2011年一括ダウンロード

ヒューマン・ヘルスケア企業をめざして
環境・社会報告書
2011
Giving First Thought to Patients
エーザイはWHOのリンパ系フィラリア症
制圧活動を支援しています。
エーザイの企業理念
1. 本会社は、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向
上に貢献することを企業理念と定め、この企業理念のもとヒューマン・ヘルスケア
(hhc )
企業をめざす。
2. 本会社の使命は、患者様満足の増大であり、その結果として売上、利益がもた
らされ、この使命と結果の順序を重要と考える。
(法令と倫理の遵守)
を日々の活動の根幹に据え、
3. 本会社は、コンプライアンス
社会的責任の遂行に努める。
4. 本会社の主要なステークホルダーズは、患者様と生活者の皆様、株主の皆様
および社員である。本会社は、以下を旨としてステークホルダーズの価値増大
をはかるとともに良好な関係の発展・維持に努める。
① 未だ満たされていない医療ニーズの充足、高品質製品の安定供給、薬剤の安全性と
有効性を含む有用性情報の伝達
② 経営情報の適時開示、企業価値の向上、積極的な株主還元
③ 安定的な雇用の確保、やりがいのある仕事の提供、能力開発機会の充実
定款 第 1 章第 2 条より
Contents
編集方針
2
本報告書は、
「 hhc(ヒューマン・ヘルスケ
ア)」
というエーザイの企業理念に込められた
Top Message
「環境・社会報告書 2011」
の読者の皆様へ
エーザイの事業活動
世界の
「ヘルスケアの多様なニーズ」
を受け止める
思いに基づく活動、ステークホルダーズとの
4
関わり、環境保全活動などについて、2010 年
6
ヒューマン・ヘルスケア
(hhc )企業 エーザイ
8
特集 世界中の患者様に必要な医薬品をお届けするために
度の実績を中心に報告しています。
各取り組み報告ページでは、hhc 理念を具
現化した代表的な事例を紹介するとともに、
取り組みごとの基本的な考え方と個別の活動
10
研究開発 くすりを通して
「患者様」
と向き合う
14
製品供給 患者様とともに
「くすり」
と向き合う
18
情報提供 情報を通して
「患者様」
と向き合う
22
品質保証 顧客歓喜をめざす品質保証とは
26
コーポレートガバナンスとコンプライアンス
見をいただきました
( P35、49)
。
28
人材活用
編集にあたっては、環境省「環境報告ガイド
32
社会貢献活動
ライン
(2007 年版)
」
、GRI( Global Reporting
35
患者様からのご意見
に把握できるパフォーマンスと活動事例を可
36
エーザイの環境活動
能な限り取り上げました。
40
なお 、本報告書は 、環境への負荷低減の
地球温暖化防止
42
廃棄物削減
44
資源の投入と環境への負荷
46
資源投入・環境負荷データ
48
資源投入・環境負荷データ
(海外)
49
環境専門家からのご意見
を報告しています。
また、エーザイの活動がどのように評価さ
れているか、今後期待されていることは何か
を検証・確認し、次なる活動へとつなげられ
るよう、ステークホルダーズの皆様からご意
「サステナビリティ・リポーティン
Initiative )
社団法人日本てんかん協会「波の会」埼玉県支部 森 みどり 氏
グ・ガイドライン2006」
などを参考に、継続的
ため、コーポレート・ウェブサイトでの公開の
みとしております。
50
かけがえのない地球環境との調和をめざして
経済性に関する報告
や経営戦略について
ご紹介した
「アニュア
ル・レ ポート2011」
株式会社 Control Union Japan 代表取締役 山口 真奈美 氏
社会的責任に関する指標と付加価値の分配
も発行しています。下
記ウェブサイトをご
覧ください。
ウェブサイト
http://www.eisai.co.jp/ir/annual/index.html
電話:エーザイ株式会社 IR 部
03-3817-5327
● 対象範囲
本報告書は、エーザイ株式会社の事業活動を中心に編集されています。一部の報
告内容には、国内および海外グループ企業の活動報告も含まれています。環境報
告に関しては、主としてエーザイ株式会社および国内グループ企業(国内グルー
プと記載)
から集計したデータをもとに構成しています。
● 対象期間
データは2010 年 4 月1 日から2011 年 3 月31 日の実績です。
一部の活動については2011 年 6 月までの状況も掲載しています。
● 本報告書に関するお問い合わせ先
エーザイ株式会社
電話:03-3817-5120 FAX:03-3811-3077
PR 部
環境安全部 電話:03-3817-5118 FAX:03-3811-9982
エーザイ株式会社 会社概要(2011 年 3月31日現在)
名称
設立年月
本社
資本金
従業員数
国内営業拠点
エーザイ株式会社
1941 年(昭和 16 年)12 月
〒112-8088 東京都文京区小石川4-6-10
44,985 百万円
連結:11,560 人 個別:4,322 人
コミュニケーションオフィス 全国 67カ所
(海外営業拠点、工場・研究所の詳細については、P4 ∼ 5 を参照)
会社概要に関する詳細は、コーポレート・ウェブサイト
( http://www.eisai.co.jp )
をご覧ください。
環境・社会報告書 2011
1
Top Message
「 環 境・社 会 報 告 書 2 0 1 1 」の 読 者 の 皆 様 へ
大グローバリゼーション時代における、エーザイの社会的責任
世界の医薬品産業を取り巻く環境は、成熟市場における成長が鈍化する一方、2015 年には医薬品市場におけ
る新興国の割合が4 分の1を占めると予測され、新興国の重要性がますます高まっています。こうした中、製薬企業
には未だかつてない大グローバリゼーション時代に適応した企業経営が求められています。
エーザイグループは2011 年度から開始した中期戦略計画「はやぶさ」
において、本計画期間中に新興国を含む
グローバルトップ 20カ国すべてに進出し、5 億人を超える患者様に製品をお届けするという目標を掲げています。
エーザイグループは、患者様のベネフィット向上を第一義とするヒューマン・ヘルスケア
(hhc )理念に基づきこの目
標を達成し、世界規模で患者様貢献を果たしていくことが、当社の社会的使命と考えています。またその実現に向
け、hhc マインドを持った人材育成や公正で高い倫理観を持った事業活動を推進してまいります。
世界の医薬品アクセス向上への挑戦
今日、世界で約 27 億人が、有効な治療法があるにもかかわらず、貧困や医療システムの不備などから必要な医
療を受けることができないという現実があります。
エーザイグループは、hhc 理念に基づく製薬企業として、医薬品アクセスの向上には、寄付などの短期的な支援
活動だけではなく、事業活動を通じた持続可能な取り組みが必要と考えています。そのため、アンメット・メディカ
ル・ニーズを充足する革新的新薬の早期創出や、高品質な製品の安定供給、医薬品の安全性・有用性に関する情
報提供活動をグローバルレベルで展開するとともに、インド、フィリピン、インドネシアなどの新興国や開発途上国に
おいて、社会、経済、医療環境に基づき必要とされる医薬品を購入しやすい価格で供給するアフォーダブル・プラ
2
エーザイ株式会社
イシングの導入を進めています。また、2010 年 11月には、主に開発途上国において課題となっているリンパ系フィ
ラリア症制圧に向け、世界保健機関( WHO )
に対して治療薬「ジエチルカルバマジン
( DEC )」約22 億錠を無償提
供することを決定しました。
これらの活動は、新興国・開発途上国における経済の安定化や公衆衛生の基盤強化を支援し、各国の発展・繁
栄に直接貢献する長期的投資と考えています。今後も、エーザイグループは、政府、国際機関、民間組織や非営利
組織( NPO )
などとのパートナーシップを強化し、これらの団体とともに医薬品アクセスの向上に向けて積極的な
活動を推進してまいります。
東日本大震災被災地でのhhc 活動
2011 年 3月に発生した東日本大震災の被災者の方々へ心よりお見舞い申し上げますとともに、被災地の一日も
早い復興をお祈り申し上げます。
東北地方を中心として東日本各地に被害をもたらしたこの災害の発生に際し、エーザイグループは震災直後より
対策本部を設置し、被災状況の把握や社員の安否確認、被災地への医薬品や支援物資および義援金の提供など
を行ってまいりました。
また、エーザイグループでは、大災害やパンデミックなどの危機に備えて常に充分な流通在庫を確保するなどの
取り組みを行っていますが、今後も、グローバル製品供給体制を駆使し、有事における医薬品の安定供給に向け
た備えに全力で取り組んでまいります。
持続可能な社会の実現に向けて
エーザイグループは、地球環境との調和を重視した企業活動を展開しています。製品の研究・開発から使用・廃
棄に至るすべての段階において環境負荷低減に取り組むと同時に、事業活動全般における資源投入と環境負荷を
定量的に把握し、省資源や環境負荷低減を進めています。
今日の環境問題には気候変動問題という人類共通の大きな課題が存在し、その問題を緩和するためには低炭素
社会構築の促進による地球温暖化防止や、省資源・廃棄物削減による循環型社会の形成を早急に推し進める必
要があります。国内グループでは、CO2 排出量削減や省資源・廃棄物削減の目標設定とその達成をめざし、実効
ある環境マネジメントシステムに基づく環境保全活動をより積極的かつ継続的に行い、持続可能な社会の実現に向
けて取り組んでまいります。
また、東日本大震災による福島第一原子力発電所事故を背景に、わが国のエネルギー政策の見直しも必至な状
況であり、地球温暖化問題などの環境問題はいっそう厳しさを増すものと思われます。エーザイグループではこれ
まで全事業所で省エネルギー政策を進めてきましたが、震災以降、新たな視点でさらに徹底した省エネルギーを
進めており、経済産業省から要請のあった今夏の節電には全社をあげて協力する体制を整えています。
エーザイグループは、hhc の企業理念に基づき、世界の患者様のベネフィット向上に貢献するとともに、よき企業
市民としての責任を全うしていきます。皆様のご支援を賜りますようお願い申し上げます。
代表執行役社長( CEO )
環境・社会報告書 2011
3
エーザイの事業活動
世 界 の「ヘルスケアの 多 様
欧州ナレッジセンター
提供する製品( 2010 年度 )
その他
5.1% 389 億円
その他の品目
34.0% 医薬品事業
94.9% 7,301 億円
アリセプト
37.8% 2,904 億円
がん関連領域
自社で開発したアルツハイマー型
売上総額
7,689 億円
認知症治療剤「アリセプト」は、世
界 70カ 国 以 上 で 患 者 様 のQOL
10.4% 803 億円
( Quality Of Life:生活の質)
向上に
1986 年からがん関連領域の
貢献しており、剤形や高用量製剤の
研究に着手し、多くの有力な
開発も積極的に行っています。
化合物の開発を行っていま
す。現在、がん領域の豊富な
パイプラインと技術的な強み
を生かし、ウィメンズ・オンコ
パリエット
(米国名/アシフェックス)
17.8% 1,369 億円
ロジー分野をはじめとして、
プロトンポンプ阻害剤「パリエット」
は、逆流性食道
り組んでいます。
世界 80カ国以上で販売されています。
製品群の充実化に集中して取
炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの治療に用いられ、
開 発を進める重 点 領 域
エーザイグループは、アンメット・メディカル・ニーズが数多く存在する
「脳・神経領域」
「が
ん領域」
「 血管・免疫反応領域」
を3 大重点領域と捉え、重点的に研究開発を行っています。
がん領域においては、豊富なパイプラインと技術的な強みを生かし、ウィメンズ・オンコロジー
インテグレーティブ・
ニューロサイエンス
(脳・神経領域)
インテグレーティブ・
オンコロジー
(がん領域)
(女性特有のがん)分野の製品群の充実に取り組んでいます。
2010 年度の研究開発費は1,450 億円と、売上高の18.9%を占めています。特定の領域に
特化し、より効率的な研究開発を進めるとともに、中期的にはこの比率を20% 超に高めてい
きます。
研 究 開 発 体 制の充 実
エーザイグループでは、研究開発活動をプロダクトクリエーションと位置づけ、創薬活動にお
いて、患者様志向をより明確にするとともに、自律性を重視したマネジメントを行っています。
「エーザイプロダクトクリエーションシス
2010 年度は、新しい研究開発の組織体制として、
を再構築しました。EPCSでは、脳・神経やがんなどの疾患領域別に構成
テムズ
( EPCS )」
( PCU )
が新薬の発明・発見から承認取得
された6つのプロダクト・クリエーション・ユニット
と呼ばれるユニット
までの責任を担います。そして、コア・ファンクション・ユニット
( CFU )
が、新薬創出に必要な重要創薬技術をPCUに提供することで、開発期間の短縮と生産性・
効率性の向上をめざします。
4
エーザイ株式会社
血管・免疫反応領域
なニーズ」を受け止める
美里工場(埼玉)
鹿島事業所( 城)
筑波研究所( 城)
アンドーバー研究所
モルフォテック・インク
ノースカロライナ工場
蘇州工場
台南工場
カン研究所(兵庫)
川島工場(岐阜)
エーザイ・
ナレッジセンター・
インド
ボゴール工場
グロ ー バルな活 動
エーザイグループでは、2011 年度よりイースト・アジア、米国、
欧州、ニューマーケット・アセアン
(新興市場)
の4リージョン体
制で、各々のマーケットニーズや取り扱う製品群に最適な事業体
制を構築、強化します。そして、グローバルトップ20カ国すべて
米国
米国では、大型市場に対するコ・プロモーション型のビジネスモデルから、
エーザイ単独による中枢神経とがんの、2つのフランチャイズモデルへと転換
していきます。より小規模の機能横断型チームによるアプローチを展開し、
がんフランチャイズへの転換を加速していきます。中枢神経フランチャイズに
はてんかん領域を加えて、さらなる充実化をはかります。
に進出、エーザイ製品が入手可能な国の数を114カ国、貢献す
る患者様数を5 億人超まで増加させることをめざしています。
さらに今後は、成長の中心的役割を果たしてきた米国から、
イースト・アジア、新興市場へ経営資源をシフトし、リージョンバ
ランスの転換をはかります。
イースト・アジア
欧州
欧州は、国別のビジネスモデルから、欧州を一つの市場として捉えた
「 ONE
ビジネスモデルへと転換していきます。その中で、がん・インスティ
EUROPE 」
テューショナルケア
(病棟ケア)
、てんかん、成熟製品の3つの汎欧州ビジネス
ユニット体制を創設し、さらなる資源の最適化をはかります。
ニューマー ケット・アセアン
(新興市場)
イースト・アジア・リージョンは、日本、中国、韓国、台湾、香港で編成され
新興市場では、アルツハイマー型認知症やてんかんなどの中枢神経疾患、
ています。今後のグローバルエーザイの牽引役として、中枢神経、がん、リウ
がん、肝臓疾患を重点領域と位置づけ、ブランド製品とブランドジェネリック
マチ、消化器・肝臓疾患などの各領域における主要なオピニオンリーダーと
医薬品を含めた幅広い製品を取り えていきます。
の交流や事業運営の共有化をはかっていきます。
さらに、官民パートナーシップによる疾患啓発や地域におけるパートナー
との連携、アフォーダブル・プライシングなど患者様のベネフィット向上に努
めていきます。
環境・社会報告書 2011
5
ヒューマン・ヘルスケア
(hhc )企業 エーザイ
エーザイグループは、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献し、世界の
ヘルスケアの多様なニーズを充足することを企業理念として定めています。この理念のもと、全役員・従業員
が一丸となって事業活動を行い、いかなる医療システム下においても存在意義のあるヒューマン・ヘルスケア
(hhc )企業となることをめざしています。
hhc 理念実現のための専任組織「知創部」
エーザイ株式会社は、hhcを実現するための専任組織として
患者様のニーズと業務の意義を知るhhc 研修
患者様の真のニーズを理解するためには、患者様と多くの時
「知創部」
を設置しています。hhcは、患者様価値の増大という
間をともに過ごすことが重要となります。そのために
「知創部」
エーザイグループの事業活動の目的を達成するための原動力で
では、様々な研修を実施しています。たとえば、
「現場体験研修」
す。1 万人を超える全社員は、日常業務を通じてその理念を実現
では医療現場へ赴いて、今日の医療・介護の実態を学び、患者
する活動をグローバルに展開していく企業文化・風土を築く必
様と過ごすことで患者様視点を体得します。
「 高齢者疑似体験研
要があります。
修」
では、体におもりやサポーターなどを装着し、高齢者の身体
「知創部」
では、知の創造を推進する取り組みとイノベーション
的機能低下や心理的変化を体感します。また、2010 年度には、
を創出できる組織風土醸成を柱に、hhc 実現に向けて社員一人
医療や介護の専門学校で
ひとりが
「知識創造理論」
を行動に取り込めるよう、様々な活動
基礎知識を学びながら、
を行っています。その一つとして、理念を実現に導く
「 hhc Driven
受講者同士で介護体験を
Innovation 活動」を組織やプロジェクト単位で推進し、患者様に
する
「介 護 疑 似 体 験 研
対して大きな貢献をした活動を表彰する社内制度を整備してい
修」
も取り入れました。
ます。また、患者様の喜怒哀楽を感じ取り、患者様貢献につなが
る日常業務を実践できる人材の育成にも注力しています。
介護疑似体験研修の様子
6
エーザイ株式会社
ヒューマン・ヘルスケア
(hhc )企業 エー ザイ
「 hhc イニシアティブ」
による知識共有
トには、受賞者とともに各国グループ企業のトップマネジメント
世界中で展開されている600 近くのhhc 活動や社内公募論文
が世界中から参加し、お互いのベスト・プラクティスを発表し合
などから、特に優秀なイノベーション活動を認知・表彰するた
うとともに、その過程で創造された
「知」
を学び、共有します。こ
「 hhcイニシアティブ」
を開催しています。このイベン
め、年 1 回、
れによって、グローバルなhhc 実現をめざしています。
受 賞 事 例
1
インドネシアでの
アルツハイマー病患者様支援プログラム
受賞事例
2
てんかん患者様の真のニーズを反映した創薬活動
インドネシアでは、アルツハイマー病に関する認知が低いため
受診率も低く、受診された方の服薬コンプライアンス
(処方通り
筑波研究所の研究員らは、病棟でのボランティア活動や患者
に服薬すること)
もよい状態ではありませんでした。
様団体の方々との交流を通して、医療現場における患者様とそ
その解決策の一つとして、患者様支援プログラムを現地で立
のご家族の悩みや不安を知り、製品創出に生かしていくhhc 活
ち上げました。このプログラムでは、医療関係者と社員からなる
動を行っています。その中で、
「薬の副作用で眠くなり、仕事に
チームが患者様を訪問し医師による服薬のアドバイスや在宅介
集中できず、職場で怠けていると思われてしまう」
というてんか
護の支援を行うほか、患者様と介護者の方々との会合の開催、
ん患者様の社会復帰への不安に対する切実な声をうかがいま
ニュースレターの発行などによる情報提供を行い、疾患認知度
した。これを知った研究員らは、けいれん発作を抑えると同時
と服薬コンプライアンスを向上させました。このような活動を通
に眠気などの中枢抑制作用の少ない治療薬の必要性を強く認
して、社員は患者様や介護者の方々の気持ちを深く理解でき、課
識しました。これらの経験により、研究員らは薬剤の中枢抑制
題解決に向けて一歩前進することができました。
作用の評価に重点を置いた新しい探索研究の手法を構築しま
した。そしてその手法を用いて、発作への効果が充分にあり、
中枢抑制作用の少ない新薬候補化合物の早期の絞り込みに成
功しました。
受 賞事例
3
安全性情報提供を通じた、
副作用の軽減や予防のための取り組み
インドネシアでのアルツハイマー病患者様支援プログラム
(患者様・介護者の方々との集会の様子)
情報提供による副作用の軽減や予防策を具現化する活動は
とても重要です。ぜんそくなどの治療薬であるテオフィリン徐放
製剤は発熱している小児の服用において小児けいれんの副作
用のリスクがあります。そこで、学会と連携し、医薬情報担当者
( MR:Medical Representative )
を通じた継続的な情報提供を
徹底した結果、それまで年間十数件あった小児けいれんの副作
用報告が 2008 ∼ 2009 年度には0 件となりました。
また、血液に対する抗凝固剤「ワーファリン」
についても、幅広
い患者様に使われていることから、副作用リスクについてより詳
細に注意を促す必要がありました。そのため、専門家や学会を
テオフィリン徐放製剤の使用に
関する保護者向けパンフレット
含めた社内外の協力を得て、添付文書に
「用法・用量に関連する
使用上の注意」
を新設し、MRを通じて10 万件を超える医療機
関に情報提供を行いました。
環境・社会報告書 2011
7
特集
世界中の患 者 様に
必要な医薬品をお届けするために
世界各国では様々な理由で、必要としている人々に、必要な医薬品が届かないという憂慮すべき現状があります。
医薬品アクセスの向上のためには、製薬企業のみならず、国際機関や各国政府などの各方面との連携による取り組
みが求められています。エーザイは、世界中のアンメット・メディカル・ニーズ充足の実現に向け、hhc 理念に基づい
た取り組みを世界各国で展開しています。
新興国における医薬品アクセス向上に向けて
エーザイグループは、2016 年までに新興国を含む世界医薬品市場の
上位 20カ国すべての国で、自ら事業展開を行うことをめざしています。
さらにリンパ系フィラリア症治療薬無償提供プログラム
(下記参照)
など
を通じ、エーザイの医薬品が届く国は今後 5 年間で大幅に増加していき
大グローバリゼーション時代の患者様貢献の拡大
エーザイ製品の提供を受ける患者様数 エーザイ製品が入手可能な国の数
(5 年間の累積患者様数)
( 百万人 )
500+
ます。
2
10
特に多くの新興国では、社会インフラや医療システム上の問題、貧困
2 倍以上
等が理由で、品質が確保された医薬品が必要としている患者様に届きに
くい状況があります。さらに、先進国とは異なる疾患構造や社会、経済、
医療システムの違いがあるため、持続可能な医薬品アクセスの向上には
2
10
6
3
200+
新たな仕組みが求められています。これらの国々における医薬品アクセ
新興国においてもその国々のニーズに合った高品質な医薬品へのアク
セス向上に向け、持続可能な取り組みを続けています。
1
WHOに対し、熱帯病治療薬を
無償提供
中南米
13
アフリカ
37
欧州
40
アジア・
オセアニア
66
22
2006 ∼ 2010 年度
(社内推計)
2011 ∼ 2015 年度
2006 ∼ 2010 年度
2010 ∼ 2015 年度
注:すべての進出形態(子会社、支店、代理店ビジネス、
レップオフィス)
およびDEC(リンパ系フィラリア症治
療薬)無償提供プログラムの対象国を含む
※医薬品アクセスに関するポリシーならびに具体的取り組みの詳細については、
コーポ レート・ ウェブ サ イト の
「医 薬 品 ア ク セ ス
( http://www.eisai.co.jp/
company/atm/index.html )」をご覧ください。
CASE
12
23
スの改善と健康への貢献は、製薬企業の重要な使命です。エーザイグ
ループでは、hhc 理念に基づき医薬品アクセスに関するポリシーを定め、
114 北米
中東
エーザイグループは2010 年11月18日、世界保健機関( WHO )
と
リンパ系フィラリア症治療薬の無償提供に関する共同声明文に調印
しました。リンパ系フィラリア症は、蚊を媒介して感染するヒトの寄
生虫症で、足が象のように大きく腫れる象皮病などの重篤な身体障
がいを発症し、現在も世界 81カ国で1 億2,000 万人が感染している
と推定されています。
ネグレクテッド・ディジーズ
(顧みられない病気)
とも呼ばれる熱
帯地方で問題となっている疾患の制圧に向けて、日本の製薬企業が
WHOとの産官パートナーシップを組み、薬剤の無償提供を行うの
は今回が初めてです。エーザイグループは、治療薬ジエチルカルバマ
ジン
( DEC )
錠を2012 ∼ 2017 年の6 年間にわたり合計約22 億錠製
造し、WHOに無償提供を開始すべく、準備を進めています。
リンパ系フィラリア症治療薬( DEC )
の無償提供に関するWHOとの調印式
8
エーザイ株式会社
世界中どこの国の患者様にも
必要な医薬品をお届けするために
新興国に適した製品ポートフォリオと
「アフォーダブル・プライス」
への挑戦
エーザイグループは、新興国においても、革新的な新薬の早期導入に
努めるともに、各国・地域に適した製品ポートフォリオの充実をはかっ
ています。たとえば中国では、神経とがん領域に加え、糖尿病、肝炎な
どを対象とした製品を充実させています。さらにエーザイグループでは、
患者様が購入可能な価格で製品を提供する
「アフォーダブル・プライス」
の本格的な導入を進めています。
「アフォーダブル・プライス」
の実現に
は、グローバルな製品供給体制の構築による製造原価の効率化や流通
ルートの最適化も不可欠です。インドのバイザッグに建設した、生産・プ
ロセス研究拠点「エーザイ・ナレッジセンター・インド」
は、特に重要な機
能を担うことが期待されています。
CASE
ネグレクテッド・ディジーズは、世界的に深刻な公衆衛生問題の
一つです。エーザイグループは、これらを対象とする医薬品開発に向
け、国際非営利団体や大学との協力を推進し、積極的に取り組んで
います。たとえばシャーガス病は、ラテンアメリカおよびカリブ諸国
で約1 億人が感染の危険にさらされています。また、シャーガス病の
病原体に対する抗真菌剤の開発について、2009 年 9 月に国際的な
独 立 非 営 利 財 団 であるDNDi( Drugs for Neglected Disease
と提携およびライセンス契約を締結しました。2011 年に
initiative )
はボリビアでフェーズⅡ試験が開始されました。
熱帯病治療薬の開発状況
適応症
高品質な医薬品の安定的な供給による患者様への貢献を世界中で実
現させるため、エーザイグループではWHOや世界主要国のGMP( Good
Manufacturing Practice:医薬品の製造管理および品質管理に関する
基準)
に基づいた独自のグローバル品質基準を確立して、新興国におい
てもその基準を適用し、担当者の教育訓練が実施されています。
また多くの新興国では、偽造医薬品の問題が特に深刻です。エーザイ
グループではホログラム技術を利用した偽造防止ラベルやカラーシフト
などを包装に取り入れるほか、偽造医薬品や不法な製品流通、異物混
入などの製品に関わる違法行為に対応するグローバル・プロダクト・セ
キュリティ体制を構築しています。
さらに、新興国においても各販売拠点で安全管理責任者を任命し、グ
ローバル基準で安全性情報収集を実施するとともに、製品ごと、地域ご
熱帯病の治療薬開発に向けた
取り組み
2
グローバルスタンダードの品質と安全性の確保
開発ステージ
との安全管理責任者より構成される、グローバルな委員会のリーダー
シップのもと、製品の安全で適正な使用の徹底に努めています。
CASE
4
インドでの認知症治療薬アクセス
改善への取り組み
インドでは認知症が病気として充分に認知されていないため、啓
発活動と早期診断・早期治療の場を提供する必要がありました。
エーザイグループはインド全土の60 におよぶメモリークリニックを
外来診療科として病院内に設立支援しました。クリニックでは、患者
様や介護者に対して様々な専門分野から細やかな診断や処置、アド
バイスを提供するほか、60 以上の講習会が開催され、2009 年 12月
までに1,700 人以上の認知症の患者様や介護者が参加されました。
シャーガス病
フェーズⅡ
(ボリビア)
さらに2011 年は、インドを拠点として50 以上の医療機関を有する世
マラリア脳症
前臨床
界第 3 位のヘルスケア企業であるApollo Hospitalおよびインドの高
ワクチンアジュバント
(免疫強化剤)
マラリア
前臨床
前臨床
齢者支援 NGO 、HelpAge Indiaとの官民パートナーシップ
( public
により、アルツハイマー病とうつ病に関
private partnership:PPP )
するアドヒアランス
(服薬遵守)
改善プログラムの開発をめざします。
CASE
3
新興国の医療における
キャパシティビルディング
新興国における医薬品アクセスの向上には、医薬品の提供のみな
らず、製薬企業が培った知識や技術の現地での浸透も重要です。
エーザイグループでは、新興国の医療における根本的な基盤強化
(キャパシティビルディング)
を目的に、製薬業界団体を通じて各国か
インドにおけるメモリークリニック数および
認知症検診受診者数
(件)
(人)
100
15,000
80
12,000
60
9,000
40
6,000
20
3,000
ら研修者の受け入れを行っています。たとえば WHOのTDR(熱帯
医学特別研究訓練)
プログラムへの協賛支援を2010 年に開始し、
2010 年はナイジェリアより、2011 年にはコロンビアより研修生を迎
え、医薬品の開発プロセスや臨床研究の国際基準などに関する研修
を、主に米国で12カ月にわたって実施しています。また、各国の偽
0
造医薬品対策の支援として、日本製薬工業協会を通し、品質管理研
修生の受け入れなども実施しています。
2005
2006
メモリークリニック数
*
2007
2008
2009
0
2010*(年度)
検診受診者数
2010 年度は2 月末までの実績
環境・社会報告書 2011
9
研究開発
くすりを通して「 患者様 」
と向き合う
アンメット・メディカル・ニーズを充 足 する
新 薬 の 早 期 創 出をめざして
エーザイグループでは、アンメット・メディカル・ニーズが数多く存在する
「脳・神経領域」
「がん領域」
「血管・免疫反応領域」
を3 大重点領域と捉え、研究開発を行っています。
2010 年度には、画期的新薬をより早期に創出するため、新しい研究開発の組織体制として、
「エーザ
イプロダクトクリエーションシステムズ
( EPCS )」
を再構築しました。EPCSでは、疾患領域ごとに構成さ
れた6 つのプロダクト・クリエーション・ユニット
( PCU )
が新薬の発明・発見から承認取得までの責任
を担い、コア・ファンクション・ユニット
( CFU )
と呼ばれるユニットが新薬創出に必要な重要創薬技術を
PCUに提供し、開発期間の短縮と生産性・効率性の向上をめざします。また、2011 年度からは、自社
創製の新規抗がん剤「ハラヴェン」
をはじめとして、がん領域の豊富なパイプラインと技術力を生かし、乳
がん、卵巣がんなどのウィメンズ・オンコロジー(女性特有のがん)分野における製品群の充実化に取り
組むとともに、遺伝子レベルでの情報をもとにした個別化医療の推進にも着手していきます。
くす り が 生 ま れ る ま で
新薬は、厳しく長い道のりの末に誕生します。新薬の候補物質の探索・発見をする
基礎研究から始まり、臨床検査、承認申請、審査など、様々なプロセスを経て安全
で有効な新薬が患者様に届けられます。
基礎研究(2 ∼ 3 年)
非臨床試験(3 ∼ 5 年)
臨床試験/治験(3 ∼ 7 年)
新薬になる可能性のある候補物質の探
新薬候補化合物の有効性と安全性を
臨床試験では、ヒトを対象に非臨床試
索と創出を行います。植物や微生物な
培養細胞や動物を用いて研究します。
験を通過した候補化合物の有効性と安
どの天然物質から抽出するほか、バイ
また、候補化合物がどのように吸収・
全性を確認します。これは治験とも言
オテクノロジーを用いるなど、様々な化
分布・代謝・排泄されるかの動態試
われます。
学的手法を駆使します。
験や品質、安全性に関する試験も行い
ます。
治験は 3 つのステージがあります。
第Ⅰ相試験(フェーズⅠ)通常、少数の健康な成人または患者様を対象として、治験薬の安全性や、治験
薬がどのように体内に吸収されて排泄されるかを調べます。
第Ⅱ相試験(フェーズⅡ)比較的少数の患者様に対して、第Ⅰ相試験で安全性が確認された用量の範囲
で薬剤が使用され、薬の安全性、効果、適切な投与量などを調べます。
第Ⅲ相試験(フェーズⅢ)多数の患者様に対して薬剤を使用し、第Ⅱ相試験よりも詳細な情報を集め、実
際の治療に近い形での薬の有効性と安全性を確認します。
(参考:日本製薬工業協会ウェブサイトなど)
10
エーザイ株式会社
くすりを通して
「 患者様 」
と向き合う
思 いをカタチにする
ー活動報告ー
自社創製の新規抗がん剤「ハラヴェン」
をはじめ、
がん領域製品が続々承認取得
や卵巣がんでのフェーズ III 試験が進行中の抗体製剤
「 E7080」
2010 年11月、自社で創製・開発した新規抗がん剤「ハラヴェ
の開発を積極的に進めるとともに、遺伝子情
「 MORAb-003」
さらに、甲状腺がんなどでの効果が期待される分子標的薬
ン」注射剤が、転移性乳がんの適応で米国食品医薬品局( FDA )
報を活用した個別化医療につながる薬剤の創出をめざした研
から承認されました。
も行っています。
究開発基盤の拡充( P13 参照)
転移性乳がんの多くは、複数の治療を受けた後でも、さらに
新規抗がん剤「ハラヴェン注射剤」
進行すると報告されています。
「ハラヴェン」
は、前治療歴のある
転移性乳がん患者様において、単剤で統計学的に有意に全生存
期間を延長した世界初のがん化学療法剤で、現在、シンガポー
、日本、スイスなど31カ国で承認を取得しており、
ル、欧州( EU )
今後も世界各国での承認取得をめざします。また、より治療歴
の少ない乳がんや、非小細胞肺がん、肉腫などの固形がんでの
効果についても臨床試験を実施中です。
承認申請と審査(1 ∼ 2 年)
(米国)
承認と販売
(日本)
製造販売後調査・試験
治験で有効性や安全性、品質を確認し
審査後に製造販売の承認を得ます。薬
薬が市場に出た後、実際に医療機関で
たのち、各国の規制当局に承認申請を
価は国によって様々ですが、政府が価
多くの患者様に使われて初めて発見で
行い、審査を受けます。日本では厚生
格を定める国が多数あります。日本で
きる副作用情報や、適切な使用に関す
労働省に申請し、学識経験者などで構
は、医療保険の対象となる医療用医薬
る情報を継続的に収集します。これら
成される薬事・食品衛生審議会などの
品の品目と薬価は、薬価基準制度に基
の調査が改良や新薬開発のヒントにな
審査を受けます。
づいて厚生労働省により決定されます。
ることもあります。
環境・社会報告書 2011
11
アンメット・メディカル・ニーズを充 足する新 薬の早 期 創出をめざして
思 いをカタチにする
ー活動報告ー
てんかん治療剤「ペランパネル」
を
日本・米国・欧州で開発
日本のドラッグラグ解消に向けた
製品開発の取り組み
てんかん治療剤「ペランパネル」
に関する3 つの第Ⅲ相臨床試
厚生労働省「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討
験の結果に基づき、欧州において新薬承認申請を行いました。
会議」
で要望のあった製品を中心に、日本のドラッグラグ解消に
また本剤は、日本、米国でも開発中です。
向けた薬剤開発に取り組んでいます。2011 年 2 月、日本におい
てんかんは、様々な精神機能・身体機能に影響を及ぼす発作
て経口抗凝固剤「ワーファリン錠」
の小児における用法・用量の
が生じる疾患で、患者様数は米国 300 万人、欧州 240 万人、全
追加承認を取得しました。本剤は、成人の血栓塞栓症の治療お
世界で4,000 ∼ 5,000 万人におよびます。
よび予防に使われていますが、これまで国内で承認されている
本剤は、自社創製した世界初の高選択的、非競合AMPA 型グ
治療薬では、充分な治療・予防効果が得られない小児の血栓塞
ルタミン酸受容体拮抗剤で、てんかん患者様の部分発作の併用
栓症も多く存在し、新たな小児用治療薬が求められていました。
療法を適応して開発されました。本剤が承認されれば、ファース
このほか、頻脈性不整脈治療剤「タンボコール錠」、カルシウム
ト・イン・クラス
(画期的医薬品)
の治療薬となり、てんかん患者
拮抗性不整脈治療剤「ワソラン錠」
および
「ワソラン静注」
の小児
様とそのご家族の多様なニーズの充足とQOL 向上に大きく貢献
における追加適応についても承認を取得しました。
できるものと考えています。
主力品の価値向上に関する取り組み
主力品のアルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト」
につい
て、既存の5mg 、10mgの錠剤に加え、1日1 回投与の高用量剤
が 2010 年 7 月に米国で承認を取得しまし
「アリセプト錠 23mg 」
一般用医薬品の新発売
「トラベルミン 1」発売
1日1 回1 錠の服用で効果を発揮する、
速崩タイプの乗物酔い薬「トラベルミン
た。本剤は、中等度・高度のアルツハイマー型認知症患者様に新
1」を新発売しました。さわやかなレモン
たな治療選択肢を提供する薬剤です。
フレーバーのチュアブル錠で、場所を選ばずに
また、2010 年 12 月には、日本においてプロトンポンプ阻害剤
水なしで服用できます。
「パリエット」
について、従来のプロトンポンプ阻害剤の治療で効
果不充分な逆流性食道炎に関する新しい用法・用量の追加承認
を取得しました。
逆流性食道炎は、胃酸の逆流によって食道粘膜に障害が生
じ、胸やけなどの症状が頻繁に続く疾患です。症状が改善しても
再発しやすく、患者様によっては、これまでに承認されたプロト
ンポンプ阻害剤の用法・用量では治療効果が充分でない場合が
あります。エーザイ株式会社は、難治性の逆流性食道炎患者様
の治療に対する選択肢を広げるため、新用法・用量での追加承
認申請を行いました。
12
エーザイ株式会社
メントール配合の塗るマスク
「クリスタルヴェールクール」
を発売
イオンの力で花粉やハウスダストなどの鼻への侵
入を防ぐ、塗るマスクの新タイプを発売。メントール
を配合したクールタイプで、スーッとした清涼感とメ
ントールの香りが特徴です。
くすりを通して
「 患者様 」
と向き合う
Column
1
個別化医療の推進に向け、がん領域の研究開発基盤を強化
エーザイグループは、がん領域を最重点領域と位置づけ、低分
近年、抗がん剤開発や再生医療における重要なテーマとなってい
子抗がん剤、抗体医薬、ワクチン療法や支持療法など可能性のあ
ます。ヒトのがんにおける近年の遺伝子レベルでの理解の進展は
る治療法の開発を加速させています。
目覚しく、H3 Biomedicine 社は同社の最新の知見を活用し、個
2010 年 12 月、エーザイグループは、米国マサチューセッツ州
別化医療につながるファースト・イン・クラスの化合物の新規が
ケンブリッジに次世代の研究開発機能を持つ新たな子会社「 H3
ん治療薬の創出に挑戦します。
Biomedicine Inc. 」を設立しました。がん患者様のエピジェネ
さらに米国子会社エーザイ・インクは、フォーマ・セラピュー
ティックな遺伝子的特徴に基づいた個別化医療を可能にする創
ティック社と広範な戦略的創薬研究提携契約を締結しました。難
薬標的の同定と安全性と有効性の高い新規化合物を創出する、と
易度の高い新規化合物の同定を可能にする、フォーマ・セラピュー
いう研究方針に基づき、ブレークスルーとなるがん治療薬の創出
ティック社の多様性志向型合成化合物ライブラリーと細胞系スク
をめざしています。エピジェネティックとは、DNAの塩基配列の
リーニング・プラットフォームを包括的に活用し、アンメット・メ
変化を伴わず、遺伝子の発現を制御する後付けの修飾のことで、
ディカル・ニーズを充足する治療薬の開発・追求を加速させます。
Column
2
国際的ルールとhhc 理念に基づく研究開発活動
公正で正確な研究活動は、エーザイグループの企業活動の基本です。医薬品の研究開発には、各国の様々な規制のほか、GLP( Good
やGCP( Good Clinical Practice:医薬品の臨床試験の実施
Laboratory Practice:医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準)
の基準)
と呼ばれる国際基準があり、エーザイグループでは関連するすべての規制や基準を遵守し、hhc 理念に基づく高い倫理観を持って
医薬品の研究開発を行っています。
患者様の立場に立った臨床試験
動物福祉に配慮した動物実験
臨床試験では、参加される患者様の人権や安全の確保、福祉に対
新薬開発において、安全性および有効性を立証するためには、動
する配慮が何よりも優先されなければなりません。
物実験は必要不可欠だと考えます。
エーザイグループでは、実施するすべての臨床試験でGCPや薬事
エーザイグループは、動物実験に関するルール・規制を遵守した研
法の規制の遵守とhhc 理念に基づく高い倫理観を持って研究活動を
究開発を推進しています。すべての実験は厚生労働省の
「動物実験等
行うことを行動指針として定めています。また、臨床試験の実施には、
に関する基本指針」
に準拠し、外部専門家を含む動物実験委員会によ
あらかじめ臨床試験の倫理性や科学的な妥当性を委員会で検討する
り監督・管理され、動物生命の尊厳や動物実験の3R*原則に充分な
ことをグローバルな標準作業手順書に定め、倫理性の確保に努めて
配慮をしています。
います。
2010 年度も動物実験の実施状況を自己点検・評価し、適切な実施
さらに一定の条件を満たす臨床試験については、適切なタイミング
を確認しました。これらの動物実験への取り組みは、厚生労働省の基
で正確な情報開示を行い、医療関係者や患者様が情報にアクセスで
本指針に基づき動物実験を適正に実施していると評価され、財団法
きるよう、臨床試験の透明性を高めています。
人ヒューマンサイエンス振興財団の動物実験実施施設認証センターよ
り認証を取得しています。今後とも引き続き3Rの原則を踏まえた適正
な動物実験の実施に努めていきます。
*
、動物を用いない実験の可能性の追求
3R:使用する動物数の削減( Reduction )
( Replacement )
、動物の苦痛軽減( Refinement )
環境・社会報告書 2011
13
製品供給
患者様とともに「くすり」
と向き合う
常に患者様視点に立った、高品質な医薬品の安定供給を
「我々の造る一錠、一カプセル、一管が患者様の命とつながっている」
。
これは私たちが掲げるエーザイグループ品質方針です。世界各地で医薬品を待つ人がいる限り、私た
ちには高品質な医薬品を安定供給し続ける使命と責任があります。その目的を達成するためエーザイグ
ループは、製剤技術研究から生産、流通までのすべてのプロセスにおいて万全の体制で品質確保に努め
ています。
2009 年度には、ハットフィールド工場(英国)
とバイザッグ工場(インド)
を竣工しました。2010 年5月に
は、ノースカロライナ工場(米国)
内に抗がん剤の注射剤生産棟を開設し、グローバルな生産体制をさらに
強化しました。
また、より患者様視点による生産体制を構築するべく、従来のサプライ
(供給)型からデマンド
(需要)型
へと大きく転換、
「エーザイ デマンド チェーン システムズ
( EDCS )」
へ生産体制を組織改編しました。
「すべては患者様とそのご家族、そして生活者のために」
グローバルな独自のデマンド・チェーン展開に
よって、これからも高品質な医薬品を安定供給していきます。
薬 が 届 くま で
安全で高品質な薬が患者様のもとに届くまでには、いくつもの生産工程と品質・安
全性チェックを経なければなりません。ここでは錠剤やカプセル剤の製造工程をご
紹介します。
原料入庫・計量
造粒・整粒
厳密な計量で確かな効き目を
クリーンな自動製造ラインで薬の姿に
長い研究開発を経て造られた薬は、工場で
厳しく品質をチェックしながら充填・打錠を
効き目を正しく発揮させるため、必要な量が
に成型。さらに必要に応じて薬の苦味などを
せる添加物などを混合し、成分が均一な顆
グします。またカプセル剤は、顆粒を直接カ
行います。錠剤は顆粒に圧力をかけて錠剤
製品化されます。薬の主成分となる原薬は、
覆うため、砂糖の入った液などでコーティン
正確に計量されます。その後、固めて安定さ
粒にします。
14
充填・打錠
エーザイ株式会社
製造工程では人為的ミスを防ぐた
め、無人搬送機で材料を運んでい
ます。
プセルに充填します。
カプセル剤の充填機。カプセルごと
に正確な分量を充填し、ロックして
いきます。
患者様とともに
「くすり」
と向き合う
思 いをカタチにする
ー活動報告ー
ノースカロライナに抗がん剤
注射剤生産棟を開設
また当施設は無菌生産ラインのほかに、治験薬製造ライン、製
2010 年 5 月、ノースカロライナ工場(米国)
内において抗がん
活性化合物の取り扱いも可能です。今回の開設・稼働を機に、グ
剤の注射剤生産棟を開設しました。これは、エーザイグループと
ローバルな研究開発・生産・物流・販売にいたるシームレスな
して初めての抗がん剤を含む注射剤の製剤化研究と製剤生産を
バリュー・チェーンはより強固なものになりました。
剤研究室などを有し、最先端の封じ込め遠隔技術によって超高
担うグローバルな生産拠点となります。
乳がんの適応で日本、米国、欧州、シンガポールなどで承認を
取得した新規抗がん剤「ハラヴェン」注射剤は、当施設で製造を
行います。
顧客歓喜をめざすグローバルな
安定供給体制 EDCS
2010 年6 月、生産体制のデマンド型への転換により、
「エー
( EDCS )」
と名付けられた
ザイ デマンド チェーン システムズ
新生産体制に本部組織を移行しました。
印刷・包装
流 通
PTP 包装
(錠剤やカプセル剤に一般
的に使用されている、押し
て取り出す包装のこと)
そして患者様へ
製品となった薬は、いくつもの品
質検査を経て出荷され、患者様の
手元に届きます。エーザイグルー
プでは、高品質な医薬品を安定供
外装
給するため、グローバルな生産物
流体制を整えています。
患者様にとって扱いやすい薬へ
錠剤やカプセル剤には、薬剤名などを示す数
字や記号を印刷されています。さらに外観検
査工程で、一つひとつの形や大きさに異常が
ないかをチェックします。その後、薬 剤は
PTP 包装などによる包装と検査を経て、添付
文書とともに箱詰めされます。
PTP 包装から箱詰めまで、一つの
ラインで製造しています。
環境・社会報告書 2011
15
常に患者様視点に立った、高 品 質な医 薬 品の安 定 供 給を
思 いをカタチにする
ー活動報告ー
EDCSは、グローバルな本社機能を日本に置き、ロジスティク
(デマンドチェーン)
ボードで行われ、生産マネジメント体制を完
ス戦略機能をノースカロライナ工場(米国)
、プロキュアメント
(購
全にグローバル化しました。
買)戦略機能をバイザッグ工場(インド)
、テクノロジー戦略機能
これにより、高品質な医薬品の安定供給とともに、新興国に
をハットフィールド工場(英国)
にそれぞれ設置しました。重要
おいて患者様が購入可能な価格で製品を提供するアフォーダブ
事項の意思決定は、各戦略機能の責任者などで構成されるDC
ル・プライシングの実現も加速しました。
グローバル生産マネジメント体制とDC(デマンドチェーン)拠点
本部機能
エーザイデマンドチェーン本部(日本)
川島工場(岐阜県)
美里工場(埼玉県)
鹿島事業所( 城県)
サンノーバ株式会社(群馬県)
蘇州工場(中国)
台南工場(台湾)
ボゴール工場(インドネシア)
テクノロジー戦略機能
ハットフィールド工場(英国)
プロキュアメント戦略機能
バイザッグ工場(インド)
患者様を対象とした工場見学会を実施
16
ロジスティクス戦略機能
ノースカロライナ工場(米国)
川島工場では2010 年 8 月に4 ∼ 13 歳のお子様とそのご家族
国内の生産工場では、患者様とそのご家族の方々をお招きし、
を対象として、9 組 27 人をお招きし、工場見学会を開催しまし
工場見学会を実施しています。社員一人ひとりが、実際に患者
た。工場での包装工程や併設されているくすり博物館の見学に
様と交流を持つことで、病気や治療のこと、願いや思いなどの真
加えて、バーベキューやスイカ割り大会などを楽しんでいただ
実を理解する貴重な機会となっています。
きました。
見学会では、製造工程の見学に加え、化学実験の体験会など
美里工場においても、2010 年8月に患者家族会の方々をご招
のプログラムを用意することで、参加した皆様に楽しんでいただ
待し、見学会を開催しました。製造工程の見学に加え、
「薬屋さ
けるよう工夫しています。また、患者様が製薬企業に期待するこ
んのワクワク実験教室」
などのプログラムを設けるとともに、薬
とや各工場のhhc 活動をテーマとした意見交換会などの機会も
に関する質問に答える座談会や患者会の皆様から意見を伺う時
設けています。
間を設けました。
エーザイ株式会社
患者様とともに
「くすり」
と向き合う
このような患者様と直に接する機会は、社員にとって非常に
貴重な体験となります。製薬企業の生産活動において、患者様
と日常的に接する機会は少なく、1日を通して一緒に過ごすこと
で、新たな気づきや患者様の思いを知る貴重な契機となります。
さらに、医薬品の創製に従事する者としての使命感と責任感の
醸成にもつながります。今後も、患者様の暗黙知である潜在的
ニーズを理解し、生産活動に生かす取り組みとして、継続的に続
美里工場での患者様見学会
けていきます。
Column
1
偽造医薬品対策への取り組み
偽造医薬品とは、意図的または詐欺目的で医薬品名や製造・
さらに2007 年より、偽造医薬品対策としてホログラム技術を利
販売元が偽装表示されている医薬品のことです。
用した偽造防止ラベル、カラーシフトなどを採用した対策を行い、
偽造方法や内容は、包装が偽造である場合や有効成分が含ま
日本からアジア、中東諸国などへ輸出する医薬品にホログラムを採
れていないもの、あるいは量が適正ではないものなどが存在し、
用しています。また海外生産拠点でも、ノースカロライナ工場をは
見分けが困難であるのが現状です。
じめ、蘇州工場、台南工場、ボゴール工場などで同様の対応を推
日本国内での広がりは一般的ではないものの、インターネット
進しています。
での医薬品販売の普及などもあり、グローバルな問題として懸念
が広がっています。
エーザイグループでは、偽造医薬品や不法な製品流通、異物混
入などの違法行為にグローバルに対応するため、グローバル・プ
ロダクト・セキュリティ体制を構築しています。ガイドラインの作
ホログラムを採用した製品パッケージ
成をはじめ、製造から販売における違法行為を防止する環境づく
りや違法行為のデータベース化、およびデータ分析、行政との関
係構築を行っています。
Column
2
パンデミックや大規模災害への備え
パンデミック
(新型インフルエンザなど感染症の世界的流行)
や
を整備し、有事の際の製品供給を含む事業継続計画( BCP:
大規模災害などの非常事態への対策として、エーザイグループで
を策定しました。実際に日本で新型イ
Business Continuity Plan )
は2006 年から日米欧アジアの各地での在庫量を増加させ、常に
ンフルエンザ感染が認められた2010 年度は、すべての生産拠点で
2 ∼ 3カ月分を確保して非常事態発生時にも製品を安定供給でき
出社前検温と製造エリア入室時検温を実施したほか、工場内への
るように備えています。
入門規制を強化しました。
また新型インフルエンザへの対応では、グローバルな基本方針
を作成しました。社員の安全確保や感染拡大の防止に関する規定
環境・社会報告書 2011
17
情報提供
情報を通して「 患 者 様 」
と向き合う
hhc に基づく顧客歓喜をめざした情報の提供・収集を実践
hhc の実 践には、患 者 様の潜 在 的な欲 求を知り、それに応えることで得られる顧 客 歓 喜( CJ:
Customer Joy )を実現することが重要だとエーザイは考えます。またそのためには、製品だけでなく、
情報やサービス、ネットワークのすべてが総合的な価値を発揮しなければなりません。
エーザイでは、顧客歓喜を実現するための専門組織「 CJ 部」
を設置。情報を収集する機能と製品改良
を行う技術部門、情報提供する部門を一つの組織に集約しました。
情報提供活動では、医薬情報担当者( MR:Medical
Representative )、お客様ホットライン、ウェブ
サイトを中心に、医薬品の有効性と安全性に関する情報を提供。さらに、医師会や行政と連携して疾患啓
発を目的としたフォーラムや医師を対象にした研究会の開催など、様々な関連情報の提供も行っていま
す。また情報収集活動では、お客様のご質問やご指摘に迅速に対応するほか、患者様や生活者の方々と
接して一緒に考え話し合う 共同化 を通じ、そこで得られた潜在的な欲求を品質改善や製品改良にダイ
レクトに生かしています。
「 3 つ の チ ャ ネ ル を 通 じ て 情 報 提 供・収 集 を 行 っ て い ま す 」
医薬品が安全かつ有効に使用されるためには、正確な情報提供が不可欠です。エーザイではMRをはじめ、お客様ホットライン、
ウェブサイトの3 チャネルを中心に適正な投与量や副作用、効能、様々な関連情報を提供するとともに情報収集も行っています。
医薬情報担当者
( MR:Medical Representative )
MRは、主に病院や薬局に従事する医療関係者に医薬情報を提供。医薬品の有効性情報や副作用に関する安全
性情報の両面から情報提供・収集を行っています。MRは、自社製品の解説のみならず、疾患や薬学、医療に関
する幅広い知識が求められます。そのため、日本においては製薬産業共通のMR認定試験制度があります。また、
MRを対象とした研修も継続的に行っています。
医療関係者に対する研究会の運営支援
病気になっても安心して暮らせる
「まちづくり」
医療関係者は、病気や治療についての研究会を開催しています。医療の世
エーザイでは、hhc 理念に基づき、患者様が病気になっても安心して暮ら
界は日々進歩しており、少しでも多くのアンメット・メディカル・ニーズを充
せる
「まちづくり」
をめざした活動を行っています。専任部署であるコミュ
足するためには、こうした医療関係者間での情報交換の機会は大変重要
ニティ・ネットワーク支援室とともに全国のMRが中心となって、患者様を
です。エーザイのMRは、医療関係者の方々への支援の一環として、こうし
た研究会の運営サポートを行っています。
18
エーザイ株式会社
支える地域の連携支援などに取り組んでいます。
(詳細はP20 ∼ 21 をご覧ください)
情報を通して
「 患者様 」
と向き合う
思い を カタチに する
ー活動報告ー
病気と医療について考えるイベントを支援
疾患の早期発見・治療のための啓発活動や患者様を取り
「お客様ホットライン」
の対応状況
から高品質な製品と情報提供へ∼
∼「 Voice 」
巻く環境の整備も、エーザイグループの大切な役割だと考えて
エーザイ株式会社は、お客様のご質問やご指摘に素早く対応
います。
「お客様ホットライン」
を業界に先駆けて
するために、1990 年に
エーザイ株式会社は、認知症の啓発活動の一環として、認知
設置し、2011 年で発足 21 年目を迎えました。
症フォーラム
(主催:社会福祉法人 NHK 厚生文化事業団、株式
365日お問い合わせに対応し、フリーダイヤル化するなど、お
会社 NHKエンタープライズ、後援:厚生労働省ほか、協賛:
電話していただきやすい環境整備を推進した結果、お問い合わ
エーザイ株式会社、ファイザー株式会社)
に継続的に協賛してい
せ件数は累計 106 万件を超えています。
ます。2010 年 6 月に大阪で実施された認知症フォーラムでは、
(約 9 万 8,700 件)
の内容は、医療
2010 年度のお問い合わせ
「早期受診・早期発見の時代」
をテーマに、認知症の早期発見に
用医薬品関連が 68.5% 、一般用医薬品関連 30.0% 、そのほか
関する最新医学情報を紹介し、患者様のご家族や治療・介護に
が1.5%でした。医療用医薬品のお問い合わせ元では、薬局・薬
関わる方々と一緒に考えるよい機会となりました。
店・保険薬局・病院薬剤師の先生方からが 71.0% 、一般生活
また血栓塞栓症の予防と治療に関する啓発を目的に、一般社
者・患者様からのお問い合わせが 14.7%でした。また、一般用
団法人日本血栓止血学会との共催で
「市民公開講座」
を2005 年
医薬品のお問い合わせ元は、一般生活者・患者様が 77.3%で、
から継続的に日本全国で開催しています。
20.6%が薬局・薬店・保険薬局からのお問い合わせでした。
今後もお客様ホットラインを通じ、医薬品の有効性・安全性
情報をわかりやすく丁寧にお伝えするとともに、貴重なご意見
を社内で共有して製品の改良に役立て、さらに、高品質な製品と
情報提供に取り組んでいきます。
お客様ホットライン
ウェブサイト
お客様のご質問やご指摘に365日フリーダイヤルで対
患者様・医療関係者向けの
応するお客様ホットラインを設置。貴重な情報である
寄せられたご意見・ご質問は
「お客様の
ポータル サ イト
「 Eisai.jp 」
( http://eisai.jp )
では、日本
として関連部署で共有され、
Voice 」
で提供しているすべての医
製品の改良やよりよい情報提供
療用医薬品、一般用医薬
に反映しています。
品、診断薬、ジェネリックな
どの製品情報と疾患関連情
報を提供しています。
環境・社会報告書 2011
19
hhc に基づく顧客歓喜をめざした情 報の提 供・収 集を実 践
思い を カタチに する
ー活動報告ー
音声によるバリアフリーの情報提供
エーザイ株式会社では、日本国内に約30 万人いると言われて
いる視覚障がい者の方々に対し、音声コード付きの
「患者様向
け指導せん」
の提供を行っています。
「患者様向け指導せん」
とは、医療関係者が医薬品を患者様に
提供する際、疾患の情報や服用に関する注意を記載したパンフ
レットです。従来はこれら資料の一部を点字で提供していました
が、点字を利用できない視覚障がい者の方々に向けて、音声コー
地 域 住 民ととも に 患 者 様と向 き 合う
病気になっても
安心して暮らせる
「まちづくり」
エーザイ株式会社では、病気になっても住み慣れ
ドを付けたものです。
た地域で安心して暮らせる
「まちづくり」
を支援する
日本語約 1,000 文字分の情報を含む切手サイズの2 次元コー
コミュニティ・ネットワーク支援室を2008 年度に発
ドを、活字読み上げ装置で読み取ることによって、情報を音声と
足。日本各地の行政や医療機関とともに進めてきた
して聞くことができます。現在では約 30 種類の音声コード付き
活動を通じて、地域住民が病気のことを理解してい
患者様向け指導せんを提供しています。
る
「まち」、病気になっても早期診断・治療が可能な
また、医薬品情報のバリアフリー化をさらに推進するにあた
り、
「日本視覚障がい情報普及支援協会」
の方々にお越しいただ
き、社内で研修を行いました。
全 MR へのタブレット型端末導入で
情報共有をさらに加速
エーザイ株式会社では、イントラネットを活用し、医薬品情報
や現場で得た知見を共有するシステムを構築していますが、さら
「まち」、地域が病気の方にやさしい
「まち」
をめざし
ています。
これまでは、
「住民の声に応える多職種連携によ
る医療・介護ネットワークの創出」
を企図し、市民
フォーラムの実施や医療機関と協力して、行政・医
療・介護などの関係者による話し合いの
「場」
のコー
ディネートを通じて連携を強化する支援を行ってき
なる情報共有の迅速化に向け、新たにタブレット型端末である
ました。
iPadを全 MRおよび学術担当1,700 人に導入しました。
このような活動から、2010 年度は、医療や介護
医薬品情報は、今まで文書での提供が中心であり、頻繁な情
関係者が住民と一緒に活動する地域のネットワーク
報改訂は文書の差し替えと廃棄が大きな課題でした。iPadの導
が重要であると考え、全国 7 エリアで住民活動団体
入により、自動更新された情報を常に携帯でき、注射剤の調整
方法などを動画で説明できるほか、医療関係者からの情報も
iPadを介してスピーディーに安全管理部門と共有できるなど、
大きな効果を発揮しています。
が地域コミュニティに疾患啓発を行うモデル事業の
創出に注力しました。
医療・介護の専門職の方々だけではなく、住民と
のネットワークを持つNPOや住民団体と連携し、
様々なワークショップを開催。各団体の特徴を生か
した活動から、持続可能なモデル事業を生み出すと
ともに、全国に展開できる活動をめざしています。
20
エーザイ株式会社
情報を通して
「 患者様 」
と向き合う
患者様とそのご家族
本人ネットワーク支援
本人の声に応える
思いの共有、
社会参加支援
日常生活圏域
「場」
のコーディネート
住民団体と
住民団体
協働した
啓発活動 ( NPO など)
住民
アンケートの
分析・評価支援
自治体
地域包括
支援
センター
かかりつけ医
医療・介護に関する多職種の
話し合いの
「場」
を創出
総合相談窓口
医療の相談窓口
介護保険
サービス
事業者
専門医
介護の相談窓口
鑑別診断・
地域連携支援
顔と顔が見える関係
さいたま市北区での取り組み
横浜市保土ケ谷区での取り組み
さいたま市では
「さいたま認知症ケア
生活者が集う
「商店街」
から
取り組んだ
「まちづくり」
地域 NPOとの連携への取り組み
ネットワーク委員会」
が設置されています
横浜市保土ケ谷区では、2010 年 3月に
2010 年度は、各地で多種多彩なNPO
が、地域が広いために顔の見える連携がむ
「多職種で認知症を支える保土ケ谷の会」
が
民生委員へと連携の輪が広がる
地域住民に対する
直接アプローチへ
にご参加いただきワークショップを開催
ずかしいという課題がありました。
発足し、
「まちづくり」
がスタートしました。
し、地域住民への直接対話を可能にするユ
そこで同市の北区を担当しているMRは
活発な意見交換から、市民公開講座を
ニークな活動が数多く進められました。
「まちづくり」
を進めるため、認知症連携担
開催することで
「どなたでも気軽に相談で
兵庫県では、認知症のご本人が描いた
当医に顔の見える医療と介護の連携を提
きる窓口があります。認知症で困った時は
絵でガラス玉のマグネットを作成し、販売。
案。連携担当医の賛同を得て、医師・地域
地域のみんなで助けます」
というメッセー
売上の一部を認知症支援団体などへの支
包括・ケアマネージャー・行政を巻き込ん
ジを多くの人に伝えることができました。
援基金として運用するモデル事業が立ち上
だ交流会開催へと発展。医師との相談のも
保土ケ谷には昔から続く商店街があり、
がりました。福岡県では、母子三世代向け
と、各関係者への地道な活動により、連携
店舗内ではまるで家族のように親しく会話
無料情報誌で
「認知症マンガ」による親し
への雰囲気がさらに広がりました。その
をしている光景が見られました。商店街は
みやすい啓発とアンケートを実施。さらに
後、認知症の方々にもっとも関わっている
地元の高齢者の方の利用が多く地域密着
兵庫県篠山市では、地元の人気主婦漫才
民生委員も加えた連携の場へと発展。今
を掲げていることから、認知症の早期発見
師の
「まるっち∼ず」
による認知症啓発漫
後は、一般の方々への認知症の正しい知
やサポートに重要な場所であると考え、タ
才を
「篠山市民センター祭り」など各種イ
識の提供と早期相談の啓発をめざし、より
イアップすることになりました。そこで、ま
べントで披露。今まで情報が届きにくかっ
細分化した単位での勉強会と北区市民
ず各店舗や町内会掲示板に案内状やポス
た世代に明るく病気の理解を広められたと
フォーラムの開催に向けた活動を続けてい
ター掲示のご協力をいただきました。そし
好評で、今後も公民館などで漫才を継続す
きます。
て現在は、商店街の各店舗を対象とした認
る予定です。
知症サポーター養成講座の実施と、商店
街から専門機関へのホットラインづくり
(認
知症 110 番)
をめざして活動しています。
なお、市民公開講座には約 280 人の市
民の方々にご参加いただき、アンケートで
は
「認知症は早く相談したほうがいい疾患
だとわかった」、
「相談場所がわかり安心し
さいたま市北区の認知症連携医とのミーティング
た」
などの声が寄せられました。
兵庫県のモデル事業で作成、販売されたマグネット
環境・社会報告書 2011
21
品質保証
顧客歓 喜をめざす品 質 保 証とは
患者様に代わって保証する品質保証の実践の歩み
品 質 マネジメントの 課 題 解 決 に 新 た な 視 点 で 挑 む
高品質な医薬品の安定供給を通じてhhc を実現するには、品質設計から生産、流通に加え、その医薬
品を患者様に正しく服用していただき、本来の有効性・安全性が保たれるまでの品質確保が重要です。
エーザイグループでは
「医薬品の製造管理および品質管理に関する基準」
に則った品質保証体制をグロー
バルに構築するとともに、顧客歓喜( CJ:Customer
Joy )の視点で患者様の潜在的な欲求やニーズに
応えられる、さらなる品質を追求していきます。
品質で顧客歓喜が可能なのか。その発端になった取り組みが
「エーザイ・クオリティ・アドバイザリー・
ボード
( EQAB )」
での3 年間の活動でした。これは、エーザイの品質保証を造る側からではなく、患者
様・お客様の視点から見て、品質の課題を抽出し、品質に対する社員マインドや企業風土、組織体制な
どを大局的に評価・検討するための社外有識者からなるアドバイザリーボードです。EQABは2007 年
度に現状把握と調査を開始し、顧客歓喜をめざした品質の定義およびその実現に向けた責任・組織体
制を検討しました。そこから結実したのが、顧客である患者様の視点で製品の供給を行う
「エーザイ デ
マンド チェーン システムズ
( EDCS )」
と、顧客歓喜を具体化するために患者様の声やニーズを捉え、製
品デザインや品質の改善をめざす
「 CJ 部」
です。エーザイはこれからもhhc の実現に向けて、顧客ニーズ
の多様性と変動性を理解し、常に顧客との共同化から始まる知識創造に取り組んでいきます。
22
エーザイ株式会社
顧客歓喜をめざす
品質保証とは
品質概念
三次品質
(顧客歓喜)
この概念は品質を、充足して当然である基本的な一次品質、顧客満足と位置
づけられる二次品質、潜在的な欲求を満たすことで顧客歓喜が起こる三次品
二次品質
(顧客満足)
質の3つに分類しています。hhcの充足度に基づいて品質の評価・向上をめ
ざすエーザイは、三次品質である顧客歓喜まで追求していきます。
一次品質
(基本的品質)
国 際 的 枠 組 み による 品 質 保 証 体 制 を 整 備
エーザ イグ ループ では、本 社 におけるコーポ レートQA
切な対策を講じるために、世界各国の規制を考慮して定められ
( Quality Assurance:品質保証)機能を軸に、日・米・欧・アジ
た
「医薬品安全性監視に関するインターナショナルSOP(標準
「 Global Quality Committee 」
アの各地域 QA 機能で構成する
作業手順書)」
が世界各国で実行されています。
を設置し、グローバルな品質保証体制を構築しています。グロー
さらに、各地域の医薬品安全性監視の専門家によって、
「エー
バル・リージョン・工場の各レベルでの責任を明確にし、地域や
を組織して、臨床開発中の化合物を
ザイGlobal Safety Board 」
国により異なる規制要件を遵守しながら、高品質な製品提供を
含めた製品の安全性問題を議論し、添付文書改訂の提案をする
保証しています。
など、安全で適正な医薬品の使用を推進するための意思決定を
また、グローバルに展開している製品(臨床開発中の化合物
しています。
を含む)
について、その安全性情報を世界中で収集・評価し、適
顧 客 歓 喜 を め ざ す 専 門 組 織「
C J 部 」の 設 置
は、顧客からの品質・製品に関する、すでに顕在化し
「 CJ 部」
た要望だけでなく、潜在的な欲求をも理解して、三次品質であ
医療機関からの
問い合わせ
製品苦情
患者様・生活者の方々
からの問い合わせ
る顧客歓喜の実現をめざす組織です。
このミッションを果たすため、CJ 部は365日フリーダイヤル対
応の
「お問い合わせセンター(お客様ホットライン)」、
「製品苦情
への対応窓口」
および
「 MRが収集した医療機関の声の受付機
能」
などを持ち、顧客からの多様な情報を一元的に収集、蓄積し
ています。これらの顕在化された声をもとに、CJ 部に所属する
技術センターにおいて、迅速かつ的確な品質改善や製品改良を
顕在的な要望を収集
潜在的な欲求を理解
はかっています。
さらに、CJ 部では病院および保険薬局の調剤現場はもちろ
ん、高齢者施設や在宅での医療、介護の現場に赴き、患者様と
共体験することで患者様の喜怒哀楽を知る
「共同化活動」
を積極
的に行っています。
こうした活動の継続化により、顧客の潜在的な欲求を理解し、
製品、情報、サービス、ネットワークによるソリューションを提
供して顧客歓喜を実現していきます。
介護・医療の現場での共同化体験
顧客歓喜を実現する
製品・情報・サービスなどの提供
環境・社会報告書 2011
23
品質マネジメントの課題 解 決に新たな視 点で挑む
顧客歓喜視点における品質改善活動
慢性的な苦情への取り組み
新しい視点での品質改善活動を着実に一歩一歩進めています。
とともに改善策を講じてきました。苦情の減少に全社をあげて取
製造現場で物づくりに携っている社員も、工場で患者会の方々
り組んだ結果、2010 年度に寄せられた製品クレーム件数は、
を対象とした見学会を行うなど、患者様、医療関係者の方々な
まで減少しました。
2008 年度比75%(物量増を反映すると59% )
ど様々なステークホルダーズの生の声に耳を傾け、品質に関す
EQAB 活動に取り組む前は、解決に至らない慢性的な苦情が
るニーズの発掘に努めています。
存在していました。この慢性的な苦情は、製造所を出荷した後
また、そうした貴重な声や気づきは、社員個人や一部署で留める
の輸送、医療機関、患者様の取り扱い時に起きているものが
ことなく表出化して製品コンセプトに結びつけるなど、ナレッジマネ
50%を占めていました。
ジメントのプロセスであるSECIモデル の実践に挑戦しています。
従来、このような流通段階で発生する慢性的な苦情に対して
SECI モデル:知 識 創 造 にお
ける 知 識 の 共 有 や 活 用 を 、
「 共 同 化( Socialization )、
表出化( Exter nalization )、
結合化( Combination )、内
面 化( Inter nalization )」の
4 つの継続的な循環で表現し
たプロセスモデル 。
は、製造所での改善には限界があると認識していました。しか
エーザイグループでは設計段階まで立ち戻って、顧客歓喜の
お客様から寄せられた苦情には、個々に発生原因を調査する
*
*
し、お客様がお困りになっていることを解決することが私たちの
大切な役割であると認識を改め、検討を重ね取り組みました。そ
の結果、改善はむずかしい、無理だと思っていた苦情について
も、改善できることがあり、むずかしいとの思い込みが改善を妨
げていたことに気づきました。そして、まさに苦情はお客様から
工場での患者会見学会
の貴重なプレゼントであると改めて認識しました。
顧 客 歓 喜に向けた改 善 事 例
「ケイツーシロップ 0.2%」のスティック個別包装
ビタミンK2シロップ剤「ケイツーシロップ 0.2%」
は、新生児・乳児ビタミンK 欠乏性出血症の製剤
として優れた効果があることが認められています。
従来の包装は50ml 瓶包装であり、医療現場では小分けして使われていました。このため、医療関
係者の方々から小分け・希釈作業が繁雑になりがちで、扱いにくいとのご指摘があり、剤形・包装な
どの検討を始めました。また、2009 年 8 月に小児および産婦人科などの学会から個別包装開発の要
望書が厚生労働省に提出されました。これは、
「新生児・乳児ビタミンK 欠乏性出血症のガイドライ
ン」
の見直しに伴い服薬の指導が変わり、保護者による自宅での服用が求められたためで、この要望
書を受けて個別包装の開発に拍車がかかりました。
スティック包装の
「ケイツーシロップ 0.2% 」
検討の結果、家庭で赤ちゃんに投与する際のご両親や保護者の方の負担を考え、投与しやすい1ml
のスティック包装を開発しました。新包装の材質・形状の検討には、複数の医療機関の看護師の方々
にご参加いただき、開封方法がすぐに理解できて、開封しやすく、薬液が手指につきにくい形状を追
求しました。
蘇州工場での PTP 包装への曜日刻印
hhc 理念のもと、薬の誤飲を避けるとともに服薬遵守の向上をめざして、2008 年に中国の蘇州工
場長を中心に、製造関連組織と事業関連組織が合同でCJチームを結成しました。
12 回におよぶ患者様とご家族へのアンケートを実施した結果、約 70%の患者様のご家族が飲み
忘れなどを防ぐためにPTP 包装背面への曜日印刷を要望していることがわかりました。
文字の大きさや色の好みなども反映させ、アルツハイマー型認知症治療薬「アリセプト錠 5mg 」
の
PTP 包装へ曜日印刷を行い、使用性を向上させました。
24
エーザイ株式会社
中国語で曜日が印刷された
「アリセプト錠 5mg 」
顧客歓喜をめざす
品質保証とは
苦情・クレームへの回答日数の短縮に注力
苦情件数の推移
製品に品質問題があると、医療機関では不安が生じ、患者様
(年度)
に投与できません。この不安に対して、適切な説明と代替品の早
2008
671
上期
767
1,438 件
下期
い提供が安心と信頼につながると考えています。苦情品が発生
2009
した場合は、その苦情品を早急に受け取り、製造所に送って原因
を調査した結果をまとめ、お客様に説明します。この回答日数(連
2010
絡をいただいてから説明するまで)
の短縮も顧客歓喜の大切な一
つであると認識して、改善に取り組みました。
1,082 件
511
600
900
前年度比 82%
(物量113%)
前年度比 92%
(物量113%)
1,200
1,500
20
25
1,800(件)
苦情処理日数の推移(土日含む)
有し、それぞれの担当業務をいかに短縮できるかを考えました。
年下期)
まで削減することができました。
300
1,178 件
538
571
0
まず、回答日数の短縮が大切な取り組みであるとの認識を共
(2009 年上期)
から23.4日
(2010
その結果、回答日数を28.9日
640
(年度)
2009 上期
2009 下期
2010 上期
2010 下期
0
5
10
情報感知∼申請
申請∼現品着
工場回答∼回答発信
15
回答発信∼MR 回答
30 (日)
工場調査
製 品 クレ ー ムが もとに なっ た 改 善 事 例
PTP 包装の角破損における改善
錠剤やカプセル剤を包装するPTPシートは、製造所出荷後の箱の落下により角が割れる
「シート
破損」
が比較的多く発生し、問題となっていました。箱が落下しても箱に落下痕跡がない場合もあり
ます。当初は、落下まで考慮した改善の可能性を疑問視する意見もありました。しかし、落下が原因
でもお客様が困っていることには変わりはないとの考えから検討を進めました。
そこで、特に破損報告が多くあった
「セルベックス」
「フェロミア」
「メチコバール」
「ユベラN 」
「ユベ
角が破損したPTP
ラ」
において、PTPシートの角部を、より丸みをつけた破損しにくい形状に変更しました。また一部の
製品のシート材は、より衝撃に強く柔軟性のあるポリプロピレン製に変更しました。
これらの改善により、PTP 包装の角破損の報告は前年度比で約 12%に減少しました。流通段階で
の箱の落下頻度は変わっていないため、PTPシートへの改善が結果に表れたことになります。流通
改善前
改善後
段階の課題であっても改善ができると自信を深める事例になりました。
「イオメロン注シリンジ」における強度改善
非イオン性造影剤「イオメロン注シリンジ」
は、医療機関におけるコンピューター断層撮影に使用
する造影剤です。薬剤が入ったシリンジ
(注射筒)
を造影剤自動注入装置に設置して使用する設計で
すが、装置に接合するフランジという部位が破損したとの報告が数多くありました。調査の結果、そ
の主な原因は、位置を誤って装置にセットしていたためであることがわかりました。まず、正しい使
い方のパンフレットを作成し医療機関に説明しましたが、苦情は減りませんでした。医療現場で正し
く使用されていないことが問題と認識していましたが、忙しい医療現場で正しい位置にセットされな
くてもこわれにくいものを提供しなければならないとの考え方に至りました。そこで、フランジの形
状変更による強度アップをはかり、セット位置を誤っても破損しにくいシリンジへの改良を行いまし
た。その結果、大幅に破損苦情が減少しました。
イオメロン注シリンジ
フランジ
部分
環境・社会報告書 2011
25
コー ポレートガバナンスとコンプライアンス
公正で透明な経営をめざして
ステークホルダーズと長期的な信頼関係を築くためには、経営の公正さと透明性を確保することが不可欠であると考えま
す。エーザイ株式会社では、コーポレートガバナンスとグローバルな内部統制システムの継続的な充実をはかるとともに、コ
ンプライアンスが企業存続の基盤であるという認識に立ち、法令と倫理の遵守の徹底を推し進めています。
コーポレートガバナンスの考え方
グローバルな内部統制の実践
コーポレートガバナンス充実のための要諦は、経営の活力が
エーザイグループでは内部統制を
「事業活動を適正かつ効率
増大し、かつ公正性が確保されるとともに経営の透明性が向上
的に遂行するために、社内に構築され運用される体制およびプ
するシステムを整備することだと考えます。
ロセス」
と捉え、内部統制担当執行役のもとに内部統制システム
エーザイ株式会社のコーポレートガバナンスの機軸は、委員
の整備をグローバルに推進する内部統制推進部と客観的な評価
会設置会社であることを最大限に生かした経営の監督機能と業
機能を有する内部監査部を設置して、グループ全体の内部統制
務執行機能の明確な分離であり、それを徹底するための独立
の整備・評価を行っています。具体的には、
「内部統制基本方
性・中立性のある社外取締役の選任にあります。
針」
および
「内部統制行動指針」
を定め、リージョンごとに統括す
取締役会から執行役への大幅な意思決定の委任をすることに
る組織を設置し、それら組織間での連携を深めるとともに、内部
より、業務執行の機動性と柔軟性を高めつつ、同時に執行役に
統制に関わるグローバル委員会等を通して内部統制の整備を推
よる内部統制の構築により自律性を確保して、経営の活力を増
進することに重点を置いています。
大させるとともに、執行役による業務執行全般を社外取締役が
過半数を占める取締役会が監督し、最善の意思決定を行うこと
により経営の公正性を確保しています。
コーポレートガバナンスシステム
株主総会
取締役会 11 名(社外 7 名、社内 4 名) 議長:社外取締役
業務決定の大幅委任
監査委員会監査
連携
監査委員会監査
監査委員会
(5 名:社外 3 名、社内 2 名
委員長:社外)
指名委員会
(3 名:全員社外)
執行部門
会計監査
代表執行役社長( CEO )
内部統制担当執行役
内部統制推進部
内部監査部
執行役会
執行役
各部門・国内外子会社
内部統制システムの整備・内部監査
26
エーザイ株式会社
社外取締役独立委員会
(7 名:全員社外)
取締役会事務局
経営監査部
会計監査人
報酬委員会
(3 名:全員社外)
内部統制推進体制
また、チーフコンプライアンスオフィサーの諮問機関として設
置された日本、米州、欧州の弁護士等の社外専門家で構成され
内部統制担当執行役
る
「コンプライアンス委員会」
が、定期的にコンプライアンス活動
グローバル委員会
の客観的なレビューを行うとともに、適切な助言および勧告を
行っています。
内部統制推進部
コンプライアンス・マインドの浸透
グループ企業
(日本)
グループ企業
(米州)
グループ企業
(欧州)
グループ企業
(アジア他)
内部統制の自己評価と内部監査
すべての役員および従業員が同じコンプライアンス・マインド
で活動できるよう、エーザイグループではビジネスの基本となる
や考え方を示した
「 ENW 行動指針」
を定
「 ENW 企業行動憲章」
めています。これらをわかりやすく解説した
「コンプライアンス・
内部統制の目的は、①財務報告の信頼性、②業務の有効性・
ハンドブック」
を17カ国語で作成・配付し、全世界の社員へのコ
効率性、③コンプライアンス、④資産の保全の4 つがあります。
ンプライアンス・マインドの浸透に役立てています。
財務報告の信頼性は、金融商品取引法の
「内部統制報告制度」
また、部下を指導・監督する役割を担うマネージャーが組織
に適切に対応することによって確保しています。このため、内部
でコンプライアンス活動を実践するにあたって役立つ知識やツー
統制推進部は会計監査人との連携のもと、
「財務報告に係る内
ルについて記載した
「マネージャーのためのコンプライアンス・
部統制」
の整備を継続的に行っています。また、継続的に内部統
ガイドブック」
を全組織長に配付し、周知のための研修を順次
制状況の改善をはかるために、全ENW を対象に日常的な業務
行っています。
*
リスクについてCSA( Control Self Assessment:統制自己評
価)
を毎年実施しています。これにより、リスクマネジメントサイ
クル
(リスクの識別、評価、対応、モニタリング)
の活性化をはか
コンプライアンス・カード
「 ENWコンプライアンス・テスト」
と呼ばれるカードをすべて
り、統制活動の改善を行っています。
の役員および従業員が常に携行し、自分自身の行動が家族に胸
客観的な評価を実施する内部監査部は、グループ企業の内部
を張って話せるか、見つからなければ大丈夫と思っていないか、
監査部署と連携し、リスクベースの監査計画に基づき内部監査
第三者としてニュースで見たらどう思うか、と問いかけ、常に
を実施しています。また、グローバルスタンダードに対応した監
チェックできるようにしています。
査品質の向上をはかるために、定期的に外部機関による評価を
受け、高品質な内部監査の実施に努めています。
*
:エーザイ株式会社および国内外のグループ企業。
ENW( Eisai Network Companies )
コンプライアンス推進体制
エーザイグループでは、コンプライアンス推進を統轄する執行
役であるチーフコンプライアンスオフィサーのもと、内部統制担
当執行役が企業倫理推進専任部署を指揮し、日本、米州、欧州
に推進担当部署を設置してグローバルなコンプライアンス活動
コンプライアンス・カウンター
コンプライアンス・カウンターは、法律の解釈などコンプライア
ンスに関して判断に迷った場合や、自分自身の行動や上司、同僚
の行動がコンプライアンスに則っているか疑問を感じた場合など
の身近な社内相談窓口として2000 年 4 月に開設されました。
さらに弁護士による社外カウンターや社外相談員が運営する
社外相談窓口も設置し、コンプライアンスを充実するための環境
整備を行っています。
を推進しています。
環境・社会報告書 2011
27
人 材 活用
多様な社員が活躍する職場づくりとhhc を実現する人材の育成
エーザイグループは、社員を重要なステークホルダーと位置づけ、安定的な雇用の確保とやりがいのある仕事の提供、能
力開発機会の充実に努めることを定款に定め、社員価値向上をめざしています。
社員は重要なステークホルダー
学会、医療・介護施設での体験研修など、社員が
「患者様とその
エーザイ株式会社では、定款第2 条にある企業理念の条文で、
ご家族の喜怒哀楽」
を知る機会をさらに充実させ、hhc 理念の実
主要なステークホルダーズを患者様と生活者の皆様、株主およ
現に向けて活動できる人材育成を推進しています。
び社員であると規定しています。
また、社員は自ら企業価値を高めることができる唯一のステー
クホルダーであると考え、すべての社員が企業理念を共有し、日々
の事業活動を通じてhhc 実現に取り組むことをめざしています。
そのために社員の個性と意欲を尊重し、能力開発をはかると
ともに、すべての社員が誇りを持って仕事に取り組める職場づく
りを進めています。
大グローバリゼーション時代をリードする経営資源は優れた
社員であり、その多様かつ優れた社員から生まれるイノベーショ
ンはエーザイの成長を実現させる基盤です。2011 年 6 月には、
国際展開を支える人材育成と交流
エーザイグループでは、グローバルにhhc 理念を実現するた
グローバルな経営環境および労働環境の変化に対応したトータ
「 E-elite 」
「 E-STAR 」
「 E-smile 」の4 つのリー
め、
「 E-GOLD 」
ル人材マネジメントを行う
「人財開発本部」
を新設し、その機能
ダーシップ開発支援プログラムを提供しています。すでに400 人
を統轄するチーフタレントオフィサーを設置しました。
以上の国内外のリーダーが輩出され、多くの人材がグローバル
hhc 理念実現に向けた人材育成
28
介護疑似体験研修
機能やリージョンのキーポジションで活躍しています。
( Eisai-Global Opportunity for Leadership
「 E-GOLD 」
エーザイ株式会社は、
「患者様とそのご家族の喜怒哀楽」
を感
は、各地域・ビジネス領域を代表する上級管理
Development )
じ取り、共感することがすべての企業活動の出発点であると考
職を対象にビジネススクールでのリーダーシップ研修や自己開
えています。この共感に基づき、何ができるかを自ら考え、日々
発アセスメントなどの5 つのモジュールで構成され、次代のエー
の業務を実践できる人材の育成に注力しています。
ザイを担うグローバルリーダーの育成に努めています。
その一つが
「現場体験研修」
です。たとえば、知的障がい者施
( Eisai-Emerging Leaders In Talent Evolution )
「 E-elite 」
設での体験研修では、お菓子づくりなどの軽作業や、和太鼓や
は、マネージャーを対象に、日本、米国、欧州、アジアの地域別
絵画を通じた療育体験など、施設利用者やスタッフの方々との
に実施しているリーダーシッププログラムです。そして、新規ビ
共体験を行っています。また、介護の基礎知識を習得するととも
ジネスの創造や現場業務プロセスの変革を起こせる
「企業内企
に、受講者同士による疑似的な介護体験を通して患者様やその
業家」
の創出をめざしています。
ご家族、介護者の気持ちを理解する
「介護疑似体験研修」も
( Eisai-Shining Talents for Advancement &
「 E-STAR 」
2010 年度より実施しています。
Revolution )は、若 手 社 員 を 対 象 としたプ ロ グ ラム です。
そのほかにも、患者会の方々を対象とした工場や研究所の見
Professionalism and Integrationをテーマとし、他者を受け入
エーザイ株式会社
れ、周囲に影響をもたらし、結果を出すことができる人材の育成
流とグローバルネットワークの強化を目的に、継続的な人材交
を目的としています。
流を促進する国際短期インターンシッププログラム
(海外現地法
( Eisai-Step-up with Motivation through
「 E-smile 」
人への派遣)
を行っています。
は、国境を越えた知の交
International Leaning Experiences )
社 員 の スキルアップ を サポ ー ト
「与えられた機会とチャレンジしてきたことのすべてが
私の財産です」
2003 年に入社し、MRとして兵庫県で診療所・クリニックなどを2 年、東京で大学病院を4 年担当
しました。その後、統合戦略室に移り、様々な戦略立案を勉強する機会に恵まれました。本部スタッ
フへの異動は不安でしたが、E-STAR 研修という戦略的思考と実行力を身に付けるプログラムに参
加したことで、無理なくスキルアップできました。また、部門を越えた新ビジネス構想の立案など、普
段の業務では経験できない貴重な
「知」
と
「仲間」
を得ることができました。
2011 年4月からは、自社創製抗がん剤「ハラヴェン」
のプロダクト・マネージャーになり、現在は患
者様に届くその日に向けた準備を進めています。これまでのMRと本部での経験が、今も大きな財産
となっています。
「ハラヴェン」
は、グローバルにおいても乳がん治療に新しい光と可能性をもたらす
新薬です。私は、女性の視点からこの製品が持つ価値を最大限に引き出し、患者様とそのご家族へ
の貢献を果たしたいと思います。
エーザイ・ジャパン
オンコロジー領域部
小笠原 若菜
「 E-smile で広がった視野と経験で、
自分らしく活躍していきたい」
海外現地法人への短期派遣を行うE-smileプログラムを通じて、米国のアンドーバー研究所内に
ある米国知的財産部で、約 3カ月間業務に取り組みました。
知的財産部は日米欧に拠点を持ち、新薬の創出過程での発明を特許により保護する業務や他社の
特許を調査する業務などを行っています。グローバルで効率的に協働するためには、法律や文化の
違いにより生じる方針の差を調整する必要があります。その調整の中で私は、お互いを尊重し理解
し合う関係構築と、患者様に1 日でも早く薬をお届けするという理念を忘れず、仲間と共有すること
が大切であると学びました。
米国の知的財産部、研究所や米国本社で、多くの優秀な女性幹部や社員が活躍する様子にも刺激
を受けました。経営戦略部に異動する機会を得た現在、プログラムで広がった視野と経験をもとに、
より多くの患者様に貢献できるよう業務に邁進したいと考えています。
経営戦略部
南田 泰子
環境・社会報告書 2011
29
人材活用
働きやすい職場づくり
ことができるよう、よき就労環境の整備等に邁進してきました。
エーザイ株式会社では、社員一人ひとりが hhc 理念を実現す
長期的に社が発展・成長し、合わせて社員が安心して働き続
るために、社員自身がやりがいを持って業務に邁進できる職場
けるためには、今後も労使の健全な信頼関係のもと、相互の立
づくりをめざしています。その一環として、エーザイ株式会社で
場を尊重しながら難局に対して果敢に挑み続ける必要がありま
はフレックスタイム制、事業場外みなし労働制、および裁量労働
す。そのため、エーザイ株式会社とエーザイ労働組合は、これま
制など、職種に合わせた柔軟な就業形態を導入しています。ま
でのよき労使関係をさらに継続・向上させ、労使一体となって
た、社員の多様なニーズを充足し、仕事と生活の両立が実現で
社の発展と社員の幸せづくりを実現させることを共通の目的とし
きるように看護・介護休暇制度、育児・介護休職制度、育児・
て活動しています。
介護短時間勤務制度などを積極的に整備しています。
さらには、社員が安心して働けるように、メンタルヘルスケア
や産業医による保健指導などにも取り組むことで心身ともに健
康に働ける環境整備にも努めています。
労働組合との関係
人権に配慮した職場づくり
国内グループでは、人権を尊重し、差別のない働きがいのあ
る職場づくりに向けて新たにe-ラーニングを導入するなど、人
権研修を継続的に実施しています。
具体的には
「職場の人権」
をテーマに、疎外感や各種ハラスメ
エーザイ株式会社は、創業以来、社員をもっとも大切な資産と
ントの背景となっている思い込みや差別形態の多様化を知るとと
位置づけ、お互いの理解と信頼に基づく健全で公正な労使関係
もに、自他尊重と傾聴の大切さなどを学ぶ機会を設けています。
のもと、社員が安心して社業に打ち込み企業価値の向上に努める
Column
「ウォーキングマイレージぷらす」活動
エーザイ株式会社では、社員と日々社員をサポートしていただいている配偶者を
対象に、健康増進と社会貢献を目的とした
「ウォーキングマイレージぷらす」
というユ
ニークな活動を行っています。
これは、日常生活の中に運動習慣を取り入れることにより、生活習慣病を予防し健
康になってもらうという取り組みで、参加を希望する社員と配偶者にパソコンに接続
できる歩数計を配布。歩いた歩数に応じた寄付金が NPO 団体などに寄付される仕
組みです。寄付先は、参加者自身ががん患者様の支援や予防運動を推進するNPOや
自然保護団体など6 団体から選択して決めることができ、2010 年度は総額 350 万円
を寄付しました。なお、本プログラムは、2009 年で終了した厚生労働省の研究事業
をエーザイ株式会社が独自に発展させたものです。健康増進と社会貢献の両方をめ
ざす取り組みで、現在 3,000 人を超える社員と配偶者が参加しています。
30
エーザイ株式会社
労働安全衛生への取り組み
確実に運用し、PDCAサイクル*を自主的・継続的に展開するこ
エーザイグループでは、2002 年 10 月に
「エーザイネットワー
とにより、ゼロ災害達成をめざしています。教育訓練を計画的か
を制定しています。安全衛生方針
ク企業( ENW )安全衛生方針」
つ継続的に行うとともに、全業務に対するリスクアセスメントを
では、
「安全・衛生・健康を最優先とし、人間尊重の企業活動を
実施し、職場におけるリスクの低減および安全環境の維持・向
推進する」
という基本理念のもと、7 項目の行動指針を定めてい
上をはかっています。さらに、そのほかの事業所やグループ企業
ます。この指針に基づき、年度ごとの
「安全衛生管理計画」
を策
においても質の高い独自の管理体制を構築し、継続的な活動と
定して労働安全衛生水準の向上をはかっています。全社員が安
管理レベルの向上をはかっています。
全衛生基本理念を共有し、
「安全・衛生・健康」
を確保する活動
「労働安全衛生管理システムの的確な運用、機
2010 年度は、
を展開する中で、
「誰一人ケガをさせない」
「 誰一人病気にしな
械・設備の本質安全化の追求、化学物質管理の強化、安全衛生
い」職場の実現をめざしています。
教育・訓練の充実、安全衛生活動の充実と継続的実践、健康の
また、国 内 グ ループ5カ 所 の 生 産・ 研 究 拠 点 では、
保持増進、安全衛生自主監査の充実」
の7 項目を重点実施事項
OHSAS18001(労働安全マネジメントシステム)認証を取得し、
とした安全衛生活動に取り組みました。
労働安全衛生管理システムを構築しています。本管理システムを
*
、Do(実行)
、Check(評価)
、Act(改善)
のサイクルを繰り返すことで管理業務を
Plan(計画)
継続的に改善する方法
エー ザイネットワーク企業 *( ENW )安全衛生方針
安全衛生基本理念
ENWは、安全・衛生・健康を最優先とし、人間尊重の企業活動を推進します。
安全衛生行動指針
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
全ての業務において安全・衛生・健康を最優先し、継続的に無事故・無災害を追求します。
製品の研究・開発から製造、流通、販売、使用、廃棄に至る全ての段階において、安全・衛生・健康の確保を最優先
します。
安全・衛生・健康管理について体制を整備し、活動を推進します。
安全・衛生・健康に関する法令、規則を遵守することはもとより、さらに厳しい自主基準を定めて活動します。
科学技術の進歩を積極的に採り入れ、最先端の安全技術を確保します。
全従業員が安全衛生基本理念を共有するとともに、各職場で求められる専門性強化をはかる教育訓練を計画的
かつ継続的に実施します。
安全・衛生・健康に関する方針、目標、プログラムおよび実績などの情報を積極的に開示します。
*
エーザイネットワーク企業:エーザイ株式会社および国内外のグループ企業。
環境・社会報告書 2011
31
社会貢献活動
hhc 企業としての社会貢献
エーザイグループは、よき企業市民として広く社会の皆様の信頼獲得に努めています。医学の発展に貢献するための活動
や地域社会との交流など、hhc 企業として、事業活動を越えた社会に対する貢献に取り組んでいます。
社会の中のエーザイ
2011 年度は「病まざるものなし」企画展を開催
エーザイグループは、製品提供を通じた貢献はもちろんのこ
内藤記念くすり博物館では、毎年企画展を開催し、2011 年度
と、医薬に関する博物館の無料公開をはじめ、医療経済に関す
は
「病まざるものなし∼日本人を苦しめた感染症・病気 そして
る研究所や学術財団の運営支援など、hhc 理念に基づいた様々
医家∼」
を開催しています。
な社会貢献活動に積極的に取り組んでいます。
日本では古代から疱瘡(ほうそう:天然痘)
などの感染症が猛
内藤記念くすり博物館を無料で公開
威をふるい、大勢の人々が病に倒れました。江戸時代には西洋
医学や薬学が伝来する一方、梅毒やコレラなどの感染症も伝わ
内藤記念くすり博物館は、日本初の医薬に関する博物館とし
りました。当時は人体の仕組みや病原菌について知られておら
て1971 年にエーザイ創業者の内藤豊次によって創設されまし
ず、それが次第に明らかになり、様々な病気の治療が可能になっ
た。医薬に関する収蔵資料65,000 点、収蔵図書62,000 点のう
たのは明治以降です。
ち約 2,000 点を展示しています。2009 年 2 月には、収蔵資料の
この企画展では、人々が病気をどう捉え、恐れ、対処したのか
中の薬看板・薬広告・製薬道具・はかり道具および医薬品と衛
を探るとともに、当時の医師たちがどう立ち向かったかを、主に
生道具などが経済産業省より
「近代産業遺産」
として認定を受け
江戸時代から昭和初期までの資料と文献で解説しています。
ました。
本博物館は、医療に関する研究の発展や薬に関する知識の普
公益財団法人内藤記念科学振興財団
及をめざして無料で公開し、2010 年度は年間約 42,000 人の
内藤記念科学振興財団は、エーザイ創業者の内藤豊次とエー
方々にご利用いただきました。各展示コーナーはテーマカラー
ザイ株式会社の寄付のもとに1969 年に設立されました。
で色分けして見やすく配置し、すべての解説文には英語を併記
人類の疾病の予防と治療に関する自然科学の研究を奨励し、
しています。
学術振興や人類福祉に寄与することを目的に運営されています。
• 内藤記念くすり博物館
所在地:岐阜県各務原市川島竹早町 1
開館時間:9 時∼ 16 時 30 分
休館日:月曜日、年末年始
入館料:無料
http://www.eisai.co.jp/museum
毎年第一線で活躍する研究者に対して助成金等を贈呈しており、
2010 年度は、科学振興賞と科学奨励金など総件数 257 件、総
額4 億円の助成金などを贈呈しました。さらに、国内外の特定研
究領域の第一人者が最新の情報を発表する
「内藤コンファレン
ス」
が毎年開催されています。
• 内藤記念科学振興財団ウェブサイト
http://www.naito-f.or.jp
32
エーザイ株式会社
公益財団法人医療科学研究所
英国のホスピスでのボランティア活動
創業 50 周年の記念事業の一環として、1990 年に医療科学研
英国にある欧州ナレッジセンターでは、社員が患者様を支援す
究所を創立しました。
ることで、hhcを実現に結び付けるボランティアプログラムを提供
医療および医薬品に関する経済学的調査・研究、医薬品な
しています。センター近郊でのボランティア活動を通じて、hhc 理
どに関する研究開発・生産・流通などについての調査・研究を
念に基づいた患者様の支援を行っています。
行うとともに、医療とその関連諸科学の学際的研究・調査を推
参加する社員は1カ月に2 度、センター近郊にあるイザベラ・
進し、わが国の医療と福祉の発展に寄与することを目的にして
ホスピス
(終末期医療施設)
を訪問し、入居者居室や受付での仕
います。研究成果は機関誌「医療と社会」
に掲載するなど、広く
事を手伝います。入居者居室では食事の介助などをする一方、
社会に公開しています。
なるべく患者様ご自身のお話をよく聞くように心がけています。
• 医療科学研究所ウェブサイト
http://www.iken.org
受付業務はご家族やご友人からの訪問や電話などに対応するた
めに忙しく、またご家族が苦悩する姿に触れることも多い活動と
なります。こうした終末期医療の現場に立ち会うことで患者様の
医療功労賞
hhc 理念と合致した重要な社会貢献活動として、1986 年より
「医療功労賞」
(主催:読売新聞社、後援:厚生労働省、日本テレ
真の思いに触れ、社員一人ひとりが hhc 理念を見つめ直すこと
ができます。
ビ放送網)
に協賛しています。困難な環境のもとで長年医療に従
中国での医学・薬学奨学金
事し、顕著な功績をあげた方々を表彰するものです。
中国子会社の衛材(中国)薬業有限公司は、2003 年より、
2010 年度は、国内部門として、救急医療の改善や離島・山
中国での医学の発展を奨励するために、医学生を対象とした
間・過疎化が進む地域での在宅医療や地域医療に取り組んでき
奨学金を提供しています。これまで、蘇州大学医学院、広州中
た15 人の方が受賞されました。
山大学医学院、上海交通大学医学院、蘇州医薬科技学校など
また海外部門では、タイの村で19 年にわたりハンセン病の後
の大学に
「衛材医薬奨学金」
を設立し、奨学金を提供してきま
遺症を抱える患者様の医療支援に従事してきた看護師をはじめ、
した。
南米パラグアイで眼科医として活躍し、地域住民やジャングル奥
2010 年度は、これら4つの大学の学生 155 人に対し、総額約
地の民族を対象に巡回診療を行った医師、および沖縄県派遣の
32 万 5,000 人民元(約 400 万円)の奨学金が授与されました。
専門家としてボリビア、メキシコに渡り、母子保健や感染症に関
また、これらの奨学生を対象とし、蘇州工場での見学会やイン
する教育活動などを行い現地の公衆衛生向上に貢献した保健師
ターンシップを実施し、学生の方々に薬の製造ラインを紹介した
の方々3 人が受賞されました。
り、実践的な技術について学んでもらう機会を提供しました。
「第 39 回 医療功労賞」表彰式
上海交通大学医学院の奨学生を対象とした見学会
•「第 39 回医療功労賞」紹介ページ
http://www.eisai.co.jp/social/award/award39.html
環境・社会報告書 2011
33
社会貢献活動
Column
1
「東日本大震災被災地におけるhhc 活動」
このたびの東日本大震災により被災された皆様に心よりお見
舞い申し上げます。エーザイグループでは、地震発生直後すみや
かに当社副社長を責任者とする現地対策本部を設置するととも
に2 億円の義援金を寄付することを決定し、東北エリアの全社員
が一丸となってhhc 理念に基づいた救済支援活動に取り組んでい
ます。
具体的には、各県の医師会・医療機関・学会などに被災地の
医療現場で使用する医療用医薬品として血栓症などの予防に必
要な血液凝固能検査を、簡易で早く行うことができる小型の医療
被災地におけるhhc 活動
機器を無償提供させていただきました。また現地 MRより、清浄
綿やビタミンドリンク等の一般ニーズに合致した製品も無償提供
するなど、引き続き支援活動に取り組んでいます。
被災された皆様に対して、これらの支援がお役に立つことを願
うとともに、被災地の一日も早い復興を心より祈念いたします。
Column
MRが撮影した被災後の野田村(岩手県)
町で唯一の診療所は津波により崩壊
2
米国子会社での
「ジーンズ・デイ・フォー・ジャパン」活動
東日本大震災の発生直後から、米国では日本の被災者のため
に支援を申し出る多数の社員の声がありました。そこで米国エー
ザイ・インクでは、2011 年3月24日から2日間にわたって
「ジーン
ズ・デイ・フォー・ジャパン」
と呼ばれる募金イベントを全米各地
で実施しました。これは、参加者が10 米ドルの募金とともに職場
にジーンズをはいてくる許可証を受け取り、災害支援を表明する
仕組みです。取引先の社員の方々までも参加し、販売提携パート
ナーであるアリーナ・ファーマシューティカルズ社でも同様のイ
ベントが開催されました。
このイベントでは、15,000 米ドル
(約120 万円)
を超える募金が
「ジーンズ・デイ・フォー・ジャパン」
で行われた、
「ジーンズ着用許可証」
配布の様子。参加者は募金と引き換えに許可証を受け取る
集まり、米国の社会貢献活動を手がけるエーザイUSA 財団が、
全米・カナダの社員が個別に寄付した金額を上乗せし、被災者支
援のために寄付する予定です。また欧州ナレッジセンターにおい
ても、社員の呼びかけによる募金活動を社内およびナレッジセン
ター近郊のチャリティ団体を通じて行いました。
34
エーザイ株式会社
「ジーンズ・デイ・フォー・ジャパン」
で
配布された許可証
患 者 様 からのご 意 見
てんかんについて知ってもらい、研究開発に反映してほしい
てんかんをもっと知り、関心を持ってほしい
私の息子は、生後7カ月で点頭てんかんと診断されました。
現在19 歳ですが、重度の知的障害と目の障害があります。
てんかんという病気は、あまり社会に知られていません。
てんかん発作は治療により約 8 割が制御可能とされていて、
中には発作がなくなる場合もあります。他の人同様に日常生
活が送れる人もいれば、息子のように知的障害がある人も
います。てんかんに対する一般的な認識は強いひきつけです
社団法人日本てんかん協会
「波の会」
埼玉県支部
森 みどり 様
プロフィール
お子様がてんかんと診断されたことが
きっかけで、
「波の会」埼玉県支部に入
会。その後、社会福祉士などの資格を
取得。社会に向けたてんかんに対する
啓発活動を行う傍ら、カウンセリングや
福祉コーディネート事業にも参加。
が、てんかん発作の種類は様々あり、軽い意識障害だけの人
継続して行ってきました。副作用のない薬はありえず、てん
もいて、発作の見極めや説明がむずかしい病気です。病状に
かんの患者もその親もそのことをわかって薬を使っています
より社会への参加も制限され、知られていないがゆえの差別
が、副作用に関して製薬企業に意見を言う機会はありません
を受けることも残念ながらあります。
でした。ですから、交流を重ねていく過程で、研究員の方々
私もそうでしたが、てんかんの子を持つ親は、病気と障害(生
が眠気の副作用という問題について理解を示し、研究チーム
活のしづらさ)
を受け入れることが困難で、すごくショックを受
全体でより副作用の少ない薬剤を創るための研究活動に取
けます。さらに治療法や薬など、わからないことばかりで混乱
り組まれたことは、大きな驚きとともに喜びに絶えません。
するのです。私は患者団体の中で様々な病状や立場の方々と
もし新薬が生まれれば、多くのてんかん患者に恩恵を与える
交流し、大きく励まされました。今は、若いお母様などで困っ
ものと期待しています。
ている方々に多少でも力になれればと活動を続けています。
また昨今、患者の中には発作の不安や薬の副作用などか
副作用の少ない薬の開発と、ともに歩める社会
づくりへ
てんかんの薬の副作用の一つに強い眠気があり、患者に
ら、長時間勤務がむずかしく、働き口が限られている場合も
多いのが実情です。働いて給料をもらい生活する、そのごく
ごく自然なことを、てんかん患者も送れるような社会になれ
ばと願ってやみません。エーザイに今後も期待することは、
よっては、仕事や生活に支障をきたすことがあります。昨年
QOLを高める新薬の開発と、てんかん患者が正しく認知さ
「波の会」埼
2月にエーザイからのお誘いで美里工場に伺い、
れ、ともに生きていける社会の実現への取り組みです。また
玉県支部が講演会を行ったのを契機に、勉強会と話し合いを
エーザイはそれを可能にする企業であると信じています。
患者様とご家族の皆様との対話をもとに、
社業の進むべき方向と企業の社会的責任を考えていきたいと思います。
「波の会」埼玉県支部の皆様との交流は、貴重な気づきとなり、それが大きな渦となって新薬の研
究活動につながりました。特に眠気の副作用の深刻さについては、患者様の生のご意見を伺うこと
ができ、大変な衝撃を受けた研究員もいました。現在、てんかん発作を抑制しつつ眠気の副作用が
少ないシード化合物の絞り込みまで進んだことをこの場でご報告するとともに、今後も患者様が待
ち望む治療薬の創出に全力を尽くします。
エーザイ株式会社 知創部部長
高山 千弘
また、エーザイはあらゆる企業活動において、患者様や障がい者の方々が安心して暮らせる環境
づくりをめざしています。障害と疾患が正しく理解され、てんかん患者様を含むすべての患者様や
障がい者の方々お一人ひとりに寄り添う社会の実現に向け、真 に全力で取り組んでいきます。
環境・社会報告書 2011
35
エーザイの環境活動
かけがえのない地球環境と
エーザイグループでは、地球環境の保護を重視した企業活動を行い、
環境保全に努めることを基本理念とする ENW 環境方針のもと、
世界各国で環境保全活動を展開しています。
チーフインフォメーションオフィサー(兼)
総務・環境安全担当執行役
平井 一雄
エー ザイネットワーク企業 *( ENW )環境方針
環境基本理念
ENWは、地球環境の保護を重視した企業活動を行い、環境保全に努めます。
環境行動指針
1.
かけがえのない地球環境を守るため、従業員一人ひとりが
「自然の尊さ・大切さ」
に思いをめぐらせ、企業活動を行
います。
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
製品の研究・開発から製造、流通、販売、使用、廃棄に至るすべての段階において、環境保全を最優先します。
9.
環境保全に関する方針、目標、プログラムおよび実績などの情報を、積極的に開示します。
環境管理体制を整備し、環境保全活動を推進します。
環境関連法、規則および協定の遵守はもとより、さらに厳しい自主基準を定めて活動します。
科学技術の進歩を積極的に採り入れ、最先端の環境負荷低減技術を確保します。
すべての企業活動において、省資源・省エネルギー、廃棄物削減および再利用に努めます。
環境に影響を及ぼす化学物質の使用量削減、除去を推進し、環境汚染の未然防止に努めます。
全従業員が環境基本理念を共有するとともに 、各職場で求められる専門性強化をはかる教育訓練を計画
的かつ継続的に実施します。
* エーザイネットワーク企業:エーザイ株式会社および国内外のグループ企業。
36
エーザイ株式会社
かけがえのない地球環境との
との調和をめざして
国内エーザイグループが連携・協力して
調和をめざして
におい
全委員会」
で策定し、
「国内ENW 環境安全協議会」
環境マネジメントを推進
てはグループ企業間での情報交換を密にして連携・協力
エーザイグループでは、hhc 理念の実現に向けて地球環
する体制を整え、環境保全活動を推進しています。
境との調和が大切であると考えています。そのための取り
さらに、エーザイ株式会社では、2010 年 4 月より施行
組みとして、国内グループでは企業単位・事業所単位で環
された改正省エネ法に基づき、エネルギー使用の合理化
境マネジメントシステムを構築し、PDCAサイクル
( P31 参
を追求するエネルギー管理責任者体制を整備しました。
照)
により継続的に改善しながら環境保全活動を展開して
います。また、環境保全に関する基本方針を
「全社環境安
グループが一体となった環境マネジメントの実践
エーザイ株式会社の環境に関する重要事項を審議・決定する機関として全社環境安全委員会が設置されています。また、
国内グループの協議機関として国内 ENW 環境安全協議会が設けられており、環境活動の方針や事例の共有化をはかってい
ます。国内グループの各事業所では、環境関連会議が定期的に開催され、主体的な管理・推進体制も築かれています。さらに、
国内主要生産拠点ではISO14001*1 の認証取得も完了しており、グループ全体で一貫性のある力強い環境活動を展開するた
め、環境管理体制の整備を進めています。
*1
が発行した環境マネジメントに関する国際規格。
ISO14001:国際標準化機構(International Organization for Standardization)
2010 年度 環境マネジメント推進体制
専門委員会
・グリーン購入推進者会
環境安全担当執行役
エーザイ株式会社
全社環境安全委員会
環境関連会議
事業所・本社ビル群*1・
コミュニケーションオフィス*2
専門委員会
・省エネ検討会
・廃棄物検討会
環境安全部
国内 ENW 環境安全協議会
国内グループ企業
海外グループ企業
エーザイ株式会社の本社機能を担うビル群
*2
エーザイ株式会社の国内営業拠点 67カ所
*1
エネルギー管理責任者体制の整備
(改正省エネ法対応)
環境関連会議
エネルギー管理責任者体制
エネルギー管理統括者
2010 年度施行の改正省エネ法への対応と
(環境安全担当執行役)
して、管理責任者体制を整備しました。エネル
エネルギー管理企画推進者
ギー管理統括者を環境安全担当執行役とし、
(環境安全部エネルギー担当)
製造・研究拠点、本社ビル群およびコミュニ
ケーションオフィスを一括管理する体制とし
ました。第一種エネルギー管理指定工場にお
いては、エネルギー管理者を設置しました。
川島工場
設備環境安全
室長/エネル
ギー管理者
美里工場
設備環境安全
室長/エネル
ギー管理者
鹿島事業所
設備環境安全
室長/エネル
ギー管理者
筑波研究所
業務推進部長/
エネルギー管
理者
本社ビル群
総務部長
コミュニケーション
オフィス
エーザイ・ジャパン
管理推進部長
環境・社会報告書
37
2010 年度、エーザイの環境活動は
一歩前進しました
持続可能な社会の実現に向けて
新たなプランを策定
エーザイ株式会社では、2010 年 4 月より知識創造の新
地球温暖化による環境破壊や天然資源の枯渇といった問
たな拠点となる小石川ナレッジセンター( KKC )
が稼働開
題を解決し、持続可能な社会を築くためには、さらなる努力
始しました。国内グループは、KKCを加えた新しい体制の
が求められています。現状では、国内グループのCO2 排出
もとで連携・協力しながら環境マネジメントシステムに基
量は
「1990 年度レベル
(51,658トン)
にする」
という目標か
づく環境保全活動を展開し、CO2 排出量削減、廃棄物発
ら大きく乖離しているため、今後は、社内における省エネル
生量の削減とリサイクルの推進、グリーン購入の推進、環
ギー意識の向上はもとより、CO2 排出量に対して大きな割
境教育の充実に取り組みました。
合を占める工場・研究所の空調へのヒートポンプ技術の導
CO2 排出量削減による地球温暖化防止に向け、2007
年度から
「 2008 ∼ 2012 年度のCO2 排出量の平均値を
(51,658トン)
にする」
ことを目標に努力
1990 年度レベル
を重ねています。2010 年度の排出量は76,043トンで、前
年度(75,293トン)
に比べほぼ横ばいでした。
廃棄物発生量の削減とリサイクルの推進では、これまで
入、および気化式加湿方式の本格的導入などをさらに進め、
エネルギーコストとCO2 排出量の削減をはかります。
また、廃棄物発生量の削減とリサイクルの推進では、
「 2010 年度ゼロエミッション計画」
の達成に満足すること
なく、国内グループ全体で2015 年度の最終埋立量を10ト
ン以下の9.6トンとし、また、その割合を廃棄物発生量に
廃棄物として処理していたPTP(P15 参照)
打ち抜きくずを
対して0.15%とする新たな5カ年計画を策定しました。
再資源化するなど新たな試みも軌道に乗せ、
「2010 年度ゼ
2011 年度も資源の投入と環境への負荷を定量的に把
ロエミッション計画」
による目標を3 年連続で達成しました。
環境に配慮された物品を購入し使用するグリーン購入
握しながら、環境負荷低減への取り組みを着実に推進し
ていきます。
の推進では、国内グループ全体の2010 年度グリーン購入
率は、前年度と同じ32%でした。
環境教育については、企業単位・事業所単位で計画・
実施しており、必要に応じてエーザイ株式会社 環境安全
チーフインフォメーションオフィサー(兼)
総務・環境安全担当執行役
部や社外講師による研修を行っています。2010 年度は企
業全体で78 回の社内環境研修を実施しました。
最新の省エネ技術を駆使した
小石川ナレッジセンター
小石川ナレッジセンター( KKC )
は、最新の省エネルギー技術として、高効率
な照明器具や空調システムを導入するとともに、人感センサーなどを駆使して
これらの運転を全自動制御しています。全体の最適化によって快適さを保ちな
がら高い省エネルギー効果を生み出すことが可能です。設計段階の試算では、
照明エネルギー関連で49.6%、空調エネルギー関連で27.3%、KKC 全体では
24.0%の省エネルギー・CO2 排出量削減効果が得られると見込まれています。
38
エーザイ株式会社
小石川ナレッジセンター
かけがえのない地球環境との
調和をめざして
地域社会との対話を重視した環境活動
国内グループでは、あらゆる環境保全活動は地域社会との相互理解・共感なくして成立しえないと考えています。そのため
の情報共有や対話に基づくコミュニケーションの場として地区懇談会を開催しています。事業内容や環境保全活動の取り組み
を紹介するとともに、工場への意見や要望を直接お伺いしています。近隣地区代表の皆様や行政担当者の皆様に参加いただ
くかたちで、美里工場では 2001 年から、川島工場では2008 年から毎年実施しています。
「工場用地買収の時からこの地を見ており、緑をこ
2010 年12月に川島工場で開催した懇談会では12 名の方に参加いただき、
のまま維持して欲しい」
「 地域住民たちにもっと工場を見る機会を増やして欲しい」
などのご意見をいただきました。地域社会と
のさらなる協調・共存をはかるため、地区懇談会の開催や工場見学の受け入れなどの交流を今後も積極的に実施していきます。
2010 年度 環境リスクに関する事例と対策
環境リスク
事業所名/企業名
内
容
対
応
漏
洩
鹿島事業所
第一冷凍機械室に設置してある製造用ブライン
冷凍機の配管より冷媒用フロンガスが漏洩した。
① 冷凍機を停止、機器中に残留していたフロンガスを一旦、全量回収した。 城県に環境事故
として報告した後、配管の漏洩部位を修繕、フロンガスを充填して冷凍機を再稼働した。
②断熱材の経年劣化による配管フレアーナット部の緩みと亀裂発生が原因であったため、他の
冷凍機も点検・確認を行った。今後、長期に使用する冷凍機については断熱材を定期的に
更新、定期点検時には配管接続部のガス漏れと断熱材のチェックをする規定とした。
漏
洩
筑波研究所
中水 設 備において凝 集 漕への送 液 配 管にピン
ホールが生じ、ポリ鉄(硫酸第二鉄)
が漏洩した。
漏洩したポリ鉄はすべて雨水枡に留まり、外部へ
の流出はなかった。
① 発見後、直ちにポリ鉄注入ポンプを停止、雨水系統配管の雨水枡へ流出したポリ鉄を全量
回収した。漏洩した配管は、ピンホールが発生しづらい材質の配管へと交換した。
②薬品漏洩を初期に感知するため、PHセンサーを雨水排水枡内に増設、中央監視室で監視・
対応できる体制を整えた。
サンプラネット
(株)
屋外に設置してある塩酸タンクの更新事前調査
中、作業員がスケールを落とし、当たった配管継
手部より少量の塩酸が防液堤内へ漏洩した。漏洩
した塩酸は防液提中に留まり、外部への流出はな
かった。
漏洩箇所のテーピングにより応急処置をした後、より衝撃に強いライニング配管に交換した。
漏洩した塩酸は散水により希釈後、回収・廃棄した。
生産研究棟屋上に設置されたエアコン屋外機の
冷却器フィンコイルから冷媒用フロンガスが漏洩
した。
発見後、直ちに屋外機と屋内機をつなぐ冷媒配管のバルブを閉め、漏洩箇所の特定と残った
フロンガスの回収を試みた。しかし、すでに全量が大気中に放出されたことが判明、 城県へ
環境事故として報告した。故障したエアコンは更新した。
漏
洩
漏
洩
エーディア
(株)
(旧三光純薬) 城事業所
2010 年度 国内における環境保全活動への取り組みと実績
テーマ
目
標
実
績
評
価
関連頁
環境マネジメントシステムの充実
システムの充実による環境管理活動の確実な実行
・PDCAサイクルの的確な運用
・ISO14001 の定期・更新審査(川島、美里、鹿島、
サンノーバ、エーザイ生科研)
・EA21*1の中間・更新審査
(サンプラネット、エーザイ物
流)
CO2 排出量削減
・2008 ∼ 2012 年度の CO 2 排出量の平均値を 1990 年度
レベルにする
2009 年度比 1.0%増加(1990 年度比 147%)
廃棄物発生量削減・リサイクルの推進
最終埋立量 / 廃棄物発生量の比率が
・国内 4 事業所*2 ≦0.3%
・本社ビル群・コミュニケーションオフィス 2.0%
・国内グループ企業*3 0.5%
・国内 4 事業所=0.10%
・本社ビル群・コミュニケーションオフィス=1.28%
・国内グループ企業=0.65%
○
P42–43
グリーン購入の推進
推進体制強化による実績把握と購入促進・啓発教育の実施
グリーン購入率= 32%( 2009 年度比 0%)
△
P38
環境教育の充実
環境教育計画の作成・実施
社内研修:52 回
社外研修:26 回
○
P38
○
P37
P40–41
* 1 エコアクション21:環境省が策定した中小事業者等向けの環境マネジメントシステム。
、鹿島事業所、筑波研究所。
* 2 エーザイ株式会社の4 事業所:川島工場、美里工場(本庄を含む)
* 3 エーザイ株式会社を含まない国内グループ企業 11 社。
環境・社会報告書
39
地球温暖化防止
CO2 排出量削減に知恵と技術を結集
2010 年度のCO2 排出量実績
製薬産業におけるエネルギー使用
国内グループでは、地球温暖化防止のため2006 年度までは
製薬産業では、製品の厳格な品質保持のために医薬品等の品
ことを目標
「 2010 年度のCO2 排出量を1990 年度レベルにする」
の遵守が必要です。そのため
質管理基準であるGMP( P9 参照)
に取り組んできました。2006 年度には日本経済団体連合会に
GMP 対応が必要な施設では、工程ごとに夏の冷房、冬の加温・
よる環境自主行動計画の目標年が変更され、それに伴い、国内
加湿と施設内の厳格な温湿度管理が昼夜を問わず求められるこ
「 2008 ∼ 2012 年度のCO2
グループでも2007 年度から目標を
とになります。また、研究施設においても医薬品等の非臨床試
排出量の平均値を1990 年度レベルにする」
ことに変更しました。
験のデータの信頼性を確保するための実施基準であるGLP
2010 年度のCO2 排出量は76,043トンで前年度と比較してほぼ
の遵守が必要です。
横ばいでした。
従って、GMPやGLP 施設では、設備・機器類の運転に要する
CO2 排出量の推移
エネルギーに加えGMPおよび GLP 遵守のために使われるエネ
(t)
100,000
84,899
60,000
ルギーが必要となり、CO2 排出量が増加します。
88,125
10,744
80,000
10,897
76,921
75,293
76,043
9,473
9,552
10,315
7,082
20,000
0
国内グループの
CO2排出量削減目標
51,658
40,000
( P13 参照)
が定められており、GLP 施設でもGMP 同様に基準
74,002
77,381
67,448
65,741
65,728
2008 ∼2012 年度の
CO2 排出量平均値を
1990 年度レベルにする
省エネ検討会で情報の共有化
国内グループでは、年間 3 回の
「省エネ検討会」
を実施してい
ます。各事業所、グループ企業の規模や大きさも異なり、形態も
工場・研究所やオフィスと様々ですが、新たなアイデアや実践例
の共有化をはかり省エネルギー活動の推進に役立てています。
44,575
エーザイ株式会社のCO2 排出量で約 95%を占める工場・研
1990
エーザイ株式会社
2006
2007
2008
2009
2010
国内グループ企業
注 2009 年度データは、排出係数の確定により昨年報告のものから変更しました。
(年度)
究所の設備環境技術者と社外専門家で構成される
「省エネ技術
検討会」
を2009 年度に立ち上げました。この検討会では、工場・
研究所が導入した設備・機器の適正運用実績や省エネルギー技
Column
筑波研究所で進む蒸気レス空調システムの開発
ヒートポンプの排熱を利用した蒸気レス空調システムの導入については
「環境・社会報告書 2010」
で
すでに報告しました。2008 年 12 月に1 号機を導入後、加湿性能、制御性能および省エネルギー性能の
実証試験を行い、社外専門家と共同で評価してきました。2010 年 1 月から12 月までの運転実績では、
年間約 280トンのCO2 排出量と約 850 万円の運転コストが削減されました。
しかし、それまで行ってきた外調機内の定期細菌測定、加湿ユニットの付着菌検査の結果では、微量
ではありますが、加湿ユニットの付着菌が検出されていました。2010 年度には、省エネルギー性能向上
と外調機内の細菌、真菌の発生を抑制する工夫をした2 号機を導入し、GMP・GLP 施設への導入を視
野に入れた検討を行っています。
筑波研究所に導入した蒸気レス空調システムの検討成果を、2011 年 3 月開催の公益社団法人 日本冷
凍空調学会のヒートポンプセミナーで発表しました。また、空調専門誌への論文投稿も行うなど広く産
業界へ公表しています。
40
エーザイ株式会社
出典:日本工業出版「クリーンテクノロジー」誌
地球環境と調和する
企業をめざして
術の運用データをもとに検討を行い、省エネルギーやCO2 排出
オフィスで取り組む環境保全活動
量削減をさらに促進することを目的としています。2010 年度は、
オフィスにおける環境保全活動を円滑に推進するため、エー
エーザイ株式会社の設備環境技術者と社外専門家参加のもと、
ザイ株式会社 本社ビル群では、環境委員会を設置し、環境整備
蒸気レス空調システムやヒートポンプ技術を用いた省エネルギー
窓口担当者による支援体制を整えています。
について熱心な検討を行いました。
新エネルギーシステムの導入促進
2010 年度は、継続して取り組んできた代替フロン使用の冷蔵
庫から地球温暖化作用のないノンフロン省エネルギー型の冷蔵庫
への更新を完了しました。また、新たに照度調節による節電の取
エーザイ株式会社では、CO2 排出量の削減に向けて効率的な
り組みを開始し、本社ビル群で実施した照度適正化調査をもとに、
エネルギーへの転換を進めてきました。2007 年 8 月には、製造
オフィス照度について外部講師を招いた研修会を開催しました。
拠点でのA 重油から都市ガスへの第一次燃料転換を完了しまし
コミュニケーションオフィスでは、電気使用量のコスト換算に
た。2008 年度からは、さらにエネルギー効率の高いヒートポン
よる
「見える化」
やIDカードによるプリンタ複合機の出力管理な
プ技術の導入による都市ガスから電気への第二次燃料転換を開
ど、省エネルギー・省資源のモチベーションを高める取り組みも
始し、実証評価を行ってきました。2010 年度には、実証評価を
拡大しました。
もとに設備の更新にあわせた投資を行いました。
ヒートポンプ技術でCO2 排出量削減
営業車をハイブリッド車に
エーザイ株式会社では、CO2 排出量削減の一環として、社有
電気エネルギーを利用するヒートポンプ技術は、化石燃料を
営業車をCO2 排出量がより少ないハイブリッド車に順次切り替
エネルギーとして利用する従来システムと比較して省エネルギー
えてきました。2010 年度は、97 台を切り替えました。営業活動
効果が大きく、CO2 排出量の削減に貢献します。
における安全性配慮が必要な場合を除き、すべての社有営業車
川島工場ではこれまで、エネルギー使用量の50%を占める冷
凍機の更新を行ってきました。2010 年度は、従来の蒸気式の
冷凍機と温水器をヒートポンプ式のものに更新し、省エネル
ギー・CO2 排出量削減効果の高い冷温水の供給システムを構築
のハイブリッド化を進めていきます。私有営業車についても社有
営業車と同様にハイブリッド車への切り替えを進めています。
風力発電による自然エネルギー購入
しました。また、エネルギー事情とコストに着目し、年間通じて
エーザイ株式会社は、日本自然エネルギー株式会社のグリー
温水を取り出すシステムに工夫を加え、都市ガスのコストが高い
ン電力証書システムに100 万 kWh/ 年間を購入する契約で設立
時期は電気で温水を製造し、電気需要が多く不足気味な時期は
当初から加入しています。
都市ガスで温水を製造して電気使用量を削減するというエネル
ギー使用の多元化を実現しました。
2010 年度は、約 300トンのCO2 排出量に相当する96.2 万
kWhのグリーン電力を購入しました。
このように、ヒートポンプ技術の導入を中心に、社外専門家の
知恵をも結集させて川島工場の省エネルギーを推進しました。
2010 年度、川島工場では冷
凍機の更新に総額約2 億500 万
円を投資し、年間約 2,500トン
と大幅なCO2 排出量削減を達
成しました。
冷温水同時取り出し式ヒートポンプ
環境・社会報告書 2011
41
廃棄物削減
3R *の質的向上とコンプライアンスとしての現地確認調査
最終埋立処分を限りなくゼロに
より質の高いリサイクルをめざすことも重要となります。そこに
国内グループでは、2010 年度に最終埋立量/廃棄物発生量
数値目標を超えた 3R の質的な向上という新たな目標が見えて
「 2010 年度ゼロエミッション計画」
を
の比率を1%未満とする
きます。
2005 年度に策定し、廃棄物発生量の削減、リサイクル量の拡
国内グループでは、試験機器などそのままリユースできる物
大、最終埋立量の削減に取り組んできました。その結果、2010
品については売却ルートを探し、リユースの難しい鉄くず、社
年度の最終埋立量/廃棄物発生量の比率は 0.35%でした。
員食堂の廃油などは、有価売却やリサイクル処理を行っていま
す。さらに、より質の高い処理を行う廃棄物業者をリサーチす
3R の質的向上という新たな目標
るなどの活動を日常的に実践しています。
廃棄物削減を推進するには、廃棄物の発生抑制(リデュー
*
、Reuse(再利用)
、Recycle(再資源化)
の頭文字からなる
3R:Reduce(廃棄物の発生抑制)
循環型社会の形成に向けたキーワード。
ス)
とともに、金属、廃油、紙類などの資源の再利用、再資源化
廃棄物処理委託先に対する
現地確認調査の徹底
(リユース、リサイクル)
を積極的に行っていく必要があります。
たとえば、発生した廃棄物を焼却し、焼却後の灰を路盤材など
廃棄物を適正に処理することは、排出事業者としての基本で
にリサイクルする方法から、より環境に負荷をかけずに破砕処
す。そのため国内グループでは、廃棄物処理の委託契約先企
理等をした廃棄物をそのまま原料としてリサイクルするなど、
業に対して、作業状況や適正な廃棄物処理が
廃棄物発生量および最終埋立量/廃棄物発生量の推移
(%)
(t)
15,000
2.5
実施されていることを確認するための現地確
認調査を行っています。共通の調査表をもと
に、廃棄物収集・運搬、中間処理の委託先企
12,707
2.0
12,000
業を対象に年 1 回、最終処分業者に対しては
3 年に1 回、定期的に調査を実施しています。
国内グループの新規契約の場合には、エー
1.5
9,000
な現地確認調査を行っています。エーザイ株
7,634
1.2
7,095
式会社が締結する新規契約では、さらに全社
6,000
1.0
5,725
5,288
0.9
0
0.5
2006
1,070
2007
0.5
0.23
1,178
1,060
2008
2009
エーザイ株式会社単体の最終埋立量およびリサイクル量の推移
2006 年度
2007 年度
ループ総計 100 件以上の現地確認調査を実
1,280
施し、適切な産業廃棄物の処理が行われたこ
2010
2008 年度
0
(年度)
2009 年度
(単位:t )
2010 年度
最終埋立量
122
90
26
8
15
リサイクル量
3,388
3,007
2,771
2,431
2,421
2008 年度
2009 年度
国内グループ企業の最終埋立量およびリサイクル量の推移
2006 年度
2007 年度
(単位:t )
2010 年度
最終埋立量
18
17
12
8
8
リサイクル量
370
330
372
418
467
注 2009 年度データは、再集計により昨年報告のものから変更しました。
エーザイ株式会社
2010 年 度は、全 国 各 地において国内グ
0.35
廃棄物発生量(エーザイ株式会社)
廃棄物発生量(国内グループ企業)
最終埋立量/廃棄物発生量の比率(国内グループ)
42
環境安全委員会での審議・委員長決裁を経る
プロセスが設定されています。
3,000
1,519
ザイ株式会社 環境安全部が立ち会い、入念
とを確認しています。
地球環境と調和する
企業をめざして
情報交換会で実践的ノウハウ共有
また、2010 年度には、国内グループの現地確認調査担当者
2010 年度より国内グループでは、事業規模が大きく、廃棄物
のスキルアップをはかるために、外部講師を迎えて現地確認技
を多く排出している工場・研究所の担当者が集まり、廃棄物処
術力向上セミナーを開催しました。
理の実践的なノウハウや処理業者
に関する情報を共有するための情
2010 年度 現地確認調査の実績
報交換会をスタートさせました。第
1 回は、アスベスト含有廃棄物の処
理方法や、パソコン等に使用されて
北海道エリア
5件
いる小型電池パックの有価物として
の処理状況に関する情報交換を行
いました。
関西エリア
17 件
関東エリア
中国エリア
8件
九州エリア
9件
東北エリア
5件
64 件
中部エリア
24 件
Column
美里工場におけるPTP 再資源化が
廃棄物発生量の削減に貢献
PTP 打ち抜きくず
医薬品の包装に使用されているPTPシートは、アルミ箔とプラスチックの混合物で
す。美里工場では、医薬品の生産工程で発生するPTP 打ち抜きくずの排出量が年間
65トンにもおよび、保管場所には大きな容積が必要です。従来の廃棄処理方法では
特別な処理で2 つの原料に
することができます。
焼却または固形燃料化( RPF*)
しかなく、RPFとして処理される廃棄物の60%を占
めていました。
そこで、2009 年度からPTP 打ち抜きくずのリサイクルに関する検討を開始し、2010
年度にはPTP 打ち抜きくずをアルミ箔とプラスチックに分離する処理法を確立、有価
取引による原料再資源化を実現しました。今後もさらなる検討を重ね、国内グループ
の他の工場においてもPTP 打ち抜きくずの再資源化をはかっていきます。
アルミニウムとして再利用
プラスチックとして再利用
* RPF:Refuse Paper & Plastic Fuel の略称で、古紙およびプラスチックを原料とした固形燃料。
環境・社会報告書 2011
43
資 源の投 入と環 境への負荷
国内グループの資源投入と環境負荷
エネルギー
水
PRTR 対象物質
電気( MWh )
LPG( t )
水の使用量(千 Nm3)
113,569 + 21,681
= 135,250
77 + 18
= 95
2,487 + 115
= 2,602
総取扱量
都市ガス
(千 Nm3)
灯油( kℓ)
上水(千 m3)
工業用水(千m3)
12,728 + 1,336
= 14,064
2 + 76
= 79
565 + 93
= 658
10 + 14
= 24
A 重油( kℓ)
購入蒸気( GJ )
地下水(千 m3)
11 + 171
= 181
46,387 + 0
= 46,387
1,876 + 8
= 1,884
温水( GJ )
冷水( GJ )
75 + 0
= 75
303 + 0
= 303
(非届出分を含む)
(t)
589 + 67
= 656
そのほか
容器・包装リサイクル
(t)
(再商品化義務量)
コピー用紙購入
(万枚)
1,282 + 28
= 1,310
2,769 + 821
= 3,590
数値の見方
中水(再利用水)
電気( MWh )
37 + 0
= 37
=
(千 m3)
0,000 +
0,000
0,000
… エーザイ株式会社
(エーザイ株式会社単体)
… 国内グループ企業
(エーザイ株式会社を含まない国内グループ企業11社)
資源の投入
… 国内グループ
(エーザイ株式会社および国内グループ企業 11 社)
製品を研究・開発・製造・販売
するために必要な資源
国内グループの
事業活動
様々な資源を使って
患者様に製品を提供
その結果、地球に排出されるもの
総発生量( t )
環境への負荷
5,288 + 1,280
= 6,568
リサイクル量( t )
2,421 + 467
= 2,887
最終埋立量( t )
15 + 8
= 23
PRTR 対象物質
(廃棄物)
(t)
325 + 1
= 326
廃棄物
排水量(千 m3)
2,309 + 95
= 2,404
BOD( t )
9.4 + 0.3
= 9.7
窒素( t )
4.5 + 0.7
= 5.2
COD( t )
CO(
2 t)
2.8 + 0.6
= 3.4
65,728 + 10,315
= 76,043
リン
(t)
SOx( t )
0.2 + 0.1
= 0.3
PRTR 対象物質
(水域)
(t)
0.1 + 0.0
= 0.1
水系への排出
営業用車両の CO2
(t)
4,351 + 588
= 4,939
業務用車両の CO2
(t)
57 + 167
= 224
車両からの排出
2.3 + 0.0
= 2.3
NOx( t )
14.4 + 2.5
= 16.9
ばいじん( t )
0.9 + 0.0
= 0.9
PRTR 対象物質
(大気)
(t)
17.5 + 0.2
= 17.7
大気への排出
注 1 端数処理のためAとBの合計値が Cと合致しない項目があります。
注 2 CO₂排出量はエネルギー使用によるもののみです。
が担っていますが、同社は主に流通の管理や物流センターの管理を行っており、輸配送はすべて外部の業者に委託しています。エーザイ物流(株)
注 3 国内グループの国内における医薬品の物流や配送は、エーザイ物流(株)
所有の業務用車両は輸配送には一切使用せず、社内用にのみ使用しています。
44
エーザイ株式会社
地球環境と調和する
企業をめざして
(「主な実施事項」
の○は投資を、△は費用を表しています)
2010 年度 環境保全コスト
大分類
中分類
主な実施事項
1.環境管理体制
(単位:百万円)
○投資
△費用
0
5
465
5
△ ISO14001 定期・更新審査
主な効果(成果)
関連頁
・環境保全活動の推進
P39
○高効率ヒートポンプ導入
2.省エネ・地球温暖化防止
3.省資源活動
( A )環境目標達成コスト
○冷凍機更新
△ハイブリッド車(営業用)導入
P40–41
・97 台
△グリーン電力購入
・96.2 万 kWh
△中水設備維持管理
・中水(再利用水 37 千 m3)
△グリーン購入
0
4,627
47
33
0
1
・環境配慮型製品・包材の購入促進
P38–39
○パッケージエアコン更新
4.大気汚染防止
△ボイラー修理・点検
・大気汚染防止
P47
△大気分析
5.化学物質管理
△有機溶剤・特定化学物質環境測定
△廃棄物処理委託
・化学物質の適正な管理の推進
P44–45
・廃棄物発生量 217トン減
6.廃棄物の削減等の取組み
0
194
・リサイクル量 38トン増加
P42–43
・外部最終埋立量 7トン増加
7.製品設計
△廃棄物施設管理*
△ PCB 処理委託
1.廃棄物の法規制対応
0
0
0
96
45
274
・関連法規制対策
P42–43
○排水処理施設設置
( B )環境関連法規制
対応コスト
○中水設備汚泥脱水装置更新
2.公害防止
△排水処理施設管理*
・汚染物質流出防止
P47
△排水・騒音・振動・悪臭測定
( C )環境管理活動コスト
3.土壌対策
△ 土壌汚染調査
0
0
4.容器包装リサイクル
△容器包装リサイクル委託
0
22
1.A 、B 以外の環境関連コスト
△緑化維持管理
△環境・社会報告書 2010 の発行
合 計
0
151
557
5,408
・土壌・地下水汚染防止
・容器包装リサイクル法の遵守
P44
・自然と共生した事業活動の推進
・コミュニケーションの向上
* 減価償却費を含む。
環境保全対策に伴う経済効果
(単位:百万円)
項 目
内 容
金
製品以外の副生物の売却額
再資源化(有償物)
により得られた収入額
合成溶媒循環利用による使用量の節減額
工程内での廃溶媒の蒸留による再生利用の節減額
額
16
4
合 計
20
2010 年度 PRTR 届出物質の排出・移動量
(単位:t )
排出量
移動量
号
番号
届出
事業所数
事業所
取扱量
亜鉛の水溶性化合物
大気へ
1
2
48.519
0.000
0.056
0.052
0.000
アクリルアミド
2
1
7.840
0.000
0.000
0.000
0.000
アセトニトリル
13
3
19.979
0.122
0.000
19.857
0.000
エチルベンゼン
53
1
4.767
0.000
0.000
1.027
0.000
186
2
68.272
9.765
0.000
15.479
0.000
N,N- ジメチルホルムアミド
232
1
8.468
0.002
0.000
8.466
0.000
イソフィトール
269
1
178.296
0.000
0.000
0.000
0.000
銅水溶性塩(錯塩を除く)
272
1
3.915
0.000
0.001
0.000
0.000
トルエン
300
2
155.959
6.061
0.017
149.897
0.000
物質名
ジクロロメタン
(別名塩化メチレン)
集計範囲:国内グループ
対象期間:2010 年4月1日∼2011 年3月31日
注 1 金額は10 万円単位を四捨五入しています。
注 2 人件費については、2004 年度より委託業者分のみを
計上しています。
水域へ
廃棄物として
下水へ
ヘキサン
392
1
123.384
1.156
0.000
122.228
0.000
ほう素およびその化合物
405
1
1.818
0.000
0.001
0.000
0.000
ホルムアルデヒド
411
1
1.350
0.084
0.000
0.372
0.000
マンガンおよびその化合物
412
1
22.407
0.000
0.002
0.000
0.000
ジクロロメタン使用量の推移
(年度)
2006
1,193
2007
533
2008
615
2009
365
2010
108
0
300
600
900
1,200 1,500
(t)
注 使用量には再利用分も含みます。
環境・社会報告書 2011
45
資 源 投 入・環 境負荷データ
各拠点別 CO2 排出量の推移
各拠点別廃棄物発生量の推移
■2006 ■2007 ■2008 ■2009 ■2010
エーザイ株式会社
0
5,000
■2006 ■2007 ■2008 ■2009 ■2010
10,000
15,000
20,000
川島工場
25,000
(t)
30,000
2,000
筑波研究所
1,624
275
本社ビル群
本社ビル群
1,627
635
コミュニケーションオフィス
1,340
国内グループ企業
179
国内グループ企業
サンノーバ(株)
サンノーバ(株)
6,250
772
(株)サンプラネット
(株)サンプラネット
1,224
123
■スケール拡大
エーザイ物流(株)
1,210
0
200
400
600
エーザイ生科研(株)
800
(t)
1,000
■スケール拡大
エーザイ物流(株)
79
0
40
80
(株)カン研究所
513
21
エーザイマシナリー(株)
エーザイマシナリー(株)
57
ブラッコ・エーザイ(株)
6
ブラッコ・エーザイ(株)
77
エルメッドエーザイ(株)
エルメッドエーザイ(株)
103
(株)パルマビーズ研究所
12
エーザイ株式会社
20
5
エーザイフード・ケミカル
(株)
34
(株)パルマビーズ研究所
46
160
(t)
200
184
(株)カン研究所
エーディア
(株)
(旧三光純薬)
120
エーザイ生科研(株)
232
エーザイフード・ケミカル
(株)
(t)
8,000
筑波研究所
16,286
コミュニケーションオフィス
6,000
1,409
鹿島事業所
6,384
4,000
1,165
美里工場(本庄を含む)
17,156
鹿島事業所
0
川島工場
22,934
美里工場(本庄を含む)
エーザイ株式会社
604
エーディア
(株)
(旧三光純薬)
9
4
57
地球環境と調和する
企業をめざして
大気汚染物質排出量の推移
2006
2007
2010 年度 各工場・研究所の大気汚染物質排出量
2008
2009
2010
■エーザイ株式会社 ■エーザイ株式会社 ■エーザイ株式会社 ■エーザイ株式会社 ■エーザイ株式会社
■国内グループ企業 ■国内グループ企業 ■国内グループ企業 ■国内グループ企業 ■国内グループ企業
分類
事業所名・企業名
■スケール拡大
3.1 0.1
エーザイ
株式会社
1.7 0
ばいじん
1.3 0
1.0 0
0.9 0
0
5.2
2
4
2.1
国内
グループ企業
4.6 0
SOx
2.4 0
2.9 0
ばいじん
SOx
NOx
( kg )
( kg )
( kg )
川島工場
645.8
1841.6
8,169.2
美里工場
26.3
154.5
3,362.6
本庄事業所
̶
̶
̶
鹿島事業所
̶
̶
̶
筑波研究所
204.8
351.1
2,845.2
0.0
0.0
2,500.8
0.0
0.0
39.5
サンノーバ
(株)
エーディア
(株)
(旧三光純薬) 城事業所
ー: 未測定
2.3 0
16.0
2.5
17.9
NOx
0.9
16.4 1.4
15.4
1.7
14.4
0
5
10
2.5
15
25 ( t )
20
2010 年度 各工場・研究所の排水負荷
排水負荷の推移
2006
2007
2008
2009
2010
■エーザイ株式会社 ■エーザイ株式会社 ■エーザイ株式会社 ■エーザイ株式会社 ■エーザイ株式会社
■国内グループ企業 ■国内グループ企業 ■国内グループ企業 ■国内グループ企業 ■国内グループ企業
6.8
分類
1.2
7.9
エーザイ
株式会社
1.0
BOD
10.2
9.4
9.4
0.3
0.5
COD
2.8 0.6
国内
グループ
企業
4.1 0.9
1.3
5.0
1.2
5.7
窒素
( kg )
リン
( kg )
1,937.9
̶
2,766.5
116.3
美里工場
793.4
2,192.7
1,356.5
39.7
本庄事業所
482.7
̶
97.4
23.9
鹿島事業所
432.4
642.2
259.4
37.4
筑波研究所
5,725.4
̶
̶
̶
201.5
142.0
560.7
73.6
81.9
378.3
111.8
23.3
エーディア
(株)
(旧三光純薬) 城事業所
6.1
12.1
33.4
0.9
(株)
サンプラネット
上石津事業所
(旧 BMR センター )
3.3
32.4
̶
̶
32.7
22.6
̶
̶
サンノーバ
(株)
3.1 0.7
窒素
COD
( kg )
川島工場
エーザイ生科研(株)
1.0
2.7 0.6
4.6
BOD
( kg )
0.3
5.8 0.9
5.8
事業所名
・企業名
1.0
(株)
サンプラネット美里ラボ
(美里本部含む)
4.5 0.7
■スケール拡大
0.2 0.2
ー: 未測定
0.3 0.2
リン
0.2 0.3
0.2 0.4
0.2 0.1
0
0
3
6
0.5
9
1
12
15( t )
環境・社会報告書 2011
47
資 源 投 入・環 境負荷データ
( 海外 )
アンドーバー研究所(米国)
ノースカロライナ工場(米国)
2006
2007
2008
2009
2010
2008
2009
2010
11,063
電気
(MWh)
13,790
16,523
16,302
13,231
95,904 150,543 161,379
ガス
(千m3)
2,639
1,162
2,371
821
526
重油
(ガロン)
1,453
1,477
1,550
3,000
3,200
総発生量
(USt)
195.0
214.0
242.6
247.0
222.4
化学物質
(USt)
161.0
142.0
160.0
152.0
142.4
生物系廃棄物
(USt)
15.0
22.0
25.0
35.0
20.0
リサイクル量
(USt)
19.0
50.0
55.8
60.0
60.0
(MWh)
ガス
(deca-therm )
重油
(ガロン )
1,795
1,795
1,795
1,795
7,616
(USt*3)
479
475
460
380
769
焼却処理量(有害廃棄物)
(USt)
5
6
7
6
9
焼却処理量(非有害廃棄物)
(USt)
11
9
4
13
26
リサイクル量
(USt)
282
274
303
209
496
最終埋立量
(USt)
181
186
146
152
238
*1
*2
20,200
91,439
20,691
94,894
23,019
25,109
廃棄物処理実績
廃棄物処理実績
欧州ナレッジセンター(英国)
蘇州工場(中国)
2006
2006
2007
2008
2009
2010
エネルギー使用量
電気
(MWh)
7,456
7,061
7,592
7,917
8,505
ガス
(m3)
156
291
441
624
766
蒸気
(t)
6,718
8,556
8,914
7,805
8,206
廃棄物処理実績
総発生量
(t)
有害廃棄物発生量
(t)
2.28
0.73
0.43
1.46
1.83
リサイクル量
(t)
16.33
17.40
18.37
96.11
90.36
20.83
24.36
35.82
28.10
22.88
台南工場(台湾)
2006
2007
2008
2009
2010
エネルギー使用量
(MWh)
1,666
1,717
1,929
1,896
2,200
ガス
(t)
0.08
0.08
0.06
0.08
0.14
2007
2008
2009
2010
エネルギー使用量
電気
(MWh)
̶
̶
̶
6,664
7,622
ガス
(千m3)
̶
̶
̶
1,006
1,105
総発生量
(t)
̶
̶
̶
201
287
容器と包装材
(t)
̶
̶
̶
47
56
(万枚)
̶
̶
̶
1,370
243
廃棄物処理実績
コピー用紙
焼却量
(t)
̶
̶
̶
17
16
リサイクル量
(t)
̶
̶
̶
99
163
最終埋立量
(t)
̶
̶
̶
103
124
ロンドン研究所(英国)
2006
電気
廃棄物処理実績
2007
2008
2009
2010
エネルギー使用量
電気
(MWh)
1,098
1,407
1,526
1,404
1,212
ガス
(千m3)
29.0
19.2
31.7
47.8
64.7
蒸気
(t)
252
518
626
448
212
(千m3)
―
―
―
4.00
4.47
総発生量
(t)
21.29
20.09
21.22
26.45
25.74
有害廃棄物発生量
(t)
0.29
0.29
0.18
0.19
0.16
リサイクル量
(t)
10.84
10.23
9.84
15.80
14.13
廃棄物リサイクル量の内訳
焼却量
(t)
2.25
9.57
11.21
10.46
11.45
溶媒ビン
(製造業者による再利用)
(t)
1.49
1.43
1.08
0.27
―
0.00
溶媒ビン
(行政機関による再利用)
(t)
0.16
0.15
0.00
0.00
―
最終埋立量
(t)
7.91
0.00
0.00
0.00
水
ダンボール
・ポリスチレン包装材
ボゴール工場(インドネシア)
溶媒
2006
2007
2008
2009
電気
(MWh)
1,400
1,498
1,382
1,262
1,283
ガス
(kg)
1,576
1,195
1,347
1,332
1,342
重油
(ℓ)
900
2,120
3,990
1,650
1,350
ガソリン
(ℓ)
510
330
325
296
283
廃棄物処理実績
総発生量
(t)
3.72
3.84
4.72
28.89
21.24
有害廃棄物発生量
(t)
0.31
0.22
0.18
6.61
5.19
リサイクル量
(t)
6.66
9.70
8.81
22.28
16.05
0.37
0.36
0.28
0.07
0.00
2,625
2,516
2,700
640
150
エーザイ・ナレッジセンター・インド
2006
2007
2008
2009
2010
エネルギー使用量
電気
(MWh)
̶
̶
̶
̶
8,850
重油
(kℓ)
̶
̶
̶
̶
493
有害廃棄物発生量
(t)
̶
̶
̶
̶
4.40
リサイクル量
(t)
̶
̶
̶
̶
3.25
廃棄物処理実績
*1
*2
*3
ー:
エーザイ株式会社
(t)
(ℓ)
2010
エネルギー使用量
48
2007
26,697
電気
総発生量
2006
エネルギー使用量
エネルギー使用量
1deca-therm(サーム)=1,050MJ
1ガロン=3.785ℓ
1USt =0.907185 t
未測定
環境専門家からのご意見
「 環 境・社 会 報 告 書 2 0 1 1 」を 読 んで
エーザイの環境活動の基本理念に
「地球環境の保護を重視し
た企業活動を行い、環境保全に努めます。」
とありますが、地球
上では今もなお地球温暖化や絶滅に する動植物、森林破壊な
ど環境問題が解決されないまま、時には未曾有の東日本大震災
に見られるように大自然の力を痛感させられ、日本の企業が果た
すべき役割について考えさせられる時代となっています。多くの
資源を海外に依存する日本では、特に企業の環境・社会に与え
る影響は多大だといえます。原料調達から始まり、製品を製造す
株式会社 Control Union Japan
代表取締役
山口 真奈美 氏
プロフィール
自然環境と経済・社会システムのバラン
ス構築をテーマに活動。研究所等を経
て株式会社 FEMを設立、環境・CSR
認証に関する研究・評価・教育事業の
他、株式会社 Control Union Japanで
は国際的な認証審査を手掛ける。
る過程でどのような環境負荷を与えているのか、そこで働く人々
の社会的問題も含め、広義の意味での地球環境の保全対策なく
査されている点も、ステークホルダーズへの安心と信頼の一助に
して、企業の存続と私たちの生活は成り立たない時代となりつつ
なっていることでしょう。
あります。
一方、様々な取り組みがなされているにもかかわらず、今まで
エーザイの環境報告から見えることとして、まずとても実直で、
の活動実績の振り返りと今後の目標、中長期計画が紙面上で見
海外も含めデータの把握と見える化がなされているといえます。
えづらい点は改善の余地があると思われます。経年変化の数値
地球温暖化防止では、ヒートポンプ技術に見られるCO2 排出量
を生かし、その分析と達成できた部分についてはさらなる目標設
削減への取り組みや、蒸気レス空調システムの開発、最新の省エ
定、未達成部分については具体的行動目標があると、読み手に
ネルギー技術を駆使した小石川ナレッジセンターの稼動開始な
も今後の展開が見えやすいのではないでしょうか。特に、CO2 排
ど、環境負荷低減のための技術を積極的に取り入れている姿勢
出量や廃棄物発生量が横ばいや増加している拠点について、今
がうかがえます。また、省エネ技術検討会など社外専門家との
後どのような対策を行っていくのか。電気とガスの使用量につい
情報の共有、新エネルギーの導入促進など現状に留まることな
ても、震災の影響も考え、CO2 排出量削減とあわせてどのような
く、さらに何をすべきかを考えている点も評価できるといえます。
バランスで行っていくのか、海外の数値まで把握されている利点
また、廃棄物削減についても、PTP 打ち抜きくずの再資源化
を生かし、国内外あわせて検討されるとよいかもしれません。
に見られるように、焼却灰リサイクルから発展し、廃棄物そのも
海外にも展開するグローバル企業として、果たすべき役割と
のを原料としてリサイクルするなど、単なる数値目標の達成のみ
期待は計り知れません。医薬品分野の特徴を生かし、エーザイ
ならず、3Rの質的向上をめざして挑戦している点は素晴らしい
ならではの事業と取り組みを通じて、世界の人々に寄り添い、
と思います。さらに、廃棄物処理の委託先を徹底して現地確認調
hhc 理念を実現されていく姿を今後も期待しています。
ご意 見をい た だ いて
この度、株式会社 Control Union Japan 代表取締役、山口真奈美様より
「環境・社会報告書
2011」の環境報告に対する貴重なご意見をいただき感謝申し上げます。
持続可能な社会の実現に向け、企業による地球環境の保全対策は年々重要性を増しています。当
社も地球環境への負荷低減を最優先課題として企業活動を行っており、ご評価いただいたCO2 排
出量削減の取り組みをさらに発展させていこうと思います。また、循環型社会の構築に向け、3Rの
質的向上を志向した廃棄物処理法の追求や開発も継続して行っていきます。
環境安全部 部長
岩下 眞治
さらに、環境データの把握やその見える化を今後も進め、ご指摘にありました活動実績の振り返り
に基づく具体的な行動目標や中長期計画を明確にした環境保全活動を展開、報告するよう努めていき
ます。社会的責任を環境面からも果たし、持続可能な社会作りに貢献するhhc 企業をめざします。
環境・社会報告書 2011
49
社 会 的 責 任に関する指標と付加価値の分配
エーザイグループでは、企業活動をトータルかつ客観的にとらえるために、
社会的責任に関する指標と、ステークホルダーズへの経済的付加価値分配内訳を用いています。
社会的責任に関する指標
エーザイグループでは、社会的責任に関する取り組みを客観
データの対象範囲:
的にはかるための指標を定めています。
■エーザイ株式会社
これらの指標は報告書の構成に合わせて分類し、年度ごとに
■エーザイグループ
(エーザイ株式会社および国内外のグループ企業 50 社)
■国内グループ
(エーザイ株式会社および国内グループ企業 11 社)
取り組みの検証を行っています。
患者様との関わり
指標
申請中の医療用医薬品数
承認取得した医療用医薬品数
期間
9 品目
5 品目
海外
年度
6品
9 品目
4 品目
国内
年度
2品
2 品目
9 品目
海外
うちウェブサイトのフォームによるお問い合わせ数
うちクレーム件数(製品の品質に関するクレーム)
PCC(製品クレーム委員会)実施回数
*1 適応および剤形の追加を含みます。
*2 2010 年度からコンビニエンスストアなどのお取引先を含みます。
50
エーザイ株式会社
2010 年度
6品
「お客様ホットライン」お問い合わせ数
ベンダーバリデーションの回数
2009 年度
年度
特許件数(特許出願件数)
お取引先
2008 年度
国内
年度
7品
3 品目
6 品目
年度
155 件
157 件
151 件
年度
85,388 件
92,050 件
98,650 件
年度
1,253 件
1,321 件
1,581 件
年度
345 件
296 件
238 件
年度
12 回
12 回
10 回
病院
年度末時点
5,805 施設
5,781 施設
5,768 施設
95,928 施設
診療所
年度末時点
96,270 施設
95,715 施設
調剤薬局
年度末時点
9,645 軒
9,323 軒
9,433 軒
薬局など
年度末時点
44,670 軒
47,874 軒
70,839 軒
代理店
年度末時点
94 社
84 社
86 社
ベンダー
年度末時点
208 社
207 社
207 社
74 回
83 回
76 回
年度
*1
*2
社会との関わり
指標
工場所在地の地区懇談会
期間
2010 年度
1回
1回
1回
出席人数(川島工場地区)
年度
14 人
14 人
12 人
実施回数(美里工場地区)
年度
1回
1回
1回
出席人数(美里工場地区)
年度
12 人
12 人
13 人
納税金額
くすり博物館来館者数
厚生施設利用者
2009 年度
年度
寄付金額
工場見学者数
2008 年度
実施回数(川島工場地区)
年度
3,346 百万円
3,449 百万円
3,583 百万円
年度
25,087 百万円
36,063 百万円
38,483 百万円
年度
45,136 人
37,895 人
41,980 人
川島工場
年度
5,368 人
3,563 人
4,748 人
美里工場
年度
602 人
813 人
1,050 人
美里工場
年度
11,140 人
10,562 人
10,686 人
コーポレートガバナンス/コンプライアンス
取締役数
指標
期間
うち社外取締役数
社外取締役比率(社外取締役数/取締役数)
執行役数
執行役の平均年齢
報酬額(基本報酬、賞与、退職慰労金など)
コンプライアンス研修
人権研修
2008 年度
2009 年度
2010 年度
年度末時点
11 人
11 人
年度末時点
7人
7人
11 人
7人
年度末時点
63.6%
63.6%
63.6%
年度末時点
26 人
27 人
18 人
年度末時点
55.3 歳
56.1 歳
54.8 歳
11,571 万円
取締役(社内)
年度末時点
12,198 万円
12,868 万円
取締役(社外)
年度末時点
7,997 万円
8,587 万円
8,668 万円
執行役
年度末時点
113,620 万円
125,211 万円
113,781 万円
70 回
開催回数
年度
130 回
105 回
うち役員対象研修
年度
2回
2回
2回
延べ参加人数
年度
約 11,000 人
約 9,000 人
約 6,000 人
開催回数
年度
48 回
16 回
23 回
人数
年度
3,837 人
11,647 人
16,370 人
年度
99.2%
98.1%
95.7%
年度
874 回
930 回
797 回
*1
年度
104 件
107 件
108 件
*2
コンプライアンス e ラーニング平均実施率
コンプライアンス・カウンターアクセス数
GUIDEA(ガイディア)相談件数
*1 コンプライアンスに関する社内相談窓口へのアクセス回数。
*2 コンプライアンスに関し、社外相談員が運営する社員向け相談窓口への相談件数。
環境・社会報告書 2011
51
社員との関わり
従業員数
指標
地域別従業員数
社員数
期間
11,560 人
日本
年度末時点
5,592 人
5,675 人
5,636 人
米国
年度末時点
2,647 人
2,701 人
2,559 人
欧州
年度末時点
951 人
1,015 人
1,015 人
アジア他(日本除く)
年度末時点
1,787 人
2,024 人
2,350 人
合計
年度末時点
4,371 人
4,428 人
4,415 人
男性
年度末時点
3,349 人
3,394 人
3,393 人
女性
年度末時点
1,022 人
1,034 人
1,022 人
管理職
年度末時点
1,410 人
1,439 人
1,463 人
年度末時点
2.4%
2.8%
2.9%
年度末時点
41.7 歳
41.8 歳
42.3 歳
年度末時点
平均勤続年数
18.2 年
18.1 年
18.5 年
年度
1.0%
1.4%
1.4%
年度
–
–
25 人
年度
7人
4人
9人
年度
1人
0人
1人
年度
132 人
137 人
154 人
合計
年度
67 人
62 人
70 人
男性
年度
0人
2人
1人
女性
年度
67 人
60 人
69 人
離職率
介護休暇制度利用者数
介護休職制度利用者数
介護短時間勤務制度利用者数
看護休暇制度利用者数
育児短時間勤務制度利用者数
平均年間給与(有価証券報告書より)
障がい者雇用率
年度内入社人数
所定労働時間(年間一人あたり)
労働災害発生件数
社員
家族
労働組合加入率
年度
65 人
74 人
80 人
年度
10,775 千円
10,728 千円
10,936 千円
年度
1.88%
1.91%
2.02%
年度
265 人
196 人
104 人
年度
1,888 時間
1,880 時間
1,895 時間
年度
23 件
30 件
35 件
年度
99.6%
99.5%
99.7%
年度
66.2%
60.4%
66.2%
99.12%
99.09%
99.16%
年度
13.0 日
13.4 日
13.7 日
年度
887 人
812 人
2,400 人
−
−
800 人
135 人
139 人
147 人
年度末時点
有給休暇の平均取得日数(組合員一人あたり)
ウォーキングマイレージぷらす参加者数( P30 参照)
継続雇用制度利用者数
2010 年度
11,415 人
平均年齢
健康診断の受診率
2009 年度
10,977 人
女性管理職比率(女性管理職数/管理職(理事含む))
育児休職制度利用者数
2008 年度
年度末時点
社員
配偶者
年度
年度末時点
*1 エーザイ株式会社の正社員の人数をベースとしたものです。
*2 2009 年度までは扶養する配偶者、2010 年度からは扶養する配偶者および 40 歳以上の被扶養者を対象としています。
*3 2010 年度から、配偶者も参加対象となりました。
環境との関わり
CO₂ 排出量
指標
廃棄物発生量
化学物質( PRTR 法対象物質)取扱量
グリーン購入金額
廃棄物のリサイクル率
*1 排出係数の確定により昨年の報告値を変更しました。
*2 再集計により昨年の報告値を変更しました。
52
エーザイ株式会社
期間
2008 年度
2009 年度
2010 年度
年度
76,921t
75,293t *1
76,043t
年度
8,273t
6,785t *2
6,568t
年度
666t
461t
645t
年度
4,378 百万円
4,551 百万円
4,591 百万円
年度
37.99%
41.99%* 2
43.96%
*1
*1
*2
*3
株主との関わり
指標
株主数
期間
発行済株式総数
外国法人等の所有株式数比率
「個人・そのほか」株主比率
2008 年度
2009 年度
2010 年度
年度末時点
68,148 人
76,185 人
133,389 人
年度末時点
296,566 千株
296,566 千株
296,566 千株
年度末時点
23.3%
20.8%
15.1%
年度末時点
97.1%
97.5%
98.5%
年度
10.9%
9.6%
16.4%
年度
83.7%
105.9%
63.4%
年度
9.1%
10.1%
10.4%
年度
38,462 百万円
39,887 百万円
42,740 百万円
年度
140 円
150 円
150 円
年度
16 回
19 回
21 回
自己資本利益率( ROE )
配当性向( DPR )
純資産配当率( DOE )
配当金総額
一株あたり配当額
投資家向け説明会の開催回数
ステークホルダーズへの付加価値の分配
エーザイグループは、高品質な医薬品を提供することでお客様から対価をいただいています。
その対価の中から、お取引先に必要経費をお支払いし、生み出した経済的付加価値を従業員、株主、国・地方自治体(行政)
、社会
など、様々なステークホルダーズに分配しています。また、その一部は、新たな医薬品を生み出すための研究開発に投資され、創薬に
よってさらなる社会的・経済的な価値がもたらされます。
こうした経済的活動を続けることで、新たな医薬品を生み出し、未だ満たされていない医療ニーズを充足するという企業使命を果た
していくことができると考えています。
注:分配計算にあたっては、
「 SPI-Finance2002」
やR-BEC007「 CSRガイドライン」
などを参考にし、数値の
信頼性を確保する観点から、財務会計を構成する各勘定科目を適宜組み替えて作成しています。
社会
1.3%
<収入の部>
<支出の部>
771,373
768,914
業務上必要な
支払い*4
499,195
55.4%
債権者
そのほかの
費用・損失*3
5,588
営業外収益と特別利益および自己株式処分差益の合計。
収入から業務上必要な支払いとそのほかの費用・損失を除いた額。
支払利息を除く営業外費用と特別損失の合計。
販売費、一般管理費および売上原価から、人件費と寄付金額等を除いた額。
役員
1,556
株主
43,130
7,415
国・地方自治体(行政)
16.2%
社会
役員
( 百万円 )
147,769
債権者
2.8%
株主
( 百万円 )
*1
*2
*3
*4
従業員
従業員
14.4%
2,459
付加価値の分配の内訳
9.2%
国・地方自治体
(行政)
771,373
ステークホルダーズ
への分配*2
そのほか
266,590
の収入*1
売上高
内部留保
内部留保
38,483
3,583
24,652
0.6%
従業員 :販売費、一般管理費および売上原価中の人件費(給与、賞与および福利厚生費)
の合計
役員 :取締役と執行役への報酬額
株主 :配当金の総額と少数株主利益の合計
債権者 :支払利息
国・地方自治体(行政)
:法人税、住民税および事業税、法人税等調整額、租税公課
社会 :寄付金額
環境・社会報告書 2011
53
〒112-8088 東京都文京区小石川4-6-10
http://www.eisai.co.jp