病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン

2013/7/2 更新版
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007 − 2008 年度合同研究班報告)
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
Guidelines for the clincal exmaninations for dicision making of diagnosis,
pathophysiology, and therapy in congenital heart disease(JCS 2009)
合同研究班参加学会:日本循環器学会,日本胸部外科学会,日本外科学会,日本小児科学会,日本小児循環器学会,
日本心臓血管外科学会,日本心臓病学会,日本心電学会,日本超音波医学会
班 長 濵
岡
建
城 京都府立医科大学大学院医学研究科
班 員 石
川
司
朗 福岡市立こども病院 循環器科
糸
井
利
幸 京都府立医科大学大学院医学研究科
越
後
茂
之 えちごクリニック
角 秀
秋 福岡市立こども病院心臓血管外科
黒
澤
博
身 榊原サピアタワークリニック
佐
野
俊
二 岡山大学大学院医歯学総合研究科心臓血管外科
長
嶋
正
實 あいち小児保健医療総合センター
中
西
敏
雄 東京女子医科大学心臓病センター循環器小児科
小児循環器・腎臓学
協力員 石
川
友
一 福岡市立こども病院循環器科
市
田
蕗
子 富山大学小児科学
小
川 潔 埼玉県立小児医療センター循環器科
小
野
安
生 静岡県立こども病院循環器科
小
林
俊
樹 埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科
篠
原
徳
子 東京女子医科大学循環器小児科
白
石
修
一 新潟大学大学院呼吸循環外科分野
中
野
俊
秀 福岡市立こども病院心臓血管外科
中
村
好
秀 大阪市立総合医療センター小児不整脈部
松
島
正
氣 社会保険中京病院小児循環器科
小児循環器・腎臓学
八木原 俊 克 国立循環器病センター心臓血管外科
康
井
制
洋 神奈川県立こども医療センター循環器科
山
岸
敬
幸 慶應義塾大学小児科
山
岸
正
明 京都府立医科大学大学院医学研究科
安河内 聰 長野県立こども病院循環器科
心臓血管外科・呼吸器機能制御外科学
外部評価委員
尾 内 善四郎 介護老人保健施設・マムクオーレ
柳
澤
正
義 日本子ども家庭総合研究所
松
堀 正
二 大阪府立成人病センター
田 暉 兵庫医療大学
(構成員の所属は 2009 年 7 月現在)
目 次
Ⅰ.序 文……………………………………………………… 1116
1.ガイドライン作成の基本方針 ……………………… 1116
2.ガイドラインのポイント …………………………… 1116
Ⅱ.診断と病態理解のための基本的事項…………………… 1117
1.先天性心疾患の区分診断 …………………………… 1117
2.発達に伴う循環動態,症候の変化 ………………… 1121
Ⅲ.各種検査法…………………………………………………1124
1.検査 ……………………………………………………1124
2.心電図 …………………………………………………1124
3.胸部 X 線 ………………………………………………1125
4.超音波検査(心エコー検査) ………………………1128
5.CT,MRI ………………………………………………1129
6.心臓カテーテル検査・心血管造影検査 ……………1130
7.血液検査 ………………………………………………1130
Ⅳ.症候別検査計画…………………………………………… 1131
1.心雑音 ………………………………………………… 1131
2.循環不全(心不全) …………………………………1132
3.チアノーゼ ……………………………………………1132
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1115
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
各 論……………………………………………………………1133
Ⅴ.疾患別検査計画……………………………………………1133
1.心室中隔欠損(ventricular septal defect:VSD) …1133
2.心房中隔欠損(atrial septal defect:ASD)…………1136
3.房室中隔欠損(atrioventricular septal defect:AVSD)
…………………………………………………………1138
4.動脈管開存(patent ductus arteriosus:PDA) ……1140
5.大動脈縮窄・大動脈弓離断複合(coarctation of aorta:
CoA, interruption of aortic arch: IAA)………………1142
6.大動脈狭窄・閉鎖不全(aortic stenosis: AS, aortic
regurgitation: AR) ……………………………………1144
7.肺動脈狭窄(pulmonary stenosis: PS)………………1146
8.Ebstein 病(Ebstein anomaly) ………………………1148
9.総肺静脈還流異常(total anomalous pulmonary venous
return:TAPVR)………………………………………1149
10.Fallot 四徴症(tetralogy of Fallot:TOF)…………1150
11.肺動脈閉鎖(pulmonary atresia:PA) ……………1153
12.両大血管右室起始(double outlet right ventricle:
DORV)…………………………………………………1155
13.完全大血管転位(transposition of the great arteries:
TGA) …………………………………………………1157
14.修正大血管転位(corrected transposition of the great
arteries:cTGA)………………………………………1158
15.総動脈幹遺残(persistent truncus arteriosus) ……1162
16.三尖弁閉鎖(tricuspid atresia:TA)………………1163
17.左心低形成症候群(hypoplastic left heart syndrome:
HLHS)…………………………………………………1166
18.無脾・多脾症候群(心房内臓錯位症候群)………1169
Ⅵ.術後の検査計画…………………………………………… 1171
1.姑息手術(palliative surgery) ……………………… 1171
2.二心室修復術 …………………………………………1172
3.Rastelli 型手術 …………………………………………1173
4.大血管転換術:TGA,cTGA,DORV ……………1174
5.右心バイパス手術(Fontan 型手術,total cavopulmonary
connection:TCPC) …………………………………1176
文献……………………………………………………………… 1179
(無断転載を禁ずる)
としてはじめて「先天性心疾患の治療に向けて検査法の
Ⅰ
序 文
選択」という主題でガイドラインを作成することになっ
た.
本ガイドラインは,一般循環器内科医を主な対象に,
先天性心疾患の医療を行う上での minimal requirement
1
ガイドライン作成の基本方針
を基本とした内容としているが,一般内科,小児科・新
生児科のみならず産科医にも利用されることを想定して
作成されている.また,必要と思われる限り,最新の情
先天性心疾患児は生産児の約 1 %の頻度で出生する.
報を加えた.各疾患の手術適応とその検査法について網
近年の医療技術の進歩によって先天性心疾患患者全体の
羅された参考書はないので,治療選択の適応を決めるた
死亡率は年々低下しており,特に新生児・乳児期での生
めに必要な検査とそのタイミングを解説した.このよう
存率は飛躍的に向上している.それに伴い,成人期に達
な内容のものはこれまで欧米のガイドラインにも見受け
した先天性心疾患患者数も増加し,既に現状では約 40
られないもので日本独自のものであろう.
万人と推定される.そして,年 4 ~ 5 %の増加率である
と試算されているように,先天性心疾患はもはや小児の
2
ガイドラインのポイント
みの疾患ではなく成人の疾患になりつつある.そして,
1116
小児例での死亡率の低下とは逆に,20 歳以上の先天性
先天性心疾患の診断,病態把握,治療選択のための検
心疾患患者の死亡率は明らかに増加しており,社会環境
査法の選択ガイドライン作成は我が国において新しい試
での複雑な問題がからみあい,成人先天性心疾患の医療
みであり,国際的にも検査法に対するエビデンスレベル
の重要性が大きくクローズアップされつつある.このよ
を検討した研究もほとんど存在しない.このため,我が
うに,先天性心疾患の医療は胎生期から成人期,そして
国における第一線の小児循環器専門医の中でコンセンサ
次世代へと長期にわたる治療計画が必要である.これに
スが得られている内容を中心に作成したが,可能な限り
伴い,小児循環器専門医のみならず,より多くの先天性
多くの文献的検討に基づいたものを記載するよう心がけ
心疾患の医療に携わる多くの医療関係者に先天性心疾患
た.また,十分なコンセンサスが得られていないと考え
のよりよい医療の理解と実践に向けて,日本循環器学会
られる内容についてはそのことを明記した.基本方針で
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
Ⅱ a
も述べたとおり,本ガイドラインは循環器内科医のみな
有用かつ有効であるというデータおよび
らず,先天性心疾患患者に関わる種々の異なる専門領域
/または意見が多い
の臨床家にも参考となるように日常臨床で役に立つ内容
Ⅱ b
有用かつ有効であるという確証が少ない
とし,小児循環器の専門的・先端的な内容については可
クラスⅢ
その検査法が有用かつ有効でなく,場合
能であれば「up date」等の別項を設けて解説した.
によっては有害であるというデータおよ
本ガイドラインは先天性心疾患における検査法選択を
び/または一般的合意がある状態
目的としているが,小児においては疾患の多様性に加え
て年齢による病態の変化,検査法の工夫や問題点等成人
にはない特徴がある.そのため,本ガイドラインでは検
査法選択を前提とした総論として,先天性心疾患の診断
診断と病態理解のための
基本的事項
Ⅱ
に必要な区分分析と病態把握,治療選択に考慮すべき年
齢によって変化する循環動態等の病態理解のための記述
をやや詳細に記載するとともに,検査法の特徴,症候の
特徴を充実させた.また,小児に対する検査は成人と異
1
先天性心疾患の区分診断 1)−3)
なる施行方法と注意すべき点,評価法の違い等も総論で
解説した.一方,各疾患ごとの病態や検査に関する教科
書は多数あるので,各論では,検査項目の整理を行い,
心臓の主要な骨組みは 5 階建ての建物にたとえられる
(図 1).
内容をできるだけ簡略化する方針とし一目で分かるよう
3 つの部位診断
に可能な限り図やフローチャートを使用した.1 つの疾
● 心房位(内臓心房位)の診断
患でも年齢によって対応が異なる場合があり,本文ある
● 心室位(心室ループ)の診断
いは図等で可能な限り分かりやすく表現できるよう工夫
● 大血管の診断
をした.
2 つの関係診断
成人先天性心疾患の治療計画に関するガイドラインは
■ 心房心室結合
既に発表されているが,本ガイドラインでは成人に達し
■ 心室大血管関係
てもなお術後経過を管理する上で重要と考えられる主要
診断に際しては,各区分の正常と起こりうる異常形態
疾患を選択して,検査計画,管理の上で最低限必要かつ
の知識を持って,理学所見,胸部 X 線,心電図,心臓超
包括的な内容を独立した項目Ⅵとして記載した.また,
音波,心臓カテーテル・心血管造影等を活用し,各区分
術前管理の中で成人期においても特に重要と考えられる
を 1 つずつ診断していくことが必要である(表 1).
一部の疾患に関しては,項目Ⅴにおいても検査計画上で
次に,各区分内の合併異常(中隔の異常,弁の異常,
の注意点を記載した.
血管の異常等)を診断し,調律異常,血行動態を考慮し
今回のガイドライン作成にあたって,日本をはじめ国
て,適正な治療法を決定する.
際的にも先天性心疾患に関する検査法の大規模試験は実
施されていない.このため,今回は「エビデンスレベル」
の設定は行わないこととし,以下のような「クラス分類」
のみを採用した.なお,各論では,診断・病態把握・治
療選択に関して一般的に行われる検査(クラスⅠおよび
クラスⅡ a)の流れをフローチャートで示し,その解説
を本文に示した.
図 1 区分診断のための主要な骨組み
●
クラス分類
心室大血管関係
クラスⅠ その検査法が有用かつ有効であるという
データおよび/または一般的合意がある
●
場合
クラスⅡ
態
●
■
心室
(心室ループ)
心房心室結合
その検査法の有用性に関して相反するデ
ータおよび/または意見の相違のある状
大血管
(円錐動脈幹)
■
心房
(内臓心房位)
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1117
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
1
心房位,心室位,大血管の診断
(区分決定のメルクマール)
表 1 診断有用性:*が多いほど特異性が高い
心房
心室
大血管
2
右心房
下大静脈が流入する
上大静脈が流入する
心房中隔より前方
右心室
粗い肉柱形態
粗い心室中隔面
房室弁の低位付着
漏斗部を有する
三角形(おむすび型)
肺動脈
起始後ただちに分岐
起始後弓(arch)形成なし
区分表現法:心房位,心室位,
大血管の位置関係を表現する用語
①心房位 situs
左心房
下大静脈が流入しない
肺静脈が流入する
心房中隔より後方
左心室
粗い肉柱形成なし
平滑な心室中隔面
side by side
実際には左記の組み合わせにより表現する.
D- spiral, parallel, side by side
L- spiral, parallel, side by side
A- parallel
右心房の位置が決定できない(下大静脈欠損等):心
P- spiral
房非定位 situs ambiguous
右心室が左心室の左側:心室逆位 l-loop
原則:前述した心室形態の診断から,心室位を決定す
る.
診断有用性
**
**
平行:parallel
右心房が脊柱の左側:心房逆位 situs inversus
右心室が左心室の右側:心室正位 d-loop
診断有用性
**
**
**
*
*
自由壁から 2 つの大きな乳頭筋
漏斗部を有しない
楕円形(フットボール型)
大動脈
起始後分岐しない
起始後弓(arch)形成あり
右心房が脊柱の右側:心房正位 situs solitus
②心室位(心室 loop)
診断有用性
**
*
3
区分診断法の実際
(心臓超音波を用いる方法)
①ステップ 1:心房位の診断
▷下大静脈が接続する心房を右心房として心房位を決
参考:Loop の法則により決定する.
■大動脈(弁)が肺動脈(弁)の右側:d-loop
■大動脈(弁)が肺動脈(弁)の左側:l-loop
定する.
▷剣状突起下から下大静脈を描出する長軸断面(図 2)
と短軸断面を用いる.
▷心の回転による見かけ上の例外(10 ~ 20%),真の
例外(1 ~ 2%)
図 2 心房位の診断
V
③大血管関係
前後左右位置
大動脈が肺動脈の右側:D
大動脈が肺動脈の左側:L
大動脈が肺動脈の前方:A
大動脈が肺動脈の後方:P
空間的位置関係
交差:spiral
1118
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
S
TV
IVC
RA
LA
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
▷通常,下大静脈は脊柱の右側,下行大動脈(脊柱の
左側)の反対側を走行する.
に傾けると(+3)肺動脈の左右への分岐が観察さ
れ(図 5),最後に(+4)大動脈の断面が後方へ伸
▷下大静脈と下行大動脈が脊柱の同側を走行する場
合:aortico-caval juxtaposition と呼ばれ,内臓錯位(特
展して大動脈弓が形成される.
▷肺動脈と大動脈がそれぞれ決定されたら,両者の前
後左右および空間的位置関係を表現する(4 区分
に右側相同)に特徴的である.
▷下大静脈欠損の場合:奇静脈または半奇静脈接続の
診断の表記法 図 8).
可能性が高く,内臓錯位(特に左側相同)に特徴的
図 5 大血管の診断
である.
②ステップ 2:心室位の診断
▷心室内構造の違いにより左右心室を決定する.
▷傍胸骨からの心室短軸断面(図 3)および心尖部か
+3
Ao
RA
らの四腔断面(図 4)を用いる.
PA
LA
DAo
図 3 心室位の診断(短軸断面)
PV
RV
Ao
RA
+2
LV
LA
APM
PPM
図 4 心室位および心房心室結合の診断(四腔断面)
INF
AoV
RA
+1
RV
RA
LA
LV
LA
④ステップ 4:心房心室結合の診断
▷心尖部四腔断面を用いる(ステップ 2 の図 4).
▷心房心室結合には以下の 5 種類がある.
③ステップ 3:大血管の診断
1)正常整列
右心房と右心室は正しく整列し,その間に
▷肺動脈と大動脈をそれぞれの特徴から決定する.
三尖弁が位置する.左心房と左心室は正しく
▷傍胸骨からの大血管短軸断面を半月弁レベルから大
整列し,その間に僧帽弁が位置する.三尖弁
動脈レベルまで順次頭側に傾けて得られる断面(+1
が僧帽弁よりやや低位に位置する.心室中隔
~ +4 レベル)と,胸骨上窩からの大血管長軸断面
を用いる.
と心房中隔はほぼ同一線上に位置する.
2)房室弁交差
▷最も低いレベル(+1)で後方の半月弁(通常,大
両方の房室弁の流入路が 1 断面内に同時に
動脈弁)が観察され,次のレベル(+2)で前方の
観察されない.心房心室経路を一側ずつ描出
半月弁(通常,肺動脈弁)が観察され,さらに上方
して断面を傾けることにより,2 つの心房心
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1119
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
室経路の立体的位置関係が交差することを診
図 6 心室大血管関係の診断(1)
断する.
3)一側房室弁両室挿入
IVS
心房と心室の整列異常により,心房中隔と
心室中隔が同一線上に位置しない.一般に低
形成の心室の房室弁が反対側の心室にまたが
RA
って挿入する.
4)両房室弁同室挿入
PVe
LV
RV
LA
RPA
F1
上記同様,心房・心室中隔が同一線上に位
置しない.両側の心房の出口に当たる 2 つの
房室弁が,大きな 1 つの心室に挿入する.
RV
*両房室弁左室挿入 Double inlet left ventricle
LA
LV
(DILV)
:痕跡的右室が d-loop では右前方に,
l-loop では左前方に認められる.
*両房室弁右室挿入 Double inlet right ventricle
(DIRV)
:痕跡的左室が d-loop では左後方に,
Ao
F2
LPA
l-loop では右後方に認められる.
IVS
5)一側房室弁口閉鎖
膜性閉鎖では心房・心室の整列異常を認め
RV
ず,右心房・右心室,左心房・左心室は正し
く整列しているように見える.筋性閉鎖では
心房・心室の整列異常を認め,閉鎖している
側の心室に流入路が認められない.
⑤ステップ 5 心室大血管関係の診断
LV
PA
F3
図 7 心室大血管関係の診断(2)
▷肋骨弓下または心尖部からの四腔断面を順次頭側に
傾けて得られる断面(F1 ~ F3)を用いて,心室と大
RV
血管の接続を観察する(図 6)
.
▷傍胸骨からの心室−大血管長軸断面を用いて,心室
LV
と大血管の接続を観察する(図 7).
▷半月弁と房室弁を同時に含む断面において,両者の
Ao
RPA
LA
線維性連続の有無を観察する.半月弁と房室弁の距
離が近接しており,両者の間に筋性のエコーが認め
られない場合に線維性連続ありと診断され,その半
月弁の弁下部に円錐筋部を有しないことを意味す
る.半月弁と房室弁の間に距離があり,厚い筋性の
心血管区分を区分表現法の用語(略語)を用いて{ }
エコーが介在する場合に線維性連続なしと診断さ
内に並べて表記すると,複雑な先天性心疾患でも主要心
れ,その半月弁の弁下部に円錐筋部を有することを
血管構築を明確に示すことができる.
意味する.
*心房位:S,solitus(正位),I,inversus(逆位),A,
▷線維性連続ありの場合,大血管は左室起始,線維性
4
連続なしの場合,大血管は右室起始である可能性が
正常(S,solitus)では右心房が脊柱の右側
高い.
*心室位:D,d-loop(正位),L,l-loop(逆位)
区分診断の表記法
{心房位,心室位,大血管関係}の順に,分析した各
1120
ambiguous(非定位)
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
正常(D,d-loop)では右心室が左心室の右側
*大血管関係
正常関係(図 8- Ⅰ)
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
図 8 区分診断の表記法
Ⅰ.
正常関係
A.
正常心型
1
RA
RV
2
LA
LV
Ⅱ.
大血管転位
A.
完全大血管転位
B.
孤立性心室不一致
LA
LV
1
RA
RV
RA
LV
LA
RV
LA
RV
B.
修正大血管転位
1
2
RA
LV
RA
RV
1
2
LA
LV
LA
LV
2
RA
LV
RA
RV
LA
RV
LA
RV
RA
LV
Ao
PA
{S,
D,
N}
{I,
L,
IN}
{S,
L,
N}
{I,
D,
IN}
RA
RV
2
LA
LV
{S,
D,
LM}
RA
LV
3
LA
RV
{S,
L,
DM}
LA
LV
4
RA
RV
{I,
L,
DM}
LA
RV
{I,
L,
LT}
{S,
L,
LT}
Ⅲ.両大血管同室起始
A.
右室起始
C.
解剖学的修正 malposition
1
{S,
D,DT}
RA
LV
{I,
D,LM}
1
RA
RV
B.
左室起始
3
2
RA
RV
LA
LV
{S,
D,DR}
{I,D,DT}
RA
LV
LA
LV
{S,D,LR}
1
LA
RV
RA
RV
{S,
L,
LR}
LA
LV
{S,
D,DL}
N,normal 正位:大動脈(Ao)が右後,肺動脈(PA)
静脈管(ductus venosus)から下大静脈へ流れ,右房へ
が左前
流入する.右房へ流入した血液は,半分が卵円孔を介し
IN,inverted normal 逆位:Ao が左後,PA が右前
て左房−左室−大動脈へ流れ,残り半分は上大静脈と冠
M,malposition 心室大血管関係は正常で Ao,PA
状静脈洞からの静脈血と合流して右室−肺動脈へと流れ
の位置異常あり
る.肺動脈に流れた血液のうち一部は両肺動脈へと流れ,
(1 文 字 目;D,Ao が PA の 右 側,L,Ao が PA の
左側)
大血管転位(図 8- Ⅱ)
残りの血液は動脈管(ductus arteriosus)を介して下行
大動脈へと流れる.一部の先天性心疾患では,このよう
な胎児血行が出生後も遺残している.
T,transposition Ao が右心室,PA が左心室から
出生後肺循環が開始すると,肺動脈圧,肺血管抵抗は
起始
劇的に変化する.生後肺血管抵抗と肺動脈圧の低下とと
(1 文 字 目;D,Ao が PA の 右 側,L,Ao が PA の
左側)
両大血管同室起始(図 8- Ⅲ)
R,両大血管右室起始,L,両大血管左室起始
(1 文 字 目;D,Ao が PA の 右 側,L,Ao が PA の
もに肺血流量は増加する.この変化は,肺血管抵抗と体
血管抵抗のバランスによって肺血流量や体血流量が左右
される左心低形成症候群等の先天性心疾患では,心不全
やショック等の循環動態の破綻を生じさせることがあ
る.
左側)
2
1
発達に伴う循環動態,症候の
変化
出生前後の循環動態の変化――
胎児循環から肺循環への移行
先天性心疾患の発達による変化を理解するためには,
胎児血行から出生後の血行動態への変化の特徴を知る必
図 9 胎児循環と出生後の循環(文献 4 より改変)
動脈管
大動脈
主肺動脈
右室
右房
左室
肺
左房
要がある.胎児血行では,出生後のように肺循環が関与
せず,心内に卵円孔という心内短絡および動脈管と静脈
管という 2 つの心外短絡を有することが特徴である(図
9).
すなわち,胎盤からの酸素化された血液は,肝静脈と
右室
右房
左室
左房
卵円孔
胎児循環
出生後循環
胎児循環では,卵円孔という心内短絡と動脈管と静脈管という
2 つの心外短絡が存在する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1121
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
2
先天性心疾患の基本的病態
①循環不全(心不全)
定が先天性心疾患の発見に有用であるとする報告もあ
る.
上肢と下肢で酸素飽和度が 10%以上異なる differential
cyanosis を認めた場合には,体血圧と等圧以上の肺高血
新生児期・乳児期早期に発症する先天性心疾患は,動
圧と動脈管開存が必ず存在し,これに上下肢の血圧の差
脈管での血流障害や心房間交通障害により肺循環や体循
や四肢の脈触知の差が伴えば大動脈縮窄や大動脈離断が
環が確立できなかったり,酸素化血流が体循環にうまく
診断できる.
還流できずに低酸素血症を生じるものが多い(表 2).
中枢性チアノーゼが持続すると,ばち状指を生じる.
また肺循環と体循環が並列(駆出心室から両循環が支持
チアノーゼが改善しないまま思春期以後まで治療されず
されるもの:単心室や左心低形成症候群等)の場合には,
に過ごした先天性心疾患児では,多血症に伴う合併症と
肺血管抵抗の低下に伴う肺血流量の増加とともに体血流
して過粘稠症候群による頭痛や血栓症,高尿酸血症によ
が低下し低心拍出となる.総肺静脈還流異常等の肺静脈
る痛風,喀血,吐血等を生じる.また,さらに低酸素血
閉塞疾患では,肺うっ血から肺水腫,肺高血圧を生じる
症に伴う運動能低下に加え低酸素血症によるチアノーゼ
とともに,左心系への流入血流障害から低心拍出となる.
性腎障害(タンパク尿や浮腫)や肝機能障害を生じるこ
乳児期以後においては,左−右短絡による肺血流増加
とが知られている.
疾患では多呼吸や喘鳴等の呼吸症状に加え体重増加不良
や運動時息切れや疲労感等の症状を生じる.逆に右−左
3
先天性心疾患の発症時期
短絡による肺血流減少疾患では,肺高血圧がない場合に
主な心疾患の発症時期について図 10 に示す.重症な
はチアノーゼやしゃがみこみ,低酸素発作等を生じ,肺
先天性心疾患ほど新生児期・乳児早期に症状を発現する.
高血圧合併例では動悸,息切れ,運動時の失神発作,易
年齢により心疾患の初発症状は異なるが(表 3),小児
疲労性等を生じる.
狭窄病変が進行することによる後負荷に対して前負荷
を増加させることで代償できなくなったために後負荷不
心不全を主徴とする疾患
適合を心室が起こすと,重症大動弁狭窄のように心室の
左心低形成
収縮低下と心筋への冠還流障害を伴う重大な低心拍出を
大動脈縮窄離断複合
生じる.
また,房室弁逆流や半月弁逆流等のために心内腔の拡
大を生じると心房性や心室性期外収縮等の不整脈を生じ
て心機能を低下させ心不全を増悪させることがある.
②チアノーゼ
チアノーゼは,皮膚粘膜下血の還元ヘモグロビンが
5g/dL 以上,動脈血還元ヘモグロビンが 3g/dL 以上にな
ると見られる青色症である.低心拍出時に見られる四肢
冷汗を伴う網状チアノーゼは,舌にチアノーゼを認めず
保温や循環不全の治療で改善するため鑑別が可能であ
る.
中枢性チアノーゼは,⑴低換気,⑵右−左短絡,⑶ヘ
大きな心室中隔欠損
共通房室管孔残遺
心内膜線維弾性症
重症大動脈狭窄
完全房室ブロック
左冠動脈肺動脈起始
三心房心
心不全とチアノーゼを主徴とする疾患
総肺静脈環流異常〔閉塞(+)
〕
完全大血管転位
Ebstein 病
右心低形成
チアノーゼを主徴とする疾患
であってもヘモグロビン濃度によっては臨床的なチアノ
肺動脈閉鎖+心室中隔欠損
ーゼを生じないこともあるため注意が必要である.一般
三尖弁閉鎖(大きな ASD)
+PS
や乳児では鉄欠乏性貧血を生じることが多いため,特に
注意が必要である.新生児期では,経皮的酸素飽和度測
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
チアノーゼ軽度
総肺静脈環流異常〔閉塞(−)
〕
Fallot 四徴症
血症になると容易に出現するようになる.これは新生児
未熟児
大きな動脈管開存
モグロビン異常により生じる.ただし,同じ酸素飽和度
的には,貧血が進むとチアノーゼは出現しなくなり,多
1122
図10 主な先天性心疾患の発症時期と初発症状(文献5より改変)
鑑別すべき疾患
1週
1 か月 3 か月
大きな系統
動静脈瘻
双胎児間輸血
過粘度症候群
PPHN
低血糖
敗血症など
発作性頻拍
2年
貧血
急性腎炎
左心低形成症候群
僧帽弁閉鎖+両大血管右室起始
三尖弁閉鎖
右室低形成
④必須の心房間交通に障害がある
⑩不整脈
⑨心筋疾患
⑧冠動脈疾患
⑦漏斗部心筋肥厚増悪
⑥発育に伴う進行ないし心拍出量の増加
⑤肺血管抵抗低下に伴う肺血流量の増加
僧帽弁狭窄,三心房心
Fallot 四徴症
三尖弁閉鎖+肺動脈狭窄
両大血管右室起始+肺動脈狭窄
冠動脈奇形
BWG 症候群
心筋症
心筋炎
先天性完全房室ブロック
頻拍誘発性心筋症
著しい頻脈,心室頻拍
総肺静脈還流異常
心室,大血管レベルでの大欠損
(心室中隔欠損,動脈管開存,大動脈肺動脈開窓,
両大血管右室起始,完全大血管転位+心室中隔欠損,
三尖弁閉鎖+肺血流量増加,総動脈幹等)
肺静脈閉塞 (僧帽弁狭窄,三心房心等)
僧帽弁閉鎖不全
完全大血管転位
総肺静脈還流異常
③酸素化血液の体循環への移行障害
②体循環が確立できない
循環不全症状の機序
右室前方拍出不全
静脈還流障害
肺血流低下−低酸素血症−心筋収縮低下
冠動脈異常
心収縮低下
心筋拡張障害
徐脈による低心拍出
心室への流入障害,心筋虚血
心筋虚血による心筋収縮低下
肺静脈うっ血の増悪
逆流の進行−左室容量負荷−左室ポンプ機能不全
−左室前方拍出低下
肺静脈うっ血−肺水腫−肺高血圧−右心不全
低酸素発作
右室からの順行性肺血流量の低下−低酸素血症
肺血流増加−左室容量負荷
肺高血圧−右室ポンプ不全
並列循環での肺血流量増加−体血流量低下
心房間交通障害(右−左) 静脈還流障害−体うっ血
右房−左房流入血流制限−左室流入血流減少による
低心拍出
低心拍出量
左室後負荷不適合
動脈管狭窄・閉塞に伴う下半身血流低下−腎不全
肺高血圧−右室ポンプ機能不全
肺血流量増加−体血流量低下(並列循環)
−左室容量負荷
心房間交通障害(左−右) 低酸素血症−心筋収縮低下
心房間交通障害(右−左) 左室流入血流減少による低心拍出
右室高血圧によるポンプ不全
心房間交通障害(左−右) 肺静脈うっ血−肺水腫−肺高血圧−右心不全
動脈管依存性
動脈管依存性
表 2 新生児期・乳児期発症の先天性心疾患の病態
疾患
三尖弁閉鎖不全(Ebstein 奇形,三尖弁異形成)
右室低形成
肺動脈閉鎖+動脈管開存
胎児循環遺残
左心低形成症候群
重症大動脈弁狭窄
大動脈縮窄・大動脈離断
病態
①肺循環が確立できない
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1123
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
表 3 心疾患による症状(年齢別の初発症状,文献 6 より改変)
1.新生児期・乳児早期
2.乳幼児期
肺血流増加
多呼吸,陥没呼吸
呼吸困難,喘鳴
多汗
哺乳障害
多呼吸
易感染性,反復する肺炎
運動能低下
息切れ
3.小児期
4.思春期以後
合併症による症状
肺血流減少
チアノーゼ
チアノーゼ
低酸素発作
蹲踞(しゃがみこみ)
ばち状指
低心拍出
蒼白,末梢冷感
冷汗,網状チアノーゼ
体重増加不良
弱い泣き声
体重増加不良
運動発達遅延
易疲労性
顔色不良,やせ
運動能低下
動悸
胸痛,失神発作,突然死,喀血,不整脈,出血傾向,痛風,けいれん 等
期以後では,原疾患の合併症による症状が初発となるこ
とも多い.特に奇異性脳塞栓や脳膿瘍等を若年で発症し
③心エコー図検査
た場合には,右−左短絡を有する心疾患の鑑別が必要で
年少児では鎮静を要するときがあるが,非侵襲的で最
ある.
も用いられている診断方法である.その反面,検査施行
また肺血流増加型先天性心疾患の場合,肺高血圧の進
者の力量により,見落としや過剰診断を受ける可能性も
行に伴い肺血流が減少してくると一時的に体重増加不良
ある検査である.segmental approach(Satomi 1985)に
や多呼吸等の症状が軽減するが,さらに肺高血圧による
よるスクリーニングを行い,より正確な診断を行う必要
肺血管閉塞性病変が進行するとチアノーゼや運動時息切
がある.
れ等の症状が発現しいわゆる「Eisenmenger 症候群」の
症状を呈するようになる.
④ CT,MRI
心腔内の評価は心エコー図検査が有用であるが,超音
Ⅲ
各種検査法
波が到達しない肺の影響を受ける動脈や静脈の走行・形
態の評価に有用である(Crean 2007).しかし,このよ
うな検査は手術を行うに伴い詳細な情報が必要なときに
行うことが多い.特に心電図同期の CT(3DCT)検査は,
1
検査
心拍数の早い小児症例では成人症例よりはるかに被曝量
が増加する,このために心雑音鑑別のために容易に行う
べき検査ではない.
①心電図
2
心電図
1
標準 12 誘導心電図
心位や胸郭変形によりかなり影響を受ける検査ではあ
り,心筋虚血等の合併が少ない小児ではついおろそかに
なりやすい.しかし非侵襲的であり,不整脈の鑑別・心
室心房負荷の有無・心筋炎や心筋症等の除外等,その情
標準 12 誘導心電図だけでなくベクトル心電図や運動
報量は決して少なくない.
負荷心電図,ホルター心電図が行われている.簡便で繰
②胸部 X 線
病状把握に有用な検査である.心電計は小型で携行が容
肺血流の増加や減少の有無,心拡大の有無等判断する
易であるため,学校における心臓検診にも使用可能であ
のに有用な検査法である.X 線被曝を嫌い,まず心エコ
り,一般開業医を含め広く普及している.
ーを行う医師もいるが,強く心疾患を疑う場合には必須
の検査と考えられる.しかし,胸郭の変形等(ロート胸・
1124
り返し行うことができるため,診断や経過観察における
①検査の特性と技術的問題
straight back syndrome 等)により心胸郭比や心位に影響
新生児期には生理的な右室肥大が認められ,成長とと
が出ることがあり,一度は必ず側面の撮影も必要である.
もに波形は変化するため,小児では年齢により異常所見
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
の基準が異なることに留意する必要がある.特に胸部誘
導の T 波形は年齢とともに左側胸部誘導から右側胸部誘
導へと陽性化してくる 7)ため,右室肥大の基準が変化す
る.表 4 と表 5 に日本小児循環器学会が作成した心室肥
大の判定基準を示す
8),9)
.表 5 は簡易版である.判定基
準の項目にあげられているように(表 4),年少例では
生理的右室肥大があるために V3R,V4R を記録する必要
がある.
である.
2
運動負荷心電図
トレッドミル負荷やエルゴメーター負荷,マスター負
荷が行われる.大動脈弁狭窄で運動により ST 変化が出
現する場合には手術の適応となる.
3
ホルター心電図
乳児期から幼児期早期には検査時の協力が得られない
非侵襲的で,新生児でも検査可能であり,不整脈の診
ため,眠剤を投与しなければならないことが多い.
断には不可欠の検査である.小児では体動が激しく,心
拍数も速いため,解析には相当な修正が必要となる.
②検査の臨床的意義
心電図検査は先天性心疾患の診断に直結するものでは
3
胸部 X 線
ないが,波形の異常,肥大所見や負荷所見,心筋虚血等
の心筋性状の変化,不整脈の合併等病態把握には不可欠
心エコー検査や MRI をはじめとした画像診断技術の
な検査である.また,手術適応や手術時期の決定にも有
進歩により,先天性心疾患の診断における胸部 X 線検査
用である.さらに,成人期に達した先天性心疾患例にお
の重要性は低くなってきている.例えば,チアノーゼを
6)
いては予後の判定の一助にもなる .
呈する新生児が入院してきた場合には,ポータブルの胸
1)波形の異常
部 X 線撮影を行う前に心エコー検査を行って,必要であ
心房中隔欠損における右軸偏位,不完全右脚ブロック,
ればすぐにプロスタグランジン E1(PGE1)の投与を開
V4 誘導の孤立性陰性 T 波,房室中隔欠損における左軸
始することになる.しかし,先天性心疾患には多種多様
偏位,PQ 間隔の延長,不完全右脚ブロック,修正大血
な疾患があり,他臓器の異常を合併することもあるため
管転位における左軸偏位,V1 誘導の QS 型,V5 および
胸部 X 線は依然不可欠な検査である.また,簡便で安価
10)
V6 誘導における Q 波の欠如等は診断的価値が高い .
な検査法であり,心疾患の有無や経過観察における血行
実際,学校心臓検診でこうした心電図所見から幼児期に
動態の変化を捉えるスクリーニングの検査として有用で
見逃されていた疾患が発見される.
ある.
2)負荷所見
負荷所見の有無が手術適応を決定する重要な基準にな
①検査の特性と技術的問題
る 10).
撮影装置は広く普及しており,装置の技術革新により
3)心筋性状の変化
放射線被爆も著しく低下しているが,乳児期や幼児期早
重症大動脈弁狭窄では左室ストレインパターン(左側
期の撮影には姿勢を維持するために工夫が必要である.
胸部誘導における ST 低下や陰性 T 波)を示し,重症肺
また,年少児では呼吸を止めることができないだけでな
動脈弁狭窄では右側胸部誘導のストレインパターンが認
く,泣いて体動が激しいことも多く,適切な吸気時の写
められる.また,左冠動脈肺動脈起始では左室前側壁の
真を撮影することが困難である.さらに,新生児から乳
心筋虚血や梗塞所見が認められる
10)
.
児期早期には胸腺が大きいため正しい評価が困難である
4)不整脈
ことが少なくない.胸腺は心基部に認められることが多
心房中隔欠損や Ebstein 奇形等心房に負荷がかかる疾
いが,心陰影を覆うほど大きいこともある.新生児期に
患では心房期外収縮や心房粗動・細動が認められること
は肺野が全体に黒く,肺血管陰影が乏しく見える.生後
がある 10).また,修正大血管転位や心房内臓錯位症候群
早期には肺血管抵抗が十分に低下していないことを反映
でも不整脈を合併しやすい
10)
.
している.
③問題点
②検査の臨床的意義
簡便な検査で得られる情報量は多いが,先天性心疾患
胸部 X 線からは心陰影,肺血管陰影,肺野(気管・気
の形態診断には直結しない.小児期には年齢により異常
管支を含めて)だけでなく,肝臓や胃泡の位置,肋骨や
所見の取り方が大きく変わるため,習熟には慣れが必要
脊柱等の骨格系を評価することができる.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1125
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
●右室肥大判定基準
点数
5点
3点
2点
1点
表 4 点数による小児心電図心室肥大判定基準 (文献 7 より引用,一部改変)
所見
(1)右側胸部誘導パターン
① V4R,V3R,V1 のいずれかで
qRs,qR または R 型
② V1 の T 波が陽性でかつ R > |S|
(2)右側胸部誘導の高い R
① RV1
② V1 が R < Rʼ でかつ RʼV1
③ V1 が R > |S| で RV1
(3)左側胸部誘導の深い S
① |SV6|
② V6 が R ≧ |S| でかつ |SV6|
(4)右側胸部誘導の VAT 延長:VATV1
(5)右軸偏位:QRS 電気軸
0~7日
8 ~ 30 日
1 か月
~2歳
3 ~ 11 歳
+
+
+
*
+
≧ 2.5mV
≧ 1.5mV
*
≧ 1.0mV
*
≧ 0.035sec
*
12 歳以上
男
女
+
+
+
+
*
*
*
同左
同左
*
≧ 2.0mV
同左
*
同左
≧ 1.0mV
≧ 1.5mV
同左
同左
同左
≧ 1.5mV
同左
≧ 1.0mV
同左
*
同左
*
同左
≧ 0.5mV
同左
≧ 135°
同左
同左
同左
≧ 120°
同左
同左
同左
同左
同左
同左
同左
同左
注 1)WPW 症候群や完全右脚ブロックがあれば,右室肥大の判定は困難である
2)*印はその年齢群ではとりあげない項目
(4)
項は不完全右脚ブロックパターンがある時はとりあげない
3)第
4)各項の亜項は重複しても加算しない
「判定 5 点以上:右室肥大,3 ~ 4 点:右室肥大疑,1 ~ 2 点:心電図上は右室肥大と判定しない」
●左室肥大判定基準
点数
所見
5 点 (1)左側胸部誘導の ST-T 肥大性変化
(2)左側胸部誘導の
① RV6
高い R
② RV5
(3)右側胸部誘導の
① |SV1|+RV6
深い S
② |SV1|+RV5
3点
③ |SV1|
(4)左側胸部誘導の
|QV5| < |QV6|
深い Q
でかつ |QV6|
(5)Ⅱ,Ⅲ,aVF 誘導の
① R Ⅱおよび R Ⅲ
高い
R
② RaVF
2点
(6)左側胸部誘導の VAT 延長 V5 または V6
1 点 (7)左軸偏位:QRS 電気軸
8 ~ 30 日
1 か月
~2歳
3 ~ 11 歳
+
≧ 1.5mV
≧ 2.5mV
*
*
≧ 2.5mV
+
≧ 2.0mV
≧ 2.5mV
*
*
≧ 2.0mV
+
≧ 2.5mV
≧ 3.5mV
≧ 4.0mV
≧ 5.0mV
*
+
≧ 3.0mV
≧ 4.0mV
≧ 5.0mV
≧ 6.5mV
*
*
*
*
≧ 0.5mV
同左
同左
*
*
*
*
≧ 2.5mV
≧ 2.5mV
同左
同左
同左
同左
同左
同左
*
*
*
*
≧ 0.04sec ≧ 0.05sec ≧ 0.06sec
*
≧ 0°
注 1)ST-T の肥大性変化:V5 または V6 で,高い R 波を認め,T 波が陰性または二相性(−~+型)のもの
ST 区間は下り坂ないし水平のことが多い
2)WPW 症候群や左脚ブロックがあれば,左室肥大の判定は困難である
3)*印はその年齢群ではとりあげない項目
4)各項の亜項は重複しても加算しない
「判定 5 点以上:左室肥大,3 ~ 4 点:左室肥大疑,1 ~ 2 点:心電図上は左室肥大と判定しない」
●両室肥大判定基準
●両室肥大
1)左室・右室ともにおのおのの肥大判定基準が 5 点以上のもの
2)一方の心室の肥大判定基準が 5 点以上で,他の心室の同基準が 3 ~ 4 点のもの
●両室肥大疑
左室・右室ともにおのおのの肥大判定基準が 3 ~ 4 点のもの
1126
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
12 歳以上
男
女
+
+
同左
≧ 2.5mV
同左
≧ 3.5mV
同左
≧ 4.0mV
≧ 6.0mV
≧ 5.0mV
*
*
0~7日
≧− 30°
同左
同左
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
表 5 小児心電図心室肥大判定のめやす(生後 30 日以下は除く,文献 8 より引用)
両室肥大のめやす
両室肥大
1)両心室の肥大
2)一方の心室肥大と他の心室肥大の疑い
両室肥大の疑い
両心室の肥大の疑い
左室肥大
1)左側胸部誘導(V5 または V6 誘導)ST-T の変化
,および深い QV6 の
2)高い V6,大きな(|SV1|+RV6)
うち二つ以上の所見
左室肥大の疑い
,または深い QV6 のい
高い RV6,大きな(|SV1|+RV6)
ずれか
上記所見の内容は下記のとおりである
1)左側胸部誘導の ST-T の肥大性変化
V5 または V6 誘導で高い R 波を認め,T 波が陰性または
二相性(−~+型)
2)高い R 波
3 歳以上 RV6 ≧ 3.0mV. 3 歳未満および 12 歳以上の
女児は RV6 ≧ 2.5mV
3)大きな |SV1|+RV6
3 歳以上は |SV1|+RV6 ≧ 5.0mV. 3 歳未満および 12
歳以上の女児は |SV1|+RV6 ≧ 4.0mV
4)深い Q 波
|QV5| < |QV6| でかつ |QV6| ≧ 0.5mV(3 歳以上)
注 1)WPW 症候群や完全右脚ブロックがあれば心室肥大の判
定は困難である
2)3 歳以上 6 歳未満では,V1 誘導 T 波が陽性でかつ R > S で
あれば右室肥大の可能性が強い
3)V1 の VAT 延長や強い右軸偏位があるときは右室肥大に留
意する
4)深い SV6 だけの症例には回転異常などがあるので右室肥
大疑と判定するには慎重でなくてはならない
,V6 誘 導 の
5) Ⅱ, Ⅲ,aVF 誘 導 の 高 い R 波(2.5mV 以 上 )
VAT 延長や左軸偏位があるときは左室肥大に留意する
左室肥大のめやす
右室肥大のめやす
右室肥大
1)右側胸部誘導の右室肥大パターン
① V1(V4R および V3R)で qRs,qR,R パターン
② V1 誘導の T 波が陽性で,かつ R > S(3 歳未満)
2)高い RV1 と深い SV6 *
右室肥大の疑い
高い RV1 と深い SV6 *
*高い RV1 と深い SV6 とは下記の条件のいずれかを満足する
もの
・高い RV1: ① RV1 ≧ 2.0mV (12 歳以上の女児は≧ 1.5mV)
② V1 誘導で R > |S| で,RV1 ≧ 1.5mV
(3 歳以上,12 歳以上女児≧ 1.0mV)
③ V1 誘導で R < R’で,R’V1 ≧ 1.5mV
(3 歳未満,3 歳以上≧ 1.0mV)
・深い SV6: ① |SV6| ≧ 1.0mV.② V1 誘導で R ≦ |S| で,
|SV6| ≧ 0.5mV
なお,V6 誘導の深い S 波の所見は心臓の回転異常の場
合にもみられる
1)心陰影
1/3 まで続く.右肺動脈は気管の透亮像よりも拡大する.
心陰影の位置,大きさ,形を確認できる.通常心尖部
3)肺野
は左下方を向いているが,右胸心や正中心の場合がある.
左房拡大による無気肺や胸水貯留,横隔膜ヘルニア,
全内臓逆位に伴う右胸心では心疾患の合併は少ないが,
肺分画症の診断が可能である.また,気管や気管支の透
孤立性右胸心では心疾患の合併が疑われる.心陰影の大
亮像から気管狭窄や心房内臓錯位症候群が診断でき
きさは心胸郭比で評価することが多いが,成人に比べて
る 13),14).先天性心疾患には気管狭窄や気管軟化症の合
新生児・乳児では大きくなり,0.6 ぐらいまでは正常範
併が少なくない.また,気管支の分岐の角度が左右対称
囲と考えられている
11)
.しかし,心胸郭比はあくまでも
心拡大の大まかな指標であり,心エコー検査における心
内腔の計測値とは相関しない
12)
.
である場合には心房内臓錯位症候群が疑われる 13),14).
4)内臓の位置
胃泡の位置と肝臓の形態は重要で,通常胃泡の位置と
心疾患によっては特徴的な心陰影の型を示し,よく知
心尖の向きは同じであり,逆になっている場合には心房
られているものとしては木靴型(Fallot 四徴症)や卵型
内臓錯位症候群が疑われる 13),14).また,左右対称の肝
(完全大血管転位),雪だるま型(8 の字型,総肺静脈還
臓も心房内臓錯位症候群が疑われ,複合心奇形が合併し
流異常で左無名静脈に還流する場合)がある 13),14).また,
やすい.
心陰影の形によって心臓のどの部分に負荷がかかってい
5)骨格系
15)
るかを知ることができる .大動脈を丹念に確認すれば,
脊柱側弯や脊椎の異常は心疾患に合併することがあ
右大動脈弓の診断や年長例では 3 の字サインから大動脈
る.脊柱側弯と指の長さ等から Marfan 症候群が疑われ,
縮窄を診断することも可能である 13),14).
脊椎の異常は VATER 連合が示唆される 13),14).年長例の
2)肺血管陰影
肺血管陰影から肺血流の増加や減少,うっ血を診断で
きる 13),14).先天性心疾患の半数以上は左右短絡による
肺血流増加群であり,肺血流増加の診断は重要である.
肺血流増加群では肺門部の肺動脈は拡張し,肺野の末梢
大動脈縮窄では拡大した肋間動脈による肋骨下部侵食像
(rib notching)が認められることがある 13),14).
③問題点
簡便な検査で繰り返し行うことができ,読影に専門的
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1127
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
知識を必要としない.心疾患の診断や評価のスクリーニ
により短絡や弁逆流等の異常血流が捉えられる.
ングにはなるが確定診断にはならない.放射線被曝を最
①狭窄病変の評価
小限にするために,必要最小限に行わなければならない.
狭窄部を通過する最大血流速度から簡易ベルヌーイ式
4
超音波検査(心エコー検査)
)
を用いて圧較差を推定することができる 22(図
11).
②弁逆流の評価
カラードップラー法により成人と同様に行う.
心臓内部の正確な形態診断に最も優れた診断法であ
③左右短絡の評価
る.経胸壁エコー検査だけでなく,経食道心エコー検査
右室流出路と左室流出路におけるパルスドップラー法
や胎児心エコー検査も行われている.
による流速積分値(time velocity integral)と流出路径か
①検査の特性と技術的問題
らそれぞれの 1 回拍出量を算出し,その比から肺・体血
流量比を求めることができる 23).しかし,誤差が大きい
ベッドサイドで簡便にしかも非侵襲的に行うことがで
ため,欠損孔の大きさや心房・心室の拡大の程度によっ
きるため,新生児の重症例でも検査が可能である.先天
て評価していることが多い.
性心疾患の診断においては最も診断能力が高く,診療に
④肺高血圧症の評価
おいて中心となる検査法である.複合心奇形の診断には
連続波ドップラー法で求めた三尖弁逆流速度から簡易
系統的な検査が必要で,立体構築を捉えるために区分診
ベルヌーイ式を用いて右室右房圧較差を算出し,これに
断法(segmental approach)が用いられる 16).三次元心
右房圧(通常 10 mmHg)を加えて右室収縮期圧を求め
エコー検査は弁の評価には有用であるが,先天性心疾患
る方法が広く使われている 24).心室中隔欠損や動脈管開
の診断においては従来の断層心エコー検査が主体である
存では短絡血流速度から簡易ベルヌーイ式を用いて圧較
ため,複合心奇形の診断では三次元の心臓を断面の組み
差を算出し 25),測定した体血圧から圧較差の差をとるこ
合わせから頭の中で構築しなければならず経験が必要で
とで肺高血圧症の評価ができる.ただし,欠損孔が小さ
ある.
い場合には短絡血流速度が低下していることがあるので
②検査の臨床的意義
注意が必要である.また,心室短軸断面における心室中
隔 の 湾 曲 を 利 用 す る 方 法 や 肺 動 脈 弁 の systolic time
1)形態診断
integral(pre-ejection period/ejection time 比)から右室圧
断層心エコー検査により区分診断法を用いて診断す
を推定する方法がある 20).
る.詳細は区分診断の項を参照されたい.次に各弁の形
3)心機能評価
態や心内腔の大きさ,壁厚,血管の径を測定する.小児
左室収縮機能の指標としては駆出率(LVEF),左室拡
における各種計測値の正常値に関して,欧米では大規模
な検討が行われている 17)−19)が,我が国では少数例の検
討しかない
図 11 肺動脈弁狭窄の心エコー図
20)
.成人と異なり,複合心奇形では心室容積
や弁輪径,血管径が小さいことの評価も重要になる.例
えば,左右心室の大きさが違う場合には,2 心室型修復
が可能であるのかどうか小さな心室を正確に評価する必
要が生ずる.こうした計測に心エコー検査は不可欠な方
法になっている(クラスⅠ).さらに,心室中隔欠損の
欠損部位や欠損孔の径の診断等では心エコー検査が最も
優れている 21).また,経食道心エコー検査によれば経胸
壁心エコーでは観察しにくい肥満や胸郭変形等の症例で
の観察が可能になる.さらに経食道心エコー検査は心房
中隔欠損の詳細な検討や胸部大動脈の評価,術中や術直
後の弁の観察等に有用である.
2)血行動態診断
ドップラー法により血流波形や流速を測定することで
弁や血管の狭窄の程度が確認でき,カラードップラー法
1128
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
左:肺動脈弁のドーム形成と主肺動脈の狭窄後拡張を認める.
右:連続波ドップラー法により計測した狭窄部の最大血流速度
(V m/sec)から簡易ベルヌーイ式を用いて圧較差(PG mmHg)
を推定することができる.すなわち,PG=4 × V2 により算出す
る.
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
張機能の指標として E/A 比,総合した指標として Tei
図 12 三次元心エコー検査
1:大動脈弁と僧帽弁
index が広く用いられている(クラスⅡ a).Tei index の
正常値は成人と小児で多少異なる 26),27).
心エコー検査の診断精度向上とともに,心臓カテーテ
ル・心血管造影検査を行わず,心エコー検査だけで手術
を行うことも増加してきている 28),29).
③問題点
ベッドサイドで簡単に行うことができ,多くの場合確
定診断を得ることができる.区分診断法に習熟する必要
がある.
④その他
三次元心エコー検査が行われるようになり,特に弁の
2:心房中隔欠損
評価では有用性が明らかになっている(図 12)
.先天性
心疾患における有用性についてはさらに症例を重ねるこ
とが必要である.今後,心腔内エコー検査も行われるよ
うになるものと考えられる.
5
CT,MRI
4 列 に 始 ま っ た マ ル チ ス ラ イ ス CT(MS-CT, 以 下
3DCT)による心臓検査では 40 秒近い呼吸停止を必要と
したが,急速な技術革新により 64 列が中心となり,さ
らには 256 列が開発され,小児の心臓検査にも広く用い
られるようになってきた 30).MRI も高速での収集が可
能となり,分解能も向上し,先天性心疾患の診断に有用
な検査になってきた.高速スキャンに加え,心拍同期ス
できているが,心拍動と呼吸運動のため検査には限界が
キャンが可能となったため心拍が速い新生児や乳児でも
あり,十分な鎮静が必要となる.
優れた画像が得られるようになった
31)
.
②検査の臨床的意義
①検査の特性と技術的問題
1)形態診断
心エコー検査のように限られた部位から画像を得るの
大動脈や肺動脈,静脈の形態診断には非常に有用であ
ではなく,広い断面で画像を得ることができる.特に
る 31).新生児期の大動脈縮窄や総肺静脈還流異常(図
MRI では任意の断面を設定することが可能である.ま
13)では,心エコー検査と 3DCT の組み合わせで手術
た,心エコー検査のように胸郭の変形や過膨張の肺に視
)
が可能である 32(クラスⅡ
a).また,大動脈肺動脈側副
野が遮られるということはない.
血行の三次元表示は肺動脈を再建・統合する手術に際し
いずれの検査でも三次元画像を構築することが可能
て有用性が高い.さらに,心臓カテーテル検査の代わり
で, 特 に 我 が 国 で は MS-CT に よ る 三 次 元 画 像 診 断
に MRI による評価で Glenn 手術を行うことも可能にな
.複
)
ってきている 33(クラスⅡ
b).3DCT では心内腔画像(図
雑な構造物を三次元構築するためには,疾患の十分な理
14)も臨床応用可能なレベルに向上してきている(ク
解と画像処理の方法に精通することが必要である.
ラスⅡ b).
装置は大きく,MRI では強い磁場が発生するために
2)機能診断
部屋全体のシールドが必要であり,ベッドサイドで簡便
機能診断では MRI が有用である.年長例では心エコ
に行うわけにはいかない.また,技術開発は急速に進ん
ー検査での評価が難しい右室の収縮能評価が可能であ
(3DCT)が広く行われるようになってきている
30)
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1129
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
図 13 MS-CT 画像
right isomerism における総肺静脈還流異常(肺静脈が上大静脈
に還流)
受性が高く発癌のリスクが高いことが明らかにされてい
る 37).小児で心電図同期の 64 列 MS-CT を行った場合の
被曝線量については十分な検索がなされていない.放射
線被曝量を低減させる工夫が必要であり 38),検査毎に
CT 装 置 の コ ン ソ ー ル 上 に 表 示 さ れ る Dose-length
product(DLP)値から実効線量を推定して記録してい
くことが必要であろう 39).
CT や MRI 検査は検査室へ患者を搬送することが必要
であり,重症小児例では病状の悪化を招く可能性がある.
また,MRI では強い磁場のために金属を検査室に持ち
込むことが制限され,人工呼吸や多くの輸液ポンプを使
用している重症例では検査が大変である.
6
図 14 MS-CT(3DCT)心内腔画像
心臓カテーテル検査・心血管
造影検査
心臓カテーテル検査・心血管造影検査は先天性心疾患
の解剖を詳細に知るために最も信頼できる検査法であ
る.
①検査の特性と技術的問題
小学生以下では鎮静が必要で,気管内挿管を必要とす
ることもある.小児では血管が細いため,細いカテーテ
ルを使用しなければならない.また,乳幼児では心拍数
が速いため,撮影は高速にしなければならない.
②検査の臨床的意義
形態診断だけでなく,重症度評価,治療の適応決定,
手術法の決定,手術後の評価に有用である.心エコー検
査の解像度向上により,心臓カテーテル検査を行わずに
り,弁逆流量の評価もできる 34).Fallot 四徴症や修正大
手術を行うことも増加している.左右短絡疾患における
血管転位,心房内血流転換術後の完全大血管転位等の遠
肺高血圧症では手術適応決定のために負荷試験を行い,
隔期の心機能評価に有用である 35).
肺血管病変の可逆性を評価することができる.近年,カ
③問題点
心血管造影検査に比べて侵襲は少ない.三次元表示さ
テーテル治療が増加してきている.
③問題点
れた心血管像を回転させながら様々な方向から観察する
正確な診断が可能であるが,侵襲があり,検査に伴う
ことが可能であるため,心臓外科医にとって術前の詳細
種々の合併症の問題がある.
なシミュレーションが容易にできる.さらに,心外構造
物との位置関係の把握が容易である.
7
血液検査
MS-CT で三次元表示を得るためには画像の再構築が
1130
必要であり,時間と技術的習熟が必要である.また,
先天性心疾患においても循環動態を反映する指標とし
3DCT で は 放 射 線 被 曝 が 問 題 と な る. 最 近,64 列
て ANP や BNP 値は重要である.しかし,疾患や年齢に
MS-CT による生涯にわたる発癌の問題が指摘された 36).
よって上昇の程度は大きく異なるため,その評価にはそ
小児では成人に比べて同じ放射線被曝量であっても,感
の値の推移が重要になる.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
チアノーゼ型心疾患においては多血症があるために鉄
健常児が有している正常の心雑音であり,注意深
欠乏性貧血になりやすい.ヘモグロビン値では貧血の評
く小児を診察するとかなりの頻度で聴取可能であ
る.
価は困難であり,MCV 値を参考にする.チアノーゼが
② 機能性心雑音
残存している年長例では腎機能低下や高尿酸血症が問題
となる.利尿薬内服例や哺乳不良例では血清電解質に注
発熱や甲状腺機能亢進等の心機能亢進時や貧血等
意する必要がある.
の時に聴取するもので,時に聴診のみでは心疾患と
の鑑別が困難なこともある.
Ⅳ
③ 器質的な心疾患を有し心雑音を有している者
症候別検査計画
1
プロセス
発熱時等に心雑音を指摘された症例は,解熱時に再度
1
の診察を行い心雑音が聴取されないときは機能性心雑音
心雑音
と判定しても問題ない場合が多い.しかし食生活の偏り
等により貧血症例を認める症例もあるために,眼球結膜
心疾患がなくとも心雑音を有している小児は極めて多
の観察や貧血が疑われる場合には血算の検査も行った方
く,その中から心疾患により生じている心雑音を鑑別し,
がよいことがある.
診断を行う必要がある.小児で心雑音を聴取した場合,
無害性心雑音は小児循環器専門医の場合は聴診だけで
以下の雑音との鑑別が必要となる(図 15)
.
判断できる場合も少なくない(クラスⅡ).臨床経験の
① 無害性心雑音
少ない医師や,聴診にて確証が得にくい場合には,心エ
図 15 心雑音診断フローチャート
収縮期雑音
収縮期駆出性雑音
有意心雑音
収縮期逆流性雑音
無害性心雑音
機能性心雑音
非チアノーゼ
チアノーゼ
大動脈狭窄
肺動脈狭窄
心房中隔欠損
Fallot 四徴
極型肺動脈狭窄
など
非チアノーゼ
チアノーゼ
心室中隔欠損
僧帽弁閉鎖不全
チアノーゼ性心疾患
拡張期雑音
拡張期ランブル
拡張期逆流性雑音
大動脈閉鎖不全
拡張期ランブルのみ
収縮期雑音との混在
僧帽弁狭窄
三尖弁狭窄
左・右短絡疾患による
短絡血流が多量の症例
連続性雑音
左側鎖骨下聴取
動脈管開存
右側鎖骨下聴取
無害性心雑音
(静脈こま音)
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1131
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
コー図検査を施行すべきと考えられる.乳児期で発育・
査である.心機能評価に関しては,現在は収縮能の評価
発達に問題がある症例や,頻脈や多呼吸のある症例では,
だけではなく拡張能の評価もある程度可能になってきて
心不全によりそれら症状が発生している可能性があり,
いる.また心拍出量の経時的変化も上行大動脈血流の速
心エコー図検査も含めた精査を行うべきである.
度時間積分(VTI)を用いると定量的に評価可能となっ
器質的心疾患を疑う場合には,心不全の有無や心房や
てきている.弁狭窄や弁逆流に関しても,その程度や圧
心室負荷の評価を行う必要性からも,胸部 X 線,心電図
較差・心室圧の推定もかなり正確に可能となってきてい
とともに心エコー図検査を行い診断のみでなく病状全体
る.
の把握を試みる必要がある.
心不全症例に行う両心室ペーシングではペースメーカ
2
循環不全(心不全)
の設定により心拍出量がかなり変化する.設定時には組
織ドップラーにて壁運動の協調性の評価を行ったり,
VTI にて心拍出量の計測を行い,設定条件に役立ててい
新生児や乳児と,幼児期,学童により循環不全(心不
る.
全)の症状は異なるために,その年齢に沿った問診や診
② 胸部 X 線
察が必要とされる.
全体的な心不全の評価に関しては胸部 X 線の心胸郭
新生児,乳児期の心不全は基本的には短絡性心疾患に
比は有用である.抗心不全治療による心胸郭比変化も客
合併する頻度が高い.
観的に評価しやすい指標である.しかし脊柱の straight
哺乳量低下や哺乳時間延長等を伴った体重増加不良,
back やロート胸があり,心臓が前後から圧迫されてい
多呼吸,陥没呼吸,頻脈が主に見られる症状である.心
る症例では心胸郭比が大きくなるために,正面のみなら
雑音を指摘されたり,親が心不全症状に気付き病院を受
ず側面の X 線撮影も重要である.
診することが多いが,定期健診等で体重増加不良を指摘
③ 心電図
され受診することもある.
不整脈の評価のみならず,心房や心室への負荷を評価
幼児の心不全は評価が難しいことが多い.重症の心疾
するのに有用である.また慢性心不全症例では,心不全
患では既に新生児期や乳児期に心不全を発症し治療をな
の増悪により不整脈の増加を招き,場合によっては突然
されていることが多く,これらの症例よりやや軽症の病
死を合併する可能性がある.
態の症例が幼児期に心不全症状を呈する可能性がある.
④ 心臓カテーテル検査
体重増加不良や,心不全が基本にあると運動量等が健常
近年は,心エコー図検査の機能が向上し,心不全の評
児より低下するために,運動発達の遅れや健常者に比し
価目的だけで心臓カテーテル検査を行うことは激減して
て運動量が少ないことが症状として認められることが多
いる.しかし,虚血性の心疾患が疑われている時の冠動
い.健診時だけでなく,通常の診察時にも心疾患時の運
脈評価や,心筋症が疑われているときの心筋生検は行わ
動発達等に気を配る必要がある.
れている.
しかし,拡張型心筋症等のように後天性の心疾患で心
⑤ 血液検査
不全を発症した場合は,成人の心不全と同様の症状を呈
近年,ナトリウム利尿ペプチドは心不全の程度や,治
し,特に左心不全では当初は感冒や気管支炎等の診断・
療に対する反応を見るときに欠かせない検査となってき
治療を受けていた後に,胸部 X 線写真を撮影時に心拡大
ている.
から心不全の診断を受けることも少なくない.
学童期の心不全症状は比較的成人の場合に近く,軽症
3
チアノーゼ
のときには易疲労性がまず出現し,その後に頻脈や呼吸
困難,浮腫,肝腫大等の症状が出現する.就学児童や生
チアノーゼの主な原因として以下のようなものがあ
徒であれば,下校後の家庭での状態を聞くと,症状の把
る.
握が有効にできることが多い.
1
検査
① 心エコー
1132
① 短絡によるチアノーゼ
1)心内短絡(チアノーゼ性心疾患)
2)肺内動静脈短絡
② 呼吸器疾患による低酸素症
心不全の原因となる心疾患の診断や心機能評価に関し
換気能の低下による低酸素血症や高炭酸ガス血症
ては心エコー図検査が有用であり,最も行われている検
③ 多血症に伴う還元型ヘモグロビン増加による低酸
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
素を伴わないチアノーゼ
図 16 チアノーゼ診断フローチャート
これらの診断・病態評価のために,以下のような検査
肉眼的チアノーゼ
を行う.
1
経皮的酸素飽和度計測
(新生児であれば上下肢を計測)
検査(図 16)
最も容易な低酸素血症の鑑別はパルスオキシメーター
酸素飽和度低値
を用いた動脈血酸素飽和度の測定である.しかし,末梢
動脈拍動が微弱な症例や新生児ではときとして誤った数
胸部レントゲン
呼吸器疾患の鑑別
値を示すことがあるために注意が必要である.高炭酸ガ
ス血症の鑑別は動脈血ガス分析が最も有用である.
低酸素血症・高炭酸ガス血症を認めないときには血算
により多血症の有無を鑑別する必要があるが,通常は原
酸素飽和度正常
血算により多血の有無を
チェック,血中CO2を血
ガス分析でチェック
心エコー図検査にて
心腔内短絡の鑑別
疾患により二次的に多血症を合併することがほとんどで
あるために,原疾患の診断が必要となる.
①心内短絡(チアノーゼ性心疾患)
短絡の疾患には心エコー図検査が最も有用である.
心エコー図 検 査にて
心腔内短絡を認めな
いときは,
コントラスト
エコーもしくは 肺 血
流シンチグラフィにて
肺内短絡の鑑別
②肺内動静脈短絡
肺内動静脈短絡が疑われるときには,コントラストエ
簡便である.肺血流シンチを用いても鑑別が可能であり,
コーによりコントラストが左房まで到達するかの鑑別が
さらに短絡血流量の推定も可能である.
各 論
Ⅴ
1
1
疾患別検査計画
図 17 心室中隔欠損口の部位による分類
7
心室中隔欠損(ventricular
septal defect:VSD)
6
3
解剖・病態生理
1
心室中隔欠損は最も頻度の高い先天性心疾患である.
4
心室中隔欠損の解剖で重要なことは欠損口の位置によっ
2
5
て房室間伝導路,房室弁,大動脈弁が近接していること
である.現在,欠損口を膜性周囲部(perimembranous),
筋 性 部(muscular) お よ び 肺 動 脈 弁 下 部(subarterial)
に分類することが汎用されている 40).さらに前二者は基
本的な位置によって流入部(inlet),肉柱部(trabecular),
または流出部欠損(outlet)に分類される(図 17).肺
動脈弁下欠損は東洋人に多く,近接する大動脈弁の逸脱・
①膜性周囲部 流入部
② 〃 肉柱部
③ 〃 流出部
④筋性部 流入部
⑤ 〃 肉柱部
⑥ 〃 流出部
⑦肺動脈弁下
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1133
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
変形が生じて大動脈閉鎖不全を発症することがあ
る 41),42).
④心臓カテーテル検査
心室中隔欠損に起因する体循環から肺循環への左右短
右心室から肺動脈での酸素飽和度上昇を認めるが,肺
絡量の決定因子は,⑴欠損孔サイズ,⑵体循環抵抗,⑶
高血圧が高度であるとその上昇は軽微である.左心室造
肺循環抵抗である.欠損孔が大動脈弁輪径より小さい場
影で左心室から肺動脈が造影され診断される.
合,短絡量は欠損孔サイズに依存し,大動脈弁輪径より
大きい場合,肺循環抵抗+欠損孔抵抗と体循環抵抗の比
によって短絡量が決定される.短絡量が増加すると左心
室への容量負荷が増大して左室拡張末期圧の上昇,左房
圧上昇,肺静脈圧上昇へと伸展し肺血管抵抗の増大によ
3
病態把握のための検査(図 18)
①聴診
軽症では全収縮期雑音を聴取するのみであるが,左右
る肺高血圧を惹起する.肺静脈圧上昇は肺うっ血,肺水
短絡量が中等度以上(およそ Qp/Qs > 2.0)になると,
腫等の左心不全症状を引き起こす.さらに,筋性肺小動
短絡量の増加による相対的僧帽弁狭窄を生じて全収縮期
脈の中膜が肥厚して肺血管床の閉塞性病変が進行する
雑音に加えて心尖部で拡張期ランブルを聴取する 42),43).
と,肺血管抵抗が体血管抵抗を凌駕して欠損孔を通して
肺高血圧によるⅡ p の亢進を伴うようになる.肺高血圧
右左短絡を生じる(Eisenmenger 症候群).
が高度になると雑音は収縮期全体では聴取されなくなり
2
診断のための検査(図 18)
Ⅱ音は亢進とともに単一化する.Eisenmenger 化すると
収縮期雑音を聴取しないことがある.
①聴診
②胸部 X 線・心電図
小児期に全収縮期雑音を聴取すれば,心室中隔欠損を
胸部 X 線では左心系の容量負荷により心拡大を認め
念頭において精査する.心雑音の最強点が胸骨左縁第 2
る.中等症以上では心拡大に加えて肺血管陰影の増強か
~ 3 肋間と比較的高位なら大血管下欠損の可能性が高
ら肺うっ血像を認める.Eisenmenger 化すると心胸郭比
く,第 4 肋間~心尖部で聴取する場合は先天性僧帽弁閉
は正常化するが,肺動脈末梢部陰影は減少する 41),42).
鎖不全との鑑別が必要である.
心電図では左心室容量負荷により左室肥大所見を認め
る.肺高血圧の進行により両室肥大所見を認めるように
②胸部 X 線・心電図
なる.Eisenmenger 化すると右胸部誘導でストレイン型
両検査とも病態把握には重要であるが,心室中隔欠損
の陰性 T 波を伴う高度の右室肥大所見を呈するようにな
を診断するための特徴的所見はない.
る.
③心エコー
③心エコー
心室中隔欠損の部位診断に不可欠である.肺動脈弁下
左心房,左心室の拡大が明らかな場合は中等度以上の
欠損は大動脈基部短軸,右室流出路短軸−長軸断面で肺
短絡と判断される 42).左室容量負荷増大により僧帽弁輪
動脈弁に接して欠損孔を認める.大動脈弁逸脱は左室長
が伸展・拡大するとカラードップラーで僧帽弁閉鎖不全
軸断面で観察する.傍膜様部欠損は大動脈基部短軸断面,
が確認される.連続波ドップラー法により短絡血流から
僧帽弁レベルの左室短軸,四腔断面で観察し,欠損の進
左心室−右心室圧較差を概算し体血圧と比較することに
展方向(流入部,肉柱部,流出部)も診断する 41)−43).
より右心室圧を推定する 41),42).三尖弁逆流による右心
流出部へ進展していると左室長軸断面でも欠損を認め
室−右心房圧力較差の算出からも右心室圧が推定でき
41)−43)
.傍膜様部欠損,特に流入部伸展性での欠損孔
る 41),42).肺動脈弁下欠損で大動脈弁の変形を伴ってい
周辺組織の右室側への膨隆は,欠損孔が自然閉鎖する可
る場合は,カラードップラー法により大動脈弁逆流の有
る
能性を示唆している
41)
.心尖方向の筋性中隔欠損は通常
の断面では見落とされることがある.カラードップラー
法を用いて四腔断面,長軸断面における短絡血流を丹念
に検索する(クラスⅠ).
無を検索する.
④心臓カテーテル検査
心内各部位の血液酸素飽和度と圧を測定して肺血流
量・抵抗,体血流量・抵抗,左右(右左)短絡率を算出
して病態を検討する(クラスⅠ).肺動脈血圧が体血圧
1134
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
図 18 心室中隔欠損に対する診断・病態把握・治療計画のための検査
聴診で全収縮期雑音の聴取
心エコー
診断
VSD(+)
肺動脈弁下欠損(+)
僧帽弁閉鎖不全など
さらに精査
肺動脈弁下欠損(−)
大動脈弁逸脱・逆流
(+)
VSD(−)
欠損孔径計側
ドプラ法により
右室の圧推定
(−)
病態把握
中等度増加
高度増加
★
正常∼軽度増加
胸部X線:心拡大,肺血管陰影増強
心電図:左室肥大,右室肥大
(+)
(−)
心臓カテーテル検査
治療計画
肺動脈
高血流・低抵抗
肺動脈
低血流・高抵抗
酸素負荷
肺血管抵抗低下
肺血管抵抗変化なし
手術
内科治療
経過観察
いずれも★に戻る
と同レベルにあり肺体血流比が 2.0 を下回る場合,肺血
管抵抗が 8 単位・m2 を超える場合は,肺血管床の閉塞性
病変の進行度を検討するために酸素投与,一酸化窒素投
与 41),42)により肺血管の反応性を判定する必要がある(ク
ラスⅠ).肺動脈内への血管拡張薬(トラゾリン,PGI2
42)
意する.
4
治療選択のための検査(図 18)
①聴診
等)投与も有用である.心室中隔欠損で右心室内の肉柱
全収縮期雑音に加えて,Ⅱ音亢進,拡張期ランブルを
(特に中隔縁柱)が発達して右室流出路狭窄を来たすこ
聴取すれば,肺体血流比が 2.0 を超えている可能性が高
とがあるので(右室二腔症),右心室内での圧変化に留
く,外科的治療を考慮する.Ⅱ音が亢進し収縮期雑音が
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1135
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
乏しく拡張期ランブルも聴取しない場合は Eisenmenger
化の可能性が高く,手術適応の検討は慎重に行う必要が
ある.
2
診断のための検査(図 19)
①聴診 45)−47)
②胸部 X 線・心電図
左右短絡量が中等度以上になると,相対的肺動脈狭窄
心拡大および肺血管陰影増強がなく,心電図も正常で
による駆出性収縮期雑音と,Ⅱ音の固定性分裂を聴取す
あれば通常治療適応はない.胸部 X 線で心拡大と肺血管
る.短絡量の増加(およそ Qp/Qs > 2.0)のため相対的
陰影増強があり,心電図で左室肥大あるいは両室肥大所
三尖弁狭窄を生じた場合は胸骨左縁下部で拡張期ランブ
見を認めたら手術を前提に心エコーやカテーテル検査を
ルを聴取する.
行う(クラスⅠ).
②心エコー
③心エコー
二次孔欠損の場合は四腔断層像で容易に診断が可能で
5mm 以上の欠損,左心室拡大,少ない左室−右室圧
ある.通常の方法で心房中隔に欠損を認めないにもかか
較差,三尖弁逆流から推定される右心室圧の上昇等では
わらず,右心房・右心室の拡大が強い場合は,上・下大
外科的治療適応がある.心エコーによる肺体血流比は確
静脈洞欠損を検索する.冠静脈洞欠損では,unroofed
定的なものではない.
coronary sinus を 伴 う こ と が あ り, コ ン ト ラ ス ト エ コ
肺動脈弁下欠損で大動脈弁逆流を伴えば手術適応があ
ー 45),46)あるいはカラードップラーによる確認が必要で
るが 42),逆流の有無にかかわらず肺動脈弁下欠損はすべ
ある.部分肺静脈還流異常の合併(特に静脈洞欠損の場
て手術適応とする意見もある
44)
.
合)も考慮して検索する.
④心臓カテーテル検査
③心臓カテーテル検査
肺 体 血 流 比 が 2.0 を 超 え る 場 合 は 治 療 対 象 と な
上大静脈または下大静脈での酸素飽和度上昇は部分肺
る 41),42),44).体重増加が順調であり肺体血流比が 1.5 以
静脈還流異常を示唆する(クラスⅡ).肺動脈造影で左
下の場合は通常治療対象にならない.高度肺高血圧の場
心房から右心房へ造影され診断される.左右の肺動脈造
合,酸素負荷あるいは薬物負荷で肺血管床の反応性があ
影で異常な肺静脈還流を診断する.
れば手術適応がある.
2
1
心房中隔欠損
(atrial septal defect:ASD)
解剖・病態生理
心房中隔欠損は心房中隔の領域を問わない孤立性ある
④ MRI・3DCT
部分肺静脈還流異常の診断に有用である.欠損部位の
診断には MRI が有用である.
3
病態把握のための検査(図 19)
①胸部 X 線・心電図
いは多発性の欠損で,欠損孔の大きさは数 mm からほと
胸部 X 線では右心系の容量負荷により心胸郭比> 0.5
んど心房中隔が存在しないくらいの大きさまで幅広い.
の心拡大と,それに伴う主肺動脈,左肺動脈拡大による
欠損孔を介する左右短絡の量は左右心室のコンプライ
左第 2 弓の拡大を認める 45).
アンスの比率で決定される.乳児期早期は右心室のコン
心電図では右心室容量負荷により V1 誘導で rSr’,rsR’
プライアンスは低いため短絡量は少ないが,成長に伴う
パターンを認める 45),46).右心房負荷による軽度の 1 度房
右心室コンプライアンスの増大により短絡量は増加す
室ブロックを認めることがある 45).
る.肺血管の閉塞性病変が進行するのは 20 歳代以後で
あることが多い.
②心エコー
短絡量増加により右心室への拡張期容量負荷が生じ,
M モードで心室中隔の奇異性運動を認める 45),46).右心
房・右心室拡大による三尖弁逆流が生じ,ドップラー法
による右心室・右心房圧較差を概算する(クラスⅡ).
1136
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
図 19 心 房中隔欠損に対する診断・病態把握・治療計画のた
めの検査
─学童心臓検診の流れに沿ったフローチャート─
心臓検診
候群に至る可能性がある.高度肺高血圧を認めた場合,
酸素投与,肺動脈内への血管拡張薬(アデノシン等)投
与により肺血管の反応性を判定する必要がある(クラス
Ⅰ).
心電図
不完全右脚ブロック
1度房室ブロック
聴診
④ MRI・3DCT
(駆出性)収縮期雑音に加えて拡張期
ランブル,Ⅱ音固定性分裂を認めた場
合,中等度以上の左右短絡であるASD
の可能性が高いと考えて検査を進める
Phase-contrast cine MRI(PC-MRI)により肺体血流比
)
を算出可能である 48),49(クラスⅡ
a).3DCT では病態把
握は難しい.
4
心エコー
治療選択のための検査(図 19)
①胸部 X 線・心電図
ASD(+)
ASD(−)
心拡大および肺血管陰影増強がなく,心電図も正常で
部分肺静脈還流異常の精査
心エコー,MRI,3DCT
胸部X線 CTR>55%,
肺血管陰影増強
(+)
あれば通常治療適応はないが,聴診上拡張期ランブルを
聴取する場合は,心エコーやカテーテル所見を参考にし
た上で治療適応を考慮する必要がある(クラスⅡ a).
PAPVR
(+)
PAPVR
(−)
②心エコー
5mm 以上の欠損,心室中隔の奇異性運動,三尖弁逆
(−)
流から推定される右心室圧の上昇がみられる場合等では
外科的治療適応がある.心エコーによる肺体血流比は治
心エコー RA,RV拡大
心室中隔の奇異性運動
療選択のための条件としては確定的なものではない.
部分肺静脈還流異常の有無とその還流部位を同定し,
(+)
(−)
経過観察
中等度以上の肺高血圧が疑われる場合
欠損孔サイズと右室拡大の間に乖離がある
手術手技の一助とする.
③心臓カテーテル検査
肺体血流比が 1.5 を超える場合は治療対象となる 45).
心臓カテーテル検査
Qp/Qs > 1.5
1.5 以下は通常治療対象にならないとされるが,最近の
カテーテル治療の普及により肺体血流比が 1.5 以下でも
(+)
治療
・ 外科治療
・ カテーテル治療
閉鎖治療が行われることがある.
(−)
トピックス
カテーテル治療(Amplatzer Septal
Occluder)に対する心エコー診断:
欠損孔周囲がデバイスの固定に必要
な状態であるか検討することと,必
要なデバイスサイズを決定するため
に,経胸壁心エコーとともに経食道
心エコーを用いる.
④ MRI・3DCT
いずれの検査法も形態的に肺静脈の還流部位を検索す
るために有用である.
5
成人期心房中隔欠損
未治療で成人期に発見される心房中隔欠損は,学童心
臓検診の整備された我が国では比較的小さな欠損孔であ
パルスドップラー法を用いて算出した肺体血流比は心臓
カテーテル検査による値と比較的よく相関する
46)
.
③心臓カテーテル検査
ることが多い.
欠損孔が比較的小さくても加齢に伴って,虚血性心疾
患,後天性弁膜異常,高血圧等による左室壁コンプライ
アンスの低下が左右短絡量の増加を誘導して右心系容量
肺体血流比が 2.0 を超える場合は放置すると,20 歳代
負荷が進行する.あるいは不整脈特に心房粗・細動の際
頃から肺血管床の閉塞性病変が進行して Eisenmenger 症
には,右心房拡大とともに心房中隔欠損の存在を検討す
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1137
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
る必要がある.末梢あるいは骨盤静脈血栓等を原因とし
尖からの腱索は心室中隔に付着せず,右室の異常乳頭筋
た脳血栓(奇異性血栓)の発症は,小さな心房中隔欠損
に付着する.C 型は共通前尖の大部分が右室側にまたが
でも生じ得るので精査する必要がある(クラスⅠ).診断・
り腱索は右室前乳頭筋に付着しているため心室中隔上で
病態把握・治療選択のための検査は,成人であっても基
浮くような状態(free floating)になる.左心室流出路
本的には既に本項で述べられた通りである.
が 2 つの房室弁の間に楔入せず前方に偏位するため,左
成人期では経胸壁心エコー(TTE)では心房中隔周辺
心室流出路が伸展かつ狭窄する.また,この楔入の喪失
の十分な画像を得られないことが多く,欠損孔,心房内
により両側の房室弁の位置が同じ高さになる.共通前尖
血栓の診断には経食道心エコー(TEE)が有用である(ク
と共通後尖が connecting tongue で結合しているのが不完
ラスⅡ a).TTE で説明のつかない右心系容量負荷の所
全型である.
見を認めた場合は TEE あるいは MRI 等により,心房中
隔欠損,部分肺静脈還流異常の有無を検索する必要があ
る 50).
3
診断のための検査(図 21)
①聴診
房室中隔欠損
(atrioventricular septal
defect:AVSD)
一次孔欠損単独の場合は心房中隔二次孔欠損と同様な
聴診所見.中等度以上の僧帽弁逆流を伴っている場合は
胸骨左縁第 3,4 肋間から心尖部にかけて汎収縮期雑音
を聴取する.完全型の場合はそれぞれの形態異常の違い
により様々な聴診所見となる.通常,房室弁逆流による
解剖・病態生理
1
2
雑音を心尖部に聴取し,VSD が大きくなければ胸骨左
出生児の約 0.02 %,先天性心疾患の約 5 %,Down 症
候群の 15 ~ 20%が AVSD である.
房室中隔欠損(または心内膜床欠損症)は房室膜性中
縁下部において VSD の雑音を聴取する.
②胸部 X 線・心電図
隔および房室筋性中隔の組織欠損で,一側または両側の
胸部 X 線検査では心拡大,肺動脈拡張,肺血管陰影増
房室弁の異常を伴う.不完全型は心房中隔一次孔欠損の
強を認めるが,AVSD を診断するための特徴的所見はな
みで心室間交通を伴わないもので,完全型は両心房,両
い.一方,心電図の診断的価値は高い.本症では房室結
心室間の交通と共通房室間孔が存在するものをいう.房
節を含む刺激伝導系の後下方偏位による左軸偏位,PQ
室弁尖の形態と心室中隔上に位置する弁の腱索の付着部
間隔延長,右室容量負荷による不完全右脚ブロックパタ
位により A,B,C の 3 つに分類される(図 20)46),51)−53).
ーンを示す 46),51)−54).
A 型は共通前尖が心室中隔直上で分割されて弁尖間交連
を支える腱索が心室中隔に付着し,B 型は分割された共
通前尖の左室側弁尖が右室までまたいでいる.左室側弁
③心エコー
AVSD は心房・心室間交通,房室弁逆流が複合した疾
患で,心エコーは診断上最も重要な検査である.まず 1
次孔欠損の有無,心室中隔欠損と房室弁の形態を精査す
図 20 Rastelli 分類
正常
Ao
Ao
不完全型
心室中隔
帽弁は同じ高さにあり,左側房室弁に裂隙が存在する.
SL
乳頭筋
Rastelli 分類を行うには胸骨下からの短軸像と四腔像が
IL
完全型
有用である.共通前尖の裂隙,腱索の心室中隔付着の有
無,両心室のバランス,左室流出路狭窄の有無を検索す
Ao
Ao
AB A
AB
PB
PB
PB
Rastelli A 型
Rastelli B 型
Rastelli C 型
Ao
AB
A
る.カラードップラー法により房室弁逆流の有無と逆流
A
SL:superior leaflet,IL:inferior leaflet,AB:anterior bridging
leaflet,A:anterior leaflet,PB:posterior bridging leaflet
矢印は anterior bridging leaflet(共通前先)からの腱索
1138
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
る.房室中隔欠損が存在するなら基本的には三尖弁と僧
部位を確認する.
④心臓カテーテル検査
心室中隔流入部欠損(scooping)のため左心室造影で
は流入路より流出路が長くなり,いわゆる goose neck 像
が特徴である.左室造影,右室造影で房室弁逆流を評価
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
図 21 房室中隔欠損に対する診断・病態把握・治療計画のための検査
汎収縮期心雑音の聴取
心電図
左軸偏位
診断
心エコー
完全型
不完全型
Rastelli分類
房室弁逆流
(+)
病態把握
ドプラ法により
右室の圧推定
ASDに準ずる
中等度増加
高度増加
(−)
正常∼軽度増加
胸部X線:心拡大,肺血管陰影増強
心電図:左室肥大,右室肥大
心臓カテーテル検査
治療計画
肺動脈
高血流・低抵抗
肺動脈
低血流・高抵抗
酸素負荷
肺血管抵抗低下
肺血管抵抗変化なし
内科治療
手術
する.
3
①聴診
病態把握のための検査(図 21)
短絡量の増加により相対的な房室弁狭窄を生じて胸骨
AVSD の病態把握のためには,心房・心室への容量負
左縁下部から心尖部で拡張期ランブルを聴取する.Ⅱ音
荷の程度,肺血流量増加と肺高血圧の程度を検討できる
は固定性に分裂するが,肺高血圧が高度になると間隔は
情報が必要である
55)
.
短くなりⅡ p が亢進する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1139
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
②胸部 X 線
②心臓カテーテル検査
胸部 X 線では心拡大に加えて肺血管陰影の増強から
高度肺高血圧の場合,酸素負荷あるいは薬物負荷で肺
肺うっ血像を認める.Eisenmenger 化すると中枢肺動脈
血管床の反応性があれば手術適応がある.完全型の場合,
拡大による気管支圧迫のため両肺は過膨張となり肺動脈
心室造影により各心室容積の比較,房室弁逆流の評価,
末梢部陰影は減少する.
左室流出路狭窄の評価を行うことにより手術方針を決定
する(クラスⅠ).
③心エコー
Rastelli A 型は C 型に比べて左室流出路が細いため,
4
動脈管開存(patent
ductus arteriosus:PDA)
1
解剖・病態生理
肺血流量が多くなり肺血管病変の進行が早い.特に A 型
の Down 症では生後早期から肺高血圧が進行するため,
生後 6 か月以内には心内修復が必要となる.病態把握の
ための心エコー検査のポイントは,⑴心房位,心室位で
の短絡方向,⑵房室弁輪,両心室のバランス(弁輪から
動脈管は胎生期の第 6 大動脈弓遠位部分に由来し,胎
心尖部間での距離),⑶房室弁逆流の程度と部位,⑷両
生期には右室から駆出された血液を主肺動脈から下行大
心室間圧較差,⑸左室流出路狭窄の程度等である
54)
.
④心臓カテーテル検査
動脈に流す経路となっている.正常新生児では出生後 1
~ 2 日で収縮して血行が途絶し,生後 2 ~ 3 週で器質的
閉鎖に至る.閉鎖せず開いたままの状態のものを動脈管
肺血流量・抵抗,体血流量・抵抗から病態を理解する
開存と呼ぶ 56)−58).
ために必要な検査である(クラスⅠ).肺血管抵抗が 8
動脈管開存では太さ,体肺動脈血圧比,肺血管抵抗に
2
単位・m を超える場合は,肺血管床の閉塞性病変の進
よっ て種々 の程 度の 左右,両 方向,右 左短 絡が生 ず
行度を検討するために酸素投与,一酸化窒素投与,肺動
る 57).
脈内への血管拡張薬投与により肺血管の反応性を判定す
高度の肺高血圧を合併する場合と細く心雑音のない場
る(クラスⅡ a).右心室・左心室造影を行って房室弁
合を除き,感染性心内膜・血管内膜炎の予防,左心系の
逆流の程度および心室容積を評価する.左心室造影では
容量負荷の解除を目的として治療適応となる 59)−61).
流出路狭窄の程度も評価する.
4
治療選択のための検査(図 21)
①心エコー
2
診断のための検査(図 22)
①聴診
胸骨左縁第 2 肋間に最強点がありⅡ音に一致してピー
治療法選択のための検査に対しても心エコー検査は極
クのある連続性雑音を聴取する.肺高血圧を合併すると
めて重要で,房室弁逆流の部位と程度を検討する.完全
拡張期雑音は減弱し,Ⅱ音の亢進が見られるようになり,
型の場合,共通房室弁の逆流部位が心室中隔直上領域か
肺高血圧が進行し肺血管抵抗が著しく上昇した場合には
らであればパッチ逢着部分となるので術後逆流の心配は
収縮期雑音も減弱して肺動脈弁逆流による拡張期雑音を
少ない.心房中隔と心室中隔が異常配列である場合は,
聴取する.鑑別疾患には冠動脈瘻,大動脈肺動脈中隔欠
房室結節の位置異常に注意を要する.左室乳頭筋間距離
損,肺動静脈瘻,末梢性肺動脈狭窄等がある 56)−59).
が短い場合は,修復の際に弁口狭窄となる危険性が高く
なる.
②胸部 X 線・心電図
弁口が 1 つの心室に偏った場合はしばしば高度の片側
細い動脈管開存では胸部 X 線,心電図ともに正常であ
心室低形成が生じることがあり,この場合 2 心室修復が
る.
困難となる.房室弁,弁輪部の低形成があればまず肺動
左右短絡量が増加すると上行大動脈の拡大,肺動脈の
脈絞扼術を行い,右心室バイパス手術(Fontan 型手術)
拡大による左第 2 弓の突出,左室拡大による心陰影の拡
の適応を考慮する
53)
.
大が見られ,肺動脈陰影の増強が認められる.
心電図では左側胸部誘導に R 波の増高を認め,左房負
荷所見が見られる.
1140
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
図 22 動脈管開存(まとめのフローチャート)
心雑音,理学所見
連続性雑音
脈圧増大
下肢チアノーゼ
心エコー
Silent PDA
3
病態把握のための検査(図 22)
①酸素飽和度測定の上下肢差測定
肺高血圧を合併し肺血管抵抗が上昇すると右左短絡を
合併するようになり Eisenmenger 化すると右左短絡が主
体になり下肢の酸素飽和度が上肢に比べて低値となる.
②聴診・胸部 X 線・心電図
肺高血圧なし
肺高血圧あり
左右短絡量が多いと聴診上,心尖部に拡張期ランブル
を聴取する.
最小径≦2.5mm
最小径>2.5mm
経過観察
心臓カテーテル検査
Eisenmenger症候群
最小径>4mm
形態(AP window型等)
コイル塞栓術
外科手術
動脈管の形態と太さで治療法を選択する.
形態評価が心エコーで困難な場合には,造影 CT あるいは MRI
を行って形態評価を行う必要がある(クラスⅡ a)
.
最小径 2.5 ~ 4mm では形態によってコイル塞栓術が選択され
る場合がある.
なお,平成 21 年 7 月から動脈管 2mm 以上 12mm 以下,かつ
肺血管抵抗 8 単位未満または肺体血管抵抗比(Rp/Rs)0.4 未
満の例では動脈管専用閉塞栓の保険治療が認可された.
胸部 X 線にて心拡大,肺血流増加所見,左第 2 弓の突
出の見られる場合には中等以上の左右短絡の存在が示唆
される(クラスⅠ).
③心エコー
左右短絡量の増大に伴い左心系の負荷による左房,左
室内径の拡大,上行大動脈径の増大が見られる.下行大
動脈・腹部大動脈では大動脈から肺動脈への引き込み血
流による拡張期逆流が見られる.左室は hyperdynamic
な収縮像を呈する.肺高血圧を伴うと動脈管内の収縮期
血流速が減弱する 62).
Eisenmenger 化した動脈管開存では主肺動脈は拡張
し,カラードップラー法で動脈管から大動脈への右左短
絡が観察される.
③心エコー
胸骨左縁上部からの経胸壁エコーによって主肺動脈と
④心臓カテーテル検査・心血管造影
下行大動脈間に動脈管が描出される.カラードップラー
心臓カテーテル検査では右室-肺動脈−下行大動脈に
法では動脈管から主肺動脈へ向かう連続性モザイク像が
カテーテルが通過する.短絡量の算出には左右肺動脈の
検出される
58),62)
.
酸素飽和度が用いられるが,右に比して左肺動脈の血流
年長児や成人では経胸壁エコーでの動脈管の直接描出
が増加している場合が多く正確な算出は困難である.大
は困難な場合があり,経食道エコーが必要になる場合が
動脈造影では動脈管から主肺動脈が造影される.
)
ある 63(クラスⅡ
a).
④心臓カテーテル検査
心臓カテーテル検査では右室−肺動脈−下行大動脈に
4
治療選択のための検査(図 22)
①聴診
カテーテルが通過する.主肺動脈で酸素飽和度の上昇が
連続性雑音の見られる場合は治療適応がある.収縮期
見られる.
雑音のみの場合や心雑音がなく右左短絡を伴う場合には
大動脈造影では動脈管から肺動脈が造影される.
肺高血圧の合併や肺血管抵抗の上昇が疑われ,治療適応
⑤ 3D-CT・MRI
診断とともに動脈管の形態評価に有用である 64).
の検討には心臓カテーテル検査による肺血管抵抗の評価
が必要である.
細い動脈管で心雑音のない場合(silent PDA)の治療
適応については統一した見解は得られていない 65),66).
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1141
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
②胸部 X 線・心電図
5
高齢者では瘤形成や動脈管に一致した石灰化像が見ら
れる場合があり治療のリスクの予測や治療法選択の参考
になる.
心電図にて右室肥大を呈する場合は肺高血圧の合併が
疑われる.
大動脈縮窄・大動脈弓離断複合
(coarctation of aorta:
CoA, interruption of
aortic arch: IAA)
解剖・病態生理
1
③心エコー
大動脈弓と下行大動脈の移行部に生じた狭窄を大動脈
動脈管の太さ(内径),長さ等によって治療法が異な
るため形態評価が重要である
66)−68)
.大動脈側に比して
縮窄といい,弓部から大動脈弓峡部までの一部が欠損し
たものを大動脈弓離断という.単独例と心室中隔欠損や
肺動脈側は細い場合が多く,最小内径が 2.5mm 以下の
大血管転位等の合併心疾患がある複合型とがある 71)−74).
場合には経皮的コイル塞栓術が第一選択となる 68)−70).
離断では単独例は極めてまれで,病型分類には Celoria-
狭窄部がない筒型や最小径が 4mm 以上の場合にはコイ
Patton の分類(図 23)が用いられている 72).
ル塞栓術が困難なことが多い.瘤形成を伴っている場合
縮窄複合・離断では肺高血圧を合併し,下半身への血
や非常に短い window タイプではステント・グラフト内
流は動脈管開存を経由して供給されるため下肢の酸素飽
)
挿術や外科手術が選択される 59),68)−70(クラスⅡ
a).
和度の低下を認める.新生児期では肺血管抵抗の生理的
低下や動脈管の閉鎖によって動脈管での右左短絡が途絶
④心臓カテーテル検査・心血管造影
するとショックに至る.
カテーテル治療を前提とする場合や肺高血圧の評価が
必要な場合に施行される.造影で動脈管の形態を評価す
る 60).
右左短絡が主体で高度の肺高血圧が見られる場合には
治療適応がない 58).
診断のための検査(図 24)
2
①理学所見,聴診
上半身の高血圧があり,下肢の脈拍の減弱が見られる
場合には縮窄が疑われる.
⑤ 3DCT・MRI
胸骨左縁および左側背部に収縮期雑音あるいは左側連
造影 CT ならびに MR angiography では動脈管が複雑な
形態の場合や気管,気管支,大動脈弓等との空間的位置
関係の診断に有用である 64).
続性雑音を聴取する.
②胸部 X 線,心電図
小児例では特徴的な所見はない.単純型縮窄では加齢
により左室肥大が見られる.
図 23 大動脈弓離断の分類(Celoria-Patton 分類)
B型
A型
右総頸動脈
左総頸動脈
左総頸動脈
左鎖骨下動脈
左総頸動脈
PDA
上行大動脈
上行大動脈
PDA
肺動脈
肺動脈
下行大動脈
肺動脈
上行大動脈
PDA
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
右総頸動脈
左鎖骨下動脈
右鎖骨下動脈
1142
C型
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
成人期の単純型では拡張した鎖骨下動脈,下行大動脈,
縮窄部で形成される 3 の字陰影(figure 3 sign)や肋骨
下部侵食像(rib notching)が見られる場合がある.
③心エコー
3
病態把握のための検査(図 24)
①理学所見
発達した側副血行や複合型で大きな肺動脈大動脈間の
胸骨左縁上部,胸骨上窩からの大動脈弓部矢状断面で
短絡を伴う場合には上下肢の血圧差を示さない場合があ
大動脈弓部の限局性狭窄や途絶が見られる.縮窄ではカ
る.
ラードップラー法では狭窄部に一致してモザイクパター
ンが観察され,腹部大動脈ではパルスドップラー法によ
②胸部 X 線・心電図
って収縮期の上行脚と拡張期の下行脚ともになだらか
複合例で左右短絡による左房,左室,主肺動脈の拡大
で,そのまま収縮期に移行する特徴的な血流パターンが
と肺血流の増加所見が見られる.心電図は心負荷に応じ
観察される 75),76).
て左室肥大,両室肥大が見られる.
④ 3DCT・MRI
③心エコー
心臓カテーテル検査とは異なり大動脈の全体像や立体
左室短軸像で心室中隔が収縮期に扁平化している場合
構造の把握に優れている.
には肺高血圧の合併が疑われる.
造影 3DCT では縮窄部の診断と隣接する動脈分枝や側
複合例では合併する心室中隔欠損,大血管転位,大動
副血行の評価することができる.MRI は壁構造や造影
脈肺動脈中隔欠損,大動脈弁ならびに弁下部狭窄等が診
剤を用いずに内腔情報が得られる利点があり成人や腎機
断できる.短絡がある場合には収縮期血流速の測定によ
能低下症例に適している.
り肺高血圧の有無が診断できる.
4
治療選択のための検査(図 24)
図 24 大動脈縮窄 ・ 離断複合(まとめのフローチャート)
①血圧
心雑音
年齢に関係なく上肢の高血圧を伴う場合は治療適応で
高血圧
心拡大
心不全
ある 77)−79).
②心エコー
心エコー
新生児例では心エコーによる迅速診断が予後を決定す
る.ショック時に動脈管閉鎖を伴う場合はプロスタグラ
ショック(−)
ショック(+)
ンジン E1 療法の緊急的開始が必要である.太い動脈管
開存が見られる場合はプロスタグランジン E1 や酸素の
動脈管開存
動脈管狭窄
投与は禁忌で,過換気を避け高 PEEP を用いた人工呼吸
療法によるショックからの離脱と外科手術の早期施行が
プロスタグランジンE1療法
必要である(クラスⅡ a).
③心臓カテーテル検査
複合型
単純型
診断とともに治療を目的にも行われている.
造影CT・MRI
単純型縮窄では圧較差 20mmHg 以上が治療適応であ
る.治療にはバルーン拡大術,ステント留置術,カバー
心臓カテーテル検査
カテーテル治療
単純型では高血圧あるい
は上肢下肢血圧較差
20mmHg以上が治療適応
ドステント留置術,外科手術が行われている 65),80)−83).
外科手術
ショックを合併する新生児複
合型ではショック離脱後に速
やかに外科治療
年齢,動脈管開存の有無,大動脈瘤や上行大動脈の瘤状
変化等の合併によって大動脈解離の合併や遠隔期の瘤形
成等のリスクを考慮して治療法が選択されてい
る 65),80)−84).縮窄複合では動脈管が大きく開存する場合
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1143
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
には圧較差を認めない場合がある.乳児では形態評価に
逆行性橈骨造影も行われている 78).
複合型では外科治療が第一選択である 78),79).
6
狭窄ならびに閉鎖不全の診断に不可欠な検査法であ
る.弁狭窄では大動脈弁の肥厚,可動性の制限,収縮期
大動脈狭窄・閉鎖不全
(aortic
stenosis: AS, aortic
regurgitation: AR)
のドーム形成,左室弁下部構造,弁輪径が評価できる.
また弁尖の逸脱・変形の有無,上行大動脈拡大等が診断
できる 91).
閉鎖不全では大動脈弁の左室への下垂,穿孔,心室中
隔欠損流出路欠損への逸脱による右室方向へのバルサル
解剖・病態生理
1
③心エコー
バ洞の変形等の有無が診断される 93).
狭窄性病変には弁性,弁下部,弁上部狭窄がある
85)
.
カラードップラー法では狭窄部にモザイクパターンと
弁性狭窄は交連部の癒合と弁尖数の異常による.二尖弁
流速の加速が,閉鎖不全では閉鎖不全部に一致して左室
の約半数では raphe(縫線)と呼ばれる線状の構造物を
方向への逆流シグナルが検出できる 92).
認める
85),86)
.前後型と左右型があり,左右型では大動
脈縮窄の合併率が高い.弁下部狭窄は膜性狭窄と全周性
の線維筋性狭窄に分類される 87).弁上狭窄は Williams
症候群に見られることが多く,時計型,膜型,低形成型,
3
病態把握のための検査(図 25)
①胸部 X 線・心電図
砂時計型が見られる 88).
求心性左室肥大が進行すると心尖部が丸くなる.心負
大動脈狭窄では左室の後負荷が増大し求心性左室肥大
荷が強いと左室拡大が進行し心拡大が見られる.左房圧
を伴う.弁および弁下部狭窄は進行性のことが多い.重
が上昇すると肺静脈のうっ血像が見られるようになる.
症例では左室圧の上昇により心内膜下虚血が生じ収縮性
心電図上,左側胸部誘導の ST 低下,陰性 T 波を伴う
が低下し左室腔が拡大し心不全を呈する.新生児期から
ストレインパターンを呈する場合には中等症以上の病変
心不全を生ずる最重例では心内膜線維弾性症を合併する
を示唆する.運動負荷にて ST 低下や ST − T 変化が見ら
ことがある
89)
れる場合は心内膜下虚血が疑われ,狭窄では圧較差が中
.
閉鎖不全では左室の前負荷が増加し左室容積の増大や
左室仕事量の増大により遠心性肥大が見られる
2
90)
.
診断のための検査(図 25)
等症以上であることが多いとする報告がある.
②心エコー
狭窄に伴う左室収縮期圧の推定には Glanz らの式[左
室収縮期圧(mmHg)= 225 ×(収縮末期後壁厚)
(収縮末
/
①聴診
期内径)]が用いられる 91).左室大動脈間の瞬時収縮期
狭窄性病変では頚部に放散する胸骨右縁第二~第三肋
圧較差は連続波ドップラー法によって弁口通過血流の流
間に駆出性収縮期雑音を聴取する.
速から簡易ベルヌーイ式[圧較差(mmHg)= 4 ×最大流
閉鎖不全では拡張期早期に吹鳴性拡張性雑音を聴取す
速(m/sec)2]を用いて推定される 88),91).ただし,弁下な
る.弁狭窄では収縮期駆出性クリックを聴取するが,弁
らびに弁上狭窄では流速から推定される圧較差は過大評
上ならびに弁下狭窄では聴取しない
91)
.
②胸部 X 線・心電図
価されることが多い.
閉鎖不全の評価にはカラードップラー法による逆流
ジェットの到達範囲,面積,左室流出路と逆流の幅の
胸部 X 線は軽症例では正常のことが多い.重症例では
比 ,連続波ドップラー法による逆流速波形の pressure
心拡大,左房,上行大動脈の拡大が見られる.
)
half-time 等が有用な検査として行われる 94),95(クラス
心電図は軽症例では正常所見である.重症狭窄例では
Ⅰ).
左室肥大所見を示すが,必ずしも重症度と一致しない.
閉鎖不全では左室内腔の拡大を反映して心拡大,左側胸
部誘導の R 波の増高が見られる 92).
③心臓カテーテル検査
左室−大動脈間引き抜き圧記録によって狭窄部に一致
して圧較差が見られる.弁狭窄では心拍出量,心拍数,
駆出時間から求めた収縮期血流量,左室−大動脈間平均
1144
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
図 25 大動脈狭窄・閉鎖不全(まとめのフローチャート)
心雑音
心電図異常
失神・胸痛
心エコー
狭窄
逆流
心電図
左肥室大,ST変化あり
胸部X線
心拡大あり
運動負荷試験
ST変化なし
ST変化あり
心エコー
圧較差<50mmHg
逆流なし
圧較差≧50mmHg
逆流あり
軽微
中等以上
心臓カテーテル検査
圧較差<50mmHg
あるいは逆流Ⅱ度以内
圧較差≧50mmHg
かつ逆流Ⅱ度以内
経過観察
圧較差≧75mmHg
あるいは逆流Ⅲ度以上
カテーテル治療
圧較差によって Gorlin の式を用いて弁口面積を算出す
る.造影では弁形態,左室流出路狭窄の有無,弁輪形,
運動制限
外科手術
①心エコー
左室機能が評価できる 88),91).
弁尖の肥厚,石灰化が高度の場合に経胸壁エコーでは
閉鎖不全の重症度分類には大動脈造影による Sellers
評価が困難な場合は経食道心エコーが有用な検査として
分類が用られる.
行われる(クラスⅡ b).小児例の弁性狭窄では三尖構
4
治療選択のための検査(図 25)
造で閉鎖不全のない場合にはバルーン形成術が第一選択
となるため術前の弁形態評価と逆流の有無と程度の評価
狭窄性病変では圧較差によらず心不全,失神,狭心痛
が極めて重要である.弁下部および弁上狭窄では外科治
等のある場合には治療適応である.逆流では有症状,著
療が第一選択となる 93).
明な心拡大,心機能低下等がある場合が手術適応とな
る 89),93),94).
②心臓カテーテル検査
形態評価は心エコー検査の方が優れているが,血行動
態診断や治療適応のための定性ならびに定量評価とカテ
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1145
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
ーテル治療を目的として施行されている 89),91),93).
我が国では,圧較差 75mmHg 以上,弁口面積 0.5cm2/
m2 以下,左室収縮不全が見られる場合は治療の絶対適
応 と さ れ, 圧 較 差 50 ~ 70mmHg, 弁 口 面 積 0.5 ~ 0.8
2
診断のための検査(図 26)
①聴診
cm2/m2 では運動制限を行い症状の有無,経年変化を考
聴診で左第 2 肋間に駆出性心雑音と収縮期クリックを
慮して治療時期を決定することが勧められており 91),
認める.振戦を触れることもある.
ACC/AHA のガイドラインの若年者の項では,有症状時,
境界域の圧較差や臨床症状と心エコー所見に乖離が認め
②胸部 X 線,心電図
られる場合には検査の施行が推奨されている 94).
心電図で右軸偏位,右室肥大を認める 105),106).
弁下部,弁上狭窄では圧較差 50mmHg 以上が治療適
胸部 X 線では通常心拡大はないが,肺動脈の狭窄後拡
応となる.
張のために左第 2 弓突出を認める 98),105),106).
弁置換や Ross 手術を考慮する場合は冠動脈造影を行
い冠動脈奇形や走行を評価する 96).
③ 3DCT,MRI
③心エコー
心エコーでは右室流出路(肺動脈弁下),肺動脈弁,
肺動脈弁上から分枝部までの解剖学的狭窄を描出でき
大動脈の著しい拡大や胸痛や背部痛と心エコー検査に
る.肺動脈弁狭窄では肺動脈弁のドーム形成を認める.
より大動脈解離の疑われる場合には手術法の選択のため
狭窄部での血流の加速を認める.三尖弁逆流がある場合
97)
に施行する (クラスⅡ a).
7
肺動脈狭窄(pulmonary
stenosis: PS)
)
にはその流速から右室圧の上昇を推定できる 107)−109(ク
ラスⅠ).
④心臓カテーテル検査
心臓カテーテル検査により診断が確定するほか,右室
1
解剖,病態生理
圧,肺動脈圧,右房圧が測定できる.また心拍出量の測
定により,低心拍出の有無がわかる.卵円孔が開存して
右室流出路(肺動脈弁下),肺動脈弁,肺動脈弁上か
いる場合には右−左短絡の有無がわかる.心血管造影に
ら肺動脈末梢に至る狭窄を総称して肺動脈狭窄と呼ぶ.
より狭窄部を描出できる 98).
肺動脈弁狭窄が最も多い 98).肺動脈弁下狭窄は,右室漏
斗部の異常筋肉や漏斗部中隔の前方偏位に起因し,もと
⑤ 3DCT,MRI
もと心室中隔欠損が合併していたのが自然閉鎖した後の
3DCT や MRI により肺動脈末梢狭窄の有無が描出でき
ことが多い.肺動脈弁狭窄は,弁交連部が癒合してドー
る 110)−114).特に 3DCT は肺動脈末梢狭窄の描出に有用で
ム状となって狭窄を形成する.ときに,弁尖が厚くなっ
ある.
て異形成弁と呼ばれる状態のこともある.肺動脈自体の
狭窄は,弁の直上から末梢に至るどの部分でも発生しう
る 99).末梢に多発することもある.弁直上狭窄は Noo-
nan 症候群,末梢狭窄は Williams 症候群や Alagille 症候
3
病態把握のための検査(図 26)
①胸部 X 線,心電図
群等に合併することがある 100)−103).
胸部 X 線で心拡大を認めれば,狭窄は重症で,右室収
肺動脈狭窄の程度に応じて右室圧は上昇し,狭窄部で
縮低下や三尖弁閉鎖不全,右房拡大の存在を示唆する.
圧差を認める
98)
.ただし,肺動脈末梢狭窄が片側のとき
心電図の右室肥大の程度で,狭窄の重症度を推定できる.
や,多発しても限局的な場合には右室圧は上昇しないこ
R 波が高く,T 波陽性なら中等度狭窄,T 波陰性でスト
とがある.右室圧が上昇すると,右室肥大が発生し,右
レイン型なら重症狭窄を示唆する 98).
房圧上昇を来たすことがある.卵円孔が開存していれば
右−左短絡が発生することがある 104).
②心エコー
狭窄部の最大流速 V(m/sec)から,圧較差を推定す
る 107)−109).
圧較差(mmHg)= 4 × V2
1146
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
図 26 肺動脈弁狭窄の診断,病態把握,治療計画のための検査
生後6か月以降
新生児・乳児期早期
心エコーによる圧較差
30mmHg未満
心エコー
RVp>LVp
30∼40mmHg
40mmHg以上
ECG
RVp<LVp
右室肥大(−) 右室肥大(+)
カテーテル治療
無効
カテーテル治療/手術
経過観察
弁狭窄では心エコーから求めた圧較差は,心臓カテー
テル検査で測定した圧較差より若干(10mmHg 程度)
有効
手術
①胸部 X 線,心電図
高い.弁下狭窄や弁上狭窄では心エコーは圧較差を過大
胸部 X 線で心拡大,心電図で右室肥大を認めれば治療が
評価する.三尖弁逆流の流速から求めた右室圧は心臓カ
必要なことが多い(クラスⅡ a).
テーテル検査で求めた値とよく一致する.心室中隔の形
から右室圧を推定することもある.
②心エコー
心エコーは治療の選択上,最も有用な情報を与える.
③心臓カテーテル検査
肺動脈弁での圧較差が 40mmHg 以上は治療の適応であ
心臓カテーテル検査は病態診断とともに治療の目的で
る(クラスⅠ).30mmHg 未満は軽症で治療の適応とな
.右室圧と狭窄部圧差から重
らない(クラスⅡ a).30 ~ 40mmHg の間はいまだ議論
症度を決定する.心血管造影により狭窄の程度を描出す
のあるところである 116),117).肺動脈弁下狭窄と弁上(主
る.右室造影から,右室の大きさ(右室低形成の有無),
肺動脈)狭窄はカテーテル治療の適応とならな
漏斗部狭窄の有無,右室収縮機能,三尖弁閉鎖不全の有
い 104),118)−129).小児期以後で右室圧が 50mmHg 以下の場
無を評価する 115).
合には,狭窄は軽症と考えられる(クラスⅠ).
④ 3DCT,MRI
③心臓カテーテル検査
施行されることが多い
115)
MRI からは狭窄部の流速を,3DCT からは肺動脈末梢
狭窄の程度が推定できる
110)−114)
.通常,病態把握のた
めに MRI を行うことはまれである(クラスⅡ a).
⑤肺血流シンチグラム
右室圧と狭窄部圧差から重症度を決定し,心血管造影
による狭窄部位から治療法を選択する.中等症以上の弁
狭窄に対しては,従来は外科的治療が行われていたが,
近年ではほとんどの場合カテーテル治療で治療され
る 104),118)−129).年齢は 6 か月以降に施行されることが多
左右の肺の血流分布から肺動脈末梢狭窄の有無が推定
いが,重症例ではそれより早期でも行われる.中等度の
できる.
狭窄であれば 1 ~ 5 歳が最適年齢である.高齢者でもカ
4
治療選択のための検査(図 26)
治療の選択は,無治療(経過観察),カテーテル治療,
手術の 3 つである.軽症の場合には,治療は必要でなく,
運動制限も必要ない.
テーテル治療は可能で,小児から成人,高齢者まで年齢
105),130)−136)
制限はない(クラスⅠ)
.
④ 3DCT,MRI
肺動脈分枝部より末梢の狭窄のみで他に合併奇形がな
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1147
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
い場合,手術適応となることはほとんどない.3DCT は
末梢肺動脈狭窄に対する治療の適応,可否を決定する上
で重要な検査であり,最近積極的に施行される(クラス
Ⅱ a).
8
③心エコー
心エコーは本症の診断に非常に有用であり,診断に必
Ebstein 病
(Ebstein anomaly)
須の検査である(クラスⅠ).三尖弁中隔尖,後尖の
plastering や,大きな前尖を認める.右房は拡大している.
④心臓カテーテル検査
診断のためだけに心臓カテーテル検査をする必要はな
解剖,病態生理
1
胸部 X 線では様々な程度の心拡大を認める.
い(クラスⅠ).
三尖弁,特に中隔尖と後尖が右室側にずれて,内壁に
貼り付いた状態(plastering)となっている.三尖弁が
⑤ 3DCT,MRI
本来付着しているはずの部位と,実際に弁が起始する部
MRI により三尖弁の plastering が診断できる.
位の間は,右房下右室と呼ばれ,右室壁が菲薄化してい
肺動脈の低形成を疑うときは MRI や CT を行えば肺動
る.通常,様々な程度の三尖弁閉鎖不全が存在する.と
脈形態を診断できる.
きに三尖弁狭窄,機能的右室の狭小化,右室全体の収縮
不全を来たす.様々な程度の右心不全を来たす.卵円孔
開存や心房中隔欠損があると右−左短絡を来たし,チア
ノーゼを認める.最重症の場合,胎内死亡となったり,
病態把握のための検査(図 27,図 28)
3
①胸部 X 線,心電図
新生児期に機能的な肺動脈弁閉鎖の状態になって,動脈
本症では WPW 症候群が合併することがある.心電図
管から肺動脈への血流に依存する病態になることもあ
で WPW 症候群の合併の有無が推定できる.
る.軽症の場合には,一生気づかれずに,剖検で偶然見
胸部 X 線では様々な程度の心拡大を認めるが,心拡大
つかることもある 137)−152).
診断のための検査(図 27,図 28)
2
図 28 Ebstein 病の診断,病態把握,治療計画のための検査
(幼児期以降)
(+)
①聴診
聴診でⅢ音,Ⅳ音の亢進による 3 部調律,4 部調律,
および収縮期雑音を聴取することがある.
心臓カテーテル検査
(−)
右左短絡
(−)
②胸部 X 線,心電図
心内修復術
Glenn 手術
胸部 X 線
心拡大(−)
心電図では,低電位の右脚ブロックを示すことが多い.
心拡大(+)
図 27 Ebstein 病の診断,病態把握,治療計画のための検査
(新生児・乳児期早期)
Ebstein 病
(+)
肺動脈弁通過血流
(−)
三尖弁閉鎖術+短絡術
1148
(−)
経過観察
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
経過観察
低心拍出
(+)
心内修復術
ECG
(−)
WPW 症候群
(+)
(+)
頻拍発作
(+)
(+)
他疾患の診断
PGE1 投与 又は 短絡術
内科治療
短絡術
Glenn 手術
低心拍出
(−)
Ebstein 病
(−)
(+)
(+)
心臓カテーテル検査
高度低酸素血症
(+)
(+)
心エコー
肺動脈低形成
胸部 X 線
高度心拡大
経過観察
(−)
カテーテルアブレーション
(+)
(−)
心内修復術
経過観察
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
は右房の拡大を示唆し,より重症であることを示す.
②心エコー
9
総肺静脈還流異常(total
anomalous pulmonary
venous return:TAPVR)
1
解剖,病態生理
心エコーは本症の病態把握に必須の検査である(クラ
スⅠ).三尖弁逆流の程度,中隔尖,後尖の plastering の
程度,前尖の plastering の有無,機能的右室の大きさ,
右室および左室機能不全の有無がわかる.また,卵円孔
開存や心房中隔欠損の有無,右−左短絡,左−右短絡の
すべての肺静脈血が左房に還流せずに,右心系に戻る
有無がわかる.
血行動態である.4 本の肺静脈がまとまって共通肺静脈
③心臓カテーテル検査
腔を作ってから右心系に還流する場合と 4 本の肺静脈が
別々に直接右房に還流する場合がある.肺静脈血が右心
診断のために心臓カテーテル検査をする必要はない
系に戻る通路によって 4 つの型に分類される(表 6).右
が,病態把握のために有用なことがある.心拍出量,右
房に戻った体静脈血と肺静脈血は,右房から右室にいく
−左短絡量,機能的右室の大きさや収縮機能を把握する
血液と,右房から左房,さらに左室にいく血液に分かれ
上で有用である(クラスⅡ a).
る 153).
④ 3DCT MRI
MRI により右室収縮機能が把握できる.
4
治療選択のための検査(図 27,図 28)
基本的には右心房で体静脈血と肺静脈血は混合し,肺
動脈血と大動脈血の酸素飽和度は同じとなる.肺を潅流
する血液は酸素化されて右房に戻るので,大動脈血の酸
素飽和度は肺/体血流比に依存する.肺血流量は,右房
から右室への流れやすさと右房から左房への流れやすさ
軽症の場合には,治療は必要でない.チアノーゼが高
の相対値で決まる.生後早期にはまだ肺血管抵抗が高い
度のときは,何らかの手術が必要なことが多い.
ので肺血流はあまり増加せず,チアノーゼが認められる.
①胸部 X 線,心電図
肺静脈還流経路に狭窄があると,肺血流の増加に伴っ
て肺静脈圧が上昇し肺うっ血となり患児の状態は急速に
胸部 X 線で心拡大を認めれば手術が必要なことが多
悪化する 154)−159).経皮酸素飽和度は様々であるが,80
い.
%後半から 90%前半のことが多い.
頻拍発作があり心電図で WPW 症候群を認めれば,カ
テーテルアブレーションが適応となることもある.
2
診断のための検査(図 29)
②心エコー
①胸部 X 線,心電図
新生児期には心エコーで肺動脈弁を通過する血流がな
心電図で右軸偏位,右室肥大を認めるが,正常範囲と
く,チアノーゼが高度のときはプロスタグランジン E1
の区別が難しい場合がある.胸部 X 線では心拡大,肺血
を投 与し た り,短 絡 術 を施 行 し た り, 三 尖 弁 閉鎖 術
管陰影の増強を認める.上心臓型で垂直静脈の拡大によ
(Starns 手術)を施行したりする.
る雪だるま型の心陰影となることは生後数か月以降であ
右心不全症状の程度,三尖弁の plastering の程度,三
る.胸部 X 線は肺うっ血の有無,程度の診断に有用であ
尖弁閉鎖不全の程度が手術適応決定上,有用な情報とな
る.
るために心エコー検査は必須となる(クラスⅠ).
③心臓カテーテル検査
②心エコー
心エコーは本症の診断に非常に有用である.呼吸窮迫
カテーテルによる心房中隔欠損の試験閉鎖が治療選択
症候群の診断が明らかでない場合や,新生児遷延性肺高
上有用なことがあり必要に応じて行われる(クラスⅡ
血圧を疑わせる新生児では,心エコーを実施すべきであ
a).三尖弁逆流が軽度で,かつ心房中隔欠損による右−
る.著明な右室容量負荷,左房後方の共通肺静脈腔の存
左短絡,ないし左−右短絡が存在するときは,カテーテ
在,そこからの体静脈ないし右房への還流で本症を診断
ルによる試験閉鎖の後,閉鎖栓で閉じることもある.
する.心房間で右−左短絡を認める.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1149
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
表 6 総肺静脈還流異常の Darling 分類
Ⅰ型:上心臓型(心臓より上の位置に還流する)
Ⅰa :共通肺静脈から左側垂直静脈を上行し,無名静脈に還
流する型
Ⅰb :共通肺静脈が上大静脈(通常後壁)に還流する型
図 29 総 肺静脈還流異常症の診断,病態把握,治療計画のた
めの検査
呼吸障害,哺乳障害,チアノーゼ,体重増加不良
胸部X線:肺うっ血,心拡大,肺血管陰影増強
Ⅱ型:傍心臓型(心臓に還流する)
Ⅱa :共通肺静脈が冠静脈につながり,冠静脈洞に還流する
型
Ⅱb :肺静脈が別々にあるいは共通肺静脈を形成した後に右
房に還流する型
(+)
心エコー
Ⅲ型:下心臓型(心臓より下の位置に還流する)
共通肺静脈から静脈が横隔膜を下行し門脈につながる型
TAPVR(+)
Ⅳ型:混合型
以上Ⅰ−Ⅲ型の組み合わせ.Ⅰa+ Ⅱa の組み合わせが多い
肺静脈還流部位
③心臓カテーテル検査
(−)
心臓以外の検査
TAPVR(−)
不明部位あり
すべて判明
MRI, CT
肺静脈還流障害
(結果にかかわらず)
(−)
可及的早期に(緊急)手術
診断のために心臓カテーテル検査をすることはほとん
(+)
緊急手術
どない.心臓カテーテル検査は,新生児の場合患児の状
態を悪化させるので,手術のために必須の場合以外には
施行すべきでない.
4
治療選択のための検査(図 29)
④ 3DCT,MRI
①胸部 X 線
心エコーで 4 本の肺静脈還流が描出できないときは,
胸部 X 線で肺うっ血の所見があれば,ただちに手術の
MRI や 3DCT により画像診断できることがある(クラス
方針とする.
Ⅱ a).
3
②心エコー
病態把握のための検査(図 29)
①胸部 X 線
心エコーで共通肺静脈腔から体静脈ないし右房への還
流経路に狭窄がなければ緊急手術の必要性は全身状態で
判断する.ただし,手術待機中に短時間で全身状態が悪
胸部 X 線は病態把握のために有用である.胸部 X 線で
化することもある.下心臓型の場合には心エコーで診断
肺うっ血の所見があれば,肺静脈還流経路に狭窄がある
がつき次第緊急手術の方針とする(クラスⅠ).
ことを示し,重症所見である.
②心エコー
③ 3DCT,MRI
心エコーで 4 本の肺静脈が確認できない時や,混合型
心エコーで共通肺静脈腔から体静脈ないし右房への還
が示唆される時は,MRI や 3DCT が有用である.最近,
流経路に乱流を認めれば,狭窄があることを示す.下心
鑑別診断や治療選択のために有用な検査として積極的に
臓型の場合には加速をとらえにくいこともあり,その診
行われるようになってきている(クラスⅡ a).
断そのものが重症であることを示唆する.心室中隔や三
尖弁逆流から推定した右室圧は高いことが多い.動脈管
を通る肺動脈から大動脈への血流を認めれば,肺高血圧
10 Fallot 四徴症
(tetralogy of Fallot:TOF)
が存在することを示す.
1
解剖・病態生理
肺動脈狭窄,心室中隔欠損,大動脈騎乗,右室肥大の
1150
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
四徴からなる.漏斗部中隔が右前方へ偏位したために生
し,右大動脈弓が約 25%に見られる.心電図では右軸偏
じた大きな心室中隔欠損と漏斗部狭窄が基本であ
位,右室肥大(高い R V1,深い S V6)が特徴的所見である.
る
160),161)
.
2
③心エコー
診断のための検査(図 30)
断層心エコーによる Fallot 四徴症の診断は比較的容易
であり,重症度や合併奇形の有無に関しても情報が得ら
①聴診
れるため必須の検査である
(クラスⅠ).左室長軸像では,
出生直後より,肺動脈狭窄による駆出性収縮期雑音を
malaligment 型心室中隔欠損と大動脈の騎乗がわかり,
聴取する.最強点は,漏斗部狭窄では胸骨左縁第 3 肋間,
大動脈弁と僧帽弁の線維性連続が確認できれば,両大血
肺動脈弁狭窄では,胸骨左縁第 2 肋間にある.心雑音は,
管右室起始との鑑別が可能である.大動脈基部短軸像で
重症ほど減弱し,無酸素発作時には,心室中隔欠損での
は,漏斗部,肺動脈弁,主肺動脈の狭窄の程度が評価で
右左短絡で静脈血のほとんどが大動脈より駆出されるた
きる.合併する冠動脈の異常も診断可能である.
め,心雑音を聴取しなくなる.Ⅱ音は,多くの例で,肺
④ 3DCT,MRI
動脈成分の減弱により単一となる.
心エコーでは限界がある末梢肺動脈の描出が可能で,
②胸部 X 線・心電図
狭窄や低形成の程度を評価できるので必要に応じて施行
する(クラスⅡ b).
心陰影は正常かやや小さく,肺動脈の低形成による第
2 弓陥凹と心尖部挙上により木靴型となる.肺血管陰影
⑤心臓カテーテル検査
は減少する.重症例ほど肺血管陰影は減弱し,心陰影も
小さく木靴型心陰影も明らかになる.上行大動脈は拡大
通常,診断のためだけで心臓カテーテル検査を行うこ
図 30 Fallot 四徴の診断,病態把握,治療計画のための検査
新生児期
身体所見,SpO2,Xp,ECG,心エコー
動脈管依存性
(−)
乳児期
低酸素
(−)
プロスタグランジン E1
(+)
無酸素発作予防
βブロッカー内服
鉄剤内服
(+)
心エコー,CT
肺動脈低形成
(−)
低形成(+)
シャント術
CT,MRI
RPA area + LPA area(mm2)
BSA(m2)
RPA area:右肺動脈断面積(第一分岐直前)
LPA area:左肺動脈断面積(第一分岐直前)
BSA:体表面積
*正常は 330 ± 30
PA index =
末梢肺動脈狭窄
(−)
1∼2 歳
(+)
インターベンション
術前心臓カテーテル検査
PA index>150
<150
シャント術
肺動脈弁輪径>−3Z
心内修復術(自己弁温存)
肺動脈弁輪径<−3Z
心内修復術(transannular patch)
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1151
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
とはないが(クラスⅠ),右室と左室は等圧であり,肺
動脈圧は正常ないし低圧である.右室造影は最も重要な
4
治療選択のための検査(図 30)
術前情報を得られ,頭側へ 20 ~ 30 度傾けた正面像(cra-
すべての症例が手術適応である 162).心内修復術,あ
nial tilt)が,漏斗部狭窄,肺動脈弁輪径や弁形態,さら
るいは姑息術の選択,さらに手術法の選択には,臨床症
に末梢肺動脈狭窄まで描出するのに優れている.さらに,
状の経過とともに,左室容積,肺血管発達度,肺動脈弁
左室造影による左室容積の評価,大動脈造影による腕頭
下・上・分岐部の形態,冠動脈,大動脈等の形態評価が
動脈分岐や冠動脈走行の確認等は,診断とともにその後
重要であり,心エコー検査とともに心臓カテーテル(心
の治療戦略の構築に重要であり必要となる(クラスⅠ).
血管造影)検査が必須である(クラスⅠ).3DCT およ
心臓カテーテル検査は,術前検査として必要ではある
び MRI も心臓カテーテル検査を補完する検査として有
が,無酸素発作を誘発する可能性があるため,心エコー
用である(クラスⅡ a).
による診断の補助として,十分な観察の下にできるだけ
短時間で終了するように心がける.前投薬にはモルヒネ
①心内修復術
等の麻薬を用いて鎮静を行い,十分な補液を行い低血圧
心室中隔欠損のパッチ閉鎖と右室流出路狭窄の解除を
を避けるようにする.β遮断薬の内服は継続し,カテー
行う.著しい肺動脈弁輪低形成例(弁輪径が− 3Z value
テルによる漏斗部の刺激を避け,無酸素発作を誘発しな
以下)の場合には,一弁付 transannular patch の適応とす
いように心がける.検査施行中は,経皮酸素分圧,心拍
る施設が多い.
数,心雑音の変化に十分な注意を払い,酸素吸入,静脈
麻酔の追加,輸液速度の調整や必要に応じメイロン投与
を行う.
3
病態把握のための検査(図 30)
①血液検査
②姑息手術
新生児期に動脈管依存性の重症例では,プロスタグラ
ンジン E1 の持続投与を続け,その後,短絡手術(Blalock-
Taussig shunt)を行う.また,内科的に無酸素発作のコ
ントロールが困難な症例や,著しい肺動脈低形成でも,
まず,短絡手術を行い肺血流を安定させ肺動脈の成長を
低酸素血症を代償するために多血症となるが,乳児期
待ち,
1 ~ 2 歳で心内修復術を行う.冠動脈の異常のため,
には,鉄欠乏のため相対的貧血になりやすい.還元ヘモ
右室流出路にかかり走行する場合には,十分なサイズの
グロビン 5g/dL 以上でチアノーゼは可視的になるが,貧
心外導管を用いた Rastelli 手術が可能になる幼児期まで
血の存在は,チアノーゼを過小評価する危険性もあり,
待つために,姑息手術を先行して行う場合がある.
経皮酸素分圧測定とともに,血液検査が重要である.未
手術の年長児では,多血症が進行し,Ht 65%以上では
過粘稠となり,血栓症,末梢循環不全,腎障害等の危険
性がある.
検査計画
心エコーのチェックポイント
形態診断
②心臓カテーテル検査
▪ VSD の位置と大きさ
大きな心室中隔欠損のため,左右心室は等圧である.
▪右室流出路狭窄の程度
▪肺動脈弁輪径
心室中隔欠損での短絡を決める要因は,右室流出路の狭
▪左室容積と心機能
窄の程度であり,狭窄が高度になるに従い,左→右短絡
▪大動脈弓の異常
から,右→左短絡が主体になっていく.このため,右室
流出路の狭窄が高度になるに従い肺血流量は減少し,全
身への静脈血の駆出が増加し,低酸素血症が進行する.
Fallot 四徴症におけるチアノーゼは極めて不安定であ
▪冠動脈の異常
血行動態
▪動脈管依存性
▪肺動脈の形態とサイズ
り,漏斗部狭窄や末梢肺血管抵抗等の右室側の要因と,
左室側の要因である体血管抵抗のバランスとともに急激
に変化するため,病態評価のために心臓カテーテル検査
が行われる(クラスⅡ a).
1152
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
Z value =
弁輪径−平均値
標準偏差
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
続性雑音を聴取する.
11 肺動脈閉鎖
(pulmonary atresia:PA)
②胸部 X 線・心電図
通常心拡大はない.心陰影は,肺動脈の低形成のため,
1
肺動脈部(左第 2 弓)が陥凹し,肺血管陰影は減少する.
解剖・病態生理 163),164)
心電図では,右軸ないし正常軸で,同様に新生児期から
チアノーゼを示す三尖弁閉鎖(左軸偏位)と鑑別できる.
左右心室を有し,心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖
で,純型肺動脈閉鎖とも呼ぶ.通常,肺循環は動脈管に
右室低形成のため,右側胸部誘導の R 波が低く,左室肥
依存し,生後,動脈管の閉鎖とともに,低酸素血症が急
大所見を示す.X 線所見と合わせ,診断的価値が高い.
激に進行する.体循環は,心房間交通に依存し,その大
P 波は,心房性 P 波となる.
きさが,心拍出量を決定する.右室や三尖弁の低形成を
③心エコー(クラスⅠ)
伴う場合が多い.右室低形成を伴う重症肺動脈狭窄も,
同じ範疇に含めることが多い.
2
四腔断層で,左室は正常の大きさかやや大きく,右室
は小さい.心房中隔と心室中隔は一線上に並ぶ.右室の
診断のための検査(図 31)
形態から,⑴流入部のみ,⑵流入,肉柱部,流出部のあ
る型(弁性閉鎖)⑶流入部と肉柱部のみの型(漏斗部閉
①聴診
鎖)の 3 つに形態診断が可能である.胸骨左縁からの大
動脈管の閉鎖による肺血流の低下により,生後数時間
動脈基部短軸断面で,漏斗部内腔の有無,すなわち漏斗
から進行性のチアノーゼと多呼吸が進行する.心雑音は
部閉鎖か弁性閉鎖か鑑別できる.類洞間交通と合併して
聴取せず,動脈管が開存していれば,胸骨左縁上部に連
いる例では,カラードップラーで,右室心筋内に血流を
図 31 肺動脈閉鎖の診断,病態把握,治療計画のための検査
新生児期
初回手術
SpO2,Xp,ECG,心エコー
PGE1
卵円孔狭小(−)
卵円孔狭小(+)
心房中隔裂開術
肺動脈弁性閉鎖
漏斗部閉鎖
シャント術
類洞交通(+)
乳児期
二期手術
RVDI<0.35
肺動脈弁裂開術
+シャント
0.35<RVDI
肺動脈弁裂開術
術前心臓カテーテル検査
右室・三尖弁成長
RV-TV index<0.1
RV-TV index<0.2
Fontan型手術
右室流出路再建+Glenn手術
0.2<RV-TV index<0.4
右室流出路再建+ASD部分閉鎖術
0.4<RV-TV index
右室流出路再建+ASD閉鎖術
RVDI=RVEDV
(%N)
×TVD(%N)
×RVOD(mm)
×10−5/BSA(m2)
−4
RV-TV index=RVEDV(%N)
×TVD(%N)
×10
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1153
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
確認できる.
④心臓カテーテル検査(クラスⅠ)
4
治療選択のための検査(図 31)
初回手術の目的は,肺血流を増加させ低酸素血症を改
新生児例では,プロスタグランジン E1 投与下で,動
善し,なるべく早期に右室の減圧をはかり,右室からの
脈管開存を確認し施行する.卵円孔が小さい例では,右
順行性血流を確保し右室の成長を促すことである.初回
房 圧 が 高 く, 平 均 15mmHg を 超 え る よ う な 例 で は,
手術の術式選択で重要な点は,右室の形態と肺動脈弁閉
balloon atrioseotostomy(BAS)の適応である.右室造
鎖か漏斗部閉鎖か,右室容積,および三尖弁輪径である.
影では,右室の形態と容積,類洞間交通の有無と形態,
二期的修復術では初回手術後の右室および三尖弁の発育
三尖弁閉鎖不全の程度を知る.左室あるいは大動脈造影
が十分であれば,
右室流出路再建+心房中隔欠損閉鎖(い
で,動脈管から肺動脈が造影され,肺動脈の発達の程度
わゆる解剖学的根治手術)が行われる.右室内腔狭小例
を知ることができる.
では右室内肥厚心筋束を切除して,内腔拡大を行う
3
病態把握のための検査(図 31)
①聴診
動脈管開存の他,三尖弁閉鎖不全があれば,収縮期雑
音を聴取する.低酸素血症が強いと心収縮性は低下し,
ギャロップリズムになる.
②胸部 X 線・心電図
overhaul 術を行うこともある.右室および三尖弁が極端
に低形成な例では,Fontan 型手術が選択される.この中
間の右室や三尖弁が中等度に低形成な症例には,右室流
出路再建+心房中隔欠損部分閉鎖,あるいは右室流出路
再建+ Glenn 手術を行う.
①心エコー
心エコー上,右室流出部を欠く漏斗部閉鎖か弁性閉鎖
かを見極めることが重要である.漏斗部閉鎖では,大動
生後,動脈管の閉鎖とともに,チアノーゼは増強し,
脈肺動脈短絡術(Blalock-Taussig シャント)が選択され
肺血管陰影は減少する.動脈管からの肺血流供給が少な
る.弁性閉鎖では,右室容積と三尖弁輪径が比較的大き
いほど,心陰影は小さく,肺血管陰影は減少する.三尖
い 例 で は, 肺 動 脈 弁 切 開 術, 小 さ い 例 で は, さ ら に
弁閉鎖不全を合併すれば,逆流の程度に応じて,右房右
Blalock-Taussig シャントを加える.
室は拡大し,軽度から心胸比 100%に近い著明な心拡大
となる.心電図上,右室が大きい例では右室肥大を見る
②心臓カテーテル検査
ことがある.三尖弁閉鎖不全合併例では,右房性 P 波も
右室造影で,右室容積と三尖弁輪径の計測,類洞交通
著明になり,右室も大きく右室肥大所見を呈する.
の有無を判定する.類洞交通があり冠動脈が造影されれ
③心エコー
ば,右室依存性冠循環の症例であり,Blalock-Taussig シ
ャント術が選択される.
心房間交通の狭さに応じて右房は拡大し,心房中隔は
弁性閉鎖で,右室が比較的大きい症例では,カテーテ
左房方向へ偏位する.卵円孔が狭いと強い体静脈うっ血
ルによる閉鎖弁の穿孔とバルーン拡大術も試みられてい
があり,上下大静脈も拡大する.肺動脈血流は動脈管の
るが,極めて高度な技術を要する.
太さに依存するが,左室は体静脈血と肺静脈血がともに
流入するので容量負荷になる.動脈管が太く肺血流が多
いほど,低酸素血症,チアノーゼは軽いが,左室容量負
③ MRI,3DCT
右室容積の計測に用いられる.
荷が増大する.肺血流が多い例では,肺静脈還流が増加
し,左房圧が上昇し,右房→左房の心房間短絡の妨げと
芳村らは,右室と三尖弁の発育の指標として,RVDI,
なるために,うっ血性心不全が強い.三尖弁閉鎖不全が
RV-TV index を算出し,初回および二期手術の術式選択
強い例では,右房右室の容量負荷が加わる.
を行い,良好な結果を得ている 165).
④心臓カテーテル検査
右室造影で,類洞交通があり冠動脈が造影されれば,
右室依存性冠循環の診断に役立つ.卵円孔で右房左房圧
較差が大きい例で,循環不全があれば,BAS を行う.
1154
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
初回手術:RVDI = RVEDV(%N)× TVD(%N)× RVOD
(mm)× 10 −5/BSA(㎡)
二期手術:RV-TV index = RVEDV
(%N)× TVD(%N)×
10 −4
(RVEDV:右室拡張末期容積,TVD:三尖弁輪径,
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
RVOD:右室流出路径,BSA:体表面積)
12 両大血管右室起始
(double outlet right
ventricle:DORV)
心エコーのチェックポイント
形態診断
▪弁性閉鎖か漏斗部閉鎖か
▪右室形態
1
▪三尖弁輪径
)
32)
解剖・病態生理 166),167(図
▪類洞交通の有無
血行動態
両大血管右室起始は,大動脈と肺動脈が主に右室から
▪動脈管の太さ
起始している疾患であり,臨床的には,両大血管が合わ
▪卵円孔の大きさ
せて 150%以上,右室から起始している疾患と定義され
▪右室容積
る.心室中隔欠損と大血管の位置関係により,4 型に分
類されている.大動脈は,右室に 50 %以上騎乗し,大
動脈下円錐により,大動脈僧帽弁間の線維性連続を欠い
ている.この点が,Fallot 四徴症とは異なる点である.
心室 - 大血管関係により正常大血管型と大血管転位型が
存在する.正常大血管型では大動脈弁と肺動脈弁は,高
さがほぼ等しく横列になっており(side by side),右室
図 32 両大血管右室起始の心室中隔欠損の位置による型分類
A.大動脈弁下型
Subaortic
B.肺動脈弁下型
Subpulmonary VSD
大動脈
肺動脈
右房
右室
三尖弁
C.両大血管下型
Doubly committed VSD
D.遠位型
Noncommitted, remote type VSD
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1155
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
流出路には,大動脈と肺動脈の間に円錐中隔の形成が見
られる.
肺動脈狭窄を合併しない両大血管右室起始は,肺血流
欠である(クラスⅠ).また,円錐中隔の形態をみる.
④心臓カテーテル検査
は増加し,チアノーゼは軽度で,肺高血圧を伴った心室
両大血管の位置関係を確認する.また,典型的な両大
中隔欠損に類似し,新生児期から呼吸困難や心不全を呈
血管右室起始は大動脈弁下に円錐部があり,右室造影上
しやすい.
陰影欠損として観察される.
2
診断のための検査(図 33)
病態把握のための検査(図 33)
3
肺動脈狭窄を合併すると肺血流が減少し,Fallot 四徴
①聴診
症と同様の血行動態となり,肺動脈狭窄のない大動脈弁
肺動脈狭窄を合併する両大血管右室起始は,胸骨左縁
下型心室中隔欠損では,肺血流は増加し肺高血圧を呈す
上部に駆出性収縮期雑音を聴取する.
る.肺動脈弁下心室中隔欠損型では,左室からの血流は
直接肺動脈へ駆出され,心室中隔欠損を伴う大血管転位
②胸部 X 線・心電図
と同様の血行動態となり(Taussig-Bing 奇形),新生児
胸部 X 線上,肺動脈狭窄を合併する例では,肺動脈部
(左第 2 弓)が陥凹し,肺血管陰影は減少する.肺動脈
狭窄を合併しない例では,肺血管陰影は増強し,心拡大
期から呼吸困難や心不全を来たす.
①聴診
がある.心電図では,右室肥大所見あるいは両室肥大所
肺動脈狭窄を合併する両大血管右室起始は,Fallot 四
見を示す.
徴症と同様の血行動態を示し,胸骨左縁上部に駆出性収
縮期雑音を聴取する.肺動脈狭窄を合併しない両大血管
③心エコー
右室起始は,肺血流は増加し,肺高血圧を伴った心室中
本症の形態診断における心エコー検査の意義は極めて
隔欠損に類似し,肺高血圧が進行すると,心雑音は聴取
高い.大血管の空間的位置関係と心室中隔欠損の部位診
しなくなる.
断,すなわち,⑴大動脈弁下型(subaortic type),⑵肺
動脈弁下型(subpulmonary type),⑶両大血管下型(dou-
②胸部 X 線・心電図
bly committed type),⑷遠位型(noncommitted,remote
胸部 X 線上,肺動脈狭窄を合併する例では,肺動脈部
type)のいずれかの診断には,心エコー検査は必要不可
(左第 2 弓)が陥凹し,肺血管陰影は減少する.肺動脈
図 33 両大血管右室起始の診断,病態把握,治療計画のための検査
心エコー
心室中隔欠損の位置
肺動脈弁下型
新生児期
Jatene手術
乳児期
1156
大動脈弁下型
両大血管下型
肺動脈狭窄(+)
肺動脈狭窄(−)
シャント手術
肺動脈絞扼術
心臓カテーテル検査
心臓カテーテル検査
Fallot 四徴症型手術
心室中隔欠損型手術
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
遠位型
肺動脈絞扼術
心臓カテーテル検査
右室容積狭小(−)
容積狭小(+)
心内トンネル手術
Fontan型手術
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
狭窄を合併しない例では,肺血管陰影は増強し,心拡大
肺動脈弁下型(Taussig-Bing 奇形)では,ほとんどが
がある.心電図では,右室肥大所見あるいは両室肥大所
Jatene 手術を行うが,大動脈縮窄や大動脈弓離断を伴う
見を示す.
例では,大動脈弓の形成と肺動脈絞扼術を施行後に,二
期的手術を施行する場合もある.
③心エコー
病態を把握するため,心エコー上の病型分類と肺動脈
狭窄の有無の評価が必要である(クラスⅠ).肺動脈狭
窄を合併すると肺血流が減少し,Fallot 四徴症と同様の
血行動態となり,肺動脈狭窄のない大動脈弁下型心室中
隔欠損では,肺血流は増加し肺高血圧を呈する.肺動脈
弁下心室中隔欠損型では,左室からの血流は直接肺動脈
へ駆出され,心室中隔欠損を伴う大血管転位と同様の血
行動態となる(Taussig-Bing 奇形).
④心臓カテーテル検査
心エコーと同様に,両大血管の位置関係と心室中隔欠
損の位置関係で病態を把握する.両大血管が side by side
の場合はほとんどが大動脈弁下型 VSD で,両大血管右
室起始の過半数を占める.大動脈が肺動脈の右前の場合
には,ほとんどが肺動脈弁下 VSD を伴う Taussig-Bing
奇形である.肺動脈弁下 VSD では,しばしば大動脈縮
窄や大動脈弓離断,大動脈弁下狭窄を伴う.
4
治療選択のための検査(図 33)
検査計画
心エコーのチェックポイント
形態診断
▪両大血管の空間的位置関係
▪心室中隔欠損の位置
▪肺動脈狭窄の有無
血行動態
▪右室容積
▪大動脈弁と心室中隔欠損の距離
13 完全大血管転位
(transposition of the
great arteries:TGA)
1
解剖・病態生理
右心室から大動脈が左心室から肺動脈が起始する心疾
患で心房・心室関係が一致している(concordant)もの
である.上下大静脈から還流する静脈血が大循環に流れ
心室中隔欠損の位置と両大血管の空間的位置関係の把
るため,チアノーゼを主症状としている.
握が,術式選択において最も重要である.そのために,
心室中隔欠損(VSD)と肺動脈狭窄(PS)の合併の
心エコーと心臓カテーテル検査が必須の検査である(ク
有無により病型が分かれ,病型により経過や治療方針が
ラスⅠ).多くの場合に,左室と大動脈を心室内トンネ
異なるため病型診断が重要である.
ルで連結する心内修復術が可能である
168)
.
①心エコー
Ⅰ型:VSD も PS もない(約 50%).
Ⅱ型:VSD はあるが PS はない(約 25%).
Ⅲ型:VSD も PS もある(約 25%).
心エコー上,大動脈弁下型心室中隔欠損で,肺動脈狭
出生後早期にチアノーゼに気づかれ心エコーを中心と
窄を伴う場合は,Fallot 四徴症と同様の治療方針を,肺
する諸検査により発見されることが多いが,胎児心エコ
動脈狭窄を伴わない場合は,malaligment 型心室中隔欠
ー法の普及により胎児期に疑われ,診断・母体搬送され
損と同様の治療方針をとる.一期的に心内修復術を施行
ることも増えてきている 169),170).
するか,姑息手術として前者では大動脈肺動脈短絡術
(Blalock-Taussig シャント)を,後者では肺動脈絞扼術
を施行し,二期的に心内修復術を施行する場合もある.
②心臓カテーテル検査(クラスⅠ)
2
診断・病態把握のための検査(図 34)
胎児期に心エコーにて診断することは出生後の治療を
迅速に行うために重要であり,胎児心エコー検査が有用
で あ る. ポ イ ン ト は 均 等 な 4 chamber と three vessel
心室中隔欠損が遠位型の場合,心室中隔欠損と大動脈
view で SVC-Ao-PA が一直線に並んでいないことや,そ
弁の距離が長いため,これらを結ぶ長い心内トンネルが
れぞれの心室から起始している 2 つの大血管が平行に走
必要となる.このため,心室造影での確認が必要である
行していることに注視することである.診断されれば手
(クラスⅠ).また,右室容積が充分あることも重要であ
術可能な施設に母体搬送し,小児循環器科医立会いの下
り右室造影での容積確認が必要である(クラスⅡ a).
に分娩に臨むことが望ましい.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1157
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
出生直後にはチアノーゼで発見されることがほとんど
週から 1 か月後に Jatene 手術を行う前に心臓カテーテル
で,診断上胸部 X 線の“egg shape”等は参考になるが
検査で再評価をする(クラスⅠ)178).
ECG も含め特徴的な所見はない.ほとんどの場合,診
断には心エコーが重要で必須の検査となる(クラスⅠ).
心エコーでの診断のポイントは正常な心房−心室関係で
卵円孔の大きさと合併症の有無を心エコー,心臓カテ
あり,かつ右心室から起始している血管が arch を形成
ーテル検査で評価する(クラスⅠ).卵円孔が小さけれ
する大動脈で,左心室から起始する血管がすぐに分岐す
ば BAS を行い,VSD 以外の合併がない場合 1 ~ 2 か月
る肺動脈であること.この 2 本は通常の spiral でなく,
での Jatene 手術を行う.生後数週以降は肺血流増加から
parallel な走行をし,弁の位置は右前−左後であること
心不全になり手術を早めることがあるが,胸部 X 線,
が挙げられる.次に同じく心エコーで病型診断をする.
ECG,心エコーで評価し決定する(クラスⅠ).
大きな VSD の有無,左室流出路狭窄を含む PS の有無を
ときに合併症がある.大動脈縮窄等の大動脈弓異常を
見て前記のⅠ・Ⅱ・Ⅲ型とする.小さい VSD は血行動
合併する場合 PGE1 を使用後,新生児早期に大動脈弓再
態に影響を与えないため,PS がなければⅠ型とする.
建と肺動脈絞扼術を行う.このとき術前の MDCT によ
PS は肺血管抵抗の高い新生児期早期には圧較差があて
る 3 次 元 構 築 は 特 に 有 用 で あ る. そ の 後, 胸 部 X 線,
にならず判断が困難なことがあり,P 弁の形態や動き,
ECG,心エコーで経過観察し,心臓カテーテル検査で
弁輪径,弁下の形態から評価する.VSD がなく PS があ
評価をした上で乳児期に Jatene 手術を行う(新生児期に
る 例 は Ⅳ 型 と す る が, 症 例 数 は 少 な い た め 省 略 す
大動脈弓再建と Jatene 手術を一期的に行う施設もある).
る
171),172)
3
心エコー検査で左右心室の不均衡や房室弁の
.
straddling 等があり 2 心室修復ができない場合,1 ~ 2 か
治療選択のための検査(図 34)
月で肺動脈絞扼術を行う.胸部 X 線,ECG,心エコー
で経過観察し直前に心臓カテーテル検査で肺動脈の発育
①Ⅰ型の治療と検査 163),164),172)−176)
を評価した上で 1 ~ 2 歳で Glenn 手術や Fontan 型手術等
新生児早期に診断できた場合,まずチアノーゼの軽減,
左室圧維持を目的にプロスタグランジン E1(PGE1)を
使用するが,心エコーで PDA の太さ,卵円孔の大きさ
の右心バイパス手術を行う.
③Ⅲ型の治療と検査 163),164),172)−176)
を評価することが必要である(クラスⅠ).心エコーで
心エコー,心臓カテーテル検査で評価し卵円孔が小さ
卵円孔が小さく PGE1 投与でもチアノーゼの改善が得ら
ければ BAS を行う.PS が重症でなく PDA 依存でなけれ
れなければ,心臓カテーテル検査の時期を早め,同時に
ば胸部 X 線,ECG,心エコーで経過観察し,直前に心
バルーンカテーテルによる心房中隔欠損作成術(BAS)
臓カテーテル検査で評価し 3 ~ 4 歳で Rastelli 手術を行
を行う.この場合後の左室圧低下を懸念して小さめ(1
う.PS が閉鎖も含め重症で PDA 依存であれば PGE1 を
~ 1.5 cc)の BAS にする(BAS も含め心臓カテーテル
使用後 1 か月前後に短絡術を行う.胸部 X 線,ECG,心
検査をせず心エコー検査のみで手術をする施設もある).
エコーで経過観察し,心臓カテーテル検査評価後 3 ~ 4
心エコーにて心室中隔の彎曲から左室圧および左室後壁
歳で Rastelli 手術を行う.
厚を評価する.左室圧が等圧に近く左室後壁厚が 3 ~
Ⅱ型と同様,大動脈弓異常,心室の不均衡や房室弁の
3.5mm 以上あれば生後 1 ~ 2 週での動脈スイッチ術(以下,
straddling 等 の 合 併 症 を も つ こ と が あ る. こ の 場 合,
Jatene 手術)をめざす.それに備えて心エコーで冠動脈の
MDCT 心エコー,心臓カテーテル検査等で評価を行い,
起始の評価が必要である(クラスⅠ)
.手術直前には心臓カ
Ⅱ型と同様の治療をする.
テーテル検査を行い冠動脈の走行や左室圧の評価をする.
冠 動 脈 の 走 行 評 価には laid back 位(40 ~ 45 ° caudal tilt
position,caudal view)での大動脈造影が有用である
177)
.
診断時期が遅れた例では左室圧の低下や左室後壁厚の
菲薄化が心エコーで評価される.この場合Ⅱ期手術の方
針となり,左室を鍛えるため肺動脈絞扼術と短絡術を行
う.その後心エコーでの左室後壁厚の増大,心電図での
左胸部誘導でのストレイン出現等を参考にし,さらに数
1158
②Ⅱ型の治療と検査 163),164),172)−176)
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
14 修正大血管転位(corrected
transposition of the
great arteries:cTGA)
1
解剖・病態生理
右房と解剖学的左室が繋がり左房と解剖学的右室が繋
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
図 34 完全大血管転位の診断,病態把握,治療計画のための検査
胎児期
出生直後
TGA 診断後母体搬送
心エコー
チアノーゼから心エコーで TGA の診断心エコーで
病型(Ⅰ,
Ⅱ,
Ⅲ)を分類
※
(Ⅱ型)
(Ⅲ型)
(Ⅰ型)
新生児期
診断後 PGE1 +DOA or DOB
心エコー,心臓カテーテル検査
BAS
左室圧低下し
左室後壁厚薄い
左室圧低下なし
生後 1∼2 週
[卵円孔小]
Jatene 手術
肺動脈絞扼術 + 短絡術
1 か月
胸部 X 線,ECG,心エコー,心臓カテーテル検査
Jatene 手術
2 か月
※
(Ⅱ型)
新生児期
(Ⅲ型)
心エコー
心臓カテーテル検査
心エコー
心臓カテーテル検査
[卵円孔小]
VSD-PS 以外
の合併なし
大動脈弓
異常
[卵円孔小]
BAS
心室不均衡
房室弁の Straddling
弓再建術
肺動脈絞扼術
1∼2 か月
6 か月∼1 歳
Jatene 手術
PDA
依存なし
1∼2 歳
PDA
依存
PGE1 使用
肺動脈絞扼術
短絡術
心エコー
心臓カテーテル検査
Jatene 手術
BAS
心エコー
心臓カテーテル検査
Fontan 型手術
3∼4 歳
心エコー
心臓カテーテル検査
心エコー
心臓カテーテル検査
Rastelli 手術
がっている,心房・心室関係の不一致(atrioventricular
Rastelli 手術
心室中隔欠損(VSD:約 80 %)や肺動脈狭窄(PS:30
discordance)があり,かつ解剖学的左室から肺動脈が解
~ 50 %),三尖弁逆流(TR),房室ブロック(AVB)等
剖学的右室から大動脈が起始する心室・大血管関係の不
を合併しその程度や組み合わせにより種々の症状を呈す
一致(ventriculoarterial discordance)がある疾患で,血
る.VSD と PS を合併するとチアノーゼを呈する.PS が
行動態的には修正されており静脈血が肺循環に動脈血が
なく大きな VSD や高度の TR,高度の AVB を合併する
体循環に流れ,合併症がなければ無症状である.しかし
と心不全症状を見る.また合併症がなく小児期では無症
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1159
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
状でも,体循環を右心室が担っているため,成人期には
る 177),181)−184).
TR の発生や右心不全の出現と進行があり,手術方針決
以前は短期的にはこの疾患の主な症状は VSD と PS か
定上課題になっている.心房内臓正位(SLL)が 90 ~
ら起こるものであるとし,心室−大血管の関係はそのま
95 %,逆位(IDD)が 5 ~ 10 %であるが SLL の 25 %が
まに VSD 閉鎖と PS 解除を CR 法として行ってきた.し
右方転移を(IDD では左方転移を)示すことが多く,診
かし長期的にみると解剖学的右室が大循環を担当してい
断上重要である 179),180).
るため,三尖弁逆流の出現と悪化や,右室自体の機能低
2
診断・病態把握のための検査(図 35)
または Senning 法による atrial switch 手術と Rastelli 法ま
出生後の診断のきっかけとして胸部 X 線や ECG は重
たは Jatene 法による arterial switch 手術を同時に行う DS
要である.胸部 X 線で右胸心(約 25 %)や心陰影の左
法が行われるようになった.これらの中期予後が最近発
側を上行する大動脈を反映した左 1,2,3 弓の一直線化
表され,手術手技の改良に伴い予後が改善し,DS 法の
が参考になる.ECG では SLL の場合心室中隔の右から
方向で治療すべきとの立場と,DS 法は手術自体のリス
左側前上方に向かう初期ベクトルを反映して,右側胸部
クが高く,術後の運動機能も両者で差がないため,手術
誘導では Q 波や QS complex が多く左側胸部誘導では Q
前に中等度以上の TR がある場合や解剖学的右室がやや
波の欠如が多く,参考になる.Ⅲ,aVf 誘導での Q 波の
小さい等 CR 法では早期悪化が予想される症例のみに
増高,左軸偏位も特徴的である.
DS 法を行う立場がある.
この疾患に対しては segmental approach に基づき行う
両者に沿ってその検査法を概説する.主に解剖学的心
ことが特に大切である.その点からも心エコーは診断上
内修復術(double switch 法:DS 法)をめざす場合,ま
最も重要である(クラスⅠ).下大静脈と脊柱との位置
ず左右心室が均衡か不均衡かを判断するため心エコー,
を確認し,下大静脈が入っている心房を右房として心房
心臓カテーテル検査で評価することが重要である(クラ
内臓関係を判定する.心室は両房室弁の中隔への付着位
スⅠ).不均衡である場合 2 心室修復はできないため,
置(三尖弁の方が心尖部側にある),心室中隔の肉柱の
必要に応じて肺動脈絞扼術や短絡術を行う.乳児期後期
様子(右室が疎,左室が密),乳頭筋の特徴(左室は 2
−幼児期早期の Fontan 型手術の前には心臓カテーテル
本で均等)等から,解剖学的左室・右室を同定し,心房
検査で肺動脈の発育度や肺血管抵抗等を評価し適応を判
との繋がりから atrioventricular discordance を診断する.
断する(クラスⅠ).
次に大血管関係は短軸像で,心房内臓正位の場合左前・
左 右 心 室 が 均 衡 で あ る 場 合 PS・PA の 合 併 の 有 無,
右後(逆位では右前・左後)の関係で後方血管が心臓か
VSD の大きさや位置,房室弁の腱索との関係等を心エ
らすぐ二方に分岐する肺動脈で,前がより頭側で arch
コー,心臓カテーテル検査で判断する.解剖学左室から
をつくる大動脈であると同定する.この血管と心室の繋
VSD を通して大動脈への rerouting が可能か(心エコー
がりを見て,ventriculoarterial discordance を診断する.
が特に有用)
また左室圧は高いかを評価する(クラスⅠ).
さらに,心エコーで合併する心室中隔欠損(VSD),肺
PS・PA があり,VSD が適当であれば atrial switch 手術
動脈狭窄(PS)の有無と程度を明らかにし,左右心室
と Rastelli 手術を行うが,その前に心エコー,心臓カテ
の 不 均 衡 の 有 無, 三 尖 弁 の Ebstein 病 や 逆 流(TR),
ーテル検査での評価が必要である(クラスⅠ).PS・PA
straddling,大動脈弓奇形等の合併症の有無や程度を診
がない場合,VSD があるため左室圧が高ければそのま
断する
179),180)
.
ま, 低い場 合肺動 脈絞 扼術 を行い atrial switch 手 術と
心臓カテーテル検査も重要で,診断の確定をするとと
Jatene 手術を行う前に左室が鍛えられたことを確認する
もに,病態把握のために肺動脈,冠動脈の形態,体循環
ため心エコーと心臓カテーテル検査を行う(クラスⅠ).
肺循環指標,左右心室容積および機能等の評価が行われ
それ以外の例にのみ VSD 閉鎖,PS 解除術を行う 177),182).
る(クラスⅠ).
主に機能的心内修復術(conventional repair 法:CR 法)
3
治療選択のための検査(図 35)
主に解剖学的心内修復術(double switch 法:DS 法)
1160
下による心不全が問題になり,1990 年代から Mustard 法
をめざす場合,まず心エコー,心臓カテーテル検査で左
右心室が均衡か不均衡かを判断し,不均衡である場合
Fontan 型手術を行うことは前者と同じである.均衡であ
をめざす考え方と,主に機能的心内修復術(conventional
る場合,心エコー・心臓カテーテル検査で TR が軽度以
repair 法:CR 法)をめざして一部の例にのみ DS 法を行
下か中等度以上か,Ebstein 病の合併はないかを評価す
う 考 え 方 と が あ り, 現 在 の と こ ろ controversy で あ
る.TR が有意でなければ,VSD 閉鎖術・PS 解除術を行
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
図 35 修正大血管転位の診断,病態把握,治療計画のための検査
◇主に解剖学的心内修復術(double switch 法)を行う方針の場合
[修正大血管転位症例]
心エコー,心臓カテーテル検査
[均衡心室]
[不均衡心室]
心エコー,心臓カテーテル検査
[PS・PA の合併]
[PS・PA の合併なし]
短絡手術
心エコー
心臓カテーテル検査
心エコー,心臓カテーテル検査
rerouting 可能な
VSD
[LV 圧高い]
rerouting 不可の
VSD
肺動脈絞扼術
または
短絡手術
心エコー
心臓カテーテル検査
[LV 圧低い]
肺動脈絞扼術
atrial switch 手術
+
Rastelli 手術
心エコー
心臓カテーテル検査
atrial switch 手術
+
Jatene 手術
Fontan 型手術
VSD 閉鎖
+
PS 解除術
◇主に機能的心内修復術(従来法)を行う方針の場合
[修正大血管転位症例]
心エコー,心臓カテーテル検査
[不均衡心室]
[均衡心室]
心エコー,心臓カテーテル検査
[TR 軽度以下]
心エコー,心臓カテーテル検査
VSD と
PS・PA の合併
心エコー
心臓カテーテル検査
[TR 中等度以上]
VSD 合併
PS・PA なし
VSD と
PS・PA の合併
心エコー,心臓カテーテル検査
VSD と
肺動脈絞扼術後
心エコー
心臓カテーテル検査
VSD 閉鎖
+
PS 解除術
VSD 閉鎖
atrial switch 手術
+
Rastelli 手術
atrial switch 手術
+
Jatene 手術
Fontan 型手術
う. 有 意 で あ り VSD と PS・PA の 合 併 が あ れ ば atrial
ざし肺動脈絞扼術を行う報告が増えている 184).DS 法を
switch 手術と Rastelli 手術を行う.また TR が有意であり
主にめざす立場でも原則的には 10 歳以下の例に行い,
合併が VSD だけなら肺動脈絞扼術行い,ついで,atrial
心エコーで機能低下に注意し,心臓カテーテル検査で左
switch 手術と Jatene 手術を行う前に心エコーで左室が鍛
室圧の上昇を確かめて行う必要がある.
えられたことを確認する 183).
VSD と PS の合併症のない例にも double switch 術をめ
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1161
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
軽度のチアノーゼのみで,TrR が高度でなければ心不全
15 総動脈幹遺残
(persistent truncus
arteriosus)
1
は見られない.出生後,肺血管抵抗の低下とともに肺血
流や心負荷が増加し呼吸・心不全症状が出現しさらに増
悪する.TrR が高度の場合は生直後から心不全を呈し肺
血流増加とともに悪化する.まれであるが肺動脈狭窄を
伴うとチアノーゼはあるが心不全症状を呈さない 185),186).
解剖・病態生理
診断・病態把握のための検査(図 36)
2
左右両心室からの血液を単一の大血管(動脈幹)がい
ったん受けて,ここから体動脈,肺動脈,冠動脈に分か
胸部 X 線や ECG ではこの疾患の特徴的所見は少なく,
れ供血する心奇形である.発生学的には動脈幹中隔・円
肺血流量や弁逆流の増加により検査所見は規定される.
錐中隔の形成不全により,大動脈・肺動脈が分割しなか
胸部 X 線で肺血流量増加型では心拡大と肺血管陰影の
ったために起こったといわれており,約 1/3 に 22q11.2
増加が見られる.右側大動脈と肺血管陰影の増加が伴っ
欠失症候群を伴っている.
ている場合強く本症が示唆される.ECG は肺血流量増
病態の理解には Collet-Edwards の分類(特にⅠ−Ⅲ
加型で両室肥大や左房負荷が見られる.
型),合併症の理解には Van Praagh の分類(特に A3:片
心エコーは最も重要な診断法である(クラスⅠ).胸
側肺動脈欠損,A4:大動脈弓離断の合併)が有用であ
骨左縁の左室長軸断面で心室中隔に大血管が騎乗してい
る(それぞれの分類の詳細は専門書を参照されたい).
る所見が得られる.肺動脈閉鎖を伴う Fallot 四徴症でも
半月弁(総動脈幹弁)は 3 弁(69%)や 4 弁(22%)が
同様の所見が見られるが,探触子をやや時計方向回転し
多いが 2 弁や 6 弁の報告もあり弁逆流の合併が高率に見
右室流出路がまったく見えず,やや上方で大血管から肺
られる.その他の合併症としては右側大動脈弓(21 ~
動脈が分岐しているのが見えることにより鑑別される.
36 %),大動脈弓離断(11 ~ 19 %),肺動脈狭窄や冠動
この分岐は高位の短軸像でより明瞭に検出される.この
脈異常(開口部位置異常や走行異常)がときに見られる.
分岐の形態により,Collet-Edwards の分類が可能になる.
臨床症状は肺血流量の多少と総動脈幹弁逆流(TrR)
半月弁位の短軸像により弁形態が把握でき,この位置お
の程度で規定される.出生直後で肺血管抵抗が高い間は
よび左室長軸断面にてドップラーを併用し TrR の有無と
図 36 動脈幹遺残の診断,病態把握,治療計画のための検査
胎児の
出生時
[総動脈幹遺残]
心エコー,心臓カテーテル検査,CT
[重大合併症あり]
[重大な合併症なし]
高度
総動脈幹弁逆流
[大動脈弓遮断]
上行大動脈
低形成なし
∼
1 か月
6 か月
Rastelli 手術
or
Lecompt 変法
or
Barbero-Marcial 手術
心内修復術
+
弁形成術
心内修復術
+
大動脈弓再建
[肺動脈狭窄]
上行大動脈
低形成あり
両側肺動脈
絞扼術
心エコー,心臓カテーテル検査,CT
心エコー
心臓カテーテル検査
Norwood 手術
∼
6 か月
2歳
1162
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
心内修復術
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
程度を判定する.胸骨上窩からの断面で右側大動脈弓や
乳児期後期に心エコーおよび心臓カテーテル検査で再評
大動脈弓離断の合併の有無をみることができる.
価した上で,心内修復術(Rastelli 手術)を行う.
心臓カテーテル検査も重要で,診断の確定が可能であ
る(クラスⅠ).特に造影により肺動脈の総動脈幹から
の分岐形態や大動脈弓の形態,冠動脈の形態を診断する
16 三尖弁閉鎖
(tricuspid atresia:TA)
ことが可能である.肺動脈の圧および酸素飽和度より肺
血管抵抗値を算出することが重要である.この疾患は肺
動脈の閉塞性病変の進行が早く,肺血管抵抗値が 8 単
解剖・病態生理
1
位 / m2 以下が手術適応ありで,12 単位 /m2 以上では手術
三尖弁閉鎖(TA)は三尖弁を欠き,右房と右室の交
適応なしと言われている.
通が遮断された心奇形と定義される.種々の程度の右室
CT 特に三次元構築は大血管の立体関係を把握するた
低形成を伴い,必ず心房間における右左交通を伴う.多
めに有用である.また総動脈幹と肺動脈との分岐関係,
くは孤立性心奇形として発症するが,20 %以下の症例
肺動脈と右室との距離,大動脈弓離断の有無と形態等を
で多重心奇形を伴う.三尖弁を欠くので右室流入部は欠
)
明らかにすることができる 185),186(クラスⅠ)
.
損し,肉柱部および漏斗部からなる低形成右室を認める.
3
治療選択のための検査(図 36)
VSD のサイズにより,右室のサイズも規定され,肺血
流も VSD および肺動脈弁低形成や右室流出路狭窄を伴
まず,総動脈幹遺残の診断をできるだけ早期(できれ
う場合に制限される.病型分類は Kuhne により提案さ
ば胎児期や出生時期)に心エコーを中心に行い,さらに
)
れ,後に修正された 192(表
7).現在国内では一般的に
心臓カテーテル検査,3DCT で重大な合併症があるかを
Keith-Edwards による分類が使用される 193).Type Ⅰは
診断する(クラスⅠ).重大な合併症がなければ,肺動
正常な大血管関係で TA の 70 ~ 80 %を占める.Type Ⅱ
脈の閉塞性病変が進行する前のできれば新生児期,遅く
は大血管関係が d 型大血管転位であり,12 ~ 25 %を占
とも 6 か月以内に心内修復術を行う.この場合の手技と
める(図 37).Type Ⅲはまれな形態で 3 ~ 6%に生じる
して人工血管を使用した Rastelli 手術を行うか,自己組
とされる 194).Type Ⅲは頻度が少なく典型的ではないた
織 で 右 室 流 出 路 を 形 成 す る 手 術(Lecompte 変 法,
め,ここでは Type Ⅲ以外について述べる.合併奇形と
Barbero-Marcial 手術)のどちらを行うかは controvercial
して 8 %に CoA を認め,それ以外にも左上大静脈遺残,
である
187)−191)
耳並列,右大動脈弓を伴うことがある 195).
.
重大な合併症のうち高度の総動脈幹弁の逆流を伴う場
合は,心内修復術と同時に弁形成術を行う.この際,
3D 構築を含めた心エコーの詳細な検討が有用である(ク
図 37 主な三尖弁閉鎖の解剖
Normally Related Great Arteries
D-Transposition
ラスⅡ a).大動脈弓離断を合併していても多くの場合,
新生児期−乳児期早期に一期的に大動脈弓再建と心内修
復術を行う.大動脈弓離断に上行大動脈の低形成を伴う
場合は,新生児期にまず両側肺動脈絞扼術を行い,つい
で心エコー,心臓カテーテル検査,CT での再評価で上
Ao
Ao
PA
RA
PA
RA
RV
RV
LV
LV
行大動脈の成長がなければ Norwood 型手術を行う.両
側肺動脈の分岐部に狭窄があり落ち着いている場合は,
表 7 三尖弁閉鎖の分類
Type Ⅰ.
Normally related great arteries
Type Ⅱ.
D- Transposition of the great arteries
Type Ⅲ.
a. Intact ventricular septum with pulmonary atresia
b. Small ventricular septal defect and pulmonary stenosis
c. Large ventricular septal defect without pulmonary stenosis
a. Ventricular septal defect with pulmonary atresia
b. Ventricular septal defect with pulmonary stenosis
c. Ventricular septal defect without pulmonary stenosis
L- Transposition or malposition of the great arteries
Associated complex lesions, i.e., truncus arteriosus, atrioventricular septal defect
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1163
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
Type Ⅰでは,体静脈血はすべて右房から心房間交通
脈を年長児,特に心房間交通が狭く右房圧が高い例で起
を経て左房に至り,肺静脈血流と完全に混合し,僧帽弁
こしやすい(クラスⅡ a).徐脈性不整脈や心室性不整
を経て左心室に流入する.血液は直接,正常起始の大動
脈もときに生じる.
脈に駆出され,同時に VSD と低形成右室を経て肺動脈
に駆出される.肺血流量は VSD のサイズおよび肺動脈
狭窄の有無に左右される.新生児期に肺血管抵抗低下に
TA 診断の中核をなす検査である.TA の解剖学的情報
より高肺血流となる可能性がある.肺静脈血と体静脈血
は心エコーにて容易に得られる(クラスⅠ).M モード
が完全に混合するためチアノーゼは必発である.その程
エコーでは LV サイズと機能の評価に限定的に使用され
度は肺血流量に依存する.狭小な VSD や肺動脈狭窄が
る.心内奇形についてもエコーにてほぼすべて診断可能
あると高肺血流とはならないが,チアノーゼは増強する.
である.三尖弁の部位に開存のない線状エコーを認めれ
肺動脈閉鎖かつ正常心室中隔の症例では肺血流は動脈管
ば確定診断される.肺動脈閉鎖でなければ,2 つの半月
を介して供給されるため,チアノーゼの程度は動脈管サ
弁と大血管の描出も容易である.カラードップラーにて
イズに依存する
195)
.
Type Ⅱにおいては,左室から直接起始している肺動
脈が通過障害を来たすことはまれであり,生後数週間以
右房・右室間交通がないことも診断の一助となる.
④心臓カテーテル検査
内に高肺血流となる.狭小な VSD や右室流出路狭窄が
心エコーにて TA の初期形態診断が可能であり,診断
存在すると体血流が制限される.重度となると低血圧や
を目的とした心臓カテーテル検査を行うことの必要性は
ショックおよび代謝性アシドーシスを呈する.
ほとんどなくなっている(クラスⅠ).
狭小な心房間交通は強い肝腫大を呈し,心拍出量およ
び肺血流の減少を来たす.大動脈縮窄がある場合下肢低
血圧や還流低下を認める 195).
2
診断のための検査(図 38)
①身体所見
3
病態把握のための検査(図 38)
①身体所見
肺動脈狭窄がない場合チアノーゼがはっきりしないこ
ともあるが,肺血管抵抗減少に伴い高肺血流性心不全症
状が顕在化する.肺血流の乏しい症例ではチアノーゼは
動脈血酸素飽和度低下が認められ.出生直後に気づか
強く出現するが,高肺血流性心不全とはならない.VSD
れずとも 1 週間以内にはほとんどがチアノーゼに気づか
が小さく右室流出路狭窄を伴う場合,無酸素発作が生じ
れる.心雑音も通常存在する.左室の拍動は右室の拍動
ることがある.Type Ⅱにおいては高肺血流になること
より強く,VSD があるとスリルをふれる.I 音は単一で
が多い.VSD サイズが大きい場合,臨床症状から Type
強い.Ⅱ音も単一のことがある.高肺血流の場合,Ⅲ音
Ⅱ c とⅠ c を区別するのは困難である.出生児の体格は
や拡張中期ランブルを心尖部に聴取する.肝腫大も認め
正常であることが多いが,チアノーゼは必発である.
るが,特に心房間交通が狭い場合に顕著である.CoA
SpO2 や呼吸数は肺血流の多寡を判定する指標となるた
がなければ四肢の動脈拍動は容易に触知される.
め通常行われる(クラスⅠ).また肝腫大は狭小な心房
②心電図
心電図はチアノーゼを呈する新生児のなかで三尖弁閉
間交通を示唆する.
②胸部 X 線
鎖の児を鑑別するのに有用である.心房間交通の程度に
診断よりも血行動態評価に有用である(クラスⅠ).
よらず右房負荷を呈し,肺血流増加例では両房負荷を呈
通常心陰影のサイズは正常範囲であるが,肺血流制限の
する.PR 間隔は多くの例で正常である.また,左軸偏
ない Type Ⅰ c および Type Ⅱ c では肺血管抵抗低下に伴
位が特徴的で,
特に Type I では85%が左軸偏位を呈する.
い心拡大を来たす.その場合肺血管陰影の増強も伴う.
肺血流増加例では V6 誘導における R 波増高および深い
肺血流が制限されている場合,肺血管陰影は減少するが,
Q 波を認める.肺血流減少例では小さな R 波および浅い
心陰影サイズは正常のままである.年長児では心陰影右
Q 波を認める.ときに,特に年長児で左側胸部誘導の二
縁が右房拡大に伴って突出してくる.
相性もしくは陰性 T 波を認める.ST 低下を伴うことも
ある.通常,洞調律であるが,AF や Af 等の心房性の頻
1164
③心エコー
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
図 38 三尖弁閉鎖の診断,病態把握,治療計画のための検査
新生児におけるチアノーゼ・
心雑音・呼吸障害などの異常
心エコー,ECG
TA
SpO2,心エコー
肺血流動脈管依存性
PGE1
胸部 X 線
超音波検査
SpO2
Restrictive ASD
(0∼2 か月)*
心臓カテーテル検査
Intervention(BAS)
1st palliation
Inter stage
心臓カテーテル検査
(intervention)
超音波検査
*
(6∼12 か月)
超音波検査
*
(2∼4 歳)
必要に応じ SpO2
ECG,CXR,BNP,
CT,MRI
2nd palliation
心臓カテーテル検査
(intervention)
Fontan completion
*
:おおよその目安.必ずしもこの限りではない.
③心エコー
④心臓カテーテル検査
初期管理は大血管関係によって変わるので,分岐部あ
新生児においては肺血流の供給源を明確にし,エコー
るいは冠動脈起始により肺動脈を同定し,大血管関係を
では判断しにくい病変を検索する意味で必要とされる場
把握することが病態評価において重要である必須な検査
合がある(クラスⅡ a).カテーテルは右房→左房→左
である(クラスⅠ).2D での心房中隔描出および心房間
室→左室より起始する大血管,と進める.大血管関係が
交通サイズの評価やカラードップラーでの心房レベルの
d-TGA の場合,肺動脈狭窄の評価は重要である.VSD
短絡量評価も重要である.CoA 等他の合併心奇形の診
を通してカテーテルを右室から前方の大血管に進めるの
断にも有用である.同様に 2D およびドップラー法にて
は,VSD がよほど大きくない限り困難で,無理をする
VSD の狭小程度や右室流出路狭窄を評価する(クラス
必要はなく,エコーと臨床症状で得られる所見で代用す
Ⅰ).僧帽弁逆流の有無・程度の評価にも役立つ.初回
る.すなわち Type I においては肺血流が十分制限されて
姑息術後の心エコーによる継続的な血行動態評価は非常
いるか否かということ,Type Ⅱにおいては体血流が左
に重要である.ドップラー法にて肺動脈圧を推定するこ
室に強い圧負荷をかけることなく維持できるかというこ
とが可能である(クラスⅠ).また最終手術後も血行動
とを評価する(クラスⅠ).通常右房圧は左房圧より若
態評価の最重要ツールであり,心室機能・僧帽弁機能・
干高いが,心房間交通が狭小な場合右房圧曲線 a 波の突
右房から肺動脈までの血流通過障害等が評価できる.右
出を認める.左室拡張末期圧は肺血流が多いと容量負荷
房内血栓の描出にも役立つ.心房性頻脈性不整脈を有す
により上昇することがある.Type Ⅱの場合 PS がなけれ
る患者にとって経食道エコーは心房内血栓の有無を検索
ば PH を伴う.体静脈血酸素飽和度は体動脈血酸素飽和
する上では必須の検査である.
度が通常より低いため低値であり,肺病変がない限り
PV の酸素飽和度も正常である.また心室造影ではエコ
ーよりも右室腔の正確なサイズを測定できる.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1165
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
4
治療選択のための検査(図 38)
基本的方針として Fontan 循環をめざすことが多い
195)
.
①心エコー
狭小な心房間交通と判断される場合には BAS が必要
である.
②心臓カテーテル検査
17 左心低形成症候群
(hypoplastic left heart
syndrome:HLHS)
1
解剖・病態生理
左心低形成症候群は,1958 年 Noonan と Nadas により
提唱された概念で 196).左心房から大動脈に至る左心系
狭小な心房間交通を伴う場合は BAS が必要である.
構造物が低形成である疾患である.左室が機能しないた
最初大きかった心房間交通が年齢とともに狭小化した場
め,右室が体循環・肺循環を支える.体血流は主肺動脈
合,BAS はあまり有効ではなくブレードによる心房中
から動脈管を経て供給されるため,生命の維持には,動
隔裂開や手術による心房間交通作成が行われることがあ
脈管開存が必須である.また,肺静脈血流は,左房から
る(クラスⅡ a).Type Ⅱの児で VSD や右室流出路狭窄
ASD を経て右房・右室へと流入するため,ASD が小さ
による体血流制限がある場合,初回姑息術時に Norwood
いと肺静脈性肺高血圧を呈する.治療の進歩とともに,
手術を要することがある.また,両方向性 Glenn 手術
その概念が拡大解釈されるようになったため,厳格な左
(Bidirectional Glenn:BDG) 時 に Damns-Kaye-Stansel
心低形成症候群の解剖学的定義として以下が提唱されて
(DKS)吻合を行うこともある.
いる 197).「HLHS とは,共通房室弁ではなく,正常な大
心臓カテーテル検査は,姑息術後の血行動態を評価し
血管関係を有し,有意な左心室低形成を示す,心奇形ス
次段階手術適応を決定するための重要な検査である(ク
ペクトラムであり,大動脈弁・僧帽弁のいずれか,ある
ラスⅠ).最も重要なのは肺血管抵抗であり,Fontan 循
いは両方の低形成と,上行大動脈・大動脈弓の低形成を
環成立の鍵を握るものである.初回姑息術としてシャン
有する」.
ト手術施行例ではシャントを通して直接肺動脈圧・酸素
従 来 の classic HLHS と 称 さ れ る 群, お よ び 狭 義 に
飽和度を測定できる.困難でも肺静脈楔入圧を計測する
HLHS と称される群がこの定義に相当すると考えられ
ことで肺動脈圧が正確に推定できる.肺動脈絞扼術を行
る.しかしながらこの定義では HLHS のもつ血行動態的
った症例では左室からバンドを超えて肺動脈へカテーテ
概念が十分反映されていない.HLHS に含まれる血行動
ルを進めることが可能である.また肺動脈造影は肺血管
態 的 概 念 は Kirklin の 成 書“Cardiac surgery” に hyp-
床発育評価および初回姑息術後の肺動脈形態のゆがみの
oplastic left heart physiology(HLHP)として説明されて
評価に有用で,この検査結果から次回手術時に肺動脈形
いる.すなわち HLHP とは「左心系構造物の低形成があ
成の必要性が判断される(クラスⅡ a).年長児で Fon-
り,従来の治療法では左心機能不全を救済できない先天
tan 型手術に到達していない例では体肺側副血行の評価
性の心血管構築異常」と定義され,換言すれば Norwood
にも有用で,コイルによる塞栓術が行われる.
手術(右室および主肺動脈に左心機能を代替させる姑息
③ 3DCT,MRI
手術)を経て Fontan 循環をめざすか,あるいは心臓移
植(別の新しい左心系をそっくりそのままもってくる)
心臓カテーテル検査時の心血管造影の代用を十分果た
の 2 通 り の 治 療 法 し か な い 病 態 で あ る 198). こ の Nor-
すとされる検査である(クラスⅡ a).しかし圧データ
wood 手術が必要であるという点が一般的な単心室との
の測定や intervention を要する場合も多く,結局は心臓
最大の相違点である.さらに主心室が形態的左室であっ
カテーテル検査を補完する位置づけといえる.
④血液検査
血漿 BNP を一つのガイドとして心不全治療を行うこ
ともある(クラスⅡ b).
ても同様の病態を HLHS(厳密には HLHS variant)とし
て扱う場合もある.以下ではこのスペクトラムの中核を
なす解剖学定義に基づい HLHS(=classic HLHS)につ
いて述べる.
2
診断のための検査(図 39)
現在は多くの症例が胎児エコーで発見される.胎児エ
コーで発見されなかった HLHS の症状発現は ASD の通
1166
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
過障害と動脈管開存度によりばらつきがある.1/4 は 24
冷感・蒼白を呈する.聴診では大動脈弁欠損および肺高
時間以内に有症状となるが,多くは初期には通常新生児
血圧による単一Ⅱ音,心室機能低下によるⅢ音を聴取す
と変わらず 48 時間以降に症状が出現する.
る.心雑音は一般的でなく,相対的肺動脈狭窄による収
縮期駆出性雑音や重度三尖弁逆流に伴う収縮期逆流性雑
①胎児エコー(クラスⅡ a)
音も聴取する.上下肢は生後早期には対称的によくふれ
心臓超音波技術の発達により妊娠 16 ~ 18 週以降で胎
るが,動脈管閉鎖に伴い減弱する.肝腫大はよく見られ
児診断が可能となった.2D エコーにて拡大した右房・
る 199).
右室・肺動脈とそれに続く太い動脈管・小さく筋成分に
富む左室を認める.また低形成の大動脈弁・僧帽弁・上
③心エコー
行大動脈,あるいはそれら左室成分の欠落を認めれば
HLHS と容易に診断可能であり,必須の検査といえる
HLHS の可能性が高い.さらに,大動脈弁閉鎖の症例で
(クラスⅠ).心内構造や生理は通常のアプローチとドッ
はカラードップラーエコーにて細い上行大動脈を逆行す
プラーを繰り返すことで十分に診断できる.小さく壁肥
る血流を認める.また,胎児治療の適応となる症例選別
厚した心尖部に達していない左室腔や左室心内膜輝度上
にも役立つ 199).
昇(繊維化反映)を認める.左房は小さいが,restric-
tive ASD であると拡大している.通常,2 ~ 3mm の上
②身体所見
行大動脈を認め,大動脈弁は閉鎖または狭窄している.
restricitive ASD がある場合,強いチアノーゼ,呼吸障
僧帽弁は閉鎖の頻度が高く,狭窄の場合も弁尖肥厚・付
害を呈するが,non restricitive ASD の場合は比較的血色
属器の低または無形成を認める(クラスⅠ).VSD はま
がよい.PDA 閉鎖傾向を認める場合は呼吸障害,末梢
れである.心室冠動脈交通のため,心室中隔壁内にカラ
ー ド ッ プ ラ ー 信 号 を 認 め る こ と が あ る.Supra notch
view にて大動脈弓・下行大動脈の形態がよく観察され
図 39 左 心低形成症候群の診断,病態把握,治療計画のため
の検査
新生児におけるチアノーゼ・
心雑音・呼吸障害などの異常
胎児エコーによる
出生前診断
(周生期)
心エコー
違いはない.右房拡大に伴う P 波増高を 30 ~ 40 %の患
胸部 X 線
3D CT
者に認める 199).
心エコー
*
(0∼14 生日)
PVO
SpO2,SvO2 による
モニタリング
1st palliation
心臓カテーテル
検査
(intervention)
Inter stage
心エコー
*
(3∼8 か月)
心エコー
*
(2∼4 歳)
心臓カテーテル
検査
(intervention)
2nd palliation
必要に応じ SpO2
ECG,CXR,
BNP,
CT,MRI
心臓カテーテル
検査
(intervention)
Fontan completion
* 目安:必ずしもこの限りではない
④心電図
右軸偏位,右室肥大を呈するが,正常新生児と明白な
HLHS
プロスタグランジン E1
1st palliation
周術期
る.大動脈縮窄や離断をよく認める.PDA 開存度や PV
の還流についても同じ断面で観察できる 199).
⑤ 3DCT・MRI
16 列以上の 3DCT により心エコー検査で判断の難し
い aberrant right subclavian artery の有無や CoA の位置・
程度また,肺静脈・肺動脈等の形態・位置の情報を得る
ことが可能であり,積極的に施行される(クラスⅠ).
MRI は Fontan 循環完成前等,ある程度体格が大きくな
った段階でより威力を発揮する.心エコーでの診断を補
完するものとして有用であり,時に行われる(クラスⅡ
b).
⑥心臓カテーテル検査
心エコーおよび 3DCT の登場により,第一次姑息手術
前の評価カテーテル検査は施行数が激減した.診断目的
のカテーテル検査は肺静脈還流異常の診断補助,および
冠動脈奇形診断等特殊な場合にのみ行われ,通常は re-
strictive ASD に対するバルーン心房中隔裂開術(BAS)
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1167
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
や動脈管へのステント留置等,intervention を要する際
に行われる
3
199)
項と重複する.出生後仮死やショックにより全身状態が
.
病態把握のための検査(図 39)
不安定な場合や出生体重が 2,000g に満たない場合は第
一次姑息術として人工心肺不要な両側肺動脈絞扼術が選
択される.
① SpO2,SvO2
急性期,特に Norwood 手術の周術期管理に肺体血流
①胎児エコー
比の推定,cardiac output の推定には詳細かつ連続的な
診断そのものが治療の開始点となる.両親へのカウン
vital sign の測定が必要不可欠である.また上大静脈に留
セリングや分娩計画を立てるために,胎児エコーによる
置した中心静脈カテーテルから採血し,SvO2 をモニタ
スクリーニングが重要である.また,胎児 HLHS におい
リングすることで,cardiac output,組織の酸素需給バラ
ては ASD の評価は必須である.欠損孔そのもののサイ
ンスを推定することができるため,ショックの予防に頻
ズ測定は正確性を欠くため,肺静脈血流のドップラーに
用される(クラスⅠ)199).
よる評価が簡潔で信頼性が高い検査として施行される
(クラスⅡ a).通常の肺静脈血流は収縮期拡張期とも順
②心エコー
行性血流で,心房収縮期にわずかな逆行性血流を認める
Pulmonary venous obstruction(PVO)の有無は予後に
が,持続時間の短い順行性および逆行性血流がありかつ
大きく影響する.Supra notch view にて動脈管より trans-
拡張早期の心室流入波が非常に小さい場合には restric-
verse arch への逆行性血流を認めることも多く,左室が
tive ASD であり,出生後ただちに呼吸管理・左房減圧が
二心室修復に不適である根拠となる(クラスⅠ).Criti-
必要になる.restrictive ASD の出生前診断は,正確な出
cal AS と の 鑑 別 に LV 水 平 断 面 積( < 1.5cm2 な ら
生前カウンセリング(PVO → PA 低形成→予後不良例あ
HLHS),拡張末期流入部のサイズ(僧帽弁後尖ヒンジ
り)のためにも重要である.また,胎児 AS は HLHS へ
から apex < 25mm なら HLHS),僧帽弁輪径(6mm 以下
進展するリスクであることが明らかで,胎児エコーにて
なら HLHS)を参考とする場合もある 199).また,心機能・
注意深く左室成長および PFO や transverse arch の血流パ
房室弁逆流・動脈管開存度等刻々と変化する血行動態評
ターンをフォローする必要がある 199).
価のためにも繰り返し行える点で有用な検査である(ク
ラスⅠ).
②心エコー
大動脈径が 2mm 未満の場合は安定した冠動脈血流を
③胸部 X 線
確保するため,Norwood 手術を選択することが多い.
診断そのものよりも血行動態の評価に有用であり,頻
三尖弁逆流や右室機能障害が強い場合には原則として両
用される(クラスⅠ).心房レベルでの restriction の程度
側肺動脈絞扼術を選択する.
を反映する.Restricitive ASD の場合,正常サイズの心
陰影および passive congestion を認めるが,肺疾患と誤
③心臓カテーテル検査
診され診断遅れにつながることがある.non restricitive
心臓カテーテルは原則として intervention を目的とし
ASD であれば active congestion および心拡大を認める.
た 場 合 か,bi-directional Glenn(BDG) 手 術 あ る い は
上行大動脈陰影欠損,右房の突出を認める
199)
.
④血液検査
Fontan 型手術前の血行動態評価に際して行われる(クラ
スⅠ).Intervention には BAS や PDA へのステント留置,
BT シャントや RV-PA conduit の狭窄解除,大動脈弓再狭
血漿 BNP は心不全の指標として用いられる有用な検
窄の解除がある.BDG 手術前評価としては肺動脈圧,
査法で小児でも汎用されている.本症候群でも房室弁逆
肺毛細血管楔入圧,右心室圧,上行および下行大動脈圧,
流の程度や心負荷・リスク等を予測する重要な因子とし
肺動脈の解剖,適切な心房間交通,新大動脈弓狭窄,房
て頻用されるようになっている(クラスⅡ a).
室弁機能,右室機能,上大静脈の解剖が評価される.
4
1168
という面をもつため,治療選択のための検査の多くは前
治療選択のための検査(図 39)
Fontan 型手術完成前の評価としては肺動脈圧,肺静脈楔
入圧,右心室圧,上行および下行大動脈圧,肺動脈の解
原則としてすべての症例が手術適応である.
剖,大動脈弓の解剖,静脈−静脈シャントや体肺側副血
刻々と変化する血行動態・心機能を把握し即対応する
管が評価される 199).
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
表 8 心房内臓錯位症候群の合併心奇形
④血液検査
血漿 BNP を 1 つのガイドとして心不全治療を行うこ
ともある(クラスⅡ a)
18 無脾・多脾症候群(心房内臓
錯位症候群)
解剖・病態生理
1
無脾・多脾症候群はそれぞれ脾臓のないもの,複数の
脾臓を有するものに複合心奇形や内臓錯位を合併し,症
候群を形成することから派生した名称であるが,その本
質はともに臓器の左右分化障害であり,心房内臓錯位症
候群という幅広いスペクトラムをもつ 1 群として扱われ
る 200).臨床的には,特殊な脾臓形態が左右いずれかの
相同に一致することが多く,無脾症候群は右側相同を,
多脾症候群は左側相同を意味する心房内臓錯位症候群の
サブグループの名称として用いている 201).
臨床症状は ⑴ 複合心奇形(含不整脈) ⑵易感染性 心奇形
両側上大静脈
下大静脈欠損
右側大静脈
大静脈
大動脈 / 下大静脈並走
単心房
心房
一次口欠損
二次口欠損
単心室
心室
心室中隔欠損
共通房室弁
房室弁
房室弁逆流
肺動脈弁狭窄
半月弁
肺動脈弁閉鎖
(肺高血圧)
大血管の位置 大血管転位*
両大血管右室起始
大血管の起始
両大血管左室起始
総肺静脈還流異常
肺静脈
部分肺静脈還流異常
動脈管
動脈管開存
体静脈
右側相同 左側相同
(%)
(%)
40
62
0
52
49
14
91
5
69
62
31
24
0
10
91
38
3
10
97
81
49
33
57
33
34
10
9
43
57
33
54
33
3
0
80
5
3
5
37
43
*
大動脈が肺動脈の前方に位置することだけを意味する
⑶消化管奇形により決定され,予後において最も大きな
比重を占めるのが心奇形であり,出生直後より綿密な治
療計画を立案することが重要である.多くはパターン化
①身体所見
した心奇形を伴い,心房形態から右側相同(無脾)と左
無脾症候群では多くが出生直後からのチアノーゼで心
側相同(多脾)に分類すると表 8 のような特徴を有す
疾患の存在に気づかれる.肺静脈狭窄(pulmonary ve-
る
200)
.刺激伝導系の走行異常や血行動態負荷に基づく
不整脈を伴うこともある.洞機能不全や房室ブロックは
左側相同に認めることが多い.上室性頻拍や心房頻拍を
認めることもある.また無脾例については化膿性髄膜炎
nous obstruction:PVO)に伴う呼吸障害や重度共通房
室弁逆流による心不全症状を呈する例もある.
②心エコー
や敗血症等が多発することが知られている 202).さらに
心血管系および腹部臓器については超音波検査で正確
予後を左右する消化管異常として腸回転異常,胃軸捻転
に診断することが可能であり(クラスⅠ),合併しやす
症,食道裂孔ヘルニアや短膵,胆道閉鎖を合併する場合
い臓器異常をすべて念頭に置いた上で,見逃しがないよ
もある.
うに詳細な検索をすることが重要である.心臓超音波検
2
診断のための検査(図 40)
臨床的には先天性心疾患の精査の途上で特徴的な複合
形態から心房内臓錯位症候群が疑われ,診断に至ること
査では表に挙げた所見を,腹部超音波検査では対称肝・
特殊な脾臓形態(ない,分葉異常等)を認める.
③胸腹部 X 線
が多い.無脾症候群では単心房,単心室,共通房室弁,
腹部 X 線では,胃泡の位置や対称肝等から心房内臓錯
肺動脈閉鎖/狭窄,総肺静脈還流異常等が複合化して存
位症を疑う契機になる(クラスⅠ).また,胸部 X 線写
在する頻度が高く,ほとんどが出生直後のチアノーゼが
真正面像で気管分岐部から上葉枝を分枝するまでの距離
診断契機となる.一方多脾症候群では複合化例も見られ
に左右差がない場合,相同が疑われる.葉間胸水が認め
るが単独で存在する心奇形も少なくなく,乳児期の心雑
られる場合には左右の肺の分葉を確認する.左側相同で
音や心不全が診断契機となる場合が多い.
は両側二分葉で,右側相同では両側三分葉である(クラ
スⅠ).さらに,側面像で左側相同では肺動脈が,気管・
気管支より上後側に位置するのに対し,右側相同では肺
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1169
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
動脈が気管支より前下方に位置する 203).心臓カテーテ
ル検査で造影するとなお鮮明となる.
⑥血液検査
無脾に認めるとされる末梢血の Howell-Jolly 小体は正
④ CT,MRI
常新生児にも認められるため,早期診断的意義は小さい
16 列以上のマルチスライス CT では造影 3DCT により
超音波検査で判断の難しい体肺静脈・肺動脈等の形態・
位置の情報を得ることが可能である.また,腹部臓器の
(クラスⅡ a).
⑦手術・剖検時の心耳形態の確認
異常についても優れた診断能を発揮する必須の検査とい
心房形態の決定は一般に心耳形態によってなされ
える(クラスⅠ)200).MRI も同程度の診断能を有するが,
る 204).経食道エコーや MRI,CT にても診断可能とされ
撮像時間が長い上,体動により解像度が低下するため,
るが,臨床上は手術時に確認するのが一般的で,この形
新生児~乳児期の検査としては不向きである(クラスⅡ
態をもって確定診断とする考えもある.ただし篠原らに
a).
よると心房内臓錯位症候群でも心房が左右に分化してい
る例も存在する(65 例中 6 例)200).
⑤シンチグラフィ
熱処理赤血球シンチグラフィにて脾臓の形態診断が可
能であるが,コスト・労力のわりに得られる情報は限定
されており実用的ではない.
3
病態把握のための検査(図 40)
① SpO2
肺血流の過不足や肺静脈狭窄(PVO)の有無等評価
図 40 無 脾・多脾症候群(心房内臓錯位症候群)の診断,病
態把握,治療計画のための検査
新生児におけるチアノーゼ・心雑音・呼吸障害等の異常
心エコー・胸部 X 線
機能的単心室
(両 心 室 修 復
困難と思われ
る例)
内臓錯位症候群(疑い)
根治術可能な
先天性心疾患
(両 心 室 修 復
可能な例)
に参考となる検査で,管理上頻用される(クラスⅠ).
②心エコー
心室機能・房室弁逆流・動脈管開存程度・肺動脈径・
左右心室バランス等の評価に有用な検査である(クラス
Ⅰ).また,PVO の評価にも有用で,2D にて狭い共通
肺静脈口や拡大した共通肺静脈腔を認め,Pulse wave
doppler にて肺静脈血流パターンが連続性で流速が増大
していれば PVO が疑われる.ただし,肺血流量や肺動
心エコー・SpO2
肺血流動脈管依存性
(−)
肺血流動脈管依存性
(+)
脈圧にも依存するため,身体所見や X 線所見等と総合し
て判断する必要がある.
③胸部 X 線
PGE1
肺血流の過不足・PVO に伴う静脈性肺うっ血の評価
心臓カテーテル検査
シャント手術
に有用である.
肺血流増加
肺血流減少
肺動脈絞扼術
身体所見・バイタルサイン・心エコー
房室弁逆流
PVO リスク・疑い
房室弁形成手術
総肺静脈還流異常修復 /PVO 解除手術
心臓カテーテル検査 CT
④心電図
右側相同では左右両側に洞結節が存在し,左側相同で
は洞結節の低形成を認めるため,それぞれに対応した P
波の形態を認めるが,いずれにおいても 2 種類以上の P
波が観察されることが多い 205),206).また,QRS 波形も同
一症例に 2 種類存在することもある.
⑤心臓カテーテル検査
詳細な解剖学的情報,および心機能・血行動態評価の
心臓カテーテル検査
(右心バイパス手術適応評価,3 か月以降)
1170
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
ためには必須の検査である(クラスⅠ).特に肺動脈・
主要体肺側副血管の同定や肺静脈の還流部位と PVO の
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
評価に有用である(クラスⅠ).造影にて肺静脈の還流
エコーでは診断に限界のある大血管・肺血管の解剖学的・
部位を明らかにし,肺静脈還流路での引抜き圧を測定す
血行動態的情報がより正確に得られ,初期診断および初
ることで圧較差の有無・部位を同定できる.また,肺動
回姑息術式決定(シャント手術を行うのか,肺動脈絞扼
脈造影にて肺血管床の発育程度を,心室造影から房室弁
術を行うのか,むしろ PVO 解除を行うべきあるいは併
逆流の客観的評価を,肺体血流比や心拍出量を算出する
ことで心不全の評価にも有用である.
用するべきなのか等)に重要な役割を果たす検査である
(クラスⅠ).
⑥血液検査
③ CT,MRI
血漿 BNP は心不全の指標として用いられる有用な検
肺静脈の走行・還流部位の評価に有用.また肺動脈形
査法で小児でも汎用されている.本症候群でも房室弁逆
態,特に pulmonary CoA の評価に有用である(クラス
流の程度や心負荷・リスク等を予測する重要な因子とな
Ⅰ).
ることから行われるようになってきた(クラスⅡ a).
同様の検査項目に血漿 hANP や血清 NTproBNP がある
④血液検査
が,hANP は感度が BNP に劣り,NTproBNP は 0 ~ 3 歳
血漿 BNP を 1 つのガイドとして心不全治療を行うこ
程度まで BNP に比し高くなることが知られており,有
ともある(クラスⅡ a).
用性には劣るため通常の検査で行われる機会は少ない
(クラスⅡ b).
4
治療選択のための検査(図 40)
⑤心電図・電気生理学的検査
臨床症状を伴う不整脈を認めた場合はもちろん,右心
バイパス術後の血行動態に悪影響を及ぼす頻脈性不整脈
治療は⑴複合心奇形(含不整脈) ⑵易感染性 ⑶消
を認めた場合には薬物治療やカテーテル焼灼術の適応と
化管奇形に対して行われるが,本症候群の診断契機・予
なる(クラスⅡ a).その際は 24 時間心電図や EPS(電
後は複合心奇形によることが圧倒的に多く,⑴複合心奇
気生理学検査)を積極的に行う.
形の治療計画が柱で,⑵,⑶については適切なタイミン
グで介入することになる.臨床的には心房内臓錯位症候
群という確定診断を侵襲や負担の大きい検査法を用いて
まで早期に下す必要はなく,定型的な複合心奇形パター
Ⅵ
術後の検査計画
ンから疑いをもつだけで十分である.疑い例については
生じうる合併症を念頭に置き経過観察していき,手術の
機会があれば,肉眼的に心房形態から右側相同か左側相
同を判断し,心房内臓錯位症候群の診断を確認する.現
1
姑息手術
(palliative surgery)
実的には以下のように検査を進めることになる.
①心・腹部エコー
姑息手術とは,根治手術(解剖学的根治あるいは機能
的根治)に至るまでの準備手術であるが,至らない可能
心エコーは初診より最も汎用される検査である(クラ
性が高くても症状軽減のために行うこともある.通常,
スⅠ).初期診断,動脈管径(→ PGE1 製剤投与量調節),
新生児,乳児期早期に行われることが多い.左心低形成
治療計画途上における心室機能(心不全治療適応や効果
症候群の大動脈形成術(Norwood 手術)や無脾症候群
判定),房室弁逆流(→房室弁介入適応),肺静脈部位,
に合併した総肺静脈還流異常の修復等も姑息手術である
流速(→ PVO の推定)等に有用で,繰り返し施行可能
が,ここでは,代表的な体肺動脈短絡術と肺動脈絞扼術
である.身体所見や vital sign,胸部 X 線写真等と照合し
について述べる.いずれの手術も肺血流量のコントロー
結果を解釈する.初期に一度は腹部エコーも施行し,脾
ルが目的である.Glenn 手術に関しては,右心バイパス
臓をはじめとする腹部臓器の状態を確認しておく必要が
手術の項を参照されたい.
ある.
体肺動脈短絡術:低肺血流による低酸素血症の改善を
②心臓カテーテル検査
治療計画上の要所で行われる侵襲的な検査である.心
目的として行う.肺動脈の発育不良を伴う Fallot 四徴症
や動脈管依存性のチアノーゼ疾患等が主な適応疾患とな
る.肺動脈形成を同時に行うこともある.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1171
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
肺動脈絞扼術:高肺血流による呼吸不全・心不全の軽
いは幼少児の場合は充分な鎮静が必要となること,また,
減や肺血管病変の進行を防ぐ目的で行う.単心室等一期
心臓カテーテル検査の場合は,ある程度の侵襲性に伴う
的に根治手術ができない肺高血圧を伴う先天性心疾患が
リスクがあることを考慮する必要がある.末梢性の肺動
適応となる.
脈狭窄による肺血流不均衡の評価,肺動脈の形態評価が
1
診断・病態把握のための検査
①身体所見
必要な場合は,3DCT や心臓カテーテル検査を行う(ク
ラスⅡ a).
2
治療選択のための検査
姑息手術後の経過観察は乳児期を通して行われること
この場合,選択は根治手術を行うのか,さらに姑息手
が多く,哺乳量,体重増加,チアノーゼの程度は重要な
術を追加するのか,このままの状態で成長を待って再評
目安である.幼児期であれば,活動時の息切れやチアノ
価するのか,という 3 つに分かれることが多い.上記検
ーゼ増強の有無等に注意する.いずれの手術も体が成長
査のなかでは,特に心エコー,3DCT や心臓カテーテル
すると低酸素状態に傾くので,次の手術のタイミングは
検査が中心となる(クラスⅠ).心内構造,心機能診断
重要である.聴診では,体肺動脈短絡術後の場合,連続
に MRI が有用である場合もある(クラスⅡ b).また,
性の短絡血流雑音の聴取が重要である.肺動脈絞扼術後
心臓カテーテル検査にあわせてバルーン血管形成や体肺
の場合は,収縮期雑音が聴取されるが,診断的価値には
側副血管のコイル塞栓等のカテーテル治療を行うことも
乏しい.
ある.
②血液検査
2
二心室修復術
チアノーゼを伴う疾患が多いので,多血症,貧血の有
無.内服薬によってはその結果と副作用のチェックは重
1 )
こ こで の二心 室修復 術後 とは,姑 息 手術( Ⅵ◯
,
要である.凝固機能,肝機能,腎機能検査を行う.心負
Rastelli 型手術(Ⅵ◯3 ),大血管転換手術(Ⅵ◯4 ),Fon-
荷の指標として BNP や hANP が有用である.
tan 型手術(Ⅵ◯5 )を除いた心内修復術で,疾患として
③胸部 X 線・心電図
体肺動脈短絡術後の場合,無気肺や左右の肺血管陰影
左右心室負荷(容量負荷,圧負荷)の評価,不整脈およ
の比較,心拡大のチェックが重要である.肺動脈絞扼術
び他臓器障害の有無等が重要である.
の場合,絞扼部が末梢側にずれて片側の肺動脈狭窄が進
行することがあるので,左右肺野の血管陰影の比較は重
要であり,忘れてはならない検査の 1 つである(クラス
Ⅰ).心電図にて不整脈のチェックを行う.
④心エコー
1
診断・病態把握のための検査
①身体所見
修復部位は各疾患によって違うが,短絡閉鎖,狭窄解
除,弁逆流消失が完全に達成されれば,心雑音は消失す
体肺動脈短絡術後は,心機能,肺動脈の発育,短絡血
るが,修復部位近傍での多少の乱流の存在により心雑音
流,心室容量負荷による房室弁逆流等の評価を行うため
が残存することも多い.有意の心負荷所見がなければ心
必須の検査である(クラスⅠ).末梢性の肺動脈狭窄の
雑音の残存は問題とならない.術後急性期以降では,チ
評価は難しい.また,年長児になると肺動脈径や短絡血
アノーゼ,呼吸苦等術前に見られた心負荷所見は消失す
流の評価は難しい.肺動脈絞扼術後は,肺動脈血流速度
るので,遺残症状があれば,その原因を追究する必要が
から術後の効果を判定する.また,大動脈弁下狭窄の出
ある.
現に注意する.
1172
1 からⅤ◯
10 が当てはまる.検査と
は主として各論でのⅤ◯
ポイントとしては,修復部位の評価の他に左右心室機能,
②血液検査
⑤肺血流シンチグラフィ・3DCT・心臓カテーテル
検査
二心室修復術後には,人工心肺の影響,輸血の有無,
前述の検査にて,不確定要素が残り,治療上さらなる
要である.貧血の有無,凝固機能,肝機能,腎機能検査
判断が必要な場合に考慮する.これらの検査は被爆ある
を行うことが多い.また,心負荷の指標として BNP,
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
術後内服薬の効果,副作用等様々な状態のチェックが必
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
hANP が検査されるようになってきた(クラスⅡ a).
③胸部 X 線・心電図
狭窄が進行する.また,弁付導管を使用することが多い
こと等から,肺動脈弁狭窄の進行や肺動脈弁閉鎖不全に
よる右心不全にも注意が必要である.また,遠隔期では
胸部 X 線検査では,心拡大の有無,肺換気状態(無気
導管内の血栓性内膜肥厚や石灰化等による狭窄進行に特
肺の有無,横隔神経麻痺の有無等),肺うっ血の有無等
に留意する必要がある.大血管転位の場合,もともとの
の判断を行う.心電図では,主として不整脈のチェック
心室中隔欠損部や内導管部の狭窄(左室流出路狭窄)の
を行う.房室ブロック等の徐脈性不整脈や上室性頻拍に
進行にも注意が必要である.
注意する.また,心室中隔欠損閉鎖後には右脚ブロック
になっていることもある.Fallot 四徴症術後等で QRS が
150ms 以上の場合には,右心不全に注意する.
④心エコー
1
診断・病態把握のための検査
①身体所見
外導管内の乱流により,通常は収縮期心雑音を聴取す
二心室修復術後の心負荷残存の評価には心エコーは必
る.拡張期雑音を聴取する場合は,肺動脈弁閉鎖不全(肺
須である(クラスⅠ).可能であれば術直後に経食道エ
高血圧がなければ低い音)か大動脈弁逆流(高い音)を
コー検査が望ましい.ICU での心タンポナーデや心機能
疑 う. 乳 児 期( 総 動 脈 幹 術 後 等 ) や 思 春 期( そ の 他
低下の有無のチェック,退院時の残存病変の有無や心機
Rastelli 型手術)のように体格が急速に大きくなる時期
能の評価は必須である.残存病変とは,短絡残存,弁狭
には,右室圧負荷が進行するので注意深い観察が必要で
窄・逆流の残存,肺動脈等の狭窄残存等である.
ある.
⑤心臓カテーテル検査等
②血液検査
心エコー検査にて,良好な修復状態と判断されれば,
二心室修復術後と比べると,利尿薬,ACE 阻害薬,
心臓カテーテル検査は必要ない.肺高血圧の残存が疑わ
抗不整脈薬,抗凝固薬等の内服の機会が多い可能性もあ
れる場合等は,内科的治療の効果判断や治療経過観察の
り,凝固機能,貧血の有無,肝機能,腎機能検査等検査
ためには,心臓カテーテル検査は必要である(クラスⅠ).
は随時行う.内服薬によってはその他の副作用のチェッ
また末梢性の肺動脈狭窄が疑われる場合には,肺血流シ
ク も 必 要 で あ る. ま た, 心 負 荷 の 指 標 と し て BNP.
ンチや MDCT,心臓カテーテル検査(カテーテル治療
hANP の測定が行われる(クラスⅡ a).
を伴う)を行うことがある(クラスⅡ a).
2
治療選択のための検査
③胸部 X 線・心電図
胸部 X 線検査では,二心室修復と同様に心拡大の有
残存病変により有意の心負荷が残存している場合には
無,肺換気状態(無気肺の有無,横隔神経麻痺の有無等),
再手術の必要となることが多い.その場合には,心エコ
肺うっ血の有無等の判断を行う.外導管の石灰化の評価
ー等での評価のみで行うこともあるが,心臓カテーテル
は側面像が有用で,カテーテル検査時の動画ではよりわ
検査を行ってから判断する場合が多い(クラスⅠ).肺
かりやすい.心電図では,主として不整脈のチェックを
高血圧の残存で内科的治療の薬剤選択,効果判定におい
行う.房室ブロック等の徐脈性不整脈や上室性頻拍に注
ては,心エコーで右室圧負荷により肺高血圧を評価する
意する.また,右脚ブロックになっていることが多い.
か,心臓カテーテル検査で直接肺動脈圧を測定して評価
する.
3
Rastelli 型手術
④心エコー(クラスⅠ)
右室流出路狭窄の評価:導管内の血流速度の測定は年
長児になると困難となることが多い.また,ドップラー
による肺動脈と右室の圧較差の評価は過大評価しやす
Rastelli 型 手 術 と は, 外 導 管( 心 室 と 肺 動 脈 間 の
い.三尖弁逆流血流速度から右室圧を推定できれば,右
conduit)を使用した二心室治療 207)で,対象疾患として
室圧負荷の経過観察は可能である.三尖弁逆流速度が測
は心室中隔欠損と肺動脈狭窄を伴った大血管転位,総動
定できない場合には,収縮期の心室中隔の湾曲から右室
脈幹遺残,肺動脈弁閉鎖を伴った心室中隔欠損等がある.
圧 / 左室圧比を推定する.
外導管は成長しないので体格が大きくなると右室流出路
左室流出路狭窄:内導管を使った場合等に大動脈弁下
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1173
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
部の狭窄が進行することがあるが,左室長軸で形態,血
充分駆出できることが条件となるため,左室圧が低下し
流速度から評価する.
た症例には本術式は適応できない.冠動脈の移植後に生
心機能:弁逆流等により,心機能が低下することがあ
じる肺動脈弁上部狭窄の予防のため細かい改良が施さ
り,定期的に経過観察が必要である.末梢性肺動脈狭窄
れ,現在では新生児大血管転位の基本術式となり,一部
の評価は難しい.
の両大血管右室起始(Taussig-Bing 奇形)や心房血流転
⑤肺血流シンチグラフィ・3DCT・心臓カテーテル
検査
換術と併用して修正大血管転位に対しても応用されてい
る 210),211).
術後遠隔期心機能は心房血流転換術に比べて良好で,
術後の経過観察に有用な検査である(クラスⅡ a).
不整脈合併も少数である.主な術後合併症として肺動脈
肺血流シンチ:肺動脈分岐部狭窄等の末梢性肺動脈狭
弁上部狭窄,大動脈弁上部狭窄,大動脈弁閉鎖不全,お
窄の評価に有用で,治療前後で評価することが多い.
よび冠循環不全が問題となる.肺動脈弁上部狭窄は最も
3DCT:術後の外導管の走行や肺動脈走行の評価に有
高率(5 ~ 30%)で,血管形成術を要する症例もあるが,
用である.
冠動脈移植法の改良により新たな発生は減少してきた.
心臓カテーテル検査:術後 6 か月から 1 年で術後の評
大動脈弁上部狭窄は肺動脈弁上部狭窄に比べて明らかに
価として行うことが多い.
まれ(< 5%)であるが,もともと肺動脈の前方に位置
2
治療選択のための検査
していた大動脈が後方(背側)に変位するため大動脈弓
の形態は生理的より急峻となり,大動脈縮窄様血行動態
外科的治療選択としては,右室流出路狭窄と左室流出
を呈する例がある.術後大動脈弁閉鎖不全の頻度は高率
路狭窄の解除が必要となることがある.心エコーで心室
だが,その程度は軽微な症例が多い.一方,両大血管右
圧負荷の経過観察を行い,圧負荷の進行があれば心臓カ
室起始ではもともとの拡張した肺動脈弁が本術式後の児
テーテル検査を行い,負荷の評価を行う(クラスⅡ a).
の発育に対しても異常な拡張を示す例があり大動脈弁閉
造影検査では外導管狭窄部位を明瞭に示せないこともあ
鎖不全に留意する.冠循環不全に関しては,周術期の異
り,術前に外導管や肺動脈の走行を評価しておくために
常(=心筋梗塞)を除くと術後遠隔期の虚血心と関連死
3DCT が有用で頻用される(クラスⅠ).
亡は本手術後退院患者の 1 ~ 2%と報告される 210),211).
4
大血管転換術:
TGA,cTGA,DORV
術後遠隔期の諸問題に対する治療として,狭窄病変に
対しては外科的介入(一部にカテーテル治療)が,新大
動脈弁閉鎖不全の進行例には人工弁置換術が,冠動脈不
全による虚血心症例には冠動脈バイパス手術も選択肢と
大血管転位は,右室の静脈血が大動脈(体循環)へ,
なりうる.また,不整脈例には薬物治療とともにカテー
左室の酸素化動脈血が肺動脈に循環する構築異常であ
テルによる電気焼妁術の適応が考慮される 210),211).
る.過去 40 年にわたり,体静脈血を肺循環に還流させ
る生理的修復術である心房血流転換術(Mustard 手術 /
〈術後遠隔期に特に留意する問題点〉
Senning 手術)が施行され,中長期的手術成績が蓄積さ
1)右室流出路狭窄が増悪する可能性
れた.しかし,心房血流転換術遠隔期には不整脈,突然
2)新大動脈弁閉鎖不全が増悪する可能性
死,原因不明死亡が高率で,右室(体循環心室)機能不
3)冠動脈不全(虚血性心臓病)の可能性
全と三尖弁(体循環房室弁)閉鎖不全合併が多いことか
4)不整脈発症の可能性
ら,右室を体循環心室とすることに疑問が持たれた.こ
れらの心房血流転換術に対して,1975 年 Jetene 氏は解
剖学的修復法として大血管転換術を発表した 208),209).つ
まり,大動脈と肺動脈を各々弁上部で切離し,それぞれ
の遠位部を肺動脈弁と大動脈弁に入れ替え再吻合するこ
病態把握および治療選択のための
検査
①聴診
とで新大動脈根部と新肺動脈根部を再構築し,大動脈洞
右室流出路狭窄の進行に伴い駆出性収縮期雑音が,大
から冠動脈をくりぬき肺動脈(新大動脈)に移植するこ
動脈弁閉鎖不全が進行すると拡張期雑音が聴取される.
とで解剖学的修復法が可能となった(図 41).解剖学的
左室は大血管転換術直後から肺循環より高圧な体循環を
1174
1
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
図 41 大血管転換術(Jatene 手術)
TGA では Ao が
MPAの前方に位置する
Ao と MPA を切断し,
冠動脈をくりぬく
AO
正面図
AO
PA
Ica
rca
Ica
rca
AO
側面図
Ica
Ica
rca
AO
AO
PA
PA
rca
AO
PA
PA
A
Ao を P 弁断端と,PA はA弁断端に吻合し,
冠動脈は肺動脈に吻合
B
PA
C
rca
Ica
Ica
rca
The science and practice of Pediatric Cardiology, 2nd edition by A Garson Jr, JT Bricker, DJ Fisher, SR Neish
WILLIAMS & WILKINS 1998, Chapter 64: Transposition of the great arteries pp 1498 Figure 64.31 より改変
②胸部 X 線
心拡大,心大血管の形態評価,肺血流量の増減,胸水
の有無等から病態評価を行う(クラスⅡ a).
③心エコー
左室機能(LVDd,LVDs,LVEF,LVFS),左室圧負
荷の程度推測(LVPW/IVS 肥厚の有無,ドップラー法に
よる大動脈弓の血流速),大動脈の拡張・狭窄の程度,
査である電気生理学的検査の対象となる(クラスⅡ a).
⑤血液検査
血漿 BNP 値は,総合的な心機能指標として有用と考
えられる.血清 NT-proBNP 値は我が国では十分なデー
タ蓄積がなく,特に腎機能が未成熟な低年齢(3 歳未満)
や腎機能障害患者では判定に注意を要する.
⑥心臓カテーテル検査
大動脈弁閉鎖不全の程度(大動脈弁輪径,ドップラー法
形態異常と機能評価を行う.心拍出量算出(通常は
による逆流の評価),右室圧負荷の程度推測(ドップラ
Fick 法),心室駆出率 EF(%),房室弁・半月弁機能,
ー法による主肺動脈の血流速および三尖弁逆流の流速か
冠動脈造影(移植後の選択的造影は困難なことがある),
ら推定)等の結果をもとに侵襲的検査である心臓カテー
肺動脈および大動脈の弁上部狭窄の有無,大動脈弁閉鎖
テル検査の適応の目安とする.このため,心エコーは必
不全の程度,内胸動脈造影(冠動脈バイパス術を考慮す
須の検査である(クラスⅠ).
る場合に追加)を目的とする.肺動脈弁上部狭窄解除術,
④心電図・運動負荷心電図・Holter 心電図・電気
生理学的検査(EPS)
基本的な評価として調律,心拍数,房室伝導,心室肥大
大動脈弁置換等の外科治療が前提となる症例では本検査
が必要と考えられる(クラスⅠ).
⑦ 3DCT,MRI
の有無を検討する.虚血心としての評価は特に年長児以
CT および MRI は,心臓カテーテル検査より低侵襲性
上で運動負荷試験が可能な症例に施行される.詳細な不
検査法として,末梢肺動脈および大動脈・大動脈弓の形
整脈評価が必要な場合は Holter 心電図,さらに侵襲的検
態に有用で,後者は特に半月弁閉鎖不全の程度評価にも
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1175
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
有用な検査として施行される(クラスⅡ a).
5
右心バイパス手術
(Fontan 型手術,total
cavopulmonary
connection:TCPC)
“Fontan 循環”は肺循環と体循環は直列で,総肺血管抵
抗の低値(通常,3Wodd 単位未満)は必須条件である.
仮に,正常循環で左房から左室に 1 の血液量が流入する
と,左室から体循環に 1 だけ駆出され,全身から体静脈
に 1 の血液量が右房に還流し,右室を介して肺循環に 1
駆出され,再び左房に 1 だけ還流する.このとき,正常
循環の心臓内には 4(心房 2 +心室 2)の血液量が存在
することになる.一方,典型的な“Fontan 循環”では,
①右心バイパス手術とは
機能的単心房から機能的単心室に 1 流入した血液は,体
左右両心室をそれぞれ体循環または肺循環に分担させ
循環に 1 駆出され,体静脈血は直接肺循環に還流して 1
られないと判断される心血管構築異常は機能的単心室と
だけ機能的単心房に戻るため,心臓内には 2(心房 1 +
総称され,具体的には内臓心房錯位症候群に合併する単
心室 1)の血液量ですむことになる.実際,房室弁逆流
心室,三尖弁閉鎖,肺動脈閉鎖兼正常心室中隔,左右い
がなく心室機能が良好な典型的な“Fontan 循環”患者で
ずれかの心室が著しく低形成な房室中隔欠損,左心低形
は,心臓は正常心よりもコンパクトで,胸部 X 線写真上
成症候群等がある.機能的単心室の治療戦略は,体循環
の CTR が 40%未満の症例もある.
の成立を一義的として機能的単心室を体心室として利用
“Fontan 循環”の肺循環は右心室の拍動がないために
する.肺循環の駆動ポンプである(機能的)右心室を介
非拍動流といわれるが,生理的肺循環とは異なった肺動
さずに,大静脈血を肺動脈に還流させるため右心バイパ
脈圧の変動が観察される.この肺循環系の駆動力として
ス手術と称される.上大静脈のみが肺動脈と端側吻合さ
は,⑴心臓の拡張期に生じる吸引力(心臓全体のコンプ
れる両方向性 Glenn 手術と,さらに下大静脈血も機能
ライアンス),⑵横隔膜による胸腔内と頭部 / 腹腔の内圧
的右室を介することなく肺動脈に還流させる Fontan 型
の差,および⑶中心静脈圧が関与すると考えられる.実
手術があり,後者は本疾患群の機能的根治術と称される.
際,“Fontan 循環”の維持には良好な心臓の収縮能 / 拡
張能,良好な横隔膜機能,および胸水・腹水を生じない
② Fontan 型手術の変遷(図 42)
範囲に高い中心静脈圧(8 ~ 15mmHg)が必要である.
1971 年に Fontan212)がはじめて右心バイパス手術を
中心静脈圧の異常上昇は浮腫・胸水・腹水となり,逆に
発表して以来,1980 年後半までは上下大静脈血を右房
中心静脈圧が低下する脱水・失血状態では肺循環の駆動
/ 右心耳を介して肺動脈に還流させる心房肺動脈吻合法
(atriopulmonary connection:APC 法)が主であったが,
手術成績はおもわしくなかった 213),214).1988 年に total
cavopulmonary connection(TCPC)法
215)
が発表され,
力低下を来たし,心臓前負荷の低下から“Fontan 循環”
破綻につながる.
術後遠隔期の留意点として,血行動態異常(心室機能
障害,房室弁・半月弁機能障害,肺血管抵抗上昇等によ
前述の両方向性 Glenn 手術に加え,下大静脈血を心房内
トンネル(心膜 / 人工物のパッチ)経由で肺動脈に還流
させる心房側壁トンネル法(TCPC-lateral tunnel 法)と,
下大静脈血を人工血管で心臓を迂回させ肺動脈に還流さ
せる人工導管法(TCPC - extracardiac conduit 法)216)
図 42 Fontan 型手術の歴史 / 種類
APC:心房肺動脈吻合
1970 年~ 1980 年代後半
心耳−肺動脈吻合:右心房血を肺循環へ
へと発展した.APC 法に比較し,ともに手術成績は著
しく向上し,後者は肺循環の駆動力となる大静脈血流の
エネルギー損失が最も少ないとされ,現在では Fontan
型手術の標準術式となっている 210),214).
③ Fontan 循環の特徴
Fontan 型手術後の循環は“Fontan 循環”と総称される.
生理的循環では,肺循環と体循環はそれぞれ右室または
左室が動力源となり両循環は並列関係といえる.ところ
が,機能的右心室を有さない右心バイパス手術後の
1176
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
Total cavopulmonary connection
ラテラル・トンネル法(TCPC-LT)
1988 年~
SVC- 肺動脈吻合 +IVC −心房側壁を介し
て肺循環へ
Total cavopulmonary connection
心外導管法(TCPC-EC)1990 年~
SVC- 肺動脈吻合 +IVC −人工血管を介し
て肺循環へ
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
る中心静脈圧の異常上昇,肺内または心房内短絡による
動脈側副血管の有無(逆行性下行大動脈造影)等が症例
動脈血酸素飽和度の低下),潜在的(先天性)または心
ごとに検討される(クラスⅡ a).
臓負荷(異常な壁伸展刺激)によって獲得される不整脈
基質に起因する異常(洞機能異常,房室伝導障害,主に
④心エコー
上室性頻拍症),体静脈うっ血・肝うっ血・非拍動性の
心室機能(EF,FS),房室弁機能(主に閉鎖不全)の
肺循環等に由来すると考えられる凝固線溶系異常,心耳・
程度,大静脈系(主に下大静脈)拡張の程度や呼吸性の
肺動脈弁スタンプ(手術により主肺動脈幹が切断・縫縮
径変動の程度は循環把握に有用な評価項目となる.また,
されたバルサルバ洞)内の血液滞留による深部静脈血栓
心臓および大血管内血栓の有無を検討するために必須の
/肺血栓塞栓症,
およびタンパク漏出性胃腸症等がある.
検査である(クラスⅠ).なお,右室性単心室の EF は
以上が原因となった“Fontan 循環”の破綻もしくはそれ
40 ~ 50 %に留まることがあるが,機能的には支障がな
が強く予見される場合,APC 法
217)
と TCPC-lateral tunnel
法の一部に TCPC − extracardiac conduit 法への転換が可
能な例があるが,一般的には“Fontan 循環”の外科再手
術は極めて困難なため内科的な循環不全治療が適応され
い.
⑤心 電図・運動負荷心電図・Holter 心電図・電気
生理学的検査(EPS)
る.
先天的にも後天的にも不整脈基質を獲得している / す
〈術後遠隔期の主な問題点〉
伝導,および不整脈の検討は重要であり,定期的な心電
1)主心室機能,房室弁機能
図検査の必要性は高い(クラスⅡ a).運動負荷心電図
2)肺血管抵抗の上昇
から得られる心拍応答や最大酸素消費量の測定も患者の
3)低酸素血症
日常管理に有用といわれる.また,“Fontan 循環”では
4)血栓塞栓症
頻拍発作時に容易に低心拍出に陥るため,必要に応じて
る本疾患群では,洞機能,P 波の形態とその変化,房室
5)不整脈
EPS により機序解明と,電気焼灼術等の治療適応を評価
6)タンパク漏出性胃腸症
する必要がある.
1
病態把握および治療選択のための
検査
①聴診
右室流出路狭窄の進行に伴い駆出性収縮期雑音が,大
動脈弁閉鎖不全が進行すると拡張期雑音が聴取される.
②胸部 X 線
⑥経皮酸素飽和度:SpO2
外来でも可能な非侵襲的検査法で,座位または立位で
測定する.臥位で測定値が改善する場合は心内・肺内の
右左短絡を疑う.
⑦血液検査
CBC により貧血,血小板数異常の有無を検討する.
血液生化学検査のうち,総タンパク量 / アルブミン量の
典型例の心陰影は小さく,CTR40 %以下の症例もあ
減少はタンパク漏出性胃腸症診断の契機となる(クラス
る.一方,50 %以上の心拡大を呈する症例では,心室
Ⅱ a).一般的な肝機能障害の指標として AST/ALT/T.bil
機能障害や房室弁機能障害等を念頭に心エコー等を追加
値等があるが,良好な“Fontan 循環”においても T.bil
する.胸水の有無にも留意する.
値の上昇(< 3mg/dL)は散見される.血漿 BNP 値は,
③心臓カテーテル検査
総 合 的 な 心 機 能 指 標 と し て 有 用 と 考 え ら れ,perfect
Fontan 例 で は 正 常 範 囲( < 20pg/mL) に あ り,100pg/
中心静脈圧,SaO2,Fick 法による心拍出量,肺血管
mL を超える例では心室機能,房室弁機能等の異常が想
抵抗値の算出,心室駆出率 EF(%),房室弁・半月弁機
定される.なお,proBNP 値は我が国では十分なデータ
能評価,冠循環の評価(上行大動脈造影,選択的冠動脈
蓄積がなく,特に腎機能が未成熟な低年齢(3 歳未満)
造影),肺動脈狭窄病変の有無,肺静脈還流障害の有無,
や腎機能障害患者における判定には注意を要する.
体静脈肺動脈吻合部狭窄の有無,心内(右左)短絡の有
無,肺内(右左)短絡の有無,体静脈・心房短絡(VV-shunt)
の有無(無名静脈造影,その他の静脈造影),大動脈肺
⑧ 凝固系検査
“Fontan 循 環 ” の 血 栓 性 素 因 と し て,proteinC,
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
1177
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008 年度合同研究班報告)
proteinS 系の異常(低下)が議論されている.凝固亢進
serum albumin(99mTc-HAS),ま た は 99mTchuman serum
の指標として,d-dimer 上昇,antithrombin
(Ⅲ)低値,第
albumin diethylenetriamine pentaacetic acid ( 99mTc-
Ⅹ因子上昇,TAT
(thrombin-antithrombin complex)上昇,
HAS-D)等の RI 標識アルブミンを静注し,消化管内腔
plasmin-α2-plasmin inhibitor complex(PIC)
[plasmin-
への蛋白漏出を直接証明する.
antiplasmin complex(PAP) に 同 じ ] 上 昇,thrombomodulin 低値,proteinC 活性低値等が指摘され,血管内
皮障害が根底にあると考えられる.なお,ビタミン K 依
検尿(特に蛋白尿)は腎機能のスクリーニング検査と
存性の proteinC,proteinS 系はワルファリン服用に大き
なる.
く影響される.抗凝固療法としてワルファリンを服用す
深部静脈血栓の画像診断には血栓シンチグラフィ,静
る患者には,適切な凝固能調節のため定期的な PT-INR
脈 造 影, 静 脈 エ コ ー( ク ラ ス Ⅱ a), 造 影 CT,MRV
測定(クラスⅠ)が必要で,血栓塞栓症が疑われる患者
(Magnetic Resonance Venography)等が推奨される 218).
に対しては d-dimer の測定が推奨される 218).
また,肺血栓塞栓症の診断には動脈血ガス分析,肺動脈
造影(クラスⅠ),経胸壁心エコー,造影 CT,MRA が
⑨ タンパク漏出性胃腸症
推奨され,肺シンチグラフィ(換気,血流)は特異性に
便中α-1- アンチトリプシンクリアランス試験(クラ
ス Ⅱ a), 放 射 性 核 医 学 検 査 に お い て は
1178
⑩ その他
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. III, 2009
99m
Tc-human
欠けるとの指摘がある.
先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
文 献
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