画像アノテーションC

カーネル密度関数の局所空間変形に基づくイメージアライメント 1,2
2,3
徳永旭将 , 広瀬修 , 吉田亮
1,2,4, 5
[1] 統数研・データ同化研究開発センター [2] JST, CREST [3] 金沢大・理工研究域 [4] 総研大•統計科学 [5] JST, ERATO
1. はじめに 我々は, 線虫C. エレガンスというモデル生物を用い, 与えられた刺激に対する神経回路の動作原理の
解明に取り組んでいる. C. エレガンスは302個の神経細胞からなり, その神経結合は全て同定されている. 一方で, その比較的単純な神経回路がどのように動作し, 適切な感覚-運動変換を実現しているのか, 分
子レベルの理解はあまり進んでいない. 現在我々は, カルシウム(Ca)イオンイメージングによる空間3
次元•時間軸1次元の4次元画像データから, 生きた線虫の複数の神経細胞の活動状態を解析する研究を進
めている. 複数細胞のイメージングデータは次のような特徴を持つ. (1) 形状が不規則なオブジェクト
(細胞核)が3次元空間に高密度に分布する. (2) オブジェクトの位置や形状が時空間的に変化する. (3) 撮影条件やサンプルの違いにより, オブジェクトの個数やサイズが異なる. (4)新たに計測されたデータ
には, アノテーション(細胞名のラベル)が付いていない. このようなイメージングデータから, 画像中
の個々の神経細胞のCaイオン濃度を定量化する必要がある. 本研究では, アノテーション付き標準画像中
の細胞と, 新たに計測された画像中の細胞の対応関係を自動で求めるための, カーネル密度関数の局所空
間変形に基づくイメージアライメント法を開発している. 2. イメージアライメント法 一般に, 2種類の異なる画像を共通の座業系に変換する処理は, イメージアライメントあるいはイメー
ジレジストレーションと呼ばれ, 画像認識において基本となる技術である. 既存のアライメント法として
は, 画像の特徴点や輪郭線の最適な対応関係を求めるもの, 画像輝度あるいは画像輝度勾配の相関を最大
化する方法が提案されている. これら既存手法の多くは, 画像中のオブジェクトを剛体として取り扱うか, オブジェクトの変形をアフィン変換で近似するものである. しかしながら, 本研究で用いる細胞のイメー
ジングデータのように複雑な形状をとり得る非剛体オブジェクト同士のアライメントでは, 従来手法では
画像のトポロジーを破壊してしまい, 高精度なアライメントができない場合がある. そこで本研究では, カーネル密度関数の局所的な空間変形に基づき, 非剛体オブジェクト同士を画像の
トポロジーを保存しながら高精度でアライメントする手法を提案する. いま, アノテーションが付いた画
像を標準画像, 標準画像に合わせて変換すべき画像をターゲット画像と呼ぶ. 提案手法ではまず, 3次元
の標準画像ならびにターゲット画像に対し, 3次元のカーネル密度推定を行う. ここで, 標準画像のボク
r
セル座標を xi ∈! 3 (i = 1,", n) , 正規化された輝度を wi ≥ 0,
度関数は pr (x) =
∑
n
i=1
∑
n
i=1
wir = 1 とすると, 標準画像のカーネル密
wir k(x − xi ) で得られる. ここで, k(x − xi ) は各ボクセル座標を中心とした正規分布
の密度関数である. 同様に, 画像変換後のターゲット画像のボクセル座標を ϕ i ∈! 3 (i = 1,", n) , 正規化
t
された輝度を wi ≥ 0,
∑
n
i=1
wit = 1 とすると, ターゲット画像のカーネル密度関数は pt (x) = ∑ i=1 wit k(x − ϕ i )
n
として得られる. 提案手法では, pr (x) と pt (x) のKullback-Leibler(KL)情報量 D ( pr ! pt ) を ϕ について
最小化することで, 最適な画像変換 xi → ϕ i を推定する. ここで注意すべきは, 単純なKL情報量最小化で
は画像のトポロジーが破壊されてしまうことである. そこで本手法では, 標準画像とターゲット画像に制
御点を等間隔で配置し, これら制御点についてマルコフ確率場に基づく遷移モデルを仮定することで, 画
像のトポロジーを保存しながらKL情報量の最小化を行う. 講演では, 制御点の遷移モデルならびにKL情報
量最小化のアルゴリズム, さらに本手法の適用結果を紹介する.