平成 27 年 12 月 25 日 ツのッター 学年部長のつぶやき便り NO.8 2 学年部長 津野 誠司 May Force Be With You! スターウオーズの新作が公開された。 1977年に初公開された「エピソード4」から、38年が経過している。 僕は、この「エピソード4」公開時、高校2年生。君たちと同じ年だった。部活の帰り、テニス 部の仲間たちと「主人公ルークとダースベーダの戦いの物語」を観た。 1983年に「エピソード6」が公開され、3部作が終了すると、少し間があいて1999年に 公開された「エピソード1」は「ルークの父親アナキン(=ダースベーダ)の若かりし頃の物語」 であった。辺境の惑星でジェダイに見いだされたとき、少年アナキン・スカイウォーカーは奴隷の 身であった。しかし、二人のジェダイはアナキンが強大な Force を持っていることを見抜き、新た なジェダイとすべくこの惑星から連れ出す。ここから「エピソード3」までの前期3部作では、極 めて才能豊かで期待されていたアナキンが、どのようにしてダークサイドへ堕ちて行き、ダースベ ーダとなっていくのかが克明に描きだされている。 スターウオーズが単なるエンターテイメントを超えて、幅広い地域、世代、分野に属する人々か ら愛されるのは、この映画の中に、あらゆる人間にとって共有されうる「哲学的テーマ」があるか らだと思う。スターウオーズは人間の根源的問題をえぐり出すメタファー(比喩)でもある。 なかでも、中心になる「テーマ」は Force だろう。 内面からわき出る神秘的な力 Force、ジェダイたちは訓練によって磨きあげ、それをダークサイ ドとの戦いや平和のために駆使する。一方でダースベーダをはじめとするダークサイドに生きる者 たちは、自己利益拡大のために Force を破壊的に使う。つまり、Force を秩序維持や世界発展のた めに使うか、 秩序破壊や自己の利益のために使うかによって、 生きる世界が全く違うということだ。 もちろん、このような世界二元論は幼児向けアニメにも典型的な単純なものだが、スターウオーズ は、それを超越して、僕らに次のようなメッセージを送っているはずだ。 人間は誰もが、 世界と関わりそれをよりよいものにしていく Force を授かって生まれてきている。 しかし、人間は弱い。自分で知らず知らずのうちに、ダークサイドへ転落していき、Force を誤っ た方向に使う危険性といつも隣り合わせなのだ。 自分自身で無自覚なまま、わがままな(=自分のみが好ましい)選択を繰り返しているうちに、 周囲との協調がとれず、まともな人間からは避けられ、社会の中で責任ある立場を任されることが なくなっていく。つまりはダークサイドへと自らを追いやってしまう人間は、実はたくさんいる。 アナキンがそうであったように、転落への道へ向かうのは、ほんの些細な選択の積み重ねであるこ とが多い。ちょっとした失敗、認められないことへの恨み、他者への妬み、そういうことがきっか けとなって、ダークサイドで集まって他者の批判をする、攻撃的な言動をする、協働して問題解決 にあたっている者の足を引っ張る…これらはすべて、生まれる時に授かった Force をダークサイド で使っていることになる。 さて、12 月 15 日にマレーシア旅行隊が新潟に無事到着し、3コースすべての海外研修が終了し た。 今年の海外研修は、これまでよりチャレンジングなものだった。スポーツコースは全員が世界の 海で使えるスキューバダイビングのライセンス取得を目指した。特進コースはフィリピンセブ島で ネイティブとのマンツーマン語学研修を 2 週間実施した。そして今回、希望者はアメリカボストン でホームステイを行い、昼の語学研修では様々な国から学びに来ている留学生と英語で交流しあっ た。普通コースは、イスラム教が国教であるマレーシアに行き、世界がイスラム国の脅威に萎縮す る中、イスラムのファミリーの温かさに触れた。 マレーシアでのホームステイは感動的だった。最終日の朝、ホストファミリーと別れを惜しんで 抱き合って泣いている姿も素敵だったが、僕が何よりも感動したのは、参加した全員がこの異文化 体験チャレンジを最後までやりきったことだ。不安で押しつぶされそうな生徒も少なからずいたは ずだ。全くの異文化。自分の英語力にも自信はない。そもそもコミュニケーションをとれるのかど うかもわからない。イスラムという全く未知の宗教世界。最近のテロ情報。それでも君たちはやり 切った。最終日の朝、前日に不安で泣いていた生徒が、最高の笑顔でファミリーと写真を撮りあい、 別れを惜しんでいる姿に、僕は素直に感動した。異文化の人間同士が、生活を共にして分かり合い、 心を分かち合い、日本とマレーシアの間に、イスラムと非イスラムの間に、小さな絆をたくさん作 った。 学んでほしい。困難とはそこから逃げようとするから「避けたいもの」になるのだ。困難から目 を背けず、あえてその中に飛び込んで解決しようとするとき、それは「生きることそのもの」とな り、そしてそれを乗り越えたとき、困難とは「自分を強くしてくれる大切な場」であったことに気 付く。困難こそが君を強くし、君に力を授け、真の友情と連帯を生む。困難によって君たちの Force は育まれていく。 「エピソード4」で印象的なシーンがある。帝国(ダークサイド)にとらわれているレイア姫が 執拗な尋問にも頑固に抵抗しつづけることに苛立った帝国の提督は姫の故郷である惑星を爆破した。 そのとき、遠く離れたところでルークに Force を教えていたジェダイの騎士オビ・ワンがめまいを 起こしてこう言う。 「今、突然 Force が弱まった。宇宙のどこかで一瞬にして悲劇的なことが起こった。」 Force は世界を結び付け、真の安らぎを築く 大きな力でもある。 残念ながら、現在のリアル世界はあちこちで ダークサイドに侵食されている。イスラム国の 残忍で破壊的な野望はこれからも暗い影を落と し続けるだろう。しかし、君たちにはマレーシ アで、グアムで、セブで、ボストンでそれぞれ が Force を手にした。それぞれの国のファミリ ーの笑顔、現地の先生や講師の方の励ましが、 君たちの心にライトセーバーとして生きている。 それは世界に灯る小さな希望の一つひとつで あるに違いない。 May Force Be With You! Merry Christmas!
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