文化人類学 レジュメと参考文献 1 自文化中心主義を批判する 1-1 文化人類学(社会人類学、民族学) ○異文化の解読、異文化の翻訳 1-2 文化とは: ○生活様式の体系 = 一定のモノの見方、考え方に基づいた生活全体 ○無意識レベルにまでしみこむ常識となる 1-3 自文化中心主義を批判する ○自文化中心主義とは:無意識のうちに自分の文化的フィルターを通して異文化を見てしまう こと 1-4:「嬰児殺し」と言われた事例 ○生まれたばかりの赤ん坊を「殺す」社会での出来事。 ○その社会では、赤ん坊は、名前が付けられて初めて「人間」と認定される。 ○名前がつくまでの赤ん坊は、母親のおなかの中にいる状態と同じ扱い。 参考文献 合田濤編 『現代社会人類学』弘文堂 綾部恒雄編 『文化人類学 最新述語100』弘文堂 山下晋司・船曳建夫編 『文化人類学キーワード』有斐閣双書 2 フィールドワークと異文化体験 2-1:ミクロネシア、メラネシア、ポリネシア ○小さい島々、黒い島々、多くの島々 ○サンゴ礁島、火山島、陸島 2-2:曖昧な「人種」 ○ネグロイド(黒色系)、モンゴロイド(黄色系)、コーカソイド(白色系) 2-3:宗主国が何度も入れ替わったミクロネシア スペイン → ドイツ → 日本 → アメリカ → 現在 2-4:紛争のたえないメラネシア パプアニューギニア:ブーゲンビル問題、パプア問題 ソロモン諸島 :島間の紛争 ニューカレドニア :フランス系 vs メラネシア系(独立闘争) フィジー :インド系 vs フィジー系(クーデタ) 2-5:王朝の存在したポリネシア ○ハワイ:カメハメハ王朝 タヒチ:ポマレ王朝 トンガ:ツポウ王朝 参考文献 印東道子編『ミクロネシアを知るための58章』明石書店 吉岡政徳、石森大知編『南太平洋を知るための58章』明石書店 3 テレビにおける異文化表象の嘘 3-1:イメージの太平洋 ○キリスト教徒のいる文明化していくポリネシア ○宣教師をも殺して食べてしまう食人種のいるメラネシア ○秘境と楽園 3-2:ヴァヌアツ共和国 ○メラネシアの独立国 ○1980年、イギリスとフランスの共同統治から独立 ○人口25万人、首都ポート・ヴィラ ○100程度の異なる言語の存在 3-3:ヴァラエティー番組における異文化の描き方 ○極端な場合:我々を「文明」、彼らを「未開」として対比 ○王道:我々と彼らの差異の強調→我々の側の戸惑い→我々と彼らの交流→我々と彼らの共通 性の発見、あるいは、彼らの中に我々が失ってしまった真の人間性を発見 3-4:ドキュメンタリー番組における異文化の描き方 ○テレビ語:テレビ語=番組を作品として面白いものにするための演出 ↓ 別の文脈の映像の挿入、「台詞」の訳の差し替え ↓ 作品としての筋の通った物語の創造 参考文献 飯田卓、原知章編 『電子メディアを飼いならす』せりか書房 吉岡政徳、石森大知編 『南太平洋を知るための58章』明石書店 4 常識を疑う 4-1:トーテミズム ○トーテム :人間集団と特殊な関係(祖先―子孫の関係)を持つと信じられている動植物 〇原始宗教としてのトーテミズム :ある動植物が自分たちの祖先であるとする信仰 〇分類体系としてのトーテミズム E.デュルケーム:トーテム=集団を表す旗である 4-2:カニバリズム ○人食いの神話 ○「食べることができないもの」と「食べないもの」 ○浜に打ち上げられたクジラの例、マグロの例、なぜイルカ、クジラを助けて、マグロを食べ るのか? ○なぜ「人間」は「食べないもの」なのか? ○性関係を持つ=食べるという隠喩:近親相姦と食人の話 4-3:位階階梯制社会における豚 ○伝統的貨幣としての豚 ○不思議な力が宿る豚 ○豚を殺す儀礼 参考文献 吉岡政徳、石森大知編『南太平洋を知るための58章』明石書店 吉岡政徳『メラネシアの位階階梯制社会』風響社 5 多様な生業 5-1:漁労民 ○漁労だけで生活する民族はいない(オセアニアの漁労民―半農半漁労が多い) 5-2:農耕民 ○旧大陸 ①麦作農耕 麦類 ②根栽農耕 イモ類 ③雑穀農耕 モロコシ、豆類 ④ア ワ、ヒエ類 ⑤雑穀農耕から生まれる稲作 中国から日本 ○新大陸 ①根栽農耕 マニオク(キャッサバ)ジャガイモ、サツマイモ ②雑穀農耕 トウモロコシ 5-3:嗜好品 ○アルコール:ブドウや蜂蜜(ワイン)、穀類(ビール)、イネ(酒)、やし酒など ○アルカロイド:ベテルチューイング(石灰をまぶしたビンロウヤシの実(ビンロウジ)をコ ショウ科のキンマの葉に巻いて噛む)、カヴァ 5-4:牧畜民 ○牧畜の対象は、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ラクダ、トナカイ、ウマ、ロバなど有帝類 ○肉を食べるのではなく、搾乳する。 ○農耕民との交易:チーズ、バター、ヨーグルトなどの乳製品 ⇔ 穀類、ビール 5-5:採集狩猟民 ○テリトリー内での移動:季節的な移動 ○移動の単位(居住集団):夫方居住バンド ○採集活動:70-80%のカロリーを提供。女性が行う活動 ○平等主義 - 原始共産制 政治的リーダーがいない。議論による多数意志で決定。少数者は従う義務は ない。移住することが可能。 参考文献 サーヴィス『狩猟民』鹿島出版会 サーリンズ『石器時代の経済学』法政大学出版局 6 多様な親族集団 6-1:キンドレッド:個人を中心として父方母方両方に広がる血縁集団(日本おける親類,親戚に 類似) 6-2:出自集団:祖先から一定の出自にしたがって descent してきた人々によって構成される親族 集団。 ○出自 父系出自:祖先から男だけをたどって descent するやり方。 母系出自:祖先から女だけをたどって descent するやり方。 双系出自:祖先から男でも女でもどちらかをたどって descent するやり方。 6-3:父系社会 ○父系出自だけを親族集団の構成原理とする社会 ○帰属の点でいえば、父と子は同じ新族集団の成員、母はよそ者 ○日本の「家」は「父系的」 ○父系社会における権利、権力 ○父系=父権=男権 ○財産相続、地位の継承 父→息子 6-4:母系社会 ○母系出自だけを親族集団の構成原理とする社会 ○母と子は同じ新族集団の成員、父はよそ者 ○母系社会における権利、権力 ○母系≠母権、母系=男権 ○財産相続、地位の継承 母方オジ→姉妹の息子 参考文献 村武精一編 『家族と親族』未来社 R.キージング 『親族集団と社会構造』未来社 7 いびつな母系家族 7-1:地縁集団:結婚後の居住のあり方によってきまる。 ○夫方居住:結婚に際して妻は夫の生まれ育ったところに移り住む→父系的な結びつきを持つ 男たちとその配偶者たちが同じところに居住する結果となる。 ○妻方居住:結婚に際して夫は妻の生まれ育ったところに移り住む→母系的な結びつきを持つ 女たちとその配偶者たちが同じところに居住する結果となる。 ○新居居住:夫も妻も、自らの生まれ育ったところとは違うところで結婚後の生活を行う。→ 結束力のある地縁集団が生まれるわけではない。 7-2:出自と居住の組み合わせ ○父系+夫方居住:互いに親族関係を持つ男たちが、同じところに居住するという結果になる →結束力の非常に強い集団が形成される。 ○父系+妻方居住:親族集団の成員がバラバラのところに居住する→結束力のある集団をつく ることはできない。 ○母系+夫方居住:親族集団の成員がバラバラのところに居住する→結束力のある集団をつく ることはできない。 ○母系+妻方居住:互いに親族関係を持つ女たちが、同じところに居住するという結果になる →人類の社会:集団づくりにおいて男性が優位、女性が劣位→ある程度結束力のある集団づ りが行われるが、非常に強いわけではない→母系社会にあって、互いに親族関係を持つ男た ちを同じところに居住するための工夫 →オジ方―夫方居住 7-3:オジ方―夫方居住 ○男子は一定年齢になると、父母の集落を離れて母方のオジの集落に移り住む。その後、終生 そこで過ごす。結婚するときには、夫方居住に基づいて、妻を他の集落から連れてくる。 7-4:母系+オジ方―夫方居住による母系家族の変遷 ○男性自己+母方オジ夫婦+母方オジ夫婦の娘 → 男性自己+自己の妻+母方オジ夫婦 → 男性 自己+自己の妻+自己の娘+自己の姉妹の息子+母方オジ夫婦 → 男性自己+自己の妻+自己の 姉妹の息子+その妻+(母方オジ夫婦) 参考文献 須藤健一 『母系社会の構造』紀伊国屋書店 吉岡政徳 『メラネシアの位階階梯制社会』風響社 B.マリノフスキー 『性・家族・社会』人文書院 B.マリノフスキー 『西太平洋の遠洋航海者』講談社学術文庫
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