テクノロジーを活用した教材開発に関する研究

テクノロジーを活用した教材開発に関する研究
−角度センサーの開発とその教材−
深
要
澤
一
幸*
約
各種センサーを活用し身の周りの事象を数学的にモデル化する教材の研究が多く行われている。
ところが各種センサーの中で角度を採取するためのセンサーは市販されておらず、角度に関する教
材 研 究 も 必 ず し も 十 分 に 行 わ れ て い な い 。本 研 究 で は 、角 度 を デ ー タ 化 す る た め の「 角 度 セ ン サ ー 」
を開発し、その教材化を試みた。角度データの処理にはデータアナライザー及びグラフ電卓を用い
た。角度センサー自体は音質ボリュームを利用した単純な1つの部品である。それに適当な付属物
を付加する事で、事象に適したデータの採取が可能となる。本研究では、センサーの製作自体を授
業 の 中 に 組 み 入 れ 、デ ー タ の 採 取 結 果 の み を 考 察 す る 従 来 の 数 学 授 業 に は 無 い 新 た な 活 動 を 試 み た 。
その結果、興味関心の高揚ならびに主体的な授業参加への姿勢が確認された。また角度センサーの
原理の理解は、角度の数値化過程を論理的に明らかにする。ことから、事象を数学化し考察する活
動において発展性のある学習活動をもたらすことが期待できる。
キーワード:角度センサー
データアナライザー
グラフ電卓
事象を数学化する活動
1.研究の目的と方法
(1)研究の目的
近年理数科離れが叫ばれ、数学理科に興味を示さない子供たちが増えてきている。高校の教育現
場においても、数学は役に立たないものと思っている生徒は少なくない。その原因として、子供た
ちの生活と数学との関わりが希薄になっていることが考えられる。この問題に対処する一つの方法
として数学の有用性や、身の周りの事象が数学的に解決できる事の楽しさを体験させることが考え
られる。そのため本研究ではセンサーの製作及びセンサーを活用した実験実習の導入を試みた。
センサーとグラフ電卓の活用は、身の周りの物理現象を数学的モデルとして捉えることを容易に
する。これにより生徒は、現実問題を数理的に捉えることに対する興味関心が高まるものと期待で
きる。実際、各種センサーを活用し身の周りの事象を数学的にモデル化する教材の研究が多く行わ
れている。ところが各種センサーの中で角度を採取するためのセンサーは市販されておらず、角度
に関する教材研究も必ずしも十分に行われていない。角度は我々の生活上重要な物理量であり、幾
何学や三角関数との関連の深いものである。本研究では、角度をデータ化するための「角度センサ
ー」を開発し、その教材化を試みた。
本研究の目的は新たなセンサー(角度センサー)の開発と、そのセンサーを活用した製作実習を
含む、事象を数学化する活動を重視した教材を開発することである。
(2)研究の方法
角度センサーの開発を行い、角度センサーを活用した教材開発を行う。
こ の 開 発 し た 教 材 を 用 い て 授 業 を 行 う 。授 業 に お け る 生 徒 の 活 動 を 分 析 し 、教 育 的 効 果 を 検 証 し 、
開発した教材の有効性を確認する。
-1-
2.角度センサーについて
(1)角度センサーの原理
角 度 セ ン サ ー と は 、 回 転 角 を リ ア ル タ イ ム で 検 出 す る セ ン サ ー で あ る ( 図 1 参 照 )。 具 体 的 に は
図2に示す電気回路において、角度に比例する角度センサーの出力電圧を検出し、この電圧をデー
タアナライザ−付属の電圧センサーで取り込むものである。角度センサーには、Bタイプ(角度と
抵 抗 値 が 比 例 関 係 の 特 性 を 持 つ )の 可 変 抵 抗 器( 音 質 ボ リ ュ ー ム と し て 市 販 さ れ て い る )を 用 い る 。
これにより回転角度に比例した出力電圧を検出できる。なお検出誤差は実験により1%以内である
ことを確認した。
図1
(2)データ処理について
データアナライザーで、角度センサーの出力電圧データを検出し、グラフ電卓で数値処理(出力
電圧を角度のデータに変換)をし、角度情報を得る。この数値処理はグラフ電卓のプログラム機能
を利用して行う。
角度センサーから得られた電圧データは、プログラムの指定によりグラフ電卓のリストに格納さ
れる。そのデータを利用し、グラフ電卓の各種機能を使うことで、グラフ化を含め比較的容易に高
度なデータ処理を行うことができる。
3.角度センサーを活用した教材
(1)三角比の実習教材
①実際の角度とその三角比の確認
角度を連続的に変化させることで正弦、余弦、正接曲線を、実験を通してグラフ化できる。
②三角測量の実験
2つの角度センサーを用い、測点A、Bに対し目標P方向との成す角θ、ψを検出することによ
り 、 正 弦 定 理 か ら A P ま た は B P の 距 離 を 求 め る 実 験 で あ る ( 図 3 参 照 )。 目 標 P が 移 動 す る 対 象
であればABからPを視準することでPの軌跡をグラフ化することができる。
-2-
③角度センサーと距離センサーを組み合わせた位置測定の実験
平面座標上では、目標物の位置を極座標で表すことができる。目標位置は、目標までの距離OP
を 距 離 セ ン サ ー を 使 い 、 方 向 角 θ を 角 度 セ ン サ ー を 使 用 す る こ と で 求 め ら れ る ( 図 4 参 照 )。 P の
移動を追尾することでPの軌跡をグラフ化できる。
(2)座標読み取り装置の製作と活用
角度センサーを2個使い、図5に示す装置を製作する。いまアームの長さをLとすると次の式に
より、XY座標を2個の角度センサーの成す角θ、ψで表せる。
x = 2 L sin ( ψ / 2 )・ sin ( θ + ψ / 2 )
y = − 2 L sin ( ψ / 2 )・ cos ( θ + ψ / 2 )
この装置を利用することで次の実験実習が可能となる。
また本装置の実体図を図6に示す。
電圧プローブ(アナライザーに付属)
図6
座標読み取り装置概略図
-3-
①自然界の曲線(地図の境界、山のスロープ、電線のたるみ、広葉樹の輪郭、ループコースターの
軌道、物体の移動軌跡等々)を簡単にトレースできる。そしてグラフ化し曲線を解析できる。
②簡単な図形(絵)を描き、それをデータ化することで、図形の性質の解析に利用できる。
③曲線で囲まれた図形の面積を測定できる。
上記の具体例として葉の形を本装置を用いてグラフ化したものを図7に示す。
これらのトレースにより次のような数学教育上の効果が期待できる。
①身の周りの曲線を数値データとしてグラフ電卓に容易に取り込み、考察できる。
②トレースした曲線はグラフ電卓上に表示でき、図形や関数の問題としてモデル化し考察できる。
③曲線が作る図形の面積も算出できる。これにより面積の算出が難しかった対象へも考察が拡張で
きる。
このように従来グラフ用紙等による手作業での煩雑な手続きを要した事が、本装置を使用するこ
とでその煩雑な手続きが解消され、身の周りの曲線をじかに数学的な考察対象とできる。
銀杏の葉のトレース
紅葉の葉のトレース
図7
葉の形のグラフ化
(3)まとめ
角度を使った関数関係の代表が三角関数である。この単元は生徒にとって理解が困難なところで
ある。それは「角度」が物理量として重要な要素でありながら、あまり表舞台に登場しない点にあ
る。その割に応用として実用価値が高く、関心を持ってもらいたいところである。
角度センサーは次の特徴を有する。
①角度をダイナミックに動かしリアルタイムで測定できるため、実際の角度を体験できる。
②角度センサーの組み合わせにより、さらに複雑な測定が比較的簡単に行える。
③三角関数の基本公式を使うことで理論的な実証もできる。
④装置が単純で安価であるので、生徒自身の製作及び改良が自由に行える。
これらの特徴を生かすことで、角度を生徒の身近なものとして捉えさせる事ができる。
4.開発教材による授業実践
-4-
これまで述べてきた角度センサーを活用した教材の一例を用いて授業を行った。対象は県立高校
普通科2年生の希望者、男子8人女子8人の計16人の生徒であり、三角比の基本的な学習は1年
次に終了している。7月下旬の1日を使い実施した。授業は午前の3時間でグラフ電卓の基本的な
使用方法を学習し、午後の3時間で角度センサーを用いた製作実習並びに実験を行った。グラフ電
卓 は 各 生 徒 ご と に 用 意 し た 。午 後 の 実 験 実 習 は 4 グ ル ー プ に 分 か れ 行 っ た 。次 に 授 業 内 容 を 述 べ る 。
(1)午前の部
授業ではグラフ電卓の操作ができる必要がある。そのため操作方法を最低限習得することを目標
に 、 ワ ー ク シ ー ト に 従 い 3 時 間 の 予 定 で 学 習 を 進 め た 。( 詳 細 は 省 略 )
(2)午後の部
ワークシート(資料参照)に基づき、角度センサーを用いた製作及び測定の実習を行った。
ワークシートの内容の概略は次の通りである。
1.使用する装置の説明
2.角度センサーを用いた照準器の製作
3.照準器のセッティング
4.三角測量の実験
5.移動する物体の軌跡
6.二次元レーダーの製作と実験(資料図3参照)
7.事後アンケート・学習感想
しかし実際の製作にかかる時間が未知数であったので、設定時間の範囲で進める所までを行う計
画とした。
そして結果として次のような進度となった。
1.今回使用する装置の説明
25分
2.角度センサーを使った工作(資料図4参照)
3.照準期のセッティング及び初期化(使用プロ
70分
グラム;ANG2INIT、資料図1参照)
20分
4 .三 角 測 量 の 実 験( 使 用 プ ロ グ ラ ム ; A N G 2 、
A N G 2 S T 、資 料 図 2 、図 5 、図 6 参 照 )
50分
5.事後アンケート、学習感想
15分
5.授業における開発教材の効果
製作実習を取り入れた開発教材の効果について、生徒の感想及び授業の経過から考察する。
(1)授業の分析
生徒の活動状況を観察する中で、次のような特徴を観察することができた。
① 生 徒 た ち は 、「 計 算 が な け れ ば 数 学 で な い 」 と い う 観 念 を 持 っ て い る 。 こ の よ う な 意 味 で 製 作 の
当初は「なぜ数学でこんなことするの」という雰囲気があった。しかし製作が進み自分たちの行っ
ていることの意味を理解するにしたがい、ワークシートに記載された事項を先取りし、積極的な態
度で行う姿勢が見られた。
②三角測量と正弦定理の関係を復習することでこの実習の意義を理解させた。そのため角度センサ
ーの原理を理解したグループは、ワークシートの内容を熟読し、自発的な活動がみられた。
③ 良 好 な 結 果 を 得 ら れ な か っ た グ ル ー プ で は 、原 因 が ど こ に あ る の か を ワ ー ク シ ー ト を 読 み な が ら 、
あきらめず繰り返し行っていた。
次に授業が終了した時点で生徒が書いた感想を一部紹介する。
-5-
・ 初 め て グ ラ フ 電 卓 と い う も の を 見て そ し て 使 い ま し た 。 ど ん な も の か な と 興 味 が あ り ま し た 。 途
中 難 し い と こ ろ も あ っ た け ど 、 説 明な ど た い へ ん わ か り や す く 興 味 を 持 つ こ と が 出 来 ま し た 。 い つ
も だ っ た ら す ぐ め ん ど く せ ー と か 、す ぐ 投 げ や り に な っ て し ま う ん だ け ど と て も 楽 し か っ た で す 。
(1)
授業 がこ んな風だ ったらもっ と数 学が好き な人も出て くる のではな いでしょう か 。(男子)
・ 今 ま で 知 ら な か っ た グ ラ フ 電 卓 にふ れ る こ と が 出 来 て よ か っ た 。 い ろ い ろ 自 分 で 考 え る こ と な ど
が あ っ て と て も 勉 強 に な っ た 。 少 し難 し か っ た 。 で も も う 少 し 実 験 を や り た か っ た 。 実 験 は す ご く
楽 し く で き て よ か っ た 。( 2 ) 失 敗 し た け れ ど 、 そ れ は そ れ で た の し か っ た し 、 ど う し て 失 敗 し た の
かを考え られたので よか ったけど 、ちょっと くや しかった 。(3)(女子 )
・ 午 後 か ら の 実 験 が 一 番 楽 し か っ た。 二 次 元 レ ー ダ ー が で き な か っ た の は 痛 か っ た 。 も っ と 別 の 実
験もして みたい 。(4)(男子)
・こういう物を使った授業などはそれをやる過
程 も 楽 し め る の で 良 い と 思 う 。( 5 ) も っ と 、 普 段
の授業や テストの中 でこ ういうグ ラフ電卓な どが つかえれ ばいいと思 う 。(男子)
・ 数 学 で 今 や っ て い る よ う な 問 題 を電 卓 で や る
と計算力が下がるかもしれないけれど、今日やっ
た よ う な 問 題 は 、 式 を 立 て る の を 自分 で や れ ば 、 使 っ て も 良 い と 思 う 。 午 後 の 実 験 は 途 中 ま で な に
をやって いるのか分 から なかった 。やっと分 かっ たとき、 すごい器械 だと 分かった 。(6)(女子 )
生徒の感想からは、全般的に製作に否定的な感想はなく、受講した全員が製作実習を興味を持っ
て受けとめた様子がわかる。
以上の感想から次のことを読み取ることができる。
① 製 作 実 習 が 生 徒 の 興 味 関 心 を 引 く 。( 生 徒 の 感 想 下 線 部 1,2,4,5 )
② 原 理 を 理 解 す る こ と で 生 徒 は 、自 発 的 に 実 習 に 取 り 組 む 事 が で き る 。( 生 徒 の 感 想 下 線 部 1,2,4,6 )
③ 実 験 の 失 敗 は 、 興 味 の 喪 失 で は な く 逆 に 原 因 究 明 の 機 動 力 に な る 。( 生 徒 の 感 想 下 線 部 3 )
④適当な時間を確保できれば角度センサーを用いた、より発展的な実習へと生徒自身移行できる。
( 生 徒 の 感 想 下 線 部 2,4 )
(2)考察
中学までの数学では、関数と図形は別の領域として分けて指導されている。しかし高等学校では
三角関数の登場により、関数と図形が融合された高度な内容となる。すなわち、関数および図形の
両者の理解無しには、三角関数の理解は難しい。このことが生徒が三角関数を学習する場合の障害
の一因であると考える。
角度センサーを活用した本教材は、三角関数が包含している関数的要素と図形的要素の両者を体
験活動を通して直に体感できる。すなわち、生徒の操作する角度センサーは、実際の角度を検知し
( 図 形 的 要 素 )、 角 度 を 変 え る こ と で 、 関 数 値 ( 三 角 比 ) が リ ア ル タ イ ム で 変 化 す る 様 子 ( 関 数 的
要素)を観察できるからである。従って角度センサーを活用した教材は、三角関数の理解を容易に
する効果があるものと考える。
本開発教材による授業実践では、参加生徒全員が実験実習を興味深く行っていたことが授業分析
からわかる。このことは、角度センサーの原理が理解され、生徒たちの活動の教具として機能して
いることの現れであると考える。
本授業は時間の制約から、基本的なセンサー(電圧センサー、温度センサー、光センサー、距離
センサー)の取り扱いを生徒に十分に提供できなかった。もしこれらの既存のセンサーを自由に使
わせた後、角度センサーに結びつけることができるなら、本開発教材の効果がさらに引き出せたも
のと考える。
-6-
6.教材開発における自作センサー
活用の意義
先行研究において、特に既存の各センサーの使い方を考察した。その結果から明らかになったこ
とは、各センサーの活用の仕方が直接的で単純であることであった。このことはセンサーを活用す
る教材が、その使用しているセンサーによりほぼ決まってしまうことを示している。
例えば距離センサーは機器としては面白い装置であるが、採取データは対象物との間の1次元的
なものである。実際の物体の移動を観察しデータ化しようとした場合には、採取データが1次元的
であるために、解析の際に問題が残る。
このことはセンサーというテクノロジーの活用に大きな障害となるものと推測される。このよう
な状態から一歩進んでセンサー活用の拡大を図るには、どうしても新たなセンサーを開発する必要
が 生 ず る 。そ こ で 筆 者 は 次 の よ う な 提 案 を す る 。
「センサー自体の改良及び開発を生徒自身が行う」
活動を教材の中に取り入れるというものである。この活動は、単にセンサーでデータの採取をする
事に比べ、生徒たちの採取しようとするデータに対する理解が深まることが期待できる。実験・実
習には、実験の不成功等による不適切なデータが生ずるおそれが常に存在する。もしこのとき、デ
ータの入り口であるセンサー自体を考察対象に含めるならば、その原因を数学的思考により解明す
ることが期待できる。これは事象を数値化する活動をより深めるものであると考える。
本研究では、角度を検出する角度センサーを開発することで、身近に存在する角度のデータ化を
可能にした。このことはセンサーの活用領域を拡大できることはもちろん、角度センサーに簡単な
工作を施す事で、座標読み取り装置、2次元レーダーなどの、新たなセンサーのシステムを作るこ
とができることも示した。またそのセンサーを活用した教材例も示した。これらを参考に、ここか
ら派生する新たな教材開発の可能性も期待できる。
またセンサーの開発自体を教育活動に取り込む場合の効果も確認できた。センサーの開発は少な
からず製作を伴う。本研究では、新たなセンサーを比較的単純な部品と簡単な工作で製作できるこ
とに配慮した。従って実際の教育現場において製作することも、もちろん可能である。さらに、生
徒の創意工夫により必要に応じて改良することもできる。これらの一連の製作過程は、生徒の主体
的活動を促し、興味関心を持続させる効果を生むと期待できる。
このように自作センサーを活用する事は、既製のセンサーの活用に比べ実験・実習における生徒
の探求活動を高める効果が期待できる。さらに身の周りの事象を数学的な考察対象とする教材開発
にとっても有効な手法であると考えられる。
7.ま
と
め
本研究では角度をデータ化するための「角度センサー」を開発し、その教材化を試みた。角度デ
ータの採取にはデータアナライザー及びグラフ電卓を用いた。角度センサー自体は音質ボリューム
を利用した単純な1つの部品である。それに適当な付属物を付加する事で、事象に適したデータの
採取が可能となる。本研究ではまた、センサーの製作自体を授業の中に組み入れ、従来の、データ
の採取結果のみを考察する数学教材には無い新たな試みを実践した。その結果、興味関心の高揚な
らびに主体的な授業参加への姿勢が確認された。
三角関数は、中学の関数の学習範囲である角度Xの整式で表すことが出来ないため、三角関数を
初めて学習する生徒にとっては、従来の関数のイメージでは捉え難い。さらに図形との関係が、三
角関数の理解をより困難なものにしていると考えられる。一方角度センサーは、実際の角度を変え
ることで、三角比の値がリアルタイムで変わる事を観察できる。角度センサーを活用することで、
生徒は関数値が角度の変化に関係して変化することを体験的に理解でき、同時に三角関数が包含し
-7-
ている関数的要素と図形的要素の両者を体験活動を通して直に体感できる。これは先に述べた三角
関数の理解の困難性の原因を排除し、三角関数の理解に良い効果を生むものと考える。
角度センサーは、我々の身近な技術である測量の数学的なモデル化のために活用できる。このと
き角度センサーの原理の理解は、角度の数値化過程を論理的に明らかにする。従って測量の数学的
なモデル化過程において、現実の物理量である角度と数学上の角度の間の論理的な関係を考察対象
に含めることができる。これは現実の事象を扱う場合、問題解決における多様な考察を可能にする
ことを意味する。従って角度センサーの原理の理解は、事象を数学化し考察する活動において発展
性のある学習活動をもたらすことが期待できる。
8.今後の課題
角度センサーを活用した教材は、本授業実践で用いた三角比の実習教材の他に、筆者は角度セン
サー2個を組み合わせた座標読み取り装置を活用する教材、角度センサーと距離センサーを組み合
わせた教材(2次元レーダー)などを考案した。これらも生徒の探求心を高める教材となり得るも
のと考える。これらの教材についても教育実践を行い、その有効性について実証していきたい。
参
考
文
献
西村圭一. 「CBL/CDAを利用した三角関数の指導に関する研究」. 日本数学教育学会誌. 第8
0巻第7号.
1998. pp.11 〜 19
James G. Rutkowski ,Stephen D. Nichols.
'Exploring SCIENCE &MATH Using CASIO'S
Meridian Creative Group. 1998.
資料1.使用したプログラム
使用機器
グラフ電卓
カ シ オ CFX-9850G
データーアナライザー
EA-100
三角測量プログラム; Filenane:ANG2
SMP N ?→Z:{ 0}→List6:Send(List6)
ClrGraph:ClrList
{1,1,1}→List6:Send(List6)
{1,2,1}→List6:Send(List6)
{3,1,Z}→List6:Send(List6)▲
Receive(List1 ):Receive(List2)
List 1×A−B→List 3:List 2×C−D→List 4
180−(List 3+List 4)→List 1
(sin List 4)÷(sin List 1)×E→List 2
List 2×(cos List 3)→List 5
List 2×(sin List 4)→List 6
KISEKI →PUSH 9 ?→J:J=9⇒Goto 1:ClrText
DISTANCE= :List 2[1]▲
-8-
EA-100'.
ViewWindow −0.5,3,1,−1,10,2
F−Line 0,0,List 5[1 ],List 6[1]
F−Line E,0,List 5[1 ],List 6[1]
Stop:Lbl 1:Prog
ANG2ST
移動軌跡表示プログラム; Filename:ANG2ST
ClrGraph:ViewWindow −0.5,3,1,−1,10,2
S−Gph1 DrawOn,xyLine,List 5,List 6,1,Dot,Blue:DrawStat
三角測量センサー初期化プログラム; Filename:ANG2INIT
SENSOR 2 INIT :Prog
SENSOR 1 INIT :Prog
INIT :P→A:Q→B
INIT :P→C:Q→D
INTERVAL ?→E:Stop
初期化プログラム; Filename:INIT
VOLTAGE AT 0 DEG= ?→E: VOLTAGE AT 180 DEG= ?→F:180÷(F−E)→G:G×E→H:Return
*プログラムに関する事項は、グラフ電卓(カシオCFX−9850G)の操作マニュアルを参照
資料2.ワークシート:抜粋
1.各種センサーの紹介と解説
〜内容省略〜
2.角度センサーを使った工作
(1)アクリル板の工作
〜以下作業省略〜
3.三角測量をしてみよう
*三角測量は、地図の作製には欠かすことができない重要な技術です。日本の正確な地図を作った
伊能忠敬
さんは、60歳を越えてから、この方法で日本中を測量しました。
〜以下省略〜
(1)セッティング
*角度センサーの裏側に両面テープをつけ、適当な位置に固定します。
*つまみを取り付けます。
* つ ま み の 上 部 に 両 面 テ ー プ を 付 け 、 先 ほ ど 作 っ た 照 準 器 を 取 り 付 け ま す ( 資 料 図 1 )。
(2)角度センサーの初期化
*この角度センサーはまだ角度を知りません。
最初に角度を覚えさせましょう。
( 筆 者 作 成 プ ロ グ ラ ム ;「 A N G 2 I N T 」 を 使 い 初 期 化 す る )
〜以下操作省略〜
資料図1
-9-
資料図2
(3)測量実験しよう。
*資料図2のように目標に照準を合わせます。
*メニューから「PROG」を選択し「EXE」
を 押 し 、 プ ロ グ ラ ム 名 「 A N G 2 」( 三 角 測 量
に使用する筆者作成のプログラム)を選んで「EXE」を押します。
〜以下操作省略〜
4.移動する物体の動きを調べよう
*目標は人が一番わかりやすいでしょう。2人で角度センサーの照準を目標の人の移動にあわせて
調整します。もう一人は、グラフ電卓、アナライザーの操作をします。
(1)角度センサーの
セッティング
及び
初期化
をしてください。
〜以下操作省略〜
( 2 )プ ロ グ ラ ム 名「 A N G 2 」( 移 動 す る 物 体 の 動 き を 連 続 的 に 記 録 す る プ ロ グ ラ ム 、筆 者 作 成 )
を実行します。
〜操作方法省略〜
(3)いろいろな図形を描いてみよう。
*人がいろいろ移動して簡単な
絵
を描いて
例:①円、②渦巻き、③富士山、④お花
みよう。
等々いろいろ工夫してください。
・・・・・・各班毎の探求・・・・・・・
5.2次元レーダーを作って見よう
(1)角度センサー1個と距離センサーを資料図3のように両面テープで固定します。
(2)角度センサーに角度を教えます。
〜以下操作省略〜
資料図3
(3)2次元レーダーを動作させよう。
〜以下操作省略〜
(4)いろいろな図形を描いてみよう。
*人がいろいろ移動して簡単な
絵
を描いて
みよう。例:①円、②渦巻き、③富士山、④お花
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等々いろいろ工夫してください。
・・・・・・各班毎の探求・・・・・・・
資料3.生徒の活動の様子
資料図4は角度センサーの照準器を製作している様子、資料図5は測量の実験の様子(角度セン
サ ー を 操 作 し 目 標 に 照 準 を 合 わ せ て い る )、 資 料 図 6 は 角 度 セ ン サ ー の デ ー タ を ア ナ ラ イ ザ ー 及 び
グラフ電卓で数値処理をし、探求活動を行っている様子である。
資料図4
資料図5
資料図6
- 11 -