「米国IT業界動向2006年4月」(PDF/40KB)

米国 IT 業界動向 2006 年 4 月
JETRO, New York
1.
企業動向
(1)アップルコンピュータ
アップルの1-3 月期決算は増収増益となった。「i ポッド」の売れ行きが引き続き好調
だったのが奏功した。同期における出荷台数は 61%急増の 852 万 6000 台となった。一方、
パソコン「マッキントッシュ(Mac)」の出荷台数は 4%増の 111 万 2000 台にとどまった。
【4 月 20 日】
音声および画像ファイルのネットワーク配信ソフトを開発した Burst.com は、アップル
コンピュータを特許侵害で逆提訴した。訴えによると、「i チューンズ」「i ポッド」「ク
イックタイム」の各ソフトが、同社の持つ特許技術を利用しているという。Burst.com は
2004 年末、アップルとの交渉を試みた。ところが、アップルが今年1月、Burst.com の特
許を無効とする訴えを起こした経緯がある。同社はすでにマイクロソフトと和解済み。
【4 月 19 日】
アップルは、新たに2つのソフトを発表した。1つは、ネットワークに接続する複数の
コンピュータを 1 台の画面上で一元管理できる「アップルリモートデスクトップ 3」。も
う1つが、マック上でマイクロソフトの「ウィンドウズ XP」を作動させることができる
「ブートキャンプ」。ブートキャンプは、インテル製プロセッサを搭載したマックが対象
となる。【4 月 12 日、6 日】
音楽会社らは、アップルのオンライン楽曲配信事業「i チューンズ・ミュージック・ス
トア」をめぐり、料金体系の変更を求めている。これまでの均一体系から多様化をするこ
とで、配分を増やしたいというのが理由だ。これに対して、アップルは、会社が1曲配信
につき 70 セントを手に入れている点を指摘し、「強欲すぎる」と反論している。【4 月 6
日】
また、アップルが、今年末か来年初めにも「i フォン」を発表するという推測がアナリ
ストの間で広まっている。関係筋によると、同社は現在、大手携帯電話会社の 1 社から余
剰のネットワーク通信能力を買い付ける交渉を進めているという。【3 月 30 日】
ルイジアナ州の男性が i ポッドによる難聴を理由に、アップルを提訴していた件で、同
社は、最大音量を独自設定できるソフトの配布を始めた。ソフトを使うと、保護者が子ど
もの i ポッドの最大音量を設定し、暗証番号でその設定を固定することもできる。【3 月
29 日】
フランス下院議会は、「i チューンズ」および「i ポッド」の技術独占を禁じるオンライ
ン著作権法案を可決した。同法案は、アップルやソニーが独自に使用しているコピー防止
技術の公開を求めている。一方で、違法コピーに対する罰金も定めている。【3 月 22 日】
(2)シスコシステムズ
シスコは、デジタル・ビデオの暗号化技術を開発するワイドバイン・テクノロジーズ
(Widevine Technologies)に投資した。金額の詳細は明らかになっていないが、ワイドバイン
は複数の投資先から総額 1600 万ドルを調達した。【4 月 20 日】
シスコはまた、サウジアラビア向け事業を大幅に増強する計画を発表。これに伴い、同
国の事業に 2 億 6500 万ドル以上を投入し、従業員を現在の 70 人から 600 人に増やす。【4
月 19 日】
(3)デル
デルは、ゲーム愛好家に人気が高いパソコンメーカー、エイリアンウェアを買収する。
エイリアンウェアは、独特のデザインと色を使ったパワフルなマシンをゲーム愛好家向け
に提供している。同社の平均商品価格は 3000∼4000 ドルと効果。機能的に同等の大手メ
ーカー商品と比べると数百ドルほど高く、最高機種「ALX」ラインはフル装備すると1万
ドル近くなる。【3 月 23 日】
(4)IBM
IBM の 1-3 月期決算は、減収となったものの純利益が増加した。昨年のパソコン事業売
却が売り上げに響いた格好だ。売り上げを部門別に見ると、ハードウェア部門が 32.3%の
大幅減となり、コンサルタント事業を中心とする主力のサービス部門も 1.2%減と伸び悩ん
だ。一方の、ソフト部門は 2.4%増。粗利益率 39.1%と前年同期から上昇した。【4 月 18
日】
一方、IBM はマイクロプロセッサにデータ暗号化処理を実行させる新技術「セキュ
ア・ブルー(Secure Blue)」を搭載したシステムを発表。「パワー(Power)」をはじめ
とするプロセッサ3製品に同技術を実装し販売を開始している。【4 月 10 日】
(5)インテル
インテルの 1-3 月期決算は減収減益となった。パソコン向け半導体の出荷が伸び悩んだ
のが原因。売り上げを地域別で見ると、日本市場ではノートブークが好調で 8%増の 10 億
ドルに達した。他の地域は軒並み減収となっている。【3 月 1 日、8 日】
(6)マイクロソフト
ミシガン州在住の男性が、著作権の侵害防止に関する特許2件をマイクロソフトと設計
用ソフト開発のオートデスク(AutoDesk)が盗用していたと訴えていた件で、テキサス州
の連邦地裁の陪審は、男性の訴えを認め、両社に賠償金の支払いを命じた。評決によると、
マイクロソフトが 1 億 1500 万ドル、オートデスクが 1800 万ドルを支払う。【4 月 20 日】
同社はまた、通信機器メーカー大手ルーセント・テクノロジーズからも、ビデオゲーム
機「X ボックス」の技術をめぐって訴えられている。争点となるのは、2003 年の係争で問
題となった MPEG-2 の暗号解読技術。当時はマイクロソフトが勝訴したが、今回は、ルー
セントが裁判所の命令に従い修正を加えたものが争点となる。【4 月 6 日】
マイクロソフトは、バイオテク、製薬、ソフト、ハードの各業界企業と共同で新薬開発
を加速化させる「バイオ IT アライアンス(BioIT Alliance)」を設置した。同アライアンスに
は、ヒューレット・パッカード、サン・マイクロシステムズなども参加、バイオ医療デー
タの共有と協力を推進する。【4 月 7 日】
マイクロソフトは、ビジネスインテリジェンス(BI)ソフトを開発するプロクラリティ
(ProClarity)を買収する。金額は明らかにしていない。BI ソフトは、企業のデータベース
に保存された情報を分析するのに使われる。同社は以前からマイクロソフトの提携企業と
してソフト技術を提供していた。【4 月 4 日】
(7)オラクル
オラクルは、自社版の「Linux」の提供、そしてそれに伴い Linux パッケージソフト販
売大手ノベルの買収も検討している。エリソン最高経営責任者(CEO)が、英紙フィナンシ
ャル・タイムズとのインタビュー記事で明らかにした。エリソンは、自社で OS からアプ
リまで販売を手掛けたいが、OS が欠けていると説明している。【4 月 17 日】
同社はさらに、経理管理ソフトを開発するポータル・ソフトウェア(Portal Software)を 2
億 2000 万ドル相当の株式交換で買収した。買収後、同社はオラクルの通信事業部門に再
編成される。【4 月 13 日】
オラクルが発表した四半期決算(2 月 28 日締め)は増収増益となった。主力のデータベー
スソフトなどのライセンス収入が伸びたのが要因。【3 月 21 日】
(8)サン・マイクロシステムズ
サンは、Java ベースのオープン規格を使って IPTV システムの開発に取り組んでいる。
同社が目指すのは、エンド・ツー・エンドの配信システムの確立で、同様にオープン規格
を採用している企業との提供を強化していく。提携企業には、スイスのオスモシス
(Osmosys)、ハーモニック(Harmonic)、イマケ・ソフトウェア&サービシズ(Imake Software
& Services)、デジソフト(Digisoft)などがある。
主な企業の決算報告:
企業名
四半期売上高
前年同期比
四半期純益
前年同期比
アッ プル
43.6 億ド ル
34.00%
4.1 億ド ル
41.00%
IBM
206.59 億ド ル
-9.80%
17.8 億ド ル
21.90%
イ ンテル
89.4 億ド ル
-5.00%
13.5 億ド ル
-38.00%
オラ ク ル
34.7 億ド ル
18.00%
7.65 億ド ル
42.00%
2. パーソナル・コンピュータ(PC)と OS
(1)オランダのロイヤル・フィリップス・エレクトロニクスは、放送局が CM の放送中に視
聴者のチャンネル切り替えを阻止できるようにする技術を開発し、米国で特許を申請した。
同技術は、番組ごとに導入できるのが特長。また、視聴者が放送局に料金を払えばこの機
能を解除できる仕組みも、特許申請に盛り込んでいる。さらに、同じ技術を使って CM を
すべて飛ばすことも可能だと説明している。【4 月 20 日】
(2)第 1 四半期における世界のパソコン出荷台数は前年同期比 12.9%増の 5320 万台だった。
調査会社 IDC が報告した。新興市場や消費者向け販売の増加などが貢献した。一方、メー
カー別では、市場シェア首位のデルの出荷台数が前年同期比 10.2%増にとどまり、シェアを
落とした。市場シェア2位はヒューレット・パッカード(HP)の 16.4%(前年同期 15.1%)だっ
た。出荷台数の伸び率が最も大きかったのは同 54%増を記録したエイサーだった。開発途
上国を中心にノートブックの需要が予想より強かったという。【4 月 20 日】
2006 年第1四半期におけるパソコン市場の動向(世界)
企業名
06Q1 出荷台数
( 単位: 1000 台)
デル
HP
レ ボノ
エ イ サー
富士通・ 富士通シ ーメ ン ス
その他
合計
レ ボノ ( 合併)
06Q1
市場シ ェ ア
05Q1 出荷台数
( 単位: 1000 台)
05Q1
市場シ ェ ア
前年同期成長率
9,642
18.10%
8,752
18.60%
10.20%
8,702
3,423
16.40%
6.40%
7,121
975
15.10%
2.10%
22.20%
251.30%
2,900
5.50%
1,879
4.00%
54.30%
2,332
26,208
4.40%
49.30%
2,129
26,253
4.50%
55.70%
9.50%
-0.20%
53,207
3,423
100.00%
6.40%
47,109
3,086
100.00%
6.50%
12.90%
10.90%
注:パソコンにはデスクトップ、ノートブック、ポータブル、x86 系サーバが含まれる。
2006 年第1四半期におけるパソコン市場の動向(米国)
企業名
05Q4 出荷台数
( 単位: 1000 台)
05Q4
市場シ ェ ア
04Q4 年出荷台数
( 単位: 1000 台)
04Q4 年
市場シ ェ ア
前年同期成長率
デル
4,992
32.30%
4,977
33.90%
0.30%
HP
3,075
19.90%
2,656
18.10%
15.80%
ゲート ウェ イ
1,230
8.00%
830
5.70%
48.20%
東芝
631
4.10%
509
3.5%
24.00%
アッ プル
566
3.70%
549
3.70%
3.10%
レ ボノ
539
3.50%
0
0.00%
N/A
その他
4,412
28.60%
5,150
35.10%
合計
15,445
100.10%
14,671
100.00%
-14.30%
5.30%
レ ボノ ( 合併)
539
3.50%
555
3.80%
-2.90%
注:パソコンにはデスクトップ、ノートブック、ポータブル、x86 系サーバが含まれる。
注2:ゲートウェイと東芝は決算報告書から推測
出典:IDC
(3)P2P(ピア・ツー・ピア)ファイル交換ソフト「モルフェウス(Morpheus)」を開発した
ストリームキャスト・ネットワークスは、IP 電話サービス大手スカイプ・テクノロジーズ
が同社の技術特許を侵害していると訴えた。スカイプの創業者はカザーの開発も手掛けて
いることから、同氏およびカザーも同様に訴えられている。【3 月 28 日】
3.インターネットとメディア・ビジネス
(1)電話会社最大手 AT&T は、アキンボ・システムズ(Akimbo Systems)と提携した。アキン
ボは、ネットを使ったビデオ・オン・デマンド(VOD) サービスを提供する。AT&T は、今
夏から開始するネットテレビ(IPTV)サービス「ホームゾーン TV」へアキンボのシステムを
組み込んでいく。同社はすでにホームゾーン TV サービスをいくつかの州で試験導入してい
る。【4 月 19 日】
(2)デジタル・ビデオ録画(DVR)サービス大手ティーボが先に、衛星放送大手エコスターを
同社の技術特許侵害で訴えていた件で、テキサス連邦地裁の陪審員は、エコスターが「意
図的」に特許を侵害していたとの判決を下した。ティーボが訴えていたのは、番組を見な
がら別の番組を録画する技術「マルチメディア・タイム・ワーピング・システム」の侵害
で、陪審員はエコスターに対して総額 7390 万ドルの賠償金を支払うよう命じた。
これに対してエコスターは、判決を不服として控訴する意向を明らかにしている。同社は
また、米国特許商標局(USPTO)にティーボの主張する特許の再審理を求めている。
一方、エコスターの競合、衛星放送大手ディレク TV は、ティーボと年間にわたる契約を
新たに結んだ。契約の中には、技術特許に関して互いに争わないという条項が組み込まれ
ている。【4 月 17 日、12 日】
(3)検索エンジン最大手グーグルは、AOL やヤフー、マイクロソフトの MSN などに対抗し、
オンラインのカレンダー・サービスを開始した。新規サービスでは、両親や子供、友人が
情報を共有し合える。サービスは無料で、「インターネット・エクスプローラ」か「ファ
イアフォックス」で利用できる。【4 月 17 日】
グーグルの1ー3月期決算は大幅な増収増益となった。オンライン広告が引き続き好調
だったことが奏功した。売上高は前年同期比 79%増の 22 億 5000 万ドルとなり、初めて 20
億ドルを突破した。純益は 59%増の5億 9200 万ドルだった。【4 月 21 日】
(4)オンラインの DVD レンタルを手がけるネットフリックス(NetFlix)は、ブロックバス
ターを訴えた。ブロックバスターがオンライン・レンタル事業の手法に対する特許を侵害
したとして訴えた。争点はユーザーが次にレンタルしたいと思う DVD をオンライン上でリ
ストアップする「ウィッシュ・リスト」の機能。さらに、返却の遅延料金を課さずに日数
無制限で借りられるようにした中核の事業手法にも抵触する可能性を示唆している。【4 月
6 日】
(5)アドウェア開発クラリア(Claria)は、新たに 4000 万ドルの資金を調達した。ウェブ情
報の配信を個人の嗜好に合わせて変更できる「パーソナルウェブ(PersonalWeb)」事業に
資金を投入していく。同社は6月までに、アドウェア事業を売却する計画で、新規製品は
同期に投入される予定。同社に資金を提供した企業には、ソフトバンク・アメリカ、ロジ
ャーズ・コミュニケーションズなどが名を連ねている。【4 月 4 日】
(6)オンライン映画配信サービスを手がけるムービーリンクとシネマナウは、最新映画を
DVD の発売と同時にネットで配信提供を開始した。両社はこれまで、期限付きのレンタル
配信サービスを提供してきた。一部の作品は購入できたが人気のない B 級映画作品だった。
価格は、ムービーリンクで 20∼30 ドル前後。シネマナウで 9 ドル 95 セントから 19 ドル 95
セント。【4 月 3 日】
シネマナウは、また、ポルノ製作会社大手ビビッド・エンタテインメント・グループと提
携。5 月初旬から、DVD に焼いてテレビで見られる映画コンテンツのダウンロード販売を
開始する。当面は、30 本のポルノビデオを、1 本約 19 ドル 95 セントで販売する。【4 月 21
日】
4.電子商取引
(1)Amazon.com は、携帯電話サービスをオンラインで販売するインフォニック(InPhonic)と
提携した。提携により、インフォニックのサイト「ワイヤフライ(WireFly)」ストアを第 3
四半期から Amazon.com に統合する。インフォニックが Amazon.com に広告料および加入電
話ごとの初期費用などを支払う。【4 月 20 日】
事業拡張に挑む Amazon.com は、パラマウント・ピクチャーズ、ユニバーサル・ピクチャ
ーズ、ワーナー・ブラザースら米映画製作大手3社とも映画やテレビ番組のデジタル配信
サービスの導入で交渉している。【3 月 18 日】
(2)業務用ソフトをオンラインで提供する Salesforce.com は、センディア(Sendia)を 1500 万
ドルで買収した。センディアは携帯機器向けに Web サービス技術を提供している。
Salesforce.com が他社を買収したのは今回がはじめてで、モバイル事業への関心度の高さが
伺える。同社は現在、提携企業のプログラムを利用できる「アップエクスチェンジ」を提
供しているが、センディアのサービスも同プログラムに組み込まれる。【4 月 11 日】
(3)セキュリティ技術大手 RSA セキュリティのサヨタ(Cyota)事業部がフィッシング対策
で効果をあげている。サヨタの技術は、ユーザー名、パスワード、オンラインバンキング
信用証明、クレジットカード番号など、詐欺師が狙う情報の偽物でサイトを溢れさせ、本
物の情報を探し出すのを困難にする。また、サヨタはコマンドセンターで1日に 15 億件の
電子メールをスキャンしており、新たなフィッシング攻撃が見つかれば直ちに ISP に連絡し、
フィッシングサイトを閉鎖させている。【3 月 31 日】
(4)IAC(InterActiveCorp)は比較ショッピング・ソフト「プロント」を発表した。ソフト
は、Pronto.com から無料でダウンロードできる。ユーザーはソフトを使ってデータベースに
アクセスし、5万件のオンラインストアの中から好きなものを選ぶ。あとはソフトが自動
的に、ユーザーがショッピングサイトで商品のページを見るたびに、同じ商品や似た商品
の別のストアからの提供価格などを表示する仕組みだ。また、より値段の安いストアがあ
ると、メッセージを表示し、クリックしてそちらに行くよう促す。【3 月 31 日】
(5)各社から集めたクーポンを集めて提供する「ワンストップ」業者が増加している。例え
ば、CouponCraze.com は、およそ 1000 件におよび契約を各社と結んでいる。また、数百件
におよぶ企業の特別セールやクーポンの印刷オプションを提供する Coupons.com や
Keycode.com などがある。掲載するクーポンの種類は、若者層にターゲットを絞り込んだり、
裕福層を狙ったりとサイトによってまちまちだ。広告主にしてみれば、リアルタイムで変
更が可能なオンラインクーポンは紙媒体よりコストが安くて済む。【3 月 3 日】
5.半導体
(1)バッテリ技術を開発するジンク・マトリックス・パワー(Zinc Matrix Power)は、インテ
ル・キャピタルなどから新たに 700 万ドルのベンチャー資金を調達した。同社が開発する
シルバージンク・バッテリは、同サイズのリチウムイオン・バッテリの 2 倍の寿命を持っ
ている。【4 月 17 日】
(2)オーストラリアの研究チームは、無線認証(RFID)がハッカーなどによって攻撃される危
険性があることを明らかにした。RFID タグは、特定帯域の中にある複数の周波数を利用し
て読み取り機との通信を確立する。研究チームは特定帯域内のすべて周波数をタグで埋め
ることによって、読み取り機が情報を認識できなくなることを発見した。これは、サーバ
に大量のデータを一斉に送り込む「サービス拒否攻撃(DoS)」と同様だという。【4 月 17
日】
一方、オランダのアムステルダム自由大学研究チームは、ウイルスを開発し RFID タグに
感染させたと発表した。RFID タグに感染したウイルスは無線で IC タグを管理するデータベ
ースにも広がり、甚大な被害をもたら可能性があると警告している。【3 月 23 日】
(3)フラッシュメモリ大手のレキサー・メディアは、東芝とその米子会社など計 3 社を知的
所有権(IP)の侵害で米国際貿易委員会(ITC)に提訴した。レキサーは、NAND 型メモリ技術な
どを東芝側に盗用されたと主張し、東芝メモリ製品の対米輸出の差し止めを求めている。
【4 月 12 日】
(4)マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者らは、金と酸化コバルトに結合する良性の
ウイルス「M13」によって組み立てたバッテリを発明した。同じサイズの既存のバッテリに
比べて発電力が3倍高い。特定用途向けのプロトタイプは 2 年以内に登場する見込み。【4
月 7 日】
(5)新興企業ラップポート(Rapport)は、1000 個以上のプロセッサを搭載したチップを商
品化する。同社はすでに、低消費電力のプロセッサ 256 個を搭載したチップを開発してお
り、ビデオ付き携帯電話市場に向けてマーケティングを展開している。チップには、IBM
製プロセッサ「パワー(Power)」を搭載。消費電力は1ワット以下で、処理能力が他社製
品に比べて5∼10 倍速い。【4 月 4 日】
(6)短距離無線通信技術「ブルートゥース」の推進団体ブルートゥース・スペシャル・イン
タレスト・グループ(BSIG)は、Wi メディア・アライアンスが推進する「ウルトラワイドバ
ンド(UWB)」を統合していく。UWB は、半径 10 フィート以内で USB やファイアーワイヤ
ーと同程度の速さでデータを転送できる。この規格を統合することで、ブルートゥースの
高速化を狙う。BSIG によると、高速ブルートゥースを搭載した最初の製品は来年にも登場
するという。また、本格的な普及は 2008 年になる見通しだ。【3 月 30 日】
(7)サンフランシスコ周辺の新興企業が無線センサー・ネットワーク「モート(Mote)」
の開発でしのぎを削っている。モットーの開発は、半導体大手インテルと国防省の資金援
助によってカリフォルニア大学バークレイ校で進められているが、同校とつながりがある
少なくとも5社が商品化を目指している。これらの企業には、モート専用のデータ分析ソ
フトを開発するアーチ・ロック(Arch Rock)ほか、モーテイブ(Moteiv)、クロスボウ・
テクノロジー(Crossbow Technogy)などがある。【3 月 27 日】
6.その他
(1)「Wi-Fi」ネットワーク事業を展開するアースリンクとグーグルの共同体は、より限定
された無料サービスの提供で複数の都市の入札にも参加すると発表した。両社はサンフラ
ンシスコ市による無料の高速無線 LAN「Wi-Fi」ネットワーク事業を受注したばかり。両社
の計画では、各都市でグーグルによる広告配信付き検索サービスと、地域のウェブサイト
を無料で提供していく。また、アースリンクの会員以外の利用を限定的なものとするほか、
広告収入の一部は 2 社が共有する仕組みだ。
アースリンクは、フィラデルフィアおよびカリフォルニア州アナハイムの両市ですでに
Wi-Fi ネットワーク構築契約を受注。さらに 24 以上の他都市で計画を提案または検討して
いる。【4 月 12 日、6 日】
(2)仏通信機器大手アルカテルと米同業のルーセント・テクノロジーズが合併で合意した。
合併手続きが完了すれば、米欧にまたがる世界最大級の通信機器メーカーが誕生すること
になる。新会社の CEO にはルーセントのルッソ会長兼 CEO が就任する。本社はパリに置か
れる。合併後の売上高は約 250 億ドルが見込まれており、従業員数は 8 万 8000 人に達する。
両社は合併により、今後 3 年間で年 17 億ドルの経費削減を見込んでいる。
ルーセントは 2000 年以降、業績低迷に直面。特に収益の多くを依存する通信業界の再編
が進んだことが逆風になっていた。一方のアルカテルは世界的な競争激化に伴い、事業の
拡大を模索していた。【4 月 3 日】
(3)システムの「仮想化(バーチャライゼーション)」が、サーバ機器の効率化だけではなく、
ソフトのインストールの簡略化でも注目を集めつつある。新しいソフトを導入する際に、
システム管理者はソフトとハードおよび OS の互換性を確認し、最適化する必要がある。し
かし、仮想化技術を用いれば、OS とセットにされたソフト・コンポーネントを、仮想マシ
ンと呼ばれるパーティションで区切られた新しいシステム領域にインストールするだけで
済み、他のソフトとの干渉を気にする必要もない。すでにオープン・エクスチェンジのよ
うに、仮想マシンへの対応した形でソフトのリリースを検討している会社もある。【4 月 3
日】
(4)ケーブルテレビ(CATV)大手コムキャストとタイムワーナー・ケーブル(TWC)は、
同業者ケーブルビジョンとデジタル・ビデオ録画(DVR)サービス「RS(リモート・スト
レージ)-DVR」で提携した。ケーブルビジョンのサービスは、加入者が同社のサーバを通
じて番組を録画できる仕組み。これにより、ティーボ(TiVo)などが提供する DVR 機を使
用する必要がなくなる。これまでにも同様のサービスが試みられて来たが、ケーブルビジ
ョンによると、同社のサービスは視聴者がリモコンで注文してこない限りネットワーク上
で録画されないことを相違点として挙げている。【3 月 31 日】
(5)技術系企業の間で、インドや中国など海外の国ではなく、隣国の企業に業務を委託する
「ニアソーシング(near-sourcing)」が注目されている。利点としては、時差がなく文化的
にも共通点が多いことが挙げられている。例えば、サンディエゴを拠点とするシリコン・
スペース(Silicon Space)は、メキシコから通勤する技術労働者を雇用したのをきっかけに、
国境を隔てたメキシコ・ティファナの企業とアウトソース契約を締結した。同社はそれま
でインドやパキスタンの企業にプログラミング業務を委託していたが、この移行によって
業績を回復している。【3 月 31 日】
(6) 連邦通信委員会(FCC)のケビン・マーチン委員長は、電話会社のテレビ配信事業参入
を促すことがテレビ業界の競争へつながるとの見解を明らかにした。ベライゾンは、ケー
ブルテレビ(CATV)大手ケーブルビジョン・システムズの子会社、レインボー・メディ
ア・ホールディングズが権利を持っているスポーツ番組へのアクセス要求していた。これ
に対してレインボーが交渉を拒否したため、FCC の支援を仰いでいた。マーチン委員長は
この件に関して、同上の見解を示した。【3 月 22 日】