P5.5 実践事例(小学校の取組)

Ⅳ
実践事例(小学校の取組)
児童の実態や地域の教育資源の分析を踏まえたキャリア教育の構想
− 全体計画・年間指導計画の作成を通して −
高 千 穂 町 立 高 千 穂小 学 校
1
学校や児童の状況
・
県境の中山間地域に立地する各学年2ク
ラスの小規模校である。
・ 児童は素直で、高千穂の自然や伝統文化
を誇りに思っているが、中山間地域特有の
少子高齢化等の課題には気付いていない。
・ 学習に対して真面目に
取り組むが、主体的に活
動する気概を育てる必要
がある。
3
2
活用したい教育資源
・
豊かな自然や伝統文化、観光資源
・
中山間地域に特有の課題
・
課題と向き合う町内の産業従事者や
伝統文化継承者の姿
・
町内における様々な
体験活動
本校 における キャリア教 育の 構想
地域社会と向き合いながら、ふるさとの良さに気付き、自らの将来について夢やあこがれをもち、将
来の社会貢献や自己実現に向けて努力する力を身に付ける。
キャリア教育で目指す児童像
低
自他の大切さに気づき、家族 中 自分の長所や短所を知り、好 高 自 ら 課 題 を 見 つ け 、 課 題 解
や友達、周囲の人々に積極的に
きなこと、苦手なことに進んで
決に向け、工夫しながら取り
働き かけ ていく ことが できる 。
取り 組んで いくこ とがで きる 。
組んで いくこ とが できる 。
各学年の重点目標
低
○
○
○
○
4
人 間関係形成・社 会形成能力
中
友達の気持ちを考える 。
身近な人々の生活に関心をもち 、 積極的に関わる 。
身近で働く人の様子が分かり 、 興味 ・ 関心をもつ 。
係活動や家での仕事などを通して 、 自分の役割の大切
さが分かる 。
○
○
○
○
自 己理解 ・自己 管理能 力
高
課題 対応能 力
自分や友達の良いところを見つける 。
○ 自分が挑戦したい役割を選択する 。
様々な職業や生き方があることが分かる 。
○ 自分の役割の必要性を理解し 、 責任をもって役割を
互いの役割や役割分担の必要性が分かる 。
果たそうとする 。
自分の仕事に対して責任を感じ 、 最後までやり通そう ○ 課題や困難が生じた場面において 、 解決方法を工夫
とする 。
して解決しようとする 。
実 践事 例の 概要 (特色、位置付け)
キャ リ ア教 育の 全 体計 画は 、自 校の キ ャリ ア教 育の 基 本的 な 在り 方 を内 外に 示す と とも に 、
教 育 課 程 への 位 置 付 け を可 視 化 す る も の です 。 本 稿 では 、 児 童 の 実 態 や地 域 の 教育 資 源の 分
析 を 踏 ま えた 全 体 計 画 作成 ま で の 手 順 を 紹介 す る と とも に 、 そ れ を 受 けた 第 5 学年 に おけ る
キ ャリ ア 教育 の取 組 を紹 介し て いき ま す。
全体計画作成の流れ
児童の実態把握
ã
分 析
ã
育成したい資質や能力の設定
ã
目指す児童像の目標の設定
ã
核となる体験活動の設定
▲ 児童 の実 態 把握 を踏 ま え、 KJ 法 によ り
育 成 した い資 質 や能 力を 設定 す る作 業
-6 -
5
全体計画作成の流れ
(1) 児 童 の実 態把 握
キャ リ ア 教 育 の効 果 を 高 め る に は、 そ れ ぞ れの 学 校 ・ 地 域 等 の特 色 や 実 情 、各 校 の児 童 の
実 態を 十分 に 踏ま えた 上 で 、育 成し よう と する 力( 目 標 )を 定 める こ とが 前提 と なっ てく る 。
そ の た めに は 、 基 礎 的・ 汎 用 的 能 力の 実 態 を 調 査 し 、そ の 結 果 をも と に 、 自 校 で育 成す べ き
能 力 や 態度 を 重 点 化 して い く 必 要 があ る と 考 え た 。 そこ で 、 キ ャリ ア 教 育 に 関 する アン ケ ー
ト を用 いて 実 態調 査を 実 施し た 。
(2) 分 析
次に 、 キ ャ リ ア教 育 に 関 す る ア ンケ ー ト を もと に 、 児 童 の 実 態分 析 を 行 っ た。 そ の時 に 用
い たの が、 下 記の 【資 料 1】 で ある 。
(3) 育 成 した い 資質 や 能力 の 設定
【 資 料1 基礎的 ・汎用 的能力 アンケ ート 結果】
こう し た 児 童 の実 態 把 握 を 踏 ま え、 KJ法
に よ り 育成 し た い 資 質や 能 力 の 設 定を 行 っ
た 。 こ の作 業 を 行 う こと に よ っ て 、各 学 年
部 ご と のキ ャ リ ア 発 達の 違 い が 分 かり 、 2
年 間 を 1サ イ ク ル と して 重 点 目 標 を設 定 す
る こと がで き た。
(4) 目 指 す児 童 像の 目 標の 設定
低学 年 で は 、 人間 関 係 形 成 ・ 社 会形 成 能
力、中学年では、自己理解・自己管理能力、
高学年では、課題対応能力の落ち込みが見ら
れることが分かった。また、核となる体験活
動に系統性をもたせ小中一貫した指導ができ
るようにするために、中学校との連携を図り
な がら 、重 点 目標 に修 正 を加 え た。
(5) 核となる 体 験活 動の 設定
キ ャ リア 教 育 推 進 の 核 とな る 体 験 活 動に つ い て は 、 生活 科 や 総 合 的 な学 習 の 時間 (き ら め
き の 時 間) に 位 置 付 け る こと に し た 。 それ ぞ れ の 学 年 でこ れ ま で 行 っ てい た 学 習内 容を 、 キ
ャ リ ア 教育 の 視 点 で 再 構 築す る こ と と し、 地 域 の 「 よ さ」 と 同 時 に 「 課題 」 に も目 を向 け な
が ら 最 終的 に は 6 年 間 の 学び を 通 し て 「課 題 解 決 に 参 画す る 意 識 を 高 める 」 こ とが でき る よ
う 、下 の 【 図 】 の よう に 核と な る体 験活 動 を設 定し た 。
【図
6年生
高千穂町を学び合う
核となる体験活動の位置付け】
課題解決に参画する意識の向上
○
○
私たちのまち高千穂
私たちにできること
○
○
米タイム
神楽の歴史について
4年生
高千穂町を感じる
○
○
○
私たちが支える高千穂
神楽を体験しよう ○
国際理解教育
3年生
高千穂町にふれる
○
○
○
剣道のまち高千穂
神楽をしろう
国際理解教育
2年生
高千穂町の自然を感じる
○
○
○
町たんけんをしよう
おいもを育てよう
秋祭りをしよう
1年生
高千穂町の自然にふれる
○
○
○
学校をたんけんしよう
アサガオを育てよう
昔の遊びをしよう
5年生
高千穂町をみつめる
-7 -
○ 1/2成人式
音楽を通してふれ合おう
【資 料 2
高千 穂 小学 校キ ャ リア 教 育全 体計 画 】
教育関係法令等
本校の教育目標
日本国憲法
教育基本法
学校教育法
たくましく、心豊かで、自ら考え行動する児童を育成する
本年度の重点目標
① 更なる学力の向上
② 心豊かで思いやりのある児童を育成する教育活動の推進
③ たくましい児童を育成する体育・食育・健康教育の推進
④ 家庭や地域との連携強化
目指す学校像
○ 明るい学校
○ きれいな学校
○ きまり正しい学校
保護者・地域の願い
○ あいさつをする子
○ 思いやりのある子
○ しっかり学ぶ子
○ 積極性のある子
○ 我慢のできる子
キャリア教育で目指す児童像
(低) 自他の大切さに気付き、家族や友だち・周囲の
人々に積極的に働きかけていくことのできる児童
(中) 自分の長所や短所を知り、好きなこと、苦手なこ
とに進んで取り組んでいくことができる児童
目指す教師像
○ 一人一人を生かす教師
○ 結果に責任を持つ教師
○ 協力し合い、自らを高める
教師
(高) 自ら課題を見つけ、課題解決に向け、工夫しな
がら取り組んでいくことのできる児童
身につけさせたい力
自己理解・自己管理能力
課題対応能力
○ 社会との相互関係の中で主体 ○ 仕事をする上での様々な
的に行動することができる。
課題を発見・分析することが
○ 自分の思考や考えを律し、今後 できる。
の成長のために進んで学ぶことが ○ 適切な計画を立ててその
できる。
課題を処理し、解決すること
ができる。
我が国の国土と歴史に対する理
社 解と愛情を育て、社会の形成者とし
会 て公民的資質を養う。
算数的活動の楽しさや数理的処
算 理のよさに気付き、進んで生活に活
数 用する態度を育てる。
自然に親しみ、問題解決の能力と
理 自然を愛する心情を育て、科学的な
科 見方や考え方を養う。
具体的な体験を通して、生活上必
生 要な習慣や技能を身に付けさせ、自
活 立への基礎を養う。
音楽経験を生かして生活を明るく
音 潤いのあるものにする態度と習慣を
楽 育てる。
感性を働かせながら、造形的な創
図 造活動の基礎的な能力を培い、豊
工 かな情操を養う。
家族の一員として生活をよりよくし
家 ようとする実践的な態度を育てる。
庭
健康の保持増進と体力の向上を
体 図り、楽しく明るい生活を営む態度
育 を育てる。
各学年の重点目標
低学年(人間関係形成・社会形成能力)
○ 友だちの気持ちを考える。
○ 身近な人々の生活に関心をもち、積極的
に関わる。
○ 身近で働く人の様子が分かり、興味・関
心をもつ。
○ 係活動や家での仕事などを通して、自分
の役割の大切さが分かる。
○ 自分の生活を支えている身の回りの人
に感謝する。
○ お世話になった人々に感謝する。
中学年(自己理解・自己管理能力)
○ 自分の良い所を見つける。
○ 友だちのよいところを見つける。
○ 様々な職業や生き方があることが分かる。
○ 係や当番活動に積極的にかかわる。
○ 互いの役割や役割分担の必要性が分かる。
○ 自分の仕事に対して責任を感じ、最後まで
やり通そうとする。
高学年(課題対応能力)
○ 自分が挑戦したい役割を選択する。
○ 自分の役割の必要性を理解し、責任をもっ
て役割を果たそうとする。
○ 活動において課題や困難が生じた場面に
おいても、解決方法を工夫して解決しようとす
る。
道徳との関連
他の学校・関係機関との連携
○ かけがえのない命を大切にし、思い
やりや感謝の心、自らを律しつつ自己
向上の精神をもたせる。
○ 高千穂高校、高千穂中学校及び町内の
小学校や幼稚園、保育園との連携を図り、
社会に生きる一員として、何をすべきかを
考えられるような児童を育成する。
○ 教育委員会や県のアシスト事業などとの
連携を図り、夢や希望を持って努力し続け
る児童を育成する。
特別活動との関連
○ 自発的自治的な集団活動を展開さ
せながら、自主的・実践的態度や人
間関係を築く力を育成する。
外国語活動との関連
○ 自国や他国に目を向け広い視野を
もたせるとともに、外国語を通したコ
ミュニケーションを楽しむ力を育成する。
家庭、・地域との連携
○ 家庭や地域での人間関係や生活体験を
通して、社会性を身に付け、「生き方」の基
礎を培っていく。
-8 -
核となる体験活動(総合的な学習の時間)
第3学年(高千穂町にふれる)
○ 高千穂たんけんたい
○ 剣道のまち高千穂
○ 神楽を知ろう(神楽唄)
○ 国際理解教育
第4学年(高千穂町を感じる)
○ 私たちが支える高千穂
○ 1/2成人式
○ 神楽を体験しよう
○ 音楽を通してふれ合おう
○ 国際理解教育
第5学年(高千穂町をみつめる)
○ 米タイム
○ 神楽の歴史について
第6学年(高千穂町を学び合う)
○ 私たちの町高千穂
○ 私たちにできること
高千穂中学校 第1学年(高千穂町を知る)
○ 学び方の学習(パソコン・図書)
○ 高千穂の生活(伝統芸能・文化)
○ 福祉教育(施設訪問・講演会)
○ 職業調べ
高千穂中学校 第2学年(高千穂町に学ぶ)
○ 高千穂町と他地域(歴史・文化)
○ 高千穂町に学ぶ(歴史・環境・産業)
○ 立志式
高千穂中学校 第3学年(高千穂町を発信する)
○ 高千穂の人に学ぶ(職場体験・訪問)
○ 高千穂町の将来への展望を調べる
○ 情報教育(HP作成・自分史)
○ 高校体験入学・進路説明会
上記5⑸の反映
各教科との関連
国語を適切に表現し、正確に理解
国 する能力を育成し、伝え合う力を高
語 める。
キャリアプランニング能力
○ 「働くこと」の意義を理解するこ
とができる。
○ 自ら主体的に判断してキャリア
を形成していくことができる。
上記5⑶⑷の反映
目指す児童像
○ 考える子ども
○ 思いやりのある子ども
○ たくましい子ども
人間関係形成・社会形成能力
○ 多様な他者の考えや立場を
理解することができる。
○ 自分の考えを伝え、役割を果
たすことができる。
児童の実態
○ 明るく元気で、素直である。
○ 物事に対する興味関心は高い。
○ 言葉で自分の気持ちを伝える事が苦手である。
○ 指示をされると動くことができるが自分から動く
ことが苦手な児童が多い。
上記5⒧⑵の反映
(6) 全体 計画 の 作成
上述 の内 容 を踏 まえ て 作成 し たも のが 、 下の 【資 料 2】 の 全体 計画 で ある 。
6
「年間指導計画」と「ロードマップ」の作成
(1) 年 間 指導 計画 の作 成
全体計画では、1∼6学年まで
の全体的な構想や系統性を可視化
す るこ とが で きた 。
次に、各学年における取組内容
について、各教科等の関連性や、
活動の時期、時数、学習活動の展
開イメージを明確にするための年
間 指導 計画 を 作成 した 。
作成に当たっては、児童の学習
経験や発達の段階、学校行事との
関連などを踏まえながら、どの単
元でどのような能力を身に付けさ
せることが可能なのかなどを検討
し な が ら 作 業 を 進 め 、【 資 料 3 】
のような、各教科との関連等を見
通すことができる横断的な計画を
作 成し た。
(2) ロ ードマップの 作成
上記の年間指導計画により、年
間を通した計画的な学習活動の展
開が可能となったが、さらに、各
学年における核となる体験活動の
流れや教科等との関連を一覧しな
がを一覧しながらイメージ化が図
り やす いよ う 、【資 料4 】 の よ う
な ロー ドマ ッ プも 作成 し た。
【 資 料4
【資 料 3
人
○:
人間関係形成・社会形成能力
第 5学 年年 間 指導 計画 】( 一部 )
自
課
キ
○:
自己理解・自己管理能力 ○:
課題対応能力 ○:
キャリアプランニング能力
4月
5月
学校行事
始業式・入学式
交通安全教室○
人
児童会
学級活動
人
係・委員会を決めよ 男女の協力○
う○
自
学校をきれいにしよう
総合的な学
習の時間
道徳
春の遠足
運動会予行練習
土作り
避難訓練(風水害)
米の利用方法について計画を立てる○
課
マンガ家になろう
自
○
星野君と定金君○
人
6月
7・8月
花の苗植え
終業式(1学期)
避難訓練(不審者侵
入)
始業式(2学期)
避難訓練(地震)
わたしの悩み○
自
夏休みの過ごし方
人
○
米の利用法・稲作について調べる○
課
田植え○
人
待合室で出会った少 消えたマイケル○
自
女○
人
キャプテン○
自
父の言葉○
人
ボランティアクラブ
に入って○
キ
外国語活動 世界のいろいろなこ ジェスチャーをつけ いろいろなものを数 好きなものを伝えよ
とばであいさつしよ てあいさつしよう
えよう○
課
う○
自
う○
人 Hello !
人 I 'm happy.
How many?
I like apples.
○
【国語】
自分の思いが伝わる
ように声に出して読
もう
「だいじょうぶだい
じょうぶ」○
人
各教科
【国語】
【国語】
文章の構成を考えな 物語の構成に気をつ
がら要旨を読み取ろ けて読もう
う「動物の体と気候」 「世界でいちばんや
課
かましい音」○
自
○
【理科】
花のつくり○
人
【理科】
【理科】
植物の発芽と成長○
人 メダカのたんじょう
【理科】
人
花から実へ○
人
○
【社会】
世界の中の日本
自
○
【社会】
【社会】
【社会】
国土の地形の特色と 国土の気候の特色と 米づくりのさかんな
人々のくらし○
課
人々のくらし
課 庄内平野○
課
○
地域の行事 春祭り
神話の里高千穂マラ
ソン大会
人材
【国語】
書き手の意図を考え
ながら読もう
「新聞記事を読み比
べよう」○○
課 キ
交通指導員
安全友の会
西臼杵支庁土木課
JA
神楽保存会
棒術保存会
第 5 学年 ロー ド マッ プ 】
-9 -
神社大祭
夏祭り(さるたフェ
スタ)
高千穂警察署
JA 生産部
救急救命士
消防団・学芸員
(3) 核 となる 体験 と各 教科 等 とをつ なぐ際 の 留意 事項
年 間 指 導 計 画や ロ ー ド マッ プ の 作 成 に お いて は 、 核 と なる 体 験 活 動 と各 教 科 等 の中 に あ
るキ ャリ ア 教育 の関 連 内容 と を効 果的 ・ 有機 的に つ ない で いく ため 、次の 4 つに 留意 し た 。
ア 学習 目 的の つな ぎ
「 何 を 学 ぶ か 」 だ け で な く 、「 な ぜ 学 ぶ べ き な の か 」 と い う 学 習 の 目 的 を 児 童 が 意 識
し やす いよ う につ なぐ 。
【資 料 5 過去 の 学習 や 教科 間の つ なぎ】(部 分 )
イ 過去 の 学習 や教 科 間の つ なぎ
総合的な学習の時間(きらめきタイム)
児童の既存の知識や過去の学習
パンフレットや冊子に
地域の自然や文化につ
調べたことを
と 核 と な る 体 験 と の 関 連 を 意 識で き
まとめ、発信する
いての課題を調べる
整理・分析する
る よう に つな ぐ 。(【 資料 5 】 参 照)
ウ 日常 生 活と のつ な ぎ
学 習 と 現 実 社 会 に お け る 具 体的 な
2月 社会科
7月 社会科
10月 理科
私たちの生活と森
米づくりのさかん
流れる水のはたら
場 面 と を 関 連 付 け る こ と に よ り、 児
林
な庄内平野
き
童 が 獲 得 す る 知 識 や 能 力 を 具 体的 な
問 題 解 決 場 面 に 使 用 で き る 機 会を 創
国語科における学び
出 する 。
新聞にまとめる
文章全体の構成
書く情報を収集する
エ 将来 の 役割 との つ なぎ
作文にまとめる
効果を考えるこ
目的や意図に応じ、簡単に書
学 ん だ こ と が 将 来 の 社 会 に おけ る
とがきる
いたり詳しく書いたりできる
役 割 ( 職 業 人 、 町 民 、 家 族 の 一員 と
し て の 役 割 ) へ と 意 識 さ れ る よう に
つ なぐ 。
7
第5学年の総合的な学習の時間(きらめき の時間)における取組
本稿 で 紹 介 す る単 元 は 、 自 分 た ちの 郷 土 「 高千 穂 の 自 慢 」 に つい て の テ ー マ追 究 を段 階 的
に 高め なが ら 、地 域理 解 や自 己理 解 を深 め させ た上 で 、取 材活 動 やP R 活動 等の 体験 活 動( 地
域 社 会 への 参 画 ) を 通し て 他 者 や 地域 と 関 わ る こ と の意 義 に つ いて 自 覚 さ せ る こと を主 な ね
ら いと して 設 定し たも の であ る 。
非常 に す ば ら しい 産 業 や 文 化 、 観光 資 源 な どを 有 す る 高 千 穂 町で あ る が 、 一方 で は、 過 疎
化 や 高 齢化 、 産 業 の 後継 者 不 足 、 さら に は 観 光 客 の 減少 な ど の 中山 間 地 に 共 通 する 課題 も 抱
え て お り、 こ れ ら の 課題 解 決 や 地 域の 活 性 化 は 町 全 体の 願 い と なっ て い る 。 し たが って 、 現
在 こ の 地域 で 暮 ら し てい る 人 々 が 、こ れ ら の 課 題 と 現実 に 向 き 合い な が ら 様 々 な工 夫や 努 力
を 重 ね てい る 姿 に 触 れる こ と は 、 子ど も た ち が 地 域 理解 を 深 め たり 、 今 後 の 生 き方 を考 え た
り する 上で 、 非常 に有 意 義な 学 びに つな が るも のと 考 える 。
身近 な 地 域 に おけ る 体 験 活 動 を 位置 付 け な がら 学 習 過 程 全 体 を探 究 的 な 流 れで 構 成し 、 そ
の 中に おい て 、特 に次 の ①∼ ③ の手 立て を 工夫 しな が ら学 習 活動 を展 開 した 。
①
追 究が 段 階的 に高 ま るよ う に、 複数 の 探究 過程 を 設定 す る。
課 題 対 応 能 力 を 育 成 す る た め 、「 設 定 し た 課 題 を 追 究 し 、 追 究 の 結 果 新 た に 生 じ た 課
題 を さ ら に 追 究し て い く 」と い う 、 2 サ イク ル の 探 究 過 程を 設 定 し た 。ま た 、 探 究1 の
中 に さ ら に 3 つの ス モ ー ルス テ ー ジ を 設 け、 ス テ ー ジ が 進む ご と に 児 童の 認 識 が 深ま る
よ う に す る こ とで 、 次 々 と派 生 す る 課 題 の解 決 に 取 り 組 む学 習 を 経 験 させ 、 探 究 的な 学
び 方 を習 得で き るよ う に工 夫し た。
② 課 題と 向 き合 う地 域 人材 の 姿か ら学 ば せる 。
高 千 穂 の よ さ( 自 慢 ) を 深 く 理解 す る に は、 表 面 的 な よ さ だけ で な く 、 様々 な 課題 と
向 き 合い なが ら 工夫 や 努力 をし てい る 人た ち の姿 か ら学 ぶこ とが 必 要で あ る。 こう し た
学び を通 し て、 将来 の 自分 ( の生 き方 ) を見 つめ さ せる き っか けと し た。
③ 体 験を ふ まえ たP R 活動 に よっ て、 地 域社 会の 活 性化 に 参画 させ る 。
体 験 な ど によ っ て 地 域 のよ さ を 深 く 理 解 する だ け で なく 、 自 分 た ち が考 え たこ とを P
R 活 動 と し て 主体 的 に 行 動さ せ る こ と に よっ て 、 地 域 社 会の 一 員 と し ての 役 割 や 自覚 が
高 ま るよ う工 夫 した 。
- 10 -
総合的な学習の時間の指導計画
展開
課題設定
(2)
主な学習活動
【 全 7 0 時 間 : 探 究 1 ( 5 4 時 間 ): 探 究 2 ( 1 6 時 間 )】
子どもたちの思考や認識
探究 1
テーマと単元の学習の流れについて話し合おう(2)
テーマ:未来にきらめけ!高千穂大好きプロジェクト
課題1
高千穂の自慢できるものは、
どのように受け継がれてきてい
るのかを探ってみよう。
高千穂峡や高千穂神社などの観光
地、山、川、高千穂牛…
自慢できるものはたくさんある!
他教科との関連
ì5年 国語
「メモを使って題材
をさがそう」
ì5年 道徳
「ひとふみ10年」
情報収集
(44)
実際に体験する計画を立て、体験してみよう(1)
ì5年 社会
【米作り】(全18)
【大豆作り】(全13)
【神楽・棒術・長刀】(全12)
「米づくりのさかんな庄内平野」
ì
学校行事「運動会」
お米はどうやって
どんな伝統芸能が
大豆はどうやって
ì
「収穫祭」
作るのかな…
あるのかな…
作るのかな…
整理分析
(2)
取材の結果を整理しよう。(2)
様々な思いが詰まって
・結果の報告会(ポスターセッション形式)を行う。 いるのだなあ…
まとめ
・表現
(6)
取材の結果をまとめよう。(6)
ì5年 社会
・米つくりや大豆つくりで大切なこと、神楽を舞う上で大切なことな
「わたしたちの生活
どをまとめる。
と食糧生産」
私たちのふるさとには、自慢
・受け継いでいく上での大切なこと
※ 食と農壁新聞コンクール 応募
できるものがたくさんある!
などをまとめる。
※ 高千穂町教育文化祭への出品
課題設定
(3)
高千穂の自慢について、実際に観光客に取材してみよう。(2)
探究 2
課題2
高千穂の自慢を大切にするため自分た
ちにできること考え、PR作戦を行おう
宮崎県で一番の観光客数だ!
県外客も多いぞ!
ì5年 国語
「意見とその理由を聞き取ろう」
ì学校行事
「秋の遠足」
あれっ、宿泊客は少ないぞ。観光客数も年々
減っているぞ。なんとかしなくては…
自分たちにできることを考えて話し合おう。(1)
橋本さんは将来に不安を感じているみたいだ…
・事前アンケートの結果について話し合う。
・ゲストティチャーの話を聞く。
ì5年 国語
観光客の減少をなんとか食い止めた
・観光協会の方の話を聞く。
「資料を読んで考えたことを書こう」
いと思っているんだ…
情報収集
(6)
自分たちにできることを発信するために体験活動を行おう。(6)
お米を使った郷土料理づくり(2)
大豆を使った郷土料理づくり(4)
ふるさとのよさや思いが込められた
食材や郷土料理、自分たちが作った
豆腐も、PRに使えるぞ!
ì5年 家庭科
「元気な毎日と食べ物:ごはんとみ
そしるを作ろう」
ì5年 学級活動
「地場産地の活用を進めよう」
整理分析
(1)
記録や感想等を整理分析し、効果的な取組や発信方法を考えよう。(1) ì5年 国語
・さまざまな角度から課題に対する自分なりの答えを導き出す。
「ふさわしい方法を選んで発表しよう」
まとめ
・表現
(6)
記録や自分たちの感想をもとに、自分の気持ちをまとめよう。(16)
ì5年 国語
・体験の記録や感想をもとに、高千穂に対する自分の気持ちを文章等
「活動したことを伝える
にまとめる。
文章を書こう」
例)観光ポスター、オリジナル拡大チラシ、観光ボランティア 等
・3月学習発表会で発表する。
例)CM、寸劇、ポスターセッション 等
自分たちのふるさとには自慢できるものがたくさんある。一方で、様々な課題もあり、その解決に向けて努力している
人たちがいる。自分も地域の一員として、課題解決に向けて考え続けたい。社会のために役立つ仕事に就きたい。
- 11 -
小1
地域と子どもたちとをつなぐキャリア教育の構想!
− 保育園児、高校生、高齢者との交流体験を通して −
三股町立梶山小学校
1
学校や児童の状況
2
○ 中山間地に立地する各学年1クラスの小規模校
であり、保護者や地域の方々は協力的である。
○ 児童たちは明るく素直であるが、進んで考え行
動する姿勢は十分でない。保護者は「将来の夢を
もち、工夫や努力をする姿勢を身に付けて欲しい」
と願っている。また、学校をとりまく自然や文化
など「地域のよさ」を当たり前のものととらえて
おり、そのすばらしさや人々の思いを深く感じと
るまでには至っていない。
3
キャリア教育の目標
地域に広がる豊かな自然
史跡や祭り、伝統文化
地域の人材
保護者
事業経営者などの職
業人
・ 保育園の園児
・ 町内高等学校の生徒
・ 高齢者
本校 における キャリア教 育の 構想
「よりよい人間関係を築きながら、夢や希望をもって努力し、
誇りをもってよりよい生活を築きながら自己実現を図ろうとする児童」
地域とかかわり、つながり、発信する体験を通して、地域のよさに気付いたり、様々な課題と向き
合いながら努力している人々の思いにふれたりしなが ら自分の生き方などについて考え、夢や希望
をもって努力し、誇りをもって自らよりよい生活を築いていこうとする資質や態度を育成する。
核となる体験
4
活用したい教育資源
○
○
○
・
・
低 学 年
地域とかかわり
地域のよさを知る
・町探検
・高校生との調理体験
・保育園児や高齢者と交流
中 学 年
地域とより深くかかわり
地域のよさを実感する
高 学 年
進んで地域とつながり
地域のよさを発信しようとする
・自然(川)の調査・見学
・伝統産業(大弓づくり)等
の調査・見学
・史跡巡り(梶山城跡 等)
・伝統芸能体験(棒踊り、俵踊り)
実 践事 例の 概要 (特色、位置付け)
小学校は、キャリア発達の基盤を形成する時期であり、特に低学年においては、様々な
活 動 へ の 興 味 ・ 関 心 を 高 め な が ら 、 意 欲 と 自 信 を も た せ て い くこ と が 大 切 で す 。
本 実 践 で は 、 第 1 学 年 に お い て 、 児 童 た ち に と っ て 身 近 な 地 域 の 教 育 保 育園 児 との 交流
資 源 を 活 用 し 、「 地 域 と か か わ り な が ら 、 地 域 の よ さ を 知 る 」 こ と を 通
して、誇りをもって自らよりよい生活を築いていこうとする資質や態度
の基盤を育てていく取組を紹介します。
【第1学年での主な体験】
6月
保育園児との交流①
9月
高校生との交流
11月
2月
地域の方々とかかわり
ながらの様々な学び
高齢者との交流
保育園児との交流②
成長の実感
- 12 -
高 齢 者と の交 流
高 校生 と の交 流
5
第 1 学年 に おけるキャリア教育の構想
(1) 低 学 年に おける キャリア教育
小学校は、キャリア発達の基盤を形成する時期であり、特に低学年段階においては、
体験活動を通して、児童の様々な活動への興味・関心を高めるとともに、意欲と自信
をもって活動できるようにしていくことが大切である。
そのためには、それぞれの体験活動の特長を洗い出し、ねらいを明確にしながら系統
的に位置付けていく必要があると考え、第1学年における「核となる体験活動」とし
て以下の内容を洗い出し、キャリア教育の視点で再構成することとした。
(2) 核 と なる 体験活 動の洗い出し(第1学年)
① 保育園児との交流体験
(6 月 生活 科 )
○ 地 域の 保育 園 を訪 問し 、 園児 と 交流 する 。
(小学校生活の紹介、園児とのふれあい 等)
※ 保 育 園 の 先 生 や 園 児 に 小 学 生 と な った 自 分
の 姿 を伝 え、 自 信や 誇り を 高め る 。
② 栽培体験
( 4∼ 11 月 生 活科 )
○ 学校内の畑やプランターで、サツマイ
モや 朝 顔、 ヒマ ワ リ等 を 育て る。
※ 植物の世話や観察を通し、植物の成長
して い く姿 を体 感 する 。
③ 高校生との交流体験
( 9 月 生 活科 )
○ 調 理 科 の 高 校 生 と 一 緒 に 、 自 分 た ちが 育 て
た サ ツマ イモ を 使っ て調 理 する 。
※ 高 校生 の姿 か ら様 々な こ とを 学 ぶと とも に
つ く りあ げる こ との 成就 感 を味 わ う。
④ 高齢者との交流体験 ( 1 1月 特別 活 動 )
○ 児 童 会 活 動 の 「 ふ れ あ い 集 会 」 に おい て 、
地 域 の高 齢者 と の交 流を 行 う。
※ 昔 か ら の 遊 び を 習 う と と も に 、 相 手の 気 持
ち を 考え て接 す る大 切さ に 気付 く 。
※
・学 校 での 生 活経 験 (係活動やあいさつ)
・授 業 での 学 び
学校では一番下の学年だけど自分た
ちはもう小学生!がんばらなくては…
・授 業 での 学 びや 係活 動
水やりや草取りなどの世話を継続す
ることが作物の成長につながってい
る。 成 長に は努 力 の継 続が 大 切!
・各 教 科や 領 域等 での 学 び
・サ ツ マイ モ の栽 培体 験
高校生たちはすごい、やさしく接し
て くれ る。 自 分た ち もそ う なり たい !
・学 校 での 生 活経 験
・授 業 での 学 び
これからも地域の高齢者からいろんな
ことを学びたい!
① ∼④ の体 験 活動 を通 し た学 び を踏 まえ て 、再 度、 保 育園 児 との 交流 を 行う 。
⑤ 保育園児との交流体験
( 2月 生 活科 )
○ 地 域 の 保 育 園 を 訪 問し 、 来 年度 小 学 校 へ 入
学し て くる 年長 児 と交 流す る 。
※ 6 月 時 と 今 回 の 交 流と を 振 り返 る こ と で 、
自分 の 成長 を実 感 し、 自信 や 誇り を 高め る。
・ 学校 生 活で の 成長
・ これ ま での 体 験で の学 び
これまでの体験を生かして工夫をする
と、前回よりも充実した交流になった!
①∼⑤の体験活動を系統的に位置付けた上で、教科や領域における学習とのつむぎを
意識しながら、次ページのように第1学年のキャリア教育を構想した。
- 13 -
(3) 第 1 学年 におけ るキャリア教育の構想
※ 体験活動の流れと関連する教科・領域の内容を示している(年間指導計画の略図)
月
4
月
5
月
6
月
生 活科
特 別 活動
核となる体験活動
□ が っこ うに い こう
教 科・ 道徳
□ そ うじ のし か た
音楽 がっこうのうたをうたおう
栽培体験
・ 花の 栽 培
□ か かり をき め よう
・ サツ マ イモ の栽 培
□ なつだいっしょに
□ み んな な かよ く
あそうぼうよ
保育園児との交流体験①
国語 みんなにつたえよう
道徳 およげジャンボこいのぼり
ほいくえんへいこう
7
月
8月
9
月
□き もち の よい こと ば
□2 がっ き のめ あて
□み ん なと もだ ち
□ たのしさいっぱい
あきいっぱい
高校生との交流体験
国語 はなしたいな、ききたいな
サツマイモりょうりをつくってみよう
10
月
道徳 ぼくにまかせてね
高齢者との交流体験
ふれあい集会
「むかしからのあそびをしよう」
11 □ あ きの おも ち ゃ
月
だ いし ゅう ご う
12
月
これまでの交流を通して学
1
んだことをもとに、保育園
月
児との交流を工夫する
2
月
保育園児との交流体験②
道徳 だいすき!わたしのまち
□ 3が っ きの めあ て
□ たす け あい
国語 たのしかったね1年生
しん1年生におしえてあげよう
3
月
□ 2年 生 にむ けて
(4) 核 と なる 体験の スパイラル
各交流体験は次のような構造であり、児童のキャリア発達を促進すると考える。
自 信と 誇 りの 高ま り
交 流 での 学び
→
高齢者との交流体験
高校生との交流体験
小学生としての自覚の高まり
保育園児との交流①
- 14 -
工夫
保育園児との交流②
※ 成長の実感(メタ認知)
6
交 流 体験 活 動の実際
(1) 保 育 園児 との交 流(1回目)
教科 ・ 単元 生活 科
ねら い
「 なつ だ
い っし ょ に
あそ ぼ うよ
∼ほ いく え んに いこ う ∼」
保育園の園児や先生に小学校の様子を伝えたり一緒に遊んだりすることを
通し て、 入 学の 喜 びを 実感 さ せ、 今後 の 小学 校 生活 への 意 欲を 高め る 。
【主 な 活動 内容 】
1 自 己紹 介
大 きな 声で 、 ゆっ くり 、 はっ き りと 自己 紹 介を する 。
2 歌
園児も知っている歌を一緒に歌ったり、音楽に合わせ
て お どっ たり す る。
3 お 絵か き
児童1名が園児1∼2名をリードしながら、一緒にお
絵 か きを する 。
4 遊び
園 児に 声を か けな がら 、 一緒 に 楽し く遊 ぶ 。
園児と遊ぶ児童の様子
【成 果 】
【 児 童の 感 想( 一部 )】
○ 学校では最も下の学年である児童たちが、園児 ○ みん な のま えで 、 なま え をい
た ち との 交流 の 中に おい て は 、日 頃と は 異な る「 お
うのがすごくどきどきしたけれ
兄 さ ん、 お姉 さ んと して の 顔」 を 見せ てく れ た。
ど 、い え たの でよ か った 。
○ 交 流 後 の 発 言 や 感 想 文 で 、「 自 分 た ち は も う 小 ○ ほ い く え ん の み ん な が 、 た の
学 生 に な っ た の だ か ら 、 が ん ば っ て い き た い 。」
しくあそんでくれてうれしかっ
と い う自 覚の 高 まり が見 ら れた 。
た。
(2) サ ツ マイ モの栽 培
教科 ・ 単元 生活 科
ねら い
「 やさ い づく り∼ サ ツマ イモ を そだ て よう ∼」
野菜を継続的に育てることを通して、成長の様子に気付き、自分たちと同
じよ うに 成 長す る 喜び を感 じ るこ とが で きる 。
【主 な 活動 内容 】
1 苗 植え
土 を耕 し苗 を 植え 付け 、収 穫へ の 願い をも って 大 切に 世 話し よ うと する 意欲 を 高め る 。
2 観 察と 成長 に 応じ た世 話
適 切な 世話 を 継続 して 、 変化 や 成長 の様 子 を観 察す る 。
3 収穫
楽 しく 収穫 し 、自 分た ち が頑 張 って 世話 を 続け てき た こと に 気付 き達 成 感を 味わ う 。
【成 果 】
○ 日 々 の 観 察 や 水 やり 、 草 取 りを 忘 れ て し ま うこ と も あ っ た が、 日 に 日 に 大き く 、力 強
く 成 長す るサ ツ マイ モの 様 子に 気 付き 、収 穫 まで 一生 懸 命に 世 話を する こ とが でき た 。
○ 収 穫 後 は 、 世 話 を最 後 ま で 頑張 っ て い た 友 達に 気 付 き 、 称 賛し 合 う と と もに 、 その 後
の 収 穫し たサ ツ マイ モを 生 かし た 高校 生や 高 齢者 との 交 流に 意 欲を もつ こ とが でき た 。
- 15 -
(3) 高 校 生と の交流
教科 ・ 単元 生活 科
ねら い
○
○
「 たの し さい っぱ い あ き い っぱ い 」
∼ サ ツマ イ モり ょう り をつ くっ て みよ う ∼
自分たちの育てた材料から料理をつくりあげることの喜びを体感する。
高校生との調理体験を通して、高校生のすぐれた技能やコミュニケーシ
ョ ン能 力 を実 感 し、 これ か らの 生活 に 生か し てい こう と する 。
【主 な 活動 内容 】
1 自 己紹 介
大 き な 声 で 、 相 手を 見 な が ら、 最 後 ま で は っき り と 言 う こ とを 気 を 付 け て自 己 紹介 を
する。
2
3
4
5
サ ツマ イモ の 調理 (い も だん ご づく り)
2∼3名のグループに分かれ、3∼4名の高校生に教
えてもらいながら、できるだけ自分で皮をむいたり、切
っ た り、 だん ご に丸 めた り する 。
イモ の洗 い方 を 習う 様子
会食
高校生に聞いてみたいことを質問する等して、できあ
が っ たい もだ ん ごを 楽し く 食べ る 。
高 校 生に 見守 ら れて 皮を むく 様 子
片 付け
最 後ま でし っ かり と片 付 けを 行 う。
感 想・ あい さ つ
今回の感想を伝え合うとともに、お礼の言葉をしっか
り と 伝え る。
話 を しな がら 楽 しく 会食
感 想を 発表 し 合う 場面
高 校生 と イモ を 切る 様子
【成 果 】
【 児 童の 感 想( 一部 )】
○ 調理用の服を着こなし、さっそうと調 ○ おにいさんにピーラーのやりかたをお
理をしていく先輩の姿を、児童たちはあ
しえてもらった。イモをきるのがとても
こがれのまなざしで見ていた。将来自分
う ま くて おど ろ いた 。
たちもがんばって成長したいという気持 ○ おねえさんは、きゅうしょくをつくる
ち が 高ま った よ うで ある 。
ひとになりたいといっていた。りょうり
○ 優しく教えてくれたりほめてくれたり
をしながら、かたづけもしていくところ
する高校生の姿は、児童のコミュニケー
が す ごい とお も った 。
シ ョ ンの 良い お 手本 とな っ た。
- 16 -
(4) 高 齢 者と の交流
教科 ・ 単元
ねら い
児 童会 活 動
「 ふれ あい 集 会」
昔からの遊びを通して地域の高齢者と交流することにより、相手の気持ち
を考 えて 接 する 大 切さ に気 付 かせ る。
【主 な 活動 内容 】
竹 とん ぼの 飛 ばし 方 を習 う様 子
1 自 己紹 介
相 手に きち ん と伝 わる よ うに 気 を付 けて 自 己紹 介す る 。
2
昔 から の遊 び を通 した 交 流
竹とんぼ、輪転がし、竹馬、お手玉等の遊びを、高齢
者 に 習い なが ら 楽し む。
3
お礼
自分たちが育てたサツマイモをプレゼントし、しっか
り と お礼 の言 葉 を伝 える 。
4
感想
楽しかったこと、高齢者や友だちのすごいと思ったと
こ ろ 、こ うす る とも っと 楽 しく な るこ と等 を 発表 する 。
プレ ゼン トを 渡 す様 子
【成 果 】
【 児 童の 感 想( 一部 )】
○ 昔からの遊びに夢中になってしまいながらも、 ○ おじ い ちゃ ん、 お ばあ ち ゃん
途中で気付いて、高齢者とコミュニケーションを
が、やさしくおしえてくれた。
と る 姿が 見ら れ た。
○ 竹とんぼが、うまくとばせる
○ 高齢者の方々の温かみのある言葉かけを体験す
ようになって、とてもうれしか
る こ とが でき た 。
っ た。
(5) 保 育 園児 との交 流(2回目)
教科 ・ 単元 生活 科
ねら い
「 しん 1 年生 にお し えて あげ よ う」
新1年生に、学校のことを教えたり、覚えた遊びで一緒に遊んだりして交
流し て、 入 学し て から の自 分 の成 長を 実 感し 、 2年 生に な る自 覚を 育 てる 。
【主 な 活動 内容 】
1 小 学校 の紹 介 、新 1年 生 への メ ッセ ージ
学 校の 学習 や 行事 を説 明 して 、入 学し てで きる よ うに な った こ とを 一人 ずつ 発 表す る 。
2 小 学校 の模 擬 体験 活動
ラ ンド セル を 背負 う登 校 体験 や 給食 当番 体 験を 楽し く 行う 。
3 遊び
学 校で 覚え た 遊び を、 新 1年 生 が楽 しめ る よう に工 夫 して 行 う。
【成 果 】
○ 1 学 期 か ら 、 2 回目 の 交 流 を大 変 楽 し み に して い た 。 高 校 生や 高 齢 者 と の交 流 後も 学
ん だ こと やう ま くい かな か った と ころ を生 か そう と計 画 や準 備 を頑 張っ て いた 。
- 17 -
小3
地 域 の 人材 や 地 元 企 業 と 連 携 し た キ ャ リ ア 教 育 の 実 践
−明確化と焦点化による体験活動の充実を通して−
日 南 市 立 吾 田 東 小学 校
1
学校や児童の状況
2
・
日南市の中心部に広がる住宅街を主な校区
とする児童数約430名の中規模校である。
・ 保護者や地域の学校に対する関心は高くて
協力的であり、連携した取組がさかんである。
・ 子どもたちは明朗活発で素直である 。また、
読書を好む者が多く、学習や体験活動等への
関心が高い。
・ 様々な体験活動や学習経験を通して、自己
肯定感を高めていくことが課題である。
3
活用したい教育資源
・
歴史ある街並みや伝統芸能が保存され
ている飫肥や油津地区
・ 日南市の政治や経済、福祉を支える官
公庁や企業、商店や福祉施設が集まる吾
田地区
・ 学校教育に協力的な地域・保護者ボラ
ンティア
・ 伝統を守り、地域の活性化を図ろうと
協力し合って活動を続ける地域の人々
本校 における キャリア教 育の 構想
夢や希望をもって努力し、意欲をもって学び続ける児童を育てる。
核となる「体験活動」
遠足
宿泊学習 生活科の町探検
総合的な学習の時間の見学
運動会
修学旅行
卒業式
① 教育課程の中に位置付けられた様々な体験活動の中から核となる取組を選び出す。
② キャリア教育の視点から活動を見直し、そこで育てたい力を明確化、焦点化する。
③ 核となる体験活動につながる各教科等や学級経営上の実践上の取組を関連付け、重点
指導計画を作成する。
各
○ 互いに理解し、
協 力 し合 う力
【 人と つ なが る】
4
学
年
の
重
点
指
導
目
標
本校 で 育て たい 力
○ 長 所 を 伸 ば し 、 ○ 必要な情報を収
○ 取 り 組む べき 具
苦 手 を 克 服 し よう
集 し て 方 法を 考 え 、
体的 な 目標 をた て 、
と す る態 度
実践 する 力
実 現 の ため の 方 法
【 自 分 を見 つめ る 】
【 物 事を 進め る 】 を見 通 す力
【 夢に 向 かう 】
実 践事 例の 概要 (特色、位置付け)
○
○
○
3 年 生の 総合 的 な学 習の 時 間を 中 心と した 実 践を 紹介 し ます 。
核 と なる 体験 は 「紙 すき 」 と「 工 場見 学」 で す。
本 実 践 を 通 し て 育 てた い 力 は 「 課題 に 向 け て 計画 的 に 取 り 組 む
力 【 物 事 を 進 め る 】」 と 「 自 分 に か か わ る 人 た ち に 感 謝 し 、 そ の
気持 ち を表 現す る 力【 人と つ なが る 】」の 二つ が主 で す。
○ 紙 す き 体 験 や 工 場 見学 を 支 え る ボラ ン テ ィ ア や企 業 と の 事 前 打
ち 合 わ せ で 育 て た い 力を 明 確 に 示 し、 内 容 を 焦 点化 す る こ と で 体
験活 動 の充 実を 図 るた めの 取 組を 紹 介し ます 。
- 18 -
5
キ ャ リア 教 育推進の核となる体験活動(各学年)
育 てた い力 (重点 に ○)
学年
6
核と なる 体 験活 動
物 事を
進 める
人とつ
ながる
自分を見
つめる
1年
学 習 発表 会(学 級活 動 )
○
○
2年
運 動 会(学 校行 事)
○
○
3年
紙 す き体 験・ 王 子製 紙 見学
(総 合的 な学 習 の時 間 )
4年
運 動 会(学 校行 事)
5年
宿 泊 学習 (学校 行事 )
6年
卒 業 式(学 校行 事)
○
○
○
○
夢に 向
かう
○
○
○
○
第 3 学年 の キャリア教育の構想
(1) 総合的な学習の時間に位置付ける「核となる体験活動」
学
1学期
2学期
3学期
期
総 「 紙の ひみ つ をさ ぐろ う 」 「 紙の ひ みつ をさ ぐ ろう 」
合
①課 題 設定
①課 題設 定
的
②追 究
②追 究
な
③体 験
③体 験
学
習
工場見学
紙すき
の
時
(直に見る)
(体験する)
間
④ま と め
④ま とめ
キャリア教育で育てたい力
各
教
科
等
「 福祉 につ い て知 ろう 」
①課 題設 定
②追 究
③体 験
福祉活動
(生かす)
④ま とめ
課題解決に向けて計画的に取り組む力
【物事を進める】
自分にかかわる人たちに感謝し、その気持ちを表現する力
【人とつながる】
国 語
「調べたことを整
理して書こう」
【物事を進める】
道 徳
「支え合う心」
【人とつながる】
- 19 -
社 会
「かわってきた人
々のくらし」
【人とつながる】
(2) 学習の時間の流れ
第3学年
月
段階
単
元
4 出会う は
じ
め
に
出会う
紙
の
ひ
み
つ
を
さ
5 つかむ ぐ
ろ
調べる う
・
手
作
り
葉
書
・
紙
す
6
き
体
験
生かす
総合的な学習の時間「紙のひみつをさぐろう」指導計画(全56時間)
時
数
主 な 学 習 活 動
育てようとする
資質や能力及び態度
指導上の留意点
・評価(☆)
3 1 オリエンテーション
○ 総合的な学習の時間につ
いての説明を聞く。
・目標やテーマな
どについて、発
達の段階を考慮
しながら説明す
る。
1 1 課題設定をする。
・課題を設定する。 ・保護者に学習
○ 紙でできているものを付
内容を知らせ
箋紙に書き、グループ分け
協力体制を充
をする。
実させる。
○ 紙についての疑問を出し、
学習課題を設定する。
各教科等
との関連
社会
「 わたしの
ま ちみんな
のまち」
紙はどのようにしてできるのか。
4 2 紙の作り方を調べる。
・必要な情報を収集 ・必要に応じて 図工
○ 材料について調べる。
・選択する。
図書資料やパ 「楽しくつ
○ 作る過程について調べる。
ソコンの使い かおう」
○ 用意するものについて調
方を指導す
べる。
る。
☆活動の様子
1 3 紙作りの計画を立てる。
・見通しをもって計 ・大まかな作業
○ グループごとにタイムテ 画を立てる。
の流れを説明
ーブルを作る。
したうえで活
○ 時間、場所、役割、作り
動させる。
方を確認する。
5 4 紙パックをパルプ化する。 ・他者と協力して課 ・全員が安全か
○ 牛乳パックを集める。
題を解決する。
つ意欲的に活
○ パックを洗う。
動できるよう
○ パックを切り開き、乾か
に配慮する。
す。
☆活動の様子
○ パックを切り分け、表面
のフィルムを剥がす。
○ 水に漬けておく。
○ ちぎる。
7
5 5 紙すきをして、乾燥させる。 ・他者と協力して課 ・全員が安全か
○ 水にパルプを溶かす。
題を解決する。
つ意欲的に活
○ 道具を使って紙をすく。
動できるよう
○ 更紙で水分をとり、アイ
に配慮する。
ロンで乾かす。
☆活動の様子
9
6 6 紙作りについてまとめる。 ・相手や目的に応じ ☆発表の様子
○ まとめる方法を考える。
て分かりやすくま
○ まとめを書く。
とめ発表する。
○ 発表する。
- 20 -
出会う 王
子
製
紙
つかむ を
見
10 調べる 学
し
よ
う
11 生かす
12 出会う 調
査
結
果
を
つかむ ま
と
め
よ
う
調べる
2 1 新しい学習課題を設定する。・課題を設定する。 ・大きなテーマ 社会
○ 1 学期の学習を振り返る。
に基づいて課 「市のよう
○ 新たな疑問を出し合う。
題を考えさせ す」
る。
王子製紙では、どのように紙を作っているのか。
3 2 王子製紙について調べる。 ・必要な情報を収集 ・王子製紙に協
○ 王子製紙について知って し選択する。
力を仰ぐ。
いることを話合う。
☆活動の様子
○ 見学にいって見たいも
の、たずねたいことをまと
める。
5
○ 事前に見学のポイントを
・王子製紙の方から
聞く。
説明を受ける。
○ 見学の準備をする。
・活動の安全に十分
配慮する。
8 3 王子製紙の見学をする。
・他者と協力して課 ☆活動の様子
○ 工場の様子
題を解決する。
○ 働く人の様子
○ 工場のまわりの様子
○ 原料から製品までの過程
・ 自分たちの紙
作りと似てい
4 調べたことをまとめる。
・相手や目的に応じ るところ、違
○ まとめる方法を決め、調 て分かりやすくま うところを考
べたことを書く。
とめ発表する。
えさせる。
○ 発表する。
☆発表の様子
2 1 工場見学の発表をまとめる。・学習を振り返り、 ・児童の感想を 国語「調べ
○ 王子製紙と人
学習や生活に生か 分類し、新し たことを整
○ 王子製紙と自然
そうとする。
い課題への方 理して書こ
○ 人々の思いや工夫
向付けを図る。 う」
・大きなテーマや
今まで調べてき
たことをもとに、
学習課題を設定
させる。
1 2 新たな学習課題を設定する。 ・課題を設定する。 ☆活動の様子
地域のために、自分たちにできることはないか。
生かす
8 3 課題解決に向けて考える。
○ 必要な情報を収集しなが ・必要な情報を収集
ら、学習を進める。
し選択する。
○ 話し合って自分達にでき ・他者と協力して課
ることをまとめる。
題を解決する。
1 4 考えたことを発表する。
・相手や目的に応じ
て分かりやすくま
とめ発表する。
☆発表の様子
- 21 -
道徳
「支え合う
心」
7
体 験 活動 を 充実させるための手立て
(1) 事前打ち合わせによるねらいの明確化
体験活動を充実させるには、事前の打ち合わせが極めて重要となる。これまで、地域
の人材を活用した体験活動を数多く実施してきたが、時には学校側の意図が十分に伝
わっておらず、活動のねらいにつながりにくい内容となってしまうこともあった。
そこで、下記のような確認表を活用しながら打ち合わせを行うようにした。単元全体
の流れに沿って各体験活動の意義を説明したところ、学校側の意図がよく伝わり、ね
らいの明確になった活動を計画することができた。
[体験活動のねらい確認表]
地 域素 材 ・人
材 活用 の 視点
体験 活動
6
紙 すき 体験
課題の設定
情報の収集
整理・分析
ま とめ ・ 表現
○ こ れ ま で 調 べ てき た 紙 す
き の 方 法 を 実 際 の体 験 を 通
し て確 認 する 。
工 場見 学
(事 前 )
課題の設定
情報の収集
整理・分析
ま とめ ・ 表現
○ 工 場 見 学 へ の 意欲 を 高 め ○ 事前 に 見 学 の ポ イ
る。
ン トを 話し て もら う 。
○ 見学 の 視点 を明 確 にす る 。
(工 場 見学 担当 者 )
工 場見 学
(当 日 )
課題の設定
情報の収集
整理・分析
ま とめ ・ 表現
○ 紙 す き の 紙 と の違 い に 気
付 く。
○ よ り よ い 製 品 にし よ う と
す る思 い や工 夫に 気 付く 。
工 場見 学
(事 後 )
課題の設定
情報の収集
整理・分析
ま とめ ・ 表現
○ 社 会 貢 献 と い う新 た な 取 ○ 事後 に 出 前 授 業 を
組 の工 夫 に気 付く 。
実 施し 、 新 た な 疑 問
○ 自 分 達 に で き る こ と を 実 に 対し て 説 明 し て も
践 しよ うと す る。
ら う。 (工場 担当 者 )
月
10
月
11
月
活 動の ねら い
留意 事 項
(打 ち 合わ せ 先)
月
○ 紙作 り の 大 変 さ も
感 じ取 れ る よ う に 、
準 備の 段 階 か ら 児 童
も 関わ らせ る 。
(コー ディ ネ ータ ー )
○ 焦点 化 さ れ た 見 学
内 容と ね ら い に 沿 っ
た 様々 な 気 付 き を 促
す 声か けを す る。
(工 場 見学 担当 者 )
(2) 事前・事後活動による見学内容の焦点化
体験活動を充実させるには、どのような内容や量の体験をさせるかを検討することも
重要である。必要以上の情報を与えてしまっては、活動のねらいがかえって不明瞭に
なり、学習効果も期待できなくなる。
そこで、工場見学の事前・事後活動による活動内容の焦点化を行った。
①事前活動…見学のポイント説明
事前に見学のポイントを工場見学の担当者から説明してもらう。
②見学活動…焦点化された見学内容とねらいに沿った様々な気付きの促し
効果的な見学内容の構成と適切な声かけを工夫する。
③事後活動…新たな疑問への対応
見学から新たな疑問を引き出し、次の探究活動へ導く。
このように、活動内容を焦点化することで、活動のねらいに沿った児童たちの様々な
気付きがより多く見られるようになった。
- 22 -
8
体 験 活動 の 実際
[紙すき体験の様子]
(1) 地域ボランティアによる紙すき体験
「 紙 は ど の よ う に し て 作 る の だ ろ う 。」 と い う 課 題 に
ついて、まずは自分達にできる紙の作り方に関する情報
を収集、整理・分析した後に、実際に紙作り体験を行っ
た。ねらいは、自分達が調べた紙作りの方法を実際に体
験して確認するとともに、手すきによる紙作りを通して
「 手作業での紙作りは大変だ 」と体感させることである 。
こ の 体 験 に よ り 、「 大 量 の 紙 を こ の や り 方 で 作 っ て い
たら大変だ。工場ではどのように紙をつくっているのだ
ろう?」という疑問が喚起され、工場における紙生産に
ついての新たな課題が設定できた。また、紙づくりにおいて、地域ボランティアの力
を 借 り て 協 働 作 業 を 行 っ た こ と に よ り 、「 自 分 達 は 多 く の 方 々 に 支 え ら れ、 応 援 さ れて
いる」ということを実感できた児童も多かった。
[工場見学の様子]
(2) 工場での実地見学・調査
紙 すき 体 験 から 生 ま れた 課 題 解決 の た め、 実 際 に 工場 で
の実地見学・調査を行った 。大きな操業音が響く工場内は 、
児童 が 初め て目 にす る物 ばか りが 並ん で いたが 、 事前に 見
学の ポ イン トを 聞い てい た児 童は 、そ れ ぞれの 疑 問解決 に
つながる数多くの発見をしていった。
ま た、 頻 繁 に行 き 交 う人 々 や 車両 を 目 の当 た り に する こ
とで 、「一 つの製品 に600人以上の人が関 わっている 」、
「三つの班が交替で仕事をし、24時間操業を支えている」等、多くの人々の協力で
稼動している工場の実態を肌で感じる貴重な機会となった。
さ ら に 、「 工 場 の 周 り に 植 え て あ る 木 は チ ッ プ の 材 料 で は な い か ? 」 と い う 新 た な 疑
問も生まれたので 、見学後に改めて工場の方に質問する機会を設けた 。質問の結果 、
「工
場の周囲に樹木を植えているのは、地域の環境保全のため」という事実を知った児童
は、企業と地域社会とのつながりや、企業で働く人たちの地域への思いなどを認識す
ることができた。
9
成 果 と課 題
[人々の熱い思いにふれた工場見学]
○
成果
・ 地域の素材や人材活用の視点やねらいを明確化
する一覧表を作成し、事前の打ち合わせに活用し
たことにより、体験することだけが目的なのでは
なく 、
「 体験を通してどのような力を高めたいのか 」
ということについて、地域の方と共通理解するこ
とができ、体験活動の充実を図ることができた。
・ 1度の体験活動で行っていた内容を複数回に分
け、事前・事後活動として位置付け直したことに
より、各体験活動の内容を焦点化することができ、児童の新たな気付きや認識を
引き出すことができた。
○ 課題
・ 「育てたい力は何なのか」を明らかにしながら、核となる体験活動につながる
各教科等との関連について更に見直していく必要がある。
- 23 -
小4
人 と か か わり 自 己 を 見 つめ る キ ャリ ア 教 育 の 構想
− ふるさとガイドの体験活動を通して −
西都市立妻北小学校
1
学校や生徒の状況
2
・記紀の道や西都原古墳群
など古代について学べる
素材が豊富にある。
・児童は身近な素材とかかわる体験が不足し
ていることから、内在する価値を自覚しな
いまま生活している。
・身近な素材にかかわろうとする意識やそこ
から疑問や課題をもって解決しようとする
意欲、主体的な態度を育てる必要がある。
3
活用したい教育資源
・記紀の道に点在する10の伝承地(都萬神
社、御舟塚、逢初川等)
・EM菌で浄化活動に取り組む稚児ヶ池
・ピーマン、早期水稲など市の基幹産業と
なっている農業
・自然・文化遺産の継承
や地域・産業振興に貢
献する人々の姿や思い
本校 における キャリア教 育の 構想
自 分 の 夢 を 見 つ け 育 て る 活 動 を 基 本 と し て 、 よ り よ い 自 分 を 求 め て 他 者 や 事 象 と か か わ っ た り 目標
に向 け て努 力し た りす るこ とを 通 して 、主 体 的に 生 きよ うと する 児 童の 育成 を 目指 す。
単 元 (さい と学 )と核 と なる 体験 活 動
低学年
ふるさととふれあう
1年
くすのきはかせになろう
○ 都萬 神 社の楠 との ふれ あい
2年
レッツゴー!町たんけん
○町たんけん
○稚児ヶ池クリーン作戦
4
中学年
ふるさとのよさを発信する
3年
ピーマン作り
○ピーマン栽培と料理体験
4年
「記紀の道」博士になろう
○地域 イベントや 校内の模擬
コースでのガイド体験
高学年
喜びや苦労・貢献を考える
5年
バケツ稲作り
○バケツ稲栽培と料理体験
6年
福祉について考えよう
○高齢・障がい者の疑似体験
○校内・校区内改造計画のポス
ターセッション
実 践事 例の 概要 (特色、位置付け)
本事 例 は第 4学 年 総合 的な 学 習の 時 間(さ いと 学)の 単元 『「 記紀
の 道 」 博 士 に な ろ う』 の 実 践 で す。 児 童 の 身 近 に ある 「 記 紀 の 道」
に は 、 日 本 の 創 世 を記 し た 古 事 記・ 日 本 書 紀 に 登 場す る 伝 説 の 場所
が 多 く 保 存 さ れ て いま す 。 そ れ らの 文 化 遺 産 の よ さを 、 児 童 が 地域
内 外の 人 々や 下級 生 に向 けて ガ イド 体 験を する 学 習で す。
イ ン タ ー ネ ッ ト や書 籍 で 調 べ た内 容 を そ の ま ま ガイ ド す る の では
な く 、 体 験 を 通 し て「 人 と か か わり 自 己 を 見 つ め る力 」 を 育 成 する
こ と に 重 点を 置 い た 実 践を 紹 介 し て い き ます 。
【「 人と か かわ り自 己を 見 つめ る力 」を 育 成す るた め の探 究 活動 】
1 何 をガ イ ドし たら よい の か、 情報 を集 め 、整 理す る 。
2 ボ ラン テ ィア ガイ ドの 方 から ガイ ドの 意 義や ポイ ン トを 学 ぶ 。
3 職 業人 の 講話 から 、P R の仕 方(伝 え方 )を学 ぶ。
4 相手意識や目的意識を明確にしてガイドの仕方を考え、現地
ガイ ド体 験 を行 う。
5 反 省を 生 かし て改 善し た ガイ ドを 校内 の 模擬 コー ス で行 う 。
- 24 -
都萬神社
鬼の窟古墳
5
第4学年キャリア教育年間指導計画
本校 の キャ リア 教育 の 目標
自分の夢を見つけ育てる活動を基本として、よりよい自分を求めて他者や事象とかかわったり目標に
向 けて 努力 した り する こ とを 通し て 、主 体的 に生 き よう とす る 児童 の 育成 を目 指す 。
スローガン ”夢と勇気と元気をもった子どもになろう”
身 に 付け させ たい 力と学 年 部の 重点 目 標
か かわ る力
(人間 関 係形 成・ 社 会形 成能 力 )
見 つめ る力
(自己 理 解・ 自己 管 理能 力)
つ きす すむ 力
(課題 対 応能 力)
よ りよ く生 き る力
(キャ リ アプ ラン ニ ング 能力 )
○
自分から元気にあいさつをしたり、はっきり返事をしたり
しな がら 積 極的 に 人と かか わ るこ とが でき る 。
○ 仲間や地域の人と協力したりかかわったりする中で、人と
かかわることの大切さを認識し、礼儀や協調性を身に付けて
いく こと が でき る 。
○ 自他やふるさとのよさに気付き、それを大切にしていくこ
とが でき る 。
○ 困難なことでも、目的達成に向けて工夫したり、継続した
りす るこ と がで き る。
○ 課題をよりよく解決していくために、自分から方法や内容
を工 夫し て いく こ とが でき る 。
○ ふるさとのよさを守ろうとする人々の生き方や考え方を学
ぶ中で、社会貢献の意義をつかみ、よりよく生きようとする
意欲 をも つ こと が でき る。
核となる体験活動
(さいと学)
社 会科
「わ たした ち の宮 崎県 」
○ふるさと宮崎の特色や土
地・気候・伝統等を生かした
郷土づくりの工夫や努力に
つい て 調べ る。
国 語科
「仕 事リ ー フレット を 作ろ う 」
○選んだ仕事の社会貢献の
目的やそのための工夫や
努力 を 調 べ、ま と める 。
・博 士 検定 にチャレンジする。
* 校 内の 模擬コ ー スで、 下級生 に
ガイドを行う。
・下 級 生向 けにガ イドの 仕方 を工 夫する。
*地域イベントに参加し、地域内
外の人にガイドを行う。
・ガイドの仕 方 に修正 を加 え、 練 習す る。
* 職 業 人 講 話 (バ ス ガ イ ド )を 聞 き
相手意識や目的意識を明確に
したガイドの仕方を考える。
外 部との 連 携
○ 職業 人講 話
○ボランティアガイドの方
に よる ガ イド勉 強会
○ 地域 イベ ント への 参 加
○ 保護 者と の 連携
特 別活 動
○ 自発 的自 治 的集 団活 動
・係活 動 、集会 活 動
・日直 、当 番活 動
○ 各種 行事
・運動 会 、音楽 大 会、遠 足
・体 験 を振 り返 り、 修正 点を 話 し合う 。
社 会科
「郷 土を 開 く」
○ふるさとの発展のために
尽力した人の業績や努力、
苦労 を 調 べる 。
道徳
*地域イベントに参加し、地域外
の人にガイドを行う。
○ 郷土 愛「徳 べ えざく ら 」
*遠 足でガイド 体験(クラスの仲間
に対して)を行う。
○礼儀、協力、公共心、規
○尊敬・感謝「あと三十分
おくれ た ら」
則の 尊重
・ガイドの仕 方 を考 え、 練 習する。
社 会科
「く らし を 守る 」
○くらしを守るために働く人
の仕事や地域の活動から、
その 工夫 と努 力 を 調べ る 。
* ボ ラ ン テ ィ ア ガイドの 方から ガイ
ドの意義やポイントを学ぶ。
・ふ るさ と ガイドの意 義 や目 的 を考 える。
・記 紀 の道の 伝説 を調 べる。
- 25 -
学 級経 営(日 常指 導 )
○ 基本 的生 活 習慣 の指 導
・あい さつ 、そ うじ 等
○ 集団 を 意 識し た行 動
○ 個性 伸長 、自 己肯 定 感
6
核 と な る 体 験 活 動 (ボ ラ ン テ ィ ア ガ イ ド 体 験 )の 実 際
(1) ボランテ ィア ガイドの方からガイドの意義やポイントを学ぶ
○
目標
「 なぜ 、 ガイ ドを す るの だ ろう 」と い う課 題に 対 して 、 ボラ ンテ
ィア ガイ ド をさ れて い る方 の 思い を聞 い たり 、自 分 の思 い を考 えた
りす るこ と で、 ガイ ド をす る 目的 を理 解 する こと が でき る 。
○ 学 習指 導 過程
段階
主 な学 習 活動
指 導上 の 留意 点
1 ボ ラ ン テ ィ ア ガ イ ○ 児 童 が 憧 れ て い る (目 標 に し て
ドをされている方の
い る )ガ イ ド さ ん の ガ イ ド の 様 子
導
ガイドの様子をVT
を視聴させ、本時に対する意欲
R で視 聴 する 。
を 高 める 。
入 2 め あて を 確か める 。 ○ 学 習 フ ァ イ ル を 活 用 し て 、 本
時 の 目標 を明 確 に意 識さ せ る。
め
○
7
分
3
評 価(方 法)
資料・準備
写真
VT R
学習ファ
ィル
「な ぜ ガ イ ド を す る の か 」、 ガ イ ド を す る 人 の 思 い
を さぐ り 、ガ イド を する 目 的を もと う 。
ガイドをする目的
に つい て 話し 合 う。
(1) 自 分 の 思 い を 考
える。
展
*個 人 →グ ル ープ
(2) ガ イ ド を さ れ て
いる方の思いを
想像 す る。
*個 人 →全 体
4 ボランティアガイ
開
ドをされている方の
思いを聞いて目的に
ついて考える。
(1) V T R を 視 聴
する。
3 0
(2) 目 的 に つ い て
分
話し合う。
4
ボランティアガイドの方
○
主体的な学習に導くために、 ○ ガ イ ド を
自分の考えをしっかりもたせた
されている
上でグループや全体の話合いに
方 の 思 い を 学習ファ
参 加 させ る。 (個別 支 援を 行 う)
聞 い た り 、 イル
自分の思い
○ ガイドをされている方の話を
を考えたり
聞く前に、その思いを想像させ
す るこ と で 、
ることで自分の思いと照らし合
ガイドをす
わ さ せる 。
る目的を理
○ VTRを視聴した後、自分の
解 して い る 。 VT R
想像した答えと照らした意見を
(発 表 ・ 学 習
述 べ させ 、交 流 させ る。
フ ァイ ル )
○ 意外や納得などの感想をもた
せることで目的を正しく理解さ
せる。
終
まとめをして、次 ○ まとめは児童の言葉を用い、
時 の活 動 を見 通 す。
自分たちの学習であることを認
識 さ せる 。
末
ま (例 )愛 す る ふ る さ と を 大 切 に し た い 、 人 と か か わ り
○
学習ファ
イル
な が ら自 分を さ らに 向 上さ せた い 。
○
8
分
学習ファイルを活用し、目標
と照らして何が達成できたか、
次時はどんな課題に取り組むの
か 、 つか ませ る 。
- 26 -
ボランティアガイドさんに
よる学習会の様子
(2) 遠足でガ イド 体験(クラスの仲間に対して)を行う
〈 体験 活動 の ねら い〉
○ ガイ ド の実 体験 を させ る こと で、 学 習へ の主 体 性や 意 欲を さら に 高め る。
○ 自分 で 振 り 返 った り 仲 間 か らア ド バ イ ス を も らっ た り す るこ と で 、 ガ イ ドの 仕方 を
見 つめ 、 より よく し よう と する 意欲 や 態度 を引 き 出す 。
児 童 は 、 自 分 た ち で 記 紀 の 道 の 伝 説に つ い て 文 献や イ
ン タ ー ネ ッ ト を 使 っ て 調 べ る 活 動 を 行っ た 。 そ し て、 前
述 し た よ う に 、 ボ ラ ン テ ィ ア ガ イ ド をさ れ て い る 方か ら
ガ イ ド の 意 義 や ポ イ ン ト を 学 ん で 自 分た ち の 発 表 をま と
め た 。 自 分 の お 気 に 入 り の 伝 承 地 を ガイ ド す る 学 習で あ
る た め 、 児 童 は 意 欲 的 に 取 り 組 ん だ 。し か し 、 こ の時 点
で は 、 方 法 や 内 容 は 相 手 を 意 識 し て 工夫 さ れ た も のに は
な り えて なか っ た。
そ こ で 、「 実 際 の 現 場 で 仲 間 に ガ イ ド を す る 」 と い う
活 動 を 取 り 入 れ 、 自 分 た ち の 発 表 の 在り 方 を 見 つ めよ う
と す る 意 欲 や 態 度 を 引 き 出 す こ と に した 。 原 稿 を 手に せ
ず 暗 記し た内 容 を真 剣に 発 表す る 児童 が多 か った が 、
「た
だ 話 す だ け で は 分 か り に く い 」、「 も っ と 工 夫 し た 方 が
お も し ろ い 」 な ど 、 相 手 を 意 識 し て 修正 を 図 る 必 要性 を
児 童 は感 じ取 っ てい った 。
そ し て 、 そ の 後 開 か れ る 地 域 イ ベ ント で の ボ ラ ンテ ィ
ア ガ イ ド に 向 け て 、 よ り よ い ガ イ ド がで き る よ う に工 夫
を 始 め た 。 劇 仕 立 て に す る グ ル ー プ 、動 作 を 多 く 取り 入
れ る グ ル ー プ 、 テ ロ ッ プ や 絵 な ど 視 覚情 報 を 加 え るグ ル
ー プ な ど 、 多 く の 児 童 が 自 発 的 に 自 分た ち の 発 表 を改 善
し て いっ た。
(3) 地域イベ ント に参加し、地域外の人にガイドを行う
遠足でガイドをする児童
〈 体験 活動 の ねら い〉
○ 記 紀 の 道 の こ と を 知 ら な い イ ベ ン ト 来 訪 客 に 対 し て 、「 参 加 し て よ か っ た 」、「 楽 し
か っ た 」、「 勉 強 に な っ た 」 と い う 感 想 を も っ て も ら う た め に ガ イ ド を 行 い 、 そ れ ら
の 感想 を 受け て自 分 たち の 取組 に対 す る有 益感 や 満足 感 を味 わわ せ る。
【 地域 イベ ン トの 概要 】
* イベント 名 : JR 九州 旅 企画 「 妻線 廃止 3 0周 年/ 懐 かし の 妻線 路線 跡 を散 策す る 旅」
* 開 催 日 : 平成 26 年 11 月 2日 (日 )
* 参 加 者 : 九州 各県 か らの 旅 愛好 者 約 10 0名
*内
容 : 都萬 神社 か ら西 都 原公 園に か けて 続く
「記 紀の 道 」を 地 元ボ ラン テ ィア によ
るガ イド を 聞き な がら 、散 策 する 。
休 日 に 行わ れ る 教 育 課 程 外の イ ベ ン ト であ る こ と か ら 、希 望 者 の み の 参加 で あ った が、 多 く
の 児 童 が ボラ ン テ ィ ア ガ イ ドと し て 参 加 した 。 校 区 内 で の活 動 で あ る こ と、 妻 北 地域 づく り 協
議 会 が 支 援団 体 で あ る こ と から 児 童 の 保 護者 も 安 心 し て 参加 さ せ る こ と がで き 、 その 意義 に も
大 い に賛 同し て いた だけ た よう で ある 。
- 27 -
ガイド内容の一部
ここは 、記紀の道伝 承ポイン トの1番目「 都萬神 社 」で す 。
コノハナ サクヤヒメ が祭神と してまつら れていま す。
コ ノ ハ ナ サ ク ヤ ヒ メ が ニ ニ ギ ノ ミ コ ト と 結 ばれ た 地 で あ る
こ と か ら 縁 結 び の 神 様 、 ま た 三 人 の 皇 子 を お 産み に な っ た こ
と か ら 安 産 の 神 様 と し て も 有 名 で す 。 さ ら に 、三 人 の 皇 子 を
お 育 て に な る 際 、 母 乳 が 足 り ず 、 代 わ り に 甘 酒を 飲 ま せ た と
い う言い伝 えから 、日本清酒の 発祥の地 とも言われ ています 。
毎年、七月七日には「更衣祭」が行われており…
火 が 燃 え さ か る 時 に 最 初 に 生 ま れ た 子 が ホ デ リ (火 照 )。
メラメラメラ。
次に火の勢いがより強くなった時に生まれた子がホス
セ リ (火 須 勢 理 )。 ボ オ ー ッ 、 ゴ オ ー ッ 。
最後に火がおとろえてきた時に生まれた子どもがホオ
リ (火 遠 理 )で す 。 チ ョ ロ チ ョ ロ チ ョ ロ 。
のちに、ホデリは海幸彦、ホオリは山幸彦と呼ばれる
ようになりました。みなさんは海幸山幸のお話は知って
いますか?
児童は、最初こそ勝手が分からずに消極的だったも
のの、慣れてくると、自分からあいさつをしたり「ど
こからお越しですか?」と尋ねたりできるようになっ
た。さらに、お客の姿が見えるとガイドする場所を自
らエスコートする姿や相手に合わせて話しぶりや話す
内容を変える姿が見られた。また、アドリブを交えた
り、お客との会話を楽しんだりする児童もいた。
どの児童も、ガイドをこなしていくうちに自信を得
て生き生きとガイドができるまでに変容し、その眼差
しには充実感や満足感が溢れていた。
イベントでガイドをする児童
お客さんの反応
・ みんな、ガイドが上手だけれど、学校で勉強した
のですか?
・ みなさんは、地元の小学生ですか?
・ ありがとう。とても分かりやすくて楽しいガイド
で し た 。み な さ ん か ら 、す ご く 元 気 を も ら え ま し た 。
1月には、妻北地域づくり協議会主催の「記紀の道を歩こう会」が開催予定である。
そこでも児童のボランティアガイドを募っているが、今回参加した児童に触発されて、
さらに多くの児童が参加予定である。
本実践のゴールは、児童が「記紀の道のガイドを行うこと」ではない。ガイド体験を通
して、人とかかわる力や自己を見つめる力を養うことを目標としている。ガイドの楽し
さが分かってきたことに甘んじず、楽しさ以外に求められる目的について、さらに追究
させる必要がある。
そこで、ガイドを本業としている職業人の講話を聞かせたり、記紀の道を守っていこう
とする地域の人々の生き方や思いに触れる活動を展開していくことにした。
- 28 -
(4) 職 業 人 講 話 を 聞 き 、 相 手 意 識や 目 的 意 識 を 明 確 に し た ガ イ ド の 仕 方 を 考 え る 。
〈 職業 人講 話 のね らい 〉
○ 職 業 人 と し て の ガ イ ドの 仕 方 や 心 得 等に つ い て の 話を
聞 く こ と で 、 児 童 が 相 手意 識 や 目 的 意 識を さ ら に 高 め、
自 分 の ガ イ ド の 仕 方 を より よ い も の に して 今 後 の 活 動に
取り 組も う とす る意 欲 や態 度 を引 き出 す 。
宮交ホールディングス株式会社に協力を依頼し、若手の
ガイドに指導をされている方を講師としてお招きして職業
職業人講話の様子
人講話を行った 。児童から見れば 、まさに「 ガイドのプロ 」
といえる方が登壇されるとあって、視聴する様子は真剣そのものであった。
講話では、説明することだけがガイドの目的ではなく、相手がその場所の魅力を理解
するために「お手伝いをする」という気持ちが大切であることを説かれた。また、言葉
を伝えることは難しいということを前提にして行う伝え方のポイントや、気持ちのよい
接客の仕方などを具体的に教えていただいた。あいさつや礼儀の大切さは学校でも日常
的に指導を行っていることであるが、職業人から改めてその大切さを知らされると、児
童はより納得できたようである。
この講話を通して、児童のガイドの仕方は相手意識や目的意識が明確となり、人から
やらされるのではなく、人のために自らかかわろうとする主体的な姿に変容していった。
7
考察
本 実 践 の 構 築 に 際 し 、 当 初 は 「 4 年 生 に は 難 し い の で は な い だ ろ う か 」、「 伝 説 を 語 ら
せることで、どのような能力が高まるか」など、教師自身の迷いもあった。そこで、従
来の「ふるさとを大切に思う心と態度を育む」ことに加え、キャリア発達の視点から学
習のねらいを再構築することとし、年間指導計画の見直しを進めた。
従 来 の 年 間 指 導 計画 で は 、す ば ら しい 教 育 資源 が 目 の 前に あ り な がら 、「 現地 で の ガイ
ド 体 験 」 を 設 定 し てお ら ず 、ガ イ ド の相 手 も 同級 生 や 下 級生 で あ っ た。 し か し 、「 な ぜガ
イドをするのか」や「どのようにガイドをするのか」を探究していくには、疑似ガイド
体験ではなく、実際の現場でガイドを行うことが有効と考え、地域のボランティアガイ
ドや地域イベントを行う団体の活用を、キャリア教育の視点から位置付け直した。
今 で も 「 な ぜ 、 ガ イ ド を し た の で す か 。」 と 4 年 生 児 童 に 問 う と 、 ま ず は 、「 ふ る さ と
を 大 切 に し た い か ら で す 。」 と 答 え る 。 た だ し 、「 ガ イ ド 体 験 を 通 し て 、 ど の よ う な こ と
を 学 び ま し た か 。」 と問 え ば 、様 々 な 視点 か ら の学 び を 答え る 。 より よ い ガイ ド の 在 り方
を追究することで 、「かかわる力」や「つきすすむ力」が高まったとも考えられる。
人とかかわることの大切さや楽しさ、地域のよさを守ろうとする人々の生き方や思い
を学ぶことは、次学年の学習テーマである「地域の人々の喜びや苦労・貢献を考える」
につながるものである。
一 年生 を 相手 に 、記 紀の 道 のガ イド を する 児 童
- 29 -
小6
小学生からできる! お仕事体験で働く意味を問う
−様々な職業人への取材活動や白菜の栽培・販売体験を通して−
宮 崎 市 立 学 園 木 花台 小 学 校
1
学校や児童の状況
2
・宮崎大学学園都市内にあり、校区は、新興住
宅地と昔ながらの農業地区が混在する。
・素朴で思いやりのある児童が多い反面、行動
に指示待ちの傾向も見受けられる。近年、集
団生活の中で他とうまくかかわりながら生活
することが苦手な児童が増えている。
3
活用したい教育資源
・たゆみない学びと努力で困難を乗り越え
てきた経験を有する元農業従事者
・夢に向かって挑戦し続ける校区内の農業
従事者
・JA宮崎経済連職員
・修学旅行で出会う職業人
・職業人としての保護者
本校 における キャリア教 育の 構想
キャリア教育でめざす児童像
家庭、学校、地域の中で、自分や友だちの役割を理解し、夢や希望を実現するために努力する児童
役割と生き方
4年総合 「自分さがし (今の自分と今までの自分、そしてこれからの自分)」 (地域ボランティアに学ぶ)
3年総合 「 自分たちにできることを地域に学ぼう 」 (学校職員、地域ボランティアに学ぶ)
2年生活 「町たんけん」 (地域の職業人、地域ボランティアに学ぶ)
1年生活 「みんなみんなだいすきだよ」 (家族、学校職員に学ぶ)
4
特別支援学級 自立活動
5年総合 「 木花大好き!地域の名人に学ぶ、自分みがきプロジェクト 」 (地域ボランティアに学ぶ)
﹁GOGOタイム﹂
核となる体験活動
6年総合 「夢プロジェクト ∼未来に輝くための自分さがし∼ 」 (職業人に学ぶ)
実 践事 例の 概要 (特色、位置付け)
第 6 学 年の 総 合 的 な 学習 の 時 間 に お け る体 験 活 動 を核 と し た キ ャ リ ア教 育 の 取組 を 紹介 し
ま す 。 単 元 「 夢 プ ロ ジ ェ ク ト ∼未来に輝くための自分さがし∼」(全70時間) は 、 様 々 な 職 業 人 へ の 取 材 活
動 や 体 験 活動 な ど を 通 して 働 く こ と の 意 味に つ い て の理 解 を 深 め さ せ 、自 分 の 将来 や 現在 の
自 分 の 役 割、 今 後 の 生 き方 を 考 え さ せ る こと を 主 な ねら い と し て 構 成 して い ま す。 本 事例 で
は 特 に 、 本 校 内 で で き る お 仕 事 体 験 と し て の 「 白 菜 栽 培 」・「 販 売 体 験 」 と 、 体 験 で の 課 題
意 識を 効 果的 に高 め るた めの 事 前活 動 であ る 、
「 お 仕事 ウ ォッ チ ング 」を中 心に 紹 介し ま す 。
夢プロジェクト part1
∼お仕事ウォッチング編∼
4月∼9月(31時間)
取材活動
○木花の農業従事者
○修学旅行で出会う職業人
○職業人としての保護者
夢プロジェクト part2
∼白菜栽培・販売体験編∼
9月∼12月(25時間)
白菜栽培
販売体験活動
※核となる体験活動
夢プロジェクト part3
∼これからの自分編∼
1月∼3月(14時間)
表現活動
○がんばり体験
○二十歳の自分への手紙(タイムカプセル)
○保護者への感謝状(贈呈式)
人は何のために働くのか、自分の役割は何か、今・これからをどう生きるか
- 30 -
5
キ ャ リア 教 育をデザインする
∼ 「 キ ャリ ア教 育 を『 デザ イン 』 する 」(文部科学省 国立教育政策研究所 生徒指導、進路指導研究センター 平成24年8月) を 参考 に ∼
本実践は、以前から総合的な学習の時間等において取り組んできた内容(修学旅行
に関する学習や地域の元農業従事者との野菜栽培活動 、卒業プロジェクトなど )を 、
「役
割と生き方」という視点から「洗い出し、つなぎ、検討する」作業を経て、本校6年
生におけるキャリア教育の中核となる取組として新しくデザインしたものである。
総 合的 な学 習 の時 間 の再 構成
○
○
○
○
旧 こ れま で の内 容
修学 旅行
地域 ボラ ン ティ ア
卒業 プロ ジ ェク ト
常時 活動 (野菜 の 栽培 )
新 再構 成 した 内 容
お 仕事 ウ ォッ チン グ 編
修 学旅 行 、保 護者 の 仕事
2 白 菜栽 培 ・販 売体 験 編
3 こ れか ら の自 分 編
・ がん ば り体 験
・ 二十 歳 の自 分へ の 手紙
・ 保護 者 への 感謝 状
1
洗 い 出す
つ な ぐ
検 討 する
※ 「自己理解・自己管理能力」や「キ
ャリアプランニング能力」が弱い
6
第 6 学年 総 合的な学習の時間の目標
7
学 習 過程 に ついて
他
( )総合的な学習の時間とキャリア教育との関連
(1) 「 課 題 の 設 定 」「 情 報 の 収 集 」「 整 理 ・ 分 析 」「 ま と め ・ 表 現 」 の 各 段 階 の ね ら い に 沿 っ
て、探究的に学習を進めていくことができる。
( 学習方法に関すること:課題対応能力 )
(2) 取 材 活 動 や 体験 活 動 を 通 し て働 く こ と に つい て の 理 解 を 深 め、 将 来 なり た い自 分に 向 か
って 、今 の 自分 にで き るこ と を考 え、 実 践し よう と する 。
( 自分自身に関すること : 自己理解・自己管理能力 、 キャリアプランニング能力 )
(3) 取 材 活 動 や 体験 活 動 を 通 し て身 近 な 大 人 や地 域 の 人 々 と 積 極的 に か かわ る とと もに 、 友
達と 協同 し て課 題を 解 決す る こと がで き る。
( 他者や社会とのかかわりに関すること : 人間関係形成・社会形成能力 )
「課 題 の 設 定 → 情 報 の 収 集 → 整 理 ・ 分 析→ ま と め・
表現 」という 学習過程 を3サイ クル設 定し、 探究をス
パイラルさせることにより、働くことの意味につい
ての理解を段階的に深めさせていくことにした。
(※ 【資料 】「探究的な学習の流れ」 参照)
課題「人は何のために働くのか。」
(∼お仕事ウォッチング編「整理・分析」場面∼)
家族を支えるためでもあり、自分のやりがいやだれ
かの笑顔を見るためでもあるみたいだね。
8
働 く こと の 意味についての理解を深めさせるための2つの仕掛け
本 事 例 で は 、 折 に 触 れ 、 働 く こ と の 意 味 、 具 体 的 に は 「 人 は 何 の た め に 働 く の か 。」
ということについて児童に問いかけている。結論から言えば、その答えは一つではな
く人それぞれであるが、意図的な活動を仕組むことで、人々の思いの実際を探ってい
け る の で は な い か と 考 え た 。 そ こ で 、「 働 く こ と の 意 味 」 に つ い て 、 様 々な 思 い に 触れ
たり実感したりすることができるよう、次の(1)・(2)の仕掛けを行った。
(1) 職業人の「思い」との出会いを意図的に仕組む
(2) 「困難を乗り越えることを実感する体験」を仕組む
- 31 -
(1) 職 業 人と の「思 い」との出会いを意図的に仕組む
①
若き農業後継者の「思い」との出会い
( お仕 事 ウォ ッ チン グ 編 )
5年生の時、社会科学習の一環として薬剤散布用
ヘリコプターの操縦を実演してくださったミニトマ
ト農家の方に、木花地区の若き農業後継者としての
夢を語っていただくことで、職業人の「仕事にかけ
る熱き思いややりがい」との出会いを仕組んだ。
持原さんは、もう成人している
のにまだ将来の夢がありました。
持原さんにとって、ミニトマトは
一生の大事な食べ物になると思い
ます。努力して苦労を乗り越える
のはとても大事です。
今日の持原さんの話を聞いて、自分の考えが変わりまし
た。僕は、最初、お金のために働くのかなあと思っていま
した。でも、持原さんは 、「人の笑顔を見るため」とおっ
しゃっていました。父も似たようなことを言っていました。
父が言っていた 、「なぜ人のために働くのか」というなぞ
が少し解けたような気がします。
②
昨年から指導を受けている元農業従事者の「思い」との新たな出会い
( お仕 事 ウォ ッ チン グ 編 )
5年生の時から米や大豆、野菜づくりの指導をしてくださっている方に、農業を始め
た理由やこれまでに経験した困難について話していただいた。児童にとっては、何で
もご存じで、魔法のように米や野菜づくりをされる「名人」である。今回の授業では、
苦悩する農業人としての名人の「思い」との新たな出会いを仕組んだ。
今日の村田名人の話の中でひっかかったものがあった。
それは、職業を選んだわけだ。最初僕は、「消費者の笑顔を
見るため」と思っていた。だが村田名人の話を聞いてびっく
りした。村田名人は「しかたなくなった。」とおっしゃって
いた。ということは、なりたくなかったのかもしれない。
それでも、自分のやるべきことを選び、仕事をしている
ことは、とてもすばらしいことだと思った。
この世の中は、その人がいるからその仕事のパーツがで
き、他の仕事とつながり合い、社会ができているのだ、と
いうことを感じた。
③
バスガイドさんの行動に込められた「思い」との出会い
( お仕 事ウ ォ ッチ ング 編 )
修学旅行お仕事ウォッチングの後 、
「 人生の先輩達は 、
ど んな 気 持 ち で仕 事 を して い る のだ ろ う 。」と い う課題
で、職業人の思いを整理・分析する授業を行った。そ
の中で、雨にぬれながら荷物の出し入れをするバスガ
イドさんの写真を提示し、その思いについて話し合わ
せることで、バスガイドさんの行動に込められた「思
い 」と の 出 会 いを 仕 組 んだ 。 ま た 、「 思い 」を 分 類・整
理する中で出てきたキーワードを関連付けて考えさせ
る こと で 、「 思い 」 に つい て の 考 えを 広げ たり 深 めたり
することができるようにした。
私は、バスガイドさんにインタビューするまでは、「仕事は自分が生きていく
ためにする」と思っていました。でもインタビューして、仕事は、「一人一人が
自分の役割をしっかりして、人が笑顔になって成功」だと思いました。だから、
自分の係の仕事も「人が笑顔になって成功」だと思いました。
- 32 -
バスガイドさんなどのすごい技や気持ちを班ごとに
分かれて考えました。
「大変」と「やりがい」というのを丸で囲んで、ど
ういう関係なのかをじっくり考えてみました。そした
ら、C君が「大変なことがあった分だけやりがいがあ
る!」ということを言いました。
④
販売戦略に込められた売り手の「思い」との出会い (白菜栽培・販売体験編)
生 活 の 中 で 見 か け る 販 売 戦 略 の ウ ォ ッ チ ン グ の 後 、「 販 売 戦 略 に は 、 売 り 手 の ど ん な
思 い が 込 め ら れ て い る の だ ろ う 。」 と い う 課 題 で 、 職 業 人 の 思 い を 整 理 ・分 析 す る 授業
を行った。その中で、利益だけでなくお客さんの喜びを追求していく売り手の「思い」
との出会いを仕組んだ。また、JA宮崎経済連園芸販売部マーケティング戦略課の方
にお話をしていただくことにより、売り手側の喜びとして、利益だけでなく「やりが
い」を追求していきたいという「思い」にも出会わせることができた。
売り手側と買い手側
両方が満足するように
戦略を考えていくこと
が大切です。
大人はみんな利益ばかりが目当て
と思っていたけど、思いを分析して
みたら、買い手のことを考えていた
のでビックリしました。
売り手のメリットと買い手のメリットをまとめてみる
と、2つのものは関連しているなと思いました。例えば、
「朝どれ」を売ることは、新鮮なものを売っているとい
う「売り手側の自信」になり、それは買い手の「安心・
安全」につながると思ったからです。
この学習の後、学んだことを生かして自分達の白菜販売戦略を決定した。その戦略の
一つとして1人1枚ずつちらしを作ることになり、ちらしでお客さんに伝えたい「思
い」について話し合う活動を行った。
この白菜は、6年生が一生懸命育てた白菜です。植え
てから間もないころに大型の台風が来たり、西風や虫食
い(コオロギなど )、病気などが起こったりして、とて
も大変でした。けれど、台風が来る前に村田名人と対策
をとったり、西風に対してわらの柵を立てて守ったり、
虫食いや病気などに対しては安全な農薬を使ったりし
て、いろいろな対策をとってきました。どんな被害にあ
っても諦めずがんばってきました。
一人 一人 が つく った チ ラシ
1個売りはもちろん、カット販売や収穫体験、移動販
売などがあります。○○があなた様をお待ちしています!
このような活動をするうちに、児童の販売目標「①全部売り切る。②利益をなるべく
上 げる 。」 に 、「③ お 客さ ん を 満 足さ せ る 。④ 自 分 達 も満 足 す る 。」が 付け 加え られ た。
(2) 「 困 難を 乗 り 越 え る こと を実 感する 体験」 を仕組む
(白菜栽培・販売体験編)
お仕事ウォッチング編で、生き生きと仕事をしているように見える職業人がいろいろ
な 困 難 を 感 じ て い る こ と を 知 っ た 児 童 は 、「 失 敗 や つ ら い こ と あ っ て も 、ど う し て 仕事
- 33 -
を 続 け る こ と が で き る の だ ろ う 。」 と い う 疑 問 を も っ た 。 白 菜 栽 培 ・ 販 売体 験 編 で は、
そ の 疑 問 を 課 題 と し て 設 定 し 、 課 題 解 決 の た め に 、「 工 夫 や 努 力 で 困 難 を乗 り 越 え るこ
とを実感する体験」を仕組んだ。
①
白菜栽培体験
白菜栽培体験では、長年の経験を元に次々と立ちふさがる問題に立ち向かう「名人」
と行動を共にさせることで 、「困難を乗り越えることを実感する体験」を仕組んだ。
5年生での米づくり経験から、児童は害虫や病気の被害を予想し、その予防や対処法
について調べる活動を行った。毎朝様子を見に来られる「名人」と一緒に世話・観察
をし、交代で観察記録をとりながらそれらの被害に備え
た。実際は、コオロギ、2回の台風、軟腐病、ダイコン
台風被害の観察
サルハムシ、カタツムリ、アブラムシなど、次々と被害
が 出 て 、 為 す 術 が な い 無 力 感 を 何 回 と な く 味 わ っ た 。「 名
人 」 が仕方なく農薬を使う場面にも直面した 。 児童は 「 働
く困難」を実感しながらも、プロの知恵をもってその困
難を乗り越える体験をすることができた 。 今回の体験は 、
販売を目的とした栽培であるため、活動に対する児童の
意欲には並々ならぬものがあった。
台 風被 害 の観 察
②
白菜販売体験
販 売 に 当 た っ て は 、「 販 売 戦 略 を 実 行 す る こ と で 、 ①
全部売り切ったり、②利益をなるべく上げたり、③お
客さんを満足させたり、④自分達も満足したりするこ
と が で き る の で は な い か 。」 と い う 仮 説 を 立 て た 。 こ の
仮 説 を 検 証 し て 戦 略 の 成 果 を 明 ら か に す る 活 動 を 、「 困
難を乗り越えることを実感する体験」として仕組んだ。
検証方法の一つとしてお客様アンケート、6年生アン
ケートを行った。
■チラシのどこにひき
つけられましたか。
1位 6年生の工夫や努力
2位 名人の工夫や努力
3位 値段
4位 ブランド名
5位 減農薬
戦 略例 : お客 様の 収穫 体 験
■ 6年生へのメッセージ
・ 白菜を一生懸命作って
くれてありがとう。
いただきます!
・ ていねいな販売ありがと
う!
お客様アンケート
お客様の笑顔を見たときの喜びや自分の役割を果たしたとい
う満足や達成感が失敗やつらいことを上回って、また次へがん
ばる希望が出てくる。その意味が白菜販売体験で分かりました。
9
成 果 と課 題
(1) 成果
意図的な活動を仕組むことで、切実
感をもって自分の将来や現在の自分の
役割、今後の生き方を探っていく児童
が増えつつあると感じている。
(2) 課題
小学校での学びを中学校へとつなぐ
ため、小中一貫「キャリアノート」を
作成した。このノートの活用を図って
いくことが今後の課題である
体験 後 の児 童の 感 想
「人は何のために働くのか。」 (体験後)
例えば村田名人の場合、やりたくて農業を始めたわ
けではないけど、お客さんの笑顔を見ることや、自分
の役割を果たせたときの達成感のために働いていたの
ではないか。
「自分の今、これからの生き方」
この世の中は、その人がいるからその仕事のパーツができ、
他の仕事とつながり合い、社会ができているのだ、ということ
を感じた。運動会の仕事もそうだと思う。自分の周りに、いっ
しょに仕事をしてくれている仲間がいるから運動会が成り立
ち、団が成り立つと思うので、自分の周りにいる仲間が支えて
くれると思いがんばろうと思う。
- 34 -
【資料】「探究的な学習の流れ」
学習内容・活動
核となる体験
ゆさぶり
児童の問い
テーマ「夢プロジェクト∼未来に輝くための自分さがし∼」
大人の人達は、こんなにもたくさんの職業の中か
ら、どうやって自分の職業を選んだのだろう?
未来に輝くために、今、どんなことを考えてい
かなければならないのだろう?
探究1 夢プロジェクトpart1 ∼ 未来に輝くための自分さがし お仕事ウォッチング 編 ∼
人生の先輩たちは、どんな理由で職業を選び、どんな気持ちで仕事をしているのだろう。
情報の収集、整理・分析
お仕事ウォッチング(農業関係者、修学旅行、保護者
他)
まとめ・表現
「夢を実現する」「やりがい」「自分の長所を生かす」「収入を得る」などの理由で仕事を
選んでいる。みんな努力して、生き生きとがんばっている。
村田名人も同じ理由なのかな?
ゆさぶり①
村田名人の苦労話
何度も仕事をやめたいと思った!
仕事を続けているとそんなに苦しいことがあるのか…。何度もやめた
いと思ったのに、村田名人はどうして今の仕事を続けているのだろう?
実際はどうなのだろう?
自分達もお仕事体験をしたい!
探究2 夢プロジェクトpart2 ∼ 未来に輝くための自分さがし 白菜栽培・販売体験 編 ∼
失敗やつらいことがあるのに、どうして仕事を続けることができるのだろう。
情報の収集、整理・分析
※核となる体験活動
白菜の栽培・販売
失敗やつらいことでも乗り越
えることのできる何かがあるの
かな?
まとめ・表現
つらくてもがんばって働けば、お客さんや家族のためになったり、収入を得ること
ができたりするなど、苦労を超える喜びがあるから仕事を続けることができるようだ。
○○名人は、子どもの頃、どんな子どもだったのだろう?
ゆさぶり②
人生の先輩たちが
子どもだった頃の話
さぞかし立派な子どもだったのだろうな…。
名人も子どもの頃はきちんとできなかったけど、努力して今のように
なったのだな。今の生活態度が将来につながっていくんだ!
名人のように未来に輝くにはどうすればいいのかな?
探究3
夢プロジェクトpart3 ∼ 未来に輝くための自分さがし
これからの自分 編 ∼
苦労や困難を乗り越えるためには、どんな力が必要なのだろう。
今の自分はどんなことをがんばればいいのだろう。
体験活動
情報の収集
がんばり目標の実践
整理・分析
あきらめずにがんばることが大切だ!
短気な性格を直そう!
忘れ物をなくすことも大切だ!
まとめ・表現
【 二十歳の自分への手紙
親への感謝状 】
○身の回りの大人の生き方から学んだこと ○なりたい自分 ○今がんばっていること
- 35 -
他教科等との関連
ì5年 総合
・村田名人の生き方
・地域ボランティア
の方々の生き方
ì6年 国語
・「意図」の意味
・仮定法の使い方
・自分の考えのもち方
ì6年 国語
「学級討論会をしよう」
・討論の在り方
・説得力のある話し方
ì6年 国語
「パンフレットを作ろう」
・効果的な構成や材料の配置、記述
ì5年 算数
「割合のグラフ」
ì各学年算数
・各種グラフ
ì6年 学級活動
「運動会を盛り上げる取
組を考えよう」
・みんなと協力しながら、
自分の役割を果たすこと
ì6年 特別活動全般
・係活動、当番活動、
委員会活動
・自分の役割を果たすこと
ì6年 運動会
・自分の役割を果たすこと
・友達と協力して仕事をやり遂げること
ì6年 道徳
・4−(4)
「働くということ」
ì6年 家庭科
「朝の生活時間を見直そう」
ì6年 道徳
・1−(2)
「くじけずに努力する」
ì6年
学級活動
「自分をみつめて」
・将来の夢
・これからがんばること
全学年
協働体験の中で自分の役割を自覚するキャリア教育!
−
地域の食材加工や伝統芸能の体験と広報活動を通して −
都城市立夏尾小学校
1
学校や児童の状況
○ 山間地に位置する完全複式の小規模校である。
○ 緑豊かな自然に恵まれた環境に立地している。
○ 児童は非常に素直で、朝の奉仕活動や清
掃など、自分の仕事を一生懸命に行う。
○ 少人数で過ごしているため、集団の中に
おける自分の役割を自覚したり、人間関係
を広げたりする機会が少ない。
3
2
活用したい教育資源
○
地域に広がる豊かな自然
○
野草や自然の中で採れる食材
○
夏尾小に復活して20周年となった伝
統芸能の「奴踊り」
○
公民館長を中心とした地域の人材
本校 における キャリア教 育の 構想
自然や伝統芸能など地域のよさにふれるとともに地域との交流を図りながら、自
分の役割を考えたり地域社会を再認識したりする体験的な学びを通して、よりよい
人間関係を築きながら、自己実現に向けて努力し、意欲をもって学び続ける能力や
態度を育成する。
キャリア教育から見た各学年段階の果たすべき役割
低 学 年
中 学 年
高 学 年
地域の自然素材を生かした食材加工体験
自 分 に で き る こ と で 、 上 学年
の 手 伝 い を し な が ら 、 調 理等
の 活動 を行 う 。
学習したことやこれまでの経
験を生かしながら、体験活動
を楽 しむ 。
活動の手順等を理解し、下
級生に模範を示しながら自
ら の活 動 を工 夫す る 。
伝統芸能「奴踊り」の継承
上級生に教えてもらいなが
ら 、 み ん な の 前 で 恥 ず か しが
ら ずに 楽し く 踊る 。
低学年に踊り方を教えるとと
もに、自らの踊りの技能を高
める 。
奴踊り継承者の思いを受け
継ぎ、継承のための具体的
な 取組 を 行う 。
ケーブルテレビを使っての広報
一 番 紹 介 し た い こ と を 、 順序
立 て て 声 の 大 き さ や 速 さ に注
意 して 楽し く 紹介 する 。
4
学校や地域のよさが伝わるよ
うに、理由を明確にし、筋道
立て て工 夫 して 紹介 す る。
学校や地域のよさや課題を
整理した上で、伝え方を工
夫 しな が ら紹 介す る 。
実 践事 例の 概要 (特色、位置付け)
本 校 は 、 児童 数 が 非 常 に 少な い こ と も あり 、 低 学 年 か ら 高学 年 ま で が一 緒 に 活動 を 行う 体
験 学 習 が 多 い の も 特 色 で す 。 そ こで 、 地 域 の 自 然素 材 を
食材 加工 体 験
生 か し た 食 材 加 工 や 伝 承 芸 能 「 奴踊 り 」 継 承 の 取組 、 そ ○ 梅 干し づ くり
の 広 報 活 動 の 体 験 を 通 し て 、 地 域社 会 を 再 認 識 した り 、 ○ 野 草 の ド ラ イ カ レ ー 、 た け の
発 達 の 段 階 に 応 じ た 自 分 の 役 割 を果 た し た り す る系 統 的
こご 飯
な 取組 を 紹介 しま す 。
伝統 芸 能の 継承
○ 継 承D V D作 成
○ 奴 踊り 復 活当 時の 思 い継 承
ケ ーブ ル テレ ビを 使っ て の広 報
○ 「な つ お学 び隊 」に お ける 夏尾
小学 校 の紹 介
- 36 -
5
地 域 の自 然 素材を生かした食材加工体験
ねらい
地域の豊かな自然環境に目を向け、身近な自然素材を生かした食材加工の体験を通
して、地域のよさを理解するとともに、自分のこれまでの学習や経験を生かすことの
大切さと喜びに気付きながら、学年に応じた自分の役割を役割を果たそうとする態度
や能力を身に付ける。
(1) 梅干しづ くり
主な体験活動
1
キャリア教育としてのねらい
梅 の収 穫 ∼梅の 漬け込み∼
算数の学習を活用し、それぞれの学年の
発達の段階に応じた役割を果たす。
算数の学習を活用することで、学習が具体
的に生活の中に役立つことを実感する 。
●
それぞれの学年に明確な役割を与えるこ
とで、作業を進めるために自分の力で役割
○ 中学年児童が収穫した梅の量を量り、
を果たすことの大切さを体験を通して理解
全体量を求める。
させ る。
○ 高学年が割合を使って、必要な塩の量 ● 自分の役割を果たすことの達成感を味わ
を求める。
わせ る。
2
○
紫 蘇の 漬け 込み
地域の方の昔ながらの知恵や技術などに
触れる。
地域の方を講師として、紫蘇の漬
け込みを学ぶ。
●
3
○
学校で栽培した紫蘇を使うことで、食料
生産 への 喜 びを 感 じさ せる 。
● 地域の方々と積極的に交流することを通し
て人 間 関係 形 成能 力を は ぐく む 機会 と する 。
● 講師の地元の学校に対する熱い思いに触
れさせ、ふるさとを大切にしていきたいと
いう 気概 を もた せ る。
● 梅酢をかけると紫蘇が鮮やかな色に変化
することから、6年理科「水溶液の性質」
の事 前体 験 とす る 。
土 用干 し ∼梅干 しの完成∼
天気予報から土用干しができそうな期
間を選ぶ。
先を見通しながら 、自分の役割を果たす 。
(高学年)
●
学年の発達段階に応じて、それぞれの作
業を 丁寧 に 行う こ との 大切 さ に気 付か せ る 。
● 高学年は、新聞等の週間天気予報から土
用干 しが で きそ う な期 間を 選 ばせ るこ と で 、
先を見通しながら食品を管理する意識をも
たせ る。
- 37 -
(2) 地域の自 然素 材を 生かした食材加工
豊かな自然に囲まれている学校の特色を生かし、学校の校庭内や学校の周辺など、
身のまわりの自然の食材を生かした「食」をつくる体験活動を行った。
● 4 月 …ク レソ ン 採り
● 5 月 …野 草を 使 った ドラ イ カレ ー づく り( ミ ツバ 、ヨ メ ナ、 タ ンポ ポ、 ヨ モギ など )
● 5 月 …た けの こ 採り ・た け のこ ご 飯づ くり
● 10 月 …野 草茶 づ くり (ヨ モ ギ、 ア ザミ 、ド ク ダミ など )、 むか ごご 飯 づく り
● 2 月 …春 の野 草 (菜 の花 、 ふき の とう 、ノ ビ ルな ど) の 天ぷ ら 、菜 の花 ご はん づく り
主な体験活動
1
キャリア教育としてのねらい
食 材の 収穫
学校や地域の自然のよさを実感し、自然
の中で生きる一員として自らの生活をよ
くしていこうとする意欲をもつ。
●
食べられる野草と食べられない野草を地域
講師に聞いたり、図鑑で調べたりして、新し
い知 識 を身 に 付け る楽 し さを 味 わわ せ る。
● たけのこやむかごなど、学校内及び周辺で
自然の食材を採取し、地域の食材を生かすこ
とで、社会や自然の中に生きる一員としての
2
薪 集め とか まど づくり
行動 に つい て 考え る契 機 とす る 。
学年の発達の段階に応じて、それぞれの
役割を果たす経験をする。
●
捨てればゴミになるはずの木の枝を薪と
して活用することで、自然を生かしながら
生活 する こ との よ さに つい て 考え させ る 。
● 低・中学年と、高学年と役割を明確に分
○ 低・中学年は、校庭から薪として木の
担することで、それぞれが責任を持って準
枝を集める。
備す るこ と を意 識 させ る。
○
高学年はかまどをつくる。
3
調理
一人ひとりが自分の役割を果たしなが
ら、協力して一つの食事を作り上げる達
成感を味わう。
●
○
○
○
食材を切って準備する。
米をといで、炊飯の準備をする。
飯ごう炊飯にて「○○ご飯」をつくる。
できるかぎり、児童の力だけで作業を行
わ せ 、「 役 立 つ 自 分 へ の 喜 び 」 を 味 わ わ せ
る。
● 火が消えないよう、よく燃えるようにす
るために薪をどのように組んだらよいか工
夫さ せる 。
- 38 -
6
伝 統 芸能 「 奴踊り」の継承
ねらい
現在の学校での奴踊り継承に関わる課題や継承者の思いを知り、その解決について
考えたり解決策を実践したりすることで、地域への愛着を深めるとともに、自分自身
が学校や地域社会の未来に対して大きな役割を果たしているという自己有能感をもつ。
(1) 教習DV Dの 作成 (5・6年)
主な体験活動
1
キャリア教育としてのねらい
計 画と 係分 担
地域の未来について考える態度を身に付
○
奴踊り継承上の課題について考える。
け、自分自身が地域の未来に役立つ存在
・現在、夏尾小学校だけで継承
であることを自覚する。
・動きが正確に継承されていくか心配
○ 役割を分担する 。(1∼3番別に)
● 現在の学校の奴踊りの継承上の課題を考
・踊り手(モデル) 、話し手 、カメラマン 、 え さ せ 、 今 後 の 自 分 た ち の 取 組 が 未 来 に 向
タイムキーパー
けて 大き な 役割 を 果た すこ と を意 識さ せ る 。
2
原 稿作 成と 撮影 の練習
問題点を発見・分析し、情報を整理・処理
○
全体の構成を確認する。
する力、評価・改善する力を身に付ける。
・1∼3番全体を通しての踊り
・1∼3番ごとの踊り
● 原稿作りの難しさを通して、これまでの奴
・パートごとの説明と動作の確認
踊り の 説明 が 明確 でな か った こ とを 理 解さ せ 、
○ 試しの原稿をもとに撮影の練習をする。 より よ い説 明 の仕 方に つ いて 考 えさ せ る。
・原 稿 の表 現が 実 際
● 原稿の説明の仕方が実際の動きと合ってい
の 動 きと 合っ て い
るか、また、わかりやすい表現になっている
るか
かを 確 認し 、 適切 な説 明 方法 を 追究 さ せる 。
●
3
○
撮影
児童相互が協力し合い、よりよいものを
作り上げていこうとする話合いを通し
て、意思決定する力を育てる。
必要に応じて原稿を何度も修正しなが
ら撮影する。
●
4
単に踊り方を説明するにとどまるのではな
く、上手に踊るためのコツや留意点を盛り込
むこ と で 、継承 への 強 い 気持 ちを 意 識さ せ る 。
各 自の 感想 の撮 影と視聴
単に原稿を読むのではなく、間の取り方や
速さ、強調したい点などに気を付けながら説
明し 、 納得 す るま で何 度 でも 撮 影さ せ る。
自分たちのふるさとの未来を考え、その
ための自分の役割について考える。
●
- 39 -
各自の感想を映像に残し、児童自らが継
承の主体としての自覚と誇りをいっそう高
める 。
(2) 奴踊り復 活当 時の 継承者の思いを受け継ぐ
主な体験活動
1
キャリア教育としてのねらい
訪 問す る
自分たちの仕事や活動がつながることに
気付く。
○
元保存会会長(97歳)
宅を訪問する。
○ 自分たちがつくった
梅干しを贈る。
2
○
●
3
○
○
●
交 流を する
元保存会会長の継承に対する思いを聞くこ
とで、20年前に復活した奴踊りがこれから
も続けていく伝承芸能であり、その継承には
一人 一 人が 重 要な 役割 を 担っ て いる こ とを 自
覚さ せ 、新 たな 意 欲付 け を図 る 。
自分に必要な技術の習得に、前向きに努
力を続ける大切さを知る。
三味線演奏に合わせて踊る。
継承 へ の 意欲 を
新たにする。
7
自分たちもその継承の上で重要な役割を
担っていることを自覚する。
思 いを 聞く
児童それぞれが質問し、元保存会長
と交流する。
・20年前復活のきっかけと当時の苦労
・奴踊り継承に対する思い
訪問のあいさつの際に、自分たちでつくっ
た梅干しを贈ることで、自分たちの仕事や活
動が 生 かさ れ つな がる こ とに 気 付か せ る。
●
97歳になってなお、三味線の練習を続けて
いることに触れ、生涯を通じてスキルアップを
図っ て い くこ と の す ばら し さ に気 付 か せる 。
● 自分たちの奴踊りに対する感想をもらい、継
承へ の 新 たな 意 欲 化 を図 る 。
ケ ー ブル テ レビを使っての広報
ねらい
今後の児童減少が学校や地域の大きな課題であることをとらえた上で、自分が地域
社会の重要な構成員の一人であることを自覚し、特認校制度の利用の呼びかけも含め
た学校紹介の広報活動を通して、学校や地域のよさを見つめ直すとともに、学校や地
域の未来について考えたり、学校や地域への誇りや愛着を高めたりする。
○「 夏 尾学 び隊 」夏尾小学校をみんなにじまんしよう
主な体験活動
1
○
キャリア教育としてのねらい
学 校の 課題 につ いて考える
学校や地域の未来について考える態度を
身に付け、学年それぞれの立場で自分に
できることを考える。
5年生児童の作文を読んで、今後の児童
数の減少について知り、学校のよさを紹介
しよ う とい う気 持 ちを 高め る 。
夏尾小は人数が少なくなってきています。
しかし、みんなで力を合わせたら、すばらしい夏尾小
学校になると思います。
これまで以上に、みんなで仲良くしながら、ほうし活
動ややっこおどり、そして勉強をがんばっていきましょ
う。そして、じまんできる夏尾小にしましょう。
●
- 40 -
今後の学校が抱える課題について知るこ
とで、特認校制度の利用の呼びかけも含め
た学 校紹 介 を行 う こと への 意 欲付 けを 図 る 。
主な体験活動
2
○
学校のよさを見つめる活動を通して、発
達の段階に応じて自分たちの果たしてい
る役割について考える。
学 校の よさ につ いて考える
これまでの
学びをもとに
「夏尾小のよ
さ」を出し合
い 、 整理する 。
3
○
●
紹 介し たい こと がらを整理する
一人一人が学校を紹介する大きな役割を
担うことを自覚する。
整理した「夏尾小のよさ」の中から、
紹介したいことを決め 、役割分担をする 。
●
4
各学年の発達の段階に応じたそれぞれの立
場 か ら 、「 夏 尾 小 の じ ま ん 」 を 出 し 合 っ て 整 理
し な が ら 、「 朝 の 奉 仕 活 動 」 に 代 表 さ れ る よ う
に、そのよさを作り出しているのは自分たち
自身であるという自覚をもたせ、自己有能感
を感 じ させ る 。
原 稿作 成と 撮影 の準備をする
自分が最も紹介したいことを選ばせ、一
人一人の役割に責任をもたせるとともに、
よい 紹介 に しよ う とす る意 欲 を高 める 。
情報を整理・処理する力を身に付ける。
○
それぞれの分担に応じて原稿を作成し 、
撮影の練習をする。
● 各学年に応じて、国語科の「話す・聞く」
○ 必要に応じて 、何度も原稿を修正する 。 単 元 と 関 連 を 図 る と と も に 、 国 語 科 で 身 に 付
けた力が生かされるように意図的に原稿作成
を行 う よう に する 。
(例 : 6年 生 …キ ャッ チ フレ ー ズな ど 、
聞 き 手の 印 象に 残 る工 夫 )
5
○
実 際の 撮影 をす る
各学年の発達の段階に応じて自分の役割
を果たしつつ 、他学年と協力・協働して 、
身近な社会である学校の活動に積極的に
参画しようとする態度を身に付ける。
オープニングなどそれぞれの場面を分担
して 撮 影す る。
●
6
○
実 際の 放送 を視 聴する
ケーブルテレビのスタッフにアドバイス
をもらいながら、相手意識をもちながら話
すよ うに さ せる 。
身近な社会に対して、それぞれが役割を
果たす喜びと達成感を味わう。
実際の放送を視聴して感想を書き、こ
れから自分たちが、学校や地域へどう関
わっていくべきかについて考える。
● 緊張する場面の中で、一人一人が自分の役
割を果たせたことの喜び、さらには学校上げ
ての大きなプロジェクトに関わることの喜び
や達 成 感を 味 わう こと が でき る よう に する 。
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