2016年のポートステートによる集中検査キャンペーン

Gard Alert
2016年のポートステートによる集中検査キャンペーン
こちらは、英文記事「MEPC Port state CICs in 2016」(2016年8月11日
付)の和訳です。2016年8月24日の更新を反映しています。
ポートステート当局による今年の集中検査キャンペーン(CIC)で
は、海事労働条約、船舶貨物固縛マニュアル、また密閉区間への
立ち入りやパイロットの移乗手配の遵守状況が検査の重点項目と
なります。
各ポートステート当局は、下記のとおり、2016年9月1日~11月30
日までの3か月間、CICを実施することを発表しました。
パリMoU
パリMoUの2016年のCICは、2006年海事労働条約(MLC)の関連個所の遵守状況を確認することを目的としてお
り、同キャンペーンは、乗組員の権利を尊重し、船内における適切な労働・生活環船を確保することの重要性を示
すものです。
MLCは2013年8月20日に発効し、乗組員の契約上の取り決め、労働時間、宿泊設備・レクリエーション設備、食事
水準、乗組員の安全衛生に関する船主・運航者の義務を定めています。MLCは未だ全世界で批准されてはいない
ものの、非加盟国に船舶を登録することによって利益が発生しないことを定めた「非差別適用」規定を設けることで
広範な影響力を有しています。
パリMoUの2015年度年次報告書(2015 Annual report)によりますと、同MoU管轄地域において2015年に記録さ
れた不備の内、約15%が船内における労働・生活環境に関するものでした。ほとんどの不備が、安全衛生と事故防
止(41%)、食料・食事提供(17%)、労働時間・休息時間(12%)、宿泊設備(9%)、乗組員の雇用契約(6%)などの
分野で指摘されています。
パリMoUの2016年7月28日付プレスリリースには、ポートステートコントロール検査官(PSCO)が通常の検査時に使用
する予定の12項目を含む質問票(Questionnaire for the Concentrated Inspection Campaign (CIC) on Maritim
e Labour Convention, 2006)が記載されています。
東京、黒海、インド洋、ビニャ・デル・マールの各MoU
上記の各MoUの2016年の集中検査キャンペーン(CIC)は、SOLAS条約の関連個所の遵守状況と、貨物の安全な
積み付けと固縛のための手順や措置が関連ガイドラインに従って導入されているか否かを確認することを目的として
います。2016年7月1日にコンテナ重量の計測要件が発効したことを鑑みると、今回のCICも重要なものになると思
われます。
SOLAS条約第VI章・第VII章並びに貨物の積み付けおよび固定のための安全実施規則(Code of Safe Practice f
or Cargo Stowage and Securing)(CSSコード)に基づき、コンテナを含む貨物ユニットは、航海期間を通じて、承
認済み貨物固縛マニュアルに従って積み付け、固定しなければなりません。貨物固縛マニュアルは、固体・液体ば
ら積み貨物以外のすべての貨物の輸送に従事するあらゆる種類の船舶に義務付けられています。貨物固縛マニュ
アルの作成に関するガイドラインは、MSC.1/Circ.1353/Rev.1に掲載されています。
固縛器具は、船舶とその貨物に適用される機能・強度に関する基準に適合していることが重要です。また、航海士
は、貨物にかかる力の大きさと向き、固縛器具の適切な利用方法とその限界を把握しておかなければなりません。
乗組員(貨物の固縛に携わる者を含め)に対して、貨物の固縛器具の適切な使い方を説明しておくべきです。
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東京MoUの2016年8月1日付プレスリリースには、PSCOが通常の検査時に使用する予定の10項目を含む質問票
が掲載されています(こちらをクリックすると、当該質問票を含むプレスリリースがご覧いただけます)。これと同様の
質問票が、すべてのMoU地域で用いられる可能性が高いと思われます。
カリブ海MOU
カリブ海の2016年のCICは、乗組員が密閉区間への立ち入りについて熟知することに主眼を置き、SOLAS、STCW、
MLC、国際労働条約の適用要件が遵守されているかの検証を目的としています。
船上の密閉区間での事故は長いこと重大な怪我や死亡の原因となっており、密閉区間への立ち入りと救助に関す
る訓練が2015年1月以降義務化されています(SOLAS条約第III章の19)。そのため、CICは、船長を含むすべての
乗組員が関連する装置を熟知し、職務を執行するための訓練を確実に受け、安全に関する認知度を高めることを
目的にしています。また、密閉空間へ立ち入り作業する際の効果的な手順や対策が確実に本船上に整っていること
も求めています。
Gardの知る限り、今のところカリブ海MOUによる質問票はありません。しかし、2015年にパリ・東京MOUにて共同で用
いられた質問票は参考になるでしょう。こちらからご覧頂けます。
リヤドMOU
リヤドMOUはパイロットの移乗手配に焦点を当て、SOLASの適用要件と国際海事機関(IMO)のResolution A.1045
(27)に記された関連ガイドラインが遵守されているかを検証することを目的としています。このガイドラインでは、はし
ごやロープの状態、船長を含む乗組員によるパイロット移乗手配への熟知等が要件とされています。併せて、パイロ
ットの移乗手配については、IMOサーキュラー「MSC.1/Circ.1428」もご覧下さい。
リヤドMOUからはPSCOによって通常検査の際に使用される12項目を含む質問票(Report of CIC on pilot transf
er arrangement)が出されています。
推奨事項
キャンペーンの開始前にCICの基準を十分に理解しておくようにしてください。ほとんどの国の海事当局は、IMOの条
約と規則に基づく船舶の認証を船級協会に委任しています。したがって、自船の船級協会と連絡を取り、今年のCIC
の検査手順に関するより詳しい情報を入手するようにしてください。
CIC対象の港に配船する場合は、入港前に、自船の自己点検と自己評価を実施するほか、全乗組員にトレーニング
を実施するようにしてください。
不備が見つかった場合にポートステートが講じる措置の内容は、その不備内容を記録して一定期間内に是正するこ
とを船長に指示するだけのものもあれば、深刻な不備が是正されるまで船舶が拘留される場合もあります。CICの結
果は分析された上で、その所見が各MoUの運営組織経由でIMOに提出されることになります。
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関連ウェブサイトと資料
各国のMoUと直近のプレスリリース
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パリMoU: www.parismou.org / press release
東京MoU: www.tokyo-mou.org / press release
黒海MoU: www.bsmou.org / press release
インド洋MoU: www.iomou.org / press release
ビニャ・デル・マールMoU: http://sites.prefecturanaval.gov.ar / press release
カリブ海MoU: www.caribbeanmou.org / press release
リヤドMoU: www.riyadhmou.org
2006 年海事労働条約(MLC)
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国際労働機関「海事労働条約(MLC)」のウェブサイト
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ガードのサーキュラー:
- Member Circular No. 11/2016「海事労働条約に関する最新情報」(2016年6月28日付)
- Member Circular No. 5/2013「Entry into force of the Maritime Labour Convention, 2006 (MLC)
(2006年海事労働条約の発効について)」(英文のみ)(2013年5月23日付)
- Member Circular No. 4/2013「Entry into force of the Maritime Labour Convention, 2006(2006年
海事労働条約の発効について)」(英文のみ)(2013年3月6日付)
- Gard Insight「海上での救急医療 – 遠隔医療は解決策になるか」(2015年12月16日付)
- Loss Prevention Circular No. 05-14「甲板下の高所作業の危険性」」(2014年11月20日付)
- Gard Alert「Port state authorities' enforcement of the MLC(ポートステート当局による海事労働条約
内容の実施)」(英文のみ)(2013年7月22日付)
- Loss Prevention Circular No. 08-12「手作業時には腰や背中にご注意を」(英文)2012年12月19日
付)
- Loss Prevention Circular No. 14-11「「適切な食事が業務と健康に及ぼす影響」」(英文)(2011年12
月22日付)
- ガードのウェブサイト内、Frequently Asked Questions - Maritime Labour Convention 2006 (MLC)(20
06年海事労働条約に関するFAQ)(英文のみ)(2013年8月19日更新)
貨物の固縛について
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2014年12月15日付IMO MSC.1/Circ.1353/Rev.1「Revised guidelines for the preparation of the cargo
securing manual(貨物固縛マニュアルの作成のための指針-改訂版)」(英文のみ)
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ガードのサーキュラー
- Gard Insight「重量証明のない実入りコンテナの積み込みはSOLAS条約違反に」(2016年4月27日付)
- Gard Insight「海上コンテナの落下事故の原因と防止」(2015年7月3日付)
- Gard Insight「重量貨物 – 契約上の課題とリスク配分」(英文)(2012年2月2日付)
- Gard Insight「粒状貨物を詰めたジャンボバッグの積み付けと固定」(英文)(2012年2月1日付)
- Loss Prevention Circular No. 01-11「風力タービン翼貨物の損傷」(英文)(2011年10月17日付)
- Loss Prevention Circular No. 06-10「Cargo securingの火気使用作業等の危険性について」(英文)(2
010年4月23日付)
- Gard Insight「Improper lashing and securing of cargo(間違った貨物の固縛)」(英文のみ)(2009年10
月6日付)
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密閉空間への立ち入りについて
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IMO Resolution A.1050(27)「Revised recommendations for entering enclosed spaces aboard ships(密
閉空間への立ち入りのための推奨事項- 改訂版)」(英文のみ)(2011年12月20日付)
IMO MSC.1/Circ.1477「Guidelines to facilitate the selection of portable atmosphere testing instrument
s for enclosed spaces as required by SOLAS Reg.XI-1/7(SOLAS条約Reg.XI-1/7で求められる密閉空
間用可搬式ガス検知器の選定を容易にするためのガイドライン)」(英文のみ)(2014年6月9日付)
ガードのサーキュラー
- Gard Alert「密閉区間への立入訓練」(2014年12月18日付)
- Case Study「Entry into enclosed space(密閉区間への立ち入り)」(2014年12月発行)
- Gard Insight「A fatal tanker accident(重大なタンカー事故)」(英文のみ)(2005年8月1日付)
パイロットの移乗手配について
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IMO Resolution A.1045(27)「Pilot Transfer arrangements(パイロットの移乗手配)」(英文のみ)(2011年12
月20日付)
IMO MSC.1/Circ.1428「Pilot Transfer arrangements(パイロットの移乗手配)」(英文のみ)(2012年5月28日
付)
ガードのサーキュラー
- Gard Alert「シンガポールでの水先人乗船に関する新たな取決め」(2014年12月11日付)
Loss Prevention Circular「Reminder: Pilot transfer arrangements – revised requirements applicable
to existing ships(注意:パイロットの移乗手配 – 本船に適用となる改訂版要件)」(英文のみ)(2012年6
月12日)
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意をしておりますが、翻訳された和文は参考上のものであり、すべての点において原文である英文の完全な翻訳であることを証するものではありません。したがって、ガードジャパン株式会社は、原文との
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