2015年12月18日(金) 2015年度後期 香川 亘 基礎物理化学 演習問題 *ルーズリーフまたは大学ノートに解答を書いてください。 *公式を用いて計算する場合は、変形する前の式、変形した後の式、数値を代入した式(単位も含む)を必ず書くこと。 気体の性質について 1)圧力が 0.40 atm、温度が 70℃ のとき 2.0 mol の理想気体が占める体積は何 L か。ただし、気体定数を 0.0821 atm・L・mol-1・K-1 とする。 2)温度が 27℃ で体積が 1 L の容器に理想気体を入れたとき、圧力が 2 atm となった。容器の中の理想気 体は何 mol か。ただし、気体定数を 0.0821 atm・L・mol-1・K-1 とする。 3)全問の容器に 0.64 g の酸素を加えた。圧力は何 atm になるか。ただし、気体定数を 0.0821 atm・L・ mol-1・K-1 とし、すべての気体分子は理想気体のふるまいをすると仮定する。 4)100℃ のときの液体の水の密度は 0.96 g・mL-1 である。100℃ で液体の水 1.0 mol の占める体積は何 L か。また 100℃ の水蒸気を理想気体と仮定すると、水が沸騰して液体から気体になるときに体積は何倍に なるか。ただし、気体定数を 0.0821 atm・L・mol-1・K-1 とし、水が沸騰したときの圧力を 1 atm とする。 5)理想気体と実在気体の違いについて調べよ。高圧の条件では、理想気体の状態方程式が成立しなくな る。その理由を述べよ。 熱力学の第一法則について 6)以下の(ア)∼(オ)にあてはまる語を書け。 エネルギーは、熱を与えたり、仕事をしたりする能力であり、動くことに伴う( ア )エネルギーと、ま だ放出されずに蓄えられている( イ )エネルギーに分類される。熱力学の第一法則によると、エネルギー は生まれたり消えたりせず、ただその形態が変化するだけである。例えば石油(ガソリン)で動く車のエン ジンを例に考えると、石油を構成する化合物に蓄えられた結合エネルギーが酸素と反応することによって熱 が発生し、その熱がエンジンのピストンを動かして、最終的に車の車輪が回転する。 ある物質(系)に着目し、その物質がそれ以外のもの(外界)とエネルギーのやり取りをする場合、そ のやり取りは( ウ )という形か、( エ )という形を取る。前者は Q 、後者は W で表され、以下の 一般式で表される関係が成り立つ。 ΔU = Q + W Uはある物質(系)がもともともっている( オ )エネルギーで、外界とエネルギーのやり取りをした後 のエネルギー変化(ΔU)は、Q と W を足し合わせたものである。 2015年12月18日(金) 2015年度後期 香川 亘 7)系から外界にエネルギーが移動するとき、そのエネルギーを負とし、逆に外界から系にエネルギーが移 動するとき、そのエネルギーを正とする。次の過程において移動する熱 Q と仕事 W の大きさを符合に注意 して書け。また、ΔU を計算せよ。 a)系が外界に 35 J の熱を放出するとともに、外界に 40 J の仕事をした。 b)系が外界から 35 J の熱を吸収し、同時に外界から 40 J の仕事をされた。 c)モーター(系)が 5 J の熱の発生を伴い、35 J 相当の仕事を行った。 8)仕事 W は圧力×体積の変化で表され、以下の一般式になる。 W = −PΔV ΔVが正の値の場合、系の体積が大きくなるので、外界に仕事をすることを意味する。従って系はその分の エネルギーを失うことになる(W は負の値)。逆に、ΔVが負の値の場合、系の体積が小さくなるので、外 界から仕事をされることを意味する。従って系はその分のエネルギーをもらうことになる(W は正の値)。 ある気体について、次の過程で移動する熱および仕事を求めよ。ただし、J(ジュール)の単位で表せ。 (1 atm = 101,325 Pa、1 Pa = 1 N・m-2、1 J = 1 N・m、1 L = 0.001 m3) a)体積が一定のまま加熱して、26 kJ の熱を与えたとき。 b)外圧を 1 atm に保持しながら 10 L 膨張させたとき。ただし内部エネルギーは変化しないとする。 9)1 atm のもとで、ある気体に 110 kJ の熱を加えたところ、膨張し体積が 12.5 L 増加した。気体の内部 エネルギー変化を求めよ。 10)系が一定の圧力において、吸収または放出する熱を系のエンタルピー変化(ΔH)という。 ΔU = Q + W Q = ΔU − W Q = ΔU + PΔV ΔH = Q = ΔU + PΔV 1 atm のもとで、ある気体に 90 kJ の熱を加えたところ、その気体は膨張し体積が 7.5 L 増加した。気体の 内部エネルギー変化(ΔU)およびエンタルピー変化(ΔH)を求めよ。 2015年12月18日(金) 2015年度後期 香川 亘 11)エンタルピーは化学反応や、物質の状態の変化(個体から液体など)に伴って吸収したり、放出された りする熱のことである。1.0 mol のメタノールの燃焼反応では 25℃ における標準状態(1 atm)で 726 kJ の熱が発生した。この反応のエンタルピー変化および内部エネルギー変化を求めよ。(ヒント:内部エネル ギー変化を求めるには、ΔU = ΔH − PΔVおよび状態方程式を用い、気体定数は 8.314 J K-1 mol-1 とす る。) 12)以下の(ア)∼(エ)にあてはまる語を書け。 化学反応や、物質の状態の変化(個体から液体など)は自発的に起こるものと、そうでないものがある。自 発的に起こる反応の例として、鉄がさびる反応が挙げられる。この反応では熱を加えたり仕事をしたりしな くてもひとりでに反応が進行する。一方、自発的ではない過程の例として、水から氷を作る過程が挙げられ る。この過程では水を冷やすことを停止するとその過程も停止する。反応が自発的に起こるかどうかを判断 する上で、エンタルピーの変化(ΔH)とエントロピーの変化(ΔS)を考慮する必要がある。 自発的な過程 ( ア )が負の場合有利 ( イ )が正の場合有利 自発的ではない過程 ( ウ )が負の場合有利 ( エ )が正の場合有利 13)化学反応や、物質の状態変化の自発性は、自由エネルギーの変化を求めると分かる。その式は、 ΔG = ΔH − TΔS であり、ΔGが負のとき反応は自発的に起こり、正のとき自発的に起こらない。またΔG = 0 のとき、反 応は平衡状態にある。 アンモニアの工業的合成法であるハーバー法は、25℃ の標準条件のもとで自発的か、それとも非自発的 か。また、何度(℃)がその境界になるか。 N2(g) + 3 H2(g) → 2 NH3(g) ΔH = −92.2 kJ; ΔS= −199 J・K-1
© Copyright 2025 Paperzz