HGP-write - JSPS Washington Office/日本学術振興会ワシントン研究

日本学術振興会ワシントン研究連絡センター
「HGP-write」、ヒト及びその他の種の完全なゲノムを化学構成物質から
構築する提案論文を発表(6 月 2 日)
ニューヨーク大学(New York University)に所属する遺伝学者のジェフ・
ボーク氏(Jef Boeke)を含む研究者 25 人で構成される「ヒトゲノムプロジェ
クト・ライト(Human Genome Project–Write:HGP-write)」は 6 月 2 日、
ヒト及びその他の種の完全なゲノムを化学構成物質から合成し、生体細胞とし
て機能させることを目指す提案をまとめた論文をオンライン版「サイエンス
(Science)」誌で発表した。「HGP-write」は、5 月に招待者のみでの会議を
ハーバード大学医学部(Harvard Medical School、マサチューセッツ州)に
おいて開催して展望を協議したことから、倫理・司法・社会的影響に関する論
議を招いていた。
同プロジェクトの主要目的は、DNA 組換え及び細胞内での活動に関する試
験のコスト削減で、人造人間構築が目的ではないとしている。
研究者らは既に、細胞として機能するウィルス及びバクテリアのゲノムを構
築しており、現在取り組まれているイーストゲノムプロジェクト「Sc2.0」で
は、イーストの 16 種類の染色体全てを 2017 年末までに構築することを目指
している。但し、哺乳類のゲノムの場合は展望が異なり、適切な細胞株を宿主
として選択し、そこから徐々にゲノムと合成 DNA を交換する必要があるとい
う。
「HGP-write」研究者 25 人は、研究資金 1 億ドルで年内にパイロットプロ
ジェクトを立ち上げることを目指しているが、ノースウエスタン大学
(Northwestern University、イリノイ州)に所属する生命倫理学者のローリ
ー・ゾロス氏(Laurie Zoloth)らは、
「HGP-write」が列挙する潜在的利益に
関し、非常に大きな道徳的決断を下す理由としては不十分とし、同プロジェク
トへの反対声明を発表している。
なお本論文は、
<http://science.sciencemag.org/content/early/2016/06/03/science.aaf6850
>から閲覧可能。
Science, Scientists reveal proposal to build human genome from scratch
http://www.sciencemag.org/news/2016/06/scientists-reveal-proposal-build-h
uman-genome-scratch