高見林業経営の概要 1 森林立地の概要 私ども管理する森林は、その多くが鹿沼市上粕尾地区にあり、最寄の市場から 35km に位 置します。山の裾野は比較的肥沃なところが多く、スギの適地となっておりますが、天然林 の中には天桧も見られ、ヒノキの植林も行ってきました。豊かな自然環境に囲まれ、シカ、 クマ、カモシカが多く、それらによる獣害も甚大なものがあります。ここ数年は、一部地域 にヤマビルが発生するなど獣の2次的被害に頭を悩ませているところです。 管理山林 オルソ映像+林小班界+作業道図 2 高見林業の概要 当社では苗木作りから育林、伐採、製材と受注販売と木材に関わる事を一貫して行える体 制を整えています。林業の基盤である山林は、個人所有のもので、長期受託契約締結による 当社管理面積は近隣の5名の所有者をあわせて260ha であり、それらは当社の策定する 森林管理マニュアル及び希少動植物管理マニュアル(SGEC 規準)により施業計画、保育、 作業道の開設や間伐、製材販売、顔の見える家造り、見回り等の管理を行っています。従業 員は3名です。 機械化による作業の安全化や軽減化を図り、また積極的に作業道の開設に努めてきました。 又、現在は、施業管理、各種申請などの管理に於いて、宇都宮大学と協同で開発した GIS シ ステムを活用し IT 化を進めています。しかし、木材価格は依然として日々低下し、搬出コス トの改善も限界にきており、収支バランスを図るため、伐採量を増加せざるを得ない状況に 至り、林業を営む環境は非常に厳しくなっています。 これらの対策として、今まで手薄だった川下対策に力を入れていかねばなりません。そこ で、有利販売対策を研究していこうと、「山元に還元できる(持続的な林業経営の出来る) 木材価格を」を目標に、林業経営者2名、製材工場経営者2名、設計士 1 名、原木市場経営 者1名で日光地区木材流通研究会を起ち上げ、先進地視察やスギ材の実大木材強度試験を行 い、地域ビルダーへの働きかけを行い、地域のスギ材の利用を推進しているところでありま す。 同時に、更なる機械化と作業員の熟練化を進め、作業の効率化を図り地域での間伐需要と 緑づくりに応えられる体制を整えて行きたいと考えております。 -1- 3 森林認証の取得について 1997 年「京都議定書」がまとめられ、それ以降、森林の持つ働きの中に、地球温暖化防止 機能がクローズアップされ、「適切な森林の維持」の必要性が、多くの人たちに認知される ようになってきました。このような中で、林業経営者として貢献出来ることはないかと思い めぐらし、森林認証制度の勉強を始めました。日本林業の実情にあった「緑の循環」認証会 議が、平成15年6月に設立されたことをお聞きし、私の日頃の林業経営活動を広く消費者 の皆さんに理解して頂こうとの思いで取得を決意致しました。 試行錯誤の中、平成17年4月に本申請を行い、日本林業技術協会の現地調査で色々ご指 導等を受け、7月28日に森林認証を無事受けることが出来ました。この認証取得を通して、 年間生長量の範囲での伐採に抑えること、下層植生に配慮した施業、生息する動物との共生 等今まで地道に行ってきたことが大切であるということを再認識致しました。 日光地区木材流通研究会 自家材の実大強度試験 4 今後の展望 森林認証材がすぐに木材価格に反映されることはないのですが、同じ価格の木材なら認証 森林から産出された物を使いたいという消費者感覚があることを最近肌で感じています。 「林業経営者の山から出材されるのか、森林所有者の山から出材されるのか」の違いであり、 今後の林業経営を維持していくには重要なことであると考え、大切にしていくとともに、消 費者の皆様にアピールしていかなければならないと考えています。 私の林業経営は、従前から予定調和論の考え方に基づき環境保全型産業を実践してきたわ けです。今後も、林業経営を通じ、健全な山林を育成し地域社会に貢献していきたいと考え ています。 林家と施主さんとの家造り、木を一緒に選び、伐採、製材、建築まで協力して行います。 -2- 当社は、お客様に安心を届けます その1 森林認証 顔の見える木材、そして究極のトレサビリティを目指して。 山林の持つ公益的機能を維持しながら継続可能な森林管理を行い、違法伐採を締め出し、国際 的な競争力を持つために、国際的な管理基準である「森林認証」制度である、SGEC を 2005 年 7 月に全国で個人2番目に取得しております。この制度で厳格に管理された山林は国内では まだ少なく、またこれらの山林より産出された木材を厳格に分別して利用出来る COC システ ムも少ない中、県内製材2社、木工2社、ハウスメーカー1社とのパイプを構築しており安定 的な需要確保と規格材化による安定価格の実現をしております。そしてお客様には私どもの管 理が行き届いた山林と分別システムにより、安心してご利用いただけるものと確信しておりま す。 その2 杉の特性 説明の出来る木材、そのために。 当社では、お客様に説明の出来る木材の生産を心がけております。その為にまずは、05 年よ り2年間で約500本の実大の木材を使用し破壊試験を行い強度特性を調べました。結果は下 の表の通りに、ばらつきも少なく又強度も全国平均より高い数値を出しており、設計の目安と なり安心して使用いただけると確信しております。今後はクリープ試験や香り成分などの分析 をしていきます。 ヤング係数分布図 曲げ強度分布図 24 27 30 24 27 30 0 0 10 20 30 40 50 5 60 10 15 ヤング係数(kN/mm2) 曲げ強度(N/mm2) 曲げ強度 平均値 標準偏差 ヤング係数 24 27 30 42.90 38.10 36.70 4.13 5.50 4.86 -3- 24 27 30 平均値 9.75 8.00 7.30 標準偏差 1.22 1.29 1.00 施主様との繋がりを大切にしています。 お客様からのお便り こんにちは。先日の伐採では大変お世話になりました。大変貴重な体験ができました。ありがとうご ざいました。伐採体験後、粟野の山をとても身近に感じるようになりました。 7月21日付の下野新聞(田村さんとのツーショット)見ました。4月にモデルハウスを見学し、工 務店さんと一緒に家造りを進めようと決めてからまだ3か月ほどですが、なんだかすごい取り組みの 中で、自分たちの家造りが進んでいるのだな、とあらためて感じました。今日は、齋藤社長はじめ、 みなさんの取り組みの素晴らしさとすごさを再認識した1日でした。これからの家造りがますます楽 しみになってきました。7月29日、今度は見学のみですが、今度こそ家族4人揃ってお伺いします。 それでは、また。 木材需要の拡大を目指して 中長期的に木材の需要を考えると、次世代の業界を担う学生や若手の設計士やデザイナーに、 木材の事を正しく知ってもらう必要があります。そこで当社では関係する団体や企業と合同 で複数の建築学課や宇都宮大学、一般市民などを当社で管理する山林にお招きして「木のふ るさとツァー」を平成13年より行っております。森林の持つ公益的機能と木の持つ特性な どを正しく理解していただき、少しずつですが確かな手応えを感じてきております。 有限会社 高見林業 栃木県鹿沼市上粕尾 870-2 -4-
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