第1班 研修テーマ ①『文化資源を生かした地域づくり』 ②『官民パートナーシップを基盤としたまちづくり』 ③『アグリツーリズモを活用したまちおこしについて』 ④『廃棄物行政について』 ⑤『広域連携による観光街道政策及び住民を取り巻く景観・建築規制』 団体名 綾 町 延 岡 市 氏 名 田牧 良 (副団長) 金子 潤一 (班長) 宮 崎 市 田上 卓馬 宮 崎 市 河野 克武 宮 崎 市 山口 宏樹 都 城 市 穂之上 知哉 都 城 市 堀内 研一 日 南 市 元吉 笑子 木 城 町 水口 信之 美 郷 町 黒田 史也 研修テーマ① 『文化資源を生かした地域づくり』 研修日 平 成 26 年 10 月 16 日 ( 木 ) 研修先 イギリス マージーサイド州 リヴァプール市 リヴァプール市職員(カルチャーリヴァプール部) 説明者 アリシア・スミス氏 ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニック ミリセント・ジョーンズ氏 《研修目的》 地方自治体を取り巻く情勢は、人口減少や少子高齢化など厳しさを 増している。都市と地方の格差が広がる中、国内でも文化芸術を生か した地域活性化の取り組みが盛んになっている。ヨーロッパでは、文 化芸術の持つ創造性を生かし、産業振興や地域の活性化などのまちづ くりを進める都市が「創造都市」と呼ばれ、都市戦略のモデルとして 注目されている。 今回の研修では、文化芸術が住民に浸透するまでの経緯と地域への 波及効果及び組織連携の重要性について検証する。 【リヴァプール市の概要】 リヴァプール市は、イギリス、イングランド北西 部 マ ー ジ ー サ イ ド 州 の 中 心 都 市 で 人 口 約 47 万 人 、面 積 約 118 ㎢ の 都 市 で あ る 。 ア イ リ ッ シ ュ 海 に 面 し 、 マ ー ジ ー 川 河 口 に 位 置 す る た め 18 世 紀 よ り 貿 易 港 大西洋 北海 として発展し、イギリス有数の工業都市・貿易都市 として栄えた。しかし、第二次世界大戦以降は産業 リヴァプール 構 造 の 変 化 か ら 急 激 に 衰 退 し 、1980 年 代 の 失 業 率 は ロンドン イギリス内で最高となるほか、毎年1万人の住民が 転出などした。その結果、人口は最盛期の半分程度 ケルト海 に落ち込み、街もスラム化するなどコミュニティも 崩壊し、多くの社会問題を抱える都市へと一転した。 し か し 、そ の 後 の 再 開 発 や 文 化 芸 術 を 活 用 し た 施 策 に よ り 、イ ギ リ ス の 人 口 が ほ ぼ 横 ば い で 推 移 す る 中 、10 年 前 に 比 べ て 人 口 が 5.5% の 伸 び を 示 す な ど 、現 在 で は 世 界 各 国 か ら 、文 化 芸 術 に よ る 都 市 再 生 を 成 し 遂 げ た 都 市 と し て 注 目 さ れ て いる。 【都市再生の経緯】 衰 退 の 一 途 を 辿 っ て い た 1960 年 代 か ら 70 年 代 に 、大 規 模 な ス ラ ム 浄 化 と 再 生 計 画 が 始 ま り 、 1980 年 代 に は ア ル バ ー ト ・ ド ッ ク を 中 心 と す る 港 湾 地 区 の 再 開 発 が 着 手 さ れ 、美 術 館 や 博 物 館 、シ ョ ッ プ 、レ ス ト ラ ン 、ホ テ ル等を集積したエンターテイメントの商業 施 設 が 誘 致 さ れ た 。し か し 、こ の 再 生 計 画 は 中央政府主導で実施されたものであったた アルバート・ドック め 、個 別 プ ロ ジ ェ ク ト 中 心 で 、市 な ど の 他 の プロジェクトとの連携に欠け、十分な成果を生み出すことができなかった。 そ こ で 、 リ ヴ ァ プ ー ル 市 は 、「 文 化 を 都 市 再 生 の エ ネ ル ギ ー に 使 お う 」 と 発 案 し 、住 民 を 巻 き 込 ん だ 文 化 芸 術 に よ る ま ち づ く り を 推 進 す る こ と で 、か つ て の 貿 易 や 産 業 都 市 か ら 芸 術 と 観 光 産 業 を 中 心 と し た 都 市 へ と 再 生 を 目 指 し た 。そ の 取 り 組 み の 中 で 代 表 的 な も の が 「 欧 州 文 化 首 都 2008 に 向 け た 誘 致 活 動 」 と 「 ロ イ ヤル・リヴァプール・フィルハーモニックの取り 組み」である。 【 欧 州 文 化 首 都 2008( European Capital of Culture) に 向 け た 誘 致 活 動 】 欧 州 文 化 首 都 と は 、欧 州 連 合 が 加 盟 国 の 都 市 を 選 定 し 、一 年 間 に わ た り 集 中 的 に 様 々 な 文 化 行 事 を 展 開 す る 事 業 で 、こ れ に 選 ば れ た 都 市 は 、文 化 的 な 発 展 は も と よ り 観 光 客 の 誘 引 な ど 経 済 効 果 も 大 き く 、都 市 再 生 に お い て も 大 き な 転 機 と な る。 欧 州 文 化 首 都 2008 へ は 多 く の 都 市 が 立 候 補 し 、 そ の 中 で リ ヴ ァ プ ー ル 市 は 、 こ れ ま で に 欧 州 文 化 首 都 に 選 ば れ た こ と の あ る 都 市 か ら 知 恵 を も ら い 、多 く の 地 元 芸 術 家 か ら の 意 見 を 聞 き 、住 民 全 体 を 巻 き 込 み な が ら 継 続 的 に 発 展 し て い く た めのプログラムを計画し、推進した。 リヴァプールが掲げたビジョンとして、次の7点が挙げられる。 (1)世界規模の芸術イベントの開催 (2)誰もが興味を持つ催しの実施 (3)都市の再構築 (4)都市のネガティブな要素への挑戦 (5)可能な限り多くの人を巻き込んだ取り組み (6)都市再生への貢献 (7)持続可能性 当 時 の リ ヴ ァ プ ー ル 市 は 、美 術 館 な ど の 芸 術 文 化 施 設 の ほ と ん ど が 中 心 部 に 集 中 し て お り 、郊 外 の 住 民 に と っ て は 関 係 な い も の と い う よ う な 意 識 や 雰 囲 気 が あ っ た 。住 民 が 一 丸 と な っ て 欧 州 文 化 首 都 を 誘 致 す る た め に は そ の よ う な 住 民 に も 参 加 し て も ら う 必 要 が あ っ た 。そ こ で 、地 域 住 民 が 集 う コ ミ ュ ニ テ ィ ガ ー デ ン を 作 っ た り 、ア ー テ ィ ス ト と 協 働 し て 、壊 さ れ た 住 宅 の ド ア を 壁 一 面 に 張 り 付 け た ア ー ト 作 品 を 展 示 す る 等 、住 民 を 巻 き 込 ん だ イ ベ ン ト を 行 っ た 。他 に も 、開 催 地 に 選 ば れ る た め に 、タ ク シ ー 運 転 手 が 、訪 れ た 観 光 客 に 対 し て 、リ ヴ ァ プ ー ル 市 の 素 晴 ら し さ を P R し た 。そ れ は 現 在 も 続 い て お り 、タ ク シ ー に 乗 る と 運 転 手 が リヴァプール市の素晴らしさを語ってくれる。 そ の 結 果 、リ ヴ ァ プ ー ル 市 は 、住 民 全 員 で 協 力 し て 取 り 組 ん だ こ と や 、住 民 と の 協 働 が 評 価 さ れ て 、 欧 州 文 化 首 都 2008 に 選 定 さ れ た 。 欧 州 文 化 首 都 2008 は 、 1 月 に 開 幕 し 、年 間 を 通 じ て 様 々 な イ ベ ン ト や プ ロ グ ラ ム が 実 施 さ れ て い る 。オ ー プ ニ ン グ で は 、元 ビ ー ト ル ズ の リ ン ゴ・ス タ ー が 出 演 す る な ど 800 人 の ア ー テ ィ ス ト が 野 外 コ ン サ ー ト を 行 い 、ま ち 中 で は「 ラ・マ シ ー ン 」と い う 巨 大 な ク モ を 出 現 さ せ る イ ベ ン ト を サ プ ラ イ ズ で 行 っ た り 、「 ジ ャ イ ア ン ト 」 と い う 巨 大 な 人形を使った演劇を3日間行うなど、住民を刺激するイベントを行った。 イベントの様子 イベントの様子(ジャイアント) 【 欧 州 文 化 首 都 2008 の 成 果 】 イベント数 362 回 ( 市 主 催 ) 参加者 1,000 万 人 以 上 経済効果 1,440 億 円 ( 8 億 ポ ン ド ) ※ 1 ポ ン ド = 180 円 で 換 算 メディア効果 360 億 円 ( 2 億 ポ ン ド ) ※ 1 ポ ン ド = 180 円 で 換 算 欧 州 文 化 首 都 2008 の 経 済 効 果 は 、大 き な も の で あ っ た 。し か し 最 大 の 成 果 は 、 リ ヴ ァ プ ー ル 市 が 、「 誘 致 に 向 け 1 つ の 方 向 に 向 か う 」 こ と を 目 標 に 、 8 年 間 プ ロ グ ラ ム を 継 続 さ せ る 中 で 住 民 の 意 識 改 革 を 行 い 、住 民 が 誇 れ る ま ち へ 変 化 さ せ ていったことであった。また、住民が一丸となって文化について考えることで、 自 分 た ち の 住 む ま ち の 魅 力 を 再 発 見 し 、外 へ 発 信 す る 原 動 力 へ と つ な が っ た 。欧 州 文 化 首 都 2008 終 了 後 も 事 業 は 継 続 さ れ て お り 、 今 後 も 都 市 再 生 へ の 取 組 は 続 くものと思われる。 【ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニック】 リ ヴ ァ プ ー ル 市 の 文 化 資 源 の 一 つ に 、音 楽 が あ る 。ロ イ ヤ ル・リ ヴ ァ プ ー ル ・ フ ィ ル ハ ー モ ニ ッ ク は 、イ ギ リ ス で 最 も 古 い 歴 史 を 持 つ オ ー ケ ス ト ラ の 一 つ と し て 知 ら れ 、 国 内 外 で 年 間 約 400 回 の 公 演 を 行 い 、 35 万 人 の 観 客 を 集 め て い る 。 ま た 、 1940 年 代 に 学 校 の 子 ど も た ち 向 け の コ ン サ ー ト を 開 催 し て 以 降 、 教 育 機 関 及 び 地 域 の た め の プ ロ グ ラ ム を 実 施 し 、近 年 で は リ ヴ ァ プ ー ル 市 の 都 市 再 生 プ ロジェクトに大きく貢献している。 【イン・ハーモニー】 イン・ハーモニーとは、子ども達へ 日 々 の 音 楽 を 通 じ て 、健 康・教 育・未 来 に 向 か っ て い く 力 を 、音 楽 を 通 じ て 発 展 さ せ る こ と を 目 的 と し て い る も の で 、特 に 犯 罪 率 が 高 く 、経 済 的 、社 会 的 に 恵 ま れない地域コミュニティを対象として 行われている。 具 体 的 に は 、毎 日 、フ ィ ル ハ ー モ ニ ッ 授業の様子 ク の プ ロ の 演 奏 家 が 学 校 を 訪 問 し 、子 ど も達だけでなく教師や給食調理員など の 学 校 関 係 者 全 員 を 対 象 に 、1 日 1 時 間 だけ楽器の演奏や合唱などの音楽を学 ん で も ら う 。小 学 校 1 年 生 の と き に 好 き な 楽 器 を 選 ば せ 、2 年 生 に な る と さ ら に も う ひ と つ 好 き な 楽 器 を 選 ば せ る 。そ し て 、色 々 な 楽 器 を 経 験 さ せ て 、最 終 的 に 1 つ の 楽 器 を 選 ば せ る 。楽 器 は フ ィ ル ハ コンサートの様子 ー モ ニ ッ ク で 準 備 し 、授 業 中 だ け 貸 し 出 す が 、高 校 生 に つ い て は 授 業 中 以 外 も 貸 し 出 し を 行 っ て い る 。そ し て 、楽 器 の 演 奏 を 学 ん だ 子 ど も 達 は 、フ ィ ル ハ ー モ ニ ッ ク の ホ ー ル や 学 校 、イ ギ リ ス 各 地 の コ ンサートホールでコンサートに参加する。 事 業 費 に つ い て は 、 年 間 40 万 ポ ン ド ( 7,200 万 円 ) か か り 、 イ ギ リ ス 政 府 や 医 療 施 設 な ど の さ ま ざ ま な 団 体 の 基 金 、フ ィ ル ハ ー モ ニ ッ ク の 寄 付 金 な ど で 運 営 さ れ て い る 。楽 器 に つ い て は 、事 業 に 賛 同 し た 楽 器 メ ー カ ー の ヤ マ ハ か ら 格 安 で 提供されている。 【イン・ハーモニーの成果】 子 ど も 達 は 、コ ン サ ー ト を 成 功 さ せ る こ と を 目 標 に 練 習 し 、人 前 で 発 表 す る こ と で「 自 信 」と「 向 上 心 」が 生 ま れ 、そ こ で 得 た 達 成 感 は 音 楽 に と ど ま ら ず 、他 の 科 目 へ の 取 り 組 み に も 波 及 し た 。実 際 に 、音 楽 以 外 の 科 目 の 成 績 も 向 上 し て い る 。教 師 は 、プ ロ の 演 奏 家 と 交 流 す る こ と で 、そ の 指 導 テ ク ニ ッ ク を 学 び 授 業 に 取 り 入 れ ら れ 、ま た 、子 ど も 達 と 互 い に 音 楽 に つ い て 教 え 合 う こ と で 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン も 取 れ る よ う に な っ た 。学 校 と し て も 、イ ギ リ ス の 第 三 者 に よ る 学 校 評価機関であるオフステッドの評価が向上している。地域の人々にも変化があ り 、今 ま で ク ラ シ ッ ク 音 楽 を 聴 い た こ と が な く 、ク ラ シ ッ ク 音 楽 は お 金 持 ち が 聞 く も の で 、自 分 た ち が コ ン サ ー ト に 行 っ て も 場 違 い だ と い っ た 感 覚 を 持 っ て い た 人 た ち が 、自 分 た ち の 子 ど も が ホ ー ル で 演 奏 す る こ と で 、身 近 な も の と し て 理 解 してもらえるようになった。 【リープ・イントゥー・ライブ・ミュージック】 リ ー プ・イ ン ト ゥ ー・ラ イ ブ・ミ ュ ー ジ ッ ク と は 、ク ラ シ ッ ク 音 楽 を 聴 い た こ と が な い 人 に 、コ ン サ ー ト の 無 料 チ ケ ッ ト の 配 布 を 行 う 事 業 で 、音 楽 を 通 し て 経 済 的・社 会 的 に 恵 まれていない人たちを活性化させることを 目的とし、実施されている。 気楽にコンサート会場に足を運んでもら う た め に 、コ ン サ ー ト 会 場 ま で の 無 料 送 迎 バ ス を 準 備 し 、無 料 の 食 べ 物 や 飲 み 物 の 提 供 を 行 っ て い る 。ま た 、服 装 を 気 に し て 行 け な い 人 、ホ ー ル へ の 行 き 方 が 分 か ら な い 人 も 多 い た め 、事 前 の 説 明 を 十 分 に 行 い 、演 奏 者 と 話 す時間を設けるなどの工夫も行っている。 説明の様子 【リープ・イントゥー・ライブ・ミュージックの成果】 こ の 事 業 に よ り 、 1 年 間 で 2011 枚 の 無 料 チ ケ ッ ト の 配 布 を 行 い 、 700 名 以 上 の 人 が 参 加 し 、参 加 者 の 半 数 以 上 が 、そ の 後 2 回 以 上 コ ン サ ー ト に 来 て い る 。こ れ は 、無 料 チ ケ ッ ト の 配 布 を 行 っ て も 人 が 集 ま ら な い イ ベ ン ト が 多 い 中 、か な り 高 い 参 加 率 と な っ て い る 。コ ン サ ー ト 会 場 に 初 め て 来 る 人 の 割 合 が 高 く な り 、中 国 人 や ポ ー ラ ン ド 人 な ど さ ま ざ ま な 人 種 の 市 民 の 方 が 来 る よ う に な っ た 。音 楽 に 触れることで生活にゆとりや潤いが生まれている。 【宮崎県での今後の取り組み】 宮 崎 県 の 文 化 と し て 、神 楽 な ど の 民 俗 芸 能 、昔 か ら 地 域 で 親 し ま れ て い る 祭 り や 行 事 、文 化 祭 な ど の 地 元 イ ベ ン ト 、日 向 神 話 な ど の 神 話 、西 都 原 古 墳 群 な ど 歴 史的な建造物、スポーツ文化、食文化などが考えられる。 文 化 は 、そ れ ぞ れ の 地 域 の 自 然 や 歴 史・風 土 な ど が 反 映 さ れ 、人 そ れ ぞ れ の 考 え 方 や 捉 え 方 が あ る が 、住 民 が 文 化 芸 術 に 親 し み 、よ り 身 近 な も の と し て 感 じ る た め に は 、様 々 な 文 化 を 見 て 学 ぶ と い っ た 文 化 芸 術 に 触 れ る 機 会 を 充 実 さ せ る こ と が 必 要 と な る 。「 宮 崎 の 文 化 を 考 え る 懇 親 会 」 で 行 わ れ た 文 化 に 対 す る ア ン ケ ートにおいては、特に子どもが文化に親しむ機会の充実が求められている。 文化に親しむために必要と思うこと 50.0% 子どもが文化に親しむ機会の充実 29.0% 文化に関する情報の発信 27.3% 公演・芸術祭などの文化事業の充実 25.3% 地域の伝統芸能や祭などの保存・継承 23.1% 劇場・博物館・美術館などの文化施設の充実 16.7% 歴史的な建物や遺跡の保存・継承 地域芸術家の育成 13.5% 芸術家や文化団体の活動支援 13.4% 特にない その他 わからない 0.0% 8.0% 3.6% 9.0% 20.0% 40.0% 60.0% 子 ど も 達 の 文 化 へ の 関 心 を 高 め る た め に は 、学 校 に お い て 演 劇 や 古 典 芸 能 を 鑑 賞 す る 機 会 の 提 供 、文 化 を 身 近 に 体 験 す る こ と が で き る 仕 組 み 、保 護 者 と 一 緒 に 気兼ねなく楽しめるコンサートなどの開催に努める必要がある。 【まとめ】 「 欧 州 文 化 首 都 2008 に 向 け た 誘 致 活 動 」、「 ロ イ ヤ ル ・ リ ヴ ァ プ ー ル ・ フ ィ ル ハ ー モ ニ ッ ク の 取 り 組 み 」、 こ の 2 つ の 事 業 に 共 通 す る こ と は 「 住 民 参 加 」 で あ り、成果として「住民の自信や誇りの向上」であった。 リ ヴ ァ プ ー ル 市 に お け る 都 市 の 再 生 は 、港 湾 地 区 や 市 街 地 の 再 開 発 、住 宅 対 策 、 教 育 施 策 な ど 様 々 な 事 業 や 施 策 が 実 施 さ れ た 結 果 で も あ り 、文 化 芸 術 の 活 用 だ け で 都 市 再 生 が 図 ら れ た わ け で は な い 。し か し な が ら 、「 欧 州 文 化 首 都 2008」の 成 功 や 、「 ロ イ ヤ ル ・ リ ヴ ァ プ ー ル ・ フ ィ ル ・ ハ ー モ ニ ー 」 の 取 り 組 み は 、 開 発 事 業 者 や 文 化 芸 術 関 係 者 だ け で な く 、リ ヴ ァ プ ー ル 市 民 の 意 識 を 変 化 さ せ た と い う 点 で 、都 市 の 再 生 に お い て 大 き な 役 割 を 果 た し た と 考 え ら れ る 。文 化 芸 術 が 住 民 に 浸 透 す る こ と に よ り 、住 民 が 自 分 の 住 む 町 に 対 し て「 自 信 」や「 誇 り 」を 取 り 戻 す き っ か け と な り 、リ ヴ ァ プ ー ル 市 は 、都 市 と し て の「 信 頼 」を 回 復 す る こ と ができた。 「 文 化 芸 術 に よ る ま ち づ く り 」を 推 進 し て い く 際 に 重 要 な こ と は 、い か に 文 化 芸術に馴染みのない住民に文化体験の場と発表の場を創出するかだと思われる。 ど ん な に 素 晴 ら し い 取 り 組 み で あ っ て も 、一 部 の 中 心 的 な 人 々 に よ る ま ち づ く り だ け で は 良 い 結 果 に な る と は 限 ら な い 。多 く の 地 域 住 民 が 参 加 し 、楽 し む こ と が 重 要 で あ り 、直 接 文 化 芸 術 に 触 れ る よ う な 機 会 を つ く る 仕 掛 け が 必 要 だ と 感 じ た 。 文 化 は 、感 動 や 刺 激 を 直 接 体 験 す る こ と で 豊 か な 人 間 性 や 創 造 力 を 育 く み 、文 化 活 動 へ の 参 加 を 通 じ て 感 性 を 磨 き 、他 者 と の 共 感 を 育 む こ と に よ っ て 自 己 を 形 成 し 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 や 表 現 力 を 伸 ば す こ と が で き る 。そ れ に よ り 、 「自 信」や地域への「誇り」が生まれ、地域が活性化していくと考えられる。 今 後 の 宮 崎 県 内 の 文 化・芸 術 を 発 展 さ せ る 上 で 、高 齢 化 に よ る 指 導 者 不 足 、厳 し い 財 政 状 況 な ど の 問 題 が あ る が 、こ れ ま で 以 上 に 選 択 と 集 中 を 行 い 、必 要 な 施 策 に 絞 っ て 、子 ど も 達 が 文 化 を 身 近 に 体 験 す る こ と が 出 来 る よ う な 仕 組 み づ く り を行いながら、住民全体を巻き込むような取り組みが必要だと感じた。 アリシア・スミス氏と記念撮影 研修テーマ② 『官民パートナーシップを基盤としたまちづくり』 研修日 平 成 26 年 10 月 17 日 ( 金 ) 研修先 イギリス 説明者 CityCo Manchester マンチェスター市 パートナーシップディレクター アレクサンドラ・キング氏 オールド・トラッフォード・スタジアム カリキュラムマネージャー ローラ・フリント氏 《研修目的》 我 が 国 の 地 方 都 市 に お い て は 、少 子 高 齢 化 に よ り 現 場 で 活 躍 し て く れ る は ず の 15- 64 歳 の 年 代 は 徐 々 に 減 少 し 、 65 歳 以 上 の 高 齢 者 が 増 加 し て い る 。 こ の こ と か ら 、今 後 、更 に 税 の 収 入 が 減 る 一 方 で 年 金 や 介 護 福 祉 な ど の 社 会 保 障 費 の 負 担 が 大 き く な っ て い く こ と が 予 想 さ れ 、「 ま ち の こ と は 誰 か に お 任 せ 」 で は な く 、 「 ま ち の こ と は 自 分 た ち で マ ネ ジ メ ン ト す る 」と い う 意 識 が ま す ま す 重 要 に な っ てくる。 イ ギ リ ス で は 、タ ウ ン セ ン タ ー マ ネ ジ メ ン ト や そ こ に 所 属 す る タ ウ ン セ ン タ ー マ ネ ー ジ ャ ー が ま ち づ く り に 参 画 す る こ と で 、企 業 や 住 民 の 意 見 を 吸 い 上 げ て 行 政 と の 調 整 を 行 い 、ま ち づ く り の 再 生 を 官 民 共 同 で サ ポ ー ト し て い る 。そ の 中 で も成果を上げているマンチェスター市の持続可能なまちづくりを進める取り組 み や 、マ ン チ ェ ス タ ー 市 を 本 拠 地 と す る 世 界 的 な サ ッ カ ー チ ー ム で あ る「 マ ン チ ェ ス タ ー ・ ユ ナ イ テ ッ ド FC」 が 地 域 に 何 を も た ら し て い る か を 検 証 す る 。 【マンチェスター市の概要】 マンチェスター市は、イングランドの北西 部に位置し、北部イングランドを代表する都 市 で あ る 。1853 年 に 市 制 が 布 か れ 、面 積 は 115. 65k ㎡ 。人 口 は 約 51 万 人 と イ ギ リ ス 国 内 で 7 番目の都市であるが、近郊を含む都市圏人口 は 約 220 万 人 で あ り 、 同 国 第 3 位 で あ る 。 マ ン チ ェ ス タ ー 市 は 、綿 工 業 な ど が 発 展 し 、 産業革命において中心的役割を果たしたこと で知られている。 20 世 紀 に 入 り 、 産 業 構 造 の 変 化 に よ る 綿 工 業 の 低 迷 や 第 二 次 世 界 大 戦 の 影 響 に よ り 、マ ン チ ェ ス タ ー 市 は 衰 退 へ の 道 を 辿 る が 、金 融 機 関 や 研 究 施 設 の ま ち へ と 変 貌 を 遂 げ る 。こ の こ と に よ り 、今 日 で も 商 業 や 教 育 、 文 化 面 で イ ギ リ ス 北 部 の 中 心 と な り 、 2007 年 の 世 論 調 査 に よ る と 、マ ン チ ェ ス タ ー 市 は バ ー ミ ン ガ ム 市 を 凌 ぎ 、イ ギ リ ス 第 2 の 都 市 と し て 評価されるに至っている。 【イギリスのタウンセンターマネジメント】 イ ギ リ ス で は 、 1990 年 代 か ら 中 心 市 街 地 の 荒 廃 に 危 機 感 を 持 っ た 地 方 都 市 に お い て 、大 手 小 売 店 な ど が 中 心 と な り 、タ ウ ン セ ン タ ー マ ネ ジ メ ン ト( 以 下“ TCM” と 記 載 )に 取 り 組 み 、官 民 パ ー ト ナ ー シ ッ プ を 基 盤 と し た 地 域 主 体 型 の 取 り 組 み を行っている。 行 政 が 一 般 的 な 公 共 サ ー ビ ス や イ ン フ ラ 整 備 を 行 う 一 方 で 、中 心 市 街 地 へ の ア クセスの向上や集客力の向上に向けてイベントの実施やパンフレットの作成な ど 、マ ー ケ テ ィ ン グ や プ ロ モ ー シ ョ ン 活 動 、モ ー ル の 環 境 整 備 な ど 、幅 広 く 行 政 ができないような付加価値の高いサービスを提供している。 現 在 、イ ギ リ ス 国 内 に は 400 以 上 も の TCM が 存 在 す る と 言 わ れ て お り 、ア メ リ カ の BID( Business Improvement District )( ※ ) を 参 考 と し た 会 社 組 織 型 に 移 行 し て い る 。 そ し て 、 TCM は 、「 変 化 へ の 対 応 を マ ネ ジ メ ン ト す る こ と 」 が 役 割 と考えられている。 ※ BID( Business Improvement District ) ⇒ 特 定 の エ リ ア に 不 動 産 を 所 有 す る オ ー ナ ー に 対 し 、固 定 資 産 税 に 一 定 額 を 上 乗 せ し 、そ の 資 金 で そ の ま ち の 質 が 向 上 す る よ う な 活 動 を す る 制 度 の ことでリノベーションにも使われる。 ◆ TCM 活 動 に 必 要 な 要 素 ◆ TCM 活 動 に 期 待 さ れ る 効 果 ①官民パートナーシップに基づく組織 ・中心市街地へのアクセス道路の改善 ②ビジョンと戦略の策定 ・中心市街地の環境改善とオープンスペースの拡大 ③事業計画と行動計画の策定 ・街路の清掃 ④資金調達 ・レジャークリエーションエンターテイメント活動の振興 ⑤評価指標 ・犯罪防止と安全性の向上 ・歩行者環境の改善 ・標識、看板の設置や情報提供活動の改善 ・公共交通機関を含めたアクセシビリティの改善 など 【 CityCo Manchester】 1996 年 6 月 に 起 き た 爆 弾 テ ロ か ら の 再 生 を 目 的 に 、 同 年 に 設 立 さ れ た 。 行 政 と 民 間 が 一 体 と な っ て 復 興 計 画 を 作 成 し 、ま ち の 再 生 に 向 け て 動 き 始 め た こ と が 、 「 CityCo Manchester( 以 下 “ CityCo” と 記 載 )」 設 立 の 発 端 と な っ て い る 。 マ ン チ ェ ス タ ー 市 の 中 心 市 街 地 が 再 開 発 へ と 動 き 始 め た こ と で 、公 共 の 土 地 を 売 却 し オ フ ィ ス ビ ル を 誘 致 し た り 、古 い 建 物 の リ ノ ベ ー シ ョ ン や 公 共 交 通 網 の 整 備などが行われたが、同時にこれらのまちの復興過程で新たな課題も出てきた。 こ れ ら の 課 題 を 解 決 す る た め に 、マ ン チ ェ ス タ ー 市 や 民 間 企 業 と が パ ー ト ナ ー シ ッ プ を 組 み 、雇 用 を 創 出 す る よ う な 新 ビ ジ ネ ス の 誘 致 や 空 き 店 舗 対 策 な ど 、さ ま ざ ま な 課 題 の 解 決 に あ た っ て い る 。当 初 は 、マ ン チ ェ ス タ ー 市 の 職 員 を CityCo に 派 遣 し て い た が 、現 在 で は 、地 方 へ の 補 助 金 の 削 減 な ど を 理 由 に 市 職 員 の 派 遣 は な く 、 CityCo の 社 員 17 名 で の 運 営 を 行 っ て い る 。 【産業革命後の衰退、爆弾テロからの都市再生】 1996 年 の 爆 弾 テ ロ が 発 端 と な り 、 多 く の マ ン チ ェ ス タ ー 市 民 が 再 生 し な け れ ばいけないという世論が高まり、政府により「マーケティングマンチェスター」 と い う 組 織 が 設 立 さ れ 、多 く の 民 間 企 業 や 投 資 会 社 が 一 緒 に な っ て 都 市 再 生 へ 向 け て 始 動 し た わ け だ が 、マ ン チ ェ ス タ ー 市 は 、長 期 的 に ま ち に 豊 か さ を 戻 し て く れる新ビジネスを誘致することが大きな課題であった。 マ ン チ ェ ス タ ー 市 に は 、再 生 、開 発 に 関する数々のパートナーシップがあり、 ス ピ ニ ン グ フ ィ ー ル ド 、ピ カ デ リ ー と い う2つの開発の中心になる地域がある。 も と も と 公 共 の 土 地 だ っ た が 、先 述 の よ う に 、マ ン チ ェ ス タ ー 市 と 民 間 企 業 が 一 緒になってその土地を売却して大企業 を 誘 致 し 、ハ イ ク オ リ テ ィ な オ フ ィ ス ビ ルを建設するというマスタープランを 策 定 、実 施 し た 。も ち ろ ん 、公 共 の 土 地 を売却することに反対意見もあったが、 マンチェスター市の経済状況を考慮す ると選択の余地はなかった。 ま た 、マ ン チ ェ ス タ ー 市 は 、大 学 な ど が多いことから学生の数が非常に多く、 雇 用 を 創 出 し 、学 生 達 に ま ち に 残 っ て も 現在のピカデリー地区 らうことも大きな課題となっている。 こ の 課 題 を 解 決 す る た め 、 CityCo が 、 大 学 の リ サ ー チ を 行 っ て い る 企 業 と 協 働 で 事 業 を 進 め 、マ ン チ ェ ス タ ー 市 の 大 学 内 に あ る サ イ エ ン ス パ ー ク( 研 究 者 が 集 ま る 場 所 )に 留 ま る よ う に 、学 生 へ の 相 談 や 支 援 を 行 っ た 。そ れ に よ り 、こ れ まではケンブリッジやオックスフォードなど学園都市に研究者 が流出していた が 、マ ン チ ェ ス タ ー 市 の 研 究 施 設 に 留 ま る よ う に な り 、最 近 で は 、膝 の 関 節 の 研 究 に 成 功 す る な ど 学 生 を 留 め た こ と に よ る 成 果 も あ っ た 。ま た 、サ イ エ ン ス パ ー ク に は 、土 地 開 発 を 行 う 企 業 に と っ て も 役 立 つ 部 門 も あ り 、ま ち の 活 性 化 に 役 立 っている。 【インフラ整備とまちの活性化】 マ ン チ ェ ス タ ー 市 は 、大 き な イ ン フ ラ 整 備 プ ロ ジ ェ ク ト も 継 続 的 に 行 っ て い る 。新 し い ト ラ ム( 路 面 電 車 )線 路 の 建 設 、新 し い 鉄 道 、公 共 交 通 を 優 先 的 に 開 発 し て い る 。 こ れ は 、住 民 に と っ て 中 心 地 に 仕 事 に 行 っ たり遊びに行ったりするために非常に大 事なことである。 また、マンチェスター市は、ヘルスケア リサーチの大きな中心であり、お年寄りも 市街地を走行するトラム まちの中心にアクセスがしやすいような交通網を整備することも大事である。 イ ギ リ ス で 交 通 網 を 新 し く 敷 く と き に は 、「 コ ン サ ル テ ー シ ョ ン ピ リ オ ン 」 と い う 住 民 か ら の 相 談 、意 見 を 集 約 す る 機 関 が あ る 。新 し い ト ラ ム を 敷 く 場 合 な ど 、 住 民 の 意 見 を 集 約 す る 期 間 を 設 け な け れ ば な ら な い 。集 約 期 間 は 6 ~ 8 ヶ 月 が 普 通であるが、意見の内容によっては、集約期間が延長されることもある。 現 在 、ま ち の 多 く の 場 所 で 道 路 工 事 が 行 わ れ て お り 、マ ン チ ェ ス タ ー 市 の 市 街 地 を 車 で 通 り 抜 け る の は 非 常 に 難 し い 。こ の 工 事はあと4~5年かかると見積もってい る。 こ の よ う な イ ン フ ラ 整 備 を 行 う 間 、ま ち の 活 性 化 を 継 続・持 続 で き る よ う に す る こ と が 、 CityCo の 重 要 な 役 割 の ひ と つ で あ る。 インフラ整備の様子 例 え ば 、個 人 が マ ン チ ェ ス タ ー 市 で ビ ジ ネ ス を 始 め よ う と す る 場 合 、中 心 市 街 地 に オ フ ィ ス を 構 え よ う と す る と 、工 事 が 多 く 道 路 も 狭 い た め 、車 は 使 え ず 非 常 に 不 便 で あ る 。そ れ に 比 べ て 、郊 外 の ビ ジ ネ ス パ ー ク に オ フ ィ ス を 構 え れ ば 、工 事 も 少 な く 、車 で 通 勤 で き 、駐 車 場 も 無 料 で あ る 。飲 食 店 は あ ま り な い が 昼 食 は デ リ バ リ ー で き る 。こ の よ う に 中 心 市 街 地 に オ フ ィ ス を 構 え る こ と に 消 極 的 な 事 業 主 に 対 し て 、数 年 後 に は 工 事 が 完 了 し 交 通 の 便 が よ く な る こ と 等 、中 心 市 街 地 に オ フ ィ ス を 構 え る メ リ ッ ト を PR し た り し て い る 。 ま た 、 細 か い 役 割 だ と 、 ま ちの外からデリバリーで荷物を持ってくるトラックが中心市街地に入れないと い う ト ラ ブ ル が 発 生 し た 場 合 に 、そ の ト ラ ブ ル が す ぐ に 解 決 す る よ う に 動 い た り もしている。 イ ン フ ラ 整 備 の 間 で あ っ て も 、マ ン チ ェ ス タ ー 市 の 経 済 を さ ら に 活 性 化 し て い か な け れ ば な ら な い 。特 に 、商 店 街 が 客 足 を 失 っ て は い け な い と い う こ と が あ る 。 CityCo で は 、 ま ち に 「 フ ォ ー ル フ ッ ト カ メ ラ 」 と い う コ ン ピ ュ ー タ - で 人 の 往 来 を 分 析 で き る カ メ ラ を 設 置 し 、い つ 、ど の 時 間 帯 に ど の よ う な 人 が 街 中 を 往 来 し て い る か な ど を 記 録 、分 析 し 、ど の 時 期 に ど の よ う な イ ベ ン ト を 行 う こ と が 効 果的かを検討した上でイベントを開催している。 ま た 、こ の カ メ ラ は 、ま ち の イ ベ ン ト だ け で は な く 、観 光 面 に お い て も 活 用 さ れ て い る 。ど の 時 期 に 、ど こ の 国 の 観 光 客 が 多 い か な ど を 検 証 し 、そ の 国 と パ ー ト ナ ー を 組 み 、ホ テ ル の 準 備 や 多 国 語 の パ ン フ レ ッ ト の 作 成 、カ ル チ ャ ー ト レ ー ニングなど、観光面の戦略にも繋げている。 マ ン チ ェ ス タ ー 市 の 活 性 化 の 取 り 組 み は 、た く さ ん の デ ー タ に 基 づ い た 緻 密 に 計画された戦略的なものであると言える。 【 CityCo に よ る パ ー ト ナ ー シ ッ プ を 基 盤 と し た ま ち づ く り 】 CityCo は 、 主 に パ ー ト ナ ー シ ッ プ を 組 む 会 員 の 会 費 で 運 営 さ れ て お り 、 マ ン チ ェ ス タ ー 市 も 会 員 と な り 、会 費 を 払 う こ と で パ ー ト ナ ー シ ッ プ に 参 加 し て い る 。 他 に も 、多 国 籍 企 業 や バ ー ク レ ー 銀 行 の よ う な 大 き な 企 業 や 、個 人 で 経 営 を 行 っ て い る よ う な バ ー や レ ス ト ラ ン 、ま た 、土 地 開 発 を 行 っ て い る 企 業 や 中 心 市 街 地 に土地を所有している人も会費を払って参加している。 会 費 は 、 企 業 の 規 模 等 で 決 ま っ て お り 、 一 番 低 い 会 費 で 200 ポ ン ド ( 36,000 円 )、 大 き な 企 業 だ と 何 千 ポ ン ド も の 会 費 を 負 担 し て い る 企 業 も あ る 。 運 営 資 金 の 割 合 は 、 マ ン チ ェ ス タ ー 市 が 全 体 の 7 % 、 民 間 企 業 な ど が 残 り の 93% を 負 担 し て い る 。 CityCo が 公 共 的 な 会 社 で あ る こ と 、 会 費 で 賄 っ て い る 運 営 資 金 も 公 共 性 が 高 い こ と か ら 、 CityCo の 運 営 に つ い て 2 つ の 委 員 会 を 設 け 、 会 計 は 全 て 外 部 監 査 を 受 け 公 表 し て い る 。ま た 、そ こ で の 評 価 を 分 析 し 、改 善 し て 次 の 計 画 へと繋げるように取り組んでいる。 多 く の 民 間 企 業 が CityCo で 行 う プ ロ ジ ェ ク ト に 賛 同 す る 理 由 は 、 こ の プ ロ ジ ェ ク ト が 、自 治 体 か ら 独 立 し て 民 間 企 業 と パ ー ト ナ ー シ ッ プ を 組 ん で 行 い 、そ れ が マ ン チ ェ ス タ ー 市 を 再 生 し 、経 済 的 な も の だ け で は な く 生 活 の 質 の 向 上 や 社 会 的な交流にまで繋がると理解したからであった 。 ま た 、 CityCo に は 、 民 間 企 業 同 士 を 繋 げ る 役 割 も あ る 。 例 え ば 、 ビ ジ ネ ス ビ ク ト リ ッ ク と い う 地 域 で 、360 の 企 業 が 1 つ に な っ て 、そ れ ぞ れ 5 年 間 資 金 を 拠 出 し て ビ ジ ネ ス を 進 め て い く プ ラ ン が あ り 、 そ の ビ ジ ネ ス プ ラ ン を CityCo が 策 定 し て い る 。こ の ビ ジ ネ ス ビ ク ト リ ッ ク で は 、年 間 100 万 ポ ン ド( 約 1 億 8 千 万 円 ) の 利 益 が 生 ま れ て お り 、 そ の 利 益 は 、 出 資 す る 企 業 に 還 元 せ ず 、 CityCo が 使 用 で き る こ と に な っ て い る 。こ の こ と に よ り 、持 続 可 能 な 都 市 の 再 生 を 可 能 に している。 CityCo の 存 在 に よ り 、ま ち に 関 係 す る 企 業 や 人 が 繋 が っ て い き 、ま た 一 方 で 、 従 来 は 街 に 来 な か っ た 方 も 街 に 来 る よ う に な っ た 。再 開 発 を 通 し て ま ち を 活 性 化 さ せ る Cityco の 存 在 は 、民 間 企 業 同 士 や 自 治 体 な ど と パ ー ト ナ ー シ ッ プ を 結 び 、 経 済 的 な 豊 か さ と い う だ け で は な く 、生 活 の 質 の 向 上 や 社 会 的 な 交 流 に よ り ま ち を楽しいものにするという効果があるということを感じた。 【世界で最も有名なサッカークラブとスタジアム】 世 界 屈 指 の サ ッ カ ー ク ラ ブ で あ り 、プ レ ミ ア リ ー グ に 所 属 し て い る「 マ ン チ ェ ス タ ー ・ ユ ナ イ テ ッ ド FC」 は 、 マ ン チ ェ ス タ ー 市 を 本 拠 地 と し て い る 。 こ の こ と は 、ま ち の 知 名 度 を 上 げ る 要 因 の 一 つ と な っ て お り 、ま た 、マ ン チ ェ ス タ ー ・ ユ ナ イ テ ッ ド FC の ホ ー ム ス タ ジ ア ム「 オ ー ル ド・ト ラ ッ フ ォ ー ド・ス タ ジ ア ム 」 は 、 別 名 「 シ ア タ ー ・ オ ブ ・ ド リ ー ム ス ( 夢 の 劇 場 )」 と も 呼 ば れ 、 世 界 有 数 の スタジアムの一つともなっている。 「 オ ー ル ド・ト ラ ッ フ ォ ー ド・ス タ ジ ア ム 」は 、1910 年 に 開 場 し 、104 年 の 歴 史 が あ る 。 約 76,000 人 の 収 容 客 数 を 持 ち 、 イ ギ リ ス の ス タ ジ ア ム の 中 で 、 ウ ェ ン ブ リ ー・ス タ ジ ア ム 、ミ レ ニ ア ム・ス タ ジ ア ム 、ハ ム デ ン・パ ー ク と 並 び「 UEFA ス タ ジ ア ム カ テ ゴ リ ー 4 ス タ ジ ア ム 」に 指 定 さ れ て い る 世 界 有 数 の ス タ ジ ア ム で ある。 ス タ ジ ア ム は 、 マ ン チ ェ ス タ ー ・ ユ ナ イ テ ッ ド FC の 所 有 物 と な っ て い る 。 サ ッ カ ー の 試 合 以 外 に 、ラ グ ビ ー の 試 合 や コ ン サ ー ト な ど で も 使 用 さ れ て お り 、年 間 で 、 ク リ ス マ ス の 日 を 除 く 364 日 間 稼 動 し て い る 。 ク ラ ブ の 運 営 や ス タ ジ ア ム の 管 理 は 、行 政 の 補 助 は な く 、全 て 民 間 の 力 で 行 わ れ て お り 、 2,000 人 の 雇 用 の 場 と な っ て い る ほ か 、 隣 接 す る 博 物 館 に 年 間 20 万 人の観光客が来場する等、多大な経済効果を生み出している。 スタジアムの外観・内観 【プロサッカーチームが地域にもたらすもの】 マ ン チ ェ ス タ ー ・ ユ ナ イ テ ッ ド FC と 地 域 を 結 び つ け る 役 割 を 果 た し て い る の が 、「 マ ン チ ェ ス タ ー ・ ユ ナ イ テ ッ ド ・ フ ァ ウ ン デ ー シ ョ ン 」 と い う チ ャ リ テ ィ 団体である。 こ の 団 体 は 、2006 年 に マ ン チ ェ ス タ ー・ユ ナ イ テ ッ ド FC が 設 立 し 、ク ラ ブ と 全く別の組織である。行政からの補助金やクラブからの資金で運営されており、 活動内容はさまざまである。 例えば、マンチェスター市で最も貧し い地域に出向いて、食生活の教育やサッ カー教室の無料開催、貧困な地域出身の 子供の就職活動のサポートなどを行って いる。また、クラブに所属する選手は、 契約する際に1週間に3時間のコミュニ ティワークの時間をつくることを条件と しており、ファウンデーションのスタッ フやボランティアと一緒になってコミ ュニティワークに参加している。 ファンウデーションの取り組みで 子ども達と一緒に作成した作品 マ ン チ ェ ス タ ー 市 の 中 で も 、特 に 経 済 的 に 恵 ま れ て い な い 地 域 の 住 民 や サ ッ カ ー を 普 段 見 な い 人 と 、サ ッ カ ー 選 手 や チ ー ム が 交 流 す る こ と で 、こ れ ま で マ ン チ ェスター市の住民であることを意識しておらず将来の目的も見失っている人と、 新 た な コ ミ ュ ニ テ ィ の 意 識 付 け が で き 、一 人 で は な い こ と を 再 認 識 す る と い う 効 果をもたらしている。 【まとめ】 近 年 は 、日 本 で も 、住 民 や 企 業 の ま ち づ く り の 参 加 の 重 要 性 は 認 識 さ れ 、宮 崎 県 内 に お い て も 、ま ち づ く り 協 議 会 や ま ち づ く り セ ン タ ー 、さ ら に は NPO へ の 補 助 や 委 託 、イ ベ ン ト の 共 催 な ど 様 々 な 形 態 の 官 民 パ ー ト ナ ー シ ッ プ を 見 る こ と が で き る 。以 前 の 日 本 の ま ち づ く り は 、 「 官 」と「 民 」と が 別 々 で 活 動 し て き た が 、 最 近 で は 、農 商 工 連 携 や 住 民 ワ ー ク シ ョ ッ プ に よ る ま ち づ く り が 盛 ん に 行 わ れ て おり、民間と行政とでの活性化策も策定されている。 今回の視察では、マンチェスター市と企業、マンチェスター・ユナイテッド FC と 地 域 住 民 の パ ー ト ナ ー シ ッ プ に よ る 活 動 や 「 フ ォ ー ル フ ッ ト カ メ ラ 」 と い う コ ン ピ ュ ー タ - を 使 っ た マ ー ケ テ ィ ン グ な ど 、さ ま ざ ま な ま ち づ く り の 取 り 組 みを学ぶことができた。 一 番 重 要 だ と 感 じ た の が 、 CityCo と い う 組 織 の 存 在 で あ る 。 パ ー ト ナ ー シ ッ プ に よ る ビ ジ ネ ス 誘 致 や 空 き 店 舗 対 策 だ け で な く 、イ ン フ ラ 整 備 の 間 も 中 心 市 街 地 が 衰 退 し な い よ う に 、イ ベ ン ト を 実 施 し た り 、工 事 で ま ち の 中 心 部 の オ フ ィ ス に 入 れ な い ト ラ ッ ク を す ぐ に 入 れ る よ う に 解 決 す る な ど 、ま ち づ く り の 細 か な 問 題 ま で 解 決 に あ た っ て い る 。 こ の CityCo の 存 在 が 、 マ ン チ ェ ス タ ー 市 の 再 生 、 地域活性化の大きな要因だと言える。 マ ン チ ェ ス タ ー 市 で は 、 CityCo や そ こ に 所 属 す る タ ウ ン セ ン タ ー マ ネ ー ジ ャ ー が ま ち づ く り に 参 画 し 、企 業 や 住 民 の 意 見 を 吸 い 上 げ て 行 政 と の 調 整 を 行 う 役 割 を 担 い 、官 民 共 同 で サ ポ ー ト を 行 っ て い た 。そ の 結 果 、マ ン チ ェ ス タ ー 市 に 住 み 続 け る 人 や 企 業 が 、ま ち づ く り の 主 役 で あ る こ と を 認 識 し 、持 続 可 能 な も の へ と結びついているのではないかと感じた。 マンチェスター市におけるタウンセンターマネジメントの役割を担う組織を、 宮 崎 県 に す ぐ に 持 っ て く る こ と は 、な か な か 容 易 で は な い 。し か し 、タ ウ ン セ ン タ ー マ ネ ー ジ ャ ー の よ う に 、住 民 を 繋 げ る 役 割 を 担 い 、関 係 者 間 の 意 思 疎 通 を 円 滑に進めることができる人材の育成や確保の必要性を感じた。 行 政 の 部 門 で は 、分 野 に 関 係 な く 調 整 機 能 を 果 た す「 協 働 で 一 緒 に 行 う 課 」を 設 置 、又 は 機 能 を 強 化 し 、地 域 住 民 や 団 体 等 が 協 働 で ま ち づ く り に 参 画 し や す い よ う に す る 。 ま た 、「 欧 州 文 化 首 都 」 の よ う に 、 ま ち づ く り の 取 り 組 み を ポ イ ン ト化し、表彰することも官民一体となったまちづくりに結びつくかもしれない。 イ ギ リ ス で は 、PTA 活 動 な ど を 通 し て の 寄 付 文 化 が 発 展 し て お り 、民 間 か ら の 投 資 が 、中 心 市 街 地 の 発 展 に 繋 が っ て い る と 感 じ た 。こ の こ と か ら 、PTA 活 動 な ど の 寄 付 文 化 を 醸 成 し な が ら 、県 内 外 か ら の 寄 付 の 参 加 を 促 進 し 、宮 崎 県 の 発 展 性 と 継 続 性 の み を 基 準 と し た 、使 途 が 自 由 な 基 金 の 整 備 と 活 用 す る こ と も 、今 後 の宮崎県の発展につながるものだと考える。 今 後 も 、マ ン チ ェ ス タ ー 市 の よ う に 、宮 崎 県 内 で も 、よ り 多 く の パ ー ト ナ ー シ ッ プ に よ る ま ち づ く り を 行 い 、地 域 の 住 民 や 企 業 が ま ち づ く り の 主 役 と な り 存 在 し 続 け 、宮 崎 県 が 持 続 し な が ら 発 展 し て い け る よ う 引 き 続 き 研 究 を 行 っ て い き た い。 CityCo オ フ ィ ス に て オールド・トラッフォード・スタジアムにて [参 考 文 献 ] 「海外におけるタウンマネジメント組織に関する調査」 ( 2009 年 経済産業省中心市街地活性化室) 研修テーマ③ 『アグリツーリズモを活用したまちおこしついて』 研修日 平 成 26 年 10 月 19 日 ( 日 ) 研修先 イタリア共和国 トスカーナ州フィレンツェ フィエーゾレ市 対応者 FATTRIA DI MAIANO 農 園 フランチェスコ・ミアリ氏 《研修目的》 中 山 間 地 域 で は 近 年 、農 業 従 事 者 の 高 齢 化 と 後 継 者 不 足 に よ り 農 業 就 業 人 口 が 減 少 の 一 途 に あ る こ と か ら 、農 地 の 遊 休 化 や 農 業 施 設 の 荒 廃 が 進 み 、本 来 の 農 村 に あ る 生 態 系 や 景 観 、農 地 が 有 す る 多 面 的 な 機 能 維 持 、保 全 が 困 難 に な り つ つ あ る。 そ ん な 中 、1992( 平 成 4)年 に 農 林 水 産 省 よ り 農 業 と 観 光 を 結 び 付 け る「 グ リ ーンツーリズム」という言葉が提唱され、農村地域における人々の交流や自然、 文 化 を 楽 し む 滞 在 型 の 余 暇 活 動 に よ る 地 域 活 性 の 方 策 と し て 、取 り 組 み が 進 ん で いる。 しかし、本県においては、同施策が上手く活用されていないのが現状である。 中 山 間 地 域 に お け る 農 村 活 性 化 の カ ギ は 、人 々 が 農 村 を 訪 れ 、自 然 に 触 れ 、農 村 ならではの魅力を感じてもらうことではないかと考える。 イ タ リ ア で は 、「 コ ム ー ネ 」 と よ ば れ る 最 小 自 治 体 単 位 の 中 で 、 各 地 域 の 特 性 を 生 か し な が ら 地 域 再 生 を 行 っ て い る 。そ の 取 り 組 み の 一 つ で あ る「 ア グ リ ツ ー リズモ」を活用した農村地域での滞在型リゾートのあり方を検証する。 【フィエーゾレ市の概要】 フ ィ エ ー ゾ レ 市 は 、 人 口 1 万 4,278 人 の イ タ リ ア・トスカーナ州フィレンツェのコムーネ(最小 自 治 体 単 位 ) の 一 つ 。 フ ィ レ ン ツ ェ か ら 約 9 km 離 れ た 標 高 295m の 小 高 い 丘 の 上 に あ り 、 緑 と 新 鮮 な空気であふれている保養地で、盆地にあるフィ レ ン ツ ェ 全 体 を 一 望 で き る 。古 代 ロ ー マ の 浴 場 跡 、 劇場跡など保存状態の良い遺跡が残っていること で 知 ら れ て い る が 、 19 世 紀 ご ろ か ら 、 特 に イ ギ リ ス 人 た ち に 好 ま れ 、現 在 で は 、丘 の 斜 面 に 多 く の ヴ ィ ッ ラ( 古 代 ロ ー マ の 上 流 階 級の人々が建てた家)が立ち並び、別荘地としての名残を残している。 【イタリアのアグリツーリズモ】 ア グ リ ツ ー リ ズ モ と は 、“ Agricultura ”( ア グ リ ク ル ト ゥ ー ラ = 農 業 ) と Turismo( ト ゥ リ ズ モ = 観 光 ) と い う 2 つ の 言 葉 を 繋 げ た 造 語 で 、 農 場 が 営 む 旅 行 者 向 け の 宿 泊 施 設 の こ と を 指 す 。 1985 年 に は 、 世 界 初 と な る 農 村 観 光 を 定 め た 法 律( 通 称 ア グ リ ツ ー リ ズ モ 法 )が 成 立 し た 。こ の 法 律 に よ れ ば 、ア グ リ ツ ー リ ズ モ と し て 満 た さ な く て は な ら な い 条 件 と し て 、観 光 客 を 受 け 入 れ る 農 家 あ る い は 農 業 法 人 で 、宿 泊 施 設 、レ ス ト ラ ン を 営 業 し 、農 業 体 験 、文 化 活 動 、農 場 で 生産された農産物を提供することなどがある。 1990 年 代 初 め ま で の ア グ リ ツ ー リ ズ モ は 、 観 光 客 の 自 炊 に よ る 長 期 滞 在 が 中 心 で 、通 常 1 週 間 以 上 の 滞 在 の 場 合 に 限 っ て い た が 、宿 泊 客 の ニ ー ズ の 変 化 に 応 え 、現 在 で は 短 期 滞 在 の 受 け 入 れ を 始 め る な ど サ ー ビ ス の 形 態 を 多 様 化 さ せ て い る 。客 の 平 均 滞 在 日 数 は 短 く な っ た も の の 、経 営 者 に と っ て は 、宿 泊 施 設 の 営 業 以 上 に 、料 理 や ワ イ ン な ど の 食 事 の 提 供 や オ リ ー ブ な ど の 農 産 品 の 販 売 に 力 を 入 れるきっかけとなり、農業関連サービスが豊富になっている。 【アグリツーリズモを始めた経緯とこれからの農業】 訪 問 し た 農 園 は 、 1991 年 か ら 有 機 農 法 を 行 っ て お り 、 毎 年 補 助 金 が 支 給 さ れ て い る ( 生 産 箇 所 や 作 物 に よ り 金 額 が 変 わ る が 、 1 ヘ ク タ ー ル あ た り 年 間 300 ユ ー ロ の 補 助 金 を 受 給 )。 し か し な が ら 、補 助 金 だ け で の 農 業 の 確 立 は 難 し く 、ま た 、立 地 条 件 の 悪 さ や オ リ ー ブ と い う 収 益 の 上 が ら な い 作 物 の 栽 培 を 行 っ て い る こ と か ら 、早 く に 経 営 難 に 陥 っ た 。し か し 、農 場 内 の 多 く の 建 物 を 生 か し 農 業 と 宿 泊 と を 組 み 合 わ せ た ア グ リ ツ ー リ ズ モ を 行 う 中 で 、高 品 質 な 製 品 や サ ー ビ ス を 提 供 す る こ と に よ っ て 顧客および農業製品の販売方法を拡大させていった。 こ れ か ら の イ タ リ ア の 農 業 で は 、以 下 の 3 つ を 重 視 す る 必 要 が あ る と 考 え ら れ ていた。 1.高品質なものを追求していくこと 2.その土地の特性を生かしたものを作っていくこと 3.総合的な農業を行っていくこと (アグリツーリズモ、農産物の加工品など) イ タ リ ア 国 土 の 3 / 4 が 丘 陵 地 帯 、山 岳 地 帯 で あ る こ と か ら 、高 品 質 な も の を 製 造 す る こ と に よ っ て 収 益 を 上 げ て い く こ と を 、現 在 も 、そ し て 将 来 も 考 え て い かなくてはならないようだ。 【有機農法による経営戦略】 害 虫 被 害 な ど の リ ス ク が 高 い 有 機 農 法 を 始 め た 理 由 に つ い て 、ミ ア リ 氏 は 次 の ように答えた。 「オーガニックというとイデオロギー的な選択と思われがちだが、 私 た ち は 、そ う で は な く 農 業 運 営 で の 企 業 的 な 戦 略 と し て 選 択 し て い る 。つ ま り 、 良 く 考 え 抜 い た 上 で の 経 営 方 法 で あ る 」。 現 に 、有 機 農 法 は 、近 年 、世 界 中 で 注 目 さ れ 販 売 製 品 の 付 加 価 値 の 一 つ と な っ て い る 。ミ ア リ 氏 は 、生 産 か ら 加 工 に よ る 6 次 産 業 化 に よ り 、さ ら に 付 加 価 値 を 上げる活動を進めている。 【家族運営による運営とさまざまな活動】 ミ ア リ 氏 の 経 営 す る マ イ ア ー ノ 農 園 は 、働 く 人 の 数 は 30 人 で 、主 に 農 園 で の オ リ ー ブ 生 産 、レ ス ト ラ ン 、宿 泊 施 設 ( ベ ッ ド 数 80)、農 産 物 販 売 の シ ョ ッ プ 経 営 を 行 っ て い る 。 運 営 に は 家 族 も 携 わ っ て お り 、ミ ア リ 氏 は 、そ れ が 非 常 に 重 要 だ と 話 し て い た 。何 世 紀 に も わ た っ て 家 族 で 稼 業 を 継 続 さ せ て い る こ と で 、来 訪 者 が 、こ の 農 園 を「 家 族 の 農 園 」 として認知する。家族で経営している姿を見せることが、 来訪者が満足する要因の一つとなってい るという。 ア ク テ ィ ビ テ ィ と し て は 、農 園 の 見 学 や オ リ ー ブ オ イ ル の 試 飲 、市 内 の ホ テ ル と 提 携 し た ナ イ ト サ フ ァ リ な ど の ツ ア ー 、子 ど も向けの農業体験などの教育的な活動が あ る 。最 近 で は 、ワ イ ン セ ラ ー を 活 用 し た 「 ワ イ ン セ ラ ー ツ ア ー 」、日 帰 り 利 用 の「 デ ー ト ツ ア ー 」、 夜 の ウ ォ ー キ ン グ な ど も あ り 、観 光 客 の ニ ー ズ に 合 わ せ さ ま ざ ま な 工 FATTRIA DI MAIANO レ ス ト ラ ン の 様 子 夫を行っている。 農 産 物 の 販 売 に つ い て は 、イ ン タ ー ネ ッ ト の 普 及 に よ り 、広 告 費 用 を か け ず に 来 訪 者 に よ る 口 コ ミ 、ブ ロ グ 等 で 情 報 が 発 信 さ れ 、評 判 が 高 ま っ て い る 。同 様 に 、 宅配のシステムも普及し、少量の商品でも世界中に届けることが可能となった。 日 本 か ら の 宿 泊 客 は ま だ 見 ら れ な い が 、ま ず 、オ リ ー ブ オ イ ル な ど の 製 品 を 知 っ て も ら う こ と で 将 来 的 に 農 園 に 足 を 運 ん で も ら え る の で は な い か と い う 、製 品 販売からの波及効果を期待しているようだった。 こ の 施 設 の 売 り 上 げ の 内 訳 に つ い て 訊 ね る と 、1 位 は レ ス ト ラ ン 、2 位 が 農 産 物 の 売 り 上 げ 、3 位 が 宿 泊 施 設 と の こ と だ っ た 。た だ 、売 り 上 げ が 1 位 だ か ら と い っ て レ ス ト ラ ン が 運 営 の 柱 で は な く 、す べ て が 組 み 合 わ さ っ て 経 営 が 成 り 立 っ て い る と 強 調 し て い た 。つ ま り 、売 り 上 げ が 低 迷 す る か ら と 言 っ て 、い ず れ か の 分野を簡単に切り捨てられるものではないということだ。 【農村景観と行政との連携】 アグリツーリズモの成功の要因の 一 つ に 、美 し い 農 村 景 観 も あ げ ら れ る 。 大型リゾートホテルなどの乱立によ る 景 観 破 壊 防 止 、歴 史 風 致 を 守 る た め の 外 観 維 持 な ど 、建 物 建 築 を 規 制 す る 法 律 が あ る 。そ れ は 、住 民 の 合 意 が 図 ら れ て い る も の と 思 っ て い た が 、実 際 には難しい点もあるようだ。 イ タ リ ア で は 、官 僚 主 義 が 問 題 と な FATTRIA DI MAIANO か ら 観 え る 農 園 風 景 っ て お り 、行 政 の 一 方 的 な 規 則 に 対 し 衝突や軋轢があるとのことだった。農村景観の価値について、ミアリ氏いわく、 長 い 農 業 の 営 み の 中 で で き た 農 村 風 景 や 、農 業 を 営 ん で い る 場 で 収 益 を 得 ら れ る ことに価値があるのだという。 し か し 、 行 政 は 、 一 方 的 に 30 年 前 の 農 村 風 景 に 戻 す よ う な 行 動 を と る よ う に 規 制 を 始 め た 。こ れ に よ り 、新 し い 機 械 の 導 入 、新 し い 農 園 の 経 営 許 可 な ど が 非 常 に 難 し く な っ て い る 。こ の た め 、現 在 、行 政 へ こ の よ う な 法 的 な プ ロ セ ス を 簡 略化してもらう交渉をしているとのことだった。 【オリーブオイル「ラウデミオ」誕生のストーリー】 この地域で生産されるオリーブオイル の中で、最高品質のものが「ラウデミオ」 で あ る 。 こ れ は 、 1987 年 に ト ス カ ー ナ 中 部 の 20 の 生 産 会 社 に よ り 立 ち 上 げ ら れ た プ ロ ジ ェ ク ト で あ る 。こ の プ ロ ジ ェ ク ト が ス タ ー ト す る 前 年 の 1986 年 、 寒 気 団 に よ っ て オ リ ー ブ の 木 が 壊 滅 状 態 と な り 、オ リ ーブオイルの生産ができなくなるという 瓶詰めされたオリーブオイル 被 害 を 受 け 、ゼ ロ か ら の や り 直 し を 余 儀 な く さ れ た 。そ の 際 、よ り 高 品 質 な も の を 求 め て い こ う と 、製 造 業 者 の カ ン パ ニ ー をつくったのが始まりである。 「 ラ ウ デ ミ オ 」 は 、 2008 年 発 売 の ア メ リ カ の ワ イ ン 専 門 誌 「 ワ イ ン ス ペ ク タ ー 」で 、世 界 最 高 の オ リ ー ブ オ イ ル で あ る と 賞 賛 さ れ た 。こ れ は 、こ の プ ロ ジ ェ ク ト に 対 す る 評 価 で あ る と 受 け 取 る こ と が で き 、「 ラ ウ デ ミ オ 」 と い う 名 前 が 広 く認知されたことは、非常に大きな成功だった。 【オリーブオイル製造工程】 収 穫 実は手摘みやシートを敷き、ゆすったり たたき落として集める 選別・洗浄 粉 砕 葉や枝を取り除き、水で洗浄する 新鮮なうちに機械で擦りつぶし、ペース ト状にする。 撹 拌 ペースト状のものを撹拌し、オイルの風 味をより豊かにする。 搾り・遠心分離 遠心分離機で果汁を搾り、さらに果汁を オイルと水に分ける バージンオリーブオイル 以 上 の 工 程 で 製 造 さ れ 、一 部 高 品 質 な も の は「 エ キ ス ト ラ バ ー ジ ン オ イ ル 」と し て販売されている。 オ リ ー ブ の 実 は 、 50% が 水 、 46% が 果 実 で 、 残 り の 4% だ け が オ イ ル に な る 。 オリーブの実は、水分が多く傷つきやすいので、長期保存することができない。 良 質 の オ リ ー ブ オ イ ル を 作 る た め に は 、実 を 収 穫 し て か ら 6 ~ 8 時 間 で オ イ ル を 搾 る こ と が 望 ま し い 。ま た 、高 温( 26℃ 以 上 )に な る と 香 り が 無 く な る た め 、温 度の管理も重要となってくる。 ※エクストラバージンオリーブオイル「ラウデ ミオ」は、ミアリ氏の農園の中心的な製品とな っ て お り 、 1t の オ イ ル か ら 150k g 程 度 し か 採 れ な い 。オ リ ー ブ の 収 穫 時 期 も 、11 月 1~ 2 週 目 に 限 定 し て い る ( 年 に よ っ て 多 少 前 後 す る )。 ラウデミオ 【スローライフ志向の高まり】 近 年 、世 界 で は 、ス ロ ー な ラ イ フ ス タ イ ル を 求 め る 人 々 が 増 え て き て い る 。日 本 で も 、仕 事 以 外 の 時 間( 趣 味 、家 庭 な ど )を 大 切 に し た い と い う 人 た ち が 増 え つ つ あ る 。ま た 、理 想 の 暮 ら し や 居 住 地 が 都 会 か ら 地 方 へ と 移 っ て き て い る 傾 向 も 見 ら れ る 。実 際 、効 率 化・機 械 化・ス ピ ー ド 化 に よ り ゆ と り が な く な っ て き た 現 代 社 会 で 、サ ラ リ ー マ ン を 辞 め 、田 舎 で ゆ っ く り と 暮 ら す と い う 人 も 増 え て き て い る 。こ れ は 、人 々 の 価 値 観 が「 フ ァ ス ト 」か ら「 ス ロ ー 」へ 変 化 し て き て い るものとだと考えられる。 イタリアには、スローフードのキーワード で あ る 「 質 」「 多 様 性 」「 感 性 」「 楽 し み 」 を ま ち づ く り に も 応 用 し よ う と い う 「 Citta Slow ( ス ロ ー シ テ ィ ー )」運 動 が あ る が 、現 代 人 が 求めているものは、このキーワードに集約さ れ て い る の で は な い だ ろ う か と 思 う 。「 フ ァ ス ト」と「スロー」を対比した表をみると、近 年の地域づくりが、スローな方向で模索され ていることが良く分かる。この背景には、や スローシティー運動のロゴ は り 、人 々 の ニ ー ズ の 変 化 が あ る の だ と 思 う 。 ◎スローライフ・スロームーブメントの概念 現 代 社 会 に お け る 大 量 生 産・大 量 消 費 の 下 で 成 り 立 つ 、急 か さ れ た 生 活 に 対 す る疑問から生まれた思想で、地産地消や歩行型社会を目指す生活様式のこと。 ◎スローフードとファストフード フ ァ ス ト フ ー ド は 、大 量 生 産・大 量 消 費 の 社 会 で 、短 時 間 で 作 ら れ る ま た は 短 時 間 で 食 べ ら れ る 食 品・食 事 を 指 す 。ス ロ ー フ ー ド は 、こ れ に 対 立 し た 概 念 で 、 そ の 土 地 の 伝 統 的 食 文 化 や 食 材 、調 理 法 を 見 直 そ う と い う イ タ リ ア 発 祥 の 運 動 である。 ◎ファストとスローの違い ファスト スロー ファストフード 外食 スローフード インスタント食品 内食 オーガニック食品 カジュアル 衣 自 然 素 材 、フ ァ ッ シ ョ ン 文 化 の多様化 近代合理主義建築 建築 伝統建築再生、町並み再生、 町 家・古 民 家 レ ス ト ラ ン 、民 家再生 高 投 入( 高 収 穫 量 )・高 収 入 の 農業 集約農業 大量生産・大量消費・大量流 の 環 境 保 全 型 農 業 、有 機 農 業 工業 通 機能主義・土地利用の純化、 低 投 入 ( 低 収 穫 量 )・ 中 収 入 多品種少量生産、職人企業、 産業地域ネットワーク 都市 工業都市、世界都市 歴 史 都 市 再 生 、ミ ク ス ト・ユ ー ス( 混 合 用 途 )、脱 車 社 会 、 創造都市 マスツーリズム 観光 オルタナティブツーリズム、 ア グ リ ツ ー リ ズ モ 、エ コ ツ ー リズム 【中山間地域の滞在型観光】 前 述 の と お り 、人 々 の 生 活 、観 光 に 対 す る 価 値 観 は 明 ら か に 変 化 し て い る 。宮 崎 県 は 、イ ン フ ラ 整 備 の 遅 れ か ら「 陸 の 孤 島 」と も 呼 ば れ 、他 県 に 比 べ 発 展 が 遅 れ て き た が 、こ の ス ロ ー 志 向 こ そ が 最 大 の チ ャ ン ス に な る の で は な い か 。宮 崎 県 内 の 中 山 間 地 域 に は 、グ ロ ー バ ル 化 の 影 響 を 受 け ず に 残 っ て い る 農 村 の 原 風 景 が あ り 、そ れ ぞ れ の 個 性 、固 有 の 文 化 、独 自 の 生 活 の ス タ イ ル な ど 、現 代 人 が 求 め て い る も の が 数 多 く あ る よ う に 思 え る 。生 活 の 価 値 観 が 転 換 し た よ う に 、観 光 に お い て も 、都 市 観 光 か ら 農 村 観 光 へ の ニ ー ズ の 高 ま り が あ る 。ス ロ ー 観 光 の 成 功 例 で あ る ア グ リ ツ ー リ ズ モ に は 、地 域 資 源 を 最 大 限 に 活 用 し た 滞 在 型 観 光 の 成 功 のヒントがあると感じた。 【まとめ】 現 在 、日 本 が 取 り 組 ん で い る「 グ リ ー ン ツ ー リ ズ ム 」と 、こ の 施 設 で 体 験 し た 「 ア グ リ ツ ー リ ズ モ 」に は 違 い が あ っ た 。 日 本 の グ リ ー ン ツ ー リ ズ ム は 、農 業 体 験 を 通 じ た 教 育 的 な 意 味 合 い が 強 い 。例 え ば 、収 穫 体 験 な ど を 通 し て 食 の 大 切 さ を 学 習 す る「 食 育 」が あ る 。実 際 に 土 に 触 れ 作 業 を す る こ と は 、農 業 の 実 態 を 理 解してもらううえで良い取り組みだと 各部屋にはキッチンが備えられている 思 う が 、農 村 的 価 値 観 を 理 解 で き て い る 人 に 対 象 を 限 定 し て い る 傾 向 に あ る 。ス ロ ー 志 向 の 人 々 が 増 え た と は い え 、な か な か 気 軽 に 踏 み 込 め な い の も 現 実 で は な い だ ろ う か 。 ま た 、「 教 育 的 」 な イ メ ー ジは、 「楽しむ」 「 く つ ろ ぐ 」と い っ た 観 光 の 重 要 な 要 素 に 結 び つ き に く い こ と も 、 な か な か 普 及 が 進 ま な い 理 由 の ひ と つ だ と 考 え ら れ は し な い か 。私 た ち が 体 験 し たイタリアの農家民泊は、それとは違う観点のものであった。 アグリツーリズモでは、美しい農村景観の中 に農家民宿が点在しており、それらは、もとも と納屋や家畜小屋であったものが改築され、清 潔に維持されている。さらに、主人の細やかな 心遣いが随所に感じられるために、純粋に宿泊 施設としてみても、都市のホテルなどよりも快 適であたたかみを感じる。食事に関しても、地 元で採れたものを地元の調理法で食べることが できるというのは、圧倒的な安心感と特別感が ある。まさに、訪問者のニーズ・要望に絶妙に 客室の様子 対応したものであった。 宮 崎 県 の 取 り 組 む グ リ ー ン ツ ー リ ズ ム で も 、こ う し た 手 法 を 取 り 入 れ て も よ い の で は な い か と 思 う 。実 際 、田 舎 な ら で は の 美 し い 景 色 、そ し て 、そ こ で し か 味 わ え な い 食・酒 を 提 供 す る こ と で 、地 域 の 素 晴 ら し さ を 堪 能 し て も ら え る と 身 を も っ て 感 じ る こ と が で き た 。地 域 に 根 差 し た 農 家 が 行 う サ ー ビ ス だ か ら こ そ 、来 訪 者 に と っ て は 、そ こ に 本 物 の 価 値 が あ る と 感 じ る こ と が で き 、い っ そ う の 満 足 に つ な が っ た の だ と 思 う 。我 々 が 研 修 し た 農 園 で は 、長 年 、有 機 農 法 に も 取 り 組 ん で お り 、な お さ ら 特 別 感 を 感 じ る こ と が で き た 。休 暇 を 楽 し む 観 光 で あ っ て も 、 随 所 に「 農 」 「 自 然 」を 感 じ ら れ る こ と は 、 「食 育」と言えるのではないかと思った。 客室の改装費などの初期投資や、衛生法な どの許可取得など、さまざまな課題はあると 思うが、本県にも、ぜひこうした滞在型観光 が増えるとよいと思う。例えば、ゴルフレジ ャーとの組み合わせも有り得る。また、温泉 がなければ、薪で沸かした「五右衛門風呂」 を体験してもらい、薪ストーブで暖をとって もらう。レジャーを楽しむ人もいれば、のん びりとした農村での“何もしない”休暇を満 喫 す る 人 も い る 。 要 は 、「 す で に あ る も の 」 を うまく活用し、誰もが気軽に楽しめる工夫を していくことが重要である。 夕食の料理 グリーンツーリズムは、本物を味わえると いう価値を創出すること、表向きの豪華さで は な く 、日 常 的 な 生 活 の 豊 か さ を 地 域 の 魅 力 と し て 提 供 す る こ と が 大 切 な の で は ないかと思う。 週 末 に 、田 舎 で そ の 土 地 な ら で は の 美 味 し い も の を 食 べ 、ゆ っ く り と 過 ご す 事 は 「 フ ァ ッ シ ョ ナ ブ ル 」 で あ り 、「 プ レ ミ ア 感 」 を も 感 じ さ せ る 。 発 展 が 遅 れ て きた宮崎県だからこその滞在型観光の成功があるのではないかと感じた。 農園の主人と一緒に [参 考 文 献 ] 「なぜイタリアの村は美しく元気なのか」学芸出版社 研修テーマ④ 『廃棄物行政について』 研修日 平 成 26 年 10 月 20 日 ( 月 ) 研修先 イタリア共和国 対応者 Publiambiente S.P.A 社 トスカーナ州フィレンツェ 施設管理担当 ヴェロニカ・カンデッリ氏 広報担当 ブルーリ・アンビエッラ氏 《研修目的》 イ タ リ ア は 、 世 界 で 最 も MBT( Mechanical Biological Treatment) 処 理 が 進 ん だ 国 で あ る 。MBT 処 理 と は 、ご み を 破 砕・選 別 し て リ サ イ ク ル を 行 っ た の ち に 、 生 物 処 理 を 行 う も の の 総 称 で あ り 、RDF と い う 固 形 燃 料 を 製 造 し た り 、嫌 気 発 酵 に よ り メ タ ン ガ ス を 回 収 し 発 電 し た り な ど 、 MBT 処 理 に も 様 々 な 方 式 が あ る 。 宮 崎 県 で は 、ほ と ん ど の 生 ご み や 剪 定 枝 な ど の 有 機 性 廃 棄 物 は 焼 却 さ れ て い る の が 現 状 で あ る 。MBT 処 理 で は 、こ れ ら の 有 機 性 廃 棄 物 か ら メ タ ン ガ ス や 肥 料 を 得 る こ と が で き 、最 終 処 分 す る 廃 棄 物 量 を 減 ら す こ と が で き る 。循 環 型 社 会 の 形 成 を 進 め る た め の 一 つ の 手 法 と し て 、 MBT 処 理 は 有 用 で あ る と 考 え ら れ る た め 、 MBT 処 理 施 設 の 視 察 を 行 っ た 。 【フィレンツェの概要】 フ ィ レ ン ツ ェ は 、イ タ リ ア 共 和 国 中 部 に あ る 都 市 で 、ト ス カ ー ナ 州 の 州 都 、フ ィ レ ン ツ ェ 県 の 県 都 で あ る 。面 積 は 102.41m 2 、人 口 は 36 万 人 で 、市 街 中 心 部 は 、 「 フ ィ レ ン ツ ェ 歴 史 地 区 」 と し て ユ ネ ス コ の 世 界 遺 産 に 登 録 さ れ て お り 、 1986 年 に は 欧 州 文 化 首 都 に 選 ば れ た 。中 世 に は 毛 織 物 業 と 金 融 業 で 栄 え 、フ ィ レ ン ツ ェ 共 和 国 と し て ト ス カ ー ナ の 大 部 分 を 支 配 し た 。 15 世 紀 の フ ィ レ ン ツ ェ は 、 ル ネ サ ン ス の 文 化 的 な 中 心 地 と な っ た 。ト ス カ ー ナ の 農 業 の 中 心 地 と し て の 性 格 が 強 く 、若 干 の 工 業 は あ る が 、経 済 の 主 要 部 分 は 観 光 業 で あ る 。中 心 地 に は 、サ ン タ・マ リ ア・デ ル・フ ィ オ ー レ 大 聖 堂 、ウ フ ィ ツ ィ 美 術 館 、ア ル ノ 川 に か か る ベ ッキオ橋などがある。 【分別及び収集】 視察先においては、二種類の分別方法を採用していた。 一 つ は 、個 別 訪 問 収 集 で あ る 。こ れ は 、各 家 庭 、企 業 に 収 集 箱 を 設 置 し 、そ れ を 収 集 日 に 出 し て お い て も ら い 回 収 す る も の で あ る 。収 集 箱 ご と に 、生 分 解 性 ご み 、プ ラ ス チ ッ ク 、金 属 、そ の 他( 非 分 別 )に 分 別 す る 。こ の 方 法 で の 実 績 で は 、 90% が 分 別 ご み で 、 残 り 10% が 非 分 別 ご み で あ っ た 。 もう一つの方法は、路上においた大きな収集ボックスで回収するものである。 数 百 メ ー ト ル お き に 設 置 さ れ た 路 上 の 大 き な 収 集 ボ ッ ク ス に 、周 辺 地 区 に 住 む 住 民 が ご み を 種 類 ご と に 投 入 す る よ う に な っ て お り 、こ の 方 法 で は 、ご み を 自 ら 運 ば な け れ ば な ら な い 代 わ り に 、好 き な 時 間 に ご み を 捨 て ら れ る と い う メ リ ッ ト が あ る 。 し か し 、 こ の 方 法 で の 分 別 割 合 は 50% で あ り 、 個 別 訪 問 収 集 よ り 低 く な っていた。 日 本 に お い て も 、非 常 に 分 別 が 悪 か っ た マ ン シ ョ ン の ご み 集 積 場 に 、ご み を 吊 る せ る フ ッ ク を 部 屋 の 数 だ け 設 置 し 、各 戸 に 割 り 当 て た と こ ろ 、劇 的 に 分 別 が 改 善 さ れ た 事 例 が あ る 。こ の こ と か ら も 、ご み を 集 積 場 に 出 し た ら 後 は 知 ら な い と い う の で は な く 、ご み を 出 し た 後 も 責 任 を 感 じ る よ う な シ ス テ ム が 重 要 で あ る と 感じた。 上 記 二 つ の 方 法 は 、地 区 に よ り 決 め ら れ て い た 。ま た 、収 集 箱 や 収 集 ボ ッ ク ス に 入 れ る こ と の で き な い 粗 大 ご み や 廃 家 電 な ど は 、別 途 エ コ ロ ジ ー ス テ ー シ ョ ン で回収されていた。 路上の収集ボックス フィレンツェ旧市街の集積所。 地 下 ピ ッ ト に 溜 め る よ う に な っ て い る が 、一 部 溢 れているものもあった。 【処理】 視 察 先 は 、 フ ィ レ ン ツ ェ 県 モ ン テ ス ペ ル ト リ 市 、 ピ ス ト イ ア 市 等 の 42 万 人 を 対 象 と し た 一 般 廃 棄 物 処 理 施 設( MBT 処 理 施 設 )で あ り 、そ の 中 で も 、家 庭 か ら 排 出 さ れ る 生 ご み 、 剪 定 枝 の 処 理 施 設 で あ っ た 。 14 年 前 に 建 設 さ れ 、 建 設 費 は 1500 万 ユ ー ロ ( 1 ユ ー ロ 140 円 で 換 算 し た 場 合 21 億 円 ) で あ っ た 。 搬 入 さ れ た 生 ご み な ど の 有 機 性 廃 棄 物 は 、最 初 に 破 砕 機 に か け ら れ 、ビ ニ ー ル や異物が除去される。 選 別 さ れ た 有 機 性 廃 棄 物 は 、 長 さ 27 メ ー ト ル 、 幅 5.5 メ ー ト ル 、 高 さ 5 メ ー ト ル あ る 地 下 の バ イ オ ト ン ネ ル に 投 入 さ れ て い た 。 バ イ オ ト ン ネ ル は 、 24 箇 所 設 置 さ れ て い る が 、一 つ の バ イ オ ト ン ネ ル に は 、200 ト ン の 有 機 性 廃 棄 物 が 投 入 される。 バ イ オ ト ン ネ ル で は 、 14 日 間 か け て 有 機 物 の 分 解 を 行 っ た 後 、 プ ラ ス チ ッ ク 片 な ど の 異 物 を 除 去 し 、 再 び 、 14 日 間 か け て ゆ っ く り と 有 機 物 の 分 解 が 行 わ れ て い た 。こ の 過 程 に お い て 、有 機 物 は 、微 生 物 の 作 用 に よ り 、よ り 分 子 構 造 の 小 さ な 有 機 物 へ と 分 解 さ れ る 。微 生 物 の 活 性 を 保 つ た め に 、下 か ら 空 気 を 注 入 し た り 、 散 水 量 や 圧 力 、 温 度 管 理 な ど の 15 の パ ラ メ ー タ が 中 央 監 視 室 で モ ニ タ リ ン グされ、厳密に管理されていた。 バ イ オ ト ン ネ ル 内 に 散 水 す る 水 は 、ご み か ら 出 た 水 分 を 集 め た も の と 隣 接 地 に 建 設 さ れ て い る 最 終 処 分 場 か ら 出 る 浸 出 水 の 処 理 水 が 再 利 用 さ れ て お り 、水 道 水 利用量を節約していた。 28 日 間 か け て 分 解 さ れ た 有 機 性 廃 棄 物 は 、 さ ら に ふ る い に か け ら れ 、 プ ラ ス チック片やガラス片を取り除いたのち堆肥となっていた。 ま た 、非 分 別 廃 棄 物 は 、破 砕 後 、回 転 式 ふ る い に か け ら れ 、大 き な も の は 最 終 処分場で埋立処分され、小さなものは専用のバイオトンネルへ送られていた。 非 分 別 ご み は 、21 日 間 か け て 発 酵 に よ り 有 機 物 が 分 解 さ れ て い た が 、こ れ は 、 肥 料 製 造 の た め で は な く 、隣 接 す る 最 終 処 分 場 で 覆 土 と し て 利 用 す る た め に 行 わ れていた。 《ごみ処理フロー》 ご み 搬 入( 有 機 性 廃 棄 物 8.5 万 t/年 ) ( 剪 定 枝 1.5 万 t/年 ) ( 非 分 別 ご み 3.5 万 t/年 ) 有機性廃棄物と非分別廃棄物をそれぞれ破砕、選別 有機性廃棄物 非分別廃棄物 小さな塊 好気発酵 好気発酵 肥 料 ( 1.6 万 t/年 ) 処 分 場( 覆 土 ) 大きな塊 処分場 処理施設全景 受け入れ施設内部 【堆肥化】 生 産 さ れ た 堆 肥 は 、 1 ト ン 当 た り 2 ユ ー ロ か ら 5 ユ ー ロ ( 1 ユ ー ロ 140 円 で 換 算 し た 場 合 280 円 か ら 700 円 )で 肥 料 業 者 へ 販 売 さ れ て い た が 、近 隣 の 農 家 に 対 し て は 無 償 で 配 布 さ れ て い た 。肥 料 業 者 に 対 す る 価 格 も 、市 販 の 肥 料 と 比 べ れ ば 非 常 に 安 価 で あ る が 、こ れ は 、堆 肥 を 販 売 す る こ と が 目 的 で は な く 、有 機 性 廃 棄 物を処理することが主目的であるためであった。肥料として利用されるために、 廃 棄 物 処 理 が 滞 ら ず 、ま た 、近 隣 農 地 の 貧 栄 養 化 を 防 ぎ 、有 機 炭 素 を 供 給 す る 結 果となっていた。 視 察 先 で は 、年 間 8.5 万 ト ン の 有 機 性 廃 棄 物 、年 間 1.5 万 ト ン の 剪 定 枝 及 び 年 間 3.5 万 ト ン の 非 分 別 廃 棄 物 を 取 り 扱 い 、 年 間 1.5~ 1.6 万 ト ン の 堆 肥 を 生 産 し ていた。 持ち込まれた剪定枝 非 分 別 ご み( 金 属 、プ ラ ス チ ッ ク な ど 雑 多 な 成 分 が混合している) 【脱臭】 堆 肥 化 施 設 で は 、往 々 に し て 臭 気 に よ る 公 害 が 問 題 と な る 。視 察 先 で は 、施 設 内 の 空 気 を 吸 引 す る こ と に よ り 常 に 負 圧 に 保 ち 、外 部 へ 臭 気 が 漏 れ な い よ う に し て い た 。捕 集 し た 臭 気 は 、ウ ッ ド チ ッ プ と 土 壌 で 作 ら れ た バ イ オ フ ィ ル タ ー と 呼 ば れ て い る 土 壌 脱 臭 棟 へ 送 ら れ て い た 。こ こ で 、硫 化 水 素 や メ チ ル メ ル カ プ タ ン な ど の 臭 気 成 分 は 、土 壌 中 の 微 生 物 に よ り 二 酸 化 炭 素 な ど の 無 臭 な 気 体 へ と 分 解 され、大気へ放出されていた。 実 際 に 土 壌 脱 臭 棟 の 中 に 入 っ て み た と こ ろ 、微 生 物 の 生 物 反 応 に よ る 熱 と 散 水 に よ る 水 蒸 気 に よ り 高 温 多 湿 な 環 境 で あ っ た が 、臭 気 は 感 じ ら れ な か っ た 。施 設 自 体 が 周 辺 に 人 家 の な い 丘 陵 地 帯 に 位 置 し て い る こ と も あ り 、臭 気 苦 情 は 発 生 し ない環境であった。 バイオフィルター(脱臭棟) ウッドチップに散水している 【教育及び啓発】 分 別 や 処 理 の 流 れ に つ い て パ ン フ レ ッ ト を 作 成 す る と と も に 、子 供 向 け の 漫 画 冊 子 も 作 成 し て い た 。さ ら に 、小 学 校 な ど に 職 員 が 訪 問 し 、環 境 教 育 を 行 っ て い た 。子 供 に 教 え れ ば 、子 供 が 家 庭 で 分 別 す る よ う に な る 。そ う す れ ば 、家 族 が 変 わ る と の こ と で あ っ た 。ま た 、個 別 収 集 方 式 を 採 用 す る 際 に は 、地 元 住 民 へ の 説 明会を何度も行ったとのことであった。 【発酵方式】 視 察 先 で は 、有 機 物 の 分 解 手 法 と し て 、好 気 発 酵 を 利 用 し て い た 。こ れ は 、自 然 界 の 森 で 木 や 果 実 が 朽 ち て い く の と 同 じ 原 理 で あ り 、シ ス テ ム が シ ン プ ル で 大 規模な処理施設を必要としない。 し か し 、好 気 発 酵 で は 二 酸 化 炭 素 排 出 量 削 減 に よ る 地 球 温 暖 化 防 止 、メ タ ン ガ ス 利 用 に よ る バ イ オ マ ス 発 電 な ど が 達 成 で き な い た め 、視 察 先 に お い て も 、将 来 的にはメタン発酵を行う嫌気発酵に移行したいとの要望を持っていた。これは、 有 機 物 を 嫌 気 条 件 下( 空 気 が 存 在 し な い 状 態 )で 、メ タ ン 生 産 菌 に よ る メ タ ン 発 酵により分解させるものである。 好気発酵と嫌気発酵(メタン発酵)の特徴を以下に示す。 項 目 好気発酵(視察先施設) 嫌気発酵(メタン発酵) 分 解 機 C 6 H 1 2 O 6 + 6O 2 → 6CO 2 + 6H 2 O C 6 H 1 2 O 6 → 3CH 4 + 3CO 2 構 分解速度が速い 分解速度が遅い 処理物を肥料として利用できる 処理物を肥料として利用できる 処理施設が小規模でよい メタン回収による発電が可能 施設がシンプルであり、維持管 減容化率が高い (糖類) 長所 理が容易 比較的専門性の低い技術者でも 維持管理が可能 炭素源は二酸化炭素に分解され メ タ ン 発 酵 槽 、メ タ ン 回 収・精 製 るのみであり、発電などの有効 設 備 、保 管 及 び 発 電 施 設 な ど が 必 利用ができない 要 と な り 、処 理 施 設 が 大 掛 か り に なる 短所 発電に利用するためにメタンガ スの精製が必要 専門性の高い技術者による維持 管理が必要 特徴 小規模な施設で実施可能なた 大 規 模 施 設 が 必 要 と な り 、初 期 投 め、初期投資、維持管理費が少 資 、維 持 管 理 費 が 多 く な る が 、搬 なくてすむ。搬入有機物量が少 入有機物量が多い場合には有効 ない場合に有利となる 適性 小規模自治体 大規模自治体 好 気 発 酵 と 嫌 気 発 酵( メ タ ン 発 酵 )の 特 徴 を 比 較 す る と 、有 機 性 廃 棄 物 の 発 生 量 が 少 な い 地 域 を 対 象 と す る 場 合 に は 、視 察 先 の よ う な 好 気 発 酵 方 式 の 施 設 が 有 効である。 逆 に 、有 機 性 廃 棄 物 の 発 生 量 が 多 い 地 域 を 対 象 と す る 場 合 に は 、嫌 気 発 酵( メ タ ン 発 酵 )を 行 い 、地 球 温 暖 化 防 止 や バ イ オ マ ス 発 電 に ま で 取 り 組 む こ と が 有 効 で あ る 。こ の 2 つ の 方 法 に つ い て は 、費 用 対 効 果 と 地 球 環 境 へ の 影 響 を 総 合 的 に 勘案し、決定すべきである。 ま た 、宮 崎 市 、延 岡 市 、都 城 市 の よ う な 規 模 で 各 家 庭 か ら の 生 ご み を 個 別 回 収 す る 場 合 、多 額 の 経 費 が か か る こ と が 想 定 さ れ る た め 、収 集 に つ い て は 費 用 対 効 果を含め慎重に検討する必要がある。 【まとめ】 宮 崎 県 で は 、家 庭 や 飲 食 店 な ど か ら 出 る 生 ご み や 、剪 定 枝 な ど の 有 機 性 廃 棄 物 は 、綾 町 な ど 一 部 の 自 治 体 を 除 い て 清 掃 工 場 に お い て 焼 却 処 理 さ れ て い る 。焼 却 処理された後は焼却灰となり、最終処分場に埋立処分されている。 視 察 先 に お い て は 、 生 ご み や 剪 定 枝 を MBT 処 理 す る こ と に よ り 堆 肥 を 製 造 し 、 周辺農家へ配布していた。 仮 に 、宮 崎 県 で 同 じ 方 式 を 採 用 で き た 場 合 に は 、焼 却 量 の 減 少 に よ る 維 持 管 理 費の減少や焼却灰埋立量の減少による最終処分場の延命化を図ることができる。 さ ら に 、嫌 気 発 酵( メ タ ン 発 酵 )に ま で 取 り 組 ん だ 場 合 に は 、温 室 効 果 ガ ス 排 出 抑 制 に よ る 地 球 温 暖 化 防 止 や 発 電 に よ る サ ー マ ル( エ ネ ル ギ ー )リ サ イ ク ル を 実現することができる。 費 用 対 効 果 や 地 球 環 境 へ の 影 響 な ど 、慎 重 に 検 討 が 必 要 と な る が 、十 分 検 討 に 値する取り組みであると考えられる。 研修テーマ⑤ 『広域連携による観光街道政策及び住民を取り巻く景観・建築規制』 研修日 平 成 26 年 10 月 21 日 ( 火 ) 研修先 ドイツ連邦共和国 説明者 バイエルン州 ローテンブルク市 ローテンブルク観光サービスツーリストオフィス 副所長兼観光部長 ヨハン・ケンプター氏 《研修目的》 近 年 、旅 行 は 、私 た ち に と っ て 手 軽 で 身 近 な も の に な っ た こ と か ら 、ニ ー ズ も 多様化している。この様な中で求められる観光政策は、ハード整備だけでなく、 ソフト面の整備・充実も課題として挙げられる。また、財政難が叫ばれる中で、 一 つ の 自 治 体 が 単 独 で 政 策 に 取 り 組 む だ け で は な く 、い く つ も の 自 治 体 が 広 域 で 連 携 し た 取 り 組 み の 検 討 を 要 す る 時 期 を 迎 え て い る 。今 後 、東 九 州 自 動 車 道 の 開 通 に よ り 、さ ら に 九 州 内 の 都 市 で 行 き 来 し や す い 環 境 に な る た め 、広 域 で 連 携 し 、 宮崎に観光客を呼び込むための政策は必須だと考えられる。 今回の研修では、ドイツ国内の観光街道で最も有名な「ロマンティック街道」 の 中 心 都 市 で あ る ロ ー テ ン ブ ル ク 市 を 視 察 し 、他 自 治 体 と 連 携 し 広 域 で 取 り 組 む 観 光 政 策 に つ い て 検 証 す る 。ま た 、ロ ー テ ン ブ ル ク 市 の 観 光 政 策 で は 、住 民 を 取 り 巻 く 住 環 境 に 対 し て 多 く の 規 制 も 行 わ れ て い る こ と か ら 、観 光 政 策 と 住 民 を 取 り巻く住環境のバランスについても検証する。 【ローテンブルク市の概要】 ローテンブルク市は、ドイツ南部のバイエルン州 ミッテルフランケンのアンスバッハ郡にあり、 「中世 の宝珠」と謳われるほど中世の街並みがそのまま残 る美しい都市である。 「 ブ ル ク 」と は 、城 壁 を 意 味 し ベルリン ◎ ロマンティック街道 て お り 、 全 長 3.4k m の 城 壁 に 囲 ま れ た 旧 市 街 と 城 壁の外に広がる新市街に分かれている。面積は ●ローテンブルク 41.45k ㎡ 、 人 口 は 約 11,000 人 、 こ の 内 、 旧 市 街 で 住 ん で い る の は 約 2,000 人 と な る 。 ま た 、単 独 で 観 光 政 策 を 行 う の で な く 、近 隣 の 都 市 と 連 携 し 、そ れ ぞ れ の 魅 力 を 発 掘 し て 結 び あ っ た 観 光 街 道「 ロ マ ン テ ィ ッ ク 街 道 」を 設 け て い る 。こ れ を 目 的に、世界各国から多くの観光客が訪れている。 ローテンブルクの街並み 街を囲む城壁 【観光地「ローテンブルク」が創り上げられるまでの経緯】 ロ ー テ ン ブ ル ク 市 の 観 光 業 へ の 取 り 組 み は 、 17 世 紀 頃 ま で 遡 る 。 17 世 紀 か ら ヤ コ ブ 教 会 に よ る 巡 礼 が 行 わ れ て お り 、こ の 巡 礼 者 が 、ロ ー テ ン ブ ル ク 市 の 初 め て の 観 光 客 と し て 記 録 さ れ て い る 。以 降 、中 世 の 街 並 み や 城 壁 か ら の 景 色 に 魅 了 さ れ た 巡 礼 者 達 に よ る ロ ー テ ン ブ ル ク 市 の 評 判 が 広 ま り 、150 年 前 に は 観 光 地 の 1 つとして認識されるようになった。 し か し 、 こ の 中 世 の 街 並 み も 、 第 2 次 世 界 大 戦 に よ り 城 壁 内 の 建 物 は 40% が 焼失し、都市機能は失われ壊滅状態に陥った。 大 都 市 か ら 離 れ た ロ ー テ ン ブ ル ク 市 が 、こ の よ う な 状 態 か ら 再 生 し て い く 中 で 何 を 都 市 の 魅 力 と し て 発 信 し て い く か を 検 討 し た 結 果 、ヤ コ ブ 教 会 の 都 市 巡 礼 者 達を魅了した中世の街並みの魅力に再度注目し、これを観光資源として活用し、 観 光 地 と し て 再 生 し て い く と い う 結 論 に 至 っ た 。ま た 、こ の 結 論 は 、行 政 だ け で 決 定 し た 方 針 で は な く 、住 民 と 話 合 い 、今 後 何 を し て い く べ き か 協 議 し た 結 果 導 か れ た 結 論 で あ っ た 。こ れ に 基 づ き 、城 壁 内 の 建 物 は 、中 世 の 建 物 を 忠 実 に 再 現 す る よ う 建 築 及 び 景 観 規 制 を 行 い 、戦 争 に よ っ て 荒 廃 し た 都 市 は 、皆 が 同 じ コ ン セプトを共有しながら再生していくことができ、その結果、今の街並みがある。 城 壁 内 に 住 む 住 民 に は 、中 世 の 建 物 を 建てるよう建築規制を行うだけでなく、 行政からの補助も行った。これにより、 住 民 の 負 担 を 軽 減 す る こ と が で き 、さ ら に 、中 世 の 街 並 み の 観 光 地 と し て 再 興 し ていったのである。 ま た 、街 を 取 り 囲 む 城 壁 の 修 繕・建 築 費 は 、行 政 の 財 源 だ け で は 賄 う こ と が で きず、全世界の人々から協賛金を得て、 屋根の葺き替え工事の様子 修 繕 工 事 を 行 っ た 。こ の 協 賛 は 、現 在 も 行 わ れ て お り 、こ れ を 財 源 と し 、補 修 が 行 わ れ て い る 。工 事 に 協 賛 し た 人 々 の 名 前 は 、城 壁 に 刻 ま れ て お り 、日 本 か ら の 協賛者名も数多く見られた。 戦 後 か ら 現 在 ま で 、ロ ー テ ン ブ ル ク 市 が再興するための観光政策の基本方針 は 、架 空 の 歴 史 や 創 ら れ た コ ン セ プ ト に よ る も の で は な く 、元 来 、街 に あ る 風 景 城壁に刻まれている協賛者の氏名 や 文 化 、歴 史 や 史 実 を 最 大 限 に 忠 実 に 再 現 し た も の で あ っ た 。ま た 、こ れ は 、行 政 と 住 民 が 協 議 し 決 定 し た コ ン セ プ ト で あ っ た た め 、こ れ を 共 有 し 、意 志 の 統 一 を 図 る こ と が で き 、住 民 の 理 解 の 上 で 取 り 組 む こ と が で き た 。さ ら に 、城 壁 内 の 建 築 や 景 観 の 規 制 な ど を 具 体 的 に 制 度 化 し 制 限 す る こ と で 、時 代 の 流 れ に よ っ て も 変 化 す る こ と な く 、中 世 の 街 並 み の 観 光地として現在でも住民の意識を高く保っていることに繋がっていると考えら れる。 【ローテンブルク市の観光への取り組み】 (1)イベント ロ ー テ ン ブ ル ク 市 が 、観 光 資 源 と し て の 活 用 し て い る の は 、実 際 に あ っ た 史 実 や 歴 史 、歴 史 的 建 造 物 を 基 礎 に し て い る 。例 え ば 、過 去 に あ っ た 30 年 戦 争( 1618 年 ~ 1648 年 ) に お い て 、 3.25 リ ッ ト ル の お 酒 を 見 事 飲 み 干 し て 街 を 救 っ た と い われる元ローテンブルク市長のヌッシュ氏の史実に基づいたイベントが挙げら れ る 。こ の 史 実 に 基 づ き 、街 で は 、歴 史 的 衣 装 を 身 に ま と っ た 大 隊 列 の イ ベ ン ト や 、市 庁 舎 内 に あ る 劇 場 で こ の 史 実 の 演 劇 な ど の イ ベ ン ト が 行 わ れ 、多 く の 観 光 客 が こ れ を 目 的 に 来 訪 す る 。ま た 、中 世 の 街 並 み を 活 か し 年 中 ク リ ス マ ス の 雰 囲 気 づ く り を 行 う こ と で 、常 に 非 日 常 的 な メ ル ヘ ン の 世 界 観 を 楽 し む こ と が で き る 。ロ ー テ ン ブ ル ク 市 の 観 光 シ ー ズ ン は 、4 月 か ら 10 月 で あ り 、 ク リ ス マ ス の 時 期 と は 異 なっていても季節を問わず多くの観光客 がこの非日常的な世界観を楽しむことが で き る 。ま た 、冬 の 時 期 は 氷 点 下 ま で 気 温 が 落 ち 込 む た め 客 足 が 鈍 く な る が 、こ れ を 補 う た め に 毎 年 11 月 と 12 月 に は 大 規 模 な 同じ色で統一された屋根 ク リ ス マ ス イ ベ ン ト が 開 催 さ れ 、最 大 限 に メ ル ヘ ン の 世 界 観 を 活 用 し 、多 く の 観 光客を魅了しているようである。 (2)周遊手段 先述したとおり、ローテンブルク は、城壁によって住空間と観光地の 空間が分けられている。主な観光地 は城壁の中にあり、ここを目的に多 くの観光客が訪れる。市観光協会で は、この城壁内周遊の所要時間が1 時間半のコースと2時間半のコース の2つを設け、観光客に案内してい る。しかし、街中には特に標識がな いため、どの国の観光客が来訪して 各国の言語で翻訳されたパンフレット (左からドイツ語、英語、日本語) も周遊できるように6か国の言語で そ れ ぞ れ 翻 訳 さ れ た パ ン フ レ ッ ト が 準 備 さ れ て お り 、観 光 案 内 所 や 宿 泊 施 設 に 設 置 し て あ る 。ま た 、パ ン フ レ ッ ト に は 城 壁 か ら の 見 晴 ら し の 良 い 地 点 や 付 近 の 城 壁 へ 上 る 階 段 が 記 さ れ て あ り 、各 観 光 客 が 様 々 な 角 度 か ら 街 の 魅 力 を 体 験 で き る よ う に 作 ら れ て い る 。さ ら に 、城 壁 内 に は 、こ こ で 生 活 す る 住 民 以 外 の 車 両 は 原 則 進 入 す る こ と が で き な い た め 城 壁 内 は 交 通 量 が 少 な く 、あ る 程 度 の 安 全 性 が 確 保 さ れ て お り 、観 光 客 は 、街 中 を パ ン フ レ ッ ト 片 手 に 観 光 に 集 中 す る こ と が で き る空間づくりが行われている。 一方、夜間はほとんどの店舗が閉められており、まち中は閑散としているが、 ラ イ ト ア ッ プ さ れ た 中 世 の ま ち の 魅 力 を 安 心 し て 体 験 し て も ら う た め に 、ま ち を 周 遊 す る 際 の ボ ラ ン テ ィ ア ガ イ ド も 20 名 ほ ど い る 。 ま さ に 観 光 客 の た め の ま ち であり、来訪者へのおもてなしの仕組みが幾重にあるまち であると言える。 し か し 、城 壁 内 の 道 路 は 、中 世 の 街 並 み を 再 現 す る た め 、道 路 の 表 層 は す べ て 石 畳 で あ り 、車 椅 子 や ベ ビ ー カ ー 等 で 周 遊 す る こ と は 困 難 な ま ち の つ く り だ と 推 測 さ れ た 。ま た 、城 壁 内 に あ る 3 つ の 公 衆 ト イ レ の 内 、身 体 障 が い 者 用 の ト イ レ は 1 か 所 の み で あ り 、す べ て の 方 に 周 遊 し や す い 環 境 で は な い 一 面 も 見 受 け ら れ た 。観 光 の た め に 徹 底 さ れ た コ ン セ プ ト に 基 づ い た 街 づ く り は 、見 落 と し が ち に なる面もあると考えさせられた。 ( 3 ) PR 活 動 ロ ー テ ン ブ ル ク 市 で は 、約 2,000 人 が 生 活 す る 小 さ な ま ち に 年 間 200 万 人 の 観 光 客 が 訪 れ る 。こ の 内 、半 分 は ド イ ツ 国 内 か ら で 、半 分 は 外 国 人 と な る 。外 国 人 の 内 、近 年 最 も 多 い の は 日 本 人 で あ り 、ま ち を 観 光 し て い る と 、至 る 所 で 日 本 人 観 光 客 に 遭 遇 す る 。 一 時 期 は 、 年 間 の 観 光 客 数 の 25% を 日 本 人 が 占 め た 時 期 も あ り 、こ の 中 世 の 街 並 み は 、日 本 人 観 光 客 の 観 光 欲 を 刺 激 し て い る の だ と 考 え ら れる。 ロ ー テ ン ブ ル ク 市 で は 、 予 算 も 限 り が あ る た め 、 全 世 界 に PR 活 動 を 行 う わ け で は な く 年 々 市 場 開 拓 を し な が ら 各 地 で PR 活 動 を 行 っ て い る 。 ア ジ ア で は 、 も ち ろ ん 日 本 に 対 し 積 極 的 に PR 活 動 を 行 っ て お り 、 過 去 に は 、 羽 田 空 港 と タ イ ア ッ プ し た 広 報 活 動 が 行 わ れ た 。ま た 、い く つ も の 都 市 と 連 携 し た 観 光 街 道 で あ る 「 ロ マ ン テ ィ ッ ク 街 道 」 と い う ブ ラ ン ド の 下 、 市 単 独 の PR 活 動 だ け で な く 、 他 市 と 連 携 す る こ と で 効 率 よ く PR 活 動 を 行 っ て い る 。 ま た 、ヨ ハ ン・ケ ン プ タ ー 氏 自 身 も 、日 本 に 何 度 も 足 を 運 び 日 本 の 観 光 業 界 や 行 政 や 政 府 関 係 者 と 信 頼 関 係 の 構 築 に 努 め 、 PR 活 動 や 連 携 事 業 に つ い て 協 議 を している。しかし、行政や政府関係者は、数年で担当者が交代してしまうため、 せ っ か く 構 築 し て き た 関 係 性 が 失 わ れ 、再 度 新 た な 担 当 者 と 信 頼 関 係 を 構 築 す る ことが大変であると述べていた。 (4)景観規制 ロ ー テ ン ブ ル ク 市 で は 、中 世 の 街 並 み を 保 つ た め 、城 壁 内 の 建 築 物 に つ い て は 建 築 規 制 を 行 っ て い る 。新 築 の 場 合 は も ち ろ ん の こ と 、修 繕 や 改 装 の 際 も 市 建 築 課 に 建 築 の 計 画 書 を 提 出 し 、許 可 を 得 た 後 、施 工 と なる。建築規制は、家の細部にまで至り、 屋 根 の 角 度 や 扉 の 形 、窓 ガ ラ ス を 覆 う 鉄 柵 も 規 制 の 対 象 に な る 。ま た 、商 店 の 看 板 も 城壁内にある店舗の看板 自 由 に 作 り 設 置 す る こ と は 出 来 ず 、こ れ も 許 可 を 得 る 必 要 が あ り 、看 板 の 形 状 や 書 体 や 色 な ど 細 部 に わ た り 規 制 さ れ て い る 。も ち ろ ん 、夜 間 営 業 を 行 う 飲 食 店 の ネ オ ン サ イ ン も 禁 止 さ れ て お り 、夜 間 は 、ガ ス 灯 の 光とライトアップによる光のみで彩られ て い る 。さ ら に 、建 築 物 の 用 途 を 変 更 す る こ と も 出 来 ず 、住 居 だ っ た 家 屋 を 店 舗 と し て し よ う す る こ と も 禁 止 さ れ て い る 。こ の 路面の石畳 様 な 景 観 や 建 築 に 関 す る 規 制 条 例 は 、 19 世 紀 終 わ り 頃 か ら 施 行 さ れ て い る 。 電 線 は 、全 て 地 中 化 さ れ て お り 、地 上 は 、徹 底 し た 中 世 の 街 並 み づ く り が 行 わ れ て い る 。そ の た め 、埋 設 さ れ て あ る 電 線 や 水 道 管 等 の 補 修 工 事 の 際 は 、そ の 部 分 の 石 畳 を 全 て 取 り 除 き 、埋 設 後 は 再 度 一 つ 一 つ 石 畳 を 敷 設 す る た め 、施 工 期 間 が日本より要する。 標 識 も 、交 通 規 制 を 行 う た め の 必 要 最 低 限 の も の し か な く 、観 光 案 内 看 板 等 は 、 設 置 さ れ て い な い 。城 壁 内 に 設 置 し て あ る 看 板 は 、観 光 客 の た め の も の で は な く 、 城 壁 内 で 生 活 し 自 動 車 を 運 転 す る 人 達 を 規 制 す る た め の も の で あ っ た 。必 要 最 小 限 の 看 板 の 設 置 に 留 め る こ と で 、徹 底 し て 中 世 の 街 並 み の 雰 囲 気 を 壊 さ な い 取 り 組みが行われていた。 (5)車両規制 城壁内は、原則城壁内で生活する者以外の車両 の進入は禁止されている。また、観光客を乗せた 観光バスも、スーツケースを乗せたバスのみ城壁 内に進入し走行することが可能で、スーツケース を載せていないバスは進入することができない。 そのため、これらのバスは、城壁の外で停まり、 客の乗降を行う必要がある。また、自家用車での 訪問者は、もちろん城壁内に進入することはでき ず、城壁の外に設けられた駐車場に停車する必要 がある。駐車場の案内看板は、英語や日本語で記 城壁外の駐車場の看板 されており、この看板からもローテンブルク市が 日本人観光客を重要な顧客として認識していることが伺えた。 車 両 に 対 す る 規 制 に つ い て は 、城 壁 内 の 住 民 か ら 様 々 な 意 見 が あ り 、観 光 客 の 利 便 性 を 考 え る と 、ス ー ツ ケ ー ス を 載 せ て い な い 観 光 バ ス も 進 入 可 能 に し て も よ い の で は と い う 意 見 も あ る よ う で あ る 。ロ ー テ ン ブ ル ク 市 の よ う に 城 壁 に 囲 ま れ たまちは、ドイツ国内にいくつかあり、各々で車両の進入について議論がある。 都 市 に よ っ て は 、城 壁 内 の 住 民 の 車 両 も 進 入 を 禁 止 す る ま ち や 進 入 す る 車 両 を 電 気自動車のみと限定するところもあるようだ 。 観 光 地 で あ る が ゆ え に 、コ ン セ プ ト の 追 求 や 観 光 客 の た め の ま ち づ く り を 行 う こ と も 必 要 で あ る が 、元 々 は 、住 民 が 生 活 す る 普 通 の ま ち で あ る こ と を 忘 れ る こ と な く 、ま た 、規 制 を 行 う こ と も 重 要 で あ る が 、そ も そ も の 住 環 境 と し て の ま ち の 機 能 を 奪 い す ぎ ず 、バ ラ ン ス よ く ま ち が 機 能 す る こ と が 重 要 で あ り 、多 く の 課 題があると感じた。 【観光街道について】 ド イ ツ 国 内 に は 、50 以 上 も の 観 光 街 道 が あ る 。観 光 街 道 は 、ド イ ツ 語 で は「 フ ェ ー リ エ ン・シ ュ ト ラ ー セ(「 休 日 の た め の 道 」と い う 意 味 )」と 呼 ば れ 、こ の 草 分 け 的 な 存 在 が 、ロ ー テ ン ブ ル ク 市 も 含 ま れ て い る「 ロ マ ン テ ィ ッ ク 街 道 」で あ る。 ロ マ ン テ ィ ッ ク 街 道 は 、ヴ ェ ル ツ ブ ル ク を 起 点 と し 、28 も の 都 市 が 結 び つ き 、 全 長 410km に も 及 ぶ 街 道 で あ る 。ロ マ ン テ ィ ッ ク 街 道 の シ ー ズ ン は 、ロ ー テ ン ブ ル ク 市 と 同 様 に 4 月 か ら 10 月 で 、 こ の 街 道 の 観 光 客 は 、 今 年 度 600 万 人 を 見 込 んでいる。この街道の代表的な楽しみ方が、次の3つになる。 1 つ 目 が 、サ イ ク リ ン グ に よ る 街 道 の 周 遊 で あ る 。街 道 に 沿 っ て 460km の サ イ ク リ ン グ ロ ー ド が 設 置 し て あ る 。こ の サ イ ク リ ン グ ロ ー ド に は 、緑 色 の 標 識 が 設 置 し て あ り 、こ の 標 識 で コ ー ス を 把 握 し 進 む こ と が で き る 。ロ マ ン テ ィ ッ ク 街 道 の 距 離 よ り も サ イ ク リ ン グ ロ ー ド の 距 離 が 長 い の は 、交 通量の少ない裏通りや農耕地や整備され た 道 路 を 通 る た め で あ り 、全 体 的 に 見 て も 傾 斜 も 緩 や か で 、サ イ ク リ ン グ の 初 心 者 で も楽しめるルート設定が行われているた め で あ る 。さ ら に 、街 道 に 沿 っ て 観 光 バ ス も 運 行 し て お り 、こ の バ ス の 後 ろ に 自 転 車 を 乗 せ る こ と も で き 、各 々 の 目 的 や 計 画 や 体力に合わせたサイクリングや観光を楽 ロマンティック街道パンフレット し む こ と が で き る 仕 組 み に な っ て い る 。ま た 、標 識 だ け で な く 、サ イ ク リ ン グ に 臨む観光客用の準備ガイドブックや街道の説明書きのある地図なども作成され て お り 、観 光 客 が 、観 光 に 至 る ま で の 負 担 を 軽 減 し 、気 軽 に 街 道 で の サ イ ク リ ン グ観光を楽しめる環境づくりが行われている。 2 つ 目 の 楽 し み 方 が 、ハ イ キ ン グ に よ る も の で あ る 。ハ イ キ ン グ ロ ー ド も 、ロ マ ン テ ィ ッ ク 街 道 に 沿 っ て 480km 設 置 し て あ る 。ハ イ キ ン グ ロ ー ド に も 、統 一 さ れた標識が設置してあり、一目でルートを確認できるようになっている。また、 ハ イ キ ン グ の 途 中 で 疲 れ た 場 合 は 、サ イ ク リ ン グ と 同 様 に ロ マ ン テ ィ ッ ク 街 道 を 走行しているバスに乗車することができ、観光客のサポート体制が整っており、 各々の体力に合わせて楽しむことができるよう整備されている。 3 つ 目 の 楽 し み 方 が 、自 家 用 車 に よ る 周 遊 で あ る 。距 離 は 410km あ り 、茶 色 の 共 通 し た 標 識 が 設 置 し て あ る 。ロ マ ン テ ィ ッ ク 街 道 の 都 市 に は 、歴 史 的 建 造 物 や バ ロ ッ ク 様 式 の 巡 礼 堂 、自 然 に 包 ま れ た 渓 谷 や 一 望 で き る 丘 な ど 見 所 が た く さ ん あ り 、各 々 の 計 画 に 沿 っ て 目 的 地 を 設 定 し 楽 し む こ と が で き る 。ま た 、ロ マ ン テ ィ ッ ク 街 道 に 信 号 機 が ほ と ん ど な い た め 、渋 滞 を 気 に す る こ と な く 進 む こ と が で き る 。道 路 沿 い に は 最 低 限 の 標 識 の み が 設 置 し て あ り 、あ り の ま ま の 車 窓 か ら の 景 色 を 楽 し め る 環 境 づ く り が 行 な わ れ て い る 。さ ら に 、サ イ ク リ ン グ ロ ー ド と 自 動 車 道 を 分 離 す る こ と で 、双 方 の 安 全 性 が 確 保 さ れ 、観 光 に 集 中 で き る 道 路 環 境 が作られている。 こ の 様 な ロ マ ン テ ィ ッ ク 街 道 の 楽 し み 方 は 、様 々 な 言 語 に 翻 訳 さ れ た パ ン フ レ ッ ト が 準 備 さ れ て お り 、誰 も が こ の 街 道 を 楽 し め る よ う な 取 り 組 み が 行 な わ れ て い る 。そ し て 、同 じ 街 道 で あ っ て も 街 道 沿 い の 景 色 や 魅 力 や 食 文 化 な ど は 各 地 で そ れ ぞ れ 異 な る た め 、広 域 連 携 に よ る 観 光 街 道 は 、こ の 街 道 を 中 心 に 観 光 を 行 う リ ピ ー タ ー や 多 く の 滞 在 客 を 生 み 出 し て い る 。ま た 、こ の「 ロ マ ン テ ィ ッ ク 街 道 」 と い う 名 の ブ ラ ン ド の 下 、 広 域 で 連 携 し 団 体 を 構 成 し PR 活 動 を 行 う こ と で 、 幅 広く様々な顧客層に、広報活動が効率よく行われている。 【広域観光政策について】 ド イ ツ の 観 光 街 道 設 置 の 背 景 に は 、都 市 や 観 光 資 源 を 売 り 出 し 、ド イ ツ を 目 的 地 と し 来 訪 し て も ら う こ と で 外 貨 を 得 る と い う 目 的 が あ っ た 。こ の 目 的 の 下 、近 隣 の 都 市 が 広 域 で 連 携 し 、 一 緒 に な っ て PR 活 動 や 観 光 政 策 等 が 行 わ れ る よ う に なり、観光街道が作られた。ローテンブルク市も、同様に近隣の都市と連携し、 ロマンティック街道協会に加盟し、広域で連携を図っている。 こ の 協 会 の 事 務 局 は 、 2001 年 ま で は 加 盟 都 市 で 持 ち 回 り で 担 当 し て い た が 、 既得権益の存在から、効率よく運営されなかったため、どの都市にも無関係の、 第 三 者 が 事 務 局 員 に 就 い て い る 。こ れ に よ り 、政 治 的 な 圧 力 も 除 外 し 、公 正・中 立 の 立 場 で の 運 営 が 行 わ れ て い る 。こ の 協 会 に 加 盟 し て い る 都 市 の 代 表 者 は 、年 に 1 度 は 必 ず 集 ま り 、 運 営 や PR 活 動 等 に つ い て 協 議 を 行 う 。 協 会 の 運 営 や PR 活 動 等 の た め の 費 用 は 、加 盟 都 市 が 各 都 市 の 規 模 に 応 じ た 額 を 負 担 し 、こ れ を 基 に協会が運営される。会規約は次のとおりとなる。 【 ロ マ ン テ ィ ッ ク 街 道 協 会 の 規 約 ( 一 部 抜 粋 )】 ・ ロマンティック街道の観光促進のために広報宣伝を協調共同で行う(自分の市町村 を 宣 伝 す る 際 は 、 ロ マ ン テ ィ ッ ク 街 道 自 体 の 宣 伝 も 行 う 必 要 あ り )。 ・ 資格は都市が街道沿いにあること、景観が歴史を感じさせロマンティックという特 徴を満たす。 ・ メ ン バ ー の 採 用 は 全 会 の 2/3 以 上 の 賛 成 に よ る 。 規 約 に も あ る よ う に 、 こ の 協 会 の 目 的 は 、『 観 光 促 進 の た め に 広 報 宣 伝 を 協 調 し 共 同 で 行 う こ と 』 で あ る 。 ま た 、 市 単 独 で PR 活 動 を 行 う 際 も 、 必 ず ロ マ ン テ ィ ッ ク 街 道 の こ と を 併 せ て PR す る こ と に な っ て い る 。 「 ロ マ ン テ ィ ッ ク 街 道 」と い う 統 一 し た ブ ラ ン ド を 基 に PR 活 動 を 行 う こ と で 、 元 来 、 1 つ の 都 市 の フ ァ ン だ っ た 人 も 、街 道 を 通 し て 加 盟 し て い る 他 の 都 市 の こ と も 知 り 、他 市 の フ ァ ン に な っ て い く 相 乗 効 果 も あ る と の こ と だ っ た 。ま た 、観 光 客 も 、観 光 計 画 を 立 て る 際 に 、目 的 地 の 都 市 や そ の 近 辺 の 都 市 を 1 つ 1 つ 調 べ て 計 画 を 練 る よ り も 、ロ マ ン テ ィ ッ ク 街 道 の イ ン タ ー ネ ッ ト サ イ ト や パ ン フ レ ッ ト を 通 し て 、目 的 地 や そ の 近 隣 の こ と を 調 べ る こ と が で き る た め 、具 体 的 な 観 光 計 画 が 安 易 に 練 り や す く な っており、観光客の旅行準備の負担を軽減する効果もあるようである。さらに、 目 的 地 周 辺 の 情 報 を 得 る こ と で 、街 道 を 中 心 と し た 滞 在 に も つ な が る 効 果 が あ る よ う で あ る 。 つ ま り 、 広 域 に よ る PR 活 動 の た め の 連 携 は 、 1 つ の 情 報 か ら 多 く の 情 報 を 安 易 に 得 る こ と が で き 、観 光 客 の ワ ン ス ト ッ プ 窓 口 と し て の 役 割 も 果 た し て い る と 言 え る 。( 下 図 参 照 ) 【従 来 の状 態 】 【広 域 連 携 による状 態 】 客 A市 客 客 B市 客 客 C市 客 ロ マ ン テ ィ ッ ク 街 道 A市 B市 C市 従来の状態では、自らが検索した目的地の情報しか得ることができない。また、 周辺の情報は 1 つ 1 つ検索を要する状態。 広 域 で の 連 携 を し 、統 一 し た ブ ラ ン ド で PR 活 動 を 行 う こ と で 、観 光 客 が 目 的 地 の 周辺の情報を得ることが出来、街道を中心とした滞在に結びつきやすい。 し か し 、広 域 連 携 に よ る 効 果 は 、必 ず し も 加 盟 し て い る 都 市 全 て に お い て 同 一 の効果や収益があるわけではなく、それぞれの都市で異なっている状況である。 こ の こ と で 加 盟 都 市 同 士 が 対 立 し 合 う の で は な く 、「 観 光 客 に は 、 ロ マ ン テ ィ ッ ク 街 道 の ど の 都 市 で も 楽 し ん で も ら い た い 。ロ マ ン テ ィ ッ ク 街 道 を 楽 し ん で も ら え れ ば よ い 。」 と い う 気 持 ち で 各 都 市 は 加 盟 し 、 連 携 し 合 い 、 ど の 都 市 も 「 一 人 勝 ち 」を 望 ん で い る わ け で は な い 。こ れ は 、長 期 的 に 連 携 し て い く 上 で 重 要 な 点 であり、加盟している全ての都市が同様の認識である必要がある。 ロ マ ン テ ィ ッ ク 街 道 は 、広 域 で 連 携 し 成 功 し た 事 例 で あ る が 、失 敗 し て い る 事 例 も あ る 。そ の 1 つ が 、フ ァ ン タ ス テ ィ ッ ク 街 道 で あ る 。こ の 街 道 は 、ド イ ツ 南 西 部 の ハ イ デ ル ベ ル ク か ら コ ン ス タ ン ツ ま で の 約 400km に も 及 ぶ 街 道 で あ り 、ド イ ツ 南 部 に お い て ロ マ ン テ ィ ッ ク 街 道 の 2 番 手 と な る べ く 、日 本 の 会 社 か ら 要 望 さ れ て 設 立 さ れ た 。ヨ ハ ン・ケ ン プ タ ー 氏 に よ れ ば 、失 敗 の 要 因 と し て 、ま ず 加 盟 し て い る 都 市 が 少 な い こ と が 挙 げ ら れ る 。 加 盟 都 市 が 少 な い た め 、 PR 活 動 費 や 規 模 も 小 さ く な り 、効 果 的 な 活 動 に 結 び つ い て い な い よ う で あ る 。ま た 、街 道 の 延 長 は 、ロ マ ン テ ィ ッ ク 街 道 と は 同 規 模 だ が 、街 道 沿 い の 観 光 地 が 少 な く 、イ ン フ ラ の 整 備 も 整 っ て い な い こ と も 要 因 の 1 つ と し て 挙 げ ら れ る 。さ ら に は 、観 光 客 の ホ テ ル の 数 も 少 な く 、観 光 客 を 滞 在 さ せ る 力 が 乏 し い こ と も 、要 因 の 1 つ で あ る と の こ と で あ っ た 。他 に も 、失 敗 し た 事 例 と し て 、ロ マ ネ ス ク 街 道 が あ り 、 こ こ は 、PR 活 動 や 売 り 込 み 方 が 専 門 的 で な く 、計 画 性 の な い も の で あ っ た た め 、 失敗したとのことであった。 た だ 単 に 統 一 し た ブ ラ ン ド を 作 成 し 、 こ れ を 基 に PR 活 動 を 行 う だ け で は 効 果 的 な 活 動 と は 言 え ず 、イ ン フ ラ の 整 備 は も ち ろ ん の こ と 、リ ピ ー タ ー を 生 み 出 す 魅 力 や 観 光 客 を 滞 在 さ せ る 力 、こ れ に 従 事 す る 者 の 専 門 性 も 成 功 の た め に 必 要 な 要素だと言える。 【まとめ】 日 本 で は 、 平 成 20 年 に 制 定 さ れ た 観 光 圏 整 備 法 に よ り 、 全 国 各 地 で 広 域 連 携 の 動 き が さ ら に 加 速 し て い る 。県 内 で も 、広 域 連 携 の 取 り 組 み は い く つ か あ る も の の 、形 式 的 な も の が 多 く 、そ れ を 求 め て 多 く の 観 光 客 が 訪 れ る ま で に は 至 っ て い な い 。 最 近 で は 、 宮 崎 市 、 国 富 町 、 綾 町 の 1 市 2 町 で 、 平 成 26 年 よ り 宮 崎 広 域 連 携 推 進 協 議 会 を 開 催 し 、広 域 連 携 に つ い て 協 議 に 入 っ て い る 。こ の 広 域 連 携 は、観光政策だけの連携ではなく、福祉や医 療など様々な点においての連携も含まれてお り、今後の展開が期待されている。 観光客にとっては、どの観光地をどう周 遊・滞在して楽しむかであって、どの自治体 に行くかはほとんど考えていないのが現状で ある。そのため、一つの自治体で一人勝ちを 望むのではなく、近隣の自治体と連携をして 共に相乗効果を得る取り組みや姿勢が必要と な っ て く る 。ま ず は 自 治 体 間 の 壁 を 取 っ 払 い 、連 携 し て 宮 崎 県 を 売 り 込 む こ と が 重要であると考える。 ま た 、広 域 連 携 の 前 提 と し て 、そ れ ぞ れ の 自 治 体 の 観 光 地 が 、魅 力 あ る も の で な け れ ば な ら な い 。魅 力 の な い 観 光 地 が い く ら 連 携 し て も 、相 乗 効 果 は 期 待 で き な い 。複 数 の 自 治 体 が 、そ れ ぞ れ の 特 性 を 生 か し て 、互 い に 尊 重 し 合 い 、そ の 機 能 や 魅 力 を 補 完 し 連 携 す る こ と が 必 要 で あ る 。こ の 取 り 組 み の 延 長 線 上 に 、観 光 庁が推奨する都市間の交流人口の拡大や2泊3日の滞在に繋がると考えられる。 ロ ー テ ン ブ ル ク 市 の 視 察 を 終 え た 後 、 ほ と ん ど の 班 員 が 、「 次 回 は 家 族 と 是 非 滞 在 し た い 」「 子 ど も を 是 非 連 れ て き た い 」 と い う 言 葉 を 口 に し て お り 、 こ の 街 に は「 リ ピ ー タ ー を 生 み 出 す 魅 力 」や「 滞 在 し た い と 思 わ せ る 魅 力 」が あ る と 気 付 く と と も に 、こ れ は 、徹 底 し た コ ン セ プ ト の 共 有 と 意 志 の 統 一 に よ っ て 生 み 出 さ れ た 非 日 常 的 な 空 間 に よ る 効 果 で あ る と 再 認 識 さ せ ら れ た 。説 明 し て い た だ い た ヨ ハ ン・ケ ン プ タ ー 氏 の「 最 後 に 残 る の は 歴 史 、文 化 だ 」と い う 言 葉 が 、印 象 的であった。 宮崎県にも、歴史、文化が数多くある。目新しいものばかり追うのではなく、 今ある地域資源をもう一度見直し、忘れられようとしている文化を掘り起こし、 宮崎県ならではの独創性あふれる観光を模索し実践していくことが重要である と感じた。 市庁舎前にてヨハン・ケンプター氏と おわりに 私 達 1 班 は 、 宮 崎 県 内 の 4 市 3 町 の 職 員 10 名 と 、 公 益 財 団 法 人 宮 崎 県 市 町 村 振 興 協 会 の 職 員 1 名 の 11 名 に よ り 構 成 さ れ 、 イ ギ リ ス で の 「 文 化 芸 術 ・ 官 民 協 働 に よ る ま ち づ く り 」、イ タ リ ア で の「 ア グ リ ツ ー リ ズ モ 」と「 ご み 対 策 」、ド イ ツ で の 「 広 域 連 携 に よ る 観 光 政 策 」 を テ ー マ と し て 、 10 月 15 日 か ら 23 日 の 9 日間、海外派遣研修に参加しました。 5 月 か ら 始 ま っ た 事 前 研 修 で は 、 当 研 修 の 参 加 職 員 20 名 が 、 そ れ ぞ れ 希 望 す る テ ー マ を 基 に プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を 行 い 、班 分 け を 行 い ま し た 。各 自 の テ ー マ や 希 望 視 察 先 が 様 々 な こ と か ら 、 な か な か 班 分 け が 決 ま り ま せ ん で し た が 、「 ま ちづくり」をテーマの中心とした1班を構成することになりました。 班 別 協 議 で は 、ど の テ ー マ を 選 ぶ か 、視 察 す る 国 は ど う す る か 、み ん な が 納 得 す る 形 に す る の に 難 航 し ま し た が 、協 議 に よ り 3 ヶ 国 を 訪 問 す る こ と に な り ま し た 。し か し 、3 ヶ 国 の 訪 問 で は 移 動 距 離・移 動 時 間 の 問 題 で 視 察 時 間 に 問 題 が あ り ま し た 。 そ こ で 、「 ア グ リ ツ ー リ ズ モ 」 に つ い て は 日 曜 日 に 農 家 に 宿 泊 体 験 を し な が ら 学 習 す る 行 程 表 を 作 成 す る な ど 、班 員 の 視 察 に 対 す る 意 気 込 み が 感 じ ら れました。 そ の 後 の 事 前 研 修 で 、旅 行 会 社 の 選 定 や 質 問 書 の 作 成 、訪 問 国 文 化 の 学 習 な ど を 行 い 、「 連 携 ・ 協 働 ・ 文 化 」 の 3 つ を キ ー ワ ー ド と し て 視 察 に 臨 み ま し た 。 こ れ か ら の 行 政 に は 、地 域「 文 化 」を 活 か し た 施 策 を 展 開 し 、そ れ ぞ れ の 自 治 体 が 「 連 携 」し 、住 民 と「 協 働 」し て ま ち づ く り に 取 り 組 ん で い く 、新 し い 形 の 行 政 運営が必要だと考えたからです。 各 訪 問 先 に お い て は 、私 達 を 快 く 迎 え て 頂 き 、丁 寧 に 説 明 を し て い た だ き ま し た 。特 に 、ド イ ツ で は 、日 本 語 で 書 か れ た 名 刺 で 迎 え て く れ る な ど 、改 め て「 お もてなし」の重要性を感じたところです。 イ ギ リ ス で は 、歴 史 風 土 を 生 か し て 整 備 を 行 っ て い る 町 並 み や 、歴 史 的 な 建 築 物 を 有 効 利 用 し て 新 し い 空 間 を 創 造 す る「 ま ち づ く り 」を 視 察 す る こ と が で き ま し た 。 そ の 中 で 強 く 感 じ た こ と は 、「 住 民 の 力 」 で す 。 多 く の 住 民 が 、 ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 や 寄 付 な ど 、ま ち の 一 員 と し て 自 分 に で き る こ と に 取 り 組 も う と い う 意 思と、それをサポートするシステムが整えられていることでした。 イ タ リ ア の ア グ リ ツ ー リ ズ モ で は 、日 本 人 は 、休 日 に 農 村 に 行 こ う と 考 え る 人 は あ ま り い ま せ ん が 、当 た り 前 の よ う に 休 農 園 で の ん び り 過 ご す 欧 米 人 の 家 族 を 見 る と 、文 化 の 違 い を 感 じ ま し た 。ご み 対 策 に つ い て も 、出 来 る だ け 焼 却 処 理 を 行 わ ず 埋 立 量 を 減 ら す た め に 生 ご み を 堆 肥 化 し 、そ れ を 無 料 で 農 家 に 配 布 す る 取 り組みは、今後の宮崎県の農業に役立つのではないかと感じました。 ド イ ツ の ロ ー テ ン ブ ル ク 市 で は 、同 じ 1 つ の ま ち の 中 に 旧 市 街 と 新 市 街 が 存 在 し 、旧 市 街 で は 古 い 町 並 み を 壊 す こ と な く 残 し 、一 方 、新 市 街 で は 開 発 が 進 め ら れ て お り 、 ま ち づ く り に 関 し て も 、「 無 い も の を つ く る の で は な く 、 あ る も の を 探 す 」こ と を 意 識 し て い る 取 り 組 み は 、参 考 に な る も の で し た 。ま た 、観 光 産 業 が 発 達 し て い る た め 、店 員 が 分 か り や す い 英 語 で ゆ っ く り 商 品 の 説 明 し て く れ る な ど 、親 切 に し て も ら い ま し た 。観 光 客 を 受 け 入 れ る 側 の 対 応 に つ い て も 、言 葉 が 通 じ な い か ら こ そ 、そ の 対 応 で 相 手 に 与 え る 印 象 や 思 い 出 に 大 き な 影 響 を 与 え ることも実感しました。 今 回 の 研 修 を 通 し て 、ヨ ー ロ ッ パ と い う 異 国 の 文 化 を 見 聞 き し 、確 認 す る こ と で 、日 本 と の 取 り 組 み の 違 い や 、日 常 生 活 に お け る 環 境 の 違 い な ど を 実 際 に 現 地 で 見 る こ と が で き 、写 真 や 事 前 勉 強 だ け で は わ か ら な か っ た 貴 重 な 体 験 を し た と 感 じ て い ま す 。ま た 、各 視 察 先 の 担 当 者 は 、自 分 の 住 む ま ち に 自 信 と 誇 り を 持 ち 、 「 ど う す れ ば も っ と 良 く な る か 」、 「どのような考え方でまちづくりを進めていく か 」、 「 何 を 大 事 に し て ま ち づ く り を す る の か 」を 考 え な が ら ま ち づ く り を 行 っ て おり、その熱意に圧倒されました。 今 回 の 研 修 に お き ま し て は 、概 ね 天 候 に も 恵 ま れ 、ひ と り の 病 人 も 出 ず 、無 事 に 終 え る こ と が で き ま し た 。研 修 中 は 、他 の 自 治 体 の 仲 間 と 9 日 間 一 緒 に 過 ご し 、 色 々 な 話 を す る こ と で お 互 い の 考 え を 深 め る こ と が で き 、各 自 治 体 の 取 り 組 み や 考 え 方 な ど に 触 れ る こ と が で き ま し た 。自 分 達 の 住 む ま ち を 良 く し よ う と い う 意 識 の 高 い 人 た ち と 研 修 を 共 に で き た こ と は 、こ れ か ら の 仕 事 に 非 常 に 価 値 の あ る こ と で し た 。今 回 の 研 修 で 学 ん だ こ と を 忘 れ る こ と な く 、今 後 の 様 々 な 部 署 で の 行政運営に、この貴重な経験を生かせることと信じております。 最 後 に 、貴 重 な 研 修 機 会 を 与 え て く だ さ っ た 公 益 財 団 法 人 宮 崎 県 市 町 村 振 興 協 会 の 皆 様 、視 察 の 準 備 な ど 多 大 な ご 協 力 を 頂 い た 株 式 会 社 日 本 旅 行 の 皆 様 、快 く 視 察 に 送 り 出 し て 頂 い た 各 自 治 体 の 上 司 や 同 僚 、関 係 者 の 皆 様 に 深 く 感 謝 申 し 上 げ、報告とさせて頂きます。
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