芳子の多数の作品を所蔵 している。順次これら作品の展示を行い、公開している。 <8>学生会館 目黒キャンパスの杉野学生会館「北桜」 「夕陽ケ丘」は、校舎に隣接した距離にあるの で通学に便利であり、遠隔地から入学した学生のために用意された居住施設である。 日野キャンパスには学生会館「百草苑(留学生用) 」が設置されている。 2)施設設備の維持と運営 施設設備は、専門業者による法定点検の消防設備点検・建築設備点検・昇降機の点検・ ボイラー性能検査・受水槽清掃等を実施している。その結果に基づき必要な改善を行い、 教育環境の維持管理を確実なものにしている。 施設設備の維持・管理は経理部管理課が「学校法人杉野学園固定資産および物品管理規 程」に従い行っている。 (2)9-1の自己評価 1)校地・校舎並びに各施設の概要 <1>校地・校舎 本学の校地面積および校舎面積はいずれも設置基準を満たしている。 <2>体育館・グラウンド・テニスコート等 目黒キャンパスに体育館、日野キャンパスにグラウンドおよびテニスコートを備え、整 備の上、学内外に有効に活用されている。 <3>講義・演習室、実験・実習室、学生自習室等 講義・演習室は教務課を中心とした管理により、また実験・実習室は、教員を中心とし た管理、コンピュータ実習室や IT 環境については、情報システム課の管理、学生自習室 等は学生課の管理により適切に運営されている。 <4>附属図書館 書籍・収集資料を服飾関係中心に絞ることにより、この分野においての日本有数の特化 した図書館としての独自性を打ち出している。利用度の高い服飾関係書籍・資料を1階に 配し、服飾関係論文・貴重書等を地下1階におくことにより、迅速な閲覧を可能にしてい る。授業に関連する参考図書の貸出しはスムーズに行えるよう配慮している。学生用の一 般図書等も服飾関連図書を中心に充実を図っている。学生の図書館利用は、服飾専門の大 学ということもあり、総合大学と同一には論じられないが、セミナールームの使用等もあ り、旧図書館時代に比べ格段に向上している。 委員会や担当職員により適切に整備・運営されている。 <5>衣裳博物館 委員会や担当職員により適切に整備・運営されている。 <6>杉野記念館 担当職員により適切に管理・運用されている。 84 杉野服飾大学 <7>学生会館 目黒キャンパスの学生会館「北桜」 「夕陽ケ丘」は、長年遠隔地からの入学者の寄宿舎 として利用されている。経年のための施設の痛みについては、修繕を加えながら運営して いる。 日野キャンパスには、学生会館「百草苑(留学生用) 」が設置されている。 (3)9-1の改善・向上方策(将来計画) 校地・校舎並びに各施設については、平成 20(2008)年度に立案された中長期計画で杉野 学園キャンパスホール(仮称)と教室を含んだ新校舎の建設をする。キャンパスホールは さまざまなファッションショー、式典、講演会、特別講義、発表会、セミナー、授業に活 用できる校舎を計画している。 図書館について今後は、更に服飾周辺(デザイン、色彩、工芸など)分野の資料充実も 図り、服飾関係に関わる学生から、専門分野で活躍する多くの人の参考、研究に役立つ図 書館を目指していく。 衣裳博物館については、所蔵品をもとにした研究や、ファッションの文化性や様式を伝 える企画展を逐次開催する。 9-2.施設設備の安全性が確保されていること。 《9-2の視点》 9-2-① 施設設備の安全性(耐震性、バリアフリー等)が確保されているか。 (1)9-2の事実の説明(現状) 安全性のチェックは定期的に行っている。施設・設備の衛生・安全についての全般的な 保守管理は、管理課が行っている。 【データ編 表6-2】のとおり、法令に基づくボイラー性能検査および関連機器の整備 工事、クーリングタワーの清掃、給水設備整備(受水槽・高架水槽) 、ボイラー運転、等を 専門業者に委託して実施している。 本校舎・第2校舎・第2新校舎・図書館・体育館・日野校舎1階は、床に高低差もなく バリアフリーとなっており、円滑に利用されている。耐震診断は順次行い、できるところ から補強工事等を行っている。 (2)9-2の自己評価 施設設備の安全性については、常にチェックし、保守を行っている。順次バリアフリー 化・耐震診断とその後の対応に取り組んできているが、全体に及んでいない。第3校舎は、 バリアフリー化の上で改造を要する部分がある。 (3)9-2の改善・向上方策(将来計画) 校舎については、現在の第2校舎を取り壊して、バリアフリーや耐震性を考慮した。杉 野学園キャンパスホール(仮称)と教室を含んだ新校舎を平成 23(2011)年度に建設する。 85 杉野服飾大学 第3校舎の耐震診断とこれに基づく改修計画については、実施時期を慎重に検討する。 9-3.アメニティに配慮した教育環境が整備されていること。 9-3-① 教育研究目的を達成するための、アメニティに配慮した教育研究環境が整備 され、有効に活用されているか。 (1)9-3の事実の説明(現状) 目黒キャンパスは、交通至便であって静かな文教地区・住宅地区にある。ドレメ通りに 沿って校舎・博物館・図書館等が所在し、教育研究活動には良い環境にある( 「図9-1- 1 目黒キャンパス」参照) 。ドレメ通りの中央に杉野記念館、そして作品展示空間(アー トスペースやギャラリーU)があり常時入賞作品・セミナー作品・卒業作品等々のドレス が展示され、良好な学習環境を創りだしている。こうした雰囲気を更に向上させるように 維持、運営にあたっている。快適なアメニティの向上も常々心がけており、日常の清掃・ 植木の手入れ、四季の草花のプランターの配置等を行っている。校舎内については、講義 室の清掃は学園が行い、実習室は使用する学生が清掃整頓を行っている。 更に校内・校庭清掃(日常清掃) 、ゴミ処理、樹木の剪定・除草・耕作等は専門業者に 委託して行っている。 (2)9-3の自己評価 目黒キャンパスは、山手線目黒駅から約 500m の交通至便な土地であるだけに、近年近 くに高層なビルが次々に建設されている。杉野学園の校舎群の並ぶドレメ通りは、80 年来 の文教地区・住宅地区であり、ドレメ通り沿いの住民からもこの環境を壊さないように維 持向上させていきたいという意見の一致をみており、住民による「夕陽ケ丘街づくり協議 会」が結成され、ドレメ通りをよりアメニティを感じる通りにしたいとの機運に満ちてい る。ドレメ通りに面して多くの建物を持つ当学園は、長年に亘って建築・改修の折ある毎 に建物の内外共に、アメニティの向上に努力している。その一つとして本校舎の万年塀を 取り払いフェンスとし、歩道上空地を設けたことによって、見通しがよく広々としたアメ ニティを感じる空間が創り出された。 (3)9-3の改善・向上方策(将来計画) 中長期計画で杉野学園キャンパスホール(仮称)と教室を含んだ新校舎の建設を準備し ている。実施に当たっては、アメニティの向上に配慮することとする。 【基準9の自己評価】 図書館・第2新校舎・日野校舎と教育研究環境の向上に向けて校舎等の新築を行ってき た。これらにより施設が整備され良好な環境になってきている。 【基準9の改善・向上方策(将来計画) 】 良好で安全な教育研究環境向上のために、杉野学園キャンパスホール(仮称)と教室を 含めた新校舎の建設をする。更にキャンパスにおける建物(各種改修工事・バリアフリー 対応・耐震工事等)の整備を順次行っていきたい。 86 杉野服飾大学 基準 10.社会連携 10-1.大学が持っている物的・人的資源を社会に提供する努力がなされていること。 《10-1の視点》 10-1-① 大学施設の開放、公開講座、リフレッシュ教育など、大学が持っている物的・ 人的資源を社会に提供する努力がなされているか。 (1)事実の説明(現状) 1)物的資源の社会への提供 大学施設の開放については、諸学会(意匠学会、服飾文化学会、ファッションビジネス 学会、歌謡学会、ユニバーサルファッション協会等)や検定試験(ファッション色彩能力、 ファッション販売能力、ファッションビジネス能力、パターンメーキング技術、フォーマ ルウェア、秘書技能、洋裁技術)に会場を提供するなどのほか、下記の場面においてもそ の役割を果たしている。 <1>図書館 本学図書館は、OPAC によってインターネット上で蔵書目録の公開を行い、卒業生をは じめ、他大学の学生や、一般の利用希望者への案内を行っている。専門資料は他機関の所 蔵に比して極めて多いため、一般の利用申請者には紹介状不要での入館便宜を計らってい る。また他の機関との相互協力も実施し、複写サービスや公共図書館からの紹介閲覧も受付けて いる。 <2>衣裳博物館 本学衣裳博物館は、昭和 32(1957)年に本学創設者・杉野芳子により設立された日本初の 衣裳博物館である。コレクションの基盤である西洋衣裳を中心に日本の着物や十二単、ア ジア、ヨーロッパの服飾関係資料を収蔵・展示している。年間を通じて公開しており、平 成 18(2006)年 2,373 人、 平成 19(2007)年 2,993 人、 平成 20(2008)年 1,627 人の来館者があった。 学内では、学芸員の養成を行っているので学内実習の場として活かされている。 展示は通常常設展を行っているが、平成 19(2007)年度、平成 20(2008)年度にそれぞれ 下記の企画展を開催した。 <ⅰ>開館 50 周年記念企画展「マネキンの黎明期-向井良吉とその仲間たち」 開催日程:平成 19(2007)年5月 24 日~8月7日 主催:杉野学園衣裳博物館、協力: (株)七彩、後援:品川区教育委員会 開館 50 周年を記念して、 (株)七彩の協力の下 1950 年代から 1960 年代頃の向井 良吉他により同時代に制作されたマネキンと杉野芳子作品を併せて公開した。ま た平成 19(2007)年6月 23 日には、特別記念講演会〔講師:大野木啓人(京都造 形芸術大学 芸術学部長) 、鈴木美和子(杉野服飾大学 服飾学部長) 〕を公開講座 として開催した。 <ⅱ>平成 20(2008)年度企画展 江上幹幸コレクション「布と暮らす人たち-東部インド ネシアのイカット」 開催日程:平成 20(2008)年 11 月 10 日~平成 21(2009)年2月 28 日 主催:杉野学園衣裳博物館、後援:品川区教育委員会 本展では、インドネシア国内でもイカット(絣)の宝庫といわれている東ヌサ・ トゥンガラ州の中からティモール島西部とフローレス島東部の島々の布と糸を 87 杉野服飾大学 中心にビーズをあしらった煙草入れやバッグなど約 160 点に及ぶ染織美術品を展 覧した。会期中に 740 人の来館者があった。 併せて平成 20(2008)年 12 月 13 日には、記念講演会[講師:江上幹幸 沖縄国 際大学教授]を公開講座として開催した。 <3>ロータリーハンガー・シーチングサンプル室 ロータリーハンガー・シーチングサンプル室は平成 12(2000)年~平成 14(2002)年の3 年間で研究開発した「デザイン・パターンデータベース」のシーチングサンプル 800 点を システマティックに可動できる実習施設である。システムは制作したいデザインをサンプ ルの中から選び、検索システムによって希望のサンプルを手にして確認、さらに CAD に転 送し、サイズ・デザインを変更したパターンを入手できる。 利用は申込制で、本学の卒業生、在学生以外にも海外の大学教員、アパレル企業の開発 担当者などが利用している。 <4>全国ファッションデザインコンテスト 学校法人杉野学園と(財)ドレスメーカー服飾教育振興会が共催する「全国ファッショ ンデザインコンテスト」は、文部科学省・東京都の後援を受け、平成 20(2008)年には第 46 回目を迎えた。回を重ねるごとに応募者の増加、レベルの向上が見られ、多くの才能豊か な人材を服飾界に送り出している。 (第 46 回の実績) Ⅰ部(作品制作の部)2,552 点、実物作品出品数 65 点 Ⅱ部(デザイン画 学生・一般の部)2,038 点、 (高校生の部)1,643 点 Ⅲ部(ファッションジュエリーの部)164 点、実物作品出品数 11 点 来場者数 2,405 人 <5>「服飾造形夏期セミナー」の実施 リフレッシュ教育は、本大学の母体であるドレスメーカー学院において昭和 23(1948) 年から始められ現在に受け継がれている「ファッション夏期セミナー」を毎年開講してき ており、これに大学・短大部の教員も参加して、その研究・作品制作・教育に長らく協力 してきた。 「服飾造形夏期セミナー」は、平成 18(2006)年から、上記の経験を活かして大学・短大 部の服飾関係の教員が対象を高等学校家庭科教員に変更して開催してきている。 毎年数講座を開講し、1日半希望の講座を受講し、2日目の午後は、教員による作品シ ョーの見学を行う。 平成 18 年度開講講座 第1回 スカート制作、パニエ制作、CAD 入門演習、布のコサージュ制作、リボン織り 123 人受講 制作、色彩検定対策講義・演習 平成 19 年度開講講座 第2回 ショートパンツ制作、ストレッチチュールを使ったブラウス、被服材料を知る -織物Ⅰの制作、パニエ制作、ファッション画、色彩能力をパワーアップ、CAD 入門-スーツパターン研究レベルⅠ、ドレーピング(立体裁断)でジャケット を作る 88 127 人受講 杉野服飾大学 平成 20 年度開講講座 第3回 ビスチェ、パニエ、CADⅠ・Ⅱ、ドレーピング(立体裁断)でジャケットを作 78 人受講 る、ファッション画 <6>公開講座 公開講座【データ編 表 10-2】は、生涯学習充実のため、昭和 63(1988)年の臨時教 育審議会で提言があり、よりよい生涯学習社会を実現するための取り組みが全国で広く進 められてきた。本学においても所在地の品川区教育委員会と共催して行う「公開講座」を スタートさせ、現在に至るまで年間2講座以上を行ってきている。最近の講座を下記に挙 げる。 平成 18(2006)年度 春 支え合いの構図~模写して学ぶ「絵画」 准教授 瀬古徹 56 人 秋 “本当の「おしゃれ」 ”シニア世代のおしゃれを学ぶ 教授 鈴木明 63 人 講師 大野木啓人、 195 人 平成 19(2007)年度 春 マネキンの黎明期-向井良吉とその仲間たち- 教授 鈴木美和子 秋 「源氏物語の衣裳たち」身体論を契機として 教授 馬場光子、 95 人 教授 原木せつ子 平成 20(2008)年度 春 パリコレクションにみる身体と衣服の新しい関係 教授 織田晃 54 人 秋 布と暮らす人たち-東部インドネシアのイカット 講師 江上幹幸 97 人 <7>キャリアアップ講座 平成 20(2008)年9月から、社会人の学び直しニーズに対応する服飾専門講座として、フ ァッション界就業者や就業準備者を対象に「立体裁断勉強会」 「アパレル CAD 講座」を開 講している。これらはキャリアアップ、再就職の機会提供の一助となっている。平成 20 年度は各 10 人の受講者があった。 <8>オープンカレッジ 平成 10(1998)年から、学園が主催する「杉野学園オープンカレッジ」を開設した。造形 の講座については、専門的な設備を必要とするものであり、本学ならではの講座の開講を している。 平成 18(2006)年度 スクリーンプリント(捺染)染色 加藤良次 117 人 ジュエリーコーディネーター検定 3 級講座 門馬宏子 14 人 ラッピングコーディネーター養成講座 藤原知子 8人 ラッピング応用講座 藤原知子 4人 太極拳 橋口澄子、大和く 22 人 に子 商品装飾展示技能検定 3 級合格対策セミナー 田口早苗 89 14 人 杉野服飾大学 平成 19(2007)年度 スクリーンプリント(捺染)染色 加藤良次 105 人 太極拳 橋口澄子 23 人 大和くに子 平成 20(2008)年度 スクリーンプリント(捺染)染色 加藤良次 70 人 ラッピングコーディネーター養成講座 藤原知子 3人 ラッピング応用講座 藤原知子 2人 (2)10-1の自己評価 図書館・衣裳博物館・特別展・全国ファッションデザインコンテスト・服飾造形夏期セ ミナー・公開講座・キャリアアップ講座・オープンカレッジの開講と、広く大学の持つ物 的・人的資源を社会に提供している。 オープンカレッジは、大学の授業での設備使用との競合が上手く解決できない面があり 継続に苦慮することが多い。また、経営上申込者が定員に達しないと残念ながら打ち切っ た講座もある。文化的・技術的な面から是非続けたい講座も思うように開講を続けること が難しい面もある。しかし、担当講師の熱意と社会的需要がマッチするものは、当初から 長く継続している。今後も講座内容・開講のあり方に一段の工夫をし続けたい。 (3)10-1の改善・向上方策(将来計画) 従来から行ってきた諸項目の充実を図ると共に、平成 21(2009)年度には次のセミナーを 実施する。 1)教員免許状「更新講習」 平成 20(2008)年度は「予備講習」に採択され試行実施をしたところ受講申込者が多数あ り、受講者の評価も高かった。平成 21(2009)年度は、平成 21(2009)年8月6日~9日の期 間で3講座の開講認可を文部科学省から受けた。今後も社会貢献の一つとして位置付けて いく。 2) 「第1回 杉野ファッショングッズ中学生セミナー」 中学生を対象に、地域と共にする教育企画を開催する。 開催期日:平成 21(2009)年8月 24・25 日 対象:大田区、品川区、目黒区在住の中学2・3年生 セミナー内容: 「ファッショングッズ -マイバッグを作ろう- 」 3) 「第1回 杉野ファッション高校生セミナー」 高等学校生を対象に、ファッションを共に目指す教育企画を開催する。 開催期日:平成 21(2009)年8月7・8日 対象:都内、近隣の県(通学可能な高校生)高校2・3年生 セミナー内容: 「制作体験-服を作ろう-」 上記2)3)のセミナーは、中学生・高等学校生たちが様々な形での実体験を持つこと が大事であろうとの思いから、本学の教育との関連のあるモノづくりの喜びや楽しさを体 験してもらうための社会貢献としての教育企画である。 90 杉野服飾大学 10-2.教育研究上において、企業や他大学との適切な関係が構築されていること。 《10-2の視点》 10-2-① 教育研究上において、企業や他大学との適切な関係が構築されているか (1)10-2の事実の説明(現状) 1)産学連携 本学では、教育研究の必要性から企業との適切な関係を構築している。現在アパレル企 業が求めているのは、クリエーション能力とビジネス能力を併せ持つ人材である。以下に 述べる産学連携による多くの試みは、学生が社会へ出る前に現場の実務を体験するチャン スとなり、企業にとっては、現代社会に対する若い感性を新鮮な刺激として取り込む場と なっている。 <1>愛媛県今治市の四国タオル工業組合が主催する「いまばりタオルフェア」へは平成 15(2003)年から参加し、タオルを素材とした新しい発想の商品を提案するブランドを立ち 上げ、プランニング、サンプル制作、展示会・発表、商談などのすべての工程に携り、多 くの収穫を得た。 <2>山梨県の富士吉田商工会議所と杉野学園が包括的連携に関して協定書を平成 18(2006)年7月に取り交わした。 「地域産業の振興および育成」 「地域ブランド育成」 「人材 育成」を目指す富士吉田織物共同組合との産学連携では、フランス リールの国際見本市 (Tissu Premier)に毎年作品を出品している。生地の提供を受けて学生がデザイン、パ ターン、縫製を行っている。 <3>福島県絹人繊織物構造改善工業組合との産学協同プロジェクトでは、平成 16(2004) 年より「ふくしまのおりもの展」へ出品している。シルクを主体とする生地の提供を得て、 企業とのコラボレーションでウエディングドレス、 パーティドレス、 タウンウェアを制作。 毎年、制作作品の展示発表は青山ベルコモンズで開催されている。 2)ファッションビジネス学会(FB 学会)の東日本支部として 平成5(1993)年に発足したファッションビジネス学会(The Society for Fashion Business)は、活動 10 年の実績により、第 19 期日本学術会議登録学術研究団体(家政学・ 経営工学)に認定された学会で、平成 15(2003)年、杉野学園に東日本支部の事務局が置か れ、活動の拠点となった。同支部では、創・工・商・生・育・総合の各領域で研究部会を 立ち上げ、杉野学園(大学・短大部・ドレスメーカー学院)の教員が各研究グループの代 表となって研究の場とするようになった。 当学会は、産業界と学会が協力して、関連他学会や海外諸国とも交流する新しいタイプ の学会である。活動の概要は、①研究部会、②論文誌の発行、③学会誌の発行、④研究発 表、⑤国際交流会議、⑥講演会、セミナー、⑦見学会などがある。 (2)10-2の自己評価 本学専門課程においては、そのいくつかのコースは企業との産学連携の機会を通して学 習の成果を上げている。大学内のみの学習機会に比べて企業での取り組みを知り、どのよ うな力が企業では求められているかを認識できる機会となり、目的を持って実力をつけて ゆく場となると考えている。本学の連携は生地の産地との連携である。生地を生かした服 づくりを本学の学生が担当し、完成した作品を展示という形で発表している。これらは学 91 杉野服飾大学 生にとって実践の場として有益な教育の機会となっている。一方、企業・業界にとっても 若い感性を作品に取り込む有益な機会となっている。 (3)10-2の改善・向上方策(将来計画) 今後も連携関係をより意義あるものとするよう交流を深めていく。また、中国浙江省の 服飾教育機関および企業との提携事業を開始する。 10-3.大学と地域社会との協力関係が構築されていること。 《10-3の視点》 10-3-① 大学と地域社会との協力関係が構築されているか。 (1)10-3の事実の説明(現状) これまで本学では、次の企画を中心に地域社会との協力関係を構築してきた。 1) 文部科学省・東京都後援、杉野学園・ (財)ドレスメーカー服飾教育振興会共催「全 国ファッションデザインコンテスト」 10-1-<4>に詳述 2)品川区(公開講座、企画展)後援の企画 <1>公開講座は 10-1-<6>に詳述 <2>杉野学園創立 80 周年記念杉野芳子作品展「杉野芳子がめざしたもの-創造・モー ド・教育-」を杉野学園主催、品川区教育委員会の後援で開催した。 開催日程:平成 18(2006)年3月 18 日~3月 29 日、於品川文化振興事業団 O(オー)美 術館 杉野芳子作品 105 点を展示し、併せて杉野芳子のプロフィール、杉野芳子の生きた時 代と社会背景の紹介をした。図録『杉野芳子がめざしたもの-創造・モード・教育-』 を発刊した。会期中、約 1,700 人の入場者があった。 <3>「日本のファッション力研究講座」の継続開催 平成 19(2007)年度から日本のファッション業界が抱えるさまざま課題を取り上げ広く 議論を起こしていこうと「日本のファッション力研究講座」をシリーズで開催している。 ファッション雑誌の編集長、デザイナー等専門家を招いてパネルディスカッション形式で 行う公開研究会で、企業関係者、外部の学校関係者等も多数参加している。日本のファッ ション関係の職業人、学校関係者等に研究交流の場を提供し、日本のファッション力を高 めるための有力な機会となるよう今後もシリーズで継続実施していく。 第1回 平成 19 年(2007.9.18)「日本のファッションは輸出できるの?」150 人出席 第2回 平成 19 年(2007.12.17)「なぜパリは強いのか-そのブランド力を検証する-」 240 人出席 第3回 平成 20 年(2008.6.16)「ファッションとエコロジー」200 人出席 第4回 平成 20 年(2008.9.20)「日本のファッション力を問う-エシカル(倫理的)ファ ッションの可能性-」130 人出席 第5回 平成 21 年(2009.4.13)「苦悩するラグジュアリーブランド その 21 世紀を考え る」220 人出席 <4>学園編集の新ファッションマガジン『ファッション力』の発行 92 杉野服飾大学 パリコレや JFW などファッションのコレクションのトレンド取材、学園の教員と学生 の作品紹介、学園主催の「日本のファッション力研究講座」シリーズや内外著名人の特別 講義の紹介記事などを紹介する。平成 20(2008)年6月にスクールマガジンとして発行した が、平成 21(2009)年6月から季刊の一般紙として発行した。単独4千部の他にブティック 社の「フィーメール」誌綴り込みとしても発行している。 <5>ボランティア活動その他 品川区八潮児童センターの活動への協力 <ⅰ>平成 18(2006)年8月 品川区八潮児童センターと杉野服飾大学とのコラボレーションにより、本学学生自治会 学生がセンター内で小学校・中学校・高等学校生を対象に「バッグづくり」を指導、子供 たちとの交流を行った。 <ⅱ>平成 18(2006)年 12 月・平成 19(2007)年3月 品川区八潮児童センターにおいて、センター内で本学舞台芸術部がファッションショー を開催。中学生・高等学校生にモデルやフィッターの体験をしてもらい、子供たちとの交 流を深めた。 <ⅲ>学生のドレメ通りの清掃 クリーンキャンペーンとして、目黒キャンパスを南北に貫いているドレメ通りを自治会 委員、クラス委員、クラブ員が担当を決め、毎日昼休みに清掃している。 <6>「杉野ファッショングッズ中学生セミナー」と「杉野ファッション高校生セミナー」 10-1(P.89)に記述の通りである。 (2)10-3の自己評価 本学の専門分野を自覚して出来る限り地域社会と協力関係を進めている。 (3)10-3の改善・向上方策(将来計画) 平成 21(2009)年度に初めて開講した「杉野ファッション高校生セミナー」は当初の予定 人数を大幅に上回る申し込みがあり、予定人数の2倍で打ち切った。今後は対象人数を増 加するよう極力努力することとする。 【基準 10 の自己評価】 本学では社会連携として、大学施設の開放、公開講座、リフレッシュ教育を行い、本学 の持つている物的・人的資源を社会に提供する努力をしている。 また、教育研究上、企業や他大学との適切な関係を構築してきている。 そして「産学連携」を行ってきている。また「FB 学会」活動を通して、あるいは「日 本のファッション力研究講座」の継続開催と雑誌『ファッション力』への発表により他の 大学やアパレル業界の関係者との連携が有効に行われている。 この他、地域社会との協力関係も構築している。 【基準 10 の改善・向上方策(将来計画) 】 (1)従来から行ってきた諸項目の充実をはかると共に、平成 21(2009)年度から開始する 次のセミナーを拡大、発展させる。 1)教員免許状「更新講習」 (10-1(P.89)に記載) 93 杉野服飾大学 2)中学生を対象に、地域と共にする教育企画「第1回 杉野ファッショングッズ中学生 セミナー」を開催する。 (10-1(P.89)に記載) 3)高校生を対象に、ファッションを共に目指す教育企画「第1回 杉野ファッション高 校生セミナー」を開催する。 (10-1(P.89)に記載) この講座については、受講人数の増加を図る。 (2)中国の浙江紡織服装職業技術学院と杉野学園との共同事業として、寧波市でアパレ ル産業の従業員・社会人を対象として中国の服飾と日本の服飾の相互の発展に有効な 研修事業を展開する。 基準 11.社会的責務 11-1.社会的機関として必要な組織倫理が確立され、かつ適切な運営がなされているこ と。 《11-1の視点》 11-1-① 社会的機関として必要な組織倫理に関する規定がされているか。 11-1-② 組織倫理に関する規定に基づき、適切な運営がなされているか。 (1)11-1の事実の説明(現状) 1)組織倫理規程 かつて本学園は、財務担当理事(事務局長兼任)と経理部長による不適切な財務運営に よって経営困難な状態に陥り、平成 15(2003)年8月に文部科学省から管理運営の改善を求 められた。平成 16(2004)年5月に中村賢二郎学長が理事長に就任してから理事会の改革が 行われ、理事会のガバナンス機能が確立し、管理運営の改善が急速に進展した。不適切な 管理運営が行われた背景には組織倫理に関する諸規程の不備があった。文部科学省の指摘 も踏まえて、急速に諸規程の整備が行われた。新たに整備された規程で組織倫理に係る主 なものは、次のとおりである。 学校法人杉野学園理事会に提出する議案に関する規程(平成 16(2004)年7月1日施行) 学校法人杉野学園管理運営規程(平成 16(2004)年7月1日施行) 経理規程(平成 16(2004)年8月1日施行) 経理規程施行細則(平成 16(2004)年8月1日施行) 固定資産および物品の契約事務取扱規程(平成 16(2004)年8月1日施行) 事務分掌規程(平成 16(2004)年8月1日施行) 文書取扱規程(平成 16(2004)年8月1日施行) 文書保存規程(平成 16(2004(年8月1日施行) 学校法人杉野学園におけるセクシャル・ハラスメントの防止・対策に関する規程 (平成 16(2004)年 11 月1日施行) セクシャル・ハラスメントの防止・対策関連機関の組織および運営に関する規程 (平成 16(2004)年 11 月1日施行) 杉野服飾大学自己点検評価委員会規程(平成 16(2004)年 12 月1日施行) 財務情報の公開に関する規程(平成 17(2005)年7月1日施行) 杉野学園情報通信ネットワーク規程(平成 17(2005)年 12 月1日施行) 94 杉野服飾大学 個人情報の保護に関する規程(平成 17(2005)年 12 月 15 日施行) 個人情報保護委員会規程(平成 17(2005)年 12 月 15 日施行) 学校法人杉野学園資金運用規程(平成 18(2006)年6月1日施行) 学校法人杉野学園防災規程(平成 18(2006)年 12 月 19 日施行) 杉野服飾大学・杉野服飾大学短期大学部における競争的資金等に係るモニタリング・監査 要項(平成 19(2007)年 10 月 31 日裁定、 (平成 19(2007)年 11 月1日適用) なお、私立学校法の改正を受けて平成 18(2006)年1月に寄附行為を改正した際、法人運 営の基本的事項について改善を行っている。 平成 18(2006)年7月末には、これらの諸規程を含めた「杉野学園規程集」が作成され、 文部科学省、私立学校振興・共済事業団にも提出した。 2)組織倫理に関する規定に基づく運営 これらの新しく制定された諸規程に基づいて、理事会、評議員会の運営、教員、事務職 員の日常業務の処理が行われている。ルールを尊重しながら日常業務を処理する習慣、態 度は教職員全体に行きわたってきている。予算要求から予算の決定、年度内の予算の執行 に当たってのルールに基づく処理が適切に行われているのはその一例である。仮払金によ る経理処理は、現在では、外国の交流協定校からの教員・学生の来訪時の滞在費用の一部 の支払等、極めて例外的な場合以外行われていないのもその一例である。これによって学 園の財務・経理の透明性は飛躍的に高められた。監査法人による年間の監査日数が大幅に 短縮されてきているのはその証左である。 学園のホームページでは、財務情報を公開しているほか、学園の管理運営についても公 開している。平成 20(2008)年7月末に策定した「杉野学園中長期計画」もほぼ全部をホー ムページで公開している。 (2)11-1の自己評価 管理運営に関する諸規程はほぼ十分に整備されており、日常業務の遂行もこれらの規程 を遵守して行われている。平成 15(2003)年当時と比較して飛躍的に改善され、良好な状況 である。 (3)11-1の改善・向上方策(将来計画) 教職員の日常業務の処理態度は良好であるが、過去において長い間諸規程の不備な状態 の下で理事会・管理者自体が規範意識の面で不十分な管理運営を行ってきたため、教職員 の中に規範意識を深く根付かせるためには今後引き続いて努力を続けることが大切であ る。理事長が主宰して、若手の事務職員を対象とし平成 20(2008)年 1 月から開始した「学 校法規研究会」によって若手職員の意識を育成し、全職員への波及を図っているが、これ を継続的に実施し、一層発展させていくこととする。 11-2.学内外に対する危機管理の体制が整備され、かつ適切に機能していること。 《11-2の視点》 11-2-① 学内外に対する危機管理の体制が整備され、かつ適切に機能しているか。 (1)11-2の事実の説明(現状) 平成 18(2006)年 12 月に「学校法人杉野学園防災規程」を制定し、防災のための点検、 95 杉野服飾大学 災害発生時の対応組織を定めている。この規程に基づいて、毎年火災発生時の消火訓練を 職員で実施している。 また、災害発生時の避難については、教職員と学生についてそれぞれマニュアルを作成 し周知を図っている。 大規模災害の発生に対しては、品川区と協定を結んでいる。 学生の海外研修旅行中の災害その他の緊急事態に対しては、地震発生時の対応組織で基 本的には対応できると考えている。 その他の緊急事態発生時の危機管理組織も地震災害時の組織の応用で対応することと しているが、想定外の事態に対しては、理事長を中心として既存の学内組織で臨機応変に 対処することとしている。 火災発生時の訓練に対しては、学生会館で演習を行っているが、校舎での演習は平成 20(2008)年までは行っていなかった。 (2)11-2の自己評価 災害発生時の避難訓練については、校舎が一般民間住宅地と一体的な立地の中にあるた め、実行し難いという問題があり、全学生を対象とした訓練が行われていなかったが、本 年平成 21(2009)年6月に1年生の避難訓練が行われた。 (3)11-2の改善・向上方策(将来計画) 災害発生時のマニュアルを周期的に教職員、学生に周知させるとともに、毎年1年生の 校舎における避難訓練を実施する。 11-3.大学の教育研究成果を公正かつ適切に学内外に広報活動する体制が整備されてい ること。 《11-3の視点》 11-3-① 大学の教育研究成果を公正かつ適切に学内外に広報活動する体制が整備 されているか。 (1)11-3の事実の説明(現状) 1) 『杉野服飾大学・杉野服飾大学短期大学部 紀要』を毎年度 2,300 部発行し、学内配付 をしている他、他大学図書館等に寄贈している。この紀要には研究論文の他に、服飾造形・ デザイン領域等に関する作品(写真、解説)も収録している。 2)平成 17(2005)年度から『杉野服飾大学 杉野服飾大学短期大学部 教員研究作品集』 を刊行し、学内で教員・学生に配布するほか、高等学校等への訪問時にも持参している。 3)平成 20(2008)年度からスクールマガジン『ファッション力』を 5,000 部発行して、パ リコレクションへの教員、学生の研修出張の内容を収録して、教職員、学生の利用に供し ている。平成 21(2009)年度からはクォータリーの刊行とし、ファッション専門誌とタイア ップして一般の社会人向けに発売する計画である。 (2)11-3の自己評価 平成 16(2004)年以降の改革の中で急速に教員の研究、研鑽の成果を公表し、また、高校 等の教員にリフレッシュの機会を提供する体制が整えられてきた。さらに学校間とファッ 96 杉野服飾大学 ション産業界を結ぶ研究講座が常設された。最近数年間に大学の教育研究活動を社会に発 信する体制が整えられたことは評価に値する。 (3)11-3の改善・向上方策(将来計画) 本学では学内 LAN を使って教育システムの一部(服飾造形教育サポートシステム、ド レーピング&パターンメーキングサポートシステム-立体裁断・製図-)を IT で内部利用 している。また、ストリーミングサーバーを使って動画を教育に利用している。しかし、 学内の研究成果をデジタルコンテンツとして学内外に配信するシステムは整備されてい ない。ウォルト作品の復元研究の第3年次となる平成 21(2009)年度には、この研究成果を 紙媒体の報告書として刊行すると同時にデジタルコンテンツとして、広く服飾研究者並び にファッション界、アパレル業界の関係者に IT で発信し、利用に供する予定である。こ れを機会に、杉野服飾大学の教育研究の成果をデジタルコンテンツとして公開するシステ ムを構築する計画である。 【基準 11 の自己評価】 組織倫理に関する規程は整備され、適切な運営が行われている。災害発生時の危機管理 体制は整備され、教職員にマニュアルが周知されているが、学生の避難訓練は一部で行わ れたものの不十分である。 教育研究成果の広報は、最近数年間に急速に進展してきている。 【基準 11 の改善・向上方策(将来計画) 】 平成 16(2004)年度以降の改革改善によって組織倫理は一応確立してきている。しかし、 職員は長い間諸規則の不備の中で仕事をしてきており、また、経営責任者も組織倫理の維 持確立への取り組みに欠けるところがあった。現在職員は組織倫理に関する諸規程にした がって職務に従事しており、大幅に改善されている。今後は現在取り組んでいる若手職員 の「学校法規研究会」によってリーガルマインドを育成し、ひいては教職員全体に規範意 識を浸透させ、育成していくこととしている。 教育研究活動の学内外への広報については、私立大学学術研究高度化推進事業(平成 20(2008)年度以降は、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業)のオープン・リサーチ・セ ンターの研究であるウォルト作品の復元研究の研究成果発表を機に、デジタルコンテンツ としての発信システムを構築する計画である。 97 編集 杉野服飾大学 自己点検評価委員会 委員メンバー 委員長 中村賢二郎(理事長・学長・教授) 鈴木美和子(学部長・教授) 馬場光子(学生部長・教授) 塚田耕一(図書館長・教授) 大久保正健(FD研究委員長・教授) 安部智子(専門課程 1 コース主任・准教授) 猪野由美子(前基礎課程主任・准教授) 水野真由美(基礎課程主任・准教授) 杉野秀子(事務局長) 川端下ヨシミ(教務事務部長) 白井勝美(LO・教務部長・教授) (書記) 内山教子(教務課) 宮本泰子(学務課主幹) 杉野服飾大学 自己評価報告書 2009 平成 21 年 6 月 18 日 発行 編集 杉野服飾大学自己点検評価委員会 発行 杉野服飾大学 〒141-8652 東京都品川区上大崎 4-6-19 電話 03-3491-8151 印刷 佐伯印刷株式会社
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