第 EK 回健康医科学研究助成論文集 平成 BL 年度 MM8BBB∼BBN(ECCL8O) 高齢者における健康な骨の維持のための身体能力・ 身体活動を探る 藤 田 裕 規* 玉 置 淳 子* 伊 木 雅 之* ÁÂÃÄÅÆÇÈÉÇÊÅÈÅËÃÉÌÉÇÆËÅÍÅËÃÉÅÎÍÏÄËÅÇËÅÎÉÉÇÅÎËÏÎÇÎÆÏ ÉÇÉÂÏÇÈËÂÃÉÊÎÏÉÅÎÉËÂÏÉÏÈÏÈÃÉÏÎ !"#$!%&'() *+&&,- .""/01('234!2"!!%3"56"!7$!7/3%7!'(/717$"/2'7"44/2/7'!1773%7/3($7!!% 5"$7!8#17/7/7$!('%7'/70"/!91707/!!%%77/$!!'"4"'7"0"/"''"/4/2/7'!73%7/3( 5"$7!64/37''!4"/$"!':36374"/$7!8&"/7":7/17/7/7475'%7'4"/$7!8#170/0"'7"41' '%(5'"!:7'9717''"2"!67577!01('2363(!%6"!7$!7/3%7!'(!"3%7/$7!8 #17'672'57/7$7!/7'%!9!;'11/2(51"57/7<=(7/>"3%!%$"/7!%637"533"!7"/ 51'28?"!7$!7/3%7!'((?&@)"4173$6/'0!7"310!%47$"/3!725'$7'/7%6( %3>7!7/9(A>/(6'"/0"$7"/(8#1701('2307/4"/$!277'!23%7%BC$6/'9'077%$D$$'70 37!91$7%"!7379'!279/0'/7!91!%!77'/7!918 BC$6/'9'077%$D$$'7037!91$7%"!7379'!27!%9/0'/7!912"//737%'9!42!3(51 '7373'7'(//!97C8BB > C8EBFG<C8C=) 8)!$30373"9'2/79/7''"!$"%73%'7%97!%01('232> :(9/0'/7!915''9!42!3(''"27%51?&@"310!%47$"/3!728&D$$'7037!91 5''9!42!3(''"27%51?&@1747$"/3!728?/'9'077%!%$7%"!7379'!2757/7$"%> 7/73(''"27%51?&@"310!%47$"/3!728 ?/'9'077%$D$$'7037!91$7%"!7379'!27!%9/0'/7!91/7''"27%51?&@"3 10!%47$"/3!728.1('2363(7:3"!$(173051"'7"0"/"''0/7:7!"!!%/7$7!0/"9/$' 4"/73%7/3($7!8 ;7(5"/%'F6"!7$!7/3%7!'("'7"0"/"''01('2307/4"/$!277'73%7/3($! 0!7'78 課題である。骨粗鬆症の発症には閉経後の骨量減 緒 言 少が重要な役割を果たすことから、骨粗鬆症は女 骨粗鬆症 は 骨折 を 介 し て 高齢者 の 生活 の 質 性の病気とされ、対策やその基盤となる研究は、 BK) ほとんど女性に対して実施されてきた。健康増進 として、公衆衛生上も医療経済上も極めて重要な 法に基づく事業による骨粗鬆症検診も女性のみを (HIJ)を低下させ、要介護の原因となる疾患 近畿大学医学部公衆衛生学 @70/$7!"4.632P731;!+!:7/'(*21""3"4&7%2!7I' 0!8 * (BBE) 対象としている。しかし、骨粗鬆症性骨折のなか 能で、調査内容に同意した者には同意書に署名捺 で最も重篤な大腿骨近位部骨折の発生数は ECCE 印してもらい、参加を希望した男女を対象として 年 で 女 性 LBCCC 件、男 性 E=CCC 件 で、全 体 の 調査が行われた大規模コホート研究(元気高齢者 EE%を男性が占めており、骨粗鬆症は男性におい の元気な秘訣を探る健康調査)である。藤原京ス ても看過できない問題となっている 。諸外国で タディでは男女合わせて約 O==C 人について調査 は男性を含めた大規模な横断研究があるが EB)、日 を行った。この調査は、奈良県立医科大学の倫理 本では男性の骨粗鬆症骨折に関する研究は決定的 委員会の承認を得ている。今回の解析の対象者 に不足している。 は、藤原京スタディのなかの橿原市在住の男性 骨折のリスク要因として、低い骨密度、栄養摂 BE== 人であり、そのうち、調査時間の都合によ 取不足、筋組織の減少、身体活動や身体能力の低 り骨密度の測定あるいは骨に関するアンケートの 下、バランス感覚の低下や歩行速度の低下が考え データが収集できなかった者については解析から BL) られる K<N) 。老年期の骨密度への運動の効果は少 除外した。最終の解析対象者は BBLQ 人であった。 ないように思えるが、疫学的証拠として、身体活 この調査は近畿大学医学部の倫理委員会の承認を 動をよくすることは高齢者での大腿骨頸部骨折罹 得ている。 患率 を 半分近 く 減少 さ せ る こ と が 示 さ れ て い EC) B.調査・測定項目 る 。自記式調査において、歩行や身体活動レベ 対象者の基礎的データとして、身長、体重、骨 ルは大腿骨骨密度と正の関係があることが示され 密度(6"!7$!7/3%7!'(R?&@)と身体能力を 。また、毎日約 B マイルのウォーキン 測定した。骨密度の測定は、二重エネルギー A グをする人は短い距離をウォーキングする人よ 線 吸 収 法(%37!7/9(A>/(7%6'"/0"$7/(R りもより高い骨密度であることが報告されてい @A,)を 用 い て 腰 椎、大 腿 骨 近 位 部、大 腿 骨 ている KBE) B<) る 。@/97!>&"3!.738 NQ) は、女性において、 頸 部 に 対 し て 実 施 し た(H@-K=CC,P"3"92 大腿骨頸部骨密度と同様に、バランス能力や歩行 S31$&,) 。腰椎は多くの対象者で石灰化が に関与する筋力の低下が有意に独立した大腿骨骨 観察され、骨密度の値を得ることは困難であった 折リスクの予測因子であることを報告している。 ために解析からは除外した。 身体活動量の減少は、骨密度の低下や筋肉量の減 身体能力 は、筋力(握力,膝伸展力,膝屈曲 少を引き起こし、転倒するリスクを高め、結果と 力) 、バランス能力(開眼片脚立脚)、歩行能力 して骨折に至る可能性を高めている。そのうえ、 (BC$ 最大歩行速度,最大 B 歩幅)を測定した。 身体能力は年齢とともに低下し、高齢者でより転 検者は専任の指導のもと各項目を一人が行うこと B) 倒による骨折の危険性を高めている 。 とした。 身体能力は握力、歩行速度、歩幅、片脚立脚時 握力の測定は、デジタル式握力計(竹井機器工 間のような簡単な尺度を使って定量が可能である 業)を用いて、座位で行った。利き腕は対象者に が、日本人の高齢男性を対象とした身体能力と骨 「ボールを投げる手はどちらですか」等を聴き、 密度との関係を明らかにした報告は少ない。今回 決定した。利き腕の握力を E 回測定し、その平均 これらの測定を行い、<= 歳以上の男性を対象と 値を代表値とした。膝伸展力、膝屈曲力はハンド して、骨密度と身体能力との関連を評価し、男性 ヘルドダイナモメーター(T#'>B,アニマ社) における骨粗鬆症や骨折の予防に寄与することを を用い、対象者を座位、膝関節 LC 度屈曲位とし 目的とした。 て、その最大筋力を測定した BO)。利き脚は対象者 研 究 方 法 A.対象者 に「ボールを蹴る足はどちらですか」等を聴き、 決定した。利き脚の膝伸展力と膝屈曲力を E 回ず つ 測定 し た。そ れ ぞ れ の 測定値 を 体重 で 割 り 藤原京スタディは ECCN 年度に奈良県立医科大 (9U5)、その平均値をそれぞれの代表値とした。 学と橿原市の共同事業として実施され、奈良県下 バランス能力の測定は、開眼片脚立脚で前方 E の O 市において、<= 歳以上の独歩(杖歩行)可 $ の高さにある目標を注視させ、片脚を軽く挙 (BBO) 上させ、動揺を観察しながら上げた片脚が再接地 するまでの時間を計測した。片脚立位時間の最長 C.解析方法 すべてのデータは平均値±標準偏差(&7!± は <C 秒間とし、<C 秒を超えた者は、そこで計測 *@)で示した。各年齢階級での平均値の差は対 を中止とした BN)。測定は E 回行い、その平均値を 応なしの >7' を用いた。対象者の骨密度と身体 代表値とした。 能力との関係について、ピアソンの相関係数を用 最大歩行速度は、始点と終点に E8=$ の加速路 いて検定した。更に、従属変数を骨密度とし、そ と減速路を設けた全長 B=$ の歩行路を最大努力 の イ ベ ン ト と し て 若 年 成 人 平 均(("!9%3 で歩行するように指示し、中間の BC$ の通過に $7!R,&)の QC%未満とした。一般に骨密度 要する時間を計測した 。測定は E 回行い、その 値が ,& の QC%未満の場合、正常の骨量より 平均値を代表値とした。最大 B 歩幅は、両足を揃 も減少している可能性が示唆されるため、イベン えた状態から、最も大きく、あるいはできるだけ トのカットオフ値とした。独立変数は身体能力と 広く片方の足を前方に踏み出し、反対側の足をそ し、年齢、身体活動量を連続変量により調整した の横に揃え、最初の両脚を揃えた地点から爪先ま ロジスティック回帰分析を行った。身体能力は K BN) での距離を測定した 。測定は E 回行い、その平 分位で K カテゴリーに分け、最も身体能力が低い 均値を代表値とした。 カテゴリーを参照カテゴリーとした。なお、解析 身体活動量については、国際標準化身体活動質 には *,*:7/8L8B を用い、すべての解析において =) 問票()!7/!"!3.1('23,2:(H7'"!!/7) 有意水準を =%未満とした。 BN) を参考に「B 週間に体にきついと感じる身体活動 結 果 を何日行うか」 「B 日にどのくらいの時間歩行す るか」等について調査を行った。そのデータから B 日当たりの身体活動量(23U 日)を「エクササ B=) を参考にして算出した。 イズガイド ECC<」 表 B には対象者の特徴を示した。また各変数に お い て <=∼<L 歳 と NC∼NK 歳、NC∼NK 歳 と N= ∼NL 歳、N=∼NL 歳 と QC∼QK 歳、QC∼QK 歳 と Q= 歳以上の平均値を比較した。最高年齢は LO 歳で 表 B .高齢日本人男性の体格、骨密度と身体機能 #637B8,!1/"0"$7/2!%27'6"!7$!7/3%7!'("4'7:7/3'7373'7'!%01('2307/4"/$!27"473%7/3( 0!7'7$7!8 5/>("*%(8 W/637 ,97X(Z P791X2$Z S791X9Z ?&)X9U$EZ ?&@X9U2$EZ3$6/'0!7 "310 47$"/3!72 \/0'/7!91X9Z ,JJ X!YBEBCZ <= > <L X!YK<<Z NC > NK X!YKCQZ N= > NL X!YEEQZ NB8Q[=8E <N8C[B8O NB8N[B8K N<8N[B8= B<B8=[=8O6 B<E8L[=8< B<K8K[=8O B<E8N[=8< =Q8L[Q8C6 <B8K[Q8N <O8O[Q8= <B8Q[Q8= EO8B[E8Q EO8K[E8N EO8O[E8N EE8=[E8Q6 B8CCN[C8BNK B8CBK[C8BNC B8CC=[C8B<O C8LLC[C8BQB C8QN<[C8BEK C8QL<[C8BB< C8QN=[C8BEB C8Q==[C8BOE6 C8NOL[C8BBK C8N=L[C8BBB C8NOQ[C8BBC C8NBC[C8BBO6 OE8=[=8E6 OK8=[<8E O<8N[=8Q OK8<[=8L ;!777D7!'"!'/7!91X9U5Z C8KOE[C8BE< C8K=<[C8BEN C8KOC[C8BOC C8KCC[C8BBC6 ;!77437D"!'/7!91X9U5Z C8ENB[C8CQE C8EQL[C8BC< C8E<N[C8C<C C8E==[C8C==6 BC<8C[BQ8O6 &D'7037!91X2$Z BBO8<[BN8N BBL8Q[B=8O BBK8L[B=8K I!7379'!27X'Z ON8O[EB8B K=8N[BQ8C OQ8O[EC8O EN8B[EC8C6 ?/'9'077%X$U'Z B8L[C8K E8B[C8K B8L[C8K B8Q[C8K6 QC > QK X!YQEZ Q=!%$"/7 X!YE<Z QB8Q[B8O QN8O[E8< B<C8Q[<8C B=Q8K[=8N =Q8B[Q8L ==8B[Q8B EE8K[E8L EB8L[E8N B8CEO[C8ECE C8L<K[C8EK< C8QKQ[C8BOL C8QCQ[C8BEQ C8NEN[C8BOO C8<QC[C8BE= EL8E[=8<2 E<8<[K8K% C8KCB[C8CLN C8EKO[C8C<C LN8<[BK8<2 BL8<[BN8E2 B8<[C8O C8OLC[C8CLN C8EOE[C8CKN Q=8N[BL8N% BB8N[BE8Q% B8<[C8K W37'/77D0/7''7%'$7!±'!%/%%7:"!8 ?&)R6"%($''!%7D?&@R6"!7$!7/3%7!'(!R!$67/8 F<= > <L(:'8NC > NK(G<C8C=86FNC > NK(:'8N= > NL(G<C8C=82FN= > NL(:'8QC > QK(G<C8C=8%FQC > QK(:'8Q=(!%$"/7 G<C8C=8 (BBK) 表 E .大腿骨近位部と大腿骨頸部骨密度と身体機能との相関 #637E8]"//73"!67577!01('2307/4"/$!27!%?&@!73%7/3( 0!7'7$7!8 #"310?&@ ^D03!"/(W/637' / \/0'/7!91 ;!777D7!'"!'/7!91 ;!77437D"!'/7!91 I!7379'!27 ?/'9'077% &D'7037!91 C8BL C8CK `C8CO C8BB C8EB C8BE 7$"/3!72?&@ G / G _C8CCCB C8BLE C8OBO _C8CCB _C8CCB _C8CCB C8BN C8CCB `C8CE C8BO C8EC C8B= _C8CCCB C8L<E C8=CQ _C8CCCB _C8CCB _C8CCCB ?&@R6"!7$!7/3%7!'(/R2"//73"!2"74427!8 表 O .高齢男性における身体機能と骨粗鬆症との関係 #637O8,''"2"!67577!01('2307/4"/$!27!%?&@!73%7/3( 0!7'7$7!8 #"310?&@ &7'/7 ,& QCa_Y _QCa I- EQO ELO B< < C8O< bbbOK8=__YOQ8O bbbOQ8O_ ;!777D7!'"!'/7!91X9U5Z bbb_YC8OKE bbbC8OKE__YC8KEB bbbC8KEB__YC8=B= EQQ ELC K O C8EK C8BL EQ< EQ< EQN L < N C8NB C8Q= bbbC8=B=_ ;!77437D"!'/7!91X9U5Z bbb_YC8EEQ bbbC8EEQ__YC8E<N bbbC8E<N__YC8OCK bbbC8OCK_ ?/'9'077%X$U'Z bbb_YB8N bbbB8N__YB8L bbbB8L__YE8E bbbE8E_ &D'7037!91X2$Z bbb_YBCK8Q EQ< N EQL EQ< EQO EQN bbbBCK8Q__YBB=8Q bbbBB=8Q__YBE=8O bbbBE=8O_ I!7379'!27X'Z bbb_YB<8N bbbB<8N__YKC8N bbbKC8N__Y<C8C \/0'/7!91X9Z bbb_YOC8< bbbOC8<__YOK8= 7$"/3!72?&@ L=a]) -747/7!27 C8BK > C8LK C8CQ > C8N< C8C= > C8<Q ,& QCa_Y _QCa I- L=a]) ENK E< EQ< EQQ EQC BO < BO C8=C C8EK C8=< C8E= > B8CE C8CL > C8<C C8E< > B8BL -747/7!27 EQE EQK BO L C8NK -747/7!27 C8OB > B8NN C8LC -747/7!27 C8E= > E8CE C8OB > E8OO C8OE > E8KL ENN ENQ BQ B< B8=< B8KN C8N= > O8EQ C8<Q > O8BQ < = BE < C8LK E8EK B8EC -747/7!27 C8EQ > O8BO C8QE > <8BO C8ON > O8QL EQO EQO ENK EQB BE BC EB BO C8LB E8CB B8OE -747/7!27 C8OL > E8B< C8L< > K8EB C8=Q > O8CE EL< EQB ELL EN< BK N = K C8=N C8KC C8O< -747/7!27 C8EE > B8KQ C8BK > B8BN C8BB > B8B< EQQ EN= EL= E<Q EO BO L BO C8<N C8K< C8N= -747/7!27 C8OO > B8OQ C8EC > B8CK C8O= > B8=L EBQ BE -747/7!27 EEC EEC K N C8OK C8<C EBB EBK EC BC C8=E -747/7!27 C8EO > B8B< EEC O C8E< C8BC > B8BC C8EE > B8<< C8CN > B8CE EBK EB< BK N C8NK C8ON C8OK > B8=Q C8BK > C8LN EQO EQ= =N< BC BC BC B8BO C8<B -747/7!27 C8K= > E8QN C8EO > B8<K EN< EQE BQ BO C8QO -747/7!27 C8OL > B8NQ =<B E< C8LK C8KN > B8LB I2"$7'"67'672'516"!7$!7/3%7!'(3"57/1!QC%"417/747/7!27:37"4("!9%3$7!8 ?&@R6"!7$!7/3%7!'(I-R"%%'/"])R2"!4%7!27!7/:38 (BB=) 最少年齢 は <= 歳 で あ り、平均年齢 は NB8Q 歳 で カテゴリーで有意な関係が示されなかった。BC$ あった。?&) の平均値は EO8B9U$E で、NC∼NK 歳 最 大 歩 行 速 度 で は B8N$U' 超 か ら B8L$U' 以 下 の と N=∼NL 歳との間で平均値に有意な差が認めら オ ッ ズ 比 が C8<N、B8L$U' 超 か ら E8E$U' 以 下 で れた。大腿骨近位部の骨密度の平均値は C8QN<9U C8K<、E8E$U' 超で C8N= であったが統計学的有意性 2$ E で <=∼<L 歳 と NC∼NK 歳、NC∼NK 歳 と N= は示されなかった。最大 B 歩幅では BE=8O2$ 超で ∼NL 歳との間で平均値に有意な差が認められた。 はオッズ比が C8ON で有意であったが、その他の 大腿骨頸部の骨密度の平均値は C8NOL9U2$ で、<= カテゴリーでは統計学的に有意ではなかった。開 ∼<L 歳 と NC∼NK 歳、NC∼NK 歳 と N=∼NL 歳 と の 眼片脚立脚ではすべてのカテゴリーで統計学的有 間で平均値に有意な差が認められた。身体能力に 意性は示されなかった。 E ついては、年齢の高いグループほど低い値を示し た。握力、最大 B 歩幅と開眼片脚立脚は年齢階級 考 察 の上昇により有意な低下がみられた。膝伸展力、 骨密度は多くの要因と関連しているが、本研究 膝屈曲力と BC$ 最大歩行速度は QC 歳までは有意 では、身体能力に焦点を当て、骨密度と身体能力 に低下していた。 との関連を検討した。今回の研究において、通常 表 E では運動能力尺度と骨密度との相関関係を の活動時に体重負荷がかかる歩行速度、最大 B 歩 示した。握力は大腿骨近位部骨密度、大腿骨頸部 幅や開眼片脚立脚の身体能力が骨密度と関係があ 骨密度との相関係数がそれぞれ C8BL、C8BN で有意 るという仮説を立てた。結果では、歩行速度、最 であった。膝伸展力はそれぞれ C8CK、C8CCB、膝 大 B 歩幅や開眼片脚立脚の身体能力が大腿骨近位 屈曲力はそれぞれ−C8CO、−C8CE で有意性は示さ 部や大腿骨頸部の骨密度と有意な相関関係が示さ れなかった。開眼片脚立脚は大腿骨近位部骨密 れた。日常の身体活動量と年齢を調整したロジス 度、大腿骨頸部骨密度との相関係数がそれぞれ ティック回帰分析の結果では、握力が大腿骨近位 C8BB、C8BO で有意であった。BC$ 最大歩行速度は 部と大腿骨頸部と有意な関連が示され、最大 B 歩 そ れ ぞ れ C8EB、C8EC、最 大 B 歩 幅 は そ れ ぞ れ 幅が大腿骨頸部と有意な関連が示された。他の尺 C8BE、C8B= で有意であった。 度では統計学的に有意な値ではなかった。 表 O は年齢、身体活動量を調整したオッズ比を 横断研究として、#447@-738EB)は、膝伸展 示した。大腿骨近位部についてみると、握力はす 力、椅子に座る動作の繰り返し、歩行速度、歩行 べ て の カ テ ゴ リ ー で 有意 な オ ッ ズ 比 を 示 し、 持久力、立位バランスで評価される身体能力は骨 OQ8O9 超のオッズ比は C8BL であった。これは握 密 度 と 関 連 が あ る こ と を 報 告 し、J!%'7(]7 力が OQ8O9 超であると大腿骨近位部の骨密度が 38BQ)の報告では、歩行速度と骨密度との相関係数 ,& の QC%未満であるリスクが低いことを示し は C8E=、片脚立脚とは C8EE であったことを示し ている。膝伸展力、膝屈曲力はすべてのカテゴ ている。我々の結果では、開眼片脚立脚、歩行速 リーで有意な関係がみられなかった。BC$ 最大 度や最大 B 歩幅は骨密度と相関関係があるもの 歩行速度では B8N$U' 超から B8L$U' 以下のオッズ の、膝の筋力については関連が認められなかっ 比 が C8=N、B8L$U' 超 か ら E8E$U' 以 下 で C8KC、 た。身体能力には人種差が考えられることから EB) E8E$U' 超で C8O< であったが統計学的有意性は示 先行研究と異なる結果であったのかもしれない。 されなかった。最大 B 歩幅では BE=8O2$ 超では しかしながら、高齢男性において、開眼片脚立脚 オッズ比が C8E< であったが統計学的有意性は示 時間が長いほど、歩行速度が速いほど、最大 B 歩 さ れ な か っ た。開眼片脚立脚 で は KC8N' 超 で は 幅が広いほど骨密度が高くなっていることが示さ オッズ比が C8<B であったが統計学的有意性は示 れた。またロジスティック回帰分析において、最 されなかった。大腿骨頸部についてみると、握力 大 B 歩幅のみが大腿骨頸部の骨密度と統計学的に は OK8=9 超から OQ8O9 以下で有意なオッズ比を 有意な関係が示されたが、開眼片脚立脚や歩行速 示したが、他のカテゴリーでは統計学的有意性は 度においても最大 B 歩幅と同様の傾向が示されて 示されなかった。膝伸展力、膝屈曲力はすべての おり、これらの身体能力が優れているほど骨密度 (BB<) が高くなる傾向が示唆された。大腿骨近位部や大 い。そのため、若年から身体能力を高め、維持す 腿骨頸部を動かすような身体能力はその部分の骨 ることが重要であると考えられる。 密度に大きく影響し、その身体能力の測定は骨密 総 括 度を推定するうえで、重要な指標であると考えら れ る。海 外 の 追 跡 調 査 を み る と、@73:D;7 骨粗鬆症予防について <= 歳以上の高齢男性を 38L)は BO 歳の身体能力や身体活動が KC 歳の骨量 対象にした大規模コホート研究は世界的に数少な に寄与していることを報告している。?1/7: く、身体能力と骨密度に関する研究は日本では Jc738E)は成人の K 年間の追跡調査において、 我々が知る限り初めての調査である。今回の結果 身体活動と骨密度の関連があることを示し、身体 から、身体能力は骨密度に関連し、身体能力が高 活動が低いことが骨密度減少の予測因子であるこ いほど骨密度は高くなる。一般に @A, 等を使用 とを報告している。朴ら O)は高齢者に対して B 年 して正確な骨密度を測定することは困難であるた 間の多面的運動介入の有効性を検討し、介入群で め、骨密度の値が得られない状況において、身体 は全力歩行速度、最大 B 歩幅や開眼片脚立脚で有 能力評価は骨粗鬆症予防や治療の一助になるかも 意な改善効果を認め、大腿骨頸部骨密度に有意な しれない。 改善効果がみられたことを報告している。今回の 謝 辞 我々の解析は横断的解析であったため、時系列的 見解が弱い。しかしこれらの追跡研究結果を踏ま 本研究は「元気高齢者の元気な秘訣を探る健康調査(藤 え、高い身体能力を獲得、維持することによって 原京スタディ)」(主任研究者:奈良県立医科大学地域健康 骨密度を高めることが可能であり、身体能力は骨 医学講座教授車谷典男)の一部として行われ、身体能力の 粗鬆症予防、骨折予防のための指標として重要で 測定は原納明博先生(東大阪市立総合病院整形外科部長)、 あると考えられる。また、高い身体能力は骨密度 羽崎完先生(大阪電気通信大学医療福祉工学部理学療法学 の維持、増加とともに、転倒のリスクを下げる要 科准教授)、峰松亮先生(畿央大学健康科学部理学療法学 因となることが考えられる。大腿骨頸部骨折で最 も多い要因としては、立った高さからの転倒であ り、前 期 高 齢 者(<= 歳 以 上 N= 歳 未 満)で は NC8B %、後期高齢者(N= 歳以上)で は QC8E%を 占 め 科准教授)が共同研究者として担当した。本研究には財団 法人明治安田厚生事業団からの研究助成を得た。また、研 究に快く参加していただいた対象者の皆様、調査スタッフ として協力していただいた皆様にも心からお礼申し上げま す。 ている BCBB)。安藤ら B)は身体能力の低下により転 参 考 文 献 倒による骨折の危険性が高まることを示し、特に 直接の転倒原因になりやすいバランス能力は NC 歳以上で有意に低下していることを報告してい る。骨折の危険因子である骨密度の低下や転倒 B)安藤 卓,清水啓史,伊藤誠子,陳 宗雅,黒川正夫 (ECCN):骨 粗 鬆 症 患 者 に お け る 身 体 機 能 の 特 徴. I'7"0"/"'' 0!,de,ECN>EBB. は、身体能力を高めることにより、予防できると E)?1/7:Jc?//7>]"!!"/^;/f>*3:7/'7!@ 考えられる。特に、最大歩行速度やバランス感覚 &"/"!@ (ECCK)F&"%46370/7%2"/'"46"!73"''! により骨折の危険を予測することも可能であるか "3%7/$7!F0/"'072:7'%(8,$ ./7:&7%ghKO<> もしれない。 KKE8 男性において、骨粗鬆症予防はこれまで女性に O)朴 眩泰,小松泰喜,朴 相甲,武藤芳照(ECCN): いわれてきたように、若年からのカルシウム摂取 高齢者の転倒予防のための B 年間の多面的運動介入の や荷重負荷運動などにより骨強度(骨質と骨密 度)を高め、これを維持することが重要である。 女性の骨粗鬆症の多くは閉経後骨粗鬆症であり、 =C 歳以降骨密度が急激に減少し、高齢での運動 効果.I'7"0"/"'' 0!,de,BQC>BQO. K)]"03!%],]3447* ?''7(^ \/!97& P"'!9 @ ]13:7/']^(BLLL)FP6301('232:(!% 6"!7$!7/3%7!'(!0"'$7!"0'35"$7!!^!9> 3!%8)! ^0%7$"3giEKB>EK<8 は骨折の危険を伴うかもしれない。男性における =)]/9]J&/'133,J*"'/"$&?$!,^?""1 骨粗鬆症ではそのような急激な骨密度減少はな &J,!'5"/1?^./&^73!%+!9:7,*33' (BBN) I.(ECCO)F)!7/!"!301('232:(j7'"!> !/7FBE>2"!/(/7363(!%:3%(8&7%*2*0"/' ^D7/2keÉBOQB>BOL=8 <)@/97!>&"3!.@"21!&c]"/$7/]&7!7/. ?/7/\R^.)@I*'%(\/"0(ECCE)F+'7"423!23 P731pE8 BO)柏 智之,山崎裕司,清岡 学,松本陽介(ECCK): 固定用ベルトを装着したハンドヘルドダイナモメー ターによる等尺性膝屈曲・伸展筋力測定法の再現性. 高知県理学療法,dd,EC>EK. /'42"/'!73%7/3(5"$7!513"56"!7$!7/3%7!> BK)厚生労働省大臣官房統計情報部社会統計課国民生活基 '("%7!4(5"$7!1917//'"4104/2/7F17 礎調査室(ECC=):平成 B< 年国民生活基礎調査. ^.)@I*0/"'072:7'%(8I'7"0"/"')!dk=LO>=LL8 N)@/97!>&"3!.:7/\/!%7!P?!%"!] *21",&P'17//^&7!7/. ?/7/\(BLL<)F 33>/737%42"/'!%/'"4104/2/7F17^.)@I* 0/"'072:7'%(8J!27kliBK=>BKL8 B=)厚 生 労 働 省 運 動 所 要 量・運 動 指 針 の 策 定 検 討 会 (ECC<):健康づくりのための運動基準 ECC<∼生活習 慣病予防のために∼<エクササイズガイド ECC<>. B<);/33^,@5'"!>P917'?(BLLK)FS3!9'/737% "6"!7%7!'(!%/7'"46"!73"''8 ,&,nhEC>E<8 Q)@/97!>&"3!.*21",&P!'@:7/\/!%7! BN)小松泰喜,上岡洋晴,岡田真平,朴 眩泰,武藤芳照 P?%"!]&7!7/. ?/m/\(BLLL)F*70/7!% (ECC=):健常高齢者の体力特性とその測定方法.理学 2"$6!7%:37"46"!7$''!%9'077%$7'/7$7!' 療法,gg,BKL>B=Q. !'2/77!!94"/104/2/7/'F/7'3'4/"$17^.)@I* BQ)J!%'7(]?/"5!633-,?"1!!"!,-)321 q(ECC=)F '%(8^0%m$"3"97%73’ I'm"0"/"'78I'7"0"/"')!n ,''"2"!"401('2307/4"/$!27$7'/7'516"!7 BQQ>BLE8 $!7/3%7!'(!0"'$7!"0'35"$7!8,/21.1('&7% L)@73:D;J747:7/ .13007/'-@7j77/ #1"$' &W!/7'73?]37''7!',^(!%7?W?7!7!\ J('7!'-(ECCB)F?"!7$''!%347$701('232:> (!37$'1$37'FEN>(7/4"33"5>0'%(8&7%*2 *0"/'^D7/2kkBQ<Q>BQN=8 BC)萩野 浩(ECC=):高齢者 の 骨折..# ジ ャ ー ナ ル, kn,=>BB. -7163ihBBCE>BBCN8 BL)折茂 肇(ECCK):第四回大腿骨頸部骨折全国頻度調 査成績.日本医事新報,ldir,E=>OC. EC)-17/4"/%I&(BLLL)F)'17/7/"374"/7D7/2'7!17 0/7:7!"!"4"'7"0"/"24/2/7'o?/ *0"/'&7%kk ONQ>OQ<8 EB)#447@-*$"!'2^&W''7/&W"30"*c7: BB)萩野 浩,坂本桂造,中村利孝(ECCK):大腿骨頸部 &]]37( ,#(3:'(,P//'#?(ECCO)FJ"57/ 骨折の発生状況および治療状況に関する全国調査.厚 7D/7$(01('2307/4"/$!27!%106"!7$!7/3%7!> 生労働科学研究研究費補助金長寿科学総合研究事業. '(!73%7/3(632!%517$7!!%5"$7!F2/"''> BE))321>^/!' ?/"5!633-,J%7$!!&,-(ECCE)F '72"!3''"2"!'!17P731,?]'%(8 \7/"!"3 ]/2342"/'4"/6"!71731!5"$7!2/"''1797 '0!F1"5$0"/!'$'237$''o&7%'207S"$7!' ,?"3*2&7%*2eiLOK>LKE8
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