environment Update −海外環境関連情報誌− 第 10 号 Vol.2 No.4 (2000.11) CONTENTS WEEE&ROS/EEEの最新動向 WEEE&ROS/EEE を巡る動向 2 <関連資料> JBCE ポジションペーパー1:WEEE&ROS 指令(英文) JBCE ポジションペーパー 2:4 Key Issues of WEEE&ROS(英文) 環境に対する「ニューアプローチ」による法制化 8 16 18 日本機 械輸出組合 貿易と環境専門委員会 WEEE に関するコメント、WTO/TBT 委員会へ提出(和訳&英文) 24 添付資料(英文):WTO/TBT による通知文書(Notification) 26 モニタリング 欧州 米国 ・連載 欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑪ 28 ・連載 米国における環境関連動向 〜在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情 報⑦ 46 資料 欧州委員会企業総局第 2 次ドラフト EEE の環境に与える影響に関する欧州議会指令案(和訳) 54 環境・安全グループニュース 新刊のご案内 4 6 環境・安全グループ担当委員会活動状況 事務局便り 66 68 WEEE&ROS/EEEを巡る動向 環境・安全 G 9 月に入ってから今日にいたるまで EU における電気電子機器の環境規制を巡る動きは活発化して いる。 リサイクル関連の WEEE&ROS 指令(廃電気電子機器&物質規制)と環境適合設計関連の EEE 指令(電気電子機器の環境インパクト)について、最近(11 月 20 日)までの全体的な動きを当組合 ブラッセル事務所(JBCE)からの情報などをベースに一覧にまとめてみた(表 1) 。 I. WEEE&ROS 既報のとおり、去る 6 月 13 日の欧州委員会による WEEE 指令案と ROS 指令案の採択後、現在は 欧州議会と理事会で本格的な審議の前にそれぞれの関係者による議論が始まっている。両者の動き は次のとおりである。 欧州議会 1. 欧州業界団体のポジションペーパー 欧州 18 ヶ国をカバーする ORGALIME(欧州機械・電気・電子・金属加工工業連合会)は 9 月 5 日付 で WEEE と ROS 指令案に対するポジションペーパーを作成した。論点は、根拠法規(95 条で) 、対象範 囲(当初は大型家電に限定) 、生産者の定義(電子商取引も対象) 、回収(地方自治体が家庭小売業者か らの回収の中心に、費用負担も) 、分離処理(過剰な規定、現行 EU 法と規格で) 、再生/リサイクル目標 (値は非現実的、現実的・計算可能・累進的な目標を) 、historical waste(遡及法は認められず。適切な ファイナンシング゙あらば自主的取組みも) 、visible fee(認めるべき) 、ROS(完全なリスクアセスメント 必要、水平的指令取扱いを、代替物質の環境への影響研究が不十分、などで支持できず)である(本誌 前号参照) 。 また、EACEM(欧州民生用電子工業会)や EICTA(欧州情報通信技術工業会)など関係 業界もそれぞれポジションペーパー作成、EACEM の論点は historical waste に関連する製造者責任、費用 負担・visible fee、再生目標値、家庭からの回収の費用負担、根拠法規、分離処理の 6 点。 EICTA の論 点は historical waste に関連する費用負担、再生目標値と分離処理、根拠法規、電子商取引、ROS のリス クアセスメント、安全性と代替可能性など。いずれも ORGALIME の主張と概ね共通している個所が多い が、詳細はそれぞれホームページのポジションペーパー原文を参照されたい1。これ以外にもポジション ペーパーの作成・提出は、後述の公聴会での意見陳述したステークホルダーや、さらに、CECED(欧州 家電工業会) 、EBFRIP(欧州臭素系難燃剤産業委員会) 、AIE(欧州電機工業会) 、ELECTROLUX 社、NOKIA 等特定企業 11 社連名、リサイクル業者、在白アメリカ商工会議所などである。また、11 月 6 日には欧 州議会の「産業委員会」へもコメントを送付した。同委員会は本件を翌 7 日に論議するところ、都合に より次回(11 月 22、23 日)に延期された由。 1 (http://www.orgalime.org/)(http://www.eacem.be/)(http://www.ectel.org/Eicta/) JMC environment Update 2 Vol.2 No.4 (2000.11) WEEE&ROS・EEE を巡る動向 (表 1) 指令 時期 法案の現 在の位置 環境安全 G 作成 WEEE&ROS 指令 (廃電気電子機器&物質規制) EEE 指令 (電気電子機器の環境影響) 6/13 欧州委員会提案 ↓ 欧州議会第一読会、理事会 【政治プロセス】 9/27 欧州委員会企業総局第 2 次ドラフ ト提示 →第 3 次ドラフト【行政プロセス】 9 月以降 【欧州議会】 【理事会---議長;仏】 の動き ・ 9/5ORGALIME;ポジションペーパ ・10/10 環境相理事会 ー、他団体もその後適宜コメント提 〜 指令の一本化(175 条)、 出 議会の審議迅速化要請な どの意見もあり(←全体 ・ 9/18 JBCE;Florenz 議員 に大きな進展なし) (Rapporteur、環境委)会談 ・12/18,19 理事会まで「共 ・ 9/20Davies 議員主催 EEB ワークショップ 通の立場」まとめへ(← 期待ベース) ・10/19 公聴会 〜利害関係者意見陳述 ←JBCE;ポジションペーパー提出、 傍聴席から意見陳述 【企業総局】 ・9/7 欧州産業界との会合 (EACEM,EICTA,ORGALIME,ZVEI、etc.) 〜 産業界は会合を踏まえてポジショ ンペーパー作成 ・9/27 第 2 次ドラフト提示 〜 設計・製造上の規定を設計のみに変 更など ・10/5、23 欧州産業界との会合 〜 第3 回会合開催前には検討用資料を 事前配布 ・11/17 基本要求事項タスクフォース (欧州産業界で構成) ・ 11/6JBCE;産業委へポジションペー パー送付 ・11/22 NGO を含めたワークショップ ←JBCE;AEA と共に出席予定 ・ 11/13JBCE;議員用(4 key issues) 作成 ・11/14,15 主要議員に個別説明 ・以後も主要議員への説明予定 ・ Florenz 意見まとめ→環境委員会議 論→本会議 2. JBCE のポジションペーパー 一方、日系企業のロビイング団体である JBCE もポジションペーパーを作成し、後述の 10 月 19 日開 催の、欧州議会の公聴会で関係者に配布した。JBCE ポジションペーパーの要旨は次のとおりであるが、 詳細は別掲の原文(ポジションペーパー1:本誌 p.8)を参照されたい。 <WEEE 指令> 1) 根拠法規は、アムステルダム条約第 95 条とすべき 2) 分離処理は、最小にすべき 3) 指令の対象範囲は、最初は大型製品に限定すべき 4) 個人の家庭からの回収と回収施設への運搬に対しては、地方自治体が責任を持つことを明確 にすべき 5) a) 回収とリサイクル目標は実行可能でかつ達成可能であるべき 6) historical waste の回収とリサイクルを生産者に要求する規定は不合理。長期耐用性製品の b) リサイクルや再生率の計算式の定義付け historical waste の費用負担義務は早くても 10 年経過後から始めるべき 7) 指令で visible fee を認めるべき JMC environment Update 3 Vol.2 No.4 (2000.11) WEEE&ROS・EEE を巡る動向 <ROS 指令> 1) 総合的なリスクアセスメントに基づくべき 2) (ROS 指令で物質規則を取扱うなら) a) 代替期日は 2010 年まで延期されるべき b) 適用除外リストを添付資料のとおり拡大すべき c) 定められた代替期日(提案では 2008 年)以前に上市された完成品のメンテナンス用ス ペアパーツや消耗品は物質禁止措置の適用除外とすべき 3) 95 条(単一市場の確立)を ROS 指令の根拠法規として堅持すべき さらに、付属書により分離処理ならび物質禁止に関する見解を詳細説明し、特に物質禁止関 連では、適用除外追加リストと代替不可能であることの技術的な説明資料(technical fiche) を添付している。 3. 公聴会 欧州議会で実質的な議論がなされる「環境・公衆衛生・消費者政策委員会」で、rapporteur(欧州議会 の意見をとりまとめ、それを同委員会で議論して意見を集約の上、本会議で再び意見を集約する役割) の Mr. H. Florenz 議員(独=CDU)は、10 月 19 日午前に公聴会を開催した。当日は同議員の挨拶、環境 総局 Ermacora 担当官からの提案の趣旨説明に引続き、ステークホルダーが順次見解を陳述した。 公聴会に出席した JBCE 関係者によると、利害関係者の見解等の要旨は次のとおりである。なお、欧州 議会環境委員会における WEEE&ROS の論議に関するスケジュールはまだ確定しない由。 : 大型白物家電メーカー(ワールプール社) ・historical waste は 10 年ぐらいで大体回収できる見込み ・個別回収シテムと集団回収システムの混在は分別作業だけで膨大な費用が発生 ・費用は visible fee として新製品に上乗せされるべき ・集団回収/処理システムによりメーカー別の処理費用が判明、リサイクルし易い設計の製品の処理費 用は安くなり、毎年最良の ECO 製品は表彰され、リサイクル負担も低減 : IT メーカー(ヒューレットパッカード社) ・historical waste は、遡及を意味し問題。消費者、小売業者、製造者、政府など関係者がそれぞれ責 任をもって処理すべき ・費用負担の規定(7 条)は曖昧。一律でなく製造者にフレキシビリティを保証すべき ・根拠法規は 95 条 ・ROS を基本的には支持するが、十分なリスクアセスメントと科学的な調査、代替品の可能性などを 勘案して制定すべき。95 条は堅持すべき 欧州電気電子機器産業(ORGALIME) ・根拠法規は 95 条 ・電子商取引など域外から販売されるものがフリーライダー(ただ乗り)にならぬよう生産者の定義 で明確化 ・historical waste は機器の耐用年数実態(IT 5-10 年、家電 8-16 年、白物 10-20 年)を勘案して暫定 期間を設けるべき ・visible fee を認めるべき JMC environment Update 4 Vol.2 No.4 (2000.11) WEEE&ROS・EEE を巡る動向 欧州プラスチック工業会(APME) ・EEE は重量で 20%を占めるが、プラスチック総廃棄物に占める EEE の割合は 4% ・多品種が小型機器に使用されているのでリサイクルが難しい ・プラスチック総廃棄物の 89%を占める包装材のプラスチックのリサイクルを優先、EEE 用プラスチ ックの処理は当面熱回収などでリカバリーすべき ・携帯電話に含まれる小さな PCB を分離して処理することは非現実的 ・EEE に使われるプラスチックの約 12%がハロゲン系または非ハロゲン系難燃剤を使用。独研究所実 験で難燃剤を含むプラスチックの熱処理でダイオキシンなどの有害物質発生の事実なし 欧州小売団体(DIXON) ・ディストリビューターが新製品販売時に消費者から同種の廃棄物を引取る規定は、古い製品を平行 して使う習性があることから非現実的。廃棄物をストックする倉庫も必要で、数量的にも予想がつ かないので経済的リスクを伴う。持ち込まれたものに健康を害するものが含まれていないという保 証なし ・小型家電は一般のゴミに混ざり焼却されて埋め立てられるのが通常なので、消費者がきちんと回収 システムに参加できるようインセンティブが必要 中規模リサイクル業者(独 CCR)/欧州廃棄業界(FEAD) ・地方自治体の回収システムを使うと一般のゴミと WEEE が混ざって回収されてくる可能性が高い。 地域のいくつかの場所に集積ポイントを設けそこに消費者が持ちこむ形にすべき ・リサイクル目標と再生目標の差があまりにも小さ過ぎる。例えば携帯電話などむしろ熱回収で再生 をあげる形にしないと経済的にも効率的な処理が不可能 ・リサイクルの記述はあるが、再使用の記述がない 消費者団体(BEUC) ・生産者責任の徹底に関心。リサイクル処理は個別企業で行うべき ・visible fee が消えていることに満足 環境 NGO(EEB) ・環境保護強化のため両指令を統合して 175 条を根拠法規にすべき ・カバーする範囲は広いほどいい(スペアパーツや消耗品も含むべき) ・回収目標は 4Kg/年を 2005 年 12 月 31 日から 6Kg/年に強化すべき ・再使用の目標も設定すべき ・有害物質禁止は 2005 年 12 月 31 日をもって対象のすべてを禁止すべきで、2003 年末までの見直し は不要 ・科学/技術面での進歩に対する指令の採用には NGO に必ず相談 なお、当日 JBCE は、会場から時間的制約がある中で次の意見を述べた由。 ・LCD、有害物質を含まない PCB は分離処理の対象外とすべき ・適用除外リストの拡大 ・スペアパーツを Substance Ban の対象外に JMC environment Update 5 Vol.2 No.4 (2000.11) WEEE&ROS・EEE を巡る動向 4. EEB ワークショップ なお、 これより先の 9 月 20 日に欧州議会 Mr. Chris Davies 議員主催の 「EEB2 Workshop Best Practice on the Context of the WEEE directive」が開催され、NGO のコメント、重金属の代替、鉛代替の実践、臭素 系難燃剤の安全性など技術的動向についてプレゼンテーションと議論がなされたようである。 5. JBCE の活動その後 JBCE はその後の欧州議会議員への理解を求めるべく、論点を絞りこみ、簡潔かつポイントを強調する ポジションペーパー「4 KEY ISSUES」を作成し、今後の活動のツールとして利用するとのことである。4 つのキーポイントは、 1) 指令施行前に上市されたスペアパーツと消耗品は Substance Ban の対象外とすべき 2) 分離処理の対象は最低限にすべき(たとえば、LCD や有害物質を含まない PCB は対象外とす べき 3) 特定の有害物質の使用制限(代替不可能な用途のものは使用禁止の適用除外とすべき) 4) プラスチックの燃焼をリサイクリングと見なすべき * 詳細は原文(ポジションペーパー 2:本誌 p.16)を参考されたい。 II. EEE 1. 企業総局と産業界との会合 EEE を巡る議論は、欧州委員会企業総局が欧州系産業団体との非公式協議を短期間に精力的に数次に わたり開催した。この間企業総局は、9 月 27 日付で EEE の第 2 次ドラフトを提示した。大きな変更は、 規定の範囲を「設計および製造」としていたものを「設計」に対してのみとしたこと、環境管理 (management)システムを、環境保証(assurance)システムとしたことである。第 2 次ドラフトの仮 訳を本誌の資料編に収載したので参照されたい。 現在は、指令の中の論点の一つである「基本的要求事項」に関し、欧州業界とのタスクフォースを設 置して 11 月 17 日に会合を予定、ついで 11 月 22 日には、EEE の基本的な考え方に関する関係者とのワ ークショップ(NGO を含む)が予定されている。JBCE は AEA と同様に企業総局との会合を要請したに も拘らず実現に至らなかったが、22 日のワークショップには招待されている。 2. 企業総局のニューアプローチによる法制化の考え方 前述の産業界との協議の過程で、企業総局は製品関連の環境問題に対し「ニューアプローチ」のツー ル(因みに、ニューアプローチは EU における CE マーキング指令と同じ手法)をもって規制することに ついての考え方をペーパーに作成した。同ペーパーのポイントは次のとおりであるが、詳細については 別掲の仮訳文(本誌 p.18)を参照されたい。 ・環境問題を企業総局の政策に統合 ・IPP(包括的製品政策)の枠組みで使用しうるニューアプローチで法規制 2 EEB (European Environmental Bureau) は欧州最大の NGO JMC environment Update 6 Vol.2 No.4 (2000.11) WEEE&ROS・EEE を巡る動向 ―環境対応製品設計に適用しうる ―将来は他の製品カテゴリーに適用 ・ニューアプローチの概念、機能 ―製品カテゴリー毎に共通の技術的要求事項、適合性評価手順の規定 ―民間企業は標準化など要求事項を満たすベストの方法を決定 ―メーカーは規定遵守の法的責任 ―加盟国は市場監視と違反製品の撤収 ―標準化作業はオープン、透明、自主性で NGO を含む様々なステークホルダーの参加 ・EEE 指令案の目的、対象範囲 ―環境を製品開発プロセスに統合し、環境インパクトと資源消費を継続的に改善 ―家庭用、業務用を区別しない ―電気電子機器からスタート(WEEE で長期間議論されている、加盟国の規制の動き) ―成功すれば他の製品領域へ ・ニューアプローチの環境への適用の利益と問題点 <利益> ―環境インパクトの継続的改善 ―目的指向で、技術的に中立的な概念 ―基本的要求事項に新しい科学的・技術的発展を、標準化プロセス等を通じて取り入れ可能 ―NGO との密接な関係維持により長期にわたり環境ファクターが製品仕様に組み入れ ―他の製品分野への類似のアプローチ ―EU の当該産業の共通ツール→他の産業分野へ→地球規模へ ―製品のグリーン化が競争上優位を持つ(米国はまだ静観中) <問題点> ―文化的変化(製品設計方法の転換)への企業の受け止め ―追加コストを企業に、特に中小企業に課す ―標準化作業への新しいステークホルダー(NGO)の参画 ―加盟国への市場監視へのコスト負担 ―電子商取引の扱い 3. 今後の動向 企業総局は EEE 指令案について、2001 年秋にはドラフトを提示(欧州委員会内の総局間協議: inter-service consultation)を、そして、同年年末までには欧州委員会の正式提案にもっていきたいとの 方針も伝えられる。いずれにせよ、今後の EU における電気電子機器の環境問題をモニターするには、 「WEEE&ROS/EEE」を並行して取組む必要があり、さらには、IPP(包括的製品政策)や化学物質の規制 動向、そして姉妹指令といわれ去る 10 月に官報告示された ELV(廃自動車)指令の加盟国国内法制化動 向や、もう一つの姉妹の電池指令改正案の動きなど幅広い視野をもって対応することがますます肝要に なってきたようである。□ JMC environment Update 7 Vol.2 No.4 (2000.11) JBCE ポジションペーパー1:WEEE&ROS 指令 19 October 2000 JBCE Position on proposed WEEE and ROS Directives These comments are submitted by the Japan Business Council in Europe (JBCE), representing the interest of a diverse group of leading Japanese companies doing business throughout the European Union. Our member companies employ more than 130,000 skilled workers in Europe and have invested heavily in production, distribution, and skills development in the 15 Member States. This represents a long-term commitment to making a positive contribution to the local communities where our members are active and to the European Community as a whole. We appreciate this opportunity to present our comments on the proposed directives on Waste Electrical and Electronic Equipment (WEEE) and Restriction of the Use of Certain Hazardous Substances in Electrical and Electronic Equipment (ROS). WEEE Directive (1) To achieve harmonization at Member State level, legal basis should be Article 95 of the Amsterdam Treaty instead of Article 175 which will lead to differing national approaches and market distortions. (2) Selective treatment should be kept to the minimum from the standpoint of removing dangerous substances. (See Annex I) (3) The initial scope of the Directive should be limited to bulky products because they represent the biggest threat to the environment. Including too many categories of products from the outset could have a counterproductive environmental impact if experimental treatment methods have not been developed or finalised yet. (4) The directive should clearly state that municipalities are responsible for collection from private households and transportation to collection facility. Collection should continue to be organised and financed by municipalities. (5) a) Recovery and recycling targets should be feasible and achievable: a recently adopted Japanese law on WEEE sets recycling rates which have been based on thorough evaluation and assessment of available data and experience, while still setting an ambitious goal (50% for refrigerators and washing machines, 55% for television sets, and 60% for air conditioners).1 1 JBCE - Japan Business Council in Europe Rue d’Arlon 69-71, Bte 1, B-1040 Brussels Tel:(02)286-5330 Fax:(02)230-5485 E-mail: [email protected] JMC environment Update 8 Vol.2 No.4 (2000. 11) JBCE ポジションペーパー1:WEEE&ROS 指令 b) It is not clear how the recycling and recovery rates have to be calculated. A definition should be included in the directive. This should not be left to the Committee to be established under Article 14. Not defining these rates from the outset will create confusion and make it difficult to work towards a clear goal. (6) The provision to require producers to collect and recycle historical waste is unreasonable as it imposes retroactive responsibility on producers. At least financial obligation of historical waste on products with a long life should start at the earliest 10 years after entry into force of the Directive. (7) The Directive should allow a visible fee to be charged on a new product at the point of sale. A visible fee which indicates the cost of recycling and recovery will raise the environmental awareness of consumers. This should encourage them to act in an environmentally responsible way upon purchase and when using the product. ROS Directive (Substance Ban) (See Annex II) (1) Substance Ban should be based on comprehensive risk assessment and dealt with pursuant to existing horizontal legislation if necessary. (2) If the European Parliament and the Council decide to deal with substance regulation as the ROS directive, the following approaches should be taken; a. The date of substitution of listed substances should be postponed to 2010. For most cases, it is impossible to achieve substitution of specified substances above by 2008. b. The exemption list should be expanded as attached. c. Spare parts for maintenance of and consumables for finished products put on the market before specified substitution date (2008 in the proposal) should be exempted from substance ban. (3) Article 95 (which establishes the Single Market) should remain the legal base of the ROS Directive. Merging it with the WEEE Directive and basing it on Article 175 will lead to the Single Market for electronic products being completely destroyed. JMC environment Update 9 Vol.2 No.4 (2000. 11) JBCE ポジションペーパー1:WEEE&ROS 指令 (Annex I) Selective Treatment (1) The Directive requires in the Annex II that Printed circuit boards, Toner cartridges, Plastic containing brominated flame retardants, etc. be removed from separately collected WEEE. It is illogical that components and preparations without specified dangerous substances such as lead, mercury, cadmium, hexavalent chromium, PBB and PBDEs are included in the list. Furthermore, removal of these parts would impose heavy burden on the industry because it needs a lot of human work and time, thus requiring for selective treatment which should be kept to the minimum from the standpoint of removing dangerous substances. Specified substances, preparations and components in the Annex II should be limited by describing certain elements that would be regarded as dangerous. “Plastic containing brominated flame retardants” should be revised to “plastic containing PBB and PBDEs”. Also, “Batteries” must not be regulated in the Annex II of the Directive to avoid the overlap with the battery directive. (2) LCD (Liquid crystal display) is also required to be removed from separately collected WEEE in the Annex II. LCD itself, devoid of back light and drive circuit board in the liquid crystal module, does not contain dangerous substances such as mercury, lead, and hexavalent chromium that are described under the Article 4.1 of the ROS Directive. There is no reason to consider LCD to be toxic. Furthermore, the new paragraph referring to Article 5.1 in pp. 28-29 of the explanatory memorandum assumes potential danger (carcinogenic possibility, etc.) of some substances in LCDs. Claims and statements in this paragraph are never ever supported by any research available now. Therefore, claims and statements without sufficient and technical justification verified with reliable data should be deleted. While “Gas discharge lamps” are specified in the Annex, “Liquid crystal displays … and all those back-lighted with gas discharge lamps” are added. These are duplicated requirements. Therefore we request that all references to LCD should be deleted from the Annex II. Also we would like to note that “Gas discharge lamps” may not always contain with toxic materials such as mercury. Only Gas discharge lamps “with mercury contained” should be considered in the Directive. JMC environment Update 10 Vol.2 No.4 (2000. 11) JBCE ポジションペーパー1:WEEE&ROS 指令 (Annex II) Substance Ban Substance ban should be based on comprehensive risk assessment. Even if the restriction of specific substance proves necessary after the risk assessment, it should be dealt with pursuant to existing horizontal legislation. The ROS Directive, however, requires the use of lead, mercury, cadmium, hexavalent chromium, PBB and PBDEs be substituted by 2008. If the European Parliament and the Council decide, notwithstanding the above arguments, to deal with substance regulation as the ROS Directive, JBCE believes that the following science-based and realistic approaches are taken in order that the ROS Directive does not pose any unjustified trade and business barrier in the European market. (1) For most cases, it is impossible to achieve substitution of specified substances by 2008. We strongly request that the date for substitution of listed substances should be postponed at least to 2010. (2) The exemption list in Annex should be expanded in order to reflect substitutability of substances. We have analysed the substitutability of substances by application by 2010 and made a list of applications. The attached list, “Items to be added in Annex of the proposal for a directive on ROS,” should be taken into consideration for exemption. (See Annex II-a) We have also made Brief Summaries of the Technical Fiche to explain the difficulty of substitution of substances. (See Annex II-b) (3) Spare parts for maintenance of and consumables for finished products put on the market before specified substitution date (2008 in the proposal) should be exempted from substance ban. Normally, it is very difficult to eliminate the use of substances without changing the design of the whole product and there is a great risk that the spare parts or consumable for the products already in use cannot be supplied if the substance ban is extended to these as well. Without this exemption, goods with only minor trouble will have to be replaced, which will create unnecessary waste and will adversely affect environment. JMC environment Update 11 Vol.2 No.4 (2000. 11) JBCE ポジションペーパー1:WEEE&ROS 指令 Items to be added in Annex of Proposal for ROS Directive The applications of substances are divided in 3 categories, that is, the substance is 1) highly possible to substitute but uncertain in 2010, 2) possible to substitute but uncertain in 2010, 3) impossible to substitute in 2010. At least the applications in 3) should be listed in the exemption list. The categories of 1) and 2) should be listed in the “interim exemption list” where the technological review shall be made in 2006 to decide whether those will be technologically substitutable by 2010. Lead Applications Related products Highly possible Lead (Pb) in solder plating layer of lead General leaded components, Plating for But uncertain wires, frames or terminals of electronic parts connectors and terminals of electrical parts to Substitute in 2010 Lead(Pb) used for optical lenses and other A. Lens for optical communication, Optical optical components pickups, Cameras, Camcorders, Facsimiles, Scanners, Copiers, Projectors, Optical filters, etc. B. For professional instruments and Specific use - Zoom lens for broadcast television camera - Optical beam lens (laser) transceiver - Zoom lens for cinema camera (35mm, super 16mm, etc.) - Zoom/fixed lens for projector C. Paint on glass for protection of Evaporated coating - Lens, Mirror, Prism and other optical parts Alloys containing a small amount of Metal parts Lead(Pb) Copper alloy: Lead content up to 4.5wt% shall be exempted. Steel alloy : Lead content up to 0.35wt% shall be exempted. Aluminum alloy: Lead content up to 0.6wt% shall be exempted. Lead in glass fibres JMC environment Update 12 Vol.2 No.4 (2000. 11) JBCE ポジションペーパー1:WEEE&ROS 指令 Possible but Uncertain to Substitute in 2010 Applications Related products Lead(Pb) contained in glazing glass as thick High voltage resistors, Hybrid ICs, Resistors, film insulators Resistor networks, RC networks, Capacitor networks, Resistor, Resistor networks, RC networks, Capacitor networks, Resistor arrays, Magneto-resistive elements, Ceramic heaters, etc. Lead(Pb) in glass flit used for electronic parts Chip resistor networks, Chip RC networks, Chip capacitor networks, Chip resistor array, Resistor networks, Magneto resistive elements, Trimmer, Potentiometer, etc. Lead(Pb) contained in solder (with approx. General printed circuit boards and so on 40wt% of Lead) for general electrical connection purpose Lead(Pb) in thermal fusing materials used for Fuse resistor, Thermal cut off, Ta electrolytic electronic components capacitor with fuse, etc. Impossible to Substitute in 2010 Lead(Pb) contained in low melting point glass for packaging for CCD or Laser diodes and for sealing semiconductor packages Fluorine resin containing 3-4% lead Lead(Pb) in “Table Glass” for copier and printer Lead(Pb) contained in high melting temperature type solder used within an electronic component for internal connection purpose between functional element and wires, terminals, heat sinks, etc. Lead(Pb) contained in high melting temperature type solder used for mounting electronic components onto sub assembled module or sub-circuit board. Lead(Pb) in high melting temperature type solder to seal metal roof and ceramic package, etc. Lead(Pb) contained in glass for fluorescent or other light housings Light emitting, Receiving devices or Semiconductor diodes such as CCD, Laser diodes Dry bearing in various machines Resistors, Capacitors, Chip coil, Resistor networks, Capacitor networks, Power semiconductors, Discrete semiconductors, ICs, Chip EMI, Chip beads, Chip inductors, Chip transformers etc. Hybrid ICs, Modules, etc. SAW (Surface Acoustic Wave) Filters, Quartz resonators and filters, etc. Lead(Pb) contained in bonding glass for Magnetic heads magnetic head Impossible to Substitute in 2010 Lead(Pb) in glass semiconductor chip passivation for Diode, Thyristor, Power transistor, etc. Lead(Pb) contained in thick film resistive RC networks, Potentiometers, Hybrid Ics, layers Chip Resistors, Chip resistor networks, Chip RC networks, Chip capacitor networks, Chip resistor arrays, Trimmer potentiometers, etc. Lead(Pb) in video head glass Lead in glass of Plasma Display Panel PZT film High dielectric layer for semiconductor memory chip FeRAM, piezo electronic components, etc. Lead(Pb) used for lens for contact sensor and nonmydriatic retinal camera JMC environment Update 13 Vol.2 No.4 (2000. 11) JBCE ポジションペーパー1:WEEE&ROS 指令 Mercury Possible but Uncertain to Substitute in 2010 Impossible to Substitute in 2010 Applications Related products Mercury in the fluorescent lamp, 400 mm or Fluorescent lamp for light source longer in length, equipped in copiers for drawings and large-size sheet readers Mercury in hour meter Back light for LCD LCD display for PC, LCD units High intensify discharge lamp especially developed for projectors (LCD, DLP, etc.) Mercury(Hg) contained in new type lamp, metal halide lamp and lamp of D-ILA. Cadmium Highly possible But uncertain to Substitute in 2010 Possible but Uncertain to Substitute in 2010 Impossible to Substitute in 2010 Applications Cadmium in optical solid filters used for optical beam splitting system Related products Cadmium contained in thick film resistive Potentiometers layer of potentiometers Cadmium contained in electric contacts Cadmium contained sensor Switches, Relays, Thermal fuses, Thermal cutoff, and other electric contacts TV ZnCdS as additive for fluorescent body in image amplifier Rechargeable battery Nickel Cadmium (NiCd) Battery used in security systems, Medical equipment, Electrical tools and other electrical and electronic equipment. Cadmium contained in bonding glass for magnetic head Welding material for HID lamp Cadmium contained in plating material of connector shell (in order to prevent oxidisation of the surface finishing) Cadmium(Cd) contained in new type lamp, metal halide lamp and lamp of D-ILA. Cadmium(Cd) contained in CdTe as a shield film JMC environment Update 14 Vol.2 No.4 (2000. 11) JBCE ポジションペーパー1:WEEE&ROS 指令 Hexavalent Chromium Applications Highly possible Coated sheet which considers production But uncertain process and electrical conductivity to Substitute in Chromium family dye used for plastic colourant 2010 Possible but Uncertain to Substitute in 2010 Impossible to Substitute in 2010 Related products Hexavalent Chromium in chromate treatment Loudspeaker, Loudspeaker system, and chromium plating anti-corrosion Loudspeaker system with amplifier, Sounder, Bolts, Nuts, Screws, Steel sheets, Shafts, other metal parts, etc. Hexavalent Chromium contained in back light lamp for LCD panel viewfinder of Camcorder Spare parts and consumables Spare parts for maintenance of and consumables for finished products put on the market before specified substitution date JMC environment Update 15 Vol.2 No.4 (2000. 11) JBCEポジションペーパー2:4key issues of WEEE&ROS Waste Electrical and Electronic Equipment (WEEE) Restrictions on the use of certain Hazardous Substances (ROS) 4 KEY ISSUES 1. Spare Parts and Consumables Banning the use of certain substances will in most cases have an impact on the design of the product in which they were used. This becomes problematic if those banned substances were used in spare parts or consumables (eg. toner cartridges for printers). Spare parts with a changed design may no longer be compatible with the product in which they were originally used. It will then be necessary to replace the entire product after a possibly minor malfunction which would normally have been solved by replacing the faulty part. This creates unnecessary waste and obviously has a negative impact on the environment. For instance, printed circuit boards that will have been made lead-free are most likely to have a completely different design from those which still contain lead. Printed circuit boards are used in a wide variety of products: TV sets, personal computers, etc. Until good substitutes for the lead containing solder are developed, it remains unsure how the design of these products will have to be adapted as well. It is therefore likely that during a changeover period, and in particular after the substitution deadline, many TV sets, PCs etc will have to be replaced simply because the right spare parts can no longer be used. This problem can be solved by exempting spare parts for maintenance of finished products that were put on the market before the substitution deadline. Consumables used in such products should also be exempt. This will ensure that unnecessary waste creation is avoided. 2. Selective Treatment Selective treatment of materials and components as suggested in the Commission proposal is problematic in several respects, and may be counterproductive. For instance, the requirement that printed circuit boards have to be removed is in a sense a disincentive to developing lead-free solder. Because it does not specify that only printed circuit boards that contain certain hazardous substances have to be removed, it can be read as requiring that most kinds of printed circuit boards, including those that may already use forms of lead-free solder, will have to be removed. This is an indiscriminate provision which will require costly treatment of supposedly harmless components. Development of JMC environment Update 16 Vol.2 No.4 (2000.11) JBCEポジションペーパー2:4key issues of WEEE&ROS alternatives to certain hazardous substances which are currently used on printed circuit boards will be encouraged if it is clearly specified that only printed circuit boards that contain hazardous substances have to be removed. Another example of the rather inaccurate way in which the selective treatment requirements seem to have been drawn up is the inclusion of Liquid Crystal Displays (LCDs). Recent research shows that liquid crystals are neither toxic nor hazardous. The precautionary principle is to be invoked only if potentially negative effects are identified using insufficient and inconclusive scientific data. It is unclear why LCDs have to be treated separately, since neither of these two elements is present. The requirement to treat LCDs in the same way as CFCs or asbestos waste is disproportionate. LCDs actually contribute to the energy efficiency of electronic products. Furthermore, liquid crystal does not leak because it sticks to glass by way of its own surface tension. 3. Restrictions on the use of certain hazardous substances Phasing out the use of hazardous substances is a laudable goal. However, the Commission itself indicates that this will not always be feasible. It has therefore included in its proposal a list of applications of targeted substances which are exempt from the ban until a suitable alternative has been found. The Japan Business Council in Europe wants to contribute to the analysis of substitutability. The attached annexes provide detailed information on specific applications of the four targeted substances. They examine for each application whether substitution is possible and whether this will be achievable before or after 2010. For instance, it will almost certainly be possible to substitute lead in solder for general electronic connections (although it is not clear if this can be done by 2010). On the other hand, it will be impossible before 2010 to substitute lead in solder which only melts at high temperature levels. This last category of solders is in any case estimated to represent not more than 5% of the total amount of solder used. Similar analyses are provided for cadmium, mercury and chrome VI. A common conclusion to these technical analyses is that in specific applications some substances can not be substituted, even after 2010. 4. Incineration of plastic Waste plastic is being used as fuel in state-of-the-art waste incinerators. It effectively increases the burning temperature so that no dioxins are generated. It can replace fossil fuel, which makes it energy efficient. Furthermore, plastic is in fact made from fossil fuel, and incineration of plastic should therefore be considered as recycling. Mechanically separating and recycling all the different types of plastic consumes a lot of energy. Incinerating plastic is a more environmentally friendly and effective way of recycling than the Commission’s proposals. The definition of recycling should therefore be amended accordingly. JMC environment Update 17 Vol.2 No.4 (2000.11) 環境に対する「ニューアプローチ」による法制化 環境に対する「ニューアプローチ」による法制化 仮訳 1. 環境的次元を企業総局政策に統合 環境問題は、境界を無視して多くの政策領域に散らばる傾向がある。環境案件はこのようにしてあら ゆるレベルの規制する側の議題に取り上げられ、その重要性は近い将来も続くものと思われる。欧州 委員会、理事会ならびに欧州議会は、EU 内の環境案件をどうやったら一番うまく取り扱うことができ るかに注意をそそいだ。現在この分野で最大の関心事の一つは「持続可能な開発」である。 持続可能な開発とは、将来の世代による彼らのニーズを満たす能力を危うくすることなく、現代の世 代のニーズを満たす開発であると考えられる(Brundtland レポート) 。1998 年にカーディフで行われ た欧州理事会で初めて欧州の状況における持続可能な開発の重要性を大きく取り上げた。1999 年 12 月ヘルシンキで行われた欧州理事会では持続可能な開発の 3 つの重要さ、即ち経済的、社会的、環境 的開発を強調し、環境を輸送、農業およびエネルギーの 3 分野に統合する戦略に合意した。この機会 に、欧州連合の理事会は欧州委員会に対し「その作業の結論を出し、さらなる措置のタイムテーブル、 およびこれら 3 分野の一連の指標を含む可能性をもって、2001 年 6 月の欧州理事会に包括的な戦略を 提出する」ことを求めた。現在ではこれは欧州委員会組織において、企業総局の政策の対象となる産 業分野を含んでいる。 「包括的製品政策(Integrated Product Policy =IPP)」も討議のテーマである。IPP の定義はまだ確立 されていないが、IPP はライフサイクルの考え方を主導的な原則としてすべての製品システムとその 環境効果をカバーするものだという一般的な合意がある。これは環境問題をライフサイクルの様々な 段階、または様々な製品に移すことを避けることである。関係者は、IPP の枠内で環境に対する影響 という点でその製品の継続的な改善を一緒になって達成すべきである。そのためには製品連鎖 (product chain)中の全てのステークホルダーがかかわらなくてはならない。IPP はこのようにして 製品に対する包括的で全体的なアプローチを採択する。 IPP は持続可能な開発に重要な貢献をする可能性がある。まだ初期段階にはあるが、IPP は、規制はも ちろんのこと自主協定や市場原理を含めた様々なツールや措置を含むと思われる。もちろん IPP に必 要なツールの多くは既に存在しているが、現在のところ、それが整合されたやり方では使われていな い。貿易と継続的経済成長の奨励と、高水準の環境保護達成にはバランスをとることが必要である。 企業総局は、IPP の枠組での使用を考えられるツールの一つは、 「ニューアプローチ」による法規制で あると考える。電気電子機器(EEE)の環境インパクトに関する指令案は、環境案件が企業総局の政 策にどのように統合されうるかを実際に示すことを意図している。これまではニューアプローチを主 として危険(hazards)に対する製品の法制化と併せて、域内市場における物の自由移動を確保するた めに活用している。今やこのツールは環境対応の製品設計に適用され、はっきりそれが成功と判れば、 将来は他の製品カテゴリーに使用できる。 JMC environment Update 18 Vol.2 No.4 (2000.11) 環境に対する「ニューアプローチ」による法制化 2. ニューアプローチとは何か、どう機能するか? 域内市場を満たすには全体的な統一を確保し、製品に対して加盟国の国内法が特定の、かつ分化した 技術的仕様を強いることを回避するため、EU レベルで整合した法規の確立が必要とされた。1985 年 以前は、EU のすべての製品関連法規は、それぞれ、かつすべての製造産品に対して定義された極めて 詳細な規則により、 「命令と管理(command and control)」によるアプローチに基づく傾向にあった。 1985 年以降は立法者にとって別のツールが創られ、それぞれの製品カテゴリー毎に共通の技術的要求 事項と、適合性評価手順を定めることにとってかわった。この「ニューアプローチ」というものは、 より簡潔に、より強固な規制構造を与えるように作られた。 この枠組の下では、規制当局は公衆衛生ないしは安全、消費者、あるいは EEE 指令のように環境への リスクに対する保護を意図した、 「公益」に関する必須要求事項だけを定義すれば良い。民間側は、特 別の技術的仕様あるいは認定された技術標準化機構や機関をもって、個別に、または共同で当該要求 事項をどのように満たしたら一番良いか取り決める。全体的なねらいは、技術革新や技術移転の邪魔 にしないよう企業の競争力を向上できるようにすることと同時に、公益が保護されるようにすること である。製造者は、上市されたすべての製品が当該指令の規定を遵守している旨の法的責任をもつ。 加盟国は、市場監視の実施によって非適合製品を市場から撤収するようにしなければならない。 ニューアプローチ体系は柔軟性、費用対効果(cost-effective)、技術的中立性を有す この種の指令は一般的に対象範囲が広く、広範囲の製品をカバーしている。いくつかのニューアプロ ーチ指令は製品に関連する危険(hazards)によって、同じ製品に対して適用される。ニューアプロー チは大いに成功したことを立証したし、現在では約 20 の危険(hazards)領域がこの種の立法でカバ ーされており、その結果 EU ではこれら製品に関連する深刻な安全問題はもはや存在していない。 ニューアプローチ規則の枠組の中で、標準化は柔軟性と費用対効果を提供するために不可欠である。 標準化は公開された、透明性のある、そして自主的なプロセスであって、規制当局のねらいを企業側 のニーズに一体化することができる。標準化の策定は、国、全欧州(CEN, CENELEC, ETSI)、国際的 レベルで認定された標準化機関により、独立して組織された議論の場において、企業、公的機関、消 費者、NGO ならびに労働者を含む様々なステークホルダーによるコンセンサスを形成して行われる。 EU 指令の施行に供するための標準化の作業は、欧州委員会から欧州標準化機関に委ねられている。こ れらの標準化の委任は、規格が各指令の基本的要求事項を満たすように形作られることを必要とする ガイドラインを表明している。すべてのニューアプローチ指令の規格は、健全な科学的知識にもとづ き、目的にかない、お互いに一貫性があり、技術革新に歩調を合わせて速やかに修正可能でなければ ならない。整合規格が欧州共同体の官報に発表されたら、この規格に適合して製造された産品は関連 する指令の基本要求事項に適合しているものと、加盟国当局は見なさなければならない。 企業側は、以下の理由によりニューアプローチを好ましいものと思う: ・革新の自由を与える、 ・製品を上市する前に当局による事前認証が要らない。場合によっては認証機関による事前認証も 要らない、 ・多くの場合、適合性評価手順の選択(例えば、品質保証システムと製品認証)を与える、 ・広範な市場へのアクセスが可能(ニューアプローチ規格に適合した製品は、EU または EEA 内の どこでも上市できるし、さらなるチェックや修正なしに国家間を自由に移動できる)、 ・品質、安全、性能を含め技術的開発を取り入れるべく、速やかに更新できる規格を導入する。 JMC environment Update 19 Vol.2 No.4 (2000.11) 環境に対する「ニューアプローチ」による法制化 3. EEE 指令案の対象範囲と目的 ニューアプローチがあらゆる種類の環境法規に適したツールであると言うつもりはない。製品に直接 リンクしていない環境問題と、製品の設計、構造ならびに意図した使用にかかわる環境的側面とは区 別しなければならない。環境的要求事項が製造または製品の自由流通に直接影響を与える場合に、ニ ューアプローチの適用が意義あるものとなる。 EEE 指令案は、この方法論が製品に関連する環境案件に適用された一つの例である。WEEE の提案が 廃棄物管理に焦点をあてているのに対して、EEE 指令は特定の環境問題を取り扱うことを意図してい ない。そうではなく、EEE の目的は、環境への考え方に対する全体的なアプローチを製品開発プロセ スに統合することによって、EEE の全体的な環境インパクトと資源消費における継続的で持続可能な 改善を確保することにある。 製品の全体的な環境インパクトを改善することは、問題を減じ、廃棄物管理の容易化を含め多くの分 野で改善がもたらされるものと期待できる。様々な製品のステークホルダーの分担責任は、環境への 考え方を広め、幅広い規模において環境情報を入手できるようにするはずである。特に、より良い情 報を得た消費者はもっと責任のある選択をするであろうし、その消費パターンを変える可能性もある。 同時に、この戦略は長期にわたって持続する製品の技術革新を促進することによって欧州産業の競争 力を高めることを意図している。 この指令の対象範囲は、家庭用か業務用かに関係なく電気電子機器を包含している。当該製品分野を 第一に限定して対象としたことには利点がある。EU における EEE の環境インパクトは現在懸案とな っていて、電気電子機器の生産は西側世界の製造業で最も成長の速い領域である。このことは廃電気 電子機器(WEEE)はもちろんのこと、EEE 生産の環境負荷の顕著な増大をもたらしてきた。WEEE の 提案を巡る長期間にわたる熱心な議論の結果として、EEE 産業は環境問題の取扱の上で充分に意識が 高まっていて、良く組織されている。 また、この製品分野は、加盟国政府が国際市場に対し問題を提起するというリスクをはらむ法制化を 検討し始めたところである。加えて、EU の EEE 産業は、大きく、多岐にわたって、かつ経済的に重 要なセクターであり、そして製品連鎖(product chain)は充分理解されている。この領域において環 境製品法規の導入が成功すれば、他の領域に対しすばらしい前例が確立されることになる。 EEE 指令の全体的枠組は、ニューアプローチ法規の一般原則で規定されている。基本的要求事項につ いては EEE に特有のものである。EEE の基本的要求事項に定義されたいくつかの原則は次のとおり: ・指令でカバーする EEE について製造者は、ライフサイクル―製品設計と製造―の各段階において 意図した目的と廃棄物処分に従って使用するところにおいて、環境に影響を与える重要なファク ターを確立されたメカニズムをもって明らかにし、評価しなければならない。 ・製品の設計にあたっては、製造者は製品毎に高水準の環境保護を確保する観点で、この評価の結 果を考慮しなければならない。 ・製品設計は、適切なレベルの環境保護と一致した経済的、社会的側面と同様、環境効率 (eco-efficient)設計の原則の点で最新技術を考慮しなければならない。 ・製造者は、その製品の環境情報がすべてのステークホルダーに広く与えられるようにしなければ ならない。 JMC environment Update 20 Vol.2 No.4 (2000.11) 環境に対する「ニューアプローチ」による法制化 実際の要求事項はもっと細部にわたるものであるが、この細部は包括的レベルにとどまるべきであり、 できるだけ製品特有でないようにすることが重要である。これら要求事項は、製造者にとって相反す る選択肢とゴールが存在し、多くの場合にトレードオフが必要であることを考慮に入れなければなら ない。 この基本的要求事項遵守を確立するため、製造者は以下のことを確保しなければならない: ・環境影響評価(impact analysis on the environment)は整合規格(CEN や CENELEC 等によって策 定された規格)に従って実施されなければならない。あるいは、 ・エコ・ラベル・スキーム1が指令案の基本的要求事項をカバーする限りにおいては、適用されなけ ればならない。あるいは ・自主協定を含め基本的要求事項を満たすその他の手段を使用しなければならない。 すべての場合においても、第三者による販売前認証を必要とすることなく、遵守の旨の証明文書を 作成するのは製造者の責任である。 4. ニューアプローチの環境への適用 ― 考えられる利益と問題点 欧州委員会は、指令案の予想される経済的、環境的インパクトについてより正確に認識し、定量化す べく、詳細なコストベネフィトを実施するつもりである。この検討の結果はできあがるまで時間がか かるであろうが、環境対応の製品設計へのニューアプローチの適用は多くの重要な利益をもたらす可 能性がある。 4.1. 利益 EEE 指令のゴールは特定の環境問題を云々するのではなくて、これらの製品の全体的な環境インパク トの継続的改善という結果をもたらすことである。疑いなく環境上の利益はあるであろう。例えば、 ライフサイクルの考え方を製品設計に導入すれば、製品がより簡単にリサイクルないしは再使用され ることによって廃棄物管理が容易になるであろう。 EEE 案は、目的指向で、技術的に中立の概念であって、立法者はその中で満たされるべき環境目的を 定め、民間セクターは適切な技術的解決を自由に選ぶことができる。このように、それは共同規則 (co-regulation)の実際的な例である。製造者が最も効率的で適切な技術的解決を積極的に実施でき るよう、柔軟性が基本的要求事項の形成に組み入れられる。 ニューアプローチ指令に規定された要求事項は、標準化プロセス、あるいは特定の製造者自身の解決 を通じて、継続的な適応化と精緻化を経験することができる。従って新しい科学的かつ技術的発展を 取り入れることができる。さらに、すべてのステークホルダー(製品製造者、消費者、リサイクル業 者、NGO)がかかわり、これら技術的解決を決める責任を持ち、かくして技術革新と進歩を促進する のである。このアプローチで促進される標準化プロセスにおいて NGO とのより緊密にかかわることに より、環境ファクターが長期にわたって一般原則として製品仕様に次第に組み入れられることになる 1 自主的な EU エコ・ラベル・スキームは、全ライフサイクル中の環境インパクトを減らした製品を推進するよ うに作られている。そのアプローチは指令案に似ているが、それは製品に特有で、技術的解決を規定する点で はるかに徹底しており、柔軟性には欠けている。従って、エコ・ラベルは補助的手段であって、代るものでは ない。 JMC environment Update 21 Vol.2 No.4 (2000.11) 環境に対する「ニューアプローチ」による法制化 であろう。 現行の環境法規の多くは、欧州連合条約の第 175 条2を根拠としている。この条項は、加盟国が EU 指 令の要件を超えて、国レベルにおいて追加的で、場合によっては異なる要件を課することを認めてい る。従って、この根拠法規が製品に適用されると、域内市場の分裂状態という重大なリスクがある。 EEE 案は条約第 95 条に基づいており、当該製品の技術的要求事項の整合を図り、域内市場における物 の自由移動を保ちつつ、高水準の環境保護を確保している。 EEE は電気電子機器の設計における環境関連のすべての局面を包含する統合的アプローチである。製 品設計の全体的環境インパクトは、全製品ライフサイクルを考慮して評価され、最適化されることに なろう。EEE 案の対象範囲は、WEEE 指令の対象範囲を補完するものであるが、廃棄物管理問題に限 定して集中しているのではなく、むしろ製品の全体的な環境インパクトにも焦点を合わせているので、 はるかに広いものである。家庭用に意図された製品と業務用の製品は区別されない。さらに、この案 そのものは電気電子製品のみを扱っているが、将来多くの他の製品分野についても類似のアプローチ が適用されうることは明らかである。 EEE 指令の採択によって、環境に対する新しい規格の策定に至るであろう。この規格は、当該指令に 特に関連する EU の産業に対して共通のツールを確立することのみならず、他の産業セクターならび に地球規模でも基礎として役立つであろう。規格は、共通に理解される言語によってステークホルダ ー間で環境情報のコミュニケーションの改善に貢献することができる。 このアプローチは環境問題に関する企業総局の態度の大きな変化を表わしている。今や環境的側面は、 競争力の低下を認めたり技術革新についてやる気をなくしたりしないようなやり方で規制プロセスに 統合することができる。 長期的に見て、電気電子機器産業の競争力はその製品のライフサイクルを通じた環境インパクトを最 小化し、環境に優しい製品によって消費者をひきつける能力に大いにかかっている。このような製品 の「グリーン化」は産業が自主的ベースで、あるいは規制で強制的に導入できる。今のところアメリ カは「静観する」姿勢であるが、EU ではもっと急速な規制による展開が起りつつある。これは EU に おける解決の採択を加速し、欧州企業が競争上の優位を獲得する可能性がある。 4.2 問題点 EEE 案は、企業総局のみならず産業界にとっても文化的変化である。それは製造者の製品設計方法の 転換を意味している。EU の産業界は「ライフサイクルの考え方」と環境ライフサイクル・アセスメン トやコスト分析をどう行うかについて経験を積み、習熟曲線の状況になることが期待される。それに もかかわらず、産業界は益々多くの重要性が環境問題に与えられていることを承知し、そして製造の 全段階において環境の側面を配慮する必要は、産業界にとって新しい概念ではない。さらに、本指令 は直ちに発効するわけでなく、何年か後となるのであるから、その間に産業界はこの文化的変化を産 業組織にとり入れることができるであろう。 製造者による追加的努力は明らかに追加のコストを意味する。多くの大手製造者は既に環境管理と保 証システムを実施する過程にあり、彼らにとって、この指令による追加コストは、大したことはない。 2 官報 C340, 10.11.1997, pp.145-172 JMC environment Update 22 Vol.2 No.4 (2000.11) 環境に対する「ニューアプローチ」による法制化 しかしながら、中小企業にとってのコストははるかに甚大なものとなることは明らかである。指令の 負荷が、特に中小企業にとって最小化されるよう充分な注意が必要であろう。 標準化プロセスは、ニューアプローチのもとで製品の技術規格の策定に対して今までのところ非常に 効率的に働いて来た。このプロセスが環境問題という新しい広がりに対応しなければならなくなった のは最近であって、これら新しいデマンドは、追加的な時間と資源がうまく投入されることを求めて いることははっきりしている。全く新しいステークホルダー、環境 NGO が標準化の活動領域に含まれ なければならない。 新しいステークホルダーの参入は、現在の関係者と利害が異なり、またそれ自身の中でも異なってい て、合意に達するプロセスが延期される傾向があり、従って規格策定のコストを増大させ作業を遅ら せうる。このため欧州委員会は、プロセスそのものが如何に新しく求められているデマンドに対応で きるかを見直すべく規格策定者と緊密な連携をとり、また将来 NGO が標準化プロセスに充分参画でき るよう彼らとも連携をとっていく必要がある。 加盟国にとっても、市場監視当局が本指令の実行をモニターすることや、製造者が実施した環境アセ スメントの質を評価されうるべきであるという要求によって、新たな負担を課すことになるであろう。 しかしながら、EEE 案は、既に確立されている安全問題に関する現行の監視システムに環境面の市場 監視システムを統合し易くするであろう。 電子商取引による電子機器販売の増大を考えると、伝統的な供給チャネルと同様に電子商取引によっ て製品を供給する企業にも同じ義務が課せられるようにすることについてさらなる検討の必要がある。 さもないと、このアプローチは EU と第三国の製造者間の競争を歪める恐れがある。しかしながら、 本件は EEE 指令に特有の問題ではないのであって、多くの EU 規則に適用できる一般的な解決を見出 さなければならないであろう。 IPP は様々なツールを包含する広範で複雑な概念であるが、企業総局は、ニューアプローチは IPP の 枠組の中で適用できるという大いなる可能性をもつと考える。製品に直接かかわる環境案件は、物の 自由移動を阻害したり、あるいは技術革新の腰を折ることなくニューアプローチを基に規制が可能で ある。EEE 指令の施行は電気電子製品の環境インパクトの継続的改善に帰着し、将来多くの他のセク ターに使用できる基盤を確立するであろう。□ JMC environment Update 23 Vol.2 No.4 (2000.11) WEEE および ROS に関するコメント、WTO/TBT 委員会へ提出 貿易と環境専門委員会 貿易と環境専門委員会(委員長;蛇抜信雄氏 松下電器産業㈱ 環境本部環境審査室海外助成グループ部長)で は、9 月 27 日、EU の WEEE および ROS に関するコメントを WTO/TBT 委員会に提出した。 欧州委員会は「廃電気電子機器(WEEE)指令」と「電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限(ROS; The Restriction of the use of certain hazardous substances in electrical and electronic equipment)指令」の草案を 去る 6 月 13 日に採択し、理事会と欧州議会に提示した。これに伴い、欧州共同体(欧州委員会)は WTO の TBT 協定(Agreement on Technical Barriers to Trade:貿易の技術的障害に関する協定)第 2.9.2 条に基づき、強制規 格案導入の目的、必要性について TBT 事務局を通じて他の加盟国に通報(7 月 26 日)を行なった。TBT 事務局 はこれを受け、WTO 加盟国に採択内容に関して、利害関係者のコメントを 60 日以内(2000 年 10 月 10 日付 G/TBT/Notif.00310/Corr.1 によりコメントの締切日を 2000 年 11 月 26 日まで延期修正された)に求めていたと ころ、当組合、貿易と環境専門委員会(委員長;蛇抜信雄氏 松下電器産業㈱ 環境本部環境審査室海外助成グ ループ部長)はこれを受け、次ぎのとおり貿易阻害をもたらす懸念のコメントを提出(9 月 27 日)した。 なお、我が国政府も、従来からドラフトの段階で特定有害物質の使用制限等に関し、米・加・豪・タイ・マレ ーシア等とともに TBT 委員会の場で懸念表明を行なってきたところ、今般も、日本政府としてコメントを提出 している。 TBT 委員会へのコメント TBT 委員会 2000 年 9 月 27 日 EU 廃電気電子機器指令案(WEEE)及び電気電子機器中の特定有害物質の使用制限に関する指令(ROS) 案の通報(G/TBT/Notif.00/310)に対する見解 電気電子機器の廃棄防止や有害物質の使用抑制等の目的については基本的に賛同するものの、 以下に示す 2 点に ついては、TBT 協定 2.2 に照らし、偽装された貿易制限的措置の可能性を否定することは出来ない。 ① 特定物質の使用禁止(電子電気機器の中の鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB および PBDE)につい ては、包括的に充分なリスク・アセスメントを行なった後、その必要性が証明されてはじめて実施されるべ きである。また、規制への技術的対応(代替性の可能性等)についても現在の技術上の情報をもっては過度 な要求である(例:電子部品をサブアセンブル基板やサブ回路基板に取りつけるとき等には 230〜250℃で も完全に溶けきらないような溶融特性をもったはんだが必要であり、この特性を得るためには 60%以上の鉛 を含んだ高融点はんだが必要となる。しかしながら、はんだにこのような溶融特性を与える材料は鉛以外に 見つかっていない) 。 ② 液晶ディスプレイ(LCD)および臭素系難燃剤を含むプラスチック等について分別回収された廃電気電子機 器より分離されなければならないこと(WEEE の付属書 II)は、科学的根拠に基づいた何ら明確な理由がな く、また、産業界に分離処理の際の時間的、人的負担等、多大な負担を強いることとなり、円滑な国際貿易 に阻害要因をもたらすことになる。 日本機械輸出組合 貿易と環境専門委員会 委員長 蛇抜信雄 JMC environment Update 24 Vol.2 No.4 (2000.11) WEEE に関するコメント、WTO・TBT 委員会へ提出 September 27, 2000 To: Committee on Technical Barriers to Trade Opinion on notification (G/TBT/Notif.00/310) of Proposed EU Directive on Waste Electrical and Electronic Equipment and Proposed Directive on the Restriction of the Use of certain Hazardous Substances in Electrical and Electronic Equipment (ROS) We herewith send our opinion in accordance with TBT Notification(G/TBT/Notif.00/310). While we basically agree to the objectives to prevent disposal of electrical and electronic equipment and to restrict use of hazardous substances, potentiality of disguised trade restriction cannot be denied in light of the Clause 2.2 of TBT agreement for the following two points: ① Use prohibition of specific substances (lead, mercury, cadmium, hexavalent chromium, PBB and PBDE contained in electrical and electronic equipment) should be implemented, after its necessity is proven through comprehensively sufficient risk assessment. Also, technical correspondence to the regulation (alternativeness) would be excessive requirement with the current technical information. (For example, for mounting electronic parts onto subassembly board or sub-circuit board, solder with melting characteristics that do not completely melt even at 230 – 250℃ is needed. In order to have such characteristics, high melting point solder containing 60% or more lead is needed. There is no other material found at present than lead that gives such melting characteristics to solder.) ② Requirement to separate Liquid Crystal Display (LCD) and plastics containing brominated flame retardant from separately collected waste electrical and electronic equipment (AppendixⅡof WEEE Directive) has no obvious reason based on scientific background and enforces hourly, personal and other excessive burden in separating treatment on the industry. It would eventually be an obstacle to smooth international trade. Nobuo Jyanuki; Chairman, Committee on Trade and Environment Japan Machinery Center for Trade and Investment JMC environment Update 25 Vol.2 No.4 (2000.11) 添付資料:WTO/TBT による通知文書(Notification) WORLD TRADE G/TBT/Notif.00/310 26 July 2000 ORGANIZATION (00-3080) Committee on Technical Barriers to Trade NOTIFICATION The following notification is being circulated in accordance with Article 10.6. 1. Member to Agreement notifying: EUROPEAN COMMUNITY If applicable, name of local government involved (Articles 3.2 and 7.2): 2. Agency responsible: European Commission Agency or authority designated to handle comments regarding the notification shall be indicated if different from above: Commission EC-TBT Enquiry Point 3. Notified under Article 2.9.2 [X], 2.10.1 [ 4. Products covered (HS or CCCN where applicable, otherwise national tariff heading. ICS numbers may be provided in addition, where applicable): Electrical and electronic equipment 5. Title, number of pages and language(s) of the notified document: European Commission Proposal for European Parliament and Council Directives on (1) Waste Electrical and Electronic Equipement and (2) the Restriction of the Use of Certain Hazardous Substances in Waste Electrical and Electronic Equipment (Ref: COM (2000) 347 Provisional , 2000/0154 (COD), 2000/0159 (COD)). ], 5.6.2 [ ], 5.7.1 [ ], other: The proposal is still a draft and is available in English, French and German. It is currently being revised by juristes linguistes. Once this has been done, it will be available in Danish, Dutch, English, Finnish, French, German, Greek, Italian, Portuguese, Swedish and Spanish. 6. Description of content: The proposed directive on Waste Electrical Equipment proposes: Producers to take responsibility of certain phases of the waste management of their products. Separate collection of Waste Electrical and Electronic Equipment through appropriate systems, so that users can return their electrical electronic equipment. In order to ensure improved treatment and re-use/recycling of Waste Electrical and Electrical Equipment, producers have to set up appropriate systems. In order to achieve high collection rates and to facilitate recovery of Waste Electrical and Electronic Equipment, users of such equipment must be informed about their role in their system. The proposed Directive on the restriction of the use of certain hazardous substances in Waste Electrical and Electronic Equipment will ensure that substances causing major problems during the waste management phase, such as lead, mercury, cadmium, hexavalant chromium and certain brominated flame retardants are substituted. JMC environment Update 26 Vol.2 No.4 (2000.11) G/TBT/Notif.98. Page 2 添付資料:WTO/TBT による通知文書(Notification) 7. Objective and rationale, including the nature of urgent problems where applicable: The proposed Directives aims to protect human health and the environment. The principle objectives are to protect soil, water and air from pollution caused by current management of Waste Electrical and Electronic Equipment, to avoid the generation of waste, which has to be disposed of and to reduce the harmfulness of Waste Electrical and Electronic Equipment. It seeks to preserve valuable resources, in particular energy. The proposed Directive also aims to harmonize national measures on the mangement of WEEE in the Internal Market. 8. Relevant documents: See section 5. 9. Proposed date of adoption: Approximately end 2001/ early 2002 Proposed date of entry into force: The proposed two Directives will now be considered by the Council of Ministers and the European Parliament. The proposal for a Directive on the restriction of the use of certain hazardous substances requires the substitution of various heavy metals and brominated flame retardants in new electrical and electronic equipment from 1 January 2008 onwards. 10. Final date for comments: 60 days from date of notification. 11. Texts available from: National enquiry point [ number of the other body: ] or address, e-mail and telefax Commission CE DG Enterprise Unit F/2 Fax: +32-2-299-5725 Email. [email protected] The draft proposals in English, French and German can be accessed via the internet at: http://europa.eu.int/comm/environment/docum/00347_en.htm. JMC environment Update 27 Vol.2 No.4 (2000.11) 連載 欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 ⑪ I. EU の有機スズ(ジメチルスズ、ドデシルスズ、モノ 1. 欧州委員会、PVC グリーンペーパーを公表 本誌前号で報告したとおり、欧州委員会は、待望 の「PVC プラスチックによる環境への影響に関す るグリーンペーパー」を 2000 年 7 月 26 日に採択 した。その後、同グリーンペーパーの本文が公表 された1。 ブチルスズ)のケースと異なるようである。欧州 委員会は現時点で、鉛を基剤とする化合物および カドミウムを PVC 安定剤として使用することに関 して、まだ十分な評価がなされていないと主張し ている。利用可能な情報によると、PVC に添加さ れる鉛およびカドミウム安定剤は、利用段階で PVC に統合されたまま残る可能性がある。したが って、予測段階および排除段階における潜在的環 同グリーンペーパーは、関連するすべての側面を 境汚染の可能性がある。労働者の曝露を最低限に 検討するために、1999〜2000 年に欧州委員会が 押さえるために、これらの段階で特定の予防・防止 開始した包括的調査計画の結果を中心にまとめら 手段を講じる必要がある。欧州委員会は、埋立て れている。2000 年 4 月に、4 件の調査が公表され 処理あるいは焼却処理される市町村の固形廃棄物 ており、また、1 件が公表されたところである(本 に含まれる鉛の総量にこれらの製品が占める割合、 報告のセクション 3 を参照) 。 あるいはこれらの廃棄物が埋立て施設の環境下で どう反応するかに関する情報がないと述べている。 <添加剤> 焼却処理の場合、PCV に含有される鉛およびカド 初期における一連の問題は、特定添加物、特に鉛、 ミウムは、ほぼすべて、クリンカー(焼塊) 、灰お カドミウム、有機スズおよびフタル酸エステル類 よび残留物中に発見されている。 の使用に関するものである。鉛、カドミウムおよ び有機スズ化合物は、熱と光による劣化防止を目 可塑剤は、軟性の PVC 製品の製造に使用されてい 的に、PVC 製品の安定剤として使用されている。 る。1997 年、PVC 可塑剤の 93%がフタル酸エス PVC に使用されているものを含めて鉛を基剤とす テル類(欧州では約 900,000 トン生産)であり、 る安定剤は、毒物として分類されている。また、 その他の可塑剤(アジペイト、トリメリテイト、 (指令 67/548/EC によると)発癌物質としても分 有機リン、エポキシ化大豆油)はごくわずかしか 類されている。 使用されていなかった。欧州委員会は、フタル酸 エステル類以外の可塑剤がどのような影響を環境 カドミウムを基剤とする化合物は、同指令では、 に与えるかについては情報が限られていることを 有害性、毒性または高度の毒性または発癌性、お 認めており、適切な評価を下すにはさらに情報収 よび環境に対する危険性(エコ毒性)がある物質 集が必要であるとしている。したがって、グリー として分類されている。鉛およびカドミウムは分 ンペーパーではフタル酸エステル類を重視してい 解しにくく、特定の臓器に蓄積する。ジオクチル る。ヒトの健康や環境に与える潜在的リスクがあ スズは免疫系に有害であることを示唆する情報も ることから、そのうちの 5 種類は、3 つの最優先 ある。この点は、PVC 安定剤として使用される他 1 リスク評価リストに入れられている。このうち 4 種類については今年末に、残る 1 種類については 必要な情報についてはすべて下記サイトを参照すること。 http://europa.eu.int/comm/environment/pvc/index.htm JMC environment Update 2001 年に評価結果が出るはずである。 28 Vol.2 No.4 (2000.11) 欧州環境規制動向〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑪ リスク評価プロセスの結果を待つまでもなく、ス 非強制的措置を提言している。このような背景の ウェーデンおよびデンマークは、フタル酸エステ もとに、欧州委員会は、欧州 PVC 業界が PVC の持 ル類の使用を最低限に押さえるための戦略および 続可能な開発を奨励するために自主的取組みの実 行動計画の策定を開始した。統一市場における現 施に至ったことに触れている。この自主的取組み 実的問題を創り出すリスクを覚悟のうえ、EU は断 は、特に重金属を使用する安定剤の使用削減、一 固としてこの問題に取組む必要がある。 部の消費済み廃棄物の機械的リサイクルおよび新 リサイクル技術の開発に適用されるものである。 2001 年初期からの実施が予定されている。 <廃棄物管理> 欧州では毎年約 360 万トンの消費済み PVC 廃棄物 が発生している。1970 年代および 1980 年代に市 協議プロセス終了後、欧州委員会は、このような 場シェアを著しく伸ばした特定 PVC 製品の平均寿 業界の自主的取組みの他に、PVC および添加剤の 命が長いことが理由であるが、 今から 20 年後には、 使用に関する指令案など提案されている法的措置、 PVC 廃棄物の量が約 80%増加する見込みである。 さらに現行指令の調整、加盟国への提言、自主的 グリーンペーパーの中では、多様な廃棄物の流れ 取組みの改善など一連の手段の利用について検討 で問題となっている PVC 廃棄物の管理を改善する することになる。 ための全般的な共同体戦略にもとづく利用可能な 措置とそれら効果に関する問題提起がなされてい グリーンペーパーは、公開協議文書である。すな る。 わち、業界、NGO など関係者全員が、2000 年 11 月末日までに同報告書に関する見解を表明するよ 現在、埋立て処理は、EU のいわゆる消費済み廃棄 う求められている。 物管理システムの主流をなしている。毎年、PVC 廃棄物 260 万トン〜290 万トンが埋立て処理され 2. PVC 業界、 PVC 使用関連問題に関する欧州 グリーンペーパーを批判 欧州委員会が公表した PVC 使用に関連する環境問 題グリーンペーパーに対しての欧州プラスチック 業界の反応は芳しくなかった。同業界は、グリー ンペーパーの PVC ライフサイクル分析を不服であ るとしており、記者発表で次のように宣言してい る。 「グリーンペーパーに示された提案は、水平的 イニシチアチブ研究そのものも含めて、同委員会 が収集した大量の情報に反するものであり、その 根拠として、PVC を特定対象とする措置の必要性 を明確に否定している。グリーンペーパーは、PVC をもっとも重要な近代的合成素材の一つと認識し ている。水平的イニシアチブとして 3 年間にわた り実施された研究成果を受けてまとめられたもの であるが、PVC 特有の重要問題は提起されていな い。 」業界は、 「従来の PVC 反対者を優遇するもの で、水平的イニシアチブの調査結果と矛盾する妥 協と思われる。 」と、欧州委員会の論点への失望を 述べている。廃棄物管理重視については、PVC 固 有の問題ではなく社会全体の一般的問題であり、 「他の素材について、このような水平的イニシア チブによる調査を実施しても、同様の結論に達し ている。機械的リサイクルは、廃棄物のごく一部 (約 100,000 トン) にしか適用されていないため、 EU では、毎年約 600,000 トンの PVC が焼却処理 されている。欧州委員会によると、PVC の量は 2010 年までに 30%、2020 年までに 80%増加する 可能性があり、これは特に、長寿命の廃棄物が産 出される量(window flame)が著しく増加するた めである。また、 (特に、廃棄物減量、リサイクル 推進、埋立て処理の範囲の制限など各種の戦略を 考慮した)廃棄物の量および種類の変化とは別に、 グリーンペーパーでは、機械的リサイクル、化学 的リサイクルおよび焼却など PVC 廃棄物に適用す る各種の処理法とその環境への影響を評価してい る。PVC を焼却した場合に発生する排気ガスおよ び排気ガス処理後の残留物の中性化は可能である が特に塩酸(HCL)などは、環境に悪影響を及ぼ す。 <政治的選択> PVC 環境問題を検討・評価し、現状および考えら れる実践についていくつかの問題提起をした後、 グリーンペーパーでは、共同体の PVC 戦略の一部 として描かれる可能性もある一連の強制的および JMC environment Update 29 Vol.2 No.4 (2000.11) 欧州環境規制動向〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑪ らリサイクルに切替えると資金の節約になる2。消 たであろう」と、見当違いであると述べている。 費済み PVC 廃棄物を焼却処理せずにリサイクルま 業界はまた、グリーンペーパーには「PVC に関す たは埋立て処理した場合のコストを試算し、環境 る自主的取組み(the PVC Voluntary Commitment) 効果の方が追加コストを上回るという結果を出し という業界による製品の持続可能な将来を達成す ている。 るための積極的な取組みの重要性が十分尊重され ていない」という事実に、見解の中で、非常に深 同調査では、消費済み PVC 廃棄物だけを対象とし 刻であると遺憾の意を示している。 「われわれは、 ているため、PVC 製造または PVC 製品の取扱い・ すでに実施されている自主的取組みが、グリーン 据付け時に発生する廃棄物、すなわち消費前 PVC ペーパーに示された問題への対策になるものと確 廃棄物は除外している。消費済み廃棄物は、現在 信している。PVC 業界の全体合意によるものであ PVC 廃棄物の 88%を占めているが、2020 年まで るため、他のいかなる手段よりも迅速かつ効果的 には廃棄物の流れのわずか 52%になる。 にすぐれた製品管理が提供できる。ダイナミック で測定可能な手法であり、レビュー日程、協議お 現在の試算によると、2020 年には消費済み PVC よび外部機関への検証作業の委任など、統制機能 廃棄物の 45%が焼却施設で処理される。現在の も備わっている」と、欧州ビニール製造業者協会 15%から飛躍的な伸びを示すことになる。同時に (ECVM: European Council of Vinyl Manufacturers) 会 長 兼 PVC 自 主 的 取 組 管 理 委 員 会 (the PVC リサイクル率は 9%の水準にとどまり 46%は埋立 て処理されると予想している。 Voluntary Commitment Management Committee) のプラスカ委員長(J. P. Plaska)は発言している。 研究者は、廃棄物の焼却処理を減少させ、リサイ クル率を 15%まで増大させるとコスト効果が上 業界にとって、今回のグリーンペーパーの刊行は、 がるとの結論を示している。しかし、リサイクル 「PVC に関する議論の偏り」が塩素業界の 250 万 率を 22%まで増大すると、全体的コストを上昇さ 人の雇用に間接的な影響を及ぼし、欧州 PVC 業界 せてしまい、同時に、廃棄物をリサイクルするよ の競争力にも影響しかねないものであり、好まし り埋立て処理した方がコスト節減になるという。 いものではない。 「われわれは、素材を徹底的に検 また、建築廃棄物を埋立て処理することによって、 討する場合に、廃棄物管理のような限定的側面だ 2020 年の焼却処理率を予想の 45%から 30%とす けではなく、ライフサイクル全体を検討しなけれ るシナリオの場合、環境効果を計算に入れると、 ばならないと確信している。さらに、代替物質の コストを上回る資金的メリットがあるという。 正しい理解にもとづいて検討する必要があり、社 会経済的価値も考慮すべきである」と、プラスカ PVC 焼却処理は、有害な HCL ガスを含む排ガスを 氏は述べている。 除去するために特別な中和剤が必要なので、その ための追加コストを回避することが主要な節約要 PVC 製造業者およびその業界パートナーは、科学 因であった。リサイクルへの移行の方が、安価な 的根拠のある結果を確保するため、グリーンペー 埋立て処理に比べてコストがかかるので、リサイ パー公表後の協議期間中、欧州議会、加盟国代表 クル制度はコスト高である。但し、リサイクルコ その他の関係者と協力する意向である。 ストは、新 PVC 製品との競合を基準に変化するの で、予想が難しい。 3. 欧州委員会、PVC 焼却処理に関する調査を 公表 PVC が環境に及ぼす影響に関するグリーンペーパ ーのデータとして、欧州委員会の委託を受けて実 施された最新調査によると、 PVC 廃棄物を焼却か JMC environment Update 実際、最高品質のリサイクル品でなければ、新 PVC との競合や置換えは無理である。かつて、この種 のリサイクルは十分な競争力をもてず存続しなか 2 30 Bertin Technologies、PVC が焼却時に発生する排気ガス残さ の量と有害性に及ぼす影響。 Vol.2 No.4 (2000.11) 欧州環境規制動向〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑪ ったことがある。電線に含まれる銅など有益な金 4. 欧州議会、ELV 指令を承認 属を同時回収するため、低品質のリサイクル品し 2000 年 9 月 7 日、欧州議会は、ELV(end-of-life か生き残らなかった。このような市場の勢力に対 vehicles:使用済み自動車)指令の折衷案を正式に 抗するには、法的整備によるテコ入れが必要であ 承認した。これにより、EU 諸国を代表する閣僚理 ろう。 事会による調印への道筋がついた。 環境への影響については、大気汚染への影響を重 新 ELV 指令は、リサイクル可能な素材の使用目標 視し、コストベネフィット分析ではユーロを用い を段階的に引き上げていくとともに、自動車の回 て計算された。節約の原因は、焼却施設から発生 収およびより安全な処分に関する規則を定めるも する排ガスを防止できたことである。リサイクル のである。 を選択した場合の効果をさらに大きくしたのは、 再利用 PVC によって、新素材の製造を縮小できる 同指令にもとづき、各国政府は、最終所有者から からである。事実、これは、窒素酸化物(NOx)、 中古車の「認可処理施設」への無料返却を実現し 二酸化硫黄(SO2)、二酸化炭素(CO2)および粒子状 なければならない。また、自動車生産者は、ELV 物質などを含む焼却以上に望ましくない排気ガス 処分にかかるコストの全額負担または「実質的負 を生み出す産業工程なのである。 担」を担わなければならない。 PVC 安定剤として使用される重金属は、PVC を埋 新たな要求事項は今後段階的に実施される。「新 立て処理してもきわめて高い安定性を示すと予想 車」の処分/回収に対する生産者責任−2002 年 6 されているが、焼却施設の焼却灰から漏れる可能 月以降の市販車を対象−は、2002 年 7 月 1 日から 性がある。フタル酸エステル類などの可塑剤の場 適用される。それ以前に市販された自動車に対す 合は逆である。埋め立て地から水系へと漏れる可 る生産者責任は2007 年1 月1 日より有効となる。 能性はあるが、焼却中に完全に分解される。 2006 年 1 月 1 日までに、少なくとも自動車の平均 同調査では、大気汚染を重視した分析の結果、こ 重量の 85%を再利用または回収しなければなら れらの添加剤が環境に与える影響については、影 ない。また、2015 年には 95%に引き上げられる。 が薄くなったことを認めている。フタル酸エステ さらに、2003 年 7 月 1 日以降に市販される新車に ル可塑剤は、埋立て処理した PVC から水域および は、電池、ホイールバランスウェイト、ハンダ、 土壌に溶出する可能性があり、埋立て処理への切 合金に含まれる鉛など特定の例外項目を除き、鉛、 替えという選択肢の魅力を大幅に損なう可能性が 水銀、カドミウムまたは六価クロムが含まれてい ある。しかしながら、研究者の主張によると、埋 てはならない。六価クロムは、腐食防止用コーテ 立て処理のフタル酸エステル類は別として、同調 ィングの場合、自動車一台につき 2 グラムまで認 査から導き出される環境効果コストは、おそらく められる。水銀は、電球や計器盤のディスプレイ 焼却処理路線からの変更を支持する調査結果の裏 用のみ認められる。 付け以外のなにものでもないという。 現在の条文を見ると、初期段階で問題になったプ この調査結果は、欧州委員会の PVC に関するグリ ラスチックのリサイクル問題に関しては、大幅に ーンペーパーにフィードバックされており、今後 譲歩した内容となっている。序文に「ELV の全プ の PVC 廃棄物の流れの管理案の根拠として使用さ ラスチックを対象とするリサイクルは継続的に改 れる可能性がある。主要な資金的障壁は、他の廃 善すべきものとする」とあり、また、欧州委員会 棄物とは別に PVC 廃棄物を回収するコストであろ は「現在、ポリ塩化ビニール(PVC)が環境に与える う。また、種類の異なるプラスチックをリサイク 影響を検討中である」としている。さらに、 「欧州 ルするための分別コストがかかる場合もある。 委員会は、今回の作業をもとに、自動車への配慮 を含めて、PVC 使用に関する適切な提案をする」 と明言している。 JMC environment Update 31 Vol.2 No.4 (2000.11) 欧州環境規制動向〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑪ 5. ヴァルストレム環境コミッショナー、 2002 年京都議定書の発効をめざし、具体策の 実施を先進国に要請 フランスのリヨンで開催された国際気候変動会議 では、欧州委員会を代表してヴァルストレム環境 コミッショナーが、154 カ国の代表者を前に、次 回の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP6: 今年 11 月にハーグで開催)の成功、2002 年京都議 定書発効をめざし、先進国に再度協力を要請した。 欧州連合は温暖化ガス排出の 1990 年水準への安 定化に向けて行動していることに触れ、同環境コ ミッショナーは、先進国の排出量が一貫して上昇 傾向にあるのは、京都公約達成の実現性を著しく 損なうものであるとし、この警戒すべき傾向を逆 転させるには、さらに努力を傾注する必要がある と強調した。 吸収能力)への依存に関する配慮を求めた。ブラッ セルでの記者会見で、ヴァルストレムコミッショ ナーは、カーボンウェル、柔軟なメカニズムの実 践、開発途上国の参加など全体的取組みにおける 進捗状況の格差を考慮すると、「リヨンでは成果 をあげることができたが、まだハーグで達成しな ければならないことも多い」と述べた。 6. EU 枠組み合意不在の中、環境税は増加傾 向 欧州環境庁(EEA: European Environment Agency) の報告書によると3、欧州 8 ヶ国が 2001 年までに 炭素税を施行する。これは、1996 年の数字の 2 倍 である。まもなく刊行予定の報告書の内容を事前 に紹介する EEA サマリーでは、欧州における環境 税の実施状況および展望が詳細に検討されており、 欧州共通の枠組みが存在しないにもかかわらず、 エネルギー税の導入が増加傾向にあることが示さ れている。 「われわれは、すべての締約国が京都議定書のさ まざまな側面の効果的実施をめざし、規則および 様式の策定に熱心に取組んでいることを理解して いる。EU は、同議定書の環境面の統合性を確保す る実行可能かつ有効な規則の確立を追求している。 フランス、ドイツ、イタリアおよび英国は、まも これらの規則には、京都議定書に定められた目標 なく、デンマーク、フィンランド、オランダおよ を尊重するためにも、非遵守に対して厳しい結果 びスウェーデンと同様に、二酸化炭素(CO2)排出量 でのぞむ厳格な遵守体制が含まれる」と、同コミ 削減を目的とする税を導入する。しばしば炭素税 ッショナーは述べている。移行経済諸国および開 と呼ばれるこの種の環境税は、特定エネルギー源 発途上国に対して模範を示すために気を引き締め の使用を対象として大気汚染削減をめざすもので るよう先進国に呼びかけるとともに、同コミッシ あり、通常は、より広範な一括環境税の一部とし ョナーは、重点的行動の中から以下の項目に触れ ている。 た。 このような一括環境税には、環境に有害な影響を a) クリーンエネルギー、再生可能エネルギー資 与える行為に関連する各種の活動および製品を網 源の生産、持続可能な交通手段への大規模投 羅する様々な税が含まれる。95%が輸送またはエ 資 ネルギー関連の活動に対する課税であり、その他 b) クリーン開発メカニズムが、汚染を軽減する 5%は、排出、化学物質、廃棄物さらには水の抽出 一方で LDC の開発を刺激できるよう、COP6 など拡大の一途をたどる各種活動に対する課税で において採択される決定 ある。 c) 各国政府および企業が利用体制の準備に入れ るよう、柔軟性メカニズム(汚染ライセンス 環境税は、10 年前に比べて、税収総額に貢献する の取引および目標の共同施行)実施のための 割合が高まっている。報告書は、環境税が歳入総 額に占める割合は、1990 年の 6.17%から 1997 年 規則および基準の明確化 には 6.71%と増加を示している。1990 年〜1997 年のグリーン課税の伸びは、資本、消費、労働税 技術革新および一貫性あるエネルギー課税戦略に 大きな期待を寄せる一方、同コミッショナーは、 目標の実行にあたり、カーボンウェル(森林の炭素 JMC environment Update 3 32 欧州環境庁。 「EU 環境税の導入における最近の動向」 。 Vol.2 No.4 (2000.11) 欧州環境規制動向〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑪ は、激しい論争を生む結果となった 1997 年エネ の伸びを大きく上回っている。 ルギー税提案について討議するため、12 月の臨時 多くのケースにおいて、新環境税は全般的な政策 閣僚理事会で環境閣僚と財務閣僚による合同会議 変更を表す。つまり、政府は、労働者から環境に を計画している。 税負担がシフトすることを狙っているのである。 これには、所得税減税という側面もあり、また、 一方、欧州委員会は、航空燃料税を検討するよう 社会保障負担の緩和という企業にとってのメリッ 加盟国に圧力をかけている。同委員会には、灯油 トという側面もある。要するに、雇用の促進と環 税による環境改善の実効性をあげるには国際ルー 境の改善といういわゆる二重配当を得る狙いがあ ルが必要であるとの認識がある。しかしながら、 る。 まず、欧州において航空機燃料が享受している石 油税免税措置を廃止しなければならない。 課税による環境へ影響を示す例がある。有鉛ガソ リンに対する燃料税の引上げは、無鉛燃料への移 さらに、欧州委員会は、その他の公租公課によっ 行を促す結果となっている。また、硫黄含有量を て、その環境への影響に対する負担増を航空業界 基準に燃料コストを引きあげるエネルギー課税政 に求める提案をしているが、「欧州では航空輸送 策を採用している国では、ユーザーの硫黄含有エ に対する課税がないに等しい」ので、これには重 ネルギー源離れが起きた。 要な意味がある。国際ルールは、エネルギーの使 用ではなく排出を基準とする大気税を除外するも さらに、税制評価の結果、税収をエコロジー利用 のではない。 した場合、環境への効果が高いことが明らかにな った。農薬や肥料に対する課税などスウェーデン また、農業には将来的な課税余地があるものの、 のグリーン農業税は、税収を農家の研修として利 状況はきわめて複雑である。農業が環境に与える 用することで長期的な環境効果をめざすものであ 否定的な側面と肯定的な側面をバランスよく評価 る。フランスおよび一部の新規加盟国では、水域 することは困難である。農薬および肥料の排出な への排出に課税することにより得た税収も環境投 どの明確なターゲットのみ容易に測定されている 資に還元している。 が、これらはすでに多くの加盟国で課税対象とな っている。 報告書によると、意識向上もエコ税制の副産物で ある。どのようなタイプのグリーン税制改革も、 EEA サマリーでは、慎重な税制のデザインが肝要 市民や大規模な産業界に対して、取組むことを熟 であると示唆しながらも、環境税を支持する姿勢 考すべきであるという問題があることを警告して が示されている。環境目標を達成するには、一定 いる。 量の化学物質、エネルギーまたは水資源を免税扱 いにすること、環境への影響を基準に段階的税率 欧州諸国は、欧州共通エネルギー税が整備されて を設けることなどが必要である。また、エネルギ いないにもかかわらず、グリーン税制へと移行し ー効率の改善を促進するなど、税制措置以外に補 ていることを、この報告書は示している。なんら 完的な政策が必要である。報告書では、これらを かの汎欧州レベルの税制を採択するには、加盟国 考慮することで、欧州共通の枠組みの障害となっ 15 ヶ国すべてが提案を支持しなければならない。 ているもののいくつかを取り除くことが可能であ しかし、依然として数ヶ国は、欧州委員会が 1997 るとしている。 年に提案したエネルギー調和税導入の阻止を続け ている。 EU がさらに拡大し、 中欧・東欧諸国(CEEC) 欧州委員会が実施した、欧州におけるグリーン税 も加盟すると、全員一致の達成はますます困難に 制による経済および環境への総合的な影響に関す なろう。 る調査研究が年末に公表される予定である。1996 年の報告書の内容を更新した欧州環境税に関する 年末まで輪番制による EU 議長国を務める仏政府 JMC environment Update EEA 報告書の全容は秋に公表されるはずである。 33 Vol.2 No.4 (2000.11) 欧州環境規制動向〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑪ 環境と持続可能な開発をすべての政策に統合する ターが受ける影響をさらに正確にテストするなど、 上でキーとなる環境政策手段として EEA が捉えて 最新の分析を実施した。英国の製造業では 0.4% いることが含まれる。 増加の約 120,000 人の雇用が創出され、CO2 排出 量は 1990 年水準から 2%減少する。エネルギー効 率の増大という点から、エンジニアリング部門の 7. 欧州委の委託研究、グリーン税制による経 済活性化を示唆 欧州委員会の委託研究によると、環境税は欧州の 雇用創出および経済活性化につながる可能性があ るという4。いくつかのコンピュータモデルを駆使 した結果、研究者は、汚染行為税の税収を労働者 関連減税の財源にした場合、雇用の創出および環 境の改善という「二重の配当」が生まれることを 明らかにした。 雇用が新規雇用創出の中でもっとも大きな割合を 占めるとされる。 同研究では、環境税の場合、ゴミ埋立てなど一連 の非エネルギー関連活動を課税対象とすることも 可能であるとの認識から、税のデザインは政府の 管轄事項としている。しかしながら、同研究の総 括メッセージとして、欧州委員会が EU エネルギ ー税の承認を加盟国に求めていく中で、必要な武 器として環境税を支持する立場が明確に示されて 二重配当理論はグリーン税政の支持者がよく引用 いる。 するが、環境に有害な活動に税負担を求めること には、雇用創出および環境パフォーマンスの改善 理論は正しいことを示した。 8. 欧州議会環境委員会、遡及的環境被害法を 要求 EU は、域内の企業に対して、過去に発生した被害 であっても、何年も前に溯り環境被害に対する法 的責任を追及すべきであると、欧州議会の中でも 影響力の強い環境委員会が最近明らかにした。 既存の経済学のコンピュータモデルを駆使して、 欧州議会の環境委員会は、企業に石油や化学物質 欧州委員会の 1997 年エネルギー税提案が分析さ の流出などの行為に対する責任を求めるという欧 れた。同提案は、エネルギー集約産業には一定の 州委員会の計画を支持したものの、要求事項を強 免除措置を設けた上で、特定燃料税に EU レベル 化すべきであると発言し、拘束力はないが最近決 の水準を設定するものである。雇用の微増と CO2 議した正式意見書の中で「環境責任に遡及的効果 という 2 つの大きな利点があるというものである。 英国のコンサルタント、AEA 環境テクノロジー (AEA Technology Environment)、バース大学 (the University of Bath) が実施した理論的分析と コンピュータモデルによる実験の結果、二重配当 の著しい減少という二重配当効果が明らかになっ をもたせる規定を定めるべきである。EU 環境責任 た。 法の発効前に発生した被害が除外される可能性が あれば、責任体制の脆弱化につながる」と、述べ 雇用創出はモデルによって異なるが、その範囲は ている。 現在の労働力の 0.11%〜0.33%であった。各モデ ル毎に、経済がどのように機能するかに関する仮 中古車のリサイクル費用の負担を自動車メーカー 定が異なるからである。環境税を労働関連コスト に義務づける EU 法が今年成立したが、これは遡 の削減の財源に利用した場合、すべてのモデルで 及法であるとして、業界は困惑をすでに示してお 雇用が若干増大した。国内総生産(GDP)に占める り、過去の過ちに対して法的措置を講じられるよ 割合の伸び率は、使用するモデルによる。 うな試みに、企業側が反撃してくるのは必至であ る。ある業界筋によると、遡及的責任体制が構築 また、研究者は、1997 年の税制案によって各セク されると、当時としては全く合法的に実施された 廃棄物処理などの行為に対して金銭的賠償を求め 4 られる可能性があり、業界にとって「悲惨なこと」 詳細は下記サイトを参照すること。 http://europa.eu.int/comm/environment/enveco/studies2.ht m JMC environment Update であるという。「当時としては正しく実施した行 34 Vol.2 No.4 (2000.11) 欧州環境規制動向〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑪ 10. 欧州議会、新 EU 水資源政策改革法を承認 2000 年 9 月 7 日、欧州議会は、EU 水資源政策改 革法を最終的に承認した。今後、同法は、EU 各国 政府を代表する閣僚理事会の署名を得なければな らない。 為で、支払わなくてもよかったはずの多額の支払 いを求められる可能性がある」とのことである。 環境委のメンバーであるドイツの中道左派議員ベ レンド(Berendt)氏は、新法に遡及力を与えるこ との合法性に疑問を呈し、欧州議会の法律顧問か らの専門的意見を要求している。 当初、欧州議会の環境委員会は、同案を「現在お 欧州議会の法務委員会がまもなく政策文書の中で よび将来における世代に良質の水を適切に供給す 見解を示すことになっており、その後数ヶ月間、 るという[EU の]もっとも基本的なニーズを確保 全体会議でこの問題が討議されることになる。 する歴史的機会」と見なしていた。 同委員会いわく「時として相反する各種の方法、 9. 欧州委員会、EU 経済政策への環境配慮の 統合を提言 持続可能な開発に関するアムステルダム条約の要 求事項に対応するため、欧州委員会は、EU 経済政 策への環境配慮の統合を提言した5。2000 年 9 月 20 日にソルベス(P. Solbes) (経済および金融問 題担当) 、ヴァルストレム(環境問題担当)両コミ ッショナーの共同イニシチアチブによって採択さ れた欧州議会および閣僚理事会に対する通達では、 高度の環境保護が欧州の競争力に不利に働くとさ れる主張に対して、拒否の表明がなされている。 逆に、多くの環境問題に含まれる市場の力を利用 した欧州環境政策へのアプローチこそ、リスボン 欧州サミットで課せられた目標を達成する手段で あると主張している。すなわち、世界最高の競争 力とダイナミックさを備え、持続可能な経済成長 が達成可能な共同体を形成することである。この 新しいアプローチは段階的に導入すること、また、 補完措置として、移行期に大きな困難に直面する セクターを支援するための構造的政策を講じなけ ればならない。欧州委員会は、構造改革に関する 多国間サーベイランス体制の実施に、経済活動が 環境に及ぼす影響も対象として含めるよう経済・ 財政理事会(the EcoFin Council)に提案している。 これによって、経済政策に関する一般的指針を「環 境統合」目標に完全に盛り込もうというのである。 さらに、同委員会は、質および「持続性」の両面 から財政を定期的に検証し、税制および予算に関 する政策によって環境に影響を及ぼす方法を考慮 すべきであるとしている。 5 欧州委員会は、EU 経済政策への環境問題の統合を求めてい る。IP/00/1029、2000 年 9 月 20 日。 JMC environment Update 35 定義および目標を採用している現在の一貫性に欠 ける法体系」に代り、水資源政策における共同体 の行動の枠組みを規定する新指令は、河川流域の 総合管理を視野に入れた一段と幅広い水資源保護 へのアプローチを各国政府に求めている。 ライン川やダニューブ川など主要河川の改善に関 する国際協力に触発されて、同枠組み指令により 「姉妹」指令が策定される。これらの姉妹指令は、 つぎはぎ状態ともいえる水資源分類毎の水質規制 および最終的な時点における汚染物質排出規制に 置換される。 同指令の第 22 条には、置換される 7 つの法律と 新姉妹指令の採択までの汚染物質に関する移行措 置規定が列挙されている。 欧州議会の決議案は、欧州委員会の原案の妥協案 であった。これは、欧州議会と閣僚理事会との 1 ヶ月におよぶ調停交渉の中でまとめられ、2000 年 6 月 28 日に合意に達したものである。 11. 燃料に関する環境基準: 欧州委員会、ド イツおよびイタリアに警告 欧州委員会は、ドイツとイタリアが石油およびデ ィーゼル燃料に関する環境基準の設定を定めた 1999 年指令を発効させるための国内法を欧州委 員会に送付してこないとして、第 2 警告書として 「道理にもとづく意見書(Reasoned Opinions)」の 発行を決定した。この指令を国内法に導入する期 限は 1999 年 7 月 1 日であった。欧州委員会は、 1999 年 11 月に、第 1 警告書として正式な通知書 Vol.2 No.4 (2000.11) 欧州環境規制動向〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑪ を両加盟国に送付しているが、両国からの回答が プによってまとめられた事前レポートによると、 ないため、同案件に関してさらに働きかけること 1999 年末までにドイツが達成した二酸化炭素削 を決定した。 減量は全体で 1990 年の水準のわずか 15.3%であ り、エネルギーに課税する「エコ税」あるいは再 燃料基準指令(石油およびディーゼル燃料の質に 生可能エネルギーを対象とする助成金制度など、 関する欧州議会および理事会指令 98/70/EC と理 すでに成立している施策でもその割合は 18%か 事会修正指令 93/12/EEC)では、健康および環境を ら 20%程度までしか引き上げられないという。 根拠として、ポジティブ・イグニション型および コンプレッション・イグニション型エンジンを搭 同レポートによると、追加措置により二酸化炭素 載した自動車に使用する燃料の技術仕様を定めて 排出量をさらに年間 5000 万〜7000 万トン削減す いる。特に、同指令では、有鉛ガソリンの販売禁 る必要があり、この削減内訳は、個人住宅・公共 止措置を導入し、ディーゼル燃料の基準を定めて 建築物からの排出が 1800 万〜2500 万トン、工 いる。1999 年末、欧州委員会は、イタリアに対し 業・エネルギー生産からの排出が 2000 万〜2500 て、部分的な法の取消し措置として 2002 年 1 月 1 万トン、交通からの排出が 1500 万〜2000 万トン 日まで有鉛ガソリンの販売を認めた。しかしこれ となっている。 は、同指令のすべての規定について、同指令に定 められた期限までに国内法に置き換えなくてもよ 同レポートには具体的対策がいくつか示されてい いという意味ではない。欧州委員会が認めた部分 る。 的な法の取消し措置に関する規定も通常の期限内 に置き換えられる。但し、有鉛ガソリン禁止導入 政府は、まず 2001 年中頃までに、公益企業に生 期限として別の記日が明示されることになる。 産割当の達成を義務づけ、熱・電力同時生産技術 を推進する法律を成立させるつもりであると、環 境大臣は述べた。この施策だけで、2005 年までに ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 年間 1000 万トンの二酸化炭素排出量が削減でき、 2010 年までには総量で 2300 万トンの削減が達成 できるという。 II. ドイツ 政府はまた 2001 年秋までに「エネルギー節約政 1. 政府、3 分野個別 GHG 削減目標設定に合 意 2005 年までに二酸化炭素排出量を 1990 年の水準 から 25%削減するという公約を達成するため、政 府は、十分な政府内議論を経て、2000 年 7 月 26 日、交通、民間・公共建築物、工業・エネルギー 生産の3分野について、温暖化ガス削減目標を個 別に設定することで合意した。 令(Energy Savings Ordinance) 」を成立させると いう。同政令により、新たな建築物におけるエネ ルギー消費量を削減するために、一段と厳しいエ ネルギー効率基準が設定される見込みである。 内閣は、旧い建築物の改築を促進するための優遇 措置を導入することにも同意している。但し、具 体的な税額控除あるいは助成金の額などは発表さ れていない。5 月には、緑の党の議員が、かかる しかし、削減目標の達成に必要な施策の概要を示 優遇措置の財源として総額 6 億ドイツマルク(約 す詳細計画、すなわち「国家気候保護戦略(National 284 億円)を計上するよう提案している。 Climate Protection Strategy)」については、以前か ら策定が望まれているものの、夏の終わりまでに また、新たに設立される情報庁は、国民および経 公表される見込みはないと、トリティン(J.Trittin) 営者を対象に気候保護問題に関する啓蒙活動を支 環境大臣は記者会見で発言した。 援していく予定である。 内閣によりすでに受理され、各省庁間作業グルー JMC environment Update さらに、すべての気候保護対策を合わせると、今 36 Vol.2 No.4 (2000.11) 欧州環境規制動向〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑪ 後数年間で 25 万人の新規雇用が見込まれると、 環 III. 英国 境大臣は発言した。 1. 英国およびドイツ、気候変動対策を公約 今週、英国およびドイツは、共通目標を設定した。 リオの地球サミット開催後 10 年目にあたる 2002 年までに京都議定書を実施するという目標である。 2. 排出権取引制度導入を計画 環境省によると、政府、業界、フランクフルト証 券取引所は、京都議定書に定められた国家気候変 動目標を達成するための支援策として、国家排出 権取引制度の検討に着手する。 ミーチャー(M. Meacher)英環境担当相およびト リティン独環境・自然・原子炉安全担当相が協力 体制を取ることになったと、欧州および日本の新 緑の党の議員およびフランクフルト証券取引所に 聞記事で報道された6。 よると、同取引制度の輪郭はまだはっきりしない が、数週間のうちに専門家グループが設立され、 フランスのリヨンにおける国際気候変動会議開催 検討が開始されることになる。 前の週末、両環境相は次のような発言をしている。 環境問題専門家のロスケ氏(R. Loske)によれば、 「国際社会は、気候変動問題への取組みに着 2001 年中頃までに専門家グループが計画をまと 手した。1997 年の京都議定書では、温暖化ガ め、その後、少数の企業間で試験的取引が開始さ ス排出量を削減するために、先進国は法的拘 れる予定である。 束力を有する目標を定め調印した。しかし、 その後、同議定書の実施方法に関する交渉は 事前計画によると、同取引制度は、連邦政府が定 継続しているものの、依然として実施には至 める業界および企業の排出限度に基づくことにな っていない。 」 る。企業は自己の排出限度枠を完全消化しなかっ た場合に、おそらく証券取引所を介して、これを 両環境相は、11 月にオランダのハーグで開催され 証券として販売できるというものである。また、 る第 6 回気候変動枠組み条約締約国会議(COP6)に 削減の動機づけを与える間に証券価値を維持する おける京都議定書の批准をめざし、各国の大臣に ために、総排出限度は毎年引き下げられることに 対して「政治的意志」を示すよう呼びかけた。 なる。 「われわれは、一部の先進国に対して実質的 環境省によると、同計画は、連邦政府が今年の秋 な国内措置の回避を認めかねない抜け道を残 後半に提示予定の国家気候変動管理戦略には含ま すことによって議定書の実効性を著しく弱め れないとのことである。 るようなことがあってはならない。 」 と両環境 相は述べた。 同戦略は、二酸化炭素削減に関する国家目標達成 のための指針となる。ドイツは、2005 年までに 同記事では、ハーグで必要な協定の性格について CO2 を 1990 年水準から 25%削減すると公約して 論じるとともに、国内の温暖化ガス排出量を削減 いるが、これまでのところ、わずか 15.3%程度の すること、また気候変動対策における協力に関し 削減にとどまっている(前述の項目 1 を参照) 。 て開発途上国との対話を強化することなど、先進 国に対してリーダーシップの発揮を求めている。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 6 JMC environment Update 37 The Sunday Times(英国) 、Frankfurter Allgemeine Zeitung (独) 、NRC Handelsblad(オランダ) 、Le Monde(仏) 、El Mundo(スペイン) 、Dagens Nyheter(北欧) 、朝日新聞(日) に掲載された同記事については、下記サイトを参照すること。 http://www.press.detr.gov.uk/0009/download/article.htm. (事務局注;11 月 15 日現在この URL は閲覧できない。 ) Vol.2 No.4 (2000.11) 2. 政府、包装廃棄物リサイクルに関する新目 標を協議 DETR により公表された協議文書の中で、包装廃 棄物の回収目標を 52%から 58%へ、特定素材の リサイクル目標を 16%から 18%に引き上げるこ とが提案されている7。目標の引上げにより、英国 は、EU が定める来年度の期限すなわち 2001 年 6 月までに包装廃棄物総量の 50%回収を達成でき、 また公約実現にあたり、企業のコスト負担を可能 な限り低く押さえられる。 規制および指令に定められた回収・リサイクル目標 現在の目標: リサイ 回収 38% 43% 45% 52% 7% 11% 13% 16% 50% 25% ( 素 材 別 に 15%) 新たに提案された 2001 年度企業回収・リサイクル目標 2001 企業回収 目標 企業素材別 リサイクル目標 概算実質回収達成率 58% 18% 51% 包装廃棄物の約半分は家庭ゴミとして発生する。 したがって、包装廃棄物リサイクル目標の引上げ は、地方自治体に課せられたリサイクル目標の達 成に貢献するもので、さらに包装廃棄物の埋立て 削減も意味し、したがって最近策定された「廃棄 物戦略 2000(Waste Strategy 2000)」にも一致する ものである。 3. 税関当局への廃棄物輸送差止めに関する全 権付与案 廃棄物犯罪取締にかかる廃棄物輸送規制の修正案 によると、税関・消費税局(HMCE: Her Majesty’s Customs and Excise)に廃棄物を輸送する船舶の拘 留権限が全面的に付与されることになる。 同文書には、1998 年から 2000 年までの暫定目標 とデータが示され、この包装廃棄物のトン数に関 する更新データが今回の修正の根拠になったと説 明されている。 EC 包装および包装廃棄物に関する指令(94/62)に もとづき、英国には、包装廃棄物の回収・リサイ クル目標を達成する義務がある。目標は、包装廃 棄物に占める割合で示されている。その水準は、 包装総量の 50%を回収、包装総量の最低 25%を リサイクル、素材別(例:プラスチック、スチー ル、紙)に最低 15%をリサイクするよう定められ ている。 規制影響評価協議文書である「1994 年廃棄物越境 輸送規制の修正:規制評価(Amendments to the Transfrontier Shipments of Waste Regulations 1994: Regulatory Assessment)8」は、国際的廃棄 物犯罪対策のため、欧州共同体内、域内および域 外へ向かう廃棄物輸送の監督・管理に関する EU 規 制 No.259/93/EC を英国国内法に置換する 1994 年 規制を修正する必要性があったと述べている。 英国は、かかる目標を達成するための最良の手段 として、1997 年に生産者責任への義務(包装廃棄 物) に関する規制 (1999 年にSI1361 およびSI3447 修正)を導入した。 2000 年 8 月 18 日に公表された同協議文書による と、この修正によって、廃棄物輸送に関する公開 情報の入手も改善される。また同文書は、1996 年 6 月以降の英国内および国外への有害廃棄物輸送 同協議文書の正式名称は「2001 年包装廃棄物の回収・リサイ クル目標に関する協議文書−製造者責任にかかる義務(包装 廃棄物)に関する規制(Consultation Paper on recovery and recycling Targets for Packaging Waste in 2001−The Producer Responsibility Obligations (Packaging Waste) Regulation )」である。 JMC environment Update 指令に定められた クル 1998 1999 2000 2001 同協議文書では、2001 年度に廃棄される包装廃棄 物の量が試算され、現在提案されている 2001 年 度 「 英国 企業 回 収・ リサイ ク ル (UK Business Recovery and Recycling)」目標のもとで回収・リサ イクルされる廃棄物の量が検討されている。それ により、英国が欧州の包装廃棄物回収・リサイクル 義務を履行するには、現在の目標では不十分であ るとの判断が示されている。そこで、同協議文書 には、2001 年度の新目標を回収率 58%、特定素 材のリサイクル率 18%とするよう提案されてい る。 7 指令に定め 8 38 同規制影響評価に関する協議文書については、下記サイトを 参照すること。 http://www.environment.detr.gov.uk/consult/transfro/index.h tm Vol.2 No.4 (2000.11) 欧州環境規制動向〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑪ は 13,378 件で、38,000 トンにのぼったと述べて いる。偶発的な漏洩の証拠はないものの、 「違法輸 送が行われる余地は相当ある」という。 の温室効果対策への取組みの終焉を意味するもの ではないと、環境保護主義者を納得させるための 試みであることは明白である。 同文書には、違法廃棄物犯罪対策として以下に示 す 3 つの選択肢が提案されている。 ・規制は変更しない。 ・HMCE の権限を強化する。 ・情報の入手を改善するため、環境情報の公開登 録を義務化する。 ジョスパン首相が国連気候変動枠組会議 (UNFCCC)の下部組織の第 13 回会合で演説する ことは何ヶ月も前から計画されており、それは、 フランスが、EU 議長国を務める 6 ヶ月間の任期中 の 9 月 11〜15 日に交渉会議を主催することに同 意した時のことである。リヨンで開催されたこの 会議は、11 月 13 日〜24 日にハーグで開催予定の 第 6 回 UNFCCC 締約国会議(COP-6)を目前に控え た最終的準備会合であった。 現在、税関は、 「権限ある当局」である環境庁の要 請により、船舶を 3 日間拘留できる。 初夏より国際石油価格が高騰し、フランスのトラ ック運送業者、農家、漁師、消費者は、ガソリン 価格の高騰に対する政府の支援を要求するように なった。政府は、まず 9 月初旬に、2001 年度予算 案には年税の個人自動車登録税を盛り込まないこ と、また予定されていたディーゼル燃料税(TIPP: taxe inférieure sur les produits pétroliers)の引上げ を先延ばしにすることなどを発表し、燃料価格の 高騰という危機に対応した。自動車登録税を徴収 しないということは、家計にとって約 120 億仏フ ラン(1686 億円)の節約を意味する。他方、TIPP 増税の先送りは、2001 年度における、さらに 24 億仏フラン(337 億円)の節約を意味する。また、 同予算案では、暖房用オイルに課税される TIPP の 30%減税を求めており、これは消費者にとって、 推定35億仏フラン (492億円) の節約を意味する。 同文書は、第二の選択肢の場合、 「税関職員は英国 の権限ある当局の要請を受けて行動する他に、独 自の判断で船舶を拘留できる(その後、英国の権 限ある当局の関与を求める)など、HMCE に一段 と柔軟な権限を付与することになる」述べている。 同文書によると、この新たな自由裁量権限を付与 することにより、 「一段と効果的な違法廃棄物輸 送取締が可能となり、越境廃棄物に関する法的執 行面における関係規制当局間の協力を推進するこ とになる」とのことである。 また、規制に変更を加えない場合には何ら利点が ないが、 「税関の権限を限定的ながら拡大するこ と」は、 「利用可能な機関や HMCE の資源をさら に有効活用することにより、違法廃棄物輸送取締 の実効性を改善することになる」と論じている。 これらの消費者を意識した対策は、環境保護主義 者の怒りを招く結果となった。政府の姿勢は、汚 染行為に対する課税というこれまでの政府公約を 撤回するものと理解されたのである。結局、燃料 価格の高騰によって打撃を被るトラック運送業者、 農家、その他の業種との溝をさらに深めたのみで あった。環境派の好戦的な行動に加え、広く一般 国民が支援した結果、9 月 6 日ついに政府は、混 乱の終息とひきかえに今年度において 10 億仏フ ラン強(140 億円)のガソリン減税、さらに 2001 年度において同規模の減税を実施せざるをえなく なったのである。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ IV. フランス 1. 国際気候変動会議で新省エネ計画を発表 2000 年 9 月 11 日、ジョスパン(L. Jospin)仏首 相は、気候変動対策の前進を目的とする新省エネ 計画を導入する計画であると発表した。 同計画は、その輪郭はまだ明確ではないものの、 気候変動に関する国連交渉の場に参集した各国代 表に対する開会挨拶の中で明らかにされた。9 月 初旬に承認された一連の燃料減税は、社会党政権 JMC environment Update 首相は、各国代表を前に、フランスは、2010 年ま でに 1990 年水準にまで排出量を引き下げるとい う自国の温暖化ガス排出削減義務を遵守すると断 39 Vol.2 No.4 (2000.11) 欧州環境規制動向〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑪ 討議のたたき台となったのは、デンマークの国税、 環境・エネルギー、財務を担当する各大臣が共同 でまとめた「化学物質分野における課税強化規制 の実現性に関する分析」と題する報告書である。 言した。さらに、ガソリン減税について、石油価 格高騰による危機から産業界を救済するための 「緊急措置」であると説明した。同首相は、今回 の減税措置によって「フランスの気候変動に関す る行動計画が疑問視されるようなことは断じてな い」とし、さらに新省エネ計画の導入は、実際の ところ、 、農業、一般家庭、工業、輸送その他の業 界から発生する排出量削減のために以前詳述され た措置を強化するものであると述べた。 同報告書では、MTBE および工業用温暖化ガスに 対するグリーン課税の導入、および塩素系有機溶 剤に対する現行税率の引上げが示唆されている。 MTBE はオクタン価を高めるためにガソリンに添 加されている。ガソリンスタンド等からの MTBE 漏れは当面の健康問題ではないものの、ごく少量 の MTBE でも飲料水が汚染されると臭いや味が悪 くなり、飲料水として使用できなくなる可能性が ある。 フランスの排出量削減および汚染者に対する懲罰 への取組みをさらに示す証拠として、首相は、政 府は 2001 年から業界のエネルギー使用に対して 新エコ税を徴収する計画を進めると断言した。首 相府筋(the Office of Prime Minister)によると、同 税は現行の汚染行為税(TGAP)に組込まれる予定 であるが、2001 年から推定 40 億〜60 億仏フラン (562 億円〜843 億円)の税収をもたらすことにな るという。 温暖化ガスは、冷蔵庫の冷却剤などの用途や断熱 材の発泡剤として使用されている。温暖化ガスは 地球温暖化の原因となり、その温室効果は同量の 二酸化炭素の 140 倍から 23,900 倍に相当する。 課税措置導入の実現性については、デンマーク EPA が 2000 年 1 月に提案した新設プラントや新 製品における段階的使用禁止日程の枠組みの中で 検討されるべきである。課税措置が導入されれば 企業による代替技術の使用が促され、多くの場合、 工業用温暖化ガスを使用しない代替技術の導入に 要する時間をより多く確保するために、段階的使 用禁止日程が先延ばしされる可能性があるからで ある。 2. 2000 年、環境省予算 8.6%増加 2000 年、フランスの環境省予算は 8.6%の増加と なり、2000 年 9 月 15 日に明らかになった事前予 算案の中では二番目に大きい増額である。 42 億 9000 万仏フラン(602 億 5700 万円)への増額 によって、5 億仏フラン(70 億円)の国家水資源 基金が新たに新設される。この基金は、地方財源 による水資源関連イニシアチブへの助成金となる。 また、予算増額により、リスク・汚染防止計画の拡 大、自然保護の強化、経済・環境研究課の新設の 他に、環境省に 210 のポストが新設される。 2. 臭素化難燃剤の使用制限を予定 前回のレポートの中で、われわれは、デンマーク EPA が、健康および環境に対する有害性が疑われ る物質として、臭素化難燃剤の使用を段階的に制 限および禁止する行動計画を作成したと報告した。 現在、同行動計画は、インターネット上で公開さ れている (http://www.mst.dk/ activi/01000000.htm)。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ V. デンマーク 1. 化学物質税の実現性を調査 デンマークの企業、諸団体および当局は現在、化 学物質税の実現性について討議を進めている。そ の後、同分野における法整備の必要性について判 断が下される。 JMC environment Update 3. 新型ボトルクーラー、電力消費量を約 40%削減 最近、デンマークエネルギー庁が支援する開発プ ロジェクトとして、ベストフロスト社(Vestfrost) 、 ダ ン フ ォ ス 社 ( Danfoss )、 コ カ コ ー ラ 社 (Coca-Cola)などの企業とデンマーク技術研究所 40 Vol.2 No.4 (2000.11) 欧州環境規制動向〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑪ (Danish Technological Institute)が、従来のものよ りエネルギー消費量を約 40%節約できる新型ボ トルクーラーのプロトタイプを開発した。また、 この新型クーラーは、製造およびオペレーション 段階でも強力温暖化ガスを使用していない。 4. グローバルな水銀対策を提案 デンマークの環境エネルギー相は、水銀の製造・ 使用を禁止もしくは厳しく規制し、水銀含有製品 の違法輸送を根絶するためのグローバルな行動を UNEP が中心になって進めるよう提案している。 デンマークは、2008 年〜2012 年に、温暖化ガス の排出量を 21%削減すると公約している。それま でに、政府は、工業用温暖化ガスの消費量を大幅 に削減したいとしている。この方針に沿って、新 型ボトルクーラーでは、自然界に存在する冷却効 果を有する炭化水素であるイソブタンを使用して いる。さらに、新型ボトルクーラーの断熱材には、 強力温暖化ガスではなく別の炭化水素で発泡させ たポリウレタンを使用している。 母乳、鯨肉、魚の中に水銀が検知されるというこ とは、水銀が社会に与える深刻な脅威を示唆する ものである。デンマークその他の国は、何年も前 から水銀および水銀含有製品の販売を全面的に禁 止しているものの、水銀による環境問題はいまだ 解決されていない。 水銀は国際的にはまだ規制されておらず、POP を 除き国際的に関心の高い化学物質の問題は、化学 物質の安全性に関する政府間フォーラム(IFCS: Intergovernmental Forum on Chemical Safety)の 会合でも何回か取り上げられてきたが、進展はほ とんど見られない。そこでデンマークは、POP を 除く国際的に関心の高い化学物質に関して、グロ ーバル・イニシアチブを推進するべきであると判 断し、この目的のために環境エネルギー相が対策 を要請すべく UNEP に働きかけたのである。 新型ボトルクーラーはベストフロスト社製である。 省エネ特性が向上した理由として、特に、エネル ギー効率がアップしたダンフォス社製の新型コン プレッサーを使用したこと、また、換気装置の高 効率化、断熱特性を改善したドアグラスの使用な どがあげられる。同プロジェクトでは、デンマー ク各地で、新型クーラー40 台、標準型クーラー20 台のフィールドテストが一年間にわたり実施され た。プロジェクトは、デンマーク技術研究所が中 心になって進められた。また、同研究所は、クー ラーの寸法の設定、エネルギー消費量の測定も実 施した。 5. 大気中への放出量をインターネットで公開 国 立 環 境 研 究 所 (NERI: The National Environmental Research Institute)は、デンマーク の排出量の一覧をウェブサイトで公開している。 ア ド レ ス は 、 http: //www.dmu.dk/1_english/ default.asp である。 このプロトタイプは、キオスク、ガソリンスタン ド、スーパーマーケットなどでよく見かける 1 リ ットルボトルが 350 本収容可能なクーラーである。 デンマーク全土で約 70,000 台の標準型ボトルク ーラーが稼動していると推定される。主に、ビー ル、ジュース、ソフトドリンク、牛乳製品などの 冷却用で、一台が一日に消費する電力は約 5kWh である。一方、新型ボトルクーラーが一日に消費 する電力はわずか約 3kWh であり、これにより大 幅な省エネにつながる可能性がある。 これは、デンマーク初の排出量データに関するサ イトである。NERI は、デンマークの排出量データ に関心のある人々から毎日問合わせがあるため、 データを容易に入手できるようにする必要性を強 く感じるようになった。これは、オルフス協定に おける環境データへの市民アクセスに関する要求 事項にも一致するものである。 予算総額470 万デンマーククローネ(DKK)のうち、 デンマークエネルギー庁は、国内商業部門の省エ ネ促進を目的とする助成金制度に280 万DKK を計 上している。 JMC environment Update 特に、サイトでは、記述説明、グラフ/数字を用 いて、排出量データを物質別に分かりやすく表示 している。重金属、ダイオキシン、PAH について は総排出量データが提供されているが、最重要成 分(SO2、NOx、CO2 など)については時系列的変 化や発生源別のデータが提供されている。さらに、 NERI の関連文献リストも公開されている。例えば、 41 Vol.2 No.4 (2000.11) 欧州環境規制動向〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑪ デンマークが気候変動会議に報告した最新の公式 レポートも出力可能である。 脳の発達にも影響を及ぼすことがある。 「人体の PBDE 濃度が上昇傾向にあるという事実 は特に憂慮すべきである。この傾向に歯止めをか けることができなければ、やがて野生動物および 人体における蓄積濃度が高まり、深刻な影響が顕 在化するであろう」と、スウェーデン EPA のヨハ ンソン氏(N. Johansson)はいう。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ VI. スウェーデン 1. 新臭素化難燃剤をめぐる疑問 スウェーデン EPA がまとめた「臭素化難燃剤」に 関するレポートによると、古いタイプの臭素化難 燃剤のうち、数種類については使用を禁止すべき であると十分理解できる。しかし、我々の知識で は、新物質についてリスク評価するのに十分では ない。 ポ リ 臭 化 ジ オ フ ェ ニ ー ル エ ー テ ル (PBDE: polybrominated diophenil ethers)は、スウェーデ ンでは製造されていないが輸入されており、例え ば、ケーブルなどに使用されている。また、コン ピュータ、TV、自動車などの輸入品電子コンポー ネントに主に使用されている。1990 年以前、PBDE は、スウェーデン製の繊維にも使用されていた。 現在は、輸入品の繊維製品および布張り家具など に使用されていることがある。 臭素化難燃剤は、プラスチック、ゴム、繊維その 他の材料に耐火目的で使用されている。これらの 難燃剤に関する環境問題は、PCB に起因する環境 問題と性質も規模も似ているといえる。この物質 の拡散状況は明白であり、環境中のほぼどこから でも検出される。しかし、スウェーデン EPA によ ると、その影響については研究者も十分に解明し ていないという。これは特に第二世代の臭素化難 燃剤についていえることであり、しかもその使用 は増加の一途を辿っている。 ポリ臭化ビフェニール(PBB: poplybrominated biphenyls)もスウェーデンでは製造されていない が、輸入電子製品に使用されていることもある。 2. 国立化学物質検査局、新たに環境政策文書 を刊行 スウェーデン国立化学物質検査局(通称「KEMI」) は、最近重要な環境政策文書の英語版を刊行した。 臭素化難燃剤は 1980 年代初期に環境中に存在す ることが発見された。スウェーデン国立化学物質 検 査 局 (The National Swedish Chemical Inspectorate)は、このような物質の使用を自主的 な取組みで減少させることを望んだが、現在では、 このような措置では時間がかかりすぎるとの認識 に至っている。1999 年、同検査局は、健康および 環境にもっとも危険な物質と考えられている2種 類の難燃剤である PBDE および PBB の禁止措置を 提案した。 ・スウェーデン製品登録簿(製品登録簿は、KEMI が管理する、2500 社より収集した約 60,000 件 の化学物質報告書に関する情報を持つ大規模デ ータベース)に関する説明文書 ・フタレート類含有玩具に対する適用規則に関す る指針 ・スウェーデンの化学物質政策に関する新指針を 検討する委員会がまとめた報告書の概要 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ スウェーデン EPA によると、同物質は PCB との類 似点を多くもっているという。分解しにくく、し かも広範囲に拡散する可能性がある。また、動物、 特に脂肪組識に生態蓄積する。科学者によって、 ハツカネズミ、魚その他の生物ごとに、生体への 取込み量が調査されている。臭素化難燃剤は、例 えば、肝臓と甲状腺の機能に影響を及ぼすことが ある。また、曝露が危険なレベルにまで達すると、 JMC environment Update VII. オランダ 1. 廃棄物連合発足 廃棄物連合という新組織が設立された。同組織に は、 (建築廃棄物から有機廃棄物、廃棄物輸送から 42 Vol.2 No.4 (2000.11) 欧州環境規制動向〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑪ 廃棄物処理業者に至る様々な)6 団体のリサイク ル業者が参加している。 はほぼすべて影響を受けることになる。 EU 加盟国は、域内市場の貿易ルールと食違いの可 能性がある健康保護または環境に関する国内法を 計画している場合には、欧州委員会に通知する義 務がある。 デンマークの禁止措置は、CSTEE に その根拠の判断が付託されている間、保留扱いと された。 統一目標は、欧州統一市場における効率的かつ責 任ある廃棄物収集、輸送、再利用および処理を促 進することである。まず、EU 内で「廃棄物」の明 確な定義についての合意を成立させることをめざ す。また、同団体は、すべての州(市町村)当局 が同一の規則にしたがって許認可を発行するべき であるとの要求を、オランダ政府に対して提示し 活動を展開していく。すなわち、地方自治体レベ ルの規則の調和をめざすということである。 デンマーは、子供の健康および環境を保護するた めにはこのような強硬な措置が必要であることを 証明するデータを CSTEE に提出した。委員会は、 必要な場合は他の根拠とともにこの情報を補足す ることとした。 もう一つ、オランダの廃棄物政策と他の EU 諸国 の政策との整合性をはかる。現在、企業は、環境 規則の緩やかな国で廃棄物を処理することができ、 このような状況は、オランダの廃棄物業界の競争 力を脅かす要因である。 同委員会は、 「デンマーク当局から、鉛含有製品の 使用に関する全面的禁止措置の導入が、一般の 人々の体内に蓄積する鉛負荷量を著しく減少させ ることを実証する正当な科学的証拠が示されたと は考えられない」との結論を出した。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 特に、デンマークの子供は世界保健機構(WHO) が定める一週間あたりの許容摂取量(PTWI: permitted tolerable weekly intake)の近似量あるい はこれを超過する量に曝露しているという同国の 主張に対して、CSTEE は、データはこの主張を支 持するものではないとの判断を示した。しかしな がら、同委員会は、WHO 基準より低レベルでも健 康に悪影響を及ぼす可能性があるとの証拠が得ら れた場合には、 「近い将来において」10µ/I という 現行 PTWI を再検討することに同意した。 <欧州弁護士モニタリング情報⑩に未掲載 のデンマーク、スウェーデン 6 月〜7 月情 報> デンマーク 1. EU 科学委員会、デンマークの鉛禁止措置 に科学的根拠なしとの判断 EU を代表する科学者は、鉛含有物質をすべて禁止 するというデンマーク提案に反対している。EU 毒 性・生体毒性・環境委員会(CSTEE)は、デンマー ク法案には科学的根拠がないとの判断を下した。 アウケン大臣は、この提言について「可能な限り の鉛汚染削減の必要性を認めるもの」として、デ ンマークの禁止措置が暗黙の支持を得たという受 け止め方をしている。しかしながら、同委員会は、 子供の血液中の鉛濃度が、おそらく有鉛ガソリン の段階的廃止により、全体的に減少傾向にあると の証拠を得ている。 しかし、デンマークのアウケン環境エネルギー大 臣 (Auken)は同法を支持する姿勢をくずさず、 6月9日にCSTEEの意見に対する回答として、 「鉛 含有製品全面禁止措置は、将来の鉛汚染削減対策 として最適な手段である」と主張した。 CSTEE は、環境中の鉛濃度が上昇していることを 認めながらも、上昇速度が緩慢であるため実質的 な脅威を呈するものではないとし、さらにモニタ ーを継続することを呼びかけた。また、同委員会 は、むこう数十年間、土壌汚染問題に重大な悪化 があるとは予想していない。さらに、必要な鉛代 替物質の一部が環境へ害を及ぼす可能性について、 1998 年末、デンマークは、ほとんどすべての用途 における鉛化合物の輸入、販売および製造を禁止 する同国の計画を欧州委員会に通知した。電子機 器および特殊ガラスは適用除外対象となるが、プ ラスチック安定剤および顔料など、その他の製品 JMC environment Update 43 Vol.2 No.4 (2000.11) 欧州環境規制動向〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑪ ていない。検討事項 B であったデンマークにおけ る禁止措置という特定案件の方が扱いやすかった ことから、CSTEE は鉛問題を二段階に分けて検討 し、できる限り早急に同国の鉛禁止措置に関する 結論を出そうと判断したのである。 デンマークはいまだ問題視していないと指摘した。 CSTEE の分析によると、 鉛の大量漏出については、 禁止措置によって打撃を受ける製品の数の多さで はなく、廃止された工業地および古い水道管がそ の主な発生源であるという。このような歴史上の 汚染と呼ばれる問題について、同委員会は「状況 の著しい改善につながる特別対策を講じることに は正当性がある」としている。その結果、子供の 血液中の鉛濃度が高い値を示す地域の問題に効果 的に対処するために、デンマークはローカルな汚 染源を対象とした鉛対策を講じるべきであると提 言している。 検討事項 A に回答するには、CSTEE は大量のデー タを独自に収集する必要がある。厳密に言うと、 同委員会の役割は、欧州委員会から提出されたデ ータを解釈し特定の問題に回答することであり、 独自にデータを用意することではないので、これ は意外なことである。鉛の安全性という大きな問 題は、生態毒性から理想的な血中鉛濃度に至るま で、あらゆる問題に関わりをもっている。根本的 に、CSTEE は鉛問題の徹底的な見直しに取組んで いるのである。 この助言に対して、アウケン大臣は、歴史上の問 題に限定した対策を取るべきではないと応じた。 さらに同大臣は、鉛禁止措置は将来における鉛へ の曝露を軽減する手段であると主張した。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 同国の禁止措置の根拠に説得力が欠けるのは、デ ンマーク国民の鉛曝露量が他のほとんどの加盟国 に比べて低いからである。しかし、デンマークの 環境大臣は、デンマークは「他国の状況に関わら ず、高い保護レベルを確保したいだけである」と して、このような比較は不適切であると主張して いる。 スウェーデン 1. EU 法廷、スウェーデンのトリクロロエチ レン禁止措置を支持 2000 年 7 月 11 日、欧州司法裁判所は、公衆衛生 を保護するという見地から、工業用トリクロロエ チレンの使用に関する全面的禁止措置を規定する スウェーデン国内法には正当性があるとの裁定を 下した。これは、同法廷が、工業用トリクロロエ チレンの使用に関する全面的禁止措置の導入およ び特定条件にもとづく個別の部分的法の取消し措 置の付与に関する加盟国の権限について、ストッ クホルム郡行政裁判所(the Stockholm County Administrative Court)の審理要請に応えたもので ある。 CSTEE は、同問題を初めて検討した時に、同委員 会の課題の重要性を認識した。鉛禁止措置案が承 認されていれば、あらゆる物質、特にカドミウム および水銀などその他の重金属に対して、同様の 幅広い規制措置への道を開く可能性があった。 欧州委員会の立場が明確に示された現在、あえて 法律の実施に踏み切るのか、その場合、EU 裁判所 における法廷闘争を受けて立つのかは、デンマー クの判断次第である。欧州委員会の環境筋は、デ ンマークが今回のような「正当性に欠ける」法案 に強いこだわりを示したことについて、デンマー クは本当に真剣なのか、それとも「試している」 だけなのか真意をはかりかねるとして、驚きを示 した。 コンパクトディスク製造に使用される機械部品製 造業者であるスウェーデンのトゥーレックス (Toolex)社は、機械加工工程で発生するグリー スの除去にトリクロロエチレンを使用している。 同社は、スウェーデン当局に対して、EU 法によっ て健康に有害であり環境に危険な発癌性物質と分 類されている同物質の使用許可を申請した。1996 年 6 月、 スウェーデン化学物質検査局(the Swedish Chemicals Inspectorate)は、最終的にトリクロロエ チレンの使用を中止する計画を提出していないと CSTEE は、第 2 の案件である「鉛および鉛化合物 が人体および環境に与える影響に関する一般的問 題」 、すなわち欧州委員会が CSTEE に正式に要請 した検討事項 A についての検討作業をまだ完了し JMC environment Update 44 Vol.2 No.4 (2000.11) 欧州環境規制動向〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑪ いるため、同委員会では、スウェーデンが孤立し て行動できることではないと主張している。第一 に、同国は、化学物質に対する一般的アプローチ を新戦略に含めるよう EU に働きかけなければな らない。また、この新戦略は、予防の原則 (precautionary principle) 、適切な製品選択原則お よび業界の責任に基づくものでなければならない。 して、Toolex 社の申請を却下した。Toolex 社はこ の決定を不服として、ストックホルム郡行政裁判 所に訴えた。その内容は同案件に関するスウェー デン国内法は EU 法との整合性に欠けるとして、 化学物質検査局の決定を無効にするというもので あった。 司法裁判所は危険物質に関する現行の EU 法を分 析した結果、トリクロロエチレンに関する EU 措 置に関して、欧州委員会はまだその提案権限を執 行していないと判断した。そのため、同裁判所は、 EU 法は加盟国による工業用トリクロロエチレン の使用を禁止するものではないとの立場を示した。 さらに、同裁判所は、かかる規制が EU 法との整 合性をもつかどうか検討した。今回、問題になっ ているような国内法は、司法裁判所の認識では、 輸入に対する数量規制に等しい影響を有する措置 である。しかしながら、同裁判所は、ヒトの健康 および安全の保護を目的とする場合、かかる規制 は EU 条約に整合するものであるとの見解を示し た。同案件に関する最新の医学研究およびトリク ロロエチレン曝露があるレベルを超えると深刻な 健康上のリスクを人体に与えるという敷居値の確 定の困難さを勘案すると、同裁判所は、今回のス ウェーデン法のような国内法がヒトの健康および 生命を有効に保護する必要性の範囲を超えると判 断できるだけの根拠を同案件に見出すことはでき なかった。したがって、同裁判所は、公衆の健康 を保護するという目的に見合う法律であるとの判 断を下した。また、特に、個別免除措置の付与に 関しては、ある危険物質を別の危険度の低い物質 で代替することによって労働者の安全および健康 に対するリスクを除去または軽減するという、い わゆる「代替(substitution) 」原則に整合する要件 が満たされなければならない。 EU ですでに使用されている化学物質に関する既 存の知識を強化するために、必要情報を作成する ための日程も提案されている。これによると、 2010 年末が最終期限とされている。期限後を過ぎ てもデータが入手できない化学物質については禁 止されるものとする。 同委員会の見解では、もっとも危険な化学物質は すべて禁止しなければならないとしている。また、 一般的基準については、特に残存性および生体間 蓄積度が高い化学物質の禁止を十分に要求できる ものでなければならないとして、 (既存の化学物 質については)2010 年〜2015 年、および(新化 学物質については)2005 年までに廃止すべきであ るとしている。さらに、同委員会は、発癌性、突 然変異誘発性、生殖に有害な影響があると分類さ れる物質の消費製品への使用を遅くとも 2007 年 までに中止することを提案している。 その他の提言には、重金属である鉛と水銀の禁止 措置の継続も含まれている。また、同委員会は、 何らかの製品ラベル表示制度を導入し、製品に含 まれる化学物質およびその環境への影響について 消費者への情報提供を徹底するよう求めている。 □ 2. 政府諮問委員会、特定化学物質の禁止を要 求 2000 年 6 月 5 日に提出された最終報告書の中で、 政府が任命した化学物質政策に関する新ガイドラ インを検討する委員会は、化学物質に関するデー タ要件の強化および何らかの一般的危険度基準を 定めて該当物質の禁止を義務づける法律など、化 学物質に関する EU 法の変更を求めた。 懸念される化学物質の大半は世界的に使用されて JMC environment Update 45 Vol.2 No.4 (2000.11) 連載 米国における環境関連動向 〜在ワシントン/コンサルタントによるモニタリング情報 ⑦ ● はじめに 本報告書は 2000 年 9 月中旬から 11 月上旬までの最新の米国の環境関連動向を包括的にまとめている。今 回は、大統領選の結果が環境政策に与える影響のほか、来年からの第 107 議会での環境政策や、今回改選 された各州知事の環境政策などについてもふれている。また、環境ロビーが積極的に動いた対中正常通商 関係法案や、風力発電と農村活性化の相関関係などについてもまとめている。 ポイント ・ 大接戦の大統領選では、環境保護を積極的に訴えた「緑の党」のラルフ・ネーダー候補への支持が民 主党支持層に食い込み、米国の環境運動史の上で、画期的な選挙になった。大統領は 11 月 10 日深夜 現在、決まらないものの、次の EPA 長官人事などが環境アナリストの間で話題になっている。 ・ 上下両院とも共和党多数派支配は続く形となったが、民主・共和両党の議員数の差は狭まっており、 環境政策についても、新エネルギー開発、核廃棄物処理問題、4)貿易上のファスト・トラックなど、 両党のイデオロギー的な差がない政策がまず、論じられるとみられる。 ・ 上院環境公共事業委員会のメンバーで、改選議員の全てが当選し、環境政策に大きな変化は見当たら ないという見方があるが、委員長人事と、引退した 2 人のリベラル派民主党議員の後任次第では、共 和党環境規制緩和側と民主党環境保護派との対立が激化するとみられている。 ・ 下院では資源委員会、下院科学技術委員会エネルギー環境小委員会、下院商務委員会・健康環境小委 員会のメンバーのほとんどが再選され、これまでの環境立法の継続が期待されている。 ・ 初当選の女性州知事 2 人のうち、デラウエア州のルス・アン・ミナーが州環境法の徹底強化を訴えた が、対照的に、モンタナ州のジュディ・マーツは徹底した環境規制緩和を公約としている。 ・ 最恵国待遇(MFN)を恒久的に与える対中正常通商関係(PNTR)法案が成立する過程で、自由貿易 が環境に与える影響や、中国国内の環境破壊を問題とする環境ロビーの役割に注目が集まった。 ● 大統領選の結果と環境政策 共和党ブッシュ、民主党ゴアの二大政党候補の激戦 は、大票田の激戦地、フロリダ州の結果をめぐって 勝敗が持ち越しになる異例の展開になり、11 月 10 日午後 11 時現在(米国時間) 、いずれが大統領にな るのか、まだ、確定していない。今回の大接戦の原 因の一つになったのが、環境保護を積極的に訴えた 「緑の党」のラルフ・ネーダー候補への支持が民主 党支持層に食い込み、ゴア氏指示票にひびが入った JMC environment Update 点にある。特に、ブッシュ氏がゴア氏にきん差で勝 ったニューハンプシャー州では、両者の差以上にネ ーダー氏の得票が多かったほか、ウィスコンシンな ど勝敗が最後までもつれた州でも、ネーダー氏がゴ ア離れを加速させたとみられている。また、問題の フロリダ州でも、2%ほどの得票になるといわれて おり、ネーダー票を加えれば、ゴア氏が簡単に当選 したとみられている。 46 Vol.2 No.4 (2000.11) 米国における環境関連動向〜在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑦ 折しも、ゴア氏が出席した地球温暖化防止京都会議 (1997 年)以降、米国政府の温暖化防止対策は進ん でおらず、環境保護を訴える市民層からゴア離れが 起こっており、ネーダー氏は民主党環境保護者に好 意的に迎えられた。このように、 「環境票」が接戦に 拍車を掛けたという意味で、米国の環境保護史の上 で、画期的な選挙になったといえる。 気汚染法などの主要環境法令の解釈をめぐって最高 裁で係争が続いている最中であり、次期判事指名が 環境政策に直結するため、大統領の最高裁任命権限 に注目が集まっている。 また、ブッシュ氏が大統領になった場合、1) 「土地 水質保全基金 (Land and Water Conservation Fund) 」 を通じた州や自治体支援、2) 州政府とのマッチング ファンド方式で助成する「土地所有者奨励プログラ ム(Landowner Incentive Program) 、3) 個人の土地 を環境保護のために売却する際のキャピタルゲイン 税控除、4) アラスカでの油田開発など新エネルギー 源調査――など、既に発表されているブッシュ氏の 各種環境政策を大統領側から提案しても、選挙その ものが接戦だったため、必ずしも国民の信任(マン デート)を得たとはいえず、議会の民主党側から強 硬な反対が続くと予想されている。 第三政党の研究で知られるリチヤード・ローゼンバ ーグによると、米国の歴史上、第三政党が既成政党 の票を大きく奪う「政党再編成(party realignment) 」 が起こることは非常にまれだが、第三政党が選挙で 健闘した場合、 第三政党の掲げていた政策が選挙後、 2 大政党の政策の一つとして取り入れられるケース が少なくないという。その意味でも、ネーダー候補 の健闘は、中道にシフトしつつあるといわれる民主 党全体の政策に歯止めを掛け、積極的な環境保護政 策への回帰につながる可能性も少なくないとみられ ている。 ● 共和党主導議会と環境政策(1)両党概要 上下両院とも第 104 議会(1995 年〜1996 年)以来 続いている共和党多数派支配は続く形となっている が、両院とも民主・共和両党の議員数の差は狭まっ ており、環境政策についても、徹底した環境規制緩 和、EPA の予算削減など、共和党側が第 104 議会の 最初に訴えたような急進的な政策を推し進めるのは やや難しくなったとみられている。 上院(定数 100)では共和党 19、民主党 15 の計 34 議席が改選され、11 月 10 日夜現在、当確未確定の ワシントン州を除けば、改選後は共和党が 4 議席減 の 50、民主党が 3 議席増の 49 となっている(改選 前議席数は、それぞれ共和党が 54、民主党が 46) 。 大接戦のワシントン州で民主党のマリア・カントウ エル(Maria Cantwell)候補が共和党のスレード・ゴ ードン(Slade Gordon)候補を破り、残る議席を取 って半々になっても、1) ブッシュ政権になった場合、 上院議長を兼任する副大統領のチェイニー氏が可否 同数の際に票を投じる、2) ゴア政権になった場合、 重複立候補した上院選で当選した副大統領候補リー バーマン(コネチカット州)が議席を返上し、ジョ ン・ローランド(John Rowland)コネチカット州知 事(共和党)が後継の暫定議員を自分の所属する共 和党から選ぶといわれている――という 2 つの理由 のため、共和党は主導権を手放さずに済む。多数派 の党から各委員会の委員長職が選ばれるため、特に 現在、共和党保守派でビジネス寄りのイデオロギー で知られるロバート・スミス(Robert Smith,ニュー ゴア氏、ブッシュ氏のいずれが大統領になった場合 も、EPA(環境保護局)は長官をはじめ、大きな人 事的な変化があるとみられている。というのも、ゴ ア氏が大統領になった場合、現在の EPA のキャロ ル・ブラウナー(Carol Browner)長官が 2002 年、 もしくは 2004 年の上院選挙を目指し、勇退する可 能性が高いためである。ブラウナー長官は元々、ゴ ア氏が上院議員だった際の環境政策スタッフであり、 ゴア氏の側近であった。ゴア氏が大統領になった場 合、ブラウナー長官と同じように積極的な環境保護 を訴えるリベラル派のケーテイ・マクギンティ (Katie McGinty) 、元ホワイトハウス環境問題アドバ イザーが長官に任命される可能性が高いとみられて いる。一方、ブッシュ氏が大統領になった場合、ま だ、人事的には様々な憶測が流れているが、積極的 な環境保護を訴えるリベラル派からやや距離を置い た人物が任命されるとみられている。 また、前号で詳しくふれたように、現在、最高裁で は 9 人の判事のうち、ウイリアム・レンクエスト (Willian Rehnquist)長官、サンドラ・デー・オコー ナー(Sandra Day O’Connor) 、ジョン・ポール・ スティーブンス (John Paul Stevens) 両判事が年齢、 在任機関からみて、いつでも引退してもおかしくな いとみられており、次期大統領は最高裁判事を指名 する可能性が高く、大統領の環境に対する見方がそ のまま、司法にも大きく影響される。特に現在、大 JMC environment Update 47 Vol.2 No.4 (2000.11) 米国における環境関連動向〜在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑦ ハンプシャー州出身)議員が環境公共事業委員長に 再選される確率が高いため、環境政策にとってみれ ば、大きな意味を持っている(次項で後述) 。 はスーパーファンド法の改訂を常に訴えており、 EPA の権限縮小、フェデラリズム(連邦主義)の徹 底による環境政策の州・地方分権化、規制緩和など を訴えていくとみられている。長年、共和党穏健派 で、環境保護促進を積極的訴えてきたジョン・チェ ーフィー(John.Chafee, ロードアイランド州選出) が 1999 年秋に他界するまで、上院環境公共事業委 員会の委員長を務めていたこともあり、後がまのス ミス議員は水質管理規制反対などの政策以外はここ 1 年、自分のイデオロギーを全面に出さすのを躊躇 してきた。しかし、新年からの第 107 議会では、会 期最初から委員長を務めることになるため、前議会 よりも自分のイデオロギーに近い、委員会の運営を 目指す可能性がある。しかし、スミス議員は 2 年後 の 2002 年が任期であり、選挙区であるニューハン プシャー州では今回の選挙で 3 選された民主党のジ ーン・シャフィーン(Jeanne Shaheen)知事という 大物対立候補が予想され、今後 2 年はイメージアッ プに徹するという見方もあり、保守的な委員会運営 に自ら歯止めを掛ける可能性もある。 全議席改選の下院(定数 435)では、共和党が 2 議 席減の 221 議席、民主党が 2 議席増の 212 議席、無 所属 2 となっており、現在の第 106 議会よりも両党 が拮抗した形になっている(改選前議席数は、それ ぞれ共和党が 223、民主党が 210、無所属 2) 。 上下両院での民主・共和両党が数の上で、接戦状態 になるため、来年からの第 107 議会(2001〜2002 年)の環境政策では、1) 新エネルギー開発、2) エ ネルギー規制緩和、3) 核廃棄物処理問題、4) 貿易 上のファスト・トラック(他国との貿易関連協定を 速やかに進めるために、議会から大統領に権限を大 きく委譲する政策で、いまのところ、環境保護派や 労働組合から反対がある)――など、比較的、両党 のイデオロギー的な差がない政策がまず、論じられ るとみられている。このうち、貿易上のファスト・ トラックについては、日本など、アジア諸国との貿 易関係にも大きく影響するため、新年以降の立法活 動の動向が大いに注目される。 一方、ここ数年、議会内でのセニオリティー・ルー ル (当選回数の多い議員が委員長に就任する不文律) は次第に厳守されない傾向にあるため、例えば、ジ ェームス・インフォフ議員(James Inhofe,オクラホ マ州選出)が委員長に選出される可能性も指摘され ている。インフォフ議員は、スミス議員以上に開発 促進、 EPA 権限縮小、 規制緩和を声高に訴えてきた。 そのため、現在、環境保護団体や EPA 関係者からは 「どちらが委員長になっても、 環境保護が後退する」 という指摘も多い。 ● 共和党主導議会と環境政策(2)上院 11 月 7 日の選挙の結果で、今後の連邦政府の環境政 策がどのように変わっているか、まだ、現段階では 読みきれないものの、改選後の民主・共和両党の構 成や主要環境関連委員会のメンバーの当落から、 様々なシナリオが予想される。 上院の場合、環境政策の核となる環境公共事業委員 会のメンバーのうち、今年改選だった議員の全てが 当選した。そのため、環境政策に大きな変化は見当 たらないという見方がアナリストの間では強いもの の、委員長人事と、今年を限りに引退するダニエル・ モイニハン(Daniel Moynihan, ニューヨーク州選 出) 、フランク・ローテンバーグ(Frank Lautenberg, ニュージャージー州選出)の、2 人のリベラル派民 主党議員の後任をめぐって、委員会内の環境政策問 題に対するイデオロギー的バランスが変化するとみ られている。 また、共和党内ではジョン・チェーフィー前委員長 の子息で、昨年、父の死に伴い、州知事から上院議 員に任命されていた、リンカーン・チェーフィー (Lincoln D. Chafee, ロードアイランド州選出)議員 が正式な投票を受けて、当選した。共和党内穏健派 として活躍したチェーフィー前委員長と同じように、 スミス、インフォフ議員ら党内保守派と民主党議員 らとの橋渡しをする役割として、 動向が注目される。 モイニハン、ローテンバーグの2人のリベラル派民 主党議員の後任をめぐっては、ニューヨーク州から 出馬し、上院議員に当選したヒラリー・クリントン 大統領夫人が、リーバーマン議員の後任として、環 境公共事業委員会に入る可能性が指摘されている。 上院環境公共事業委員会の委員長人事については、 いまのところ、共和党保守派で、親ビジネス (pro-business)の立場で知られるスミス議員が再 び、委員長に再選される可能性が高い。スミス議員 JMC environment Update 48 Vol.2 No.4 (2000.11) 米国における環境関連動向〜在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑦ これは、 ヒラリー・クリントンが公約の一つとして、 福祉、医療改革、教育のほかに環境保護を訴えてい るためである。環境公共事業委員会の名前が挙がっ ているのは、クリントンが最も希望しているといわ れている福祉や医療改革政策を担当する財政委員会 (Finance Committee)などの有力委員会には、新人 議員の場合、なかなか最初から委員会に名前を連ね ることは難しいという議会内の事情もある。ヒラリ ー・クリントンは、早ければ次回、遅くとも 2008 年の大統領選の有力候補として期待されており、環 境公共事業委員会に加わった場合、民主党リベラル 派の中心として、ヒラリー・クリントンはスミス、 インフォフ議員らと激しい政策上の争いをするとみ られている。 戦のワシントン州で当確が未確定である民主党のマ リア・カントウエル(Maria Cantwell)や、ミシガン 州の歴史上、初めての女性上院議員となったデビ・ スタブナウ(Debbie Stabenow)の場合、環境ロビ ー団体などが、 「争点テレビ CM」 (イッシュー・ア ド=特定の支援団体が候補者に代わり、スポンサー になる選挙応援 CM で、いわゆる「ソフトマネー」 の一つ)を積極的に放映した経緯があり、環境公共 事業委員会に所属する可能性も指摘されている。さ らに、上院議員選挙運動中、急逝したものの、民主 党関係者がそのまま、選挙に名前を残し、共和党で 現職のジョン・アシュクロフト議員(John Ashcroft) を破り、当選したメル・キャナハン(Mel Carnahan) ミズーリ州知事についても、代行して議員になる妻 のジーン・キャナハン(Jean Carnahan)氏が環境 公共事業委員会のメンバーに名を連ねる可能性もあ る。 また、ギングリッチ旋風に乗り、1994 年に当選した 共和党保守派でミネソタ州選出のロッド・グラムス (Rod Grams)議員を破った、民主党のマーク・デ ートン(Mark Dayton)候補も環境公共事業委員会 への所属を希望しているといわれている。デートン 氏は、同州選出で、上院民主党の中で最もリベラル な立場を貫いている、ポール・ウエルストーン(Paul Wellstone)議員と非常に近い関係にあり、環境保護 を積極的に訴えていくとみられている。また、大接 現在、リーバーマン議員は副大統領と上院議員の双 方に立候補していたため、ゴア氏が大統領になった 場合、副大統領職に就任するが、ブッシュ氏が大統 領になった場合、そのまま上院議員を続ける。その 場合、 環境公共事業委員会にとどまる可能性が高い。 表 1:今回の選挙における第 106 議会(1999〜2000)の上院環境公共事業委員会のメンバーの当確 <共和党> Robert Smith, NH John Warner, VA James Inhofe, OK Craig Thomas, WY Christopher Bond, MO George Voinovich,OH Mike Crapo, ID Robert Bennett, UT Kay Hutchison, TX Lincoln D. Chafee, RI <民主党> 2002 年改選 2002 年改選 2002 年改選 再選 2004 年改選 2004 年改選 2004 年改選 2004 年改選 再選 再選 Max Bocus, MO Daniel Moynihan, NY Frank Lautenberg, NJ Harry Reid, NV Bob Graham, FL Joseph Liberman, CT Barbara Boxer, CA Ron Wyden, OR 2002 年改選 引退 引退 2004 年改選 2004 年改選 再選(注) 2004 年改選 2004 年改選 注:ゴア氏当選の場合は副大統領に転出 ● 共和党主導議会と環境政策(3)下院 ることはないとみられている。 連邦議会下院で環境政策の中心となる、 資源委員会、 下院科学技術委員会エネルギー環境小委員会、下院 環境関連立法への影響力が大きい委員長職について 商務委員会・健康環境小委員会のメンバーのうち、 は、下院資源委員会では、ドン・ヤング(Don Young, 引退した議員や州の予備選挙の段階で共和党候補に アラスカ州選出) が再選されるとみられているほか、 選ばれず、不出馬となった議員を除けば、落選した エネルギー環境小委員会を持つ下院科学技術委員会 議員はほとんどいなかった。そのため、第 107 議会 でも、ジェームス・センセンブレナー(James でもこれまでの環境立法の方向性から大きくはずれ Sensenbrenner, ウイスコンシン州選出)がそのまま JMC environment Update 49 Vol.2 No.4 (2000.11) 米国における環境関連動向〜在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑦ 委員長を続けるとみられている。一方、健康環境小 ニューヨーク州)議員が上院に転出し、立候補した 委員会を持つ商務委員会の場合、委員長だったトマ が、ヒラリー・クリントンに破れた。 ス・ブライリー(Thomas Bliley, バージニア州選出) 今回、初当選組の中で、民主党側では、ユタ州選出 が引退したため、当選回数から、ビリー・トーザン のジム・マセソン(Jim Matheson)氏が水質浄化規 (Billy Tauzin, ルイジアナ州選出)か、マイケル・ 制の強化などを公約で訴え続けた経緯があり、資源 オクスレー(Micheal Oxley, オハイオ州選出)が委 委員会への所属を希望しているといわれている。ま 員長に就任するとみられている。 た、ミネソタ州選出のベティ・マックム(Betty McCollum)は資源委員会か、商務委員会・健康環境 下院資源委員会の中では、環境関連のロビー団体資 小委員会への所属希望を既に明言しており、リベラ 源保全有権者連盟(League of Conservation Voters) ル派の立場から環境保護政策を訴える。 が毎年発表している「環境破壊を最も進める 12 議 員(Dirty Dozen) 」の中にほぼ毎年入っている、共 初当選組の中で、共和党側では、ジョン・カルバー 和党のヘレン・チェノウエス(Helen Chenoweth, ア ソン(John Culberson, テキサス州選出) 、フェリッ イダホ州選出)が、州の予備選挙の段階で共和党候 クス・グルッチ(Felix Grucci, ニューヨーク州選出) 、 補に選ばれず、不出馬となった。また、下院商務委 マーク・スティーブン・カーク(Mark Steven Kirk, イ 員会・健康環境小委員会のメンバーのうち、ブライ リノイ州選出) 、デック・ジマー(Dick Zimmer, ニ アン・ビルブライ(Brian P. Bilbray, カリフォルニア ュージャージー州選出)らが、環境規制緩和などを 州選出)が、民主党のスーザン・デービス(Susan 選挙戦中に訴えており、環境関連の委員会職を希望 Davis) 候補に破れたほか、 リック・ラジオ (Rick Lazio, しているといわれている。 表 2:今回の選挙における第 106 議会(1999〜2000)の下院資源委員会のメンバーの当確 <共和党> Don Young, AK Billy Tauzin, LA James V. Hansen, UT Jim Saxton, NJ John J. Duncan Jr., TN Joel Hefley, CO John T. Doolittle, CA Wayne T. Gilchrest, MD Ken Calvert, CA Richard W. Pombo, CA Barbara Cubin, WY Helen Chenoweth, ID George Radanovich, CA Walter B. Jones, NC Mac Thornberry, TX Chris Cannon, UT Kevin Brady, TX John E. Peterson, PA Rick Hill, MO Bob Schaffer, CO Jim Gibbons, NV Mark E. Souder, IN Greg Walden, OR Don Sherwood, PA Robin Hayes, NC Michael K. Simpson, ID Thomas G. Tancredo, CO JMC environment Update <民主党> 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 不出馬 再選 再選 再選 再選 再選 再選 不出馬 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 George Miller, CA Nick J. Rahall II, WV Dale E. Kildee, MI Peter A. DeFazio, OR Eni F. H. Faleomavaega, 米領サモア Neil Abercrombie, HI Solomon P. Ortiz, TX Owen B. Pickett, VA Frank Pallone, Jr.,NJ Calvin M. Dooley, CA Carlos A. Romero-Barcelo, 米領プエルトルコ Robert A. Underwood, 米領グアム Patrick J. Kennedy, RI Adam Smith, WA Christopher John, LA Donna Christensen, 米領バージンアイランド Ron Kind, WIS Jay Inslee, WA Grace F. Napolitano, CA Tom Udall, NM Mark Udall, CO Joseph Crowley, NY Rush D. Holt, NJ 50 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 引退 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 Vol.2 No.4 (2000.11) 米国における環境関連動向〜在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑦ 表 3:選挙での第 106 議会(1999〜2000)の下院科学技術委員会エネルギー環境小委員会メンバーの当確 <共和党> Ken Calvert, CA Curt Weldon, PA Joe Barton, TX Dana Rohrabacher, CA Vernon J. Ehlers, MI Dave Weldon, FL Gary G. Miller, CA Judy Biggert, IL Jack Metcalf, WA <民主党> 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 引退 Jerry F. Costello, IL Michael F. Doyle, PA James A. Barcia, MI Eddie Bernice Johnson, TX Zoe Lofgren, CA Joseph M. Hoeffel, PA Joe Baca, CA 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 表 4:選挙での第 106 議会(1999〜2000)の下院商務委員会・健康環境小委員会メンバーの当確 <共和党> Michael Bilirakis, FL Fred Upton, MI Cliff Stearns, FL James Greenwood, PA Nathan Deal, GE Richard Burr, NC Brian P. Bilbray, CA Ed Whitfield, KY Greg Ganske, IA Charlie Norwood, GE Tom A. Coburn, OK Rick Lazio, NY Barbara Cubin, WY John B. Shadegg, AZ Charles W. Pickering, MS Ed Bryant, TN <民主党> 引退 再選 再選 再選 再選 再選 落選 再選 再選 再選 再選 (注) 再選 再選 再選 再選 Sherrod Brown, OH Henry A. Waxman, CA Frank Pallone, Jr., NJ Peter Deutsch, FL Bart Stupak, MI Gene Green, TX Ted Strickland, OH Diana DeGette, CO Thomas M. Barrett, WI Lois Capps, CA Ralph M. Hall, TX Edolphus Towns, NY Anna G. Eshoo, CA 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 再選 注:上院選に立候補、落選 ● 州知事選挙と環境政 知事選は 11 州で実施され、8 州で民主党、3 州で共 でも最も人気の高い知事として知られており、同氏 和党が当選した。この中には、カリフォルニア州、 に釣り合うような後任の人材がモンタナ州の共和党 マサチューセッツ州、ミネソタ州など、革新的な環 内にあまりおらず、環境政策を含むモンタナ州の各 境政策・規制で世界的に注目を集めてきた先進州は 種政策も州内民主党側の巻き返しで、環境保護・規 含まれていないため、今回の選挙で、米国全体から 制強化に向かう可能性もあるという指摘がある中、 みれば、州レベルの環境政策が急変する可能性は大 ラシコット路線を継承するマーツ新知事の手腕が注 きくないとみられている。 目される。 それでも、初当選の女性州知事の 2 人は環境政策で 初当選知事のうち、ノースダコタ州のジョン・ホー 非常に対照的である点が特筆できる。デラウエア州 ベン(John Hoeven, 共和党)は銀行家出身という のルス・アン・ミナー(Ruth Ann Minner, 民主党) こともあり、産業界に有利な政策を優先するとみら が州環境法の徹底強化を公約に挙げた。一方、モン れており、環境規制緩和などにも取り組むといわれ タナ州のジュディ・マーツ(Judy Martz, 共和党) ている。 は経済開発の優先と環境規制緩和を公約として訴え ている。モンタナ州はマーク・ラシコット(Marc また、再選組では、アジア系アメリカ人(中国系) Racicot)知事が、ブッシュ政権が誕生した場合、閣 として、1996 年、米国本土(ハワイ州を除く)で初 僚(司法長官か内務省長官が予想されている)に転 めて州知事に選ばれたワシントン州知事のゲーリ 出するといわれている。ラシコット氏は現在、全米 ー・ロック(Gary Locke, 民主党)は、難なく再選 JMC environment Update 51 Vol.2 No.4 (2000.11) 米国における環境関連動向〜在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑦ された。知事 1 期目では、福祉改革や減税という、 ッシュ政権になった場合、閣僚に転出する可能性が 通常、共和党知事が得意とする政策を次々に実行し 指摘されている。いずれの知事も財政均衡、減税な ており、知事 2 期目では環境規制緩和などにも積極 どを徹底したことで有名になった経緯があり、環境 的になるとみられている。 政策においては、規制緩和を進めてきた。各知事が 転出しても、環境規制緩和の基本的な流れは変わら 今回、州知事選挙はなかったものの、ウイスコンシ ないものの、州内の民主党とのバランスが崩れるケ ン州のトミー・トンプソン(Tommy Thompson) 、 ースもあるため、環境政策に影響がある可能性もあ ペンシルバニア州のトム・リッジ(Tom Ridge) 、ミ る。 シガン州のジョン・エングラー(John Engler)はブ 表 5:今回の選挙で初当選・再選された州知事 州 デラウエア州 インディアナ州 ミズーリ州 モンタナ州 ニューハンプシャー州 ノースカロナイナ州 ノースダコタ州 ユタ州 バーモント州 ワシントン州 ウエストバージニア州 ● 氏名 民主党 Ruth Ann Minner Frank O’Bannon Bob Holden Judy Martz Jeanne Shaheen Mike Easley John Hoeven Micheal Leavitt Howard Dean Gary Locke Bob Wise ○ ○ ○ 対中正常通商関係法案と環境ロビー 共和党 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ その他 初当選 再選 初当選 初当選 再選 初当選 初当選 再選 再選 再選 初当選 とで、自由貿易が進み、米ハイテク企業の参入 最恵国待遇(MFN)を恒久的に与える対中正常 で情報革命が導入されれば、結果的に中国の民 通 商 関 係 ( PNTR; permanent normal trade 主化も急速に進展するというのが、クリントン relationship)法案が成立する中、自由貿易が環 政権の主張であり、クリントン政権は積極的に 境に与える影響や、中国国内の環境破壊を問題 法案成立を呼びかけた。しかし、PNTR 法案の とする環境ロビーの役割に注目が集まっている。 立法過程に関しては、民主党、特にリーダー的 存在の各議員の足並みが大きく乱れた。これは、 米国では非市場経済国に対しては MFN 付与を 民主党議員に近いロビー団体が猛反対したため 禁止する法律があり、中国に対しては特例措置 である。 として、1979 年の国交回復後の 80 年以来、議 会審議を経て毎年更新する形で与えている。こ PNTR 法案に反対したロビー団体の中では、米 れを恒久化するのが、対中正常通商関係(PNTR) 労働総同盟産別会議(AFL-CIO)などの労働組 法案であり、連邦政府下院を通過した後、9 月 合や人権団体とともに、ロビー団体が環境保全 中旬上院で可決され、10 月 10 日、クリントン 有権者連盟(League of Conservation Voters)な 大統領の署名で、立法化された(法案番号は どの環境団体が積極的に各議員に接触したのが H.R.106-4444)。WTO(世界貿易機関)協定で 目立った。環境団体の主張は、中国との貿易関 は、加盟国が相互に最恵国待遇を恒久的に付与 係強化は米国から中国へ大量の農作物の輸出が することが原則であり、PNTR 法案の成立によ 行なわれ、その一方で、中国の農業の衰退につ って中国の WTO 加盟は実現に向け大きく前進 ながる。中国の農業は、国土保全、緑や生物の する。 保護などに役立っており、自由貿易が進めば、 中国の国土自体が荒廃を招く――などであった。 中国を世界貿易のルールの枠組みに取り込むこ JMC environment Update 52 Vol.2 No.4 (2000.11) 米国における環境関連動向〜在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑦ ピュー・リサーチセンターが行った世論調査に よると、環境や米国労働市場などの影響のため、 風力発電は環境に影響を与えないクリーンエネ 対中正常通商関係法案に反対する声は半数以上 ルギーなことから、米国ではかなり前から注目 であり(賛成は 30%程度)、環境ロビーは国民 されてきた。現在、風車の効率改善などで米国 のこうしたデータをうまく利用し、各議員に接 内では石油ショック時に比べ、発電コストが 8 触していった。 分の 1 に低下し、発電単価が 1 キロワット時当 たり 5 セント程度の風力発電所も出現しており、 特に、環境ロビーは上院民主党リベラル派のポ 石炭などの他のエネルギー源との競争力が増し ール・ウエルストーン議員ら有力議員に接触し てきた。現在、米国の風力発電の最大出力は約 た。ウエルストーン議員は上院の最終投票当日 1800〜1900 メガロと、ドイツと並び世界最高 まで反対演説を行うなど、最後の最後まで、 レベルであり、新しい風力発電施設も次々に建 PNTR 法案の絶対反対を貫いた。 設されている。1999 年夏、エネルギー省は、総 発電量に占める風力発電の割合を現在の 0.1% 外交法案が「ハイテク産業、ビジネス」対「労 から 2020 年までに 5%に大幅拡大する計画を 働組合、市民団体、環境擁護団体」というロビ 発表し、ワイオミング、ミネソタなど中西部の ー団体どうしの対決の場となったのが特筆され 州を中心に風力発電所の開発を急いでいる。ま る。これまで環境ロビーは、伝統的に外交とは た、現在、既に米国初の電力会社所有による風 あまり関りは少なかったが、環境保護団体と、 力発電所が稼動しており、15 以上の数の州でプ 消費者団体、労働組合の 3 者協力は、シアトル ラントの建設・計画が進められている。 で昨年 12 月に開かれ、次期多角的貿易交渉(新 ラウンド)の枠組みづくりが決裂した世界貿易 機関(WTO)閣僚会議以来、顕著になっており、 ● エクソン・バルティス号事件 50 億ドルの 今後も、遺伝子組換作物に関する国内規制や各 賠償が確定 種の環境関連国際交渉でも環境保護団体と、消 1989 年にアラスカ沖で大手石油会社エクソン 費者団体、労働組合の 3 者が協力して、各種争 モービル(当時はエクソン)のスーパータンカ 点を訴えていくものとみられている。 ーが座礁し、米国史上最悪の汚染をもたらした 原油流出事故「エクソン・バルティス号事件」 で、連邦最高裁判所は 10 月はじめ、同社に総 ● 額約 50 億ドルの懲罰的損害賠償を命じた連邦 風力発電と農村活性化 米国の民間研究機関、ワールド・ウオッチ研究 高裁判決を支持、上訴を棄却した。 所は、このほど、風力発電の普及は農家の収入 増に貢献し、農地利用や放牧に影響がないと分 エクソン・バルティス号事件は、1100 万もの原 析した報告書を発表した。報告書によると、風 油がアラスカ沖に流失し、生態系に大きなダメ 力発電機の立地場所には農地も少なくなく、農 ージを与えた。環境米国の環境運動のシンボル 地を貸すことによって、使用料収入が農家に入 となったほか、その後、90 年代はじめに強化・ るほか、発電機が分散して設置されるため農地 成立する各種環境立法のきっかけとなったため、 利用や放牧に影響がないという。 米国環境問題史のターニングポイントといわれ ている。 報告書には、1) 耕作によって得られる農業収益 よりも、風力発電使用料の方が農家にとって、 今回の係争では、アラスカの連邦地裁が 1996 大きいほか、2) 大出力の発電機 1 基で年間 10 年 9 月に下した、懲罰的賠償 50 億ドルの法律 万ドル程度の電力を販売できること、3) そのた 的根拠が争われていた。エクソン側は司法手続 め、農業収入だけでなく地域の税収や雇用も拡 きに問題があるとして上訴していたものの、最 大する、4) また、農村地域の全体的な活性化に 高裁は、アラスカの連邦地裁の判決を支持した。 つながる――などのポイントが指摘されている。 □ JMC environment Update 53 Vol.2 No.4 (2000.11) EEE の環境に与える影響に関する指令案 第 2 次ドラフト(和訳) 仮訳 草案 2000 年 9 月 27 日 電気電子機器(EEE)の環境に与える影響に関する 欧州議会及び理事会指令 欧州連合の欧州議会と理事会は、 欧州共同体を設立した条約、ならびに特にその第 95 条を尊重し、 欧州委員会からの提案を尊重し、 経済社会委員会の意見を尊重し、 条約の第 251 条に定められた手続きに従って行動し、 (1) 域内市場は、物、人、サービス、資本の自由な移動が確保されている域内の国境のない領域であることに鑑み; (2) 電気電子機器の環境に与える影響に関する法律、規則、行政令の内容と範囲について加盟国間に相違があるこ とに鑑み;そのような相違は共同体内に貿易障壁を作る可能性があることに鑑み; (3) 加盟国法規の調和がこれら自由貿易の障壁を除去する唯一の手段であることに鑑み;この目的は個々の加盟国 によっては満足に達成できぬことに鑑み;この指令はそれが適用される機器の自由な流通に対する欠くべから ざる要件を定めるだけであることに鑑み; (4) 電気電子機器製品体系の持続可能な開発を行うため、ライフサイクルを通じて、環境と電気電子機器の資源消 費への全体的な影響に関する継続的改善を達成する必要性に鑑み; (5) 設計段階における製品のライフサイクルを通じて環境的要因への考慮を与えることが、製品の全体的な環境影 響を改善するための多大なる可能性を持つことに鑑み;本指令が、電気電子機器の設計に関する環境法の適用 への首尾一貫した枠組みを確立することに鑑み; (6) 加盟国において、本指令の条項に優先しなければならない安全と健康に関する有効な法律、規則、行政令があ ることに鑑み; ………… 本指令を、以下の如く採択した。 第1条 範囲 1. 製品パフォーマンスと経済的要求のバランスにおけるハイレベルな環境保護を確保するために、本指令は電 気電子機器(EEE)の設計についての条項を規定するものである。 2. 本指令は、物の自由な移動を確保した EEE の安全と健康の側面に関する指令のような、その他の共同体法や その他の環境法規とともに適用しなければならない。 JMC environment Update 54 Vol.2 No.4 (2000.11) EEE の環境に与える影響に関する指令案 第 2 次ドラフト(和訳) 第2条 定義 本指令においては、 (1) [「電気電子機器 (Electrical and Electronic Equipment) 」とは、正しく作動するために、電流または電磁界に 依存する機器、ならびにそのような電流と電磁界を発生、転換、測定するための機器、そして交流に対して は 1000 ボルト、直流に対しては 1500 ボルトを超えない電圧定格で使用するように設計された機器を意味す る。 電気電子機器は、製品の一部であるすべての構成部品、サブアセンブリー、消耗品を含む。] (2) 「製造者 (Manufacturer)」とは、ある製品を自らの名前で上市する前に設計し、製造することに責任のある 自然人または法人を意味し、これらのオペレーションがその者自身によって実施されるか、または代理人に よって実施されるかを問わない。 (3) 「製造者の認定代理人 (Authorised representative) 」とは、共同体内に設立された自然人または法人であっ て、明確に製造者に指定されて、その代理人として行動する者、あるいは本指令の下に課せられた製造者の 義務に関して、その製造者に代って共同体内の当局や機関によって指名された者を意味する。 (4) [「設計(Design) 」とは……] (5) 「寿命の終り (End of life)」とは、製品が最終的に使用を終えた状態を意味する。 (6) 「再使用 (Re-use)」とは、寿命の終りに達した電気電子機器やその部品が、想定されたものと同じ目的に使 用されるようなオペレーションを意味する。 「再使用」は、回収地点、ディストリビューター、リサイクル業 者、または製造者に返却された電気電子機器の継続的使用を含む。 (7) 「リサイクル (Recycling)」とは、本来の目的または他の目的で、廃材料を製造工程で再加工することを意味 するが、エネルギー再生はこれに含まれない。エネルギー再生とは、可燃ゴミ以外の廃棄物と一緒に燃焼す るかしないかは別として、熱の回収を伴う直接燃焼により、エネルギーを生み出す手段としての可燃ゴミの 利用を意味する。 (8) 「再生 (Recovery)」とは、指令 75/442/EEC の修正指令の付属書 II.B に規定された該当のオペレーションの いずれかを意味する。 (9) 「環境保証システム (Environment Assurance System)」とは全体的な保証システムの一部を意味し、環境的 な製品パフォーマンスの適切なレベルを策定、実行、達成、算定、評価、見直し、維持するための、組織構 成、計画活動、責任、実行、手続き、工程、および資源を含むものである。 (10) 「廃電気電子機器 (Waste electrical and electronic equipment)」とは、指令 75/442/EEC の修正指令第 1(a)条 の意味における廃棄物である電気電子機器を意味する。 (11) 「環境的影響 (Environmental impact)」もしくは「環境に与える影響(impact on the environment) 」とは、 製品からの結果として良くも悪くも、全体的にも部分的にも、環境に対する何らかの変化を意味する。 (12) 「ライフサイクル (Life cycle)」とは、製品設計から、再生不可能な廃棄物や消散されたエネルギーのように 全ての材料の最終処分に至る、製品の一貫した、かつ連結した段階と全ての直接的に関連する重要なインプ ットとアウトプットを意味する。 (13) 「ライフサイクル・アセスメント (Life cycle assessment)」とは、材料とエネルギーのインプットとアウトプ ット、ならびにそのライフサイクルを通じて、製品の使用に直接起因している関連の環境影響を収集し、調 JMC environment Update 55 Vol.2 No.4 (2000.11) EEE の環境に与える影響に関する指令案 第 2 次ドラフト(和訳) 査する一連のシステム化された手続きを意味する。 (14) 「整合規格 (Harmonised standard) 」とは、欧州議会および理事会指令 98/34/EC1の修正指令付属書 I に述 べられており、技術規格と規則の分野における通知の手続きを定めている指令 98/34/EC を遵守し、また 1984 年 11 月 13 日に署名され、その後修正された、欧州委員会と欧州標準化機関との協力に関する一般的ガイド ラインに従って欧州委員会によって定められた命令に関する、同機関により定められた技術仕様を意味する。 (15) 「廃棄物 (Waste)」は、指令 75/442/EEC の修正指令第 1(a)条の意味をもつ。 第3条 上市およびサービス供与 加盟国は、EEE がその意図した目的に使用される時、本指令の規定を遵守した場合のみ、EEE を上市および/また はサービス供与できるように、あらゆる適切な措置を講じなければならない。 第4条 自由移動 加盟国はその領域内で、第 6 条に従い適合性評価を受けたことを示す第 11 条に言及されているマーキングを貼付 した EEE に関し、付属書 I に掲げられた環境保護の設計側面という見地から、その領域内で EEE の上市やサービス 供与に対して、いかなる阻害をも創造してはならない。 第5条 基本的要求事項 [ EEE は、付属書 I に定められた関連する基本的要求事項を考慮して、設計、製造しなければならない。] 第6条 適合性評価 1. EEE を上市する前に、製造者は本指令の意向をもって EEE の適合性評価を遂行しなければならない。製造者 は以下のいずれかを選択する: (a) 付属書 II に定められた内部設計管理に適用することを確保する手続きに従う、もしくは (b) 付属書 III に定められた環境保証システムを適用できるような手続きに従う。 2. EEE が上市された後、製造者は遂行された適合性評価に関連する適切なドキュメントと、発行された適合性 宣言書のコピーを保管し、EEE の最後の製造から 10 年間、加盟国が検査できるようにしておかなければなら ない。 製造者も製造者の認定代理人も共同体内で設置されていない場合、上記の義務は、その機器を共同体に上市 する者の責任となる。 3. 1 適合性評価に関する書類と適合性宣言書は、共同体の公用語の一つで作成されなければならない。 OJ L 204 21. 07. 1998 JMC environment Update 56 Vol.2 No.4 (2000.11) EEE の環境に与える影響に関する指令案 第 2 次ドラフト(和訳) 第7条 適合性の容認 1. 第 11 条に規定されたマーキングが貼付され、付属書 V に規定された適合性宣言書を伴っている EEE は、本指 令の関連規定に適合していると、加盟国はみなさなければならない。 2. 欧州共同体の官報で公表されたドキュメント番号を持つ、 整合規格に従って諸規定が適用されているEEEは、 第 5 条に述べられた対応基本要求事項および第 6 条に述べられた適合性評価手続きに適合するものと容認さ なければならない。加盟国は上記に述べられた国家規格のドキュメント番号を公表しなければならない。 3. 2000 年 7 月 17 日付理事会規則 1980/2000、2000 年 9 月 21 日付 EU 官報 L237 P.1 に従って、エコ・ラベル を授与された EEE は、エコ・ラベルがそれらをカバーする限りにおいては基本要求事項を満たすものと容認 されなければならない。 4. [共同体環境協定の規定に遵守し、規則 XXXX/XX(環境総局の法規構成)に従って組立てられ、欧州共同体の官 報において公表された EEE は、付属書 I に定める基本的要求事項への対応に適合していると容認されなけれ ばならない。] 第8条 技術規格と規則に関する委員会 加盟国や欧州委員会が、それを適用することで本指令の具体的な規定を満たすとみなされる整合規格が上記の規定 を完全には満たしていないと考えた場合、関係加盟国または欧州委員会は、指令 98/34/EC の第 5 条によって設立 された常任委員会にその理由を付して通報しなければならない。欧州委員会は緊急事項としてその意見を開示しな ければならない。 欧州委員会はこの常任委員会の意見を考慮して、これらの規格やその一部を第 7(2)条に述べた発表からとり去るべ きか否かに関して加盟国に通報しなければならない。 第9条 EEE の環境に与える影響に関する委員会 1. 2. 欧州委員会は、加盟国代表により構成され、欧州委員会の代表が議長を務める IMPEC という規定委員会 (Regulatory Committee)により支援されなければならない。 欧州委員会代表が、第 2 パラグラフに従って取られた措置の草稿を提出する場合、決定 1999/468/EC の第 5 条に定められた規定手続きが、第 7 条第 3 項および第 8 条に従って実施されなければならない。決定 1999/468/EC の第 5 条第 6 項に規定された期限は、3 ヶ月としなければならない。 第 10 条 特別措置 1. 欧州委員会は第 9 条に規定された手続きに従い、技術的知識や新たな科学的根拠の発展に照らして、本指令 の付属書 I を採択するために、および/または、適切にさらに詳細な要求事項の説明を規定するために、措 置を採択しなければならない。 JMC environment Update 57 Vol.2 No.4 (2000.11) EEE の環境に与える影響に関する指令案 第 2 次ドラフト(和訳) 第 11 条 適合マーキング/適合宣言 1. 上市する前に、EEE には適合マーキングを貼付し、適合宣言を発しなければならない。それによって製造者 または製造者の認定代理人は、EEE が本指令のすべての関連規定を遵守していることを確保し、宣言する。 2. 適合マーキングは付属 IV に示されたフォームを使用する。EEE 上に、また実用的かつ適切な場合は取扱い説 明書上に、見え易く、読み易く、かつ消えにくいフォームで示さなければならない。またマーキングは販売 包装にもつけなければならない。 3. 適合宣言は付属書 V に規定された項目を含まなければならない。 4. マーキングの意味やフォームに関して、ユーザの混乱を招くマーキングを EEE に貼付することは禁止されな ければならない。 第 12 条 上市の制限 1. 2. 3. 加盟国が、第 11 条に言及されたマーキングが不適当に貼付されていることを確認した場合、製造業者もしく は製造者の認定代理人には、EEE を本指令の規定に遵守させること、ならびに加盟国により課された条件に対 して違反状態を終息させることが強制されなければならない。 不遵守が続く場合、加盟国は問題の製品が上市されることを制限もしくは禁止するための、または市場から 確実に撤退させるための適切な措置を講じなければならない。 当該加盟国は、ただちに欧州委員会と他の加盟国に対し、その決定の理由を示した上でいかなる措置も通報 しなければならない。加盟国と欧州委員会は、上記の通報に関して、守秘を保証するため必要な措置を取ら ねばならない。 第 13 条 拒否と制限を伴う決定 EEE の上市とサービス供与を制限する本指令に準じてとられた決定は、それが基づく正確な背景を述べなければな らない。そのような決定は直ちに関係者に通報されなければならない。その関係者は同時に当該加盟国の法律で施 行中の法律下における救済手段について知らされ、その救済の受ける時間的制限について知らされなければならな い。 第 14 条 国内法への転換と過渡期間規定 1. ……………..2 の前に、加盟国は本指令を遵守するのに必要な法律、規則、行政令を採択し、公布しなければな らない。そしてその旨委員会に直ちに通知しなければならない。 加盟国が前述 1.の措置を採択する時は、本指令への言及を含めること、あるいは公表の場合にはそのような 言及を付さなければならない。そのような言及を行う方法は、加盟国が定めなければならない。加盟国は ……………..3から当該規定を適用しなければならない。 2 3 [本指令の採択から 24 ヶ月に一致する日付] [本指令の採択から 36 ヶ月に一致する日付] JMC environment Update 58 Vol.2 No.4 (2000.11) EEE の環境に与える影響に関する指令案 第 2 次ドラフト(和訳) 2. 加盟国は、本指令によって適用される分野で採択する国家法の規定文を、欧州委員会に通達しなければならな い。 3. 加盟国は、本指令の適用日において、その領域内で有効な規則を遵守している EEE の上市を…………………4ま で認めなければならない。 第 15 条 本指令の宛先 本指令は加盟国に宛てられる。 第 16 条 発効 本指令は、欧州共同体官報に公表された日に発効するものとする。 ブラッセルにおいて制定、[…] 欧州議会 議長 […] 理事会 議長 […] 付属書 I 基本要求事項 [ A)一般規定 1) 電気電子機器は、意図された条件および目的のために使用された場合、ライフサイクルを通じて、高レベルな環 境パフォーマンスが達成されるような方法で、設計され、製造されなければならない。 製造者は、安全面と健康面に関連する法律上および規則上の要求事項を考慮に入れなければならない。また、意 図された機器のパフォーマンス、経済性、製造コストのようなその他のファクターも考慮しなければならない。 2) 製造者は、設計段階中に左右され得る製品の環境パフォーマンスに関連したキーファクターを識別するために、 それぞれの製品ライフサイクルのあらゆる段階において、EEE の環境に与える影響を分析しなければならない。 特定の設計の選択は、 当該機器もしくはその製造過程において使用されるデバイスおよび材料に関する信頼性の 高い研究から得られたデータに基づかねばならないとともに、 利用可能な環境影響評価と環境に健全な原則を考 慮しなければならない。 3) 造者は、機器の設計と製造工程の決定にあたって、過度の環境影響がなく、エネルギーと天然資源の消費におい て効率的である機器を開発するという観点から、上記分析の結果を考慮に入れなければならない。 4 [本指令の採択から 60 ヶ月に一致する日付] JMC environment Update 59 Vol.2 No.4 (2000.11) EEE の環境に与える影響に関する指令案 第 2 次ドラフト(和訳) 4) 最も適切な設計ソリューションと技術的オプションを選択するのに際し、 製造者は下記原則を適用しなければな らない: a) 特定の危険物質および調剤の販売と使用の制限に係わる関連の共同体法令を考慮に入れて、ライフサイクル の最後において処分されることが予想される廃棄物として、環境に脅威を与えるデバイス、構成部品、材料 または物質の過度の使用を回避する b) 保守、向上、修理、解体、再使用、ならびに廃棄物マネジメントを容易化することにより、機器の環境負荷 を最小にする c) 機器の通常使用の際、汚染を最小にし、制御する d) 機器の通常使用の際、エネルギー消費を最小にする 製造者は、機器の仕様を開発する場合、製品機能とその製品のライフサイクル中に起こるすべての環境影響と の間での充分なバランスを達成しなければならない。 技術オプションを考慮する場合、製造者は、経済的に実行可能でコスト効率が良いように、利用可能な最善技 術を使用することを検討しなければならない。 5) 製造者は、新たな知識や科学的発見の適用により、また環境配慮設計における最新技術の開発により、環境上の 悪い影響が著しく削減されるかもしれない時はいつでも、機器の設計を見直さなければならない。 さらに、製造者は変化する状況に適応する能力がなければならない。 B) 設計と製造の要求事項 1. 設計と材料の選択 1.1 設計は以下のことを考慮に入れなければならない: a) 機器のライフサイクルの耐久性を最適化する b) 機器固有のコストと環境影響を考慮の上、機器のグレードアップを可能にする c) 適宜、機器のリファービッシュができるようにし、同じレベルの性能が確保できるよう、利用可能な手 続きに関する必要な指示を与える 1.2 保守対応設計: a) サブアセンブリーや装置は簡単に交換できるべき b) サブアセンブリーや装置は処分可能であるより修理可能であるべき c) 保守の結果として生ずる廃棄物は、最少化されるべきであり、処分可能であるべき 1.3 易解体性対応設計: a) 解体は、通常入手可能な工具で可能であるべき b) サブアセンブリーは再使用かリサイクルのどちらかが容易にできるように設計すべき 1.4 材料リサイクル性対応設計。材料は、廃棄物としての処分より望ましい、リサイクル性の度合を考慮して、 選択されなければならない。 1.5 機器のパフォーマンスが悪影響を受けない限り、機器の仕様は、リサイクルされた材料の適切な使用を妨げ てはならないとともに、 リファービッシュされた装置やサブアセンブリーが新製品に組み入れられるように しなければならない。 1.6 使用中ならびに保守作業中の汚染は最少化しなければならない。 汚染予防は以下の選択の順位を考慮すべき である: a) 汚染源での削減 b) 有毒廃棄物を生ずる工程を、より危険性の少ない代替工程と取り替えること c) どうしても不可避な、ライフサイクル中に生じた廃棄物はリサイクルすること d) 廃棄物の処分は容易で、その方法が明示されること 1.7 装置や材料の選択によって製造者は以下のことを行わなければならない: a) 資源の再生性を考慮する b) 廃棄物としての資源の処分を回避する JMC environment Update 60 Vol.2 No.4 (2000.11) EEE の環境に与える影響に関する指令案 第 2 次ドラフト(和訳) c) 処分される廃棄物となる装置や材料の、環境に対する悪影響を評価する d) しかるべきコストでの供給が確保されるかを検証する 2. 機器の製造 製造者は、製造中に発生する廃棄物を回避し、エネルギー消費を最少化し、即座の是正措置を確実にするために、 その製造手続きを最適化しなければならない。 製造者は、使用済み装置や部品をリマニュファクチュアするためのキャパシティーを開発しなければならない。 3. 機器の使用 3.1 製造者は、エネルギーの合理的使用に関する関連共同体立法を考慮に入れて、安全かつ十分な方法で、機 器が性能を発揮するのに必要なエネルギーを最少化しなければならない。 3.2 機器に起こる火災のリスクは、マーケティングにおける制限と、特定の危険物質および調剤の使用に関連 する共同体法令を考慮に入れることで、潜在的に危険な難燃剤使用の必要性を減らすため、根本的措置に より、最小化されなければならない。 3.3 危険な排出物や廃棄物の発生を回避し、削減する。 4. 説明書と機器からの廃棄物の最終再生 a) サブアセンブリー、装置ならびにその他の材料は、容易な再生もしくは廃棄物としての安全な処分という 観点で正しくラベリングされ、認識されなければならない b) 製造者は、装置リファービッシュの可能性をユーザーに伝えなければならない c) 製造者は、廃棄物の正しい取扱いと処分のメカニズムを提案しなければならない d) 製造者は、機器の寿命の終りにおける廃棄物マネジメントの助けになるよう、もしくは廃棄物マネジメン トシステムに関して伝えるよう、最終ユーザーに適切な情報とラベルを提供しなければならない] 付属書 II 内部設計管理 1. ここでは、第 2 項に定められた義務を果たす製造者または製造者の認定代理人が、EEE が適用される指令の関 連規定を満たすことを確保し、宣言する場合の手続きを述べている。製造者または製造者の認定代理人は第 9 条に規定されたマーキングをそれぞれの EEE に貼付し、適合宣言書を作成しなければならない。 2. 書類は、EEE が適用される指令の要求事項に適合しているかどうかを評価できるようにしなければならない。 その書類は、そのような評価に関連する限りにおいて、EEE の設計、製造、処分を網羅しなければならず、機 器の機能と環境影響の間で適切なバランスがいかに達成されたかを示さなければならない。 書類は、特に以下のことを規定しなければならない: ― ― ― ― ― 予想される環境への影響の確認と評価 環境専門家によって行われたライフサイクル・アセスメントの検討結果 EEE とそれが意図される使用についての一般的説明 概念設計と製造仕様 全面的または部分的に適用された第 7 条に述べた規格のリストと、第 7 条の規格が適用されなかった場 合に指令の要求事項を満たすために採用された解決法の説明 JMC environment Update 61 Vol.2 No.4 (2000.11) EEE の環境に与える影響に関する指令案 3. 第 2 次ドラフト(和訳) 製造者は、製造工程において、機器が 2 項に述べられた設計仕様と、適用される指令の要求事項を確実に遵守 するために、必要なあらゆる措置を取らなければならない。] 付属書 III 環境保証システム 1. ここでは、第 2 項の義務を果たしている製造者が、EEE が適用を受ける指令の要求事項を満たしていることを 確保し、宣言する場合の手続きについて述べている。製造者または製造者の認定代理人は、それぞれの EEE に 第 9 条に規定されたマーキングを貼付し、適合宣言書を作成しなければならない。 2. 製造者は、第 3 項に規定されている採択された環境保証システムを実行しなければならない。 3. 環境保証システム(EMS)5 EMS は製造者の環境方針を定め、 その EEE が適用を受ける指令の要求事項を遵守していることを確認するも のでなければならない。 3.1 環境方針 製造者は、全体的な環境パフォーマンスの改善達成と、環境目的を設定し見直す枠組の提供に、傾注しなけれ ばならない。 環境側面を確認すべく製造者が採用したすべての規定は、手続き書と指示書という形で、組織的かつ整然とし た方法でドキュメント化されなければならない。 それらは特に以下の適切な記述を含まなければならない: ― 環境目的と組織構造、その実行と継続に関する責任とマネジメント力 ― 管理ドキュメントが定期的に見直されているということを示すために要求されているドキュメン トに関する手続き 3.2 計画 製造者は以下のことを設定し、維持しなければならない。 a) 製造者がコントロールでき、環境目的の設定において影響力のある機器の環境側面を確認する手続き b) 環境目的と、オペレーション(操業)およびビジネス(事業)に関する要求事項を考慮した技術的オプシ ョンを検討する c) 製造者の、目的達成のためのプログラム 3.3 実施 a) 効果的な環境マネジメントと、その見直しと改善の実行に関する報告を確保するために、責任と権限が定 められ、ドキュメント化されなければならない b) 機器を設計する際、適用される設計管理と検証技術、ならびに使用される工程と組織的措置を示したドキ ュメントが作成されなければならない c) 製造者は、特に、適用されている規格を示す仕様を確立しなければならない。第 7 条に述べられた規格が 適用されていない場合は、関連の基本要求事項を遵守するため使用される手段を述べた仕様を確立しなけ ればならない d) 製造者は、マネジメントシステムの核心をなす要素と、要求されるすべてのドキュメントをコントロール 5 製品の設計と製造者に対する健康上および安全上の要求事項に関連した品質システムと環境マネジメントシステムのいず れかをすでに適用している組織が、両方を運用したいと望む場合は、双方を結びつけることができる。 JMC environment Update 62 Vol.2 No.4 (2000.11) EEE の環境に与える影響に関する指令案 第 2 次ドラフト(和訳) する手続きを述べた情報を確立し、維持しなければならない e) 製造者は、不適合状況を調査し対応する手続きを確立、維持し、是正措置の結果から手続書の変更を実施 しなければならない f) 製造者は、自身が遂行するか、専門機関によって遂行される廃棄物マネジメントプログラムを確立しなけ ればならない g) 製造者は、定期的に内部環境マネジメントシステム監査を実行しなければならない 付属書 IV マーク マークは「EE」というイニシアルで構成され、下記のような形をとる: EE マークが縮小または拡大される場合には、上図に示された比率を尊重しなければならない。 マークの個々の部分はおおむね縦の寸法が同じでなければならず、5mm 未満であってはならない。 付属書 V 適合宣言 EC の適合宣言は以下の項目を含んでいなければならない: ― ― ― ― ― ― ― 製造者または共同体内に設立された製造者の認定代理人の名前と住所 電気電子機器の説明 適用された適合性評価手続き 該当する場合、適用した整合規格を言及 該当する場合、使用したその他の技術規格と仕様 該当する場合、適用したその他の共同体指令の言及 製造者または共同体内に設立された製造者の認定代理人に代わって法的拘束力のある宣言書に署名 する権限を与えられた署名者の詳細 □ JMC environment Update 63 Vol.2 No.4 (2000.11) 新刊のご案内 「加速化する国際環境規制と機械産品への影響」を刊行 欧州、米国そして日本は、歴史、文化、国民性は異なるものの、環境問題では同じ土俵で議論でき るところにきています。しかしながら、昨今の欧米の環境規制動向を見ると、とくに欧州では化学物 質について、これまで一部の国々の個々の法律による対応でしかなかったものが、EU の廃電気電子機 器(WEEE)指令案が提示されて以来、一挙に規制が加速された感があります。同じように米国にお いてもカドミウム、鉛の環境規制への動きはあったものの、数年前より規制が急速に具体化されてき ています。こうした加速化への動きは、環境問題自信への関心の高さとその重要性への認識の深さを 示唆すると同時に、国際環境規制制定に向けた世の中の潮流だともいえます。 そうした中、本書では規制制定に向け勢いを増している電子電気機器リサイクル指令(WEEE) 、有害 化学物質使用制限指令(ROS)等、加速化傾向にある環境規制の現状について整理し、これからの企 業のグローバルな対応の参考に資するべくまとめたものです。 内容ポイント 各国の化学物質の届出制度、国内外の電気電子機器に関連するリサイクル規制、電気電子機器環境 影響指令第 1 次案(EEE)等、企業にとって身近に関連し、且つ法制化を目指しその動向が活発にな ってきている指令案等をとりあげ、同案の概要、現状、今後の企業対応への課題等を紹介しています。 また、欧州指令案については、その指令制定までの法制化プロセスについてイラストを付して分り 易く解説しています。さらに、電子電気機器リサイクル指令案(WEEE) 、有害化学物質使用制限指令 案(ROS)に関しては、必要以上に貿易制限的であることから WTO/TBT(Agreement on Technical Barriers to Trade;貿易の技術的障害に関する協定)委員会への懸念表明を行なっており、その和文お よび原文を掲載いたしました。国際的議論の動向としては、平成 12 年 6 月 11 日〜18 日の 8 日間の 日程でスェーデン、ストックホルム市で開催された第 8 回 ISO/TC207(環境マネジメント)総会にお ける最新動向について紹介しています。 体 裁 : A4 版 59 ページ 目 次 : 1. はじめに 2. 不法投棄と企業の対応 3. 各国の化学物質届出制度 4. 国内外の電気電子機器に関連するリサイクル規制 5. WEEE&ROS 指令案および EEE 第 1 次ドラフトの論点と諸問題 6. 国際的議論の動向 頒布価格 : 一般価格 4,500 円(組合員割引価格 1,500 円) (消費税込み、送料別) ※ http://www.jmcti.org から書籍申込ができます。 その他のお問い合わせは 環境・安全グループまで TEL:03‐3431‐9230(直通) FAX:03‐3436‐6455 JMC environment Update 64 Vol.2 No.4 (2000.11) 新刊のご案内 「中南米主要国の製品安全関連基準・認証制度調査報告書」を刊行 製品の使用者の健康保護及び安全確保等の観点から、製品の安全性を統一的に規制する製品安全につ いては、EU の CE マーキングが、グローバルな適合立証の雛形として世界各国に影響を及ぼし、各国 との相互承認協定(MRA)締結へ向けての大きな高まりとなっております。 我が国においても、本年 7 月に EU との間で相互承認協定締結への合意がなされ、その締結にはあま り時間はかからないものと確信しております。また、シンガポール、韓国、メキシコ等との 2 国間の 自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)の締結に向けての動きの中でも、MRA を含めることで議 論が進められております。 このような中で、中南米主要国のブラジル・パラグアイ・アルゼンチン・チリ・ペルー・エクアドル・ ベネズエラ・ウルグアイ・メキシコ・コロンビアについても、徐々に製品安全関連基準・認証制度の 導入或いは導入準備を行ってきております。 そこで、当組合の CE マーキング対策委員会の下部機関である「基準・認証問題専門委員会」(委員長: 岡崎憲二氏 ソニー㈱テクニカルサポートセンター技術渉外部主査)では、 「㈱エーペックス・インタ ーナショナル」にこれらの国々の委託調査を実施し、①機械製品、電気製品、EMC に関する各国規制 が存在するか、②それは任意か、強制か、③国内規格は、国際規格(ISO 規格、IEC 規格等)に整合 しているか、④他国の試験レポートを受け入れ、試験は簡素化されているか等について、取りまとめ 刊行致しました。 内 容 : 序章 ・メルコスール(南米南部共同市場) ・アンデス共同体 ・全米標準化委員会 各国共通 第 1 節機械製品 第 2 節電気製品 第 3 節 EMC 巻末資料 ・コロンビア認証機関一覧 ・コロンビア規制品目一覧 ・IRAM 規制(アルゼンチン) ・チリ認証機関一覧 体 裁 : A4 判 120 頁 販売価格 : 4,000 円 (組合員割引価格 2,000 円)(消費税込み、送料別) ※ http://www.jmcti.org から書籍申込ができます。 その他のお問い合わせは 環境・安全グループまで TEL:03‐3431‐9230(直通) FAX:03‐3436‐6455 JMC environment Update 65 Vol.2 No.4 (2000.11) 環境・安全グループ担当委員会の活動状況 1. 貿易関連環境問題対策委員会 <通算第 60 回委員会(10/24;組合会議室> ・ 「WEEE &ROS/EEE の最近の動向」について ―― 通商産業省機械情報産業局電気機器課課長補佐信谷和重氏より、WEEE&ROS/EEE 指令案の最 新動向について説明を伺った後、意見交換ならびに質疑応答を実施 ・ 「ソニーの環境への取組み〜環境対策の業績評価への反映」について ―― ソニー㈱社会環境部課長綿引敏氏より家電、パソコン、半導体など主要事業の業績評価に、 環 境対策の成果を反映させる新しい経営手法について説明を伺っ後、意見交換ならびに質疑応答 を実施 ・最近の環境報告書提供に伴うコメントについて ―― 出席委員より各社の環境報告書の概要について説明後、質疑応答を実施 2.貿易と環境専門委員会 <平成 12 年度 第 7 回委員会(10/31;組合会議室)> ・ 「貿易と環境専門委員会」の新体制と今後の委員会活動について ―― 新委員長を迎え今後の委員会活動および運営について各委員によるアンケートをもとに種々 検討を実施 ・報告書「加速化する国際環境規制と機械産品への影響」完成について ―― 前委員長より、次回報告書作成への反省材料も含め、上記報告書完成について報告 ・貿易と環境に関する海外動向について ―― WEEE&ROS/EEE を巡る最近の動きを中心に欧州環境規制動向について情報交換 3.海外生産と環境専門委員会 <平成 12 年度 第 3 回委員会(10/27;組合会議室)> ・報告書「アジア投資先における環境の現状と課題」完成について ―― 委員長より現地調査の概要および上記報告書完成について報告 ・今後の委員会運営について ―― 本専門委員会設立当初の目的を達成したことに伴い、今後の委員会継続等について種々検討を 実施 4.環境法規専門委員会 <平成 12 年度 第 4 回委員会(11/10;組合会議室)> ・委員の異動について ―― 副委員長辞任の報告および新委員の紹介 ・報告書「EU の環境政策と製品関連規制」完成について ―― 委員長より報告書完成について報告があった後、各委員よりよかった点、反省点等、意見交換 JMC environment Update 66 Vol.2 No.4 (2000.11) 環境・安全グループ担当委員会の活動状況 を実施 ・欧州環境規制に関する定期レポートの内容分析 ・環境法規に関する情報交換 ―― WEEE&ROS/EEE の最近の動向、オランダ梱包材規制等、主に欧州の環境関連規制について情 報交換を実施 ・今後の専門委員会運営について ―― 副委員長辞任および報告書完成を節目に今後の専門委員会活動および運営について、各委員の アンケートをもとに種々検討を実施 5.海外 PL 問題対策委員会 <平成 12 年度第 2 回委員会(10/6;大阪支部会議室> ・中国「製品品質法」の改正について ―― ㈱住友海上リスク総合研究所 本島副主任研究員より本年 7 月 8 日に改正され 9 月 1 日より 施行された中国の「製品品質法」の主な改正点について説明および質疑応答を実施 ・トヨタの PL 対応について ―― 本委員会の委員である井上正宏氏(トヨタ自動車㈱法務部国際訟務室室長)よりトヨタの PL 対応体制、PL 対応実務、課題等について説明を伺った後、質疑応答を実施 6.環境問題関西委員会 <平成 12 年度第 6 回委員会(10/25;大阪支部会議室> ・欧州の最近の動向について ―― WEEE/ROS 指令案に関する欧州議会での公聴会開催ならびにEEE 指令案のEU 委員会と欧州産 業界との会合開催等、最近の動向について説明し、情報交換を実施 ・欧米企業の環境への取組み等について ―― 欧米出張より帰国された委員長より、欧米の最新動向として米国 TRI、TSCA、プロポジ ション 65、ならびに欧州グリーン調達問題等、説明報告があった後、意見交換を実施 JMC environment Update 67 Vol.2 No.4 (2000.11) 事務局便り ☆9月に入って、WEEE/ROS は欧州議会と環境相理事会で、また、EEE は欧州委員会企業総局でそ れぞれ NGO を含む利害関係者との議論が活発化しています。これらの動きは組合ブラッセル事 務所駐在員から、JBCE の対応ぶりと併せて刻々と伝えられています。今号は、この3つの動き の俯瞰を試みました。 ☆組合ブラッセル事務所日本人スタッフの異動がありました。現在の体制は、新所長:田中繁広、 新次長:藤井俊彦と、現次長:頓宮裕貴、現次長:衣笠和郎、現所員:深沢英秋の5人で、藤 井次長は JBCE 事務局長を兼務です。なお、前所長:片瀬裕文は9月末に帰国しました。 ☆ELV 指令が去る 10 月 21日付官報に告示されました。自動車のケースは 1997 年7月の欧州委員 会正式提案採択からの告示まで、3年3ヶ月かかりました。WEEE は今後 NGO やグリーン議員を 含めた議論が始まるのでまだまだ曲折を経ることが予想されますが、果たして成案指令までは 2年後?3年後? ☆お気づきの方も多いかと存じますが、前号から、連載中の「欧州環境規制動向」のモニタリン グ対象である「EU、ドイツ、英国、フランス」に、新たに「デンマーク、オランダ、スウェ ーデン」の3ヶ国が追加されました。環境先進国のこの3ヶ国の情報が読者諸氏の業務の参考 になることを期待しています。 ☆さて、今年の紅葉はいかがでしたか?筆者は、高山では白馬乗鞍岳から白馬岳で、低山では荒 船山と上信国境で錦模様を堪能しました。部分的にはいつもの年と同じような色彩を演出して いましたが、全体的にはめりはりなるものがちょっと薄かったという印象です。秋になって例 年のように秋雨前線の停滞と十分な冷え込みがあまりなかったせいでしょうか。それとも訪れ た場所にもよるのでしょうか。それにしても都心は暖かい日が多いですね。この冬も暖冬と予 想されていますので、山の積雪量が不足しないかと心配です。 ☆刊行まだ2年目の environment Update で大袈裟な言い方ですけれど、とりあえず 20 世紀最後 の号をお届けします。来世紀も更なる誌面の充実を心がける所存です。(TI) JMC environment Update 68 Vol.2 No.4 (2000.11)
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