2008 年1月 30 日 神経内科 谷口 内科疾患に伴う神経症状 1 内科疾患に 内科疾患に伴う神経症状 神経症状 代謝・内分泌疾患に伴う神経症状 1.糖尿病 中枢神経障害: 糖尿病性昏睡(ケトアシドーシス,非ケトン性高浸透圧性昏睡) 脳血管障害;脳動脈硬化が高度→アテローム血栓性梗塞 不随意運動:突然発症,一側上下肢の chorea/ballism 著明な高血糖あるいは低血糖などコントロール不良の時に発症しやすい MRI;反対側の基底核に T1 で高信号 機序;代謝異常?,点状出血?,虚血? 治療:血糖が正常化しても持続すればハロペリドール 末梢神経障害: ポリオール代謝亢進とそれによってもたらされる酸化ストレス上昇, 蛋白の非酵素的酸化と後期糖化生成物形成, 血管壁 PKCβの活性化と神経内 PKCαの活性低下.... Diabetic neuropathy Ⅰ.対称性多発ニューロパチー (1)感覚性多発ニューロパチー,感覚運動性多発ニューロパチー 末梢神経の長さに比例した感覚障害(足→手,手袋靴下型) しびれ感,下肢腱反射消失,下肢振動覚低下 (2)対称性運動ニューロパチー 両下肢近位筋の対称性かつ緩徐進行性の脱力,高齢者に (3)自律神経ニューロパチー 糖尿病初期から存在 瞳孔異常,発汗異常,起立性低血圧,不整脈, 弛緩性食道・胃,胆石,便秘・下痢,陰萎,弛緩性膀胱, → 虚血性心疾患の重要な危険因子,生命予後にも関与 Ⅱ.局所性/多発単ニューロパチー Ⅰ. Symmetric polyneuropathies 1. Sensory or sensorimotor polyneuropathy 1) small fiber neuropathy 2) acute painful diabetic neuropathy 3) ataxic and acrodystrophic neuropathy 4) treatment induced neuropathy 2. Symmetric motor neuropathy 1) proximal motor neuropathy 2) distal motor neuropathy 3. Autonomic neuropathy Ⅱ. Focal and multifocal neuropathies 1. Cranial nerve lesions 2. Limb and trunk mononeuropathies 3. Lower limb asymmetric motor neuropathy (Diabetic amyotrophy) Ⅲ. Mixed forms (1)脳神経麻痺 糖尿病性眼筋麻痺:動眼神経,外転神経,滑車神経麻痺の順 急性発症が多い,眼窩周囲の痛みを伴うことあり,瞳孔機能は保たれる傾向 DM の罹病期間・コントロール状態・眼底所見と相関しない,予後は比較的良好 顔面神経麻痺:Bell 麻痺と比べ回復不良 (2)四肢・体幹の多発単ニューロパチー 尺骨・正中・橈骨・大腿・外側大腿皮神経・総腓骨神経を好発部位とし,突然~緩徐発症 胸神経が侵される→胸腹部の強い痛みと錯感覚が一側性または両側性に出現 (3)下肢非対称性運動ニューロパチー(糖尿病性筋萎縮 diabetic amyotrophy) 下肢近位筋の非対称性の脱力と萎縮が急激発症し,痛みを伴うことが多い 発症時に著明な体重減少を示すことが多い,回復は極めて緩徐 治療: 基礎的治療(血糖コントロール,アルドース還元酵素阻害薬,Vit.B12, E) 対症療法:抗うつ薬,抗けいれん薬,抗不整脈薬 2008 年1月 30 日 神経内科 谷口 内科疾患に伴う神経症状 2 2.甲状腺疾患 1)甲状腺機能亢進症 ・甲状腺中毒性脳症 易興奮性,見当識障害,妄想,痙攣,四肢麻痺,腱反射亢進,病的反射陽性 MRI:脳梁膨大,小脳半球,中小脳脚,大脳白質に異常信号 治療:甲状腺機能亢進に対する治療,ステロイド ・周期性四肢麻痺 低カリウム性,20 歳以上の男性に(男女比 20:1) 突発的な四肢脱力,腱反射低下,K↓,CK↑ 激しい運動をした翌日,睡眠から覚めたとき,糖質の過剰摂取やアルコール多飲が誘因 治療:カリウム製剤、甲状腺機能亢進に対する治療、誘因を避ける ・甲状腺眼症 甲状腺機能亢進症に伴うことが多いが,甲状腺機能が正常~低下でも発症 Basedow 病患者の 25~50%に眼球突出 眼球突出,上眼瞼後退→→結膜充血,視神経・角膜・眼球運動障害 眼窩脂肪組織の量と TSH 抗体価が比例 ・Basedow 病に伴う重症筋無力症,甲状腺中毒性ミオパチー など 2)甲状腺機能低下症 ・粘液水腫昏睡 低体温,徐脈,皮膚乾燥,痴呆様症状,幻覚・妄想,意識障害 感染,外傷,手術などを契機に代償状態が破綻 ・ミオパチー 30~80%,近位筋優位の筋力低下,有痛性筋痙攣,mounding 現象,腱反射の弛緩相遅延 血清 CK 上昇, * Hoffmann 症候群―筋肥大が目立つ例 ・末梢神経障害 拘扼性ニューロパチー;手根管症候群,足根管症候群 ポリニューロパチー;17~60%,感覚障害が主体 ・小脳失調 体幹>四肢失調 内分泌疾患に伴う神経障害 先端巨大症:視野・視力障害,手根管症候群 汎下垂体機能低下:脳症,意識障害 下垂体卒中:頭痛,発熱,意識障害,視野障害,外眼筋麻痺,痙攣 SIADH:意識障害 尿崩症:意識障害 甲状腺機能亢進症:振戦,ミオパチー,周期性四肢麻痺,眼症,脳症 甲状腺機能低下症:意識障害,手根管症候群,痙攣,ミオキミア 副甲状腺機能亢進症:意識障害,脳症,痙攣 副甲状腺機能低下症:テタニー,痙攣 偽性副甲状腺機能低下症:テタニー,精神発達遅滞,テタニー Cushing 症候群:ミオパチー,脳症,興奮,幻覚,錯乱など Addison 病:脳症,意識障害 低血糖:意識障害 痙攣,片麻痺 糖尿病:末梢神経障害,意識障害 2008 年1月 30 日 神経内科 谷口 内科疾患に伴う神経症状 3 3.慢性肝疾患 肝性脳症の昏睡度分類 (第 12 回犬山シンポジウム,1981) 1)肝性脳症 脳機能維持に必須な物質の欠如 Ⅰ睡眠覚醒リズムの逆転,多幸気分 門脈-大循環シャントからの中毒因子 Ⅱ見当識障害(時,場所),物を取り違える 異常行動(お金をまく),傾眠傾向,はばたき振戦あり 血中アンモニア上昇 Fischer 比減少;1.5 以下(正常>3) Ⅲ興奮・せん妄状態,嗜眠状態 外的刺激で開眼するが,指示に従わず,はばたき振戦あり 脳 MRI;T1 像で淡蒼球の高信号,脳波で三相波 治療;蛋白摂取制限,ラクツロース, BCAA,非吸収性抗生剤など Ⅳ昏睡 Ⅴ深昏睡 2)Wilson 病 銅輸送蛋白 ATP-7B の遺伝子異常→肝,脳,角膜,腎,心などに銅沈着 常染色体劣性遺伝(日本人は散発例も多い),80%が 7~15 歳で発症 錐体外路症状(10 代発症 ジストニア,20 代発症 振戦),性格変化,肝腎障害,Kayser-Fleischer 角膜輪 診断;血清セルロプラスミンの低下,尿中銅排泄増加,肝の銅含有量増加 治療;低銅食,D-ペニシラミン 4.慢性腎不全 ・脳症; 不均衡症候群:透析導入初期,脳組織の尿素の排泄遅延→浸透圧差による脳浮腫 頭痛,嘔気・嘔吐,せん妄,ミオクローヌス 尿毒性脳症:痴呆様症状→意識障害,ミオクローヌス,痙攣 ・尿毒性ニューロパチー:手足の末端に異常感覚,皮膚の掻痒感,手根管症候群 ・ミオパチー:副甲状腺機能亢進に伴う近位筋の脱力 ・脳血管障害:頭蓋内圧の変動,透析中に使用するヘパリン,血小板減少,高血圧などによる 呼吸器疾患に伴う神経症状 1.低酸素性脳症,CO2 ナルコーシス 虚血に脆弱:海馬 Sommer 扇形部,大脳皮質の神経細胞,Purkinje 細胞 頭痛,嘔気,はばたき振戦,意識障害(PaCO2 > 80 Torr,pH<7.30 を超えると意識障害) 慢性呼吸不全患者に,①O2 吸入,②鎮静薬投与,③心不全・呼吸器感染の合併 → CO2 ナルコーシス 治療;意識障害があれば気管内挿管による補助呼吸 2.睡眠時無呼吸症候群 10 秒以上の無呼吸が一晩に 30 回以上,あるいは1時間当たり5回以上出現 分類: 中枢型:呼吸中枢の異常により呼吸運動が停止 閉塞型:鼻やのどに原因があり,気道の閉塞 混合型:中枢型から閉塞型へ移行したもの 症状: いびき,頭重感,日中の眠気,性欲低下 寝相が悪い,覚醒時の口渇,夜間の頻尿・発汗, → 学業の悪化や仕事の能率低下,交通事故 → 高血圧,心肥大,不整脈,脳卒中,突然死 診断:耳鼻科的診察,SpO2,終夜脳波 治療: 肥満解消,禁酒,耳鼻科的治療,CPAP 睡眠時無呼吸を呈する疾患 1.上気道の形態異常 口蓋扁桃肥大,アデノイド,下顎発育異常(小下顎症...) 2.二次的に上気道の狭搾 粘液水腫,末端肥大症,肥満(Pickwick 症候群) 3.気道の機能異常―咽頭,喉頭(声帯)の閉塞機転 多系統萎縮症,Parkinson 病,進行性核上性麻痺, 4.呼吸中枢の影響 脳卒中,脳腫瘍,多系統萎縮症,頭蓋頚椎移行部奇形 5.全身性要因 COPD,心不全,糖尿病 6.その他 筋緊張性ジストロフィー 2008 年1月 30 日 神経内科 谷口 内科疾患に伴う神経症状 4 ビタミン欠乏・過剰症に伴う神経症状 ビタミン欠乏および過剰症による神経徴候 〈欠乏症〉Vit.B1:Wernicke 脳症,beriberi,末梢神経障害,視力低下 Vit.B2: ? Vit.B6:末梢神経障害,脳症,新生児では痙攣 ニコチン酸:末梢神経障害,脳症,視神経萎縮,脊髄後側索変性 Vit.B12:末梢神経障害,亜急性連合性変性症,視神経障害,脳症 葉酸:末梢神経障害,連合変性症,乳児では痙攣,知能障害 パントテン酸:末梢神経障害 Vit.A:夜盲,眼球乾燥,毛嚢角化症 Vit.D:クル病,骨軟化症,テタニー,痙攣 Vit.E:末梢神経障害,脊髄後側索障害,小脳失調,ミオパチー Vit.K:出血傾向 〈過剰症〉Vit.A:脱毛,皮膚乾燥,化骨障害,出血傾向 Vit.D:嘔吐,下痢,脱毛,体重減少,腎不全 1.Wernicke 脳症・・・thiamine(Vit.B1)欠乏による脳症 原因;アルコール多飲者,妊娠悪阻,消化管手術後など 症状;意識障害,眼球運動障害,失調性歩行,眼振,ポリニューロパチー →→ Korsakoff 症候群(記名力低下+作話) 病変:乳頭体,視床背内側核,中脳水道周囲の灰白質,第3脳室周囲 病理;血管内皮細胞の膨化,出血 治療;B1 投与(100~300mg/日の静注)・・・診断が確定しなくてもすぐに投与! 2.亜急性連合性脊髄変性症・・・Vit.B12 欠乏による神経障害 原因;胃切除 症状; 巨赤芽球性貧血(悪性貧血) 脊髄障害(腱反射は亢進,アキレス腱反射減弱),末梢神経障害,認知症 → 貧血症状を呈さずに神経症状が発症することあり! 治療;ビタミン B12 の非経口投与 中毒性神経障害 主病変 神経細胞体 軸 索 髄 鞘 神経終末部 物質 MPTP(1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6,-tetrahydropyridine) 〈重金属〉タリウム,ヒ素 〈有機溶剤〉n-ヘキサン,アクリルアミド 〈循環器系薬〉ヒドララジン 〈抗痙攣薬〉フェニトイン 〈抗癌薬〉ビンクリスチン,シスプラチン 〈抗菌薬〉イソニアジド,エタンブトール,メトロニダゾール 〈その他〉シメチジン,コルヒチン,ピリドキシン 〈感染〉ジフテリア 〈重金属〉鉛 〈抗腫瘍薬〉カルモフール 〈循環器系薬〉アミオダロン 〈抗リウマチ薬〉金チオリンゴ酸ナトリウム 〈感染〉ボツリヌス菌 〈有機リン〉有機リン系農薬,サリン 〈筋弛緩薬〉スキサメト二ウム,ベクロニウム,パンクロニウム 〈向精神薬〉クロルプロマジン,ハロペリドール,スルピリド 〈その他〉D ペニシラミン (薬師寺ら,日内誌 1999) 2008 年1月 30 日 神経内科 谷口 内科疾患に伴う神経症状 5 1.末梢神経障害 感覚神経障害優位型 n-ヘキサン:接着剤,印刷インク,洗浄剤→換気不良の室内,シンナー中毒 砒素:亜ヒ酸中毒,腹部症状で発症し,1,2週間後に発症 タリウム:殺鼠剤や工業用薬品.意識障害,小脳失調,視神経障害,自律神経症状(頻脈,高血圧)も 抗癌薬(ビンクリスチン,シスプラチン),抗結核薬(INH,EB).. 運動障害優位型 鉛:塗料,ガソリン→職業病が多い,腹痛(鉛せん痛),垂れ手 2.神経筋接合部 ボツリヌス中毒:食品中毒,神経終末から Ach の放出を阻害 →腹部症状,全身弛緩麻痺 有機リン:農薬,コリンエステラーゼと結合し,その作用を阻害 →自律神経症状(腹痛,下痢,発汗,縮瞳,頻脈),中枢神経症状(痙攣,意識障害),筋麻痺 ふぐ中毒:肝・胆嚢・卵巣の tetrodotoxin により神経筋接合部の伝導ブロック →摂取後 30 分~3時間で発症.口唇・舌・手指のしびれ→→運動麻痺,呼吸筋麻痺 3.一酸化炭素中毒 ガス中毒で最も多い.ヘモグロビンと非常に親和性の高い CO が CO-Hb を形成し,酸素運搬能低下 軽症:拍動性頭痛,悪心,嘔吐,めまい,倦怠感,四肢脱力感 重症:顔面紅潮,発汗,呼吸障害,体温下降 → 昏睡,瞳孔散大,痙攣,心不全 重症例の続発症状:失外套症候群,パーキンソン症候群,認知症 *初期の意識障害から回復後,数週間して精神神経症状が出現することあり(間欠型) 検査:白血球増多,心電図異常(ST 低下,T 波逆転,Af),脳 CT で淡蒼球・白質の低吸収域 病理:両側淡蒼球の壊死 治療:酸素吸入~高圧酸素療法 悪性腫瘍に関連した神経症状 1.直接作用 直接浸潤 転移 .....肺癌,乳癌,大腸癌,悪性黒色腫 髄膜癌腫症 間接作用 代謝異常 肝性脳症,Cushing 症候群,尿毒症,高 Ca 血症,SIADH 凝固異常 脳塞栓,脳出血,静脈洞血栓症 免疫抑制 進行性多巣性白質脳症,脳膿瘍,真菌性髄膜炎 治療の副作用 脳症,白質脳症,脳出血 自己免疫 傍腫瘍性症候群 傍腫瘍性症候群 疾患 合併腫瘍 辺縁系脳炎 肺小細胞癌,精巣癌 脳幹脳炎 肺小細胞癌 亜急性小脳変性症 卵巣癌,子宮癌,乳癌,肺小細胞癌 opsoclonus-myoclonus 症候群 肺小細胞癌,乳癌,神経芽細胞腫 網膜光受容体変性症 肺小細胞癌 亜急性感覚性ニューロパチー 肺小細胞癌 Stiff-man 症候群 乳癌 Lambert-Eaton 筋無力症症候群 肺小細胞癌 自己抗体 抗 Hu/Ma2 抗体 抗 Yo/Hu/Tr 抗体 抗 Ri 抗体 抗網膜細胞 抗 Hu 抗体 抗 GAD 抗体 抗 VGCC 抗体 2008 年1月 30 日 神経内科 谷口 内科疾患に伴う神経症状 6 2.傍腫瘍性症候群 1)亜急性小脳変性症 症状;数週間~数ヶ月間で亜急性に進行する小脳失調 腫瘍:肺小細胞癌,乳癌,卵巣癌,悪性リンパ腫 ・・・癌が明らかになる前に神経症状が出現したり,血清中抗体価が上昇する例が多い(60~77%) 抗体:抗 Hu 抗体(抗神経細胞核抗体),抗 Yo 抗体(抗プルキンエ細胞細胞質抗体)など 病理:小脳 Purkinje 細胞の変性脱落 治療:原発腫瘍の治療+免疫療法 2)亜急性感覚性ニューロパチー 症状;亜急性発症・進行する,深部感覚障害に伴う感覚性失調 四肢先端の表在覚も障害,自律神経障害も合併 腫瘍:肺小細胞癌が最多,その他,乳癌,前立腺癌,卵巣癌 抗体:抗 Hu 抗体 病理:後根神経節細胞の亜急性,進行性の細胞死 治療:原発腫瘍の治療+免疫療法 3)Lambert-Eaton 筋無力症候群 ・・神経終末部での Ach 放出障害による神経筋接合部・自律神経疾患 腫瘍:肺小細胞癌(日本では 61%)(31%が癌非合併例) 症状:四肢筋力低下,易疲労性,上肢筋力低下,腱反射低下(85%) 自律神経症状:37%,口渇が 31%で最多,眼瞼下垂(28%) 誘発筋電図:複合筋活動の低下,高頻度反復刺激で waxing 抗体:P/Q 型電位依存性 Ca チャネルに対する抗体(抗 P/Q 型 VGCC 抗体)が 85%で陽性 治療:「肺小細胞癌の発見とその根治的治療」→LEMS 症状も著明に改善 膠原病に伴う神経症状 1. 全身性エリテマトーデス(SLE) ・・関節,腎,神経,心,脾などの全身の諸臓器にフィブリノイド変性 CNS ループス:腎症状と並ぶ重篤な合併症(20~50%) 精神症状: 失見当識・記銘力低下…急性発症し他の神経症状を合併 不安・焦燥・抑うつ …発症は緩徐 痙攣:大発作,初期~末期 脳卒中:15%,ループスアンチコアグラント, 抗カルジオリピン抗体,心疾患に伴う塞栓などの関与 横断性脊髄炎:胸髄 不随意運動:舞踏病,ジストニア... 末梢神経障害:10~15% 診断: 髄液;正常~蛋白・細胞の軽度上昇,IgG index 上昇,IL-6 活性上昇 MRI・SPECT・脳波;非特異的 治療:副腎皮質ホルモン,免疫抑制薬 2.抗リン脂質抗体症候群 ・・SLE に合併することが多いが,単独でみられることあり 動静脈血栓症・習慣性流産・血小板減少症 特に脳血栓が多いが,舞踏病,痙攣,片頭痛,横断性脊髄炎なども 検査:APTT 延長,抗カルジオリピン抗体,ループスアンチコアグラント.. 治療:副腎皮質ホルモン,免疫抑制薬 2008 年1月 30 日 神経内科 谷口 内科疾患に伴う神経症状 7 3.サルコイドーシス ・・原因不明の非乾酪性類上皮細胞性肉芽腫を特徴とする全身性疾患 肺病変(縦隔,肺門リンパ節,肺):95% 眼病変(ぶどう膜,網膜,硝子体):30~40% 表在リンパ節腫脹:10~50%,皮膚:5~10%,神経系:5% 診断:全身病変,血清 ACE,Ga シンチ,MRI,組織学的検査 *神経サルコイドーシス 脳神経麻痺:最も頻度が高い(75%),顔面神経麻痺(25~50%),聴神経,視神経 髄膜病変:無菌性髄膜炎(単核球・蛋白増加,時に糖低下) (64~100%) 一般的には経過良好,慢性化すると多発脳神経麻痺,水頭症,てんかん 脳実質病変:視床下部・下垂体系の障害が最も多い 尿崩症,肥満,易疲労性,発毛減少,体温異常,睡眠障害 脳症:譫妄,人格変化,痴呆,痙攣(~20%) 脊髄障害,末梢神経障害(単神経炎,多発ニューロパチー),筋病変(結節形成,ミオパチー) 治療:日常生活に支障、または生命予後に影響があれば副腎皮質ホルモンなど 4.ベーチェット病 ・・原因不明の急性炎症を繰り返す難治性炎症性疾患 病因:遺伝的素因(HLA-B51 陽性率が高い)+環境因子(連鎖球菌感染) 4大主症状 ①再発性の口腔内有痛性アフタ性潰瘍 ②皮膚病変(結節性紅斑,血栓性静脈炎) ③眼症状(網膜ぶどう膜炎,虹彩毛様体炎) ④外陰部潰瘍 副症状:関節炎,精巣上体炎,消化器病変,血管病変,中枢神経病変(10~15%) *神経ベーチェット ベーチェット病の遅発性病変で男性に多い 急性型;脳幹,基底核,小脳が好発部位 →髄膜炎様症状(発熱・頭痛),意識障害,運動麻痺,感覚障害,脳神経麻痺 慢性進行型;小脳症状(歩行時のふらつきや構音障害),痴呆様精神症状 病理:白血球集簇を伴った血管の炎症(静脈系に強い),血栓形成あり 検査:炎症反応,皮膚針反応陽性,HLA-B51,髄液で細胞数・蛋白増加 治療:副腎皮質ホルモン,免疫抑制薬 5.リウマチ性多発筋痛症(PMR)/側頭動脈炎(TA) ・・共通の病因・病態.50 歳以上の高齢者に多い,発熱・全身倦怠感を伴うこと多い PMR;頸部,上肢帯,下肢帯の筋痛・こわばり TA;頭痛,動脈の怒張・圧痛,咀嚼や会話時の顎関節の易疲労性(jaw claudication),視力低下 検査:炎症反応,CK の上昇はない 治療:副腎皮質ホルモンが著効
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