調査報告 アプリケーション開発を加速する Force.com

2009 年 5 月
Document
J29
調査報告
アプリケーション開発を加速する Force.com
要旨
Nucleus Research が実施した
実施したセー
したセールスフォース
セールスフォース・
ルスフォース・ドットコム社
ドットコム社のクラウド型
クラウド型プラットフォーム
Force.com に関する調査
する調査により
調査により、
により、同プラットフォームでは
プラットフォームでは従来型
では従来型の
従来型のプラットフォームと
プラットフォームと比較して
比較して、
して、
4.9 倍 (平均値
平均値)
平均値 のスピードで
スピードでアプリケーションを
アプリケーションを開発できること
開発できることが
できることが明らかになり
らかになりました
なりました。
ました。Force.com
は価値創出までの
価値創出までの期間
までの期間が
期間が短く、低コストで
コストで柔軟性
柔軟性が高いため、
いため、エンドユーザ、
エンドユーザ、開発者、
開発者、ISV にとって
利点の
利点の多いシステムと
システムと言えます。
えます。
セールスフォース・ドットコム社のアプリケーション開発プラットフォームである Force.com は、市場
投入されてから約 2 年しか経過していませんが、セールスフォース・ドットコム社の顧客、ISV の開
発プロジェクトを分析したところ、Force.com の開発モデルでは価値創出までの期間を大幅に短縮
できることがわかりました。具体的には 17 件のプロジェクトを調査した結果、開発期間の短縮、お
よび運用開始後のサポートコストの削減効果が顕著であることが確認できました。
なお、調査対象には以下のような企業が含まれます。
既存アプリケーションから Force.com へ移行した企業
他の開発環境 (Java、.NET など) との比較検討の結果、Force.com を採用した企業
Force.com の導入企業を顧客とするシステムインテグレータ
従来の開発環境との比較検討の結果、Force.com を採用した ISV
調査対象企業の選定においては、Force.com での開発期間と、 Java または .NET による開発
期間との厳密な比較が可能であることを条件にしました。
調査結果
調査では、各企業の開発者から直接プロジェクトの詳細を聞き取り、Force.com と Java また
は .NET 環境における開発期間、プラットフォームの選定から開発したアプリケーションの導入完了
までの期間を比較したデータを収集しました。その後、これらのデータを集計し、Force.com では
Java または .NET と比較すると 1.5 倍から 10 倍、平均で 4.9 倍 のスピードで開発を完了で
きるという結果を得ました。
Force.com では、Java や .NET と比較して平均 4.9 倍のスピードでアプリケーションを開発
することが可能
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キーワード
開発期間が大幅に短縮されたプロジェクトでは Force.com の標準オブジェクト、ユーザや管理者向
SaaS (サービスとしてのソフトウェア)
けインターフェース、ワークフロー機能の活用度合いが高い傾向にありました。一方、汎用性が低く、
エンタープライズアプリケーション
特殊な機能が必要なプロジェクトでは、カスタムコードを記述する割合が高いため、開発期間の短縮
CRM
効果が小さくなりがちでした。
Force.com で開発効率が
開発効率が向上する
向上する理由
する理由
Force.com により開発効率が向上したと回答した開発者は、その理由として以下のような点を挙げ
ています。
企業固有の情報を格納するカスタムオブジェクト (カスタムのデータベーステーブル) を迅速に
作成し、複数のプロジェクトで再利用できる。
組み込みの管理ツールと、ユーザインターフェースのカスタマイズが簡単なため、ゼロから開発、
ルール、フォーム、プロセスなどを容易にカスタマイズし、ビジネス要件に合ったワークフローを
データベース、データベース接続機能、アプリケーションサーバ、セキュリティプロトコル、ロード
テストを行う必要がない。
作成できる。
バランシングなどのインフラ関連機能を実装した、テスト済みの運用環境を利用できる。テスト環
境を自社で整備する必要がなくなるため、運用環境への移行前のテストにかかる時間も短縮で
きる。
これらの理由から、企業や ISV の開発者は、アプリケーションの設計や計画に費やす時間、記述す
るコードの量を削減でき、より迅速にアプリケーションを提供できるようになりました。
SaaS アプリケーションの提供を目指し、 1 年半ほど前に Java から Force.com に移行した
ISV は次のように述べています。「Force.com により、プラットフォームの開発やインフラのセットア
ップのための作業負荷が格段に軽減され、アプリケーションの開発スピードが大幅にアップしました。
さらに、堅牢性や拡張性も飛躍的に高まりました。Force.com による開発ではデータベース、ワーク
フロー承認プロセス、ユーザインターフェースといった、既存の機能をカスタマイズするだけでよいた
め、開発期間は Java の 10 分の 1 になり、スタック、セキュリティプロトコルなどあらゆる要素を
一から開発しなければならない Java に比べて圧倒的なスピードを実現できました」。
リテールセールス部門用のカスタムアプリケーションを、 .NET で開発しようとしてこれまでに 2 度
失敗したという企業の担当者は、次のようにコメントしています。「Force.com は管理用インターフェ
ースのような主要コンポーネントを無料で提供していますが、.NET ではコーディングから運用までを
自前で行わなければなりません。NET では 1,000 行のコードを書いていたのですが、Force.com
ではわずか 100 行で済み、それまで 26 週間かけていたプロジェクトを 10 週間で完了できまし
た」。同社では、セールスフォース・ドットコム社のサービスを初めて採用するにあたって、
Force.com の投資対効果検討書を作成しました。530 ユーザ分のライセンスを購入すると想定して、
プロジェクトの年間予算を比較検討したところ、.NET を使った場合の予算は Force.com の 2.2
倍でした。
医療サービスを提供するある企業では、Force.com を導入してから 3 年で 160 以上のカスタム
ワークフローを開発し、企業全体に展開しました。カスタムオブジェクトやカスタム項目を活用して開
発を進めた結果、アプリケーションのタイプによるものの、従来の開発環境と比較して 4、5 倍から
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10 倍のスピードで開発を行えるようになりました。開発とはいえ、アプリケーションレベルのものや
Apex によるコーディング、API の作成程度で済むため、文字通り毎日のように新しいソリューション
を展開しています。
上記の他には、次のような意見が挙げられています。
「Force.com では、画面と連動した選択リストのようなコンポーネントがありますが、多くがすで
に組み込まれているため、開発、テスト、導入に伴う作業負荷を削減できます」
「(アプリケーションの開発期間である) 4 週間の間に、私たちは Force.com の主要な機能を
十分に活用したと思います。従来の .NET 環境では、サーバを設定し、単体テスト、テストケー
スのテスト、負荷テストを実施する必要がありましたが、今回はセールスフォース・ドットコムが検
証した標準オブジェクトを主に利用したので、テストは一切不要でした」
「夜のうちに要件を送っておけば、次の日には返事が得られ、週末までには要件に合致する何
らかのソリューションが見つかります。従来のソフトウェアモデルでは、このようなことは不可能
でしたし、要件によってはコストがかさむため提案を上げることすらできませんでした」
「.NET や Java は、アプリケーション開発の一部分をサポートするだけです。ホスティング環境
やアプリケーションサーバ、認証方法の選択やセットアップなどにはユーザが対応する必要があ
ります。同じ条件で考えた場合、Force.com の開発効率は .NET や Java アプリケーション
より約 40% 高くなります。プロジェクトにもよりますが、AppExchange で提供しているアプリケ
ーションやその他のコンポーネントを利用できれば、大幅なスピードアップを実現できます」
Force.com のその他
のその他の利点
セールスフォース・ドットコムが提供する CRM アプリケーションの利点は、Force.com で開発した
カスタムアプリケーションにも引き継がれているため、各社は初期投資を抑えながら柔軟性の高い運
用を実現しています。
「Force.com を使用していなかったら、ネットワーク、データベースなどの管理、開発要員として、
あと 5 名のスタッフを補充しなければならないところでした」
「セールスフォース・ドットコムのソリューションがなかったら、サーバ 1 台を 1 万ドルで購入し、
オフィスと工場用の T1 回線にそれぞれ年 1 万 4,000 ドルを支払い、さらに、少なくとも 1
名の開発要員を補充することになっていたと思います」
「セールスフォース・ドットコムのソリューションは、アプリケーションのアップグレードに伴うさまざ
まな作業から私たち開発者を解放してくれました。アップグレードでは通常、変更内容が運用環
境で問題なく動作することを確認するために互換性テスト、コード変更などの細かな作業や大規
模なインフラの変更が発生します。また、サーバをアップグレードする場合も、カスタムアプリケ
ーションをサポートするため、ハードウェアとソフトウェアを調整する必要がありました。こうした
一切の作業が、セールスフォース・ドットコムのソリューションによって不要になったのです」
「Force.com のおかげで、データベースやサーバの容量を心配する必要がなくなりました」
習得が
習得が容易
多くの開発者が、Force.com の開発ツールは .NET や Java の使用経験があればスムーズに習
得できると述べています。ほとんどの開発者は、短期間のトレーニングで Force.com を使いこなせ
るようになっており、トレーニングを必要としない開発者もいます。
.NET、Java の使用経験を持つ、あるシステムインテグレータの開発者は次のように述べています。
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「Force.com は非常に標準化が進んでいます。Java や .NET では、たとえばインフラストラクチャ
を呼び出す場合などには、複数の方法から選択する必要がありますが、Force.com ではそうした手
間がかかりません。Java の経験があるユーザのほうが .NET 経験者よりもやや上達が早いようで
すが、いずれにせよ Force.com は習得が容易です。たとえば弊社には .NET での 4 年間の開
発経験を持つスタッフがいましたが、周りが皆忙しかったため、彼は特別なトレーニングを受けずに
独学で Force.com を習得しました」
その一方で、Force.com での開発自体は難しくはないが、アプリケーション開発に対する考え方や
方針を変えていく必要があるという意見もありました。
「API コールをはじめ、すべてが文書化されています。ただし、Force.com では所定のテストカ
バレッジを達成する必要があり、この点だけは従来の手法より時間がかかります。要件を満た
せない場合、テスト環境で問題ないことがわかっていても、運用環境に展開することはできませ
ん。Force.com では、コードの質を高め、パフォーマンスを低下させない配慮が求められており、
カバレッジの要件への対応は必須です。また、ガバナ制限により全項目を調べるレコードなども
作成できないようになっています」
「Force.com の制限に従ってコードを記述しなければならないため、いろいろと工夫を凝らす必
要があります。システムを共有しているため、フレームワークにガバナ制限が組み込まれている
のです」
業界評価が
業界評価がプラスに
プラスに作用
Force.com を利用する多くの ISV が、アプリケーションの開発期間を短縮できただけでなく、大口
顧客をよりスムーズに獲得できるようになったと報告しています。それは、セールスフォース・ドットコ
ムと Force.com に対する高い評価と、信頼性がプラスに作用していると言えます。ある ISV は次
のように語っています。「Force.com によって開発期間を短縮できただけでなく、大口案件の受注、
収益の生成、市場の獲得などもすべてスピードアップできました。Force.com を導入していなかった
ら、開発には倍以上の時間がかかっていたでしょうし、大口顧客にアプローチすることもできなかった
でしょう。現在、当社の顧客は 25 社に上り、創業 2 年目にしてキャッシュフローがプラスに転じま
したが、これは驚くべき成果です」。
課題
どのようなプラットフォームでも、いったん導入すると、その環境から別の環境への移行には費用が
発生します。しかし、各社は開発期間の短縮を始めとするさまざまな利点を考慮に入れると、
Force.com の投資リスクが他のプラットフォームを上回ることはないと考えています。ある ISV は、
「他社が .NET から抜け出せなくなっているのと同じように、当社も Force.com にはまっています。
いずれにせよ、新しい環境への移行にはそれなりの負荷が伴います」とコメントしています。
結論
クラウドコンピューティングは、エンタープライズアプリケーションやカスタムアプリケーションの開発コ
スト、開発工数を大幅に削減します。近年、新たに登場したクラウド型の開発プラットフォーム
Force.com では、.NET や Java などの従来型の環境に比較して、平均で 4.9 倍のスピードでア
プリケーションを開発できます。価値創出までの期間短縮、低コスト、柔軟性の高さなどの利点から、
Force.com は、カスタムアプリケーション開発の新たな選択肢として、今後の普及拡大が見込まれ
ます。
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