Ⅳ.「よくわかるマンガ電子納品入門」出版 これまで、CALS/EC部会で工事完成図書の電子納品に関係して作成してきた参考書 には次のものがある。 ・現場における電子情報蓄積・管理実践ガイド ・「工事完成図書の電子納品要領(案)」解説書 ・「工事完成図書の電子納品要領(案)」手引き書 しかし、これらの参考書は現場で仕事を行っている人が読むには大変であり、土工協が行 った調査でも認識率や使用率は低かった。一方、現場定点調査からわかるように、発注者及 び受注者が工事完成図書の電子納品とは何であるかの意識が低く、電子納品をスムーズに 進めるためにはまだまだ周知が必要であるとの認識を持つに至った。 そのため、食 後 の休 憩 時 間 などに手 軽 に読 んでもらえるものとして、「よくわかるマンガ電 子納品入門」を出版することとした。出版にあたっては、価格を出来るだけ低く設定すること、 これ1冊 で電 子 納 品 に関 する情 報 を得 られることを考 えた。その結 果 、販 売 価 格 は950円 (消費税抜き)とし、マンガ以外に付録として「現場における電子納品に関する事前協議ガイ ドライン(案 )[土 木 工 事 編 ]」と、「工 事 完 成 図 書 の電 子 納 品 要 領 (案 )」手 引 き書 をつけた。 「現場における電子納品に関する事前協議ガイドライン(案) [土木工事編]」は国土交通省 の了解をうけている。 この「よくわかるマンガ電子納品入門」から、エッセンスを抜き出して、ナレーションを付けた パワーポイント版の「電子納品入門」(所要時間:20分)を作成した。 この本を、2002年度の日本土木工業協会及び全国建設業協会主催の電子納品セミナ ーで資料として配付するとともに、パワーポイントはセミナーの中で使用した。 「よくわかるマンガ電子納品入門」 原作:武田 隆昌 作画:伊藤 一刀斉 発行:鹿島出版会 目次は次のとおり。 §1.特記仕様書に電子納品対象工事と書いてあ る! §2.現場で何が必要か? §3.事前協議が成否の鍵を握る §4.日常の業務、ファイルの共有をどうするか? §5.管理情報ファイルの作成、XML ってなに? §6.最終納品成果品の作成 §7.竣工検査はどうするの? 付録 「現場における電子納品に関する事前協議ガイドライン(案) [土木工事編]」 「工事完成図書の電子納品要領(案)」手引き書 1 パワーポイント版の「電子納品入門」 声の出演:茶風林 山崎たくみ 草薙真琴 川島章吾 仲里幸大 浅田夏樹 ナレーション:平野佳奈 協力:日本工学院専門学校 大沢事務所 T・S・P 株式会社 コスモ・スペース コスモ・スペース演劇工場 次に画面の例を示す。 2 よくわかるマンガ電子納品入門 1.工事の概要 2.登場人物 3.本章 §1.特記仕様書に電子納品対象工事と書いてある! §2.現場で何が必要か? §3.事前協議が成否の鍵を握る §4.日常の業務、ファイルの共有をどうするか? §5.管理情報ファイルの作成、XML ってなに? §6.最終納品成果品の作成 §7.竣工検査はどうするの? 3 「良くわかるまんが電子納品入門」 1.工事の概要 発注者 国土交通省国道事務所 工事内容 道路改良工事(土工事、ボックスカルバート、法面工事) 受注金額 4億 3 千万円(特記仕様書に電子納品対象工事として明記されている) 請負者 電脳建設株式会社(本社東京:地元支店が施工を担当) 2.登場人物 <発注者側> 富士課長(42 才) 勉強家で、新しいものを積極的に取り入れる。国土交通省が進めている CALS/EC もい ろいろな情報を自ら収集して勉強した。時々危うい知識もあるが、管理職として先頭に立 って全員を引っ張るタイプである。直接の部下である坂上係長の電子納品知識不足が不満 にして不安。 坂上係長(35 才) 施工に関しては仕事の段取りも良く理解しており受注者側の立場も理解できる技術者 である。ただIT能力は今ひとつ。パソコンでワープロ、表計算程度のアプリケーション なら何とか人並みに使えるが電子納品はよく分からない。そもそも電子納品要領(案)を読 んでも分からない単語が多すぎると不満をもらしている。 大月監督員(25 才) 学生時代からパソコンは人並み以上に使いこなし、インターネット大好き。電子納品の 知識もそれなりに持っており興味もある。独身寮の自分の部屋にもパソコンを持ち、休日 に仕事の電子メールを送信したりする。そのため月曜の朝一番で指示メールを受け取るこ ともあり受注者側としては油断できない人物。 <受注者側> 武田所長(49 才) 若い頃から現場一筋。下手な職人よりも現場の段取りには詳しい。 「パソコンなんか使え なくたって俺の現場は支店で一番利益を上げてきたぞ」と口では言っているが、IT能力 が無ければこれからの世の中生きていけないことを人一倍感じている。パソコンは電子メ ールの送受信とワープロで簡単な文章を作成するのが精一杯。 綾小路主任(37 才) 自分で組み立てたパソコンを3台持つパワーユーザ。エクセルでかなり複雑なマクロプ ログラムを組んだりすることもある。CAD も人並みには使え、電子納品対応する人材とし ては現場担当者の中ではこれ以上の人材はなかなか見つからないだろう。もちろん電子納 品もそれなり以上の知識がある。しかし、実際の施工も自分が中心になって現場を切り盛 4 りしなければならないのでこれ以上仕事を増やしたくないとの思いは強い。従って電子納 品にあまり積極的とは言えず冷めたところがある。 岩下工事係(26 才) 大学卒業後この業界に入って 4 年目だが、最初の 3 年間は設計部に配属されたので現場 経験はまだ数ヶ月程度。設計部では CAD はじめ日常業務ほとんどをパソコン上で行って いたので電子納品を行うには問題はなさそうだが、いかんせん現場でどのような書類がど のようなタイミングで作成されるのかはまだ完全に理解してない。ただ、電子納品要領(案) なども自分なりに勉強しており、理解は速い。 江角課長代理(37 才) 本社技術部で主に技術情報システムを担当している女性技術者。綾小路主任とは同期入 社で仕事の上での相談相手でもある。入社してからほとんど設計・技術畑を歩いて来た。 CALS/EC は土工協での CALS/EC 部会の委員として参加し、新しい情報もいち早く入手 して全社的な CALS/EC 展開にも対応している。綾小路主任の CALS/EC の知識もこの人 物に負うところが大きい。言うまでも無くパソコンの知識は人並み以上にあるが、なぜか 自宅には旧式のパソコンが1台あるだけで子供の入門機になっているだけ。 支店土木部長(54 才) 3.本 章 §1.特記仕様書に電子納品対象工事と書いてある! 工事の受注が決定して電脳建設では早速、支店の土木部長および現場代理人の武田所長 と監理技術者の綾小路主任が発注者の工事事務所に出向いた。発注者側からは富士課長、 坂上係長、大月監督員が最初の打ち合わせに出席。現場代理人届け等の必要書類を提出し て工事の内容について打ち合わせた後、早速富士課長が最初の一撃。 富士課長「ところでこの工事は特記仕様書に電子納品の対象工事であることが明記されて いますが、もちろん知っていますよね?」 武田所長(ドキ!!)「ええ、もちろんです」(と、一応返事はしたが、あとが続かない) 富士課長「電子納品はまだ始まったばかりで最初から納品要領どおりに完全に実施するの はなかなか難しいと思いますが、請負者側に何か考えはありますか?」 武田所長(と、言われても電子納品の内容がよく分からないので返事のしようがない) 「は、 はあ、綾小路君どうかね?」(と、早速部下に話を振る) 綾小路主任(電子納品するのは仕方ないけど少しでも仕事を減らさなきゃあ)「課長が今 言われたように最初から全部も難しいと思いますので事前協議ガイドライン(案)に従 って次回の打ち合わせで実際にどのように電子納品を行うかご相談したいのですが」 富士課長「わかりました。今日はまだ電脳建設さんも受注したばかりですので具体的な話 は後日で結構です。ただ電子納品にどれだけ対応したかというのも工事評点に影響しま すので請負者側の考えをまとめておいて下さい」 綾小路主任(最初から工事評点の話を持ち出されたのに内心びっくりしながら)「分かり 5 ました。工事着手前に施工計画書を提出しますので、それまでには事前協議を終えるよ うにしたいと思います。」 坂上係長(電子納品の話になると良くは分からないが、とにかく打ち合わせの日時を決め な く て は )「 そ れ で は 次 回 の 打 ち 合 わ せ は 再 来 週 の 水 曜 日 と い う こ と で よ ろ し い で す か?」 武田所長(やれやれ部下に綾小路君がいてくれて本当に助かった)「承知しました。その 時に電子納品の事前協議をさせていただきます。」(と、言いながら事前協議が何なのか さっぱり理解していない。綾小路君がいるから何とかなるだろうと思っている。) 大月監督員「打ち合わせの時間は 15 時ということにしますが、もし変更等があった場合 は電子メールで知らせます。先ほどもらった綾小路さんの名刺には電子メールアドレス が書いてありますね。ここにメールしますがよろしいですか?」 綾小路主任「はい、結構です。これからの電子納品に際してもそのメールアドレスを使用 することになると思いますのでよろしくお願いします」 支店の土木部長、武田所長、綾小路主任の3名は発注者側の事務所を出て、支店に帰る 車に乗り込んだ。綾小路主任が運転する横で武田所長が綾小路主任に話しかける。 武田所長「綾小路君、私もこの仕事は長いが、最初の打ち合わせでいきなり電子納品の話 を持ち出されて少々面食らったよ。良く分からないので返事が出来なかったが、要する に今現場でパソコンを使って作成している書類をそのままフロッピーなんかに落として 提出すれば良いのじゃないのかね」 綾小路主任(フロッピーだって?データの記憶メディアと言う意味では同じかもしれんが、 これは先が思いやれる!) 「まあ、所長の言われていることは、大きなところで間違って はいません」(ちょっと大きすぎますけどね)「でもその個別の手法になるとそう簡単な 話ではないですよ。それに CALS/EC の電子納品はまだ始まったばかりで事例が乏しい ですからある程度試行錯誤も必要でしょうし、私の同期で本社技術部の江角に聞いたの ですが、今までみたいに竣工検査前になって書類をまとめて作ってしまう、なんてこと もなかなか出来ないようです。要するに最初の計画や、何をしなければならないかとい うことに対する作業所職員全員の理解が絶対必要です」 武田所長「ふむ、まあ、とにかく支店に帰って工事係の岩下君も入れて打ち合わせよう」 (事態を良く飲み込んでいない) 支店土木部長「まあ、そのためもあってこの現場に綾小路君を配置したんだからよろしく たのむよ」(事態をまったく飲み込んでいない) 綾小路主任「・・・・・・・・」(先が思いやられる.......) §2.現場で何が必要か? 発注者側事務所から帰ってきて、電脳建設の支店で武田所長、綾小路主任に岩下工事係 も加えて3人で打ち合わせ。今後の仕事の進め方や施工計画の作成、現場事務所の設置な どを打ち合わせたあと、電子納品についての話題に移る。 6 武田所長「さて、綾小路君、次回の役所との打ち合わせは施工計画書の内容と今後の工程 についてがメインになると思うけど、電子納品の、その、なんだ、事前協議とやらをし なければならないんだろう?どうすれば良いのかな?」 綾小路主任(いつも現場でてきぱき指示する武田所長にしてはすっかり弱気だな)「事前 協議をどうするか『事前協議ガイドライン(案)』に従って私が考えようと思います。現 実的に何がどうできるかの判断と、その内容を発注者と摺り合わせることが一番重要な ポイントになると思います。」 武田所長(これは俺もかなり勉強しなければだめだな....)「実際の対応の窓口は綾小路 君ということでよろしく頼むよ」 綾小路主任(施工計画書も作らなきゃ、事務所開設の段取りもしなきゃ、協力会社との打 ち合わせもしなきゃ、と工事が始まったばかりの時に行わなければならない膨大な段取 りのことを考えながら、げんなり) 「はい、わかりました。ところで、電子納品に対応す るためにはまず現場でいろいろと準備しなければなりません。」 武田所長「どういった準備が必要なんだ?」 綾小路主任「まずパソコンですが、これは所長や私、岩下君が今使っているマシンは Windows98 がストレスなく動いていますから特に問題はありません。ただ電子納品をす るためには電子データの共有が一番重要になりますから事務所のなかで LAN を組む必 要があります。それに、発注者側と電子メールのやり取りを行わなければならないので インターネットに接続できる環境を整えなければなりません。出来れば今はやりの ADSL などの高速なものが良いのですが工事現場付近では ISDN しか使えないようです。 ISDN 程 度 で は 画 像 な ど の 大 き な デ ー タ を 扱 う の に 少 し つ ら い で す が 仕 方 な い で し ょ う。」 武田所長「インターネットは今でも現場から社内のサーバに接続して会社からの電子メー ルを読んだり、電子掲示板を閲覧したりしているから問題は無いね。現場が移動したと き の 接 続 の 設 定 変 更 さ え し て も ら え れ ば 私 に も 出 来 る よ 。 事 務 所 内 LAN は ど う す る の?」 綾小路主任「現場に事務所を建てたら当然電話もひかなければなりません。その時に事務 所内 LAN も構築するよう業者に維持管理も含めて委託するようにします。インターネ ットは役所との電子メールのやり取りが多くなることが考えられますので、プロバイダ とは常時接続の契約にした方が良いですね。最近は常時接続でもプロバイダ料金や電話 代はあまり負担になりません。」 武田所長(まだ状況の見えて来ないところがあるが、とにかく)「なるほど」 岩下工事係「綾小路さん、事務所内で LAN を組んでプリンタやスキャナも共有するよう にするのですね?」 綾小路主任「そうだね。ただ、LAN を組むのは、プリンタやスキャナをみんなで使うとい う意味よりも、電子納品では工事を担当する人間がファイルを共有して管理することの 方が特に重要になるんだ。国土交通省の電子納品要領(案)では最終成果品のファイル 名にもちゃんと付け方の規則があって、なかなか面倒だよ。そのために事務所内 LAN 7 にみんなのパソコン以外にもう一台パソコンを接続してそのハードディスク内に共有フ ァイルを格納して管理することを考えている。事務所内サーバマシンと言えば少し大げ さだけど性能はみんなが使っているものと同じ程度で十分だよ。ただハードディスクは 工事写真や図面なんかのサイズが大きいデータもたくさん入れられるように大きめ、出 来れば 100GB くらいあれば良いな。」 岩下工事係「なるほど。ただ、私も国土交通省の電子納品要領(案)を読んでみましたが、 最終成果品のファイル命名規則はとても日常の業務では分かりにくいですね。」 綾小路主任「そのとおり。だから日常のファイル管理もどうすれば良いかこれからみんな で打ち合わせていこうと思う。とにかく今は事務所内の LAN の構築や、必要な機器の 調達は岩下君の担当にするから業者と打ち合わせてくれ。デジタルカメラやデータのバ ックアップ装置も頼むよ。」 岩下工事係「わかりました。デジタルカメラは 120 から 150 万画素あれば十分ですね。確 か国土交通省デジタル写真管理情報基準(案)では 100 万画素程度との規定があったと 思いますが。」 綾小路主任「そうだね、画像データはあまり重くなると取扱いが大変だから現場で使うの なら 150 万画素もあれば十分だよ。それに最近各社から発売されている工事用デジタル カメラは画像サイズや画像の圧縮率などが標準状態で規準(案)をクリアする設定にな っているようだね」 (俺は昔 10 万画素のデジタルカメラを新宿のサクラバシカメラで5 万円も出して買ったぞとむなしく思い出しながら) 「 それにしても最近のデジタルカメラ は性能が良くなって安くなったね」 岩下工事係「はい、それに工事用デジタルカメラは防塵防水対策を施してあるのが標準的 ですからやはり現場仕様のものを選びます。それから、設計部にいたときも使っていた のですが、カラーコピー機でプリンタやスキャナとしても使えるものがありますからそ のような複合機をネットワークから全員が使えるようにしようと思います。それと、イ ンターネットはルータを使用してみんなが同時接続できるように業者と打ち合わせま す」 綾小路主任(現場ではまだあまり役に立たないが、電子納品対応は岩下がかなり役に立ち そうだと少し安心しながら) 「うん、そうだね、業者の見積を取ってなるべく安く上がる ように頼むよ」 岩下工事係「ところで、電子納品要領(案)ではスキャナの読み込み解像度についての規 定は無いようですが、それについてはどのように考えたら良いのですか?」 綾小路主任「確かに電子納品要領(案)ではスキャナの解像度についての規定は無いね。 スキャナが必要な場合というと、鋼材やセメントの品質証明書だとか、カタログ、マニ ュフェストなどを読み込んで電子データにするような場面が考えられるかな。電子納品 要領(案)では、このような書類については請負者・発注者間で事前に協議する必要が あるとしているから、今度の事前協議項目の一つになるね。ただ、もしスキャナ読み込 みが必要だとしても 300dpi あれば十分実用的だよ。スキャナの場合も写真と同じで解 像度を必要以上に細かくするとデータ量が大きくなってしまうから何を読み込むかによ って現実的な解像度を設定することが大事だね。それから成果品を作るのに必要だから、 8 CD用のラベルライターも1万円程度であるから準備しておいてくれよ」 岩下工事係「なるほど、ハードについてはほぼイメージが出来ました。また調達する際に 細かい点は綾小路さんに相談します。ところで、ソフトについてはどうなりますか?」 綾小路主任「うん、ハード環境の整備も重要だけど、ソフトの統一も大事だね。ソフト名 とそのバージョンを受発注者間でよく打ち合わせておかないと、日々のメールのやり取 りで支障を来したりするからね。ただ、今我々のパソコンにインストールされているソ フトをベースに考えないと余計な出費や、使い慣れないソフトを使うことになるから今 度の事前協議では重要なテーマになるよ」 武田所長(不安そうに)「綾小路君、私はワープロくらいしか使えないが、大丈夫かな?」 綾小路主任「所長は電子メールのやり取りも出来ますし、打ち合わせ簿はワープロ文書で すからそんなに心配しなくても大丈夫でしょう。表計算や、CAD を使用しなければなら ない作業は私と岩下君で何とかします」 武田所長(再び、綾小路主任がこの現場に配属されたことに感謝しながら)「うん、私も 勉強するから、よろしく頼む」 (と、言いながら何から勉強したら良いのかまだ理解して いない) 綾小路主任(支店の土木部長に、今度の現場は CALS/EC 対象現場だから武田所長を助け てやってくれと言われたことを思い出しながら) 「はい、わかりました。とにかくまずは 受注者側の事前協議の案をまとめることにします」 (と、言ったものの施工計画書の作成 と協力会社の選定・見積の徴収 etc のことを思い出して、ますますげんなり) §3.事前協議が成否の鍵を握る 発注者との打ち合わせを約束した週の水曜日の午後、発注者側事務所に武田所長、綾小 路主任、岩下工事係の3名が出向き、施工方法の打ち合わせ、工程の打ち合わせ等を行う。 発注者側からは前回同様、富士課長、坂上係長、大月監督員が出席。 坂上課長「施工方法や工程については、今日見せてもらった施工計画書で大筋問題は無い と思いますので、今日の打ち合わせに従って細部を修正した計画書を至急提出して下さ い」 武田所長「承知しました。事務所用地も決まりましたので出来るだけ早く事務所を建てて 現場に乗り込みたいと思います。それと来週から全体の測量を開始します」 富士課長(武田所長は坂上係長に言ったのだが、横から)「それは先ほどの工程打ち合わ せでも出ましたので問題ありません。ただ、打ち合わせ簿は必ず作成して下さい。打ち 合わせ簿は電子納品の一部にしようと思いますのでよろしくお願いします。」 武田所長「承知しました」 綾小路主任(わっ!やっぱり打ち合わせ簿は電子納品対象か!武田所長、簡単に承知しま したなんて言うなよ!) 「 打ち合わせ簿はやはり電子納品対象ということになるのでしょ うか?」 富士課長「そうですね、地元の小さい会社では今回はデジタル写真だけの提出にしてもら えないかとの希望も無いこともありません。でも、電脳建設さんくらいの会社になると 9 デジタル写真程度の対応では工事評点の加点対象になりませんよ」 綾小路主任(やれやれ、また工事評点か!)「わかりました、ただ、電子納品書類につい ては順番に打ち合わせをさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか」 富士課長「それでは、施工打ち合わせもほぼ終了したようですので、これから電子納品の 事前協議を始めましょう。それで良いかな坂上係長」 坂上係長「わかりました」(と、いいながら、事前協議については良くわかっていない) 富士課長「それでは、まず受注者側の考えを聞かせて下さい」 綾小路主任「3つ要点があると思います。第1は電子納品提出対象をどうするか?第2に、 納品対象となった書類のオリジナルデータを作成するソフトやバージョンをどうする か?そして最後に、これがある意味電子納品では一番重要な点だと思いますが受発注者 間のデータ管理や情報の共有をどうするか?つまり、電子納品対象書類の作成・承認や 管理方法の問題です。」 富士課長「そうですね、細かい点はいくつかあっても、まず、最初に決めておかなければ ならない大きな点はやはり綾小路さんが言われる3点だと思います」 綾小路主任「まず第1点目ですが、国土交通省では発注図面をはじめ 10 種類の書類を電 子納品するように求めています。ただ、電子納品も運用が始まったばかりですので現実 にはすべてを完全に納品要領どおりに行うことはなかなか難しいと思います。そこで書 類ごとに個別に打ち合わせをさせて下さい。」 富士課長「わかりました。例えば、今回の発注図面は納品対象から外そうかと我々も考え ていたところです」 坂上係長(不思議そうに) 「しかし、課長、発注図面は確か CAD で描かれていたと思いま すが?」 富士課長「確かにこの工事の図面は CAD で描かれてはいるけど国土交通省 CAD 製図規準 (案)に則って描かれているわけではないので電子納品対象から外した方が良いと思う」 坂上係長「でも、基本的に電子データはあるのですから、CAD 製図規準(案)に従って修正 すれば良いのではないですか?」 綾小路主任(わ、これは、まずい!坂上係長分かってない!そんな面倒なことしたくな い!) 「しかし、係長、実際にそのような作業をするとなると、枚数から考えてもそれな りの費用もかかります。設計変更対象となるのでしょうか?」 富士課長(業者はすぐ設計変更を持ち出す、と思いながら) 「費用をかけてまで CAD 製図 基準(案)に従って修正することもないと思いますので、やはり今回は電子納品対象から 外します」(坂上君、分かってないね) 綾小路主任「今回の工事は CAD 製図規準(案)が出来る前に作図されたようですから、電子 納品対象から外すということでお願いします。ただ、施工に使用したいと思いますので 電子データをご提供いただけないでしょうか?」 富士課長「それは、かまいません。大月君、この工事の CAD データは何だったかな?」 大月監督員「設計会社は AutoCAD を使用して作図しています。しかし、納品の時に DXF に変換したものも納めてもらっています」 岩下工事係(AutoCAD なら設計部にいたときから使っているからね、まかせなさい!) 「当 10 社は AutoCAD を使用していますので、AutoCAD のオリジナルデータをいただけます か?」 大月監督員「わかりました。それでは、データは MO に格納して渡します。」 綾小路主任「ありがとうございます。その他の書類についても、どのように納品したら良 いか個別に判断をお願いします。その際、その書類を作成するソフト、バージョンも同 時に決めて行きたいのですが」 富士課長「わかりました。それでは一つ一つ決めて行きましょう」 その後、書類ごとに個別に話し合い、結局以下のように決まった。この話し合いの間、 どんな打ち合わせでも一番口数の多い武田所長は借りてきた子猫ちゃんだった。しかし、 そこは現場経験豊富な武田所長、打ち合わせを聞きながら徐々に電子納品の何たるかを理 解し始めてきた。しかし、中途半端な理解が一番怖い。 CAD で描かれているが、CAD 製図基準(案)には準拠していないので納品対 ・発注図 象外 ・完成図 発注図を納品対象外にしたので完成図も納品対象外 ・特記仕様書 電子データではないので納品対象外 ・施工計画書 受注者が電子データで作成して納品対象とする。作成ソフトは基本的に MS-WORD、MS-EXCEL とする。もしスキャナで読み込んだ画像データを貼り付ける場 合のファイル形式は JPG とする。 ・工事打ち合わせ簿 納品対象とする。様式は発注者が電子データで提供する。オリジナ ルファイルは MS-WORD ・段階確認書、工事履行報告書 ・品質管理資料、出来形管理資料 上記に準ずる 発注者統一様式を使用し作成するが今回は電子納品対 象外とする。 ・写真 デジタルカメラで撮影し納品対象とする。写真管理ソフトは受注者が任意に選択 する。 ・ミルシート、マニュフェスト等 スキャナ読み込みをしなければ電子データに出来ない ものは電子納品対象外とする 綾小路主任「3点目の問題になるかと思いますが、これらのデータの作成・管理をどのよ うにするかということについて発注者側で決まっている方針はあるでしょうか?」 富士課長「これについては、電脳建設さんからインターネット経由で我々に提出書類のデ ータを電子メールに添付して送信して下さい。送信してもらったデータを我々が承認し たあと、電子メールで電脳建設さんに返信します。そのデータを電脳建設さんの事務所 で管理してもらって竣工時に電子納品要領(案)に従って提出してもらいたいと考えて います」 綾小路主任(やはりデータは我々受注者側で管理することになるのか、現場が忙しい時に これはなかなか大変だ) 「 そうしますと我々が管理することになる電子データの原本性の 11 保証が問題になりますね」 富士課長「データの書き換えを防ぐために承認データは読み取り専用にすることと、デー タのバックアップをしっかり行うことが重要になります。データの改竄の問題などは結 局、受発注者間の信頼関係の問題だと思います」 綾小路主任(そんなこと言ったって、読み取り専用設定だって、データのバックアップだ って全部こっちがするんだから、と思いながら) 「データの共有や信頼性、管理方法のこ とを考えると ASP の利用が一番良いのではないでしょうか?」 富士課長「それは確かにそうですが、ASP 事業もまだ立ち上がったばかりですし、今回は 主に打ち合わせ簿データの管理を電子メールでやり取りすれば何とかなると思っていま す。ただ、将来的には ASP の利用がやはり主流になると思います。」 綾小路主任「承知しました。もし他に発注者の方から特別な指示や希望がなければ事前協 議の主なものはこれでよろしいかと思います。細かい点については実施しながら打ち合 わせさせていただきます」 富士課長「そうですね。当方もまだまだやってみなければ分からない部分が多いので電脳 建設さんもいろいろと協力してもらわなければなりません。よろしくお願いします」 武田所長(最後くらい俺にも言わせろ、と思いながら)「はい、こちらこそよろしくお願 いします。今日の事前協議も打ち合わせ簿にして電子メールで送信いたしますので、ご 承認をお願いします」(ふむふむ、事前協議って何だか少しわかってきたぞ) 綾小路主任(所長!その打ち合わせ簿どうせ自分で作るんじゃあないでしょ!) 「岩下君、 作成を頼むよ」 岩下工事係(わ!結局俺か!)「わかりました。早速作成して大月さんに送信します」 大月監督員「お願いします。事務所で必要箇所に回覧して承認されたあと、岩下さんに電 子メールの添付ファイルで返信いたします」 岩下工事係「承知しました。承認されて返信された打ち合わせ簿は最終成果品として電子 納品対象にします」 (という、返答で良いんだな。管理の方法は後から主任に相談しよう) §4.日常の業務、ファイルの共有をどうするか? その後、電脳建設では現地に現場事務所を建て、いよいよ現場に乗り込んだ。現場事務 所内では以前の打ち合わせに従って LAN を構築し、各自のノートパソコンの他にもう一 台デスクトップパソコンを加えてネットワークを形成した。 武田所長「綾小路君、このデスクトップパソコンが、その、いわゆる事務所内サーバマシ ンだな。みんなのパソコンと LAN でネットワークに繋がっているわけだ」 綾小路主任「わ!所長!だいぶ言葉が増えましたね。我が家の3才の娘も最近ずいぶん単 語を覚えていますけど、似たような感じですよ!」 武田所長「3才の女の子と同じにするなよ。ところで、どうしてデスクトップにしたんだ い。ノートパソコンの方が場所を取らなくて良いじゃないか」 岩下工事係「マシンスペックが同じくらいだと、なんと言ってもデスクトップの方が安い ですからね。普段各自が作業する机の上に置くのはノートパソコンの方がじゃまになら 12 なくて良いですけど、サーバマシンにするならデスクトップの方が安いだけ御利益があ りますよ。拡張性も高いし、このト○○トロン管モニタの発色は僕好みだし(何しろイ ンターネットのHページを見たとき肌の色が違うぞ、むふふ)、ハードディスクも最近は 安くなっていますからね、120GB を積みました」 綾小路主任「みんなのパソコンは LAN で繋いだし、プリンタやスキャナもネットワーク 上にあるし、ISDN ではちょっとスピードに難はあるけど全員がルータでインターネッ トに接続できるし、岩下君の段取りのおかげだよ。ところで、このハードディスク、イ ンターネットからH写真をダウンロードするのに使おうなんて考えていないだろう な?」 岩下工事係(お!図星!)「まさか!(話題を変えろ、話題を!)ところで、主任、この 環境で電子納品するデータの作成をどうするか、つまり作成の方法や管理方法について なんですが、主任の考えを聞かせて下さい」 綾小路主任(こいつ、けっこう急所を理解しているぞ!)「うん、それについてだけど、 大前提として、電子データを管理するには2段階ある。仮にそれをステージ1、ステー ジ2としようかな。まず、ステージ1は、現場作業所で、みんなが、つまり武田所長も 含めた我々3人が電子データを管理する段階。それからステージ2は発注者に承認され た最終提出用のデータを管理する段階だね」 武田所長「なぜ、そんなふうに2段階に分けなければならないのかな。最初から最終提出 に従ったデータ作成をすれば手間が省けると思うが?」 岩下工事係「それは、所長、前にも言いましたが、国土交通省の電子納品要領(案)です と最終提出用ファイルの命名規則が日常作業の中ではとても分かりにくいのです。例え ば MS-WORD で打ち合わせ簿を作成したとすると、『M0001_001.DOC』なんて名前を 付けなければならないんですよ。これでは何の打ち合わせをしたか日常作業ではとても 整理は出来ません。そこで、我々が日常作業するとき、つまりステージ1では人間が見 て分かりやすいファイル名にしなければならないと、そういうわけですね、主任」 綾小路主任(おー、こいつはちゃんと理解している!) 「そのとおり。ファイル名もそうだけど、フォルダも 我々が分かりやすく作らなければならないね」 武田所長「しかし、綾小路君、そんな分かりにくいファ イル名を付けたら、納品した後で何のデータなのか分 からなくて役所の方で困らないのかな?」 綾小路主任「そのために、例えば打ち合わせ簿一つ一つ にも、定められた管理情報を付けるんです。もちろん、 打ち合わせ簿一枚一枚にも定められた管理情報、つま りインデックスに相当する情報を付けます。発注者は、 後日、この管理情報で必要なデータを検索しますので 問題はありません。この管理情報は提出時に XML と いう特殊な言語既述にして提出することになりますが、 その話は少し面倒なので後にします。その前に、フォ 13 作業用フォルダ構成例 ルダ構成と日常のファイル名の付け方について決めてしまいましょう」 3人で、いろいろと打ち合わせを行い、結局、日常のファイル名は以下のようにつける 事になった。 工事打ち合わせ簿の例 工事打合せ簿 種類+日付+簡略タイトル . 拡張子 種類: 指示は「指」、協議は「協」、通知は「通」等とする。 日付: 打合せ日時を入れる。 簡略タイトル: 打合せ内容を解りやすく表現したタイトルをつける。 (例)指 021101 基準点.拡張子 武田所長「なるほど、こうすれば我々が日常作業するのに分かりやすいね」 綾小路主任「はい、工事現場の場合にはどうしても工事の最盛期に人が増えても、終わり 頃になると他の忙しい現場に引き抜かれたりしますから、このようにファイルの管理方 法を決めて、誰が見てもファイルの内容が分かるようにすることは特に重要です」 武田所長「綾小路君はこの現場が終了するまでいてもらわなければ困るよ」(早速、支店 の土木部長に綾小路君を異動させないように頼んでおかなければ) 綾小路主任「次に、提出用の成果品を管理する方法につ いてだが。先ほどのステージ2だ。これは電子納品要 領(案)で決められたフォルダ構成と同じ成果品フォ ルダをサーバ上に作成し、これに承認されたデータを 登録していくんだ。」 岩下工事係「でもみんなが勝手に登録すると困りません か」 綾小路主任「そうなんだ。誰かひとり担当を決めて成果 品を登録すると同時に、EXCEL で成果品の一覧表を 「管理項目一覧表」として作成しておくことが必要な んだ。この時に承認されたデータを読み取り専用に設 成果品フォルダ構成 定することを忘れないように。担当は岩下君、君だよ」 岩下工事係(えっ、やっぱり僕か) 「大変そうですがファイルの管理方法は分かりました。 これから現場の進捗状況に従って人が増えたり減ったりしても、この管理方法でファイ ルを管理するようにします。そこで、ファイルに付ける管理情報ですが、国土交通省の 電子納品要領(案)を読むと何だか面倒くさそうですね」 綾小路主任「それじゃあ、管理情報の作成の仕方と、その管理情報を XML 変換する方法 について打ち合わせよう。それについては、本店技術部の江角君に少し講習をお願いし ようと思う。ちょうど明日、設計照査の件でこちらに来るから時間を取ってもらうよう に話をするよ。」 岩下工事係「そう言えば、江角さんは綾小路さんと同期入社でしたね。前に本社の設計部 14 にいたころ、いろいろと教えてもらいました」 武田所長「うんうん、私も前に現場の技術検討をしてもらったことがあるけど、とても優 秀な技術者だね」 綾小路主任(俺だってそれなりに優秀だぞ)「はい、今までも江角君にはいろいろと相談 しながら進めて来ましたが、こうやって事務所のハードも一とおり揃いましたので、フ ァイルの管理の方法も含めてここで一回方向性のチェックをしてもらいます」 §5.管理情報ファイルの作成、XML ってなに? 翌日、本店技術部より江角課長代理が現場に来て武田所長、綾小路主任とともに発注者 事務所へ出向き、設計照査の打ち合わせを行った。その後現場事務所に戻ってきて、江角 課長代理が現場事務所で今まで構築したハードの環境や、ファイルの共有の方法などにつ いて綾小路主任や岩下工事係と打ち合わせ。 江角課長代理(一とおり、現場事務所の状況を見た後で)「綾小路さん、あなたとは同期 の仲だから、はっきり言いますが・・・・・・・まあ、こんなものかな」 綾小路主任「そのもったいぶる性格は昔から変わらないな。だいたい、パソコンに詳しい 人間はもったいぶってカッコつけると言う共通した性格があるな。まあ、いいや、今日 はファイルの管理情報の付け方と、XML の基本的な考え方の講釈を一発ぶってくれ」 武田所長(人のことを言えた義理かい、綾小路君だって時々何を馬鹿なことを聞くんだっ て顔するじゃないか) 「江角君、先日、綾小路君に何故管理情報なるものが必要か説明し てもらってね、少し分かったような気がするよ。要するに、どのようなファイルを提出 したか、あとから検索できるような決められた情報をファイルごとに付けると言うわけ だね」 江角課長代理「はい、そういうことです。例えば工事写真を例に取って話してみましょう。 管理情報は工事写真1枚1枚に付けなければなりません」 武田所長「そうらしいね。それにしても、この現場での写真枚数は何枚になるかわからな いけれど、いずれにしても何百枚、もしかしたら1千枚を越えるかも知れないよ。大変 な作業量になるね」 江角課長代理(どうせ所長がするわけじゃないでしょ!)「確かにそうですが、そのため のソフトもありますし、付けなければならない管理情報はかなりの部分重複しています から思ったほどの作業量にはなりませんよ。ただ、日頃の整理が大事ですね。もっとも 日頃の整理が大事なのは今までだってそうでしたから同じことです」 岩下工事係(そんなこと言ったって、どうせ江角さんがするわけじゃないでしょ!)「電 子写真管理ソフトはネットワーク版を購入して、LAN に繋がった全員が使えるようにな っています。もちろん写真はこのサーバマシンのハードディスクに保存して管理します」 江角課長代理「さすが岩下君、写真管理ソフトも LAN で使えるようにしたのね。でもこ くらいの規模の現場だったら多分、そこの事務所サーバマシンにしているデスクトップ パソコンにスタンドアロン版を入れてみんなで使っても十分よ。ただ、データをみんな で共有するという思想から LAN で使えるようにしたのは今後の電子納品に対応するた 15 めにはとても大事なことだと思うけど」 武田所長「ところで、江角君、そのデスクトップパソコンのハードディスクに保存した写 真1枚1枚に管理情報を付けることになるわけだろうけど、具体的にその管理情報って どんなものなのかな」 江角課長代理「ここに国土交通省から出ている『デジタル写真管理情報基準(案)』があり ます。まず基礎情報として媒体情報やソフトウエア情報ですね。これは写真フォルダの 名称だとか、写真管理ソフトの名前や製作した会社の情報です。当然これは1回入力す れば終わりですが、製作会社の情報などは最初から自動入力されているソフトがほとん どですから入力回数はゼロとも言えますね」 武田所長(デジタル写真管理情報基準(案)を見ながら)「なるほど」 江角課長代理「次に工事情報です。これは工事名だとか工事番号、工期、発注者の情報、 それから当然、受注者である我々の会社の情報ですね。これらも1工事に1回入力すれ ば終わりです」 武田所長「なるほど、入力する管理情報はデータ表現だとかデータ長、要するに文字数か、 それから絶対入力しなければならないとか必要に応じてとか、そんなことが全部決まっ ているんだね」 江角課長代理「そうです。写真管理ソフトには決められたとおりに入力されているかどう かのデータのチェック機能がついていますし、必須項目が入力されていなければ警告し てくれますからソフトに従って入力すれば問題はありません。それから、3番目に写真 1枚1枚に付ける写真情報です。項目としては成果品として納める写真に通しで付ける シリアル番号などの写真ファイル情報、工種や写真タイトルなどの撮影工種区分、参考 図などの付加情報、撮影年月日などの撮影情報、施工管理値などですね」 岩下工事係「この作業は主に私がすることになると思いますが、写真を毎日きちんと整理 しながら情報を付けていかないと、あとからでは大変ですね」 綾小路主任「確かにそうだけど、さっき江角が言ったようにけっこう重複している情報も あるし、番号なんかは自動的に振ってくれるから何とかなるよ」 岩下工事係「ところで江角さん、このデジタル写真管理基準(案)によると写真は『PIC』 フォルダにまとめて入れてしまうんですね。一つのフォルダに何百枚という写真ファイ ルが収まることになりますよね」 武田所長「そんなことしたら、あとから必要な写真を探し出すのに大変じゃないか。ちゃ んと工種ごとや撮影場所別にフォルダ分けしなければだめだろう?」 江角課長代理(分かっているようで分かってないなあ、所長!)「ですから、管理情報を つけるんですよ。管理情報で検索できるから問題ありません」 武田所長「あ、そうだった、それは説明されたばかりだった。何度も同じことを聞いて申 し訳ない」(余計なことを言わなければ良かった!) 江角課長代理「そもそも、電子納品では、納品された成果物から人間が手作業で必要なフ ァイルを探すなんて発想がありません。だから別にフォルダ分けなんかしなくて良いん ですよ。管理情報を付けて、その管理情報を XML で記述して納品するわけです」 綾小路主任「江角、その XML の話だけど、当然今使っているこの写真管理ソフトには管 16 理情報を XML にする機能がある。だからあまり XML を意識する必要もないと思うん だけど」 岩下工事係「どうもこの XML って良く分からないですね。まさかこんな特殊な言語既述 を勉強しなければだめだなんて話にはなりませんよね」 江角課長代理「もちろん、勉強なんてしなくても電子納品には支障はないわよ。ただ、XML はテキストデータなので管理情報を XML で既述しておけば使用している OS やハード のプラットホームに依存しないからとても便利な言語だということくらいは知っていて 損はないわよ。」 岩下工事係「なるほど、管理情報を XML にするということは、そう言う意味があったの ですね。よくわかりました。ところで、江角さんが説明してくれたのはデジタル写真の 場合ですが、打ち合わせ簿なども基本的に同じと考えて良いですね」 江角課長代理「うん、岩下君の言うとおり。打ち合わせ簿も一つ一つに管理情報を付けて 行くわけだけど、当然その場合のルールも決まっていて『電子納品要領(案)』に記載さ れているわ。基本的な考え方はまったく同じよ」 綾小路主任「最近は工事写真だけでなく、打ち合わせ簿などの書類を管理して管理情報を 最後に XML にしてくれる電子納品対応のソフトがいろいろと出ているね」 江角課長代理「うん、この手の書類を管理するソフトには大きくわけて、普段のファイル 管理もしようというもの、承認された最後の成果品だけ納品要領に従って管理情報を付 けようと言うものの2つがあるの。普段のファイル管理も同時に出来る方が便利なよう だけど価格も高いし必ずしも使い勝手が良いとも限らないからソフト選びは慎重にしな ければだめね」 綾小路主任「この現場では普段の書類管理はサーバマシンの中にフォルダを作ってやろう と思っている。発注者に承認された書類だけ決められた管理情報を付けて XML にする ソフトは比較的安くて使い勝手もよさそうなものを選んだよ。といっても江角が推薦し てくれたものだけどね」(まあ、この辺は江角の独り舞台だな、しょうがない) 武田所長「江角君、何とか私も電子納品の方法が少しわかってきたよ。それに電子納品と いうことではなく、事務所で作成する書類をネットワークで効率的に作成するとか情報 を共有するということは特にこれから重要になるね」 綾小路主任(お!さすが、所長、わかってきましたね)「はい。現場で作成される書類は ある程度パターンが決まっていますので事務所内ばかりではなく、インターネットで電 子データを他の現場や他の支店ともやり取りすることで随分お互いの仕事が楽になると 思います」 江角課長代理「本社技術部の情報システム担当もその辺を中心になってやっていますので 現場のご協力もよろしくお願いします」 武田所長「それにしても私の若い頃とは仕事の方法も変わったもんだね」 §6.最終納品成果品の作成 現場事務所では、施工中も最初の取り決めに従ってファイル管理を行い、発注者側に承 認された書類にその都度、管理情報を付けてフォルダに格納していた。そしていよいよ工 17 事も竣工時期を迎えることになって最終成果品作成の打ち合わせを事務所で行った。 綾小路主任「岩下君、打ち合わせ簿の管理情報は一覧表になっているかい?」 岩下工事係「はい、主任に言われたとおり、打ち合わせ簿の管理情報は役所から承認され るたびに一覧表に書き込んできました。こんな感じです」 打合せ簿での管理項目一覧表作成例(Excel 使用) 打合せ簿番号 A-1-012 A-1-013 A-1-014 ・ ・ ・ 打合せ簿名称 現在のファイル名 土留工工法変更について 協020418土留工法変更.xls 使用材料承諾願(マンホール) 承020513マンホール材料.xls アンカーボルトの検討について 協020524アンカー検討.xls … ・ … ・ … ・ 文書の種類 シリアル番号 協議 承諾 協議 ・ ・ ・ 1 2 3 ・ ・ ・ 提出日 添付ファイル1 2002/4/18 協020418土留工法資料1.doc 2002/5/13 承020513マンホール材料資料.xls 2002/5/24 協020524アンカー検討資料.xls ・ ・ ・ ・ ・ ・ 添付ファイル2 協020418土留工法図面.dwg 協020524アンカー検討計算書.xls ・ ・ ・ 綾小路主任「そうそう、これを坂上係長に確認してもらわなければ。OK が出れば一括し て XML に変換してしまおう」 (ちゃんと、打ち合わせどおりに作成してある。よしよし) 岩下工事係「打ち合わせ簿ファイル全部に管理情報を一つ一つ付けてさらにこんな一覧表 を作るの面倒だったんですけど、最後の成果品を作成する時にはやはりこのような一覧 表が無いと確認作業が出来ないですね」 綾小路主任「管理情報を CSV 形式にして EXCEL で表示できるようなソフトもあるみた いだね。今度はそんなソフトも使ってみようか。電子納品対応ソフトはまだまだこれか らの市場だからユーザの声を汲み上げたソフトがいろいろと出回ると思うよ」 岩下工事係「そうですね。反対にユーザの支持を得られずに消えて行くソフトも多いでし ょうけど」 武田所長「綾小路君、成果品のファイル名は我々が分かりやすい名前をつけて管理してい たよね、えーと、以前に言っていたステージ1だ。これを電子納品要領(案)の命名規 則に従ったファイル名にしなければならないわけだ」 綾小路主任「そうです。今回我々が使用している電子納品ソフトは打ち合わせ簿なら打ち 合わせ簿、施工計画書なら施工計画書単位で命名規則に従って自動的にファイル名を変 更してくれます。ですから電子納品要領(案)に従って決められたフォルダに成果品フ ァイルからコピーして一括変換します。もちろん管理情報の XML へも一括変換できま す」 岩下工事係「綾小路さん、最終提出品は CD-R にするのですね」 綾小路主任「うん、この前富士課長から最終成果品は CD-R にするよう指示があったよ。 電子納品要領(案)では MO でも良いことになっているけど、この事務所では CD-R に 統一しているらしいよ」 岩下工事係「ええ、大月さんからも聞いています。たしか CD-R のフォーマット形式は ISO9660(レベル1)と決められていましたね。それと必要項目は CD-R に直接印刷した 方がいいですよね」 綾小路主任「そのとおり、岩下君、すっかり電子納品のエキスパートになったな。次の現 場へ行っても問題なさそうだな。きっと次の電子納品対応現場に行ったら周りから頼り にされるぞ」(やっぱり俺の教育が良いからな) 18 岩下工事係「綾小路さんにそう言ってもらえるとうれしいですね」(やっぱり僕の頭が良 いからね) §7.竣工検査はどうするの? 電脳建設では成果品の CD-R を作成して、発注者事務所に内容を確認してもらうため出 向いた。そこで、竣工検査の方法も打ち合わせすることに。 綾小路主任「課長、成果品の CD-R の内容を確認していただきたいと思ってパソコンも持 参しました。竣工検査でも、検査会場にパソコンを持ち込んで、この CD-R を検索しな がら検査官に見てもらうことになるのでしょうか? というのも当社の他の支店で電子 納品に対応した現場の竣工検査状況ですと、パソコンでの検査になれていないために検 査したい書類ファイルが簡単に見つからずに、あまりスムーズには行かなかったような ことを聞いています。ただ、せっかく電子納品に対応したのですから、検査は電子的に 行っていただけませんか。紙ベースで行うというのであれば今までの仕事の上に電子納 品成果品の作成の分だけ余計な仕事を増やしたということになりかねませんし、何か課 長のお考えはありますか?」 富士課長「仕事を二重にしたくないというのはもっともです。私もそう思います。ただ検 査をスムーズに進めるためには、最低限これは紙で用意しておいて検査官に見てもらっ た方が良いというものがあれば現実的に考えることも必要かと思います」 綾小路主任(あまり、仕事が増えないように頼みますよ)「分かりました。それではどの ような書類を用意しなければならないか別途打ち合わせるということで、まず作成した CD-R をご確認下さい」 大月監督員「検査当日のパソコンはこちらで用意します。検査官が見やすいように 19 イ ンチのモニタを用意しています。普段使い慣れたパソコンの方が良いかも知れませんが OS が同じですし、それほど複雑なことをするわけではないので問題はないと思います」 綾小路主任「わかりました。念のため、当方も普段使い慣れたノートパソコンを持参しま す」 富士課長「それと、綾小路さんのことだから抜かりは無いと思いますが、ウイルスチェッ クは確実に頼みますよ」 綾小路主任「ええ、もちろんです。何しろ次から次と新しいウイルスが発生していますか ら現場事務所でもインターネットから最新のウイルスパターンをダウンロードして自衛 しています。納品用の CD-R も当然最新パターンファイルでチェックしてあります」 その後の打ち合わせでうち合わせ簿の鑑、施工状況の分かる写真のダイジェスト版など をあらかじめ用意することで竣工検査に備えることになった。 19
© Copyright 2026 Paperzz