かぐらおか ゆうしょう • • • • • 大学では理学部物理学科素粒子物理 証券アナリスト 日興証券 (1991/04~2007/07) 三菱信託銀行 (2007/08~2000/03) 武蔵大学 (2000/04~) 神楽岡プレ専門ゼミ • 研究テーマ:株価指数 – 日経平均株価,TOPIX,ダウ平均 – 計算方法,利用方法,長所と欠点 • どういう「力」がつくか? – – – – 証券アナリストとしての「実践力」の修得 思考力 ゼミ生によるディスカッション 分析力 EXCEL による分析 説得力 PowerPoint プレゼンテーション技法 • どういう学生に来てほしいか? – 証券アナリスト資格の取得を目指す – 数学が好き – 受験勉強はあまりしなかったけれど,たまたま武蔵大学に合格 アウトライン 金融取引はリスクのババ抜き みんなが知らずにジョーカーを引い ていたサブプライム • • • • リスクとリターン 証券化商品 デリバティブ サブプライム住宅ローン発の金融危機 2011/06/14 Y. KAGRAOKA 1 リターン (return) • リターン リスクとリターン – 収益率 – 正のリターン – 負のリターン 何%儲かったか? 何%損したか? – 平均リターンを単に「リターン」ということも – 計測期間も大切 • 日率,週率,月率,年率 リスク (risk) • 将来の不確実性 – 確定的でないことを「リスクがある」という – 下記の両方の場合を含む – 将来の不都合・不利な結果 – 将来の好都合・有利な結果 リスクとリターンはトレードオフ • ハイ・リターン ⇔ ハイ・リスク – 株式,ジャンク・ボンド,馬券 • ロー・リスク ⇔ ロー・リターン – 銀行預金 • ロー・リスク&ハイ・リターン – ⇒ いかさま,詐欺 • ハイ・リスク&ロー・リターン – 誰も投資しない 2 リスクとリターン 株価指数の指数値 • リスク 不確実性のこと • リターン 収益(利益と損益の両方を含む) rt = Pt − Pt −1 Pt −1 日付 日経平均 ダウ平均 1988/12 30,159.00 2,168.57 1989/01 31,581.30 2,342.32 1989/02 31,985.60 2,258.39 1989/03 32,838.68 2,293.62 1989/04 33,713.35 2,418.80 1989/05 34,266.75 2,480.15 1989/06 32,948.69 2,440.06 1989/07 34,953.87 2,660.66 1989/08 34,431.20 2,737.27 1989/09 35,636.76 2,692.82 1989/10 35,549.44 2,645.08 1989/11 37,268.79 2,706.27 1989/12 38,915.87 2,753.20 時刻tのリターン 時刻tの株価 Pt Pt −1 時刻t − 1の株価 r = E[rt ] 平均値 リターン σ = Std[rt ] 標準偏差 リスク 株価指数のグラフ化 リターンの算出 45,000 4,500 40,000 4,000 35,000 3,500 30,000 3,000 25,000 2,500 20,000 2,000 15,000 1,500 10,000 1,000 5,000 500 月 月 月 89 年 12 年 11 89 19 19 年 9月 年 10 89 19 年 8月 89 19 89 19 89 年 6月 日経平均 19 89 19 19 89 年 5月 年 4月 年 3月 89 19 89 19 19 89 年 2月 年 1月 年 12 89 19 88 19 年 7月 0 月 0 198 8/1 2 198 9/0 1 198 9/0 2 198 9/0 3 198 9/0 4 198 9/0 5 198 9/0 6 198 9/0 7 198 9/0 8 198 9/0 9 198 9/1 0 198 9/1 1 198 9/1 2 株価 リターン 日経平均 ダウ平均 日経平均 ダウ平均 30 ,15 9.0 0 2 ,16 8.5 7 31 ,58 1.3 0 2 ,34 2.3 2 56 .59 96 .15 31 ,98 5.6 0 2 ,25 8.3 9 15 .36 -43 .00 32 ,83 8.6 8 2 ,29 3.6 2 32 .00 18 .72 33 ,71 3.3 5 2 ,41 8.8 0 31 .96 65 .49 34 ,26 6.7 5 2 ,48 0.1 5 19 .70 30 .44 32 ,94 8.6 9 2 ,44 0.0 6 - 46 .16 -19 .40 34 ,95 3.8 7 2 ,66 0.6 6 73 .03 108 .49 34 ,43 1.2 0 2 ,73 7.2 7 - 17 .94 34 .55 35 ,63 6.7 6 2 ,69 2.8 2 42 .02 -19 .49 35 ,54 9.4 4 2 ,64 5.0 8 -2 .94 -21 .27 37 ,26 8.7 9 2 ,70 6.2 7 58 .04 27 .76 38 ,91 5.8 7 2 ,75 3.2 0 53 .03 20 .81 ダウ平均 3 リスクの算出 リターンのグラフ化 120 100 1 98 8/ 1 2 1 98 9/ 0 1 1 98 9/ 0 2 1 98 9/ 0 3 1 98 9/ 0 4 1 98 9/ 0 5 1 98 9/ 0 6 1 98 9/ 0 7 1 98 9/ 0 8 1 98 9/ 0 9 1 98 9/ 1 0 1 98 9/ 1 1 1 98 9/ 1 2 80 60 40 20 19 89 年 12 月 19 89 年 11 月 年 9月 19 89 年 10 月 19 89 19 89 年 8月 年 7月 年 6月 19 89 年 5月 19 89 19 89 年 4月 年 3月 19 89 19 89 年 2月 年 1月 19 89 -20 19 89 19 88 年 12 月 0 株価 リターン 偏差 偏差の2 乗 日経平均 ダウ平均 日経平均 ダウ平均 日経平均 ダウ平均 日経平均 ダウ平均 3 0 ,1 59 .0 0 2 ,1 6 8.57 3 1 ,5 81 .3 0 2 ,3 4 2.32 5 6.5 9 9 6.1 5 3 0.3 7 7 1.2 1 92 2 .1 8 5 07 0 .6 9 3 1 ,9 85 .6 0 2 ,2 5 8.39 1 5.3 6 - 4 3.0 0 - 1 0.8 6 - 6 7.9 4 11 7 .9 9 4 61 5 .2 9 3 2 ,8 38 .6 8 2 ,2 9 3.62 3 2.0 0 1 8.7 2 5.7 8 - 6.2 2 3 3 .4 1 3 8 .6 6 3 3 ,7 13 .3 5 2 ,4 1 8.80 3 1.9 6 6 5.4 9 5.7 4 4 0.5 6 3 2 .9 2 1 64 4 .7 5 3 4 ,2 66 .7 5 2 ,4 8 0.15 1 9.7 0 3 0.4 4 - 6.5 3 5.5 0 4 2 .6 0 3 0 .2 4 3 2 ,9 48 .6 9 2 ,4 4 0.06 - 4 6.1 6 - 1 9.4 0 - 7 2.3 8 - 4 4.3 3 5 23 9 .1 8 1 96 5 .5 7 3 4 ,9 53 .8 7 2 ,6 6 0.66 7 3.0 3 1 0 8.4 9 4 6.8 0 8 3.5 5 2 19 0 .6 7 6 98 0 .8 8 3 4 ,4 31 .2 0 2 ,7 3 7.27 - 1 7.9 4 3 4.5 5 - 4 4.1 7 9.6 1 1 95 0 .8 4 9 2 .4 4 3 5 ,6 36 .7 6 2 ,6 9 2.82 4 2.0 2 - 1 9.4 9 1 5.7 9 - 4 4.4 2 24 9 .3 8 1 97 3 .5 0 3 5 ,5 49 .4 4 2 ,6 4 5.08 - 2.9 4 - 2 1.2 7 - 2 9.1 6 - 4 6.2 1 85 0 .5 9 2 13 5 .5 4 3 7 ,2 68 .7 9 2 ,7 0 6.27 5 8.0 4 2 7.7 6 3 1.8 1 2.8 2 1 01 2 .1 0 7 .9 7 3 8 ,9 15 .8 7 2 ,7 5 3.20 5 3.0 3 2 0.8 1 2 6.8 1 - 4.1 3 71 8 .7 2 1 7 .0 4 平均 2 6.2 2 2 4.9 4 分散 1 11 3 .3 8 2 04 7 .7 1 共分散 標準偏差 3 3 .3 7 4 5 .2 5 相関係数 リスク リターン 偏差の クロス項 2 1 62 .4 3 7 37 .9 4 - 35 .9 4 2 32 .7 0 - 35 .8 9 3 2 09 .0 4 3 9 10 .6 0 - 4 24 .6 7 - 7 01 .5 3 1 3 47 .7 6 89 .8 0 - 1 10 .6 7 8 65 .1 3 0 .5 7 日経平均 ダウ平均 3 3 .3 7 4 5 .2 5 2 6 .2 2 2 4 .9 4 -40 -60 日経平均 ダウ平均 リスク=リターン平面 証券投資 • 証券投資 株式・債券 • 株価や債券価格は日々変動 • 変動する原因 30 25 リターン 20 – 経済環境の変化 – 産業・業種の景気 – 個別企業の業績 15 10 5 0 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 リスク 4 リスク • マーケット・リスク – 経済環境の変化によって価格が変動 – 金利や為替レートの変化 • 信用(クレジット)・リスク – 個別企業の信用力 • 倒産しないだけの企業の体力 • 倒産しない可能性 • 流動性リスク – 当該証券を売りたくても買い手がいない. – 当該証券を買いたくても売り手がいない 社債 • マーケット・リスク – 金利が上昇・下落した • 日銀が金利を引き下げた • 信用(クレジット)リスク – 社債の発行企業が倒産した • JAL,マイカル • 流動性リスク – サブプライムローン危機以後,証券化商品を購 入したいという投資家がゼロに 社債の格付け • 社債の信用リスクの評価 – R&I, Standard & Poor’s, Moody’s • 社債の信用リスクAAAなどの記号で表記 リスクへの対処 • リスク・マネジメント – リスクの測定 – リスクの管理 • ヘッジ 5 証券化商品:まとめ • 証券化とは 証券化 – 債権 Æ プール Æ 証券化 – 有価証券として広く投資家に分配 • 証券化のメリット – リスクの分散 – リスクとリターンの再分配(債権者Æ 投資家) – 証券化による流動性の向上 債権とは • 住宅ローン債権 – 個人へ融資している住宅ローン会社が保有する債権 • 自動車ローン債権 • カードローン債権 • リース債権 • 債権のリスク – 期限前返済 – 貸倒れ • 債権者 • 債務者 有価証券とは • 証券市場での売買の対象として金融商品取 引法に列挙されている証券 • 国債,地方債,金融債,株券,社債,投資信 託の受益証券 • 国・地方公共団体・企業の資金調達手段 • 企業や個人の投資対象 借金の貸し手 借金の借り手 6 住宅ローンの与信 ローンプールの貸付金利:貸倒れ無 借入金 • サブプライムローン – 信用力の低い人向けの住宅ローン – 低所得者向けの住宅ローンではない • 住宅ローン – 金額:多額 – 期間:長期間 – 長期にわたるデフォルト予測 • 与信 – FICO スコアの活用 金利 1年後 100万円 8% NO 108万円 ローン#02 100万円 8% NO 108万円 ローン#03 100万円 8% NO 108万円 ローン#04 100万円 8% NO 108万円 ローン#05 100万円 8% NO 108万円 ローン#06 100万円 8% NO 108万円 ローン#07 100万円 8% NO 108万円 ローン#08 100万円 8% NO 108万円 ローン#09 100万円 8% NO 108万円 ローン#10 100万円 8% NO 1000万円 ローンプールの貸付金利:貸倒れ有1 貸倒れ ローン#01 合計 108万円 1080万円 ローンプールの貸付金利:貸倒有2 借入金 借入金 ローン#01 100万円 金利 貸倒れ 8% NO 1年後 金利 貸倒れ 1年後 ローン#01 100万円 20% NO 120万円 ローン#02 100万円 20% NO 120万円 108万円 ローン#02 100万円 8% NO 108万円 ローン#03 100万円 8% NO 108万円 ローン#03 100万円 20% NO 120万円 ローン#04 100万円 8% NO 108万円 ローン#04 100万円 20% NO 120万円 ローン#05 100万円 8% NO 108万円 ローン#05 100万円 20% NO 120万円 ローン#06 100万円 8% NO 108万円 ローン#07 100万円 8% NO 108万円 ローン#06 100万円 20% NO 120万円 ローン#08 100万円 8% NO 108万円 ローン#07 100万円 20% NO 120万円 ローン#09 100万円 8% NO 108万円 ローン#08 100万円 20% NO 120万円 ローン#10 100万円 8% YES ローン#09 100万円 20% NO 120万円 ローン#10 100万円 20% YES 1000万円 合計 0 972万円 1000万円 合計 0 1080万円 7 ローンの貸付:貸倒れ無 借入金 金利 貸倒れ ローンプール:貸倒れ無 1年後 借入金 債務者#01 ローン#01 100万円 8% NO 108万円 債権者#01 金利 貸倒れ 1年後 ローン#01 100万円 8% NO 108万円 108万円 債権者#01 ローン#02 100万円 8% NO 108万円 108万円 債権者#02 債務者#02 ローン#02 100万円 8% NO 108万円 債権者#02 債務者#03 ローン#03 100万円 8% NO 108万円 債権者#03 ローン#03 100万円 8% NO 108万円 108万円 債権者#03 債務者#04 ローン#04 100万円 8% NO 108万円 債権者#04 ローン#04 100万円 8% NO 108万円 108万円 債権者#04 ローン#05 100万円 8% NO 108万円 108万円 債権者#05 ローン#06 100万円 8% NO 108万円 108万円 債権者#06 ローン#07 100万円 8% NO 108万円 108万円 債権者#07 債務者#05 ローン#05 100万円 8% NO 108万円 債権者#05 ローンプール 債務者#06 ローン#06 100万円 8% NO 108万円 債権者#06 債務者#07 ローン#07 100万円 8% NO 108万円 債権者#07 ローン#08 100万円 8% NO 108万円 108万円 債権者#08 債務者#08 ローン#08 100万円 8% NO 108万円 債権者#08 ローン#09 100万円 8% NO 108万円 108万円 債権者#09 ローン#10 100万円 8% YES 108万円 108万円 債権者#10 債務者#09 ローン#09 100万円 8% NO 108万円 債権者#09 1000万円 債務者#10 ローン#10 100万円 8% NO 108万円 債務者#02 ローン#01 ローン#02 100万円 100万円 20% NO 20% NO 120万円 120万円 1080万円 1080万円 債権者#10 ローンの貸付:貸倒れ有 債務者#01 合計 ローンプール:貸倒れ有 借入金 債権者#01 金利 貸倒れ 1年後 ローン#01 100万円 8% NO 108万円 97.2万円 債権者#01 ローン#02 100万円 8% NO 108万円 97.2万円 債権者#02 ローン#03 100万円 8% NO 108万円 97.2万円 債権者#03 債権者#02 債務者#03 ローン#03 100万円 20% NO 120万円 債権者#03 債務者#04 ローン#04 100万円 20% NO 120万円 債権者#04 ローン#04 100万円 8% NO 108万円 97.2万円 債権者#04 債権者#05 ローン#05 100万円 8% NO 108万円 97.2万円 債権者#05 ローン#06 100万円 8% NO 108万円 97.2万円 債権者#06 ローン#07 100万円 8% NO 108万円 97.2万円 債権者#07 ローン#08 100万円 8% NO 108万円 97.2万円 債権者#08 債務者#05 債務者#06 ローン#05 ローン#06 100万円 100万円 20% NO 20% NO 120万円 120万円 ローンプール 債権者#06 債務者#07 ローン#07 100万円 20% NO 120万円 債権者#07 債務者#08 ローン#08 100万円 20% NO 120万円 債権者#08 ローン#09 100万円 8% NO 108万円 97.2万円 債権者#09 債権者#09 ローン#10 100万円 8% YES 0万円 97.2万円 債権者#10 債務者#09 債務者#10 ローン#09 ローン#10 100万円 100万円 20% NO 20% YES 120万円 0万円 1000万円 合計 972万円 972万円 債権者#10 8 ローンプール:貸倒れ有 借入金 金利 貸倒れ 証券化とは何か 1年後 ローン#01 100万円 20% NO 120万円 108万円 債権者#01 ローン#02 100万円 20% NO 120万円 108万円 債権者#02 ローン#03 100万円 20% NO 120万円 108万円 債権者#03 ローン#04 100万円 20% NO 120万円 108万円 債権者#04 ローン#05 100万円 20% NO 120万円 108万円 債権者#05 ローン#06 100万円 20% NO 120万円 108万円 債権者#06 ローン#07 100万円 20% NO 120万円 108万円 債権者#07 ローン#08 100万円 20% NO 120万円 108万円 債権者#08 ローン#09 100万円 20% NO 120万円 108万円 債権者#09 ローン#10 100万円 20% YES 0万円 108万円 債権者#10 • 証券化 – 債権 Æ プール Æ 証券化 • 有価証券として広く投資家に分配 ローンプール 1000万円 合計 1080万円 1080万円 ストラクチャリング (pass-through) 住宅ローン#0001 有価証券#A 有価証券#B 住宅ローン#0002 有価証券#I プール 有価証券#J 大数の弱法則 Weak Law of Large Numbers 1. X 1 , X 2 , … , X n independent 2. µ = E[ X i ], i = 1,2, … , n 3. Var[ X i ] < ∞, ⇒ ∀ 有価証券#S ε >0 X1 + X 2 + + X n n lim P X − µ ≥ ε = 0 X := 住宅ローン#5000 有価証券#Z n →∞ [ ] convergence in probability 9 ストラクチャリング (pass-through) 住宅ローン#0001 有価証券#A ストラクチャリング 住宅ローン#0001 有価証券#A 有価証券#B 住宅ローン#0002 有価証券#B 優先 住宅ローン#0002 有価証券#I 有価証券#I 有価証券#J プール プール 有価証券#J メザニン 有価証券#S 有価証券#S 劣後 住宅ローン#5000 有価証券#Z 住宅ローン#5000 ストラクチャリング (CDO) Collateralized Debt Obligations 有価証券#Z ストラクチャリング 各住宅ローンの元本を1とする. 住宅ローン#0001 債権#01 有価証券#A 有価証券#A 優先 有価証券#B 有価証券#J 有価証券#J 有価証券#S 劣後 債権ローン#50 メザニン 2500 有価証券#I プール 有価証券#I メザニン 有価証券#B 住宅ローン#0002 債権#02 プール 優先 1500 有価証券#Z 有価証券#S 劣後 1000 住宅ローン#5000 優先 メザニン 劣後 元本返済 優先 メザニン 劣後 有価証券#Z 元本返済を優先的に受取る 優先部分の元本支払いをした残余を優先的に受取る 残った残余を受取る 5000 1500 2500 1000 4500 1500 2500 500 4000 1500 2500 0 3500 1500 2000 0 2000 1500 500 0 クーポンは低い クーポンは中庸 クーポンは高い 1500 1500 0 0 1000 1000 0 0 10 ストラクチャリング (ABS-CDO) ストラクチャリング:お弁当 ABS-Collateralized Debt Obligations 有価証券#A 優先 メザニン 劣後 優先 優先 メザニン 劣後 有価証券#I プール メザニン 野菜:トマト#0001 特上弁当 上弁当#I 有価証券#J 上弁当 弁当#S 弁当 有価証券#Z ストラクチャリング お弁当 (ABS-CDO) 特上弁当#A 特上弁当 肉:鴨肉#5000 弁当#Z 証券化のメリット ABS-Collateralized Debt Obligations 特上弁当 上弁当 弁当 上弁当#J 食品加工センター 劣後 特上弁当 上弁当 弁当 特上弁当#B 魚:さわら#0002 有価証券#S 優先 メザニン 劣後 特上弁当#A 有価証券#B • リスクの分散 • リスクとリターンの再分配(債権者Æ 投資家) 特上弁当#B • 証券化による流動性の向上 上弁当#I 上弁当 上弁当#J 食品加工センター 弁当#S 特上弁当 上弁当 弁当 弁当 弁当#Z 11 証券化のメリット:リスクの分散 • リスクとリターンの再分配(債権者Æ 投資家) • 証券化による流動性の向上 大数の弱法則 Weak Law of Large Numbers 1. X 1 , X 2 , … , X n independent 2. µ = E[ X i ], i = 1,2, … , n 3. Var[ X i ] < ∞, • リスクの分散 – 1つの債権がデフォルトするか予想するのは困難 – 多くの債権を集めたときに平均的なデフォルトを 予想することは比較的容易 – 債権を集合化した後に多くの投資家に再分配 ⇒ ∀ ε >0 X1 + X 2 + + X n n lim P X − µ ≥ ε = 0 X := n →∞ [ ] convergence in probability 証券化のメリット:リスクとリターンの 再分配 • キャッシュフローの再分配 – プールにまとめたキャッシュフローをどのように投 資家に配分するかは自由に設計可能 – 原資産のリスクやリターンとは異なるリスクとリ ターンの各特性をもつ商品を設計 • 高リスク (high risk) ÅÆ 高リターン (high return) • 低リスク (low risk) ÅÆ 低リターン (low return) • リスクの再分配 – 信用リスク (credit/default risk) – 期限前返済リスク (prepayment risk) 証券化商品の種類 • 住宅ローン担保証券,モーゲージ担保証券 – MBS; Mortgage-backed securities • RMBS; Residential Mortgage-backed securities • CMBS; Commercial Mortgage-backed securities – CMO; Collateralized Mortgage Obligations • 資産担保証券 – ABS; Asset backed securities – CLO; Collateralized Loan Obligations – CDO; Collateralized Debt Obligations 12 米国の証券化 • 1990年代まではGSE(Government-Sponsored Enterprise)とよばれる公的機関がメイン・プレーヤー – Fannie Mae (Federal National Mortgage Association; FNMA) – Ginnie Mae (Government National Mortgage Association; GNMA) – Freddie Mac (Federal Home Loan Mortgage Corporation; FHLMC) • 2000年以降は民間金融機関が組成するRMBSが急増 – Bear Sterns (2008/03/17) JP Morgan Chase に買収 – Merrill Lynch 住宅金融支援機構の証券化実績 日本の証券化商品 • 住宅金融支援機構(旧:住宅金融公庫) – 貸付債権担保住宅金融公庫債券 (2001~) • • • • 三和銀行 (1999/06) 富士銀行 (2000/04/24) 503億円 三菱信託銀行 (2000/05) 330億円 第一生命保険 (2000/08) 2400億円 証券化商品:まとめ • 証券化とは – 債権 Æ プール Æ 証券化 – 有価証券として広く投資家に分配 • 証券化のメリット – リスクの分散 – リスクとリターンの再分配(債権者Æ 投資家) – 証券化による流動性の向上 13 金融派生商品とは何か • デリバティブ (derivative) と は 証券化商品にかけられていた保険 信用デリバティブ CDS (Credit Default Swap) 金融先物取引 • 先物取引 (futures) – – – – – 先渡し契約の1つ 先物 (futures) ⇔ 現物 (cash) 取引所が取引商品を標準化 取引所に上場 取引では証拠金積立の必要,値洗い • 株価指数先物取引 – 限月:先物の決済期日 – 各年3,6,9,12月の第2金曜日の前営業日 • 債券先物取引 – 中期国債(5年物国債) – 長期国債先物(10年物国債) – 原資産の価格 x – デリバティブ価格 f(x) • デリバティブの役割 – リスクの再分配 • デリバティブ取引の特徴 – – – – レバレッジ効果 オフバランス取引 低い取引コスト リスク・ヘッジに有用,リスク・ テイクも可能 • デリバティブの分類 – 先渡し取引 • 将来に対象資産(原資 産)とその代金の授受を おこなう契約の内容をあ らかじめ決めておく • 為替予約 – オプション取引 – スワップ取引 日経平均とデリバティブ • 日経平均とは – 日本の代表的な会社を225社ピックアップして, その会社の株価の平均値 – 日本の株式市場の全体的な値動きを示す • 代表的なデリバティブ – 日経平均先物 – 日経平均オプション 14 先物とは • • • • 投資の意思決定 あらかじめ定められた期日(満期日)に あらかじめ定められた価格(先物価格)で 特定の商品(原資産)を 売りつける,または,買いつける 契約をいう. – 現在の日経平均価格 – 日経平均の上昇率(年率) 13,000円 10% • 1年後に日経平均を購入/売却する契約を 結ぶとしたら,その時の適正価格は? • ナイーブな考え方:期待値を算出 – 13,000×(1+0.1)=14,300円 投資戦略:先物価格=14,300円 状況設定 • 現在の日経平均価格 • 日経平均の上昇率(年率) • 銀行の金利 13,000円 10% 5% – 簡単のため預金も借入も同じ金利が適用される とする. • 先物価格 – ケース1 – ケース2 • 状況設定 14,300円 13,300円 • 現在 – 1年後に日経平均を13,000×1.10 = 14,300円で売却す る契約を結ぶ(先物売り). – 金利5%で13,000円借りて日経平均を購入する. • 1年後 – 所有していた株式を14,300円で売却する. – 借入金13,000×1.05 = 13,650円を返済する. – 差引650円の利益を得る. 15 投資戦略:先物価格=13,300円 先物の「適正」価格は? • 現在 – 1年後に日経平均を13,300円で購入する契約を結ぶ(先 物買い). – 日経平均を13,000円で空売りして,その売却代金の 13,000円を金利5%で預金する. • 1年後 – 預金していた現金13,000×1.05 = 13,650円を引き出す. – 空売りしていた株式を13,300円で購入する(買い戻す). – 差引350円の利益を得る. ギャンブル(タイプA) • ギャンブルの内容 • コインを投げる – 表:60ドルもらえる. – 裏:40ドル失う. このギャンブルを行なうか? • コインを投げる – 表:60ドルもらえる 裏:40ドル失う. • 期待値 – 0.50 × 60 + 0.50 × 40 = 10 – 40 ドルの損失は 60 ドルの利益を考えると惜しくない. • では,次の状況ではどうか? – 6万ドルと4万ドル – コインのバランスが取れていない – 4回のうち3回裏を出すことができる技を持っている人が コインを投げる 16 あなたの意思決定 • リスクを回避する選好と期待に依存 • 明らかに魅力的な申し出を断るほうが賢明で あることも起こる. ギャンブル(その2) • 1つのルーレットを対象に2種類のギャンブル • タイプA – 赤:60ドルをもらえる. – 黒:40ドルを失う. • タイプB – 赤か黒にお金を賭けることができる. – 当たれば2倍,外れたら没収(1:1 basis) • このギャンブルを行なうか? あなたの意思決定 • 最初のギャンブルと同じと思って,誘いを断るかもし れない. • しかし,以前の状況とは全然違っていて,ギャンブ ルに参加した方がよい. • あなたはギャンブルにヘッジ (hedge) をして,結果 に依らず確実に儲けることができる. • これを確実に儲かることを裁定 (arbitrage) という. 投資戦略 • ルーレットの黒に50ドルの賭け金をおく • ルーレットの結果が赤の場合 – 「タイプA」から60ドルもらえる. – 「タイプB」で50ドル失う. – 差引10ドルの儲けをえる. • ルーレットの結果が黒の場合 – 「タイプA」から40ドル失う. – 「タイプB」で50ドル得る. – 差引10ドルの儲けをえる. 17 考察 裁定理論 • いずれの場合においても10ドルを儲けることができ る. • このギャンブル「タイプA」の適正価格は10ドル! • 期待値であった儲けが確実なものになった. • 最も重要なことは,それが実際の確率には関係しな いことである. • 例えば赤と黒の起こる確率が10:90でも変わりはな い. • 1:1 basis のルーレットがあれば賭けに参加 できたことはルーレットの結果に依存するど んな賭けでも「適正価格」を知ることができる. • その適正価格は暗に示されているリスク中立 確率 (50:50) のもとでの期待値として求めら れる. 先物の理論価格 商品先物取引 • 現在の日経平均価格 • 日経平均の上昇率(年率) • 銀行の金利 13,000円 10% 5% • 商品先物取引とは – 将来の一定時期の商品の受渡しを約束 – その価格を現時点で決定 – 簡単のため預金も借入も同じ金利が適用される とする. • 先物の理論価格 – 13,000×(1+0.05)=13,650円 18 商品取引の例 • 金取引 – 現時点の金価格 1000g = 250万円 • 現物取引 – 現時点で250万円と金1000gを交換 取引所と上場商品 商品取引所 主な上場商品 東京工業品取引所 金、金ミニ、銀、白金、白 金ミニ、ガソリン、灯油、軽 油、原油、ゴム、他 大豆、トウモロコシ、小豆、 コーヒー豆、他 ガソリン、灯油、軽油、ゴ ム、アルミニウム、他 大豆、トウモロコシ、小豆、 粗糖、他 • 先物取引 – 一定時期(例:1年後)に270万円で金1000gを交換 • 商品先物取引の決済 – 1年後の金価格 1000g = 300万円 – 受渡し決済 • 1年後に270万円と金1000gを交換 東京穀物商品取引所 中部大阪商品取引所 – 差金決済 • 金の売り方が, 300-270 = 30 万円を,金の買い方に支払う 東京工業品取引所 http://www.tocom.or.jp 関西商品取引所 商品先物取引の役割 • 商品先物取引 – 将来の一定期日に一定の商品を売る又は買うこ とを約束 – その価格を現時点で決める取引 • 商品先物取引の機能 – 1. 商品の価格変動リスクヘッジ – 2. 公正な価格形成 – 3. 資金運用手段 19 限月 • 限月=商品先物取引における取引の期限 • 例 – – – – 来年の7月7日 金の延べ板1000gを売却 代金150万円を受取る契約 「来年の7月7日」が取引の期限 • この取引の期限となる月を「限月(げんげつ)」という. • 例えば「09/08」なら2009年8月が取引の期限で「8 月限(8がつぎり)」という. 日経平均コール・オプション • あらかじめ決めておいた将来の期日(満期)に • あらかじめ決めておいた価格(行使価格)で • 日経平均を購入してもよいとする契約(権利であっ て義務ではない) • オプションの売り手と買い手が存在する. – この権利の代金は今支払う – 日経平均および日経平均の代金の授受は将来の売買日 に行なう • 例:2010/7/8 に ¥13,500 で購入しても良いとする 契約 オプション取引 • オプション (option) とは – – – – – – • オプション取引 – – – • プレミアム オプションの代金,オプション料 反対売買によるポジションの解消 決済 差金決済 オプションの分類 – – • あらかじめ決めておいた資産(原資産)を あらかじめ決めておいた価格(権利行使価格)で あからじめ決めておいた数量 あらかじめ決めておいた期日・期間(満期日)に 売買する権利(売買しなくてもよい) 権利行使:権利を使って売買すること コール・オプション プット・オプション アメリカン・オプション プット・オプション 買う権利 売る権利 満期日までならいつでも権利行使可能 満期日のみ権利行使可能 オプションのペイオフ – – 計算例 計算例 コール/プット・オプション プロテクティブ・プット 権利行使価格 10,500円 コール・オプションの実例 • 2009/7/8 の日経平均価格 ¥13,000 • 日経平均コール・オプション – 満期日 – 行使価格 2010/7/8 ¥13,500 • 2010/7/8 – 日経平均 ¥14,000 • コール・オプションを使って¥13,500で購入できる • 14,000−13,500=500円の利益 – 日経平均 ¥12,000 • コール・オプションは使わない. 20 オプション契約の価格は • オプション(権利)の売り手は見返りに代金を 受取る. • オプションの売買代金をプレミアムとよぶ. 日経平均プット・オプション • あらかじめ決めておいた将来の期日(満期)に • あらかじめ決めておいた価格(行使価格)で • 日経平均を売却してもよいとする契約(権利であっ て義務ではない) • オプションの売り手と買い手が存在する. – この権利の代金は今支払う – 日経平均および日経平均の代金の授受は将来の売買日 に行なう • 例:2010/7/8 に ¥12,000 で売却しても良いとする 契約 Black & Scholes モデル • ブラック=ショールズ・モデル (1973) • オプションの価格を裁定原理にしたがって導 いた. • 1996年にScholesとMertonがノーベル経済 学賞を受賞 確率過程論 • 株価の動きをランダム・ウォークで表現 – ウィーナー過程,ポアソン過程 – Blackは亡くなっていた 21 2.5 2.3 2.1 1.9 1.7 1.5 1.3 1.1 0.9 0.7 0.5 為替リターン 0.3 0.1 -0 .1 4.000 -0 .3 -0 .5 -0 .7 -0 .9 -1 .1 -1 .3 -1 .5 2.000 -1 .7 リターン -1 .9 6.000 -2 .3 -0.6 1992/12/1 1993/4/22 1993/9/10 1994/1/31 1994/6/21 1994/11/9 1995/3/30 1995/8/18 1996/1/8 1996/5/28 1996/10/16 1997/3/6 1997/7/25 1997/12/15 1998/5/5 1998/9/23 1999/2/11 1999/7/2 1999/11/22 2000/4/11 2000/8/30 1985/1/2 1985/5/29 1985/10/22 1986/3/20 1986/8/12 1987/1/8 1987/6/3 1987/10/26 1988/3/23 1988/8/15 1989/1/11 1989/6/2 1989/10/23 1990/3/15 1990/8/3 1990/12/24 1991/5/14 1991/10/2 1992/2/21 1992/7/13 -0.2 発生確率 7 100 97 94 91 88 85 82 79 76 73 70 67 64 61 58 55 52 49 46 43 40 37 34 31 28 25 22 19 16 13 10 0 -2 .1 -6.000 4 1 0.2 -2 .5 -2.000 1985/1/2 1985/5/22 1985/10/9 1986/3/4 1986/7/21 1986/12/9 1987/4/29 1987/9/15 1988/2/5 1988/6/23 1988/11/10 1989/3/31 1989/8/16 1990/1/2 1990/5/17 1990/10/1 1991/2/13 1991/6/28 1991/11/12 1992/3/27 1992/8/11 1992/12/24 1993/5/11 1993/9/23 1994/2/7 1994/6/22 1994/11/4 1995/3/21 1995/8/3 1995/12/18 1996/5/1 1996/9/13 1997/1/28 1997/6/12 1997/10/27 1998/3/11 1998/7/24 1998/12/8 1999/4/22 1999/9/6 2000/1/19 2000/6/2 2000/10/17 0.6 ウィーナー過程 (Wiener process) 300 JPY/USD 0.4 250 200 150 100 -0.4 50 0 -0.8 為替のリターン分布と正規分布の比較 9 正規分布 8 0.000 7 6 5 -4.000 4 3 2 -8.000 1 0 リターン 22 Black=Scholes モデル コール・オプションの実例 • 条件設定 • 5つの入力パラメター – – – – – 現時点の株価 行使価格 満期までの期間 金利 株価のヴォラティリティ S K τ r σ – 2009/7/8 の日経平均価格 – 日経平均コール・オプション • 行使価格 • 満期日 • オプション評価式 ( ) – 銀行の金利 – 日経平均のヴォラティリティ ( ) C = SN d + − Ke − rτ N d − 1 ⎞ ⎛S⎞ ⎛ ln⎜ ⎟ + ⎜ r ± σ 2 ⎟τ K 2 ⎠ d± = ⎝ ⎠ ⎝ σ τ ¥13,000 ¥13,500 2010/7/8 (1年後) 2% 25% • Black=Scholesモデルによるオプション価格 – ¥1191.69 N ( x) = 1 2π ∫ x e −∞ 1 − z2 2 dz スワップ取引 • スワップ (swap) 取引とは – 2つの当事者間で,将来発生するキャッシュフ ローを交換することを約束する契約 – 金利スワップ 固定金利のキャッシュフローと変動 金利のそれを交換 – 為替スワップ 直物為替の売り(買い)と先物為替 の買い(売り)の取引を同時に行う取引 クレジット・デフォルト・スワップとは • Credit Default Swap (CDS) • 信用リスクを対象とするデリバティブ • 信用リスクの対象 – 企業,国家,証券化商品など 23 クレジット・デフォルト・スワップの具体例 • Aが会社Cの社債,額面10億円,満期5年を 保有 • Aが会社Cの信用リスク(倒産リスク)を外部 に移転 • クレジット・イベント = 契約当事者が自由に 決定 – 経営破綻=債務不履行,倒産,リストラクチャリ ング(債務条件の変更など) クレジット・デフォルト・スワップの具体例 • Aが会社Cの社債,額面10億円,満期5年を保有 • Aが金融機関BとCDS取引を締結 – – – – – – CDSの取引期間 5年 想定元本 10億円 AがBに支払うプレミアム(保証料相当額) 年2% 現物決済型 A プロテクションの買い手 (Protection Buyer) B プロテクションの売り手 (Protection Seller) • クレジット・イベントが発生するまで – AはBに対して毎年1,0000,000×0.02=200,000のプレミアムを支払 う • クレジット・イベントが発生 – AはBにC社の社債をBに引渡し – BはAに10億円の支払い 何の価格推移か? S&P/Case-Shiller U.S. National Home Price Index 200.00 180.00 160.00 140.00 120.00 100.00 80.00 60.00 40.00 20.00 19 87 年 3月 88 年 3月 19 89 年 3月 19 90 年 3月 19 91 年 3月 19 92 年 3月 19 93 年 3月 19 94 年 3月 19 95 年 3月 19 96 年 3月 19 97 年 3月 19 98 年 3月 19 99 年 3月 20 00 年 3月 20 01 年 3月 20 02 年 3月 20 03 年 3月 20 04 年 3月 20 05 年 3月 20 06 年 3月 20 07 年 3月 20 08 年 3月 0.00 19 サブプライム住宅ローン発の 金融危機 24 Office of Federal Housing Enterprise Oversight Case Shiller Home Price Indices S&P/Case-Shiller U.S. National Home Price Index Monthly House Price Indexes for Census Divisions and U.S. 200.00 350.00 180.00 300.00 160.00 250.00 140.00 200.00 120.00 150.00 100.00 100.00 80.00 50.00 60.00 /1 /1 8/1 7/ 1/1 6/1 9/1 20 0 20 0 20 0 /1 /1 /1 4/1 3/1 5/1 20 0 20 0 /1 /1 20 0 /1 2/1 20 0 /1 /1 0/ 1/1 1/1 20 0 20 0 20 0 8/1 7/ 1/1 9/1 19 9 19 9 /1 /1 /1 5/1 4/1 /1 /1 2/1 1/1 6/1 19 9 19 9 19 9 19 9 19 9 19 9 19 9 3/ 1/1 0.00 40.00 20.00 East North Central East South Central Middle Atlantic Mountain New England Pacific South Atlantic West North Central West South Central USA 19 19 87 年 3月 88 年 3月 19 89 年 3月 19 90 年 3月 19 91 年 3月 19 92 年 3月 19 93 年 3月 19 94 年 3月 19 95 年 3月 19 96 年 3月 19 97 年 3月 19 98 年 3月 19 99 年 3月 20 00 年 3月 20 01 年 3月 20 02 年 3月 20 03 年 3月 20 04 年 3月 20 05 年 3月 20 06 年 3月 20 07 年 3月 20 08 年 3月 0.00 サブプライム住宅ローンとは • 信用格付け – A プライム – AオルトA – B~D サブプライム • プライムローン • サブプライムローン – 信用力の高い債務者向けローン – 信用力の低い債務者向けローン – 低所得者向け住宅ローンではない • • 債権者 債務者 • 背景 借金の貸し手 借金の借り手 – 住宅価格は上がり続けるという思い込みを前提 – 金融機関が高リスクの借り手に過剰融資 25 不動産向けの金融機関の破綻 • 貯蓄金融機関(Savings & Loan, S&L) – 米国の個人向け預金と住宅ローンの提供 – 1986~1995年に多数破綻 地価バブルと住宅ローン • 2003~2005年の住宅ブームの加熱 – カリフォルニア,フロリダ • 住宅金融専門会社(住専) – 都市銀行や長信銀など金融機関の共同出資で設立されたノンバンク – バブル期の不動産業融資のつまずきから多額の不良債権 – 住専7社 • 日本ハウジングローン,住総,日本住宅金融,第一住金,総合住金,住宅ローン サービス,地銀生保住宅 – 金融機関の住専向け融資総額 • 回収不能債権 • ほぼ回収不能債権 • 回収可能債権 13兆1100億円 6兆4000億円 1兆2000億円 5兆5000億円 – 住専問題 • 1995/12 住専7社の不良債権処理に6850億円を閣議決定 • 民間銀行 5兆5000億円の債権放棄 • 農協系金融機関 負担軽減 • 上昇する地価を前提の住宅ローン貸出し – 借入れ時 住宅ローン残額 = 不動産の時価 – しばらくすると 住宅ローン残額 < 不動産の時価 – 不動産を売却すれば住宅ローンの全額返済+利益 • 2006年から不動産価格の下落 – 住宅ローン残額 > 不動産の時価 サブプライムローン証券化の落とし穴 デフォルト相関のモデル化の失敗 サブプライムローン証券化の落とし穴 正規分布は平均値周辺のモデル化 • 証券化 • 証券化 – 多数の債権をプール – 各々の債権の振舞い(期限前返済,貸倒れ(デフォルト)) を独立と仮定 – 大数の法則による価格評価・リスク評価 • 各々の債権が相関をもってデフォルトに – 正の相関:ある債権がデフォルトに至った時に,別の債権 もデフォルトになる – 価格評価・リスク評価におけるデフォルト・リスクの過小評 価 – 多数の債権をプール – 各々の債権の振舞い(期限前返済,貸倒れ(デフォルト)) を独立と仮定 – 大数の法則による価格評価・リスク評価 • 正規分布は平均値から大幅にずれたところのフィッ ティングは良くない – 住宅価格の下落によるデフォルト件数の急増はレア・イベ ント – 正規分布からの乖離 – 価格評価・リスク評価におけるデフォルト・リスクの過小評 価 26 世界金融危機の引き金となったCDO • 証券化のスキーム – オリジネータ サブプライムローンのデフォルトが CDO, CDSに波及 • CDO – 原資産=サブプライムローン債権の証券化商品 – 1. サブプライムローンを証券化 – 2. サブプライムローンを証券化した証券化商品 を集めて再証券化 • 証券化される債権の元々の所有者 • 債権をSPVに売却 – SPV(特別目的会社) • 上記の債権を担保に証券化証券を発行 • SPVの他に信託をつかうスキームもある – 投資家 • CDO (Collateralized Debt Obligations) – CLO (Collateralized Loan Obligations) もCDOの1種 – 優先劣後構造 • 元利金の受取りに優先順位 • senior > mezzanine > subordinate • メザニンとは中2階を意味する – リスクの正確な測定と管理が難解 サブプライム金融危機とCDS 金融機関の損失額 全ローン&リースの貸倒額(百万ドル) 地価の下落 サブプライムローンのデフォルト サブプライムローンを組込んだCDOの価格暴落 4. CDOを対象とするCDS(CDOを対象とする保険)の不履 行の懸念 – – CDSの売り手の金融機関の破綻懸念 AIG • • • 欧米の銀行に対し巨額のCDOの保証 CDOを原資産とするCDSの売り手 CDS取引で保証の売り手 金融機関を対象とするCDSの価格高騰(保険料の高騰) 5. – 250000 CDOを保有する金融機関の損失拡大 200000 150000 100000 50000 Lehman Brothers を参照するCDS • 想定元本残高 約4000億ドル,ネットの想定元本60~80億ドル 0 85 19 Q1 85 19 Q4 86 19 Q3 87 19 Q2 88 19 Q1 88 19 Q4 89 19 Q3 90 19 Q2 91 19 Q1 91 19 Q4 92 19 Q3 93 19 Q2 94 19 Q1 94 19 Q4 95 19 Q3 96 19 Q2 97 19 Q1 97 19 Q4 98 19 Q3 99 20 Q2 00 20 Q1 00 20 Q4 01 20 Q3 02 20 Q2 03 20 Q1 03 20 Q4 04 20 Q3 05 20 Q2 06 20 Q1 06 20 Q4 07 20 Q3 08 Q 2 – 300000 19 1. 2. 3. 全ローン&リースの貸倒額 27 資産別の貸倒額 モノライン保険会社 貸倒額(百万ドル) 500000 • 金融保証の付与を専業とする保険会社 – – – – 450000 400000 350000 S&P, Moody’s などの格付会社から高格付け(AAA) 投資適格級の安全性が高い資産の保証 保証対象の金額が大きい 一般的な金融保証に加えてCDSの活用 • 金融保証の対象 300000 – パブリック・ファイナンス:地方自治体・公共事業の資金調達 – ストラクチャード・ファイナンス:様々な証券化商品 250000 • サブプライム住宅ローンを原資産とするABS, CDOを保証 200000 • CDOの場合は安全性の高いトランシェ(スーパーシニア) • 2007年夏以降のサブプライム住宅ローン損失拡大 150000 – – – – 100000 50000 スーパーシニアを保有していた金融機関に損失 金融機関の保証をしていたモノラインに波及 格付機関によるモノラインの格付けの引き下げ CDSの損失 19 85 19 Q1 85 19 Q4 86 19 Q3 87 19 Q2 88 19 Q1 88 19 Q4 89 19 Q3 90 19 Q2 91 19 Q1 91 19 Q4 92 19 Q3 93 19 Q2 94 19 Q1 94 19 Q4 95 19 Q3 96 19 Q2 97 19 Q1 97 19 Q4 98 19 Q3 99 20 Q2 00 20 Q1 00 20 Q4 01 20 Q3 02 20 Q2 03 20 Q1 03 20 Q4 04 20 Q3 05 20 Q2 06 20 Q1 06 20 Q4 07 20 Q3 08 Q 2 0 農業向け 商工業向け 不動産抵当 消費者 戸建住宅 リース クレジットカード 消費者向けその他 商業不動産 ストラクチャリング (ABS-CDO) ABS-Collateralized Debt Obligations Home Equity Loan へ波及か? • Home Equity Loan (HEL) 有価証券#A 優先 メザニン 劣後 優先 優先 メザニン 劣後 有価証券#B 有価証券#I プール メザニン – 純資産(エクイティ)=住宅時価−住宅ローン残 額 – Home Equity を担保にしたローン 有価証券#J 有価証券#S 優先 メザニン 劣後 劣後 有価証券#Z 28 -0.2 実データ 0.165 0.155 0.145 0.135 0.125 0.115 0.105 0.095 0.085 0.075 0.065 0.055 0.045 0.035 0.025 0.015 0.005 -0.005 -0.015 -0.025 -0.035 -0.045 -0.055 -0.065 -0.075 -0.085 -0.095 -0.105 0 -0.115 0.05 -0.125 0.1 -0.135 2009/1/4 2008/1/4 2007/1/4 2006/1/4 2005/1/4 2004/1/4 2003/1/4 2002/1/4 2001/1/4 2000/1/4 1999/1/4 1998/1/4 1997/1/4 1996/1/4 1995/1/4 1994/1/4 1993/1/4 1992/1/4 1991/1/4 1990/1/4 1989/1/4 1988/1/4 日経平均株価(リターン) -0.145 -0.15 1987/1/4 2009/1/4 2008/1/4 2007/1/4 2006/1/4 2005/1/4 2004/1/4 2003/1/4 2002/1/4 2001/1/4 2000/1/4 1999/1/4 1998/1/4 1997/1/4 1996/1/4 1995/1/4 1994/1/4 1993/1/4 1992/1/4 1991/1/4 1990/1/4 1989/1/4 1988/1/4 1987/1/4 1986/1/4 1985/1/4 1984/1/4 • 研究者は正規分布モデルの限界を熟知 • 実務者は正規分布モデルの計算結果を過信 -0.155 -0.1 1986/1/4 • リターンなどが正規分布にしたがうと仮定 -0.165 -0.175 -0.05 1985/1/4 1984/1/4 金融のモデル化 日経平均株価 45000 NK225 (index) 40000 35000 30000 25000 20000 15000 10000 5000 0 NK225 (return) 日経平均株価リターンのヒストグラム 0.15 300 NK225 (histogram) 250 200 150 100 50 0 正規分布 29 • • • • 0.1 0.1 0.05 0.05 0 0 -0.05 -0.1 -0.2 return 1/100y 1/100y 1/10000y 2009/1/5 2008/1/5 2007/1/5 2006/1/5 2005/1/5 2004/1/5 2003/1/5 2002/1/5 2001/1/5 2000/1/5 1999/1/5 1998/1/5 1997/1/5 1996/1/5 1995/1/5 1994/1/5 1993/1/5 NK225 Return with Bounds (100y) 1992/1/5 1991/1/5 1990/1/5 1989/1/5 1988/1/5 1987/1/5 1986/1/5 1985/1/5 0.15 1984/1/5 2009/1/5 2008/1/5 2007/1/5 2006/1/5 2005/1/5 2004/1/5 2003/1/5 2002/1/5 2001/1/5 2000/1/5 1999/1/5 1998/1/5 1997/1/5 1996/1/5 1995/1/5 1994/1/5 1993/1/5 1992/1/5 1991/1/5 1990/1/5 1989/1/5 1988/1/5 1987/1/5 1986/1/5 1985/1/5 1984/1/5 100年に1回か? 10000年に1回か? 0.15 NK225 Return with Bounds (100y,10000y) -0.05 -0.1 -0.15 -0.15 -0.2 1/10000y まとめ サブプライムローンの証券化 (RMBS) CDOに再組成 多くの金融機関がRMBS, CDOに投資 不動産バブルの崩壊によりRMBS, CDOの 価値低下 – 債権者の相関のモデル化の失敗 – 正規分布モデルの適用領域からの逸脱 • CDS(CDOを保証)の売り手の大損失 30 Quiz: ふさわしいものを1つ選択せよ 神楽岡プレ専門ゼミ • 研究テーマ:株価指数 – 日経平均株価,TOPIX,ダウ平均 – 計算方法,利用方法,長所と欠点 • どういう「力」がつくか? – – – – 証券アナリストとしての「実践力」の修得 思考力 ゼミ生によるディスカッション 分析力 EXCEL による分析 説得力 PowerPoint プレゼンテーション技法 • 金融取引・金融商品にあるトレード・オフとは • 金融の世界で使われる“リスク”の定義・使われ方に合致しないのは? – 1. 売りと買い 2. 利益と損失 3. 株式投資と預金 4. リターンとリスク 5. リスクと保険 – 1. 宝くじに当選した 2. 株で損をした 3. 競馬でまけた 4. パチンコでまけた 5. 現在100 万円の借金がある 6. 好きな彼・彼女に告った • 証券化のキーワードとしてふさわしくないのは? • 証券化で有用な数学法則は? – 1. リスクの分散 2. リスクの再分配 3. リターンの再分配 4. 社会の富の再分配 – 1. 結合法則 2. 分配法則 3. 交換法則 4. 5. 大数の法則 6. メンデルの法則 7. アルキ メデスの法則 • サブプライムローンの証券化は何を前提にしていたか? • サブプライムローンの証券化における原資産は? • サブプライムローン問題が原因で破綻した金融機関は? – 1. 不動産価格のリスクの上昇 2. 不動産価格のリスクの下落 3. 不動産価格のリスク の安定 4. 不動産価格の安定 5. 不動産価格の下落 6. 不動産価格の上昇 • どういう学生に来てほしいか? – 証券アナリスト資格の取得を目指す – 数学が好き – 受験勉強はあまりしなかったけれど,たまたま武蔵大学に合格 – 1. 住宅ローン 2. 自動車ローン 3. カードローン 4. 社債 5. 貸出債権 6. 株式 – 1. Goldman Sachs 2. JP Morgan 3. Morgan Stanley 4 Lehman Brothers 5. Citi Group 6. AIG 7. Merrill Lynch Quiz: ふさわしいものを1つ選択せよ • 金融の世界で使われる“リスク”の定義・使われ方に合致しないのは? – 1. 宝くじに当選した 2. 株で損をした 3. 競馬でまけた 4. パチンコでまけた 5. 現在100万円の借金がある 6. 好きな彼・彼女に告った • 証券化のキーワードとしてふさわしくないのは? – 1. リスクの分散 2. リスクの再分配 3. リターンの再分配 4. 社会の富の再分 配 • 証券化商品でないのは? – 1. MBS 2. CMO 3. ABS 4. CDO 5. CLO 6. CEO • 証券化で有用な数学法則は? – 1. 結合法則 2. 分配法則 3. 交換法則 4. 5. 大数の法則 6. メンデルの法則 7. アルキメデスの法則 • 証券化商品の原資産としてふさわしくないのは? – 1. 住宅ローン 2. 自動車ローン 3. カードローン 4. 社債 5. 貸出債権 6. 宝くじ • サブプライムローン問題が原因で破綻した金融機関は? – 1. Goldman Sachs 2. JP Morgan 3. Morgan Stanley 4 Lehman Brothers 5. Citi Group 6. AIG 7. Merrill Lynch 31
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