35thIEEEPVSC Report

第 3 8回 IEEE 光起電力専門家会議(38 th IEEE Photovoltaic Specialists
Conference)報告
2012.6.11
山口真史(豊田工大)
1.開催月日:2012年6月3日~8日。
2 . 開 催 場 所 : Austin Convention Center( オ ー ス チ ン 、 米 国 ) 。
3 . 本 会 議 の 概 要 : 米 国 電 気 電 子 学 会 ( IEEE) 主 催 の 太 陽 光 発 電 会 議 で 、 2008 年 か ら 、
毎 年 開 催 さ れ る こ と と な っ た 。今 回 の 会 議 の 組 織 委 員 長 は Billy J. Stanbery( HelioVolt)
で 、 プ ロ グ ラ ム 委 員 長 は Angus Rockett( イ リ ノ イ 大 ) で あ っ た 。
今 回 は 、41 カ 国 か ら 約 1,536 名 の 参 加 者 が あ っ た 。太 陽 光 発 電 に 対 す る 大 き な 関 心 と 関
連分野に参画する人々の増加も反映していると思われる。図1に、国別参加者数を示す。
国 別 で は 、① 米 国 1132 名 、② 日 本 90 名 、③ ド イ ツ 66 名 、④ 韓 国 45 名 、⑤ 台 湾 43 名 、⑥
中 国 34 名 、⑦ オ ー ス ト ラ リ ア 24 名 、⑦ オ ラ ン ダ 24 名 、⑦ シ ン ガ ポ ー ル 24 名 、⑩ 英 国 17
名、の順であった。
図1
国別参加者数
PV Velocity Forum等 を 通 じ て 、 各 国 の PVロ ー ド マ ッ プ 、 産 業 界 の 招 待 講 演 が 企 画 さ れ 、
プログラム構成に関する運営側の努力の跡が現れていた。
図 2 は 、 国 別 発 表 論 文 件 数 を 示 す 。 44カ 国 か ら 、 招 待 講 演 を 含 め て 972件 の 論 文 発 表 が
あ っ た 。 国 別 で は 、 ① 米 国 502件 、 ② 日 本 68件 、 ③ ド イ ツ 52件 、 ④ 台 湾 51件 、 ⑤ 中 国 40件 、
⑥ イ ン ド 29件 、 ⑦ 韓 国 28件 、 ⑧ オ ラ ン ダ 22件 、 ⑨ オ ー ス チ ラ リ ア 17件 、 ⑩ 英 国 15件 、 ⑩ ス
ペ イ ン 15件 、 の 順 で あ っ た 。
図2
図3
国別発表論文件数(資源総合システム㈱提供)
発表論文件数の分野別内訳(資源総合システム㈱提供)
図 3 は 、発 表 論 文 件 数 の 分 野 別 内 訳 を 示 す 。分 野 別 で は 、① 結 晶 Si系 186件 、② モ ジ ュ ー
ル お よ び シ ス テ ム 系 173件 、③ 基 礎 よ び 新 概 念 157件 、④ CIGS、CdTeお よ び II-VI族 系 142件 、
⑤ キ ャ ラ ク タ リ ゼ ー シ ョ ン 88件 、⑥ 薄 膜 Si系 62件 、⑦ III-V族 お よ び 集 光 58件 、⑧ 有 機 太 陽
電 池 39件 、 ⑨ PV Velocity Forum36件 、 ⑩ 宇 宙 31件 、 の 順 で あ っ た 。
こ の 他 、 40社 の 展 示 が あ っ た 。
4 . Cherry Award受 賞 者 と 受 賞 記 念 講 演
Cherry Award Chairで あ る S. Wenham ( UNSW) よ り 、 William R. Cherry Awardの 経 緯
(表1)、これまでの受賞者(表2)の説明がなされた。
表1
William R. Cherry Awardの 経 緯
This award is named in honor of William R. Cherry, a founder of the photovoltaic community.
In the 1950's, he was instrumental in establishing solar cells as the ideal power source for space
satellites and for recognizing, advocating, and nurturing the use of photovoltaic systems for
terrestrial applications. The William R. Cherry award was instituted in l980, shortly after his
death. The purpose of the award is to recognize engineers and scientists who devote a part of
their professional life to the advancement of the technology of photovoltaic energy conversion.
The nominee must have made significant contributions to the science and/or technology of PV
energy conversion, with dissemination by substantial publications and presentations. Professional
society activities, promotional and/or organizational efforts and achievements are not
considerations in the election for the award.
表2
Dr. Paul Rappaport 1980
Dr. Joseph L. Loferski 1981
Prof. Martin Wolf 1982
Dr. Henry W. Brandhorst 1984
Mr. Eugene L. Ralph 1985
Dr. Charles E. Backus 1987
Dr. David E. Carlson 1988
Dr. Martin A. Green 1990
こ れ ま で の William Cherry Awardの 受 賞 者
Mr. Peter A. Iles 1991
Dr. Lawrence L. Kazmerski 1993
Prof. Yoshihiro Hamakawa 1994
Dr. Allen M. Barnett 1996
Dr. Adolf Goetzberger 1997
Dr. Richard J. Schwartz 1998
Dr. Christopher R. Wronski 2000
Dr. Richard M. Swanson 2002
Dr. Ajeet Rohatgi 2003
Dr. Timothy J. Coutts 2005
Dr. Antonio Luque 2006
Dr. Masafumi Yamaguchi 2008
Dr. Stuart Wenham 2009
Dr. Richard King 2010
Dr. Jerry Olson 2011
今 回 の 受 賞 者 は 、 Sarah Kurtz(NREL)で 、 高 効 率 III-V族 化 合 物 多 接 合 太 陽 電 池 や 集 光 型
太陽電池の研究開発への貢献が評価されたものである。
“ Persistence in the Face of Skepticism: Our Response When the World Says
” It
Can’ t Be Done” ” と 題 し て 、 受 賞 記 念 講 演 が な さ れ た 。
彼 女 の 貢 献 の 一 つ で あ る III-V族 化 合 物 多 接 合 太 陽 電 池 や 集 光 型 太 陽 電 池 の 高 効 率 化 か
ら 話 が 展 開 さ れ た 。1984年 に 、J. Olson( NREL)に よ り GaInP/GaAs2 接 合 セ ル が 提 案 さ れ 、
1990年 、 1994年 に 、 そ れ ぞ れ 、 27.3% 、 29.5% の 高 効 率 化 が 達 成 さ れ た 。 彼 女 も 、 高 効 率
化 に 貢 献 し て い る 。 そ の 後 、 Spectrolab等 に 技 術 移 転 さ れ 、 1997年 に は 、 宇 宙 用 太 陽 電 池
と し て 実 用 化 さ れ て い る 。1997年 に 、4 、5 接 合 用 に 、バ ン ド ギ ャ ッ プ 1eVの 新 材 料 の 重 要
性 を 提 案 し 、 InGaAsNの III-V-N希 釈 系 新 材 料 お よ び 太 陽 電 池 の 研 究 が な れ れ て き た が 、 効
率 5% に 達 せ ず 、 研 究 開 発 を 中 止 し た 。 皮 肉 に も 、 2011年 に 、 ス タ ン フ ォ ー ド 大 設 立 で San
Joseに あ る Solar Junctionは 、 5.5mmx5.5mmの GaInP/GaAs/GaInAsN3 接 合 セ ル の 925倍 集 光
で 、図 5 に 示 す よ う に 、効 率 43.5% の 世 界 最 高 効 率 を 達 成 し て い る 。NRELの 認 定 値 で あ る 。
GaInAsNの 1eV材 料 を 導 入 し た こ と が 、 高 効 率 化 に つ な が っ て い る 。 今 後 の 高 効 率 の た め に
は 、基 礎 的 な 理 解 が 必 要 で あ る 。セ ル の 薄 膜 化 は 、非 輻 射 再 結 合 の 抑 制 に よ る Voc向 上 、light
trapping効 果 に よ る 高 効 率 化 が 期 待 で き る 。 図 6 に 示 す よ う に 、 集 光 型 太 陽 光 発 電 ( CPV)
は 、 急 速 に 市 場 拡 大 の 方 向 に あ り 、 セ ル 効 率 50% 、 モ ジ ュ ー ル 効 率 40% の 達 成 は 可 能 で あ
ろう。
図5
Solar Junctionに よ る 世 界 最 高 効 率 の InGaP/GaAs/GaInAsN3接 合 セ ル の 集 光 特 性
図6
種 々 の PVモ ジ ュ ー ル の 出 荷 量 の 推 移
Solar Junctionに 加 え 、Sharpも つ い 最 近 、InGaP/GaAs/InGaAs3 接 合 セ ル の 306倍 集 光 で 、
43.5% の 世 界 最 高 効 率 を 実 現 し て い る 。 彼 女 の 研 究 開 発 の 中 心 は 、 信 頼 性 と 品 質 保 証 に 移
っ て い る 。NREL、AIST、JRC、SEMIに よ る International PV Module Quality Assurance Forum
を企画するなど、関連分野で中心的存在となっている。品質保証システムの開発やセル、
モジュール製造時の品質保証ガイドラインの策定も必要である。
CPVは 、高 性 能 化 、低 コ ス ト 化 の 可 能 性 を 有 し 、結 晶 Siは さ ら な る 低 コ ス ト 化 、薄 膜 系 は
さらなる高性能化、により拮抗しよう。このように、さらなる高性能化、低コスト化、長
寿 命 化 に よ り 、 PVが 全 電 力 の 10% を 占 め る 時 代 は 、 そ う 遠 く な く 到 来 し よ う 。
5.開会式基調講演の概要
S. Baldwin ( DOE) は 、 “ Renewable Electricity Futures: How Much of Our Power Can
Renewables Supply?” と 題 し て 、 開 会 式 基 調 講 演 を 行 っ た 。 2011年 に お け る 米 国 電 力 に 占
め る 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー( RE)の 比 率 は 12.7%( バ イ オ マ ス:1.4% 、地 熱:0.4% 、水 力 :
7.9% 、太 陽:0.05% 、風 力:2.9% )で あ り 、2006年 以 来 、太 陽( 太 陽 集 熱 CSP、PV)と 風
力 は 、 各 々 、 年 率 29% 、 35% で 成 長 し て い る 。 し か し 、 バ イ オ マ ス 、 水 力 、 地 熱 は 、 資 源
に限界があり、太陽および風力は変動する。これらの要因が、経済界が必要とする電力供
給 の 割 合 を 制 限 す る 。 RE導 入 の 可 能 性 を 探 る た め 、 研 究 所 、 工 業 界 、 大 学 の チ ー ム が 、 再
生 可 能 電 力 と 関 連 技 術 を 評 価 し た 。 2050年 ま で に 80% ま で の 高 レ ベ ル 再 生 可 能 電 力 導 入 を
評 価 す る た め 、 NRELの Regional Energy Deployment Systems( ReEDS) の 容 量 拡 張 モ デ ル お
よ び ABBの GridView 製 造 コ ス ト モ デ ル を 用 い た 。 時 間 レ ベ ル の 米 国 グ リ ッ ド を モ デ ル 化 す
るため、詳細な地形およびシステムデータが取り込まれている。電力輸送、グリッドの柔
軟 性 や REの 資 源 を 含 む 種 々 の 場 合 が 言 及 さ れ た 。ど う も 現 状 の コ ス ト や 変 動 要 因 が 効 い て 、
2050年 の 米 国 の 電 力 に 占 め る PVの 割 合 は 5~ 7% と 低 い 。あ る ケ ー ス で は 、原 子 力 7% 、石 炭
10% に 対 し て 、 PV7% 、 CSP13% 、 風 力 40% と 試 算 さ れ て い る 。
今 後 の 課 題 は 、① comprehensive cost benefit analysis、② power system reliability、
③ development of market mechanism、 ④ accelerating technology development、 が あ る
とまとめた。
6.本会議のトピックス
プレーナリ講演を中心に、本会議のトピックスを紹介する。
6.1
基礎、新材料・デバイス分野:
(1)D.B. Mitzi(IBM)は、“High-Performance Photovoltaics from Earth-Abundant Thin-Film
Absorbers”と題して、プレーナリ講演を行った。TW レベルの PV 技術を実現するためには、低プロ
セスコスト(<$0.50/watt)で高効率(>10%)太陽電池モジュール製造が必要である。直接遷移型カ
ルコゲナイド材料 CdTe や Cu(In,Ga)Se2 (CIGS)は、高効率で低コストの薄膜太陽電池として期待さ
れ、年産1GW の生産レベルにある。しかし、CdTe や CIGS は、高価で資源量に制約がある Te、In や
Ga で構成されている。例えば、効率 13%の CIGS セルで TW 生産を行うには、4 万トンの In が必要
で、2010 年の In 生産量が 600 トンで、ディスプレイ市場での In の需要を考慮すると、年産 10GW
以下の CIGS 生産と危惧される。Cd は、重金属で、将来、限られた市場のみに制限される危惧があ
る。CdTe や CIGS に代わる高効率が期待でき、豊富なカルコゲナイド薄膜太陽電池材料として、Cu2S、
FeS2 (pyrite)、SnS や Cu2ZnSn(S,Se)4 (CZTSSe)などがある。本研究は、CZTSSe に着目したもので、
効率 10%以上の CZTSSe 太陽電池実現に向けた取り組みを述べた。材料的には、1988 年の伊東、中
沢(信州大)が早く、太陽電池としては、1996 年の片桐ら(長岡工業高専)が先駆けである。IBM
でも、構成材料組成の最適化(Cu/(Zn+Sn)≈ 0.9、Zn/Sn≈ 1.2)、共蒸着 600nm 厚の CZTS 吸収層を
用い効率 8.4%(Voc=661mV、Jsc=19.5mA/cm2、FF=65.8%、面積=0.446cm2)が得られていた。その後、
ナノ粒子とヒドラジン溶液のハイブリッド堆積法を開発し、バンドギャップ Eg 制御のため、Se 導
入を検討し、2010 年には、効率 9.7%(Voc=516mV、Jsc=28.6mA/cm2、FF=65.4%、面積=0.44cm2)が
得られた。2011 年には、図 7 に示すように、CZTSSe(Eg=1.15eV)を用い、効率 10.1%(Voc=517mV、
Jsc=30.8mA/cm2、FF=63.7%、面積=0.45cm2)が得られている。一方、CZTS(Eg=1.04eV)を用いても、
同じ効率 10.1%(Voc=423mV、Jsc=38.7mA/cm2、FF=61.9%)が得られている。CdS/CIGS セルとの特
性の違いから、課題は、FF と Voc であり、要因として、直列抵抗や界面障壁や CZTSSe 中の欠陥な
どが考えられる。少数キャリア寿命測定では、CZTSSe の 3.1ns に対して、CZTSe では 10ns である。
CIGS では、VCu(0.03eV)の浅いアクセプター欠陥が効果的効いていたが、CZTSSe では、VCu よりも、
CuZn(0.12eV)の深いアクセプター欠陥が効いているようである。本年 3 月に、進展が見られ、MoSx/Mo
基板上の CZTSSe(Eg=1.12eV)を用い、効率 11.1%(Voc=460mV、Jsc=34.5mA/cm2、FF=69.8%、面積
=0.45cm2)が得られているとの事である。CdS に代わる In2S3 などのバッファ層の検討も進めている
との事である。Voc=520mV が得られれば、効率 12.5%は近いと結んだ。
図7
CZTSSe 太陽電池の電流-電圧特性、分光感度特性
(2)B. Bouzazira ら(豊田工大)は、”Analysis of Current Transport Mechanisms in GaAsN
Homojunction Solar Cell Grown by Chemical Beam Epitaxy”と題して、招待講演を行った。図8
に示すように。昨年 6 月 1 日から開始された「集光型太陽光発電に関する日欧共同研究開発」の概
要と、さらなる高効率化を狙いとした4、5接合太陽電池用新材料のアプローチについて述べた。
図8
「集光型太陽光発電に関する日欧共同研究開発」の概要
本プロジェクトで、シャープが開発した InGaP/GaAs/InGaAs3接合太陽電池の集光特性が、FhG-ISE
で測定され、図9に示すように、つい最近、240.7~306.3 倍集光下で 43.5%の世界最高効率が実現
している。シャープは、昨年、InGaP/GaAs/InGaAs3接合太陽電池で 36.9%と、図10に示すよう
に、非集光動作下での世界最高効率を達成しているが、今回、電極設計等、直列抵抗および光損失
の低減をはかって、集光化でも世界最高効率を達成したものである。図10は、各種太陽電池の高
効率化の推移を示す。
図9シャープ開発 InGaP/GaAs/InGaAs3接合セルの集光特性(FhG-ISE で測定)
図10
6.2
各種太陽電池の高効率化の推移
CIGS、Ⅱ―Ⅵ化合物薄膜セル分野:
CdTe や CIGS 系の化合物薄膜セルは、アモルファス Si および微結晶 Si 薄膜セルと共に、低コス
トの薄膜太陽電池として期待されている。これらの材料は、真空蒸着やスパッタ法などで、わりと
簡単に作製でき、多結晶薄膜でありながら、多結晶粒界が少数キャリアのキラーにはなっていなか
ったり、不活性化されていたりして、結晶粒径 1μmでも高効率が期待できる。
( 1 )B. Dimmler( Manz AG)は 、”CIGS and CdTe Based Thin-Film PV Modules: An
Industrial Revolutiob”と 題 し て 、プ レ ー ナ リ 講 演 を 行 っ た 。薄 膜 太 陽 電 池 の 出 荷 量 は 、2009
年 の 1,342MW( 全 太 陽 電 池 出 荷 量 に 対 す る 比 率 17% )か ら 2011 年 の 3,204MW( 14% )と 伸
びており、今後数年の薄膜太陽電池の生産規模は、図11のように予想されている。
図11
薄膜太陽電池の生産規模の予測
効 率 面 で は 、小 面 積 セ ル で 、a-Si/μ c-Si タ ン デ ム の 16.3%( UniSolar)、CdTe の 17.3%
( First Solar) 、 CIGS の 20.3% ( ZSW) で あ る 。 2020 年 、 2040 年 に 、 a-Si 系 で 、 各 々 、
18% 、20% 、CdTe で 、18% 、20% 、CIGS で 、各 々 、22% 、24% に な る だ ろ う と 予 想 し て い
る 。 CIGS フ レ キ シ ブ ル セ ル で は 、 EMPA が 、 ポ リ イ ミ ド 、 ス テ ー ル 基 板 上 で 、 各 々 、 効 率
18.7% 、17.7% を 得 て い る 。CIGS 太 陽 電 池 モ ジ ュ ー ル に つ い て は 、ソ ー ラ ー フ ロ ン テ ィ ア
は 、 30cmx30cm の サ ブ モ ジ ュ ー ル で 効 率 17.8% 、 Solibro は 、 63cmx119cm の フ ル サ イ ズ で
効 率 14.6% を 実 現 し て い る 。各 社 の CIGS お よ び CdTe 太 陽 電 池 モ ジ ュ ー ル の 効 率 と 生 産 規
模をまとめて、表3に示す。
表3
CIGS
CdTe
各 社 の CIGS お よ び CdTe 太 陽 電 池 モ ジ ュ ー ル の 効 率 と 生 産 規 模
Company
Champion
Eff. (%)
Next Stage
Eff.( % )
Solar
Frontier
Avancis
Hyundai
Manz
Solibro
First Solar
Primestar
14.6
15.5
13.4
15.1
14.4
14.4
12.8
15.9
16
Production
Capacity
( MW)
980
Next Stage
Capacity
( MW)
30
30
+100
100
+120
2700
30
+400
現 実 的 な モ ジ ュ ー ル 効 率 は 、2012 年 、2015 年 、2020 年 、2025 年 に は 、CIGS 系 で 、そ れ ぞ
れ 、13% 、14~ 15% 、15~ 16% 、16~ 17% 、CdTe 系 で 、そ れ ぞ れ 、12.5% 、13% 、13.5% 、
14~ 15% で あ ろ う と 予 測 し て い る 。
Manz の 状 況 が 紹 介 さ れ た 。 1975 年 か ら 、 シ ュ ッ ツ ガ ル ト 大 学 で 、 CIGS 系 太 陽 電 池 の 研
究 開 発 が 進 め ら れ 、Wṹrtz Solar、ZSW を 経 て Manz に 至 っ て い る 。150MW の 生 産 規 模 で 、現
状 の モ ジ ュ ー ル 効 率 13% か ら 、2015 年 の 16% 、2018 年 の 16.7% を 目 指 し て い る 。製 造 コ
ス ト 分 析 も な さ れ 、 200MW 以 上 の 生 産 規 模 で 、 2012 年 0.74 ユ ー ロ /W か ら 、 2013 年 、 2015
年 、2018 年 に は 、そ れ ぞ れ 、0.5、0.435、0.4 ユ ー ロ /W に し た い と し て い る 。製 造 コ ス ト
0.5 ユ ー ロ /W の 内 訳 は 、 材 料 費 0.25、 堆 積 費 0.14、 労 務 費 0.03、 そ の 他 0.08 ユ ー ロ /W
と な っ て い る 。今 後 の 課 題 と し て 、生 産 規 模 拡 大 、モ ジ ュ ー ル 効 率 向 上( > 15% )、Yield
向 上( >98% )、生 産 コ ス ト 低 減 、リ サ ク ル( In)等 で あ る と し て い る 。研 究 面 の 課 題 と し
て 、① 光 吸 収 層 の Eg 制 御 、② 欠 陥 低 減 、③ 界 面 再 結 合 損 失 の 低 減 、④ 有 効 面 積 の 拡 大 、⑤
IR 損 失 の 低 減 、 な ど が あ る 。
6.3
III― V族 化 合 物 セ ル お よ び 集 光 型 太 陽 電 池 、 モ ジ ュ ー ル 分 野 :
最 近 、 多 く の 企 業 が 、 III-Vベ ー ス の 集 光 太 陽 光 発 電 ( CPV) シ ス テ ム の 商 用 化 を 開 始 し
ている。その主な理由として、次の点があげられる。
① III-V族 セ ル を 用 い た 集 光 型 太 陽 電 池 は 40% 以 上 の 高 効 率 化 を 実 現 し て お り 、 近 い 将 来 、
40% 以 上 の 高 効 率 モ ジ ュ ー ル の 実 現 が 可 能 で 、非 常 に 効 率 の 良 い CPVシ ス テ ム を 提 供 で き る 。
② PV応 用 が サ イ ズ の 上 で も 成 長 し て お り 、よ り 大 規 模 な シ ス テ ム の 実 現 が 要 望 さ れ 、CPVシ
ス テ ム が 適 し て い る 。 ③ コ ス ト 的 に も 有 効 な 代 替 PV技 術 へ の 関 心 を も た ら し て い る こ と 。
( 1 )A. Gombert( Soitec Solar)” Low-Cost Reliable High-Concentrating Photovoltaics:
A Reality” と 題 し て 、 プ レ ー ナ リ 講 演 を 行 っ た 。 Soitecは 、 2005年 に FhG-ISEか ら ス ピ ン
オ フ し て 設 立 し た Concentrxが 前 身 で 、 2009年 に 、 Soitec Solarと な る 。 従 業 員 1,300名 。
ド イ ツ・フ ラ イ ブ ル グ に は 、200名 で 、年 産 70MW、2013年 に は 、米 国・サ ン デ ィ ェ ゴ に 、年
産 280MWが 稼 働 の 計 画 で 、他 に 、フ ラ ン ス 、シ ン ガ ポ ー ル に も 拠 点 が あ る と の 事 で あ る 。2011
年 の CPV市 場 は 、 125MWだ が 、 CPV Consortiumに よ れ ば 、 2012年 、 2013年 、 2014年 、 2015年
に 、 そ れ ぞ れ 、 515MW、 850MW、 1250MW、 1500MWに な る と 予 測 さ れ て い る 。 CPVシ ス テ ム は 、
2500kWh/m 2 /yr以 上 の 日 射 条 件 の 良 い 地 域 で は 、他 の PV技 術 よ り も 電 力 コ ス ト 低 減 が 可 能 で 、
8.5セ ン ト /kWh以 下 が 期 待 で き る 。エ ネ ル ギ ー ペ イ バ ッ ク タ イ ム に つ い て も 、他 の PV技 術 に
比べて有利であり、1年以下の実現が可能である。
III-V族 多 接 合 太 陽 電 池 を 用 い た 高 倍 集 光 シ ス テ ム に お け る CPVモ ジ ュ ー ル コ ス ト に つ い
て は 、① モ ジ ュ ー ル の 自 動 ア セ ン ブ リ ィ 、② モ ジ ュ ー ル の 大 型 化 、③ 低 コ ス ト 材 料 の 使 用 、
④ 標 準 イ ン バ ー タ の 使 用 、⑤ 簡 易 設 置 工 法 、な ど よ っ て 、低 減 を は か っ て い る 。CPVモ ジ ュ
ー ル 生 産 の 自 動 化 が 進 み 、CPVモ ジ ュ ー ル 、シ ス テ ム の 大 型 化 が 可 能 と な っ て い る 。CX-S410
( 8.5kWシ ス テ ム )か ら 、CX-S420( 16kWシ ス テ ム )、CX-S530( 28.1KWシ ス テ ム )に 大 型 化
が 進 み 、コ ス ト も 、CX-S410を 1( モ ジ ュ ー ル コ ス ト 54% 、追 尾 系 30.6% 、シ ス テ ム 系 15.4% )
と す る と 、 CX-S42は 0.866( モ ジ ュ ー ル コ ス ト 54% 、 追 尾 系 18.3% 、 シ ス テ ム 系 14.3% ) 、
CX-S530は 0.66( モ ジ ュ ー ル コ ス ト 33.3% 、追 尾 系 18.3% 、シ ス テ ム 系 14.3% )と 、低 コ ス
ト 化 が 実 現 し て い る 。信 頼 性 に つ い て は 、① 製 造 ユ テ ィ リ テ ィ 設 計( 平 面 設 計 、標 準 装 置 、
既知プロエス、方法論)、②劣化モード、③統計的プロセス制御、④加速試験、⑤実証試
験 に お け る 劣 化 事 象 、 等 が 検 討 さ れ て い る 。 モ ジ ュ ー ル の 劣 化 モ ー ド と し て 、 SOGレ ン ズ
( Silicone-on-Glass)、封 止 な ど が あ る 。一 例 と し て 、SOGレ ン ズ の UVテ ス ト 、150℃ で 1,000
時 間 の 熱 安 定 試 験( 1-sunで 、10万 年 に 相 当 )が 実 施 さ れ 、安 定 性 を 確 認 し て い る 。モ ジ ュ
ー ル の 各 種 試 験( IEC62108試 験 、IEC62688試 験 、高 温 放 置 試 験;125℃ 、熱 衝 撃 試 験 、高 温
高 湿 試 験;95% RH+95℃ )、引 っ 張 り・曲 げ 試 験 、衝 撃 試 験 、塩 水 散 布 試 験 、な ど も 実 施 さ
れ て い る 。例 え ば 、高 温 高 湿 試 験( 85℃ +80RH)で は 、モ ジ ュ ー ル の Iー V特 性 の 劣 化 は ほ と
ん ど な い 。 ISOFOCで の CPVシ ス テ ム ( 100m 2 ) の 実 証 試 験 で は 、 イ ン バ ー タ ー や 追 尾 系 の 故
障 、メ イ ン ス イ ッ チ の オ ー バ ー ヒ ー ト が 、各 々 2件 あ っ た も の の 、4 年 間 ほ と ん ど 劣 化 な し
と い う 事 で あ る 。 モ ジ ュ ー ル 効 率 も 、 2008年 時 の 23~ 24% か ら 、 約 26% に 効 率 向 上 が な さ
れ て い る 。CPVシ ス テ ム は 、大 規 模 太 陽 光 発 電 シ ス テ ム な ど と し て 、広 範 囲 に 実 用 さ れ よ う
と結んだ。
( 2 ) 荒 木 ら ( 大 同 特 殊 鋼 ) は 、 “ Design and Development of 35% Efficient and 1000x
CPV Module with Sufficient Optical Alignment Tolerance” と 題 し て 、 集 光 型 太 陽 光 発
電 に 関 す る 日 欧 共 同 研 究 開 発 の 下 で 行 わ れ て い る 大 同 特 殊 鋼 、 宮 崎 大 、 UPM、 BSQ Solarに
よ る 共 同 研 究 開 発 の 成 果 が 述 べ ら れ た 。 2003年 に は 、 III-V族 3 接 合 太 陽 電 池 を 用 い た 400
倍 の 効 率 28% の 研 究 段 階 の CPVモ ジ ュ ー ル を 開 発 し 、2011年 に は 、1100倍 の 平 均 効 率 28% の
製 造 レ ベ ル の CPVモ ジ ュ ー ル を 開 発 し た 。 本 CPVモ ジ ュ ー ル に は 、 ド ー ム 型 フ レ ネ ル レ ン ズ
と二次光学レンズが用いられ、入射光強度分布の一様性向上と許容角の拡大をはかってい
る 。 820倍 の 10kWの CPVシ ス テ ム の 許 容 角 は 、 ±0.92°で あ る 。 今 回 の 発 表 で は 、 許 容 角 の
さらなる拡大をはかった結果が報告された。図12は、集光光学系の集光倍率ー実効許容
角に関する典型的技術、大同特殊鋼の現行技術および本研究開発のターゲットを示す。
図12
集光光学系の集光倍率ー実効許容角に関する典型的技術、大同特殊鋼の
現行技術および本研究開発のターゲット
今 回 、 UPMの DFK光 学 系 ( LPI Kohler光 学 技 術 ) と 大 同 特 殊 鋼 の モ ジ ュ ー ル 、 シ ス テ ム 技
10
術 を 用 い 、 ±1.1°以 上 の 許 容 角 を 実 現 し 、 幾 何 学 効 率 841倍 の 1050mmx1050mmの CPVモ ジ ュ
ー ル で 、 効 率 35% 、 出 力 385W( 112V) を 実 現 し て い る 。 重 量 は 、 18kg( 0.05kg/W) と 軽 量
で あ る 。光 学 レ ン ズ は 、174mmx174mmで 、CPVセ ル は 、6mmx6mmで あ る 。追 尾 誤 差 が 軽 減 さ れ
て い る 。シ ミ ュ レ ー シ ョ ン の 結 果 、今 後 の 改 良 に よ り 、1250倍 集 光 で も 、±1℃ 以 上 の 許 容
角の実現が可能で、現地でのアライメント調整を容易にできる。
CPVセ ル お よ び モ ジ ュ ー ル の 信 頼 性 検 討 も な さ れ て い る 。 図 1 3 は 、 1000倍 集 光 CPVセ ル
の 熱 サ イ ク ル 試 験 下 で の 劣 化 率 を 示 す 。 50% の 劣 化 率 時 は 、 4200サ イ ク ル で あ り 、 寿 命 70
年 に 相 当 す る 。 400Wの 超 高 効 率 集 光 型 モ ジ ュ ー ル を 実 用 化 す る と い う 強 い メ ッ セ ー ジ が 述
べられた。
図13
6.4
1000倍 集 光 CPVセ ル の 熱 サ イ ク ル 試 験 下 で の 劣 化 率
結 晶 Si太 陽 電 池 分 野 :
(1)E.R. Weber( Fraunhofer ISE)は 、“ The Future of Crystalline Silicon Photovoltaic
Technology” と 題 し て 、 プ レ ー ナ リ 講 演 を 行 っ た 。 現 状 の 太 陽 電 池 生 産 の 85% は 、 結 晶 Si
で あ る 。 低 炭 素 社 会 の 実 現 に 、 太 陽 光 発 電 が 重 要 で 、 今 後 も 、 主 要 は 結 晶 Siで あ ろ う 。 ポ
リ シ リ コ ン 生 産 は 、年 産 12万 t だ が 、価 格 は $ 50/kgで 、年 産 1000t の ポ リ シ リ コ ン 製 造 プ
ラ ン ト に は 、$ 100Mが 必 要 で あ る 。ポ リ シ リ コ ン の 製 造 コ ス ト 低 減 に は 、金 属 級( MG)-Si
の 活 用 が 必 要 だ が 、 純 度 は 99.5% 以 下 で あ る 。 ア ッ プ グ レ ー ド MG( UMG) -Siの 研 究 開 発 を
進 め て い る 。 純 度 99% 材 料 か ら 出 発 し 、 ガ ス 反 応 に よ る B、 P低 減 で 純 度 99.8% 以 下 、 ス ラ
グ 処 理 や 不 純 物 偏 析 を 活 用 し 、ppmオ ー ダ ー を 実 現 し て い る 。低 品 位 Si上 の エ ピ セ ル な ど が
検 討 さ れ 、CaliSolarで 、15cmx15cmセ ル で 、平 均 効 率 16.6%( ベ ス ト 17.7% )を 得 て い る 。
Q-cells で は 、 バ ッ ク コ ン タ ク ト セ ル が 作 製 さ れ 、 効 率 18.2 % と の 事 で あ る 。 Defect
engineeringが 重 要 で あ る と ま と め た 。
( 2 )D. Songら( Yingi Green Energy)は 、” Progress in n-type Si Solar Cells and Module
for High Efficiency and Low Cost” と 題 し て 、 招 待 講 演 を 行 っ た 。 n型基板の導入も増えて
いる。図14には、ITRPVロ ー ド マ ッ プ に お け る 結 晶 Si太 陽 電 池 製 造 に 占 め る n型 基 板 の 比 率
11
予 測 を 示 す 。 研 究 段 階 で は 、 SunPower が 、 158.9cm2 の n-Si の IBC セ ル で 、 効 率 24.2 %
( Voc=721mV、 Jsc=40.46mA/cm 2 、 FF=82.3% ) 、 UNSWは 、 FZ n-Siの 22cm 2 、 PERTセ ル で 、 効
率 22.7%( Voc=745mV、Jsc=38.38mA/cm 2 、FF=80.9% )、FhG-ISEで は 、FZ n-Siの 4cm 2 、PERL
セ ル で 、 効 率 23.9% ( Voc=705mV、 Jsc=41.18mA/cm 2 、 FF=82.5% ) を 実 現 し て い る 。 ヘ テ ロ
接 合 型 も 最 近 の 傾 向 で あ る 。三 洋 電 機 は 、HIT太 陽 電 池 で 、モ ジ ュ ー ル 効 率 20.6% の 状 況 で 、
98μ m厚 の 10cmx10cmセ ル で 効 率 23.7% ( Voc=745mV、 Jsc=38.38mA/cm 2 、 FF=80.9% ) を 達 成
している。
Yingiの Pandaセ ル の 状 況 が 報 告 さ れ た 。2010年 3月 に 、300MWプ ロ ジ ェ ク ト を 開 始 し 、2012
年 3月 段 階 で 、平 均 効 率 18.5%( 最 高 20% )の 600MWの パ イ ロ ッ ト 生 産 ラ イ ン が で き て い る 。
N型 CZ-Siを 用 い た bifacialセ ル で 、構 造 は 、Ag/Al表 面 電 極 /反 射 防 止 膜 /表 面 パ ッ シ ベ ー シ
ョ ン /テ ク ス チ ャ ー 構 造 /p +( B拡 散 )層 /n型 層 /n +( P拡 散 )層 /SiNx層 /Ag裏 面 電 極 か ら な る 。
6イ ン チ ウ エ ハ の 239cm2セ ル で 、 平 均 効 率 18.5% を 実 現 し 、 2年 以 内 に 、 平 均 効 率 20.2% を
目指すとの事である。低コストの可能性があり、ダブルガラスパネルが作製されている。
光 劣 化 も 、 p型 ベ ー ス で 1.4% 劣 化 が あ る の に 対 し 、 Pandaの n型 セ ル は 、 ほ と ん ど 光 劣 化 が
な い 。 Pmaxの 温 度 係 数 も 、 p型 の -0.45% /℃ に 対 し て 、 Pandaで は 、 -0.42% /℃ と 良 い 。 ま
た 、低 照 度 で の 特 性 が 良 い と の 事 で あ る 。多 結 晶 Siへ の 適 用 は 、拡 散 の 難 し さ な ど が あ り 、
現状では、難しいという質疑があった。
図14
ITRPVロ ー ド マ ッ プ に お け る 結 晶 Si太 陽 電 池 製 造 に 占 め る n型 基 板 の 比 率 予 測
( 3 ) C. BalifEPFL” a-Si:H/μ c-S Heterojunctions: A Future Mainstream Technology for
High-Efficiency Crystalline Si Solar Cells?” と 題 し て 、 ヘ テ ロ 接 合 結 晶 Si太 陽 電 池 に
関 し て 、 講 演 を 行 っ た 。 図 1 5 に 示 す よ う に 、 ヘ テ ロ 接 合 太 陽 電 池 は 、 a-Siに よ る 優 れ た
パ ッ シ ベ ー シ ョ ン 、薄 型 化 に 適 し た 200℃ 程 度 の 低 温 プ ロ セ ス 、単 純 構 造・単 純 プ ロ セ ス の
特 徴 を 有 す る 。し か し 、Panasonicの HITセ ル の 効 率 23.7% に 対 し て 、RRSは 21.2% 、EPFLは
21% で 、 マ ジ ッ ク で あ る 。 ド イ ツ の ROTH&RAUと 共 同 開 発 を 行 っ て い る 。 図 1 6 に 示 す よ う
に 、a-S成 膜 に は 、PECVD装 置 と し て 、VHF( 40.68MHz)の KAI-M-PECVD装 置 と 13MHzの OCTOPUS
- PECVD装 置 を 用 い て い る 。ヘ テ ロ 接 合 太 陽 電 池 の 高 効 率 化 の キ ー 技 術 は 、ヘ テ ロ 接 合 、TCO
である。ヘテロ接合の基礎的理解が重要で、界面再結合に注力し、過剰キャリア密度と実
効 キ ャ リ ア 寿 命 、界 面 準 位 と 内 蔵 電 荷 、ITO(TCO)の 光 吸 収 等 を 検 討 し た 。表 面 、裏 面 TCOと
12
裏 面 Ag電 極 は 、 DCス パ ッ タ に よ り 、 表 面 Ag電 極 は 、 ス ク リ ー ン 印 刷 に よ り 形 成 し た 。 テ ク
ス チ ャ ー n型 FZ基 板 ( 4Ω cm、 240μ m厚 ) 、 n型 CZ基 板 ( 4Ω cm、 100μ m厚 を 用 い た 。
n型FZの2cmx2cmセルでは、図16に示すように、VHF-PBCVDで効率21%、13MHz-PECVDで効率20.4%
が得られている。その後、改善委より、n型FZの2cmx2cmセルでは、効率21.86%(Voc=726mV、
Jsc=37.8mA/cm2、FF=79.7%)、n型FZの100cm2セルでは、効率20.5%(Voc=729mV、Jsc=36.5mA/cm2、
FF=77.2%)、が得られている。ROTH&RAUでは、n型CZの2cmx2cmセルでは、効率21.9%(Voc=735mV、
Jsc=38.5mA/cm2、FF=77.8%)、n型FZの15.6cmx15.6cmセルでは、効率20%(Voc=719mV、Jsc=36mA/cm2、
FF=77.2%)、n型CZの238.5cm2セルでは、効率19.65%(Voc=722.8mV、Jsc=35.48mA/cm2、FF=76.7%)、
n型CZの596cm2セルでは、効率19.3%(Voc=728mV、Jsc=36mA/cm2、FF=73.8%)、の状況である。
図 15
図16
6.5
ヘテロ接合結晶Si太陽電池の構造と特徴
PECVD装置とEPFLでのヘテロ接合結晶Si太陽電池特性の結果
ア モ ル フ ァ ス 、 ナ ノ / マ イ ク ロ 結 晶 薄 膜 Si太 陽 電 池 分 野 :
(1)C. Balif(EPFL) は 、 “ New Approaches for Very High Efficiency a-Si/μ c-Si Solar
Cells” と 題 し て 、 プ レ ー ナ リ 講 演 を 行 っ た 。 a-Si/μ c-Si 太 陽 電 池 の 最 近 の 成 果 が 述 べ ら
れ た 。 薄 膜 Siは 、 カ ラ ー 、 形 状 の 柔 軟 性 の 点 で 有 利 で 、 ニ ッ チ 市 場 に 適 し て い る 。 大 量 生
産 に よ り 、モ ジ ュ ー ル コ ス ト も 0.33~ 0.4ユ ー ロ /Wを 予 想 し て い る 。VHFは Neuchatel大 の 提
13
案 で 、低 周 波 の p-CVDよ り 、イ オ ン 損 傷 が 少 な く 、有 利 で あ る 。光 ト ラ ッ ピ ン グ に 関 し て は 、
Asahi U よ り 、LP-CVD ZnOが 量 子 効 率 改 善 に 優 れ て い る 。マ イ ク ロ モ ル フ ォ タ ン デ ム( a-Si/
μ c-Si) は 、 1994年 の WCPEC-1で 、 Meierが 提 案 し た 。 Interlayerコ ン タ ク ト 、 バ リ ア と し
て 、doped酸 化 膜 層 が 用 い ら れ て い る 。堆 積 中 の 水 素 分 圧 の 制 御 に よ り 、SiOxの 導 電 率 を 制
御 が で き る 。 表 面 テ ク ス チ ャ ー と light trappingへ の 効 果 が 述 べ ら れ 、 結 果 と し て 、 量 子
効 率 の 向 上 、 収 集 電 流 の 増 加 が 実 現 し て い る 。 ZnOの 寄 生 吸 収 も 減 少 し 、 light trappingが
改善されている。
a-Siで 効 率 10% 、 2 接 合 タ ン デ ム で 安 定 化 効 率 12% の 状 況 で 、 UniSolarが 3 接 合 タ ン デ
ム で 初 期 効 率 16.3% ( 図 1 7 ) を 達 成 し て い る 。
図17
UniSolarに よ る 3 接 合 薄 膜 Siタ ン デ ム セ ル の I-V特 性 と 分 光 感 度 特 性
図18
1.4cm 2 の a-Si:H/μ c-S:Hタ ン デ ム セ ル モ ジ ュ ー ル の I-V特 性
Oerlikon Solarの 1.7eV/1.1eVの a-Si:H/μ c-S:Hタ ン デ ム セ ル の 状 況 も 報 告 さ れ た 。① R&D
用 KAI-Mシ ス テ ム の 最 適 化 に よ り 、薄 膜 Si堆 積 の 改 善 を は か っ た 。② LPCVD-ZnOの TCOの light
trappingに よ り 、 安 定 化 効 率 の 改 善 に つ な が る a-Si層 厚 の 低 減 を は か っ た 。 ③ 中 間 反 射 層
と し て 、ド ー プ し た μ c-SiOx中 間 層 を 導 入 し た 。④ テ ク ス チ ャ ー LPCVD-ZnOを 表 面 お よ び 裏
面 TCOに 用 い た 。 ⑤ Corningと 共 同 で 、 新 し い テ ク ス チ ャ ー ガ ラ ス 基 板 を 開 発 し た 。 裏 面 反
射 層 で 、 テ ク ス チ ャ ー 基 板 に よ り 、 収 集 効 率 が 改 善 さ れ 、 a-Si:H/μ c-S:Hタ ン デ ム セ ル の
14
小 面 積 セ ル( 1.04cm 2 )で 、初 期 効 率 13.9% 、安 定 化 効 率 12.24% が 得 ら れ て い る 。 KAI-1200
の 1.4m 2 PECVD装 置 を 用 い て 、1.4m 2 の a-Si、タ ン デ ム セ ル の R&Dモ ジ ュ ー ル で 、各 々 、9.7% 、
12.2% ( 真 性 効 率 13.1% ) の 安 定 化 効 率 を 得 て い る 。 図 1 8 は 、 1.4cm 2 の a-Si:H/μ c-S:H
タ ン デ ム セ ル モ ジ ュ ー ル の I-V特 性 を 示 す 。 9.7% 、 12.2% は 、 各 々 、 139.1W、 166.6Wモ ジ
ュ ー ル に 相 当 し 、 174Wモ ジ ュ ー ル を 実 現 す る た め に 、 効 率 13.1% を 目 指 す 。
課 題 は 、モ ジ ュ ー ル の 安 定 化 効 率 15% 以 上 、CVDコ ス ト 低 減 、ス ル ー プ ッ ト 、yield 、a-Si
の光劣化抑制、などである。
6.6
有機太陽電池分野:
M. Pfeiffer( Heliatek)は 、“ Efficient-Organic Vacuum-Deposited Tandem Solar Cells
and Nodules on Glass and PET” と 題 し て 、 プ レ ー ナ リ 講 演 を 行 っ た 。 Konarka社 が 撤 退 す
る 中 、 種 々 の 機 関 が 参 入 し て い る 印 象 で あ る 。 Heliatekも 2006年 に 設 立 さ れ た 。 有 機 太 陽
電池は、低分子リゴマー、ポリマーの狭い吸収波長領域、低移動度、低拡散長により低効
率であり、タンデム化のアプローチが有効である。真空堆積は、溶媒不要、タンムセル作
製可能(界面劣化少ない)、大面積製造可能、コスト低減の可能性、があると強調した。
タ ン デ ム 化 の た め の 材 料 の ア プ ロ ー チ が 紹 介 さ れ た 。Conjygated A-D-A オ リ ゴ マ ー 、DCV6T
( 光 学 ギ ャ ッ プ Eg=1.55eV、Voc=0.87V)や HDR014( Eg=1.77eV、Voc=1.04V)、ZnPc( Eg=1.46eV、
Voc=0.6 V) な ど で あ る 。 ガ ラ ス 基 板 上 の こ れ ら の p-in-構 造 に よ る 1cm 2 タ ン デ ム セ ル で 、
効 率 10.7% ( Voc=1.71V、Jsc=9.23mA/cm2、FF=67.8%) が 得 ら れ て い る 。 温 度 55℃ 位 ま で は 、
温 度 上 昇 と 共 に 、 効 率 が 上 が る と の 事 で あ る 。 PET上 の タ ン デ ム セ ル は 、 8.5% の 状 況 で あ
る 。 図 1 9 は 、 Heliatekに お け る 有 機 太 陽 電 池 の 効 率 向 上 の 変 遷 と 目 標 を 示 す 。 2015年 ま
で に 、 効 率 15& % を 達 成 し た い と の 事 で あ る 。 142cm 2 の サ ブ モ ジ ュ ー ル で は 、 効 率 7.7%
で あ る 。信 頼 性 も 検 討 さ れ て い る 。9.5% セ ル の 85℃ 1,000時 間 試 験 で 、劣 化 5% 以 内 、8.3%
セ ル の 85℃ 6,000時 間 試 験 で 、劣 化 10% 以 内 で あ る 。30cm幅 の PET基 板 上 の Roll-to-Roll装
置 も 立 ち 上 げ つ つ あ る 。 最 終 的 に は 、 0.3~ 2m幅 、 0.5~ 2.5km長 を 目 指 す と の 事 で あ る 。
2017年 時 の 製 造 コ ス ト 目 標 は 、40セ ン ト /W以 下 で 、市 場 と し て 、色 調 、半 透 明 性 や 柔 軟 性
を生かした携帯機器、ビル、自動車応用などを考えている。
有 機 太 陽 電 池 を 実 用 技 術 に す る の は 、 セ ル 効 率 15% 以 上 、 モ ジ ュ ー ル 効 率 12% 以 上 が 必
要であろう。信頼性は大きな課題で、現在は、封止技術に頼っている現状である。
図19
Heliatekに お け る 有 機 太 陽 電 池 の 効 率 向 上 の 変 遷 と 目 標
15
6.7
宇宙用太陽電池およびシステム分野:
C. Taylor( NASA本 部 ) は 、 “ NASA Space Technology Program Plans for Advanced Space
Power”と 題 し て 、プ レ ー ナ リ 講 演 を 行 っ た 。NASAの 現 在 の PVに 関 す る 大 き な 関 心 は 、Game
Changing Development Programで あ る 。 National Research Councilも 、 太 陽 光 発 電 を 米 国
の 三 番 目 の プ ラ オ リ テ ィ リ ス ト に あ げ て い る 。 一 例 と し て 、 Hallス ラ ス タ ー を 用 い た 電 気
推 進 に は 、 大 面 積 の 太 陽 電 池 ア レ イ が 必 須 で あ る 。 2018年 打 ち 上 げ 予 定 の 30kWシ ス テ ム
( PV150m 2 ) は 目 途 が 立 っ て い る が 、 2024年 打 ち 上 げ 予 定 の 300kWシ ス テ ム ( 1,500m 2 ) は 、
全 く 目 途 が 立 っ て い な い 。① 高 重 量 比 電 力( > 200W/kg)、② 高 充 填 密 度 、③ 高 放 射 線 耐 性 、
④ 高 電 圧 動 作 、 な ど が 要 求 さ れ る 。 30kW か ら 300kW に 発 展 さ せ る た め に 、 Solar Array
Structure (SAS) Projectを 本 年 4月 26日 に リ リ - ス し た 。 フ ェ ー ズ 1 は 、 18カ 月 の 開 発 、
フ ェ ー ズ 2 は 、軌 道 実 証 で あ る 。開 発 テ ー マ は 、① 集 積 モ ジ ュ ー ル /ブ ラ ケ ッ ト ア セ ン ブ リ
ィ 、 ② 高 フ レ キ シ ブ ル ブ ラ ケ ッ ト 、 ③ deep Space環 境 で 使 用 可 能 な セ ル ー イ ン タ ー コ ネ ク
ト ー カ バ ー ガ ラ ス 、④ 高 電 圧 電 子 部 品 、で あ る 。ま だ 、提 案 段 階 だ が 、PV Cost Development
Projectも あ る 。狙 い は 、① 先 端 太 陽 電 池 製 造 、② 高 歩 留 り 、高 信 頼 性 セ ル 技 術 、③ 先 端 セ
ル /ブ ラ ケ ッ ト 集 積 、④ モ ジ ュ ー ル 設 計 、集 光 ア レ イ 、等 の 開 発 に あ る 。太 陽 電 池 ア レ イ の
コ ス ト 低 減 の ア プ ロ ー チ と し て 、 ① 効 率 向 上 に よ る $/Wの 低 減 、 ② 自 動 化 /製 造 技 術 向 上 に
よ る 50% コ ス ト 削 減 、 ③ 集 光 技 術 に よ る 太 陽 電 池 使 用 量 の 削 減 、 が あ る 。
要 約 す る と 、① deployability、② affordability、③ power densityが 重 要 だ と ま と め た 。
6.8
キャラクタリゼーション:
K.A. Emery( NREL) は 、 ” Calibration and Rating of Photovoltaics” と 題 し て 、 プ レ
ーナリ講演を行った。太陽電池、モジュールの特性評価、標準太陽電池による較正、認証
機 関 に よ る ク ロ ス チ ェ ッ ク な ど の 手 法 が 紹 介 さ れ た 。平 板 PVは 、IEC-60904-1に 準 拠 し 、集
光 PVは 、 IEC62270-1+ASTME2527に 準 拠 し 、 特 性 測 定 を 行 う 。 地 上 用 セ ル 、 モ ジ ュ ー ル 特 性
は 、PTB、AIST、JRC、NRELの 認 証 機 関 で ク ロ ス チ ェ ッ ク を 行 っ て い る が 、結 晶 Siセ ル で も 、
±4% の 誤 差 が あ る 。±2% に 改 善 す る に は 、標 準 セ ル や シ ミ ュ レ ー タ の 改 良 が 必 要 で あ る 。
標 準 セ ル も 、 不 安 定 な セ ル は 排 除 す る 必 要 が あ る し 、 結 晶 Siや a-Siセ ル で は 、 光 劣 化 を 、
CdTeや CIGSセ ル で は 、 電 圧 印 加 履 歴 、 を 考 慮 す る 必 要 が あ る 。 パ ッ ケ ー ジ ン グ も 重 要 で あ
る 。特 に 、有 機 や CPVセ ル で は 、セ ル 面 積 の 規 定 が 重 要 で 、マ ス ク や エ ッ チ オ フ が 要 求 さ れ
る 。 ま た 、 二 次 較 正 も 重 要 で 、 NREL、 FhG-ISE、 AIST間 で 行 っ て い る 。 標 準 太 陽 電 池 の Isc
は 、国 際 的 に 、±1% 以 内 に お さ ま っ て い る 。信 頼 性 は 、重 要 で 、多 面 的 に 評 価 す る 必 要 が
ある。
6.9
モ ジ ュ ー ル ・ シ ス テ ム 分 野:
A. Golnas( SunEdison ) は 、 ” PV System Reliability: An Operator’ s Perspective”
と 題 し て 、 プ レ ー ナ リ 講 演 を 行 っ た 。 同 社 は 、 三 年 間 で 、 750プ ラ ン ト 、 750MW以 上 の PVシ
ス テ ム 実 証 の 経 験 を 有 す る 。 PVは 、 結 晶 Si、 a-Si、 CdTeが 主 で 、 屋 根 置 き か グ ラ ン ド 設 置
で あ る 。 PVの 信 頼 性 は 、 コ ス ト に 関 わ る 。 同 社 の 27プ ラ ン ト 、 1 7 MWの PVシ ス テ ム で は 、
$0.1/kWhを 実 現 し て い る 。450の PVシ ス テ ム の 2010年 1月 ~ 2012年 3月 に わ た る 27カ 月 の サ ー
ビ ス で の 故 障 割 合 は 、 イ ン バ ー タ が 43% と 多 く 、 交 流 サ ブ シ ス テ ム 14% 、 外 部 サ ブ シ ス テ
16
ム ( イ ン タ ー コ ネ ク シ ョ ン 、 グ リ ッ ド ) 12% も 多 く 、 PVモ ジ ュ ー ル は 、 2% と 少 な い 。 5メ
ー カ ー で 、 故 障 が 10倍 も 違 う し 、 年 と 共 に 、 故 障 増 え る ケ ー ス 、 減 る ケ ー ス も メ ー カ ー に
よ る 。イ ン バ ー タ ー の 故 障 の メ イ ン は 、制 御 ソ フ ト 28% 、カ ー ド /PCボ ー ド 13% ,交 流 接 続
部 12% 、 な ど で あ り 、 イ ン バ ー タ ー 故 障 は 、 ス イ ッ チ 制 御 に 関 係 し て い る 。 PVモ ジ ュ ー ル
部 品 と し て は 、 表 面 ガ ラ ス 42% 、 セ ル 12% 、 ブ ラ ケ ッ ト 部 8% 、 コ ネ ク タ ー 部 7% 、 ジ ャ ン
ク シ ョ ン 箱 6% 、 そ の 他 7% 、 の 順 で あ る 。 PVシ ス テ ム オ ペ レ ー タ ー は 、 信 頼 性 を 管 理 し 、
装 置 供 給 者 は 、 品 質 向 上 、 保 証 を 求 め ら れ る 。 PVシ ス テ ム 設 計 、 装 置 の 標 準 化 が 必 要 で あ
る。
今 後 、① 継 続 的 改 良 、② 自 動 車 と の 関 係( プ ラ グ イ ン )な ど 、③ 電 気 系 統 、④ 無 線 通 信 、
⑤蓄電制御系、⑥集積部品、⑦標準化、などが重要とまとめた。
6.10
市場および政策分野:
( 1 ) D. Pamillo ( Dow Solar, The Dow Chemical Company) ” The Dow Powerhouse TM Solar
Shingle Launch –
Investment & Technology Decisions; Processes for a New Product”
と 題 し て 、 プ レ ー ナ リ 講 演 を 行 っ た 。 Dow Chemicalの 化 学 、 ブ ラ ン ド 、 注 目 度 を 活 か し た
ビ ジ ネ ス と し て 、 DOW POWERHOUSE TR プ ロ ジ ェ ク ト を 、 2007年 に 開 始 し た 。 2007年 3月 に は 、
DOEか ら 2,000億 ド ル の 助 成 を 得 た 。 米 国 に お け る 住 宅 屋 根 用 PVに は 、 品 質 、 durability、
versatility、 コ ス ト が 要 求 さ れ る 。 フ レ キ シ ブ ル 等 設 置 が 容 易 で あ る こ と も 必 要 で あ り 、
DOW POWERHOUSE TR に よ る Solar Communityを 形 成 し た い 。 PVパ ワ ー デ バ イ ス と し て 、 Global
Solarの CIGSセ ル ( 効 率 13% ) 、 Alta Devicesの GaAs薄 膜 セ ル ( 効 率 28% ) を 対 象 と し て い
る 。 PVモ ジ ュ ー ル 価 格 は 、 結 晶 Si、 CIGS、 各 々 、 $1.57/W、 $1.0/Wだ が 、 NuroSunは 、 12%
セ ル で 、 $0.23/Wが 可 能 と し て い る 。 Dowの ベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル を 通 じ て 、 15~ 20億 ド ル
を 投 資 し て 、Alta、NuroSunと 共 同 開 発 を 進 め る と の 事 で あ る 。技 術 の ス ケ ー ル ア ッ プ 、信
頼 性 を 十 分 に 検 討 し て 、20年 以 上 の ラ イ フ の 製 品 を 開 発 し た い 。そ れ に 向 け て 、品 質 保 証 、
マルチストレス信頼性試験、寿命予測、フィールド試験を行う計画である。
( 2 ) 小 間 ( NEDO) は 、 ” Overview of Japanese PV Programs” と 題 し て 、 日 本 の 太 陽 光
発 電 プ ロ グ ラ ム に つ い て 招 待 講 演 を 行 っ た 。 NEDOの 概 要 の 説 明 に 後 、 図 2 0 ~ 図 2 2 に 示
す よ う に 、現 行 の「 太 陽 光 発 電 次 世 代 高 性 能 技 術 開 発 」、「 革 新 的 太 陽 電 池 技 術 研 究 開 発 」、
「色素増感および有機太陽電池の実用化加速技術開発」の3つのプロジェクトの概要が報
告 さ れ た 。 ま た 、 NEDOの PV技 術 開 発 の 成 功 事 例 と し て 、 シ ャ ー プ の 世 界 最 高 効 率 36.9% の
InGaP/GaAs/InGaAs3 接 合 太 陽 電 池 、ソ ー ラ ー フ ロ ン テ ィ ア の CIS世 界 最 大 製 造( 900MW)工
場 の 完 成 、 シ ャ ー プ の 高 効 率 ( 11.0% ) 色 素 増 感 太 陽 電 池 が 紹 介 さ れ た 。
17
図20
図21
図22
NEDO「 太 陽 光 発 電 次 世 代 高 性 能 技 術 開 発 」 プ ロ ジ ェ ク ト の 概 要
NEDO「 革 新 的 太 陽 電 池 技 術 研 究 開 発 」 プ ロ ジ ェ ク ト の 概 要
NEDO「 色 素 増 感 お よ び 有 機 太 陽 電 池 の 実 用 化 加 速 技 術 開 発 」 プ ロ ジ ェ ク ト の 概 要
( 3 ) M. Le( DOE) は 、 ” SunShot Initiative” と 題 し て 、 米 国 D O E の 太 陽 エ ネ ル ギ ー
技 術 プ ロ グ ラ ム に つ い て 招 待 講 演 を 行 っ た 。SunShot プ ロ グ ラ ム が ス タ ー ト し 、図 2 3 に 示
す よ う に 、 2010 年 の シ ス テ ム コ ス ト $3.8/W か ら 、 2016 年 の $2.2/W、 さ ら に 2020 年 の $1/W
を 目 指 す と し て い る 。こ れ は 、5~ 6 セ ン ト /kWh に 等 価 で あ る 。従 っ て 、モ ジ ュ ー ル コ ス ト
18
も $0.5/W の 達 成 を 目 指 す 。図 2 4 は 、モ ジ ュ ー ル コ ス ト $0.5/W、シ ス テ ム コ ス ト $1/W 実 現
の た め の 施 策 を 示 す 。 モ ジ ュ ー ル コ ス ト $0/5/W の 達 成 の た め に は 、 理 論 効 率 に 近 い 変 換 効
率 の 高 い 太 陽 電 池 の 開 発 、 セ ル 製 造 コ ス ト の 低 減 、 30 年 以 上 も 特 性 維 持 す る 長 寿 命 が 要 求
される。図25には、種々の太陽電池技術に関して、現行の製造モジュールの効率、研究
室レベルのセル効率、理論効率を示す。図26には、コストターゲット達成のための研究
開 発 タ ー ゲ ッ ト と 線 表 を 示 す 。研 究 開 発 対 象 と し て 、単 結 晶・多 結 晶 Si、CIGS、CdTe、III-V
族 多 接 合 太 陽 電 池 が あ る 。有 機・色 素 は 、ま だ 、性 能 、寿 命 の 点 で 課 題 が 多 く 、NSF 等 の 基
礎 研 究 フ ェ ー ズ で あ る 。表 4 に は 、研 究 開 発 予 算 計 画 を 示 す 。M. Le( DOE)に よ れ ば 、2011
年 の 太 陽 光 発 電 関 係 の 予 算 配 分 は 、結 晶 Si:薄 膜:CPV:シ ス テ ム:第 3 世 代 = 8:6:3:6:
1との事である。わが国における、有機・色素および第3世代の予算配分に首を傾げられ
た。
図23
SunShot プ ロ グ ラ ム の シ ス テ ム コ ス ト 目 標( モ ジ ュ ー ル コ ス ト 、BOS コ ス ト 、パ
ワーエレクトロニクスコスト)
図24
モ ジ ュ ー ル コ ス ト $0.5/W、 シ ス テ ム コ ス ト $1/W 実 現 の た め の 施 策
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図25
種々の太陽電池技術に関する、現行の製造モジュールの効率、研究室レベルのセ
ル効率、理論効率
図26
コストターゲット達成のための研究開発ターゲットと線表
表4
Topic 1
(Sub-cell)
研究開発予算計画
Topic 2
(Cell level)
Topic 3
(Barrier Focus
Teams)
Award Duration (years)
3
Max Award Award (Total $ per Award)
$1.5M ($1M
Average)
$1.5M
$8M ($6M Average)
Estimated Annual Federal Funding ($)
20
~$3M, (~9 Awards)
~$4M, (~8 Awards)
~$4-6M (~2-4
awards)
Objective
Scientific advances
in materials, device,
and process
research
Cell level
foundational
research closing the
gaps between
theoretical , lab, and
production efficiency
limits
Teams with very
high level of focus
on overcoming
barriers to improved
performance
7.感想
開 催 地 が や や 不 便 な こ と も あ り 、 前 回 会 議 よ り 参 加 者 は 減 少 し た 。 米 国 は 、 10名 の 微 増
に 対 し て 、日 本 、ド イ ツ 、韓 国 、台 湾 は 、そ れ ぞ れ 、58名 減 、40名 減 、39名 減 、15名 減 で 、
企 業 か ら の 参 加 者 が 減 っ て い る 印 象 で あ る 。 特 に 、 結 晶 Si太 陽 電 池 セ ッ シ ョ ン で は 、 欧 米
からの研究成果発表が盛んだが、日本企業からの参加は少なく、今後の危惧を感じる。ま
た 、 欧 州 で 産 学 連 携 が 進 ん で い る 。 確 か に 、 わ が 国 は 、 結 晶 Si太 陽 電 池 生 産 量 に お い て 、
世 界 一 だ っ た が 、 中 国 に 追 い 抜 か れ て い る 。 特 に 、 中 国 企 業 は 、 UNSW、 米 国 、 ECNや SERIS
か ら 技 術 導 入 を し て お り 、 わ が 国 は 、 結 晶 Si太 陽 電 池 の 研 究 開 発 者 人 口 を 増 や し 、 レ ベ ル
を 上 げ る こ と が 必 要 で あ る 。半 導 体 LSI凋 落 の 二 の 舞 を 踏 ま な い た め に も 、わ が 国 に お け る
研究開発の強化と産学連携が必要である。中国企業に対抗するためには、震災復興事業と
して、時限性のオールジャパンの国営製造工場を震災地に設立するのも一案と思う。
昨年6月から、集光型太陽光発電に関する日欧の共同研究開発が始まり、欧米での集光
型太陽光発電システムの重要性が再認識されており、わが国における超高効率太陽電池・
材料、集光モジュールおよびシステムに関する研究開発の再強化の良い機会となろう。モ
ジュールやシステムの信頼性やスマートグリッド、系統の安定化、プラグインハイブリッ
ド等、システム研究開発の強化も必要であり、日欧共同研究開発と同様に、日米共同研究
開発も期待したい。
DOEや NRELの 人 達 と 話 す 機 会 が 多 く 、我 が 国 で の 有 機・色 素 に か け る リ ソ ー ス の 多 さ に 驚
かれる。性能や信頼性に課題が多く、基礎にたちかえる必要があろう。
次 回 の 39th IEEE PVSCは 、 2013年 6月 16日 ~ 21日 、 フ ロ リ ダ 州 Tammpaで 開 催 予 定 で あ る 。
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