熱交換器 119 （ 1 ） 熱 交換器の現状 1） 熱交換器の動向 さまざまな機 械、設 備において各 種の熱 交 換 器が使われています。アルミ製 熱 交 換 器が使用 される分 野には自動 車用途（ラジエータ、 カーエアコンなど）、ルームエアコン、業 務用エアコンな どがあります。 カーエアコンの需 要は、自動 車 装 着 率の上 昇とアジア圏を中心とした急 速な自動 車 購 買の 増加に伴い着実な伸びを見せています。 現在の冷媒はオゾン層を破 壊しないR１３４が使用されていますが、地 球 温 暖 化を抑えるために 炭酸ガス、 ＨＣ冷媒の開発も急 速に進んでいます。 また、車 載用途（ラジエータ、 カーエアコン）お よびルームエアコンなどでは、組 立てメーカーの海 外 展 開が進み、海 外 生 産 量が増 加していま す。 表１ 冷凍空調機器出荷実績の推移 表 1 冷 凍 空 調 機 器出荷 実 績の推移 （会計年度、単位 : 千台） （会計年度、単位：千台） 2006 2007 2008 2009 2010 2011 （実績） （実績） （実績） （予測） （予測） （予測） 乗用車・トラック用エアコン 5,021 4,768 4,406 4,419 4,379 4,338 12 11 10 10 10 9 バス用エアコン 除湿機 小型エアコン 中・大型エアコン 728 768 666 807 812 817 7,417 7,382 7,579 7,300 7,300 7,300 782 757 725 745 760 760 31 26 22 23 22 20 9 9 9 10 10 10 ガスヒートポンプエアコン チリングユニット 3 3 2 3 2 2 126 111 96 105 99 94 エアハンドリングユニット 24 19 19 22 22 22 ショーケース（内蔵型） 184 165 160 190 190 190 ショーケース（別置型） 102 96 86 104 104 104 大型冷凍機（吸収式・遠心式） ファンコイルユニット 輸送用冷凍冷蔵ユニット 29 26 23 30 31 31 コンデンシングユニット 116 93 80 112 112 112 冷凍空調用圧縮機 405 420 401 388 386 386 出典：（社）日本冷凍空調工業会 出所 ：（社） 日本冷凍空調 工 業 会 120 （ 2 ） 熱 交換器の働き 熱 交換器は、熱を一方の物 質から他 方の物 質 へ 伝える機 器の総 称です。 通 常、管 内 外のいずれかを流れる高 温 流 体の熱をフィンなどの伝 熱 面を介して低 温 側の流 体あるいは固 体 へ 伝えます。熱 交 換 器の設 計あるいは選 定に際しては、熱 的な条 件 以 外に強 度、腐食、価格などを考慮しなければなりません。 さらに、自動車、航空機などに用いられるものは軽 量 化が重 要な要 素となります。 図 1 代 表 的な熱 交 換 器の構造 プレート フィン サイドプレート エアコン用 熱 交 換 器は、冷 凍 サイクルの中で冷 媒の“ 液 化 ” と “気化” を繰り返すことにより気 化熱で周 囲の熱を奪い、室内の冷房を行います。 図 2 冷 凍サイクルと熱 交 換 器の働き コンデンサ （凝縮器） コンプレッサ （圧縮器） 膨張弁 コンプレッサ 膨張弁 エバポレータ （蒸発器） コンデンサ エバポレータ 熱交換器 121 （ 3 ） アルミ製熱交換器の特徴 アルミ製 熱 交 換 器は、 “ 熱 伝 導 性がよい、軽い、毒 性がない、加 工 性がよい、多 様な表 面 処 理 が可能“などのアルミ本来の特 徴を生かし、生 活と産 業の様々な場 面で使用されています。 表 2 アルミ製 熱 交 換 器の応用分野 乗 物 用 自 動 車 鉄道車両 一般産業用 家庭用品用 プラント用 ラジエータ、ヒーター、エアコン用コンデ ンサ、エバポレータ ディーゼル車 電 気 車 ラジエータ、インタークーラー、オイルクーラー 変圧器オイルクーラー、フロンコンデンサ 建設車両 航 空 機 ラジエータ、オイルクーラー 特殊車両 ラジエータ、オイルクーラー（空冷式）、 インタークーラー エアコンディショナ 油圧装置 重電機 エバポレータ、コンデンサの伝熱フィン 自動販売機 半 導 体 エバポレータ、コンデンサの伝熱フィン ルームエアコン 冷 蔵 庫 一 般 エバポレータ、コンデンサの伝熱フィン エバポレータ 空気分離装置 炭化水素分離装置 LNG（LPG）液化装置 LNG 蒸発装置 廃熱回収装置 オイルクーラー、空調用熱変換器、電子機器 用熱交換器 オイルクーラー（空冷式） オイルクーラー（空冷式）、フロンコンデンサ、 ガスクーラー、エアクーラー 放熱フィン ソーラーパネル、風呂釜 エチレンプラント エタン回収プラント ヒートパイプ 122 自動 車 分 野においては、 ラジエータ、エアコン、 インタークーラーなどの熱 交 換 器は既にアルミ 製が主 流となっており、車 両の軽 量 化、熱マネジメント改 善を通して低 燃 費、低 公 害 化に貢 献し ています。地球環境保護の要 求に呼 応して、アルミ熱 交 換 器の小 型 化、軽 量 化 要 求はさらに高 まっています。 図 3 カーエアコン・コンデンサ高 性 能 化・小型化の推移 （ 4 ） アルミ製熱交換器の製造方法 1） ノコロックろう付 炉中ろう付の一 種で、非 腐 食 性のフッ化 物 系フラックスを用いて、炉 内に窒 素ガスを導 入して ろう付を行います。 主な用途 ：カーエアコン用コンデンサ・エバポレータ、自動 車用ラジエータ、 車載用ヒーターユニット、電 子 部 品 冷 却用ヒートシンク 図 4 ノコロックろう付プロセス チューブ成 形 フィン成 形 ノコロックブレージング コア組 立 塗装、仕上げ ヘッダー成 形 熱交換器 123 2） 真空ろう付法 通 常のろう付は、アルミ表 面の酸 化 膜を取り除き、再 酸 化を防 止する手 段としてフラックスを 使用します。真空ろう付法では、高真空中で酸素の供給をなくすことにより、再酸化を防止してろ う付を行います。 主な用途 ：カーエアコン用エバポレータ、産 業 機 械用オイルクーラー、 車両用オイルクーラー、電 子 部 品 冷 却用ヒートシンク 3） ロールボンド法 一 枚のアルミ板に圧 着 防 止 材を使って回 路をプリントし、 もう一 枚のアルミ板を重ねて圧 延し 一 体の板とします。その後、圧 着 防 止 材をプリントした部 分だけ高 圧 空 気で膨らませ、回路を作 ります。 主な用途 ： 冷蔵庫用エバポレータ、 ショーケース用エバポレータ、密 閉 形クーリング タワー用熱 交 換 器、平 板 形ヒートパイプ 図 5 ロールボンドプロセス 材料切断 成形仕上げ ブラッシング パネル切断 プリント 膨 管 ２枚合わせ 圧 延 124 4） S－フィン法 薄肉のフィンを打ち抜き、直管パイプを差し込んで拡管し、 フィンと密着させます。つぎにパイプ をサーペンタイン状に曲げ成形を行います。 主な用途：冷蔵庫用エバポレータ、 ショーケース用エバポレータ 図 6 S－フィンプロセス パイプ フィン成形 フィンチューブ組立 拡管 蛇行曲げ 溶接 仕上げ 検査 ヒータパイプ組付 5） スカイブフィン法 多くの熱 交 換 器は、チューブとフィンの2つの部 材を各 種の方 法で接 合して作られます。 これ に対しスカイブフィン法では、特 殊な形 状の押出材 表 面から連 続 的にフィンを切り起こすことに より、チューブとフィンが一 体 化した熱 交 換 器を製 造することができます。 主な用途：半導体用ヒートシンク、筐 体クーラー 図 7 スカイブフィン法プロセス 材料押出 スカイブ加工 仕上げ, 検査 6） ヒートパイプ 物 質はそれぞれ 固 有の熱 伝 導 率を持っていますが、 ヒートパイプは大 量の熱をわずかな温 度 差で輸 送できることが特 徴です。熱 伝 導 率に換 算すると金 属 丸 棒の数 十 倍から数 百 倍とな り、熱の超伝導体ということができます。 ヒートパイプの熱 伝 導の良さと離れた場 所 へ 熱を輸 送できる性 質を利用して、排 熱回収用熱 交換器、 ノートパソコンの基 盤 冷 却 等などに使用されています。 熱交換器 125 図 8 ヒートパイプの基 本 原理 7） プレコートフィン材 エアコン用エバポレータのフィン表 面には、白錆 発 生 防 止および 結 露 水による性 能 低 下を防 ぐため、 フィン表 面の水 濡れ性 向 上を図った処 理が施されています。 この処 理はブレージング後 に熱 交 換 器 外 表 面に施す場 合と、成 形 前に表 面 処 理を施したフィン材を使 用するものがありま す。前者は自動車用途、後 者は産 業用および家 庭用エアコン用途に用いられます。 図9 親 水 性 処 理（プレコートフィン）の構造 耐食性皮膜 アルミニウム 親水性皮膜 アルミニウム 耐食性皮膜 1.一層タイプ 耐食性皮膜 親水性皮膜 2.二層タイプ 図 1 0 フィンの高 性 能 化の推移 126 （ 5 ） 熱 交換器用アルミ材料の特徴 熱 交 換 器に使われるアルミ材 料は、使われる箇 所 、製 造 方 法などに応じて最 適な合 金 が 選 択されます。 圧 延 材は、 フィン材 、ブレージングシート、電 縫 管などに使われ、押 出 材は、管 、多 穴 管 、放 熱 フィン材などに使用されます。 表 3 自動 車用熱 交 換 器に使われるアルミ材料 名称 熱交換器の形式 接合方法 ラジエータ チューブアンド ノコロックろう付 コルゲートフィン コンデンサ チューブアンド コルゲートフィン ノコロックろう付 （パラレルフロー） プレートアンド コルゲートフィン （ドローンカップ） 真空ろう付 アルミニウム材料 フィン チューブ 3N03 7072 / 3003 / 4343 電縫管, Al - Mg / Al - Si / 4343電縫管 4343/3N03/4343 Al - Mn - Cu 押出多穴管 （Zn防食あり） 3203,3203+ In or Sn 4004/3003/4004 4343/3N03/4343 Al - Mn - Cu 押出多穴管 （Zn防食あり） エバポレータ チューブアンド ノコロックろう付 コルゲートフィン
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