1 - 日本産業カウンセリング学会

Japanese Association of Industrial Counseling
金沢城
生涯発達とカウンセリングの学び ~生涯育自を大切に~
会 長 宮城まり子 2
心理職の国家資格化の動きについて 副会長 宮崎 圭子 3
委員会の活動状況
定義委員会……………………委員長 渡部 卓 4
連携推進委員会… … … … … 委員長 作田 稔 5
研究委員会……………………委員長 五十嵐 敦 6
研修委員会……………………委員長 廣川 進 6
スーパーバイザー養成委員会……委員長 今野 能志 7
第6回特別セミナー報告
スーパーバイザー養成委員会………委員長 今野 能志 8
総務委員会……………………委員長 渡邉 祐子 9
常任理事会議事録……………………………………20
広報委員会から………………………………………23
第 18 回金沢大会 「産業カウンセリングの役割と実践
~生きがい・働きがいのある社会の実現~」
第 18 回大会準備委員長 小山 善子11
「きまっし 金沢」 準備委員 橋本みの里14
ほんものの傾聴連載④
【リレー随想】
明治大学 諸富 祥彦15
「象牙の塔から甲板へ」
【リレー随筆】 第2回 大正大学 廣川 進16
【会員投稿】松山から金沢準備委員会の皆様へ 田中 節子 17
NCDA参加報告 作田 稔 18
後藤雅司さんを悼む
研修委員会 委員長 廣川 進 19
【図書紹介】
カウンセラーの体験した震災記録談のご紹介
事務局長 上脇 貴20
−1−
生涯発達とカウンセリングの学び
~生涯育自を大切に~
日本産業カウンセリング学会 会長 宮城 まり子
「 生 涯 発 達 心
理 学 」(Lifetime
Developmental
Psychology)という学
問分野があります。か
つては「生涯」という
文字が冒頭につかず単
に「発達心理学」と長
い間呼んでいた学問分
野です。発達心理学で
は、人は誕生後どのように発達し変化しながら成
人に達するかに、もっぱら研究の焦点は当てられ
ていました。例えば、ご存知のフロイト(Freud、S)
も、人間の発達を青年期の段階まで研究していま
すが、その後の発達には触れていません。
しかし、寿命の伸びとともに「成人発達心理学」
研究が次第に盛んになり、
「中年期の心理学」や「老
年期の心理学」などの研究成果により、発達心理
学の冒頭には「生涯」の文字がつくようになり名
称も「生涯発達心理学」になりました。例えば、
ユング(Jung,C.G.)は発達研究の結果、40 歳を「人
生の正午」と称しています。
この生涯発達心理学は、人は誕生した後、死ぬ
その日に至るまで、生涯にわたり発達し成長し
変化する存在であるという発達観を提唱していま
す。成人に達すれば人間の発達はほぼ終わるので
はなく、そこから人はさらに新たな発達・成長を
続けることができるという概念です。それは必ず
しも「量的な発達」ではなく、むしろ人間の「質
的な発達」(内的発達)を指しています。確かに、
我々自身、若い時と比べて歳をとって初めて分か
ること、改めて気づくことも多く、人としての別
の意味での内的発達を感じることもあるのではな
いでしょうか。また、中高年期になると長い人生
経験を経て、人生や人間そのものに対するさらな
る洞察や理解が深まり、それにともない自身の内
的な成長へと次第に導かれるようになると考えら
れます。年齢を重ねることによって、人は一律に
ただ老いるだけではないということです。まるで
果実が時間を経て自然に熟するかのように、香り
高い内的な実りと成熟が、人間の発達にも必ず存
在するのです。
「カウンセリングの学び」ついて考えますと、むし
ろカウンセリングの学びは、成人期以降、中年期
や老年期に至って始めて、カウンセリングの学び
を通した人生への洞察をさらに深めることができ
ると考えます。カウンセリングの学びから、自身
への気づきを多く得られ、他者理解(クライエン
ト理解)と並行し、むしろ「自分を知る学び」で
もあると言えます。長い人生経験を経たからこそ、
初めて見えてくるものがそこにあるからではない
でしょうか。人生に悩み・苦しんだ時、私達は敢
えて若者に心の悩みについて相談することはあり
ません。やはり多くの人生経験を経た信頼できる
人(カウンセラー)を選択するのではないでしょ
うか。
しかし、長い人生経験だけでカウンセリングは
可能かというと、そうではありません。
カウンセリングの学びは、単なる人生経験だけ
に留まらず、カウンセリング理論による(広く心
理学理論の)裏づけ、効果的なカウンセリングス
キルが欠かせないことは言うまでもありません。
そして、この学びには終わりがなくこれで学びは
卒業ということは、まったくありません。という
のは、カウンセリングのケースは、すべてが別個、
すべてのケースはそれぞれが新たなものだからで
す。カウンセリングには同じケースはありません。
そこに、カウンセリングでは絶えざる継続的学び
が必要であるという根拠が存在しています。
学会は会員の皆様の「学びの場」です。資格を
取得すれば学びは終わるものでは決してありませ
ん。むしろ資格の取得はこれからの本格的な学び
のスタートだといえるでしょう。学会をたゆまぬ
「学びの場」として活用していただき学びを深化さ
せ、自身の「生涯発達」(キャリア発達)を絶えず
意識に留め、自らを磨き育てる「生涯育自」を大
切にされてはいかがでしょうか。そして、学会に
は学びを支えあう多くの全国からの仲間がいるこ
とが何よりも貴重な資源でもあります。11 月 2 ~
4日には、名勝地金沢で日本産業カウンセリング
学会 18 回大会が開催されます。多くの皆様の大会
参加を心よりお待ちしております。金沢でお目に
かかりましょう。
−2−
心理職の国家資格化の動きについて
日本産業カウンセリング学会 副会長 宮崎 圭子
40 号会報におきまして、以下の 2 点をご報告させて頂きました。
①「一般財団法人日本心理研修センター設立記念フォーラム 日本心理研修
センターが拓く心理職の未来」(2013.4.14)開催: 衆議院議員 鴨下一
郎先生(自民党 国会対策委員長)、日本医師会会長 横倉義武先生、参議
院議員渡辺孝男先生(公明党 医学博士)をはじめ、厚生労働省、文部科
学省の課長等のご挨拶を賜り、心理界、政界、省庁が垣根を越えて大同
団結した様が伺えること。
②目下、「心理師(仮称)」の国家資格創設早期実現の請願の署名」運動を
していること。
本 41 号において、その後の動向をここに整理します。
1.自民党「心理職の国家資格化を推進する議員連盟」 第 2 回総会開催 (2013.6.11)
顧 問:衆議院議員 伊吹文明、参議院議員 中曽根弘文、衆議院議員 細田博之、衆議院議員 町村信孝
会 長:衆議院議員 河村建夫
会長代行:衆議院議員 鴨下一郎、衆議院議員 岸田文雄
副 会 長:衆議院議員 逢沢一郎、衆議院議員 稲田朋美、衆議院議員 遠藤利明、衆議院議員 下村博文、
衆議院議員 田村憲久、衆議院議員 野田聖子、衆議院議員 古屋圭司、衆議院議員 山本有二
幹 事 長:衆議院議員 加藤勝信(事務局)
◆代理を含む40名の国会議員と、厚労省(重藤和弘課長)、文科省の担当課長(大路正浩課長)、三
団体関係者及び当会から8名が参加。
◆河村建夫衆議院議員と鴨下一郎衆議院議員の挨拶の後、役員体制の承認が行われた。
◆日心連理事長子安増生氏が挨拶し、鶴光代推進連会長から要望書に基づいて心理職が諸領域でどの
ような貢献ができるかについて説明、さらに村瀬嘉代子 cp 会会長から残る課題として日本心理研修
センター設立趣旨に基づいて研修の必要性と経過措置に関する要請がなされた。
◆数名の参加議員から質疑があり、厚労省、文科省ともに推進を要望していること、これまでの経過
における課題などについてやりとり。
◆幹事長の加藤勝信議員より、今後さらに役員体制を増強したいこと、および議連への入会をさらに
お誘いいただきたい旨の要請。
2.日本心理研修センターにおいて、夏季研修会開催
7.21 跡見学園女子大学(文京キャンパス)にて開催 災害における心の支援・認知行動療法の適用の実際と課題・学校における心理支援
8.12 筑波大学(東京キャンパス)にて開催
自閉症児への発達論的アプローチの新動向・発達障害をめぐる動向と最新の心理アセスメント・支援情報
3.精神科七者懇談会
2013.3.21 付で、当懇談会は七者懇内の「心理職の国家資格化問題委員会」の見解を承認し、三団体の各
事務局に送付しました。(当懇談会は、心理職の国家資格化は必要であるという共通認識を持って活動し
ています。)
送付された「心理職の国家資格化に関する見解」の要点は以下です。
◆医療分野においては、医師の指示を受ける。◆医療ニーズの対応のため、他専門職と連携する。
◆医療機関としての開業権は認められない。
◆相談者が疾病に罹患し主治医が存在する場合は、医師等の医療職と連携・協働する。
◆教育研修体制については学部教育において適切なカリキュラムの実施、国家資格取得後の研修体制の整備の必要性。
◆「心理師」の表記については「師」ではなく「士」が必要。
聞き慣れない用語が沢山でてきます。ここで、それらの用語も整理しておきます。
*三団体:臨床心理職国家資格推進連絡協議会(略称:推進連)、医療心理師国家資格制度推進協議会(略
称:推進協)、日本心理学諸学会連合(略称:日心連)の3団体を指します。 なお、私達の日本産業カ
ウンセリング学会は上記の推進連、日心連の正式な会員となっており、会議に出席しております。
*精神科七者懇談会:日本精神神経学会、日本精神科病院協会、日本精神神経科診療所協 会、日本総合病
院精神医学会、国立精神医療施設長協議会、精神医学講座担当者
−3−
委員会の活動状況
定義委員会 委員長 渡部 卓
目標と工程表
本年度より新設された当委員会ですが第1回目の初会合を6月26日、2回目の会
合を8月29日に実施しました。委員会のメンバーは、熊澤一晃、深瀬砂織、樋口
毅、板生研一、都崎啓さんら(順不同)、私を含めて6名でのスタートです。57
歳の私が最高齢、平均年齢は40歳に近い比較的若手と中堅が中心となりました。
ただ専門領域はアカデミック、実業、臨床など特定分野に偏らず、また大企
業のみならずITやベンチャーなどの新産業や欧米アジアの情勢にも詳しい精
鋭のメンバーがそろいました。
全員が産業カウンセリングとは日常でかかわり、各自のキャリアにも関わりがございます。それゆえまさ
に「産業カウンセリング」は各自にとっても最大関心テーマの一つであり、今後も白熱した議論が期待でき
そうです。当委員会の活動目的は「産業カウンセリングの定義」を学会での総意として採択できるような素
案づくりを進めることがメインであると認識しております。メンバー全員が多忙な業務を抱えており今後の
会合は2か月に一度とはなりますが、早くアウトプットを出せるように頑張りたいと思います。
産業カウンセリングをとりまく現場は、いわゆるIT革命以降はとてつもないスピードでのグローバルの
変化の中、複雑怪奇な変数がならぶ多重方程式を解いていくような感覚もあります。ここで原点に立ち止ま
り、産業カウンセリングの本来の意味とは、価値とは何か、どのようなニーズがいま職場にあるのか、その
必要とされる知識、技能、素質とは何か、を検証する必要性も実感しております。
さっそく委員会の第2回目の会合では「産業カウンセリングの定義」を様々な文献から集め、そのとりま
く現状を議論しながら進めました。具体的には「産業カウンセリング入門(改訂版)」(日本文化科学社)
をテキストにしながら、この本の編者であり、また日本産業カウンセリング学会の重鎮であられる杉溪一言、
松原達哉、楡木満生、中澤次郎先生らによる定義を読み返し議論をしました。
この本の中で「産業カウンセリングとは、働く人の生涯にわたる成長過程を通して、その人が効果的に機
能できるように、個人的・社会的技能を身につけ、さまざまな問題解決や意思決定の能力を発達させること
を援助する過程である。」と簡潔にかつ完ぺきに近い形で定義がなされています。委員の中からは定義とし
てはこのままでも良いとの声も出ています。
さらにカウンセリング辞典(誠信書房刊)の77頁では「カウンセリングとは言語的及び非言語的コミュ
ニケーションを通して、健常者の行動変容を試みる入間関係である」とも記述されています。「産業」とい
う冠をつけると産業カウンセリングの定義はここでは「産業領域での言語的及び非言語的コミュニケーショ
ンを通して、健常者の行動変容を試みる入間関係である」になるのかもしれません。ただし「産業」には、
現実には営利活動がからむ経済活動に関係するイメージもあるが、役所や公共団体での職場領域も実際には
含まれておりどの職場であれ「産業カウンセリング」は機能します。あらためて定義と現実の整合性などの
兼ね合いをどうするのかとの議論もありました。
さらに「産業カウンセラー」を標榜していますと、職域では狭義の個人対個人での人間関係やキャリアに関係し
たカウンセリングのみならず、健保や労組、経営陣など組織に働きかけ調整していく機能や、ヒトモノカネの経営
資源の最適配分など上位に位置するマネジメント機能まで実行していくことを現代では職場で期待されることもあ
ります。
当委員会で産業カウンセリングの定義を今後は検証し策定していくにあたり、このような産業カウンセリ
ングの基本的な機能を再確認しつつ、キャリア開発、人間関係の改善、さらには組織開発などとの関わりに
−4−
ついても検証をしていくことになります。
今後は広く会員の皆様のご意見やご質問をいただきながら、産業カウンセリングの定義のドラフト作成に
むけてコーディネーションを心がけたいと思います。この委員会では産業カウンセリングの定義について論
文や研究発表をリードしていただけるメンバーの方のご参加も歓迎しておりますので、ご関心のある方はお
問い合わせをいただければと思います。
今後ともはご理解とサポートをいただけますよう頑張ってまいります所存ですのでよろしくお願いいたします。
連携推進委員会 委員長 作田 稔
活動状況と当面の目標
連携推進委員会は、現在、浅川正健、菅野由喜子、菊地章彦、堤貞夫、平
川完、三川俊樹、作田稔をメンバーとして、本学会が実践すべき連携のあり方
について議論を深めています。メンバーのお一人お一人が各分野の重責を担う
方々で、併せて、複数の本学会の委員会活動を担う方々で構成されています。
去る5月に定めた、本委員会の基本方針「学会の内外に存在する多くの機
能、機関に対し連携を働き掛け、有効な方策を開発することによって、大き
な変革に向き合って働く人たちを、支援するシステム構築の手掛かりを作り、社会の発展に寄与するこ
とを目的」とし、その活動を「第一段階では、企業・団体など組織とその中で働く個人及びその家族と
し、第二段階では、本学会が寄与できる社会的課題に対応する対象者」に連携を働きかけるものとしまし
た。抽象度の高い表現となっていますが、その主旨は、学会として連携を出来るだけ広い視点から捉えた
いとの考えによるものでした。
その後、本委員会は、6月8日の連携推進委員会、6月26日の広報委員会委員長との学会と協会との
連携強化の在り方の提言、7月18日会長・両副会長・広報委員長交えての学会の在り方についての意見
交換、7月26日第106回常任理事会への経過報告、8月7日の連携推進委員会、8月16日の学会の
在り方を語る常任理事会等の意見交換を経て今日を迎えています。本委員会の関わる領域が、奥行きのあ
る課題領域だけに、多くの方々の知恵が結集されることを願っています。
現時点、本委員会では、以下の方向性を探っています。
①連携推進の望ましいあり方の一つは、本学会(あるいは本学会員)が、産業カウンセリング分野の発展
に寄与できる連携を探ること。
②本学会が強みとし、力を発揮できる領域で寄与することが望ましいこと。一例として、現実の重要課題
を特定し、具体的に社会の課題を解くことを通じて、そのために必要な連携を広く模索するなど。
例えば、
1)解明の進んでいないエビデンスの連携研究や実践指導
企業でのメンタルヘルスやEAP、キャリア・カウンセリングの取組みで解明されていない、課題や指標。
2)社会の変化を長期的に見据えた課題(高齢化・多様化)や中小企業支援の課題
3)指導者養成としての統合的スーパー・ビジョンの展開や、産業カウンセリング分野の専門的人材育成のあり方など。
本学会にふさわしい実践の場に役立つ課題を特定し、前へ、先へ、未来につながる取組みに結実し得れ
ばと願っています。この議論を深めるため、来る、本学会金沢大会の場を借りて、連携推進委員会として、
自主シンポジウムを主催し皆さんのご意見を伺う予定で居ります。奮ってご参加下さい。
−5−
研究委員会 委員長 五十嵐 敦
学会企画シンポについて
学会大会での企画シンポは,例年研究委員会が担当しています。今度の金沢大会では「変化」がキー
ワードです。話題提供を行っていただくのは臨床心理学の立場から川上範夫先生,企業の相談現場からは
浅川正健先生のお二人を中心に,筆者が司会と若干の話題提供を務めさせていただきます。これまでの準
備の過程では,多くの議論が生まれることを期待しながら,産業カウンセリングの場における「変化」に
ついてさまざまな角度から取り上げてみます。皆さんふるってご参加いただきたいと思います。
研究委員会では,研究対象となる諸課題などを取り上げることもありますが,今回は研究そのものにつ
ながる研究アプローチが焦点になるかと思います。この場合,研究というのは論文を書くためのものでは
ありません。産業カウンセリングとしての取り組みの過程で,今までの支援の仕方で良かったのか,もっ
と効果のある方法は無いのか,などという視点が既に研究のプロセスに立っていると言えます。自分自身
の相談のスキルやその背景にある理論について振り返ることも研究的であると言えるでしょう。その意味
では,自信のない人ほど研究にむいているかもしれません。自信がないからこそ,裏づけとなるデータ
(量的なものだけではありません)を集め,それが独りよがりにならないように客観性を追求することに
なります。数量的な処理をすれば客観的だと勘違いもされる場合もあります。その数字がどのようにして
集められたのか,集めた方法は適切だったのか,あるいはその前提は十分吟味されたものか,など問われ
なければなりません。また統計処理した結果,何がどこまで言えるのか踏まえておくべきです。
H.エビングハウスは,「心理学には長い過去があるが,歴史は短い」と言っています。行動科学として
の心理学はまだまだ歴史が短く,たとえ地味な研究でも,当たり前のことでも,それを確かめていくこと
の積み重ねが求められています。いつも身の回りにある事象について,それをどのように切り取るのか。
それ以前にさまざまな事象の多面性に気づくかどうかも問われるでしょう。その気づきの時が「変化」な
のかもしれません。
米国の経営学会会長だったこともあるSteers, R.M.が来日した折,「世界中で,年間数千冊の経営に関す
る本が出版されているが,その多くが個人の思い込みと偶然に満ちた経験である」として,科学的なアプ
ローチとは何かをあらためてとらえなおす必要があると述べていました。今回のシンポジウムが,私たち
の研究へのモチベーションにつながるようなひとつの契機になれば幸いと存じます。
なお,以前から予告させていただいている,会員の皆様の普段の取り組みなどについて伺う調査の準備
も進行中で間もなく実施に移る予定でおります。
研修委員会 委員長 廣川 進
活動報告と今後の計画
◯6月23日(日)「質的研究法グラウンデッドセオリー」(講師:木下康仁先生・立教大学社会学部教
授)。昨年に続き質的研究法の第2弾は修正版グラウンデッドセオリーの第一人者である、木下先生から
グラウンデッドセオリーの基本的な考え方や手法を学び、実践例として 失業者の心理と支援について質
的研究に取り組んでいる馬場洋介さん(神奈川大博士課程3年、リクルートキャリアコンサルティング)
の発表、逐語データをもとに参加者も分析の体験をしながら、質的研究の具体的なプロセスを理解す
るというユニークな展開となりました。約30名の参加でしたが、質的研究にチャレンジしてくれる方が、
一人でも増えて、研究成果を現場にもたらす研究が広まるための支援を継続していきたいところです。
◯8月24日(土)「解決志向のブリーフセラピー(ワークショップによる研修会)」(講師:森 俊夫先
生・東京大学大学院医学系研究科)。解決志向ブリーフセラピーとは到達したいゴールを最初に設定し、
具体的な解決に向けて質問を行い介入を行なう実践的カウンセリング手法です。時間的心理的経済的コ
−6−
ストを下げることがクライアントにとっても望ましい。適性のあるクライアントを選んだ方がいい認知
行動療法以上に産業領域で心理的支援をするときにブリーフセラピーが有効であるという示唆は参加者
の大きなうなづきを得ていました。50人を超える盛況でしたので来年にも応用実践編を企画しています。
◯今後も研修委員会では、現代型うつや発達障害などのテーマや認知行動療法やブリーフセラピー等の現
場で役立つアプローチ、そして現場に役立つ研究、研究を活かした実践、事例検討など会員のみなさま
のニーズに合った研修会を企画してまいります。
●予告 10月13日(日)場所:持田製薬本社ルークホール(四谷駅徒歩2分)
「認知行動療法」(講師:沢宮容子先生・筑波大教授)詳細は同封のチラシをご参照ください。
スーパーバイザー養成委員会 委員長 今野 能志
応募はまだ間に合います
2013年度のスーパーバイザー養成講座日程は以下の通りです。今年度は、実施時期を2014年1月から3月ま
での17日間(土曜・日曜・休日)です。内容は変更ありませんが、今年度から本学会の会員でない方も受講
できるようになりました。
1)日程(原則、9時から19時終了)
2014年1月:11日(土),12日(日),13日(月),18日(土),19日(日)、
2月:1日(土)、2日(日)、8日(土)、9日(日)、15日(土)、16日(日)、
22日(土)、23日(日)、
3月:1日(土)、2日(日)、8日(土)、9日(日)
2)参加費: 30万円(本学会会員)、35万円(本学会の会員でない場合)
3)募集定員:最少6名、最大12名。
4)受講資格:
①カウンセラーとしての資格を有するもので、心理面接、スーパービジョン、ケース検討会出席などを含むカ
ウンセリングに関する実務経験5,000時間以上であること。(そのうち、カウンセリング面接時間は2500時
間以上であること)
②スーパービジョン経験(スーパーバイジーとしての50時間以上、できればスーパーバイザー経験があること
が望ましい)
5)応募書類の請求締切:学会事務局へ、2013年10月8日(火)
6)応募書類の提出締切:学会事務局へ、2013年11月5日(火)必着
7)面接日:2013年11月30日(土)
応募書類の請求等の詳細は、学会事務局に、メールまたはファックスにて、住所・氏名電話番号・メールア
ドレスご記入の上、お問い合わせください。(電話は使わないこと)
応募書類は、学会事務局へ、簡易書留にて郵送してください。
日本産業カウンセリング学会事務局 住所:〒162‐0822 東京都新宿区下宮比町2-28 飯田橋ハイタウン1020
Tel&FAX: 03‐5228‐4418、 e-mail:[email protected]
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第6回特別セミナー報告 スーパーバイザー養成委員会 委員長 今野 能志
第6回特別セミナー(6月8日・9日)
『学派を超えた統合的モデルによるカウンセリング・スー
パービジョン』
第6回の特別セミナーは上記のテーマについて3つの委員
会が合同で東京の持田製薬のルークホールで開催しました。
講師は学会認定スーパーバイザーである、統合的心理療法
研究所所長 平木典子先生、立教大学特任教授 尾久裕紀先
生、立正大学教授 小澤康司先生、跡見学園女子大学准教授
宮崎圭子先生、中京大学非常勤講師 小松原智子先生、本
学会副会長・事務局長上脇貴先生の6人の方々です。
以下、それぞれの内容をご紹介します。
講義される平木典子先生
・平木典子先生『学派を超えた統合モデルによるカウンセリング・スーパービジョン』
産業領域におけるカウンセリングは、その活動分野や領域が非常に多岐にわたっていること、またそこで行わ
れているカウンセリングが種々雑多であること、そしてそこに携わるカウンセラーの養成も種々雑多であること、
などの理由からスーパービジョンが必要であり、そのスーパービジョンは学派や療法を超えた統合的でなおかつ
汎用性のあるものである必要がある。
・尾久裕紀先生『カウンセリング・スーパービジョンの理論と方法』
理論的背景を異にする心理臨床の指導者にとって、一定の基準を満たし互いに共有できるスーパービジョンの
モデルが必要であり、本学会はその統合モデルとしてSASモデルを採用した。SASモデルはスーパーバイジーの
学習ニーズとスーパーバイザーの教育的介入を体系的にアセスメントするためのダイナミックなモデルであり、
スーパービジョン関係が中核となっており、スーパービジョン契約、スーパービジョンの段階(スーパーバイ
ジーの発達段階)、スーパービジョンの構造というスーパービジョン・プロセスを含んでいる。
・小澤康司先生『カウンセリング・スーパービジョンの実際』
スーパービジョンは、その形態から個人スーパービジョンとグループ・スーパービジョンに分けられるが、両
方ともスーパービジョンを申し込むことから始まる。スーパーバイザーはスーパーバイジーの背景を確認した上
で提供できることについて説明し、スーパービジョン契約を結ぶ。契約内容にはスーパーバイジーの課題を確認
した上でスーパービジョンの目標を設定すること、スーパービジョンの方法と準備すること、料金・場所・回数
などを記入されなければならない。
・宮崎圭子先生『スーパーバイジーの発達段階とスーパービジョン』
スーパービジョンはスーパーバイジーのニーズや専門性の発達段階に沿って実施される必要がある。本講座で
はスーパーバイジーの発達段階を習慣的行動期、専門訓練への移行期、熟達者の模倣期、暫定的自律期、探索期、
統合期、個体化期、完成期というように8段階にとらえる説を参考にしている。
・小松原智子先生・上脇貴先生『カウンセリング・スーパーバイザーの養成・訓練』
本講座では、スーパービジョンについて多面的に学ぶことができ、自分がやってきたことを整理したりやり直
したりしながら個別の課題を統合的に学習することができる。参加者は頭でわかることと体験的にわかることの
違いを体験しながら、スーパービジョンでの対応を多面的(マトリックス)に理解することができる。また、講
座終了後のメンタリングではスーパービジョンの実地訓練を受けることができる。
・平木典子先生『真のカウンセリング・スーパーバイザーの養成をめざして』
カウンセラー養成の現状を見ると、大学の学部における心理学の基礎教育は非常に重要であるにもかかわらず
カリキュラムが統一されていない、学部や大学院在学中および卒業後における人間関係訓練が不十分であるなど
の問題がある。ほとんどの学生および臨床心理士は訓練中にグループ体験をしていない。これは心理臨床にかか
わろうとする者にとって重要な問題である。また、大学院修士課程における実習を含む教育と訓練はスーパーバ
イザーの養成がなされていないために十分な訓練が行われていないのが現状である。また、民間機関におけるカ
ウンセラー訓練を見ると、スーパービジョン無しの簡易な訓練と資格の安売りが氾濫している。これらの問題は、
国としての統一資格あるいは国家資格が制定されていないことに起因している。
−8−
第6回特別セミナーアンケート 総務委員会 委員長 渡邉 祐子
特別セミナーのアンケート
1日目21人、2日目41名の方々からアンケート回答をいただきました。簡単な集計結果をご報告いたします。
◆集計 人数 %
今回の特別セミナーで、期待は満たされましたか(図1)。
満足
ほぼ満足
どちらともいえない
無回答
合計
13
36
4
9
62
21.0%
58.1%
6.5%
14.5%
100.0%
疑問に思っていたことの解答がえられた(図 2)。
そう思う
ややそう思う
どちらともいえない
無回答
合計
22
27
11
2
62
35.5%
43.5%
17.7%
3.2%
100.0%
新たな視点を得ることができた(図 3)。
そう思う
ややそう思う
どちらともいえない
無回答
合計
33
24
4
1
62
53.2%
38.7%
6.5%
1.6%
100.0%
問題解決のヒントを得ることができた(図 4)。
そう思う
ややそう思う
どちらともいえない
無回答
合計
19
36
6
1
62
30.6%
58.1%
9.7%
1.6%
100.0%
職場において活用できる(図 5)。
そう思う
ややそう思う
どちらともいえない
あまりそう思わない
無回答
合計
12
31
14
2
1
60
20.0%
51.7%
23.3%
3.3%
1.7%
100.0%
◆図
特別セミナーは約8割の人が満足と回答され、
不満という回答はありませんでした。
−9−
次の観点から研修内容について率直にご評価ください(5. そう思う、
4. ややそう思う ,3. どちらともいえない、
2. あまりそう思わない、1. そう思わない)
。
約8割の人が、疑問に思っていたことの解答が
得られたと回答されています。
約9割の人が、新たな視点を得ることができたと
回答され、半数以上が高い評価をされています。
約9割の人が、問題解決のヒントが得られたと
回答されています。
約7割の人が、職場において活用できると回答され、
他の設問との比較では低くなっています。
なお、次回の特別セミナーについては、自由記述のご要望を勘案しているところです。決定次第お知らせ
いたします。
− 10 −
第18回金沢大会のご案内(第2報)
産業カウンセリングの役割と実践
~生きがい・働きがいのある社会の実現~
第 18 回大会準備委員長
小山 善子(石川産業保健推進センター所長・
金城大学教授)
経験のない猛暑に見舞われた今夏の日本各地、そろそろと夏バテが出てきそ
うな時期、皆さんにはお元気でご活躍のことと存じます。
前代未聞の大雨、ゲリラ豪雨が島根県、北海道、東京等あちこちで起こって
おりますが、多大な被害を遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。
さて、この11月2日(土)~4日(月)に金沢で開催されます大会も2か
月後に近づいてきました。準備委員一同皆様をお迎えすべき鋭意準備にピッチ
をあげております。これまでにいろいろとご助言やご支援・協力をいただいた
諸氏には心より感謝し、お礼申し上げます。
1・2号通信でもお報せいたしましたが、再度この通信で大会の概要をお知
らせしたいと存じます。
ところで、総務省が平成 25 年 8 月 28 日に発表した平成 25 年 3 月末時点での人口動態調査によりますと、
日本の総人口は4年連続の減の1億 2639 万 3679 人、65 歳以上の人口が総人口に占める割合は 24.40%、
一方 15 歳未満の年少人口は 13.3%と、人口減と少子高齢化がますます浮き彫りになってきました。また
就労人口からみると生産年齢(14 歳~ 64 歳)人口も年々減少していて総人口に占める割合は 62.47%と過
去最低でした。(このままで進むと平成 72(2060)年には生産年齢人口は現在の約半分になると推定され
ています。)このような少子・高齢化が急速に進展する中、高齢者、女性、障害者の就労力の活用が期待
され、働くことのできる人、全ての就労を図り、社会を支え得る全員参加型社会の実現が求められています。
そのために働きがいのある人間らしい仕事(ディーセントワーク)の実現は重要な課題であります。厚生
労働省も「望ましい働きビジョン」を公表したところです。この大会で生きがい・働きがいのある社会の
実現するために産業カウンセラーの役割と実践を考えてみることは時宜を得た、また非常に重要なテーマ
かと思われます。どうぞ奮ってお参加いただきこの課題を考えていただければと思います。
大会テーマに合わせ大会企画シンポジウムは「生きがい・働きがいのある社会の実現」をテーマに宮城
まり子当学会会長の司会のもとで、シンポジストとして、前石川県男女共同参画審議会会長の八重澤美知
子氏、厚生労働省からは伊藤正史氏、石川県を代表する企業(現在交渉中)のお三方にお願いしております。
3 人のシンポジストのお話をお聞きしてフロワーの皆さんと活発な討議が展開され、将来に繋がる策がま
とまればと思っております。
このシンポジウムを受け、2 日目でのラウンドテーブルでは「中高齢者」、「若者」、「女性」、「障害者」、
そして職場で問題となっている「メンタルへルス不調者への対応」、
「ワークバランスを考えた働き方」、
「引
きこもり、孤独者たちへの対応」といったテーマ別に分かれ、それぞれの課題で産業カウンセラーの役割
をさらに掘り下げて論じていただければと企画してあります。
3 日目(11 月 4 日)の研修会は、認知行動療法、キャリア、メンタルへルス、ハラスメント訴訟、等 10
個のテーマ(1 日コース 2 個、半日コース 8 個で)の研修会があります。どれも魅惑的な、関心あるテー
マと講師でどれを受けようかと迷われているのでないかと思います。
特別講演は近年、学校だけでなく職場でも深刻な問題になってきていて、また精神科臨床でもその診断、
− 11 −
対応に苦慮している発達障害を取り上げてみました。第一線でご活躍の発達障害がご専門の姜 昌勲先生
(きょう こころのクリニック理事長・院長)にお願いして「大人の発達障害を理解する~事例から学ぶ自
助努力を高める支援について~」でご講演いただきます。
大会記念講演は大会準備委員長の私が、産業保健推進センターに携わっております関係で「職場のメン
タルへルスの現状と課題」を話したいと思っております。
昨年同様、大会 2 日目(11 月 3 日)には個人研究発表、学会企画シンポジウム(コーディネーター五十
嵐 敦)、自主シンポジウム(①石見忠士企画、②横山慶一企画、③作田稔企画、④平和俊企画)、を企画
しております。
3 日目には地方還元 特別出前講演がありますが、これは新たな取り組みとして、当大会開催が初めて
の北陸地区、せっかくの機会でもありますので、北陸 3 県の学生、保護者、学校関係者などを対象に(1)
「働くこと」について語り合おう、(2)「就活うつにならない・させないための心の持ちようで講演をお願
いいたしました。会員の方たちも関心があるかとおもいますが参加していただいても結構です。
第 18 回金沢大会では上記のような企画でプログラムを組んでおります。詳細はプログラムを見ていただ
ければと思います。プログラムは 10 月初めには皆さんのお手元にお届けできるかと思います。
今回大会のチラシを同封いたしました。金沢は金箔の盛んな街です。このチラシは金箔をイメージして、
そして金沢の名園兼六園のことじ灯籠を加え作りました。チラシからいろいろの金沢を浮かべていただき、
お誘いあわせの上ぜひ大会にご参加ください。心にいつまでも残る有意義な金沢大会になるように準備し
て皆様のお越しを心からお待ちしております。
Ⅰ
大会
会期・会場・スケジュール
11 月 2 日(土)
大会 1 日目
受付開始:10:00~
開始:10:30
11 月 3 日(日)
大会 2 日目
受付開始:9:00~
開始:9:30
11 月 4 日(月)
研修会
特別出前講座
受付開始:10:00~
受付開始:9:30~
研修開始:10:30
開始:10:00
3
2
ITビジネスプラザ武蔵
金沢大学サテライト・プラザ
1
石川県文教会館
学会会長 挨拶
受賞者記念講演
個人研究発表
10:30~11:10
9:30~12:00
40 分
150 分
大会記念講演
11:10~12:10
60 分
昼食/理事会
昼食
12:10~13:30
12:00~13:00
学会総会
13:30~14:10
休憩(10 分)
研修会Ⅰ
10:30~13:00
午前コース
1 日コース
昼食
12:00~13:30
学会企画シンポジウム
13:00~15:00
120 分
大会企画講演
14:20~15:40
90 分
休憩(10 分)
大会企画シンポジウム
15:50~17:50
120 分
開場移動(30 分)
懇親会
18:30~21:00
休憩(30 分)
ラウンドテーブル
15:30~17:00
90 分
特別出前講座Ⅰ
10:00~12:00
120 分
昼食
13:00~14:00
特別出前講座Ⅱ
13:30~15:00
90 分
研修会Ⅱ
14:00~16:30
午後コース
1日コース
休憩(15 分)
自主シンポジウム
17:15~19:30
135 分
閉会の挨拶
大会終了 19:30
会場住所・交通アクセス:
1
石川県文教会館
− 12 −
金沢市尾山町 10-5
JR 金沢駅から北鉄バス
南町下車徒歩 3 分
第 18 回大会 1・2 号通信の補完
金沢大会 準備委員会
いよいよ、金沢大会が近づいてまいりました。
5 月にお送りした、1・2 号通信以降の大会情報を、取りまとめ、お届けします。
1.大会の美しい「チラシ」が出来ました。
会報 41 号と一緒にお送りしています。お近くの方と一緒にご覧いただいて、この機会に、金沢小旅行を
ご計画下さい。大会参加予約申し込み締め切りは、9 月 30 日(月)です。
参加申込等に関するお問い合わせ先 日本産業カウンセリング学会事務局
TEL&FAX:03-5228-4418
e-mail :[email protected]
学会ホームページ http//www.jaic.jp
2. 第 18 回大会、個人研究発表者、自主シンポの申し込みが確定しました。
◆ 個人発表者 16 名
◆ 自主シンポ 4 チーム
①企画者 石見忠士 タイトル「中小企業のメンタルヘルス対策支援」
司会者 古山善一 パネラー 菅野由喜子 コメンテーター 木村周
②企画者・司会 横山慶一「スーパーヴァイジング~効果的な面接とその指導方法」
パネラー スーパーヴァイジー 久保眞理子 間宮ひろえ
③企画者・司会 作田 稔 「産業カウンセリングにおける「連携」とは何か」
パネラー 平川 完 堤 貞夫 碇 明夫
④企画者・司会 平 和俊「統合的ライフプランニング(ILP)」のキャリア教育への導入について
パネラー 小澤康司、 作田稔 ◆ 追加シンポジスト、登壇者のご紹介です。 ・大会企画シンポジウム
シンポジスト 飴 久晴(あめ ひさはる)氏
ロバスト経営研究所 所長 コーセル株式会社創業者、元相談役
・ラウンドテーブルディスカッション
追加登壇者
【企業Ⅰ】 成田雅美先生 ウィン株式会社 カーブス事業部部長
【企業Ⅱ】 根本忠一先生
公益財団法人日本生産性本部 メンタルヘルス研究所担当部長
【障害者】 高野裕一先生 津田駒工業株式会社、総務人事課
【障害者】 山本 静先生 いしかわ特別支援学校 ■ 大会 1・2 号通信に以下の誤りと修正がありました。訂正させていただきます。
1)大会企画シンポジウムシンポジスト名
(誤り) 八重澤 美和子 (正) 八重澤 美知子
2)ラウンドテーブル 情報提供者 職位、職場名
高島 美紀先生 (日本産業カウンセラー協会前支部長)に修正。
古山 善一先生 (社団法人全国労働基準関係団体連合会)に修正。
3)研修時刻 1 日コースの表示の誤り
(誤り) 9 時 30 分開始 ~15 時 30 分終了 (正)10 時 30 分開始 ~16 時 30 分終了
− 13 −
「 き まっし 金 沢 」
第 18 回大会準備委員 橋本 みの里
観光名所・たべもの・お土産紹介
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− 14 −
リレー随想
― インタラクティブ・リスニング&フォーカシング ―
連載④ 「ほんものの傾聴」を学ぶ最強のトレーニング法
明治大学教授 諸富 祥彦
今回は、私が今、
「ほん
ものの、的確で、かつ深い
傾聴」を実際に身に着ける
ための方法として多くの人
に勧め、また全国で研修会
をおこなっている「インタ
ラクティブ・リスニング&
フォーカシング」と呼ばれ
明治大学教授
る傾聴トレーニング法の前
諸富 祥彦
半 部 分、
「 ク ラ イ ア ン ト・
アズ・ティーチャー」という方法を紹介します。こ
れは文字通り、
「話し手 = クライアント役」が「教
え手」となり、
「聴き手 = カウンセラー役」を導き、
聴き手の応答を(傾聴をしているまさにその最中
に!)その都度修正しながら、傾聴を進めていく方
法です。
ここでは、二人一組でおこなう最もシンプルな方
法を紹介しましょう。
(1)話し手は、まず、自分の内側に注意を向け
て、これから何について話すかを決めます。
「その
ことについて、少し時間をとって、自分の気持ちを
確かめたい」と思えるテーマを選ぶのがいいでしょ
う(例:
「○○さんとの、ちょっと微妙な関係につ
いて」
「これから3年間、どう生きるか」など・
・
・
・)
(2)話し手がテーマについて、たえず自分の内
側に触れつつ、話をしていきます。
大切なのは、ひたすら状況説明のように話を続けな
いこと、そのテーマについて自分の内側に触れな
がら、短く区切ってゆっくり話すことです。3040秒くらいがいいでしょう。
「短く区切ってゆっ
くりと」
「内側に触れながら」話すのを忘れないよ
うにしましょう。
(3)聴き手が言葉を伝え返します。話し手の話
を虚心に聴きながら、その感じを自分の内側で感じ
ながら、理解した大切な点を、ゆっくりと伝え返し
ていきます。すぐに返さずに、話し手の話を聴いた
ら、すこし「間」をとって、
「○○○・・・という
ことでしょうか」と、こちらの理解、受け取りが、
それでぴったりかどうか、
「確かめる」姿勢で、伝
え返しをおこなっていきます。質問はしませんし、
意見、感想なども言いません。
ただ、話し手の話を、話し手の視点に立って、あ
たかもその人になったかのような姿勢で感じ取って
「○○○・・・ということでしょうか」と伝え返し
ていきます。話し手のこころの中で起きているであ
ろうことを、ありありと想像しながら自分のこころ
で感じ、そこで感じたことをそれでぴったりかどう
か「確かめる姿勢」で「伝え返して」いくのです。
(4)話し手は、聴き手から返された言葉を、自
分の内側に響かせます。それがぴったり、しっくり
くるかどうか、
「自分の内側に響かせて」確かめます。
聴き手から伝え返してもらった言葉を、自分の内側
で響かせて、これが言いたかったことかどうか、伝
え返しによって変化したのかどうか確かめます。こ
れが最も大切なところです。そして、ちょっとずれ
ていたり、ぴったりこない部分や、足りない部分、
逆に不必要な言葉などがあった場合には、それを聴
き手に伝えて、ぴったりとした感じになるように、
もう一度、修正して伝え返してもらいます。微妙な
違いをていねいにその場で修正していきます。聴き
手からもらった伝え返しの言葉を聴いて、自分の内
側で変化があった場合も、それを伝えます。
(5)15 分ほど続けて、話し手が「一応、ひと段
落つけるかな」
「聴き手の方に、ちゃんとわかって
もらえたな」という感じを得ることができるところ
まで、進めていきます。
この方法では、話し手は、厳密な手順に則して、
聴き手から返された言葉を自分の内側に響かせて、
「もっとここを返してほしい」
「ここが足りない」と
「その時その場で」教えてくれますから、
「あぁこう
すればいいんだ」とその時その場で気づくことがで
きます。そのためリスニングの力が格段に向上して
いくのです。
私はこの方法こそ、
深い共感的傾聴を習得する「最
強のトレーニング法」だと思っています。産業カウ
ンセリング学会でも改めてこうした研修をおこなう
といいでしょう。
1963 年福岡生まれ。筑波大学大学院博士課程修了。
教育学博士。千葉大学教育学部助教授を経て、
現在、
明治大学文学部教授。著書『はじめてのカウンセ
リング入門・下 ほんものの傾聴を学ぶ』
『カウ
ンセリングの技法と具体的な進め方』
(誠信書房)
。
「ほんものの傾聴を学ぶ研修会」を 10 月 19-20
日に東京で開催。詳細は http://morotomi.net/ 参照。
− 15 −
リレー随筆
リレー随筆第 2 回 「象牙の塔から甲板へ」
大正大学臨床心理学科 廣川 進
私の半年間の研究休暇(サ
バティカル)
体験、
最後の1ヶ
月はとワシントン DC のト
ラウマ研究所 Center for the
Study of Traumatic Stress
(CSTS) に 訪 問 研 究 員 と し
て滞在しました。日本の防
衛医大のような国立の医科
大正大学臨床心理学科
大 学(Uniformed Services
廣川 進
University of Health Sciences
Department of Psychiatry)に所属する PTSD、トラ
ウマ研究の総本山です。
まず驚いたのはこの研究所の予算。5 年間で 8000
万ドル(約 80 億円!)
、そのうち 5000 万ドルを自殺
対策研究にあてているというのです。兵士の自殺を
どれほど深刻に捉えているのか。日本人の自殺率は
米国人の約2倍あるというのに、この差はなんだろ
うか。あるいは、これだけのお金をアラブなどの異
文化研究、戦争をしないための研究にあてるという
発想はないのだろうか。などといろいろな思いがよ
ぎりました。
この研究所には 50 人くらいのスタッフがいて、精
神科医、心理学者、リサーチャーなど、ほとんどが
博士号をもっています。彼らはこの研究所で研究を
しながら大学で医学生に授業をしたり、軍に所属す
るスタッフは基地で診察もしたり、ボスニアやアフ
ガニスタンやイラクの戦地に派遣されることもあり
ます。これを from bench to bedside to community
(実
験室の研究成果が直接、患者の治療や地域のメンタ
ルヘルスに役立つ新しい方法を開発するプロセス)
とよんでいました。こうして研究、教育、実践が三
位一体となっているのです。ここの先生方を紹介し
ます。 この研究所の創設者で所長の Robert J.Ursano 氏。
PTSD、テロ、バイオテロ、災害や戦闘などトラウ
マティックな出来事が起きたときの心理的研究を
テーマに、数々の現場に出向き、ケア対応を指揮し
てきました。同時に 200 本以上の論文と 7 冊の共編
著書があり常にこの分野の研究をリードしています。
Patcho Santiago は半年間のアフガニスタン派遣か
ら帰ったばかり。精神科医と心理リサーチ担当と精
神科プラクティショナーの3人がひとつのチームに
なって現場で治療・調査・コンサルテーションを行
うとのこと。アフガニスタン全土の米軍の拠点を回っ
て実情調査をしてきました。兵士のうつ病や PTSD
の発症は派遣期間の後期に急増する。戦闘ばかりで
なく何もすることがない無為の時間を緊張して過ご
すことも発症の契機になる。重症でなければ PTSD
であっても本国に帰還させるよりは現場に近くて安
全な病院に移す方が回復する。実地調査から得られ
た知見をもとにコンサルテーションしたり、対策、
予防策を立案したりすることが「象牙の塔から甲板
へ」
(from ivory tower to deckplates)なのだと言って
いました。
本国で帰りを待つ 5 歳と7歳の子と妻に送るため
のビデオレターを動画で見せてくれたのですが、彼
が笑顔で付近の様子を説明していたら、突然ロケッ
ト弾が近くに被弾してサイレンが鳴り響く中、塹壕
に避難して映像は中断していました。あまりにリア
ルな状況に言葉を失いました。1昨年には、実際に
この大学の助教授のソーシャルワーカーがアフガン
で殉職しています。
彼が担当者で進める兵士の自殺対策の大きなプロ
ジェクトがあり、5年間で 6500 万ドルの予算規模は
過去最高とか。自殺行動と PTSD、うつ病、薬物依
存などに対する心理、人間関係、コミュニティ、神
経生物学などの観点からのリスクとレジリエンス要
因を明らかにすることを目的として、兵士のみなら
ず、国民全体のメンタルヘルスを促進し、自殺のリ
スクを減らすことが期待されているそうです。
このように、戦場で実際に戦い傷つく兵士の傍に
あって治療(Cure)し、ケアする経験から研究のテー
マが生まれ、成果は現場にもたらされる。現場経験
のある指導者が教育を行う。研究、教育、実践の三
位一体の態勢が組織のしくみとして、個人のスピリッ
トとして備わっているのです。
米国は戦争やテロで人が人を殺し、殺される過酷
な現実にさらされながら、それを「自由を守る代償」
として粛々と受け入れ、PTSD や自殺や家族の影響
まで含めて最悪の事態に備えて最善の準備をする覚
悟と「ケアする勇気」を持っている。そのために必要
な莫大な予算と人材を惜しまない国家。データに基
づく研究と命の危険も伴いながらも戦地に赴く実践
とそれらを生かした実践的教育を行う人々。平和と
戦争と惨事についての認識の違いに気づかされまし
た。
次回は、横浜マザーズハローワークのカウンセラー
の坂本良子さんにお願いします。
− 16 −
会員投稿コーナー
松山から金沢準備委員の皆様へ
松山市在住 学会会員 田中 節子
(一般社団法人日本産業カウンセラー協会執行理事)
大会準備委員長、準備委員
て、お礼の電話をしました。ある会員は、これまでの
ご一同様、日本産業カウン
研究大会で名刺交換をさせて頂いた方全員に大会ご案
セリング学会第 18 回金沢大
内の葉書きを書きました。ストレスからお互いの感情
会のご準備にお忙しい毎日を
の行き違いで誤解したり、ムカついたり、徹夜したり。
お過ごしのことと存じます。
でも、やらなければよかったとは、誰一人思いません
学会の活動のトップに案内さ
でした。当日、お客様をお迎えした時にそれまでのす
れているのが、年一回の研究
べての苦労が開催できた喜びに変わりました。
大会と総会であるだけに関係
そして、一緒に活動した仲間が一番変わった事は大
者の皆様のご苦労・ストレス
会運営の苦労を知ることで、他団体の大会準備委員の
は大変なものであろうことが拝察されます。特にこの
心配や苦労に共感出来るようになったことです。その
第 18 回大会は金沢の地、初めて日本海側での開催と
結果、ご案内を頂いた大会には可能な限り一日でもい
いうことで会員皆様からの期待感も大きいのではない
いから参加申し込みしよう、現地に足を運ぼうと思う
でしょうか。
ようになりました。ですから四国からは、これまで以
私の学会とのご縁は、2008 年の第 13 回大会「地域
上の地域会員の参加申し込みがあるはずだと推察いた
における活性化のありかた」でシンポジストとして参
すところです。
加させていただいたことです。当時の学会会長であら
日本産業カウンセラー協会は、産業カウンセリング
れた木村周先生からご推薦頂き、地域における活動事
の実務家である産業カウンセラーの職能団体です。私
例をお話させていただきました。その後、地域会員
たち産業カウンセラーが日頃の実践活動のよりどころ
として学会のお役にたてるような活動がなかなかでき
としているのが日本産業カウンセリング学会です。特
ず、学会員としてはちょっぴり心苦しさを覚えており
に最新の情報と研究に触れる事が出来る研究大会は協
ました。そんな私に広報委員長の堤さんから、「金沢
会会員にとってもワクワクするほど魅力的です。今大
がんばれ号」へのエール原稿のご依頼を頂き、“ じぇ
会の記念講演「職場のメンタルへルスの現状と対策」
(大
じぇじぇ ” っとプレッシャー!でも堤さんが今年 5 月
会準備委員長の小山善子氏)と大会企画講演「大人の
松山で開催した私ども産業カウンセラー協会の「2013
発達障害を理解する~事例から学ぶ自助努力を高める
産業カウンセリング 第 43 回全国研究大会 in 四国」
支援について~」(きょうこころのクリニック 医学博
を「大成功」とほめてくださるので嬉しくなって快諾
士 姜 昌勲氏)は、今、現場で働く産業カウンセラー
してしまいました。
が一番聞きたい話だと思います。
ところで地域での研究大会開催は、なるべく多くの
最後に金沢へのお誘いです。私の個人的な大会テー
人に開催地まで足を運んでいただくための苦労と工夫
マは、「花の慶次と兼六園&越前カニ」なのですが、ど
が問われます。
なたかご一緒にいかがですか?
私たちも本州から四国にわたって頂けるように協会
乱筆乱文ご容赦下さいませ。大会準備委員の皆様の
の広報誌「産業カウンセリング」と大会ホームページ
ご自愛のほどを心よりお祈りいたします。
学会会員
田中 節子
で硬軟取り混ぜて四国大会 PR を続けました。基調講
演や分科会も現地に行かなくては味わえない「今、こ
田中さん、金沢大会と学会へのエール有難うございま
こ」をテーマとしてカウンセリングのライブを提案、
した。 (広報 堤 貞夫)
ご当地発グルメ案内にも力を注ぎました。毎日、参加
人数をチェックしながらの一喜一憂のくり返しでし
た。参加者名簿に知己の名前を見つけると嬉しくなっ
− 17 −
NCDA参加報告
作田 稔
今年のNCDA(National Career Development
理事会、各種委員会など重要な10余のミーティン
Association)の2013年次大会が、7/8~7/10、ボス
グが設定され、同時に3日間にわたりキャリア開発
トンで開催されました。NCDAの存在を知った、
に関わる協賛企業の出展ブースに展示がされてい
十余年前から、一度は参加をしてみたいと思って
ました。
いたものの、海外の開催でもあり、実現しないま
ディスカッションやラウンド・テーブルの進行
までいました。しかし今回、100周年の節目の大会
は、日本の学会や人事・人材系のカンファレンス
であることに加え、2年前に来日を断念された、
では、今まであまり感じたことのない交流の場が
キャリア研究の重鎮Hansen女史にお目にかかるこ
設計されていました。100年と言う節目の取組み
とが出来るかも知れないとの身近な方からのお誘
は、実に様々に展開されていましたが、それだけ
いもあり、悩んだ末に、ギリギリの日程で現地へ
ではなく、なぜ学会があるのか、なぜそこで切磋
の参加を決断しました。
琢磨が実現されるのか、そのオープンで自由な、
日本で事前に得ていた情報は、NCDAは全米職
しかも参加者一人ひとりが尊重されている運営
業指導協会(NVGA)を前身とし、キャリア・カウン
に、何よりも心地良さと、共に前に向かう力を感
セリングとキャリア・ガイダンスの専門家集団と
じました。私の語学力が不確かなこともあったか
して、カウンセラーのコンピテンシ―を検証し時
も知れませんが、活発に行われるフロアーとのや
代の要請に応えるキャリア・カウンセラーの教育
り取りは、問い詰める質問ではなく、理解するた
プログラムの枠組み呈示した組織ということでし
めの質問であり、参加者一人ひとりが主体的で、
た。しかし、今回、その年次大会に参加し、目の
心地の良い知的な空間を形成していました。参加
前に拡がった姿は、ただ単に全米の職能協会とし
者も相互にリスペクトし、楽しみながらその場に
て紹介されているものとのギャップの大きさでし
居るようにも感じらたことも、感動の一つでし
た。今回NCDAの現実の姿に直面した時、私の中
た。
で何かが氷解し、稲妻に打たれるかのような小さ
キャリア・カウンセリング、キャリア開発の研
なショックを感じずには居られませんでした。何
究と実践が始まった、その発祥の地ボストンで、
が衝撃であったのか、誤解を恐れずに言えば、協
そしてそれを発展させてきた国で、キャリアの研
会は単なる協会ではなく、むしろ学会と呼ぶにふ
究や実践が、どのような人びとによって、今どの
さわしい課題に向き合い、科学的に、かつ私が今
ように扱われているのか、日本の中でだけ学び続
まで参加した、日本の学会やカンファレンスで感
けてきた者にとって、その一端に直接触れるこ
じることのなかった、一つの重要な知と人間の交
とができたことは、大きな喜びでした。ちょう
わる場を創っていたからでした。
ど、オープニング・セッションでは、現NCDA会
今回は、100周年プログラムと言うこともあり、
会場は、1500名の参加者で正に盛況でした。その
構成は、第一に、選び抜かれた3人の基調講演
(内、一人はMark Savickas氏)の他、併行して開
催された7つの終日にわたるワークショップ、122
件に上る個人報告、その内12件は100周年を記念す
る特別ランチョン・プレゼンテーションとして企
画運営され、更に、90件に及ぶラウンド・テーブ
ルが開催されました。加えて、ウェルカム・レセ
プションに始まり、連日連夜にわたる、参加者交
流セッションが延べ5回にわたり開催され、さらに
Hansen ご夫妻と NCDA2013 at Boston
− 18 −
長Dr.Rich Feller氏から、この100年の取組みの中
がありました。
で、キャリア開発を支えた9人の賢人が紹介され、
・Creating a Career Development Curriculum
存命の7人が壇上に招かれました。その中のお一
Around Connections
人がHansen女史でありました。セレモニーとは言
・Career Adaptability and Resillience
え、キャリアの分野で重要な役割を果たした方々
・Thoughts on Theories:Building Theoretical
が一同に会し、その方々の、息づかい、人柄、態
Foundations,Exploring Future
度や眼差しを感じることが出来たことも、正に、
・Narrative Method Increases Hope,Optimism,
記念の大会だからこそ遭遇できた出来事でした。
Resillience,Curiosity and Exploration,
細部は書き尽くせませんが、気持ちの高まりを禁
Leading to Career Clarity:Outcome-Study
じ得ませんでした。もっと早く参加していれば良
・Motivating Applicants Through Creating Hope
かったと思うと同時に、年月を重ねる取組みをす
and Opportunity
ることの意味と重要性を強く感じました。
NCDAが醸し出していた、創造的に参加する人
これからの時代の中で、キャリアをどう捉えて
びとが前に向かって共に歩めるような取組みを、今
ゆくのか、キャリア開発を支えるために、様々に
後、本学会の中にも築くことが出来ればと感じた
始まっている不確実性へのチャレンジや、カウン
NCDA参加紀行でした。そしてHansen女史にもお
セリングの対話能力を高める取組みなど、今後の
会いすることのできる貴重な機会となり、現地へ行
私たちの活動にも多くの示唆と刺激を与えても
くきっかけともなった、今野能志氏からのお声がけ
らったNCDAでした。私が参加し印象に残ったい
にも、改めて感謝を申し上げます。
くつかのプレゼンテーションとして、以下のもの
後藤雅司さんを悼む
研修委員会 委員長 廣川 進
本学会理事、研修委員をしていただいていた後藤雅司さんが、8月4日、
ご病気の為逝去されました(享年 57 歳)
。最近まで、研修委員として各地
の研修会に参画し、大活躍していただいておりましたので、驚きと共にま
ことに残念であり、痛惜の念に堪えません。学会を代表してここに謹んで
哀悼の意を表します。
後藤さんは、名城大学法学部をご卒業後、大学職員の道を歩まれ、学生
の就職相談や、学部設立等に意欲的に取り組んでおられました。最近では、
発達障害の研究や、自身の NPO 活動に力を入れておられました。
本学会には 2008 年に入会され、当初から理事に就任していただいており
故 後藤 雅司 さん
ました。真面目なお人柄で、中部地域の学習会だけでなく、最近は、研修
委員会として、集中的にテーマとして取り上げた発達障害について、その企画を担当していただきました。
昨年秋の東京の研修会が大好評であったため、本年春大阪で同じ研修会を実施していただいたのは、
学会として大きな成果であったと思い起こされます。
後藤さんは各地での企画・運営に東奔西走していただき、会報への報告も分かりやすく説明を書かれて、
会員の理解・勉強を助けていただきました。
このような働き盛りの若さで貴重な人材を失うことは、本当に無念の極みでありますが、ご家族の皆
様のお嘆きも計り知れぬことと、お察し申し上げます。
ここに、本学会へのご協力を厚くお礼申し上げ、心よりご冥福をお祈り申し上げます。
− 19 −
図書紹介コーナー
カウンセラーの体験した震災記録誌のご紹介
事務局長 上脇 貴
NPO東日本カウンセリングセンターより本会へ本年2月に出版されました震災記録誌「ここに生きる
―変わっていくこと そして忘れないでほしいこと」の紹介がありました。
同誌の編集後記には次のように記されています。
「この度、この10周年に当たりまして、顧問である故楡木満生先生(24年10月11日ご逝去)のご提案
により、私たちカウンセラーが今やらねばならない事、できる事は何か、この地に居てカウンセラーと
して感じた事、今後できる事は、まず、記念誌を通して、発信していこうということになりました。
今後も、この地で生きる私たちの範囲で、力をつけ何年かかるか分かりませんが、この地の復興と共
にカウンセリングを役立てて行きたいと思います。(原文より一部抜粋)」
同センターは、エンカウンターを用いた震災体験の分ちあいや傾聴ボランティアカウンセラー養成講
座等を通じて、東日本大震災におけるメンタルヘルス支援を行って来られました。この記念誌の代金に
つきましても支援に活用されるそうです。同誌の購入につきましては下記へお問い合わせください。
特定非営利活動法人東日本カウンセリングセンター
〒980-0021 宮城県仙台市青葉区中央3丁目5-14
電話 022-211-9234 FAX 022-211-9270 メール [email protected]
第 105 回常任理事会議事録
日 時 平成25年5月31日(金) 18:20~21:00
場 所 跡見学園女子大学文京キャンパス
2号館5階 M2504教室
出席者 阿南憲治、五十嵐敦、上脇貴、桐村晋次、
作田稔、杉忠重、堤貞夫、平木典子、廣川進、
松下由美子、宮城まり子、宮崎圭子、渡部卓
欠席者 今野能志、三川俊樹、渡邉祐子
1.審議事項
(1)入会希望者・退会届について
入会希望者36人の入会が承認された。17人の退
会届を受理したことが報告された。これらの結果、
5月31日現在の会員数は1,527人となった。
(2)第19回大会開催について
廣川進先生が大会準備委員長となって大正大学
で開催することが決定された。開催時期は廣川先
生より大学の学事日程等を勘案のうえ9月末まで
に提案されることとなった。
(3)本会法人化について
2009年度総会で承認され、2010年5月に常任理
事会で審議された後、中断していた本会法人化の
作業を再開することが決定された。
2.報告事項
(1)第18回大会準備状況について
第1・2号通信が会員に配布され、参加申し込みの
受け付けが開始されたことが事務局より報告された。
(2)委員会活動状況について
①広報委員会 記者懇談会(5月13日開催)の件、
平成25年度の学会会報およびニュースレター発
行計画が報告された。
②スーパーバイザー養成委員会 平成25年度養
成講座の開講日程および参加募集の件が報告さ
れた。
③研究委員会 平成25年度活動として「第18回大
会における学会企画シンポジウム」「会員調査の
実施」「情報提供活動」の件が報告された。
④連携推進委員会 「実践家と研究者の連携」
「EAP等の先行企業の専門家との連携」等当面の
活動の方向性が報告された。
⑤倫理委員会 研究活動倫理指針の施行に当
たって、会報、学会誌、ホームページに公開し
たことが報告された。
⑥編集委員会 編集委員として高橋浩氏に加
わっていただくこと、産業カウンセリング研究
臨時増刊号に着手したこと、投稿および執筆要
綱の改訂の件が報告された。また、学会誌への
投稿に関するセカンドオーサー以下の非会員の
取り扱いについての意見聴取が行われた。
3.その他
付議事項の審議および報告終了後、学会の質的
向上をはかるために常任理事会出席者が学会に関し
て普段考えていることの自由討議が行われた。
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第 106 回常任理事会議事録
日 時 平成25年7月26日(金) 18:20~21:00
場 所 法政大学市ヶ谷キャンパス80年館
7階中-1教室
出席者 阿南憲治、五十嵐敦、上脇貴、作田稔、
杉忠重、堤貞夫、松下由美子、宮城まり子、
宮崎圭子、渡邉祐子
欠席者 桐村晋次、今野能志、平木典子、廣川進、
三川俊樹、渡部卓、
1.審議事項
(1)入会希望者・退会届について
入会希望者15人の入会が承認された。11人の退
会届を受理したことが報告された。これらの結果、
7月26日現在の会員数は1,531人となった。
また、3年間継続会費未納会員に対して、会費
を納入していただけない場合、会員資格停止とな
ることを事務局より文書通知したことが報告され
た。
2.報告事項
(1)18回大会準備状況について
7月26日現在の参加申込状況が報告されたが、
申込が予定より低調なため特別通信やメールマガ
ジン等で会員への再PRを行ったことが報告された。
(2)諸学会連合理事会(6月16日開催)報告
役員選挙が実施され理事長に上野一彦先生(一
般社団法人日本LD学会理事長)、副理事長に佐
藤隆夫先生(公益社団法人日本心理学会理事長)
と奥村茉莉子先生(一般社団法人日本心理臨床学
会常任理事)が選出されたこと等が報告された。
また、諸学会連合入会基準について報告された。
(3)臨床心理職国家資格推進連絡協議会
(6月21日開催)報告
6月11日に開催された「心理職の国家資格化を
推進する議員連盟 総会」、および日本心理研修
センター夏季研修会について報告された。
(4)平成24年度会計監査報告
平成24年度における会計書類の監査を事務局で
7月20日に実施し、適法かつ適正に処理されてお
り、公正にして妥当であったことが監事より報告
された。また、会計監査に併せて実施した業務監
査結果に基づき学会運営および事務局業務に関す
る提言があった。この提言に関連して、会長より
別途常任理事で討議する時間を設けたいとの意向
が示された。
(2)委員会活動状況について
①広報委員会 ニュースレターの臨時発信(7月
23日)と特別通信、研修会案内を会員に発送(7
月25日)したことが報告された。併せて、会報
41号を9月中旬に発行する予定であることが報告
された。
②研究委員会 18回大会における学会企画シン
ポジウム、会員実態調査の件等が報告された。
③連携推進委員会 同委員会の取り組みについ
ての中間報告が行われた。今後の取り組みの方
向性として下記の事項が示され、大会において
自主シンポジウムを開催する予定であることが
報告された。
・連携推進の望ましいあり方の一つは、学会員と
して、産業カウンセリング分野の発展、連携を
深めること。
・学会の強み、統合的スーパー・ビジョンや、俯
瞰的・体系的に課題解決を活用したり、研修、
研究の力を発揮するなど、学会のあり方も重要
となる。
・企業(含、中小)でのメンタルヘルスやキャリ
アカウンセリング等で解明の進んでいないエビ
デンスの連携研究、少子高齢化を見据えた課題
設定など、具体化の検討が必要。
④編集委員会 18回大会における研修会で「実
践的研究の進め方/論文の書き方」を開講する件、
投稿論文に関する新システムの状況報告が行わ
れた。
⑤スーパーバイザー養成委員会より第6回特別セ
ミナーとして6月8日、9日に開催された「学派を
超えた統合モデルによるカウンセリング・スー
パービジョン」の各講義の概要が報告された。
⑥総務委員会 第6回特別セミナーの開催結果、
および参加者アンケートの集計結果が報告され
た。
3.その他
①学会の質的向上のための検討会議を8月16日
(金)に開催する。
②107回常任理事会は9月27日(金)18時20分よ
り開催する。
− 21 −
会員入退会のお知らせ
入会者 jjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjj 平成25年5月31日現在(敬称略)
岩崎 元昭
二見 武志
清水 千恵子
本村 恵美子
澤谷 みち子
岡本 美津子
野上 衛
山本 久美子
弘世 信一
石田 有紀
合志 俊雄
木本 昌士
秩父 真由美
宿谷 政弘
都崎 啓
久保 真一
久保 眞理子
宇留鷲 美紀
鈴木 里江子
花田 郁枝
瀧 紘次
志村 清
村岡 英夫
竹永 美津子
佐藤 成子
松本 雅代
大嶋 信介
竹腰 禎之
古田 克利
寺西 章江
森田 秀朗
熊澤 一晃
板生 研一
樋口 毅
前嶋 靖
高橋 秀子
退会希望会員 jjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjj 平成25年5月31日現在(敬称略)
池亀 良一
安田 耕三
平林 正樹
鳥海 孝夫
熊谷 孝次
馬越 美枝子
常光 瑞穂
池田 優子
藤井 廣
石飛 和彦
南 隆男
榮 俊哉
堀部 隆治
石原 栄二
高橋 明
岡崎 京子
松岡 初音
入会者 jjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjj 平成25年7月26日現在(敬称略)
星加 博之
松浦 宏明
小松 紀美子
林 久美子
沼田 博子
椎名 睦
来栖 和子
松永 圭史
富張 由香
松浦 大造
日高 里美
川田 洋子
近江 真愛
浅井 義行
福田 照夫
退会希望会員 jjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjj 平成25年7月26日現在(敬称略)
森 和久
屋上 八郎
丹 榮
熊谷 一男
井戸 眞巳
山岸 良一
児玉 克己
田中 康博
高橋 正典
二宮 明徳
中山 泰子
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広報委員会から、この 2 年間を振り返る
広報委員会を仰せつかってから、2 年が経過し
ました。
第 16 回大会が行われる直前に、広報委員長をす
るように言われ、大会の間は、前職、社会活動委員
会の発表等があって、広報のお手伝いもできません
でしたので、最初の第 34 号、大会特集号をまとめ
るのに大変苦労したのを思い出します。
以来丸 2 年、年 4 回の会報発行を古山さんから引き
継ぎ、何とか頑張っています。
第 35 号は新年号であり、これから 3 年の第 6 期
を迎える新たなる年を迎えて、楡木会長が 5 つの方
針を掲げられました。①地方の時代、各支部活動を
活発に。②関連する学会や協会との連携強化。③学
会員の質の向上を図る研修課、研究会。④ SV 制度
の確立。⑤心理職の国家資格創設の状況に注目。
この考え方は、現在も変わっていません。
そして、各委員長の活動計画を、皆さんの写真と
合わせて掲載しました。
第 36 号、第 37 号には、リレー随想として杉渓初
代会長に、学会創生期の振り返りと、卒寿の先生の
沸々たる学会への思いを書いていただきました。こ
の随想は素晴らしい名品で、全ての会員の皆さんに
必読の内容があると思っております。
最後に書かれた先生の、私の「思い」は、副題、―
コラボレーションが未来を拓くーとなっています!
2012 年 10 月、楡木先生が急逝され、宮城会長が
選出、
就任されました。第 38 号は大会直前でしたが、
楡木先生追悼と第 17 回大会特集、
が併載されました。
大会基調コロキウム、歴代会長の熟談、学会への
期待を、木村周先生に収録していただきました。楡
木先生に現責任者としてのご感想をいただけず、残
念です。
第 39 号から 2013 年に入りました。学会の第 6 期も、
2 年目に入りましたので、各委員会の活動が具体的
に進んできたという感触を持っています。
第 40 号には定義委員会、連携推進委員会、の発足、
検討の報告、倫理委員会の研究活動倫理指針の整備、
スーパーバイザー認定委員会による第 1 号認定者の
発表、金沢地区学習会に始まる第 18 回金沢大会の
案内など、が並んでいます。
第 41 号では、金沢大会のご案内を中心に、大会
における講演、シンポジウム、研究発表、ラウンド
テーブル、研修会、地域還元講座、などを紹介する
ほか、心理職国家資格化問題ほか、学会の関心を広
げる報告を多数掲載しています。
広報委員会は、現在、企画・編集には、萩原弘子、
平和俊、相原洋介の諸氏をメンバーとし委員には諸
富祥彦先生、緒方俊雄氏に援助していただいており
ます。
産業カウンセリング学の、さらなる発展を目指し
てゆきたいと考えています。
皆さんのご支援、ご鞭撻とともに、この会報に対
する感想・ご意見を事務局まで送っていただくよう
にお願いいたします。 (堤 貞夫)
編集後記
この会報41号は、11月2日から開催される第18回金沢大会を間近に控え、多くの方に参加して
いただきたいと、大会準備委員会皆様の思いの沢山入った会報です。日本海側での開催は初めてとのこ
とで、金沢という景勝地の楽しみも合わせて、学びと、癒しと、名物料理と、観光名所と、沢山の楽し
みを味わいに金沢へ集合いたしませんか。
今、大会準備委員会の皆様は、プログラム作りや論文集作り、当日の運営準備に追われている事と思
います。多くの参加者で、その労に報いられたらと思います。
すでに配布の「第18回大会1・2号通信」に申し込みの詳細があります。再度ご覧いただきたく、
お願いいたします。また、この会報のあとに大会プログラムが送付される予定です。では、金沢でお目
にかかりましょう。 (萩原弘子)
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