トレース、追跡、制御: 低コストで高い生産性 TTC ソリューションは、メーカーでのコストの削減、無駄の排除、重要な製造工程の自動化、歩留まり の向上に役立ちます。今日の経済環境では、これらはすべて重要な要素です。 Cogiscan 社、François Monette および Microscan Systems 社、Matt Van Bogart はじめに 今日の経済状況で生き残るために、トップメーカーは、できるだけ低コストで高品質の製品を組み立てなければな りません。総生産費では、保証、リコール、修理など製品ライフサイクル全体を考慮する必要があります。追跡、ト レース、制御(TTC)システムは、これらの戦略的目標の達成に不可欠な要素です。これらのシステムは、製造工 程の全体にわたって原料とリソースを最適に使用するよう設計されています。 第一に、TTC システムは、作業現場内のワークの作業工程場所(WIP)と原料をリアルタイムに可視化します。 第二に、TTC システムは、運搬管理や設備の準備に関連する人的ミスのリスクをなくします。最後に、TTC シス テムは、製品ライフサイクルの全履歴を記録します。これにより、的確な問題解決を可能にし、リコールが発生し た場合にも、回収が必要な製品の数を最小限に抑えます。 ほとんどの製品の原価構成で、原料は、全体の 50 パーセントを占めます。電子プリント基板などの複雑な製品 では、個々の部品の合計が、完成品の原価の 80 パーセントに相当する場合さえあります。優れた TTC システ ムは、時間と原料のすべての無駄をなくして、製品原価全体の最高 10 パーセントを節約でき、メーカーの収益に 直接影響します。 通常、優れた TTC システムの投資回収期間は 1 年未満です。世界的に競争の激しい製造業では、この投資に 関連した機会費用は、単に生き残りの問題であると言えます。 追跡 メーカーはすべて、何らかのレベルの WIP 追跡を作業現場で必要とします。多くの場合、これは、紙ベースの手 順で行われます。このような方法が有効な場合もありますが、最も効果的な方法ではないのが普通です。生産デ ータをリアルタイムに入手できません。また、基本的な生産データがデジタル化されていないので、パフォーマン スや品質の分析およびトレーサビリティ記録の作成ができません。 自動 WIP 追跡により、製造現場のあらゆる未出荷注文をリアルタイムで可視化できます。最も簡単な形式でも、 ジョブ レベルまたは作業命令レベルでこれが可能です。トラベラー シートのバーコード ラベルを各作業でスキャ ンするだけです。1D シンボル、2D シンボル、または RFID タグで連番が各製造単位に割り当てられている場合 は、製造単位を追跡することにより、最高レベルの精度を達成できます。 基本的な製品追跡の他に、特定のジョブに必要な関連生産材料をすべて、固有の ID バーコード ラベルまたは RFID タグで識別できます。場所を移動するごとにこれらの部品をスキャンすれば、組み立てラインの内外で全生 産材料をリアルタイムに可視化できます。工場によっては、特定の部品やサブアセンブリを探すのに毎日かなり の時間が費やされています。どこかにあるのは全員が知っているのに、正確にどこかは誰にも分かりません。こ れは、人的資源の直接的コストに加えて、生産性にも直接影響を及ぼします。場合によっては、誰かが部品を探 している間に、組み立てライン全体が休止状態になってしまいます。あるいは、必要な材料が見つからず、追加 の部品注文が必要となったため、ライン全体を別の製品向けに切り替えなければならなくなります。これにより、 製造が何時間もできず、納品ができなくなる場合もあります。 製造現場にあるすべての WIP と原料の正確な場所を知り制御することで、オンタイム デリバリやコスト、品質な ど、重要なパラメータをはるかに高い水準で管理できます。また、一旦データ収集インフラを設置すれば、ソフトウ ェア アプリケーションを簡単に追加し、さらなるメリットを実現できます。 トレース トレーサビリティは、具体的な投資収益率(ROI)に関連付けられることは多くありません。この要件は、エンド顧客、 特定の業界標準、または法律に関わるものであるからです。しかし、これらの点では、トレーサビリティ システム はビジネスに不可欠です。 トレーサビリティに対するニーズが、単に経済上の考慮に基づく場合もあります。欠陥を把握するコストは、製品 ライフサイクルの段階ごとに 10 倍に増加します。ブランド認知へのダメージや将来の販売への影響を除外してさ え、製品リコールの実際のコストは膨大なものになる場合があります。次のよく知られたケースが、この点を示し ています。 トレーサビリティ事例研究 #1 デル、日立、IBM、レノボ、東芝、アップルの各社が販売するノート PC で使用されていたソニー製バッテリーが、 発火することが判明しました。960 万台のノート PC が修理の対象となり、欠陥品をすべて交換するため、ソニー は 4.3 億ドルを支出しました。トレーサビリティ システムがより優れていて、欠陥のあるユニットをより正確に把握 できれば、この場合、ソニーと、ソニー製バッテリーを使用した OEM 各社の両方が、数百万ドルを節約できたは ずです。 トレーサビリティ事例研究 #2 マイクロソフト Xbox 360 で、3 個の赤色ライトの点滅で識別できる、広範囲のハードウェア障害が発生しました。 その結果、マイクロソフトは、保証期間を延長するため、10 億ドルを費やしたと報道されています。 トレーサビリティ事例研究 #3 タイレノール社は、1 億ドル以上を費やしてボトル入りタイレノールを 3100 万本回収しました。製品の市場シェア も約 37 パーセントから約 7 パーセントへ減少しました。 トレーサビリティ事例研究 #4 タイヤ 650 万本のリコールをその米国関連企業ファイアストーンが発表した後、ブリヂストンは、3.5 億ドルの特 別損失を計上しました。この額はリコールの実際のコストであり、訴訟や収入の減少による影響を含んでいませ ん。株価は 1 週間で 24 パーセント下落しました。 製品の組み立てやそのライフサイクル全体に関与する変数と人間が、非常に多いことを考えれば、何か不具合が 発生する可能性は非常に高いと言えます。不具合が発生することを承知しているかどうかが問題ではなく、いつ発 生し、その程度はどれほどかが問題なのです。重大な製品の故障またはセキュリティ問題の場合、基本的なトレー サビリティ システムを備えていれば、リコールする製品の数を大幅に減らすことができます。トレーサビリティ シス テムを保険にたとえる人もいます。小規模な投資で、何か事故が発生したときに、大きな違いが生じるのです。 製造バッチや日付コードからユニットの連番まで、製造場所や日付だけからプロセスや材料に関する全情報まで、 達成可能なトレーサビリティには、様々なレベルがあります。各メーカーにとって難しいのは、特定の状況でどの レベルが最も適切であるかを明らかにすることです。トレーサビリティ データの取得や保管にかかる実際のコスト と、リコールを行う時のコストとのバランスの問題になります。 通常の TTC 履歴データベースでは、シリアル番号をスキャンするだけで、欠陥製品がいつ、どこで製造されたか を正確に判断できます。その特定のユニットを製造するために使用された部品の各ロットをさかのぼって調べるこ とも可能です。その欠陥が、複数の不良部品と関係する場合、その不良部品を使用して製造された全製品のリス トを作成できます。その結果、製品リコールの影響は最小限に抑えられます。 トレーサビリティ システムの真のコストは、予想よりはるかに少ないかもしれません。トレーサビリティを TTC シス テム全体の中で考えれば、プロセスや材料レベルの完全なトレーサビリティは、TTC システムの副産物として自 然に達成できます。 制御 3 番目に取り上げる生産の制御も、TTC ソフトウェアの重要な側面です。「制御」という語は、エラー防止手段の あらゆる面を意味します。WIP と原料をリアルタイムに可視化し、履歴データをトレースできることは、確かに重要 です。しかし、さらに重要なのは、そもそも製品を適切に製造することです。TTC システムの主な目的がトレーサ ビリティ データの収集である場合、制御機能は、オペレータが、適切な製品と原料を使用し、履歴データベースの 適切な製造情報をスキャンしていることを保証し、トレーサビリティ データの 100 パーセント精度を確保します。 また、自動マシン ビジョン検査を使えば、人為ミスの可能性をさらに減らすことができます。 製品 WIP 追跡の場合には、前もって定めた組み立てルートに各スキャン地点を関連付けるのが、論理的かつ有 益です。この場合、TTC ソフトウェアは、製品の現在の状態・位置を、そのあるべき状態・位置と比較します。製品 に何か作業が足りない場合には、アラームまたは警告が発生します。また、作業ごとに製品をスキャンする間に、 品質データや検査・試験結果など、追加の製品関連情報を迅速かつ効率的に記録できます。 連番を付けた製品を追跡するときは、基本的なサイクル時間情報が、運転効率を監視するための強力なデータ ベースになります。計算した処理能力とリアルタイムの情報を比較できます。プロセスの速度が一定のしきい値よ り低下した場合、警告やアラームを生成することも可能です。この種の制御により、機械稼働率および総合設備 効率(OEE)の改善ができます。 同様に、組み立てライン上の材料を追跡している間に、TTC ソフトウェアは、特定の製品を製造するのに適切な 部品が適切な位置に準備されていることを確認できます。この場合も、警告やアラームを当初の機械段取りの間 に生成することで、人為ミスの危険を排除し、時間と原料の無駄をなくすことができます。また、オプションのライト タワーや物理的インターロックを TTC ソフトウェアと連携させて、警告を見やすく聞こえやすくしたり、重大なエラ ーの発生時には生産ラインを停止したりできます。 組み立てライン内外での材料追跡により、次の用途にも利用できます。 ‐ 切り替え時間を短縮するオフラインでのセットアップ検証 ‐ 空になる前に部品を補充する電子カンバン ‐ 材料予約/キット管理 ‐ 期限切れ材料の使用を避けるための期限付き材料追跡 これにより、機械稼働率/OEE の改善だけでなく、原料の有効利用が可能です。 閉ループ制御 製造現場の自動化では、できるだけ人間の介入を排除することによって、ミスを防ぎます。TTC システムでは、携 帯型バーコード リーダーを、機械やワークステーション、コンベアに内蔵された固定型リーダーに置き換えること によって、これが可能です。様々なタイプのインターロックをリーダーおよび TTC ソフトウェアに接続して、読み間 違いが発生したり製品の作業順序が乱れた場合に、組み立てプロセスを停止できます。場合によっては、バーコ ードの代わりに RFID タグを使用すれば、完全にハンズフリーのデータ収集および段取り検証が可能になります。 RFID 技術は、インテリジェント システムを構築するためによく使用されます。このシステムでは、タグは、様々な 機械、設備、パレットに取り付けられ、RFID アンテナ/リーダーは機械内部に効率的に設置されます。 TTC の全般的な利点 在庫を削減 損害の大きい製品リコールの危険を削減 ボトルネックを識別、排除 部品不足を防止 直行率を向上させ、欠陥を削減 納期を短縮 オンタイム デリバリ率を改善 生産性を向上させ、ラインのダウンタイムを最小化 人件費を削減 在庫の精度と可視性を向上 キッティング ミスを排除 機械段取りミスを排除 実地棚卸し(サイクル カウント)を排除 材料フローとワークフローを監視、改善 品質を向上 TTC の量的利点 製造所要時間を短縮(35~45%)(1) 製造リード タイムを短縮(30%)(1) 機械/ライン切り替え時間を短縮(50%)(2) データ入力時間を短縮(36~75%)(1) 仕掛品を削減(17~32%)(1) シフト間の書類事務を削減(56~67%)(1) 在庫を削減(4~6%)(3) 製品品質を改善(18% 以上)(1) まとめ 優れた TTC ソフトウェア パッケージは、モジュール性や拡張性が高くなければなりません。ほとんどの場合、メ ーカーは、小規模なプロジェクトを短時間で実施することにより問題を解決したがるためです。通常、対象となる TTC プロジェクトは、コストが 1.5 万~5 万ドルで、ほんの数日で実施されます。ROI に非常に優れ、迅速な投資 回収が可能です。基本的な TTC システムは、徐々に拡張が可能で、段階ごとにメリットと ROI が増加します。 参考資料 1. MESA 国際調査 2. Positron 社事例研究、Cogiscan Inc. 3. 投資収益率計算、Dynamic Systems Inc. その他の資料 1. テクノロジーの失敗:8 件の大きな電子災害、Computerworld、2009 年 10 月 2. 3. 4. 5. 6. www.recalls.gov-米国政府リコールのワンストップ ショップ WMS プロジェクトの投資収益率計算、Dynamic Systems Inc. MESA 国際調査 資材管理、利益センター、インド資材管理協会 電子機器製造業における RFID 成功事例研究の調査、Cogiscan Inc.
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