第 2293 号 2015 年 3 月 9 日 目 審査番号・270302-B2 〔今週号は 2 月 27 日時点の情報を基に作成しています〕 次 投資コラム 日本株銘柄情報 日本株銘柄情報 :株主還元 ·································································································1 :セイコーエプソン(6724) ·································································· 2 :キヤノン(7751)··················································································· 3 株主還元の仕方 アナリスト キヤノン(7751)が、2 月 10 日に発表した、成長市 矢田真理 場であるネットワーク監視カメラ業界で世界一の アクシス社を買収したのは、このような成長投資 2月下旬で、2014 年 12 月期、2015 年 3 月期 の良い例です。 決算企業の決算ラッシュが終了しました。決算内 キヤノンの場合、現地通貨ベースでは販売状況 容については、概ね良好なものが多かったという が不振でしたが、円安状況のため、円換算すると 印象を持っています。 販売額が上振れし、見かけ上は好業績に見えまし このなかで、増配や自社株買い枠設定を発表す た。 「実ビジネス」が不振だったため、株価は下落 る企業も多く、好業績のなか、株主に還元して、 基調でしたが、自社株買いや増配(キャッシュリ 自社の株価を高めようとする企業の姿勢がみてと ッチな企業であるため)で、株価を上昇させてい れました。 るという状況でした。これは、不健全な状況であ このように、好業績で内部留保が膨らみ、その るといえるでしょう。 中から、株主への配当金を増やしたり、自社株買 同社が成長投資を行ったことによって、株価が いで、資本効率を高めることで、株主に還元する 上昇したことこそが、本来の株式市場のメカニズ ことは、妥当な企業判断といえると思います。 ムともいえます。 しかしながら、増配や自社株買いに偏るのでは なく、内部留保の資金を、将来の中長期的な企業 また、成長投資を行う上で、ROIC(投下資本 利益率)を尺度にすることが求められます。 の利益成長のための、成長投資に回すことも重要 ソニー(6758)が、経営立て直しのために、全事 です。それは、この成長投資が、将来的に、その 業部を分社化し、各事業部で ROIC を尺度に効率 企業の内部留保をさらに膨らませ、それによって、 的な経営管理を促したのは妥当な経営判断と評価 より多くの配当を株主は受け取ることができ、ま できます。 た、より一層の自社株買いをするとすれば、それ 安倍政権も、内部留保を成長投資に振り向ける も株主にとっては利益を享受できることになるか ことは重視しており、そのため、日本版スチュワ らです。 ードシップ・コードを盛り込んだコーポレート・ ガバナンスに力を入れているわけです。 http://www.aizawa.co.jp/ 本資料のご利用にあたり、お客様にご確認いただきたい事項 を、本資料の最終ページに記載させていただきました。ご確認 の程、よろしくお願いいたします。 日本株銘柄情報 セイコーエプソン(6724) アナリスト 株価指標 株価 (2015/2/27) 売買単位 市場 発行済株式数 矢田真理 4395円 100株 東証1部 1億7889万株 (自己株式を除く) 時価総額 7862億円 2015 年 3 月期第 3 四半期業績は課題が残る 6724 セイコーエプソンは、インクジェットプ リンター、半導体等のマイクロデバイス、時 計等の精密機器などを手掛ける電気機器メー カーです。同社の 2015 年 3 月期第 3 四半期累 計ベースの決算内容は、売上高が対前年同期 比約 8%の増収、営業および税前利益(同社 は IFRS を会計基準として採用)は同約 60% 増益、純利益は同 112%の増益となりました。 3 四半期累計での業績は良好でしたが、第 3 四半期 3 か月の業績については、同社の核事 業であるインクジェットプリンタービジネス の利益が、会社計画値に届かないなど、課題 が残りました。 先進国でのスマートチャージシステム 同社の利益の源泉は、インクジェットプリン ターにおける、消耗品であるインクにありま す。インクジェットプリンターは、一般的に は、家庭で主に使用されている傾向がありま すが、同社は、企業に、レーザープリンター 2 <業績の推移> IFRS 決算期 営業収益 営業利益 税前利益 純利益 1株利益 1株配当 2013/3 851297 21255 17629 -10091 -56.4 20.0 2014/3 1003606 84968 78121 83698 467.9 50.0 2015/3予 1090000 132000 132000 111000 620.5 115.0 単位:100万円 (1株利益、1株配当は円) 予想は会社予想によります。 100万円未満は四捨五入しています。 <投資指標> 連結 今期予想PER PBR 予想配当利回り 7.1 倍 1.6 倍 2.6 % Office)規模のオフィス中心に置かれていま すが、今後、中小企業レベルにまで、普及を 進めていこうとしています。そのため、スマ ートチャージという、比較的低価格の月額課 金システムを採用した大型インクジェットプ リンターのリース事業を開始しています。 同社のインクジェットプリンターは、同社独 自の技術により、レーザープリンターに比べ、 インクの色の多様性、高い耐久性、高画質を 実現でき、高速性についても、1 分間に 24 枚 と、レーザープリンターの同 30 枚というレベ ルに追い付きつつあります。こういったこと から、スマートチャージシステムを採用する ことで、高品質低価格を実現し、同社のイン クジェットプリンターを普及させようとして います。 新興国では大容量インクタンクの拡販 同社は、新興国では、大容量インクタンクモ デルで収益を順調にあげています。先進国で のインクジェットプリンターの更なる普及、 新興国での大容量インクタンクの拡販で、今 後の利益成長を図る戦略です。 (出所:QUICK) に代わるものとして、大型インクジェットプ リンターを普及させようとしています。すな わち、レーザープリンターのトナーと同じ大 きさのインクパックを装備したインクジェッ トプリンターを、企業向けに積極的に投入し て、利益拡大を図ろうとしているわけです。 現在のところ、SOHO(Small Office Home 本資料のご利用にあたり、お客様にご確認いただきたい事項を、本資料の最終ページに記載させてい ただきました。ご確認の程、よろしくお願いいたします。 日本株銘柄情報 キヤノン(7751) アナリスト 株価指標 株価 (2015/2/27) 売買単位 市場 発行済株式数 矢田真理 3889円 100株 東証1部 10億9183万株 (自己株式を除く) 時価総額 3 <業績の推移> SEC連結 決算期 営業収益 営業利益 税前利益 純利益 1株利益 1株配当 2013/12 3731380 337277 347604 230483 200.8 130.0 2014/12 3727252 363489 383239 254797 229.0 150.0 2015/12予 3900000 380000 390000 260000 238.1 150.0 単位:100万円。(1株利益、1株配当は円)。予想は、配当以外は会社予想。配当 については日経予想。100万円未満は四捨五入。 <投資指標> 連結 今期予想PER PBR 予想配当利回り 16.3 倍 1.4 倍 3.9 % 4兆2461億円 守中の自宅で高齢者、子供、ペットを見守る、 新規事業の育成に腐心 7751 キヤノンは、誰もが知っている世界的な 大企業ですが、核事業であるデジタルカメラ 販売の不振に悩んでいました。2014 年 12 月 期の業績は、現地通貨ベースおよび数量ベー スでの売上は不振でしたが、円安の恩恵を受 け、対前期比で、売上高 0.1%減、経常利益 および純利益は二桁増益となりました。 さらには、ビッグデータの解析もできる、ま た顔認識もできるので、ディズニーランドで 導入されている「顔パス」システムにも適用 できます。このように、応用範囲が広く、今 後の成長可能性が高い事業を行っているアク シス社を、キヤノンは高く評価しています。 それゆえ、2014 年 12 月期の売上高 770 億円、 純利益が 76 億円のアクシス社を、3,300 億円 という高い買収プレミアム(約 50 倍のプレミ 同社の利益の源泉は、レンズ交換式デジタル アム)で買収しました。 カメラとプリンターのカートリッジであるわ けですが、いずれも、世界的に景気が本格的 に回復していないため、収益が出ていないと いう状況です。そういうなかで、同社は、新 しい事業の柱を探すのに躍起になっていまし た。 キヤノンの中期利益成長力が高まったと評価 ネットワーク監視カメラ事業は、B to Bビ ジネスであるため、デジタルカメラのような B to Cビジネスよりも景気に左右されにく いこと、またその市場規模が年間で 15%~ 20%の成長をしていることを考えると、今回 大型買収をトップセールスで決定 こういう状況下、2 月 10 日、同社は、成長市 場である、ネットワーク監視カメラ業界で世 界一企業である、スウェーデンのアクシス・ コミュニケーションズを、3,300 億円で買収 の買収により、キヤノンの中期的な利益成長 力は高まったと評価できます。キャッシュリ ッチなキヤノンが、このような成長投資をす ることで、手元資金 8,400 億円を有効に使っ たことも高く評価できます。 (出所:QUICK) すると発表しました。 キヤノンが着目しているのは、アクシス社が 行っている事業の内容が、多様な範囲で活用 できることです。アクシス社が手掛けている、 ネットワーク監視カメラは、街頭の防犯や小 売店での動きを調査すること以外に、工場生 産ラインで不審者や異物混入を監視する、留 本資料のご利用にあたり、お客様にご確認いただきたい事項を、本資料の最終ページに記載させてい ただきました。ご確認の程、よろしくお願いいたします。 4 金融商品取引法に基づく表示事項 ■ 本資料をお客様にご提供する金融商品取引業者名等 商 号 等: 藍澤證券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 6 号 (本社)東京都中央区日本橋1-20-3 加入協会: 日本証券業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会 当社が契約する特定第一種金融商品取引業務に係る指定紛争解決機関 : 特定非営利活動法人 証券・金融商品あっせん相談センター(略称:FINMAC) ■ お客様にご負担いただく手数料(税込)およびリスク等について ・対面口座:約定代金に対し、最大 1.2420%を乗じた額 (ただし最大 147,150 円、約定代金が 217,391 円以下の場合は、2,700 円) ・インターネット口座「ブルートレード」 インターネット発注:最大 1,620 円、コールセンター発注:最大 3,240 円 ・コンサルティングネット口座「アイザワプラス」 インターネット発注:最大 4,860 円、コールセンター発注:最大 9,720 円 株式は株価の変動等により、損失が生じるおそれがあります。 本レポート等でご紹介する商品等の勧誘を行う場合があります。 藍澤證券 免責事項 本資料は証券投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。株式 は株価の下落や発行者の信用状況の悪化等により、投資元本を割り込むお それがあります。投資に関する最終決定は、情報の被提供者自身による判 断でお決め下さい。本資料は企業取材等に基づき作成していますが、その 正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。結論は作成時点 での執筆者による予測・判断の集約であり、その後の状況変化に応じて予 告なく変更されます。 本資料のご利用にあたり、お客様にご確認いただきたい事項を、本資料の最終ページに記載させていただき ました。ご確認の程、よろしくお願いいたします。
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